JPWO2017057523A1 - アストロサイト様細胞及びその調製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程を含み、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法に関する。

Description

本発明は、ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法、当該方法で調製されるアストロサイト様細胞、アストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデル、神経系疾患患者由来のアストロサイト様細胞を用いて神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤、及びヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットに関する。
アストロサイトは、多くの神経系疾患の病理生理学における主要な役割を果たすことが徐々に認識されつつある神経系細胞である。(非特許文献1)。
神経系疾患に対するアストロサイトの病理生理学的役割を研究するために、ヒトアストロサイトの迅速かつ大量の供給が必要とされる。しかし現時点において、ヒトアストロサイトの供給源は限られている。生きている神経系疾患患者から生検によりアストロサイトを入手することは倫理的に不可能である。神経系疾患患者の死後脳からアストロサイトを入手することが可能であるが、大量供給は極めて困難である。
ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化誘導してアストロサイトを調製する方法が報告されている(非特許文献2)。
また、マウスの線維芽細胞に対して、NFIA (Nuclear factor I/A)、NFIB (Nuclear factor I/B)及びSOX9 (SRY (sex determining region Y)-box 9)を導入してアストロサイト様細胞を直接誘導する方法が報告されている(非特許文献3)。当該文献中において、当該3因子をヒト線維芽細胞に導入してアストロサイト様細胞へと誘導することが試みられている。
CDKN2A遺伝子座に存在するp14ARF遺伝子およびp16INK4遺伝子、またはp16INK4遺伝子をノックダウンすることにより、ヒト線維芽細胞からiPS細胞へのリプログラミングの効率を向上させることができることが報告されている(非特許文献4)。また、CDKN2A遺伝子座に存在するp14ARF遺伝子又はp16INK4遺伝子をノックダウンすることにより、ヒト線維芽細胞からニューロンへのダイレクト・リプログラミングの効率を向上させることができることが報告されている(非特許文献5)。
p14ARF及びp16INK4は、互いに異なるシグナル伝達経路に存在する分子であるが、いずれのシグナル伝達経路も細胞のアポトーシス及び老化に関与する。第一のシグナル伝達経路におけるp14ARFの下流には、MDM2、p53及びp21が存在する。また、第二のシグナル伝達経路におけるp16INK4の下流には、サイクリンD1、CDK4、CDK6、Rb及びE2Fが存在する。
上記第一のシグナル伝達経路におけるp14ARFの下流に存在するp53遺伝子をノックダウンすることにより、又はp53タンパク質の機能を阻害するp53ドミナントネガティブ変異体をヒト線維芽細胞に導入することにより、ヒト線維芽細胞からiPS細胞へのリプログラミングの効率を向上させることができることが報告されている(非特許文献6)。また、p53ドミナントネガティブ変異体を細胞に導入することにより、ヒト線維芽細胞からニューロンへのダイレクト・リプログラミングの効率を向上させることができることが報告されている(非特許文献7)。
Molofsky, A.V. 他, Genes & development, 2012, 26, 891-907 Krencik, R. 他, Nature biotechnology, 2011, 29, 528-534. Caiazzo, 他, Stem Cell Reports, 2015, 4, 25-36 Li, H. 他, Nature, 2009, 460, 1136-1139 Sun, C., 他, Nature Communications, 5, Article Number: 4112, June 17, 2014 Hong, H., 他, Nature, 2009, 460, 1132-1135 Liu, X., 他, Science China Life Sciences, 2014, 57, 867-875
iPS細胞から分化誘導してアストロサイトを調製する場合、数か月もの期間が必要であり、ヒトアストロサイトの迅速な供給という要求を満たすことができない。
また、非特許文献3にて報告されている方法では、ヒト新生児線維芽細胞に対してNFIA、NFIB及びSOX9を導入後、3週間の培養後においてもアストロサイト様細胞が全体の2%程度しか観察されず、その誘導効率は極めて低い。
従って本発明は、取得が極めて困難なヒトアストロサイトと同様の特性を有するアストロサイト様細胞を、取得容易なヒト細胞を用いて迅速かつ高効率に調製することを可能とする新規手法の提供を課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、ヒト体細胞に特定の誘導因子(NICD (Notch 1 intercellular domain) 及びTet2CD (TET (Ten-eleven translocation)2 catalytic domain)の少なくとも1つ、及びNFIA)を導入することで、iPS細胞の調製を経ることなく、ヒトアストロサイト様細胞を極めて短期間で高効率に調製することができることを見出した。さらに本発明者らは、iPS細胞のような多能性幹細胞、及び神経幹細胞のような成体幹細胞に対して上記と同様の誘導因子を導入した場合においても、ヒトアストロサイト様細胞を極めて短期間で高効率に調製することができることを見出した。本発明は、これらの驚くべき知見に基づく。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
[1]
ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:
(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び
(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程
を含み、
ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、
前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法。
[2]
前記誘導因子が、NFIA、NICD及びTet2CDを含む、[1]に記載の調製方法。
[3]
前記ヒト細胞が、ヒト線維芽細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[4]
前記ヒト細胞が、ヒトiPS細胞又はヒト神経幹細胞である、[1]又は[2]に記載の調製方法。
[5]
前記ヒト細胞が、神経系疾患患者由来の細胞であるか、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞である、[1]〜[4]のいずれか1つに記載の調製方法。
[6]
前記工程(1)における誘導因子の導入が、前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを導入することを含む、[1]〜[5]のいずれか1つに記載の調製方法。
[7]
前記工程(1)において、
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか、又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化すること
をさらに含む、[1]〜[6]のいずれか1つに記載の調製方法。
[8]
[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法で調製される、アストロサイト様細胞。
[9]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;及び
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[10]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;及び
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[11]
[8]に記載のアストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデル。
[12]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(3)工程(2)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[13]
神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
(1)健常者由来の細胞から、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;
(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
(4)工程(3)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
を含む、前記方法。
[14]
少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを成分として含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記誘導剤。
[15]
少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター;及び、[1]〜[7]のいずれか1つに記載の方法が記載された取扱説明書を含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットであって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記キット。
[16]
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤、及び/又は
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つの活性化剤
をさらに含む、[15]に記載のキット。
本発明の方法によれば、ヒトアストロサイトを迅速かつ大量に供給することが可能となる。また、本発明の方法で得られたヒトアストロサイトを用いて、インビトロの新規疾患モデルを構築することが可能となる。
