JPWO2017043086A1 - 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2017043086A1
JPWO2017043086A1 JP2016570131A JP2016570131A JPWO2017043086A1 JP WO2017043086 A1 JPWO2017043086 A1 JP WO2017043086A1 JP 2016570131 A JP2016570131 A JP 2016570131A JP 2016570131 A JP2016570131 A JP 2016570131A JP WO2017043086 A1 JPWO2017043086 A1 JP WO2017043086A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
welding
groove
less
weaving
layer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016570131A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6119940B1 (ja
Inventor
片岡 時彦
時彦 片岡
早川 直哉
直哉 早川
大井 健次
健次 大井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Application granted granted Critical
Publication of JP6119940B1 publication Critical patent/JP6119940B1/ja
Publication of JPWO2017043086A1 publication Critical patent/JPWO2017043086A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K9/00Arc welding or cutting
    • B23K9/16Arc welding or cutting making use of shielding gas
    • B23K9/173Arc welding or cutting making use of shielding gas and of a consumable electrode
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K33/00Specially-profiled edge portions of workpieces for making soldering or welding connections; Filling the seams formed thereby
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B23MACHINE TOOLS; METAL-WORKING NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • B23KSOLDERING OR UNSOLDERING; WELDING; CLADDING OR PLATING BY SOLDERING OR WELDING; CUTTING BY APPLYING HEAT LOCALLY, e.g. FLAME CUTTING; WORKING BY LASER BEAM
    • B23K35/00Rods, electrodes, materials, or media, for use in soldering, welding, or cutting
    • B23K35/22Rods, electrodes, materials, or media, for use in soldering, welding, or cutting characterised by the composition or nature of the material
    • B23K35/24Selection of soldering or welding materials proper
    • B23K35/30Selection of soldering or welding materials proper with the principal constituent melting at less than 1550 degrees C

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Plasma & Fusion (AREA)
  • Arc Welding In General (AREA)
  • Butt Welding And Welding Of Specific Article (AREA)

Abstract

所定の開先条件として、板厚:10mm 以上の2枚の厚鋼材(1)を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチ(4)を用いて、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、厚鋼材の開先面(2)に対するウイービング時に、所定の条件で溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させる。

