通常、ハンマドリルは「回転力及び打撃力」、「打撃力のみ」或いは「回転力のみ」といった先端工具に伝達することのできる動作モードを切り替える切替装置を有している。動作モードの切替装置は、モータの回転力をピニオンと第一ギヤを介して中間軸に伝達し、中間軸と同軸に配置され軸方向に移動可能な第一伝達部材を介してモータの回転力を往復動変換機構へ接続し、又は接続の遮断を行う。同様にして、中間軸と同軸に配置され軸方向に移動可能な第二伝達部材を設け、第二伝達部材によるシリンダ側のギヤへの接続又は遮断を介してモータの回転力を回転伝達機構へ伝達する。
図18は従来のハンマドリル201の外観形状を示す斜視図である。ハンマドリル201は、ハウジング202の先端側から突出する先端工具取付部212に取り付けられた先端工具60によって、打撃または孔あけ作業等を行う。ハウジング202は、筒状の胴体部202aと、作業者によって把持されるハンドル部202bにより構成される。胴体部202aには図示しないモータ、中間軸、往復動変換機構、回転伝達機構等が収容される。胴体部202aの先端側にはサイドハンドル211が着脱可能に設けられる。ハンドル部202bの上端付近前方側にはモータの起動を行うためのトリガレバー205が設けられ、ハンドル部202bの下方には商用電源を供給するための電源コード215が設けられる。胴体部202aの側面には、回転式の操作部、即ち切替レバー216が設けられ、その矢印を合わせる位置によって回転モード218a、回転打撃モード218b、打撃モード218cのいずれかの動作モードを選択することができる。
図19は従来のハンマドリル201の内部構造と、動作モードの切替え構造を説明するための図(縦断面図)である。図19(1)ではハンマドリル201の胴体部202aの内部構造を縦断面図で示している。ここで、図示しないモータの回転力は、ギヤ等を介して中間軸220に伝達される。中間軸220と同軸上には、中間軸220と一体回転する回転伝達スリーブ223、第一伝達部材231、第二伝達部材241が設けられる。第一伝達部材231と中間軸220はスプライン接続される。第一伝達部材231の後方側には、第一伝達部材231の回転力を往復動に変換する運動変換部材232が設けられる。運動変換部材232にはベアリングを介して腕部233に接続され、運動変換部材232が中間軸220上で回転することにより腕部233の往復運動に変換してピストン234を軸方向に往復運動させる。また、第二伝達部材241は、中間軸220の軸線上に移動することにより回転伝達スリーブ223と係合又は離反可能であり、中間軸220の回転をシリンダ246へ伝達することができる。第一伝達部材231と第二伝達部材241の軸方向への移動は、中間軸220の真横に配置した切替レバー216(図18参照)の回動により、切替レバー216に設けた偏心カムの切替ピン217aを回転させ、切替ピン217aが切替部材227を軸方向に移動させることにより行う。
図19(1)は「打撃モード」の時の状態を示す断面図である。ここでは右下に切替部材227と第一作用片227aと第二作用片227bの位置関係を抜き出して図示した(右下の抜き出し図中の黒く塗りつぶした第一作用片227aと第二作用片227bは、中間軸220の上下方向に位置する黒く塗りつぶした部分に対応する)。切替ピン217aは偏心カムの回転中心から後方側にあって、カム溝227eとの当接点の関係から切替部材227は最後方位置にある。この際、切替部材227の第一作用片227aは第一伝達部材231には作用しないが、第二作用片227bは第二伝達部材241を後方に移動させる。この状態ではスプリングの付勢力により、中間軸220と常時スプライン係合しているスリーブ状の第一伝達部材231と中間軸20上に回転可能に遊嵌されている運動変換部材232とが係合する。運動変換部材232が中間軸220と同期して回転することによりモータの回転力を往復動変換機構230に伝達し、ピストン234を往復運動させ、空気バネを利用することにより打撃子235及び中間子236を介して先端工具に打撃力を伝達する。一方、中間軸220に対して遊嵌されている第二伝達部材241への動力伝達は遮断されるため、モータの回転力はシリンダ246の回転力としては伝達されない。よって、装着穴212aに装着される先端工具には打撃力だけが伝達される。
図19(2)は「回転及び打撃モード」時の状態を示す断面図である。図19(1)と同じ部分の図示は省略して、中間軸220の周りのみを示している。右側の抜粋図に示すように、ここでは切替ピン217aは前後方向の中間地点にあって、切替部材227は図19(1)よりも前方側に位置する。この際、第一作用片227aは第一伝達部材231と当接しているが移動させていない。よって第一伝達部材231と運動変換部材232とが係合状態にあり、モータの回転力が往復動変換機構230に伝達され、先端工具が打撃される。同時に、第二作用片227bは第二伝達部材241と離れるため、スプリング226の付勢力により第二作用片227bの前端側が回転伝達スリーブ223に係合する。この結果、中間軸220に遊嵌された第二伝達部材241が回転伝達スリーブ223によって回転され、第二伝達部材241と噛合する第二ギヤ243が回転し、第二ギヤ243に係合する係合リング245を回転させることによりシリンダ246を回転させ、先端工具を回転させる。
