JPWO2017006714A1 - 導電性ペースト、及びガラス物品 - Google Patents

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Abstract

導電性ペーストは、Ag粉とガラスフリットと有機ビヒクルとを含有し、Mo、W、Vの中から選択された1種以上の金属元素が、金属単体及び金属化合物のいずれかの形態で添加剤として含有されている。ガラスフリットの含有量は、0.1〜7.0wt%である。添加剤の含有量は総計で0.1〜1.5wt%が好ましく、ガラスフリットは、B、Biが酸化物に換算しモル比率でそれぞれ5〜40mol%、5〜60mol%含有しているのが好ましく、バリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含まないのが好ましい。この導電性ペーストを焼成して防曇ガラス用導電膜2を形成する。導電膜2は、金属層4とガラス層5とを有し、ガラス層5は硫化物層6で被覆されている。これによりSO2やH2S等の腐食性ガスに長時間接しても導電性粉末が硫化するのを抑制でき、良好な美観や視認性を確保できるようにする。

Description

本発明は、導電性ペースト、及びガラス物品に関し、より詳しくは自動車等の車両用窓ガラスに防曇用やアンテナ用等の導電パターンを形成するための導電性ペースト、及びこの導電性ぺ−ストを使用した防曇ガラス等のガラス物品に関する。
従来より、自動車等の車両用窓ガラスには、防曇用の熱線を配した防曇ガラスや車外からの電波を受信するアンテナ付きガラス等のガラス物品が使用されている。これらのガラス物品、例えば防曇ガラスでは、通常、素材となるガラス基体上に導電性ペーストをライン状に塗布して焼成し、所定パターンの導電膜を形成している。そして、従来より、この種の導電性ペーストも各種開発され、提案されている。
例えば、特許文献1には、導電粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有するガラス基板用導電性組成物であって、前記ガラスフリットは、均質なガラス成分およびシリカ成分からなり、前記均質なガラス成分は、前記ガラスフリットの合計100mol%のうち、Bが0〜30mol%、SiOが10〜30mol%、Biが5〜35mol%の組成範囲内からなり、かつ、前記シリカ成分は、前記ガラスフリットの合計100mol%のうち35〜85mol%の範囲内からなるガラス基板用導電性組成物が提案されている。
この特許文献1では、所定割合に配合されたB−SiO−Bi系ガラスを導電性組成物中に含有させることにより、低温焼成後にめっき処理を行なっても接着強度の低下を抑制できる耐湿性や耐酸性が良好な防曇ガラスを得ようとしている。
特開平11−130459号公報(請求項1、段落番号〔0029〕等)
しかしながら、特許文献1では、ガラス基体上の導電膜がSOやHS等の大気中に存在し得る腐食性ガスに長時間接すると、導電膜が硫化して腐食が進行し、このため導電膜の電気抵抗が高くなって導電性が低下したり、導電膜が変色して外観上の美観や視認性を損なうおそれがある。
特に、この種の車両用窓ガラスに使用されるガラス物品では、近年、導電膜の細線化・薄膜化が要請されており、したがって、導電膜が細線化・薄膜化されても外観上の美観や視認性を確保するためには導電膜が硫化するのを抑制する必要がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、SOやHS等の腐食性ガスに長時間接しても導電性粉末が硫化するのを抑制でき、良好な美観や視認性を確保できる導電性ペースト、及びこの導電性ペーストを使用した防曇ガラス等のガラス物品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために導電性粉末、ガラスフリット、及び有機ビヒクルを含有した導電性ペーストを使用し、鋭意研究を行った。そして、イオウと容易に反応するモリブデン(Mo)、タングステン(W)、及び/又はバナジウム(V)の各金属元素を、金属単体又は金属化合物の形態で添加剤として導電性ペースト中に含有させ、かつガラスフリットの含有量を規定することにより、添加剤が焼成過程でガラスフリットに容易に溶解し、その結果、導電膜がイオウ成分と接しても、導電膜表面では導電性粉末の硫化よりも添加剤成分の硫化が優先的に進行し、これにより導電性粉末の硫化を効果的に抑制することができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性ペーストは、ガラス基体上に導電パターンを形成するための導電性ペーストであって、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、モリブデン、タングステン、及びバナジウムの中から選択された1種以上の金属元素を、元素単体及び金属化合物のうちのいずれかの形態からなる添加剤として含有し、前記ガラスフリットの含有量が、0.5〜15.0wt%であることを特徴としている。
また、本発明の導電性ペーストは、前記添加剤の含有量が、総計で0.1〜1.5wt%であるのが好ましい。
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットは、ホウ素を酸化物に換算し5〜40mol%含有しているのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットは、ビスマスを酸化物に換算し5〜60mol%含有しているのが好ましい。
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットが、B−Bi−Si−Al−O系材料を60wt%以上含有しているのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットが、Ti、Zr、Cu、Fe、Sbの群から選択された少なくとも1種の元素を含有しているのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットが、バリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含まないのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記金属化合物が、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ケイ化物、及び金属硫化物の群から選択された少なくとも1種を含むのが好ましい。
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記導電性粉末が、Agを60wt%以上含有しているのが好ましい。
また、本発明に係るガラス物品は、ガラス基体の表面に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、金属層と、該金属層の表面の一部に形成されたガラス層とを有し、前記ガラス層は硫化物層で被覆されていることを特徴としている。
また、本発明のガラス物品は、前記ガラス層の形成領域が、前記導電膜表面に対し面積比率で5〜40%であるのが好ましい。
また、本発明のガラス物品は、前記硫化物層は、モリブデン硫化物、タングステン硫化物、及びバナジウム硫化物の中から選択された少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明の導電性ペーストによれば、ガラス基体上に導電パターンを形成するための導電性ペーストであって、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、モリブデン、タングステン、及びバナジウムの中から選択された1種以上の金属元素を、元素単体及び金属化合物のうちのいずれかの形態からなる添加剤として含有し、前記ガラスフリットの含有量は、0.5〜15.0wt%であるので、SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末が硫化するのを抑制でき、その結果、焼成後の導電膜が変色するのを抑制できる導電性ペーストを得ることができる。