NFIAをコードする核酸を含むレンチウィルスベクター、NICDをコードする核酸を含むレンチウィルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸を含むレンチウィルスベクターをヒト線維芽細胞に導入し、11日間培養した後における、誘導されたGFAP発現細胞の割合を示す。縦軸は、DAPI陽性細胞数に対する、GFAP陽細胞数の割合を示す。図中、「Fibro」は、誘導因子を導入していないヒト線維芽細胞を示す。「NFIA」、「Tet2CD」、「NICD」はそれぞれ、NFIA、Tet2CD、NICDが導入されたヒト線維芽細胞を示す。図中、「NFIA/Tet2CD」、「Tet2CD/NICD」、「NICD/NFIA」はそれぞれ、NFIAとTet2CDが導入されたヒト線維芽細胞、Tet2CDとNICDが導入されたヒト線維芽細胞、NICDとNFIAが導入されたヒト線維芽細胞を示す。図中、「NIFA/NICD/Tet2CD」は、NFIA、NICD及びTet2CDが導入されたヒト線維芽細胞を示す。 アストロサイト様細胞をニューロンと共培養した後における、蛍光顕微鏡による当該ニューロンの画像、及びニューロンから伸長した神経突起の長さの測定結果を示す。画像におけるスケールバーは100μmである。蛍光顕微鏡画像は、抗MAP2抗体(Sigma社)を用いてニューロンを標識して得た。グラフの縦軸は、ニューロン1細胞当たりの神経突起長さの平均を示す。また、図中、「w/o」は、アストロサイト様細胞と共培養しない場合(すなわち、ニューロンのみ)を示す。図中、「w/NHDF−Ad」は、ヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)とニューロンとを共培養した場合を示す。図中、「w/NHDF−Neo」は、ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF−Neo)とニューロンとを共培養した場合を示す。図中、「w/iAs(NHDF−Ad)」は、ヒト成人皮膚線維芽細胞から誘導されたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合を示す。図中、「w/iAs(NHDF−Neo)」は、ヒト新生児皮膚線維芽細胞から誘導されたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合を示す。図中、「w/hAstrocytes」は、ヒトアストロサイトとニューロンとを共培養した場合を示す。 アストロサイト様細胞のグルタミン酸取り込み能力の測定結果を示す。 NFIAをコードする核酸を含むレトロウィルスベクター、NICDをコードする核酸を含むレトロウィルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸を含むレトロウィルスベクターをヒトlt−NES細胞 (long-term self-renewing neuroepithelial stem cells) に導入し、1週間、及び2週間培養した後における、誘導されたGFAP発現細胞の割合を示す。縦軸は、全細胞数に対するGFAP陽細胞数の割合を示す。図中、「lt−NES iA」は、lt−NES細胞から誘導されたアストロサイト様細胞を示す。 NFIA、NICD、及びTet2CDをコードする核酸を全て含むレンチウィルスベクターを用いて、ヒト成人線維芽細胞及びlt−NES細胞から誘導された、アストロサイト様細胞の蛍光顕微鏡画像を示す。 lt−NES細胞から分化誘導して得られた、アレキサンダー病のインビトロモデルにおいて、CRYABの発現量が対照群と比較して上昇したことを示す。縦軸は、GFAP陽性細胞数に対する、GFAP陽性かつCRYAB(Alpha-crystallin B chain) 陽性細胞数の割合を示す。図中、「Control」は、ミスセンス点変異(C715T)を導入していないlt−NES細胞から誘導されたアストロサイト様細胞を示し、「AxD」は、ミスセンス点変異(C715T)が導入されたlt−NES細胞から誘導されたアストロサイト様細胞を示す。 MeCP2に対するショートヘアピンRNA(shRNA)を発現するレンチウィルスベクターを線維芽細胞由来のアストロサイト様細胞に導入した後にマウスE15.5初代培養大脳皮質ニューロンと共培養した場合の、蛍光顕微鏡による当該ニューロンの画像、及びニューロンから伸長した神経突起の長さの測定結果を示す。蛍光顕微鏡画像は、抗MAP2抗体(Sigma社)を用いてニューロンを標識して得た。図中、「w/ iA (control)」は、MECP2に対するshRNAを発現させていないアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養したもの(対照群)の結果を示す。図中、「w/ iA (shMeCP2)」は、MECP2に対するshRNAを発現させたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養したもの結果を示す。図中、「w/ iA (Rescue)」は、MECP2に対するshRNAおよび、shRNAにより発現を抑制されない野生型MECP2の両方を発現するアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養したものを示す。グラフの縦軸は、対照群におけるニューロン1細胞当たりの神経突起長さ平均に対する共培養群の神経突起長さ平均の比率を示す。 MeCP2に対するshRNAを発現するレンチウィルスベクターをlt−NES細胞由来のアストロサイト様細胞に導入した後にマウスE15.5初代培養大脳皮質ニューロンと培養した場合の、ニューロンから伸長した神経突起の長さの測定結果を示す。縦軸は、ニューロン1細胞当たりの神経突起長さの平均を示す。図中、「w/ iA (shMeCP2)」は、MECP2に対するshRNAを発現させたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養したものの結果を示す。図中、「w/ iA (Rescue)」は、MECP2に対するshRNAおよび、shRNAにより抑制されない変異型MECP2の両方を発現するアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養したものを示す。 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導において、p16INK4aを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「3 factors」は、NFIAをコードする核酸を含むレンチウィルスベクター、NICDをコードする核酸を含むレンチウィルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸を含むレンチウィルスベクターを導入したヒト線維芽細胞であることを示す。図中、「+p16INK4a」は、上記3因子をコードするベクターの他に、p16INK4aをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「+Ctl」は、p16INK4aをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターの代わりに、発現させるべき遺伝子配列を含まない空のレンチウィルスベクターを用いた場合の結果を示す。左の棒グラフの縦軸(% of GFAP(+)/DAPI)は、誘導因子をコードするベクターを細胞に導入して11日間培養した後おけるGFAP陽性細胞数の、DAPI陽性細胞数に対する割合(GFAP陽性細胞数/DAPI陽性細胞数)を%表示で示す。右の棒グラフの縦軸(% of GFAP(+)/Initial cells)は、誘導因子をコードするベクターを細胞に導入して11日間培養した後おいて回収されたGFAP陽性細胞数の、培養開始時の初期細胞数に対する割合(GFAP陽性細胞数/初期細胞数)を%表示で示す。 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導において、細胞内のp16INK4a遺伝子をノックダウンした場合の結果を示す。図中、「3 factors」、「% of GFAP(+)/DAPI」及び「% of GFAP(+)/DAPI」の定義は、図9と同一である。図中、「+shp16INK4a」は、上記3因子をコードするベクターの他に、p16INK4a遺伝子に対するショートヘアピンRNA(shp16INK4a)をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「+Ctl」は、shp16INK4aをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターの代わりに、ヒトには存在しない配列を標的配列とするショートヘアピンRNAをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導において、細胞内のp53遺伝子をノックダウンした場合の結果を示す。図中、「3 factors」、「% of GFAP(+)/DAPI」及び「% of GFAP(+)/DAPI」の定義は、図9と同一である。図中、「+shp53」は、3因子の他に、p53遺伝子に対するショートヘアピンRNA(shp53)をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「+Ctl」は、shp53をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターの代わりに、ヒトには存在しない配列を標的配列とするショートヘアピンRNAをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導において、細胞内のp14ARF遺伝子をノックダウンした場合の結果を示す。図中、「3 factors」、「% of GFAP(+)/DAPI」及び「% of GFAP(+)/DAPI」の定義は、図9と同一である。図中、「+shp14ARF」は、3因子の他に、p14ARF遺伝子に対するショートヘアピンRNA(shp14ARF)をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「+Ctl」は、shp14ARFをコードする核酸を含むベクターの代わりに、ヒトには存在しない配列を標的配列とするショートヘアピンRNAをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導において、細胞内のp21遺伝子をノックダウンした場合の結果を示す。図中、「3 factors」、「% of GFAP(+)/DAPI」及び「% of GFAP(+)/DAPI」の定義は、図9と同一である。図中、「+shp21」は、3因子の他に、p21遺伝子に対するショートヘアピンRNA(shp21)をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。図中、「+Ctl」は、shp21をコードする核酸を含むベクターの代わりに、ヒトには存在しない配列を標的配列とするショートヘアピンRNAをコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを細胞に導入した場合の結果を示す。 マウスNICD、マウスTet2CD、マウスNFIA、及びマウスREST/NRSF−VP16のうち、1つ、2つ又は3つをマウス線維芽細胞に導入し、培養した後における、誘導されたGFAP発現細胞の割合を示す。縦軸は、1cm2当たりのGFAP発現細胞の数を示す。横軸には、導入された誘導因子を示す。
