実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による変位測定装置100の構成を示す斜視図である。本実施の形態の変位測定装置100は、駆動ステージ10、上部ヘッド11、固定具12、三角測量光学系20、信号ケーブル51a、51b、51c、制御部201、出力部202を備える。三角測量光学系20と制御部201とは、信号ケーブル51aで接続される。また、駆動ステージ10と制御部201とは、信号ケーブル51bで接続される。また、制御部201と出力部202とは、信号ケーブル51cで接続される。駆動ステージ10の上面には、測定対象となる対象物が配置される。ここで、駆動ステージ10の上面に平行な方向をX方向、Y方向とし、駆動ステージ10の上面に対して垂直な方向をZ方向とする。X方向とY方向とは直交する。また、駆動ステージ10から三角測量光学系20へ向かう方向(図1の上側に向かう方向)を+Z方向、三角測量光学系20から駆動ステージ10へ向かう方向を−Z方向とする。
図2は、本実施の形態の変位測定装置100にワーク13が配置された場合を示す斜視図である。ここで、ワーク13が、測定対象となる対象物である。ワーク13の表面は、拡散反射特性を持つ、粗面であることが一般的である。その中でも特に、ワーク13が金属の場合、測定対象となるワーク13の表面に、研削による筋状の加工痕が見られる。
また、図3は、本実施の形態の変位測定装置100における三角測量光学系20の構成と、照射光および反射光の光路とを示す図である。図3は、三角測量光学系20の構成と、照射光および反射光の光路とをX−Z平面に投影した図である。三角測量光学系20は、投光光学系21と受光光学系22とを備える。また、投光光学系21は、光源211および投光レンズ212を備え、受光光学系22は、受光レンズ221、光減衰フィルター222およびイメージセンサ223を備える。なお、簡単化のため、図3において信号ケーブル51aは省略している。
投光光学系21は、集光された照射光をワーク13の上面131の被照射位置に照射する。受光光学系22は、照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子であるイメージセンサ223の受光面に集光する。受光光学系22の光軸24は、投光光学系21の光軸23と斜めに交わる。ここで、投光光学系21の光軸23は、ワーク13に照射される照射光の光軸である。受光光学系22の光軸24は、受光レンズ221の中心とイメージセンサ223の受光面の中心を結んだ直線となる。なお、図3において、投光光学系21の光軸23に付した矢印の向きは、照射光の進行方向を表し、受光光学系22の光軸24に付した矢印の向きは、イメージセンサ223で受光される反射光の進行方向を表す。
以下、図面を用いて本実施の形態の変位測定装置100の動作について述べる。光源211は、レーザダイオード(LD)である。光源211から出射される光線は、投光レンズ212により集光され、ワーク13の上面131に照射光として照射され、照射スポット25を形成する。ここで、ワーク13の上面131が、照射光の被照射面となる。また、被照射面において、照射スポット25が形成される位置が被照射位置となる。ワーク13は表面に切削痕のある金属であるので、ワーク13に照射された照射光は、照射スポット25の位置によって異なる方向に反射される。ここで、異なる方向に反射されるとは、反射方向に対する反射光の強度分布が異なることを意味する。
表面に切削痕のある場合など、ワーク13の表面に微細な凹凸が存在すると、照射光が反射される方向は反射位置によって異なる。照射スポット25の大きさが、ワーク13の表面の微細な凹凸よりも大きい場合、照射スポット25の全体からの反射光には、様々な方向への反射成分が含まれ、反射方向に対する反射光の強度分布は、照射スポット25の位置によって異なる。照射スポット25からの反射光のうち、受光レンズ221に入光される光は、光減衰フィルター222で強度が低減(減衰)され、イメージセンサ223の受光面に集光され、スポット像として転写される。以降では、単にスポット像と記載した場合には、照射スポット25からの反射光によってイメージセンサ223の受光面に結像される像を意味する。
図4は、本実施の形態の変位測定装置100における変位測定の原理を説明するための模式図である。図4は、照射光および反射光の光路をX−Z平面に投影した図である。図4は、Z=Z0にあるワーク13の上面131aからの反射光の光路26aと、Z=Z0+dZにあるワーク13の上面131bからの反射光の光路26bとを模擬的に示している。なお、反射光の光路は、イメージセンサ223で受光される光の光路を表している。ここで、Z0は、Z方向の所定の位置(焦点位置)を表す。図4に示すように、ワーク13の上面の位置が上方向(+Z方向)に移動すると、イメージセンサ223の受光面においてスポット像の位置は、+X方向に移動する。
図5は、本実施の形態の変位測定装置100におけるイメージセンサ223の受光面224上の像の位置を示す模式図である。図5は、受光面224上の像の位置をX−Y平面に投影した図である。図5は、Z=Z0にあるワーク13の上面131aに対する受光面224上の像27aと、Z=Z0+dZにあるワーク13の上面131bに対する受光面224上の像27bとを模擬的に示している。図5に示すように、ワーク13の上面の位置が上方向(+Z方向)に移動すると、受光面224に結像されるスポット像の位置は、+X方向にdXだけ移動する。受光面224におけるスポット像のX方向の変位量dXを測定することによって、ワーク13の上面131のZ方向の変位量dZを求めることができる。このような変位の測定方法は三角測量方式と呼ばれており、光源211からイメージセンサ223までの光学系は三角測量光学系20を構成している。なお、ここではイメージセンサ223は、2次元のイメージセンサを例示して説明しているが、1次元のイメージセンサを用いることもできる。
図2に示すように、ワーク13は、駆動ステージ10に載せられ、固定具12で固定される。また、図1および図2に示すように、三角測量光学系20は、上部ヘッド11に固定されている。駆動ステージ10は、上部ヘッド11に対してXY方向に精密に移動させることができ、照射スポット25が形成される被照射位置をワーク13の上面131内で動かすことができる。駆動ステージ10は、信号ケーブル51bで制御部201と接続されている。制御部201は、信号ケーブル51bを介して、駆動ステージ10のX方向の位置情報およびY方向の位置情報を駆動ステージ10から取得する。また、制御部201は、信号ケーブル51bを介して、駆動ステージ10のXY方向の移動を制御する制御信号を駆動ステージ10へと送信する。