Description

本発明は、狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものであって、特には2枚の厚鋼材の突き合わせ溶接に適用することができる、立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法に関するものである。
ここで、「狭開先」とは、開先角度が25°以下でかつ開先ギャップが20mm以下であることを意味する。
鋼の溶接施工に用いられるガスシールドアーク溶接は、CO2単独のガス、あるいはArとCO2との混合ガスを溶融部のシールドに用いる消耗電極式が一般的であり、自動車、建築、橋梁および電気機器等の製造分野において幅広く用いられている。
ところで近年、鋼構造物の大型化・厚肉化に伴い、製作過程での溶接、特に鋼材の突き合わせ溶接における溶着量が増大し、さらには溶接施工に多くの時間が必要となり、施工コストの増大を招いている。
これを改善する方法として、板厚に対して小さい間隙の開先をアーク溶接法により多層溶接する、狭開先ガスシールドアーク溶接の適用が考えられる。この狭開先ガスシールドアーク溶接は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なくなるので、溶接の高能率化・省エネルギー化が達成でき、ひいては施工コストの低減をもたらすものと期待される。
一方、立向きの高能率溶接には、通常、エレクトロスラグ溶接が適用されているが、1パス大入熱溶接が基本であり、板厚が60mmを超える溶接では入熱過多となり靭性低下が懸念されている。また、1パス溶接には板厚の限界があり、特に板厚が65mmを超える溶接は、未だ技術確立できていないのが現状である。
このため、狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した、高品質でかつ高能率な溶接方法を開発することが望まれている。
このような狭開先ガスシールドアーク溶接を立向き溶接に適用した溶接方法として、例えば、特許文献1には、両面U型開先継手を対象とする両側多層溶接方法が開示されている。この溶接方法では、イナートガスを用いたTIG溶接による積層溶接を行っており、イナートガスを用いることでスラグやスパッタの発生を抑制し、積層欠陥を防ぐこととしている。
しかしながら、非消耗電極式であるTIG溶接は、消耗電極である鋼ワイヤを用いるMAG溶接やCO2溶接と比較して、溶接法そのものの能率が大きく劣る。
また、特許文献2には、スパッタや融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、狭開先の立向き溶接方法が開示されている。
しかし、この溶接方法では、溶接トーチのウイービング方向が、開先深さ方向ではなく、鋼板表面方向であるため、溶融金属が垂れる前に溶接トーチをウイービングさせる必要があり、結果的に溶接電流を150A程度の低電流とし、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合には、少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が大きく低下する。
さらに、特許文献3には、特許文献2と同様、融合不良を抑制するために溶接トーチのウイービングを行う、立向き溶接方法が開示されている。
ここで開示される面角度(開先角度)は26.3〜52°と広めではあるが、溶接トーチのウイービングは開先深さ方向に対しても行われる。そのため、特許文献3の立向き溶接方法では、1パス当たりの溶着量を比較的多くとることが可能である。
しかし、開先深さ方向のウイービング量が小さく、また溶接金属および溶接ワイヤ組成が考慮されていないため、1パス当たりの溶着量(≒入熱量)を抑える必要が生じ、1パス当たりの溶接深さは10mm程度と浅くなる。
そのため、この溶接方法を板厚の大きい厚鋼材の溶接に適用する場合には、やはり少量多パスの積層溶接となって、溶け込み不良等の積層欠陥が多くなる他、溶接能率が低下する。
また、特許文献4には、極厚材の1パス溶接を可能にした2電極のエレクトロガスアーク溶接装置が開示されている。
この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置の使用により、板厚:70mm程度までの厚鋼材の接合が可能になる。しかし、2電極化により入熱量が360kJ/cm程度と大幅に増加するため、鋼板への熱影響が大きく、継手に高い特性(強度、靭性)が要求される場合、このような特性を満足させることが非常に困難となる。
また、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、開先において、裏面側にはセラミックの裏当てを、表面(溶接機側)には水冷式の銅当金の押し付け機構を設けることが不可欠であり、溶融金属の垂れの心配が無い反面、溶接装置が複雑となる。
なお、この2電極のエレクトロガスアーク溶接装置では、表面(溶接機側)に銅当金の押し付け機構を設けることが不可欠であるため、1パス溶接が基本であり、多パスの積層溶接として低入熱化を図ることは困難である。
特開2009−61483号公報 特開2010−115700号公報 特開2001−205436号公報 特開平10−118771号公報
上記したように、厚鋼材の溶接に適用することができる、高品質でかつ高能率な立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法は、未だ開発されていないのが現状である。
一方、溶接自動化技術(溶接ロボット)の軽量・高機能・高精度化が進み、これまで困難であった開先形状と溶接姿勢に適した溶接トーチのウイービングが可能となり、このような溶接自動化技術を活用することにより、鋼材、開先形状、溶接姿勢および溶接材料(ワイヤ)に適した溶接施工(条件設定)が可能となってきている。
本発明は、高機能でかつ高精度の溶接自動化技術を活用することにより、高品質でかつ高能率な厚鋼材の溶接を可能ならしめた、立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の課題を解決すべく、厚鋼材に立向き狭開先ガスシールドアーク溶接を適用する場合の溶接条件について、鋭意研究を重ねた。
その結果、厚鋼材の立向きの狭開先ガスシールドアーク溶接を行うにあたり、溶接金属および熱影響部において所望の機械的特性を得るとともに、溶接の高能率化を実現するには、開先ギャップをより狭くするか、あるいは2パス以上の多層溶接とすることにより、1パスあたりの溶接入熱量を抑制することが重要であることを知見した。
しかし、このように1パスあたりの溶接入熱量を抑制する場合であっても、溶接欠陥の発生などを防止しながら、十分な接合深さ(溶接深さ)、特に初層溶接において十分な接合深さを得ることが必要となる。そこで、発明者らは、これを可能とする溶接条件について、さらに研究を進めた。
その結果、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、適正な条件で溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させることが重要であり、これによって、開先面を十分に溶融させて溶接欠陥の発生防止を図りつつ、十分な接合深さを確保でき、さらには高電流の立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れの抑制を含むビード形状の安定化を図ることができるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚し、さらに検討を重ねて完成させたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.開先角度を25°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚:10mm以上の2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
曲げ部と該曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、該厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、該溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて揺動させ、該厚鋼材の板厚方向から見て該溶接トーチの先端部が溶接線方向と揃う位置を基準位置として、該基準位置における該溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1を10°以上45°以下、該基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2を10°以上60°以下とし、