図19(3)は「回転モード」時の状態を示す断面図である。ここでは切替ピン217aは偏心カムの回転中心よりも前方位置にあって、切替部材227はさらに前方側に移動する。この際、第一作用片227aは第一伝達部材231を前方側に移動させて運動変換部材232との係合状態を解除する。よって、モータの回転力は往復動変換機構230には伝達されない。一方、第二作用片227bは第二伝達部材241と離れたままであるので、スプリング226の付勢力により第二伝達部材241が回転伝達スリーブ223に係合する。この結果、中間軸220に遊嵌された第二伝達部材241が回転し、第二伝達部材241と噛合する第二ギヤ243が回転し、第二ギヤ243に係合する係合リング245を回転させることによりシリンダ246を回転させる。
以上説明したように、従来のハンマドリル201では、ハウジング202に回動可能に連結されている切替レバー216を操作することによって、切替ピン217aにより切替部材227を軸方向に移動させて、軸方向の前側位置、中間位置、後側位置の3カ所の水平方向位置に位置づけ、切替部材227の作用片と第一及び第二伝達部材との係合状態により、先端工具の動作モードを切り替えるような構成としていた。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
図1は本発明の実施例に係るハンマドリル1の動力伝達部分の構成を示すための部分断面図である。ハンマドリル1の外観形状は図18で示した従来のハンマドリル201と、切替レバー216の位置と胴体部202aの大きさを除いてほぼ同じである。ハンマドリル1は、駆動源であるモータ(図示せず)の回転軸が先端工具の軸方向(軸線A1)と平行になるように配置され、回転軸の先端部分にはピニオン8が設けられる。モータの回転力はピニオン8と噛合する第一ギヤ21によって中間軸20に伝達される。中間軸20は、先端工具の回転中心(軸線A1)と平行に設けられ、2つの軸受24a、24bによって軸線B1を中心に回転可能なように軸支される。中間軸20は、モータの回転力を往復移動に変換して先端工具に伝達する往復動変換機構30と、中間軸20に隣接して設けられ先端工具60に回転力を伝達する回転伝達機構40を接続するものである。
往復動変換機構30は、中間軸20の軸方向に移動可能かつ同期回転するように設けられた第一伝達部材31と、中間軸20上に相対回転可能なように遊嵌された運動変換部材32と、運動変換部材32に軸受機構33aによって保持される腕部33と、腕部33によって接続部34aを往復移動させることにより軸線A1に沿って移動するピストン34と、打撃子35と中間子36を含んで構成される。第一伝達部材31の後面と運動変換部材32の前面には、それぞれ爪部と凹部が形成され、爪係合するように構成され、第一伝達部材31が後方側に移動して運動変換部材32に接触すると中間軸20の回転運動が第一伝達部材31を介して運動変換部材32に伝わり打撃運動に変換される。ピストン34が往復運動すると、発生される空気バネの力により打撃子35が中間子36を介して先端工具60に打撃力を伝達する。一方、第一伝達部材31を先端工具60側へ移動させると運動変換部材32との爪係合がはずれて往復動変換機構30への動力伝達が中断される。上記したように第一伝達部材31は、中間軸20の軸方向へ移動することにより、運動変換部材32への動力の接続と遮断を切り替える。
回転伝達機構40は、中間軸20に同軸上に相対回転可能なように配置され、スプライン機構によって動力伝達が接続又は遮断される第二伝達部材41と、先端工具60を保持するシリンダ46と同軸上に配置されたリング状の第二ギヤ43と、第二ギヤ43と係合し、シリンダ46とスプライン結合された係合リング45を含んで構成される。第二伝達部材41の先端工具60側には、第二スプリング44が配置され、第二伝達部材41に外力が加わらない際には第二伝達部材41が後方側に移動するように付勢している。第二スプリング44の前方側は軸受24aの内輪に当接するスリーブ23にて保持される。第二伝達部材41の前方側外周には、第二ギヤ43の外歯と噛合可能なピニオン部(後述)が形成され、後方側の内周側にはギヤ部(後述)が形成される。第二伝達部材41が後方側に移動して、第二伝達部材41のギヤ部が中間軸20のキー(後述)と係合すると、第二伝達部材41が中間軸20と同期して回転するため、第二伝達部材41から第二ギヤ43、係合リング45を介してシリンダ46へ回転力が伝達される。シリンダ46は軸受47aとメタル47bによって長手方向中心軸を中心に回転可能に軸支される。シリンダ46の先端には装着穴12aが形成され、その付近には先端工具取付部12が設けられる。一方、第二伝達部材41を前方側(反モータ側)へ移動させて、ギヤ部と中間軸20のキーとの係合がはずれると、第二伝達部材41は中間軸20に対して空転するため、中間軸20からシリンダ46への回転力の伝達が中断される。
以上のように第一伝達部材31と第二伝達部材41の軸方向の移動によって往復動変換機構30への動力伝達のオンオフ、及び、回転伝達機構40への動力伝達のオンオフの切替えを行うことができる。この第一伝達部材31と第二伝達部材41の軸方向の移動を行う機構が偏心カム17と切替部材27を用いて実現される。