本発明の一態様は、ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程を含み、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法に関する。以下で、当該調製方法を「本発明のアストロサイト様細胞の調製方法」又は「本発明の調製方法」とも呼ぶ。
本明細書において、「アストロサイト様細胞」とは、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞をインビトロにて分化誘導することによって得られる細胞であって、アストロサイトと同様の特性を有する細胞のことである。具体的には、以下の特性を有する。
(1)アストロサイトに特異的なマーカーであるグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)を発現する。
(2)ニューロンからの神経突起の成長を支援する能力を有する。
(3)グルタミン酸を取り込む能力を有する。
なお本明細書において、アストロサイト様細胞のことを、「誘導アストロサイト細胞(induced Astrocyte)」、又は「iA細胞」とも呼ぶ。
本明細書において「誘導因子」とは、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞及びヒト成体幹細胞をアストロサイト様細胞へと分化誘導することができるタンパク質のことである。本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において使用される誘導因子は、NFIA(Nuclear factor I/A)を含み、かつNICD(Notch 1 intercellular domain)及びTet2CD(Tet2 catalytic domain)の少なくとも1つを含む。具体的には、誘導因子は、NFIA及びNICDを含んでも良く、NFIA及びTet2CDを含んでも良く、NFIA、NICD及びTet2CDを含んでもよい。好ましくは、誘導因子は、NFIA、NICD及びTet2CDを含む。誘導因子は、野生型タンパク質の他、当該野生型タンパク質のアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、野生型タンパク質と同等のアストロサイト様細胞への誘導化能力を有する変異タンパク質であってもよい。例えば、誘導因子としてマウスNFIA、マウスNICD及びマウスTet2CDを選択した場合、それらの野生型タンパク質(それぞれ配列番号8、9及び10)の使用のみならず、それらの配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有し、アストロサイト様細胞への誘導化能力を有する変異タンパク質の使用も、本願発明の調製方法における誘導因子の使用に含まれる。また誘導因子は、誘導因子タンパク質それ自体の他、当該タンパク質と他のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドなどとの融合タンパク質の形態であってもよい。当該他のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは特に限定されないが、例えばHisタグ、FLAGタグ、Mycタグ、V5タグ、PAタグ及びHAタグのようなプロテインタグ、及びHIVウィルス由来のTATペプチドのような細胞膜透過性ペプチドを含む。当該融合タンパク質がアストロサイト様細胞への誘導化能力を有する限り、当該融合タンパク質の使用も本願発明の調製方法の誘導因子の使用に含まれる。
本発明の調製方法で使用される誘導因子の由来は、特に限定されないが、好ましくは哺乳動物由来であり、より好ましくは霊長類(ヒト、サルなど)、げっ歯類(マウス、ラット、モルモットなど)、ネコ、イヌ、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ロバ、ヤギ又はフェレット由来であり、特に好ましくはマウス又はヒト由来である。本発明の調製方法で使用される誘導因子の組み合わせは、異種由来の誘導因子の組み合わせでもよいし、同一種由来の誘導因子の組み合わせでもよい。好ましくは、本発明の調製方法で使用される誘導因子の組み合わせは、同一種由来の誘導因子の組み合わせである。
本明細書において「体細胞」とは、生殖系列にある細胞(例えば、卵細胞、精子細胞、卵原細胞や精原細胞等とそれらの前駆細胞)または発生初期胚由来の万能性未分化細胞(例えば胚性幹細胞)以外の、動物個体を構成する分化細胞のことである。動物個体は、成体であっても胎児や胚であってもよい。体細胞は、株化された細胞であっても、組織から単離された初代培養細胞であってもよいが、染色体数などが正常であることが好ましい。体細胞の由来となる組織や器官も特に限定されず、皮膚、肝臓、血液などを含む。体細胞の性状としては、受精細胞が有する全分化能を一部でも失った細胞であれば特に限定されず、例えば、線維芽細胞、上皮細胞、肝細胞、末梢血細胞などを含む。
本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において、出発細胞として使用されるヒト体細胞としては、アストロサイト様細胞が分化誘導される細胞であれば特に限定されないが、ヒト線維芽細胞又はヒト末梢血細胞が好ましい。
本明細書において、「多能性幹細胞」とは、胎盤以外のすべての細胞に分化可能な分化多能性を有する細胞すべてを含み、胚性幹細胞(Embryonic Stem cell(ES細胞))及び人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cells (iPS細胞))を含む。
「ES細胞」とは、動物の発生初期段階である胚盤胞期の胚の一部に属する内部細胞塊より作られる幹細胞のことである。
「iPS細胞」とは、哺乳動物体細胞又は未分化幹細胞に特定の因子を導入することにより、ES細胞と同様の分化多能性を有するように再プログラミング(初期化)された細胞のことである。
iPS細胞は、マウス線維芽細胞にOct3/4、Sox2、Klf4、c−Mycの4因子を導入することにより、初めて樹立された(Takahashi K, Yamanaka S., Cell,(2006)126:663-676)。その後、同様の4因子をヒト線維芽細胞に導入することにより、ヒトiPS細胞も樹立され(Takahashi K, Yamanaka S.他, Cell,(2007)131:861-872.)、さらにc−Mycを含まない方法等(Nakagawa M, Yamanaka S., Nature Biotechnology,(2008)26,101-106)、腫瘍形成誘導が低いより安全性の高いiPS細胞を樹立する方法の確立にも成功している。
また、上記とは異なる因子(OCT3/4、SOX2、NANOG、LIN28)をヒト線維芽細胞に導入して作製された人工多能性幹細胞が報告されている(Yu J., Thomson JA.他, Science, 2007, 318:1917-1920.)。また、皮膚細胞にOCT3/4、SOX2、KLF4、C−MYC、hTERT、mSV40large Tの6遺伝子を導入して作製した人工多能性幹細胞が報告されている(Park IH,Daley GQ.他, Nature, 2007, 451:141-146)。このほか、OCT3/4、KLF4、低分子化合物をマウス神経前駆細胞等に導入して作製された人工多能性幹細胞(Shi Y., Ding S.他, Cell Stem Cell, 2008, Vol3,Issue 5,568-574)、SOX2,C−MYCを内因性に発現しているマウス神経幹細胞にOCT3/4,KLF4を導入して作製された人工多能性幹細胞(Kim JB.,Scholer HR.他,Nature,(2008)454,646-650)、C−MYCを用いることなく、Dnmt阻害剤やHDAC阻害剤を利用して作製された人工多能性幹細胞(Huangfu D.,Melton,DA.他,Nature Biotechnology,(2008)26,No7,795-797)が報告されている。
本明細書において「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」は、上記の定義を満たし、本発明の目的を損なわない限りにおいて、公知の人工多能性幹細胞、及びこれと等価な人工多能性幹細胞のすべてを含み、細胞源、導入因子、導入方法等は特に限定されない。
本明細書において、「成体幹細胞」とは、分化組織に見られる非分化細胞であり、増殖し、一以上の細胞種へ分化する能力を有する。成体幹細胞としては、例えば神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞などが挙げられる。本発明のアストロサイト様細胞の調製方法で使用される成体幹細胞としては、神経幹細胞が好ましい。なお、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法で使用される成体幹細胞の由来は特に限定されず、ヒト生体から入手されたものであってもよいし、多能性幹細胞から誘導して得られたものであっても良い。本発明のアストロサイト様細胞の調製方法で使用される成体幹細胞としては、多能性幹細胞から誘導された成体幹細胞が好ましく、ヒトiPS細胞から誘導されたヒト神経幹細胞(例えばヒトiPS細胞から誘導されたlt−NES細胞)がより好ましい。
本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の一実施形態において、出発細胞であるヒト細胞は、神経系疾患患者由来の細胞であってもよい。当該神経系疾患としては、特に限定されないが、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、自閉症、アレキサンダー病、レット症候群などが挙げられる。
本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の一実施形態において、出発細胞であるヒト細胞は、神経系疾患を患っていない健常者由来の細胞であってもよい。当該健常者由来の細胞は、神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を遺伝子に導入された、健常者由来の細胞であってもよい。変異の導入は、当業者に周知の方法(例えば、CRISPR-Cas9系 (Ran, F.A.他, Cell, 2013, 154, 1380-1389)を用いるゲノム編集法、 ZFNによる遺伝子改変(Urnov, F. 他, Nature, 2005, 435, 646-651)、又はTALENによる遺伝子改変(Mahfouz, M 他, PNAS, 2011, 108, 2623-2628))によって行うことができる。
