以下に、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
1.製造工程例
本実施形態の製造方法が対象とする鍛造クランク軸は、回転中心となるジャーナル部Jと、そのジャーナル部Jに対して偏心したピン部Pと、ジャーナル部Jとピン部Pをつなぐアーム部Aと、アーム部Aのうちの全部または一部が一体で有するウエイト部Wと、を備える(前記図1A〜図1C参照)。ピン部(P1〜P3)は、第1位置L1、第2位置L2および第3位置L3にそれぞれ位置する。第1位置L1、第2位置L2および第3位置L3の位相差は、いずれも120°である。本実施形態の製造方法は、例えば、前記図1A〜図1Cに示す3気筒−4枚カウンターウエイトのクランク軸を対象とすることができる。
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、第1予備成形工程と、第2予備成形工程と、最終予備成形工程とをその順で含む。最終予備成形工程の後工程として、仕上げ鍛造工程と、バリ抜き工程を追加してもよい。また、必要に応じて、バリ抜き工程の後に、整形工程を追加してもよい。ピン部の配置角度の調整は、仕上げ鍛造工程で行うことができる。あるいは、バリ抜き工程の後に、ピン部の配置角度の調整を行う捩り工程を追加してもよい。これらの工程は、いずれも、熱間で一連に行われる。
図3A〜図3Fは、本発明の鍛造クランク軸の製造工程例を説明するための模式図である。そのうちの図3Aはビレットを示す。また、図3Bは初期荒地、図3Cは中間荒地、図3Dは最終荒地について、正面図および側面図をそれぞれ示す。図3Eは仕上げ鍛造材、図3Fは鍛造クランク軸について平面図および側面図をそれぞれ示す。図3A〜図3Fは、前記図1A〜図1Cに示す形状のクランク軸の製造工程例を示す。図3B〜図3Dの右側の側面図は、ジャーナル部となる部位(以下、「ジャーナル相当部」ともいう)の中心に対するピン相当部PA1〜PA3の配置を示す。図3Eおよび図3Fの右側の側面図は、ジャーナル部の中心に対するピン部P1〜P3の配置を示す。また、図3B〜図3Dの右側の側面図には、最終製品である鍛造クランク軸のピン部の第1位置L1〜第3位置L3を想像線で併せて示す。
第1予備成形工程では、被加工材を第1金型で圧下する。本製造工程例の第1予備成形工程では、ビレット22を第1金型で圧下する。これにより、ビレット22のうちでピン相当部およびジャーナル相当部を押し潰す。これに伴って、ビレット22に扁平部23aが形成される。
ビレット22に扁平部23aを形成する際、扁平部23aのうちで第2位置L2に配置されるピン相当部(以下、「第2位置用ピン相当部」ともいう、符号:PA2)を圧下方向に沿って偏心させる。このようにして得られる初期荒地23では、ピン相当部およびジャーナル相当部が絞られることにより、体積が配分される。また、第2位置用ピン相当部は偏心している。第1予備成形工程は、例えば、後述の加工フロー例に従って行うことができる。
第2予備成形工程では、体積をさらに配分するため、初期荒地23を一対の第2金型で圧下する。その際の圧下方向は、第2位置用ピン相当部PA2の偏心方向と垂直な方向とする。これにより、中間荒地24を得る。その中間荒地24は、第1位置L1に配置されるピン相当部(以下、「第1位置用ピン相当部」ともいう)PA1が圧下方向に沿って偏心する。第3位置L3に配置されるピン相当部(以下、「第3位置用ピン相当部」ともいう)PA3は、圧下方向に沿って第1位置用ピン相当部PA1の反対側に偏心する。中間荒地24では、第1位置用ピン相当部PA1と第2位置用ピン相当部PA2との位相差は90°である。また、第1位置用ピン相当部PA1と第3位置用ピン相当部PA3との位相差は180°である。第2予備成形工程の詳細は、後述する。
最終予備成形工程では、第3金型により、中間荒地24を圧下する。第3金型による圧下方向は、第2位置用ピン相当部PA2の偏心方向と垂直な方向とすることができる。これにより、第1位置用ピン相当部PA1および第3位置用ピン相当部PA3をさらに偏心させ、最終荒地25を得る。その際、前述の第1〜第3位置用ピン相当部PA1〜PA3の位相差は、維持される。併せて、最終荒地25には、鍛造クランク軸のおおよその形状が造形される。最終予備成形工程では、例えば、WO2014/091730号公報(以下、「特許文献4」という)に記載の成形装置を応用できる。最終予備成形工程の加工フロー例については後述する。
仕上げ鍛造工程では、第2位置用ピン相当部PA2の偏心方向を圧下方向にし、一対の金型を用いて鍛造することにより、最終荒地25から仕上げ鍛造材26を得る。その際、余材が流出し、バリBが形成される。その仕上げ鍛造材26には、最終製品のクランク軸と合致する形状が造形されている。前述の通り、最終荒地25には、クランク軸のおおよその形状が造形されているとともに、第1〜第3位置用ピン相当部PA1〜PA3がそれぞれ偏心している。これにより、仕上げ鍛造工程において、バリBの流出を低減して最小限に留めることができる。
また、本製造工程例では、ピン部の配置角度を調整するため、仕上げ鍛造工程で第1位置用ピン相当部PA1を最終製品である鍛造クランク軸のピン部の第1位置L1まで圧下方向に沿って第2位置用ピン相当部PA2の反対側にオフセットする。また、第3位置用ピン相当部PA3を最終製品である鍛造クランク軸のピン部の第3位置L3まで圧下方向に沿って第2位置用ピン相当部PA2の反対側にオフセットする。これにより、ピン部P1〜P3の位相差は、いずれも120°となる。
バリ抜き工程では、例えば、バリ付きの仕上げ鍛造材26を一対の金型によって挟んで保持した状態で、刃物型によってバリBを打ち抜く。これにより、仕上げ鍛造材26からバリBが除去され、鍛造クランク軸21(最終製品)が得られる。
なお、特許文献4には、クランク軸の粗形状が造形された粗素材から仕上打ち用素材を成形する成形装置が提案される。その粗素材は、丸ビレットに、絞り圧延および曲げ打ち等を繰り返して施すことによって得られる。また、後工程において、仕上げ打ち用素材に、仕上げ鍛造およびバリ抜きがその順に施される。
本実施形態では、上述の特許文献4の製造工程と比べ、ビレットから粗素材を得るための加工、より具体的には、ビレットに繰り返して施される絞り圧延および曲げ打ち等に代え、第1予備成形および第2予備成形を採用する。本実施形態の最終予備成形は、特許文献4の成形装置による加工に相当し、すなわち、粗素材から仕上打ち用素材を得る成形に相当する。また、本実施形態では、特許文献4と同様に、最終荒地(特許文献4の仕上げ打ち用素材)に仕上げ鍛造およびバリ抜きをその順に施す。
本実施形態および特許文献4の製造工程における仕上げ鍛造は、前記図2A〜図2Fを用いて説明した従来の製造工程における型鍛造に相当する。ただし、従来の製造工程では、型鍛造が荒打ちおよび仕上げ打ちで構成される。これに対し、本実施形態および特許文献4の製造工程では、型鍛造が仕上げ打ちのみで構成される。
2.第1予備成形工程の加工フロー例
図4A〜図7Bは、第1予備成形工程の加工フロー例を示す模式図である。そのうちの図4Aは圧下開始時の縦断面図であり、図4Bは圧下終了時の縦断面図である。
図5Aおよび図5Bは、第2位置に配置されるピン部となる部位(第2位置用ピン相当部)を示す横断面図である。そのうちの図5Aは圧下開始時、図5Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図5Aは、前記図4AのVA−VA断面図であり、図5Bは、前記図4BのVB−VB断面図である。
図6Aおよび図6Bは、ジャーナル部となる部位(ジャーナル相当部)を示す横断面図である。そのうちの図6Aは圧下開始時、図6Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図6Aは、前記図4AのVIA−VIA断面図であり、図6Bは、前記図4BのVIB−VIB断面図である。
