本実施形態は、非接触給電装置2および非接触給電システム1、より詳細には負荷に非接触で給電を行う非接触給電装置2および非接触給電システム1に関する。
本実施形態の非接触給電装置2は、図1、図2に示すように、一次側コイルL1を有するコイルユニット7と、一次側コイルL1に印加する交流電圧を出力する給電ユニット6とを備えている。一次側コイルL1は、交流電圧が印加されることにより二次側コイルL2に非接触で出力電力を供給するように構成されている。また、本実施形態の非接触給電装置2は、交流電圧の大きさを調整することで出力電力の大きさを補正する電力補正回路23をさらに備えている。そして、電力補正回路23は、コイルユニット7に含まれている。
また、本実施形態の非接触給電システム1は、図1、図2に示すように、非接触給電装置2と、二次側コイルL2を有する非接触受電装置3とを備えている。非接触受電装置3は、非接触給電装置2から非接触で出力電力が供給されるように構成されている。
以下、本実施形態の非接触給電装置2および非接触給電システム1について詳しく説明する。ただし、以下に説明する構成は、本発明の一例に過ぎず、本発明は、下記の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
まず、本実施形態の非接触給電システム1の概要について図1を用いて説明する。非接触給電システム1は、一次側コイルL1を有する非接触給電装置2と、二次側コイルL2を有する非接触受電装置3とを備えている。非接触受電装置3は、非接触給電装置2から非接触で出力電力が供給されるように構成されている。ここで、出力電力とは、非接触給電装置2から出力される電力である。つまり、出力電力は、一次側コイルL1に交流電圧が印加されることにより、一次側コイルL1から二次側コイルL2に非接触で供給される電力である。
本実施形態では、非接触受電装置3が電動車両に搭載されている場合を例に説明する。また、電動車両に搭載されている蓄電池4が負荷である場合を例にして説明する。ここで、電動車両とは、蓄電池4に蓄積された電気エネルギーを用いて走行する車両である。そして、非接触受電装置3は、蓄電池4の充電装置として用いられる。なお、ここでは、電動機で生じる駆動力によって走行する電気自動車を電動車両の例として説明するが、電動車両は電気自動車に限らず、たとえば二輪車(電動バイク)、電動自転車などであってもよい。
非接触給電装置2は、商用電源(系統電源)や、太陽光発電設備などの発電設備から供給される電力を、非接触受電装置3に非接触で供給することで、蓄電池4を充電する。非接触給電装置2に供給される電力は、交流電力と直流電力とのいずれであってもよい。本実施形態では、非接触給電装置2に商用電源AC1から交流電力が供給される場合を例に説明する。このため、非接触給電装置2は、商用電源AC1から供給される交流電力を直流電力に変換するAC/DCコンバータ回路21を備えている。なお、非接触給電装置2に直流電源から直流電力が供給されてもよい。この場合、非接触給電装置2は、AC/DCコンバータ回路21を備える必要はない。
非接触給電装置2は、たとえば商業施設や公共施設、あるいは集合住宅などの駐車場に設置される。非接触給電装置2のうち少なくとも一次側コイルL1は、床あるいは地面に設置される。そして、非接触給電装置2は、一次側コイルL1の上に駐車された電動車両が備える非接触受電装置3に対して非接触で出力電力を供給する。このとき、非接触受電装置3の二次側コイルL2は、一次側コイルL1の上方に位置することで、一次側コイルL1と電磁界結合(電界結合と磁界結合との少なくとも一方)されている。なお、一次側コイルL1は、床あるいは地面から露出するように設置される構成に限らず、床あるいは地面に埋め込まれるように設置されていてもよい。
非接触受電装置3は、図1、図2に示すように、二次側コイルL2と、一対の二次側コンデンサC21,C22と、整流回路31と、平滑コンデンサC2とを有している。整流回路31は、一対の交流入力点と、一対の直流出力点とを有するダイオードブリッジで構成されている。二次側コイルL2の一端は、二次側コンデンサC21を介して整流回路31の一方の交流入力点に電気的に接続され、二次側コイルL2の他端は、二次側コンデンサC22を介して整流回路31の他方の交流入力点に電気的に接続されている。平滑コンデンサC2は、整流回路31の一対の直流出力点間に電気的に接続されている。さらに、平滑コンデンサC2の両端は、それぞれ一対の出力端子T21,T22に電気的に接続されている。一対の出力端子T21,T22には、蓄電池4が電気的に接続されている。
非接触受電装置3は、非接触給電装置2の一次側コイルL1からの出力電力を二次側コイルL2で受ける。そして、非接触受電装置3は、二次側コイルL2の両端間に発生する交流電圧を整流回路31にて整流し、さらに平滑コンデンサC2により平滑することで得られる直流電圧を、一対の出力端子T21,T22から蓄電池4に出力(印加)する。
本実施形態では、非接触給電装置2は、一次側コイルL1とともに共振回路(以下、「一次側共振回路」という)を構成する一対の一次側コンデンサC11,C12を備えている。また、非接触受電装置3では、二次側コイルL2は、一対の二次側コンデンサC21,C22とともに共振回路(以下、「二次側共振回路」という)を構成している。
そして、本実施形態の非接触給電システム1は、一次側共振回路と二次側共振回路とを共鳴させることにより電力の伝送を行う磁界共鳴方式(磁気共鳴方式)を採用している。このため、本実施形態の非接触給電システム1は、一次側コイルL1と二次側コイルL2が比較的離れた状態でも、非接触給電装置2の出力電力を非接触受電装置3に対して高効率で伝送可能である。