また、本発明のガラス物品によれば、ガラス基体上に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、金属層と、該金属層の表面の一部に形成されたガラス層とを有し、前記ガラス層は硫化物層で被覆されているので、導電膜がSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスに長時間接しても導電膜が変色するのを抑制でき、外観上の美観や視認性を損なうこともなく、高品質のガラス物品を得ることができる。
本発明の導電性ペーストを使用して製造されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態を示す断面図である。 図1のA−A矢視断面図である。 図2のB部拡大断面図である。 試料番号4の硫化試験前における試料表面図である。 試料番号4の硫化試験後における試料表面図である。 試料番号25の硫化試験後における試料表面図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る導電性ペーストを使用して製造されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態を示す正面図であり、図2は図1のA−A矢視断面図である。
この防曇ガラスは、ガラス基体1の表面に所定間隔を有して細線化・薄膜化されたライン状の導電膜2が平行状に複数形成され、導電膜2の両端部にはバスバー電極3a、3bが形成され、バスバー電極3a、3bははんだを介して不図示の給電端子に接続されている。
この防曇ガラスは、ガラス基体1上に導電性ペーストをライン状に塗布した後、500〜800℃の温度で焼成処理し、導電性ペースト中の無機成分を焼結させることにより、所定パターンの導電膜2を形成し、これにより導電膜2がガラス基体1上に固着される。そして、導電膜2の両端はバスバー電極3a、3bを介して電気的に接続され、該バスバー電極3a、3bははんだ付けされて給電端子(不図示)に接続されている。
このように形成された防曇ガラスは、例えば自動車等の車両のフロントガラスやリアガラスとして装備され、バスバー電極3a、3bを介して給電端子から導電膜2に給電され、発熱させることによって窓ガラスの曇り止めやアンテナ機能の役割をなすことができる。
図3は、図2のB部拡大断面図であり、大気中のイオウ成分と長時間接した場合の導電膜2を示している。
導電膜2は、導電性粉末の焼結体である金属層4と、該金属層4の表面の一部に形成されたガラスフリットの焼結体であるガラス層5とを有し、さらに大気中のイオウ成分と長時間接した後は、ガラス層5の表面に硫化物層6が形成され、ガラス層5は硫化物層6で被覆されている。
すなわち、導電性ペーストには、後述するようにMo(モリブデン)、W(タングステン)、V(バナジウム)からなる1種以上の金属元素(以下、「特定金属元素」という。)が、元素単体及び金属化合物のいずれかの形態で添加剤として含有されている。そして、斯かる特定金属元素はイオウ成分と容易に反応し、しかも、この添加剤は、焼成過程でガラスフリットに容易に溶解される。したがって、SOやHS等のイオウ成分を含んだ大気中の腐食性ガスと導電膜2とが焼結後に接触しても、添加剤成分は金属層4に対しイオウ成分と優先的に反応し、その結果、ガラス層5の表面には硫化物層6が被覆形成される。
このように導電膜2がSOやHS等のイオウ成分を含んだ大気中の腐食性ガスと接触しても、金属層4の硫化に優先してガラス層5の表面には硫化物層6が被覆形成されるので、導電膜2表面の金属層4がイオウ成分と反応するのを抑制でき、金属層4が硫化するのを抑制することができる。
ここで、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、ガラス層5の形成領域が導電膜2表面に対し面積比率で5〜40%となるように調整されている。
すなわち、ガラス層5の形成領域が、導電膜2表面に対し面積比率で5%未満になると、ガラス層5の表面には金属層4の硫化を抑制するだけの十分な硫化物層6を形成するのが困難である。
一方、ガラス層5の形成領域が、導電膜2表面に対し面積比率で40%を超えると、金属層4がガラス層5で被覆される領域が大きくなり、電気抵抗が増加すると共に、導電膜2表面に存在する硫化物層6が目立つため好ましくない。
次に、上述した導電膜2を形成するための導電性ペーストについて詳述する。
本導電性ペーストは、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有している。さらに、この導電性ペーストには、上述した特定金属元素(Mo、W、及び/又はV)が、元素単体及び金属化合物のいずれかの形態からなる添加剤として含有しており、また、ガラスフリットの含有量は、0.5〜15.0wt%とされている。
そして、これにより導電膜2がSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末の焼結体、すなわち金属層4が硫化するのを抑制することができる。そして、金属層4の硫化が抑制できることから、焼結後の導電膜2が変色するのを抑制でき、これにより外観上の美観や視認性を損なうこともなく、高品質の防曇ガラスを得ることができる。
以下、上記特定金属元素を含有させた理由、及び導電性ペースト中のガラスフリットの含有量を上述の範囲とした理由を詳述する。
(1)特定金属元素を含有させた理由
〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、ガラス基体1上の導電膜2が大気中に存在し得るSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接すると、導電膜2が硫化して腐食が進行し、該導電膜2が変色する。
この導電膜2の変色は、導電性粉末がイオウ成分と反応して硫化物を形成することに起因している。すなわち、導電性ペーストは、焼成処理によって焼結され導電膜2を形成する。この導電膜2は、導電性粉末の焼結体である金属層4と、導電膜2表面の一部に形成されたガラスフリットの焼結体であるガラス層5を有している。そして、この状態で導電膜2がHSやSO等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接すると、導電膜2表面の金属層4がイオウ成分と反応して硫化し、導電膜2の変色を招く。
しかるに、上述した特定金属元素(Mo、V、及び/又はW)を元素単体又は金属化合物の形態で添加剤として導電性ペースト中に含有させると、該添加剤は焼成過程でガラスフリットに容易に溶解し、焼結後はイオウ成分と反応して硫化物を容易に形成する。したがって、導電膜2がイオウ成分を含んだ腐食性ガスと接すると、ガラスフリットに溶解した添加剤成分は、金属層4中の導電性粉末よりも優先的にイオウ成分と反応し、ガラス層5の表面に硫化層6を形成し、これにより導電膜2の表面に露出している金属層4の硫化を効果的に抑制することができる。
ただし、この場合、上記添加剤をガラスフリットの構成成分としてガラスフリット中に含有させるのは好ましくない。すなわち、上記添加剤をガラスフリット中に含有させると、特定金属元素の硫化作用を促進させるべく添加剤の含有量を増加させようとした場合、Si等のガラスフリットの主成分の含有量を減少させざるを得ず、ガラスフリットの本来の機能を奏さなくなるおそれがある。したがって、添加剤を多く含有させることができず、好ましくない。
これに対して添加剤をガラスフリット中に含有させるのではなく、ガラスフリットとは別に導電性ペースト中に含有させた場合は、ガラスフリットの機能を損なうことなく多量の添加剤を含有させることができ、これにより電極層4の硫化抑制効果を向上させることができる。
そこで、本実施の形態では、ガラスフリットや導電性粉末に加え、上記特定金属元素を元素単体又は金属化合物の形態で導電性ペースト中に添加剤として含有させている。
尚、添加剤の含有量は特に限定されるものではないが、所望の添加効果を確実に奏するためには、元素単体又は金属化合物に換算し、総計で少なくとも0.1wt%以上が好ましい。
ただし、添加剤の含有量が、元素単体又は金属化合物に換算し、総計で1.5wt%を超えると、ガラスフリットが結晶化等により変質し、添加物のガラスフリットへの含有量が減少するため、耐硫化性が低下傾向となり導電膜2の変色が生じ易くなり、美観や視認性を損なうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、添加剤の含有量を、元素単体又は金属化合物に換算し、総計で0.1〜1.5wt%としている。