図2は図1のA−A部の一部断面図である。ハンマドリル1は、シリンダの軸心位置(A1)の下側に、中間軸20が配置され、ハウジング2の胴体部2aの左側側面にダイヤル式の切替レバー16が設けられる。切替レバー16には偏心カム17が設けられ、軸心C1を中心に回転可能なようにハウジング2に保持される。偏心カム17の軸心C1からから離れた位置にはピン17aが配置される。ピン17aは軸心C1と平行方向にハウジングの内部に突出するよう配置され、切替レバー16を回転させることによりピン17aの位置が、軸心C1を中心に移動し、ここでは上下方向の上位と下位の間で移動させるようにした。従来のハンマドリルにおいては、切替部材の構造との関係から、偏心カム17の回転中心(軸心C1)と中間軸20の回転中心位置(B1)は、同じ高さとなるように、切替レバー16を図2よりも下側に配置される。しかしながら、本実施例では偏心カム17の回転中心(軸心C1)上下方向位置を、中間軸20の回転中心位置(軸心B1)よりも上方になるようにオフセットさせて配置した。この結果、切替レバー16を従来よりも上方に移動させることができたので、ハウジング2の下側部分において点線65で示す部分の出っ張りを無くすことができ、ハウジング2の断面積を小型化するとともに、作業者が把持しやすい胴体部2aを実現できた。
図3は、動作モードの切替えを行うための切替部材、即ち、切替部材27の形状を示す図である。図中に示す方向はハンマドリル1に組み込まれた際の方向を示している。切替部材27は略長方形の側面板27cに偏心カム17のピン17aを貫通させるためのカム溝27eが形成された可動部材で、スプリング(図示せず)の作用によって所定の方向に付勢され、偏心カム17が回転するとピン17aの位置の移動によって、ピン17aとカム溝27eの当接位置が変化し、切替部材27が前後方向に移動する。カム溝27eは、上下方向に見て中間軸の中心線よりも上側鉛直方向に延びる長穴状部分を少なくとも有するもので、ここでは側面視でL字状の切り抜きとして形成される。切替部材27は金属製であって、平板状の側面板27cの後端部から直交方向に突出する第一作用片27aと、側面板27cの中央付近から直交方向に突出する第二作用片27bが形成される。第一作用片27aは第一伝達部材31と当接して、切替部材27の移動により第一伝達部材31を中間軸20の軸方向に移動させるためのものである。また、第二作用片27bは第二伝達部材41と当接して、切替部材27の移動により第二伝達部材41を中間軸20の軸方向に移動させるためのものである。第一作用片27aは約2/3周分のリング状であり、第二作用片27bは1周分のリング状であるが、必ずしもこの形状で無くても良く、第一伝達部材31、第二伝達部材41を移動させることができれば良い。第二作用片27bのリング状の内周部には、第二伝達部材41の外周側の凹部と係合することにより第二伝達部材41の回転を制限する為の凸部が形成される。側面板27cの前方側には帯状の延長板27dが設けられる。延長板27dは、ハウジング2に設けられた図示しない溝部に挿入される箇所であり、延長板27dによって切替部材27がハウジング2に対して軸方向B1のみの移動が可能なように保持される。
次に図4を用いて本実施例のハンマドリル1における動力伝達経路を説明する。図4は図1から主要部分だけを抜き出した図である。中間軸20は図示しないモータにより回転される。運動変換部材32は中間軸20に対して相対回転可能なように保持される。第一伝達部材31は、中間軸20に形成されたキー22aに係合するキー溝(図示せず)を内周側に有し、中間軸20に対して軸方向への相対移動が可能であるが、相対回転が不能とされる。同様にして、第二伝達部材41は中間軸20に対して軸方向への相対移動が可能であり、軸方向に移動することにより中間軸20に対して相対回転が可能となり、又は不能(同期して回転)となる。このため第二伝達部材41の後方内側には、中間軸20に設けられたキー22bとスプライン係合するギヤ部41bが設けられる。キー22aと22bは、ここでは中間軸20と一体に製造されるもので、キー22bの外径がキー22aよりも大きく、その接続部分が段差状になるように形成される。図4では第一伝達部材31から運動変換部材32への動力伝達が遮断された状態、即ち矢印38の部分が離れている状態であるが、第一伝達部材31が後方側に移動して運動変換部材32とスプライン係合すると、矢印39に示す経路でモータの回転力がピストン34の往復運動に変換して伝達される。
図4では第二伝達部材41が前方側にあって、中間軸20のキー22bから第二伝達部材41への動力伝達がされない状態、即ち矢印48の部分が離れている状態であるが、第二伝達部材41が後方側に移動してキー22bとスプライン係合すると、第二伝達部材41が中間軸20と同期して回転するため、矢印49に示す経路で動力が伝達され、第二ギヤ43が回転して係合リング45を回転させることによりシリンダ46を回転させる。