次に、本実施形態の非接触給電装置2について図1、図2を用いて説明する。本実施形態の非接触給電装置2は、一対の入力端子T11,T12と、AC/DCコンバータ回路21と、インバータ回路22と、電力補正回路23と、制御回路24とを備えている。また、本実施形態の非接触給電装置2は、既に述べたように、一次側共振回路を構成する一次側コイルL1および一対の一次側コンデンサC11,C12を備えている。一対の入力端子T11,T12には、商用電源AC1が電気的に接続されている。
また、本実施形態の非接触給電装置2は、交流電圧を出力する給電ユニット6と、一次側コイルL1を有するコイルユニット7と、一対の電線51,52とで構成されている。給電ユニット6は、たとえば筐体に、AC/DCコンバータ回路21と、インバータ回路22と、制御回路24とを収納して構成されている。コイルユニット7は、たとえば給電ユニット6の筐体とは異なる筐体に、電力補正回路23と、一次側コンデンサC11,C12と、一次側コイルL1とを収納して構成されている。
一対の電線51,52は、給電ユニット6とコイルユニット7との間に配置され、かつ、給電ユニット6とコイルユニット7とを電気的に接続するように構成されている。そして、一次側コイルL1は、一対の電線51,52間に電気的に接続されている。本実施形態では、一対の電線51,52は、絶縁性を有する材料で形成された被膜に覆われて1本のケーブルとして構成されている。もちろん、第1電線51と第2電線52とは、それぞれ別々のケーブルとして構成されていてもよいし、被膜に覆われていなくてもよい。
AC/DCコンバータ回路21は、一対の入力点211,212と、一対の出力点213,214とを有している。一対の入力点211,212は、一対の入力端子T11,T12を介して商用電源AC1に電気的に接続されている。また、一対の出力点213,214は、インバータ回路22の一対の入力点221,222に電気的に接続されている。
本実施形態では、AC/DCコンバータ回路21は、スイッチ素子を有するスイッチング電源で構成されている。そして、AC/DCコンバータ回路21は、スイッチ素子を制御回路24に制御されることにより、一対の入力点211,212に印加される商用電源AC1からの交流電圧を直流電圧に変換して、変換した直流電圧を一対の出力点213,214から出力する。また、本実施形態では、AC/DCコンバータ回路21は、PFC(Power Factor Correction)回路としても機能する。
インバータ回路22は、4つのスイッチ素子Q1〜Q4がフルブリッジ接続されたフルブリッジインバータ回路である。本実施形態では、スイッチ素子Q1〜Q4は、それぞれnチャネルのデプレッション型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)である。インバータ回路22は、スイッチ素子Q1,Q2の直列回路と、スイッチ素子Q3,Q4の直列回路とを一対の入力点221,222間に並列に電気的に接続して構成されている。スイッチ素子Q1,Q2の接続点およびスイッチ素子Q3,Q4の接続点は、一対の出力点223,224となる。
一対の入力点221,222のうち、第1入力点221には、スイッチ素子Q1,Q3のドレインが電気的に接続されている。また、第2入力点222には、スイッチ素子Q2,Q4のソースが電気的に接続されている。そして、スイッチ素子Q1のソースとスイッチ素子Q2のドレインとの接続点が、第1出力点223となる。また、スイッチ素子Q3のソースとスイッチ素子Q4のドレインとの接続点が、第2出力点224となる。
スイッチ素子Q1〜Q4のドレイン−ソース間には、それぞれダイオードD1〜D4が電気的に接続されている。ダイオードD1〜D4は、スイッチ素子Q1〜Q4のドレイン側をカソードとする向きで接続されている。ここでは、ダイオードD1〜D4は、スイッチ素子Q1〜Q4の寄生ダイオードである。
電力補正回路23は、コンデンサC31と、4つのスイッチ素子Q5〜Q8とを有している。本実施形態では、スイッチ素子Q5〜Q8は、それぞれnチャネルのデプレッション型MOSFETである。電力補正回路23の入力点231は、インバータ回路22の第1出力点223に電気的に接続されている。また、電力補正回路23の出力点232は、一次側コンデンサC11を介して一次側コイルL1の第1端に電気的に接続されている。電力補正回路23は、インバータ回路22の第1出力点223と一次側コンデンサC11との間に、スイッチ素子Q5,Q7の直列回路と、スイッチ素子Q6,Q8の直列回路とを並列に電気的に接続して構成されている。
スイッチ素子Q5,Q7の接続点と、スイッチ素子Q6,Q8の接続点との間には、コンデンサC31が電気的に接続されている。インバータ回路22の第1出力点223には、スイッチ素子Q5のソースおよびスイッチ素子Q6のドレインが電気的に接続されている。また、一次側コイルL1の第1端には、一次側コンデンサC11を介してスイッチ素子Q7のソースおよびスイッチ素子Q8のドレインが電気的に接続されている。
スイッチ素子Q5〜Q8のドレイン−ソース間には、それぞれダイオードD5〜D8が電気的に接続されている。ダイオードD5〜D8は、スイッチ素子Q5〜Q8のドレイン側をカソードとする向きで接続されている。ここでは、ダイオードD5〜D8は、スイッチ素子Q5〜Q8の寄生ダイオードである。