尚、特定金属元素は、元素単体又は金属化合物の形態で含有させることができるが、金属化合物の形態で含有させる場合であっても、化合物形態は特に限定されるものではない。例えば、Moを例に挙げると、MoO等の酸化モリブデン、MoC等の炭化モリブデン、MoN等の窒化モリブデン、MoSi等のケイ化モリブデンなど、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ケイ化物等のいずれであってもよい。
(2)ガラスフリットの含有量
導電性ペースト中にガラスフリットを含有することにより、ガラス基体1と導電膜2の固着が可能となる。
しかしながら、ガラスフリットの含有量が、0.5wt%未満になると、ガラス基体1と導電膜2との固着性が低下する上に、焼結後のガラス層5に十分な量の添加剤を吸着させることができず、所望の硫化層6を形成するのが困難となり、好ましくない。
一方、ガラスフリットの含有量が、15.0wt%を超えると、導電性粉末の含有量が相対的に少なくなって半田付け性が低下し、しかもガラス層5の導電膜2表面に対する面積比率も大きくなって耐硫化性の低下も招き、好ましくない。
そこで、本実施の形態では、ガラスフリットの含有量を0.5〜15.0wt%としている。
尚、ガラスフリットに使用されるガラス材については、特に限定されるものではないが、特定金属元素のガラスフリットへの吸着を促進させる観点からは、BやBiを含有しているのが好ましく、例えばBi−B−Si−O系、Bi−B−Al−Si−O系等のガラスフリットを60mol%以上含有したガラス材を使用するのが好ましい。
ただし、Bを含有したガラスフリットを使用する場合は、Bの含有モル量は、酸化物に換算して5〜40mol%が好ましい。ガラスフリット中のBの含有モル量が、酸化物に換算して5mol%未満になると、ガラス化させるためにはケイ素酸化物を増量する必要がある。しかしながら、このケイ素酸化物はガラスフリットの軟化点を上昇させるため、焼成過程でのガラスフリットの流動性が低下し、導電膜2の表面に存在するガラスフリットが減少することから、導電膜2表面に存在する導電性粉末が容易に硫化されることとなり、好ましくない。一方、ガラスフリット中のBの含有モル量が酸化物に換算して40mol%を超えると、添加剤が却ってガラスフリットに溶解し難くなって硫化層6が形成され難くなり、このため金属層4の硫化が容易に進行するおそれがある。
また、Biを含有したガラスフリットを使用する場合は、Biの含有モル量は、酸化物に換算して5〜60mol%が好ましい。ガラスフリット中のBiの含有モル量が酸化物に換算して5mol%未満になると、Bの場合と同様、ケイ素酸化物を増量させる必要があることから、ガラスフリットの流動性が低下し、導電膜2の表面に存在するガラスフリットの減少を招き、導電性粉末の硫化が促進されるおそれがある。また、ガラスフリット中のBiの含有モル量が酸化物に換算して60mol%を超えると、ガラス化が困難となる。
また、本発明では、上述したBi−B−Si−O系、Bi−B−Al−Si−O系等のガラスフリット中に必要に応じてTi、Zr、Cu、Fe、Sb等の各種酸化物を含有させてもよい。
ただし、酸化物であってもBa酸化物やZn酸化物は含有しないのが好ましい。これらBa酸化物やZn酸化物は、上述した添加剤のガラスフリットへの吸着を若干阻害する作用があり、このためガラスフリットの硫化が抑制され、導電膜2表面の導電性粉末の硫化が促進されるおそれがある。
したがって、Bi、Bを含有していても、Bi−B−Ba−Si−O系、Bi−B−Zn−Si−O系等は使用するのは好ましくない。
また、ガラスフリットの平均粒径D50(メジアン径)は、特に限定されるものではないが、ガラス基体1と導電膜2との間の固着性や導電性ペーストの焼結性の観点からは、0.1〜5.0μmが好ましい。
また、導電性ペースト中の導電性粉末の含有量は、特に限定されるものではないが、55.0〜95.0wt%が好ましい。導電性粉末の含有量が55.0wt%未満になるとガラスフリットの含有量が相対的に増加することから、特に導電膜2が細線化・薄膜化してくると電気抵抗が高くなるおそれがある。また、はんだ付け時にはんだ食われが生じ易く、更には基板への固着性も低下するおそれがある。一方、導電性粉末の含有量が95.0wt%を超えると、導電性粉末が過剰となってペースト化が困難になるおそれがある。このように導電性粉末の含有量は、導電性ペーストとしてのペースト化や低ライン抵抗化を考慮すると、55.0〜95.0wt%が好ましい。
また、導電性粉末としては、良好な導電性を有する金属粉であれば特に限定されるものではないが、焼成処理を大気中で行った場合であっても酸化されることなく良好な導電性を維持することができるAg粉末を好んで使用することができる。また、Ag粉末を60wt%以上含有し、Pd、Pt、Cu、Ni等の各種金属粉末を添加剤として含有させてもよい。
導電性粉末の形状も、特に限定されるものではなく、例えば、球形状、扁平状、不定形形状、或いはこれらの混合粉であってもよい。
導電性粉末の平均粒径D50も、特に限定されるものではないが、所望の低ライン抵抗を得る観点からは、平均粒径D50は球形粉換算で、0.05〜10μmが好ましい。導電性粉末の平均粒径D50が、0.05μm未満になるとペースト化が困難となり、一方導電性粉末の平均粒径D50が10μmを超えると、電気抵抗が大きくなる傾向にある。
有機ビヒクルは、バインダ樹脂と有機溶剤とが、例えば体積比率で、1〜3:7〜9となるように調製されている。尚、バインダ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、又はこれらの組み合わせを使用することができる。また、有機溶剤についても特に限定されるものではなく、α―テルピネオール、キシレン、トルエン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を単独、或いはこれらを組み合わせて使用することができる。
そして、この導電性ペーストは、導電性粉末、Bを含有したB−Bi−Si−O系等のガラスフリット、特定金属元素を含有した添加剤、有機ビヒクルを所定の混合比率となるように秤量して混合し、三本ロールミル等を使用して分散・混練することにより、容易に製造することができる。
このように本実施の形態では、Ag粉末等の導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、特定金属元素を元素単体及び金属化合物のうちのいずれかの形態からなる添加剤として含有し、ガラスフリットの含有量は、0.5〜15.0wt%であり、添加剤の含有量は、好ましくは総計で0.1〜1.5wt%、前記ガラスフリット中のB、Biの含有量は、好ましくは酸化物に換算しモル比率でそれぞれ5〜40mol%、5〜60mol%であるので、SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末が硫化するのを抑制でき、その結果、焼成後の導電膜の変色を抑制できる導電性ペーストを得ることができる。
そして、このように導電膜2の変色を抑制できることから、外観上の美観や視認性を損なうことなく、高品質のガラス物品を得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本導電性ペーストは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で必要に応じ各種無機成分を含有させることができ、また、含有形態についても特に限定されるものではなく、酸化物、水酸化物、過酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物、有機金属化合物等、適宜選択することができる。
また、本導電性ペーストには、必要に応じて、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル等の可塑剤を1種又はこれらの組み合わせを添加するのも好ましい。また、脂肪酸アマイドや脂肪酸等のレオロジー調整剤を添加するのも好ましく、さらにはチクソトロピック剤、増粘剤、分散剤などを添加してもよい。
