以下、本発明に係る複数の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
1:第1の実施形態
[技術分野]
本実施形態は、半導体基板のフォトマスクやウェハの回路パターンの欠陥や異物の有無の検査など、試料表面の極めて微細な状態を検査したり評価したりする際に利用される電子線検査装置に係り、電子ビームを面で試料に照射し、試料の二次元の電子像を検出器のセンサ面に結像させる写像投影方式の構造のものに関する。
[背景技術]
半導体集積回路の製造工程において、半導体基板の検査に、電子ビームを対象試料に照射し、試料から放出される二次電子(二次電子の他にミラー電子、反射電子などの放出電子を含み、これらを総称して二次電子という。)を検出することで試料表面の電子像を得て試料を検査する電子線検査装置が用いられている。
また、図15に示されるように、チャージアップの発生を抑制するため、筒状基材2000内に配置された静電電極2001の内側に導電層2002、外側に絶縁層2003と導電層2004を積層して静電偏向器を構成することが知られている(例えば上記特許文献1参照)。
[本実施形態の概要]
[本実施形態が解決しようとする課題]
近時の半導体製造技術の進展により、半導体デバイスの高集積化、回路パターンの微細化が進み、例えばウェハ上に10nm〜20nmの線幅のパターンを形成する製造装置の開発が露光技術の進歩により現実なものとなってきている。
かかる超微細なパターンの欠陥検査においては、ウェハ上に線幅10nm〜20nmのパターンが形成され、マスク上ではこの4倍〜5倍、つまり40nm〜100nm程度の線幅のパターンが形成されている場合、これらのパターンの欠陥の有無の検査では、ウェハ上は2nm〜5nmのサイズの欠陥、マスク上では10nm〜25nmのサイズの欠陥を認識する必要がある。しかし、従来の光学式の検査装置においては、分解能が不足し、パターン認識ができないのが実状である。分解能に優れるSEM(走査型電子顕微鏡)方式は、検査画像の取得に多大の時間を要し、半導体回路の製造ラインで利用することは困難である。
分解能を高めるべく二次電子による電子ビームの信号量や加速度の増大を実現するには、電子ビームの軌道路を構成する鏡筒内部の基準電圧を高くすることが必要となる。
しかし、従来の電子線検査装置は、通常、電子ビームの軌道路内をGNDの基準に設定して用いる構造となっており、軌道路内を高電圧にするための手段や機能を備えた構造のものはない。
分解能を高めるための手段として、静電レンズや偏向器を用いたのでは、鏡筒のサイズが大きくなり、高電圧を供給するための高価な電源が必要となり、前記図15に示されるように、鏡筒内に組み込まれる各磁場レンズを多層構造に構成したのでは、鏡筒内の電子通過領域の断面積が大きくなり、コイルサイズや使用電力も大きくなって鏡筒が大型化してしまうという問題がある。
鏡筒を大型化することなく、従来構造の装置よりも検査の分解能を高めるためには、鏡筒内部の基準電圧を高くする機能を備えた新たな装置の開発が必要である。
前記の通り、SEM方式は分解能に優れるが、マスク上で20nmの欠陥を検出しようとすると、回路パターンに電子ビームを複数回走査させなければならず、一つのマスクの検査に時間がかかり過ぎてしまう。既存のSEM方式を用いて半導体製造ラインに設置される検査装置の仕様を達成することは技術的に困難である。
PEM(写像投影方式電子顕微鏡)方式の検査装置であれば、電子ビームを面でマスクに照射し、マスクから放出される二次電子による二次元の検査画像を検出器のセンサ面に生成するため、マスクの検査を短時間で行うことが可能であるが、微細な構造の検査や解析をより高精度且つ高速度で行えるようにするには、二次電子による電子ビームの軌道路である鏡筒内部の基準電圧を高電圧して電子ビームを高エネルギー化することが不可決であり、また、量産仕様に沿った半導体の製造ラインに設置して使用するためには、検査装置をコンパクトに構成するという要請も満たす必要がある。
本実施形態は従来の技術が有するこのような問題点に鑑み、超微細パターンなどの試料面の微細な観察像を高精度且つ高分解能で取得して、試料の欠陥検査を高速度で行うことができ、半導体集積回路の製造ラインにおいて実用可能なコンパクトな構成の電子線検査装置を提供することを課題とする。
[課題を解決するための手段]
前記の通り、従来の検査装置にあっては、鏡筒内部の基準電圧を高くするため手段、機能はなく、そもそも基準電圧を高くすること自体が困難である。
電子ビームの軌道路内をGNDの基準に設定している従来構造の装置にあっては、電子ビームの信号量や加速度の増大を図るには、試料電位を負の高電圧に設定するしかなく、これでは電子ビームが高電子量となることに伴う電子反発による収差の増加を抑えることができず、鮮明な電子像が得られなくなって逆に検査の分解能は低下することとなる。また、電子ビームが入射するセンサ面を備えた検出器はGND電位で作動させる必要があるため、試料電位が高圧であるとセンサのリップル精度が不足し、さらに高電位の電子ビームが入射することでセンサ面に大きなダメージを及ぼし、劣化が著しく実用的ではない。
そこで、前記課題を解決するべく本実施形態は、電子ビームを試料表面に照射する一次電子光学系と、試料から放出される二次電子を検出器の電子検出面に結像させる二次電子光学系を備え、検出器で検出された信号から試料表面の電子像を取得して試料を検査する電子線検査装置において、二次電子光学系が組み込まれる鏡筒内部に、内層と外層に導電体、中間層に絶縁体が積層されてなる筒体を設置し、この筒体の内部に電子軌道路を形成するとともに、筒体の外側に二次電子光学系を構成する部材が配置された構成を有することを特徴とする。
これによれば、本実施形態の前記構成を採用することで、鏡筒内部における電子ビームの軌道路の基準電圧を高くする機能を備えた装置の開発が具現化される。そして、電子ビームを高電子量にしたときに生じる電子反発による収差の増加を抑制して収差低減及び処理能力の向上が図られ、鏡筒内部の基準電圧として、従来装置の2倍〜30倍の高電圧を用いて、高エネルギーの電子ビーム像を形成することが可能となる。
また、電子軌道路の内面を筒体、その外側に各磁場レンズと磁場アライナを配置することで、磁場レンズ類の各々を導体と絶縁体の積層断面構造に設ける必要がなく、磁場レンズ類のコイルサイズや使用電力を小さくすることが可能となり、鏡筒をコンパクトなサイズに構成することができる。
前記構成の電子線検査装置において、電子軌道路の絶縁性を高めるため、筒体を構成する中間層の絶縁体の上下端部に外方へ張り出した鍔部をそれぞれ設けて、内外層の導電体の端部間の沿面距離を増大させた構成とすることが好ましい。また、筒体を構成する中間層の絶縁体が、下端部に薄肉の段差部を有する上部絶縁体と上端部に薄肉の段差部を有する下部絶縁体からなり、互いの段差部を接合し継ぎ合わせて、一体の筒体を構成することができる。
また、本実施形態は、前記構成の電子線検査装置において、鏡筒の検出器前段の電子軌道路上に、電子軌道路に面する内面に導電体、その外側に絶縁体を重ねて筒状に形成されていて、その上方から中央に円形断面空間を有する上部、多面形断面空間を有する中間部、及び円形断面空間を有する下部を連ねた形状に設けられ、且つ上部の円形断面空間は下部に接続する筒体の内径よりも大きくして設けられているとともに、前記中間部の多面断面空間部の外側の絶縁体内部に偏向用コイルを設けて構成されたビーム位置補正器が設置された構成を有することを特徴とする。
これによれば、電子線検査装置のステージの稼働により発生する振動や磁場変動により、電子軌道路中を通る電子ビームの位置も変動を来たすが、これをビーム位置補正器により高精度で補正して、電子ビームが本来入射する検出器センサ面の素子位置に、電子ビームの位置を正確に補正することができる。
前記偏向用コイルは、高速で高精度の偏向動作を達成するため、電子軌道路を通る電子ビームをX方向及びY方向に偏向可能に設け、1〜100kHzの偏向周波数に対応可能に構成してあることが好ましい。
また、前記中間部は、例えば内部が正方形断面の空間部となるように周囲に四面を配置し、各面内に設けた偏向用コイルにより、電子ビームの軌道をX,Y方向に偏向し得るように形成することができる。多面形断面空間部は、内部を空間部として周囲を8面形や12面形、或いはそれ以上の多面形に形成し、各周面の外側に偏向用コイルを設けて、前記空間部を通る電子ビームの軌道を多面に配置した偏向用コイルにより高精度で制御できるように構成してもよい。
前記構成の検査装置において、鏡筒の電子軌道路内に筒体よりも大径の拡幅部が複数設けられ、鏡筒の外部に設けられていて真空ポンプと接続した排気管と各拡幅部が接続管で接続された構成を有することが好ましい。
電子軌道路内の真空度が低い場合、電子と残留ガス粒子との反応によってコンタミが生成され、それが軌道路内壁やアパーチャ(開口部)、検出器のセンサ面に付着して性能劣化を来たすことがある。本実施形態によれば、電子軌道路上で、磁場レンズ類が配置される部分には筒体が設置され、その他の部分は大径の拡幅部として広い断面領域を確保しており、各拡幅部に接続された排気管を通して電子軌道路内を効率的に真空排気することができるので、電子軌道路内を高真空排気して高い真空度に保つことができ、コンタミの付着による性能劣化を効果的に防止することができる。
真空ポンプと接続した排気管は、鏡筒の電子軌道路内の5倍以上の排気性能(コンダクタンス)を備えていることが好ましい。
前記構成の検査装置において、鏡筒に組み込まれた二次電子光学系は、試料側から対物レンズ、ビーム分離器、リレーレンズ、NA機構、ズームレンズム機構、拡大レンズ機構、ビーム位置補正器及び検出器の順で配置されており、結像倍率に関わりなく、NA機構の開口位置にクロスオーバーが形成されるようにした構成を有することが好ましい。
また、NA機構は、複数の開口部(例えば径の異なるアパーチャ等)を設置可能であり、それぞれX方向とY方向に沿って変位し得るように構成されているとともに、前記開口部に高電圧、例えば0〜100kV程度までを印加する機能及び開口部を通る電子ビームの吸収電流測定機能を有することが好ましい。
NA機構の開口位置にクロスオーバーが形成されるようにし、その後段にズームレンズ系を配置することにより、倍率変動時にクロスオーバー位置が変動することなく、高精度の電子ビーム像を得ることができる。
また、前記構成の検査装置において、筒体の外側に配置された磁場レンズの近傍に補助用の小型磁場レンズが設置された構成を有することが好ましい。
これによれば、磁場レンズの動作により電子ビーム、或いは電子像の回転が起きた際に、小型磁場レンズを作動して所定のX,Y方向に電子ビームや電子像を回転変位させて、その位置を調整することが可能となる。
さらに、前記構成の検査装置において、検出器がそのセンサ面に沿って変位又は回転可能に設けられていること、すなわち検出器に回転機構を装備させてセンサの素子の配置方向を変位し得るように設けられていることが好ましい。
これによれば、鮮明な電子像を得るために、試料が保持されたステージの移動方向とセンサの素子の配置パターンの方向を合わせることが有効であり、また、前記補助用の小型磁場レンズにより電子ビームや電子像の回転方向の位置調整が可能であることと相俟って、電子ビームや電子像の検出器のセンサ面への入射位置のズレを極力微少にすることが可能であり、高MTFを達成して、高コントラストで高分解能の電子像を得ることができる。
またさらに、前記構成の検査装置において、検出器が、試料の引き出し電圧に対してセンサ面の電圧を適宜に調整可能に構成してあることが好ましい。
鏡筒内の基準電圧を高くして高エネルギーの電子像を形成する場合、検出器のセンサ表面が従来装置の如く接地(GND)されていると、試料の電位がGNDの場合は電子ビームが検出器の手前で減速して検出器に入射せず、センサ面に電子像を形成することができない。また、試料に負電圧を印加すると、試料周囲の絶縁構造や配線の複雑さが増加してコスト高及びステージ精度の低下を来たす。この場合は、試料の負電圧と検出器との電圧差のエネルギーで電子ビームは検出器に入射することとなる。すなわち、試料電圧と検出器の電圧の差を適切に設定できるように設けることが安定動作確保のために重要となる。
本実施形態によれば、検出器のセンサ面の電圧を調整可能に設けてあるので、電圧を適宜に調整することで電子ビームのセンサに対する入射エネルギーを制御してセンサのゲインが調整され、これにより、最適な輝度で高分解能の電子像を取得することが可能となる。センサの劣化も抑えられる。
試料の引き出し電圧に対するセンサ面の電圧は、−10kV〜+10kVの範囲で調整可能に設けることができる。高分解能の電子像を得るには、0〜10kVの範囲、さらには少なくとも3kV〜5kVの範囲で調整可能に設けることが好ましい。
なお、試料と検出器の電圧の差(ΔV)が大きすぎると、例えばΔV>10kVであると、電子ビームが高電子量であるためセンサ内部の電子衝突エネルギーが大きくなりすぎて、素子がダメージを受け、センサが早期に劣化してしまう。
前記構成の検査装置において、一次電子光学系により電子ビームが照射されて二次電子を放出する試料表面は接地(GND)されており、二次電子が前記高電圧の筒体内部を通って検出器のセンサ面に入射させるには、試料表面との電位差を検出器に与えて、例えば0〜+10kvの入射エネルギーを二次電子が持った状態で検出器のセンサに入射するように設ける必要がある。
この場合に、電子ビームの入射エネルギーに対応させて0〜+10kvで制御させるセンサに対して、カメラをGND電位で作動させることは、センサとカメラの間の絶縁を図ることが構造的に難しく実用的ではなく、カメラを含む検出器全体をセンサと同じ電位で作動するように構成することが好ましい。さらに、カメラを含む検出器自体を、筒体に付加される高電圧と同等の電圧に耐えうるような耐圧構造とすることは困難である。
よって、前記構成の検査装置において、検出器はフローティング電源(非接地配線方式)により作動するように構成することが好ましい。そして、検出器と筒体の間に絶縁フランジ等を配置して両部材の絶縁を確保し、また、フローティング電源で作動するカメラを含む検出器の周囲を絶縁カバーで囲うように設けてあることが好ましい。
前記構成の検査装置において、検出器をフローティング電源により作動させる場合、センサを含む周囲の部材、例えばカメラやそのフランジなどの構成部材が同電位にしないと部材間の絶縁が必要となって設計が難しく、また、絶縁物を挟むと信号配線が長くなって通信速度の遅延をもたらすことになる。
よって、前記構成の検査装置において、検出器のセンサ、座板及び座板上に設置されたカメラの電位が同電位となるように構成してあることが好ましい。
この場合、鏡筒の外側は接地されており、検出器は鏡筒の上端に配置された状態で鏡筒との境界に絶縁フランジのような絶縁物を設置して、確実に電気的絶縁が確保されるように構成する必要がある。また、この絶縁物が鏡筒内部の電子軌道路に露出しているとチャージアップが生じる虞があることから、絶縁物と電子軌道路の間に検出器と同電位のブランク材を設置し、ブランク材で電子軌道路と絶縁物とを隔てることで、センサ面とその周辺の電位分布が均等に保たれるようにすることが好ましい。
前記のように検出器をフローティングにして動作させ、試料の引き出し電圧に対してセンサ面の電圧を調整可能に構成することで、二次電子のセンサへの入射エネルギーを適宜に変えることができ、これにより検出器のゲインを制御することが可能となる。
センサ入力面の一画素当りの電子の入力数はセンサの仕様で決まり、センサに入力した電子の数をセンサ内で増加させる割合であるゲインが決まると、得られる電子像である画像のノイズレベルが決まる。例えばゲインを下げた場合に、センサの一画素当りに入力する電子の数を増やすことが可能となり、これにより画像のノイズの比率が下がることになる。つまり、ゲインを変えることでセンサに入射する電子の数をコントロールすることができ、センサ面の電圧を適宜に調整して二次電子の入射エネルギーを制御し、センサのゲインを調整することで、センサへの入射電子数を所望の数に制御して画像のノイズレベルを上げたり下げたりするなどのノイズレベルを所望の比率に調整することが可能となる。
前記構成の検査装置において、鏡筒内の筒体に高電圧で印加される試料の引き出し電圧(例えば試料の電位がGND、筒体内面の高圧印加部が10kV以上の高圧のとき)に比べて、検出器のセンサ面の電圧が小さく電位差が大きい場合に、二次電子は筒体内部を通ってセンサ面に入射する経路上で、電位差により移動速度が急激に減速し、この際、センサの周辺部分の画像に歪みが生じることがある。この画像の歪みは、センサの周辺部分が特に大きく生じ、センサの中央部分の画像を解析するのには支障はないが、センサ全面に亘る広い領域の画像を解析しようとした場合に、綺麗な画像が得られず、解析精度は低下する。
よって、前記構成の検査装置において、二次電子に急激な電圧変化を与えることに起因して生じる画像の歪みを制御するため、検出器のセンサの入力面の前方に、センサに対する二次電子の入射速度及び入射位置を制御するための補正電極が設置されていることが好ましい。
前記補正電極は、例えば鏡筒内部の筒体の上端と検出器のセンサの間の部分に少なくとも一つ以上設置された、中央に円形の貫通孔が開けられた板状の緩和電極により構成することができる。
また、鏡筒内部の筒体の上端と検出器のセンサの間の部分に少なくとも一つ以上設置された、中央に円形の貫通孔が開けられた板状の電極であって当該貫通孔の周方向に沿って等間隔で、且つ貫通孔を挟む対向位置を一対として複数対に分割された分割電極を含んで構成することができる。
補正電極は、高電圧が印加された筒体の上端と検出器のセンサとの間の電界を緩和することを目的として設置されるものであり、例えば前記緩和電極と分割電極を組み合わせ、電子軌道路上で分割電極をセンサに近い側に配置して両電極を間に絶縁物を介して平行に並べ、それぞれの電極に筒体に印加される引き出し電圧と検出器のセンサ面の電圧との電圧差の範囲内の電圧を印加し、二次電子に何段階かの電圧の変化を与えるようにすることで、急減な電圧変化による画像の歪みの発生を抑制するように機能するものである。
例えば、前記のように緩和電極と分割電極を配置し、筒体内部電圧(VH)として筒体に50kVが印加され、検出器のセンサ面の電圧(VS)が5kVである場合に両部材間の電位差を緩和するにあたり、緩和電極(VC1)に20kVを印加して減速電界を生じさせ、緩和電極内を通る二次電子を20kVの印加電圧速度に緩和させた状態で、分割電極(VC2)の対となっている各電極に20kv±5kv(VC1±ΔV)の電圧を各々印加して、センサ面に向かう二次電子の進行方向を適宜且つ強制的に調整することで、センサ全体に亘り正確な位置に二次電子を入射させ、画像に歪みが発生することを抑止するようになっている。