制御回路24は、たとえばマイコン(マイクロコンピュータ)を主構成として備えている。マイコンは、そのメモリに記録されているプログラムをCPU(Central Processing Unit)で実行することにより、制御回路24としての機能を実現する。プログラムは、予めマイコンのメモリに記録されていてもよいし、メモリカードのような記録媒体に記録されて提供されたり、電気通信回線を通して提供されたりしてもよい。
制御回路24は、AC/DCコンバータ回路21のスイッチ素子のオン/オフを切り替えるための駆動信号を出力する。また、制御回路24は、インバータ回路22のスイッチ素子Q1〜Q4のオン/オフを切り替えるための駆動信号G1〜G4を出力する。駆動信号G1〜G4は、スイッチ素子Q1〜Q4に一対一に対応する。制御回路24は、駆動信号G1〜G4を、それぞれ対応するスイッチ素子Q1〜Q4のゲートに出力することで、スイッチ素子Q1〜Q4の制御を行っている。
また、制御回路24は、電力補正回路23のスイッチ素子Q5〜Q8のオン/オフを切り替えるための駆動信号G5〜G8を出力する。駆動信号G5〜G8は、スイッチ素子Q5〜Q8に一対一に対応する。制御回路24は、駆動信号G5〜G8を、それぞれ対応するスイッチ素子Q5〜Q8のゲートに出力することで、スイッチ素子Q5〜Q8の制御を行っている。
なお、本実施形態では、制御回路24が、スイッチ素子Q1〜Q8のゲートに対して駆動信号G1〜G8を直接出力しているが、この構成に限らない。たとえば、非接触給電装置2は、スイッチ素子Q1〜Q8の駆動回路をさらに備えていてもよい。そして、駆動回路は、制御回路24からの駆動信号G1〜G8を受けて、スイッチ素子Q1〜Q8を駆動してもよい。
本実施形態の非接触給電装置2は、計測部25をさらに備えている。一次側コイルL1と一次側コンデンサC12との間には、たとえば変流器からなる電流センサ26が設けられている。計測部25は、電流センサ26の出力を受けて、一次側コイルL1に流れる電流の大きさを計測値として計測する。また、計測部25は、計測値を含む信号を制御回路24に出力するように構成されている。制御回路24は、計測部25で計測された計測値を用いて、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさを監視する。
以下、本実施形態の非接触給電装置2の動作について図1〜図3を用いて説明する。なお、図3における「オン」、「オフ」は、対応するスイッチ素子のオン、オフを表している。
インバータ回路22の一対の入力点221,222には、制御回路24がAC/DCコンバータ回路21を制御することにより、AC/DCコンバータ回路21の出力する直流電圧が印加される。制御回路24は、図3に示すように、スイッチ素子Q1,Q4に対応する駆動信号G1,G4と、スイッチ素子Q2,Q3に対応する駆動信号G2,G3として、互いに逆位相(位相差が180度)の信号を発生する。このため、インバータ回路22では、スイッチ素子Q1,Q4のペアと、スイッチ素子Q2,Q3のペアとが交互にオンするように制御される。なお、スイッチ素子Q1〜Q4が全てオンするのを防止するために、スイッチ素子Q1,Q4のペアのオン期間と、スイッチ素子Q2,Q3のペアのオン期間との間には、デッドタイムが設けられている。
その結果、インバータ回路22の一対の出力点223,224間には、周期的に極性(正・負)が反転する電圧(交流電圧)が発生する。つまり、インバータ回路22は、スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチングにより、一対の入力点221,222に印加される直流電圧を交流電圧に変換して、変換した交流電圧を一対の出力点223,224から出力する。以下では、インバータ回路22の出力電圧について、第1出力点223の電位が高電位となる極性を「正極性」、第2出力点224の電位が高電位となる極性を「負極性」という。つまり、インバータ回路22の出力電圧は、スイッチ素子Q1,Q4がオンの状態で正極性となり、スイッチ素子Q2,Q3がオンの状態で負極性となる。
本実施形態の非接触給電装置2では、一次側コイルL1は、一対の一次側コンデンサC11,C12とともに一次側共振回路を構成している。このため、一次側コイルL1から出力される出力電力(出力電圧)の大きさは、インバータ回路22の動作周波数(つまり、駆動信号G1〜G4の周波数)に応じて変化する。そして、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさは、インバータ回路22の動作周波数が一次側共振回路の共振周波数と一致するときにピークに達する。
ここで、一次側コイルL1と二次側コイルL2との相対的な位置関係が変化し、一次側コイルL1と二次側コイルL2との結合係数が変化すると、非接触給電装置2の出力電力の周波数特性(以下、「共振特性」という)が変化する。非接触給電装置2の共振特性が変化すると、たとえば政府等から使用が許可されている周波数の範囲内でインバータ回路22の動作周波数を調整しても、非接触給電装置2の出力電力が目標となる電力に達しない可能性がある。
そこで、本実施形態では、電力補正回路23によりインバータ回路22の出力する交流電圧を調整することで、一次側コイルL1から出力される出力電力の大きさを補正している。以下、電力補正回路23の動作について説明する。
