JPWO2017081802A1 - モリブデンの分離方法及び、含銅モリブデン鉱の処理方法 - Google Patents

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Abstract

この発明のモリブデンの分離方法は、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液から、モリブデンを分離する方法であって、前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるとともに、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、当該鉄イオンの少なくとも一部を、鉄化合物として析出させ、酸性溶液中のモリブデンイオンを固体として析出させて、モリブデンを分離する。

Description

この発明は、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液からモリブデンを分離させる方法及び、銅を含有するモリブデン鉱を処理する方法に関するものであり、特には、銅とモリブデンを含む原料を浸出する等して得られた酸性溶液からモリブデンを分離させて回収するに当り、モリブデンの回収率の向上に寄与することのできる技術を提案するものである。
モリブデンは、鉄鋼・特殊鋼分野ではステンレス鋼、構造用合金鋼、高張力鋼、合金工具鋼、鋳鍛鋼、スーパーアロイ等に添加され、また、化学分野では触媒及び薬品類や皮革の染料として用いられることがある。その他にもモリブデンは、金属分野でモリブデン線、機械加工品、組立部品の形態に加工されたり、加工品としてマグネトロン部品、半導体部品、電子管用部品等に用いられたりすることもある。
そして近年は、資源の有効活用の観点より、このような使用済の電子部品等の原料から各種金属を回収する際に、電子部品のスクラップを浸出させた酸性溶液にモリブデンが含まれる場合があり、このモリブデンを有効に分離・回収することが望まれている。
また、モリブデンは輝水鉛鉱(molybdenite,MoS2)(硫化モリブデン)、モリブデン鉛鉱(wulfenite,PbMoO4)(モリブデン酸鉛)、パウエライト(Ca(Mo,W)O4)、鉄水鉛鉱(Fe2(MoO43・nH2O)等の鉱石中に存在しており、これらの中でも輝水鉛鉱の工業的な利用が進んでいる。
輝水鉛鉱は銅の硫化物とともに産出されることが多く、この輝水鉛鉱から、浮遊選鉱により銅とモリブデンを選別するが、それによって回収したモリブデン精鉱中には一般に数%の銅の硫化物が混在している。これを、モリブデンの主要用途である鉄鋼添加剤に用いた場合は、銅が鉄鋼製品の性状を低下させることから、予めモリブデン精鉱から銅を除く必要がある。
含銅モリブデン精鉱から銅を分離回収する方法としては従来、非特許文献1、特許文献1、2に記載されているような、いわゆる塩化鉄法が知られている。この方法では、含銅モリブデン精鉱を、Fe3+イオンを120g/L程度含有する浸出液を用いて110℃程度に加熱したオートクレーブ内で浸出処理することで、銅を優先的に浸出させ、モリブデンと銅を分離して脱銅モリブデン精鉱を得る。このように銅を浸出させた後の脱銅モリブデン精鉱は、モリブデン製錬プロセスに供される。一方、銅浸出で得られた浸出後液中の銅は、鉄屑などと反応させてセメント銅(Cu品位90%程度)を沈殿させるセメンテーション法によって回収される。
特許文献1では、モリブデン精鉱に高温高圧下で塩化鉄溶液及び塩素ガスを供給して、銅や鉛などの不純物を除去する方法が記載されている。
特許文献2には、モリブデン精鉱から銅や鉛などの不純物を除去するために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩化物を含有する水溶液を浸出液として用いる方法が開示されている。
なお特許文献3は、銅を含む硫化鉱から銅を分離回収する方法について記載されたものであるが、ここでは、塩化浴で特別な酸化剤や特別な装置を使用することなく空気の使用のみによって、硫化銅鉱中の銅を98%以上浸出し回収することが記載されている。より詳細には、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩化物及び臭化物と、銅と鉄の塩化物もしくは銅と鉄の臭化物を含む酸性溶液(以下「酸性溶液」という)に銅鉱物を添加し、大気圧下かつ水溶液沸点以下において酸性溶液に空気を吹き込みつつ、酸性溶液中の鉄イオンもしくは銅イオンの一方あるいは両方の酸化力により原料から銅を一価銅及び二価銅として浸出させる。次いで、固液分離を行い、この固液分離後の溶液に空気を吹き込んで、溶液中の銅を酸化し、かつ原料から酸性溶液に浸出された鉄及び不純物を共沈させる。その後、共沈物を含む沈澱物を分離した酸化後液から銅を抽出するとともに、抽出した銅は硫酸溶液中に硫酸銅として回収し、この硫酸銅溶液より銅を回収する。銅の抽出時に生成する酸は、銅の浸出に繰り返し用いることが記載されている。
