JPWO2017090599A1 - 傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイス - Google Patents

傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイス Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、高いガスバリアー性を有する傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイスを提供することである。
本発明の傾斜組成膜は、遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする。

Description

本発明は傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイスに関し、より詳しくは、高いガスバリアー性を有する傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイスに関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(以下、「EL」ともいう。)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」ともいう。)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として応用されている。
特に近年では、薄型・軽量なガスバリアー層を有する樹脂基材を用いたフレキシブルな有機EL素子が注目されており、曲面を有する意匠性の高い光源として応用されている。
しかしながら、有機EL素子に曲げモーメントを加えることで、有機EL素子を構成する層間にずり応力が発生し、層の剥離を惹き起してしまうことが問題となっており、屈曲時においても層間の剥離が発生しない有機EL素子が求められており、様々な検討がなされている。
一つの方法として、ガラス基板にガスバリアー層を形成した後、樹脂基材へ剥離転写する方法が検討されている(特許文献1参照。)。しかしながら、この方法で検討されているガスバリアー層は、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)で形成された組成の異なる層の多層積層であり、また、近年求められる水蒸気透過率(Water Vaper Transmission Rate、以降WVTRともいう。)が、25℃・90%RHの環境下で、1×10−6g/(m・24h)レベルの高いガスバリアー性を得るためには総厚が非常に厚く、さらに非常に長い製膜時間を要するという問題がある。また、層が厚いことから、小径で繰り返し曲げた際に、ガスバリアー層にクラックが入る等、ガスバリアー性が劣化する懸念のあることが分かった。したがって、より薄い膜厚で非常に高いガスバリアー性が得られるガスバリアー層が望まれていた。
特開2015−173249号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、高いガスバリアー性を有する傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイスを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、表面から厚さ方向に変化するEDS(エネルギー分散型X線分析)ライン分析によって得られる検出強度曲線において、遷移金属と非遷移金属とを同時に検出し、遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することにより、高いガスバリアー性が得られることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする傾斜組成膜。
2.前記遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるA領域と、前記非遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるB領域との中間領域に、前記傾斜領域を有することを特徴とする第1項に記載の傾斜組成膜。
3.前記傾斜領域が、さらに酸素を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の傾斜組成膜。
4.前記傾斜領域が、さらに窒素を含有することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
5.前記非遷移金属が、ケイ素であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
6.前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
7.前記傾斜領域の厚さが、5nm以上であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
8.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜を具備していることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
9.第8項に記載のガスバリアー性フィルムを具備していることを特徴とする電子デバイス。
10.有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする第9項に記載の電子デバイス。
本発明の上記手段により、高いガスバリアー性を有する傾斜組成膜、それを具備しているガスバリアー性フィルム及び電子デバイスを提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
非遷移金属(M1)を金属の主成分とする領域をB領域とし、遷移金属(M2)を金属の主成分とする領域をA領域とした時に、B領域とA領域とを特定条件下で積層すると、非遷移金属(M1)をA領域へ、遷移金属(M2)をB領域へと拡散させることができ、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)とが共存する領域を形成できることがわかった。また、この領域は、厚さ方向において、非遷移金属(M1)の含有比率が増加すると同時に遷移金属(M2)の含有比率が減少する傾斜組成を有していることがわかった。これは、非遷移金属(M1)同士の結合や遷移金属(M2)同士の結合よりも、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との結合が生じやすいことに起因して生じた現象であると考えられ、この傾斜組成を有する傾斜領域において、非遷移金属(M1)と遷移金属(M2)との直接的な結合を含む高密度な構造が形成され、このため高いガスバリアー性が得られたものと考えられる。
また、本発明においては、傾斜組成膜の透明性を向上させる観点から、傾斜領域がさらに酸素を含有することが好ましい態様である。
さらに、本発明者が鋭意検討した結果、ガスバリアー性向上させる観点から、傾斜領域が、さらに酸素と窒素とを含有することが特に好ましい態様であることを見出した。
これらの態様は、前記A領域に酸素や窒素を含有させること、及び前記B領域に酸素や窒素を含有させることの両方、又はいずれか一方で達成することができる。
剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 剥離方法を説明する図 実施例1で作製した傾斜組成膜1の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜1の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜2の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜2の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜3の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜3の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜4の検出強度曲線 実施例1で作製した傾斜組成膜4の検出強度曲線
本発明の傾斜組成膜は、遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項10までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるA領域と、前記非遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるB領域との中間領域に、前記傾斜領域を有することが好ましい。
さらに、本発明においては、傾斜領域がさらに酸素を含有することが好ましく、酸素と窒素とを含有することがさらに好ましい。傾斜領域に酸素が含有されることにより、いっそうのガスバリアー性向上効果が得られ、特に、酸素と窒素とが含有されることにより、著しいガスバリアー性向上効果が得られる。
前記非遷移金属が、ケイ素であることが、ガスバリアー性向上や透明性向上の効果が得られることから、好ましい。
また、前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることが、ガスバリアー性向上や高温高湿耐久性向上の効果が得られることから、好ましい。
また、前記傾斜領域の厚さが、5nm以上であることが、ガスバリアー性向上の効果が得られることから、好ましい。
本発明の傾斜組成膜はガスバリアー性フィルムに好ましく具備され得る。
ガスバリアー性フィルムは、電子デバイスに具備され得る。
上記電子デバイスは、有機エレクトロルミネッセンス素子を具備し得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《本発明の傾斜組成膜の概要》
本発明の傾斜組成膜は、遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする。
本発明の実施形態としては、前記傾斜組成膜が、前記A領域と、前記B領域との中間領域に、前記傾斜領域を有する態様のガスバリアー性フィルムであることが好ましい。
また、本発明の傾斜組成膜を基材上に具備するガスバリアー性フィルムのガスバリアー性は、樹脂基材上に当該傾斜組成膜を形成させたガスバリアー性フィルムで測定した際、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10−3cm/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下、の高ガスバリアー性であることが好ましい。より好ましくは、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−5g/(m・24h)以下であることである。
ガスバリアー層の層厚は、特に制限されないが、5〜1000nmの範囲内であることが好ましい。このような範囲であれば、高いガスバリアー性能、折り曲げ耐性、断裁加工適性に優れる。また、ガスバリアー層は隣接する2層以上から構成されてもよい。
[傾斜組成膜を構成する領域]
本発明の傾斜組成膜を構成する領域について説明するが、以下において使用する技術用語の定義について予め説明する。
本願において、「領域」とは、傾斜組成膜の厚さ方向に対して略垂直な面(すなわち当該傾斜組成膜の最表面に平行な面)で当該傾斜組成膜を一定又は任意の厚さで分割したときに形成される対向する二つの面の間の三次元的範囲内(領域)をいい、当該領域内の構成成分の組成は厚さ方向において、本発明で規定する傾斜組成を少なくとも有する。
「構成成分」とは、傾斜組成膜の特定領域を構成する化合物及び金属若しくは非金属の単体をいう。
「主成分」とは、本発明に適用するEDSライン分析において、検出強度が最も高い元素の構成成分をいう。
以下、各領域について詳細な説明をする。
<遷移金属含有領域:A領域>
遷移金属含有領域であるA領域とは、遷移金属を金属の主成分として含有する領域をいう。
遷移金属(M2)としては、特に制限されず、任意の遷移金属が単独で又は組み合わせて用いられうる。ここで、遷移金属とは、長周期型周期表の第3族元素から第11族元素を指し、遷移金属としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、及びAuなどが挙げられる。
なかでも、良好なガスバリアー性が得られる遷移金属(M2)としては、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられる。これらのなかでも、種々の検討結果から、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、傾斜組成膜に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすく、緻密な構造を形成しやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
特に遷移金属(M2)が第5族元素(特に、Nb)であって、上述した非遷移金属(M1)がSiであると、著しいガスバリアー性の向上効果が得られる。これは、Siと第5族元素(特に、Nb)との結合が特に生じやすいためであると考えられる。さらに、光学特性の観点から、遷移金属(M2)は、透明性が良好な化合物が得られるNb、Taが特に好ましい。
A領域は、さらに酸素を含有していることが好ましく、さらに酸素及び窒素を含有していることが特に好ましい。また、炭素やその他元素を含有していても良い。
<非遷移金属含有領域:B領域>
非遷移金属含有領域であるB領域とは、非遷移金属を金属の主成分として含有する領域をいう。
非遷移金属としては、長周期型周期表の第12族〜第14族の金属から選択される非遷移金属が好ましい。当該非遷移金属(M1)としては、特に制限されず、第12族〜第14族の任意の金属が単独で又は組み合わせて用いられうるが、例えば、Si、Al、Zn、In及びSnなどが挙げられる。なかでも、当該非遷移金属(M1)として、Si、Sn又はZnを含むことが好ましく、Siを含むことがより好ましく、Si単独であることが特に好ましい。
B領域は、さらに酸素を含有していることが好ましく、さらに窒素や炭素を含有していてもよい。また、その他元素を含有していても良い。
B領域は、さらに酸素を含有していることが好ましく、さらに酸素及び窒素を含有していることが特に好ましい。また、炭素やその他元素を含有していても良い。
<傾斜領域>