制御回路24は、図3に示すように、スイッチ素子Q5,Q8に対応する駆動信号G5,G8と、スイッチ素子Q6,Q7に対応する駆動信号G6,G7として、互いに逆位相(位相差が180度)の信号を発生する。このため、電力補正回路23では、スイッチ素子Q5,Q8のペアと、スイッチ素子Q6,Q7のペアとが交互にオンするように制御される。なお、スイッチ素子Q5〜Q8が全てオンするのを防止するために、スイッチ素子Q5,Q8のペアのオン期間と、スイッチ素子Q6,Q7のペアのオン期間との間には、デッドタイムが設けられている。
その結果、電力補正回路23は、インバータ回路22の第1出力点223と一次側コイルL1との間に、コンデンサC31が電気的に接続される状態と、コンデンサC31が電気的に接続されない状態とを切り替える。そして、電力補正回路23は、インバータ回路22の出力する電圧に、さらにコンデンサC31の充電電圧を一次側コイルL1に加減することで、出力電力の大きさを補正する。つまり、電力補正回路23は、複数のスイッチ素子Q5〜Q8が制御されることにより、コンデンサC31の充電電圧を一次側コイルL1に加減するように構成されている。言い換えれば、電力補正回路23は、インバータ回路22の第1出力点223と一次側コイルL1との間における一次側共振回路の容量成分の大きさを調整することにより、出力電力の大きさを補正するように構成されている。
なお、出力電力の大きさを補正する必要がない場合、制御回路24は、スイッチ素子Q5,Q7のペア(またはスイッチ素子Q6,Q8のペア)をオンに制御する。これにより、電力補正回路23では、インバータ回路22の第1出力点223と一次側コイルL1との間にコンデンサC31が電気的に接続されない状態となるので、出力電力の大きさが補正されない。
本実施形態では、電力補正回路23は、駆動信号G1〜G4と駆動信号G5〜G8との位相差を制御回路24が制御することにより、一次側コイルL1に加減するコンデンサC31の充電電圧を調整している。ここで、位相差とは、駆動信号G1,G4に対する駆動信号G6,G7の位相の遅れ、あるいは駆動信号G2,G3に対する駆動信号G5,G8の位相の遅れである。
上述のように、本実施形態の非接触給電装置2は、その出力電力が目標となる電力に対して不足する場合に、電力補正回路23により、一次側コイルL1に印加する交流電圧の大きさを調整することができる。したがって、本実施形態の非接触給電装置2は、目標となる電力を満たすように出力電力の大きさを補正することが可能である。
以下、本実施形態の非接触給電装置2の比較例として、非接触給電装置200について説明する。比較例の非接触給電装置200は、図4に示すように、給電ユニット6、コイルユニット7の区別がない。そして、比較例の非接触給電装置200は、給電ユニット6およびコイルユニット7の構成要素、ならびに一対の電線51,52が1つのユニットに収められている点で、本実施形態の非接触給電装置2と相違する。
比較例の非接触給電装置200は、電力補正回路23により、一次側コイルL1に印加する交流電圧の大きさを調整することで、本実施形態の非接触給電装置2と同様に出力電力の大きさを補正することが可能である。しかしながら、比較例の非接触給電装置200では、出力電力の大きさの補正に伴ってコモンモードノイズが生じ得る。以下、この点について説明する。なお、以下の説明において、図1、図4〜図5Bに示す電圧V1〜V3、およびコモンモード電圧VC1は、いずれも大地(グランド)GND(図1参照)を基準電位点とする対地間電圧を表している。また、以下で説明する図5A、図5Bは、比較例の非接触給電装置200のシミュレーションを行った結果を表している。このシミュレーションは、電力補正回路23が動作しており、電力補正回路23により比較例の非接触給電装置200の出力電力の大きさが補正されているという条件の下、行われた。
既に述べたように、インバータ回路22は、正極性の電圧と負極性の電圧とを交互に出力しており、その出力する電圧の振幅は同じである。したがって、図5Aに示すように、インバータ回路22の第1出力点223での電圧V1と、第2出力点224での電圧V2とは、振幅が殆ど同じである。
一方、電力補正回路23の出力点232での電圧V3と、インバータ回路22の第2出力点224での電圧V2とは、振幅が互いに異なる。図5Aに示すように、電圧V3は、電圧V1にコンデンサC31の充電電圧を加減した電圧となるためである。このため、図5Bに示すように、コモンモード電圧VC1が変動する。ここで、コモンモード電圧VC1は、一対の電線51,52間の電圧を、浮遊容量CP1,CP2で分圧した電圧である。浮遊容量CP1,CP2は、それぞれ一対の電線51,52と大地GNDとの間に存在する。
コモンモード電圧VC1が変動すると、一対の電線51,52と大地との間の浮遊容量CP1,CP2を介して漏洩電流が流れる可能性がある。また、漏洩電流が伝導ノイズとして外部に流出してしまう可能性がある。
伝導ノイズへの対策としては、伝導ノイズを低減すべく、一次側コンデンサC11,C12や一次側コイルL1の他に、さらにコンデンサやコイルを追加することが考えられる。しかしながら、この場合、一次側共振回路の共振周波数の調整が難しくなるという問題がある。また、漏洩電流への対策としては、浮遊容量CP1,CP2を低減すべく、一対の電線51,52として電磁シールドを施したケーブルを採用することが考えられる。しかしながら、この場合、専用のケーブルを用意する必要があるため、コストが増大するという問題がある。