図7Aおよび図7Bは、ウエイト部を一体で有するアーム部となる部位を示す横断面図である。そのうちの図7Aは圧下開始時、図7Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図7Aは、前記図4AのVIIA−VIIA断面図であり、図7Bは、前記図4BのVIIB−VIIB断面図である。ここで、「ウエイト部を一体で有するアーム部となる部位」とは、そのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位を含む。以下では、アーム部となる部位およびそのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位を、まとめて「ウェブ相当部」ともいう。
図4A〜図7Bには、横断面が丸形であるビレット22と、上下で一対の第1金型30とを示す。第1金型30は、第1上型31と、第1下型32とからなる。なお、図5A〜図7Bには、図面の理解を容易にするため、ジャーナル相当部の軸位置を黒塗りの丸印(符号C参照)で示す。また、図5B、図6Bおよび図7Bには、圧下開始時の第1上型31、第1下型32およびビレット22を二点鎖線で示す。一対の第1金型30は、ピン相当部と当接するピン加工部、および、ジャーナル相当部と当接するジャーナル加工部を有する。
本加工フロー例のピン加工部は、図5Aに太線で示すように、一対の第1金型のうちの一方に設けられる第1ピン加工部31b、および、他方に設けられる第2ピン加工部32bからなる。その第1ピン加工部31bは、凹状であり、ビレット22を収容可能である。本加工フロー例では、上型31のピン加工部が、ビレット22を収容可能な凹状であり、第1ピン加工部31bとなる。また、下型32のピン加工部は、第2ピン加工部32bとなり、凸部の先端面に設けられる。なお、上型および下型のいずれをビレットを収容可能な凹状(第1ピン加工部)とするかは、特に制限はない。すなわち、下型がビレットを収容可能な凹状(第1ピン加工部)であってもよい。
第1および第3位置用ピン相当部と当接するピン加工部は、横断面図を省略するが、図5Aおよび図5Bに示すような第2位置用ピン相当部と当接するピン加工部と同様の構成である。ただし、第1および第3位置用ピン相当部と当接するピン加工部は、第2位置用ピン相当部と当接するピン加工部と、圧下方向の位置が異なる(図4Aおよび図4B参照)。
本加工フロー例のジャーナル加工部は、図6Aに太線で示すように、一対の第1金型のうちの一方に設けられる第1ジャーナル加工部31a、および、他方に設けられる第2ジャーナル加工部32aからなる。第1ジャーナル加工部31aは、凹状であり、ビレット22を収容可能である。本加工フロー例では、上型31のジャーナル加工部が、ビレット22を収容可能な凹状であり、第1ジャーナル加工部31aとなる。また、下型32のジャーナル加工部は、第2ジャーナル加工部32aとなり、凸部の先端面に設けられる。なお、上型および下型のいずれをビレットを収容可能な凹状(第1ジャーナル加工部)とするかは、特に制限はない。すなわち、下型がビレットを収容可能な凹状(第1ジャーナル加工部)であってもよい。
本加工フロー例の第1予備成形では、上型31を上昇させて離間させた状態で、ビレット22を上型31と下型32の間に配置する。この状態で、上型31を下降させると、図5Aに示すように、ビレット22のうちのピン相当部が凹状の第1ピン加工部31bに収容される。また、図6Aに示すように、ジャーナル相当部は、凹状の第1ジャーナル加工部31aに収容される。上型31をさらに下降させると、ピン加工部31bおよび32b並びにジャーナル加工部31aおよび32aにより、ビレット22が圧下される。このため、ピン相当部およびジャーナル相当部の断面積が減少する。その結果、図5Bおよび図6Bに示すような扁平部が形成される。
また、ピン加工部およびジャーナル加工部のうちで第2位置用ピン相当部と当接するピン加工部は、図4Aに示すように、第1および第3位置用ピン相当部と比べて圧下方向の位置が異なる。このため、第2位置用ピン相当部は、変形しながら圧下方向に沿って偏心する。第1金型30による圧下の終了後、上型31を上昇させ、加工済みのビレット22(初期荒地23)を取り出す。
このような加工フロー例を採用すれば、ピン相当部およびジャーナル相当部を圧下するのに伴い、ピン相当部およびジャーナル相当部の材料が、ビレット22の軸方向に移動し、ウエイト部を有さないアーム部となる部位(以下、「ウエイト無しアーム相当部」ともいう)およびウェブ相当部に流入する。これにより、体積が軸方向に配分された初期荒地23を得ることができる。その際、第2位置用ピン相当部を偏心させることもできる。
また、本加工フロー例の第1予備成形工程によれば、上型を下降させる過程で、凹状の第1ピン加工部31bの開口が、第2ピン加工部32bで塞がれ、第1および第2ピン加工部で閉断面が形成される(図5Aおよび図5B参照)。また、凹状の第1ジャーナル加工部31aの開口が、第2ジャーナル加工部32aで塞がれ、第1および第2ジャーナル加工部で閉断面が形成される(図6Aおよび図6B参照)。これにより、上型31と下型32の間にバリが流出することがないので、材料歩留りを向上できるとともに、体積の軸方向の配分を促進できる。
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、後述するように、ジャーナル加工部でジャーナル相当部を部分圧下することにより、バリの流出を防止してもよい。また、ピン加工部でピン相当部を部分圧下することにより、バリの流出を防止してもよい。
第1予備成形では、体積の軸方向の配分を促進する観点から、ウェブ相当部を第1金型で圧下しなくてよい。また、ウェブ相当部の形状(寸法)を整えるため、部分的に第1金型で圧下してもよい(図7Aおよび図7B参照)。
また、ウエイト無しアーム相当部は、その形状(寸法)を整えるため、部分的に第1金型で圧下してもよい。
扁平部の断面形状は、圧下方向と垂直な方向の幅Baが圧下方向の厚さtaより大きければよく、例えば、楕円状または長円状とすることができる(図5Bおよび図6B参照)。
3.第2予備成形工程の加工フロー例
図8A〜図13Bは、第2予備成形工程の加工フロー例を示す模式図である。そのうちの図8Aは圧下開始時の縦断面図であり、図8Bは圧下終了時の縦断面図である。
図9Aおよび図9Bは、第3位置に配置されるピン部となる部位(第3位置用ピン相当部)を示す横断面図である。そのうちの図9Aは圧下開始時、図9Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図9Aは、前記図8AのIXA−IXA断面図であり、図9Bは、前記図8BのIXB−IXB断面図である。
図10Aおよび図10Bは、第2位置に配置されるピン部となる部位(第2位置用ピン相当部)を示す横断面図である。そのうちの図10Aは圧下開始時、図10Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図10Aは、前記図8AのXA−XA断面図であり、図10Bは、前記図8BのXB−XB断面図である。
図11Aおよび図11Bは、ジャーナル部となる部位(ジャーナル相当部)を示す横断面図である。そのうちの図11Aは圧下開始時、図11Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図11Aは、前記図8AのXIA−XIA断面図であり、図11Bは、前記図8BのXIB−XIB断面図である。
図12Aおよび図12Bは、ウエイト部を一体で有するアーム部となる部位(ウェブ相当部)を示す横断面図である。そのうちの図12Aは圧下開始時、図12Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図12Aは、前記図8AのXIIA−XIIA断面図であり、図12Bは、前記図8BのXIIB−XIIB断面図である。
図13Aおよび図13Bは、ウエイト部を有さないアーム部となる部位(ウエイト無しアーム相当部)を示す横断面図である。そのうちの図13Aは圧下開始時、図13Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図13Aは、前記図8AのXIIIA−XIIIA断面図であり、図13Bは、前記図8BのXIIIB−XIIIB断面図である。
