JP2014217351A - メタボリックシンドロームモデルラット誘導多能性幹細胞及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】、MetSモデルラット由来の多能性幹細胞を提供する。【解決手段】Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、メタボリックシンドロームのモデルラット由来の多能性幹細胞。【選択図】なし
Description
本明細書は、メタボリックシンドロームモデルラット誘導多能性幹細胞及びその製造方法に関する。
メタボリックシンドローム(MetS)は、生活習慣に起因するものとされている。MetSは、内蔵脂肪蓄積によるインスリン抵抗性を基盤として、高血圧、糖尿病、脂質異常症のうち2つ以上を合併した症候群であり、全身及び組織のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系、交感神経系、及び酸化ストレスや炎症の関与が考えられている。MetSにおいて誘導された動脈硬化が進展すると心筋梗塞や脳血管障害の発症リスクが高くなることが知られている。
MetSの研究のためには、例えば、MetSのモデルラットが確立されている(非特許文献1)。このモデルラットは、Dah1食塩感受性ラット(自然発生)とZucker肥満ラット(fa/fa、fa:Leptin受容体のミスセンス変異、自然発生)の交配により確立したコンジェニック系統である。運動プログラムによるMetSの改善には、こうしたモデルラットを用いた研究が有用である。
一方、MetSの研究としては、モデルラットにおける運動生理学的研究のほか、細胞レベルの細胞生理学的研究や細胞分化の研究も必須である。また、細胞を用いたMetSに有用な薬剤の大規模スクリーニングも重要である。こうした研究やスクリーニングのためには、MetSモデルラット由来の細胞の安定供給が重要である。
T.Hattoriら、Nutrition and Diabetes(2011), e1;doi:10.1038
しかしながら、MetSモデルラット由来の細胞株が樹立されていないのが現状である。この理由は、モデルラットの肥満の原因が、Leptin受容体の遺伝子異常であることがわかっているものの、食塩感受性の原因遺伝子が不明であるため、遺伝子工学的に細胞株を樹立することができないからである。また、ラットからの多能性幹細胞(iPS細胞)については、その樹立がマウスに比較して難しいからである。
本明細書は、MetSモデルラット由来の多能性幹細胞及びその製造方法を提供する。
本発明者らは、種々の検討を重ねた結果、MetSモデルラットからiPS細胞を樹立した。本明細書の開示は、これらの知見に基づき以下の手段が提供される。
(1)メタボリックシンドロームのモデルラット由来の多能性幹細胞。
(2)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(1)に記載の多能性幹細胞。
(3)レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、(1)又は(2)に記載の多能性幹細胞。
(4)メタボリックシンドロームのモデルラット由来の多能性幹細胞と、コントロールラット由来の多能性幹細胞と、を含む、キット。
(5)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(4)に記載のキット。
(6)前記コントロールラットは、非メタボリックシンドロームのラットである、(4)又は(5)に記載のキット。
(7)ラット由来の多能性幹細胞の製造方法であって、前記ラットから採取した脂肪組織に由来する体細胞を取得する工程と、前記脂肪組織由来体細胞と核初期化因子とを接触させる工程と、前記核初期化因子と接触後の前記体細胞を多能性幹細胞に誘導する工程と、を備える、方法。
(8)前記ラットは、メタボリックシンドロームのモデルラットである、(7)に記載の方法。
(9)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(7)又は(8)に記載の方法。
(10)前記多能性幹細胞は、レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、(7)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(2)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(1)に記載の多能性幹細胞。
(3)レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、(1)又は(2)に記載の多能性幹細胞。
(4)メタボリックシンドロームのモデルラット由来の多能性幹細胞と、コントロールラット由来の多能性幹細胞と、を含む、キット。
(5)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(4)に記載のキット。
(6)前記コントロールラットは、非メタボリックシンドロームのラットである、(4)又は(5)に記載のキット。
(7)ラット由来の多能性幹細胞の製造方法であって、前記ラットから採取した脂肪組織に由来する体細胞を取得する工程と、前記脂肪組織由来体細胞と核初期化因子とを接触させる工程と、前記核初期化因子と接触後の前記体細胞を多能性幹細胞に誘導する工程と、を備える、方法。
(8)前記ラットは、メタボリックシンドロームのモデルラットである、(7)に記載の方法。
(9)前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、(7)又は(8)に記載の方法。
(10)前記多能性幹細胞は、レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、(7)〜(9)のいずれかに記載の方法。