さらに、例えば以下の関係を有していればより好ましい。
VC1=0.4〜0.6×VH
VC2=VC1±ΔV
ΔV=0.2〜0.7×VC1
なお、補正電極は、少なくとも一つの緩和電極と一つの分割電極を平行に並べて構成されていることが好ましいが、緩和電極と分割電極をそれぞれ複数枚平行に並べて構成されていてもよい。緩和電極は、中央に円形の貫通孔が開けられた電極であれば、板状の電極の他にブロック状や他の形状の電極を用いることができる。また、分割電極は、貫通孔の周方向に沿って電極が四分割された構成のものが好適に用いることができるが、8分割や12分割された構成のものを用いてもよい。
[図面の簡単な説明]
[図1]本実施形態の一実施形態の電子線検査装置の概略構成図である。
[図2]図1の電子線検査装置の電子コラムからステージに至る概略構成図である。
[図3]鏡筒の概略構成図である。
[図4]検出器の概略構成図である。
[図5]NAアパーチャ機構の概略構成を示す図である。
[図6]筒体の概略構成を示す断面図である。
[図7]筒体の他の形態の概略構成を示す断面図である。
[図8]ビーム位置補正器の概略構成を示す断面図である。
[図9]図8中のA−A線断面図(A)とB−B線断面図(B)である。
[図10]磁場レンズと小型磁場レンズの設置状態を示す図である。
[図11]検出器のセンサと筒体の端部の間に補正電極を設けた形態の概略構成図である。
[図12]図11の補正電極を構成する分割電極(A)と緩和電極(B)の概略平面図である。
[図13]図11の補正電極の鏡筒への取り付け部分を拡大して示した図である。を構成する分割電極(A)と緩和電極(B)の概略平面図である。
[図14]検出器にブランク部材を取り付けてセンサの周囲を囲った形態の概略構成図である。
[図15]従来の静電偏向器の一例の断面図である。
本実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、例えば半導体の回路パターンを検査する写像投影型観察装置に適用した本実施形態の電子線検査装置の概略全体構成を示している。同図に示されるように、電子線検査装置1000は、試料キャリア(ロードボート)100と、ミニエンバイロメント200と、ロードロック300と、トランスファチャンバ400と、メインチャンバ500と、防振台600と、電子コラム700と、画像処理ユニット810と制御ユニット820を有する処理ユニット800と、ステージ900とを備えて構成されている。電子コラム700は、メインチャンバ500の上部に取り付けられている。
試料キャリア100には、検査対象となる半導体回路などの試料が収納されている。ミニエンバイロメント200には、図示されない大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構などが設けられている。試料キャリア100内の試料は、ミニエンバイロメント200内に搬送され、その中で試料アライメント装置によってアライメント作業が行われる。アライメントされた試料は、大気中の搬送ロボットによりロードロック300に搬送される。
ロードロック300は、図示されない真空ポンプにより、その内部が大気から真空状態へと排気され、圧力が一定値(例えば1Pa)以下になると、前記試料が、トランスファチャンバ400に配置された図示されない真空中の搬送ロボットにより、メインチャンバ500へと搬送される。このように、常に真空状態であるトランスファチャンバ400に搬送ロボットが配置されているので、圧力変動によりパーティクルなどの発生を最小限に抑制することが可能である。
メインチャンバ500の内部には、X方向、Y方向、及びθ(回転)方向に移動するステージ900が設けられている。ステージ900上に、後述する試料保持装置6が設置され、前記トランスファチャンバ400からメインチャンバ500へと搬送された試料が試料保持装置6でステージ900上に保持される。メインチャンバ500は、図示されない真空制御系により真空状態が維持されるように制御される。また、メインチャンバ500は、前記ロードロック300及びトランスファチャンバ400とともに防振台600上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ500には、一つの電子コラム700が設置されている。この電子コラム700からの検出信号は、画像処理ユニット810に送られて処理される。制御ユニット820は、画像処理ユニット810などを制御し、この制御により画像処理ユニット810は、オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方の処理動作が可能となっている。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後に信号処理が行われる。
画像処理ユニット810で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存され、また、必要に応じて、コンソールのモニタを表示することが可能である。表示されるデータは、例えば観察画像、検査領域、欠陥マップ、欠陥サイズ分布/マップ、欠陥分類、パッチ画像などである。
図2及び図3は、前記チャンバ500に設置されたステージ900を含む電子コラム700の概略構成を示しており、図中、符号1は一次電子光学系、2は二次電子光学系、3は試料、4はビーム補正器、5は検出器、6は試料保持装置、7は鏡筒、8は筒体、9は排気管、10は真空ポンプをそれぞれ示している。
一次電子光学系1は、電子ビーム供給手段である電子銃(図示せず)、電子ビームの形状を制御するレンズ11、電子ビームの進行方向を制御するアライナ12を備えて構成してある。一次電子光学系1は、電子銃から放出された電子ビームを、レンズ11でその形状を整え、さらにアライナ12でその進行方向を制御して、試料保持装置6上に保持された試料3に導くように設けてある。
二次電子光学系2は、静電電極21、レンズ22、ビーム分離器23、レンズ24、NA(開口)機構25、拡大レンズ26,27、投影レンズ28及びビーム補正器4を備えて、一次電子光学系1によって導かれた電子ビームが試料3に照射されることにより試料表面から放出される二次電子を、前記各レンズ類により検出器5のセンサ面に結像させるように構成してある。
図3に示されるように、磁場レンズMIa、磁場アライナ(図示せず)は、各レンズの中心に電子ビームの軌道を調整するために各レンズ付近に設けられており、また、磁場レンズMIaと磁場アライナを含む二次電子光学系2を構成する前記各部材は、鏡筒7の電子軌道路71に沿って設けられた筒体8の外側に配置されている。
詳しくは、本形態における二次電子光学系2は、従来装置よりも収差を大幅に小さくするため、以下のように構成してある。
先ず、試料3の上方に静電電極21を配置して、電子軌道路71を通る電子ビームのエネルギーが高くなるように、試料3の引き出し電圧(例えば、試料と筒体内面に印加される電圧差、又は静電電極が設置されている場合は試料と静電電極に印加される電圧差)を従来装置の1.5倍〜15倍程度の大きさに設定してある。
また、電子ビームの照射により試料表面又は試料近傍から放出された二次電子を、レンズ22によりビーム分離器23の中心部に結像して、ビーム分離器23による電子像の収差及び歪みが低減されるように設けてある。
さらに、レンズ24によりNA機構25の開口位置にクロスオーバーを形成し、NA機構25の後段に設けたズームレンズ26,27と投影レンズ28とで所定倍率に拡大された後、ビーム補正器4で結像位置が補正されて検出器5に高精度の電子像が結像されるように設けてある。NA機構25とビーム補正器4の構成は後述する。
検出器5は、例えば二次電子を倍増するMCP(マイクロチャンネルプレート)と、倍増された電子を光に変換する蛍光板と、変換された光信号を画像信号として取り込むTDI(Time Delay Integration)−CCDカメラを用い、そのセンサ面に沿って適宜な角度回転し得るように設けてあるとともに、試料3の引き出し電圧に対してセンサ面の電圧を適宜な電圧に、例えば−10kV〜+10kVの範囲で調整可能な機能を備えて構成してある。検出器5のセンサ面への入射位置のズレを補正する方法については後述する。
詳しくは、図4に示されるように、検出器5は、そのセンサ51を、中央にセラミック製のパッケージ52aを有する座板52に支持させ、この座板52を、真空に保持される電子軌道路71にセンサ51が臨むように向けるとともに、パッケージ52aの周辺部に設けられた座板52のメタルフランジ52bを、後述する鏡筒7の上端の開口部位であり接地(GND)される接続フランジ73上に絶縁フランジ53を介して取り付け、センサ51の検出信号が座板52上に設置されたカメラ54に入力されるように設置して電気的に接続したカメラ54とセンサ51の電位を、バイアス電圧を発生する、電気的に非接地のフローティングの電源56から電力供給を受けて−10kV〜+10kVの範囲で変化させることができるように構成してある。
また、検出器5は、そのセンサ51、座板52、座板52上のカメラ54などのセンサ51を含む周囲の部材が、センサ51と同電位となるように構成して、絶縁フランジ53上に支持させてある。
なお、検出器5はフローティング電源56で作動するように設けられており、安全のため、検出器5のカメラ54などの電圧変化が起こる部位に対して作業者などが接触することを防止するため、絶縁フランジ53上方からのカメラ54の周囲に亘り絶縁カバー55で囲ってあることが好ましい。座板52のパッケージ52aとメタルフランジ52bは、互いの内周縁部を銀ロウ付けや溶融接合により、或いはOリングを挟んで気密的に接合することができる。絶縁カバー55としては塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂などの合成樹脂材を用いることができる。カメラ54との絶縁距離が十分大きく確保されているときは、ステンレスやアルミニウムなどのメタルカバーを用いることができる。
検出器5は、電源56から電力供給を受けてセンサ51の入力面のバイアス電位を適宜に調整することで、電子軌道路71内を高エネルギーで移動する二次電子がセンサ51の前面で減速され、これにより検出器5のゲイン調整を可能とするとともに、二次電子が高エネルギーでセンサ51に入射することによってセンサ素子内にダメージが蓄積されることを抑制し、検出器5の早期劣化を防止できるようになっている。また、センサ51のゲインが二次電子の入射エネルギーにより変化する特性を利用して、バイアス電位を調整して二次電子の入射速度を適宜に調整することでセンサ51のゲインを適宜に設定して、センサ51の出力に適したゲインを選択することができるように設けてある。例えば、電子軌道路71を通る二次電子数が多すぎてセンサ51で検出される電子像が飽和するような場合には、センサ51の電位を試料3の電位である試料電位に近づけて、二次電子の入射エネルギーを下げることでゲインが低下するように設定すれば、飽和しない適切な輝度の撮像を行うことが可能となる。
なお、かかる構成の検出器5を用いると、センサ51の前面においてエネルギー変化をおこす二次電子による電子像が歪みなどを発生する場合がある。その場合、図3に示されるように、センサ51の入力面前方に補正用の電極58を設けて二次電子のセンサ51に対する入射位置を補正することで、歪みなどの影響を低減してエネルギー変化に起因する電子像の劣化を抑制することが可能である。補正用の電極58を配置した形態については後述する。
検出器5のセンサ面に結像された電子像は、検出器5で電気信号に変換されて画像データが形成され、この画像データは、前記画像処理ユニット810に送られて試料3の欠陥の判別などの検査処理が行われる。検出器5から画像処理ユニット810へのデータの転送は、図4に示されるように、光ファイバーを用いた絶縁ケーブル57により行われ、これにより低ノイズで安全な機器間の通信・データ転送が可能となっている。検出器5は、EB(Electron Beem)−CCDカメラやEB−TDIセンサを用いて構成されていてもよい。
試料保持装置6は、ステージ900上に設けられた静電チャックからなり、この静電チャックに試料3が設置される。或いは試料3は、パレットや治具に設置された状態で静電チャックに保持される。試料保持装置6は、試料3を保持した状態で、ステージ900によって、その試料保持面をX方向やY方向、Z方向(θ:回転方向)に沿って変位可能に設けてある。
鏡筒7は、図3に示されるように、その内部に一次電子光学系1から試料3に向かう一次電子と試料3から放出されて検出器5に至る二次電子が通る空間である電子軌道路71を備え、両光学系の各部材を組み込んで構成してある。
試料3から検出器5に至る電子軌道路71には筒体8が設置されて、当該筒体8の内側に電子軌道路71を形成しており、二次電子光学系2を構成する前記各部材と各磁場レンズMIa及び磁場アライナ(図示せず)は筒体8の外側に配置してある。
また、鏡筒7の電子軌道路71の、筒体8及び磁場レンズMIaが配置されていない部分は、筒体8よりも大径の拡幅部72となっており、各拡幅部72と鏡筒7の外部に設けられた排気管9とを接続管91で各々接続し、排気管9を通して真空ポンプ10で電子軌道路71内を高真空排気して、電子軌道路71内を高い真空度に保つことができるように設けてある。
また、鏡筒7の拡幅部72には、前記NA機構25を設置することができる。
図5は拡幅部72に設置されるNA機構25の一例の形態を示しており、NA機構25は、開口部(アパーチャ等)25aを複数設置可能であり、それぞれX方向とY方向に沿って変位し得るように構成するとともに、開口部25aに高電圧を印加する機能及び開口部25aを通る電子ビームの吸収電流測定機能を具備した構成とすることができる。
詳しくは、鏡筒7の拡幅部72の内部を、後述する筒体8の内層の導電体82aと外層の円筒管81にそれぞれ通ずる導電体72a,72bで区画するとともに両導電体72a,72b間に絶縁体72cを設置して、これら導電体72a,72b及び絶縁体72cで囲われた電子軌道路71中に、NA機構25の移動機構25bで支持された開口部25aを配置した構成としてある。
すなわち、NA機構25の開口部25aとその周囲の電位は、電子軌道路71内の基準電位と電位差があると電位差によって二次電子の軌道が曲がってしまうなどの悪影響が生じることから、電子軌道路71の基準電位と同じにするべく、当該電子軌道路71と同電位の導電体72aで開口部25aを囲った構造としてある。
また、導電体72aが高電位、例えば+20kVになった場合に、鏡筒7内部の周囲のGND電位の部材との電位差が大きくなって放電が発生する虞もあることから、導電体72aとその外側の導電体72bの間に絶縁体72cを配置して、電位差による影響の低減を図った構造としてある。
前記の通り、NA機構25は複数の開口部25aを搭載可能であり、例えば異なるサイズのアパーチャ等の開口部25aを設置してそれらを選択的に配置することで、試料3の検査速度に対応させて、試料3の電子像の像質を適宜に設定することが可能である。このとき、開口部25aの設置部は高電圧となるので、移動機構25bのGND電位部材との間を絶縁部材で接続する構成をとっている。
筒体8は、図6に示されるように、非磁性体の金属製の導電管である外部円筒管81の内側に、内層と外層に導電体82a,82c、中間層に絶縁体82bが積層されてなる内部円筒管82を一体に嵌め入れた形状に構成してある。
導体/絶縁体/導体の3層構造となっている内部円筒管82は、その外層の導電体82cを接地し、内層の導電体82aに例えば10kV〜100kVの高電圧を印加し得るように構成してある。内部円筒管82の絶縁体82bとしては、例えばセラミックや絶縁樹脂を用いることができる。例えばポリイミド樹脂は100kV/mm以上の耐電圧を有しており、前記の如く内層の導電体82aに100kV、外層の導電体82cをGNDとした場合でも、その間に0.5mm以上の厚さがあれば絶縁が確保されるので、絶縁体82bとして好適である。
また、筒体8の他の形態として、図7に示されるように、前記と同様に非磁性体の金属製の導電管である円筒管83の内側に、絶縁体84と導電体85を積層設置して導体/絶縁体/導体の3層構造の円筒管を形成するとともに、絶縁体84の上下端部に、円筒管83の端部よりも外方へ張り出した鍔部84a,84aをそれぞれ設けた構成のものとしてもよい。このようにすることで、高電位の内層の導電体85とGND電位の円筒管83の端部間の空間距離及び沿面距離が、絶縁体84の鍔部84aを介することで増大して絶縁を確実に確保することができる。
また、筒体8同士を上下に接続するなど、内層の導電体85を高圧管の上部接続や下部接続する場合、接続部における接合面積確保のために、導電体85はその端部が外方へ突出した構造にあるが、そのような構造に対応するためにも、当該導電体85の突出した端部に重なるように絶縁体84の端部に鍔部84aを設けた構造が必要となる。
また、同図に示されるように、絶縁体84は、下端部に薄肉の段差部841aを有する上部絶縁体841と、上端部に薄肉の段差部842aを有する下部絶縁体842を、互いの段差部841a,842aを接合し一体に継ぎ合わせて構成され、上下の絶縁体841,842の沿面距離が段差部841a,842aを介して十分に確保された構造としてある。段差部同士の接合は、樹脂接着剤を用いて固着一体化することが可能であり、これにより強固な絶縁構造の筒体8を形成することが可能となる。
なお、絶縁体84の鍔部84aを介した導電体85と円筒管83の端部間の沿面距離と、段差部841a,842aを介した上下の絶縁体841,842の沿面距離は、例えば内層の導電体85と外層の円筒管83に50kVの電位差を与える場合は50mm以上の沿面距離が確保されていること、つまり、設定される電位差1kVについて1mm以上の沿面距離が設定されていることが、絶縁確保のためには好ましい。
また、図2に示されるように、鏡筒7の検出器5の前段に位置する電子軌道路71上には、ビーム位置補正器4を設置してある。
ビーム位置補正器4は、図8及び図9に示されるように、電子軌道路71に面する内面に導電体41、その外側に絶縁体42を重ね、且つ上方からその中央に円形断面空間を有する上部4a、四角形の断面空間を有する中間部4b、及び円形断面空間を有する下部4cを一体に連ねた筒状に設けられているとともに、中間部4bの外側の絶縁体42の内部に偏向用コイル43を配置して構成してある。
また、上部4aと下部4cの中央はそれぞれ円形の開口部4a1、4c1となっており、この内、上部4aの開口4a1は、下部4cに接続する筒体8の内径よりも大きく設けてある。中間部4bの中央は正方形断面の空間部4b1となっている。
