JPWO2017057523A1 - アストロサイト様細胞及びその調製方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:
(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び
(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程
を含み、
ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、
前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法。
[2]
前記誘導因子が、NFIA、NICD及びTet2CDを含む、[1]に記載の調製方法。
[3]
前記ヒト細胞が、ヒト線維芽細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[4]
前記ヒト細胞が、ヒトiPS細胞又はヒト神経幹細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[5]
前記ヒト細胞が、神経系疾患患者由来の細胞であるか、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の調製方法。
[6]
前記工程(1)における誘導因子の導入が、前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを導入することを含む、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の調製方法。
[7]
前記工程(1)において、
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか、又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化すること
をさらに含む、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の調製方法。
[8]
[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法で調製される、アストロサイト様細胞。
[9]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;及び
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[10]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;及び
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[11]
[8]に記載のアストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデル。
[12]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(3)工程(2)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[13]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(4)工程(3)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[14]
少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを成分として含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記誘導剤。
[15]
少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター;及び、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法が記載された取扱説明書を含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットであって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記キット。
[16]
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤、及び/又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つの活性化剤
をさらに含む、[15]に記載のキット。
(1)アストロサイトに特異的なマーカーであるグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を発現する。
(2)ニューロンからの神経突起の成長を支援する能力を有する。
(3)グルタミン酸を取り込む能力を有する。
なお本明細書において、アストロサイト様細胞のことを、「誘導アストロサイト細胞(induced Astrocyte)」、又は「iA細胞」とも呼ぶ。
(1)誘導因子をコードする核酸を含むレンチウィルスベクターの作製
NFIAをコードする核酸(配列番号1)を含むレンチウィルスベクター、NICDをコードする核酸(配列番号2)を含むレンチウィルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸(配列番号3)を含むレンチウィルスベクターをそれぞれ作製した。具体的には、CBhプロモーター下流において誘導因子(NFIA、NICD又はTet2CD)を発現するレンチウイルスプラスミドを、pCAG-HIVgpおよびpCMV-VSV-G-RSV-Revプラスミド(理化学研究所 三好浩之 博士より入手)と共に、Gibco(登録商標)FreeStyle(商標) 293 Expression Medium(Invitrogen社製)(以下、単に「Freestyle (商標)」とも呼ぶ)中で293T細胞に導入した。導入16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間培養した後、培養上清を0.45μmフィルターを用いて濾過した。得られた上清は原液、もしくは濃縮した後に、レンチウイルスベクターとして各種細胞に導入した。