また、三角測量光学系20が備える光源211およびイメージセンサ223は、ケーブル51aで制御部201と接続されている。制御部201は、信号ケーブル51aを介して、光源211の発光タイミングおよびイメージセンサ223の露光タイミングを制御する。また、制御部201は、信号ケーブル51aを介して、イメージセンサ223から画像データを取得する。制御部201は、取得した画像データからイメージセンサ223の受光面224におけるスポット像のX方向の変位量dXを求める。さらに、制御部201は、スポット像のX方向の変位量dXから、ワーク13の上面131のZ方向の変位量dZを求める。制御部201で求められた変位測定結果は、信号ケーブル51cを介して出力部202に送られ、出力部202で出力される。制御部201は例えば計算機でプログラムを実行することで構成される。出力部202は、例えばディスプレイである。出力部202の代わりに、変位測定結果を記憶するメモリなどの記憶部を備えてもよい。
以上のように、制御部201は、駆動ステージ10および三角測量光学系20の動作を制御する。制御部201は、駆動ステージ10に載せられたワーク13と、投光光学系21および受光光学系22を含む三角測量光学系20とを相対的に移動させながら、ワーク13の上面131のZ方向の変位量dZを求める。また、制御部201は、イメージセンサ223の露光時間中は、投光光学系21とワーク13とを静止させることなく相対的に移動させて、照射スポットのワーク13上の被照射位置を静止させることなく移動させる。
以下では、本実施の形態の変位測定装置100の動作と、その動作により得られる効果について、詳しく述べる。図6は、本実施の形態の変位測定装置100における測定の流れの一例を示す図である。図6を用いて、変位測定装置100における測定の流れを説明する。測定が開始されると、制御部201は、光源211が点灯するように制御する(ステップS101)。次に、制御部201は、照射光の照射スポット25がワーク13の上面131の測定開始点に移動するように制御する(ステップS102)。次に、制御部201は、駆動ステージ10が移動を開始するように制御することで、照射スポット25の位置の移動を開始させる(ステップS103)。
次に、制御部201は、イメージセンサ223が露光を開始するように制御する(ステップS104)。イメージセンサ223の露光が終了すると、制御部201は、イメージセンサ223から画像データを取得する(ステップS105)。次に、制御部201は、取得した画像データからワーク13の上面131の変位を求める(ステップS106)。次に、制御部201は、測定を終了するか否かを判断する(ステップS107)。制御部201は、所定数の変位を求めた場合、または照射スポット25が所定の位置に達した場合に測定を終了すると判断する。
ステップS107において、制御部201が測定を終了しないと判断した場合には、変位測定装置100の動作は、ステップS104へと戻る。一方、ステップS107において、制御部201が測定を終了すると判断した場合には、変位測定装置100の動作は、ステップS108へと進む。ステップS108では、制御部201は、駆動ステージ10が移動を終了するように制御することで、照射スポット25の位置の移動を終了させる。次に、制御部201は、光源211が消灯するように制御し(ステップS109)、測定を終了する。本実施の形態の変位測定装置100は、以上の流れで動作する。
図7は、本実施の形態の変位測定装置100におけるワーク13の表面の加工痕の一例を示す図であり、ワーク13の表面の顕微鏡写真を2値化したものである。図7において、画像中の明暗は、ワーク13の表面の高低に対応している。図7に示すように、測定対象となるワーク13の表面には、Y方向に研削による加工痕の筋が見られる。図8は、本実施の形態の変位測定装置100におけるワーク13の表面の高さの分布を示す図であり、図7に示したワーク表面の所定のY位置において、X方向の位置の変化に対する高さの分布を表す。図8の横軸はX方向の位置であり、縦軸はワーク13の表面の高さ(Z方向の位置)である。図8に示すように、ワーク13の表面には、X方向の位置の変化に対して、高さ3μm程度の微小な凹凸がある。なお、本実施の形態では、ワーク13は筋状の加工痕がある金属であるとして、その効果について説明する。しかし、ワーク13の表面形状はこれに限定される訳では無く、粗面であれば、その効果を得ることができる。
図9は、本実施の形態の変位測定装置100においてワーク13上の異なる位置に集光された照射スポット25に対してイメージセンサ223で受光される光強度の分布を示す図である。図9の横軸は照射スポット25の中心を基準としたX方向の相対位置であり、縦軸は正規化された光の強度である。図9の点線のグラフは、ワーク13の表面が完全拡散面であって、反射光の強度分布が反射角度に依存せずに一様であると仮定した場合に、イメージセンサ223で受光される光強度の分布である。図9の点線のグラフは、ワーク13上の照射スポット25における照射光の強度分布と同様となる。図9の破線のグラフは、ワーク13上の第1の位置に照射光を照射した場合に、イメージセンサ223で受光される光強度の分布を表す。また、図9の実線のグラフは、ワーク13上の第2の位置に照射光を照射した場合に、イメージセンサ223で受光される光強度の分布を表す。なお、ワーク上の第1の位置と第2の位置とでは、X方向の位置のみが異なる。
図9に示すように、照射光の照射スポット25の強度分布は左右対称であったとしても、X方向に凹凸のあるワーク13で拡散反射される光のうち受光光学系22に入射する光線で形成される像は、X方向の位置により強度分布が大きく異なったものとなる。例えば、第1の位置に対して受光される光の強度分布(図9の破線)でX方向の輝度重心位置を計算すると、X=−2μmとなる。一方、第2の位置に対して受光される光の強度分布(図9の実線)でX方向の輝度重心位置を計算すると、X=+2μmとなる。
このようにワーク13の高さは一定のままでも、ワーク13の表面上のどこに照射光が照射されるかで、イメージセンサ223で受光される光のX方向の輝度重心位置が変化する。以降では、単に輝度重心位置と記載した場合には、イメージセンサ223で受光される光の輝度重心位置を意味する。図3の三角測量光学系20のように受光光学系22の光軸がX方向に傾いている場合には、輝度重心位置のX方向の変化は、ワーク13の高さ変位の推定値に変換される。よって、図7のようにY方向に研削による加工痕の筋がある場合には、X方向の凹凸パターンの変化は大きいので、X方向に安定した輝度重心位置の測定値を得ることができず、高さ変位の測定精度が悪化する。ここで、ワーク13の高さとは、ワーク13の表面の微細な凹凸は除き、ワーク13の表面の平均的な面の高さという意味である。