中間部4bの各面に設置された偏向用コイル43は、1〜100kHzの偏向周波数に対応可能に設けられており、各々の作動により電子軌道路71を通る電子ビームをX方向とY方向、さらに斜め方向を含むX,Y両方向で区画される重畳面内全域に亘って高速で偏向動作して、検出器5に入射する電子ビームの位置を補正することができるように設けてある。
ビーム位置補正器4の内面に設けた導電体41は、非磁性体の金属、例えばチタンやリン青銅などを用いることができ、また、絶縁体42の内面に導電性物資をコーティングしたり導電性のパイプを挿入設置したりしたものでもよい。
絶縁体42は、セラミックや絶縁樹脂を用いることができ、導電体41と偏向用コイル43を所定位置に配置した後、樹脂モールドやセラミック片の組み付けなどによって絶縁体42を組み立てて構成することができる。
また、図10に示されるように、二次電子光学系2を構成する各磁場レンズMIaの近傍には、補助用の小型磁場レンズMIa1が設置され、磁場レンズMIaの動作により電子ビーム、或いは電子像の回転が起きた際に、小型磁場レンズMIa1を作動して所定のX,Y方向に電子ビームや電子像を回転変位させて位置調整ができるように設けてある。
このように構成された検査装置を用いた試料3の検査は、電子軌道路71に高電圧を印加して電子のエネルギー量を増した状態で、電子銃から放射された電子ビームを試料3に照射し、試料表面から放出される二次電子を検出器5のセンサ面に結像させて、試料表面の電子像を取得することにより行うことができる。
この際、検出器5で電子像を連続的に取得する検査動作を行うときは、以下の手順で電子像のX,Y方向の位置の補正が行われる。
先ず、試料3のパターンの縦ラインなどに沿ってY方向パターンを選定する。その選定されたパターンのY方向に試料保持装置6とともにステージ900を移動し、或いはX,Y方向に組み合わせて移動する。次いで、前記小型磁場レンズMIa1により、検出器5のセンサのY方向に略合うように、例えば±1度以内に納まるように、電子像を回転変位し、その後、検出器5の回転機構を作動させてY方向の微調整を行い、センサ面に入射される電子像の位置を補正する。その後、前記電子像の撮像を行なって、縦ラインのX方向の位置のズレが小さくなるように微調整する。
そして、ビーム位置補正器4により、X,Y方向のビーム振動による位置ズレ補正量の調整を行うことで、ステージの振動(X,Y方向)による電子像の位置ズレを極力微少にすることができ、高MTFを達成し、高分解能でコントラストに優れた試料3の電子像を得ることができる。
図11は本実施形態の電子線検査装置の他の形態を示し、これは、センサ51の入力面と筒体8との間に大きな電位差があることに起因する電子像の歪みの影響を低減するため、センサ51の入力面前方に、二次電子のセンサ51への入射速度及び入射位置を制御するための補正用の電極58を設けたものである。
図示した形態の補正電極58は、中央に円形の貫通孔58A3が開けられた板状の電極であって当該貫通孔58A3の周方向に沿って等間隔で且つ貫通孔を挟む対向位置を一対として二対、つまり四つに分割した分割電極58Aと、中央に円形の貫通孔58B1が開けられた板状の緩和電極58Bにより構成されており、電子軌道路71上で分割電極58Aをセンサ51に近い側、緩和電極58Bを筒体8の端部に近い側にそれぞれ配置するとともに、両電極の間に絶縁材58Cを挟んで適宜な間隔を開けて平行に並べて設置し、筒体8からセンサ51に向かう二次電子が両電極の貫通孔58A3,58B1を通ってセンサ5へと入力するように設けてある。
補正電極58は、筒体8の上端とセンサ51との間の電界を緩和することを目的として設置され、前記分割電極58Aと緩和電極58Bに、筒体8に印加される引き出し電圧とセンサ5の入力面の電圧との電圧差の範囲内の電圧を印加して、二次電子に電圧の変化を与えるようにすることで、急減な電圧変化による画像の歪みの発生を抑制するように機能するものである。
例えば、筒体8に50kv、検出器5のセンサ51に5kvの電圧がそれぞれ印加されている場合に、緩和電極58Bに20kvを印加して減速電界を生じさせ、緩和電極58B内を通る二次電子を20kvの印加電圧速度に緩和してセンサ51への入射速度を制御する。
そして、この状態で、図12(A)に示されるように、分割電極58Aの対となっている電極58A1,58A1と、電極58A2,58A2とに、20kv±5kvの異なる大きさの電圧を印加して、二次電子の進行方向をX,Y方向に沿って強制的に変位させることで、センサ51に対する入射位置を制御してセンサ51全体に亘って正確な位置に二次電子を入射させ、画像に歪みが発生することを抑止するようになっている。
なお、補正電極58を構成する分割電極58Aと緩和電極58Bは、図13に示されるように、その周辺が、鏡筒7の内周面に固定された絶縁体58Cに取り付けられて平行に支持され、図示されない電圧印加手段により、接地された鏡筒7の外側をGNDレベルとした電圧が印加されるように設けてある。
このように、検出器5のセンサ51の入力面の前方に補正電極58を設置することで、電子像の歪みの発生を効果的に抑制することが可能である。具体的には、センサ面に形成される電子像は、補正電極58を設けない場合に、センサ面の端部ではセンサ面の中央部に対して10倍以上の歪みが発生していたのに対し、補正電極58を設けた場合には、センサ面の端部の歪みをセンサ面の中央部に対して2倍以下の量に抑えられることが確認されている。
図14は本実施形態の電子線検査装置のさらに他の形態を示し、これは、鏡筒7と検出器5とを絶縁する絶縁フランジ53の内側であって、センサ51が取り付けられた座板52のパッケージ52aの下面に、センサ51の周囲を囲うようにしてメタルフランジ52bに導電材からなるブランク材59を一体に設置したものである。ブランク材59にもセンサ51と同電位の電圧が印加される。
同図に示されるように、ブランク材59は、絶縁フランジ53と鏡筒7内側の電子軌道路71の間に設置されて、ブランク材59で電子軌道路71と絶縁フランジ53とを隔ており、これにより絶縁物が鏡筒7の内部に露出していることによるチャージアップの発生を防止し、センサ51の入力面とその周辺の電位分布が均等に保たれるようになっている。
先に述べた通り、本実施形態の電子線検査装置は、二次元の検査画像を検出器のセンサ面に形成する写像投影方式の検査装置において、微細な構造の検査や解析をより高精度且つ高速度で行えるようにすることを技術的課題として開発されたものである。
かかる技術的課題を解決する手段として、先ず、写像投影方式で高精度且つ低収差で撮像された検査画像を得るには、電子線軌道路内を高電圧基準に設定してセンサ面に入射する電子ビームの高エネルギー化を図ることが不可欠である。しかし、量産仕様に沿った製造ラインに設置して使用する従来の検査装置にあっては、鏡筒内部を高電圧基準に設定した場合に装置が大型化して実用的でないことから、そのようなことは行われていなかった。
本実施形態では、装置を大型化せずに、電子軌道路内を高電圧基準にする手段について鋭意研究を行った結果、電子軌道路を形成する筒体を鏡筒内部に配置し、この筒体内部を高電圧基準にするとともに、筒体の外側に二次電子光学系を構成する部材を配置することで、電子ビームの高エネルギー化と装置のコンパクト化の両方の要請が達成されることを見出し、本実施形態の装置を開発するに至ったものである。
一方、従来の装置構成の検出器では、高エネルギー化した電子ビームをセンサ面に入射して有効な電子像を生成することはできない。
検出器のセンサとしてEB−TDIセンサやEB−CCDセンサ(電子打ち込み型内蔵管)の利用は、他のセンサと比較して分解能に優れ、高分解能の検査画像を得るために好適であるが、これらのセンサは入射する電子ビームのエネルギーが高すぎると劣化が激しく実用に耐えない。また、電子軌道路上の電子ビームの電位と比較してセンサの入射面の電圧が小さく電位差が大きいと、電位差によりセンサ面に形成される電子像の歪みが大きくなってしまう。
このような技術的問題に対し、本実施形態では、センサやカメラを含む検出器全体を、フローティング電源によって同電位で作動させることで前者の問題の解決を図り、また、検出器のセンサ面の前方に補正電極を配置して、センサ面に入射する電子ビームを適正な電位に調整することで、後者の問題の解決を図ることで、高精度且つ低収差の撮像を可能としたものである。
このように、本実施形態の電子線検査装置は、鏡筒内部の筒体の内側を高電圧基準に設定する、検出器の電圧をフローティング電源により制御する、センサの入射面の直前に補正電極を設ける、という従来にはない新たな着想の技術的手段を組み入れることで、従来装置では達成が不可能であった、写像投影方式で微細な構造の検査や解析をより高精度且つ高速度で行えるようにするという性能及び機能を実現したものである。
なお、実施の形態で説明し、図示した電子線検査装置の各構成要素の形態は一例であり、本実施形態はこれに限定されず、他の適宜な形態で構成することが可能である。
以上、第1の実施形態から、例えば次のような態様が想到される。
[付記1]
電子ビームを試料表面に照射する一次電子光学系と、試料から放出される二次電子を検出器の電子検出面に結像させる二次電子光学系を備え、検出器で検出された信号から試料表面の電子像を取得して試料を検査する電子線検査装置において、
二次電子光学系が組み込まれる鏡筒内部に、内層と外層に導電体、中間層に絶縁体が積層されてなる筒体を設置し、この筒体の内部に電子軌道路を形成するとともに、筒体の外側に二次電子光学系を構成する部材が配置された構成を有することを特徴とする電子線検査装置。
[付記2]
筒体を構成する中間層の絶縁体の上下端部に外方へ張り出した鍔部をそれぞれ設けて、内外層の導電体の端部間の沿面距離を増大させた構成を有することを特徴とする付記1に記載の電子線検査装置。
[付記3]
筒体を構成する中間層の絶縁体が、下端部に薄肉の段差部を有する上部絶縁体と上端部に薄肉の段差部を有する下部絶縁体からなり、互いの段差部を接合し一体に継ぎ合わせて構成されていることを特徴とする付記1又は2に記載の電子線検査装置。
[付記4]
鏡筒の検出器前段の電子軌道路上に、電子軌道路に面する内面に導電体、その外側に絶縁体を重ねて筒状に形成されていて、その上方から中央に円形断面空間を有する上部、多面形断面空間を有する中間部、及び円形断面空間を有する下部を連ねた形状に設けられ、且つ上部の円形断面空間は下部に接続する筒体の内径よりも大きくして設けられているとともに、前記中間部の多面断面空間部の外側の絶縁体内部に偏向用コイルを設けて構成されたビーム位置補正器が設置された構成を有することを特徴とする付記1〜3の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記5]
偏向用コイルが電子軌道路を通る電子ビームをX方向及びY方向に偏向可能に設けられているとともに、1〜100kHzの偏向周波数に対応可能に構成してあることを特徴とする付記4に記載の電子線検査装置。
[付記6]
鏡筒の電子軌道路内に筒体よりも大径の拡幅部が複数設けられ、鏡筒の外部に設けられていて真空ポンプと接続した排気管と各拡幅部が接続管で接続された構成を有することを特徴とする付記1〜5の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記7]
鏡筒に組み込まれた二次電子光学系は、試料側から対物レンズ、ビーム分離器、リレーレンズ、NA機構、ズームレンズム機構、拡大レンズ機構、ビーム位置補正器及び検出器の順で配置されており、結像倍率に関わりなく、NA機構の開口位置にクロスオーバーが形成されるようにした構成を有することを特徴とする付記1〜6の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記8]
NA機構は、複数の開口部を設置可能であり、それぞれX方向とY方向に沿って変位し得るように構成されているとともに、前記開口部に高電圧を印加する機能及び開口部を通る電子ビームの吸収電流測定機能を有することを特徴とする付記7に記載の電子線検査装置。
[付記9]
筒体の外側に設けられた磁場レンズの近傍に補助用小型磁場レンズが設置された構成を有することを特徴とする付記1〜8の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記10]
検出器がそのセンサ面に沿って回転可能に設けられていることを特徴とする付記1〜9の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記11]
検出器が、試料の引き出し電圧に対してセンサ面の電圧を適宜に調整可能に構成してあることを特徴とする付記1〜10の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記12]
検出器がフローティング電源により作動するように構成してあることを特徴とする付記1〜11の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記13]
検出器のセンサ、座板及び座板上に設置されたカメラの電位が同電位となるように構成してあることを特徴とする付記12に記載の電子線検査装置。
[付記14]
検出器のセンサの入力面の前方に、センサに対する二次電子の入射速度及び入射位置を制御するための補正電極が設置された構成を有することを特徴とする付記1〜13の何れかに記載の電子線検査装置。
[付記15]
補正電極は、鏡筒内部の筒体の上端と検出器のセンサの間の部分に少なくとも一つ以上設置された、中央に円形の貫通孔が開けられた緩和電極により構成されたことを特徴とする付記14に記載の電子線検査装置。
[付記16]
補正電極は、鏡筒内部の筒体の上端と検出器のセンサの間の部分に少なくとも一つ以上設置された、中央に円形の貫通孔が開けられた板状の電極であって当該貫通孔の周方向に沿って等間隔で、且つ貫通孔を挟む対向位置を一対として複数対に分割された分割電極を含んで構成されたことを特徴とする付記14又は15に記載の電子線検査装置。
[符号の説明]
1000 電子線検査装置、100 試料キャリア、200 ミニエンバイロメント、300 ロードロック、400 トランスファチャンバ、500 メインチャンバ、600
防振台、700 電子コラム 800 処理ユニット、810 画像処理ユニット、820 制御ユニット、900 ステージ、1 一次電子光学系、2 二次電子光学系、3
試料、4 ビーム位置補正器、5 検出器、6 試料保持装置、7 鏡筒、71 電子軌道路、8 筒体、9 排気管、10 真空ポンプ
2:第2の実施形態
[技術分野]
本実施形態は、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置及び検査方法に関する。
[背景技術]
従来の半導体検査装置は、100nmデザインルールに対応した装置と技術であった。しかし、検査対象の試料は、ウエハ、露光用マスク、EUVマスク、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)マスク及び基板と多様化しており、現在は試料が5〜30nmのデザインルールに対応した装置及び技術が求められている。すなわち、パターンにおけるL/S(ライン/スペース)又はhp(ハーフピッチ)のノードが5〜30nmの世代に対する対応が求められている。このような試料を検査装置で検査する場合、高分解能を得ることが必要になる。
ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
従来の半導体検査装置として、ステージの連続的な移動に伴う試料の移動と偏向手段による二次ビームの軌道の偏向とを同期させて制御することで、二次元CCDセンサ上で二次ビームの像を停止させ、その同期期間中に試料の同じ検出領域の像を二次元CCDセンサの同じ個所に投影させるようにした電子像追従式の電子光学装置を用いた電子線検査装置が知られている(例えば、上記特許文献5参照)。
[本実施形態の概要]
[本実施形態が解決しようとする課題]
しかしながら、二次ビームを偏向する際に二次元CCDセンサ上に投影される像の端の方で歪みが生じ、また、試料を載置したステージが振動すると、同期期間中に二次元CCDセンサ上に投影される像がずれてしまうという問題がある。
そこで、本実施形態は、精度の高い電子像追従式の検査装置を提供することを目的の一つとする。
[課題を解決するための手段]
本実施の形態の検査装置は、試料を載置して連続的に移動するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、前記ステージの振動を検出する振動検出手段とを備える。前記2次光学系は、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、多極子によって重畳電界を発生させることで前記二次ビームを偏向する偏向器を含む。前記検査装置は、さらに、前記ステージの移動及び前記振動検出手段の検出値に基づいて、前記二次ビームの像の歪を軽減ないし解消し、前記ステージの振動による前記二次ビームの像のずれを軽減ないし解消するように、前記偏向器の前記多極子を制御して重畳電界を調整する偏向器制御部を備えている。
この構成によって、偏向器によって、二次ビームの像の歪みや、ステージの振動による二次ビームの像のずれが軽減ないし解消するので、より精度の高い電子像追従型の検査装置を提供できる。
[本実施形態の効果]
本実施形態の一態様によれば、偏向器によって、二次ビームの像の歪みや、ステージの振動による二次ビームの像のずれが軽減ないし解消するので、より精度の高い電子像追従型の検査装置を提供できる。
[図面の簡単な説明]
[図16]本実施形態の一実施形態に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図17の線A−Aに沿って見た図である。
[図17A]図16に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図16の線B−Bに沿って見た図である。
[図17B]一実施形態に係る本実施形態の検査装置における基板搬入装置の他の実施例を示す概略断面図である。
[図18]図16のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
[図19]図16のローダハウジングを示す図であって、図17の線D−Dに沿って見た図である。
[図20]ウエハラックの拡大図であって、[A]は側面図で、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。
