JPWO2017069271A1 - 樹皮を用いた接着剤 - Google Patents

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Abstract

樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くするとともに、組成がシンプルな樹皮を用いた接着剤を提供する。レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含む。またはレゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含み、かつラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5である。

Description

本発明は、樹皮を成分に含む、樹皮を用いた接着剤に関するものである。
従来、合板等の製造時に使用される接着剤として、例えばフェノールとホルムアルデヒドを縮合させたフェノール樹脂接着剤が用いられている。フェノール樹脂接着剤は、耐水性に優れ屋外での使用に適しているが、他の接着剤と比較して硬化温度が高いため、いわゆるパンクが起きやすく、低含水率の単板を使用する必要がある。フェノール樹脂接着剤には基本的に、増粘剤として小麦粉、増量剤として炭酸カルシウム、硬化剤としてソーダ灰(炭酸ナトリウム)又は重曹(炭酸水素ナトリウム)が配合される。また、粘度が2〜3Pa・s(20〜25℃)になるように、メーカー推奨の配合で使用する場合が多く、その場合の接着剤中の固形分量(糊液固形分量)は55%前後となる。
これに対して、特許文献1には、高含水率の単板を使用した場合であっても、合板製造時のパンク現象が抑制されるようにした、合板用接着剤組成物に関する発明が記載されている。この合板用接着剤組成物は、レゾール型フェノール樹脂水溶液に対して、アカシア樹皮粉末、無機充填剤及び水を添加したものであり、調製後の粘度増加を抑制したものである。
一方、特許文献2には、タンニン高含有粉末の製造方法及びその用途に関する発明が記載されており、実施例としてラジアータパインやアカシアの樹皮粉末を使用した接着剤の配合例が開示されている。
また、特許文献3には、レゾール型フェノール樹脂と、リグニン、その誘導体、タンニン及びその誘導体からなる群から選ばれる一種以上の化合物と、植物粉末とを含有する合板用接着剤に関する発明が記載されており、植物粉末として樹皮粉末を使用したものが開示されている。
また、非特許文献1には、タンニン高含有アカシア樹皮粉末の製造と接着剤への応用についての研究が記載されており、フェノール樹脂に、アカシアの樹皮粉末、PMDI、炭酸ナトリウムあるいは小麦粉を添加した接着剤の配合例が開示されている。
特許第5122668号公報 特許第4683258号公報 特開2006−70081号公報
矢野浩之、外8名、「タンニン高含有アカシア樹皮粉末の製造と接着剤への応用」、木材工業、社団法人日本木材加工技術協会、平成17年10月1日、Vol.60、No.10、p.478−482
ところで、木材加工時に発生する未利用材である樹皮部分には、ホルムアルデヒドに対する反応性の高いタンニン(縮合型タンニン)が高率で含有されており、これまでアカシア樹皮やケブラコ材から熱水抽出されたタンニンは、タンニン接着剤として工業的に利用されている。一方、ラジアータパイン樹皮から熱水抽出して得られるタンニンは、その抽出率が低いことと、糊液の粘度が高過ぎること、それに接着剤として一定の品質を得ることが出来ないということで、まだ工業的利用はされていない。しかしながら、このタンニンの抽出の際に溶媒としてメタノールを用いた場合には、上記の諸問題を解決し、さらに良好な接着性能を得ることが出来る。この場合、抽出溶媒のメタノール回収コストを含めたタンニン製造コストが大変高いという問題がある。
これに対して、特許文献1乃至特許文献3や非特許文献1には、フェノール樹脂と樹皮を成分に含む、樹皮を用いた接着剤に関する発明が記載されているが、使用する樹皮の割合が低く、樹皮の活用が不十分であり、フェノール樹脂の割合が高く糊液固形分量が高い。
また、フェノール樹脂と樹皮に加えて、炭酸カルシウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物を添加するものであって、接着剤の組成が複雑である。
また、開示した特許文献2のラジアータパイン樹皮を用いた接着剤の実施例2.表4の配合例2に、外皮粉末50部に市販フェノール樹脂50部を加えた接着剤が記述されているが、この配合ではパラホルムアルデヒドを要する為、建材の製造に用いた場合、後に遊離したホルムアルデヒドがシックハウス症候群を引き起こすなどの問題が懸念される。また、パラホルムアルデヒドを加えると、糊液の増粘が早くなるため接着剤としての使用が難しいなどの問題がある。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くするとともに、組成がシンプルな樹皮を用いた接着剤を提供するものである。