以上説明したように第一伝達部材31と第二伝達部材41を中間軸20の軸方向のいずれかに移動させることにより、動作モードの変更ができる。この第一伝達部材31と第二伝達部材41を移動させるために、あらかじめ第一伝達部材31と第二伝達部材41を所定方向に付勢する第一スプリング26と第二スプリング44が設けられる。第一スプリング26は、中間軸のキー22bとキー22aの段差部分にはめ込まれたワッシャ25と第一伝達部材31のフランジ状に形成された部分の前面部の間に設けられるコイルバネである。第一伝達部材31に切替部材27の第一作用片27aから何ら力が作用していないときは、第一スプリング26によって第一伝達部材31は運動変換部材32側に移動し、スプライン係合する。図4の状態では切替部材27の第一作用片27aによって第一伝達部材31が前方側に移動しており、運動変換部材32から離された状態になっている(打撃力の遮断)。
第二スプリング44は、第二伝達部材41の前方側に配置されたワッシャ42とスリーブ23との間に介在されるコイルバネである。第二伝達部材41に切替部材27の第二作用片27b又はピン17a(図2参照)から何ら力が作用していないときは、第二スプリング44によって第二伝達部材41は後方側に移動し、キー22bとスプライン係合する。図4ではピン17aによって第二伝達部材41が前方側に移動された状態(詳細は図7で後述)を示しており、キー22bとギヤ部41bが離れた状態になっている(回転力の遮断)。
次に図5〜図7を用いて、第一の実施例における第一から第三の動作モードを説明する。各図の(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材41の位置関係を示し、(2)は切替部材27とピン17aの位置関係を示し、(3)は第二伝達部材41とピン17aの位置関係を示し、(4)は(3)のB方向から見た矢視図を示す。
(回転モード)図5において、モータが停止している時に切替レバー16を操作することによりピン17aを上側にある位置(上位)へ回動させると、ピン17aが切替部材27のカム溝27eに作用して中間軸20に対して前方側に位置する。この切替部材27の位置により第一作用片27aを介して第一伝達部材31が前方へ移動するため、第一伝達部材31と運動変換部材32との係合が外れることにより、先端工具60への打撃力の伝達が遮断される。一方、第二伝達部材41は第二スプリング44により後方へ付勢されて、第二作用片27bには当接せずに離れた状態であり、中間軸20のキー22b(図4参照)と係合する。よって、中間軸20から第二伝達部材41への回転力が伝達されるので、シリンダ46が回転する。この状態では図5(2)に示すようにピン17aはL字状のカム溝27eの一番上側に位置する。一方、ピン17aの第二伝達部材41に対する位置は、図5(3)のように側面視では第二伝達部材41の後方側のフランジ部分と干渉するかのように見えるが、(3)の軸方向に見たとき(B方向の矢視図)では、図6(4)に示すようにピン17aと第二伝達部材41とは離れており非接触状態に保たれる。
(回転−打撃モード)図5の“回転モード”の状態から、切替レバー16を操作し偏心カム17のピン17aを上下方向の中位位置へ移動させれば、カム溝27eがピン17aにより案内され切替部材27が図5で示す位置よりも後方へ移動する。この状態を示すのが図6である。切替部材27の後方への移動に伴い、第一作用片27aが第一伝達部材31から後方に離れ、第二作用片27bも第二伝達部材41の前方側の離れた位置にとどまる。また、図6(3)に示すようにピン17aは第二伝達部材41の後方側の離れた位置に非接触状態でとどまる。(4)に示すように、ピン17aの上下位置は第二伝達部材41に投影すると僅かに干渉する位置にあることが理解できよう。この状態では、第一伝達部材31は運動変換部材32に突き当たり中間軸20にスプライン係合する第一伝達部材31に設けた爪(図示せず)と運動変換部材32に設けた爪(図示せず)が係合状態にあるため、ピストン34を往復運動する。その結果、発生される空気バネを利用し、打撃子35及び中間子36を介して先端工具60に打撃力を伝達する。また、第二伝達部材41も後方側へ移動するので、中間軸20から第二ギヤ43側への動力伝達が行われる。よって、図4で示した矢印39と矢印49の双方の伝達経路により打撃力と回転力の双方が先端工具に伝達される。
(打撃モード)図6の“回転−打撃モード”の状態から、切替レバー16をさらに回転させて偏心カム17のピン17aを下位位置へ移動させれば、ピン17aは側面視で略L字状のカム溝27eに沿って移動するが、切替部材27は移動しない構成となっており,第一伝達部材31と運動変換部材32との間の係合は維持されたままである。しかしながら、ピン17aが中位から下位位置に移動するにつれて水平方向において後方から前方側に移動するため、ピン17aが第二伝達部材41の後方側から接触することになる。この位置関係を示すのが図7(3)であり、偏心カム17のピン17aによって第二伝達部材41が前方側に移動する。この結果、図7(1)の矢印48で示すようにキー22bと第二伝達部材41のスプライン係合状態が解消されるので、中間軸20から第二ギヤ43への動力伝達が解消される。一方、第一伝達部材31は矢印38bのように運動変換部材32に係合するので、図4で示した矢印39の伝達経路により打撃力だけが先端工具に伝達される。
(ニュートラル)尚、“打撃モード”の状態から、第二ギヤ43を軸方向後方側に移動させて第二ギヤ43の前方面に設けた爪(図示せず)と係合リング45の後方面に設けた爪(図示せず)の係合状態が解除させることにより、先端工具60への回転力の伝達を中断すると共に、先端工具60を空転可能状態とするニュートラルモードを設けても良い。ニュートラルモードにおいては、ハンマドリル1に対する先端工具60の刃先を任意の向きに変更することができる。
