JPWO2017098600A1 - イオン化装置 - Google Patents

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Abstract

エレクトロスプレーイオン化等における脱溶媒効率向上により高感度な質量分析を実現するために、光源の光を微粒子化装置によって発生された試料微粒子に導き照射する導光路(28)を備え、試料微粒子が存在する空間範囲(34)と導光路の先端(29)との最近接距離(d2)が0.1mm以上20mm以下とし、導光路による光の照射範囲(35)と、試料の表面、微粒子化装置、試料保持部のいずれか最も近いものとの最近接距離(d1)を0.01mm以上10mm以下とする。

Description

本発明は、液体クロマトグラフ−質量分析装置等に用いられるイオン化装置に関する。
質量分析のためには、試料中から目的物質を気相イオンとして取り出す必要があり、そのための装置をイオン化装置という。今までに様々なイオン化法が開発されており、例えば、タンパク質等の極性物質をイオン化できるエレクトロスプレーイオン化(ESI)、低極性の物質もイオン化できる大気圧化学イオン化(APCI)、特定の物質が吸収する光を照射することで物質選択的なイオン化を行うことができる大気圧光イオン化(APPI)、マトリックスと試料を混合した固体試料をプレート上に滴下してレーザ照射することでイオン化するマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)などが知られている。
中でもESIは液体クロマトグラフ−質量分析装置(LC−MS)と結合して、幅広い物質をイオン化する用途で広く用いられている。ESIでは、スプレーで生じた試料微粒子の一部は溶媒が完全に気化できず、質量分析部に取り込まれずに捨てられるか、微粒子のまま質量分析部に進入してノイズとして検出される。質量分析の高感度化のためには、スプレーで生じた試料微粒子からの溶媒除去(脱溶媒)効率を向上してイオン化効率を上げることで、質量分析部に入るイオン量を増大し、ノイズを低減する必要がある。
脱溶媒効率の向上には、各種の加熱手段を用いて試料微粒子からの溶媒の気化を促進する方法が考案されている。例えば、ESIで噴霧した試料液滴に赤外光を含む光を照射することで、液滴から溶媒を蒸発させることが行われている(特許文献1)。また、スプレーチップ先端にレーザを照射し、加熱を行うことも行われている(特許文献2)。ここでは、ダイヤモンドなどのレーザを吸収しない素材のスプレーチップを用いている。また、針に付着した試料溶液や針自体にレーザ光を照射することでイオン化する方法もある(特許文献3)。また、加熱ガスをスプレー領域に導入することで、試料微粒子を加熱する方法もある(特許文献4)。光ファイバを用いてレーザ光をサンプルホルダ上の試料に照射して試料中の目的物質をイオン化する例もある(特許文献5)。
特開2005-26159号公報 特許第4366508号公報 特開平9-304344号公報 US 4,531,056 US 6,777,672 B1
赤外レーザを遠距離から噴霧液体に照射する構成では、イオン化室内に充満した溶媒蒸気により赤外レーザが吸収されて減衰し、噴霧液体への照射効率が低下するため、脱溶媒効率が低いことが判明した。
また、赤外レーザをスプレーチップや試料自体に照射すると、試料溶液が突沸し、イオン化が不安定となり、質量分析データの質が低下する。スプレーチップを、光を吸収しないダイヤモンドなどの素材にするという方法では、コストが高くなる。
スプレー近傍に光ファイバを設置し、光ファイバを通して試料微粒子に赤外レーザを照射する。このとき、スプレー直後の試料微粒子にレーザが照射され、スプレーチップには照射されないようにスプレーチップと光ファイバを配置する。
本発明は、物質をイオン化するイオン化装置であって、目的物質を含む試料を保持する試料保持部と、試料保持部に保持された試料を試料微粒子にする微粒子化装置と、光源と、光源の光を微粒子化装置によって発生された試料微粒子に導き照射する導光路とを備え、試料微粒子が存在する空間範囲と導光路の先端との最近接距離が0.1mm以上20mm以下であり、導光路による光の照射範囲と、試料の表面、微粒子化装置、試料保持部のいずれか最も近いものとの最近接距離が0.01mm以上10mm以下である、イオン化装置である。
本発明によると、試料微粒子近傍まで光ファイバで照射光を導くため、気化した溶媒による吸収で光が減衰するのを防ぐことができ、脱溶媒効率が向上し、質量分析の感度が向上する。