そこで、本実施形態の非接触給電装置2では、比較例の非接触給電装置200とは異なり、給電ユニット6とコイルユニット7とは互いに隔てて設けられており、給電ユニット6とコイルユニット7との間に一対の電線51,52が配置されている。そして、本実施形態の非接触給電装置2では、コイルユニット7に電力補正回路23が含まれている。このため、第1電線51に印加される電圧は、比較例の非接触給電装置200では電力補正回路23の出力点232での電圧V3であったのに対して、本実施形態の非接触給電装置2では、インバータ回路22の第1出力点223での電圧V1となる。したがって、コモンモード電圧VC1は、一対の電線51,52間の電圧(つまり、電圧V1と電圧V2との差電圧)を、浮遊容量CP1,CP2で分圧した電圧となる。そして、既に述べたように、電圧V1と電圧V2とは振幅が殆ど同じであるため、コモンモード電圧VC1は、殆ど変動しなくなる。
上述のように、本実施形態の非接触給電装置2は、給電ユニット6とコイルユニット7との間に一対の電線51,52が配置され、コイルユニット7に電力補正回路23が含まれているので、コモンモード電圧VC1の変動を抑制することができる。このため、本実施形態の非接触給電装置2では、一対の電線51,52を伝わる伝導ノイズを低減することができる。また、本実施形態の非接触給電装置2では、浮遊容量CP1,CP2を介して流れる漏洩電流も低減することができる。したがって、本実施形態の非接触給電装置2では、コンデンサやコイルを追加する必要がないため、一次側共振回路の共振周波数の調整が容易である。また、本実施形態の非接触給電装置2では、専用のケーブルを用意する必要がなく、比較的安価な汎用ケーブルを一対の電線51,52として採用することができるので、コストの増大を抑制することができる。
さらに、本実施形態の非接触給電装置2では、一対の電線51,52に電力補正回路23で調整された交流電圧が印加されない。このため、本実施形態の非接触給電装置2では、一対の電線51,52にインバータ回路22の出力電圧よりも高い電圧が印加されるのを防止することができる。
また、本実施形態の非接触給電装置2では、電力補正回路23は、コンデンサC31および複数のスイッチ素子Q5〜Q8を有している。そして、電力補正回路23は、複数のスイッチ素子Q5〜Q8が制御されることで、コンデンサC31の充電電圧を一次側コイルL1に加減するように構成されている。この構成では、スイッチ素子Q5〜Q8に与える駆動信号G5〜G8の周波数や位相を制御することで、一次側コイルL1からの出力電力の大きさを容易に補正することができる。なお、当該構成を採用するか否かは任意である。
ところで、本実施形態の非接触給電装置2では、制御回路24が給電ユニット6に含まれる構成であるが、他の構成であってもよい。たとえば、図6に示すように、制御回路24は、給電ユニット6に含まれる第1制御回路241と、コイルユニット7に含まれる第2制御回路242とで構成されていてもよい。
第1制御回路241は、AC/DCコンバータ回路21のスイッチ素子に対する駆動信号と、インバータ回路22のスイッチ素子Q1〜Q4に対する駆動信号G1〜G4とを出力する。言い換えれば、第1制御回路241は、給電ユニット6に含まれる回路を制御するように構成されている。第2制御回路242は、電力補正回路23のスイッチ素子Q5〜Q8に対する駆動信号G5〜G8を出力する。言い換えれば、第2制御回路242は、電力補正回路23を制御するように構成されている。
第1制御回路241と第2制御回路242とは、信号線53により電気的に接続されている。第1制御回路241は、信号線53を介して同期信号を第2制御回路242に送信する。この同期信号により、第1制御回路241のスイッチング制御と、第2制御回路242のスイッチング制御とが同期するようになっている。信号線53は、一対の電線51,52を構成するケーブルに含まれていてもよい。
つまり、本実施形態の非接触給電装置2は、電力補正回路23を制御する制御回路(第2制御回路242)をさらに備えていてもよい。そして、制御回路(第2制御回路242)は、コイルユニット7に含まれていてもよい。この構成では、スイッチングの際のリンギング電圧や電流によるノイズに対する耐性を高めることができる。つまり、図1に示すように、制御回路24が給電ユニット6に含まれる構成であれば、駆動信号G5〜G8の各々に対応する複数の信号線により、制御回路24とコイルユニット7の電力補正回路23とを電気的に接続する必要がある。このため、複数の信号線がスイッチングの際のリンギング電圧や電流によるノイズの影響を受け易くなる可能性がある。
一方、図6に示すように、制御回路(第2制御回路242)がコイルユニット7に含まれる構成であれば、駆動信号G5〜G8の各々に対応する複数の信号線が不要となる。このため、この構成では、スイッチングの際のリンギング電圧や電流によるノイズの影響を受け難い。また、この構成では、同期信号用の信号線53のみを用意すればよく、複数の信号線が不要となることから、信号線の本数が少なくて済む。
ここで、第2制御回路242は、たとえば一次側コイルL1の過熱保護用の回路と兼用することが好ましい。この回路は、たとえば温度センサにより一次側コイルL1の周囲温度を検知し、検知した温度が予め設定された閾値を上回れば、一次側コイルL1が過熱状態にあると判定する。この構成では、第2制御回路242を設けるために新たにマイコン(マイクロコンピュータ)などを用意する必要がなく、部品点数の増大を抑えることができる。また、給電ユニット6とコイルユニット7との間(ここでは、第1制御回路241と第2制御回路242との間)の通信は、スイッチングの際のリンギング電圧や電流によるノイズに対する耐性を高めるために、ディジタル通信であるのが好ましい。