米国特許第4500496号明細書 米国特許第3674424号明細書 特開2009−256764号公報
平成24年度成果報告 「モリブデン、タングステン 最近の選鉱技術動向」(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
非特許文献1や特許文献1及び2に記載されているような塩化鉄法では、銅の浸出処理時に、比較的多くのモリブデンが、銅と一緒に浸出されて浸出後液に含まれることが解かった。
このことは、特許文献2の表Vに、銅を浸出除去した浸出後液に含まれるモリブデンの濃度が0.26〜5.1g/Lと記載されており、その平均が1.42g/Lと比較的高いことからも解かる。特に、特許文献2に記載されたこの試験では、銅含有量が0.2〜1.0重量%と低いモリブデン精鉱を用いており、それよりも銅含有量が5%程度と多い一般的な含銅モリブデン精鉱では、浸出後液に含まれて回収されないモリブデンの量はさらに増加することが予想される。
そして、上記の特許文献等に記載の方法では、浸出後液に浸出したモリブデンが回収されないことから、モリブデンの回収率が低いものとなる。
それ故、かかる塩化鉄法でモリブデンの回収率を高めるためには、含銅モリブデン鉱等の原料から浸出後液に溶出したモリブデンを効果的に回収することが必要である。
一方、特許文献3に記載された方法は、塩化浴を用いて硫化銅鉱から銅を浸出するものであって、モリブデンを回収する点については何ら着目されていないが、この方法を、含銅モリブデン鉱等の原料からのモリブデンの回収に適用した場合もまた、銅の浸出後の浸出後液に、僅かながらモリブデンが含まれることが解かった。
この場合であっても、モリブデンの回収率をさらに高めるため、浸出後液に含まれるモリブデンを有効に回収することが望まれる。
この発明は、このような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、たとえば、電子部品等のスクラップや含銅モリブデン鉱中の銅成分を浸出させて得られる浸出後液等の、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液に含まれるモリブデンを有効に回収することのできるモリブデンの分離方法及び含銅モリブデン鉱の処理方法を提供することにある。
発明者は鋭意検討の結果、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液のpHを所定の範囲内に調整し、それに含まれる鉄イオンの少なくとも一部を鉄化合物として析出させることにより、酸性溶液に含まれるモリブデンの多く又はほぼ全てが、鉄とともに共沈することを見出した。そして、これにより、酸性溶液からモリブデンを有効に回収できると考えた。
このような知見の下、この発明のモリブデンの分離方法は、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液から、モリブデンを分離する方法であって、前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるとともに、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、当該鉄イオンの少なくとも一部を、鉄化合物として析出させ、酸性溶液中のモリブデンイオンを固体として析出させて、モリブデンを分離することにある。
ここで、前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるに当り、酸性溶液に酸素含有気体を吹き込むことが好ましい。
またここで、前記酸性溶液に含まれるモリブデンの量に対し、前記鉄イオンの酸化により固体として分離されるモリブデンの分離率を95%以上とすることが好ましい。
そしてまた、前記鉄イオンの酸化により得られる酸化残渣中の銅品位を、0.5質量%以下とすることが好ましい。
前記酸性溶液は、銅及びモリブデンを含む原料中の銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴にて浸出させることにより得ることができる。この銅及びモリブデンを含む原料を、含銅モリブデン鉱とすることができる。
この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法は、含銅モリブデン鉱に含まれる銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴にて浸出させる銅浸出工程と、銅浸出工程の後、銅浸出工程で得られた浸出後液中の鉄イオンを酸化させて、当該鉄イオンの少なくとも一部を鉄化合物として析出させる鉄酸化工程とを含み、前記浸出後液が、銅浸出工程で含銅モリブデン鉱から溶出したモリブデンイオンを含み、前記鉄酸化工程で、浸出後液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、浸出後液中の鉄イオンを酸化させ、浸出後液中のモリブデンイオンを固体として析出させることにある。