一方、ワーク13の表面にY方向に研削による加工痕の筋がある場合、ワーク13の表面の凹凸は、X方向と比較してY方向では変化が小さい。よって、照射光の照射スポット25の位置がY方向に移動しても、輝度重心位置の変化は、X方向への移動に比べれば小さい。従って、Y方向に傾いた受光光学系を用いる場合には、X方向に傾いた受光光学系22を用いる場合に比べれば、変位の測定精度は良い。しかしながら、ワーク13の表面の凹凸パターンはY方向成分についても小さいながらも変化がある。このため、被照射位置がY方向に移動することによる輝度重心位置の変化も、無視できない程度に存在し、Y方向に傾いた受光光学系を用いる場合であっても変位の測定値は安定せず、測定精度は悪い。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、本実施の形態の変位測定装置100は、三角測量光学系20に対してXY方向に移動する駆動ステージ10が備え付けられている。例えば、図7のようにワーク13が取り付けられていた場合、ワーク13に対して相対的に三角測量光学系20をX方向に移動させ、移動させている間にイメージセンサ223を露光させることで、測定精度を向上することができる。移動中の各瞬間にイメージセンサ223で受光される光の強度分布、すなわちイメージセンサ223の受光面224におけるスポット像の輝度分布は、上述のようにワーク13の表面の凹凸形状を反映したものとなるので、輝度重心位置はばらつく。しかし、移動中に長時間露光させることにより、各瞬間のスポット像を無数に足し合わせたスポット像を得ることができる。長時間露光で得られるスポット像は、ワーク13上の照射スポット25の光強度分布を反映した、図9の点線のグラフに近づく。
しかし、ワーク13に対して相対的に三角測量光学系20をY方向に移動させた場合、照射スポットは筋状の凹凸に沿って移動することになるため、照射位置に対する反射特性はX方向に移動させた時に比べて大きく変化しない。この結果、各瞬間のスポット像を足し合わせても、図9の点線のグラフには近づかない。このように、ワーク上の加工痕の向きが未知の場合には、駆動ステージを動かす方向によって、測定精度が変化してしまう。実際に変位測定装置100が使われる現場では、ワーク13上の微細な凹凸形状が、ワーク13に対してどの方向に加工されているかは分からない場合が多い。そのため、固定具12を用いて、ワーク13を駆動ステージ10上に取り付けた場合にも、どの向きに加工痕が並んでいるかは分からない。設置前にワーク13上の加工痕の向きを計測し、その向きを駆動ステージ10のX方向またはY方向に合わせて設置することは現実的に難しい。
すなわち、一方向に筋状の加工痕を持つ対象物からの反射光の強度分布のムラを低減する場合、筋状の加工痕に対して垂直な方向(凹凸が並ぶ方向)に移動させながら、複数の微細な凹凸からの反射光を蓄積して受光する必要がある。しかし、金属のような対象物の筋の方向の確認が容易ではない場合には、変位測定装置に対してどのような向きに置かれるかは未知であり、一方、全ての加工対象の筋状の加工痕の並ぶ方向を事前に別手段で計測することは作業時間の大幅な増加を伴う。
これに対して、本実施の形態の変位測定装置100は、イメージセンサ223の露光時間中は、投光光学系21とワーク13とを静止させることなく相対的に移動させるとともに、1回の露光時間中に移動方向が変化する。この結果、1回の露光時間中に、複数の方向への移動が含まれることになる。したがって、移動ワーク13上の加工痕の並び方向が未知の場合でも、微細な凹凸形状を横切って移動することができるため、露光時間中に蓄積されたスポット像は、ワーク13上の照射スポット25の光強度分布を反映した、図9の点線のグラフに近づけることができる。
本実施の形態の変位測定装置100において、撮像素子の1回の露光時間中に照射スポットの移動方向が90度以上変化することが望ましい。このように構成することによって、1回の露光時間中に、直交する2方向への移動が含まれることになり、ワーク13がどのように設置されていても、筋状の加工痕に対して垂直な方向への移動が含まれる。したがって、対象物の設置が容易となり、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。なお、照射スポットの移動方向には、必ずしも筋状の加工痕に対して垂直な方向が含まれる必要はなく、筋状の加工痕に交わる方向が含まれていればよい。筋状の加工痕に交わる方向に移動すれば、筋状の加工痕に垂直な方向への移動成分を含むので、一定の効果を得ることができる。また、本実施の形態の変位測定装置100は、イメージセンサ223の露光時間中は、投光光学系21とワーク13とを静止させることなく相対的に移動させるので、測定時間の大幅な増加を伴わず、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。
本実施の形態の変位測定装置100におけるワーク13上の照射スポットの移動の軌跡について、具体例を挙げて説明する。イメージセンサ223を露光させている間の照射スポットの移動方向の軌跡として、例えば、ワーク13の上面131において閉ループの軌跡を描くような円形がある。図10は、本実施の形態の変位測定装置100における照射スポット25の軌跡の一例を説明するための模式図である。測定点31a、31b、31cを測定するとき、1回の露光中の照射スポット25の軌跡33a、33b、33cは、それぞれ測定点31a、31b、31cを中心とする円を描く。なお、図10において、測定点31a、31b、31cの付近に記載した矢印は、照射スポット25の進行方向を表している。このように、照射スポットが測定点の周囲で円を描くように動けば、照射スポットは全ての方向へ均等に移動することになる。したがって、ワーク13上の加工痕の並び方向に関わらず、確実に凹凸を横切ることができ、複数の凹凸形状から反射したスポット像を足し合わせることができる。