ところで、本実施形態の非接触給電装置2は、図7A、図7Bに示すように、電力補正回路を一対備えていてもよい。以下の説明では、一対の電力補正回路のうちの一方を「第1電力補正回路23」、他方を「第2電力補正回路27」という。なお、「第1電力補正回路23」は、上述の「電力補正回路23」であるので、ここでは説明を省略する。
第2電力補正回路27は、コンデンサC32と、4つのスイッチ素子Q9〜Q12とを有している。ここでは、スイッチ素子Q9〜Q12は、それぞれnチャネルのデプレッション型MOSFETである。第2電力補正回路27の入力点271は、インバータ回路22の第2出力点224に電気的に接続されている。また、第2電力補正回路27の出力点272は、一次側コンデンサC12を介して一次側コイルL1の第2端に電気的に接続されている。第2電力補正回路27は、インバータ回路22の第2出力点224と一次側コンデンサC12との間に、スイッチ素子Q9,Q11の直列回路と、スイッチ素子Q10,Q12の直列回路とを並列に電気的に接続して構成されている。
スイッチ素子Q9,Q11の接続点と、スイッチ素子Q10,Q12の接続点との間には、コンデンサC32が電気的に接続されている。インバータ回路22の第2出力点224には、スイッチ素子Q9のソースおよびスイッチ素子Q10のドレインが電気的に接続されている。また、一次側コイルL1の第2端には、一次側コンデンサC12を介してスイッチ素子Q11のソースおよびスイッチ素子Q12のドレインが電気的に接続されている。
スイッチ素子Q9〜Q12のドレイン−ソース間には、それぞれダイオードD9〜D12が電気的に接続されている。ダイオードD9〜D12は、スイッチ素子Q9〜Q12のドレイン側をカソードとする向きで接続されている。ここでは、ダイオードD9〜D12は、スイッチ素子Q9〜Q12の寄生ダイオードである。
制御回路24は、スイッチ素子Q9,Q12に対応する駆動信号と、スイッチ素子Q10,Q11に対応する駆動信号として、互いに逆位相(位相差が180度)の信号を発生する。このため、第2電力補正回路27では、スイッチ素子Q9,Q12のペアと、スイッチ素子Q10,Q11のペアとが交互にオンするように制御される。なお、スイッチ素子Q9〜Q12が全てオンするのを防止するために、スイッチ素子Q9,Q12のペアのオン期間と、スイッチ素子Q10,Q11のペアのオン期間との間には、デッドタイムが設けられている。
その結果、第2電力補正回路27は、インバータ回路22の第2出力点224と一次側コイルL1との間に、コンデンサC32が電気的に接続される状態と、コンデンサC32が電気的に接続されない状態とを切り替える。そして、第2電力補正回路27は、インバータ回路22の出力する電圧に、さらにコンデンサC32の充電電圧を一次側コイルL1に加減することで、出力電力の大きさを補正する。つまり、第2電力補正回路27は、複数のスイッチ素子Q9〜Q12が制御されることにより、コンデンサC32の充電電圧を一次側コイルL1に加減するように構成されている。言い換えれば、第2電力補正回路27は、インバータ回路22の第2出力点224と一次側コイルL1との間における一次側共振回路の容量成分の大きさを調整することにより、出力電力の大きさを補正するように構成されている。
なお、出力電力の大きさを補正する必要がない場合、制御回路24は、スイッチ素子Q9,Q11のペア(またはスイッチ素子Q10,Q12のペア)をオンに制御する。これにより、第2電力補正回路27では、インバータ回路22の第2出力点224と一次側コイルL1との間にコンデンサC32が電気的に接続されない状態となるので、出力電力の大きさが補正されない。
このように、本実施形態の非接触給電装置2は、電力補正回路を一対備えていてもよい。そして、一対の電力補正回路のうちの第1電力補正回路23は、一次側コイルL1の両端のうちの第1端に電気的に接続され、一対の電力補正回路のうちの第2電力補正回路27は、一次側コイルL1の両端のうちの第2端に電気的に接続されていてもよい。
この構成では、第1電力補正回路23の出力点232での電圧と、第2電力補正回路27の出力点272での電圧とは、振幅が殆ど同じになる。したがって、この構成では、一対の電線51,52におけるコモンモード電圧VC1のみならず、コイルユニット7におけるコモンモード電圧の変動を抑制することができる。
さらに、一対の電力補正回路23,27は、互いに同じ構成であるのが好ましい。そして、制御回路24は、一対の電力補正回路23,27の互いに対応する複数のスイッチ素子Q5〜Q8,Q9〜Q12を同じタイミングで制御するように構成されているのが好ましい。この構成では、第1電力補正回路23の出力点232での電圧V3の振幅と、第2電力補正回路27の出力点272での電圧V4の振幅を殆ど一致させることができる。また、この構成では、電圧V3が正極性のときに電圧V4が負極性となるように、電圧V3,V4の位相を殆ど揃えることができる。言い換えれば、この構成では、電圧V3と電圧V4とを殆ど互いに逆位相とすることができる。したがって、この構成では、コモンモード電圧VC1の変動をより抑制することができる。また、この構成では、一対の電力補正回路23,27が同じ構成であるため、制御回路24による制御がし易い。
なお、当該構成を採用するか否かは任意である。もちろん、当該構成を採用せずとも、非接触給電装置2は、一対の電力補正回路23,27を備えるだけでも、コイルユニット7でのコモンモード電圧の変動を抑制する効果がある。