図8A〜図13Bには、前述の第1予備成形工程で得られる初期荒地23と、上下で一対の第2金型40とを示す。第2金型40は、第2上型41と、第2下型42とからなる。なお、図9A〜図13Bには、図面の理解を容易にするため、ジャーナル相当部の軸位置を黒塗りの丸印(符号C参照)で示す。また、図9B、図10B、図11B、図12Bおよび図13Bには、圧下開始時の第2上型41、第2下型42および初期荒地23を二点鎖線で示す。一対の第2金型40は、初期荒地23のピン相当部と当接するピン加工部41b、42b、41fおよび42f、ジャーナル相当部と当接するジャーナル加工部41aおよび42a、並びに、ウェブ相当部と当接するウェブ加工部41cおよび42cを有する。
本加工フロー例のピン加工部は、一対の第2金型41および42のうちの一方に設けられる第1ピン加工部41bおよび42f、並びに、他方に設けられる第2ピン加工部42bおよび41fからなる(図9Aおよび図10Aの太線部参照)。第1ピン加工部41bおよび42fは、凹状であり、初期荒地23の扁平部を収容可能である。上型および下型のいずれを初期荒地の扁平部を収容可能な凹状(第1ピン加工部)とするかについては、特に制限はない。
本加工フロー例において、第3位置用ピン相当部では、図9Aに太線で示すように、上型41のピン加工部が、初期荒地23の扁平部を収容可能な凹状であり、第1ピン加工部41bとなる。また、下型42のピン加工部は、第2ピン加工部42bとなり、図9Aに太線で示すように、凸部の先端面に設けられる。一方、第2位置用ピン相当部では、図10Aに太線で示すように、下型42のピン加工部が、凹状の第1ピン加工部42fであり、上型41のピン加工部が、第2ピン加工部41fとなる。
図10Aおよび図10Bに示す第2位置用ピン相当部と当接するピン加工部は、図9Aおよび図9Bに示す第3位置用ピン相当部と当接するピン加工部と比べ、圧下方向およびそれと垂直な方向(第2位置用ピン相当部の偏心方向)の位置が異なる。また、第1位置用ピン相当部と当接するピン加工部は、横断面図を省略するが、第3位置用ピン相当部と当接するピン加工部と比べ、圧下方向の位置が異なる。
本加工フロー例のジャーナル加工部は、図11Aに太線に示すように、一対の第2金型41および42のうちの一方に設けられる第1ジャーナル加工部41a、および、他方に設けられる第2ジャーナル加工部42aからなる。第1ジャーナル加工部41aは、凹状であり、初期荒地23の扁平部を収容可能である。本加工フロー例では、上型41のジャーナル加工部が、初期荒地23の扁平部を収容可能な凹状であり、第1ジャーナル加工部41aとなる。また、下型42のジャーナル加工部は、第2ジャーナル加工部42aとなり、凸部の先端面に設けられる。なお、上型および下型のいずれを初期荒地の扁平部を収容可能な凹状(第1ジャーナル加工部)とするかについては、特に制限はない。すなわち、下型を初期荒地の扁平部を収容可能な凹状(第1ジャーナル加工部)としてもよい。
ウェブ加工部の横断面形状は、図12Aに太線で示すように、上型41および下型42のうちの一方が全体として凹状である。本加工フロー例では、下型のウェブ加工部42cが全体として凹状であり、他方の上型のウェブ加工部41cは、平面状である。なお、上型および下型のいずれを凹状のウェブ加工部とするかは、鍛造クランク軸の形状に応じて適宜設定できる。
この凹状(図12Aでは下型)のウェブ加工部42cは、アーム部となる部位(以下、「アーム相当部」ともいう)と当接するアーム加工部42dと、ウエイト部となる部位(以下、「ウエイト相当部」ともいう)と当接するウエイト加工部42eを有する。アーム加工部42dは、凹状のウェブ加工部42cの底面側に位置し、ウエイト加工部42eは凹状のウェブ加工部42cの開口側に位置する。また、ウエイト加工部42eの開口幅Bwは、凹状のウェブ加工部の底面から遠ざかるに従って広くなる。本加工フロー例では、図12Aに示すように、ウエイト加工部42eは、両側面がいずれも傾斜面である。また、アーム加工部42dは、両側面が平行であり、開口幅Bwが一定である。
本加工フロー例の第2予備成形では、ウェブ相当部の軸方向の厚さt1を仕上げ寸法t0よりも厚くする(図3Cおよび図3F参照)。このため、ウェブ加工部41cおよび42cの軸方向の長さは、ウエイト部を一体で有するアーム部(ウエイト部を含む)の仕上げ寸法の厚さより大きく設定される。ここで、仕上げ寸法t0とは、鍛造クランク軸(最終製品)のアーム部およびウエイト部の厚さを意味する。
このような第2金型40を用いる第2予備成形の加工フロー例では、上型41を上昇させて下型42から離間させた状態で、初期荒地23を上型41と下型42の間に配置する。その際、初期荒地23は、第1予備成形の終了時における初期荒地23(ビレット)の姿勢から軸回りに90°回転させられて配置されている。このため、第2金型40による圧下方向は、第2位置用ピン相当部の偏心方向と垂直な方向となる。
続いて、上型41を下降させ、図9A、図10Aおよび図11Aに示すように、初期荒地23の扁平部を凹状の第1ジャーナル加工部41a並びに凹状の第1ピン加工部41bおよび42fに収容する。その際、図12Aに示すように、ウェブ相当部は、ウェブ加工部の底面と接触することなく、大部分がウェブ加工部のうちのウエイト加工部42e内に配置される。
上型41をさらに下降させると、第1ピン加工部41bおよび42fと、第2ピン加工部42bおよび41fとで閉断面が形成される。また、第1ジャーナル加工部41aと第2ジャーナル加工部42aとで閉断面が形成される。この状態で、上型41をさらに下降させて下死点に到達させると、第1ピン加工部41bおよび42fと、第2ピン加工部42bおよび41fとにより、その内部の扁平部が圧下される。また、第1ジャーナル加工部41aと第2ジャーナル加工部42aとにより、その内部の扁平部が圧下される。このようにして初期荒地23の扁平部が第2金型によって圧下され、その結果、ジャーナル相当部およびピン相当部で断面積が減少する。これに伴い、余剰となった材料は、軸方向に流動してウェブ相当部に流入し、体積の配分が進行する。
また、第1位置用ピン相当部は圧下方向に沿って偏心するとともに、第3位置用ピン相当部は圧下方向に沿って第1位置用ピン相当部の反対側に偏心する。
ウェブ相当部には、他方(図12Aおよび図12Bでは上型)のウェブ加工部41cが押し当てられることなく、ウェブ相当部が凹状のウェブ加工部42cの底面側に押し込まれる。この押し込みは、主に、ウェブ相当部の前後に位置する第1および第3位置用ピン相当部の偏心に伴って発生する。押し込みの際に、ウェブ相当部は、前述のアーム加工部42dおよびウエイト加工部42eに沿って変形する。すなわち、ウェブ相当部の幅は、凹状の底面側(アーム相当部)で狭くなり、凹状の開口側(ウエイト相当部)で広くなる。また、ウェブ相当部の開口側の側面23bは、横断面形状が円弧状となる。
第2金型40による圧下の終了後、上型41を上昇させ、加工済みの初期荒地23(中間荒地24)を取り出す。
上述の第2予備成形によれば、バリを形成することなく、第1および第3位置用ピン相当部をそれぞれ偏心させることができる。また、ピン相当部からウェブ相当部に材料を流動させることにより、体積を軸方向に配分できる。必要に応じ、ジャーナル相当部からもウェブ相当部に材料を流動させれば、これによっても体積を軸方向に配分できる。
ウエイト無しアーム相当部は、その形状(寸法)を整えるため、部分的に第2金型40で圧下してもよい(図13Aおよび図13B参照)。また、ウエイト無しアーム相当部へ材料を流入させたい場合は、ウエイト無しアーム相当部を第2金型40で圧下しなくてもよい。
4.最終予備成形工程の加工フロー例
図14A〜図14Cは、最終予備成形工程の加工フロー例を示す模式的に示す縦断面図である。そのうちの図14Aは圧下前、図14Bは上型の下死点到達時、図14Cは軸方向の移動終了時をそれぞれ示す。なお、実際の第2位置用ピン相当部は、第1および第3位置用ピン相当部の手前または奥に位置するが、図14A〜図14Cでは、便宜上、第1〜第3位置用ピン相当部を同一面上に図示する。