上記した以外の、課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明を用いたESIイオン源を有する質量分析装置の構成例を示す模式図。 イオン化室の一例を示す拡大模式図。 スプレーチップ先端の拡大模式図。 スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸を直角の位置関係に配置した例を示す模式図。 スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸を直角の位置関係に配置した例を示す模式図。 スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸を鈍角の位置関係に配置した例を示す模式図。 スプレーチップの軸と光ファイバの軸が鋭角の位置関係にある例を示す模式図。 光ファイバが円筒状である例を示す模式図。 スプレーチップが細孔に向けられた位置関係にある例を示す模式図。 スプレーチップが複数ある例を示す模式図。 本発明を用いたAPCIイオン源の一例を示す模式図。 試料の微粒子化装置として超音波霧化器を用いる例を示す模式図。 本発明を用いたESIイオン源の一例を示す模式図。 本発明を用いたESIイオン源の一例を示す模式図。 本発明を用いた質量分析システムの一例を示す概略図。 本実施例の質量分析システムによる制御シーケンスの一例を示す図。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を用いたESIイオン源を有する質量分析装置の構成例を示す模式図である。質量分析装置は、イオン化室10、差動排気部11、質量分析部12を備える。イオン化室10はポンプ41で排気されており、細孔38で差動排気部11とつながっている。差動排気部11は真空ポンプ18で排気されており、細孔42で質量分析部12とつながっている。質量分析部12は真空ポンプ19で排気されており、質量分離装置22及び検出器23を有する。イオン化室10には、壁に設置したフィードスルー13を通してESIのためのスプレーチップ16が導入されている。イオン化室10の外部には赤外レーザ光源20があり、これに光ファイバ28が接続されている。光ファイバ28は、イオン化室10の壁に設置したフィードスルー14を通してイオン化室10に挿入され、光ファイバ先端29はスプレーチップ先端17の近くに位置付けられている。また、イオン化室10にはフィードスルー15を通して、加熱した脱溶媒ガスを導入するためのガス導入管30が挿入されている。
スプレーチップ16による噴霧によってイオン化室10で生じた帯電試料分子は細孔38から差動排気部11に導入され、イオンガイド21で次の細孔42に運ばれる。細孔42を通過した帯電試料分子は、質量分析部12において、三連四重極型質量分離装置などの質量分離装置22で分析される。質量分離装置は、四重極型、飛行時間型、イオントラップ型、磁場型など他の方式でもよい。また、差動排気部11と質量分析部12の代わりに、気体中のイオンを電場中で移動させてその移動度の違いで分離する、イオン移動度計や高電界非対称波形イオン移動度計などを用いても良い。
図2はイオン化室10の一例を示す拡大模式図、図3はスプレーチップ先端17の拡大模式図である。スプレーチップ16には高圧電源37が接続されている。スプレーチップ16は、液体クロマトグラフ(LC)40から流れてきた、試料分子と溶媒を含む液体である溶出液24を保持するとともに、溶出液24をスプレーチップ先端17からイオン化室10内に噴霧し、帯電した試料微粒子33を生成する。従って、本実施例のスプレーチップ16は試料保持部であると同時に微粒子化装置として機能する。
スプレー直後の試料微粒子40は、溶出液24が直径10μm以下の帯電微粒子となったものである。この微粒子の表面から溶媒が気化して微粒子の直径が小さくなっていくと、最終的に気相の帯電試料分子36が生成する。正イオン化の場合、帯電試料分子36は、中性の試料分子にプロトンや金属イオン、アンモニウムイオンなどが単数又は複数付加したものである。溶媒気化(脱溶媒)の効率が高ければ、帯電試料分子36を得る効率も高くなり、分析感度が上昇する。
本実施例では、脱溶媒を促進させる方策として、赤外レーザ光源20で発生した赤外レーザを光ファイバ28などの導光路でイオン化室10に導いて試料微粒子に照射し、試料微粒子の温度を上昇させる。赤外レーザの波長は、試料微粒子33に含まれる溶媒が吸収する波長を選択するのが好ましい。液体クロマトグラフの典型的な条件として、C18カラムを用い、溶媒25(A)を水、溶媒26(B)をアセトニトリルとし、溶媒A:溶媒Bの混合比率を9:1から1:9に直線的に変化させるグラジエント条件でLC分離を行う場合、水の吸収帯にあたる波長の赤外レーザが利用可能である。水は波長3μm付近に強い吸収帯を持つため、波長3μmの赤外レーザを用いると効率よく加熱できる。また、3μmの吸収ピークよりも吸光係数は小さいが、水は1μmから100μmに全体的に吸収がある。従って、1μm以上100μm以下の範囲に発振波長を有する赤外レーザを用いてもよく、例えばEr:YAGレーザ(2.9μm)、CO2レーザ(10.6μm)、その他半導体レーザ、ファイバレーザなどが利用可能である。一方、アセトニトリルは7.0μm付近に比較的強い吸収ピークがあり、3.2μm、4.3μm、9.5μm、13.4μmにも吸収ピークがある。従って、発振波長としてこれらの波長を含むレーザが利用可能である。