ヒト成人線維芽細胞(NHDF-Ad, Lonza社)を含むDMEM培地を、6ウェルのプレートまたは10cmのディッシュにそれぞれ5×104細胞/ウェルまたは3×105細胞/ディッシュの密度で播種した。播種の24時間後、培地を、(1)で調製したレンチウィルスベクターと4μg/mLのポリブレンを含む培地と交換した。感染の16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。細胞を培地中でさらに48時間維持した後、AGM培地(商標)(Lonza社)を用いて増殖させた。当該培地は、分析するまで3日ごとに交換した。分析は、感染後2〜3週間後に行った。
Kohyama, J. 他,The Journal of cell biology, 2010, 189, 159-170に記載の方法にしたがって、得られたアストロサイト様細胞の免疫細胞化学法による分析を行った。具体的には、細胞を室温にて4%パラフォルムアルデヒドで固定した。固定後、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)で細胞を洗浄後、1次抗体入り0.3%Triton/5%FBS/PBS溶液(抗体希釈溶液)で細胞を室温で3時間、もしくは4度で一晩処理した。1次抗体処理後、細胞をPBSで洗浄したのち、蛍光マーカーを結合した2次抗体入りの抗体希釈溶液で、室温で60〜90分処理し、PBS洗浄した。核はDAPIもしくはHoechstで染色した。染色した細胞はスライドガラスにマウントした。
NFIAをヒト線維芽細胞へと導入した場合、GFAP発現細胞は観察されなかった。なお、マウス神経線維芽細胞を用いた場合にはNFIAのみを導入することで、GFAP発現細胞へと分化誘導することができた(以下の参考例1を参照)。
NFIA及びNICDをヒト線維芽細胞へと導入した場合、NFIA及びTet2CDをヒト線維芽細胞へと導入した場合、並びにNFIA、NICD及びTet2CDをヒト線維芽細胞へと導入した場合において、GFAPを発現するアストロサイト様細胞へと分化誘導することができた。特に、3つの誘導因子を導入した場合には、45.1%と高効率でアストロサイト様細胞へと分化誘導することができた(図1)。
得られたアストロサイト様細胞は、線維芽細胞であれば通常発現している平滑筋アクチン(SMA)を発現していないことが確認された。
アストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合における、ニューロンからの神経突起の長さの定量
アストロサイトの機能的特徴として、ニューロンからの神経突起の成長を支援する能力が挙げられる。実施例1で得られたアストロサイト様細胞が当該機能を有することを明らかとするために、ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF−Neo)及びヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)(いずれもLonza 社より購入)を出発細胞として、実施例1に記載の方法と同様にして、NFIAのcDNA(配列番号1)を組み込んだレンチウィルスベクター、NICDのcDNA(配列番号2)を組み込んだレンチウィルスベクター、及びTet2CDのcDNA(配列番号3)を組み込んだレンチウィルスベクターを導入し、2〜3週間培養して分化誘導したアストロサイト様細胞を、Millicell セルカルチャーインサート(24穴、PCF膜、0.4 μm、Millipore社より購入)内に播種し、37℃で一日培養した。また、E15.5マウス由来大脳皮質ニューロンを、Gibco(登録商標)B27(登録商標) Supplementを添加したDMEM/F12培地を用いてガラスカバースリップ上に播種し、37℃で一日培養した。アストロサイト様細胞を播種したMillicell セルカルチャーインサート内の培地を B27/ DMEM/ F12培地に置換した後、Millicell セルカルチャーインサートをカバースリップ上に3日間セットし、37℃で共培養を行った。対照群として、ヒト新生児線維芽細胞(NHDF−Neo)、ヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)及びヒト初代培養アストロサイト(HNA)のそれぞれをE15.5マウス由来の大脳皮質ニューロンと共培養したものを用いた。なお、神経突起の長さの定量は、抗MAP2抗体(Sigma社)を用いてニューロンを標識した後に、蛍光顕微鏡によって画像を取得し、ニューロンJプラグインを有するImage Jソフトウエア(Meijering 他, Journal of the International Society for Analytical Cytology, 2004, 58, 167-176)を用いて行った。結果を図2に示す。アストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合において、対照群である線維芽細胞とニューロンと共培養した場合と比較して、ニューロンからの神経突起の伸長促進が有意に認められた。
アストロサイト様細胞のグルタミン酸取り込み能力の測定
アストロサイトの機能的特徴として、グルタミン酸を取り込む能力が挙げられる。実施例1で得られたアストロサイト様細胞が当該機能を有することを明らかとするために、以下の実験を行った。ヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)、実施例1においてNFIA、NICD及びTet2CDを導入して得られたアストロサイト様細胞およびヒト初代培養アストロサイトをpoly-L-Lysine (Sigma社)でコートした24ウェルプレートに播種した。各種細胞を、L−グルタミン酸(Nacalai社)およびトリチウム標識したL-グルタミン酸(L-[2,3,4-3H])(American Radiolabeled Chemicals Inc.社)を添加した、ナトリウムイオン含有緩衝液もしくはナトリウムイオン不含緩衝液を用いて、37℃にてインキュベートした。インキュベート後、ナトリウムイオン不含緩衝液を用いて細胞を洗浄し、0.1N NaOH 溶液を用いて細胞を溶解した。細胞溶解液を液体シンチレーションカクテル(National Diagnostics社)と混合し、液体シンチレーションカウンターを用いて放射線量を測定した。また、各種細胞の総タンパク質量をBCA法にて定量した。グルタミン酸取り込み量は、ナトリウムイオン依存性取り込み量を、総タンパク質量にて補正し、評価した。結果を図3に示す。