また、上記実施の形態では、ガラス物品として防曇ガラスを例示したが、防曇ガラス以外の各種ガラス物品、例えばガラスアンテナ等の耐硫化性が要求されるガラス物品に広く使用することができる。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔試料の作製〕
ガラス素原料としてBi、B、SiO、Al、TiO、ZrO、CuO、Fe、Sb、BaO、及びZnOを用意した。ガラスフリットの組成が表1に示す含有モル量となるように前記ガラス素原料を秤量し、混合した後、混合物を白金坩堝に投入し、約1300℃の温度に加熱して溶融させた後、急冷し、ガラス化し、ガラス組成物を得た。
次いで、このガラス組成物をPSZ(部分安定化ジルコニア)と共に、ボールミルに投入し、粉砕し、これにより試料番号1〜27のガラスフリットを作製した。
尚、ガラスフリットの平均粒径D50は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を使用して測定したところ、1μmであった。
次に、有機ビヒクルを作製した。すなわち、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂10wt%、有機溶剤としてテキサノール90wt%となるようにエチルセルロース樹脂とテキサノールとを混合し、有機ビヒクルを作製した。
次に、添加剤として、MoSi、金属Mo、MoO、金属W、WO、金属V、及びVを用意し、また、導電性粉末として平均粒径D50が1μmの球形Ag粉末を用意した。
そして、Ag粉末が50〜80wt%、ガラスフリットが0.5〜30.0wt%、添加剤が0.0〜3.0wt%、残部が有機ビヒクルとなるように、Ag粉末、ガラスフリット、添加剤及び有機ビヒクルを配合し、プラネタリーミキサーで混合した後に、三本ロールミルで混練し、これにより試料番号1〜27の導電性ペーストを作製した。
〔試料の評価〕
まず、縦:26.0mm、横:76.0mm、厚み:1.4mmのスライドガラスを用意した。そして、試料番号1〜27の導電性ペーストを使用し、長さL:10mm、幅W:17mmの導電パターンをスライドガラス上に印刷形成した。次いで、これを150℃の温度で10分間乾燥した後、最高焼成温度600℃で約5分間焼成処理を行い、試料番号1〜27の試料を作製した。
次いで、試料番号1〜27の各試料を、雰囲気温度25℃、相対湿度75%、HS濃度が0.1ppm及びSO濃度が0.5ppmに調整された混合ガスの環境下に24時間放置し、耐硫化試験を行った。
そして、試料番号1〜25の各試料について、分光光度計(島津製作所社製、UV−2400PC)を使用し、耐硫化試験前の明度L *と耐硫化試験後の明度L *とをJIS Z8781−4:2013に準拠して測定し、数式(1)に基づいて明度差ΔL*を算出した。
ΔL*=L *−L * …(1)
明度差ΔL*が、ΔL*≦15の場合は、耐硫化試験前後で変色が殆ど生じず、優(◎)とし、15<ΔL*≦20の場合は、耐硫化試験前後で外観を損なう程の変色は生じなかったが、一部で変色したことから良(○)とし、ΔL*>20は試料全体が硫化試験前後で顕著に変色したことから不良(×)とし、それぞれ耐硫化性を評価した。
また、試料番号1〜27の各試料について、オージェ電子分光装置を使用した定量分析により硫化物層の同定を行った。また、電極表面のSEM画像の二値化によりガラス層の面積を算出し、導電膜表面に対するガラス層の面積比率を求めた。
表1は、試料番号1〜27について、ガラスフリットの組成成分、ガラスフリットの含有量、添加剤の種類と含有量、ガラス層の導電膜表面に対する面積比率、硫化物層の同定結果、及び耐硫化性試験の測定結果を示している。
試料番号25は、導電性ペースト中に添加剤が含まれていないため、明度差ΔL*が32と大きくなり、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
試料番号26は、導電性ペースト中に0.5wt%のMoSiが含有されているものの、ガラスフリットが含まれていないため、ガラス層が形成されることはなく、このため明度差ΔL*が32と大きくなり、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
試料番号27は、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量が30.0%と過剰であり、3.0wt%のMoSiが含有されているものの、Ag粉末の含有量が相対的に低下することから、導電膜表面に対するガラス層の面積比率が50%と大きくなり、このため明度差ΔL*が33と大きく、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
これに対し試料番号1〜24は、導電性ペースト中に本発明の添加剤を含有し、ガラスフリットの含有量は0.5〜15.0wt%あるので、明度差ΔL*が8〜20となり、良好な結果を得た。
ただし、試料番号16は、導電性ペースト中のMoSiの含有量が1.6wt%と若干多いため、明度差ΔL*が20となり、試料番号1〜12に比べると明度差ΔL*が若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号17は、ガラスフリット中のBの含有モル量が4.0mol%と少なく、SiOの含有量が50mol%と増加したため、明度差ΔL*は、試料番号1〜12に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号18は、ガラスフリット中のBの含有モル量が50.0mol%と多く、却って添加剤がガラスフリットに吸着し難くなる傾向となり、このため、明度差ΔL*が、試料番号1〜12に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号15は、ガラスフリット中のBiの含有モル量が4.0mol%と少なく、SiOの含有量が50mol%と増加したため、明度差ΔL*は、試料番号1〜12に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号13、14は、ガラスフリット中にBaO、ZnOを含有しているため、明度差ΔL*は、試料番号1〜12に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの、一部で変色が生じた。
このように良好な耐硫化性を得て美観や視認性を確保するためには、導電性ペースト中に本発明の添加剤を含有し、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量を0.5〜15.0wt%とする必要があり、更により良好な耐硫化性を得るためには、添加剤の含有量を0.1〜1.5wt%、ガラスフリットのB、Biの含有モル量をそれぞれ5.0〜40.0mol%、5.0〜60mol%とするのが好ましく、また、ガラスフリット中にBaO、ZnOを含有していないのが好ましいことが分かった。
試料番号4、25について、耐硫化試験前後の状態をデジタルマイクロスコープで撮像した。
図4は、耐硫化試験前における試料番号4の試料表面図であり、図5は、耐硫化試験後における試料番号4の試料表面図であり、図6は、耐硫化試験後における試料番号25の試料表面図である。尚、耐硫化試験前の試料番号25は、図4と同様であるので省略している。
図4に示すように、耐硫化試験前ではベージュ色であったったのが、試料番号25では、図6に示すように、茶褐色に変色しているのに対し、図5は、僅かに斑点は視認されるものの、顕著な変色は生じていないことが分かる。
SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスに長時間接しても、耐硫化性が良好で美観や視認性を確保できる自動車等の防曇ガラスの導電膜形成に適した導電性ペーストを実現する。
1 ガラス基体
2 導電膜
4 金属層
5 ガラス層
6 硫化物層
本発明は、導電性ペースト、及びガラス物品に関し、より詳しくは自動車等の車両用窓ガラスに防曇用やアンテナ用等の導電パターンを形成するための導電性ペースト、及びこの導電性ペ−ストを使用した防曇ガラス等のガラス物品に関する。
従来より、自動車等の車両用窓ガラスには、防曇用の熱線を配した防曇ガラスや車外からの電波を受信するアンテナ付きガラス等のガラス物品が使用されている。これらのガラス物品、例えば防曇ガラスでは、通常、素材となるガラス基体上に導電性ペーストをライン状に塗布して焼成し、所定パターンの導電膜を形成している。そして、従来より、この種の導電性ペーストも各種開発され、提案されている。