上記の鉄酸化工程の後、鉄酸化工程で得られた酸化後液中の銅イオンの少なくとも一部を抽出する銅抽出工程を更に含むものとすることができ、この場合、前記銅抽出工程で銅を抽出した後の抽出後液を、銅浸出工程の酸性ハロゲン浴に用いることが好適である。
また、前記銅浸出工程では、得られる浸出残渣中の銅品位が0.5質量%以下となるまで浸出を実施することが好ましい。
この発明のモリブデンの処理方法によれば、酸性溶液中の鉄イオンを酸化させ、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、上記の鉄イオンが鉄化合物として沈殿するとともに、酸性溶液に含まれるモリブデンの多くが、その鉄とともに共沈するので、酸性溶液からモリブデンを有効に回収することができる。
また、この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法によれば、銅浸出工程で含銅モリブデン鉱から溶出して浸出後液に含まれるモリブデンを、鉄酸化工程で固体として回収することから、モリブデンを浸出後液に残すことなく有効に回収することができる。その結果として、含銅モリブデン鉱からのモリブデンの回収率を大きく高めることができる。
この発明のモリブデンの分離方法の一の実施形態を示すフロー図である。 この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法の第一実施形態を示すフロー図である。 この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法の第二実施形態に係る含銅モリブデン鉱の処理方法を示すフロー図である。 実施例の各工程の溶液ないし残渣に含まれる各元素の含有量を示すフロー図である。 実施例の鉄酸化工程での酸化時間の経過に伴う、pH及びORPの推移を示すグラフならびに液濃度の推移を示すグラフである。
以下に、この発明の実施形態について詳細に説明する。
(1)モリブデンの分離方法
この発明のモリブデンの処理方法は、図1に例示するように、銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液から、モリブデンを分離する方法であって、前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるとともに、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、当該鉄イオンの少なくとも一部を、鉄化合物として析出させ、酸性溶液中のモリブデンイオンを固体として析出させて、モリブデンを分離する。
ここで、先述したように、モリブデンは、様々な産業分野で添加剤や触媒等として用いられているものであり、たとえば、使用済の電子機器ないし部品等の原料から、そこに含まれる各種金属を分離・回収するために、電子機器を破砕等して酸浸出して得られる酸性溶液には、当該原料に含まれて溶出した鉄イオンや銅イオン、モリブデンイオンが含まれることがある。この発明では、このような鉄イオン、銅イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液を対象とすることができる。
また、この発明で対象とする酸性溶液は、銅及びモリブデンを含む上記の原料中の銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴で浸出させることにより、鉄イオン、銅イオン及びモリブデンイオンを含むものとして得ることができる。この原料には、後述する含銅モリブデン鉱石も含まれる。酸性ハロゲン浴については後に詳細に説明する。
このような酸性溶液中の鉄イオンを酸化し、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、酸性溶液に含まれるFe(II)イオンがFe(III)イオンに酸化されるとともに、Fe(III)イオンの一部が有効に沈殿して、鉄化合物が生成する。
そしてこの際に、鉄の沈殿に伴い、酸性溶液中のモリブデンイオンが固体として析出して共沈する。それにより、この固体のモリブデンを固液分離によって、酸性溶液から容易に分離させることができる。酸性溶液のpHを0.5未満とした場合は、鉄イオンの沈殿、それに伴うモリブデンイオンの沈殿が十分に生じないことが懸念される。一方、酸性溶液のpHを3.0より大きくすると、酸性溶液に含まれる銅イオンも沈殿してしまう可能性があり、酸化残渣に銅が多く含まれることになって、分離させたモリブデンを鉄鋼添加剤等として用いる場合に望ましくない。酸性溶液のpHは、0.5〜2.0とすることがより好ましく、特に1.0〜2.0とすることがさらに好ましい。
なお、鉄イオンの酸化は、過酸化水素水の添加等によっても行うことができるが、酸素含有気体の吹き込みは、容易かつ安価に鉄イオンを酸化することができるので好ましい。
鉄イオンの酸化により、固体として分離されるモリブデンの量は、そもそも酸性溶液に含まれていたモリブデンの量に対する分離率として表して、95%以上になることが好適である。この分離率は、(沈殿して分離したモリブデンの量)/(酸性溶液に含まれていたモリブデンの量)×100で表すことができる。