該初層溶接における接合深さを10mm以上とする、
立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
2.前記接合を一層溶接とし、かつ前記開先ギャップを前記厚鋼材の板厚の25%以下とする前記1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
3.前記接合を多層溶接とし、かつ前記初層溶接における接合深さを25mm以上60mm以下とする前記1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
4.前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンがコ字形である前記1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
5.前記初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計が450質量ppm以下でかつ、N量が120質量ppm以下である前記1〜4のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
6.前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%以上3.5質量%以下である前記1〜5のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
7.前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%以上0.50質量%以下である前記1〜6のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
8.シールドガスとして20体積%以上のCO2ガスを含有するガスを用いる前記1〜7のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
9.前記初層溶接において、平均溶接電流が270A以上420A以下の範囲である前記1〜8のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
本発明によれば、板厚が10mm以上の厚鋼材を溶接する場合であっても、立向き溶接において問題となる溶融金属の垂れ抑制を含むビード形状の安定化と溶接欠陥発生を防止しつつ、高品質でかつ高能率な狭開先ガスシールドアーク溶接を実施することができる。
そして、本発明の溶接方法は、通常のガスシールドアーク溶接と比べ溶着量が少なく、溶接の高能率化による省エネルギー化も達成できるので、溶接施工コストの大幅な低減が可能となる。
また、本発明の溶接方法では、特許文献4に示したエレクトロガスアーク溶接装置のような溶融金属の垂れ落ちを防止する水冷式の銅当金の押し付け機構は不要なので、装置の複雑化を回避することができ、さらには、多パスかつ所定の開先形状での溶接施工により1パス当たりの溶接入熱を抑制することができるので、溶接金属および鋼材熱影響部で所望とする機械的特性の確保が容易となる。
各種開先形状の例を示すものである。 V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領を示すものである。 厚鋼材の開先面に対するウイービング時における、溶接トーチの揺動状態を示す模式図である。 V形の開先形状において、初層溶接を施した後の開先断面の一例を示すものである。 初層溶接のウイービングにおける、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンを示すものである。
以下、本発明を具体的に説明する。
図1(a)〜(c)は、各種開先形状の例を示すものである。図中、符号1が厚鋼材、2が厚鋼材の開先面、3が(Y形開先における)鋼材下段部の開先であり、記号θで開先角度を、Gで開先ギャップを、tで板厚を、hで(Y形開先における)鋼材下段部の開先高さを示す。
同図で示したように、ここで対象とする開先形状は、V形開先(I形開先およびレ形開先を含む)およびY形開先のいずれとすることも可能であり、また図1(c)に示すように多数段のY形開先とすることも可能である。
なお、図1(b)および(c)に示すように、Y形開先の場合の開先角度および開先ギャップは、鋼材下段部の開先における開先角度および開先ギャップとする。ここで、鋼材下段部の開先とは、溶接時に裏面(溶接装置(溶接トーチ)側の面を表面、その反対側の面を裏面とする)となる鋼材面から板厚の20〜40%程度までの領域を意味する。
また、図2は、V形の開先形状において、本発明の一実施形態に係る溶接方法により初層溶接を施工する際の施工要領を示すものである。図中、符号4が溶接トーチ、5が溶接ワイヤ、6が裏当て材である。なお、溶接線、溶融池および溶接ビードについては、図示を省略している。
ここに、この溶接方法は、図2に示すように、所定の板厚となる2枚の厚鋼材を突き合わせ、これらの厚鋼材を、ウイービングを用いる立向き溶接により接合するガスシールドアーク溶接であり、進行方向を上向きとする上進溶接を基本とする。そして、厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、溶接トーチの先端部をこの厚鋼材の開先面に向けて揺動させるのである。
なお、ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でも同様である。
さらに、図3は、厚鋼材の開先面に対するウイービング時における、溶接トーチの揺動状態を示す模式図であり、図3(a)および(b)はそれぞれ板厚方向(図2の厚鋼材の裏面(裏当て材のある側))から見た溶接トーチが基準位置にある状態および溶接トーチがθ2の角度で揺動した状態を示すものである。図3(c)は、図3(a)のX矢視図である。なお、基準位置とは、図3(a)のように、板厚方向から見て溶接トーチの先端部(中心線、つまり溶接ワイヤの突き出し方向)が溶接線方向と揃う位置である。また、図3(a)および(b)では、溶融させようとする厚鋼材の開先面(図示省略)が、紙面向かって左側にあるものとする。
図中、符号7が本体部、8が給電チップ、9が曲げ部、10が先端部である。ここで、先端部10は、曲げ部9よりも溶接ワイヤ(図示省略)側となる部分である。なお、曲げ部9は、溶接トーチを構成する本体部7および給電チップ8のいずれに設けてもよいが、施工性の面などからは、給電チップ8に設けることが好ましい。
また、θ1は基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度、θ2は基準位置からの溶接トーチの先端部の揺動角度、θ3は溶接トーチの曲げ部における曲げ角度、lは溶接トーチの先端部の長さであり、これらはそれぞれ溶接トーチ各部の中心線を基準とする。
また、図4は、V形の開先形状において、初層溶接を施した後の開先断面の一例を示すものである。図中、符号11が溶接ビードであり、記号Dで初層溶接における接合深さを、Wで初層溶接における溶接ビード幅(初層溶接後の開先間のギャップ)を示す。
なお、初層溶接における接合深さDは、溶接時に裏面となる鋼材面を起点とした場合の初層溶接ビード高さの最小値(起点の鋼材面から最も近い(低い)初層溶接ビード高さ)である。ここでは、V形の開先形状を例にして示したが、他の開先形状でもDおよびWは同様である。
次に、本発明の溶接方法において、開先角度、開先ギャップおよび鋼材の板厚を前記の範囲に限定した理由について説明する。
開先角度θ:25°以下
鋼材の開先部は小さいほどより早く高能率な溶接を可能とする反面、融合不良等の欠陥が生じやすい。また、開先角度が25°を超える場合の溶接は、従来の施工方法でも実施可能である。このため、本発明では、従来の施工方法では施工が困難であり、かつ一層の高能率化が見込まれる開先角度:25°以下の場合を対象とする。
なお、V形開先において、開先角度が0°の場合はいわゆるI形開先と呼ばれ、溶着量の面からはこの0°の場合が最も効率的であり、開先角度が0°(I形開先)であってもよいが、溶接熱ひずみにより溶接中に開先が閉じてくるため、これを見込んで、板厚t(ただし、Y形開先の場合には鋼材下段部の開先高さh)に応じた開先角度を設定することが好ましい。