図8は図5〜図7にて説明した3つの動作モードにおける、偏心カム17のピン17aの位置と各動作モードとの対応関係をまとめたものである。(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材41の動作モデルである。第一伝達部材31は第一スプリング26によって中間軸20に対して後方側(モータ側)へ付勢される。よって、第一伝達部材31へ切替部材27やピン17aからの外力が加わらない時は、第一伝達部材31は運動変換部材32(図4参照)に当接する。第一伝達部材31の下側の矢印は、第一伝達部材31の軸方向位置と動力伝達がオンかオフかを示しており、黒矢印が外力が加わらない時の基準位置である。第二伝達部材41は第二スプリング44によって中間軸20に対して後方側(モータ側)へ付勢される。よって、第二伝達部材41へ切替部材27やピン17aからの外力が加わらない時は、第二伝達部材41は中間軸20のキー22bと係合する状態(動力伝達ON)にある。
図8(2)は偏心カム17のピン17aの位置と、動作モードとの関係を示すものである。ここでは第一から第三の動作モードの3つが切り替えられる。第一の動作モードはピン17aが高い位置(上位)にあり、第一作用片27aが第一伝達部材31に接触して前方側に移動させることによって中間軸20と往復動変換機構30との係合を解除させることにより“回転モード”となる。この際のピン17aは、第一伝達部材31及び第二伝達部材41には非接触状態にある。第二の動作モードはピン17aが上下方向にみて中間位置(中位)にあり、第一伝達部材31及び第二伝達部材41と作用片27a、27bとの係合が解除された状態となり、“回転−打撃モード”となる。この際のピン17aは、第一伝達部材31及び第二伝達部材41のいずれにも非接触状態にある。第三の動作モードはピン17aが上下方向にみて低い位置(下位)にあり、偏心カム17のピン17aによって第二伝達部材41が第二スプリング44を圧縮しながら前方側に移動させられ、中間軸20のキー22bと第二伝達部材41の動力伝達が解除され、“打撃モード”となる。打撃モードでは回転伝達機構40へ中間軸20の回転力は伝達されない。尚、ここでいう“非接触”とは、完全に接触していない状態だけでなく、当接している状態であるが実質的に伝達部材を移動させる力が作用していないような状態をも含む。
以上説明したように、従来のハンマドリルでは偏心カム17から切替部材27を介して第一伝達部材又は第二伝達部材を移動させていた構成を、偏心カム17から切替部材27を介して一方の伝達部材を移動させる動作モードと、偏心カム17のピン17aで他方の伝達部材を直接移動させる動作モードと、第一伝達部材又は第二伝達部材のいずれにも偏心カムに起因する外力を与えない動作モードと、により3つの動作モードを実現した。この結果、従来では偏心カムのピンの位置を後方、中間、前方の水平方向に3カ所設定する必要があったのを、ピン17aの位置を上位、中位、下位の鉛直方向に3カ所設定することで3つの動作モードの切替ができるようになった。また、切替部材27の水平方向(中間軸20の軸方向)の必要移動距離を従来例よりも小さくすることができる。このため、中間軸20の軸方向の長さを短くすることができ、動作モードの切替え機構部の小型化を実現でき、ハンマドリルの小形軽量化を達成できた。また、ピン17aによって一方の伝達部材を直接移動させるように構成したので、偏心カム17の軸心高さと中間軸20の軸心高さをずらす必要から、結果としてダイヤル式の切替レバー16を中間軸20よりも上方に配置できるので、ハウジング2の胴体部2aをコンパクトに形成できた。なお、切替部材27の必要移動距離を小さくすることで、例えばハンマドリルの大きさを維持したままで他の機能等を追加することも可能である。
次に、本発明の第二の実施例を説明する。第二の実施例においても、偏心カム17のピン17aが上下方向に見て上位、中位、下位の鉛直方向に3カ所に位置し、それぞれに第一から第三の動作モードを対応させる点では共通である。図9は第二の実施例に係るハンマドリルの動力伝達経路を説明するための図である。打撃力伝達経路89の伝達経路の各部品は第一の実施例と同じである。しかしながら、回転力伝達経路99において第二伝達部材91の形状と伝達経路が異なる。中間軸70の前方側端部には、ピニオン70aが形成され、ピニオン70aはピニオンスリーブ73の内周側のギヤ73aに噛合することにより、ピニオンスリーブ73と中間軸70は同期して回転する。ピニオンスリーブ73は軸受24aによりハウジング2に対して回転可能なように軸支される。中間軸70から第二伝達部材91への動力伝達は、第二伝達部材91の前方側に設けられた爪部(図示せず)がピニオンスリーブ73に形成された爪部(図示せず)に係合することにより行われる。つまり、第二伝達部材91が前方側に位置する際(図9の位置)には回転力伝達経路99が接続状態にあり、第二伝達部材91が後方側に位置する際(後述する図13の位置)には回転力伝達経路99が遮断状態にある。