本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において、出発細胞であるヒト細胞への誘導因子の導入手法は特に限定されず、例えば、誘導因子自体を細胞へ直接導入してもよく(タンパク質導入法)、あるいは、誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターをヒト細胞に導入して、誘導因子を発現させてもよい(遺伝子導入法)。
ヒト細胞への誘導因子の導入を、タンパク質自体の導入により行う方法は、特に限定されず、当業者に周知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、タンパク質導入試薬を用いる方法、タンパク質導入ドメイン(PTD)もしくは細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を用いる方法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法などが挙げられる。
一方、誘導因子をヒト細胞へ導入するための遺伝子導入法が用いられる場合、まず当業者に周知の方法を用い、誘導因子をコードする核酸をヒト細胞で発現させるための適切なプロモーターの下流に挿入した少なくとも1つのベクターを作製する。本明細書において「誘導因子をコードする核酸」は、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、当該核酸は二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。好ましくは、当該核酸は二本鎖DNA、特にcDNAである。誘導因子をコードする核酸は、発現されるタンパク質が野生型の誘導因子と同等のアストロサイト様細胞への誘導化能力を有する限り、その変異配列であってもよい。本明細書において「誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター」とは、別個のベクター上に当該核酸の各々を組み込んでもよいし、1つのベクターに2種類以上、好ましくは2〜3種類の当該核酸を組み込んでもよいことを示す。
本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において使用され得るベクターは特に制限されず、例えばプラスミドベクター、ウィルスベクター(例えばレトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ随伴ウィルスベクター、センダイウィルスベクター)、人工染色体ベクター、エピソーマルベクターなどが挙げられる。本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において使用されるベクターとしては、レンチウィルスベクターが好ましい。
ヒト細胞へのベクターの導入方法は、例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、または、ウィルス感染を介する方法等、当業者に周知のいずれの方法を用いてもよい。このように、誘導因子を発現することができるベクターをヒト細胞に導入し、そのヒト細胞で誘導因子を発現させることによって、誘導因子をヒト細胞に導入することができる。
誘導因子が導入されたヒト細胞を培養することによって、アストロサイト様細胞へと分化誘導することができる。用いる培地は特に限定されないが、例えばダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、アストロサイト増殖培地(AGM培地(商標)、Lonza社)を使用することができる。培養温度は、好ましくは33〜37℃であり、より好ましくは37℃である。培養期間は、アストロサイト様細胞が回収できるようになる限り、特に限定されないが、通常、1〜2週間程度で回収できるようになる。
細胞のアポトーシス及び老化に関与するシグナル伝達経路として、p14ARF、MDM2、p53及びp21を介するシグナル伝達経路が存在する。具体的には、p14ARFはMDM2を阻害する。また、MDM2は、p53による転写調節を阻害したり、p53の分解を促進したり、p53の核外輸送を促進することによって、p53の活性化を阻害する。また、p53は、p21遺伝子の転写活性化によってp21を活性化する。また、p21は、アポトーシス及び老化に関連する遺伝子の発現調節することによって、細胞のアポトーシス及び老化を促進する。
また、細胞のアポトーシス及び老化に関与する別のシグナル伝達経路として、p16INK4a、サイクリンD1、CDK4、CDK6、Rb及びE2Fを介するシグナル伝達経路が存在する。具体的には、p16INK4aは、サイクリンD1とCDK4/6との結合を阻害することで、サイクリンD1、CDK4及びCDK6の活性化を阻害する。また、サイクリンD1とCDK4/6との複合体は、Rbをリン酸化することで、RbとE2Fとの結合を阻害する。E2FはRbタンパク質の結合により抑制されているため、Rbのリン酸化により、転写活性化作用を有する。E2Fはアポトーシス及び老化に関連する遺伝子の発現調節することによって、細胞のアポトーシス及び老化を抑制する。
上記の2つの経路におけるp14ARFまたはp16INK4aを起点とするシグナル伝達を阻害することで、iPS細胞又はニューロンへの誘導効率が増大することが報告されている。驚くべきことに、当該シグナル伝達を阻害することでアストロサイト様細胞への誘導効率も増大することが明らかとなった。
したがって、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の工程(1)において、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか、又はMDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化することを更に含んでも良い。好ましくは、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の工程(1)において、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させることを更に含んでも良い。より好ましくは、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の工程(1)において、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害することを更に含んでも良い。さらに好ましくは、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の工程(1)において、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害することを更に含んでも良い。特に好ましくは、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法の工程(1)において、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子及びp16INK4a遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害することを更に含んでも良い。
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害する方法は特に限定されず、当業者に周知の任意の方法により行うことができる。例えば核酸(例えば、siRNA、shRNA及びmiRNAなどの、RNAiを引き起こすもの)をヒト細胞に導入することによって行われても良い。また、CRISPR-Cas9系 (Ran, F.A.他, Cell, 2013, 154, 1380-1389)を用いるゲノム編集によるノックアウト、ZFNを用いる遺伝子改変(Urnov, F. 他, Nature, 2005, 435, 646-651)によるノックアウト、又はTALENを用いる遺伝子改変(Mahfouz, M 他, PNAS, 2011, 108, 2623-2628)) によるノックアウトにより行われても良い。上記遺伝子の発現の阻害は、好ましくは標的遺伝子をノックダウンするsiRNA、shRNA又はmiRNAを用いて行われ、より好ましくはshRNAを用いて行われる。
上記遺伝子の発現の阻害がshRNAを用いて行われる場合、特に限定されないが、好ましくは、配列番号14で示される塩基配列を有するDNA若しくは配列番号15で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるRNA(p14ARF遺伝子をノックダウンするshRNA)、配列番号16で示される塩基配列を有するDNA若しくは配列番号17で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるRNA(p53遺伝子遺伝子をノックダウンするshRNA)、配列番号18で示される塩基配列を有するDNA若しくは配列番号19で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるRNA(p21遺伝子をノックダウンするshRNA)、又は、配列番号20で示される塩基配列を有するDNA若しくは配列番号21で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるRNA(p16INK4a遺伝子をノックダウンするshRNA)を用いて行われる。
p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害する方法は特に限定されず、当業者に周知の任意の方法により行うことができる。例えば、p53を阻害するp53ドミナントネガティブ変異体、不活性型Rb変異体、及びピフィスリン−α(p53の転写阻害剤)などをヒト細胞に導入することによって行われても良い。
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させる方法は特に限定されず、当業者に周知の任意の方法により行うことができる。例えば、上記遺伝子を組み込んだ発現ベクターを用いて、ヒト細胞内でこれらの遺伝子を強制発現させること、または、VP16、VP64、VP128などの転写活性化因子と融合した不活性型ZFNヌクレアーゼ(Sanchez, JP.他, Plant Biotechnol J, 2006, 4(1), 103-114)、不活性型TALENヌクレアーゼ(Perez-Pinera, P. 他, Nat Methods, 2013, 10, 239-242)もしくは不活性型Cas9ヌクレアーゼ(Konermann, S.他, Nature, 2015, 517, 583-588)を利用し、上記遺伝子の内在性の転写産物を増加させることにより行われても良い。
MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化する方法は特に限定されず、当業者に周知の任意の方法により行うことができる。
上記の遺伝子の発現阻害及び増大、並びに当該遺伝子の遺伝子産物の阻害及び活性化は、誘導因子のヒト細胞への導入と同時に行われても良いし、またそれと前後して行われても良い。