具体的には、開先角度は(0.5×t/20)°以上、(2.0×t/20)°以下とすることが好ましく、さらに好ましくは(0.8×t/20)°以上、(1.2×t/20)°以下である。例えば、板厚tが100mmの場合、開先角度は2.5°以上、10°以下が好ましく、さらに好ましくは4°以上、6°以下である。
ただし、板厚tが100mmを超えると、好適範囲の上限は10°を超えるようになるが、この場合の好適範囲の上限は10°とする。
開先ギャップG:20mm以下
鋼材の開先部は小さいほど、より早く高能率な溶接を可能とする。また、開先ギャップが20mmを超える場合の溶接は、溶融金属が垂れ易く施工が困難である。その対策には、溶接電流を低く抑えることが必要となるが、スラグ巻込み等の溶接欠陥が発生し易くなる。そのため、開先ギャップは20mm以下の場合を対象とする。好ましくは4mm以上、12mm以下の範囲である。また、特に、初層溶接のみからなる一層溶接により接合する場合には、開先ギャップは、被溶接材となる厚鋼材の板厚の25%以下とすることがより好ましい。さらに好ましくは20%以下である。
板厚t:10mm以上
鋼材の板厚は10mm以上とする。というのは、鋼材の板厚が10mm未満であれば、従来の溶接方法、例えば、半フラックスコアードワイヤを用いた半自動CO2アーク溶接を用いても、溶接入熱量を抑制しつつ健全な継手が得られる場合もあるからである。好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上である。
なお、一般の圧延鋼材を対象とする場合、板厚は一般に100mmが上限である。よって、本発明で対象とする鋼材の板厚の上限は100mm以下とすることが好ましい。
また、被溶接材とする鋼種としては、高張力鋼(例えば、造船用極厚YP460MPa級鋼(引張強さ570MPa級鋼)や建築用TMCP鋼SA440(引張強さ590MPa級鋼))が特に好適である。というのは、高張力鋼は、溶接入熱制限が厳しく、溶接金属に割れが生じ易い他、溶接熱影響により要求される継手強度や靭性が得られない。これに対し、本発明の一実施形態に係る溶接方法では、入熱量:170kJ/cm以下で効率良く溶接が可能であり、590MPa級高張力鋼板、高合金系となる590MPa級耐食鋼の溶接も可能である。当然、軟鋼にも問題なく対応できる。
以上、本発明の溶接方法において、開先角度、開先ギャップおよび鋼材の板厚を限定した理由について説明したが、本発明の溶接方法では、上記した開先形状に適した入熱量で、溶接条件を適正に制御しながら効率良く溶接し、所定の接合深さを得ることが重要である。
以下、この溶接条件および接合深さについて説明する。
基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1:10°以上45°以下
図3のように、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させながらウイービングを行うことにより、給電チップと厚鋼材の開先面の接触を回避しつつワイヤ先端を開先面に近づけることが可能になる。また、ワイヤ先端部も開先面に向くこととなるので、アークによる開先面の直接溶融が可能となる。このため、1パスあたりの溶接入熱量を抑制する場合であっても、開先面を十分に溶融させて溶接欠陥の発生を抑制できる。さらに、溶接トーチのウイービングによるアーク入熱範囲の広がりにより、溶融金属の垂れ落ちを抑制して、ビード形状の安定化を図ることもできる。
しかし、θ1が10°未満になると、上記の効果が十分に得られず、溶接欠陥や溶接金属の垂れ落ちが発生する。一方、θ1が45°を超えると、溶接トーチの曲げ部におけるワイヤの送給抵抗が増大して、溶接を安定的に継続することが困難となり、やはり溶接欠陥や溶接金属の垂れ落ちが発生する。このため、基準位置における溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1は10°以上45°以下とする。好ましくは、15°以上、30°以下である。
基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2:10°以上60°以下
上述したように、曲げ部とこの曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、溶接トーチの先端部を厚鋼材の開先面に向けて揺動させながらウイービングを行うことにより、給電チップと厚鋼材の開先面の接触を回避しつつワイヤ先端を開先面に近づけることが可能になる。また、ワイヤ先端部も開先面に向くこととなるので、アークによる開先面の直接溶融が可能となる。このため、1パスあたりの溶接入熱量を抑制する場合であっても、開先面を十分に溶融させて溶接欠陥の発生を抑制できる。さらに、溶接トーチのウイービングによるアーク入熱範囲の広がりにより、溶融金属の垂れ落ちを抑制して、ビード形状の安定化を図ることもできる。
しかし、θ2が10°未満になると、上記の効果が十分に得られず、溶接欠陥や溶接金属の垂れ落ちが発生する。一方、θ2が60°を超えると、開先面が過剰に溶融し、開先面のアンダカットによる溶接欠陥が生じる。このため、基準位置からの溶接トーチの先端部の揺動角度θ2は10°以上60°以下とする。好ましくは、25°以上、45°以下である。
なお、溶接トーチの曲げ部における曲げ角度θ3および溶接トーチの先端部の長さlは、特に限定されるものではないが、θ1およびθ2を上記の範囲に制御する観点からは、θ3を10〜45°の範囲に、lを10〜40mmの範囲とすることが好ましい。
初層溶接における接合深さD:10mm以上
被溶接材とする厚鋼材を、所定の開先形状として溶接するには、初層溶接における接合深さを10mm以上とする必要がある。また、初層溶接における接合深さが10mm未満では、溶接熱が集中するため、溶融金属の垂れが発生する。従って、初層溶接における接合深さは10mm以上とする。好ましくは25mm以上である。なお、初層溶接における接合深さの上限は、鋼材の板厚の上限と同じ、つまり100mm程度である。
ただし、多層溶接を行う場合、特に被溶接材となる鋼材の板厚が70mm以上の場合、初層溶接における接合深さが60mmを超えると、溶接入熱が過多となりやすい他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生するおそれがある。よって、多層溶接を行う場合、初層溶接における接合深さは60mm以下とすることが好ましい。より好ましくは、50mm以下である。
以上、基本条件について説明したが、本発明の溶接方法では、以下の条件をさらに満足させることが好適である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さL:5mm以上
本発明の溶接方法は溶接トーチのウイービングを行うものであるが、この溶接トーチのウイービングにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに後述する板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mを適正に制御することも重要である。
ここで、各種ウイービングパターンにおける板厚方向へのウイービング深さLならびに板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mは、図5(a)〜(d)に示すとおりになる。
なお、ここでいうウイービング深さLならびに後述する板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅Mは、溶接トーチの先端部の揺動を考慮せず、溶接トーチの先端部が上記した基準位置にあると仮定して求めた溶接ワイヤ先端のウイービング深さおよびウイービング最大幅である。また、ここでいうウイービングパターンは、溶接トーチの先端部の揺動を考慮せず、この溶接トーチの先端部が常に上記した基準位置にあると仮定したときの溶接ワイヤ先端の軌跡である。
ここで、本発明の溶接方法で基本とする立向き上進溶接においては、接合深さと板厚方向のウイービング幅は同程度になるため、多層溶接の場合、板厚方向へのウイービング深さが5mm未満では、初層溶接における接合深さを10mm以上とすることが困難である。したがって、板厚方向へのウイービング深さは、5mm以上とすることが好ましい。より好ましくは、25mm以上である。また、板厚方向へのウイービング深さは板厚を超えることはないので、通常、その上限は100mm程度である。
ただし、多層溶接を行う場合、特に被溶接材となる鋼材の板厚が70mm以上の場合、板厚方向へのウイービング深さが60mmを超えると、初層溶接における接合深さを60mm以下とすることが困難となるだけでなく、溶接入熱量が過多となって、溶接金属や鋼材の熱影響部において所望の機械的特性を得ることが困難となる他、高温割れや、溶接中の熱が分散することによる開先面の融合不良、スラグ巻き込みなどの溶接欠陥が発生し易くなる。