溶媒グラジエント条件の全時間で溶媒によるレーザ吸収による加熱効率を一定に保つには、単一のレーザを使用する場合には、レーザの出力を調整する。例えば水の吸収波長3μmのレーザを用いる場合、水の含有比率が低下するに従ってレーザ出力が上昇するようにプログラムするといった方法が考えられる。パルスレーザの場合は、レーザの出力調整はパルス周期を変えることで行うことができる。複数の波長のレーザを用い、水の吸収波長3μmとアセトニトリルの吸収波長7μmの両方を照射しておくと、溶媒混合比率が変化しても脱溶媒効率を一定に保てる。また、光源は赤外レーザの代わりに赤外ランプを用いても良い。赤外ランプからは連続した波長の赤外光が得られることから、レーザ加熱と比較すると特定の波長の熱量では劣るものの、各種溶媒の吸収波長に対応することができる。いずれの光源の場合も、脱溶媒に用いる光は光ファイバなどの導光路を介してイオン化室10のスプレーチップ16の先端付近に導いて試料微粒子に照射する。
光ファイバ28の先端部は、図2に示すように、例えば0.01mmの精度で位置を調整できるxyzステージからなる位置調整器32に固定して位置調整し、また、レーザ光の広がりはレンズ31で調整する。図3に示すように、スプレーチップ先端17は、直径1〜50μm程度の開口部を持ち、チップの内面43は試料溶液と接しており、開口部には試料溶液の液面39が形成される。試料溶液の液面39からイオン化室10内の空間に、直径0.1〜10μm程度の試料微粒子33が放出される。レーザ光の位置、向き、及び広がりは、レーザ光がスプレーチップ先端17には照射されず、試料微粒子33か試料微粒子40に照射されるように設定する。これにより、試料微粒子に含まれる溶媒が赤外光を吸収して熱を発生し、溶媒の気化(脱溶媒)が促進される。また、スプレーチップ16とその中の試料溶液に直接レーザ光を当てないので、スプレーチップ先端17やスプレーチップ16中の溶出液24にレーザ光が当たって過熱し、スプレーチップ先端17で溶出液24が突沸してイオン化が不安定となる現象を防止することができる。スプレーチップの材質は一般的なSUSやシリカ等でよく、低コストで製造可能である。
また、レンズ31と光ファイバ先端29を試料微粒子噴霧範囲34の外に設置することで、光ファイバ先端29に試料微粒子33が付着し汚染されてレーザ光の透過率が低下することを防止できる。
また、レーザ光が細孔38から差動排気部11、さらに質量分析部12に入り、検出器23に到達した場合、ノイズとして検出されて質量分析スペクトルの質が低下する恐れがある。そこで、光ファイバ先端29の位置と向き、及び、レーザ光の広がりを調整してレーザ光が検出器23に入らないようにすることで、ノイズとして検出されるのを防ぐことができる。
イオン化室10には噴霧された試料溶液の溶媒蒸気が充満している。これをポンプ41で排気し0.01atm程度まで減圧してもよい。すなわち、イオン化室10を0.01atm以上1atm以下の圧力範囲とすることで、溶媒蒸気の分圧が下がって脱溶媒が促進される。
一方、レーザ光はイオン化室10に充満した溶媒蒸気により吸収され減衰するという問題がある。そのため、光ファイバ先端29はなるべく試料に近い位置に配置する方が、脱溶媒効率が向上する。LCでは溶媒として水を用いることが多いため、以下に水蒸気によるレーザ光の吸収を見積もる。光の透過率は、吸光係数k(cm-1atm-1)、入射光量I0、透過光量I、水蒸気の分圧P(atm)、光路長L(cm)を用いて次式で与えられる。
I/I0=exp(−kPL)
波長3μmにおける水蒸気の吸光係数kはおよそ1cm-1atm-1である。以上から、P=1atmにおける各光路長での波長3μmの光の透過率を計算すると、次のようになる。
光路長 透過率
100mm 5×10-5
50mm 7×10-3
20mm 0.1
10mm 0.4
2mm 0.8
つまり、光ファイバ先端29と試料微粒子33との距離を20mm以下にすることで、入射したレーザ光のエネルギーの10%を脱溶媒に利用することができる。さらに10mm以下にすることで、入射したレーザ光のエネルギーの40%を、より望ましくは2mm以下にすることで80%を、脱溶媒に利用することができる。このように、光ファイバ先端29と試料微粒子噴霧範囲34との距離を短くすることで、レーザ光のエネルギーを効率よく脱溶媒に利用できる。ちなみに、光ファイバを使わずに、ESIで噴霧した試料液滴に赤外光を含む光を照射する従来例の場合、光源から試料液滴までの距離は50mm程度であり、この場合の透過率は7×10-3と見積もられる。これから分かるように、従来の光照射方法は、脱溶媒に利用されるべき光エネルギーのほとんどがイオン化室10の雰囲気に吸収されてしまうため、効率の悪い方法であった。
図3に示すように、ESIでは、流量や電圧の適切な条件下では、試料液体表面39はスプレーチップ先端にTaylorコーンと呼ばれる円錐を形成する。このTaylorコーンの先端から対極に向かって試料微粒子44のジェット放出が発生し(コーン-ジェットモード)、この液滴はさらに微細な液滴33に分裂し、微細液滴はクーロン反発で空間的に広がったプルームを形成する。したがって光のエネルギーを効率よく脱溶媒に用いるためには、試料微粒子が空間的に広がっていないジェット部分か、液滴が分裂し始めるジェットとプルームの境界にあたる空間領域にレーザを照射するとよい。ジェット部分の長さは、スプレー先端径や流量に依存してTaylorコーン先端から0.01〜2mm程度の長さをとり、この部分にジェットの長さと同程度の直径のレーザスポットを照射するのが最も効率的である。ただし、装置の振動等によりスプレーチップ先端と光ファイバ先端の位置関係は測定中に0.1mm程度変動する可能性がある。したがって、振動による変位によりレーザ光がスプレー先端に当たってスプレーが不安定化することを防ぐためには、スプレー先端とレーザ照射範囲35には最低0.1mm以上の距離があることが望ましい。また、スプレーチップ先端径や流量に依存するが、プルームの空間的広がりの直径は、スプレーチップ先端から5mmの距離で1〜10mm程度の値をとるので、プルームにレーザ照射する場合にはこの微粒子広がりの直径と同程度の広がりを持たせたレーザ光を照射することで、効率よく脱溶媒を行うことができる。