例えば、図10に示す照射スポット25の軌跡33aの直径がφ160μmであるとすると、その円周長は約500μmとなる。円の接線方向の速度vが10mm/sとなるように、一定の角速度で照射スポット25が移動するとし、イメージセンサ223の1回の露光時間texpが50msとすると、照射スポット25が円の軌跡をちょうど一周する間に1回の露光が終了する。このように照射スポット25が円の軌跡を描くように移動する場合、ワーク13の表面にどの方向の加工痕があったとしても、照射スポット25は加工痕をまたぐ方向に同じ量だけ移動することができる。照射スポット25の軌跡33aの直径がφ160μmの場合には、照射スポット25は加工痕をまたぐ方向に160μm移動することになる。照射スポット25の軌跡33aの直径が、ワーク13の表面の加工痕の凸凹の周期よりも長ければ、照射スポットは1組以上の凹凸を横切ることになる。すなわち、照射スポット25のスキャンの方向がワーク13の表面の加工痕に直交するようにわざわざ設定しなくても、いつでも安定した精度の高い変位測定ができるという顕著な効果が得られる。
本実施の形態の変位測定装置100においては、駆動ステージ10の移動を制御することで、照射スポット25を円運動させている間、どのタイミングでイメージセンサ223の露光を開始してもよい。このとき、イメージセンサ223の露光のタイミングと、駆動ステージ10の動作とを厳密に同期させなくても、露光中の軌道は必ず同一の円になるという大きな利点がある。すなわち、高速で移動する駆動ステージ10と、イメージセンサ223の露光開始時間とのタイミングとを厳密に制御しなくても、測定位置を同一にできるという大きな利点がある。高速で移動する駆動ステージ10の移動開始時間と、イメージセンサ223の露光開始時間とのタイミングとを厳密に合わせない場合には、駆動ステージの円運動の回数を2回以上としておけば、露光時間中に1周分移動できる。
X軸、Y軸の2軸で駆動される駆動ステージ10を円形に動かすには、時間tに対する駆動ステージ10のX軸方向の移動量X(t)、Y軸方向の移動量Y(t)が、式(1)のように、それぞれ位相がπ/2だけずれたサイン関数となるように制御すれば良い。式(1)において、Rは軌道円の半径であり、ここではR=80μmである。ωは角速度である。ただし、円運動は、厳密な円形である必要もなく、駆動ステージの加減速により、楕円形状になったとしても、効果が得られることは自明である。
なお、照射スポット25の軌跡の円周長と、イメージセンサ223の露光時間中の移動距離とは、厳密に一致していなくても、ある程度の効果が得られる。例えば、照射スポット25がφ320μmの円の軌跡を描く場合、その軌跡の円周長は1mmとなる。照射スポット25の接線方向の移動速度がv=10mm/sであるとすると、露光時間texp=50msでは照射スポット25は半周しかできない。しかし、ワーク13の加工痕の方向に対して直交する方向への露光中の移動は含まれているので、平均化の効果は同様にある。ただし、駆動ステージ10の移動開始のタイミングとイメージセンサ223の露光のタイミングを厳密に制御しなくても、測定毎に測定位置を同一にするためには、イメージセンサ223の露光時間は円運動の一周にかかる時間以上であることが望ましい。
図11は、本実施の形態の変位測定装置100における照射スポット25の軌跡の別の例を説明するための模式図である。図11は、照射スポットの軌跡36が、測定点31を通る円弧となるように、照射スポット25が移動する例を表している。また、図12は、本実施の形態の変位測定装置100における照射スポット25の軌跡のさらに別の例を説明するための模式図である。図12は、照射スポットの軌跡37が、測定点31を中心として渦巻き状となるように、照射スポット25が移動する例を表している。図中の矢印は移動方向を示すが、この方向に限定される訳ではない。これらの場合でも、加工痕の並び方向に関わらず、照射スポット25は、イメージセンサ223の露光時間中に凹凸形状をまたぐように移動する。したがって、これらの場合でも、照射スポット25が円の軌跡を描くように移動する場合と同様の効果が得られる。図11に示す軌跡では、露光時間中の駆動ステージの移動方向の変化が小さく、ステージの加減速の影響を受けにくいという利点がある。また、図12にしめす軌跡では、円形の場合に比べて、同じ距離を移動させる場合に円の半径を小さくできる利点がある。
図13は、本実施の形態の変位測定装置100における照射スポット25の軌跡のさらに別の例を説明するための模式図である。図13は、4辺がX軸またはY軸に対して平行となり、測定点31を取り囲む長方形の軌跡34を描くように、照射スポット25が移動する場合を示している。また、図14は、本実施の形態の変位測定装置100における照射スポット25の軌跡のさらに別の例を説明するための模式図である。図14は、4辺がX軸またはY軸に対して斜めとなり、測定点31を取り囲む長方形の軌跡35を描くように、照射スポット25が移動する場合を示している。なお、これらのような場合でも、照射スポット25が円の軌跡を描くように移動する場合と同様の効果が得られる。
ただし、長方形の軌跡を描くように照射スポット25を移動させるためには、駆動ステージ10は、長方形の頂点付近で急な加減速を行わなければならない。この結果、照射スポット25を一定速度で動作させるのが難しくなる。一方、円の軌跡を描くように照射スポット25を移動させる場合のように、駆動ステージ10のX軸方向の移動と、Y軸方向の移動とを式(1)のようにπ/2位相をずらして制御する必要がないので、制御が簡単であるという利点がある。
上記のような効果を得るために、本実施の形態の変位測定装置100は、駆動ステージ10と、光源211と、イメージセンサ223とを適切に制御する必要がある。駆動ステージ10は、制御部201と信号ケーブル51bにより接続され、制御部201から指示された位置に、指示された速度で駆動される。また、駆動ステージ10にはリニアエンコーダが接続されており、X、Yの位置座標が信号ケーブル51bを介して制御部201に送られる。このように、高さ変位Zの測定時のX,Yの位置座標が正確に測定されるので、(X、Y、Z)の3次元空間上の位置データを得ることができる。
光源211には、レーザのON/OFFや点灯時の発光量を制御するための信号が、信号ケーブル51aによって制御部201から送信される。イメージセンサ223には、露光時間や露光タイミングを適切に制御するための信号が、信号ケーブル51aによって制御部201から送信される。また、イメージセンサ223によって取得された画像データは、信号ケーブル51aによって制御部201に送られる。