上記課題を解決するため、本発明の樹皮を用いた接着剤は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含むことを特徴とする。
また本発明の樹皮を用いた接着剤は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、レゾール型フェノール樹脂固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含み、かつラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5であることを特徴とする。
また好ましくは、ラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が7:3であることを特徴とする。
本発明の樹皮を用いた接着剤は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含むので、樹皮から溶媒によりタンニンを抽出することなくそのまま接着剤として利用できるので、低コストで接着剤を提供することができ、木材加工時に発生する未利用材である樹皮を有効活用することができる。また、接着剤の組成がシンプルである。
また、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含む場合には、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くすることができる。
また、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を合計20〜50質量部含み、かつラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5である場合には、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くすることができる。
また、ラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が7:3である場合には、特に優れた接着力を発揮する。
以上、本発明によれば、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くするとともに、組成がシンプルな樹皮を用いた接着剤を提供することができる。
次に、本発明の実施形態に係る樹皮を用いた接着剤について説明する。本実施形態に係る樹皮を用いた接着剤は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との配合比率に特徴を有している。また、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との配合比率に特徴を有している。
1.本発明の第一の態様
本発明の第一の態様は、
レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、
レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含むことを特徴とする樹皮を用いた接着剤である。
(1)レゾール型フェノール樹脂
レゾール型フェノール樹脂としては、特に制限されないが、フェノール類とホルムアルデヒドなどのアルデヒド類とを反応触媒の存在下で縮合反応させて得られる樹脂である。
レゾール型フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3000〜12000、より好ましくは3000〜6000、さらに好ましくは3500〜5500である。重量平均分子量は、レゾール型フェノール樹脂をアセチル化したものをゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した値である。
市販品におけるレゾール型フェノール樹脂の固形分は、通常40〜45%である。
(2)ラジアータパインの樹皮粉末
ラジアータパインの樹皮粉末は、63μm以下である。粒径は、実施例記載の方法で測定した値である。このような粒径のものを用いることにより、ラジアータタンニンの濃度を高めることができ、接着性を向上させることができる。
ラジアータパインの樹皮は、ラジアータタンニンを含有し、植物資源のタンニンが高含量である部分は他の部分よりも粉砕されやすいものと推測されるため、本発明に用いられるラジアータパインの樹皮粉末は、上記粒径のものを用いることにより、ラジアータタンニンの濃度が粉砕前よりも高められていると考えられる。また、ラジアータパインの樹皮粉末には、ラジアータタンニン以外の成分も含まれているが、それらの中にも接着性の向上に寄与する成分が含まれていると考えられる。
(3)その他の成分
本発明の第一の態様の接着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分の他に、必要に応じて、水、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、硬化剤、粘着付与剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤、増粘剤、他の接着剤などの公知の成分が含まれていてもよい。