本明細書の開示は、MetSモデルラット由来の多能性幹細胞及びその製造方法に関する。
本明細書の開示によれば、MetSの遺伝的背景を持った特定の細胞種を安定して多数分化誘導することができるようになる。こうして誘導された細胞は、MetSの細胞生理学的研究、細胞分化の研究、スクリーニング等に用いることができる。以下、本明細書の開示について詳細に説明する。
(MetSのモデルラット由来の多能性幹細胞)
本明細書に開示される多能性幹細胞は、MetSのモデルラットに由来し、MetSモデルラットから誘導された多能性幹細胞である。多能性幹細胞がMetSのモデルラットに由来していることにより、MetSの遺伝的背景を保持する各種の細胞種が安定的に提供される。こうした細胞種を用いてMetSの細胞生理、細胞分化の研究やMetSに有用な薬剤のスクリーニングに適用できる。また、これらの多能性幹細胞が由来するMetSモデルラットが存在するために、MetSの細胞レベルの研究とMetSに関する病態生理学及び運動生理学的な研究とを組み合わせることができる。
本明細書に開示される多能性幹細胞は、MetSのモデルラットに由来し、MetSモデルラットから誘導された多能性幹細胞である。多能性幹細胞がMetSのモデルラットに由来していることにより、MetSの遺伝的背景を保持する各種の細胞種が安定的に提供される。こうした細胞種を用いてMetSの細胞生理、細胞分化の研究やMetSに有用な薬剤のスクリーニングに適用できる。また、これらの多能性幹細胞が由来するMetSモデルラットが存在するために、MetSの細胞レベルの研究とMetSに関する病態生理学及び運動生理学的な研究とを組み合わせることができる。
多能性幹細胞とは、分化多能性及び自己複製能を有する細胞である。「分化多能性」とは、三胚葉系列すべてに分化できることを意味し、「自己複製能」とは、未分化状態を保持したまま増殖できる能力を意味する。
本多能性幹細胞は、MetSのモデルラットに由来している。ここで、MetSとは、高血圧、糖尿病及び脂質異常症のうち2つ以上を合併した症候群であるとされている。MetSのモデルラットは、こうした症状をラットにおいて生理学的に検出できるラットをいう。MetSのモデルラットは、MetSを発症しているラットであれば特に限定されないが。こうしたモデルラットとしては、好ましくは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfa(DS/obese)が挙げられる(非特許文献1)。このモデルラットは、Dah1食塩感受性ラット(自然発生)とZucker肥満ラット(fa/fa、fa:Leptin受容体のミスセンス変異、レプチン受容体遺伝子の第806位のヌクレオチドがAからCに置換されている。この結果、全てのレプチン受容体の同位体に共通する細胞外ドメインの269位のグルタミンがプロリンに置換されている変異(Gln269Pro)を有している)、自然発生)の交配により確立したコンジェニック系統である。このモデルラットは、既に、MetSモデルラットとして確認されている(T. Hattori, et.al., Nutrition and Diabetes (2011), e1;doi:10.1038, T. Murase, et.al., Hypertension 2012, 59:694-704, T. Murase, et.al., Hypertension Research,(2012),35, 186-193, 永田ら、心臓, Vol.45, No.2,(2013), 147-158)。このモデルラットは、また、日本SLC等により商業的にも入手可能である。
本多能性幹細胞は、レプチン(Leptin)受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されていることが好ましい。レプチンは、肥満の抑制に関連すると考えられるホルモンである。レプチン受容体タンパク質は、レプチンを細胞表面で結合する受容体タンパク質である。レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている場合、肥満を発症し進展させることになると推定されている。
また、レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されているとは、この遺伝子が破壊されている、この遺伝子に変異を有していることなどにより、その転写及び翻訳が少なくとも部分的抑制されている状態をいう。実質的にmRNAが検出できない、あるいは、不完全なmRNAが検出できるが、機能しないタンパク質に翻訳されているなど、機能的なレプチン受容体タンパク質が実質的に生成されないことが好ましい。生成など、高度にその発現がDah1S.Z−Leprfa/Leprfa(DS/obese)は、レプチン受容体タンパク質のミスセンス変異をホモで備えており、レプチン受容体タンパク質遺伝子の転写物であるmRNAが検出されないことが確認されている。
本多能性幹細胞は、MetSのモデルラットは、例えば、レトロウイルスもしくはレンチウイルスを用いた初期化遺伝子(例、Oct3/4遺伝子、Sox2遺伝子、Klf4遺伝子及びc−Myc遺伝子の4因子、Oct3/4遺伝子、Sox2遺伝子及びKlf4遺伝子の3因子)の導入により得られていることが好ましい。こうした本多能性幹細胞は、ゲノム上において、これらの核初期化遺伝子を1又は2以上、好ましくは全てを保持している。なお、上記ウイルス由来ベクターに導入形態が限定されるものではない。また、染色体外においてこうした核初期化遺伝子が1又は2以上保持されていてもよい。
なお、「初期化遺伝子」とは、体細胞の核初期化のために作用する外因性遺伝子を意味し、ラット体細胞に「内在する」これらと実質的に同一の遺伝子は、初期化遺伝子には当然含まれない。
本多能性幹細胞は、種々の目的で使用することができる。例えば、ES細胞で報告されている分化誘導法を利用して、本多能性幹細胞から種々の細胞(例、心筋細胞、血液細胞、神経細胞、血管内皮細胞、インスリン分泌細胞、脂肪細胞等)への分化を誘導することができる。