[図21]主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
[図22]主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
[図23]図16の検査装置の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
[図24]本実施形態の一実施形態に係る図である。
[図25](a)変形例の電子光学装置に用いる光学系の概略構成図である。 (b)ウエハWの表面から光電子が放出されている様子を示す図である。
[図26](a)変形例の電子光学装置に用いる光学系の概略構成図である。 (b)ウエハWの表面から光電子が放出されている様子を示す図である。
[図27](a)変形例の電子光学装置に用いる光学系の概略構成図である。 (b)ウエハWの表面から光電子が放出されている様子を示す図である。
[図28](a)変形例の電子光学装置に用いる光学系の概略構成図である。 (b)ウエハWの表面から光電子が放出されている様子を示す図である。
[図29](a)変形例の電子光学装置に用いる光学系の概略構成図である。 (b)ウエハWの表面から光電子が放出されている様子を示す図である。
[図30]本実施形態の一実施形態に係るメインチャンバ内と、メインチャンバの上部に設置された電子光学装置を示す図である。
[図31]本実施形態の一実施形態に係る電子像追従式の電子線検査装置の構成を示す図である。
[図32](a)本実施形態の一実施形態に係る二次ビームがウエハの移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器の動作を説明する図である。 (b)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。 (c)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。
[図33]本実施形態の一実施形態に係る高速偏向器による偏向によって二次ビーム像に生じる偏向歪を説明する図である。
[図34]本実施形態の一実施形態に係る中間電極の構成を示す図である。
[図35]本実施形態の一実施形態に係る高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図である。
[図36]本実施形態の一実施形態に係る高速偏向器を二次ビームの進行方向から見た図である。
[図37]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と各種信号のタイミングチャートを示す図である。
[図38A]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38B]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38C]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38D]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38E]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38F]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38G]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38H]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38I]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38J]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38K]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38L]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図38M]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39A]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39B]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39C]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39D]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39E]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39F]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39G]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39H]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図39I]本実施形態の一実施形態に係るステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。
[図40](a)試料であるウエハWに形成されたダイを示す図である。 (b)ステップアンドリピートによって順に取得されたフレームA〜Dの二次ビーム像を示す図である。 (c)フレームA〜Dの二次ビーム像を繋いだ合成画像を示す図である。
[図41]本実施形態の一実施形態に係る電子線検査装置の構成を示す図である。
[図42](a)試料であるウエハWに形成されたダイを示す図である。 (b)ステップアンドリピートによって順に取得されたフレームA〜Dの二次ビーム像を示す図である。 (c)画像処理装置におけるダイ−ダイ比較を説明する図である。
[図43]本実施形態の一実施の形態に係る電子線検査装置におけるダイ−ダイ比較検査のフロー図である。
[図44]本実施形態の一実施形態に係る電子線検査装置の構成を示す図である。
[図45]本実施形態の一実施形態に係るビーム整形用多極子の構成を示す断面図である。
[図46]本実施形態の一実施形態に係るウエハの表面における視野領域の移動範囲と一次ビームの照射範囲との関係を示す図である。
[図47]本実施形態の一実施形態に係る検査システムの構成を示す図である。
[図48]本実施形態の一実施形態に係るセル−セル比較の場合のセル周期、及びダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値を説明する図である。
[図49]本実施形態の一実施形態に係る検査システムの動作を示すフロー図である。
以下、本実施形態の実施の形態の半導体検査装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本実施形態を実施する場合の一例を示すものであって、本実施形態を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本実施形態の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。また、先行の実施形態とは別個に符号を付していることに留意されたい。
図16及び図17Aにおいて、本実施形態の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002を備え、それらは図16及び図17Aに示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。電子光学装置70は、鏡筒71及び光源筒7000を有している。電子光学装置70の内部構造については、後述する。
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テーブル11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図17Aで鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図17Aで実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニット61の回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図16で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すればよいので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
別の実施の態様では、図17Bに示すように、複数の300mm基板を箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(記載せず)に収納した状態で収容し、搬送、保管等を行うものである。この基板搬送箱24は、角筒状の箱本体501と基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケット(図示せず)、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507とから構成されている。この実施の態様では、ローダー60のロボット式の第1の搬送ユニット61により、基板を出し入れする。
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハと第1の搬送ユニット61で保持できるように、第1の搬送ユニット61のアーム612を上下移動できるようになっている。
<ミニエンバイロメント装置>
図16ないし図18において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図18に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間21内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された第1の搬送ユニット61による搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間21内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、第1の搬送ユニット61のウエハ搬送面より下側の位置で第1の搬送ユニット61の下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、第1の搬送ユニット61の周囲を流れ下り、第1の搬送ユニット61により発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウエハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナ25は検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ25自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
<主ハウジング>
図16及び図17Aにおいて、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体32及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
<ローダハウジング>
図16、図17A及び図19において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけばよい。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図20に示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウエハに接近させてアームによりウエハを把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ41及び42内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ31内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ41及び42を採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求されるレーザ光源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図16において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図16において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図16において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対するウエハの回転位置やX、Y位置を後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することで、検査の際に得られるウエハの回転位置やX、Y位置を示す信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図17Aで左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダ10に保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハをアームの上に載せ、或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図17Aに示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアーム612が再び伸びてアーム612に保持されたウエハをプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にしてウエハを受け取った後は、アーム612は更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハラック47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダ10に保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し、及び、ウエハのステージ装置50への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmや45cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
<ウエハの搬送>
次にカセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(図示せず)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセットc内及びミニエンバイロメント空間21内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM2の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アーム612と、カセットcから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブル11の上下動で行ってもよいし、或いはその両者を行ってもよい。
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アーム612は縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アーム612は伸びて、先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナ25の上に載せ、プリアライナ25によってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると第1の搬送ユニット61はアーム612の先端にプリアライナ25からウエハを受け取った後、アーム612を縮ませ、方向M4に向けてアーム612を伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
第1の搬送ユニット61によるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット61周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジング22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ41の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口435を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハラック47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット63のアーム632はワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図17Aで上方に移動し、また、Xテーブル53は図17Aで最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アーム632が伸びてウエハを保持したアーム632の先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置50上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置50に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置50からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行う。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニット63でウエハラック47とステージ装置50との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニット61でカセットcとウエハラック47との間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、ウエハラック47に、既に処理済のウエハAと未処理のウエハBがある場合、(1)まず、ステージ装置50に未処理のウエハBを移動し、処理を開始し、(2)この処理中に、処理済ウエハAを、アーム632によりステージ装置50からウエハラック47に移動し、未処理のウエハCを同じくアーム632によりウエハラック47から抜き出し、プリアライナ25で位置決めした後、ローディングチャンバ41のウエハラック47に移動する。このようにすることで、ウエハラック47の中は、ウエハBを処理中に、処理済のウエハAが未処理のウエハCに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのウエハラック47からウエハを移動することで、複数枚のウエハを同時処理することもできる。