傾斜領域とは、傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる遷移金属と非遷移金属の検出強度を、厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、遷移金属の検出強度が増加し、かつ、非遷移金属の検出強度が減少する領域をいう。
なお、本発明において良好なガスバリアー性が得られる観点から、傾斜領域の厚さは、5nm以上であることが好ましく、ガスバリアー性と生産性との両立の観点から、5〜100nmの範囲内であることがより好ましく、7〜50nmの範囲内であることがさらに好ましい。
また、傾斜領域は、酸素を含有していることが好ましく、さらに窒素や炭素を含有していてもよい。また、その他元素を含有していても良い。
上述したような構成を有する傾斜組成膜は、有機EL素子等の電子デバイス用のガスバリアー層として適用可能な非常に高いガスバリアー性を示す。
《EDSライン分析》
本発明の傾斜組成膜は、遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする。
EDS(Energy Dispersive X−ray Spectoroscopy:エネルギー分散型X線分析装置)ライン分析は、高速高感度で精度よく元素を検出できる特徴を有する。具体的には、試料として、FIB加工によって厚さ60nm程度の薄膜に加工した断面観察用試料を用いる。傾斜組成膜を形成する基材に関しては特に制限はないが、このような薄膜試料を作製するためには、傾斜組成膜を剛性の高い基材上に形成した試料を用いることが好ましく、具体的には、Siウエハ基材やガラス基材上に傾斜組成膜を形成した試料を用いることが好ましい。次に、原子分解能分析電子顕微鏡:JEM−ARM200F(JEOL製)を用いて加速電圧:200.0kVの条件で試料断面のEDSライン分析を行い、ガスバリアー層の傾斜組成膜を含む範囲において、目的とする元素の厚さ方向に変化する検出強度曲線を得る。ここで、上記の検出強度曲線は、縦軸に各元素の検出強度、横軸に厚さ方向の距離をプロットしたものである。厚さ方向の測定点の間隔は、2nm以下の間隔とすることが好ましい。また、本発明においては、ノイズ成分を除去するため、測定した検出強度曲線の生データから波長5nm未満の波長成分を除去したものを検出強度曲線として用いている。
波長5nm未満の波長成分を除去は、フーリエ解析(高速フーリエ変換)を用いることで行うことができる。具体的には、例えば、マイクロソフト社製の市販の表計算ソフト・エクセル(登録商標)のデータ分析機能である分析ツールのフーリエ解析を用いて計算することができる。
本発明において、元素の検出は、遷移金属の含有量の少ない表面から遷移金属の含有量の多い表面に向かって厚さ方向に行う。
検出強度の増加及び減少は、上記のノイズ成分除去処理を行った検出強度曲線において行う。増加、減少は一定の範囲を超える増加を意味し、減少は、当該一定の範囲を下回る減少を意味する。ここで一定の範囲とは、各元素の最大検出強度に対して20%以上の強度の範囲内で連続して増加又は減少する領域をいう。
後述する実施例に記載の図2A及び図2Bに傾斜組成膜の厚さ方向の各元素の強度をEDSライン分析法により分析した検出強度曲線の一例を示す。
図2Aは、厚さ方向にプロットしたSi、Nb及びOの波長5nm未満の波長成分を除去する前の検出強度曲線であり、図2Bは、波長5nm未満の波長成分を除去した検出強度曲線である。このとき、傾斜領域は、図2Bのように、13nmと求めることができる。
<樹脂基材>
本発明の傾斜組成膜を樹脂基材上に具備することにより、ガスバリアー性フィルムとすることができる。樹脂基材としては、後述する一般的なプラスチックフィルムを用いることができる。傾斜組成膜は、直接樹脂基材上に形成することができる。また、ガラス等の無機基材上に形成した後、プラスチックフィルム上に剥離転写して形成することもできる。
用いられるプラスチックフィルムは、下地層、ガスバリアー層等を保持できるフィルムであれば材質、厚さ等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
樹脂基材の厚さは5〜500μm程度が好ましく、更に好ましくは15〜250μmである。
その他、基材の種類、基材の製造方法等については、特開2013−226758号公報の段落「0125」〜「0136」に開示されている技術を適宜採用することができる。
<遷移金属含有領域:A領域の形成>
本発明に係る遷移金属(M2)は、前述のとおり良好なガスバリアー性が得られる観点から、Nb、Ta、V、Zr、Ti、Hf、Y、La、Ce等が挙げられ、これらの中でも、特に第5族元素であるNb、Ta、Vが、傾斜組成膜に含有される非遷移金属(M1)に対する結合が生じやすいと考えられるため、好ましく用いることができる。
前記遷移金属(M2)を含有する層の形成は、特に限定されず、例えば、既存の薄膜堆積技術を利用した従来公知の気相成膜法を用いることが、傾斜領域を効率的に形成する観点から好ましい。
これらの気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により形成することがより好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロンスパッタリング(DMS)、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリングなどを単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、DCパルススパッタリング、ACスパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。
また、金属モードと、酸化物モードとの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることができる。遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、A領域に、酸素や、窒素、炭素を含有させることができる。スパッタ法における成膜条件としては、真空度、磁力、印加電力、放電電流、放電電圧、プロセスガス供給量、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、層厚等に応じて適宜選択することができる。
スパッタ法は、遷移金属(M2)の単体又はその酸化物とを含む複数のスパッタリングターゲットを用いた多元同時スパッタであってもよい。これらのスパッタリングターゲットを作製する方法や、これらのスパッタリングターゲットを用いていわゆる複合酸化物からなる薄膜を作製する方法については、例えば、特開2000−160331号公報、特開2004−068109号公報、特開2013−047361号公報などの記載が適宜参照されうる。そして、共蒸着法を実施する際の成膜条件としては、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件が例示され、これらの成膜条件(好ましくは、酸素分圧)を調節することによって、組成を制御することができる。
<非遷移金属含有領域:B領域の形成>