図14A〜図14Cには、前述の第2予備成形工程で得られる中間荒地24と、上下で一対の第3金型51と、上側プレート52と、下側プレート53とを示す。第3金型51は、第3上型60と、第3下型70とからなる。第3上型60は、上側プレート52に保持され、その上側プレート52はプレス機(図示なし)の作動に伴って上下動する。第3下型70は、下側プレート53に保持され、その下側プレート53はプレス機(図示なし)に固定される。
ウェブ相当部(アーム部となる部位およびそのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位)を中間荒地24の軸方向に圧下するため、第3上型60および第3下型70は、いずれも、複数の部材からなる。それらの部材は、中間荒地24の軸方向に沿って並べて配置される。このため、第3上型60および第3下型70は、それぞれ、固定ピン形部材64および74と、固定ジャーナル型部材61および71と、可動ジャーナル型部材62および72と、可動ピン型部材63および73とを備える。
固定ピン形部材64および74は、中間荒地24のうちで中央のピン相当部(第2位置用ピン相当部)を圧下し、軸方向に移動不能である。固定ジャーナル型部材61および71は、固定ピン形部材64および74の軸方向の前後に配置され、軸方向に移動不能である。固定ジャーナル型部材61および71は、中央のピン相当部につながるウエイト無しアーム相当部、そのウエイト無しアーム相当部とつながるジャーナル部、および、そのジャーナル部とつながるウェブ相当部を圧下する。
可動ジャーナル型部材62および72は、複数配置され、軸方向に移動可能である。図14A〜図14Cに示す第3上型60および第3下型70では、可動ジャーナル型部材62および72がそれぞれ2個配置される。そのうちの一方は、フロント相当部、第1ジャーナル相当部および第1ウェブ相当部(第1アーム相当部)を圧下する。他方は、第6ウェブ相当部(第6アーム相当部)、第4ジャーナル相当部およびフランジ相当部を圧下する。
可動ピン型部材63および73は、複数配置され、いずれも、軸方向に移動可能である。可動ピン型部材63および73は、第1および第3位置用ピン相当部(中央のピン相当部以外のピン相当部)をそれぞれ圧下する。加えて、第1および第3位置用ピン相当部を偏心させるため、上型60の可動ピン型部材63および下型70の可動ピン型部材73のうちでいずれか一方は、保持されるプレート52および53に対して軸と垂直方向に相対移動可能である。この相対移動の方向は、圧下方向に沿う方向となる。この相対移動は、例えば油圧シリンダ54によって実現できる。上型60の可動ピン型部材63および下型70の可動ピン型部材73のいずれを相対移動可能とするかは、鍛造クランク軸の形状に応じて適宜設定できる。
このような部材からなる第3上型60および第3下型70は、それを構成する部材に型彫刻部(図14Aの符号61a、62a、63a、64a、71a、72a、73aおよび74a参照)が設けられる。その型彫刻部には、クランク軸(最終製品)のおおよその形状が反映されている。
最終予備成形では、上型60を上昇させた状態で、上型60と下型70の間に中間荒地24を配置する(図14A参照)。その際、圧下方向が第2位置用ピン相当部の偏心方向と垂直な方向となるように中間荒地24の姿勢を調整する。続いて、上型60を下降させ、上型60および下型70で中間荒地24を圧下する(図14B参照)。その際、中間荒地24のジャーナル相当部、第2位置用ピン相当部、および、ウエイト無しアーム相当部が圧下され、おおよその形状が造形される。
中間荒地24のジャーナル相当部が圧下によって保持された状態で、可動ジャーナル型部材62および72並びに可動ピン型部材63および73を、中央の固定ピン形部材64および74に向けて軸方向に沿って移動させる。この移動は、例えば、くさび機構や油圧シリンダによって実現できる。
可動ジャーナル型部材62および72並びに可動ピン型部材63および73の軸方向の移動に伴い、ウェブ相当部が中間荒地24の軸方向に圧下される。これにより、ウェブ相当部に、アーム部およびウエイト部のおおよその形状が造形される。また、ウェブ相当部の厚さは、仕上げ寸法となる。
可動ジャーナル型部材62および72並びに可動ピン型部材63および73の軸方向の移動に応じ、上型60の可動ピン型部材63および下型70の可動ピン型部材73の一方を軸と垂直方向に相対移動させる。これにより、第1および第3位置用ピン相当部を圧下方向に沿ってさらに偏心させる。これに伴い、可動ピン型部材63および73によって第1および第3位置用ピン相当部が圧下され、ピン相当部におおよその形状が造形される(図14C参照)。
第3金型51による圧下の終了後、上型60を上昇させ、加工済みの中間荒地24(最終荒地)を取り出す。
このような最終予備成形によれば、バリを形成することなく、または、バリをほとんど形成することなく、第1および第3位置用ピン相当部をさらに偏心させることができる。併せて、鍛造クランク軸のおおよその形状を造形できる。
本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、第2位置用ピン相当部について、前述の第1予備成形工程で偏心させるとともに、第1および第2予備成形工程で絞って断面積を減少させる。また、第1および第3位置用ピン相当部について、第2および最終予備成形工程で偏心させるとともに、第1および第2予備成形工程で絞って断面積を減少させる。その結果、第1、第2および最終予備成形によって得られる最終荒地において、全てのピン相当部は、偏心するとともに、絞られて断面積が減少している。このため、最終予備成形後の型鍛造(仕上げ鍛造)でピン部を造形する際に、ほとんどバリが発生しないことから、材料歩留りを向上できる。
加えて、第1および第2予備成形工程でバリを形成しないとともに、最終予備成形工程でバリの形成を抑制する。これによっても、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、体積の配分を促進できるとともに、材料歩留りをさらに向上できる。また、いずれの予備成形工程も、プレス機を用いて圧下することにより実現できる。このため、専用の設備を用いる必要がなく、設備コストを抑えることができる。
5.ウェブ相当部の厚さおよび体積配分
前述の第2予備成形工程の加工フロー例では、ウェブ相当部の厚さを仕上げ寸法よりも厚くする。このため、最終予備成形工程で、ウェブ相当部を中間荒地の軸方向に圧下する。本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、この構成に限定されず、第2予備成形工程でウェブ相当部の厚さを仕上げ寸法とし、最終予備成形工程で、ウェブ相当部を中間荒地の軸方向に圧下しなくてもよい。
前述の通り、鍛造クランク軸の形状は、ウエイト部がアーム部中心面から大きく張り出す。このため、仕上げ鍛造において、ウエイト部で材料の充満性が不十分となり、欠肉が生じ易い。ウエイト部の欠肉を防止するには、荒地で余剰体積を増加させることとなるが、それに伴って材料歩留りが低下する。これを防止するため、第2予備成形工程で、ウェブ相当部の厚さを仕上げ寸法よりも厚くし、最終予備成形工程で、ウェブ相当部を中間荒地の軸方向に圧下するのが好ましい。この場合、第2予備成形工程で、ウエイト無しアーム部も厚さを仕上げ寸法よりも厚くし、最終予備成形工程で、ウエイト無しアーム部も中間荒地の軸方向に圧下してもよい。この場合、固定ジャーナル型部材61および71は可動ジャーナル型部材に変更する。
前述の第2予備成形工程の加工フロー例では、ウェブ加工部を有する第2金型を用いるが、この構成に本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は限定されない。すなわち、第2予備成形工程でも、第1予備成形工程と同様に、ウェブ相当部を圧下することなく、ピン相当部およびジャーナル相当部から材料を流入させてもよい。
前述の第2予備成形工程の加工フロー例のように、ウェブ加工部を有する第2金型を用いるのが好ましい。これにより、ピン相当部およびジャーナル相当部からウェブ相当部に材料が流入するのを促進しながら、ウェブ相当部の幅を、アーム相当部で狭く、ウエイト相当部で広くできる。すなわち、ウェブ相当部内で体積を配分できる。このため、後工程の最終予備成形工程で、ウエイト部の材料の充満性を向上できる。また、仕上げ鍛造工程で、ウエイト部の材料の充満性を向上できるとともに、バリの流出を最小限に留めることができる。