さらに、加熱した乾燥不活性ガス(脱溶媒ガス)をガス導入管30によってイオン化室10に導入し、試料微粒子に接触させることで、脱溶媒効率を向上することができ、また、スプレーチップ先端17からの放電を抑制してイオン化を安定させることができる。
[実施例1]
図4、図5は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸を直角の位置関係に配置した例を示す模式図である。図4は光軸に平行な方向から見た模式図、図5は光軸に垂直な方向から見た模式図である。
図4に示すように、本実施例ではスプレーチップ16の中心軸と光ファイバ28の中心軸の角度が直角となるように配置した。レーザ照射位置と照射幅を調整して、レーザ光照射範囲35を照射位置における試料微粒子噴霧範囲34と同程度の幅とすることで、レーザ光を無駄なく試料微粒子に照射することができる。
試料微粒子の空間的広がりの小さいジェット部分にレーザを照射する場合、ジェット径は典型的には50μm程度と微小なため、レーザのビーム径もレンズで同程度に絞り、例えばスプレーチップ先端17から1mmの部分に照射する。試料微粒子の空間的広がりは、噴霧直後のジェット部分の方が、その後のプルームに比べて小さいことから、ジェット状の試料微粒子に絞ってレーザ光を照射する方がレーザ光の吸収効率は高くなるため、レーザ照射範囲35とスプレーチップ先端との最短距離d1は0.01mm以上、10mm以下、好ましくは0.1mm〜5mmの範囲内が望ましい。本実施例ではd1=1.0mmとした。スプレーチップ先端17はレーザ照射範囲35の外にあり、チップ先端の過熱を防止している。図5に示すように、レーザ光照射範囲35と試料微粒子噴霧範囲34の直径が同程度となるようにしてレーザ光を照射することで、レーザ光のエネルギーを無駄なく試料微粒子の脱溶媒に利用することができる。
光ファイバ先端29は試料微粒子噴霧範囲34の外にあり、光ファイバ先端29と試料微粒子噴霧範囲34の最近接距離d2は10mmとした。光路長が短い方がレーザ光の減衰率が小さく、効率よく試料微粒子を加熱できるため、この最近接距離d2は0.1〜20mm程度が望ましく、より好ましくは0.1mm以上、10mm以下、更に好ましくは0.1mm以上、2mm以下の範囲とするのがよい。
一方、微細なスプレージェットに絞って集光したレーザ光を照射する場合、レーザ光軸又はレーザ光の焦点位置や、スプレーチップ16の軸が0.1mmずれればレーザが試料に当たる量が大きく変化するため、非常に精密な光軸調整が必要となり、また、長時間の分析中に位置が変動した場合は感度が大きく変動することになる。そこで、レーザ径を故意に1mm程度に広げる、焦点をずらして照射する、あるいは試料プルームに照射することにより、スプレーチップや光ファイバの変位による感度変動を防止することができる。ただし、試料へのレーザ照射効率を確保するためには、プルームの広がりが小さい部分へ照射する方が好ましく、レーザ照射範囲35はスプレーチップ先端17から5mmの範囲内、最大で10mm以内が望ましい。スプレーチップ先端17から10mmの距離でのプルームの幅は20mm程度であり光ファイバ先端29が試料と接触しないようにすべきこと、また、光路長が短い方がレーザ光の減衰率が小さいため、スプレーチップ先端17と光ファイバ先端29の距離を出来るだけ小さくすべきことを考慮すると、この直交配置ではスプレーチップ先端17と光ファイバ先端29の距離はおよそ15mm必要である。
また、光ファイバ28の軸は細孔38の軸と直交となる設置関係とすることで、レーザ光を検出器に入れないようにすることができる。
[実施例2]
図6は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸を鈍角の位置関係に配置した例を示す模式図である。
スプレーチップ16の外側にはスプレーチップ16と同軸のステンレス管58があり、ステンレス管内59に不活性ガスとして200℃に加熱した窒素を流量2L/分で流し、脱溶媒の促進と放電の抑制を行った。
光ファイバ28の先端29が振動等で動くとレーザ光の照射位置が変化して安定した測定ができないので、これを防止するために、光ファイバ先端29付近は位置調整器32のxyzステージに固定されている。光ファイバ先端29は試料微粒子噴霧範囲34の外にあり、光ファイバ先端29と試料微粒子噴霧範囲34の最近接距離d2は10mmである。
スプレーチップ先端17はレーザ照射範囲35の外にあり、スプレーチップ先端17とレーザ照射範囲35の最近接距離d1は1.0mmであり、この位置でスプレーの広がりである0.5mmと同径のレーザビームを照射している。