さらに、本多能性幹細胞から分化させた機能細胞(例、肝細胞や脂肪細胞等)は、実際の生体内での該機能細胞の状態をより反映していると考えられるので、MetSの細胞レベルでの研究や医薬候補化合物の薬効や毒性のin vitroスクリーニング等にも好適に用いることができる。
(多能性幹細胞のキット)
本明細書に開示される多能性幹細胞のキットは、本多能性幹細胞と、コントロールラット由来の多能性幹細胞と、を含むことができる。コントロールラット由来の多能性幹細胞を含むことで、こうしたコントロールの多能性幹細胞からも、本多能性幹細胞と同様に、機能的な細胞を誘導し、準備できる。こうしたコントロールラット由来の多能性幹細胞及び本多能性幹細胞から誘導した双方の機能的細胞と対比することで、MetSにおける細胞レベルの研究をより一層進展させることができる。
本明細書に開示される多能性幹細胞のキットは、本多能性幹細胞と、コントロールラット由来の多能性幹細胞と、を含むことができる。コントロールラット由来の多能性幹細胞を含むことで、こうしたコントロールの多能性幹細胞からも、本多能性幹細胞と同様に、機能的な細胞を誘導し、準備できる。こうしたコントロールラット由来の多能性幹細胞及び本多能性幹細胞から誘導した双方の機能的細胞と対比することで、MetSにおける細胞レベルの研究をより一層進展させることができる。
コントロールラットとしては、MetSの細胞レベルでの研究において対比に好適であれば特に限定されないが、非メタボリックシンドロームのラットであることが好ましい。こうした非メタボリックシンドロームのラットとしては、Dah1S.Z−Lepr+/Lepr+(DS/lean)(T. Hattori, et.al., Nutrition and Diabetes (2011), e1;doi:10.1038, T. Murase, et.al., Hypertension 2012, 59:694-704, T. Murase, et.al., Hypertension Research,(2012),35, 186-193, T. Murase, et.al., Hypertension 2012, 59:694-704, 永田ら、心臓, Vol.45, No.2,(2013), 147-158)が挙げられる。このラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaとは遺伝的に近いにもかかわらず、MetSを呈しないラットであって対象的であると考えられるので、MetSの細胞レベルでのメカニズムの解明に有利であると考えられる。Dah1S.Z−Lepr+/Lepr+(DS/lean)も、同様に、日本SLC等から商業的に入手できる。
(ラット由来の多能性幹細胞の製造方法)
本明細書に開示されるラット由来の多能性幹細胞の製造方法は、ラットの脂肪組織から体細胞を取得する工程と、前記体細胞と核初期化因子とを接触させる工程と、前記核初期化因子と接触後の前記体細胞から多能性幹細胞を誘導する工程と、を備えることができる。本製造方法によれば、ラット由来の多能性幹細胞を効率的に取得することができる。
本明細書に開示されるラット由来の多能性幹細胞の製造方法は、ラットの脂肪組織から体細胞を取得する工程と、前記体細胞と核初期化因子とを接触させる工程と、前記核初期化因子と接触後の前記体細胞から多能性幹細胞を誘導する工程と、を備えることができる。本製造方法によれば、ラット由来の多能性幹細胞を効率的に取得することができる。
(ラットからの体細胞取得工程)
多能性幹細胞を製造するのに用いるラットについては特に限定されないが、いわゆる実験用して商業的に提供されているラットが好ましい。また、各種の病態のモデルラットを好ましく用いることができる。病態モデルラットについて任意の機能的細胞種の入手が容易になることにより、病態の細胞レベルでの研究や薬剤のスクリーニング等が容易になる。病態モデルラットしては、MetSのモデルラットが好ましく、より具体的には、既述のDah1S.Z−Leprfa/Leprfaが挙げられる。このラットモデルを用いることでレプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている多能性幹細胞を容易に得ることができる。
多能性幹細胞を製造するのに用いるラットについては特に限定されないが、いわゆる実験用して商業的に提供されているラットが好ましい。また、各種の病態のモデルラットを好ましく用いることができる。病態モデルラットについて任意の機能的細胞種の入手が容易になることにより、病態の細胞レベルでの研究や薬剤のスクリーニング等が容易になる。病態モデルラットしては、MetSのモデルラットが好ましく、より具体的には、既述のDah1S.Z−Leprfa/Leprfaが挙げられる。このラットモデルを用いることでレプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている多能性幹細胞を容易に得ることができる。
多能性幹細胞を製造するためのラット由来の体細胞は、特に限定されないで、任意のラット体細胞を用いることができる。例えば、胎児期の体細胞を用いることができるほか、成熟した体細胞を用いることもできる。具体的には、脂肪組織由来間質(幹)細胞、神経幹細胞、造血幹細胞、間葉系幹細胞、精子幹細胞等の組織幹細胞(体性幹細胞);組織前駆細胞;リンパ球、上皮細胞、筋芽細胞、線維芽細胞等の既に分化した細胞等を用いることができる。多能性幹細胞の樹立効率の高さという観点から、好ましい一実施態様においては、ラットから採取した脂肪組織から脂肪組織由来間葉系(幹)細胞を含有する細胞集団が用いられる。特に、MetSのラットモデルにおいては、脂肪組織の採取が脂肪組織に由来することが容易であるため、好ましい。ラットからの体細胞の取得は、当業者において周知であり、当業者であれば、意図する体細胞の種類に応じてこれらを適宜取得できる。