本発明の一態様は、本発明の調製方法により調製される、アストロサイト様細胞に関する。本発明の一実施形態は、以下の工程:(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程、を含む方法により調製されるアストロサイト様細胞であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記アストロサイト様細胞に関する。
例えば、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法における出発細胞として、神経系疾患患者由来の細胞が使用される場合、又は神経系疾患患者由来の細胞に特異的に存在する変異が人為的に導入された健常者の細胞が使用される場合、調製されたアストロサイト様細胞は、当該神経系疾患固有の遺伝的特性を保持している。したがって当該アストロサイト様細胞は、神経系疾患モデルとして、当該神経系疾患の発症原因や病態進展機序の解明のために利用することができる。また当該アストロサイト様細胞を利用して、当該神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価することができ、創薬研究のために利用することができる。
本発明の一態様は、神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:(1)神経系疾患患者由来の細胞から、又は神経系疾患患者由来の細胞に特異的に存在する変異が導入された健常者由来の細胞から、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;及び、(2)前記アストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程を含む、前記方法に関する。当該神経系疾患としては、特に限定されないが、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、自閉症、アレキサンダー病、レット症候群などが挙げられる。
健常者由来の細胞から本発明の調製方法により調製されるアストロサイト様細胞は、神経系疾患関連遺伝子がノックアウト又はノックダウンされてもよい。本明細書において、「神経系疾患関連遺伝子」とは、当該遺伝子が突然変異などによって正常に機能しなくなることで、神経系疾患を直接的又は間接的に引き起こすことが明らかな、又は引き起こす可能性がある遺伝子のことである。ノックアウト又はノックダウンは、当業者に周知の方法(例えば、CRISPR-Cas9系 (Ran, F.A.他, Cell, 2013, 154, 1380-1389)を用いるゲノム編集によるノックアウト、ZFNを用いる遺伝子改変(Urnov, F. 他, Nature, 2005, 435, 646-651)によるノックアウト、TALENを用いる遺伝子改変(Mahfouz, M 他, PNAS, 2011, 108, 2623-2628)によるノックアウト、及び、siRNA、shRNA、miRNAなどを用いるRNAiによるノックダウン)によって行うことができる。得られたアストロサイト様細胞は、神経系疾患モデルとして利用することができる。
本発明の一態様は、神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:(1)健常者由来の細胞から、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;及び(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程を含む、前記方法に関する。当該神経系疾患としては、特に限定されないが、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、自閉症、アレキサンダー病、レット症候群などが挙げられる。
本発明の一態様は、本発明の調製方法により調製されるアストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデルに関する。以下で、当該神経組織モデルを「本発明の神経組織モデル」とも呼ぶ。
本発明の神経組織モデルにおいて使用されるアストロサイト様細胞は、神経系疾患患者由来の細胞から分化誘導された細胞あってもよく、健常者由来の細胞から分化誘導された細胞であってもよく、又は神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞であってもよい。
また、本発明の神経組織モデルにおいて使用されるアストロサイト様細胞は、健常者由来の細胞から分化誘導された細胞であって、神経系疾患関連遺伝子がノックアウト又はノックダウンされた細胞であってもよい。
本発明の神経組織モデルにおいて使用されるニューロンは、哺乳動物由来のニューロンである限り特に限定はないが、例えばマウスニューロン又はヒトニューロンである。また、ニューロンは、神経系疾患患者由来のニューロンであってもよく、健常者由来のニューロンであってもよく、神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を遺伝子に導入された健常者由来のニューロンであってもよい。またニューロンは、神経系疾患患者由来の多能性幹細胞又は成体幹細胞から分化誘導されたニューロンであってもよく、健常者由来の多能性幹細胞又は成体幹細胞から分化誘導されたニューロンであってもよい。
本発明の神経組織モデルは、本発明の調製方法により調製されるアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養することで得られる。共培養において用いられる培地は特に限定されないが、神経細胞が生存可能な培地が望ましい。例えば、Gibco (登録商標) B27(登録商標) Supplement (Thermo Fisher Scientific社)を添加したNeurobasal (登録商標) 培地 (Life Technologies社)やN2 supplement (Thermo Fisher Scientific社)やB27 (登録商標) Supplementを添加したDMEM/F12培地を使用することができる。培養温度は、好ましくは33〜37℃であり、より好ましくは37℃である。培養期間は、特に限定されないが、通常、1〜2週間程度で解析可能である。
本発明の一態様は、神経組織モデルを調製する方法であって、以下の工程:(1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;(2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程;及び、(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養する工程、を含み、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法に関する。
本発明の一態様は、神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:(1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;(3)工程(2)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程を含む、前記方法に関する。また、本発明の一態様は、神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:(1)健常者由来の細胞から、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;(2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;(3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;(4)工程(3)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程を含む、前記方法に関する。神経系疾患としては、特に限定されないが、例えばアルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、自閉症、アレキサンダー病、レット症候群などが挙げられる。
本発明の一態様は、少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを成分として含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記誘導剤に関する(以下、「本発明の誘導剤」とも呼ぶ)。本発明の誘導剤は、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法において使用することができる。例えば、当該誘導剤をヒト細胞と接触させて、誘導因子、又は誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを当該細胞へ導入し、その後適当な条件で培養することで当該細胞をアストロサイト様細胞へと分化誘導することができる。
本発明の一態様は、少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター;及び、本発明のアストロサイト様細胞の調製方法が記載された取扱説明書を含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットであって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記キットに関する(以下、「本発明のキット」とも呼ぶ)。本発明のキットにおける取扱説明書は、本発明のキットに同梱されることなくウェブ上で提供される形態であってもよい。
本発明のキットは、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は、MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤、及び/又は、MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つの活性化剤をさらに含んでもよい。好ましくは、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は、MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤をさらに含んでもよい。より好ましくは、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は、p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤をさらに含んでもよい。さらに好ましくは、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤をさらに含んでもよい。特に好ましくは、p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子及びp16INK4a遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤をさらに含んでもよい。