駆動ステージ10が移動している間にイメージセンサ223を露光させることによってスポット像が平均化されるので、1回の露光中の駆動ステージ10のXY方向の移動距離が、ワーク13の表面の凹凸の周期よりも大きい方が、測定精度はより高くなる。1回の露光中の駆動ステージ10の移動距離が、ワーク13の表面の凹凸の周期よりも十分に大きければ、測定精度はさらに高くなる。ここで、ワーク13の表面の凹凸の周期とは、例えば、隣り合う頂部の間の距離または隣り合う底部の間の距離である。ワーク13の表面の凹凸に様々な大きさのものが含まれる場合には、例えば、平均的な大きさの凹凸の周期、または、代表的な大きさの凹凸の周期を用いることができる。また、ワーク13の表面の凹凸の周期としては、表面加工により発生すると想定される理論的な凹凸の周期を用いることもできる。
ワーク13が表面に切削痕のある金属である場合、切削痕の周期は、例えば5μm程度である。よって、1回の露光中の駆動ステージ10の切削痕の並び方向(図7のX方向)の移動距離は5μm以上である方が、測定精度が向上する。十分な平均化効果を得るには、切削痕の10周期分の移動量である50μm以上であることが望ましい。X,Y位置に対するワーク13の上面の高さの変化が緩やかなものであるならば、500μm程度の移動量にすると、測定値はより安定する。
X方向またはY方向の位置が異なる複数点で高さ変位の測定を行って、その測定値を精度よく比較をする場合には、その複数点での測定間で測定の条件を一定にする必要がある。金属ワークを対象物とする測定では、測定値のばらつきの最大の要因は表面の凹凸なので、ワーク13の種類ごとに1回の露光中の移動量Lを適切に選択し、測定の際には1回の露光中の移動量Lを一定にするべきである。1回の露光中の移動量は、1回の露光時間と駆動ステージ10の移動速度の積で求められる。したがって、1回の露光中の移動量を一定に保つためには、式(2)に示す1回の露光時間texpと駆動ステージ10の移動速度vとの積Lを一定に制御する必要がある。
さらに、露光中の移動速度vも一定であることが望ましい。本実施の形態の変位測定装置では、露光中に照射スポット25の位置が変化することになるが、露光中の移動速度vが変化すると、各位置における照射スポットの滞在時間が異なるためである。ここで、議論を具体的にするために、以下では、1回の露光中の移動量をL=500μmに一定に保つことにする。例えば、イメージセンサ223の1回の露光時間をtexp=50msとして測定を行うとき、1回の露光中の移動量をL=500μmにするには、駆動ステージ10の移動速度をv=10mm/sとすれば良い。
なお、イメージセンサ223で取得される画像データのデジタル出力値は飽和しない程度の適切な値である必要がある。例えば、イメージセンサ223が8bitの画像データ、すなわち256階調の画像データを取得するものであるとすると、イメージセンサ223で取得される画像データのピーク値は200階調程度であることが望ましい。飽和してしまうとピーク値の情報が失われ、またスポット像の外形が大きくなるために輝度重心位置の算出誤差が大きくなる。一方、ピーク値が小さすぎても、量子化誤差や電気ノイズにより、輝度重心位置の算出誤差が大きくなる。
本発明による変位測定装置では、イメージセンサ223の受光量の飽和を抑えるために、受光光学系の中に大きな減衰率の光減衰フィルターを挿入することが望ましい。本発明では1回の露光時間中の移動距離を長くするために露光時間が長くなるからである。一方、その飽和を抑えるために照射光強度を小さくすることは望ましくない。通常の室内環境でイメージセンサ223により撮像されるスポット像の画像が、背景のノイズ光に対して十分大きな値を持つためには、ワーク13上の照射スポット25の光強度が、背景光(例えば蛍光灯の照明)の光強度に対して十分大きな値を持つ必要があるからである。
例えば、発明者らの実験では、照射スポット25の直径がφ8μmであるとき、照射光のパワーが1mWあれば背景光との輝度差は十分であった。しかし、この照射スポット25をイメージセンサ223で撮像すると、露光時間texp=50msではイメージセンサ223の出力が飽和してしまう。そのような課題を解決するために、受光光学系22の光路中に光減衰フィルター222が挿入されている。光減衰フィルター222は1%以下の透過率が望ましく、0.01%という非常に小さな透過率が必要とされる場合もある。
金属ワーク13は、さまざまな材質があり、また表面研磨の加工法や表面処理の有無等により、光の反射率、反射強度の角度分布はさまざまである。よって、照射スポット25の光強度が1mWで一定であったとしても、受光光学系22で受光される光強度には大きな違いが生じる。このとき、上述したようにスポット像の画像のデジタル出力値が適切な値でないと誤差が大きくなる。よって、光源211の発光強度を制御する、イメージセンサ223の出力信号の増幅率を調整するなどの制御が行われることが望ましい。
以上のように、本実施の形態の変位測定装置100は、対象物の被照射面における被照射位置に集光された照射光を照射する投光光学系21と、投光光学系21の光軸23と斜めに交わる光軸24を有しており、照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子の受光面に集光する受光光学系22と、撮像素子の露光時間中は、投光光学系21と対象物とを相対的に移動させて被照射位置を静止させることなく移動させる駆動ステージ10とを備え、駆動ステージ10が被照射位置を移動させる方向は、前記撮像素子の1回の露光時間中に変化し、受光面における反射光の集光位置の変位を計測することで被照射面の変位を測定する。したがって、対象物の表面に微細な凹凸が存在する場合に、測定時間の大幅な増加を伴わず、対象物の設置が容易で、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。すなわち、本実施の形態の変位測定装置100は、対象物の設置方向に関わらず、測定時間の大幅な増加を伴わず、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。
本実施の形態の変位測定装置100は、照射光の被照射位置、すなわち照射スポット25の位置を連続的に移動させている間に露光するので、対象物であるワーク13の表面に凹凸があっても、短時間で大きな平均化の効果が得られ、計測値の安定した精度のよい変位測定が可能となる。本実施の形態の変位測定装置100は、駆動ステージ10の移動を開始した後に、または駆動ステージ10の移動中に、イメージセンサ223の露光を開始する。イメージセンサ223の1回の露光が終了した後は、変位測定装置100は、駆動ステージ10の移動を一旦停止した後に移動を再度開始してもよいし、駆動ステージ10の移動を停止せずに続けて次回の露光を開始してもよい。
実施の形態2.