本発明に係るガスバリアー層において、非遷移金属(M1)を含有するB領域を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、気相成膜法は公知の方法で用いることができる。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法、イオンアシスト蒸着法等の物理気相成長(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapordeposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法などの化学気相成長(CVD)法が挙げられる。なかでも、機能性素子へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、物理気相成長(PVD)法により形成することが好ましく、スパッタ法により、非遷移金属をターゲットとして用いて形成することができる。
また、他の方法としては、非遷移金属としてSiを含むポリシラザン含有塗布液を用いて、湿式塗布法により形成する方法も、好ましい方法の一つである。
(ポリシラザン)
本発明において用いられる「ポリシラザン」とは、構造内にケイ素−窒素結合を持つポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
ポリシラザンとしては、特開平8−112879号公報に記載されているような、比較的低温で酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び/又は酸窒化ケイ素に変性するポリシラザンを好ましく用いることができる。
かようなポリシラザンとしては、下記の構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 2017090599
式中、R、R及びRは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又はアルコキシ基を表す。R、R及びRは、それぞれ、同じであっても又は異なるものであってもよい。
本発明では、得られる傾斜組成膜の、膜としての緻密性の観点からは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザン(PHPS)が特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより、下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。
用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
なお、パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び/又は8員環を中心とする環構造とが共存した構造を有していると推定されている。
ポリシラザンの分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。
これらのポリシラザン化合物は有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン化合物含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
(ポリシラザンを含有する塗布液)
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。かような有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等、目的にあわせて選択し、複数の有機溶剤を混合してもよい。
ポリシラザンを含有する塗布液におけるポリシラザンの濃度は、目的とする第1のガスバリアー層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
また、ポリシラザンを含有する塗布液には、酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び/又は酸窒化ケイ素への変性を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。例えば、市販品としてのAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNAX120−20、NN120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140のような触媒が含まれるポリシラザン溶液を用いることができる。また、これらの市販品は単独で使用されてもよく、2種以上混合して使用されてもよい。
なお、ポリシラザンを含有する塗布液中において、触媒の添加量は、触媒による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けるため、ポリシラザンに対して2質量%以下に調整することが好ましい。
ポリシラザンを含有する塗布液には、ポリシラザン以外にも無機前駆体化合物を含有させることができる。ポリシラザン以外の無機前駆体化合物としては、塗布液の調製が可能であれば特に限定はされない。例えば、特開2011−143577号公報の段落「0110」〜「0114」に記載のポリシラザン以外の化合物が適宜採用されうる。
(添加元素)
ポリシラザンを含有する塗布液には、Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することができる。Si以外の金属元素の有機金属化合物を添加することで、塗布乾燥過程において、ポリシラザンのN原子とO原子との置き換わりが促進され、塗布乾燥後にSiOに近い安定した組成へと変化させることができる。
Si以外の金属元素の例としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、ゲルマニウム(Ge)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、コバルト(Co)、ホウ素(B)、ベリリウム(Be)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、タリウム(Tl)等が挙げられる。
特に、Al、B、Ti及びZrが好ましく、中でもAlを含む有機金属化合物が好ましい。
本発明に適用可能なアルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムイソポロポキシド、アルミニウム−sec−ブチレート、チタンイソプロポキシド、アルミニウムトリエチレート、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリtert−ブチレート、アルミニウムトリn−ブチレート、アルミニウムトリsec−ブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロピレートモノアルミニウム−t−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムオキシドイソプロポキシドトリマー等を挙げることができる。