また、鉄イオンの酸化により沈殿する鉄及びモリブデンを含む酸性残渣中には、銅が0.5質量%以下で含まれることが、これを鉄鋼添加剤等として用いる場合に好ましい。
(2)含銅モリブデン鉱の処理方法
この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法は、含銅モリブデン鉱に含まれる銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴にて浸出させる銅浸出工程と、銅浸出工程の後、銅浸出工程で得られた浸出後液中の鉄イオンを酸化させて、当該鉄イオンの少なくとも一部を鉄化合物として析出させる鉄酸化工程とを含むものである。
この発明で対象とする含銅モリブデン鉱としては特に制限はないが、たとえば、輝水鉛鉱、モリブデン鉛鉱、パウエライト、及び鉄水鉛鉱から選択される一種以上を含有する鉱石、なかでも、輝水鉛鉱を含有する鉱石を浮遊選鉱した後のモリブデン精鉱を挙げることができる。含銅モリブデン鉱中の銅は硫化物の形態、例えば輝銅鉱及び/又は黄銅鉱の形態で存在することがある。
含銅モリブデン鉱は、Cuを0.5〜10質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%で含有し、また、含銅モリブデン鉱は、Moを20質量%以上、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜50質量%で含有するものを対象とすることができる。
このような含銅モリブデン鉱に対し、この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法では、はじめに銅浸出工程を行う。この銅浸出工程では、多くのモリブデンは浸出残渣として溶け残るが、いくらかのモリブデンは、含銅モリブデン鉱から銅とともに溶出して浸出後液に含まれることになる。
この浸出後液に含まれるモリブデンを回収することについて、発明者は検討した結果、上記の浸出後液中の鉄イオンを酸化させる鉄酸化工程で、浸出後液に浸出したモリブデンが鉄とともに共沈することを新たに見出し、この鉄酸化工程にて、浸出後液中のモリブデンを固体として回収できると考えた。
この知見の下、この発明の含銅モリブデン鉱の処理方法では、銅浸出工程の後に、銅浸出工程で得られた浸出後液中の鉄イオンを酸化させて、当該鉄イオンの少なくとも一部を鉄化合物として析出させる鉄酸化工程を実施することとし、そこで、浸出後液に含まれるモリブデンを固体として回収する。
この発明の処理方法は具体的には、たとえば、図2又は3に示す実施形態により実施することができる。それぞれの実施形態を以下に詳説する。
<第一実施形態>
図2に示す実施形態では、銅浸出工程、鉄酸化工程及び銅抽出工程の各工程を順次に実施する。
(銅浸出工程)
銅浸出工程では、塩化物イオンを100g/L〜200g/L、銅イオンを1g/L〜30g/L、鉄イオンを1g/L〜50g/Lでそれぞれ含有する50〜100℃の酸性水溶液(以下、「浸出液」ともいう。)を、酸素含有気体の供給下で含銅モリブデン鉱に接触させて、含銅モリブデン鉱に含まれる銅成分を浸出する。すなわち、銅浸出工程では、酸性ハロゲン浴としての酸性塩化物浴を使用することにより、含銅モリブデン鉱中の銅を浸出することとし、ここでは銅イオンを浸出液中に存在させておくことで、銅の浸出反応を促進させることができる。
銅浸出工程で使用する浸出液中の塩化物イオンの濃度は、銅の溶解反応を高い効率で実現する観点から、100g/L以上であることが好ましく、特に120g/L以上であることがより好ましく、さらには140g/L以上であることが特に好ましい。しかしながら、経済性を考慮すると、過度に高濃度にする必要はなく、浸出液中の塩化物イオンの濃度は一般には200g/L以下であり、好ましくは180g/L以下である。
銅浸出工程で使用する浸出液中の銅イオンの濃度は、銅浸出反応の促進の観点から、1g/L以上であることが好ましく、さらに5g/L以上であることがより好ましい。しかしながら、経済性を考慮すると、過度に高濃度にする必要はなく、浸出液中の銅イオンの濃度は一般には30g/L以下であり、好ましくは20g/L以下である。
鉄イオンは銅浸出の促進に好適な成分であり、銅の溶解反応を高い効率で実現する観点から、1g/L以上であることが好ましいが、50g/Lを超えるとMoの浸出率が顕著に増加して逸損する。これを防止するため、浸出液中の鉄イオン濃度は50g/L以下とすることができ、好ましくは10g/L以下とする。鉄イオン濃度は、特に8g/L以下とすること、6g/L以下とすることがより好ましい。
モリブデンの浸出を防止するという観点からは、浸出液中の銅イオンと鉄イオンの合計が25g/L以下であることが好ましく、20g/L以下であることがより好ましい。
なお、上記の塩化物イオン、銅イオン及び鉄イオンの濃度は、酸性水溶液を含銅モリブデン鉱に接触させる前の浸出液中の濃度を指す。