本実施の形態の変位測定装置100は、実施の形態1の図1に示すものとは三角測量光学系20の構成が異なる。他の構成は、実施の形態1の図1に示すものと同様である。本発明の実施の形態の変位測定装置100は、三角測量光学系20に複数の受光光学系を備え、それぞれの受光光学系で受光される光量の差に基づいて、ワーク13の表面の加工痕の並び方向を判別し、駆動ステージ10の移動方向を決定する。したがって、事前に対象物の表面の加工痕の並び方向を計測する必要は無く、変位測定装置100が自身で並び方向を判別し、駆動ステージの移動方向を決定する。その場合、駆動ステージ10が被照射位置を移動させる方向を、撮像素子の1回の露光時間中に変化させる必要が無く、直線状に動かすことができる利点がある。
図15は、本実施の形態の変位測定装置100における三角測量光学系20の構成を示す斜視図である。また、図16及び図17は、本実施の形態の変位測定装置100における三角測量光学系20の構成と、照射光および反射光の光路とを示す図である。図16は、X−Z平面に投影した平面図であり、図17は、Y−Z平面に投影した平面図である。本実施の形態の変位測定装置100では、三角測量光学系20は、投光光学系21、第1の受光光学系22a、第2の受光光学系22bを備える。なお、本実施の形態の変位測定装置100において、受光光学系は、第1の受光光学系22aと第2の受光光学系22bとを備えることになる。
投光光学系21は、光源211および投光レンズ212を備える。第1の受光光学系22aは、受光レンズ221a、光減衰フィルター222a、イメージセンサ223aを備える。第2の受光光学系22bは、受光レンズ221b、光減衰フィルター222b、イメージセンサ223bを備える。なお、イメージセンサ223a、223bを個別に備える代わりに、第1の受光光学系22a及び第2の受光光学系22bの受光スポットを両方とも撮像できる大きさのイメージセンサを1つ備えても良い。
第1の受光光学系22aの光軸24aと投光光学系21の光軸23とは、X−Z平面に対して平行な平面内にあり、第2の受光光学系22bの光軸24bと投光光学系21の光軸23とは、Y−Z平面に対して平行な平面内にある。したがって、第1の受光光学系22aの光軸24aと投光光学系21の光軸23とを含む平面は、第2の受光光学系22bの光軸24bと投光光学系21の光軸23とを含む平面とは異なる。図7のように筋状の加工痕を持つワークを計測する場合には、第1の受光光学系22aの光軸24aと投光光学系21の光軸23とを含む平面と、第2の受光光学系22bの光軸24bと投光光学系21の光軸23とを含む平面とのなす角度は、90度が望ましい。しかし、厳密に900度である必要は無く、第1の受光光学系22aの光軸24aと投光光学系21の光軸23とを含む平面と、第2の受光光学系22bの光軸24bと投光光学系21の光軸23とを含む平面とが異なっていれば、効果が得られる。
図18は、本実施の形態の変位測定装置100において、ワーク13上の同一の位置に集光された照射スポット25に対してイメージセンサ223a及び223bで受光される光強度の分布を示す図である。図18において、横軸はX方向またはY方向の位置を表し、縦軸は光強度を表す。図18の実線は、イメージセンサ223aで受光される光強度の分布を表し、図19の実線は、イメージセンサ223bで受光される光強度の分布を表す。本実施の形態の変位測定装置100は、第1の受光光学系22aおよび第2の受光光学系22bを投光光学系21から見て異なる方向に備えているので、ワーク13上の凹凸形状で拡散反射した反射光を2方向から受光することができる。ここで、イメージセンサ223aで受光される光強度のピーク値をPa、イメージセンサ223aで受光される光強度のピーク値をPbとした場合、ピーク強度の比Pdefは、式(3)で表される。
例えば、図7に示す通り、Y方向の筋状の加工痕がX方向に並んでいた場合、X方向に凹凸形状が並んでいるため、照射された光はX方向に多く反射し、Y方向への反射は相対的に少なくなる。その結果、Y方向と比較してX方向に反射される光が大きくなるので、イメージセンサ223aで受光されるピーク光量Paが、イメージセンサ223bで受光されるピーク光量Pbに対して大きくなり、受光光量の比Pdef<1となる。したがって、本実施の形態の変位測定装置100は、Pdef<1の場合には、Y方向の筋状の加工痕がX方向に並んでいると判別し、照射スポットの位置をX方向に移動させる。一方、本実施の形態の変位測定装置100は、Pdef>1の場合には、X方向の筋状の加工痕がY方向に並んでいると判別し、照射スポットの位置をY方向に移動させる。
なお、ここでは光強度のピーク値を用いる場合を例示して説明したが、平均値、合計値など、イメージセンサで受光される光量を表す他の値を用いても良い。また、ここでは光強度の比を用いる場合を例示して説明したが、差分など、複数のイメージセンサで受光される光量の違いを表す他の値を用いても良い。以上のように、本実施の形態の変位測定装置100は、第1の受光光学系によって受光された光量と前記第2の受光光学系によって受光された光量との違いに基づいて決定された方向に照射スポットの位置を移動させる。
次に、ワーク13がX軸及びY軸に対して回転して設置された場合について説明する。図19は、本実施の形態の変位測定装置100におけるワーク13の設置例を示す図である。図19は、ワーク13がX軸及びY軸に対してθ度回転した場合について示している。図19において、画像中の明暗は、ワーク13の表面の高低に対応している。図19に示すように、測定対象となるワーク13の表面には、X軸及びY軸に対して傾いた方向に加工痕の筋が見られる。
0度≦θ<360度とすると、0度≦θ<45度、135度<θ<225度、315度<θ<360度の場合、ワーク13上の凹凸の並び方向はY方向よりもX方向の成分の方が多いので、Y方向に拡散反射される光よりもX方向に拡散反射される光が多くなる。そのため、イメージセンサ223aで受光される光量が、イメージセンサ223bで受光される光量に対して大きくなり、Pdef<1となる。この場合、露光時間中に駆動ステージ10が、被照射位置をX方向に直線状に移動させれば、平均化の効果が得られ、加工痕による測定のばらつきを低減することができる。
一方で、45度<θ<135度、225度<θ<315度の場合には、ワーク13上の凹凸の並び方向はX方向よりもY方向の成分の方が多いので、X方向に拡散反射される光よりもY方向に拡散反射される光が多くなる。そのため、イメージセンサ223bで受光される光量が、イメージセンサ223aで受光される光量に対して大きくなり、Pdef>1となる。この場合、露光時間中に駆動ステージ10が、被照射位置をY方向に直線状に移動させれば、平均化の効果が得られ、加工痕による測定のばらつきを低減することができる。