具体的な市販品としては、例えば、AMD(アルミニウムジイソプロピレートモノsec−ブチレート)、ASBD(アルミニウムセカンダリーブチレート)、ALCH(アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、ALCH−TR(アルミニウムトリスエチルアセトアセテート)、アルミキレートM(アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレート)、アルミキレートD(アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート)、アルミキレートA(W)(アルミニウムトリスアセチルアセトネート)(以上、川研ファインケミカル株式会社製)、プレンアクト(登録商標)AL−M(アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、味の素ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
なお、これらの化合物を用いる場合は、ポリシラザンを含む塗布液と不活性ガス雰囲気下で混合することが好ましい。これらの化合物が大気中の水分や酸素と反応し、激しく酸化が進むことを抑制するためである。また、これらの化合物とポリシラザンとを混合する場合は、30〜100℃に昇温し、撹拌しながら1分〜24時間保持することが好ましい。
本発明に係るガスバリアー性フィルムを構成するポリシラザン含有層における上記添加金属元素の含有量は、ケイ素(Si)の含有量100mol%に対して0.05〜10mol%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5mol%である。
<傾斜領域の形成>
傾斜領域形成方法としては、前述したように、A領域及びB領域を形成する際に、各々の形成条件を適宜調整して、A領域とB領域との中間領域に傾斜領域を形成する方法が好ましい。
B領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記非遷移金属(M1)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで傾斜領域を形成することができる。
B領域を上述した塗布成膜法により形成する場合は、例えば、前記非遷移金属(M1)を含有する成膜原料種(ポリシラザン種等)、触媒種、触媒含有量、塗布膜厚、乾燥温度・時間、改質方法、改質条件からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで傾斜領域を形成することができる。
A領域を上述した気相成膜法により形成する場合は、例えば、成膜原料における前記遷移金属(M2)と酸素との比率、成膜時の不活性ガスと反応性ガスとの比率、成膜時のガスの供給量、成膜時の真空度、成膜時の磁力、及び、成膜時の電力からなる群から選択される1種又は2種以上の条件を調節することで傾斜領域を形成することができる。
なお、上記した方法によって、傾斜領域の厚さを制御するには、A領域及びB領域を形成する方法の形成条件を適宜調整して、制御することができる。例えば、A領域を気相成膜法で形成する際には、成膜時間を制御することにより所望の厚さにすることができる。
<傾斜組成膜の転写方法>
本発明の傾斜組成膜は、特開2015−173249号公報に記載されている剥離方法ように、ガラス等の基板上に剥離層を介して被剥離層として形成し、その後、被剥離層をプラスチックフィルムに転写して、ガスバリアー性フィルムとして機能させることもできる。また、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子等の電子デバイスに転写して、封止層として機能させることもできる。
このような傾斜組成膜の形成方法は、特に、軽量、薄型、又は可撓性を有する電子デバイスに、薄膜のガスバリアー層や封止層を形成する工程のクリーン度を管理し易くし、デバイスの歩留まりを向上させる観点から好ましい。
具体的には、基板上に、剥離層を形成する第1の工程と、前記剥離層上に、前記剥離層と接する第1の層を含み、かつ、本発明の傾斜組成膜を含む被剥離層を形成する第2の工程と、前記剥離層と前記被剥離層とを分離する第3の工程と、を有する剥離方法により傾斜組成膜を転写可能な被剥離層として形成することが好ましい。第2の工程と第3の工程のあいだに剥離の起点を形成する工程を設けても良い。
以下に剥離方法の一例を図に示す
<剥離方法>
はじめに、第1の工程として、作製基板101上に厚さ10nm未満の剥離層103を形成し、次いで第2の工程として、剥離層103上に被剥離層105を形成する(図1A)。ここでは、島状の剥離層を形成する例を示したがこれに限られない。また、被剥離層105を島状に形成してもよい。
この工程では、作製基板101から被剥離層105を剥離する際に、作製基板101と剥離層103の界面、剥離層103と被剥離層105の界面、又は剥離層103中で剥離が生じるような材料を選択する。本実施の形態では、被剥離層105と剥離層103の界面で剥離が生じる場合を例示するが、剥離層103や被剥離層105に用いる材料の組み合わせによってはこれに限られない。なお、被剥離層105が積層構造である場合、剥離層103と接する層を特に第1の層と記す。
剥離層103の厚さは、例えば、10nm未満、好ましくは8nm以下、より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm以下とすればよい。剥離層103が薄いほど剥離の歩留まりを向上でき好ましい。また、剥離層103の厚さは、例えば、0.1nm以上、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上とすればよい。剥離層103が厚いほど厚さの均一な膜を成膜でき好ましい。例えば、剥離層103の厚さは1nm以上8nm以下が好ましい。本実施の形態では、厚さ5nmのタングステン膜を用いる。
なお、剥離層103の厚さは、一例としては、層の全体にわたって、上記のような厚さであることが望ましい。ただし、本発明の実施形態の一態様は、これに限定されない。例えば、剥離層103は、少なくとも一部において、上記のような厚さの領域を有していてもよい。又は、剥離層103は、望ましくは、剥離層の50%以上の領域において、より望ましくは、剥離層の90%以上の領域において、上記のような厚さの領域を有していてもよい。つまり、本発明の一態様では、剥離層103の一部に厚さが0.1mm未満の領域や、10nm以上の領域を有していてもよい。
作製基板101には、少なくとも作製工程中の処理温度に耐えうる耐熱性を有する基板を用いる。作製基板101としては、例えばガラス基板、石英基板、サファイア基板、半導体基板、セラミック基板、金属基板、樹脂基板、プラスチック基板などを用いることができる。
なお、量産性を向上させるため、作製基板101として大型のガラス基板を用いることが好ましい。例えば、第3世代(550mm×650mm)、第3.5世代(600mm×720mm、又は620mm×750mm)、第4世代(680mm×880mm、又は730mm×920mm)、第5世代(1100mm×1300mm)、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×2800mm、2450mm×3050mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等のガラス基板、又はこれよりも大型のガラス基板を用いることができる。
作製基板101にガラス基板を用いる場合、作製基板101と剥離層103との間に、下地膜として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜を形成すると、ガラス基板からの汚染を防止でき、好ましい。