図21及び図22において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図21に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施形態の底壁に比較して薄い構造になっている。図22に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図22に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置20と同じ方法で床上に配置され得る。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置50への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
<電子光学装置>
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図23に概略図示するような、一次光源光学系(以下単に「1次光学系」という。)72と、二次電子光学系(以下単に「2次光学系」という。)74とを備える光学系と、検出系76とが設けられている。1次光学系72は、光線を検査対象であるウエハWの表面に照射する光学系で、光線を放出する光源10000と、光線の角度を変更するミラー10001とを備えている。この実施形態では、光源から出射される光線10000Aの光軸は、検査対象のウエハWから放出される光電子の光軸(ウエハWの表面に垂直)に対して斜めになっている。検出系76は、レンズ系741の結像面に配置された検出器761及び画像処理部763を備えている。
<光源(光線光源)>
本実施形態においては、光源10000には、DUVレーザ光源を用いている。DUVレーザ光源10000からは、DUVレーザ光が出射される。なお、UV、DUV、EUVの光及びレーザ、そしてX線及びX線レーザ等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が放出される光源であれば他の光源を用いてもよい。
<1次光学系>
1次光学系72は、光源10000より出射される光線によって一次光線を形成し、ウエハW面上に矩形、又は円形(楕円であってもよい)ビームを照射する。光源10000より出射される光線は、対物レンズ光学系724を通ってステージ装置50上のウエハWに一次光線として照射される。
<2次光学系>
ウエハW上に照射された光線により発生する光電子による二次元の画像を、ミラー10001に形成された穴を通り抜け、静電レンズ(トランスファーレンズ)10006及び10009によりニューメリカルアパーチャ10008を通して視野絞り位置で結像させ、後段のレンズ741で拡大投影し、検出系76で検知する。この結像投影光学系を2次光学系74と呼ぶ。
このとき、ウエハWにはマイナスのバイアス電圧が印加されている。静電レンズ724(レンズ724−1及び724−2)とウエハWとの間の電位差で試料面上から発生した光電子を加速させ、色収差を低減させる効果を持つ。この対物レンズ光学系724における引き出し電界は、3kV/mm〜10kV/mmであり、高い電界になっている。引き出し電界を増加させると、収差の低減効果があり、分解能が向上するという関係にある。一方で、引き出し電界を増加させると、電圧勾配が大きくなり放電が発生しやすくなる。したがって、引き出し電界は、適切な値を選んで用いることが重要である。レンズ724(CL)によって規定倍率に拡大された電子はレンズ(TL1)10006により収束され、ニューメリカルアパーチャ10008(NA)上にクロスオーバ(CO)を形成する。また、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009の組み合わせにより、倍率のズームを行うことが可能である。その後レンズ(PL)741で拡大投影し、検出器761におけるMCP(Micro Channel Plate)上に結像させる。本光学系ではTL1−TL2間にNAを配置し、これを最適化することで軸外収差低減が可能な光学系を構成している。
<検出器>
2次光学系で結像されるウエハからの光電子画像は、まずMCPで増幅されたのち、蛍光スクリーンに当たって光の像に変換される。MCPの原理としては直径6〜25μm、長さ0.24〜1.0mmという非常に細い導電性のガラスキャピラリを数百万本束ね、薄い板状に整形したもので、所定の電圧印加を行うことで、一本一本のキャピラリが、独立した電子増幅器として働き、全体として電子増幅器を形成する。
この検出器により光に変換された画像は、真空透過窓を介して大気中に置かれたFOP(Fiber Optical Plate)系でTDI(Time Delay integration)−CCD(Charge Coupled Device)上に1対1で投影される。また、他の方法としては蛍光材のコートされたFOPがTDIセンサ面に接続されて真空中にて電子/光変換された信号がTDIセンサに導入される場合がある。このほうが、大気中に置かれた場合よりも、透過率やMTF(Modulation Transfer Function)の効率がよい。例えば透過率及びMTFにおいて「×5」〜「×10」の高い値が得られる。このとき、検出器としては、上述したように、MCP+TDIを用いることがあるが、その代わりに、EB(Electron Bombardment)−TDI又は、EB−CCDを用いてもよい。EB−TDIを用いると、ウエハWの表面21から発生し、2次元像を形成している光電子が、直接EB−TDIセンサ面に入射するので、分解能の劣化がなく像信号の形成ができる。例えば、MCP+TDIであると、MCPで電子増幅した後、蛍光材やシンチレータ等により電子/光変換が行われ、その光像の情報がTDIセンサに届けられることになる。それに対して、EB−TDI、EB−CCDでは、電子/光変換、光増情報の伝達部品/損失がないので、像の劣化がなく、センサに信号が届く。例えば、MCP+TDIを用いたときは、EB−TDIやEB−CCDを用いたときと比べて、MTFやコントラストが1/2〜1/3になる。
なお、この実施形態において、対物レンズ系724は、10ないし50kVの高電圧が印加され、ウエハWは設置されているものとする。
<写像投影方式の主な機能の関係とその全体像の説明>
図24に本実施の形態の全体構成図を示す。但し、一部構成を省略図示している。図24において、検査装置は鏡筒71、光源筒7000及びチャンバ32を有している。光源筒7000内部には、光源10000が設けられており、光源10000から照射される光線(一次光線)の光軸上に1次光学系72が配置される。また、チャンバ32の内部には、ステージ装置50が設置され、ステージ装置50上にはウエハWが載置される。
鏡筒71の内部には、ウエハWから放出される二次ビームの光軸上に、カソードレンズ724(724−1及び724−2)、トランスファーレンズ10006及び10009、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008、レンズ741及び検出器761が配置される。なお、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。
検出器761の出力は、コントロールユニット780に入力され、コントロールユニット780の出力は、CPU781に入力される。CPU781の制御信号は、光源制御ユニット71a、鏡筒制御ユニット71b及びステージ駆動機構56に入力される。光源制御ユニット71aは、光源10000の電源制御を行い、鏡筒制御ユニット71bは、カソードレンズ724、レンズ10006及び10009、レンズ741のレンズ電圧制御と、アライナ(図示せず)の電圧制御(偏向量制御)を行う。
また、ステージ駆動機構56は、ステージの位置情報をCPU781に伝達する。さらに、光源筒7000、鏡筒71、チャンバ32は、真空排系(図示せず)と繋がっており、真空排気系のターボポンプにより排気されて、内部は真空状態を維持している。また、ターボポンプの下流側には、通常ドライポンプ又はロータリーポンプによる粗引き真空排気装置系が設置されている。
一次光線が試料に照射されると、ウエハWの光線照射面からは、二次ビームとして光電子が発生する。二次ビームは、カソードレンズ724、TLレンズ群10006と10009、レンズ(PL)741を通って検出器に導かれ結像する。
カソードレンズ724は、3枚の電極で構成されている。一番下の電極は、ウエハW側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に、指向性が小さい二次電子)を引き込み、効率よくレンズ内に導くように設計されている。そのため、カソードレンズ724は両テレセントリックとなっていると効果的である。カソードレンズ724によって結像した二次ビームは、ミラー10001の穴を通過する。
二次ビームを、カソードレンズ724が1段のみで結像させると、レンズ作用が強くなり収差が発生しやすい。そこで、2段のダブレッドレンズ系にして、1回の結像を行わせる。この場合、その中間結像位置は、レンズ(TL1)10006とカソードレンズ724の間である。また、このとき上述したように、両テレセントリックにすると収差低減に大変効果的である。二次ビームは、カソードレンズ724及びレンズ(TL1)10006により、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008上に収束してクロスオーバを形成する。カソードレンズ724とレンズ(TL1)10006との間で一回結像し、その後、レンズ(TL1)10006とレンズ(TL2)10009によって中間倍率が決まり、レンズ(PL)741で拡大されて検出器761に結像される。つまり、この例では合計3回結像する。
レンズ10006、10009、レンズ741はすべて、ユニポテンシャルレンズ又はアインツェルレンズとよばれる回転軸対称型のレンズである。各レンズは、3枚電極の構成で、通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧で、レンズ作用を行わせて制御する。また、このレンズ構造に限らず、レンズ724の1段目又は2段目、又は両方にフォーカス調整用電極を所持する構造、又はダイナミックに行うフォーカス調整用電極を備え、4極である場合や5極である場合がある。また、PLレンズ741についても、フィールドレンズ機能を付加して、軸外収差低減を行い、かつ、倍率拡大を行うために、4極又は5極とすることも有効である。
二次ビームは、2次光学系により拡大投影され、検出器761の検出面に結像する。検出器761は、電子を増幅するMCPと、電子を光に変換する蛍光板と、真空系と外部との中継及び光学像を伝達させるためのレンズやその他の光学素子と、撮像素子(CCD等)とから構成される。二次ビームは、MCP検出面で結像し、増幅され、蛍光板によって電子は光信号に変換され、撮像素子によって光電信号に変換される。
コントロールユニット780は、検出器761からウエハWの画像信号を読み出し、CPU781に伝達する。CPU781は、画像信号からテンプレートマッチング等によってパターンの欠陥検査を実施する。また、ステージ装置50は、ステージ駆動機構56により、XY方向に移動可能となっている。CPU781は、ステージ装置50の位置を読み取り、ステージ駆動機構56に駆動制御信号を出力し、ステージ装置50を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。
また、拡大倍率の変更は、レンズ10006及び10009のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野全面に均一な像が得られる。なお、本実施形態では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するために、2次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、単位ピクセルあたり放出される電子量を一定になるように1次光学系のレンズ条件を設定する。
<プレチャージユニット>
プレチャージユニット81は、図16に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板すなわちウエハに電子線を照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、光線の照射により生じる光電子の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射する光やレーザの波長やエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると光電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施形態では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に光やレーザを照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予め検出対象であるウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
<電子光学装置のバリエーション>
以下に、半導体検査装置1の電子光学装置70の種々の変形例を説明する。以下では、上述の電子光学装置70と異なる点を主に説明し、電子光学装置70と同様の構成については電子光学装置70と同じ符号を付して、適宜説明を省略する。
図25は、第1の変形例の電子光学装置70Aに用いる光学系の概略構成図である。電子光学装置70Aは、光源10000、カソードレンズ724(カソードレンズ724−1及び724−2)、静電レンズ10006、静電レンズ10009、ニューメリカルアパーチャ10008、レンズ741、及び検出系76を有している。光源10000には、DUVレーザ光源を用いているが、電子光学装置70と同様、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源10000からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いてもよい。
図25(a)に示すように、本変形例では、ウエハWの裏面側に光源10000を設ける。光源10000から発生したレーザ10000Aは、ステージ装置50上のウエハWの裏面に一次ビームとして照射される。レーザ10000Aが一次ビームとしてウエハWに照射されると、ウエハW上のパターンに従う二次元の二次電子画像が発生する。その光電子の二次元画像は、カソードレンズ724−1及びカソードレンズ724−2を通過し、静電レンズ10006で収束されて、ニューメリカルアパーチャ(NA)10008位置付近でクロスオーバを形成する。静電レンズ10006及び静電レンズ10009はズーム機能を有しており、これにより二次電子画像の倍率を制御できる。静電レンズ10009を通過した二次電子画像は、後段のレンズ741で拡大されて、検出系76に結像する。
図25(b)は、ウエハWの表面P1及びP2から光電子が放出されている様子を示している。ウエハWの表面のうち、P1で示す部分が光電子が発生しやすい材料であり、P2で示す部分が光電子が出にくい材料であるとき、裏面からのレーザ照射により部分P1は多くの光電子を発生するが、部分P2からは少量の光電子しか発生しない。したがって、部分P1と部分P2で構成されるパターン形状について、光電子によるパターンの大きなコントラストが得られる。
上述した図25に示す例は、サンプルであるウエハWの裏面からのレーザ又は光を照射する例であるが、表面にレーザ又は光の照射する例を図26〜図29を参照して説明する。用いるレーザや光は、DUVレーザ光源を用いているが、電子光学装置70と同様に、UV光、DUV光、EUV光、X線等、ランプ光源やレーザ光源等、光源からの光が照射された基板から光電子が出る光源であれば他の光源を用いてもよい。
図26、図27の電子光学装置70B、70Cは、それぞれ電子光学装置70と同様の装置及び照射系及び2次光学系を有している。また、図26、図27は、ウエハWの表面に凹凸があり、凹部と凸部から出る光電子の量が異なり、それによるコントラストが形成されて高分解能の撮像が可能となる例を示している。ウエハWの凹凸部の材質の差異、及び、一次ビーム照射の波長により、凹部からの光電子量が凸部よりも多かったり、また逆の場合があったりする。電子光学装置70B、70Cは、この様な光電子放出量の差異により高分解能を達成する。
また、図28、図29は、凹凸を有するウエハWの表面からの光電子量の差異による像形成は、図26、図27と同様であるが、1次ビームの照射系が異なる角度で照射される例を示している。図26、図27の例では、一次ビームは、ほぼウエハWの表面に対して垂直に近い角度で照射されるが、図28、図29の電子光学装置70D、70Eでは、一次ビームは、ウエハWの表面に対して斜めに照射される。この場合、一次ビームは、レーザとミラー、レンズを用いてウエハWの表面に導入されることもあるが、ファイバ等を用いて、ウエハWの表面に照射することも可能である。UV、DUV、EUV、X線などの短い波長の場合、通常の石英ファイバでは、レーザや光の伝達効率が悪いことがある。中空ファイバや中空管を用いること効率よく伝達可能である。