図6では、スプレーの広がり角が30度であり、光ファイバ28が試料微粒子噴霧範囲34に広がる試料微粒子と接触しないためには、スプレーチップ16の軸と光ファイバ28の軸の間の角度は165度以下とする必要がある。スプレー広がり角が大きい場合は、スプレーチップの中心軸と光ファイバの中心軸の間の角度をもっと小さくする必要がある。このように、スプレーチップ16の中心軸と光ファイバ28の中心軸の角度を鈍角とすることで、ステンレス管58と位置調整器32が干渉することなく、噴霧直後の試料微粒子にレーザ光を照射することができる。
[実施例3]
図7は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、スプレーチップの軸と光ファイバの軸が鋭角の位置関係にある例を示す模式図である。
スプレーチップ16の中心軸と光ファイバ28の中心軸のなす角度を鋭角とすることで、試料微粒子噴霧範囲34が大きい場合でも、光ファイバ先端29が試料微粒子に汚染されずにレーザ光を照射することができる。スプレーチップ16の中心軸と光ファイバ28の中心軸は平行でもよい。図には光ファイバ28を2本配置した例を示したが、光ファイバ28は1本だけでもよい。
スプレーチップ16の中心軸と光ファイバ28の中心軸のなす角度が小さいと、試料微粒子噴霧範囲34の一部にだけレーザ光が照射されることになる。そこで、複数の光ファイバをスプレーチップ16の中心軸に対して鋭角に配置した構成とすることで、照射範囲を広げることができる。このとき、各ファイバからのレーザ光が交差しないよう、各々の光軸を同一平面上に置かない配置とすることで、より広い噴霧範囲の試料微粒子にレーザ光を照射することができる。
[実施例4]
図8は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、光ファイバが円筒状である例を示す模式図である。
本実施例では、中空のチューブ状光ファイバ61に、その内径よりも小さい外径をもつスプレーチップ16が挿入されている。光ファイバ先端62から、円環状にレーザ光が放出される。スプレーチップ先端17と光ファイバ先端62の距離を調整することで、噴霧された試料に対するレーザ光の照射範囲が調節できる。また、光ファイバ先端62の端面に角度を持たせることで、レーザ光の放出方向を調節できる。
また、中空の円筒状光ファイバ61とスプレーチップ16との間の空間に脱溶媒ガス63として例えば300℃に加熱した窒素ガスを通気することで、さらに脱溶媒を促進し、光ファイバ先端62に試料微粒子が接触するのを防止することができる。この構成は、スプレーチップ、脱溶媒ガス導入管、光ファイバが一体となっており、小さい設置スペースで済むことから、イオン源の空間が狭く光ファイバの導入が困難な場合でも、試料微粒子噴霧範囲34の近くから効率よくレーザ光を照射することができる。
[実施例5]
図9は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、スプレーチップが細孔に向けられた位置関係にある例を示す模式図である。
脱溶媒効率が高く、試料微粒子が全て気化する場合には、試料微粒子が検出器に到達してノイズを発生する心配がない。この場合には、スプレーチップ16を、細孔38に直接向けた構成にすると、生成した試料イオンの細孔38への取り込み効率が上がるため、測定感度が向上する。このとき、レーザ照射範囲35に細孔38が入らないような配置にすることで、レーザ光が検出器に入ってノイズとして検出されるのを防止できる。
試料溶液の流量が10〜1000nL/分といったナノ流量の場合は、スプレーチップ先端17と細孔38の距離を1mm程度まで近づけることで感度が高くなる。従って、レーザ照射範囲35は直径0.5mm以下のビームに絞り、スプレーチップ先端17とレーザ照射範囲35の最近接距離は0.1〜0.4mmの範囲の何れかの値に設定することで、レーザ光がスプレーチップ先端17と細孔38に当たらず試料微粒子にのみ照射され、ナノ流量の場合にもレーザ光による脱溶媒を安定して行うことができる。
[実施例6]
図10は、本発明を用いたESIイオン源の一例として、スプレーチップが複数ある例を示す模式図である。
先端径が1μm以下の小さいスプレーチップを用いて低流量で噴霧を行うと、直径の小さい試料微粒子が生成し脱溶媒しやすいことから、イオン化効率が向上することが知られている。試料溶液の流量が大きい場合は、流路を分岐し、小さいスプレーチップ16を複数接続して噴霧することができる。それぞれのスプレーチップ16の外側にステンレス管58を設置して間に脱溶媒ガスを流してもよい。
複数のスプレーチップ16から噴霧される試料微粒子にレーザ光を照射する場合、光ファイバ28は1つでもよい。一方、光ファイバ先端29から近いスプレーチップと遠いスプレーチップの間でレーザ照射量が異なって脱溶媒効率に差が生じる場合には、光ファイバ28を複数用いて別方向から照射することにより、安定した脱溶媒を行うことができる。
このとき、2本の光ファイバの光軸が一致すると、対向する光ファイバにレーザ光が進入してレーザ光源の損傷を引起す恐れがあるので、光軸をずらして設置するのがよい。