例えば、特許文献1には、導電粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有するガラス基板用導電性組成物であって、前記ガラスフリットは、均質なガラス成分およびシリカ成分からなり、前記均質なガラス成分は、前記ガラスフリットの合計100mol%のうち、Bが0〜30mol%、SiOが10〜30mol%、Biが5〜35mol%の組成範囲内からなり、かつ、前記シリカ成分は、前記ガラスフリットの合計100mol%のうち35〜85mol%の範囲内からなるガラス基板用導電性組成物が提案されている。
この特許文献1では、所定割合に配合されたB−SiO−Bi系ガラスを導電性組成物中に含有させることにより、低温焼成後にめっき処理を行なっても接着強度の低下を抑制できる耐湿性や耐酸性が良好な防曇ガラスを得ようとしている。
特開平11−130459号公報(請求項1、段落番号〔0029〕等)
しかしながら、特許文献1では、ガラス基体上の導電膜がSOやHS等の大気中に存在し得る腐食性ガスに長時間接すると、導電膜が硫化して腐食が進行し、このため導電膜の電気抵抗が高くなって導電性が低下したり、導電膜が変色して外観上の美観や視認性を損なうおそれがある。
特に、この種の車両用窓ガラスに使用されるガラス物品では、近年、導電膜の細線化・薄膜化が要請されており、したがって、導電膜が細線化・薄膜化されても外観上の美観や視認性を確保するためには導電膜が硫化するのを抑制する必要がある。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、SOやHS等の腐食性ガスに長時間接しても導電性粉末が硫化するのを抑制でき、良好な美観や視認性を確保できる導電性ペースト、及びこの導電性ペーストを使用した防曇ガラス等のガラス物品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために導電性粉末、ガラスフリット、及び有機ビヒクルを含有した導電性ペーストを使用し、鋭意研究を行った。そして、イオウと容易に反応するケイ化モリブデン(MoSi )を添加剤として導電性ペースト中に含有させ、かつガラスフリットの含有量及びその成分組成を規定することにより、ケイ化モリブデンが焼成過程でガラスフリットに容易に溶解し、その結果、導電膜がイオウ成分と接しても、導電膜表面では導電性粉末の硫化よりもケイ化モリブデンの硫化が優先的に進行し、これにより導電性粉末の硫化を効果的に抑制することができるという知見を得た。
本発明はこのような知見に基づきなされたものであって、本発明に係る導電性ペーストは、ガラス基体上に導電パターンを形成するための導電性ペーストであって、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、ケイ化モリブデンを添加剤として含有し、前記ガラスフリットの含有量が、0.5〜15.0wt%であり、かつ前記ガラスフリットは、B−Bi−Si−Al−O系材料を60mol%以上含有すると共に、Ti、Zr、Cu、Fe、Sbの群から選択された少なくとも1種の元素を含有していることを特徴としている。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ケイ化モリブデンの含有量が、0.1〜1.5wt%であるのが好ましい。
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットは、ホウ素を酸化物に換算し5〜40mol%含有しているのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットは、ビスマスを酸化物に換算し5〜60mol%含有しているのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記ガラスフリットが、バリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含まないのが好ましい。
また、本発明の導電性ペーストは、前記金属化合物が、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ケイ化物、及び金属硫化物の群から選択された少なくとも1種を含むのが好ましい。
さらに、本発明の導電性ペーストは、前記導電性粉末が、Agを60wt%以上含有しているのが好ましい。
また、本発明に係るガラス物品は、ガラス基体の表面に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、上述した導電性ペーストに含有される導電性粉末の焼結体からなる金属層と、該金属層の表面に島状に形成された前記導電性ペーストに含有されるガラスフリットの焼結体からなる金属層とを有し、前記ガラス層は硫化物層で被覆されていることを特徴としている。
また、本発明のガラス物品は、前記ガラス層の形成領域が、前記導電膜表面に対し面積比率で5〜40%であるのが好ましい。
また、本発明のガラス物品は、前記硫化物層は、モリブデン硫化物であるのが好ましい。
本発明の導電性ペーストによれば、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、ケイ化モリブデンを添加剤として含有し、前記ガラスフリットの含有量が、0.5〜15.0wt%であり、かつ前記ガラスフリットは、B−Bi−Si−Al−O系材料を60mol%以上含有すると共に、Ti、Zr、Cu、Fe、Sbの群から選択された少なくとも1種の元素を含有しているので、SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末が硫化するのを抑制でき、その結果、焼成後の導電膜が変色するのを抑制できる導電性ペーストを得ることができる。
また、本発明のガラス物品によれば、ガラス基体上に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、前記導電膜は、上述した導電性ペーストに含有される導電性粉末の焼結体からなる金属層と、該金属層の表面に島状に形成された前記導電性ペーストに含有されるガラスフリットの焼結体からなる金属層とを有し、前記ガラス層は硫化物層で被覆されているので、導電膜がSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスに長時間接しても導電膜が変色するのを抑制でき、外観上の美観や視認性を損なうこともなく、高品質のガラス物品を得ることができる。
本発明の導電性ペーストを使用して製造されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態を示す断面図である。 図1のA−A矢視断面図である。 図2のB部拡大断面図である。 試料番号4の硫化試験前における試料表面図である。 試料番号4の硫化試験後における試料表面図である。 試料番号25の硫化試験後における試料表面図である。
次に、本発明の実施の形態を詳説する。
図1は、本発明に係る導電性ペーストを使用して製造されたガラス物品としての防曇ガラスの一実施の形態を示す正面図であり、図2は図1のA−A矢視断面図である。
この防曇ガラスは、ガラス基体1の表面に所定間隔を有して細線化・薄膜化されたライン状の導電膜2が平行状に複数形成され、導電膜2の両端部にはバスバー電極3a、3bが形成され、バスバー電極3a、3bははんだを介して不図示の給電端子に接続されている。
この防曇ガラスは、ガラス基体1上に導電性ペーストをライン状に塗布した後、500〜800℃の温度で焼成処理し、導電性ペースト中の無機成分を焼結させることにより、所定パターンの導電膜2を形成し、これにより導電膜2がガラス基体1上に固着される。そして、導電膜2の両端はバスバー電極3a、3bを介して電気的に接続され、該バスバー電極3a、3bははんだ付けされて給電端子(不図示)に接続されている。
このように形成された防曇ガラスは、例えば自動車等の車両のフロントガラスやリアガラスとして装備され、バスバー電極3a、3bを介して給電端子から導電膜2に給電され、発熱させることによって窓ガラスの曇り止めやアンテナ機能の役割をなすことができる。
図3は、図2のB部拡大断面図であり、大気中のイオウ成分と長時間接した場合の導電膜2を示している。