ウェブ加工部を有する第2金型を用いる場合、ウェブ相当部内の体積配分は、鍛造クランク軸(最終製品)の形状に応じてアーム加工部の形状を適宜変更することにより、調整することができる。例えば、アーム加工部の開口幅の変更やアーム加工部を傾斜面とすることにより、アーム相当部の体積を変更し、ウェブ相当部内の体積配分を調整すればよい。なお、圧下終了後に第2金型から加工済みの初期荒地(中間荒地)をスムーズに取り出すために、アーム加工部を傾斜面とすることによって抜き勾配を設けてもよい。
鍛造クランク軸(最終製品)のウエイト部は、種々の形状があり、例えば、幅方向に大きく張り出すとともに、ピン部の偏心方向の長さが短い場合もある。このような場合に対応するため、第2予備成形において、ウエイト加工部の形状を適宜変更することにより、ウエイト相当部内で幅方向およびピン部の偏心方向に体積を配分してもよい。ウエイト加工部の形状変更として、例えば、傾斜面の角度調整やウエイト加工部を曲面とすることを採用できる。また、ウェブ相当部を凹状のウェブ加工部の開口側から圧下することにより、ウエイト相当部内で体積を配分してもよい。
図15Aおよび図15Bは、ウエイト部を一体で有するアーム部となる部位(ウェブ相当部)を凹状のウェブ加工部の開口側から圧下する場合を示す横断面図である。そのうちの図15Aは圧下前、図15Bは圧下終了時をそれぞれ示す。図15Aおよび図15Bでは、前記図12Aおよび図12Bと比べ、凹状のウェブ加工部42cの深さが、変更されて浅い。
図15Aおよび図15Bに示す加工フロー例では、前記図12Aおよび図12Bに示す加工フロー例と同様に、ウェブ相当部が凹状のウェブ加工部42cの底面側に押し込まれ、凹状のウェブ加工部42cに沿って変形する。加えて、凹状のウェブ加工部42cの深さが浅いので、第2金型による圧下の終盤に、ウェブ相当部の開口側の側面に平面状のウェブ加工部41cが押し当てられる。これにより、ウェブ相当部は、凹状のウェブ加工部42cの開口側から圧下され、幅が広くなるとともに偏心方向の長さが短くなる。その結果、ウエイト相当部内で体積が配分される。
このようにウェブ相当部の開口側の側面を圧下する場合、ウェブ相当部への材料流入が阻害されるのを防止する観点から、軽圧下とするのが好ましい。この軽圧下は、例えば、ウェブ相当部の開口側の側面23b(図12B参照)の一部だけを圧下することによって実現できる。この場合、金型と接触しない部位に材料が逃げることによって軽圧下となる。
6.第2予備成形工程の別態様
前述の第2予備成形工程の加工フロー例では、ピン相当部を第1および第2ピン加工部で閉断面を形成した状態で圧下する。本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法では、バリが流出しなければ、ピン加工部で閉断面を形成することなく、ピン相当部を圧下してもよい。
図16Aおよび図16Bは、ピン加工部で閉断面を形成することなく、ピン相当部を圧下する場合を示す横断面図である。図16Aは圧下開始時、図16Bは圧下終了時をそれぞれ示す。図16Aおよび図16Bでは、前記図9Aおよび図9Bと比べ、ピン加工部41bおよび42bの形状が異なる。図16Aおよび図16Bに示す上型41のピン加工部41bおよび下型42のピン加工部42bは、いずれも凹状である。上型41のピン加工部41bの深さが下型42のピン加工部42bよりも深い。
このようなピン加工部41bおよび42bによれば、上型41の下降に伴い、第3位置用ピン相当部(扁平部)の大部分が上型41のピン加工部41b内に収容される。その状態で、第3位置用ピン相当部(扁平部)が圧下方向に沿って偏心する。その際、上型41のピン加工部41bおよび下型42のピン加工部42bが、いずれも、部分的に初期荒地23のピン相当部と当接する。換言すると、ピン加工部41bおよび42bは、型割り面の周辺でピン相当部と当接しない。また、ピン相当部の偏心に伴って材料が軸方向に流出し、ピン相当部が絞られて断面積が減少する。このため、バリを形成することなく、ピン相当部を偏心させるとともに絞ることができる。
第2予備成形工程で、体積の配分を促進したい場合は、第1および第2ピン加工部で閉断面を形成した状態でピン相当部を圧下するのが好ましい。噛み出しを防止する観点では、ピン加工部でピン相当部を部分的に圧下するのが好ましい。ピン加工部で部分的に圧下することにより、バリの流出を防止する場合、ピン加工部は、後述の図17に示すジャーナル相当部と同様の構成としてもよい。
前述の第2予備成形工程の加工フロー例では、ジャーナル相当部も、第1および第2ジャーナル加工部で閉断面を形成した状態で圧下する。本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法では、バリが流出しなければ、ジャーナル加工部で閉断面を形成することなく、ピン相当部を圧下してもよい。例えば、前記図16Aおよび図16Bに示すピン加工部と同様の構成を採用してもよい。
図17Aおよび図17Bは、ジャーナル加工部で閉断面を形成することなく、ジャーナル相当部を圧下する場合を示す横断面図である。図17Aは圧下開始時、図17Bは圧下終了時をそれぞれ示す。図17Aおよび図17Bでは、前記図11Aおよび図11Bと比べ、ジャーナル加工部41aおよび42aの形状が異なる。図17Aおよび図17Bに示すジャーナル加工部41aおよび42aでは、上型41のジャーナル加工部が、図17Aに太線で示すように、初期荒地23の扁平部の全体を収容可能な凹状であり、第1ジャーナル加工部41aとなる。また、下型42の円弧状のジャーナル加工部は、第2ジャーナル加工部42aとなり、図17Aに太線で示すように、凸部の先端面に設けられる。ジャーナル加工部41aおよび42aは、幅方向の両端に逃げ部41gおよび42gをそれぞれ有し、その逃げ部41gおよび42gは、幅方向に突き出る。
このようなジャーナル加工部41aおよび42aによれば、上型41の下降に伴い、凹状の第1ジャーナル加工部41aに初期荒地23の扁平部の全体が収容される。その状態で、上型41をさらに下降させると、第1ジャーナル加工部41aが扁平部と当接し、続いて第2ジャーナル加工部42aが扁平部と当接する。この当接に伴って扁平部が圧下されて断面積が減少し、材料が軸方向に流出して体積が配分される。その際、一部の材料は、逃げ部41gおよび42gに流入するが、逃げ部41gおよび42gの一部は扁平部と当接しない。このため、扁平部は部分的に圧下され、バリが流出しない。
第2予備成形工程で、体積の配分を促進したい場合は、第1および第2ジャーナル加工部で閉断面を形成した状態でジャーナル相当部を圧下するのが好ましい。噛み出しを防止する観点では、ジャーナル加工部でジャーナル相当部を部分的に圧下するのが好ましい。
7.第1予備成形工程の別態様
前述の第1予備成形工程の加工フロー例では、第1金型30を用い、第1ジャーナル加工部31aおよび第2ジャーナル加工部32aで閉断面を形成する。また、第1ピン加工部31bおよび第2ピン加工部32bで閉断面を形成する。その状態で、ビレットのジャーナル相当部およびピン相当部の全周を圧下することにより、バリの流出を防止できる。本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は、第1金型のジャーナル加工部でジャーナル相当部を部分的に圧下することにより、バリの流出を防止してもよい。また、第1金型のピン加工部でピン相当部を部分的に圧下することにより、バリの流出を防止してもよい。
図18Aおよび図18Bは、第1予備成形工程でジャーナル加工部によって部分圧下する加工フロー例を示す横断面図である。そのうちの図18Aは圧下前、図18Bは圧下終了時をそれぞれ示す。図18Aおよび図18Bでは、前記図6Aおよび図6Bと比べ、ジャーナル加工部31aおよび32aの形状が異なる。図18Aに太線で示すように、上型31のジャーナル加工部31aおよび下型32のジャーナル加工部32aのいずれも、凹状であり、同じ深さである。