[実施例7]
図11は、本発明を用いたAPCI(大気圧化学イオン化)イオン源の一例を示す模式図である。
APCIには、ESIではイオン化できない極性の低い物質、例えばアルカン類などをイオン化できるという利点がある。スプレーチップ16には電圧をかけずに、イオン化室内に試料溶液を噴霧し、帯電していない試料微粒子を生成する。これに、光ファイバ28を用いてレーザ光を照射し、試料微粒子の脱溶媒を促進することにより、気相試料分子を得る。APCIの針電極80と細孔38の間に高電圧電源81から電圧を印加し、コロナ放電により生じた気相イオンと、前述の気相試料分子とのイオン分子反応により、気相試料分子はイオン化される。生成した気相試料分子イオンは、細孔38より差動排気室へ取り込まれる。この構成では、スプレーチップは微粒子化装置、APCIの針電極はイオン化装置として機能する。
この構成により、ESIではイオン化せず、APCIではイオン化する物質の分析を行うことができる。本実施例におけるスプレーチップ16と光ファイバ28の位置関係などの条件は、他の実施例と同様である。
[実施例8]
図12は、本発明を用いたAPCIイオン源の一例として、試料の微粒子化装置として超音波霧化器を用いる例を示す模式図である。
液体試料91は超音波振動子92の上に置かれており、超音波による霧化により、試料微粒子97を生成する。この場合、超音波振動子は試料保持部と微粒子化装置を兼ねる。霧化方法は、ガスを吹きつけるなど、他の方法でもよい。試料微粒子97に光ファイバ28でレーザ光を照射して脱溶媒を行い、電荷を持たない中性の気相試料分子98を生じさせる。APCIの針電極80と細孔38の間に高電圧電源81から高電圧を印加してコロナ放電を生じることで生成した気相イオンと、気相試料分子98とのイオン分子反応により、気相試料分子98はイオン化される。光ファイバ先端29と試料微粒子噴霧範囲96の最近接距離d3は0.1mm以上20mmの範囲とするのが好ましく、本実施例では10mm程度である。また、試料91の表面とレーザ照射範囲35の最近接距離d4は0.01mm以上10mm以下が好ましく、0.1mm以上5mm以下とするのがより好ましい。本実施例のd4は1mm程度であり、レーザ光は液体試料91、超音波振動子92のいずれにも照射しないようにする。この位置関係により、光ファイバ先端29が試料に汚染されることなく、また、試料91が突沸して飛散することなく、高効率の脱溶媒を行うことができる。このとき、光ファイバ先端29と超音波振動子92との最近接距離は1mm以上20mm以下とするのが好ましく、本実施例では約5mmであった。
本実施例の構成により、板上に滴下したスポット状の液体試料についても、光ファイバを用いた効率的な脱溶媒により高イオン化効率を得ることができる。また、粉体などの固体試料にも適用できる。
イオン化の方法としては、APCIの他に、光エネルギーにより試料分子やマトリックスを励起してイオン化を行うAPPI(大気圧光イオン化)、交流電場による誘電体バリヤー放電により生じる気相イオンを気相試料分子と反応させてイオン化を行う誘電体バリヤー放電イオン化など、他の手段を用いてもよい。目的とする試料の化学的性質に応じてイオン化法を選択することで、分析の感度を向上することができる。
[実施例9]
図13は、本発明を用いたESIイオン源の一例を示す模式図である。
LC又はシリンジポンプなどから送液される、流量10μL/分から1mL/分程度の試料は、スプレーチップ16aから大気圧部126にスプレーされ、試料がイオン化される。一方、流路125には試料を一定の比率で分岐するフロースプリッタ124が設置されている。流路125からフロースプリッタ124を介して流路123に100nL/分程度の低流量で分岐された試料はスプレーチップ16bから低真空部127にスプレーされ、ESIでイオン化される。イオン化された試料は低真空部127よりも圧力の低い真空部128に移動し、質量分析される。スプレーチップ16bは、先端内径1〜10μm程度と小さいナノ流量向けのものを用いる。
レーザ光源20で発生した赤外光は光ファイバ122を通り、途中で分岐して大気圧部126及び低真空部127に導入され、スプレーに照射されて脱溶媒効率を向上する。図13には、2つのイオン源が質量分析部に対して直列に接続された例を示しているが、2つのイオン源は並列に接続してもよい。この構成により、1台のレーザ光源で複数のイオン源の脱溶媒効率向上を行うことができる。
また、高流量で大気圧イオン化を行う場合と低流量で低真空イオン化を行う場合が同程度の感度である場合は、両方のイオン源で同時にイオン化を行って感度を2倍に向上させることができる。反対に、高流量で大気圧イオン化を行う場合と低流量で低真空イオン化を行う場合でどちらか一方の感度が他方に比較して10倍以上高い場合は、スプリッタ124を選択バルブに置き換え、感度の高い方のイオン源を選択して用いることができる。
[実施例10]
図14は、本発明を用いたESIイオン源の一例を示す模式図である。