また、上述したように、一次ビームの照射角度については、特に表面にパターンのあるウエハにおいて角度の影響を受ける場合があるので、そのようなときに、照射する光やレーザの角度の最適化を行い、すなわち、パターンや欠陥のS/Nやコントラストが最も高い条件を選んで、照射する角度を選ぶことが可能である。
<電子光学装置のさらなる変形例>
図30は、メインチャンバ160内と、メインチャンバ160の上部に設置された電子光学装置70Fを示している。電子光学装置70Fの検査対象(試料)は、ウエハWである。ウエハWは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなるウエハWの表面上の異物の存在を検出する。異物は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。電子線検査装置は、SEM方式装置でもよく、写像投影式装置でもよい。この変形例では、電子光学装置70Fは、写像投影式検査装置である。
写像投影方式検査装置としての電子光学装置70Fは、電子ビームを生成する1次光学系72と、ウエハWを設置するステージ装置50と、ウエハWからの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系74と、それらの電子を検出する検出器761と、検出器761からの信号を処理する画像処理部763(画像処理系)と、位置合わせ用の光学顕微鏡871とを備える。検出器761は、本例では2次光学系74に含まれてよい。また、画像処理部763は本実施形態の画像処理部に含まれてよい。
1次光学系72は、電子ビームを生成し、ウエハWに向けて照射する構成である。1次光学系72は、電子銃721と、レンズ722、725と、アパーチャ723、724と、E×Bフィルタ726と、レンズ727、729、730と、アパーチャ728とを有する。電子銃721により電子ビームが生成される。レンズ722、725及びアパーチャ723、724は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ726にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ726に入射して、鉛直下方向に偏向され、ウエハWの方に向かう。レンズ727、729、730は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
1次光学系72は、電子ビームをウエハWへ照射する。1次光学系72は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、ウエハWの表面21上の異物と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物の上方の位置(検出器761により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。このLE1とLE2との差異は、望ましくは5〜20〔eV〕である。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
E×Bフィルタ726の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、ウエハWに対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ726の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、ウエハWに対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
このように、異物に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
ステージ装置50は、ウエハWを載置する手段であり、x−yの水平方向及びθ方向に移動可能である。また、ステージ装置50は、必要に応じてz方向に移動可能であってもよい。ステージ装置50の表面には、静電チャック等のウエハ固定機構が備えられていてもよい。
ステージ装置50上にはウエハWがあり、ウエハWの上に異物がある。1次光学系72は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕でウエハWの表面21に電子ビームを照射する。異物がチャージアップされ、1次光学系72の入射電子が異物に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系74により検出器761に導かれる。このとき、二次放出電子は、ウエハWの表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物で形成される。したがって、異物の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の二次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
例えば、異物のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
2次光学系74は、ウエハWから反射した電子を、検出器761に導く手段である。2次光学系74は、レンズ741、743と、NAアパーチャ742と、アライナ744と、検出器761とを有する。電子は、ウエハWから反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ728、レンズ727及びE×Bフィルタ726を再度通過する。そして、電子は2次光学系74に導かれる。2次光学系74においては、レンズ741、NAアパーチャ742、レンズ743を通過して電子が集められる。電子はアライナ744で整えられて、検出器761に検出される。
NAアパーチャ742は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ742が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
異物は、任意の種類の材料で構成されてよく、例えば半導体、絶縁物、金属等でよく、又はそれらが混在してもよい。異物表面には自然酸化膜等が形成されるので、異物は絶縁材料で覆われることになる。よって、異物の材料が金属であっても、酸化膜にてチャージアップが発生する。このチャージアップが本例に好適に利用される。
検出器761は、2次光学系74により導かれた電子を検出する手段である。検出器761は、その表面に複数のピクセルを有する。検出器761には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器761には、CCD(Charge Coupled Device)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
ここでは、検出器761にEB−TDIを適用した例について説明する。EB−TDIは、光電変換機構・光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物の検出が不安定であった。これに対して、EB−TDIを用いると、小さい異物の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。
また、EB−TDIの他に、EB−CCDが備えられてよい。EB−TDIとEB−CCDが交換可能であり、任意に切り替えられてよい。このような構成を用いることも有効である。
電子光学装置70Fについて、さらに説明する。ウエハWは、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ装置50に設置される。ステージ装置50と光学顕微鏡871により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いてウエハWの異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、ウエハWの表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、ウエハW上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系74においてフォーカス制御が行われる。ウエハWの2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度のよい安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
ここで、2次光学系74が、NAアパーチャ742、検出器761に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ742の位置にEB−CCDが設置できるように構成れている。このような構成は大変有利であり、効率的である。図30では、NAアパーチャ742とEB−CCD745が、開口747、748を有する一体の保持部材746に設置されている。そして、NAアパーチャ742の電流吸収とEB−CCD745の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系74が備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ742、EB−CCD745は、真空中で動作するX、Yステージ746に設置されている。したがって、NAアパーチャ742及びEB−CCD745についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ746には開口747、748が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ742又はEB−CCD745を通過可能である。
このような構成の2次光学系74の動作を説明する。まず、EB−CCD745が、2次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ741、743及びアライナ744の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ742の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ742の孔中心を配置するように、NAアパーチャ742の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ742の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ742の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャ742の高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
また、異物の検査では、異物からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ742の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、ウエハWの表面21から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ742の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、ウエハWの表面21での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ742に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ742の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ742の中心位置を配置することが、大変有利である。
このような適切な位置へのNAアパーチャ742の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ742が、電子コラム100の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ742を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ742の中心が設置される。
信号強度の計測には、EB−CCD745が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器761に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
あるいは、NAアパーチャ742の位置と検出器761の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、NAアパーチャ742と検出器761の間にあるレンズ743の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ742の位置のビームの像を、検出器761の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ742の位置におけるビームプロファイルを、検出器761を用いて観察することができる。
また、NAアパーチャ742のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10〜100〔%〕大きいサイズである。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物のコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
<電子像追従式の電子線検査装置>
(背景)
従来より、ステージの連続的な移動に伴う試料の移動と偏向手段による二次ビームの軌道の偏向とを同期させて制御することで、二次元CCDセンサ上で二次ビームの像を停止させ、その同期期間中に試料の同じ検出領域の像を二次元CCDセンサの同じ個所に投影させるようにした電子像追従式の電子光学装置を用いた電子線検査装置が知られている。
(課題)
しかしながら、二次ビームを偏向する際に二次元CCDセンサ上に投影される像の端の方で歪みが生じ、また、試料を載置したステージが振動すると、同期期間中に二次元CCDセンサ上に投影される像がずれてしまうという問題がある。
そこで、本実施の形態では、精度の高い電子像追従式の検査装置を提供することを目的とする。
(解決手段)
本実施の形態の検査装置は、試料を載置して連続的に移動するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、前記ステージの振動を検出する振動検出手段とを備える。前記2次光学系は、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、多極子によって重畳電界を発生させることで前記二次ビームを偏向する偏向器を含む。前記検査装置は、さらに、前記ステージの移動及び前記振動検出手段の検出値に基づいて、前記二次ビームの像の歪を軽減ないし解消し、前記ステージの振動による前記二次ビームの像のずれを軽減ないし解消するように、前記偏向器の前記多極子を制御して重畳電界を調整する偏向器制御部を備えている。
この構成によれば、偏向器によって、二次ビームの像の歪みや、ステージの振動による二次ビームの像のずれが軽減ないし解消するので、より精度の高い電子像追従型の検査装置を提供できる。
前記2次光学系は、前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に、電圧が印加される第3の高圧基準管及び第4の高圧基準管を備え、前記第3の高圧基準管と前記第4の高圧基準管とは、前記試料と前記偏向器との間で分離しており、前記第4の高圧基準管に印加される第4の電圧は、前記第3の高圧基準管に印加される第3の電圧より低く、前記第3の高圧基準管と前記第4の高圧基準管との間に、前記第3の電圧より低く前記第4の電圧より高い中間電圧が印加される中間電極が設けられてよい。
二次ビームの電子エネルギーが高すぎると、偏向器において二次ビームを偏向するために高い偏向電圧が必要となり、そうすると、二次ビームの高速偏向が困難になる。よって、二次ビームの電子エネルギーは、偏向器の手前で小さくしておくことが望ましい。このため、第3の高圧基準管よりも印加電圧が低い第4の高圧基準管を設けるが、第3の高圧基準管と第4の高圧基準管との間の電圧変化によって生じる二次ビームに湾曲収差が生じ、二次ビームの像に歪が生じることになる。そこで、上記の構成のように、中間電極を設けてそこの中間電圧を印加することで、そのような湾曲収差を低減ないし解消することができる。
前記検査装置は、さらに、前記第4の高圧基準管に印加する前記第4の電圧を調整する電圧調整部を備えていてよい。
この構成によって、二次元センサに入射する二次ビームのエネルギーを調整して、二次元センサにおけるゲインを調整でき、すなわち2次元ビームの像の輝度調整が可能となる。
前記1次光学系は、前記一次ビームの経路に沿って、該経路の外周に第1の電圧が印加される第1の高圧基準管を備えていてよく、前記2次光学系は、さらに、前記第1光学系から照射された前記一次ビームを前記試料に向けて偏向するビーム分離器と、前記ビーム分離器と前記試料との間の前記一次ビーム及び前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に設けられた、第2の電圧が印加される第2の高圧基準管とを備えていてよく、前記第1の電圧と、前記第2の電圧と、前記第3の電圧とは互いに等しく、前記第4の電圧と前記検出器の検出電圧である第5の電圧とは互いに等しくてよい。
前記1次光学系は、前記一次ビームの経路に沿って、該経路の外周に第1の電圧が印加される第1の高圧基準管を備えていてよく、前記2次光学系は、さらに、前記第1光学系から照射された前記一次ビームを前記試料に向けて偏向するビーム分離器と、前記ビーム分離器と前記試料との間の前記一次ビーム及び前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に設けられた、第2の電圧が印加される第2の高圧基準管とを備えていてよく、前記第2の電圧と前記第3の電圧とは互いに等しく、前記第1の電圧は前記第2の電圧より小さく、前記第4の電圧と前記検出器の検出電圧である第5の電圧とは互いに等しくてよい。