p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子の発現阻害剤並びにこれらの遺伝子の遺伝子産物の阻害剤としては特に限定されないが、当該遺伝子の発現を阻害するために使用され得るものとして上で挙げたもの(例えば、siRNA、shRNA(例えば、配列番号14〜21で示される塩基配列を有するDNAによりコードされるRNA)及びmiRNAのような核酸)、及び当該遺伝子産物を阻害するために使用され得るものとして上で挙げたもの(例えば、p53ドミナントネガティブ変異体、不活性型Rb変異体、及びピフィスリン−α)を使用することができる。
MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子の発現増強剤並びにこれらの遺伝子の遺伝子産物の活性化剤としては、特に限定されないが、当該遺伝子の発現を増加させるために使用され得るものとして上で挙げたもの(例えば、これらの遺伝子の発現ベクター、不活性型TALENヌクレアーゼ、不活性型TALENヌクレアーゼ及び不活性型Cas9ヌクレアーゼ)、及び当該遺伝子産物の活性化を行うことができるものとして当業者に周知のものを使用することができる。
以下の実施例及び参考例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 ヒト線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導
(1)誘導因子をコードする核酸を含むレンチウィルスベクターの作製
NFIAをコードする核酸(配列番号1)を含むレンチウィルスベクター、NICDをコードする核酸(配列番号2)を含むレンチウィルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸(配列番号3)を含むレンチウィルスベクターをそれぞれ作製した。具体的には、CBhプロモーター下流において誘導因子(NFIA、NICD又はTet2CD)を発現するレンチウイルスプラスミドを、pCAG-HIVgpおよびpCMV-VSV-G-RSV-Revプラスミド(理化学研究所 三好浩之 博士より入手)と共に、Gibco(登録商標)FreeStyle(商標) 293 Expression Medium(Invitrogen社製)(以下、単に「Freestyle (商標)」とも呼ぶ)中で293T細胞に導入した。導入16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間培養した後、培養上清を0.45μmフィルターを用いて濾過した。得られた上清は原液、もしくは濃縮した後に、レンチウイルスベクターとして各種細胞に導入した。
(2)ヒト線維芽細胞へのレンチウィルスベクターの導入及び分化誘導
ヒト成人線維芽細胞(NHDF-Ad, Lonza社)を含むDMEM培地を、6ウェルのプレートまたは10cmのディッシュにそれぞれ5×104細胞/ウェルまたは3×105細胞/ディッシュの密度で播種した。播種の24時間後、培地を、(1)で調製したレンチウィルスベクターと4μg/mLのポリブレンを含む培地と交換した。感染の16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。細胞を培地中でさらに48時間維持した後、AGM培地(商標)(Lonza社)を用いて増殖させた。当該培地は、分析するまで3日ごとに交換した。分析は、感染後2〜3週間後に行った。
(3)免疫細胞化学法による分析
Kohyama, J. 他,The Journal of cell biology, 2010, 189, 159-170に記載の方法にしたがって、得られたアストロサイト様細胞の免疫細胞化学法による分析を行った。具体的には、細胞を室温にて4%パラフォルムアルデヒドで固定した。固定後、リン酸緩衝生理食塩水 (PBS)で細胞を洗浄後、1次抗体入り0.3%Triton/5%FBS/PBS溶液(抗体希釈溶液)で細胞を室温で3時間、もしくは4度で一晩処理した。1次抗体処理後、細胞をPBSで洗浄したのち、蛍光マーカーを結合した2次抗体入りの抗体希釈溶液で、室温で60〜90分処理し、PBS洗浄した。核はDAPIもしくはHoechstで染色した。染色した細胞はスライドガラスにマウントした。
(4)結果
NFIAをヒト線維芽細胞へと導入した場合、GFAP発現細胞は観察されなかった。なお、マウス神経線維芽細胞を用いた場合にはNFIAのみを導入することで、GFAP発現細胞へと分化誘導することができた(以下の参考例1を参照)。
NFIA及びNICDをヒト線維芽細胞へと導入した場合、NFIA及びTet2CDをヒト線維芽細胞へと導入した場合、並びにNFIA、NICD及びTet2CDをヒト線維芽細胞へと導入した場合において、GFAPを発現するアストロサイト様細胞へと分化誘導することができた。特に、3つの誘導因子を導入した場合には、45.1%と高効率でアストロサイト様細胞へと分化誘導することができた(図1)。
得られたアストロサイト様細胞は、線維芽細胞であれば通常発現している平滑筋アクチン(SMA)を発現していないことが確認された。
実施例2
アストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合における、ニューロンからの神経突起の長さの定量
アストロサイトの機能的特徴として、ニューロンからの神経突起の成長を支援する能力が挙げられる。実施例1で得られたアストロサイト様細胞が当該機能を有することを明らかとするために、ヒト新生児皮膚線維芽細胞(NHDF−Neo)及びヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)(いずれもLonza 社より購入)を出発細胞として、実施例1に記載の方法と同様にして、NFIAのcDNA(配列番号1)を組み込んだレンチウィルスベクター、NICDのcDNA(配列番号2)を組み込んだレンチウィルスベクター、及びTet2CDのcDNA(配列番号3)を組み込んだレンチウィルスベクターを導入し、2〜3週間培養して分化誘導したアストロサイト様細胞を、Millicell セルカルチャーインサート(24穴、PCF膜、0.4 μm、Millipore社より購入)内に播種し、37℃で一日培養した。また、E15.5マウス由来大脳皮質ニューロンを、Gibco(登録商標)B27(登録商標) Supplementを添加したDMEM/F12培地を用いてガラスカバースリップ上に播種し、37℃で一日培養した。アストロサイト様細胞を播種したMillicell セルカルチャーインサート内の培地を B27/ DMEM/ F12培地に置換した後、Millicell セルカルチャーインサートをカバースリップ上に3日間セットし、37℃で共培養を行った。対照群として、ヒト新生児線維芽細胞(NHDF−Neo)、ヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)及びヒト初代培養アストロサイト(HNA)のそれぞれをE15.5マウス由来の大脳皮質ニューロンと共培養したものを用いた。なお、神経突起の長さの定量は、抗MAP2抗体(Sigma社)を用いてニューロンを標識した後に、蛍光顕微鏡によって画像を取得し、ニューロンJプラグインを有するImage Jソフトウエア(Meijering 他, Journal of the International Society for Analytical Cytology, 2004, 58, 167-176)を用いて行った。結果を図2に示す。アストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した場合において、対照群である線維芽細胞とニューロンと共培養した場合と比較して、ニューロンからの神経突起の伸長促進が有意に認められた。
実施例3
アストロサイト様細胞のグルタミン酸取り込み能力の測定
アストロサイトの機能的特徴として、グルタミン酸を取り込む能力が挙げられる。実施例1で得られたアストロサイト様細胞が当該機能を有することを明らかとするために、以下の実験を行った。ヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)、実施例1においてNFIA、NICD及びTet2CDを導入して得られたアストロサイト様細胞およびヒト初代培養アストロサイトをpoly-L-Lysine (Sigma社)でコートした24ウェルプレートに播種した。各種細胞を、L−グルタミン酸(Nacalai社)およびトリチウム標識したL-グルタミン酸(L-[2,3,4-3H])(American Radiolabeled Chemicals Inc.社)を添加した、ナトリウムイオン含有緩衝液もしくはナトリウムイオン不含緩衝液を用いて、37℃にてインキュベートした。インキュベート後、ナトリウムイオン不含緩衝液を用いて細胞を洗浄し、0.1N NaOH 溶液を用いて細胞を溶解した。細胞溶解液を液体シンチレーションカクテル(National Diagnostics社)と混合し、液体シンチレーションカウンターを用いて放射線量を測定した。また、各種細胞の総タンパク質量をBCA法にて定量した。グルタミン酸取り込み量は、ナトリウムイオン依存性取り込み量を、総タンパク質量にて補正し、評価した。結果を図3に示す。
実施例4 ヒトlt−NES細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導
ヒトES細胞及びiPS細胞から誘導された神経幹細胞は、アストロサイト様細胞への分化に抵抗することが知られている(Falk, A. 他, PloS ONE , 2012, Vol. 7 (1), e29597)。そのような神経幹細胞に対して、本願発明で使用される誘導因子を導入することによる効果を試験した。
出発細胞として、ヒトiPS細胞から誘導したlt−NES細胞(Austin Smith 博士、ケンブリッジ大学より入手)を用いた。lt−NES細胞は、発達している脳内で、初期神経上皮細胞として、安定した増殖可能な能力と特性を維持する。lt−NES細胞は、グリア形成特性がより弱いことが知られている(Falk, A. 他, PloS ONE , 2012, Vol. 7 (1), e29597)。
NFIAのcDNAを組み込んだプラスミドベクター、NICDのcDNAを組み込んだプラスミドベクター、及びTet2CDのcDNAを組み込んだプラスミドベクター(Cell Biolabs, Incより入手)を用いて、以下のようにしてレトロウィルスベクターを作製した。
上記プラスミドベクターをFreeStyle(商標)中でPlat−E細胞に導入した。導入16〜20時間後、培地を新鮮な培地と交換した。さらに48時間培養した後、培養上清を0.45μmフィルターを用いて濾過した。得られた上清は原液、もしくは濃縮した後に、レトロウイルスベクターとして本実施例で使用した。
UbCプロモーター下流においてマウスSlc7a1を発現するレンチウイルスプラスミド (Takahashi, K.他, Cell, 2007,131(5) :861-72.)、pCAG-HIVgpおよびpCMV-VSV-G-RSV-Revプラスミドと共にFreeStyle(商標)中で293T細胞に導入し、作成されたレンチウイルスをlt−NES細胞に導入した。