従って、多層溶接を行う場合における板厚方向へのウイービング深さは、60mm以下とすることが好ましい。より好ましくは、50mm以下である。
溶接トーチのウイービングにおける板厚方向および溶接線方向に直角な方向へのウイービング最大幅M:(W−6)mm以上Wmm以下(W:初層溶接における溶接ビード幅)
開先面の未溶融を防ぐためには、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅を(W−6)mm以上とする必要がある。一方、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅がWmmを超えると、溶融金属の垂れが生じ、溶接が成り立たなくなるおそれがある。
従って、板厚方向および溶接線に直角な方向へのウイービング最大幅は、(W−6)mm以上Wmm以下とすることが好ましい。より好ましくは、(W−4)mm以上、(W−1)mm以下である。
また、溶接トーチのウイービングパターンについては特に限定されず、図5(a)〜(d)に示すように、溶接線方向(溶接進行方向と一致し、通常は鉛直方向)から見てコ字形、V字形、台形および三角形等とすることができる。例えば、ウイービングパターンがコ字形または台形の場合、図5(a)および(b)のようなA点→B点およびC点→D点のウイービングが、厚鋼材の開先面に対するウイービングに該当するものとなる。この場合、A点→B点のウイービングでは、溶接トーチの先端部を紙面に向かって左側の厚鋼材の開先面に向けて揺動させる一方、C点→D点ののウイービングでは、溶接トーチの先端部を紙面に向かって右側の厚鋼材の開先面に向けて揺動させる。なお、B点→C点(台形の場合には、D点→A点も含む)のウイービングでは、溶接トーチの先端部を揺動させなくてもよい。なお、図5(a)〜(d)中、溶接トーチの向きが変わる各点(図5(a)でいうとB点およびC点)での溶接トーチの軌跡は、角張るようにしても、丸みを帯びるようにしてもよい。
ただし、立向き上進溶接においては、溶接表面側に近い箇所でのウイービングは溶融金属の垂れ落ちを生じさせ易く、さらに、溶接トーチ動作が開先面から外れると、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易い。特に、反転動作を必要としない一般的な台形および三角形のウイービングパターンは、装置負荷が小さい反面、溶接表面側に近い箇所での溶接トーチ動作(図5(b)における台形ウイービングパターンのD点→A点、図5(d)における三角形ウイービングパターンのC点→A点)により、溶融金属の垂れ落ちが生じ易い。このため、溶融金属の垂れ落ちを抑制するという観点からは、溶接表面側でのトーチ動作のないコ字形またはV字形のウイービングパターンとすることが好ましい。
さらに、V字形や三角形のウイービングパターンでは、開先ギャップが大きい(例えば、6mm以上)場合、溶接トーチ動作が開先面から外れてしまい(例えば、図5(c)におけるA点→B点の動作において、溶接トーチ先端の軌跡が開先面(溶接トーチに近い側)と平行でなくなるなど)、開先面の均一な溶融が得られず、融合不良等の溶接欠陥が生じ易くなる。従って、このような場合には、開先面と平行に溶接トーチを動作させることが容易なコ字形のウイービングパターンとすることが最適である。
なお、板厚方向における、ウイービング時の溶接ワイヤ先端の最深点(例えば、図5(a)、(b)におけるB点およびC点、図5(c)、(d)におけるB点)の鋼材裏面からの距離aは、通常2〜5mm程度である。
また、上記した開先形状に対し、上記したウイービングパターンを適用する場合、図5(a)、(b)中のM1、M2、M3は、それぞれ2〜18mm、0〜10mm、0〜10mm程度となる。
さらに、ウイービング時の周波数や停止時間(図5に示すA点などの各点における停止時間)は特に限定されるものではなく、例えば周波数は0.25〜0.5Hz(好ましくは0.4〜0.5Hz)、停止時間は0〜0.5秒(好ましくは0.2〜0.3秒)程度とすればよい。
初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計量:450質量ppm以下
安定した立向き上進溶接を実現するには、溶融金属の垂れを防ぎ、かつ安定した溶接ビード形状(凹凸のない平滑なビード)を得る必要があり、特に、溶融金属の垂れを防ぐには、溶融金属の表面張力と粘性の低下させるS量およびO量を低く管理することが重要である。
ここに、溶接金属のS量およびO量の合計量が450質量ppm(以下、単にppmともいう)を超えると、表面張力と粘性の低下に加えて溶接金属の対流が表面で外向きとなり、高温の溶接金属が中央から周辺に向かって対流して、溶融金属が広がりを持ち、溶融金属の垂れが生じ易くなる。このため、溶融金属の表面張力と粘性、湯流れを支配する、溶接金属のS量およびO量は、これらの合計量で450ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは400ppm以下である。なお、下限については特に限定されるものではないが、15ppmとすることが好ましい。
また、溶接ワイヤには、表面張力を下げ、溶接ビードを平坦化する目的で、通常、Sが0.010〜0.025質量%含まれている。溶接金属のS量の低減には、このような溶接ワイヤ自体のS量の低減に加えて、鋼材中のS量を下げることが有効である。
さらに、溶接金属のO量は、シールドガス中のCO2の酸化により増加する。例えば、シールドガスとして100%CO2ガスを用いる場合、溶接金属中のO量は、0.040〜0.050質量%程度増加する。このような溶接金属のO量の低減には、溶接ワイヤ自体に通常0.003〜0.006質量%程度含まれるOの低減に加えて、溶接ワイヤへのSiおよびAl添加が有効である。また、溶接電流およびアーク電圧を高くし、溶融金属中のスラグメタル反応(脱酸反応)とスラグの凝集、溶接ビード表面への浮上を十分に行わせることも有効である。
初層溶接における溶接金属のN量:120ppm以下
溶接金属中の窒素(N)は、凝固の際に溶接金属より排出され気泡となる。この気泡の発生が湯面の振動を招き、溶融金属の垂れの原因となる。特に、溶接金属中のN量が120ppmを超えると、溶融金属の垂れが生じ易くなることから、初層溶接における溶接金属のN量は120ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは60ppm以下である。なお、下限については特に限定されるものではないが、25ppmとすることが好ましい。
また、通常、溶接ワイヤには不純物として窒素(N)が50〜80ppm含まれており、ここから、シールドガスの不純物と大気の混入により、溶接金属中のN量が20〜120ppm程度増加する。一方、通常、アーク溶接のノズル内径は16〜20mm程度であるため、このようなノズルを用いて、このノズル内径を超える接合深さとなる溶接金属部分を完全にシールドすることは困難であり、結果的に、溶接金属中のN量が200ppmを超えてしまう場合もある。
このようなN量の増加を防ぎ、初層溶接における溶接金属のN量を120ppm以下、さらには60ppm以下とするには、通常のアーク溶接のノズルとは別のガスシールド系統を設け、これにより、溶接金属への大気の混入を抑制することが有効である。
なお、溶接時の鋼材希釈により、鋼材から溶接金属にS、OおよびNが溶出するため、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下およびN:0.004質量%以下の鋼材を用いることが、上記した初層溶接における溶接金属のS量、O量およびN量を抑制する上では好適である。
初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計:1.5質量%以上3.5質量%以下
上記した溶融金属の垂れを防ぎかつ安定した溶接ビード形状の外観を得るには、適正量のスラグを形成することが重要である。スラグは主にSiO2とMnOで構成されており、このスラグ量は、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計に大きく左右される。