浸出液と含銅モリブデン鉱の接触方法としては特に制限はなく、噴霧や浸漬などの方法があるが、反応効率の観点から、浸出液中に含銅モリブデン鉱を浸漬し、撹拌する方法が好ましい。
銅浸出工程は、酸素含有気体を浸出液に供給しながら実施することが重要である。酸素含有気体を供給することにより銅の浸出速度を高めることが可能となる。酸素含有気体の流量を増大させることで、銅の浸出速度が増大する傾向にある。これにより、モリブデンが浸出するよりも先に銅の浸出が進行するため、モリブデンの逸損を抑えることが可能となる。酸素含有気体としては、特に制限はないが、例えば空気、酸素、酸素と不活性ガス(窒素や希ガスなど)の混合ガスが挙げられる。経済性の観点からは空気が好ましい。
酸素含有気体は上述した効果を有効に発揮させるという観点から前記浸出液1L当たり0.02L/min以上の流量で供給することが好ましく、特に0.04L/min以上の流量で供給することがより好ましく、さらに0.08L/min以上の流量で供給することがより一層好ましい。ただし、過剰に供給した場合は、気泡中への液の蒸発で奪われる蒸発熱を補償するために電力などのエネルギーを多く消費し、また、精鉱粒子が表面に塗された気泡の層(フロス)が大量に発生して反応槽からあふれる。そのため、前記浸出液1L当たり0.5L/min以下の流量で供給することが好ましく、特に前記浸出液1L当たり0.25L/min以下の流量で供給することがより好ましく、さらに前記浸出液1L当たり0.15L/min以下の流量で供給することがより一層好ましい。
塩化物イオンの供給源としては特に制限はなく、例えば塩化水素、塩酸及び塩化金属等が挙げられるが、経済性や安全性を考慮すれば塩化金属の形態で供給するのが好ましい。塩化金属としては、例えば塩化銅(塩化第一銅、塩化第二銅)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム)の塩化物、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム)の塩化物が挙げられ、経済性や入手容易性の観点から、塩化ナトリウムが好ましい。また、銅イオンの供給源としても利用できることから、塩化銅を利用することも好ましい。
銅イオン及び鉄イオンは、塩の形態で供給するのが通常であり、例えばハロゲン化塩の形態で供給することができる。塩化物イオンの供給源としても利用できる観点から銅イオンは塩化銅、鉄イオンは塩化鉄として供給されるのが好ましい。塩化銅及び塩化鉄としてはそれぞれ、塩化第二銅(CuCl2)及び塩化第二鉄(FeCl3)を使用することが、酸化力の観点から望ましいが、塩化第一銅(CuCl)及び塩化第一鉄(FeCl2)を使用した場合であっても、浸出液に酸素含有気体を供給することにより、塩化第二銅(CuCl2)及び塩化第二鉄(FeCl3)にそれぞれ酸化されるため、大差はない。
含銅モリブデン鉱から銅の浸出効率を高めるため、浸出液は酸性とすべきであり、塩化物イオンの供給源としても利用できることから、塩酸酸性とすることが好ましい。浸出液のpHは浸出した銅の溶解度を確保する理由から、ガラス電極によって測定されるpHが0〜3程度とすることが好ましく、特に0.2〜2.5程度とするのがより好ましい。
以上より、銅浸出工程での浸出液としては、塩酸、塩化第二銅、塩化第二鉄、及び塩化ナトリウムの混合液を使用することができる。
銅浸出工程に使用する浸出液の温度は、浸出効率や装置の材質の観点から、50℃以上とすることが好ましく、60℃以上とすることがより好ましく、70℃以上とすることがより一層好ましい。この一方で、浸出液の温度が高すぎると、浸出液の蒸発や加熱コストの上昇あることから、100℃以下とすることが好ましく、90℃以下とすることがより好ましく、85℃以下とするのがより一層好ましい。浸出効率を高めることを目的として銅浸出工程を加圧下で実施することも可能であるが、大気圧下で十分である。これにより、高圧での浸出工程を行うための耐圧容器を必要とせず、より簡易な装置を用いることが可能になる。銅浸出を促進するため、処理対象となる含銅モリブデン鉱を予め粉砕・摩鉱しておくことが好ましい。
銅浸出工程は、使用する浸出液に対する含銅モリブデン鉱の量を多くして実施することが、浸出コストの低減の観点から好ましい。そのため、ここでは、たとえば、50g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、また、150g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、さらに、300g/L以上のパルプ濃度で浸出工程を行うことができる。この一方で、浸出速度を高めるという観点からは、使用する浸出液に対する含銅モリブデン鉱の量は少ないことが好ましいことから、800g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、また、600g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができ、さらに、500g/L以下のパルプ濃度で浸出工程を行うことができる。ここで、パルプ濃度とは使用する浸出液の体積(L)に対する含銅モリブデン鉱(乾燥重量(g))の比である。