このようなジャーナル加工部31aおよび32aによれば、上型31の下降に伴い、上型31のジャーナル加工部31aおよび下型32のジャーナル加工部32aの最深部がビレット22と当接する。その状態で、上型31をさらに下降させると、上型31のジャーナル加工部31aおよび下型32のジャーナル加工部32aが、いずれも、部分的にビレット22と当接する。換言すると、ジャーナル加工部31aおよび32aが型割り面の周辺でビレット22と当接しない。このため、バリを形成することなく、断面積を減少させて扁平部を形成できる。
体積の配分を促進したい場合は、前記図6Aおよび図6Bに示すように、ジャーナル加工部で閉断面を形成した状態で、ビレットの全体を圧下するのが好ましい。噛み出しを防止する観点では、前記図18Aおよび図18Bに示すように、ジャーナル加工部でビレットを部分的に圧下するのが好ましい。
第1金型のピン加工部は、図示を省略するが、前記図18Aおよび図18Bに示すジャーナル加工部と同様の構成を採用し、ビレットを部分的に圧下してもよい。体積の配分を促進する観点では、前記図5Aおよび図5Bに示すように、ピン加工部で閉断面を形成した状態で、ビレットの全体を圧下するのが好ましい。噛み出しを防止する観点では、ピン加工部でビレットを部分的に圧下するのが好ましい。
8.好ましい態様等
後工程で形成されるバリを低減する観点から、中間荒地のピン相当部の断面積Sp2(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)のピン部の断面積Sp0(mm2)に対する比(Sp2/Sp0)で、0.7〜1.9とするのが好ましい。同様の観点から、初期荒地のピン相当部の断面積Sp1(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)のピン部の断面積Sp0(mm2)に対する比(Sp1/Sp0)で、0.9〜1.9とするのが好ましい。
第1予備成形工程で、第2位置用ピン相当部を偏心させる量(mm)、すなわち初期荒地23の第2位置用ピン相当部の偏心量(mm)は、鍛造クランク軸(最終製品)の偏心量(mm)の20%以上とするのが好ましく、50%以上がより好ましく、100%とするのが最も好ましい。第1予備成形工程での偏心量が小さいと、最終予備成形後の仕上げ鍛造で偏心させなければならなくなり、仕上げ鍛造での偏心量の増加に従ってバリの流出も増加するからである。
最終予備成形工程後、すなわち、最終荒地25の第1および第3位置用ピン相当部の偏心量(mm)は、後工程での配置角度の調整方法に応じて調整する。最終製品である鍛造クランク軸(最終製品)の偏心量をE(mm)とすると、仕上げ鍛造で配置角度を調整する(図3Dおよび図3E)場合、第1および第3位置用ピン相当部の偏心量(mm)は、E×31/2/2とする。また、捩り工程で配置角度を調整する場合、第1および第3位置用ピン相当部の偏心量(mm)はEとする。
仕上げ鍛造でピン相当部の配置角度を調整する場合、第2予備成形工程で、第1および第3位置用ピン相当部を偏心させる量(mm)、すなわち中間荒地24の第1位置用ピン相当部および第3位置用ピン相当部の偏心量(mm)は、ウェブ部内での体積配分を促進する観点から、鍛造クランク軸(最終製品)の偏心量(mm)の20〜70%とするのが好ましく、40〜50%とするのがより好ましい。捩り工程でピン相当部の配置角度を調整する場合、第2予備成形工程で、第1および第3位置用ピン相当部を偏心させる量(mm)、すなわち中間荒地24の第1位置用ピン相当部および第3位置用ピン相当部の偏心量(mm)は、ウェブ部内での体積配分を促進する観点から、鍛造クランク軸(最終製品)の偏心量(mm)の20〜70%とするのが好ましく、40〜50%とするのがより好ましい。
後工程でウエイト部の材料の充満性を向上させる観点から、第2予備成形において、中間荒地のウェブ相当部(アーム部となる部位およびそのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位)の厚みt1(mm)は、仕上げ寸法t0(mm)に対する比(t1/t0)で、1.1以上とするのが好ましく、1.5以上とするのがより好ましい。一方、比(t1/t0)が3.5を超えると、材料表面のバルジ変形領域が大きくなることから、アーム部外周で形状精度が低下するおそれがある。このため、比(t1/t0)を3.5以下とするのが好ましい。
後工程でウエイト部の材料の充満性を確保しつつウエイト部の欠肉を防止する観点から、中間荒地のウェブ相当部の断面積Sw2(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)のウェブの断面積Sw0(mm2)に対する比(Sw2/Sw0)で、0.3〜0.9とするのが好ましい。同様の観点から、初期荒地のウェブ相当部の断面積Sw1(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)の断面積Sw0(mm2)に対する比(Sw1/Sw0)で、0.2〜0.8とするのが好ましい。ここで、ウェブ相当部の断面積は、アーム部となる部位の断面積と、そのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位の断面積との合計である。また、ウェブの断面積は、アーム部の断面積と、そのアーム部が一体で有するウエイト部の断面積との合計である。
後工程で形成されるバリを低減する観点から、中間荒地のジャーナル相当部の断面積Sj2(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)のジャーナル部の断面積Sj0(mm2)に対する比(Sj2/Sj0)で、1.0〜1.9とするのが好ましい。同様の観点から、初期荒地のジャーナル相当部の断面積Sj1(mm2)は、鍛造クランク軸(最終製品)の断面積Sj0(mm2)に対する比(Sj1/Sj0)で、1.2〜1.9とするのが好ましい。
前記図14A〜図14Cに示す最終予備成形の加工フロー例では、可動ピン型部材63および73の一方が、保持されるプレート52および53に対して軸と垂直方向に相対移動可能である。この場合、上型60および下型70で中間荒地24を圧下した後、可動ジャーナル型部材62および72と、可動ピン型部材63および73とを軸方向に移動させる。この軸方向の移動に応じ、上型60の可動ピン型部材63および下型70の可動ピン型部材73の一方を軸と垂直方向に移動させることにより、ピン相当部を偏心させる。すなわち、第1および第3位置用ピン相当部の偏心量を増加させる。この構成に本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法は限定されない。
すなわち、可動ピン型部材63および73の両方を、保持されるプレート52および53に対して軸と垂直方向に相対移動不能にしてもよい。この場合、油圧シリンダ54と接続される可動ピン型部材63および73に代え、軸と垂直方向に相対移動不能である可動ピン型部材63および73が配置される。上型60および下型70で中間荒地24を圧下する際に、第1および第3位置用ピン相当部も圧下される。これに伴い、第1および第3位置用ピン相当部が偏心するとともに、それらのピン相当部におおよその形状が造形される。
第1および第3位置用ピン相当部の加工精度を向上させる観点から、前記図14A〜図14Cに示す最終予備成形の加工フロー例のように、軸方向の圧下に応じて可動ピン型部材63および73の一方を軸と垂直方向に移動させ、ピン相当部を圧下するのが好ましい。その圧下により、ピン相当部を偏心させるとともに、ピン相当部におおよその形状を造形する。
前記図3A〜図3Fに示す製造工程例では、被加工材をビレット22としたが、被加工材を段付き素材とすることもできる。
図19は、段付き素材の形状例を示す模式図である。図19に示す段付き素材26において、前記図3Bに示す初期荒地23と同様に、ピン相当部およびジャーナル相当部は、ウェブ相当部と比べて絞られている。すなわち、ピン相当部およびジャーナル相当部の断面積は、ウェブ相当部の断面積(アーム部となる部位およびそのアーム部が一体で有するウエイト部となる部位の合計の断面積)より小さい。段付き素材26は、前記図3Bに示す初期荒地23と異なり、いずれのピン相当部も偏心していない。段付き素材26は、例えば、レデュースロールやクロスロールを用いてビレットの軸方向の一部を絞ることによって得られる。