ここに、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%未満では、溶融金属の垂れを防ぐのに十分なスラグ量が得られない場合がある。一方、溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が3.5質量%を超えると、スラグが塊となり次層以降の溶接に支障を与える場合がある。従って、初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計は、1.5質量%以上3.5質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.8質量%以上、2.8質量%以下である。
初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計:0.08質量%以上0.50質量%以下
上記した溶融金属の垂れを防ぎかつ安定した溶接ビード形状の外観を得るのに重要な役割を果たすスラグの物性(粘性)に大きく影響するのが、TiO2、Al2O3およびZr2O3である。
ここに、溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%未満では、溶融金属の垂れを防ぐのに有効なスラグの粘性が得られない場合がある。一方、溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.50質量%超えると、スラグの除去、再溶融がともに困難となり、次層以降の溶接に支障をきたすおそれがある。
従って、初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計は、0.08質量%以上0.50質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.15質量%以上、0.25質量%以下である。
なお、上記した以外の溶接ワイヤの成分については、溶接する厚鋼材の成分に応じ適宜選択すればよいが、上記した溶接金属中のS量、O量およびN量を抑制する観点からは、S:0.03質量%以下、O:0.01質量%以下、N:0.01質量%以下とし、さらにSi:0.05〜0.80質量%、Al:0.005〜0.050質量%の範囲とした溶接ワイヤ(例えば、JIS Z 3312 YGW18やJIS Z 3319 YFEG-22C等)を用いることが、好適である。
シールドガス組成:CO2ガスを20体積%以上
溶接部の溶け込みは、アークそのものによるガウジング効果と高温状態にある溶接金属の対流によって支配されている。溶接金属の対流が内向きとなる場合、高温の溶接金属が上から下方向に対流するのでアーク直下の溶け込みが増す。一方、溶接金属の対流が外向きとなる場合、高温の溶接金属が中央から左右方向に対流し、溶接ビードが広がりを持つとともに開先面の溶け込みが増す。従って、本発明の目標とする厚鋼材の立向き多層ガスシールドアーク溶接において、溶融(溶接)金属の垂れを抑制し均一な溶接ビード形状を得るには、溶接金属の対流を内向きとすることが好ましい。
ここで、溶接金属の湯流れを支配する酸素(O)を低減する観点で言えば、CO2ガスを低く抑える方が有利であるが、一方、CO2ガスには解離吸熱反応によりアークそのものを緊縮させ、溶接金属の対流をより内向きとする効果がある。
このため、シールドガス組成としては、CO2ガスを20体積%以上とすることが好ましい。より好ましくは60体積%以上である。なお、CO2ガス以外の残部は、Ar等の不活性ガス用いればよい。また、CO2ガス:100体積%であってもよい。
溶接入熱量:30kJ/cm以上170kJ/cm以下
多層溶接では、1パス当たりの入熱量(=溶着量)を大きくすることでパス数を減らし、溶接積層欠陥を低減することができる。しかし、溶接入熱量が大きくなり過ぎると、溶接金属の強度、靭性の確保が難しくなる他、鋼材熱影響部の軟化抑制、結晶粒粗大化により靭性の確保が難しくなる。特に、溶接入熱量が170kJ/cmを超えると、溶接金属の特性確保のため、鋼材希釈を考慮した専用ワイヤが不可欠となり、さらに、鋼材でも、溶接入熱に耐えられる設計の鋼材が不可欠となる。一方、溶融金属を確保し、溶接欠陥のない溶接部を得るためには、溶接入熱量は高い方が有利であり、狭開先において溶接入熱30kJ/cm未満では開先面の溶融が不足し、積層欠陥が生じ易い。
従って、溶接入熱量は、30kJ/cm以上170kJ/cm以下とするのが好ましい。より好ましくは、90kJ/cm以上、160kJ/cm以下である。
また、溶接部の溶け込みは、アークの指向性およびガウジング効果にも影響される。従って、溶接の極性は、アークの指向性およびガウジング効果のより大きいワイヤマイナス(正極性)とすることが好ましい。
上記以外の条件については、特に規定する必要はないが、平均溶接電流270A未満では、溶融池が小さく、表面側ではトーチウイービング毎に溶融と凝固を繰り返す多層溶接のような状態となり融合不良、スラグ巻き込みが生じ易い。一方、平均溶接電流が420Aを超えると、溶融(溶接)金属の垂れが生じ易くなる他、溶接ヒュームとスパッタによりアーク点の確認が困難となるため施工中の調整が難しくなる。このため、平均溶接電流は、270〜420Aとすることが好ましい。また、平均溶接電流を270〜420Aとすることで、溶接ヒューム、スパッタの発生を抑えつつ安定した溶込みが得られることから、本発明の溶接を行う上で一層有利となる。
これ以外の条件については定法に従えばよく、例えば、溶接電圧:28〜50V(電流とともに上昇)、溶接速度(上進):0.5〜50cm/分(好適には1.5〜10cm/分)、ワイヤ突き出し長さ:15〜45mm、ワイヤ径:1.2〜1.6mm程度とすればよい。
また、多層溶接とする場合、溶接完了までの積層数は、積層欠陥を防止する観点から2乃至4層程度とすることが好ましい。初層以外の各層における溶接条件については、特に限定されず、定法に従えばよく、例えば、上記した初層の溶接条件と同様とすればよい。
なお、本発明の溶接方法では、1層あたり1パスの溶接を基本とする。
表1に示す開先形状とした2枚の鋼材に、表2に示す溶接条件で、図3に示すような給電チップに曲げ部を有する溶接トーチ(θ3:30°、l:15mm)を用いて、狭開先の立向き上進ガスシールドアーク溶接を施した。
ここで、鋼材はいずれも、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下、N:0.004質量%以下のYP460MPa級の鋼材を用いた。なお、鋼材の開先加工には、ガス切断を用い、開先面には研削等の手入れは行わなかった。
また、溶接ワイヤは、鋼材強度用またはそれより1ランク上用のグレードの1.2mmφのソリッドワイヤを用いた。なお、使用した溶接ワイヤはいずれも、S:0.005質量%以下、O:0.003質量%以下、N:0.005質量%以下、Si:0.6〜0.8質量%、Al:0.005〜0.030質量%であった。
さらに、溶接電流は250〜430A、溶接電圧は28〜44V(電流とともに上昇)、平均溶接速度は1.0〜34.9cm/分(溶接中に調整)、平均のワイヤ突き出し長さは15〜28mmとし、溶接長さは400mmとした。また、通常のアーク溶接のノズルとは別のガスシールド系統を設けて、溶接を行った。
なお、No.2、No.20、No.21、No.22については、初層溶接のみからなる一層溶接により2枚の鋼材を接合し、それ以外については、多層溶接により2枚の鋼材を接合した。
初層溶接後、任意に選んだ5点の断面マクロ組織観察により、ビード幅および接合深さを測定した。なお、ビード幅については、測定した値の最大値をビード幅Wとし、接合深さについては、測定した値の最小値を接合深さDとした。
また、初層溶接時における溶融金属の垂れを、目視により次のように評価した。
◎:溶接金属の垂れなし
○:溶接金属の垂れ2箇所以下
△:溶接金属の垂れ3箇所以上4箇所以下
×:溶接金属の垂れ5箇所以上、または、溶接中断
さらに、最終的に得られた溶接継手について、超音波探傷検査を実施し、次のように評価した。
◎:検出欠陥なし
○:欠陥長さが3mm以下の合格欠陥のみを検出
×:欠陥長さが3mmを超える欠陥を検出
これらの結果も併せて表2に示す。
Figure 2017043086
Figure 2017043086
表2に示したとおり、発明例であるNo.1〜14、20〜22では、初層溶接金属の垂れはなかったか、あっても2箇所以下であった。また、超音波探傷検査でも、検出欠陥がないか、あっても欠陥長さが3mm以下であった。
一方、比較例であるNo.15〜19は、5箇所以上の溶接金属の垂れがあるか、および/または超音波探傷検査において欠陥長さが3mm超の欠陥が検出された。
1:厚鋼材
2:厚鋼材の開先面
3:鋼材下段部の開先
4:溶接トーチ
5:溶接ワイヤ
6:裏当て材
7:本体部
8:給電チップ
9:曲げ部
10:先端部
11:溶接ビード