第一伝達部材31は、ハウジングに固定される回転係止部材78との間に第一スプリング76を介在させることによって、外力を受けていない際には運動変換部材32に当接する方向(後方)に付勢される。また、第一伝達部材31と第二伝達部材91の間は第二スプリング94が介在され、第二伝達部材91は前方側に付勢される。動作モードの切替方法は、基本的に第一の実施例と同様であって、偏心カム17から動作モードの切替部材たる切替部材77を介して伝達部材の一方(ここでは第一伝達部材31)を移動させることで一つの動作モードを実現し、偏心カム17のピン17a(図10〜12参照)で他方の伝達部材(ここでは第二伝達部材91)を直接移動させることで一つの動作モードを実現した。残りの動作モードは、偏心カム17のピン17aと切替部材77の双方が、第一伝達部材31にも第二伝達部材91にも作用しない(例えば非接触)状態に保たれることで実現される。次に、第二の実施例に係るハンマドリルの、ピン17aの位置と各動作モードとの対応関係を、図10を用いて説明する。
図10は第二の実施例における、偏心カム17のピン17aの位置と各動作モードとの対応関係をまとめたものである。(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材91の動作モデルである。第一伝達部材31は第一スプリング76によってハウジング2に対して後方側(モータ側)へ付勢される。ここでは第一スプリング76の前方側を中間軸70に対してではなく、ハウジング2側に保持され軸方向へ動かない回転係止部材78にて支持した。これは図9に示したようにコイル状のバネを内側(第二スプリング94)と外側(第一スプリング76)の二重に配置するためである。これらのスプリングの作用により第一伝達部材31へ切替部材77やピン17aからの外力が加わらない時は、第一伝達部材31は運動変換部材32(図9参照)に当接する。第一伝達部材31の下側の矢印で示すように、第一伝達部材31は後方側で運動変換部材32への動力伝達がオンとなり、前方側でオフになり、黒矢印が外力が加わらない時の基準位置である。一方、第二伝達部材91は第二スプリング94によって第一伝達部材31に対して前方側へ付勢される。よって、第二伝達部材91へ切替部材77やピン17aからの外力が加わらない時は、第二伝達部材91はピニオンスリーブ73(図9参照)に当接して中間軸70と連動して回転する状態(動力伝達ON)にある。
図10(2)は切替部材77の形状を示す図である。切替部材77は図示しないスプリングの作用によって所定の方向に付勢され、偏心カム17のピン17aを貫通させるための側面視でI字状のカム溝77eが形成される。偏心カム17が回転するとピン17aの位置が移動するため、ピン17aとカム溝77eの当接点が変化することにより切替部材77が前後方向に移動する。切替部材77は金属製であって、平板状の側面板77cの後端部から直交方向に突出する第一作用片77aを有する。第一作用片77aは第一伝達部材31と当接して、第一伝達部材31を中間軸70の軸方向前方側に移動させるものである。第一作用片77aは約2/3周分のリング状であるが、第一伝達部材31を移動させる力を付与できればその他の形状であっても良い。カム溝77eは、上下方向に見て中間軸70の中心線よりも鉛直方向に延びる長穴状である。側面板77cの前方側には帯状の延長板77dが設けられる。
図10(3)は偏心カム17のピン17aの位置と、動作モードとの関係を示すものである。ここでは第一から第三の動作モードの3つが切り替えられる。第一の動作モードはピン17aが高い位置(上位)にあり、第一作用片77a及びピン17aは、第一伝達部材31にも第二伝達部材91にも非接触状態にある。この時の動作モードは、“回転−打撃モード”になる。第二の動作モードはピン17aが上下方向にみて中間位置(中位)にあり、第一作用片77aが第一伝達部材31を中間軸70の軸方向前方側に移動させる。よって、この時の動作モードは、“回転モード”になる。ここで、切替レバー16の回転方向は第一の実施例と逆方向となり、ピン17aの中間位置(中位)では前方側に位置するので、切替部材27は前方側に移動する。第三の動作モードはピン17aが低い位置(下位)にあり、ピン17aによって第二伝達部材91が第二スプリング94を圧縮しながら後方側に移動させられる。よって、この時の動作モードは、“打撃モード”になる。
次に図11〜図13を用いて、第二の実施例における第一から第三の動作モードを説明する。各図の(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材91の位置関係を示し、(2)は切替部材77とピン17aの位置関係を示し、(3)は第二伝達部材91とピン17aの位置関係を示し、(4)は(3)のC方向から見た矢視図を示す。
(実施例2:回転−打撃モード)図11は第二の実施例の“回転−打撃モード”における第一伝達部材及び第二伝達部材の動作を説明する図である。切替レバー16の操作によりピン17aは上下方向にみて上側(上位)にあり、ピン17aにより切替部材77の第一作用片77aは第一伝達部材31の後方側に離れる位置にとどまる。よって、第一伝達部材31と運動変換部材32は係合し、先端工具60側への打撃力の伝達が接続される。一方、ピン17aは第二伝達部材91とは非接触状態にあるため、初期位置たる前方側にあり、第二伝達部材91はピニオンスリーブ73と係合状態にある。よって、中間軸70から第二伝達部材91への回転力が伝達されるので、シリンダ46が回転する。ピン17aの位置は、図11(3)のように側面視では第二伝達部材91の後方側のフランジ部分と干渉するかのように見えるが、(3)の軸方向に見たときには(4)のようにピン17aが第二伝達部材91より上方に離れており非接触状態に保たれる。