第1の高圧基準管内にアパーチャを設けて、そのアパーチャによってエミッションの例えば50%以上を吸収する場合には、リーク電流量が比較的大きくなり、またその変動も比較的大きくなり、それによる放電等の影響が出てしまうが、この構成により、1次光学系の高圧基準管に印加する第1の電圧を低くするので、1次光学系における放電リスクを低減できる。
前記第1の電圧と、前記ビーム分離器に印加する偏向電圧とが互いに等しくてよい。
この構成により、ビーム分離器から試料に入射する一次ビームのレンズ作用や収差の増大を抑えることができる。また、第1の高圧基準管とビーム分離器とに同一の電源を用いることができる。
前記試料における前記一次ビームの照射領域は固定されており、前記偏向器によって前記二次ビームを偏向することで、前記二次元センサに前記二次ビームの像が形成される前記試料の領域である視野領域が前記照射領域内で往復移動してよい。
この構成によって、二次ビームの視野領域よりも十分に広い一次ビームの照射領域が確保されて、その中を視野領域が往復移動することができる。
前記ビーム分離器は、前記偏向器による前記二次ビームの偏向方向の変更に同期して前記一次ビームの偏向方向を変更することで、前記二次元センサに前記二次ビームの像が形成される前記試料の領域である視野領域が往復移動されるのに同期して、前記視野領域をカバーするように前記試料における前記一次ビームの照射領域を往復移動してよい。
この構成によって、視野領域の往復移動に追従するように照射領域も往復移動するので、一次ビームの照射領域は視野領域をカバーするだけの大きさがあればよい。
本実施の形態の検査方法は、試料をステージに載置して連続的に移動させ、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射し、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームを二次元センサに導いて二次ビーム像を生成する検査方法であって、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、多極子によって重畳電界を発生させることで前記二次ビームを偏向し、前記ステージの振動を検出し、前記ステージの移動及び振動の検出値に基づいて、前記二次ビームの像の歪を軽減ないし解消し、前記ステージの振動による前記二次ビームの像のずれを軽減ないし解消するように、前記多極子を制御して重畳電界を調整する。
この構成によっても、二次ビームの偏向によって、二次ビームの像の歪みや、ステージの振動による二次ビームの像のずれが軽減ないし解消するので、より精度の高い電子像追従型の検査方法を提供できる。
(実施の形態)
図31は、電子像追従式の電子線検査装置の構成を示す図である。本実施の形態の電子線制御装置は、上記の実施の形態の電子線検査装置と基本的構成は同じであり、図31において上記の実施の形態の電子線検査装置と同様の構成については、同じ符号を用いて、適宜説明を省略する。以下では、上記の実施の形態の電子線検査装置において、上記の実施の形態の電子線検査装置とは異なる部分を主に説明する。
電子線検査装置は、主ハウジング30と、主ハウジング30の上に設けられた光学電子装置70Gと、主ハウジング30の内部に設けられたステージ装置50と、制御装置2と、検出器761と、画像処理部763とを備えている。光学電子装置70Gは、2次光学系74と、2次光学系74の下方に斜め方向に連結する1次光学系72とを備えている。
1次光学系72には、レーザ光源7211と、電光面カソード7212と、レンズ722とを備え、これらによって生成される一次ビームの経路に沿って、その経路を囲うように設けられた第1の高圧基準管701を備えている。なお、1次光学系72において、エミッション電流は10μA〜10mAとすることができ、透過率は20〜50%とすることができ、スポットサイズはφ1〜φ100μmとすることができ、照射領域のサイズ(照野サイズ)はφ10〜φ1000μmとすることができ、光学系倍率は1/1〜1/10とすることができる。
2次光学系74における二次ビームの経路の途中には、高速偏向器749が設けられる。具体的には、高速偏向器749は、NAアパーチャ742よりも検出器761側に設けられる。この高速偏向器749は、多極子(本実施の形態では、12極)から構成され、8極子場及び6極子場を生成し、二次ビームを任意の方向に偏向する。この偏向方向(偏向量)は、偏向制御装置90として機能する制御装置2によって制御される。高速偏向器749の構成についてはさらに後述する。なお、高速偏向器749に用いる多極子は、8極、4極等の多極子であってもよい。また、多極子は、6極子場のみを生成するものであっても、8極子場のみを生成するものであってもよい。
なお、2次光学系74において、倍率は10〜10000倍とすることができ、二次元センサ7611の1画素で捉える試料のサイズを3〜100nm(3〜100nmPx)とすることができ、NAアパーチャ742の透過率を10〜50%とすることができ、欠陥感度を1〜50nmとすることができる。
検出器761は、二次元センサ7611としてEB−CMOSセンサを備えている。EB−CMOSセンサは、電子ビーム(二次ビーム)をそれに直接入射させることができる。二次元センサ7611には、二次元方向に複数の画素が配列されている。なお、二次元センサとして、EB−CCDセンサが用いられてもよく、EB−TDIセンサが用いられてもよい。なお、二次元センサ7611の画素数は、2k×2k〜10k×10kとすることができる。また、二次元センサ7611のデータレートは、10GPPS以下とすることができる。さらに、二次元センサ7611の画素サイズは1〜15μmとすることができる。
画像処理部763は、検出器761で得られた二次ビーム像に対して、ノイズリダクション処理、積算処理、サブピクセルアライメント等の画像処理を行う。この画像処理部763の処理速度は、10GPPS以下とすることができる。
制御装置2は、上述のように高速偏向器749の偏向方向を制御する変更制御装置として機能するとともに、電子光学装置70Gのその他の動作を制御する電子光学制御装置、ステージ装置50を制御するステージ制御装置、ウエハWを搬送するための構成を制御する搬送制御装置、二次元センサ7611の撮像を制御する撮像制御装置等としても機能する。特に、本実施の形態では、検査中にステージ装置50によってウエハWが一定速度で移動するが、制御装置2は、ステージ装置50を制御して、このウエハWの移動制御を行う。
図32(a)は、二次ビームがウエハWの移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器749の動作を説明する図である。図32(a)に示すように、ウエハWが右方向に連続的に移動している場合において、高速偏向器749は、ウエハW上の位置A1からの二次ビームが二次元センサ7611に二次ビーム像を結像するように二次ビームを偏向し、このウエハWが右方向に移動していく間、その移動に伴って、位置A1にあったウエハWの部分の二次ビーム像が常に二次元センサ7611に結像するように、二次ビームの偏向方向を変更する。即ち、高速偏向器749は、二次元センサ7611に二次ビーム像が結像される空間上の絶対位置を、ウエハWの移動に追従して移動させる。なお、高速偏向器749の偏向周期は100kHz〜100MHzとすることができる。
このような二次ビームの偏向方向の変更(追従)によって、位置A1にあったウエハWの部分が移動によって位置A2の位置に到達するまでの間、二次元センサ7611には、常に、最初に位置A1にあったウエハWの部分からの二次ビームが入射することになり、この期間(一周期)は、二次元センサ7611はウエハWの同じ領域について、二次ビーム像を撮影することになる。位置A1にあったウエハWの部分が位置A2に達すると、高速偏向器749は、視野領域を再び位置A1に戻す。これによって、ウエハWの新たな部分の二次ビーム像を撮影することができる。二次元センサ7611の視野領域が位置A2から位置A1に戻った後は、同様にして、高速偏向器749によって二次ビームの偏向方向が変更されることによって、ウエハWの移動に追従して、二次元センサ7611の視野領域が位置A1から位置A2に向けて移動する。
上記のように二次元センサ7611の視野領域は、位置A1と位置A2との間を往復するが、視野領域には常に一次ビームが照射されていなければならない。これを実現するためには、図32(b)に示すように、一次ビームの照射領域EFが、位置A1における視野領域VF1と位置A2における視野領域VF2とをすべてカバーするように一次ビームをウエハWに照射すればよく、すなわち、照射領域EFが視野領域2個分の大きさを有していればよい。この場合には、一次ビームの照射領域EFは常にこの位置に固定しておくことができる。
また、図32(c)に示すように、一次ビームの照射領域をウエハW及び視野領域の移動に追従させて、位置A1における照射領域EF1から位置A2における照射領域EF2まで移動させてもよい。このときの1次ビームの照射領域の変更は、E×Bフィルタ726によって一次ビームの偏向方向を変更することによって行うことができる。
2次光学系74には、試料であるウエハWに近い方から順に第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、及び第4の高圧基準管704が、それぞれ二次ビームの経路に沿って、この経路を囲うように設けられている。第2の高圧基準管702は、ウエハWとビーム分離器としてのE×Bフィルタ726との間に設けられ、第3の高圧基準管703は、E×Bフィルタ726よりも二次元センサ7611側に設けられ、第4の高圧基準管704は、第3の高圧基準管703と検出器761との間に設けられる。NAアパーチャ742は第3の高圧基準管703の内部に設けられ、高速偏向器749は第4の高圧基準管704の内部に設けられる。
第1の高圧基準管701、第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、第4の高圧基準管704には、それぞれ第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4が印加される。実施の形態では、検出器761における検出電圧をV5とすると、これらの電圧は、V1=V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係にある。すなわち、高速偏向器749で二次ビームを高速に偏向するために、第4の高圧基準管704に印加する電圧V4を第3の電圧V3より小さくして、二次ビームの電子エネルギーを小さくしている。ここで、第3の電圧V3は、例えば40kVであり、第4の電圧V4は、例えば5kVである。
上述のように高速偏向器749で二次ビームを偏向するが、そのときの二次ビームの電子エネルギーが例えば10kVより大きいと、高速偏向器749における偏向電圧を高くする必要があり、二次ビームの高速な偏向が困難でとなる。そこで、第4の高圧基準管704を第3の高圧基準管とは切り離して設けて、第4の高圧基準管704に印加する電圧を例えば5kV程度にまで落として、高速偏向器749に入射する二次ビームの電子エネルギーを小さくする必要がある。一方で、このような第3の電圧から第4の電圧への急激な変化によって、二次ビームに湾曲収差が生じ、検出器761に形成される二次ビームの像(二次ビーム像)に歪が生じてしまう。
図33は、高速偏向器749による偏向によって二次ビーム像に生じる偏向歪を説明する図である。図33において、実線は理想的な二次ビーム像であり、破線はひずんでしまった二次ビーム像を示している。図33に示すように、高速偏向器749によって変更可能な視野領域の中央から離れるほど、歪みが大きくなる。その結果、本来二次ビーム像においてp1の位置に得られるべきウエハWの部分の像がp1´の位置に得られてしまっている。
そこで、本実施の形態では、第3の高圧基準管703と第4の高圧基準管704との間に、中間電極(緩和電極)750を設けて、この中間電極に、第3の電圧V3より大きく、第4の電圧V4より小さい中間電圧を印加する。これによって、上述の湾曲収差の発生を抑えることができ、よって二次ビーム像の歪を抑えることができる。
図34は、中間電極の構成を示す図である。中間電極750は、例えば40kVの第3の電圧を印加される第3の高圧基準管703と、例えば5kVの第4の電圧を印加される第4の高圧基準管704との間に、第3の高圧基準管703及び第4の高圧基準管704に接することなく配置され、例えば10kV〜13kVの中間電圧を印加される。
図35は、高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図であり、図36は、高速偏向器を二次ビームの進行方向(電子光学装置70Gのコラムの軸線方向)から見た図である。高速偏向器749は、二次ビームの偏向を高精度で行うため、上述のように12極子構造を用いている。図36に示すように、12極は、等角度間隔で配置されており、制御装置2によって個別に電圧を印加することが可能である。第4の高圧基準管によって第4の電圧V4に重畳された高速偏向用の電源及びアンプを用いることで、高速偏向器749の電圧精度を向上させている。
結像レンズ741には、2重の地場レンズ方式を採用している。上側コイル7411と下側コイル7412の磁束方向を逆にすることで、二次ビーム像を回転させることができる。また、この地場レンズ用コイル7411、7412は、2配線方式であり、これによって一定電力で温度を安定化させることができる。第3の高圧基準管703による第3の電圧V3から第4の高圧基準管704による第4の電圧V4に電子エネルギーが変化した状態で結像を行うため、電位が変化した付近に結像レンズ741を配置し、その前段に電界変化によるレンズ効果の影響を緩和するための中間電極(電界緩和用電極)750を配置する。これにより、急激な電位変化による二次ビーム像の歪を抑えることができる。
二次ビーム像は、結像レンズ741による拡大結像を行う検出器761に近づくと、像が大きくなる。よって、二次ビーム像が小さい状態の結像レンズ741に近い位置で高速偏向を行うため、結像レンズ付近に高速偏向器749を設置する。即ち、二次ビーム像が大きくなると、二次ビームを偏向するのに要する偏向電圧が大きくなり、偏向感度が低下するため、高速偏向が困難になり、上述の歪補正精度が低下し、後述の振動補正精度も低下してしまう。よって、中間電極750、結像レンズ741、高速偏向器749は、二次ビームの進行方向にこの順でなるべく近く配置されることが望ましく、これらが一体となったユニットとして構成されるのが望ましい。
高速偏向器749は、ウエハWの移動に追従するための偏向だけでなく、上述のような二次ビーム像の歪補正や、後述の振動補正も行うが、これらの機能は制御装置2によって12極に個別に電圧を印加することで実現される。
図31に戻って、振動補正について説明する。上述のように、ウエハWはステージ装置50によって連続的に一定速度で移動し、高速偏向器749は、このウエハWの移動に追従して視野領域が移動するように二次ビームの偏向方向を変更するが、このとき、ステージ装置50によるウエハWの移動に、意図しない振動が与えられることがある。上述のように、視野領域の移動の一周期の間には、二次元センサ7611は常にウエハWの同一の部分の二次ビーム像を撮像しているが、ウエハWに意図しない振動が加わると、二次元センサ7611の各画素に、ウエハWの他の部分からの二次ビームが入射するというコンタミネーションが生じる。
上述のように、ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、複数のテーブルを動作させることにより、ホルダ55に保持されたウエハWをX方向、Y方向及びZ方向(図16において上下方向)に、更にウエハの支持面に垂直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めする。このための構成として、ホルダ55にはミラー571が固定され、主ハウジング30の内壁にはミラー571にレーザビームを照射して、ミラー571から反射して戻ってきたレーザが入射されるレーザ干渉計572が設けられる。
本実施の形態の電子線検査装置では、このホルダ55に固定されたミラー571とレーザ干渉計572を振動検出手段として用いて、振動補正を行う。レーザ干渉計572にて検出されたウエハWの意図しない振動は、制御装置2に入力される。制御装置2には、ウエハWが意図しない振動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されているが、制御装置2は、本来のウエハWの移動だけでなく、レーザ干渉計572にて検出されたウエハWの意図しない振動も考慮して、高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御する。なお、制御装置2に、ウエハWが意図しない振動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されていなくてもよく、この場合には、制御装置2は、レーザ干渉計572にて検出された、ウエハWの意図しない振動も含むウエハW(を保持したホルダ55)の位置を検出して、この位置に基づいて高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御してもよい。
以上のように、本実施の形態の電子光学装置70Gを含む電子線検査装置では、ウエハWが移動している間に、ウエハWの移動に同期して、ウエハWの同じ部分の二次ビームが二次元センサ7611の同じ部分に入射するように、二次ビームを偏向する高速偏向器749が、二次ビーム像の歪を補正する歪み補正器、及びウエハWの意図しない振動によるコンタミネーションを補正する振動補正器としても機能するので、二次元センサ7611では精度の高い二次ビーム像が得られる。
なお、第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4、検出電圧V5は、上記の例に限られず、例えば、V1<V2、V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係であってもよく、すなわち、第1の電圧V1を第2の電圧V2及び第3の電圧V3より小さくしてもよい。1次光学系72における第1の高圧基準管701に印加する電圧V1を小さくすると、第1の高圧基準管701における放電リスクを低減できる。即ち、1次光学系は、第1の高圧基準管701内にアパーチャ723があり、このアパーチャ723において電子銃721からのエミッションの50%以上を吸収するので、リーク電流量は大きく、また、リーク電流量の変動も大きい。これに対して、第1の高圧基準管701に印加する第1の電圧V1を小さくすることで、放電のリスクを低減ないし解消できる。