Claims (9)

  1. 開先角度を25°以下、開先ギャップを20mm以下として、板厚:10mm以上の2枚の厚鋼材を、ウイービングを用いる一層溶接または多層溶接により接合する立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法において、
    曲げ部と該曲げ部によって画定される先端部とをそなえる溶接トーチを用いて、初層溶接のウイービングを行うものとし、その際、該厚鋼材の開先面に対するウイービング時に、該溶接トーチの先端部を該厚鋼材の開先面に向けて揺動させ、該厚鋼材の板厚方向から見て該溶接トーチの先端部が溶接線方向と揃う位置を基準位置として、該基準位置における該溶接トーチの先端部の水平方向に対する角度θ1を10°以上45°以下、該基準位置からの該溶接トーチの先端部の揺動角度θ2を10°以上60°以下とし、
    該初層溶接における接合深さを10mm以上とする、
    立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  2. 前記接合を一層溶接とし、かつ前記開先ギャップを前記厚鋼材の板厚の25%以下とする請求項1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  3. 前記接合を多層溶接とし、かつ前記初層溶接における接合深さを25mm以上60mm以下とする請求項1に記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  4. 前記初層溶接のウイービングにおいて、溶接線方向から見た溶接トーチのウイービングパターンがコ字形である請求項1〜3のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  5. 前記初層溶接における溶接金属のS量およびO量の合計が450質量ppm以下でかつ、N量が120質量ppm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  6. 前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのSi量およびMn量の合計が1.5質量%以上3.5質量%以下である請求項1〜5のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  7. 前記初層溶接で用いる溶接ワイヤのTi量、Al量およびZr量の合計が0.08質量%以上0.50質量%以下である請求項1〜6のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  8. シールドガスとして20体積%以上のCO2ガスを含有するガスを用いる請求項1〜7のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
  9. 前記初層溶接において、平均溶接電流が270A以上420A以下の範囲である請求項1〜8のいずれかに記載の立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法。
JP2016570131A 2015-09-11 2016-09-07 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法 Active JP6119940B1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015179870 2015-09-11
JP2015179870 2015-09-11
PCT/JP2016/004090 WO2017043086A1 (ja) 2015-09-11 2016-09-07 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP6119940B1 JP6119940B1 (ja) 2017-04-26
JPWO2017043086A1 true JPWO2017043086A1 (ja) 2017-09-07