なお、多能性幹細胞の選択を容易にするために、例えば、分化多能性細胞において特異的に高発現する遺伝子(例えば、Fbx15、Nanog、Oct3/4等)の遺伝子座に、薬剤耐性遺伝子(例、ネオマイシン耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子)及び/又はレポーター遺伝子(例、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(EGFP、DsRed)遺伝子)をターゲッティングした組換え体細胞を用いることもできる。
また、ラットから分離した体細胞は、細胞の種類に応じてその培養に適した自体公知の培地で前培養することができる。そのような培地としては、例えば、約5〜20%の胎仔ウシ血清を含む最小必須培地(MEM)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、199培地、F12培地等が挙げられるが、それらに限定されない。
また、ラットから取得した体細胞は、その継代が2回未満であるものを使用することが好ましい。2回以上の継代を行ったものは多能性幹細胞の樹立効率が著しく低下する傾向がある。また、一旦凍結解凍した体細胞を用いないことも好ましい。凍結解凍後の体細胞は、多能性幹細胞の樹立効率が著しく低下する傾向がある。
(核初期化因子との接触工程)
本明細書における核初期化因子とは、ラット体細胞の核初期化を誘導する因子であり、ラット体細胞に分化多能性及び自己複製能を備えさせることができる、ラット多能性幹細胞への変換物質である。該核初期化因子としては、特に限定されないが、例えば、核酸(遺伝子)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物又はこれらの混合物等を用いることができる。核初期化因子がタンパク性因子又はそれをコードする核酸の場合、ラット体細胞の核初期化を促すシグナル伝達経路を活性化させるという観点から転写因子であることが好ましい。該転写因子の中でも、具体的には、Oct3/4、Sox2、Klf4及びc−Mycの4因子の組合せが特に好ましい。また、より好ましくは、c−Mycを除くOct3/4、Sox2及びKlf4の3因子の組合せである。
本明細書における核初期化因子とは、ラット体細胞の核初期化を誘導する因子であり、ラット体細胞に分化多能性及び自己複製能を備えさせることができる、ラット多能性幹細胞への変換物質である。該核初期化因子としては、特に限定されないが、例えば、核酸(遺伝子)、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物又はこれらの混合物等を用いることができる。核初期化因子がタンパク性因子又はそれをコードする核酸の場合、ラット体細胞の核初期化を促すシグナル伝達経路を活性化させるという観点から転写因子であることが好ましい。該転写因子の中でも、具体的には、Oct3/4、Sox2、Klf4及びc−Mycの4因子の組合せが特に好ましい。また、より好ましくは、c−Mycを除くOct3/4、Sox2及びKlf4の3因子の組合せである。
また、上記4因子又は3因子をすべて含み、且つ任意の他の因子をさらに含む組み合わせも、核初期化因子の好ましい態様に含まれ得る。また、核初期化の対象となる体細胞が、上記4因子の一部を核初期化のために十分なレベルで内在的に発現している条件下にあっては、当該因子を除いた残りの因子のみの組み合わせもまた、本発明における核初期化因子の好ましい態様に含まれ得る。核初期化因子には前記4因子以外の他の因子も含まれる。具体的には、他の因子として、Nanog、Lin28、TERT、SV40ラージT抗原等が挙げられる。
Oct3/4としては、具体的には、ラットのOct3/4、あるいは他の哺乳動物由来のOct3/4(例、マウスOct3/4、ヒトOct3/4)が挙げられる。また、Sox2としては、具体的には、ラットのSox2、あるいは他の哺乳動物由来のSox2(例、マウスSox2、ヒトSox2)が挙げられる。また、Klf4としては、具体的には、ラットのKlf4、あるいは他の哺乳動物由来のKlf4(例、マウスKlf4、ヒトKlf4)が挙げられる。また、c−Mycとしては、具体的には、ラットのc−Myc、あるいは他の哺乳動物由来のc−Myc(例、マウスc−Myc、ヒトc−Myc)が挙げられる。ラット、マウス及びヒト由来の上記4因子のアミノ酸配列及びcDNAのヌクレオチド配列は、WO2007/069666に記載のNCBI accession numbers等を用いたり、通常の検索方法を用いてNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で参照することにより取得することができる。
なお、該4因子は、ラット体細胞に導入することによってラット多能性幹細胞を製造することができるという特徴を有する限り、前記アミノ酸配列において一又は数(2〜5)個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列、あるいは該アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する、極めて高い相同性を有するものであってよい。
「極めて高い相同性を有する」遺伝子とは、具体的には該4因子をコードする核酸とストリンジェントな条件でハイブリダイズする遺伝子を意味し、具体的には前記配列番号に示された該4因子と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上の同一性を有する遺伝子である。
核初期化因子のラット体細胞への導入方法は、特に限定されることはなく、該核初期化因子がラット体細胞と接触可能であればいかなる方法であってもよい。例えば、核初期化因子が転写因子等をコードする核酸であれば、該核酸を発現することが可能なベクターを用いてラット体細胞に導入する方法を採用することができる。このようなベクターを用いる場合、本発明の核初期化因子が二種以上の核酸であれば、一つのベクターに該二種以上の核酸を組み込んでラット体細胞内で同時に発現させてもよく、また複数のベクターを用いて該二種以上の核酸を発現させてもよい。前者の場合、効率的なポリシストロニック発現を可能にするために、口蹄疫ウイルスの2A self−cleaving peptide(Science, 322, 949-953 (2008)等参照)やIRESを各核酸の間に連結することが望ましい。