このような段付き素材を被加工材とする場合、第1予備成形では、上述の一対の第1金型で段付き素材を圧下する。具体的には、ピン加工部でピン相当部を圧下し、ピン相当部の断面積をさらに減少させて扁平部を形成する。また、ジャーナル加工部でジャーナル相当部を圧下し、ジャーナル相当部の断面積をさらに減少させて扁平部を形成する。さらに、第2位置用ピン相当部を偏心させる。
前述の通り、ピン部の配置角度の調整は、仕上げ鍛造工程または捩り工程で行うことができる。工程を集約する観点から、仕上げ鍛造工程で、第1位置用ピン相当部を圧下して圧下方向にオフセットすることにより、第1位置用ピン相当部を第1位置に配置するのが好ましい。この場合、第3位置用ピン相当部を圧下して圧下方向にオフセットすることにより、第3位置用ピン相当部を第3位置に配置する。
前記図14A〜図14Cに示す最終予備成形の加工フロー例では、固定ピン形部材64および74と固定ジャーナル型部材61および71とを別部材としたが、一体化して単一の部材で構成してもよい。また、前記図14A〜図14Cに示す最終予備成形の加工フロー例では、ウエイト無しアーム相当部を固定ジャーナル型部材61および71で圧下するが、ウエイト無しアーム相当部を圧下しなくてもよい。
前記図14A〜図14Cに示す最終予備成形の加工フロー例では、第3金型51による圧下方向が、第2位置用ピン相当部の偏心方向と垂直な方向であるが、第2位置用ピン相当部の偏心方向に沿う方向であってもよい。第3金型51による圧下方向を第2位置用ピン相当部の偏心方向に沿う方向とする場合、第1および第3位置用ピン相当部を偏心させるため、可動ピン型部材63および73は、第3金型51の圧下方向に沿う方向に代え、第3金型51の圧下方向と垂直な方向に沿って移動可能とする。この場合、可動ピン型部材63および73の両方を第3金型51の圧下方向と垂直な方向に沿って移動可能とする。
クランク軸では、ピン部の先端の位置は種々の要因によって変化する。具体的には、ピン部の先端がアーム部の先端と同じ位置である場合と、ピン部の先端がアーム部の先端より偏心方向の内側に位置する場合とがある。いずれの場合にも、本実施形態の鍛造クランク軸の製造方法を適用できる。ここで、ピン部の先端PTは、図1Bに示すように、ピン部P1のうちでジャーナル部J1の中心から最も遠い部位である。また、アーム部の先端ATは、図1Bに示すように、アーム部A1(ウエイト部W1を除く)のうちでジャーナル部J1の中心から最も遠い部位である。
9.フロント部およびフランジ部
続いて、フロント部となる部位(以下、「フロント相当部」ともいう)およびフランジ部となる部位(以下、「フランジ相当部」ともいう)の加工フロー例について説明する。
図20A〜図22Bは、第1予備成形工程におけるフロント相当部およびフランジ相当部の加工フロー例を示す模式図である。そのうちの図20Aは圧下前の縦断面図であり、図20Bは圧下終了時の縦断面図である。
図21Aおよび図21Bは、フロント相当部を示す横断面図である。そのうちの図21Aは圧下前、図21Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図21Aは、前記図20AのXXIA−XXIA断面図であり、図21Bは、前記図20BのXXIB−XXIB断面図である。
図22Aおよび図22Bは、フランジ相当部を示す横断面図である。そのうちの図22Aは圧下前、図22Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図22Aは、前記図20AのXXIIA−XXIIA断面図であり、図22Bは、前記図20BのXXIIB−XXIIB断面図である。
図20A〜図22Bには、横断面が丸形であるビレット22と、上下で一対の第1金型30とを示す。図面の理解を容易にするため、図21Bおよび図22Bでは、圧下前の第1上型31および第1下型32を二点鎖線で示すとともに、ジャーナル相当部の軸位置Cを黒塗りの丸印で示す。図22Bでは、さらに、ビレット22を二点鎖線で示す。図20A〜図22Bに示す一対の第1金型30は、前記図4A〜図7Bに示す一対の第1金型30と同様に、ピン加工部、および、ジャーナル加工部を有する。また、第1金型30は、フロント相当部と当接するフロント加工部をさらに有する。
本加工フロー例のフロント加工部は、図20Aおよび図21Aに太線で示すような内面31cおよび32cと、図20Aに示すような端面32dとを有する。フロント加工部の内面31cおよび32cは、フロント相当部の外周と相対する。また、フロント加工部の端面32dは、フロント相当部の端面と相対する。フロント加工部の横断面形状は、図21Aに太線で示すように、上型31および下型32のいずれも、凹状であり、深さが同じである。
このようなフロント加工部によれば、上型31の下降に伴い、上型31および下型32のフロント加工部(本加工フロー例ではフロント加工部の内面31cおよび32c)の最深部がビレット22のフロント相当部の外周と当接する。その状態で、上型31をさらに下降させると、上型31および下型32のフロント加工部(内面31cおよび32c)が、いずれも、部分的にビレットの外周と当接する。換言すると、フロント加工部(内面31cおよび32c)が型割り面の周辺でビレット22と当接しない。このため、バリを形成することなく、断面積を減少させて扁平部を形成できる。また、扁平部の形成に伴い、フロント相当部を軸方向に延伸させれば、体積を軸方向に配分できる。これらより、材料歩留りをさらに向上できる。
第1金型30のフロント加工部は、図21Aおよび図21Bに示すようなビレットの外周を部分圧下する構成に限定されることなく、前記図6Aおよび図6Bに示すようなジャーナル加工部と同様の構成としてもよい。この場合、フロント加工部は、一対の第1金型のうちの一方に設けられる第1フロント加工部、および、他方に設けられる第2フロント加工部からなる。その第1フロント加工部は、凹状であり、ビレットのフロント相当部を収容可能である。第1金型によってビレットを圧下する際には、フロント加工部で閉断面を形成した状態で、ビレットのフロント相当部の全体(全周)を圧下する。このため、バリを形成することなく、断面積を減少させて扁平部を形成できる。また、扁平部の形成に伴い、フロント相当部を軸方向に延伸させれば、体積を軸方向に配分できる。これらより、材料歩留りをさらに向上できる。
第1予備成形の圧下過程で、フロント相当部の端面の全部がフロント加工部と当接すると、フロント相当部の延伸が止まり、材料の一部が隙間に噛み出すおそれがある。これを防止するため、第1予備成形の圧下過程では、フロント相当部の端面をフロント加工部(本加工フロー例ではフロント加工部の端面32d)と当接させないのが好ましい。すなわち、フロント相当部の端面とフロント加工部(端面32d)の間に隙間を設けるのが好ましい。あるいは、フロント相当部の端面がフロント加工部(端面32d)と部分的に当接するのが好ましい。
第1予備成形でフロント相当部の断面積の減少率を大きく設定すると、端部でフィッシュテールが発生し、後工程で疵を発生させるおそれがある。ここで、フィッシュテールとは、フロント相当部の端面に窪みが形成されることにより、フロント相当部の端部が尾ひれ形状となることを意味する。このフィッシュテールの発生を防止するため、第1予備成形では、得られる初期荒地23において、フロント相当部の端面に近づくのに従い、フロント相当部の断面積が減少するように圧下するのが好ましい。フロント相当部の断面積の減少は、例えば、圧下方向の厚さtaを線形状や曲線状、階段状に薄くすることによって実現できる。図20Bおよび図21Bに示すフロント相当部の厚さtaは、軸方向の一部で線形状に薄くなり、残部で一定である。フロント相当部の厚さtaは、第1金型30のフロント加工部(本加工フロー例ではフロント加工部の内面31cおよび32c)の形状を適宜設定することによって調整できる。