また、図6に示す構成と同様に、制御回路24は、第1制御回路241と第2制御回路242とで構成されていてもよい。この場合、第2制御回路242は、一対の電力補正回路23,27を制御する。
ところで、電力補正回路(第1電力補正回路)23は、本実施形態のように4つのスイッチ素子Q5〜Q8を用いた構成に限らず、たとえば図8に示すように、2つのスイッチ素子Q13,Q14を用いて構成されていてもよい。図8に示す第1電力補正回路23において、スイッチ素子Q13,Q14は、ゲートを2つ有するダブルゲート構造の半導体スイッチ素子である。また、スイッチ素子Q13は、コンデンサC31と直列に電気的に接続されている。スイッチ素子Q14は、スイッチ素子Q13およびコンデンサC31の直列回路に対して、並列に電気的に接続されている。スイッチ素子Q13の2つのゲートには、それぞれ駆動信号G7,G8が入力される。また、スイッチ素子Q14の2つのゲートには、それぞれ駆動信号G5,G6が入力される。
同様に、第2電力補正回路27は、たとえば図8に示すように、ダブルゲート構造の半導体スイッチ素子である2つのスイッチ素子Q15,Q16を用いて構成されていてもよい。図8に示すように、スイッチ素子Q15は、コンデンサC32と直列に電気的に接続されている。スイッチ素子Q16は、スイッチ素子Q15およびコンデンサC32の直列回路に対して、並列に電気的に接続されている。スイッチ素子Q15の2つのゲートには、それぞれ駆動信号G11,G12が入力される。また、スイッチ素子Q16の2つのゲートには、それぞれ駆動信号G9,G10が入力される。
図8に示す第1電力補正回路23は、駆動信号G5〜G8によって2つのスイッチ素子Q13,Q14が制御され、図1、図2に示す電力補正回路23(第1電力補正回路23)と等価に機能する。同様に、図8に示す第2電力補正回路27は、駆動信号G9〜G12によって2つのスイッチ素子Q15,Q16が制御され、図7A、図7Bに示す第2電力補正回路27と等価に機能する。
また、非接触給電装置2から非接触で出力電力が供給される(つまり給電される)負荷は、電動車両の蓄電池4に限らず、たとえば携帯電話機やスマートフォンなどの蓄電池を備えた電気機器、あるいは蓄電池を備えない照明器具などの電気機器であってもよい。
また、非接触給電装置2から非接触受電装置3への出力電力の伝送方式は、上述した磁界共鳴方式に限らず、たとえば電磁誘導方式、マイクロ波伝送方式などであってもよい。
また、インバータ回路22のスイッチ素子Q1〜Q4や、電力補正回路23,27のスイッチ素子Q5〜Q12は、それぞれバイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等の他の半導体スイッチング素子で構成されていてもよい。
また、インバータ回路22のダイオードD1〜D4は、それぞれスイッチ素子Q1〜Q4の寄生ダイオードに限らず、スイッチ素子Q1〜Q4に外付けされていてもよい。同様に、電力補正回路23,27のダイオードD5〜D12は、それぞれスイッチ素子Q5〜Q12の寄生ダイオードに限らず、スイッチ素子Q5〜Q12に外付けされていてもよい。
また、計測部25は、制御回路24と別に設けられる構成に限らず、制御回路24と一体に設けられていてもよい。さらに、計測部25は一次側コイルL1に流れる電流の大きさを計測できればよいので、電流センサ26は、一次側コイルL1と一次側コンデンサC12との間に限らず、一次側コイルL1に流れる電流の経路上にあればよい。
また、一次側コンデンサC11,C12は、図1に示すように、一次側コイルL1に直接に電気的に接続される構成に限られない。たとえば、一次側コンデンサC11は、インバータ回路22の第1出力点223と、電力補正回路23の入力点231との間に設けられてもよい。
ところで、本実施形態における一次側コイルL1および二次側コイルL2は、コアに対して導線が螺旋状に巻き付けられたソレノイド型のコイルであってもよいが、平面上において導線が渦巻き状に巻かれたスパイラル型のコイルであることが好ましい。スパイラル型のコイルは、ソレノイド型のコイルに比べて、不要輻射ノイズが生じにくいという利点がある。また、スパイラル型のコイルが用いられることで、不要輻射ノイズが低減される結果、インバータ回路22において使用可能な動作周波数の範囲が拡大されるという利点もある。以下、この点について詳細に説明する。
非接触給電システム1における共振特性は、上述したように一次側コイルL1と二次側コイルL2との結合係数に応じて変化し、ある条件下では、図9に示すように出力に2つの極大値が生じる、いわゆる双峰特性を示す。この共振特性(双峰特性)では、図9に示すように、第1周波数fr1と第3周波数fr3とのそれぞれで出力が極大となる2つの“山”が生じる。これら2つの“山”の間には、第2周波数fr2で出力が極小となる“谷”が生じる。ここで、第1周波数fr1と第2周波数fr2と第3周波数fr3とは、fr1<fr2<fr3の関係にある。以下では、第2周波数fr2を基準に、第2周波数fr2よりも低い周波数領域を「低周波領域」といい、第2周波数fr2よりも高い周波数領域を「高周波領域」という。
このような共振特性にあっては、低周波領域の“山”(第1周波数fr1で極大となる山)と、高周波領域の“山”(第3周波数fr3で極大となる山)とのそれぞれに、インバータ回路22が遅相モードで動作する領域(以下、「遅相領域」という)が生じる。このため、インバータ回路22は、その動作周波数f1が2つの“山”のいずれにある場合でも、遅相モードで動作可能である。