遺伝子を発現することが可能なベクターとしては、特に限定されないが、例えば、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、センダイウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シルビスウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス、オルソミクソウイルス等のウイルスベクター;YAC(Yeast artificial chromosome)ベクター、BAC(Bacterial artificial chromosome)ベクター、PAC(P1−derived artificial chromosome)ベクター等の人工染色体ベクター;プラスミドベクター;宿主細胞内で自律複製可能なエピゾーマルベクター等が挙げられる。該ベクターを本発明のラット体細胞に導入する場合は、リポフェクション法、マイクロインジェクション法、DEAEデキストラン法、遺伝子銃法、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法等の方法を用いることができる。
また、該ベクターとしてウイルスベクターを用いる場合は、パッケージング細胞を利用することもできる。パッケージング細胞とは、ウイルスの構造タンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞であって、この細胞に目的遺伝子を組み込んだ組換えウイルスDNAを導入すると、該組換えウイルス粒子を産生するものをいう。それゆえパッケージング細胞としては、ウイルス粒子の構成に必要なタンパク質を組換えウイルスベクターに対して補給する細胞であればいかなるものも用いることができ、例えば、ヒト腎臓由来のHEK293細胞やマウス線維芽細胞由来のNIH3T3細胞をベースにしたパッケージング細胞;Ecotropic virus由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−E細胞、Amphotropic virus由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−A細胞、及び水疱性口内炎ウイルス由来エンベロープ糖タンパク質を発現するよう設計されているPlat−GP細胞等を用いることができる(Plat−E細胞、Plat−A細胞及びPlat−GP細胞は、CELL BIOLABS社より購入することができる)。これらの中でも、ラット体細胞に対して組換えウイルスベクターを導入する場合には、293FT細胞が特に好ましい。該パッケージング細胞へのウイルスベクターの導入方法としては、特に限定されるものではなく、リポフェクション、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム法等の従来公知の方法を利用することができるが、ウイルスの作製効率を考慮すると、リポフェクションが好ましい。
また、該ベクターを用いて遺伝子を導入する場合は、該遺伝子の導入を確認するため同時にマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子とは、該マーカー遺伝子を細胞に導入することにより、細胞の選別や選択を可能とするような遺伝子全般をいい、例えば、薬剤耐性遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子、発光酵素遺伝子、発色酵素遺伝子等が挙げられる。薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子等が挙げられ、蛍光タンパク質遺伝子としては、緑色蛍光タンパク質(EGFP)遺伝子、黄色蛍光タンパク質(YFP)遺伝子、赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子等が挙げられる。また、発光酵素遺伝子としては、ルシフェラーゼ遺伝子等が挙げられ、発色酵素遺伝子としては、βガラクトシターゼ遺伝子、βグルクロニダーゼ遺伝子、アルカリフォスファターゼ遺伝子等が挙げられる。これらのマーカー遺伝子については一種又は二種以上を組み合わせて用いることができ、また、ネオマイシン耐性遺伝子とβガラクトシダーゼ遺伝子との融合遺伝子であるβgeo遺伝子等のような、二種以上のマーカー遺伝子を含む融合遺伝子も用いることができる。
上記核初期化因子の導入操作は、1回以上の任意の回数(例えば、1回以上10回以下、又は1回以上5回以下等)行うことができ、好ましくは導入操作を2回以上(たとえば3回又は4回)繰り返して行うことができる。導入操作を繰り返し行う場合の間隔としては、例えば6〜48時間、好ましくは12〜24時間が挙げられる。
一方、核初期化因子が転写因子等のタンパク性因子である場合、ラット体細胞と核初期化因子との接触は、自体公知の蛋白質導入法により行うことができる。タンパク質導入操作は1回以上の任意の回数(例えば、1回以上10回以下、又は1回以上5回以下等)行うことができ、好ましくは導入操作を2回以上(たとえば3回又は4回)繰り返して行うことができる。導入操作を繰り返し行う場合の間隔としては、例えば6〜48時間、好ましくは12〜24時間が挙げられる。