導電膜2は、導電性粉末の焼結体である金属層4と、該金属層4の表面に島状に形成されたガラスフリットの焼結体であるガラス層5とを有し、さらに大気中のイオウ成分と長時間接した後は、ガラス層5の表面に硫化物層6が形成され、ガラス層5は硫化物層6で被覆されている。
すなわち、導電性ペーストには、後述するようにケイ化モリブデンが添加剤として含有されている。そして、斯かるケイ化モリブデンはイオウ成分と容易に反応し、しかも、この添加剤としてのケイ化モリブデンは、焼成過程でガラスフリットに容易に溶解される。したがって、SOやHS等のイオウ成分を含んだ大気中の腐食性ガスと導電膜2とが焼結後に接触しても、ケイ化モリブデンが金属層4に対しイオウ成分と優先的に反応することから、ガラス層5の表面にはモリブデン硫化物からなる硫化物層6が被覆形成される。
このように導電膜2がSOやHS等のイオウ成分を含んだ大気中の腐食性ガスと接触しても、金属層4の硫化に優先してガラス層5の表面には硫化物層6が被覆形成されるので、導電膜2表面の金属層4がイオウ成分と反応するのを抑制でき、金属層4が硫化するのを抑制することができる。
ここで、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量は、ガラス層5の形成領域が導電膜2表面に対し面積比率で5〜40%となるように調整されている。
すなわち、ガラス層5の形成領域が、導電膜2表面に対し面積比率で5%未満になると、ガラス層5の表面には金属層4の硫化を抑制するだけの十分な硫化物層6を形成するのが困難である。
一方、ガラス層5の形成領域が、導電膜2表面に対し面積比率で40%を超えると、金属層4がガラス層5で被覆される領域が大きくなり、電気抵抗が増加すると共に、導電膜2表面に存在する硫化物層6が目立つため好ましくない。
次に、上述した導電膜2を形成するための導電性ペーストについて詳述する。
本導電性ペーストは、導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有している。さらに、この導電性ペーストには、ケイ化モリブデンを添加剤として含有しており、また、ガラスフリットの含有量は、0.5〜15.0wt%とされている。
そして、これにより導電膜2がSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末の焼結体、すなわち金属層4が硫化するのを抑制することができる。そして、金属層4の硫化が抑制できることから、焼結後の導電膜2が変色するのを抑制でき、これにより外観上の美観や視認性を損なうこともなく、高品質の防曇ガラスを得ることができる。
以下、導電性ペースト中にケイ化モリブデンを含有させた理由、及び導電性ペースト中のガラスフリットの含有量を上述の範囲とした理由を詳述する。
(1)ケイ化モリブデンを含有させた理由
〔発明が解決しようとする課題〕の項でも述べたように、ガラス基体1上の導電膜2が大気中に存在し得るSOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接すると、導電膜2が硫化して腐食が進行し、該導電膜2が変色する。
この導電膜2の変色は、導電性粉末がイオウ成分と反応して硫化物を形成することに起因している。すなわち、導電性ペーストは、焼成処理によって焼結され導電膜2を形成する。この導電膜2は、導電性粉末の焼結体である金属層4と、導電膜2表面に島状に形成されたガラスフリットの焼結体であるガラス層5を有している。そして、この状態で導電膜2がHSやSO等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接すると、導電膜2表面の金属層4がイオウ成分と反応して硫化し、導電膜2の変色を招く。
しかるに、ケイ化モリブデンを添加剤として導電性ペースト中に含有させると、添加剤としてのケイ化モリブデンは焼成過程でガラスフリットに容易に溶解し、焼結後はイオウ成分と反応して硫化物を容易に形成する。したがって、導電膜2がイオウ成分を含んだ腐食性ガスと接すると、ガラスフリットに溶解したケイ化モリブデンは、金属層4中の導電性粉末よりも優先的にイオウ成分と反応し、ガラス層5の表面にモリブデン硫化物からなる硫化層6を形成し、これにより導電膜2の表面に露出している金属層4の硫化を効果的に抑制することができる。
ただし、この場合、上記ケイ化モリブデンをガラスフリットの構成成分としてガラスフリット中に含有させるのは好ましくない。すなわち、上記ケイ化モリブデンをガラスフリット中に含有させると、ケイ化モリブデンの硫化作用を促進させるべくその含有量を増加させようとした場合、Si等のガラスフリットの主成分の含有量を減少させざるを得ず、ガラスフリットの本来の機能を奏さなくなるおそれがある。したがって、ケイ化モリブデンを多く含有させることができず、好ましくない。
これに対してケイ化モリブデンをガラスフリット中に含有させるのではなく、ガラスフリットとは別に導電性ペースト中に含有させた場合は、ガラスフリットの機能を損なうことなく多量のケイ化モリブデンを含有させることができ、これにより電極層4の硫化抑制効果を向上させることができる。
そこで、本実施の形態では、ガラスフリットや導電性粉末に加え、上記特定金属元素を元素単体又は金属化合物の形態で導電性ペースト中に添加剤として含有させている。
尚、ケイ化モリブデンの含有量は特に限定されるものではないが、所望の添加効果を確実に奏するためには、少なくとも0.1wt%以上が好ましい。
ただし、ケイ化モリブデンの含有量が、1.5wt%を超えると、ガラスフリットが結晶化等により変質し、添加物のガラスフリットへの含有量が減少するため、耐硫化性が低下傾向となり導電膜2の変色が生じ易くなり、美観や視認性を損なうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、ケイ化モリブデンの含有量を0.1〜1.5wt%としている。
(2)ガラスフリットの含有量
導電性ペースト中にガラスフリットを含有することにより、ガラス基体1と導電膜2の固着が可能となる。
しかしながら、ガラスフリットの含有量が、0.5wt%未満になると、ガラス基体1と導電膜2との固着性が低下する上に、焼結後のガラス層5に十分な量のケイ化モリブデン(添加剤)を吸着させることができず、所望の硫化層6を形成するのが困難となり、好ましくない。
一方、ガラスフリットの含有量が、15.0wt%を超えると、導電性粉末の含有量が相対的に少なくなって半田付け性が低下し、しかもガラス層5の導電膜2表面に対する面積比率も大きくなって耐硫化性の低下も招き、好ましくない。
そこで、本実施の形態では、ガラスフリットの含有量を0.5〜15.0wt%としている。
また、ガラスフリットに使用されるガラス材は、ケイ化モリブデンのガラスフリットへの吸着を促進させる観点から、BやBiを含有しているのが好ましく、本実施の形態では、Bi−B−Al−Si−O系のガラスフリット60mol%以上含有したガラス材を使用するのが好ましい。
ただし、Bを含有したガラスフリットを使用する場合は、Bの含有モル量は、酸化物に換算して5〜40mol%が好ましい。ガラスフリット中のBの含有モル量が、酸化物に換算して5mol%未満になると、ガラス化させるためにはケイ素酸化物を増量する必要がある。しかしながら、このケイ素酸化物はガラスフリットの軟化点を上昇させるため、焼成過程でのガラスフリットの流動性が低下し、導電膜2の表面に存在するガラスフリットが減少することから、導電膜2表面に存在する導電性粉末が容易に硫化されることとなり、好ましくない。一方、ガラスフリット中のBの含有モル量が酸化物に換算して40mol%を超えると、添加剤が却ってガラスフリットに溶解し難くなって硫化層6が形成され難くなり、このため金属層4の硫化が容易に進行するおそれがある。
また、Biを含有したガラスフリットを使用する場合は、Biの含有モル量は、酸化物に換算して5〜60mol%が好ましい。ガラスフリット中のBiの含有モル量が酸化物に換算して5mol%未満になると、Bの場合と同様、ケイ素酸化物を増量させる必要があることから、ガラスフリットの流動性が低下し、導電膜2の表面に存在するガラスフリットの減少を招き、導電性粉末の硫化が促進されるおそれがある。また、ガラスフリット中のBiの含有モル量が酸化物に換算して60mol%を超えると、ガラス化が困難となる。