ESIのスプレーチップ16からは試料溶液が10μL/分でスプレーされており、試料溶液とすり鉢形状の対向電極155間には3kVの電圧が印加されている。スプレーチップ16の外側は2重管141が取り巻いており、外側の管と内側の管の間に加熱ガスとして200℃の炭酸ガスを流量1L/分で流して、脱溶媒促進とスプレーの広がり抑制を行っている。赤外レーザ光源(ツリウムファイバレーザ、波長1.94μm、出力0.5W)から発生された赤外レーザは、光ファイバ149から直径6mmの平行光として出射されて直径12mmの石英平凸レンズ147に入り、焦点距離100mmで集光される。焦点での光の広がり直径は64μmである。赤外レーザの光軸とスプレーチップ16の軸143は点pで交差し、赤外レーザの焦点がp付近にくるよう、位置調整器32のxyzステージを用いて光ファイバ149を位置調整する。このとき、可視光レーザを赤外レーザと同じ光路から入射することで、位置調整が容易になる。
焦点距離が長いレンズを用いた方が、焦点位置からずれた場所での光の広がり度合いが小さく、位置調整しやすい。しかし、長距離からスプレーに照射すると空間中の水蒸気等により赤外光が吸収されてしまうため、これを防ぐ手段が必要である。そこで本実施例では、光ファイバ149の先端とレンズ147をステンレス管146内に固定し、管出口に石英製の赤外透過窓151を設けてステンレス管146を密閉した。そして、管内部150に乾燥空気を封入し、外部の水蒸気が管内部150に入って赤外レーザの透過を妨げることがない導光路とした。
ステンレス管146の外径は20mmであり、スプレーチップ16の中心軸とステンレス管146の中心軸のなす角度は45度、赤外透過窓151の表面から点pまでの距離はおよそ15mm、スプレーチップ先端17と点pの間の距離は1mmとした。ステンレス管146はこのような直管の他に、先端の外径を10mm以下となるようにした先細りの形状としてもよい。管先端外径を小さくすれば、赤外透過窓151の表面から焦点pまでの距離を10mm以下に近づけることができ、赤外レーザが溶媒蒸気により吸収される率を下げることができる。
また、本実施例ではイオン化室144は大気圧であるが、0.01atm程度まで減圧することで、同様に赤外レーザが溶媒蒸気により吸収される率を下げることができる。圧力は0.01atm以下では放電しやすくなりイオン化が不安定となるので望ましくない。
赤外レーザがスプレーに照射される場所は、スプレーのジェットとプルームの境領域と推測されるが、通常のイオン源にはスプレー広がりを測定する機構が備わっていない場合が多い。そこで、赤外レーザを光軸方向に、焦点を点pから離して行くように移動させて、スプレーへのレーザ照射径を大きくしていきながら、質量分析の試料ピーク強度をモニターし、最も感度のよいレーザ位置を探すことで、スプレー広がりに対する最適なレーザ照射径を見出すことができる。赤外透過窓151とスプレーチップ先端17との距離は、位置調整に必要な尤度として最低1mm必要である。また、スプレーチップ先端17からの距離0.1〜10mmの部分に0.1mm程度の径のレーザを照射すること、赤外透過窓151から点pまでは20mm以下が望ましい。また、本実施例ではスプレーチップの中心軸143とレーザ光の軸のなす角度は45度としているが、10度〜80度程度であれば、スプレーチップ16、ステンレス管146、対向電極155の干渉を避けられる。以上から、スプレーチップ先端17と赤外透過窓151との最近接距離は、1mmから20mmの範囲で設置される。距離1mmまで近づける場合はスプレーチップ先端17とステンレス管146との間で放電する可能性があるので、管の材質は絶縁体を用いた方がよい。
以上のような構成により、溶媒蒸気による赤外レーザの吸収による減衰を防止しながら、レーザ照射位置の最適化を容易に行うことができる。
[実施例11]
図15は、本発明を用いた質量分析システムの一例を示す概略図である。
本実施例の質量分析システムは、コンピュータ101、LC40、イオン源103、質量分析部12、レーザ光源20を備える。
コンピュータ101は、LC40に流量、溶媒組成、試料量などのLCパラメータ110を、質量分析部12に質量範囲、分離時間、電圧などの質量分析パラメータ107を、イオン源103に電圧、温度、ガス流量などのイオン源パラメータ109を、レーザ光源20に波長、出力などのレーザパラメータ106を送る。また、試料の種類やLCメソッドに応じ、適切なレーザ光の波長や出力を設定する。例えば、溶媒の種類や組成に応じて波長を選択する、熱分解しやすい試料が溶出する時間はレーザ光を切る、試料溶液の流量が大きい場合は出力を大きくする、といった設定を行う。質量分析部12で検出された質量分析データ108はコンピュータ101に送られて解析される。
図16は、本実施例の質量分析システムによる制御シーケンスの一例を示す図である。
LC溶媒は、水:アセトニトリル=90:10から0:100まで10分間で直線的にグラジエントをかけ、ESIイオン源において水に吸収ピークのある、波長1.9μmの連続発振の赤外レーザを照射している。波長1.9μmで水の吸光係数はおよそ100cm-1であり、水100%の溶媒では、液体表面から深さ1/100cm=0.1mm程度まで光が透過・吸収されるので、直径0.1mm程度の液滴であれば、液滴全体を均一に加熱することができる。レーザ光源20の出力はコンピュータ101から外部制御でき、グラジエント溶離中は水の比率が低下するに応じて出力を上昇させる。また、水素結合で形成される複合分子など、赤外光照射により解離する物質が溶出する時間や、平衡化時間などの分析を行わない時間には、出力を低下させる。