銅の浸出は、含銅モリブデン鉱中の銅成分が十分に浸出されるまで、具体的には浸出残渣中の銅品位が0.5質量%以下となるまで実施することが好ましい。それにより、銅が十分に取り除かれた浸出残渣を、たとえば鉄鋼添加剤として有効に用いることができる。
銅の浸出が終了した後は、得られた浸出反応液を、フィルタープレスやシックナー等を用いた固液分離によって、浸出後液と浸出残渣に分離する。
ここで、銅浸出工程での銅の浸出は一回のみとすることもできるが、酸性ハロゲン浴を取り替えて繰り返し実施することが好適である。これにより、浸出残渣である脱銅モリブデン鉱中のモリブデン純度が上昇して市場価値が高まると共に、銅をさらに多く回収できるという利点が得られる。銅の浸出を複数回にわたって繰り返し行う場合、具体的には、一回目の銅の浸出が終了した後に、フィルタープレスやシックナー等によって固液分離し、浸出残渣に対して二回目、所要に応じて三回目以降の銅の浸出を行うことにより実施することができる。典型的には、銅の浸出は二回〜四回にわたって行うことができる。
図2に示すこの実施形態では、浸出後液中へのモリブデンの浸出を抑制しながら、銅を高い浸出率で浸出することが可能である。たとえば、浸出後液中のモリブデン濃度を0.001g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率70%以上を達成することができ、あるいは、浸出後液中のモリブデン濃度を0.005g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率90%以上を達成することができ、また条件によっては、浸出後液中のモリブデン濃度を0.005g/L以下に抑制しながら、銅の浸出率95%以上を達成することができる。この点で図2の実施形態は、後述するような図3の実施形態より有利である。
浸出に要する時間は、原料である含銅モリブデン鉱中の銅品位にもよるが、浸出残渣中の銅品位が0.5質量%以下となるまでに要する時間は、例えば4〜10時間くらいであり、典型的には5〜6時間くらいである。
(鉄酸化工程)
銅浸出工程によって得られた浸出後液には、浸出液に元々含まれていた鉄イオンの他、含銅モリブデン鉱中の鉄の一部が溶解した鉄イオンが含まれている。これらの鉄イオンの多くはFe(II)と考えられる。
この鉄酸化工程では、上記の鉄イオンを酸化することでFe(III)とし、再度浸出に使用し、また、pHを調整して、Fe(III)の一部を沈殿させて鉄化合物を生成させることによって、浸出液中の鉄濃度をコントロールすることができる。なおここでは、浸出後液中のCu(I)も酸化されてCu(II)となる。
ここにおいて、先述したように、浸出後液には、銅浸出工程で溶出されたモリブデンが若干含まれており、このモリブデンをも回収するべく、この実施形態では、鉄酸化工程で鉄イオンを酸化することにより、鉄イオンが析出した鉄化合物とともにモリブデンを共沈させ、これを固体として回収する。それにより、モリブデンの回収率を有効に高めることができる。
鉄酸化工程での鉄の酸化は、常温で行うことも可能であるが、反応を促進させるために少し加熱してもよい。具体的には、ここでの浸出後液の温度は、たとえば、20〜70℃とすることができる。
また、この鉄酸化工程では、鉄イオンを有効に酸化させるとともに銅イオンの沈殿を防止するため、浸出後液のpHを0.5〜3.0の範囲内とする。その理由は、浸出後液のpHが0.5未満では鉄イオンの沈殿が生じないことがあり、それによって鉄と共沈するモリブデンもまた十分に沈殿しないおそれがあることによる。この一方で、浸出後液のpHが3.0を超えると、銅イオンの沈殿が生じてしまう可能性があるからである。
このような観点から、鉄酸化工程での浸出後液のpHは、より好ましくは0.5〜2.0、さらに好ましくは1.0〜2.0とする。
鉄酸化工程での鉄の酸化は、浸出後液への、過酸化水素水の添加、又は、酸素、酸素と不活性ガス(窒素や希ガスなど)の混合ガス等の酸素含有気体の吹き込み等により行うことできるが、特に、酸素含有気体の吹き込みにより行うことが好ましい。なかでも、空気を吹き込むことがコスト面で好適である。
酸素含有気体を吹き込む場合は、前記浸出後液1L当たり0.01L/min〜1.5L/minの流量で供給することが好ましい。0.01L/minは、水60℃での溶存酸素が低下しない程度の供給量であり、このように酸素含有気体の供給流量が少なすぎる場合は酸化に時間を要する。この一方で、酸素含有気体の供給流量が多すぎる場合は、気泡中への液の蒸発で奪われる蒸発熱を補償するために電力などのエネルギーを多く消費する。
このような条件の下で鉄酸化工程を実施することにより、鉄酸化工程でのモリブデンの回収率、すなわち、浸出後液中のモリブデンの量に対する、酸化残渣中のモリブデンの量の割合を、95%以上とすることが好ましい。浸出後液中のモリブデン濃度や酸化条件によっては、浸出後液に含まれるモリブデンのほぼ全てを回収することも可能である。