本発明の第一の態様の接着剤は、シックハウス症候群の発生を抑制する観点から、パラホルムアルデヒドの含有量が低いことが好ましく、含んでいたとしても、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、10質量部未満であることがより好ましく、5質量部未満であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが最も好ましい。
(4)接着剤
本発明の第一の態様の接着剤は、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含む。このような組成とすることにより、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くしながら、十分な接着力を得ることができる。
本発明の第一の態様の接着剤の粘度は、1.5Pa・s〜4.0Pa・sが好ましく、2.0Pa・s〜3.0Pa・sがより好ましい。粘度は精密回転粘度計で測定した値である。
また、本発明の第一の態様の接着剤中の糊液固形分量は、35〜45%が好ましく、38〜42%がより好ましい。糊液固形分量は、実施例記載の方法で測定した値である。なお、糊液固形分量とは、接着剤全体に対する接着剤中の固形分の割合をいい、固形分には樹皮粉末およびレゾール型フェノール樹脂の固形分が含まれる。
2.本発明の第二の態様
本発明の第二の態様は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、
レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含み、かつラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5であることを特徴とする樹皮を用いた接着剤である。
本発明の第二の態様におけるレゾール型フェノール樹脂、ラジアータパインの樹皮粉末およびその他の成分は、本発明の第一の態様と同様である。なお、パラホルムアルデヒドの含有量については低いことが好ましく、含んでいたとしても、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉の合計100質量部に対して、10質量部未満であることがより好ましく、5質量部未満であることがさらに好ましく、実質的に含まないことが最も好ましい。
(1)小麦粉
小麦粉は、強力粉、中力粉、薄力粉等のいずれも用いることができる。
(2)接着剤
本発明の第二の態様の接着剤は、レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含む。さらには、ラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5であり、好ましくは8:2〜6:4であり、より好ましくは7:3〜6:4であり、最も好ましくは7:3である。このような組成とすることにより、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くしながら、十分な接着力を得ることができる。より好ましい範囲であると、特に優れた接着力を発揮する。

本発明の第二の態様の接着剤の粘度は、1.5Pa・s〜4.0Pa・sが好ましく、2.0Pa・s〜3.0Pa・sがより好ましい。粘度は精密回転粘度計で測定した値である。
また、本発明の第二の態様の接着剤中の糊液固形分量は、35〜49%が好ましく、35〜45%がより好ましく、38〜42%がさらに好ましい。糊液固形分量は、実施例記載の方法で測定した値である。なお、糊液固形分量とは、接着剤全体に対する接着剤中の固形分の割合をいい、固形分には樹皮粉末、レゾール型フェノール樹脂の固形分及び小麦粉が含まれる。
3.本発明の第一の態様及び第二の態様の接着剤の製造方法
本発明の第一の態様の接着剤の製造方法は、ラジアータパインの樹皮を粉砕する工程(1)、
前記粉砕されたラジアータパインの樹皮を粒径63μm以下の粉末に分級する工程(2)、
およびレゾール型フェノール樹脂及び前記分級されたラジアータパインの樹皮を混合する工程(3)を含むことを特徴とする。
本発明の第二の態様の接着剤の製造方法は、ラジアータパインの樹皮を粉砕する工程(1)、
前記粉砕されたラジアータパインの樹皮を粒径63μm以下の粉末に分級する工程(2)、
およびレゾール型フェノール樹脂、前記分級されたラジアータパインの樹皮および小麦粉を混合する工程(3)を含むことを特徴とする。
第一の態様の接着剤の製造方法および第二の態様の接着剤の製造方法の工程(1)において、樹皮を粉砕する方法としては、公知の粉砕方法を採用することができるが、例えば樹皮を粗粉砕し、そのまま又は適当な含水率に調整したのち、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましく1.6mm以下、最も好ましくは1.0mm以下の粒子サイズに粉砕するように設定されたハンマーミル、ワイリーミル、ボールミル、ローラミルといった粉砕機などで微粉砕したり、または繊維状に解繊する。粉砕は、特に限定されないが、好ましくは粉砕時に高温にならない方法で、しかも短時間に行うとよい。なお、工程(1)では、粉砕機で設定した粒子サイズの上限よりも細かい粉末が生じ、その粉末が工程(2)で分級される。