図16に示した例では、時間5分に光分解性物質が溶出するので、保持時間の変動±0.1分を加味して、4.9〜5.1分でレーザ出力を20%まで低下させている。また、時間11分で試料の溶出が終わるので、11分以降はレーザ出力を5%まで低下させ、16分で次の分析に備えて初期出力値に戻る。
この構成により、分析目的にあわせた最適なレーザ照射をプログラムして実行することができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
10…イオン化室
11…差動排気部
12…質量分析部
16…スプレーチップ
22…量分離装置
23…検出器
28…光ファイバ
30…ガス導入管
31…レンズ
32…位置調整器
33…試料微粒子
34…試料微粒子噴霧範囲
35…レーザ照射範囲
38…細孔
58…ステンレス管
61…チューブ状光ファイバ
80…針電極
91…液体試料
92…超音波振動子
96…試料微粒子噴霧範囲
144…イオン化室
146…ステンレス管
149…光ファイバ
151…赤外透過窓
155…対向電極

Claims (22)

  1. 物質をイオン化するイオン化装置であって、
    目的物質を含む試料を保持する試料保持部と、
    前記試料保持部に保持された試料を試料微粒子にする微粒子化装置と、
    光源と、
    前記光源の光を前記微粒子化装置によって発生された試料微粒子に導き照射する導光路とを備え、
    前記試料微粒子が存在する空間範囲と前記導光路の先端との最近接距離が0.1mm以上20mm以下であり、
    前記導光路による光の照射範囲と、前記試料の表面、前記微粒子化装置、前記試料保持部のいずれか最も近いものとの最近接距離が0.01mm以上10mm以下である、イオン化装置。
  2. 前記試料微粒子が存在する空間範囲と、前記導光路の先端との最近接距離が0.1mm以上10mm以下である、請求項1のイオン化装置。
  3. 前記試料微粒子が存在する空間範囲と、前記導光路の先端との最近接距離が0.1mm以上2mm以下である、請求項1のイオン化装置。
  4. 前記光の照射範囲と、前記試料の表面、前記微粒子化装置及び前記試料保持部のいずれか最も近いものとの最近接距離が0.1mm以上5mm以下である、請求項1のイオン化装置。
  5. 前記微粒子化装置は液体試料を噴霧することで微粒子化する、請求項1のイオン化装置。
  6. 前記微粒子化装置はエレクトロスプレーである、請求項1のイオン化装置。
  7. コロナ放電により生じる気相イオンを、前記試料微粒子から生成した気相試料分子と反応させることによりイオン化する、請求項1のイオン化装置。
  8. 誘電体バリヤー放電により生じる気相イオンを、前記試料微粒子から生成した気相試料分子と反応させることによりイオン化する、請求項1のイオン化装置。
  9. 前記試料微粒子の周囲に脱溶媒ガスを導入するためのガス導入部を有する、請求項1のイオン化装置。
  10. イオン化された試料を質量分離装置、イオン移動度計又は高電界非対称波形イオン移動度計に送って検出する、請求項1のイオン化装置。
  11. 前記導光路の先端部を固定し、前記導光路と前記試料、前記試料保持部又は前記微粒子化装置との位置関係を調整する位置調整器を備える、請求項1のイオン化装置。
  12. 前記導光路は光ファイバである、請求項1のイオン化装置。
  13. 前記光ファイバを複数備える、請求項12のイオン化装置。
  14. 前記光ファイバは中空である、請求項12のイオン化装置。
  15. 前記中空の光ファイバの中に脱溶媒ガスを通気する、請求項14のイオン化装置。
  16. 前記光源は赤外レーザ光源である、請求項1のイオン化装置。
  17. 前記赤外レーザの波長は1μm以上100μm以下である、請求項16のイオン化装置。
  18. 前記微粒子化装置は0.01atm以上1atm以下の圧力範囲にある、請求項1のイオン化装置。
  19. 前記液体試料を噴霧する微粒子化装置が複数ある、請求項1のイオン化装置。
  20. 前記光の照射範囲から、前記質量分離装置、前記イオン移動度計又は前記高電界非対称波形イオン移動度計のイオン検出器が外れている、請求項10のイオン化装置。
  21. 複数のイオン化室を備え、単一の前記光源から、複数の前記導光路を通じて光を前記複数のイオン化室へ導入する、請求項1のイオン化装置。
  22. 物質をイオン化するイオン化装置であって、
    目的物質を含む試料を保持する試料保持部と、
    前記試料保持部に保持された試料を試料微粒子にする微粒子化装置と、
    光源と、
    前記光源の光を前記微粒子化装置によって発生された試料微粒子に導き照射する導光路とを備え、
    前記微粒子化装置と前記導光路の先端との最近接距離が1mm以上20mm以下である、イオン化装置。
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