(実施例2:回転モード)図11の“打撃−回転モード”の状態から、切替レバー16を操作し偏心カム17のピン17aを中位位置へ移動させれば、カム溝77eがピン17aにより案内され切替部材77が前方へ移動する。この状態を示すのが図12である。切替部材77の前方への移動に伴い、第一作用片77aが第一伝達部材31を後方から前方側に移動させ、矢印38に示すように運動変換部材32との当接状態を解除する。この結果、中間軸70から先端工具60側への打撃力の伝達は遮断される。一方、第二伝達部材91は前方に位置したままであり、図12(3)からわかるようにピン17aとは非接触状態にある。よって中間軸70から第二伝達部材91への回転力は伝達される。
(実施例2:打撃モード)図12の“打撃−回転モード”の状態から、切替レバー16を操作し偏心カム17のピン17aを下位位置へ移動させると、カム溝77eがピン17aにより案内されて切替部材77が再び後方側へ移動する。この結果、切替部材77の第一作用片77aと第一伝達部材31の当接状態が解除され、第一スプリング76の作用により第一伝達部材31が後方側に移動するため、第一伝達部材31と運動変換部材32が係合し、先端工具60側への打撃力の伝達が接続される。一方、ピン17aにより第二伝達部材91が後方側に移動させられることにより、矢印98のように第二伝達部材91とピニオンスリーブ73との係合状態が解除され、中間軸70から第二伝達部材91への動力伝達が解除されるので、中間軸70から先端工具側への回転力伝達は遮断される。また、第二伝達部材91の後方側の鍔部が回転係止部材78の内部に入り込むことにより、第二伝達部材41の鍔部に形成される歯車が回転係止部材78の内周側に形成される凸部78aに係合することにより第二伝達部材91の回転がロックされる。これにより、シリンダ46の回転が阻止されて先端工具60の空転が抑止できる。
以上、第二の実施例によれば、ピン17aの位置を上位、中位、下位のように鉛直方向に3カ所設定し、偏心カム17から切替部材77を介して一方の伝達部材を移動させる動作モードと、偏心カム17のピン17aで他方の伝達部材を直接移動させることで一つの動作モードを実現した。この結果、切替部材27の水平方向(中間軸70の軸方向)の必要移動距離を従来例よりも小さくすることができる。このため、中間軸70の軸方向の長さを短くすることができ、動作モードの切り替え機構部の小型化を実現できた。また、第一伝達部材を付勢する第一スプリング76を固定するのに、ハウジング2側に固定される回転係止部材78を設けたので、回転係止部材78を用いて第二伝達部材91の回転を抑制することができる。
次に、本発明の第三の実施例を説明する。第三の実施例におけるハンマドリルの動力伝達経路は、図9で説明した打撃力伝達経路89と回転力伝達経路99と同様である。しかしながら、第一伝達部材31と第二伝達部材141を移動させる部材が、第二の実施例とは逆になっている。つまり、第一伝達部材31はピン17aにより移動され、第二伝達部材141は切替部材127の作用片127bによって移動される。図14は、第三の実施例に係るハンマドリルの、ピン17aの位置と各動作モードとの対応関係を説明するための図である。
図14(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材141の動作モデルである。第一伝達部材31は第一スプリング76によって回転係止部材78に対して後方側(モータ側)へ付勢される。また、コイル状の第二スプリング94が第一伝達部材31と第二伝達部材141の間に設けられる。これらのスプリングの作用により第一伝達部材31へ外力が加わらない時は、第一伝達部材31は運動変換部材32(図15参照)に当接する。第一伝達部材31の下側の矢印で示すように、第一伝達部材31は後方側で運動変換部材32への動力伝達がオンとなり、前方側でオフになり、黒矢印が外力が作用しない時の基準位置である。第二伝達部材141は第二スプリング94によって第一伝達部材31に対して前方側へ付勢される。よって、第二伝達部材141へ外力が作用しない時は、第二伝達部材141はピニオンスリーブ73(図14参照)に当接して中間軸70と連動して回転する状態(動力伝達ON)にある。
図14(2)は切替部材127の形状を示す図である。切替部材127は図示しないスプリングの作用によって所定の方向に付勢され、偏心カム17のピン17aを貫通させるための側面視でI字状のカム溝127eが形成される。偏心カム17が回転するとピン17aの位置が移動するため、ピン17aとカム溝127eの当接点が変化することにより切替部材127が前後方向に移動する。切替部材127は金属製であって、平板状の側面板127cの前端部から直交方向に突出する作用片127bを有する。作用片127bは第二伝達部材141と当接して、第二伝達部材141を中間軸70の軸方向後方側に移動させるためのものである。作用片127bは約2/3周分のリング状であるが、第二伝達部材141を移動させる力を付与できればその他の形状であっても良い。側面板127cの前方側には帯状の延長板127dが設けられる。