剥離層103は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、シリコンから選択された元素、該元素を含む合金材料、又は該元素を含む化合物材料等を用いて形成できる。シリコンを含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶、多結晶のいずれでもよい。また、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、In−Ga−Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。剥離層103に、タングステン、チタン、モリブデンなどの高融点金属材料を用いると、被剥離層105の形成工程の自由度が高まるため好ましい。
剥離層103は、例えばスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法(スピンコーティング法、液滴吐出法、ディスペンス法等を含む)、印刷法、蒸着法等により形成できる。
剥離層103が単層構造の場合、タングステン膜、モリブデン膜、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む膜を形成することが好ましい。また、タングステンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜、モリブデンの酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物もしくは酸化窒化物を含む膜を形成してもよい。なお、タングステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する。例えば、Mo:W=3:1[原子数比]、Mo:W=1:1[原子数比]、又はMo:W=1:3[原子数比]などのモリブデンとタングステンの合金膜を用いてもよい。また、モリブデンとタングステンの合金膜は、例えば、Mo:W=49:51[質量%]、Mo:W=61:39[質量%]、Mo:W=14.8:85.2[質量%]の組成の金属ターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。
タングステン膜の表面状態を変えることにより、剥離層103と後に形成される被剥離層との密着性を制御することが可能である。例えば、タングステンを含む膜の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、亜酸化窒素(NO)プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶液での処理等を行ってタングステンの酸化物を含む膜を形成してもよい。またプラズマ処理や加熱処理は、酸素、窒素、亜酸化窒素単独、あるいは該ガスとその他のガスとの混合気体雰囲気下で行ってもよい。
本発明の一態様では、厚さ10nm未満のタングステン膜を用いることで、第3の工程において、小さい剥離力で容易に剥離を行うことができるため、上記プラズマ処理や加熱処理を行わなくてもよい。これにより、剥離工程、さらには装置の作製工程を簡略化でき好ましい。
被剥離層105としては、剥離層103上に接する本発明の傾斜組成膜を含むガスバリアー層を作製する。さらに、傾斜組成膜を含むガスバリアー層上に機能素子を作製してもよい。
次に、被剥離層105と基板109とを接合層107を用いて貼り合わせ、接合層107を硬化させる(図1B)。ここで、図1Bは図1Cにおける一点鎖線A1−A2間の断面図に相当する。なお、図1Cは、基板109(図示しない)側から見た平面図である。
ここで、接合層107は剥離層103及び被剥離層105と重なるように配置することが好ましい。そして、図1B、図1Cに示すように、接合層107の端部は、剥離層103の端部よりも外側に位置しないことが好ましい。
次に、レーザ光の照射により、剥離の起点を形成する(剥離の起点を形成する工程)(図1B、図1D)。
レーザ光の照射を用いることで、剥離の起点を形成するために基板の切断等をする必要がなく、ゴミ等の発生を抑制でき、好ましい。
レーザ光は、硬化状態の接合層107と、被剥離層105と、剥離層103とが重なる領域に対して照射する(図1Bの矢印P1参照)。
レーザ光は、どちらの基板側から照射してもよいが、散乱した光が機能素子等に照射されることを抑制するため、剥離層103が設けられた作製基板101側から照射することが好ましい。なお、レーザ光を照射する側の基板は、該レーザ光を透過する材料を用いる。
少なくとも第1の層(被剥離層105に含まれる、剥離層103と接する層)にクラックを入れる(膜割れやひびを生じさせる)ことで、第1の層の一部を除去し、剥離の起点を形成できる(図1Dの点線で囲った領域参照)。このとき、第1の層だけでなく、被剥離層105の他の層や、剥離層103、接合層107の一部を除去してもよい。レーザ光の照射によって、膜の一部を溶解、蒸発、又は熱的に破壊することができる。また、剥離の起点の形成方法は問わない。少なくとも第1の層の一部が剥離層から剥離されればよく、第1の層の一部を除去しなくてもよい。
剥離工程時、剥離の起点に、被剥離層105と剥離層103を引き離す力が集中することが好ましいため、硬化状態の接合層107の中央部よりも端部近傍に剥離の起点を形成することが好ましい。特に、端部近傍の中でも、辺部近傍に比べて、角部近傍に剥離の起点を形成することが好ましい。
また、接合層107の端部近傍に連続的もしくは断続的にレーザ光を照射することで、実線状もしくは破線状に剥離の起点を形成すると、剥離が容易となるため好ましい。
剥離の起点を形成するために用いるレーザには特に限定はない。例えば、連続発振型のレーザやパルス発振型のレーザを用いることができる。レーザ光の照射条件(周波数、パワー密度、エネルギー密度、ビームプロファイル等)は、作製基板101や剥離層103の厚さ、材料等を考慮して適宜制御する。
そして、形成した剥離の起点から、被剥離層105と作製基板101とを分離する(図1E、図1F)。これにより、被剥離層105を作製基板101から基板109に転置することができる。このとき、一方の基板を吸着ステージ等に固定することが好ましい。例えば、作製基板101を吸着ステージに固定し、作製基板101から被剥離層105を剥離してもよい。また、基板109を吸着ステージに固定し、基板109から作製基板101を剥離してもよい。なお、剥離の起点よりも外側に形成された接合層107は、作製基板101又は基板109の少なくとも一方に残存することになる。図1E、図1Fでは双方の側に残存する例を示すがこれに限られない。
例えば、剥離の起点から、物理的な力(人間の手や治具で引き剥がす処理や、ローラーを回転させながら分離する処理等)によって被剥離層105と作製基板101とを分離すればよい。
また、剥離層103と被剥離層105との界面に水などの液体を浸透させて作製基板101と被剥離層105とを分離してもよい。毛細管現象により液体が剥離層103と被剥離層105の間にしみこむことで、容易に分離することができる。また、剥離時に生じる静電気が、被剥離層105に含まれる機能素子に悪影響を及ぼすこと(半導体素子が静電気により破壊されるなど)を抑制できる。なお、液体を霧状又は蒸気にして吹き付けてもよい。液体としては、純水や有機溶剤などを用いることができ、中性、アルカリ性、もしくは酸性の水溶液や、塩が溶けている水溶液などを用いてもよい。