その後、当該lt−NES細胞を含む培地(1% N2 Supplement, 0.1% B27 Supplementを含むDMEM/F12培地(以下、「lt−NES用培地」とも呼ぶ))に、上記で調製したレトロウィルスベクターを加え、37℃で24時間培養し、その後1%FBSを含むlt−NES用培地へと培地交換し、GFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。レトロウィルスベクターを導入して一週間経過後におけるGFAP発現細胞の割合は全体の20%超であった。さらに、2週間経過後においては、ほぼ全てのlt−NES細胞がGFAP発現細胞へと誘導された(図4)。
実施例5 ヒトiPS細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導
ヒトiPS細胞(京都大学iPS細胞研究所より入手)を、iMatrix-511(株式会社ニッピより購入)を用いてコーティングした培養容器、およびAK03培地(味の素株式会社より購入)を用いて維持培養した。実施例1(1)と同様にして、誘導因子をコードする核酸を含むレンチウイルスベクターを調製し、ヒトiPS細胞に導入した。レンチウィルスベクターを導入したiPS細胞は、導入72時間後に、AGM培地を用い、iMatrix-511コーティングしていない培養容器へ継代した。培地を3〜4日毎に交換し、ヒトiPS細胞からGFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。なお、誘導因子としては、NFIA、NICD及びTet2CDの3種類を使用した。ベクターを導入して2週間経過後におけるGFAP発現細胞の割合は全体の約80%であった。
実施例6 NFIA、NICD及びTet2CDをコードする核酸を全て含むウィルスベクター、もしくはエピソーマルベクターを用いた、アストロサイト様細胞の調製
(1)Tet2CD、NFIA及びNICDのcDNAをporcine teschovirus-1由来2AペプチドcDNAを用いて連結した。この配列を組み込んだレンチウイルスベクターをヒト成体線維芽細胞(NHDF-Ad, Lonza社)に導入し、11日間培養した。得られた細胞は、GFAP陽性であった。蛍光顕微鏡写真を図5に示す。
(2)Tet2CDおよびNFIA、NICDのcDNAをporcine teschovirus-1由来2AペプチドcDNAを用いて連結し、この配列を組み込んだエピソーマルベクターを調製した。
その後、当該lt−NES細胞に、上記で調製されたエピソーマルベクターを導入し、1%FBSを含むlt−NES用培地を用いて7日間培養した。その後、AGM培地を用いてさらに7日間培養した。得られた細胞はGFAP陽性であった。蛍光顕微鏡写真を図5に示す。
実施例7 アレキサンダー病のインビトロ疾患モデルの作製
アレキサンダー病は、GFAP遺伝子変異によって起こる疾患であることが知られている(Brenner, M. 他, Nature genetics, 2001, 27, 117-120)。アレキサンダー病患者のGFAP遺伝子は、当該遺伝子中のミスセンス点変異(C715T)によって、GFAPのアルギニン239がシステインへ変異している(R239C)。また、アレキサンダー病患者のアストロサイトにおいて、αBクリスタリン(CRYAB)の発現が亢進することが知られている(Der Perng, M.他, American journal of human genetics, 2006, 79, 197-213)。また、アレキサンダー病患者のアストロサイトでは、変異GFAPタンパク質が凝集してローゼンタール線維が生じることが知られている (Dinda, A.K.他, Acta neuropathologica, 1990, 79,456-460)。
アレキサンダー病のインビトロ疾患モデルにおいて、本願発明のアストロサイト様細胞が使用できるか否かを試験した。
CRISPR-Cas9系 (Ran, F.A.他, Cell, 2013, 154, 1380-1389)を用いて、GFAP遺伝子中にミスセンス点変異(C715T)を有するlt−NES細胞を調製した。その後当該細胞に、実施例4と同様にして、NFIAをコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、NICDをコードする核酸を含むレトロウイルスベクター、及びTet2CDをコードする核酸を含むレトロウイルスベクターを導入し、GFAPを発現するアストロサイト様細胞を調製した。
得られたアストロサイト様細胞では、対照群(ミスセンス点変異(C715T)を導入する前のlt−NES細胞から誘導されたアストロサイト様細胞)と比較して有意に高いCRYABの発現が認められた(図6)。さらに、得られたアストロサイト様細胞では、ローゼンタール線維が観察された。得られたアストロサイト様細胞は、アレキサンダー病のインビトロ疾患モデルとして、当該疾患の分子機構や病因の解明、及び当該疾患治療薬のスクリーニングのために利用することができる。
実施例8 レット症候群のインビトロ疾患モデルの作製
レット症候群はX染色体上に存在するMECP2遺伝子の変異によって引き起こされる。マウス遺伝子に関する最近の知見では、アストロサイトがレット症候群の発症に重要な役割を果たしていることが示唆されている(Ballas, N 他, Nature neuroscience, 2009, 12, 311-317;Nguyen, M.V. 他, The Journal of neuroscience, 2012, 32, 10021-10034)。また、レット症候群患者に由来するiPS細胞から誘導されたアストロサイト様細胞は、ニューロンの成熟に不利な影響を与えることが報告されている(Williams他、 Hum Mol Genet. 2014 Jun 1; 23(11): 2968-80)。
レット症候群のインビトロ疾患モデルにおいて、本願発明のアストロサイト様細胞が使用できるか否かを試験した。
実施例1においてNFIA、NICD及びTet2CDを導入して調製されたヒト成人線維芽細胞由来のアストロサイト様細胞、及び実施例4で調製されたlt−NES細胞由来のアストロサイト様細胞において、MECP2タンパク質の発現を抑制するために、レンチウイルスによりMECP2の標的配列(配列番号24)に対するshRNAを発現させた。また、当該shRNAと同時に当該shRNAにより抑制されない変異型MECP2を発現するレンチウイルスを導入した。これらの細胞を用い、E15.5マウス由来の大脳皮質ニューロンと共に3日間培養した。結果を図7及び8に示す。
MECP2に対するshRNAを発現させたアストロサイト様細胞上に播種したニューロンは、対照群と比較して、優位に神経突起の伸長が阻害された。MECP2に対するshRNAを発現させたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養した神経組織モデルは、レット症候群のインビトロ疾患モデルとして、当該疾患の分子機構や病因の解明、及び当該疾患治療薬のスクリーニングのために利用することができる。
実施例9 ヒト成人線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導における、p16INK4aの影響
p16INK4aのcDNA(配列番号25)を組み込んだレンチウィルスベクターを、実施例1(1)と同様にして調製した。また、当該cDNAを組みこんでいない空のレンチウィルスベクターを調製してコントロールとして用いた。
調製されたレンチウィルスベクターを、実施例1(1)で調製したNFIAのcDNA(配列番号1)を組み込んだレンチウィルスベクター、NICDのcDNA(配列番号2)を組み込んだレンチウィルスベクター、及びTet2CDのcDNA(配列番号3)と共にヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)(Lonza 社より購入)に導入し、11日間培養した。培養後のGFAP陽性細胞数とDAPI陽性細胞数との割合、及び培養後のGFAP陽性細胞数と培養開始時の初期細胞数との割合を図9に示す。p16INK4aを導入した場合、ヒト成人線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導効率がコントロールと比較して有意に減少した。
実施例10 ヒト成人線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導における、p16INK4a遺伝子、p53遺伝子、p14ARF遺伝子及びp21遺伝子のノックダウンの影響
p14ARF遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号14及び15)を組みこんだレンチウィルスベクター、p53遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号16及び17)を組みこんだレンチウィルスベクター、p21遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号18及び19)を組みこんだレンチウィルスベクター、p16INK4a遺伝子に対するshRNAをコードする核酸(配列番号20及び21)を組みこんだレンチウィルスベクター、及びヒト成人線維芽細胞の遺伝子中には存在しない塩基配列を標的とするshRNAをコードする核酸(配列番号22及び23)を組みこんだレンチウィルスベクター(コントロール)を、実施例1(1)と同様にして調製した。
調製された上記レンチウィルスベクターをそれぞれ、実施例1(1)で調製したNFIAのcDNA(配列番号1)を組み込んだレンチウィルスベクター、NICDのcDNA(配列番号2)を組み込んだレンチウィルスベクター、及びTet2CDのcDNA(配列番号3)と共にヒト成人皮膚線維芽細胞(NHDF−Ad)(Lonza 社より購入)に導入し、11日間培養した。培養後のGFAP陽性細胞数とDAPI陽性細胞数との割合、及び培養後のGFAP陽性細胞数と培養開始時の初期細胞数との割合を図10〜13に示す。コントロールのshRNAを導入した場合と比較して、p16INK4a遺伝子、p53遺伝子、p14ARF遺伝子及びp21遺伝子をノックダウンするshRNAを導入した場合において、ヒト成人線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導効率が有意に上昇した。
参考例1 マウス線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導
誘導因子候補として、マウスNFIA、NICD、Tet2CD、REST/NRSF−VP16を選択した。これらの各誘導因子をコードする核酸(それぞれ、配列番号1〜4)を含むレトロウィルスベクターを、実施例4と同様にして調製した。当該レトロウィルスベクターをマウス胚性線維芽細胞(MEF)に導入した。導入において、上記レトロウィルスベクターのうちの1種類を用いるか、又はそれらのうちの2種類又は3種類を組み合わせて用いた。GFAPの発現を因子の導入の4日後に調べた。GFAP発現細胞の割合を図14に示す。