最後に、θ=45度、135度、225度、315度の場合には、ワーク13上の凹凸の並び方向はX方向とY方向で同等になるので、X方向に拡散反射される光量とY方向に拡散反射される光量とは、ほぼ等しくなる。そのため、イメージセンサ223aで受光される光量とイメージセンサ223bで受光される光量とが等しくなり、受光光量の比Pdef=1となる。この場合、露光時間中に駆動ステージ10が、被照射位置をX方向、Y方向のどちらに直線状に移動させても、同様の平均化の効果が得られ、加工痕による測定のばらつきを低減することができる。
本実施の形態の変位測定装置100において、制御部201は、イメージセンサ223aおよび223bから画像データを取得し、取得した2つの画像データの平均である平均画像データを算出する。制御部201は、算出した平均画像データからスポット像の変位量を求める。さらに、制御部201は、スポット像の変位量から、ワーク13の上面131のZ方向の変位量を求める。上述したワーク13の上面131の変位を求める方法は一例であり、他の方法も考えられる。例えば、制御部201は、平均画像データを求めるのではなく、それぞれの画像データからイメージセンサ223aおよび223bにおけるスポット像の変位量を求め、求められた2つのスポット像の変位量の平均値を算出しても良い。さらに別の例としては、制御部201は、イメージセンサ223aおよび223bのいずれか一方の画像データを用いて良い。第1の受光光学系22aで受光される光量と、第2の受光光学系22bで受光される光量との間に大きな差がある場合には、大きな光量が得られている光学系のデータのみ用いればよい。
このように、X方向とY方向に受光光学系を設けた場合、ワーク13の設置方向が未知であっても、変位測定装置100は、2方向の受光光学系で受光される光量の比Pdefを用いて、その加工痕の並び方向を判別できる。また、変位測定装置100は、判別結果に基づいて、露光時間中に被照射位置を移動させる方向を決定することができる。ここで、ワークの設置角度θと平行に駆動ステージ10を動かした場合に、最大の平均化効果が得られる。しかし、X方向又はY方向に動かすだけでも凹凸を横切ることができ、平均化効果は得られる。また、X又はY方向のみに動かす方が、制御が簡単であるという利点がある。
また、今回は被照射位置を直線状に動かす例を示したが、凹凸を横切れば、直線以外の軌跡であっても同様の平均効果が得られる。すなわち、直線以外の軌跡であっても、測定終了時の被照射位置が、測定開始時の被照射位置と比較して、2つの受光光学系によって受光された光量に基づいて決定された方向に移動していれば、同様の平均効果が得られる。ここで、1回の露光時間中に被照射位置を移動させる量は、被照射面に存在する凹凸の周期よりも大きいことが望ましく、この場合には、平均化の効果がより大きくなる。
次に、本実施の形態の変位測定装置100における測定の流れを説明する。図20は、本実施の形態の変位測定装置100における測定の流れの一例を示す図である。測定が開始されると、制御部201は、光源211が点灯するように制御する(ステップS101)。次に、制御部201は、照射光の照射スポット25がワーク13の上面131の測定開始点に移動するように制御する(ステップS102)。次に、制御部201は、前述のように、2方向に設置された受光光学系で受光される光量に基づいて、駆動ステージ10を移動させる方向、すなわち、照射スポット25の位置の移動させる方向を決定する(ステップS201)。次に、制御部201は、駆動ステージ10が移動を開始するように制御することで、照射スポット25の位置の移動を開始させる(ステップS103)。ただし、本実施の形態の変位測定装置100では、制御部201は、ステップS201で決定された方向に、照射スポット25の位置を移動させる。ステップS104以降の測定の流れは、実施の形態1におけるものと同様である。
実施の形態3.
実施の形態2における三角測量光学系20は、受光光学系として第1の受光光学系22aと第2の受光光学系22bとを備えていたが、三角測量光学系20は、さらに別の構成を備えても良い。図21は、本実施の形態の変位測定装置100における三角測量光学系20の構成を示す斜視図である。他の構成は、実施の形態1の図1に示すものと同様である。図20に示す三角測量光学系20は、第1の受光光学系22a、第2の受光光学系22bに加え、第3の受光光学系22cと第4の受光光学系22dも備える。第3の受光光学系22cは、投光光学系21を中心として第1の受光光学系22aと対向する位置に備えられる。また、第4の受光光学系22dは、投光光学系21を中心として第2の受光光学系22bと対向する位置に備えられる。したがって、図21の三角測量光学系20は、+X方向、−X方向、+Y方向、−Y方向の4方向からの三角測量を行うことが可能である。
この場合、X方向において+X方向及び−X方向の2つの受光スポットが得られ、Y方向においても+Y方向及び−Y方向の2つの受光スポットが得られるので、より高精度に加工痕の並び方向の判別を行うことができる。また、図21ではX方向とY方向とにそれぞれ2つ以上の受光光学系を配列する例を説明したが、厳密にX方向とY方向とに配列されている必要は無く、また、投光光学系21から見て直交する方向に設置されている必要もない。ただし、投光光学系21から見て直交する方向に複数の受光光学系が配置されている方が最も判別の精度が良く、望ましい配置である。なお、本実施の形態の変位測定装置100における測定の流れは、実施の形態2におけるものと同様である。
本実施の形態の変位測定装置100において、イメージセンサの画像データからワーク13の上面131のZ方向の変位量を求める方法は、実施の形態2と同様に、4つの画像の平均画像から算出しても良く、4つのスポットの変位量の平均値を算出しても良い。また、本実施の形態では、+X方向、−X方向、+Y方向、−Y方向の4方向から三角測量を行うことができるので、X方向、Y方向それぞれにある対向する2つのスポット像間の距離を算出し、その距離の変化からワーク13の上面131のZ方向の変位量を求めることができる。
同じ方向の対向する2つのスポットの像の照度分布は、投光スポットに対して対称にあるので、同様の形状となる。したがって、対向するスポット像間の距離を計算すれば、ワーク13の上面131にある凹凸の影響で、イメージセンサ上のスポット像の照度分布にばらつきが生じても、照度分布のばらつきの影響によるスポット像の変位位置の誤差をキャンセルすることができ、より高精度に計測することができる。また、X方向とY方向のスポット像間の距離の平均値からワーク13の上面131のZ方向の変位量を求めることで、4方向から反射したスポット像を使用することができ、より精度良く計測することができる。
実施の形態4.