また、本発明では、上述したBi−B−Al−Si−O系のガラスフリット中にTi、Zr、Cu、Fe、Sbの群から選択された少なくとも1種の酸化物を含有している。
ただし、酸化物であってもBa酸化物やZn酸化物は含有しないのが好ましい。これらBa酸化物やZn酸化物は、上述したケイ化モリブデンのガラスフリットへの吸着を若干阻害する作用があり、このためガラスフリットの硫化が抑制され、導電膜2表面の導電性粉末の硫化が促進されるおそれがある。
したがって、Bi、Bを含有していても、Bi−B−Ba−Si−O系、Bi−B−Zn−Si−O系等は使用するのは好ましくない。
また、ガラスフリットの平均粒径D50(メジアン径)は、特に限定されるものではないが、ガラス基体1と導電膜2との間の固着性や導電性ペーストの焼結性の観点からは、0.1〜5.0μmが好ましい。
また、導電性ペースト中の導電性粉末の含有量は、特に限定されるものではないが、55.0〜95.0wt%が好ましい。導電性粉末の含有量が55.0wt%未満になるとガラスフリットの含有量が相対的に増加することから、特に導電膜2が細線化・薄膜化してくると電気抵抗が高くなるおそれがある。また、はんだ付け時にはんだ食われが生じ易く、更には基板への固着性も低下するおそれがある。一方、導電性粉末の含有量が95.0wt%を超えると、導電性粉末が過剰となってペースト化が困難になるおそれがある。このように導電性粉末の含有量は、導電性ペーストとしてのペースト化や低ライン抵抗化を考慮すると、55.0〜95.0wt%が好ましい。
また、導電性粉末としては、良好な導電性を有する金属粉であれば特に限定されるものではないが、焼成処理を大気中で行った場合であっても酸化されることなく良好な導電性を維持することができるAg粉末を好んで使用することができる。また、Ag粉末を60wt%以上含有し、Pd、Pt、Cu、Ni等の各種金属粉末を添加剤として含有させてもよい。
導電性粉末の形状も、特に限定されるものではなく、例えば、球形状、扁平状、不定形形状、或いはこれらの混合粉であってもよい。
導電性粉末の平均粒径D50も、特に限定されるものではないが、所望の低ライン抵抗を得る観点からは、平均粒径D50は球形粉換算で、0.05〜10μmが好ましい。導電性粉末の平均粒径D50が、0.05μm未満になるとペースト化が困難となり、一方導電性粉末の平均粒径D50が10μmを超えると、電気抵抗が大きくなる傾向にある。
有機ビヒクルは、バインダ樹脂と有機溶剤とが、例えば体積比率で、1〜3:7〜9となるように調製されている。尚、バインダ樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、エチルセルロース樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、又はこれらの組み合わせを使用することができる。また、有機溶剤についても特に限定されるものではなく、α―テルピネオール、キシレン、トルエン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を単独、或いはこれらを組み合わせて使用することができる。
そして、この導電性ペーストは、以下のようにして容易に製造することができる。すなわち、まず、B−Bi−Si−Al−O系材料が60mol%以上となるようにTi、Zr、Cu、Fe、及びSbの群から選択された少なくとも1種の元素を含有した酸化物を添加してガラスフリットを作製する。次いで、導電性粉末、上記ガラスフリット、ケイ化モリブデン、及び有機ビヒクルを所定の混合比率となるように秤量して混合し、三本ロールミル等を使用して分散・混練することにより、容易に製造することができる。
このように本実施の形態では、Ag粉末等の導電性粉末と、所定の成分組成を有するガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、ケイ化モリブデンを添加剤として含有し、ガラスフリットの含有量は、0.5〜15.0wt%であり、ケイ化モリブデンの含有量は、好ましくは総計で0.1〜1.5wt%、前記ガラスフリット中のB、Biの含有量は、好ましくは酸化物に換算しモル比率でそれぞれ5〜40mol%、5〜60mol%であるので、SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスと長時間接しても、導電性粉末が硫化するのを抑制でき、その結果、焼成後の導電膜の変色を抑制できる導電性ペーストを得ることができる。
そして、このように導電膜2の変色を抑制できることから、外観上の美観や視認性を損なうことなく、高品質のガラス物品を得ることができる。
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本導電性ペーストは、本発明の要旨を逸脱しない範囲で必要に応じ各種無機成分を含有させることができ、また、含有形態についても特に限定されるものではなく、酸化物、水酸化物、過酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、フッ化物、有機金属化合物等、適宜選択することができる。
また、本導電性ペーストには、必要に応じて、フタル酸ジ2−エチルヘキシル、フタル酸ジブチル等の可塑剤を1種又はこれらの組み合わせを添加するのも好ましい。また、脂肪酸アマイドや脂肪酸等のレオロジー調整剤を添加するのも好ましく、さらにはチクソトロピック剤、増粘剤、分散剤などを添加してもよい。
また、上記実施の形態では、ガラス物品として防曇ガラスを例示したが、防曇ガラス以外の各種ガラス物品、例えばガラスアンテナ等の耐硫化性が要求されるガラス物品に広く使用することができる。
次に、本発明の実施例を具体的に説明する。
〔試料の作製〕
ガラス素原料としてBi、B、SiO、Al、TiO、ZrO、CuO、Fe、Sb、BaO、及びZnOを用意した。ガラスフリットの組成が表1に示す含有モル量となるように前記ガラス素原料を秤量し、混合した後、混合物を白金坩堝に投入し、約1300℃の温度に加熱して溶融させた後、急冷し、ガラス化し、ガラス組成物を得た。
次いで、このガラス組成物をPSZ(部分安定化ジルコニア)と共に、ボールミルに投入し、粉砕し、これにより試料番号1〜27のガラスフリットを作製した。
尚、ガラスフリットの平均粒径D50は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を使用して測定したところ、1μmであった。
次に、有機ビヒクルを作製した。すなわち、バインダ樹脂としてエチルセルロース樹脂10wt%、有機溶剤としてテキサノール90wt%となるようにエチルセルロース樹脂とテキサノールとを混合し、有機ビヒクルを作製した。
次に、添加剤として、MoSi、金属Mo、MoO、金属W、WO、金属V、及びVを用意し、また、導電性粉末として平均粒径D50が1μmの球形Ag粉末を用意した。
そして、Ag粉末が50〜80wt%、ガラスフリットが0.5〜30.0wt%、添加剤が0.0〜3.0wt%、残部が有機ビヒクルとなるように、Ag粉末、ガラスフリット、添加剤及び有機ビヒクルを配合し、プラネタリーミキサーで混合した後に、三本ロールミルで混練し、これにより試料番号1〜27の導電性ペーストを作製した。
〔試料の評価〕
まず、縦:26.0mm、横:76.0mm、厚み:1.4mmのスライドガラスを用意した。そして、試料番号1〜27の導電性ペーストを使用し、長さL:10mm、幅W:17mmの導電パターンをスライドガラス上に印刷形成した。次いで、これを150℃の温度で10分間乾燥した後、最高焼成温度600℃で約5分間焼成処理を行い、試料番号1〜27の試料を作製した。
次いで、試料番号1〜27の各試料を、雰囲気温度25℃、相対湿度75%、HS濃度が0.1ppm及びSO濃度が0.5ppmに調整された混合ガスの環境下に24時間放置し、耐硫化試験を行った。
そして、試料番号1〜2の各試料について、分光光度計(島津製作所社製、UV−2400PC)を使用し、耐硫化試験前の明度L *と耐硫化試験後の明度L *とをJIS Z8781−4:2013に準拠して測定し、数式(1)に基づいて明度差ΔL*を算出した。
ΔL*=L *−L * …(1)
明度差ΔL*が、ΔL*≦15の場合は、耐硫化試験前後で変色が殆ど生じず、優(◎)とし、15<ΔL*≦20の場合は、耐硫化試験前後で外観を損なう程の変色は生じなかったが、一部で変色したことから良(○)とし、ΔL*>20は試料全体が硫化試験前後で顕著に変色したことから不良(×)とし、それぞれ耐硫化性を評価した。