図14(3)は偏心カム17のピン17aの位置と、動作モードとの関係を示すものである。ここでは第一から第三の動作モードの3つが切り替えられる。第一の動作モードはピン17aが高い位置(上位)にあり、作用片127b及びピン17aは、第一伝達部材31にも第二伝達部材141にも非接触状態にある。この時の動作モードは、“回転−打撃モード”になる。第二の動作モードはピン17aが上下方向にみて中間位置(中位)にあり、作用片127bが第二伝達部材141を中間軸70の軸方向後方側に移動させる。よって、この時の動作モードは、“打撃モード”になる。ここで、切替レバー16の回転方向は第一の実施例と同じであり、ピン17aの中間位置(中位)では切替部材127は後方側に移動する。第三の動作モードはピン17aが低い位置(下位)にあり、ピン17aによって第二スプリング94を圧縮しながら第一伝達部材31を前方側に移動させる。よって、この時の動作モードは、“回転モード”になる。
次に図15〜図17を用いて、第三の実施例における第一から第三の動作モードを説明する。各図の(1)は第一伝達部材31と第二伝達部材141の位置関係を示し、(2)は切替部材127とピン17aの位置関係を示し、(3)は第一伝達部材31とピン17aの位置関係を示し、(4)は(3)のB方向から見た矢視図を示す。
(実施例3:回転−打撃モード)図15は第三の実施例の“回転−打撃モード”における第一伝達部材及び第二伝達部材の動作を説明する図である。切替レバー16の操作によりピン17aは上下方向にみて上側(上位)にあり、ピン17aにより切替部材127の作用片127bは第二伝達部材141が前方側に離れる位置にとどまる。一方、ピン17aは第一伝達部材31とは非接触状態にある。よって、第一伝達部材31と運動変換部材32は係合し、先端工具60側への打撃力の伝達が接続される。同様にして、第二伝達部材141はピニオンスリーブ73と係合状態にある。よって、中間軸70から第二伝達部材141への回転力が伝達されるので、シリンダ46が回転する。ピン17aの位置は、図15(3)のように側面視では第一伝達部材31のフランジ部分と干渉するかのように見えるが、(3)の軸方向に見たときには(4)のようにピン17aと第一伝達部材31と離れており非接触状態に保たれる。
(実施例3:打撃モード)図15の“打撃−回転モード”の状態から、切替レバー16を操作し偏心カム17のピン17aを中位位置へ移動させれば、カム溝127eがピン17aにより案内され切替部材127が後方へ移動する。この状態を示すのが図16である。切替部材127の後方への移動に伴い、作用片127bが第二伝達部材141を前方から後方側に移動させ、矢印148に示すようにピニオンスリーブ73との当接状態を解除する。この結果、中間軸70から先端工具60側への回転力の伝達は遮断される。一方、第一伝達部材31は後方に位置したままであり、図16(3)からわかるようにピン17aとは非接触状態にある。よって中間軸70から第二伝達部材141への回転力は伝達されるので、打撃子35による先端工具60への打撃が行われる。
(実施例3:回転モード)図16の“打撃−回転モード”の状態から、切替レバー16を操作し偏心カム17のピン17aを下位位置へ移動させると、カム溝127eがピン17aにより案内されて切替部材127が再び前方側へ移動する。この結果、図17に示すように切替部材127の作用片127bと第二伝達部材141の当接状態が解除され、第一スプリング76の作用により第二伝達部材141が前方側に移動するため、第二伝達部材141とピニオンスリーブ73が係合し、先端工具60側への回転力の伝達が接続される。一方、ピン17aにより第一伝達部材31が第一スプリング76を圧縮しながら前側に移動させられることにより、矢印38のように第一伝達部材31と運動変換部材32との係合状態が解除されるので、中間軸70から先端工具側への打撃力の伝達は遮断される。
以上、第三の実施例によれば、ピン17aの位置を上位、中位、下位のように鉛直方向に3カ所設定し、偏心カム17から切替部材127を介して一方の伝達部材を移動させる動作モードと、偏心カム17のピン17aで他方の伝達部材を直接移動させることで一つの動作モードを実現した。この結果、動作モードの切り替え機構部の小型化とハンマドリル全体の小型化を実現できた。特に、第三の実施例では切替レバー16の位置を第一及び第二の実施例よりも後方側(ハンドル部2bに近い側)に設けることができるので、作業者がハウジング2の胴体部2aを把持する際に切替レバー16が干渉してしまう恐れを大幅に低減できる。
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では、偏心カムのピンの位置を上位、中位、下位の3段階にして、それぞれを3つの動作モードに対応させるようにしたが、ピンの位置を上位、前方側の中位、下位、後方側の中位の4段階にしてさらにもう一つの動作モードを実現しても良い。これは、シリンダの回転をロックする打撃モードと、シリンダの回転をフリーとする打撃モードを追加するように割り当てることができる。