三角測量光学系20は、さらに別の構成とすることもできる。図22は、本実施の形態の変位測定装置100における三角測量光学系20の構成を示す図である。図22において、矢印は、照射光および反射光の光路を示す。なお、図22は、X−Z平面に投影した平面図を示しているが、Y−Z平面に投影した平面図も同様の構成となる。したがって、本実施の形態の三角測量光学系20は、実施の形態3の図21におけるものと同様に、4方向から三角測量を行う。本実施の形態の変位測定装置100における他の構成は、実施の形態1の図1に示すものと同様である。図22に示す三角測量光学系20では、構成の一部を投光光学系と受光光学系とで共用している。
投光光学系は、光源211、投光レンズ212、ビームスプリッタ214、対物レンズ213を備えている。光源211から出射された光は、投光レンズ212により集光され、ビームスプリッタ214によって進行方向が変更された後に、対物レンズ213を介してワーク13の上面131に照射され、照射スポット25を形成する。受光光学系は、対物レンズ213、ビームスプリッタ214。遮光板215、受光レンズ221a、221c、イメージセンサ223を備えている。照射スポット25からの反射光のうち、対物レンズ213に入光される光は、対物レンズ213によって平行光となる。平行光となった反射光は、ビームスプリッタ214を通過する。遮光板215には開口部が設けられており、この開口部に受光レンズ221a、221cが配置されている。ビームスプリッタを通過した光のうち開口部を通過した光は、受光レンズ221a、221cによってイメージセンサ223の受光面に集光される。
以上のように、本実施の形態の三角測量光学系20では、入射した拡散反射光を一度平行光にする構成となっている。この構成では、ワーク13の上面131で拡散反射した光を対物レンズで平行光にすることでX方向、Y方向に小型化することができる。平行光となった反射光は、受光レンズ221a、221cに入射する光以外は、遮光板215によって遮光され、受光レンズ221a、221cでイメージセンサ上に集光される。その結果、4方向から取得した反射光を1枚のイメージセンサで測定することができ、部品点数を削減でき、低コスト化できるメリットがある。ここで、対物レンズは拡散反射光を平行光にしているが、厳密に平行にする必要は無く、拡散反射光の広がり角よりも少しでも集光されれば、小型化の効果が得られる。また、本実施の形態では、4方向から三角測量を行う例を示したが、2方向、1方向でも同様に小型化の効果が得られる。
実施の形態5.
本実施の形態の変位測定装置100は、実施の形態1におけるものと構成は同様であるが、動作が異なる。ただし、イメージセンサ223としては、2次元のイメージセンサが必要となる。本実施の形態の変位測定装置100は、イメージセンサ223を用いて、ワーク13の表面を撮像する。その撮像した画像を元に加工痕の並び方向を画像処理により判別し、駆動ステージの移動方向を決定する。その場合、ワーク13上の凹凸が並ぶ方向が既知となるので、駆動ステージ10が被照射位置を移動させる方向を、撮像素子の1回の露光時間中に変化させる必要が無く、X方向又はY方向に直線状に動かすことができる利点がある。本実施の形態の変位測定装置100における測定の流れは、基本的には実施の形態2におけるものと同様である。ただし、ステップS201において、制御部201は、イメージセンサ223を用いて撮像した画像に基づいて、照射スポットの移動方向を決定する。
ここで、受光光学系22には、光減衰フィルター222が挿入されている。したがって、加工痕の並び方向を判別する際に、光量が小さくなり過ぎ、ワーク13上の表面の画像を撮像できない可能性もある。この場合、加工痕の並び方向を判別する間は、イメージセンサ223の露光時間を長くするか、出力信号の増幅率を高くすれば良い。また、加工痕の並び方向を判別する間は、撮影用の補助光源を用いても良い。具体的には、例えば、リング状の照明を三角測量光学系20の周囲に取り付ける方法が考えられる。このようにすれば、図7に示したようなワーク13上の加工痕のパターンをイメージセンサ223で直接撮影することができる。
変位測定装置100は、撮影した画像を処理して、加工痕の並び方向のX軸及びY軸に対する傾きθを算出する。また、変位測定装置100は、算出したθの値を元に駆動ステージ10の移動方向を決定する。本実施の形態の変位測定装置100は、実施の形態2における変位測定装置100と同様に、決定された方向に駆動ステージ10を動かしながら露光するので、平均化の効果を得ることができる。本実施の形態の変位測定装置100では、受光光学系を追加することなく、ワーク13の設置方向を判別できるので、変位測定装置のサイズが大きくならず、また、コストの増加もない。
本発明における変位測定装置は、対象物の被照射面における被照射位置に集光された照射光を照射して照射スポットを形成する投光光学系と、投光光学系の光軸と斜めに交わる光軸を有しており、照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子の受光面に集光する受光光学系と、撮像素子の露光時間中は、投光光学系と対象物とを相対的に移動させて被照射位置を静止させることなく移動させる駆動ステージとを備え、撮像素子の1回の露光時間中に駆動ステージが被照射位置を移動させる軌跡は、測定点を中心とする円周となり、受光面における反射光の集光位置の変位を計測することで被照射面の変位を測定するものである。
また、本発明における変位測定装置は、対象物の被照射面における被照射位置に集光された照射光を照射して照射スポットを形成する投光光学系と、投光光学系の光軸と斜めに交わる光軸を有しており照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子の受光面に集光する受光光学系と、撮像素子の露光時間中は、投光光学系と対象物とを相対的に移動させて被照射位置を静止させることなく移動させる駆動ステージとを備え、駆動ステージが被照射位置を移動させる方向は、撮像素子の1回の露光時間中に変化し、駆動ステージが被照射位置を移動させる速度は、撮像素子の1回の露光時間中は一定であり、受光面における反射光の集光位置の変位を計測することで被照射面の変位を測定するものである。
この発明における変位測定装置によれば、対象物の被照射面における被照射位置に集光された照射光を照射して照射スポットを形成する投光光学系と、投光光学系の光軸と斜めに交わる光軸を有しており、照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子の受光面に集光する受光光学系と、撮像素子の露光時間中は、投光光学系と対象物とを相対的に移動させて被照射位置を静止させることなく移動させる駆動ステージとを備え、撮像素子の1回の露光時間中に駆動ステージが被照射位置を移動させる軌跡は、測定点を中心とする円周となり、受光面における反射光の集光位置の変位を計測することで被照射面の変位を測定するので、対象物の表面に微細な凹凸が存在する場合に、測定時間の大幅な増加を伴わず、対象物の設置が容易で、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。
また、本発明における変位測定装置は、対象物の被照射面における被照射位置に集光された照射光を照射して照射スポットを形成する投光光学系と、投光光学系の光軸と斜めに交わる光軸を有しており照射光が被照射位置で反射された反射光を撮像素子の受光面に集光する受光光学系と、撮像素子の露光時間中は、投光光学系と対象物とを相対的に移動させて被照射位置を静止させることなく移動させる駆動ステージとを備え、駆動ステージが被照射位置を移動させる方向は、撮像素子の1回の露光時間中に変化し、駆動ステージが被照射位置を移動させる速度は、撮像素子の1回の露光時間中は一定であり、受光面における反射光の集光位置の変位を計測することで被照射面の変位を測定するので、対象物の表面に微細な凹凸が存在する場合に、測定時間の大幅な増加を伴わず、対象物の設置が容易で、高精度に対象物の表面の変位を測定できる。