Family

ID=58239400

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016570131A Active JP6119940B1 (ja) 2015-09-11 2016-09-07 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP6119940B1 (ja)
KR (1) KR102014811B1 (ja)
CN (1) CN107921569B (ja)
WO (1) WO2017043086A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6439882B2 (ja) * 2016-08-24 2018-12-19 Jfeスチール株式会社 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
JP6810019B2 (ja) 2017-12-15 2021-01-06 株式会社神戸製鋼所 ガスシールドアーク溶接ワイヤ及びガスシールドアーク溶接方法
KR102279000B1 (ko) 2018-02-23 2021-07-20 주식회사 엘지에너지솔루션 이차전지 용량 회복 방법 및 이차전지 용량 회복 장치
CN108705185A (zh) * 2018-07-20 2018-10-26 四川汇源钢建装配建筑有限公司 一种0.8mm焊丝焊接窄间隙的方法及焊接件
CN113263282B (zh) * 2021-05-19 2022-10-25 烟台大学 无间隙材料之间的全位置悬凝型立焊装置
CN114192930A (zh) * 2021-12-31 2022-03-18 安徽博清自动化科技有限公司 一种大间隙立缝的焊接工艺
CN114535745A (zh) * 2022-03-07 2022-05-27 江苏科技大学 摇动电弧快速气电立焊方法及焊炬与应用

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3582811B2 (ja) 1996-10-17 2004-10-27 日鐵住金溶接工業株式会社 立向エレクトロガス溶接装置
JP2000000662A (ja) * 1998-06-16 2000-01-07 Chiyoda Corp 溶接機及び突き合わせ継ぎ手の形成方法
JP2001205436A (ja) 2000-01-18 2001-07-31 Kobe Steel Ltd 立向溶接方法
JP2001252767A (ja) * 2000-03-06 2001-09-18 Kobe Steel Ltd 立向溶接方法
JP4951448B2 (ja) 2007-09-07 2012-06-13 日立Geニュークリア・エナジー株式会社 両側溶接方法及び両側溶接構造物
JP5222105B2 (ja) 2008-11-14 2013-06-26 三菱重工業株式会社 狭開先溶接方法及び狭開先溶接装置
CN101412143B (zh) * 2008-11-19 2011-06-01 江苏科技大学 摇动电弧窄间隙熔化极气体保护焊接方法及焊炬
CN102275029B (zh) * 2011-07-19 2013-05-15 江苏科技大学 摇动电弧窄间隙熔化极气体保护立向焊接方法
JP5797633B2 (ja) * 2012-10-31 2015-10-21 株式会社神戸製鋼所 アーク溶接装置、定電圧特性溶接電源及びアーク溶接方法
EP2929973B1 (en) * 2012-12-04 2019-05-29 JFE Steel Corporation Method of narrow-groove gas-shielded arc welding

Also Published As

Publication number Publication date
WO2017043086A1 (ja) 2017-03-16
CN107921569A (zh) 2018-04-17
JP6119940B1 (ja) 2017-04-26
KR102014811B1 (ko) 2019-08-27
KR20180021893A (ko) 2018-03-05
CN107921569B (zh) 2020-02-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6119940B1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
JP5884209B1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
Meng et al. High speed TIG–MAG hybrid arc welding of mild steel plate
EP2689884B1 (en) A dual-wire hybrid welding system and method of welding
EP2532466A2 (en) Two-electrode welding method
JP6439882B2 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
JP6137053B2 (ja) 狭開先ガスシールドアーク溶接方法
WO2014088111A1 (ja) 狭開先ガスシールドアーク溶接継手
JP6119948B1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
WO2017098692A1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
JP2017030049A (ja) エレクトロガスアーク溶接方法及びエレクトロガスアーク溶接装置
JP2007260684A (ja) 厚鋼板の多電極サブマージアーク溶接方法
WO2017094578A1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
JP2015150572A (ja) 多電極片面サブマージアーク溶接方法、溶接物の製造方法
WO2015122046A1 (ja) 多電極片面サブマージアーク溶接方法、溶接物の製造方法
JP6119949B1 (ja) 立向き狭開先ガスシールドアーク溶接方法
Shlepakov Physical-metallurgical and welding-technological properties of gas-shielded flux-cored wires for welding of structural steels
JP6715682B2 (ja) サブマージアーク溶接方法
JP4777166B2 (ja) 非消耗ノズル式エレクトロスラグ溶接方法
TWM584746U (zh) 鈦與鋁異種金屬板材結構
JP2018083234A (ja) 多電極片面サブマージアーク溶接方法、溶接物の製造方法
JP2013111597A (ja) アーク溶接方法

Legal Events

Date Code Title Description
A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20170222

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170228

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170313

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6119940

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250