そのような方法としては、例えば、タンパク質導入試薬を用いる方法、タンパク質導入ドメイン(PTD)もしくは細胞透過性ペプチド(CPP)融合タンパク質を用いる方法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。タンパク質導入試薬としては、カチオン性脂質をベースとしたBioPOTER Protein Delivery Reagent(Gene Therapy Systems)、Pro−JectTM Protein Transfection Reagent(PIERCE)及びProVectin(IMGENEX)、脂質をベースとしたProfect−1(Targeting Systems)、膜透過性ペプチドをベースとしたPenetrain Peptide(Q biogene)及びChariot Kit(Active Motif)、HVJエンベロープ(不活化センダイウイルス)を利用したGenomONE(石原産業)等が市販されている。導入はこれらの試薬に添付のプロトコルに従って行うことができるが、一般的な手順は以下の通りである。核初期化因子を適当な溶媒(例えば、PBS、HEPES等の緩衝液)に希釈し、導入試薬を加えて室温で5〜15分程度インキュベートして複合体を形成させ、これを無血清培地に交換した細胞に添加して37℃で1ないし数時間インキュベートする。その後培地を除去して血清含有培地に交換する。
PTDとしては、ショウジョウバエ由来のAntP、HIV由来のTAT、HSV由来のVP22等のタンパク質の細胞通過ドメインを用いたものが開発されている。PTD由来のCPPとしては、11R(Cell Stem Cell, 4: 381-384 (2009))や9R(Cell Stem Cell, 4: 472-476 (2009))等のポリアルギニンが挙げられる。核初期化因子のcDNAとPTDもしくはCPP配列とを組み込んだ融合タンパク質発現ベクターを作製して組換え発現させ、融合タンパク質を回収して導入に用いる。導入は、タンパク質導入試薬を添加しない以外は上記と同様にして行うことができる。
マイクロインジェクションは、先端径1μm程度のガラス針にタンパク質溶液を入れ、細胞に穿刺導入する方法であり、確実に細胞内にタンパク質を導入することができる。
接触工程は、適切な密度で播種されたラット体細胞に対して、核初期化因子を接触させ一定期間、ラット体細胞の培養に好適な条件(例えば、5%FBS、ドキシサイクリン含有DMEM培地、37℃、5%CO2)で培養することができる。
(体細胞から多能性幹細胞を誘導する工程)
ラット体細胞を核初期化因子と接触させた後、ラット体細胞は、適切なタイミングで多能性幹細胞誘導用の培地を用いた工程に供される。核初期化因子と接触させた後、ラット体細胞は、例えば7日以内(好ましくは6、5、4、3日以内)、特に好ましくは48時間以内に本工程に供される。
ラット体細胞を核初期化因子と接触させた後、ラット体細胞は、適切なタイミングで多能性幹細胞誘導用の培地を用いた工程に供される。核初期化因子と接触させた後、ラット体細胞は、例えば7日以内(好ましくは6、5、4、3日以内)、特に好ましくは48時間以内に本工程に供される。
本工程における培養条件は、用いられる培地により適宜設定することができる。例えば、培養温度は、特に限定されるものではないが、約30〜40℃、好ましくは約37℃である。CO2濃度は、例えば、約1〜10%、好ましくは約2〜5%である。培養は、約3週間以上、好ましくは3〜5週間程度行うことができ、この間にES細胞様のコロニーが形成され、細胞が増殖する。
また、本工程においては、核初期化因子との接触から2〜4日経過後に、フィーダー細胞上でコロニーが出現するまで約7日〜14日間程度培養を行うことが好ましい。フィーダー細胞としては、放射線や抗生物質で処理して細胞分裂を停止させた線維芽細胞(例、イヌ胎仔由来の線維芽細胞、マウス胎仔由来の線維芽細胞(MEF))等が挙げられる。MEFとしては、例えばSTO細胞、SNL細胞(McMahon, A. P. & Bradley, A. Cell 62: 1073-1085 (1990))等が用いられ得る。
本工程における培地には、白血病抑制因子が含まれる。誘導工程で用いる培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、ハムF12培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、及びこれらの混合培地等、動物細胞の培養に用いることのできる培地であれば特に限定されない。
また、該培地は、血清含有培地又は無血清培地とすることができる。無血清培地とは、無調整又は未精製の血清を含まない培地を意味し、精製された血液由来成分や動物組織由来成分(例えば、増殖因子)が混入している培地や血清代替試薬(例えば、KSR(Invitrogen社)等)が添加されている培地などは無血清培地に該当するものとする。
該培地はまた、脂肪酸又は脂質、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、ビタミン、増殖因子、サイトカイン、抗酸化剤、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等を含有することができる。
白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor:LIF)は、インターロイキン6ファミリーに属するサイトカインであり、白血病細胞の増殖阻害、血小板の増加、胚性幹細胞の分化抑制や未分化造血系前駆細胞の増殖等に機能するものである。白血病抑制因子は、白血球阻害因子、白血球遊走阻止因子等とも呼ばれている。本工程で用いられる白血病抑制因子は、ラット由来の多能性幹細胞を作製し得るものであれば特に限定されず、いかなる哺乳動物由来の白血病抑制因子でも用いることができ、例えば、ラット、マウス、ヒト、ウシ、チンパンジー由来の白血病抑制因子などが挙げられるが、好ましくはマウス又はラット由来の白血病抑制因子を用いることができる。これらの白血病抑制因子は、自体公知のいかなる方法によって取得されてもよいが、好ましくは、哺乳動物の組織から調製したRNAを鋳型とし、公共のデータベース等から提供される白血病抑制因子のcDNA配列情報に基づいて設計したプライマーを用いてRT−PCRを行うことにより取得することができる。また、組換えマウス及びヒト白血病抑制因子はミリポア社等から購入することもできる。本誘導工程においては、白血病抑制因子の濃度を、好ましくは1×103Unit/mLとすることができる。