ここで、遅相モードとは、インバータ回路22の出力電流(一次側コイルL1を流れる電流)の位相が、インバータ回路22の出力電圧の位相よりも遅れた状態で、インバータ回路22が動作するモードである。遅相モードでは、インバータ回路22のスイッチング動作がソフトスイッチングになる。このため、遅相モードでは、スイッチ素子Q1〜Q4のスイッチング損失を低減でき、また、スイッチ素子にストレスが加わり難い。なお、図9に示す進相モードとは、インバータ回路22の出力電流(一次側コイルL1を流れる電流)の位相が、インバータ回路22の出力電圧の位相よりも進んだ状態で、インバータ回路22が動作するモードである。
インバータ回路22の動作周波数f1が低周波領域の“山”にある場合と、高周波領域の“山”にある場合とを比較すると、低周波領域の“山”にある場合の方が、不要輻射ノイズは小さくなる。つまり、高周波領域の“山”では、一次側コイルL1を流れる電流と、二次側コイルL2を流れる電流とは同位相になる。これに対して、低周波領域の“山”では、一次側コイルL1を流れる電流と、二次側コイルL2を流れる電流とが逆位相になる。このため、低周波領域の“山”では、一次側コイルL1で生じる不要輻射ノイズと、二次側コイルL2で生じる不要輻射ノイズとが、互いに相殺されることになり、非接触給電システム1全体でみれば不要輻射ノイズが低減される。
したがって、ソレノイド型のコイルが採用される場合でも、インバータ回路22の動作周波数f1が低周波領域の“山”の遅相領域(fr1〜fr2)にあれば、インバータ回路22が遅相モードで動作し、かつ不要輻射ノイズも低減されることになる。しかし、低周波領域の“山”の遅相領域は、一次側コイルL1と二次側コイルL2との結合係数に応じて変化するため、このような不確定な遅相領域にインバータ回路22の動作周波数f1を収める制御が必要になる。
これに対して、スパイラル型のコイルであれば、たとえインバータ回路22の動作周波数f1が高周波領域の“山”の遅相領域(fr3より高周波側)にあっても、ソレノイド型のコイルに比べれば不要輻射ノイズは大幅に低減される。つまり、スパイラル型のコイルが用いられることで、インバータ回路22の動作周波数f1は低周波領域の“山”の遅相領域に制限されず、インバータ回路22において使用可能な動作周波数f1の範囲が拡大されることになる。なお、高周波領域の“山”の遅相領域も不確定な領域ではあるが、インバータ回路22の動作周波数f1を十分に高い周波数から低周波側にスイープさせれば、動作周波数f1は高周波領域の“山”の遅相領域を通るので、複雑な制御は不要である。
以上述べた実施形態から明らかなように、本発明の第1の態様に係る非接触給電装置(2)は、一次側コイル(L1)を有するコイルユニット(7)と、一次側コイル(L1)に印加する交流電圧を出力する給電ユニット(6)とを備える。コイルユニット(7)と給電ユニット(6)とは、互いに隔てて設けられている。一次側コイル(L1)は、交流電圧が印加されることにより二次側コイル(L2)に非接触で出力電力を供給するように構成される。非接触給電装置(2)は、交流電圧の大きさを調整することで出力電力の大きさを補正する電力補正回路(23)をさらに備える。電力補正回路(23)は、コイルユニット(7)に含まれる。
また、本発明の第2の態様に係る非接触給電装置(2)は、第1の態様において、電力補正回路(23)を制御する制御回路(第2制御回路(242))をさらに備える。制御回路(第2制御回路(242))は、コイルユニット(7)に含まれる。
また、本発明の第3の態様に係る非接触給電装置(2)は、第2の態様において、給電ユニット(6)に含まれる回路(AC/DCコンバータ回路(21)、インバータ回路(22))を制御する第1制御回路(241)をさらに備える。電力補正回路(23)を制御する制御回路は、第2制御回路(242)である。第1制御回路(241)と第2制御回路(242)とは、信号線(53)により電気的に接続される。第1制御回路(241)は、信号線(53)を介して、同期信号を第2制御回路(242)に送信するように構成される。同期信号は、第1制御回路(241)による制御に第2制御回路(242)による制御を同期させるための信号である。
また、本発明の第4の態様に係る非接触給電装置(2)では、第1〜第3のいずれかの態様において、電力補正回路(23)は、コンデンサ(C31)および複数のスイッチ素子(Q5〜Q8)を有する。電力補正回路(23)は、複数のスイッチ素子(Q5〜Q8)が制御されることで、コンデンサ(C31)の充電電圧を一次側コイル(L1)に加減するように構成される。
また、本発明の第5の態様に係る非接触給電装置(2)は、第1〜第4のいずれかの態様において、電力補正回路(23,27)を一対備える。一対の電力補正回路(23,27)のうちの第1電力補正回路(23)は、一次側コイル(L1)の両端のうちの第1端に電気的に接続される。一対の電力補正回路(23,27)のうちの第2電力補正回路(27)は、一次側コイル(L1)の両端のうちの第2端に電気的に接続される。
また、本発明の第6の態様に係る非接触給電システム(1)は、第1〜第5のいずれかの態様の非接触給電装置(2)と、二次側コイル(L2)を有する非接触受電装置(3)とを備える。非接触受電装置(3)は、非接触給電装置(2)から非接触で出力電力が供給されるように構成される。
非接触給電装置(2)および非接触給電システム(1)は、伝導ノイズを低減することができる。