また、試料番号1〜27の各試料について、オージェ電子分光装置を使用した定量分析により硫化物層の同定を行った。また、電極表面のSEM画像の二値化によりガラス層の面積を算出し、導電膜表面に対するガラス層の面積比率を求めた。
表1は、試料番号1〜27について、ガラスフリットの組成成分、ガラスフリットの含有量、添加剤の種類と含有量、ガラス層の導電膜表面に対する面積比率、硫化物層の同定結果、及び耐硫化性試験の測定結果を示している。
試料番号25は、導電性ペースト中に添加剤としてのMoSi 含まれていないため、明度差ΔL*が32と大きくなり、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
試料番号26は、導電性ペースト中に0.5wt%のMoSiが含有されているものの、ガラスフリットが含まれていないため、ガラス層が形成されることはなく、このため明度差ΔL*が32と大きくなり、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
試料番号27は、導電性ペースト中のガラスフリットの含有量が30.0wt%と過剰であり、3.0wt%のMoSiが含有されているものの、Ag粉末の含有量が相対的に低下することから、導電膜表面に対するガラス層の面積比率が50%と大きくなり、このため明度差ΔL*が33と大きく、耐硫化試験前後で顕著な変色が生じることが分かった。
これに対し試料番号8〜12は、導電性ペースト中に添加剤としてMoSi を含有し、ガラスフリットの含有量は4.0wt%であり、さらにこのガラスフリットはB−Bi−Si−Al−O系材料を96〜99mol%含有し、かつTi、Zr、Cu、Fe、又はSbが添加されており、本発明範囲内であるので、明度差ΔL * が10〜14となり、良好な結果を得た。
一方、試料番号13、14は、ガラスフリット中にBaO、ZnOを含有しているため、明度差ΔL*は、試料番号〜12に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの、一部で変色が生じた。
試料番号1〜7及び15〜24は、本発明の範囲に属さないものの、本発明と同様の効果を奏する参考例を示している。
すなわち、試料番号1〜7及び15〜18は、ガラスフリット中にTi、Zr、Cu、Fe、又はSbが添加されていない以外は、本発明の導電性ペーストと同様の構成を有しており、明度差ΔL * は8〜15であった。
ただし、試料番号15は、ガラスフリット中のBiの含有モル量が4.0mol%と少なく、SiOの含有量が50mol%と増加したため、明度差ΔL* は17となり、試料番号1〜に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号16は、導電性ペースト中のMoSiの含有量が1.6wt%と若干多いため、明度差ΔL*が20となり、試料番号1〜に比べると明度差ΔL*が若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号17は、ガラスフリット中のBの含有モル量が4.0mol%と少なく、SiOの含有量が50mol%と増加したため、明度差ΔL*19となり、試料番号1〜に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
試料番号18は、ガラスフリット中のBの含有モル量が50.0mol%と多く、却って添加剤がガラスフリットに吸着し難くなる傾向となり、このため、明度差ΔL*20となり、試料番号1〜に比べると若干大きく、美観や視認性を損なう程ではないものの一部で変色が生じた。
したがって、試料番号15〜18の各試料にTi、Zr、Cu、Fe、又はSbを添加した場合であっても、試料番号8〜12に比べて明度差が若干大きくなるものと考えられる。
試料番号19〜24は、ガラスフリット中にTi、Zr、Cu、Fe、又はSbが添加されておらず、添加剤としてMo、W、Vの金属元素単体又はこれらの酸化物を使用した場合を示している。これらの金属元素単体又はこれらの酸化物を使用した場合であっても、添加剤にMoSi を使用した場合と、略同様の明度差が得られた。
試料番号4、25について、耐硫化試験前後の状態をデジタルマイクロスコープで撮像した。
図4は、耐硫化試験前における試料番号4の試料表面図であり、図5は、耐硫化試験後における試料番号4の試料表面図であり、図6は、耐硫化試験後における試料番号25の試料表面図である。尚、耐硫化試験前の試料番号25は、図4と同様であるので省略している。
図4に示すように、耐硫化試験前ではベージュ色であったったのが、試料番号25では、図6に示すように、茶褐色に変色しているのに対し、図5は、僅かに斑点は視認されるものの、顕著な変色は生じていないことが分かる。
SOやHS等のイオウ成分を含んだ腐食性ガスに長時間接しても、耐硫化性が良好で美観や視認性を確保できる自動車等の防曇ガラスの導電膜形成に適した導電性ペーストを実現する。
1 ガラス基体
2 導電膜
4 金属層
5 ガラス層
6 硫化物層

Claims (12)

  1. ガラス基体上に導電パターンを形成するための導電性ペーストであって、
    導電性粉末と、ガラスフリットと、有機ビヒクルとを含有すると共に、
    モリブデン、タングステン、及びバナジウムの中から選択された1種以上の金属元素を、元素単体及び金属化合物のうちのいずれかの形態からなる添加剤として含有し、
    前記ガラスフリットの含有量が、0.5〜15.0wt%であることを特徴とする導電性ペースト。
  2. 前記添加剤の含有量が、総計で0.1〜1.5wt%であることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト。
  3. 前記ガラスフリットは、ホウ素を酸化物に換算し5〜40mol%含有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の導電性ペースト。
  4. 前記ガラスフリットは、ビスマスを酸化物に換算し5〜60mol%含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の導電性ペースト。
  5. 前記ガラスフリットは、B−Bi−Si−Al−O系材料を60wt%以上含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の導電性ペースト。
  6. 前記ガラスフリットは、Ti、Zr、Cu、Fe、Sbの群から選択された少なくとも1種の元素を含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の導電性ペースト。
  7. 前記ガラスフリットは、バリウム酸化物及び亜鉛酸化物を含まないことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の導電性ペースト。
  8. 前記金属化合物は、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属ケイ化物、及び金属硫化物の群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の導電性ペースト。
  9. 前記導電性粉末は、Agを60wt%以上含有していることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の導電性ペースト。
  10. ガラス基体の表面に所定パターンの導電膜が形成されたガラス物品であって、
    前記導電膜は、金属層と、該金属層の表面の一部に形成されたガラス層とを有し、
    前記ガラス層は硫化物層で被覆されていることを特徴とするガラス物品。
  11. 前記ガラス層の形成領域は、前記導電膜表面に対し面積比率で5〜40%であることを特徴とする請求項10記載のガラス物品。
  12. 前記硫化物層は、モリブデン硫化物、タングステン硫化物、及びバナジウム硫化物の中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項10又は請求項11記載のガラス物品。
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