なお、剥離後に、基板109上に残った、被剥離層105と基板109との接着に寄与していない接合層107を除去してもよい。除去することで、後の工程で機能素子に悪影響を及ぼすこと(不純物の混入など)を抑制でき好ましい。例えば、ふき取り、洗浄等によって、不要な樹脂を除去することができる。以上に示した本発明の一態様の剥離方法では、レーザ光の照射により剥離の起点を形成し、剥離層103と被剥離層105とを剥離しやすい状態にしてから、剥離を行う。これにより、剥離工程の歩留まりを向上させることができる。
<電子デバイス>
本発明のガスバリアー性フィルムは、優れたガスバリアー性及び透明性を示し、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスに用いられるガスバリアー性フィルム及びこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
特に、上記したような転写方法で形成したガスバリアー層を有するガスバリアー性フィルムは、優れた耐屈曲性をも有する。このため、耐屈曲性を付与した電子デバイスにも好ましく使用することができる。
本発明の電子デバイスに用いられる電子デバイス本体の例としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)、液晶表示素子(LCD)、薄膜トランジスタ、タッチパネル、電子ペーパー、太陽電池(PV)等を挙げることができる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子デバイス本体は有機EL素子又は太陽電池が好ましく、有機EL素子がより好ましい。
<有機EL素子>
本発明の傾斜組成膜を適用する電子デバイスの代表例である有機EL素子は、例えば、透明基材上に、陽極、第1有機機能層群、発光層、第2有機機能層群、陰極が積層されて構成されている。第1有機機能層群は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層等から構成され、第2有機機能層群は、例えば、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層等から構成されている。第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ1層のみで構成されていても良いし、第1有機機能層群及び第2有機機能層群はそれぞれ設けられていなくても良い。
以下に、有機EL素子の構成の代表例を示す。
(i)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層/
陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(vi)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極
更に、有機EL素子は、非発光性の中間層を有していても良い。中間層は電荷発生層であっても良く、マルチフォトンユニット構成であっても良い。
本発明に適用可能な有機EL素子の概要については、例えば、特開2013−157634号公報、特開2013−168552号公報、特開2013−177361号公報、特開2013−187211号公報、特開2013−191644号公報、特開2013−191804号公報、特開2013−225678号公報、特開2013−235994号公報、特開2013−243234号公報、特開2013−243236号公報、特開2013−242366号公報、特開2013−243371号公報、特開2013−245179号公報、特開2014−003249号公報、特開2014−003299号公報、特開2014−013910号公報、特開2014−017493号公報、特開2014−017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
[実施例1]
《剥離層形成基板の作製》
50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)上に厚さ約200nmの酸化窒化シリコン膜を下地膜として形成した。酸化窒化シリコン膜は、プラズマCVD法にて、シランガスとNOガスの流量をそれぞれ10sccm、1200sccmとし、電源電力30W、圧力22Pa、基板温度330℃の条件で形成した。
次に、下地膜上にタングステン膜を剥離層として形成した。タングステン膜の厚さは30nmとした。タングステン膜は、スパッタリング法にて、Arガスの流量を100sccmとし、電源電力60kW、圧力2Pa、基板温度100℃の条件で形成した。
次に、亜酸化窒素(NO)プラズマ処理を行った。NOプラズマ処理は、NOガスの流量を100sccmとし、電源電力500W、圧力100Pa、基板温度330℃、240秒間の条件で行った。
《傾斜組成膜試料、及び、比較試料の作製》
〔試料1の作製〕
前記作製した剥離層形成基板の剥離層上にスパッタ法により、厚さ150nmとなるように製膜時間を設定し、第1層(B領域)として、酸化ケイ素層を形成した。スパッタ装置としては、マグネトロンスパッタ装置(キャノンアネルバ社製:型式EB1100)を用いた。ターゲットとして、市販の多結晶シリコンターゲットを用いた。プロセスガスにはArとOとを用いて、RF方式による成膜を行った。スパッタ電源パワーは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。
次いで、同じスパッタ装置を用いて、第2層(A領域)として、酸化ケイ素層上に、厚さ30nmとなるように製膜時間を設定し、酸化ニオブ層を形成した。ターゲットとして、市販の酸素欠損型酸化ニオブターゲット(Nb1229)を用いた。プロセスガスにはArとOとを用い、O分圧を12%として、DC方式による成膜を行った。スパッタ電源パワーは5.0W/cmとし、成膜圧力は0.4Paとした。このようにして、試料1を得た。
〔試料2の作製〕
前記作製した剥離層形成基板の剥離層上に、下記に示すようなポリシラザンを含む塗布液を塗布して塗布膜を形成した後、真空紫外線照射による改質を行って、第1層として、厚さ150nmのポリシラザン含有層を形成した。
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで希釈し、固形分5質量%の塗布液を調製した。
上記樹脂基材上に、第2層として、スピンコート法により塗布液を下記表1に示す乾燥膜厚になるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次いで、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプを有する真空紫外線照射装置を用い、照射エネルギーを5J/cmとした条件で真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
次いで、ポリシラザン含有層上に、厚さ20nmとなるように製膜時間を設定した以外は、試料1と同様にして、酸化ニオブ層を形成した。このようにして、試料2を得た。
〔試料3の作製〕
真空紫外線照射処理を行わなかった以外は、試料2と同様にして、試料3を得た。
〔試料4の作製〕
ポリシラザンを含む塗布液を下記のように変更した以外は、試料3と同様にして、試料4を得た。
パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらにジブチルエーテルで固形分濃度が5質量%となるように希釈した液Aを調製した。塗布液の調整はグローブボックス内で行った。次に、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレートをジブチルエーテルで固形分濃度が5質量%となるように希釈したアルミニウム化合物液Bを作製した。Siとアルミニウム化合物液Bとを、Al/Si原子比率が0.01となるように混合し、攪拌しながら80℃まで昇温し、80℃で2時間保持した後、室温(25℃)まで徐冷した。このようにして、固形分5質量%の塗布液を調製した。
〔試料5の作製〕
酸化ニオブ層を形成せず、酸化ケイ素層の厚さが200nmとなるように製膜時間を設定した以外は、試料1と同様にして、試料5を得た。
〔試料6の作製〕
酸化ニオブ層を形成しなかった以外は、試料3と同様にして、試料6を得た。
〔試料7の作製〕
酸化ニオブ層を酸化ケイ素層に変えた以外は、試料3と同様にして、試料7を得た。酸化ケイ素層は試料1の作製方法に従い、酸化ケイ素層の厚さが20nmとなるように製膜時間を設定した。
なお、それぞれの層の厚さは、あらかじめ、スパッタ時間と形成される層の厚さの検量線を求め、スパッタの製膜時間を調整して、それぞれの層の厚さになるよう製膜した。
〔試料8の作製〕
酸化ケイ素層を形成せず、酸化ニオブ層の厚さが100nmとなるように製膜時間を設定した以外は、試料1と同様にして、試料8を得た。
《傾斜組成膜の検出強度曲線》
上記作製したガラス基板上の傾斜組成膜(ガスバリアー層)の非常に薄い切片(厚さ約60nm)を作製し、原子分解能分析電子顕微鏡:ARM200F(JEOL製)を用いて加速電圧:200.0kVの条件でEDSライン分析を行った。測定は、全膜厚に対して、厚さ方向に2nm以下の間隔で測定した。
その結果、各元素の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する各元素の検出強度曲線として得た。
試料1〜4の各検出強度曲線を図2A〜図5Bに示す。それぞれ図に対してAを付した図は上記方法で測定したデータ処理前のデータであり、Bを付した図はAを付した図に対して、厚さ方向に2nm以下の間隔で測定し、かつ、波長5nm未満の波長成分を除去した検出強度曲線である。図A〜図5Bより試料1〜4には、5nm以上の傾斜領域のあることがわかる。また図には示さないが、試料5〜8には傾斜領域は無かった。
なお、図2A〜図5Bでは、第2層の表面が、図では左端になる測定例で傾斜領域が存在する部分を示した。また、それぞれのBを付した図の酸素の強度は割愛した。
以上の結果と各試料の構成とを表1に示す。
〈Ca法によるガスバリアー性の評価〉
下記のようにして作製したCa法評価試料を40℃90%RH環境に500時間まで保存し、この間、一定時間ごとに透過濃度(任意の4点の平均)を測定した。透過濃度の初期値と、その経時変化の傾きから、水蒸気透過率(単位:g/(m・24h))を算出した。結果を表1に示した。
〔Ca法評価試料の作製〕
封止樹脂層として両面に剥離フィルムを有する厚さ20μm熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmを用意した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
次に、50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。Ca蒸着後のガラス板をグローブボックス内に取り出した。
次に、上記作製した傾斜組成膜を含む各試料の被剥離層を形成したガラス板をグローブボックス内に入れ、真空ラミネート装置を用いて、Ca蒸着ガラス板のCa蒸着面と各試料の被剥離層とが対向するようにして、剥離フィルムを除去したシート状接着剤で貼り合せた。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にCa蒸着ガラス板を下にして置き、30分間硬化させた。
次いで、傾斜組成膜を含む被剥離層の剥離処理を行った。具体的には、被剥離層を形成したガラス板側からレーザ光を照射して剥離の起点を形成し、剥離層と被剥離層とが剥離しやすい状態にしてから、剥離を行った。
次いで、被剥離層の表面に、保護フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U403))を日東電工社製の25μm厚の透明粘着剤シートを用いて貼り合せ、Ca法評価試料を得た。
Figure 2017090599
表1から本発明の傾斜組成膜1〜4を具備したガスバリアー性フィルムは、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板や、封止フィルムとして適用可能なレベルの、非常に優れたガスバリアー性を有していることが分かる。特に、傾斜領域に酸素及び窒素を含有する傾斜組成膜2〜4を具備したガスバリアー性フィルムは、その中でも著しく優れたガスバリアー性を有していることが分かる。
本発明の傾斜組成膜は、高いガスバリアー性を有し、ガスバリアー性フィルム及びそれを具備した電子デバイスに好適に適用することができる。
101 作製基板
103 剥離層
105 被剥離層
107 接合層
109 基板

Claims (10)

  1. 遷移金属と、非遷移金属とを含有する傾斜組成膜であって、前記傾斜組成膜の断面のEDSライン分析によって得られる前記遷移金属と非遷移金属の検出強度を、表面から厚さ方向に変化する検出強度曲線として測定したとき、前記遷移金属の検出強度が増加し、かつ、前記非遷移金属の検出強度が減少する傾斜領域を有することを特徴とする傾斜組成膜。
  2. 前記遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるA領域と、前記非遷移金属を金属の主成分として含有する領域であるB領域との中間領域に、前記傾斜領域を有することを特徴とする請求項1に記載の傾斜組成膜。
  3. 前記傾斜領域が、さらに酸素を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の傾斜組成膜。
  4. 前記傾斜領域が、さらに窒素を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
  5. 前記非遷移金属が、ケイ素であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
  6. 前記遷移金属が、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、及びバナジウム(V)から選択されることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
  7. 前記傾斜領域の厚さが、5nm以上であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜。
  8. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の傾斜組成膜を具備していることを特徴とするガスバリアー性フィルム。
  9. 請求項8に記載のガスバリアー性フィルムを具備していることを特徴とする電子デバイス。
  10. 有機エレクトロルミネッセンス素子を具備していることを特徴とする請求項9に記載の電子デバイス。
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