マウス線維芽細胞からアストロサイト様細胞への分化誘導には、誘導因子としてNFIAのみで十分であった。また、NFIAと他の因子とを組み合わせることで、分化誘導効率が上昇することが明らかとなった。
以下に本願実施例及び参考例にて使用された核酸の塩基配列、並びに本願発明において使用され得るペプチドのアミノ酸配列及び核酸の塩基配列を示す。
配列番号1:マウスNFIAのcDNAの塩基配列。配列中、下線部はHAタグ配列を示す。
配列番号2:マウスNICDのcDNA配列。配列中、波線部はMycタグ配列を示し、下線部はリンカー配列を示す。
配列番号3:マウスTet2CDのcDNAの塩基配列。配列中、下線部はFLAGタグ配列を示す。
配列番号4:mREST/NRSF−VP16のcDNAの塩基配列。配列中、破線部はFLAGタグ配列を示し、下線部はmREST/NRSFをコードする配列を示し、波線部はリンカー配列を示し、イタリック部分はVP16をコードする配列を示す。
配列番号5:ヒトNFIAのcDNAの塩基配列(NM_001145511.1)。
配列番号6:ヒトNICDのcDNAの塩基配列(NM_017617.4の一部)。
配列番号7:ヒトTet2CDのcDNAの塩基配列(NM_001127208.2の一部)。
配列番号8:マウスNFIAのアミノ酸配列(NP_035035.1)。
配列番号9:マウスNICDのアミノ酸配列(NP_032740.3の一部)。
配列番号10:マウスTet2CDのアミノ酸配列(NP_001035490.2の一部)。
配列番号11:ヒトNFIAのアミノ酸配列(NP_001138983.1)。
配列番号12:ヒトNICDのアミノ酸配列(NP_060087.3)。
配列番号13:ヒトTet2CDのアミノ酸配列(NP_001120680.1)。
配列番号14:shp14ARFをコードするDNAのフォアード鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号15:shp14ARFをコードするDNAのリバース鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号16:shp53をコードするDNAのフォアード鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号17:shp53をコードするDNAのリバース鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号18:shp21をコードするDNAのフォアード鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号19:shp21をコードするDNAのリバース鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号20:shp16INK4aをコードするDNAのフォアード鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号21:shp16INK4aをコードするDNAのリバース鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号22:実施例10においてコントロールとして使用したshRNAをコードするDNAのフォアード鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号23:実施例10においてコントロールとして使用したshRNAをコードするDNAのリバース鎖の塩基配列。配列中、大文字部分が標的に対して相補的な部分を示す。
配列番号24:実施例8において使用したshRNAが標的とする、MECP2遺伝子中の塩基配列。
配列番号25:p16INK4aのcDNAの塩基配列(NM_000077.4)。
本発明の方法によれば、従来取得困難であったアストロサイトと同様の特性を有するアストロサイト様細胞を、取得容易なヒト細胞から迅速かつ高効率で大量に取得可能である。また、当該アストロサイト様細胞を用いてインビトロ疾患モデルを構築し、疾患の分子機構や病因の解明、及び当該疾患治療薬のスクリーニングのために利用することができる。
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許文献は、参照により全体として本明細書中に援用される。なお、例示を目的として、本明細書の特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の改変が行われる場合があることは、当業者に容易に理解されるであろう。

Claims (16)

  1. ヒト細胞からアストロサイト様細胞をインビトロで調製する方法であって、以下の工程:
    (1)少なくとも2種類の誘導因子をヒト細胞に導入する工程;及び
    (2)前記ヒト細胞を分化誘導してアストロサイト様細胞を得る工程
    を含み、
    ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、
    前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記調製方法。
  2. 前記誘導因子が、NFIA、NICD及びTet2CDを含む、請求項1に記載の調製方法。
  3. 前記ヒト細胞が、ヒト線維芽細胞である、請求項1又は2に記載の調製方法。
  4. 前記ヒト細胞が、ヒトiPS細胞又はヒト神経幹細胞である、請求項1又は2に記載の調製方法。
  5. 前記ヒト細胞が、神経系疾患患者由来の細胞であるか、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の調製方法。
  6. 前記工程(1)における誘導因子の導入が、前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを導入することを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の調製方法。
  7. 前記工程(1)において、
    p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を阻害するか、
    p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つを阻害するか、
    MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるか、又は
    MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つを活性化すること
    をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の調製方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法で調製される、アストロサイト様細胞。
  9. 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;及び
    (2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
    を含む、前記方法。
  10. 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
    (2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;及び
    (3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞と被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
    を含む、前記方法。
  11. 請求項8に記載のアストロサイト様細胞とニューロンとを含む、インビトロの神経組織モデル。
  12. 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)神経系疾患患者由来の細胞、又は前記神経系疾患患者由来の細胞の遺伝子に特異的に存在する変異を人為的に遺伝子に導入された健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
    (2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
    (3)工程(2)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
    を含む、前記方法。
  13. 神経系疾患に対する被験物質の有効性又は毒性を評価する方法であって、以下の工程:
    (1)健常者由来の細胞から、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により、アストロサイト様細胞を調製する工程;
    (2)工程(1)で得られたアストロサイト様細胞において、神経系疾患関連遺伝子をノックアウト又はノックダウンする工程;
    (3)工程(2)で得られたアストロサイト様細胞とニューロンとを共培養して、神経組織モデルを調製する工程;
    (4)工程(3)で得られた神経組織モデルと被験物質とを接触させて、被験物質の有効性又は毒性を評価する工程
    を含む、前記方法。
  14. 少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクターを成分として含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導剤であって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記誘導剤。
  15. 少なくとも2種類の誘導因子、又は前記誘導因子をコードする核酸を含む少なくとも1つのベクター;及び、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法が記載された取扱説明書を含む、ヒト細胞からアストロサイト様細胞への誘導キットであって、ここで、前記誘導因子が、NFIAを含み、かつNICD及びTet2CDの少なくとも1つを含み、前記ヒト細胞が、ヒト体細胞(アストロサイトを除く)、ヒト多能性幹細胞又はヒト成体幹細胞である、前記キット。
  16. p14ARF遺伝子、p53遺伝子、p21遺伝子、p16INK4a遺伝子及びRb遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現阻害剤、及び/又は
    p14ARF、p53、p21、p16INK4a及びRbから選択される少なくとも1つの阻害剤、及び/又は
    MDM2遺伝子、サイクリンD1遺伝子、CDK4遺伝子、CDK6遺伝子及びE2F遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現増強剤、及び/又は
    MDM2、サイクリンD1、CDK4、CDK6及びE2Fから選択される少なくとも1つの活性化剤
    をさらに含む、請求項15に記載のキット。
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