鉄酸化工程で得られる酸化残渣は、上記の浸出後液中のモリブデンが固体となって含まれることから、先述の銅浸出工程で得られた浸出残渣に加えて、これらをモリブデンの主要用途である鉄鋼添加剤等として用いることができる。
但し、これらの残渣を鉄鋼添加剤として用いる場合、そこに銅が多量に含まれると鉄鋼製品の性状が低下するので、残渣中の銅品位は少ないことが好ましい。具体的には、酸化残渣中の銅品位は、0.5質量%以下とすることが好ましい。
(銅抽出工程)
銅抽出工程では、上記の鉄酸化工程を経た後の酸化後液から銅を回収することができる。ここでの銅の回収方法としては特に制限はないが、例えば溶媒抽出、イオン交換、卑な金属との置換析出及び電解採取などを利用することができる。酸化後液中の銅は1価及び2価の状態が混在しているが、溶媒抽出やイオン交換を円滑に行うために、全部が2価の銅イオンとなるように予め酸化しておくことが好ましい。酸化の方法は特に制限はないが空気や酸素を酸化後液中に吹き込む方法が簡便である。
この銅抽出工程では、酸化後液中の銅を、溶媒抽出及び逆抽出に供した後、電解採取によりカソード上に電気銅として回収する処理を更に含む。この処理は一般にSX−EW(Solvent Extraction and Electro-Winning)法と呼ばれている方法であり、当業者には周知である。
また、溶媒抽出前に、酸化後液に空気などの酸素含有気体を吹き込んで液中の銅を酸化する処理を施すこともできる。これにより、銅を溶媒抽出後に逆抽出(ストリップ)して直接電解採取することを可能にするという利点が得られる。酸化処理を施さない場合、強塩化物浴では一価の銅が高濃度で存在するため電解採取の際にデンドライト銅として析出する。デンドライト銅は金属粉末として電解槽に沈殿する。カソードに板状銅として回収する方が圧倒的に運搬等の操作性の面で長所が多い。更に、酸化処理後は固液分離することもできる。固液分離は浸出液中に鉄が含まれている場合に、酸化した後の残渣に移行するため、浸出後液中の銅純度を高める上で有利である。
このような銅抽出工程を経た後に得られる抽出後液(銅抽出後液)は、銅イオンと鉄イオンを含むことがあり、この場合、この抽出後液を、先述の銅浸出工程での酸性ハロゲン浴の浸出液として繰り返し用いることが好適である。この発明では、先に述べたように、鉄酸化工程で浸出後液からモリブデンが十分に取り除かれていることから、銅抽出工程で得られる抽出後液にもモリブデンがほぼ含まれず、それにより、上記のように抽出後液を有効に循環させて用いることができる。
(モリブデン回収工程)
なお、銅浸出工程で得られた浸出残渣をモリブデン精鉱として、当業者に公知の精製プロセスを経てモリブデン中間生産物を製造することができる。例えば、酸化焙焼して三酸化モリブデン製品を製造したり、更に成型・乾燥工程を経て三酸化モリブデンブリケットを製造したり、テルミット還元を経て低炭素フェロモリブデンを製造したりすることができる。更に、酸化焙焼・脱硫後に、アンモニア抽出及び水素還元を行って金属モリブデンを得ることも可能である。
<第二実施形態>
図3に示す他の実施形態は、いわゆる塩化鉄法として当業界で一般に知られている方法である。この塩化鉄法に対しても、以下に述べるようにして、この発明の処理方法を適用することができる。
図3に示すこの方法では、はじめに、含銅モリブデン鉱を、浸出液を用いて110℃程度に加熱したオートクレーブ内で浸出処理する銅浸出工程を行う。ここでの浸出液は、たとえば、Fe3+イオンを100g/L〜120g/L程度、ハロゲン化物イオンを300g/L〜350g/L程度で含有するとともに、さらに銅イオンを含有するものとすることができる。このハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等があげられるが、なかでも塩化物イオンとすることが一般的である。
次いで、この銅浸出工程で得られた浸出後液に対し、セメンテーション工程を実施する。ここでは、浸出液中の銅を鉄屑等と反応させることにより、セメント銅(Cu品位90%程度)を沈殿させる。
その後、セメンテーション工程で得られた溶液に対して鉄酸化工程を行う。ここで、塩化鉄法では通常、塩素ガスを吹き込むことで鉄を沈殿させずに鉄イオンを二価から三価に酸化させるが、塩素ガスでなく酸素含有ガスを吹き込むことで、鉄を例えばゲーサイトのような形態で沈殿させることにより上記の溶液に溶存しているMoを共沈させて回収することができる。鉄酸化工程は必要に応じて塩素ガスによる鉄酸化工程と酸素含有ガスによる鉄酸化工程とを分けて実施してもよい。
当該塩化鉄法では、上記の浸出処理で、含銅モリブデン鉱に含有される銅とともに多くのモリブデンが浸出されることから、浸出後液には、モリブデンが比較的多く含まれている。そのため、上記のように、浸出後液に対してセメンテーション工程を実施して得られる溶液中のモリブデンを、鉄酸化工程で沈殿させて回収することが有効となる。
なお、鉄酸化工程で鉄及びモリブデンを回収した後の溶液は、上述したような含銅モリブデン鉱中の銅の浸出処理に、浸出液として再度用いることができる。