ヒトES細胞及びiPS細胞から誘導された神経幹細胞は、アストロサイト様細胞への分化に抵抗することが知られている(Falk, A. 他, PloS ONE , 2012, Vol. 7 (1), e29597)。そのような神経幹細胞に対して、本願発明で使用される誘導因子を導入することによる効果を試験した。
上記プラスミドベクターをFreeStyle(商標)中でPlat−E細胞に導入した。導入16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間培養した後、培養上清を0.45μmフィルターを用いて濾過した。得られた上清は原液、もしくは濃縮した後に、レトロウイルスベクターとして本実施例で使用した。
UbCプロモーター下流においてマウスSlc7a1を発現するレンチウイルスプラスミド (Takahashi, K.他, Cell, 2007,131(5) :861-72.)、pCAG-HIVgpおよびpCMV-VSV-G-RSV-Revプラスミドと共にFreeStyle(商標)中で293T細胞に導入し、作成されたレンチウイルスをlt−NES細胞に導入した。
その後、当該lt−NES細胞を含む培地(1% N2 Supplement, 0.1% B27 Supplementを含むDMEM/F12培地(以下、「lt−NES用培地」とも呼ぶ))に、上記で調製したレトロウィルスベクターを加え、37℃で24時間培養し、その後1%FBSを含むlt−NES用培地へと培地交換し、GFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。レトロウィルスベクターを導入して一週間経過後におけるGFAP発現細胞の割合は全体の20%超であった。さらに、2週間経過後においては、ほぼ全てのlt−NES細胞がGFAP発現細胞へと誘導された(図4)。
ヒトiPS細胞(京都大学iPS細胞研究所より入手)を、iMatrix-511(株式会社ニッピより購入)を用いてコーティングした培養容器、およびAK03培地(味の素株式会社より購入)を用いて維持培養した。実施例1(1)と同様にして、誘導因子をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを調製し、ヒトiPS細胞に導入した。レンチウィルスベクターを導入したiPS細胞は、導入72時間後に、AGM培地を用い、iMatrix-511コーティングしていない培養容器へ継代した。培地を3〜4日毎に交換し、ヒトiPS細胞からGFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。なお、誘導因子としては、NFIA、NICD及びTet2CDの3種類を使用した。ベクターを導入して2週間経過後におけるGFAP発現細胞の割合は全体の約80%であった。
(1)Tet2CD、NFIA及びNICDのcDNAをporcine teschovirus-1由来2AペプチドcDNAを用いて連結した。この配列を組み込んだレンチウイルスベクターをヒト成体線維芽細胞(NHDF-Ad, Lonza社)に導入し、11日間培養した。得られた細胞は、GFAP陽性であった。蛍光顕微鏡写真を図5に示す。
(2)Tet2CDおよびNFIA、NICDのcDNAをporcine teschovirus-1由来2AペプチドcDNAを用いて連結し、この配列を組み込んだエピソーマルベクターを調製した。
その後、当該lt−NES細胞に、上記で調製されたエピソーマルベクターを導入し、1%FBSを含むlt−NES用培地を用いて7日間培養した。その後、AGM培地を用いてさらに7日間培養した。得られた細胞はGFAP陽性であった。蛍光顕微鏡写真を図5に示す。
アレキサンダー病は、GFAP遺伝子変異によって起こる疾患であることが知られている(Brenner, M. 他, Nature genetics, 2001, 27, 117-120)。アレキサンダー病患者のGFAP遺伝子は、当該遺伝子中のミスセンス点変異(C715T)によって、GFAPのアルギニン239がシステインへ変異している(R239C)。また、アレキサンダー病患者のアストロサイトにおいて、αBクリスタリン(CRYAB)の発現が亢進することが知られている(Der Perng, M.他, American journal of human genetics, 2006, 79, 197-213)。また、アレキサンダー病患者のアストロサイトでは、変異GFAPタンパク質が凝集してローゼンタール線維が生じることが知られている (Dinda, A.K.他, Acta neuropathologica, 1990, 79,456-460)。
CRISPR-Cas9系 (Ran, F.A.他, Cell, 2013, 154, 1380-1389)を用いて、GFAP遺伝子中にミスセンス点変異(C715T)を有するlt−NES細胞を調製した。その後当該細胞に、実施例4と同様にして、NFIAをコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、NICDをコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸を含むレトロウイルスベクターを導入し、GFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。
レット症候群はX染色体上に存在するMECP2遺伝子の変異によって引き起こされる。マウス遺伝子に関する最近の知見では、アストロサイトがレット症候群の発症に重要な役割を果たしていることが示唆されている(Ballas, N 他, Nature neuroscience, 2009, 12, 311-317;Nguyen, M.V. 他, The Journal of neuroscience, 2012, 32, 10021-10034)。また、レット症候群患者に由来するiPS細胞から誘導されたアストロサイト様細胞は、ニューロンの成熟に不利な影響を与えることが報告されている(Williams他、 Hum Mol Genet. 2014 Jun 1; 23(11): 2968-80)。
実施例1においてNFIA、NICD及びTet2CDを導入して調製されたヒト成人線維芽細胞由来のアストロサイト様細胞、及び実施例4で調製されたlt−NES細胞由来のアストロサイト様細胞において、MECP2タンパク質の発現を抑制するために、レンチウイルスによりMECP2の標的配列(配列番号24)に対するshRNAを発現させた。また、当該shRNAと同時に当該shRNAにより抑制されない変異型MECP2を発現するレンチウイルスを導入した。これらの細胞を用い、E15.5マウス由来の大脳皮質ニューロンと共に3日間培養した。結果を図7及び8に示す。