初期荒地23のフロント相当部の厚さtaをフロント相当部の端面に近づくのに従って薄くすると、ジャーナル部側のフロント相当部の断面積は、端面側のフロント相当部と比べ、若干広くなる。後述の第2予備成形で圧下することにより、バリを形成することなく、端面側のフロント相当部およびジャーナル部側のフロント相当部で、断面積を同程度とすることが可能となる。このため、初期荒地23のフロント相当部の厚さtaをフロント相当部の端面に近づくのに従って薄くしても、材料歩留りを維持できる。
本加工フロー例のフランジ加工部は、図20Aおよび図22Aに太線で示すような内面31eおよび32eと、図20Aに示すような端面32fとを有する。フランジ加工部の内面31eおよび32eは、フランジ相当部の外周と相対する。また、フランジ加工部の端面32fは、フランジ相当部の端面と相対する。
フランジ相当部は、材料歩留りをさらに向上させる観点から、第1予備成形で断面積を増加させることが望まれる。このため、第1金型での圧下に伴い、フランジ相当部の端面をフランジ加工部(本加工フロー例ではフランジ加工部の端面32f)に当接させるのが好ましい。この場合、フランジ相当部とつながるジャーナル相当部で断面積を減少させて扁平部を形成するのに伴い、フランジ相当部に材料が流入する。その際、フランジ相当部の端面が拘束されていることから、フランジ相当部の断面積が増加する。このため、体積が軸方向に配分され、材料歩留りをさらに向上できる。
フランジ相当部の断面積の増加を促進するため、第1予備成形では、フランジ相当部の外周が第1金型(本加工フロー例ではフランジ加工部の内面31eおよび32e)と当接しないのが好ましい。あるいは、フランジ相当部の形状(寸法)を整えるため、フランジ相当部の外周の一部が第1金型(フランジ加工部の内面31eおよび32e)と当接するのが好ましい(図22Aおよび図22B参照)。
第1予備成形の圧下開始時に、フランジ相当部の端面をフランジ加工部(本加工フロー例ではフランジ加工部の端面32f)に当接させてもよい。また、圧下開始時は、フランジ相当部の端面とフランジ加工部(端面32f)に隙間を設け、圧下過程でフランジ相当部の端面をフランジ加工部(端面32f)に当接させてもよい。クランク軸(最終製品)のフランジ部の外径(断面積)に応じて前者および後者のいずれかを適宜選択すればよい。
続いて、第2予備成形でのフロント相当部およびフランジ相当部の加工フロー例について説明する。
図23A〜図25Bは、第2予備成形工程におけるフロント相当部およびフランジ相当部の加工フロー例を示す模式図である。そのうちの図23Aは圧下前の縦断面図であり、図23Bは圧下終了時の縦断面図である。
図24Aおよび図24Bは、第2予備成形工程のフロント相当部を示す横断面図である。そのうちの図24Aは圧下前、図24Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図24Aは、前記図23AのXXIVA−XXIVA断面図であり、図24Bは、前記図23BのXXIVB−XXIVB断面図である。
図25Aおよび図25Bは、第2予備成形工程のフランジ相当部を示す横断面図である。図25Aは圧下前、図25Bは圧下終了時をそれぞれ示す。なお、図25Aは、前記図23AのXXVA−XXVA断面図であり、図25Bは、前記図23BのXXVB−XXVB断面図である。
図23A〜図25Bには、初期荒地23と、上下で一対の第2金型40とを示す。図面の理解を容易にするため、図24Bおよび図25Bでは、圧下前の第2上型41、第2下型42および初期荒地23を二点鎖線で示すとともに、ジャーナル相当部の軸位置Cを黒塗りの丸印で示す。図23A〜図25Bに示す一対の第2金型40は、前記図8A〜図13Bに示す第2金型40と同様に、ウェブ加工部、ピン加工部、および、ジャーナル加工部を有する。また、第2金型40は、フロント相当部と当接するフロント加工部をさらに有する。
本加工フロー例のフロント加工部は、図23Aおよび図24Aに太線で示すような内面41hおよび42hと、図23Aに示すような端面42iとを有する。フロント加工部の内面41hおよび42hは、フロント相当部の外周と相対する。また、フロント加工部の端面42iは、フロント相当部の端面と相対する。フロント加工部の横断面形状は、図24Aに太線で示すように、上型41および下型42のいずれも、凹状であり、同じ深さである。
このようなフロント加工部によれば、上型41の下降に伴い、上型41および下型42のフロント加工部(本加工フロー例ではフロント加工部の内面41hおよび42h)の最深部が初期荒地23の扁平部(フロント相当部)と当接する。その状態で、上型41をさらに下降させると、上型41および下型42のフロント加工部(内面41hおよび42h)が、いずれも、部分的にフロント相当部の外周と当接する。換言すると、フロント加工部(内面41hおよび42h)が型割り面の周辺でフロント相当部の外周と当接しない。このため、バリを形成することなく、圧下によってフロント相当部の断面積を減少できる。また、フロント相当部の断面積の減少に伴い、フロント相当部を軸方向に延伸させれば、体積を軸方向に配分できる。これらより、材料歩留りをさらに向上できる。
第2金型40のフロント加工部は、図24Aおよび図24Bに示すようなフロント相当部の外周を部分圧下する構成に限定されることなく、前記図11Aおよび図11Bに示すようなジャーナル加工部と同様の構成を採用してもよい。この場合、フロント加工部は、一対の第2金型のうちの一方に設けられる第1フロント加工部、および、他方に設けられる第2フロント加工部からなる。その第1フロント加工部は、凹状であり、フロント相当部を収容可能である。第2金型による圧下では、フロント加工部で閉断面を形成した状態で、フロント相当部の全体(全周)を圧下する。これによっても、バリを形成することなく、フロント相当部の断面積を減少できる。また、フロント相当部の断面積の減少に伴い、フロント相当部を軸方向に延伸させれば、体積を軸方向に配分できる。これらより、材料歩留りをさらに向上できる。
第2予備成形の圧下過程で、フロント相当部の端面の全部がフロント加工部と当接すると、フロント相当部の延伸が止まり、材料の一部が噛み出すおそれがある。これを防止するため、第2予備成形の圧下過程では、フロント相当部の端面をフロント加工部(本加工フロー例ではフロント加工部の端面42i)と当接させないのが好ましい。すなわち、フロント相当部の端面とフロント加工部(端面42i)の間に隙間を設けるのが好ましい。あるいは、フロント相当部の端面がフロント加工部(端面42i)と部分的に当接するのが好ましい。
本加工フロー例のフランジ加工部は、図23Aおよび図25Aに太線で示すような内面41jおよび42jと、図23Aに示すような端面42kとを有する。フランジ加工部の内面41jおよび42jは、フランジ相当部の外周と相対する。また、フランジ加工部の端面42kは、フランジ相当部の端面と相対する。
フランジ相当部は、材料歩留りをさらに向上させる観点から、第2予備成形で断面積を増加させることが望まれる。このため、第2予備成形工程では、扁平部の圧下に伴い、フランジ相当部の端面をフランジ加工部(本加工フロー例ではフランジ加工部の端面42k)に当接させるのが好ましい。この場合、フランジ相当部とつながるジャーナル相当部(扁平部)を圧下して断面積を減少させるのに伴い、フランジ相当部に材料が流入する。その際、フランジ相当部の端面がフランジ加工部(端面42k)で拘束されていることから、フランジ相当部の断面積が増加する。このため、体積が軸方向に配分され、材料歩留りをさらに向上できる。
フランジ相当部の断面積の増加を促進するため、第2予備成形では、フランジ相当部の外周がフランジ加工部(本加工フロー例ではフランジ加工部の内面41jおよび42j)と当接しないのが好ましい。あるいは、フランジ相当部の形状(寸法)を整えるため、フランジ相当部の外周の一部がフランジ加工部(内面41jおよび42j)と当接するのが好ましい(図25Aおよび図25B参照)。
第2予備成形の圧下開始時に、フランジ相当部の端面をフランジ加工部(本加工フロー例ではフランジ加工部の端面42k)に当接させてもよい。また、圧下開始時は、フランジ相当部の端面とフランジ加工部(端面42k)に隙間を設け、圧下過程でフランジ相当部の端面をフランジ加工部(端面42k)に当接させてもよい。クランク軸(最終製品)のフランジ部の外径(断面積)に応じて前者および後者のいずれかを適宜選択すればよい。