イヌiPS細胞の候補コロニーの選択法としては、薬剤耐性とレポーター活性を指標とする方法と目視による形態観察による方法とが挙げられる。前者としては、前述した、分化多能性細胞において特異的に高発現する遺伝子(例、Fbx15、Nanog、Oct3/4)の遺伝子座に、薬剤耐性遺伝子及び/又はレポーター遺伝子をターゲッティングした組換えイヌ体細胞を用い、薬剤耐性及び/又はレポーター活性陽性のコロニーを選択するというものである。また、核初期化因子として核酸を遺伝子導入する場合には、上記に示したように同時に導入された薬剤耐性遺伝子やレポーター遺伝子等のマーカー遺伝子の発現を指標とすることもできる。
選択されたコロニーの細胞が多能性幹細胞であることの確認は、例えば、アルカリフォスファターゼ染色法により行うことができる。例えば、本工程で形成されたコロニーの細胞を分取してプレート又はウェルに固定し、その後、該細胞を基質と接触させ発色を確認すればよい。さらに、各種ES細胞特異的遺伝子の発現をRT−PCR等により解析したり、選択された細胞をマウスに移植してテラトーマ形成能を確認する等の試験を実施することもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
1.使用細胞
iPS細胞作製には脂肪組織中に含まれる間葉系幹細胞を使用した。間葉系幹細胞の採取は以下の手順に従って行った。
iPS細胞作製には脂肪組織中に含まれる間葉系幹細胞を使用した。間葉系幹細胞の採取は以下の手順に従って行った。
メタボリックシンドロームモデルラット(以下obese Rat;DahlS.Z-Leprfa/Leprfa)(日本SLC)とコントロールである痩せ型ラット(DS/lean Rat ;DahlS.Z-Lepr+/Lepr+)(日本SLC)の鼡径部の脂肪組織を採取し、メスで細かく刻んだ。その後、37℃に温めた1mg/mlのコラーゲンタイプI溶液中で60分間攪拌し組織を分解した。
60分後にすばやく4℃に冷やした倍量のPBSで不活化する。不活化された溶液は300Gで10分間遠心分離され、その上清を除去する。沈殿した細胞分画を培養液(10%FBS DMEM)で再縣濁し、プラスティックシャーレに播種する。播種した24時間後、浮遊細胞を除去し、プラスティックシャーレに接着している細胞を脂肪組織由来間葉系幹細胞としてこの先の実験に使用した。
2.レンチウイルスベクターの作製〜リポフェクション法〜
293FT細胞(Invitrogen)をPDLコートしたディッシュに4×106の密度で6皿に播種し24時間培養する。293FT細胞を播種した翌日、mOKSプラスミド(東京大学医科学研究所MTAにより分与、図1参照)45μg,packagingプラスミド(pCAG−HIVgp、図2参照)30μg,Rev expressingプラスミド(pCMV−VSV−G−RSV−Rev、図3参照)30μg(上記2つのプラスミドは理研筑波MTAにより分与)の割合で混合したプラスミド溶液とLipofectamine2000(Invitrogen)216μL、18mLのFBSと抗生剤を含まない293FT細胞培地を穏やかに混合し、20分間室温でインキュベートした後、FBSと抗生剤を含まない42mLの293FT細胞用培地と混合して6皿の293FT細胞の培養皿へ均一に播種し、5時間、37℃、5%CO2でインキュベートした。
293FT細胞(Invitrogen)をPDLコートしたディッシュに4×106の密度で6皿に播種し24時間培養する。293FT細胞を播種した翌日、mOKSプラスミド(東京大学医科学研究所MTAにより分与、図1参照)45μg,packagingプラスミド(pCAG−HIVgp、図2参照)30μg,Rev expressingプラスミド(pCMV−VSV−G−RSV−Rev、図3参照)30μg(上記2つのプラスミドは理研筑波MTAにより分与)の割合で混合したプラスミド溶液とLipofectamine2000(Invitrogen)216μL、18mLのFBSと抗生剤を含まない293FT細胞培地を穏やかに混合し、20分間室温でインキュベートした後、FBSと抗生剤を含まない42mLの293FT細胞用培地と混合して6皿の293FT細胞の培養皿へ均一に播種し、5時間、37℃、5%CO2でインキュベートした。
5時間のインキュベートの後、培養上清を完全に除去し、5%FBSと抗生剤、G418を含む293FT細胞用培地を加えさらに20時間37℃、5%CO2でインキュベートした。
プラスミドトランスフェクションの翌日、293FT細胞の培養上清をシリンジで回収し、0.45μmのフィルターでろ過した後、ウイルス濃縮用キット、Lenti X concentration(clone tech)を全体量の1/3量加え、4℃で一晩インキュベートする。その翌日、濃縮キットを含んだウイルス液を1800Gで45分間遠心し、沈殿したウイルスを300μLのPBSに再縣濁し、すぐに使用した。
3.脂肪組織由来間葉系幹細胞へのウイルス感染
6wellディッシュに5×104/1wellの細胞密度で播種し、その24時間後に5%FBSとDoxを含んだDMEM 2mLにレンチウイルス濃縮液を1wellに対して300μLづつ加え24時間37℃5%CO2で培養した。24時間後、ドキシサイクリン(Dox),5%マウスLIFを含むDMEMと培地交換した。ウイルスを感染させた2日後にフィーダー細胞上にまきなおし、コロニーが出現するまで約10日間培養を続ける。約10日後にEGFP発現したiPS細胞が出現し、これを採取してクローンとして増殖させた。