p16INK4aのcDNA(配列番号25)を組み込んだレンチウィルスベクターを、実施例1(1)と同様にして調製した。また、当該cDNAを組みこんでいない空のレンチウィルスベクターを調製してコントロールとして用いた。
p14ARF遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号14及び15)を組みこんだレンチウィルスベクター、p53遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号16及び17)を組みこんだレンチウィルスベクター、p21遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号18及び19)を組みこんだレンチウィルスベクター、p16INK4a遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号20及び21)を組みこんだレンチウィルスベクター、及びヒト成人線維芽細胞の遺伝子中には存在しない塩基配列を標的とするshRNAをコードする核酸(配列番号22及び23)を組みこんだレンチウィルスベクター(コントロール)を、実施例1(1)と同様にして調製した。
誘導因子候補として、マウスNFIA、NICD、Tet2CD、REST/NRSF−VP16を選択した。これらの各誘導因子をコードする核酸(それぞれ、配列番号1〜4)を含むレトロウィルスベクターを、実施例4と同様にして調製した。当該レトロウィルスベクターをマウス胚性線維芽細胞(MEF)に導入した。導入において、上記レトロウィルスベクターのうちの1種類を用いるか、又はそれらのうちの2種類又は3種類を組み合わせて用いた。GFAPの発現を因子の導入の4日後に調べた。GFAP発現細胞の割合を図14に示す。
Claims (16)
- ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:
(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び
(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程
を含み、
ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、
前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法。 - 前記誘導因子が、NFIA、NICD及びTet2CDを含む、請求項1に記載の調製方法。
- 前記ヒト細胞が、ヒト線維芽細胞である、請求項1又は2に記載の調製方法。
- 前記ヒト細胞が、ヒトiPS細胞又はヒト神経幹細胞である、請求項1又は2に記載の調製方法。
- 前記ヒト細胞が、神経系疾患患者由来の細胞であるか、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調製方法。
- 前記工程(1)における誘導因子の導入が、前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを導入することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。
- 前記工程(1)において、
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか、又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化すること
をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で調製される、アストロサイト様細胞。
- 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;及び
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。 - 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;及び
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。 - 請求項8に記載のアストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデル。
- 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(3)工程(2)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。 - 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(4)工程(3)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。 - 少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを成分として含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記誘導剤。
- 少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター;及び、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法が記載された取扱説明書を含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットであって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記キット。
- p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤、及び/又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つの活性化剤
をさらに含む、請求項15に記載のキット。
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