第一の態様の接着剤の製造方法および第二の態様の接着剤の製造方法の工程(2)において、樹皮を分級する方法としては、公知の分級方法を採用することができるが、たとえば目的の粒径の目開きの篩、回転ドラムスクリーンやシーブシェーカーのような篩い分け装置や重力分級、慣性力分級あるいは遠心力分級のような乾式分級装置を用いることが挙げられる。分級により、樹皮を63μm以下の粉末とする。このように、工程(1)で樹皮を粉砕した際に生じる粉末の中で63μm以下のものを用いることにより、工程(1)において、全ての樹皮をより細かくした場合よりも、タンニン濃度の高い粉末を用いることができると考えられる。
第一の態様の接着剤の製造方法および第二の態様の接着剤の製造方法の工程(3)において、各成分を混合する方法としては、公知の混合方法を採用することができ、必要に応じて加熱、冷却しながら行なってもよい。
4.接着剤の用途
本発明の接着剤は、木材の接着に好適に用いられる。木材は、低含水率のものから高含水率のものまで使用することができる。
本発明者らは、未利用材である樹皮の有効活用のために樹皮を用いた接着剤を組成するに際し、特にラジアータパインに着目した。樹皮を用いた接着剤に使用される樹皮としてアカシア樹皮が主に研究されてきたが、アカシア樹皮に含まれるワトルタンニンと、ラジアータパイン樹皮に含まれるラジアータタンニンとでは、化学的性質が異なり、樹皮を用いた接着剤としてラジアータパインの樹皮を使用する場合には、配合比率についてもさらなる研究の余地があると考えたためである。
また、研究の途上において、ラジアータパインの樹皮は、フェノール樹脂に少し入れただけでも粘度の変化が激しく、粘度調整することが難しかった。そこで、粘度変化が低い小麦粉を加えることで、組成のシンプルさを保ちつつ粘度調整が容易になると考えた。また、小麦粉を加えた方が、木部破断率が安定するとも考えた。
以上の経緯から、本発明者らは、「レゾール型フェノール樹脂固形分とラジアータパインの樹皮粉末との配合比率」及び「レゾール型フェノール樹脂固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との配合比率」について検討した。以下、実施例に基づいて本実施形態における配合比率について説明する。
(試験方法)
(1)乾燥させたラジアータパインの樹皮をガーデンシュレッダーで粗粉砕したのち、孔径1mmのスクリーンを付けたハンマーミルで微粉砕した。
(2)微粉砕した樹皮を目開き63μmの篩を用いて分級し、接着試験には粒径63μm以下の樹皮を用いた。
(3)得られた63μm以下の樹皮を、接着剤固形分40%、粘度2.0〜3.0Pa・s(23℃)になるように、レゾール型フェノール樹脂(重量平均分子量約4000:アセチル化したものをGPCで測定)及び水で調整した。
(4)試験片は、ラジアータパインのロータリーレース単板を使用した。
(5)塗布量240g/m(片面塗布)で接着剤を塗布し、冷圧1MPaで30分間、熱圧は135℃、1MPaで10分間圧締した。
(6)接着試験(実施例1〜6、比較例1)は、合板の日本農林規格(JAS)に従って行い、規定された形状の試験片を72時間連続煮沸し、せん断強さ(以下、せん断力(平均))及び平均木部破断率(以下、木破率(平均))を求めた。
上記(1)及び(2)の処理により得られた樹皮粉末は、粉砕前の樹皮そのものよりも、ホルムアルデヒドと反応してポリマーを形成することができる縮合型タンニン(プロシアニジン型)を多く含んでおり、タンニンが多いため樹皮よりも赤い色をしている。なお、縮合型タンニンを多く含む樹皮粉末を得る方法は、上記に限定されるものではないが、樹皮を粉砕し、分級するという工程により、樹皮全体からタンニンを多く含む部分を選択的に得ることができる。この場合、粉砕に用いる粉砕機やスクリーンの孔径は、得られる樹皮粉末のタンニン含有率、接着剤としての調整のし易さや、樹皮に対す樹皮粉末の収率等により選定することができる。また、分級に用いる篩の目開き及び樹皮粉末の粒径は、目開き63μm以下、粒径63μm以下である。
(測定条件)
(1)せん断力
日本農林規格(JAS)合板に従って測定した。
(2)平均木部破断率
目視により試験片の破断面を観察し、木部破断率を決定した。複数の試験片の木部破断率の平均を平均木部破断率とした。
(3)粒径
ISO規格の篩の目開きの値を粒径とした。
(4)糊液固形分実測値
糊液1gを105℃の送風乾燥機に24時間入れて乾燥した。乾燥後の糊液の重量/乾燥前の糊液の重量=糊液固形分(%)とした。なお、事前に24時間送風乾燥機に入れることで恒量に達することを確認している。
(5)粘度
精密回転粘度計で測定した。
(配合比率の表示)