6wellディッシュに5×104/1wellの細胞密度で播種し、その24時間後に5%FBSとDoxを含んだDMEM 2mLにレンチウイルス濃縮液を1wellに対して300μLづつ加え24時間37℃5%CO2で培養した。24時間後、ドキシサイクリン(Dox),5%マウスLIFを含むDMEMと培地交換した。ウイルスを感染させた2日後にフィーダー細胞上にまきなおし、コロニーが出現するまで約10日間培養を続ける。約10日後にEGFP発現したiPS細胞が出現し、これを採取してクローンとして増殖させた。
4.iPS細胞である事の確認
SCIDマウスの前脛骨筋に多能性幹細胞を移植し、約1月後に形成された奇形腫を採取して、三胚葉性細胞の形成を形態学的に確認した(図4〜6)。図4に示すように、外胚葉由来である神経組織が形成されていたことを示している。すなわち、神経線維が赤、細胞の核が青く蛍光染色されており(図4A)、移植細胞に由来する細胞である事を示す緑の蛍光が神経繊維と同一部位に発色しており、緑と神経線維の赤が重なってオレンジ色に染まっていた(図4B)。また、青い核を持つ神経細胞が神経線維の赤と移植細胞の緑を共に発色していた(図4C)。以上のことから、これらの細胞は移植した多能性幹細胞が神経細胞に分化したことが確認された。
SCIDマウスの前脛骨筋に多能性幹細胞を移植し、約1月後に形成された奇形腫を採取して、三胚葉性細胞の形成を形態学的に確認した(図4〜6)。図4に示すように、外胚葉由来である神経組織が形成されていたことを示している。すなわち、神経線維が赤、細胞の核が青く蛍光染色されており(図4A)、移植細胞に由来する細胞である事を示す緑の蛍光が神経繊維と同一部位に発色しており、緑と神経線維の赤が重なってオレンジ色に染まっていた(図4B)。また、青い核を持つ神経細胞が神経線維の赤と移植細胞の緑を共に発色していた(図4C)。以上のことから、これらの細胞は移植した多能性幹細胞が神経細胞に分化したことが確認された。
図5に示すように、中胚葉由来の組織である、軟骨や骨格筋が形成されていたことを示している。すなわち、軟骨の形成を示す光学顕微鏡写真と同じ部位に軟骨の特徴である二型コラーゲンが免疫蛍光染色で赤く染まり、これが軟骨であることを示している(図5A、B)。また、移植した部位に長く横に伸びる細胞認められた。これらの細胞が緑色に染まったことから移植細胞である事が確認された(図5C)。青は細胞の核である。さらに、図5Cの同じ部位は骨格筋に特異的な筋線維タンパクが存在し、赤く染まり、骨格筋に特徴的な縞模様も見られた(図5D)。以上のことから、これらは移植した細胞が骨格筋に分化したことが確認された。
図6に示すように、内胚葉由来の組織である消化管が形成されていたことを示している。すなわち、消化管の上皮と管腔を示す光学顕微鏡写真と同じ部位はすべての細胞が緑色に染まり、移植した細胞から分化したことを示している(図6A、B)。青は細胞の核を示している。また、赤い蛍光は消化管に特徴的な転写因子であり、これが緑の細胞の核にあることから、青と赤が重なってピンクに見える。図6Bの切片を青と赤だけで表すと、赤く染まる消化管に特異的な物質は転写因子なので青い核の中にあることが分かる(図6C)。以上のことから、移植細胞が消化管に分化したことが確認された。
また未分化多能性幹細胞より、mRNAを採取し、未分化維持に必要とされる幹細胞マーカーの発現、三胚葉のマーカーの発現をPCRで調べた(図4〜6)。調べたmRNAは多能性幹細胞マーカーである、RatOct4,RatKlf4,RatSox2,RatFgf4,RatRex-1,RatTDGF2,RatNanogである。これらはすべて発現が見られた。また、iPS細胞から作成した胚葉体に三胚葉由来の細胞が分化したことを示す、mRNAとして、Sox17,AFP,NCAM,Pax6,SM22,MyoDの発現が認められた。さらに、LeptinのmRNA発現について、確認したところ、コントロールiPSには発現が認められたが、obese Ratでは発現が見られなかった。そして、iPS細胞は5回以上継代すると、レンチウィルスは検出されなくなった。
Claims (10)
- メタボリックシンドロームのラットモデル由来の多能性幹細胞。
- 前記メタボリックシンドロームのラットモデルは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、請求項1に記載の多能性幹細胞。
- レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、請求項1又は2に記載の多能性幹細胞。
- メタボリックシンドロームのラットモデル由来の多能性幹細胞と、
非メタボリックシンドロームのラット由来の多能性幹細胞と、
を含む、キット。 - 前記メタボリックシンドロームのモデルラットは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、請求項4に記載のキット。
- 前記コントロールラットは、非メタボリックシンドロームのラットである、請求項4又は5に記載のキット。
- ラット由来の多能性幹細胞の製造方法であって、
前記ラットから採取した脂肪組織に由来する体細胞を取得する工程と、
前記脂肪組織由来体細胞と核初期化因子とを接触させる工程と、
前記核初期化因子と接触後の前記体細胞を多能性幹細胞に誘導する工程と、
を備える、方法。 - 前記ラットは、メタボリックシンドロームのラットモデルである、請求項7に記載の方法。
- 前記メタボリックシンドロームのラットモデルは、Dah1S.Z−Leprfa/Leprfaである、請求項7又は8に記載の方法。
- 前記多能性幹細胞は、レプチン受容体タンパク質をコードする遺伝子の発現が不活性化されている、請求項7〜9のいずれかに記載の方法。
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- 2013-05-10 JP JP2013100645A patent/JP2014217351A/ja active Pending
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