次に、この発明を試験的に実施したので、以下に説明する。但し、ここでの説明は単に例示する目的で記載したものであり、それに限定されることを意図するものではない。
銅及びモリブデンを含む原料を粉砕したものを、図2に示すようなフローに従って処理した。各工程での残渣や溶液に含まれるモリブデン、銅及び鉄を、ICP発光分光分析法(ICP−OES)にて分析したところ、図4に示す結果を得た。
なお、銅浸出工程では、塩酸、塩化第二鉄、塩化第二銅、塩化ナトリウムを混合した浸出液(Cu浸出前液)を、ホットスターラーで75℃に加熱し、これに原料を投入した後、空気を吹き込みつつ撹拌した。
また、鉄酸化工程では、浸出後液の液温を60℃とし、その浸出後液に空気を0.15L/minで吹き込んで、8時間にわたって酸化を行った。その際の酸化時間の経過に伴うpH及びORPの推移を、図5にグラフで示す。
図4に示す結果から、銅浸出工程では、原料中のモリブデンは、その99.8%を浸出残渣として回収することができたが、残りが僅かに溶出されて浸出後液に含まれることとなった。
そしてその後、鉄酸化工程を行うことにより、この浸出後液に含まれるモリブデンの全てが鉄とともに共沈して、酸化残渣に回収されたことから、酸化後液にはモリブデンが含まれていなかった。
また図5に示すグラフより、浸出後液のpHが0.5以上となったときから、浸出後液中の鉄の濃度が有効に低下していることから、鉄とともに共沈するモリブデンの沈殿を効果的に促進させるためには、浸出後液のpHを0.5以上とすることが好ましいことが解かる。
なお、この鉄酸化工程で得られた酸化残渣を調べたところ、残渣中のMo濃度が低く、沈殿したMoの詳細な形態は確認できなかったが、X線回折法(XRD)や鉱物自動分析装置(MLA)を用いた試験の結果からMoとFeとの化合物が確認されず、また、FeのほとんどはゲーサイトFeOOHであったことから、鉄酸化工程では、Moは一般的なFeの共沈作用で沈殿すると考えられる。
以上の結果より、この方法によれば、銅浸出工程で得られる浸出後液中のモリブデンを固体として有効に回収することができ、その結果として、銅及びモリブデンを含む原料からのモリブデンの回収率をさらに向上できることが解かった。

Claims (9)

  1. 銅イオン、鉄イオン及びモリブデンイオンを含む酸性溶液から、モリブデンを分離する方法であって、
    前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるとともに、酸性溶液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、当該鉄イオンの少なくとも一部を、鉄化合物として析出させ、酸性溶液中のモリブデンイオンを固体として析出させて、モリブデンを分離する、モリブデンの分離方法。
  2. 前記酸性溶液中の鉄イオンを酸化させるに当り、酸性溶液に酸素含有気体を吹き込む、請求項1に記載のモリブデンの分離方法。
  3. 前記酸性溶液に含まれるモリブデンの量に対し、前記鉄イオンの酸化により固体として分離されるモリブデンの分離率を95%以上とする、請求項1又は2に記載のモリブデンの分離方法。
  4. 前記鉄イオンの酸化により得られる酸化残渣中の銅品位を、0.5質量%以下とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモリブデンの分離方法。
  5. 銅及びモリブデンを含む原料中の銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴にて浸出させることにより、前記酸性溶液を得る、請求項1〜4のいずれか一項に記載のモリブデンの分離方法。
  6. 前記銅及びモリブデンを含む原料を、含銅モリブデン鉱とする、請求項5に記載のモリブデンの分離方法。
  7. 含銅モリブデン鉱に含まれる銅成分を、鉄イオンを含む酸性ハロゲン浴にて浸出させる銅浸出工程と、銅浸出工程の後、銅浸出工程で得られた浸出後液中の鉄イオンを酸化させて、当該鉄イオンの少なくとも一部を鉄化合物として析出させる鉄酸化工程とを含み、
    前記浸出後液が、銅浸出工程で含銅モリブデン鉱から溶出したモリブデンイオンを含み、
    前記鉄酸化工程で、浸出後液のpHを0.5〜3.0に調整することにより、浸出後液中の鉄イオンを酸化させ、浸出後液中のモリブデンイオンを固体として析出させる、含銅モリブデン鉱の処理方法。
  8. 鉄酸化工程の後、鉄酸化工程で得られた酸化後液中の銅イオンの少なくとも一部を抽出する銅抽出工程を更に含み、
    前記銅抽出工程で銅を抽出した後の抽出後液を、銅浸出工程の酸性ハロゲン浴に用いる、請求項7に記載の含銅モリブデン鉱の処理方法。
  9. 前記銅浸出工程で、得られる浸出残渣中の銅品位が0.5質量%以下となるまで浸出を実施する、請求項7又は8に記載の含銅モリブデン鉱の処理方法。
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