以下の実施例における配合比率の表示は、フェノール樹脂水溶液の比率ではなく、フェノール樹脂自体(フェノール樹脂水溶液中の固形分)の比率である。また、フェノール樹脂を「PF樹脂」、ラジアータパイン樹皮粉末を「RP樹皮粉末」と表す。
(PF樹脂+RP樹皮粉末)
PF樹脂及びRP樹皮粉末を用いた接着剤の試験結果を表1に示す。実施例1及び実施例2における試験結果は、低い糊液固形分にもかかわらず良好であった。
(PF樹脂+RP樹皮粉末+小麦粉)
PF樹脂、RP樹皮粉末及び小麦粉を用いた接着剤の試験結果を表2〜表4に示す。RP樹皮粉末と小麦粉との質量比は7:3とした。表2及び表3に示す実施例3〜実施例6の試験結果は、低い糊液固形分にもかかわらず良好であった。表4に示す比較例1の試験結果は不良であった。樹皮の割合が高すぎたものと考えらえる。
(RP樹皮粉末と小麦粉との比率)
PF樹脂、RP樹皮粉末及び小麦粉を用いた接着剤について、RP樹皮粉末と小麦粉との比率(質量比)について検討した結果を表5〜表8に示す。ただし、表5〜表8に示す試験は、小麦粉の配合割合を決めるための試験であって、表1〜表4に示したRP樹皮粉末の配合割合を決める試験とは、糊液固形分と試験条件が若干異なっている。表1〜表4の試験が合板の日本農林規格(JAS)に規定された72時間連続煮沸後の接着試験であるのに対して、表5〜表8の試験は72時間連続煮沸を行わず接着試験を行った。そのため、表1〜表4の試験結果と表5〜表8の試験結果とは、単純に比較可能なものではない。実施例7−1〜実施例10−2における試験結果は、RP樹皮粉末と小麦粉との比率(質量比)が9:1〜5:5のものについて、接着能力が良好であった。特にRP樹皮粉末と小麦粉との比率(質量比)が7:3のものが優れていた。
以上の試験結果から、以下のことが確かめられた。
(1)PF樹脂及びRP樹皮粉末を用いた接着剤のうち、PF樹脂固形分とRP樹皮粉末との合計100質量部に対してRP樹皮粉末を30〜40質量部含むものについて、接着能力が良好であった(表1)。
(2)PF樹脂、RP樹皮粉末及び小麦粉を用いた接着剤のうち、PF樹脂固形分とRP樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対してRP樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含むものについて、接着能力が良好であった(表2〜表4)。
(3)PF樹脂、RP樹皮粉末及び小麦粉を用いた接着剤について、RP樹皮粉末と小麦粉との比率(質量比)が9:1〜5:5のものについて、接着能力が良好であった(表5〜表8)。特に、RP樹皮粉末と小麦粉との比率(質量比)が7:3のものが優れていた。
(4)いずれの試験結果においても糊液固形分は50%以下であり、低粘度での取扱いが可能であった。
本実施形態に係る樹皮を用いた接着剤は、レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮を含むので、樹皮から溶媒によりタンニンを抽出することなくそのまま接着剤として利用できるので、低コストで接着剤を提供することができ、木材加工時に発生する未利用材である樹皮を有効活用することができる。また、炭酸カルシウムや水酸化ナトリウム等の無機化合物を添加する必要がなく、接着剤の組成がシンプルである。ただし無機化合物を添加することを妨げるものではない。
また、パラホルムアルデヒドを配合する必要がないので、シックハウス症候群の問題や、糊液の増粘が早くなり接着剤としての使用が難しいといった問題も発生しない。
また、樹皮の割合を高めて有効活用し、フェノール樹脂の割合を抑えて糊液固形分量を低くすることができる。
なお、開示した先行技術文献に記載された樹皮を用いた接着剤のうち、使用する樹皮の比率が比較的高いものとして、非特許文献1のアカシア樹皮粉末を用いた接着剤があるが、フェノール樹脂固形分との比率に換算すると、アカシア樹皮は約20%である。従って、本実施形態に係る樹皮を用いた接着剤における樹皮の割合は非常に高いものといえる。

Claims (3)

  1. レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、
    レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末を30〜40質量部含むことを特徴とする樹皮を用いた接着剤。
  2. レゾール型フェノール樹脂及びラジアータパインの樹皮粉末を含む、樹皮を用いた接着剤であって、
    レゾール型フェノール樹脂の固形分とラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との合計100質量部に対して、ラジアータパインの樹皮粉末及び小麦粉を20〜50質量部含み、かつラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が9:1〜5:5であることを特徴とする樹皮を用いた接着剤。
  3. ラジアータパインの樹皮粉末と小麦粉との質量比が7:3であることを特徴とする請求項2に記載の樹皮を用いた接着剤。
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