また、上記の電子線検査装置において、第4の高圧基準管704に印加する第4の電圧V4を調整する電圧制御装置を設け、第4の電圧V4を可変としてもよい。このとき、第4の電圧V4は、例えば、±1kVの範囲で調整可能としてよい。このように第4の電圧V4を調整することで、検出器761への入射する二次ビームの電子エネルギー(入射エネルギー)を調整できることになる。これによって、二次元センサ7611のゲイン(すなわち、二次ビーム像の輝度)を調整できる。
<電子像追従式の電子線検査装置における撮像関連信号生成ユニット>
(背景)
上述のように、試料が移動している間に、試料の移動に同期して、試料の同じ部分の二次ビームが二次元センサの同じ部分に入射するように二次ビームを偏向する電子像追従式の電子線検査装置において、試料の移動に追従して視野領域を移動させながら二次元センサにおいて試料上のある領域の撮影が終了すると、偏向器は二次元センサの視野領域を追従によって移動した分だけ戻して、試料の新たな領域の撮影を開始する。
(課題)
偏向器が二次ビームを偏向することで試料の移動に追従して視野領域を移動させる場合において、偏向器による二次ビームの偏向量が大きいところでは、二次元センサに投影される二次ビーム像の歪が大きくなり、また、視野領域の移動速度が安定しない等の理由により精度が低下するという問題がある。
本実施の形態は、電子像追従式の検査装置において、検査の精度を高めることを目的とする。
(解決手段)
本実施の形態の検査装置は、試料を載置して連続的に移動するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系とを備える。前記2次光学系は、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向する偏向器を含む。前記偏向器は、前記二次ビームの偏向量に応じて、前記二次ビームの像の歪を補正するように前記二次ビームを偏向する。
この構成により、偏向器による二次ビームの偏向量に応じて二次ビーム像の歪が補正されるので、二次ビームの歪を適切に補正できる。
前記偏向器は、前記二次ビームの偏向量が大きいほど前記歪の補正量を大きくしてよい。
この構成により、偏向量が大きいほど大きくなる歪を適切に補正できる。
前記二次元センサは、前記偏向器が、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように前記二次ビームを偏向する撮像期間の初期に、フロントポーチ期間を置いた後に、前記二次ビームの像の生成を開始してよい。
撮像期間の初期は偏向器による二次ビームの偏向量が大きく、また、偏向器による視野領域の移動の速度が安定していないので、この構成により、そのような期間(フロントポーチ期間)に二次ビームの像を生成しないようにすることで、二次ビームの像の精度を向上できる。
前記二次センサは、前記偏向器が、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように前記二次ビームを偏向する撮像期間の終期に、バックポーチ期間を確保して、前記二次ビームの像の生成を終了してよい。
撮像期間の初期は偏向器による二次ビームの偏向量が大きいので、この構成により、そのような期間(バックポーチ期間)に二次ビームの像を生成しないようにすることで、二次ビームの像の精度を向上できる。
本実施の形態の検査方法は、試料をステージに載置して連続的に移動させ、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射し、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームを二次元センサに導いて二次ビーム像を生成する検査方法であって、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向し、前記二次ビームの偏向では、前記二次ビームの偏向量に応じて、前記二次ビームの像の歪を補正するように前記二次ビームを偏向する。
この構成によっても、二次ビームの偏向量に応じて二次ビーム像の歪が補正されるので、二次ビームの歪を適切に補正できる。
(実施の形態)
図37は、ステージ位置と各種信号のタイミングチャートを示している。上述のように、本実施の形態の電子線検査装置では、試料が移動している間に、試料の移動に同期して、高速偏向器749が、試料の同じ部分の二次ビームが二次元センサの同じ部分に入射するように二次ビームを偏向する。以下、この偏向を「EO補正」という。EO補正では、試料のある領域の撮影が終わった後に、次の領域の撮影を行うべく、高速偏向器749は、二次元センサ7611の視野領域をもとの位置に戻す。
高速偏向器749が二次元センサの視野領域をもとの位置に戻している間(帰線期間)は、撮影は行わないブランキング期間となる。従って、このブランキング期間となる帰線期間を短くすることが望ましい。一方で、帰線期間を短くするためにあまりに高速に視野領域をもとに戻すと、オーバーシュートが発生して、目標とするもとの位置に戻すのにかえって時間がかかってしまう。そこで、本実施の形態では、一定の帰線期間を確保して、二次元センサの視野領域をもとの位置に戻す。即ち、図37に示すように、試料の検査の際には、視野領域が試料の移動に追従して移動する撮像期間Taと、撮影領域をもとに戻す帰線期間Tbとが交互に繰り返される。
図37に示すように、ステージの位置を示すステージ目標座標2201が一定速度で増加するときに、撮像期間Taでは、試料上の視野領域の位置の目標値を示す視野領域目標座標2202は一定であり、帰線期間Tbでは視野領域目標座標が試料上の次の領域に移動する。試料の検査はスタート信号2203によって開始される。EO補正値2204は、撮像期間Taでは一定のレートで減少し、帰線期間Tbの間に、撮像期間Taの開始時の値まで上昇する。これによって、視野領域は撮像期間Taでは一定速度で試料に追従して移動し、その後、帰線期間Tbの間にもとの位置まで戻ることになる。
図38A〜図38Mは、ステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。ステージ位置と視野領域の関係は、図38Aから順に、図38B、図38C、・・・と移行する。図38A〜図38Mの例では、図32(b)に示すように、一次ビームの照射領域が固定されている。試料であるウエハWの照射領域にて生じて二次元センサ7611に向かう二次ビーム2302は、高速偏向器749にて偏向されて二次センサ7611まで到達する。図38Aの状態では、高速偏向器749は、ウエハWの領域Y2からの二次ビームが視野領域2301の二次ビーム像2303として、ちょうど二次元センサ761に入射するように、二次ビーム2302を偏向している。二次元センサ7611に投影される二次ビーム像231は、ウエハWの領域Y2の像である。
図38Aは、領域Y2の撮像を開始するタイミングを示しており、図37における撮像期間Ta(Y2)の開始時点の状態を示している。図38Aでは、このときの領域Y2の上流側端をスタート地点Sと表示している。ウエハWが右向きに移動して、領域Y2の上流端が終了地点Eに達するまで、視野領域2301はウエハWの移動とともに右向きに移動する。なおスタート地点Sから終了地点Eまでの距離は、視野領域のウエハWの移動方向の長さより短い。
図38A〜図38Mにおいて、画像データ7612は、二次元センサ7611からの転送されるデータを示し、例えば、図38Aには、すでに撮像を終えた領域Y1の画像データ7612(Y1)が示されている。画像データ7612は、図38A〜図38Mにおいて右方向に転送され、二次元センサ7611と垂直方向に重複する部分がなくなったときに、二次元センサ7611からの転送が完了したことを示している。また、図38A〜図38Mにおいて、二次元センサ7611は色が薄いほど多くの量の二次ビームの入射を受けて電荷が蓄積されていることを示している。
図38Aの状態からウエハWが右側に移動すると図38Bの状態となる。図38Bに示すように、視野領域はウエハWが移動した分だけ移動して、二次元センサ7611には、依然として領域Y1の二次ビーム像2303が投影されている。高速偏向器749による二次ビーム2302の偏向量(図37のEO補正値2204)は、図38Aに比べて小さくなっている。図38Cの状態になると、高速偏向器749による二次ビーム2302の偏向量はゼロとなり、図38Dの状態になると高速偏向器749は、二次ビーム2302を逆方向に変更させる。
このようにして領域Y2の右端が終了地点Eに到達する図38Eの状態になると、このときにはすでに領域Y1の画像データ7612(Y1)は、二次元センサ7611からの転送が完了しており、二次元センサ7611はこれまでに得られた領域Y2の画像データ7612(Y2)の転送を開始する。一方、視野領域2301は、右端がスタート地点Sに位置するもとの位置まで戻り始める。なお、図38A〜図38Eは、図37における撮像期間Ta(Y2)に対応する。
図38Fは、視野領域2301がもとの位置に戻っている帰線期間の状態を示している。この帰線期間には二次元センサ7611は撮像(露光)を行わないが、二次元センサ7611には、領域Y2と領域Y3の境界、及び領域Y2の一部と領域Y3の一部の二次ビーム像が投影されることになる。図38Gに示すように視野領域の右端がスタート地点Sまで戻ると、二次元センサ7611には領域Y2の隣の領域Y3の二次ビーム像が投影され、二次センサ7611は撮像を開始する。図38F〜図38Gは、図37の帰線期間Tb(Y2)に対応している。
図38Gの状態は、図38Aの状態と対応している。以下、二次元センサ7611は、図38A〜図38Fと同様にして、図38F〜図38Kのように領域Y3の二次ビーム像2303を撮像する。この場合にも、領域Y3の撮像を開始する(領域Y3の右端がスタート地点Sにある)図38Gの状態から領域Y3の撮像を終了する(領域Y3の右端が終了地点Eに達した)図38Kの状態まで、視野領域2301はウエハWとともに移動し、その結果、二次元センサ7611にはこの間常に領域Y3の二次ビーム像2303が投影される。図38G〜図38Kは、図37の撮像期間Ta(Y3)に対応している。
図38Kの状態、すなわち、領域Y3の撮像が終了した後には、図38E〜図38Gと同様にして、図38K〜図38Mのように視野領域2301がもとの位置に戻る。図38K〜図38Mは、図37における帰線期間Tb(Y3)に対応している。
図39A〜図39Iは、ステージ位置と視野領域との関係を模式的に示す図である。図39A〜図39Iは、ステージ位置と視野領域との関係を図38A〜図38Mと同様に時系列に示しているが、図39A〜図39Iでは、ステージ位置と視野領域との関係をウエハWに垂直な面から見た様子を示している。図39A〜図39Iにおいて、2次光学系74の鏡筒2401及び検出器761の鏡筒2403の位置は固定されており、2次光学系74の鏡筒2401に対してウエハWが+Y方向(図41A〜図41Iの上方向)に移動している。一次ビームの照射領域2402は、鏡筒241に対して固定されており、二次元センサ7611は、鏡筒2403に対して固定されている。
図39Aの状態では、領域Y1からの二次ビームが視野領域2301の二次ビーム2303として二次元センサ7611に入射するように二次ビーム2302が高速偏向器749で偏向されている。図39Aでは、照射領域2402の下半部分に領域Y1が位置しているが、高速偏向器749で偏向された結果、この領域Y1からの二次ビームが二次元センサ7611に入射している。なお、このとき、二次ビーム2302は、高速偏向器749での変更によって鏡筒2403の上側の部分に投影されている。
図39Bに示すように、ウエハWが上側に移動して領域Y1が照射領域2402の中央にくると、高速偏向器749は二次ビーム2302を偏向せず、二次ビーム2302はそのまま検出器761に到達する。このとき、領域Y1の二次ビーム像2303は、二次元センサ7611に投影される。図39Cに示すようにウエハWがさらに上側に移動して、領域Y1が照射領域2402の上側の部分になると、高速偏向器749は、この部分の二次ビーム像2303を二次元センサ7611に投影すべく、二次ビーム2302を偏向する。図39A〜図39Cは、図37の撮像期間Ta(Y1)に対応している。
このようにして領域Y1を追従した撮像が終了すると、高速偏向器749は、図39Dに示すように、領域Y1の隣の領域Y2からの二次ビーム像が二次元センサ7611に投影されるように、二次ビーム2302を偏向する。そして、図39Dの状態から、ウエハWの上方への移動に伴って上方に移動する領域Y2からの二次ビーム像2303が二次元センサ7611に入射するように、二次ビーム2302を偏向する。なお、図39C〜図39Dは、図37の帰線期間Tb(Y1)に対応している。
以下、高速偏向器749は、図39A〜図39Cと同様にして、図39D〜図39Fに示すように、常に領域Y2からの二次ビーム像2303が二次元センサ761に投影されるように、二次ビーム2302を偏向することで、視野領域2301を領域Y2に追従して移動させる。この図39D〜図39Fは、図37の撮像期間Ta(Y2)に対応している。
その後、高速偏向器749は、図39Gに示すように、視野領域2301を領域Y3に移動させて、図39G〜図39Iに示すように、領域Y3からの二次ビーム像2303を二次元センサ7611に投影する。図39F〜図39Gは、図37の帰線期間Tb(Y2)に対応し、図39G〜図39Iは、図37の撮像期間Ta(Y3)に対応する。
図37に戻って露光期間について説明する。本実施の形態では、上述の撮像期間Taの間すべて露光するのではなく、撮像期間Taの初期にフロントポーチ期間Tcをおいた後に、露光トリガ2206によって露光信号2205をオンにして、露光を開始し、撮像期間Taの終期にバックポーチ期間Tdを確保して、フロントポーチ期間Tcの終了からバックポーチ期間Tdの開始までの間を露光期間Teとする。
図37では、撮像期間Taが終了すると直ちにEO補正値2204を増加させ、撮像期間Taになると直ちにEO補正2204を減少させるように示されているが、実際には、撮像期間Taの初期には、高速偏向器749による視野領域の変更の速度を一定にするのに多少の時間がかかる。また、図38A〜図38M及び図39A〜図39Iからも明らかなように、撮像期間Taの初期と終期には、高速偏向器749による偏向量が大きく、このような場合には、二次ビーム像2303に生じる歪(図33参照)も大きくなる。
よって、速度が安定せず、かつ二次ビーム像の歪も大きい撮像期間Taの初期、及び二次ビーム像の歪が大きい撮像期間Taの終期には、露光、すなわち二次元センサ7611による撮像は行わないようにする。露光期間Teが終了して露光信号2205が立ち下がると同時に、画像転送トリガ2207が立ち上がって、それまで二次元センサ7611に蓄積された二次ビーム像2303の画像転送が開始される。
ブランキング信号2208は、視野領域2301がウエハWを追従するのとは逆方向に戻る帰線期間Tbにオンになり、フロントポーチ期間Tc及びバックポーチ期間Tdを含む撮像期間Taにオフになる。
ウエハWの1ラインのすべての領域(図37の例では領域Y1〜Y4)の撮像が終了すると、最後の帰線期間Tb(Y4)よりもさらに画像転送完了待ち時間Tfが経過した後に、スタート信号2203を立ち下げて検出器761の処理を終了する。高速偏向器749は、最後の帰線期間Tb(Y4)よりもさらに補正終了オフセット期間Tgが経過した後に、EO補正値2204を0に戻して処理を終了する。
上述のように、本実施の形態では、撮像期間Taの初期と終期では高速偏向器749による二次ビームの偏向量が大きく、そのため二次ビーム像に生じる歪(図33参照)も大きくなるため、撮像期間Taの初期と終期を除く期間を露光期間Teとしているが、この露光期間Teのなかでも、高速偏向器749による二次ビームの偏向量が大きいほど二次ビーム像の歪が大きくなることには変わりない。
そこで、偏向制御装置としての制御装置2は、単純にステージの位置に応じてEO補正を行うのではなく、偏向量に応じて二次イメージの歪が大きくなることを考慮して、EO補正値に歪補正値を重畳して、偏向を行うための制御信号を高速偏向器749に出力する。このときの歪補正値は、EO補正値が大きいほど、すなわち高速偏向器749による二次ビームの偏向量が大きいほど、EO補正値に対する補正量が大きくなるように設定される。歪補正値は、露光期間Teの開始から時間の経過に伴って小さくなり、高速偏向器749の偏向量が0となるタイミングで0となり、その後、露光期間Teが終了するまで上昇する。
このように、歪補正値はEO補正値に対応しているので、EO補正値と歪補正値とを対応付けたルックアップテーブルを用意しておいて、制御装置2は、EO補正値に対応する歪補正値をそのルックアップテーブルから読み出して、歪み補正値を取得してよい。なお、偏向制御装置としての制御装置2が、EO補正及び歪み補正に加えて、振動補正も行うことは上述した通りである。
<電子像追従式の電子線検査装置における検査処理>
(背景)
試料を載置したステージを連続的に移動させるとともに、検出器における視野領域がステージとともに移動する試料の撮像領域を追従するように、試料から発生して検出器に入力する二次ビームを偏向する電子像追従式の電子線検査装置では、試料のある撮像領域の撮像が終了すると、視野領域をもとに戻して、撮像領域を隣接する新たな撮像領域に移動させるステップアンドリピートによって試料の二次ビーム像を取得する。
試料には複数のダイが繰り返し形成されている。検査手法としては、得られた二次ビーム像に基づいて、試料に形成されたダイ同士の比較を行うことで試料の検査を行うダイ−ダイ比較、及び各ダイから得られた二次ビーム像をデータベース上の基準となる画像と比較することで試料の検査を行うダイ−データベース比較が知られている。
ステップアンドリピートの検査において、試料上の撮像領域を変更する際に、ステージの振動やE×Bフィルタのノイズ等があると、撮像領域どうしの間に隙間ができ、検査の取りこぼしが発生する。そこで、ステップアンドリピートの検査では、隣接する撮像領域どうしの一部を重畳させて互いにオーバラップ領域を持たせて二次ビーム像を取得する。
(課題)
しかしながら、隣接する撮像領域どうしにオーバラップ領域を持たせて二次ビーム像を取得してダイ−ダイ比較やダイ−データベース比較を行うと以下の問題が生じる。以下では、ダイ−ダイ比較の場合を例として問題点を説明する。
図40(a)は、試料であるウエハWに形成されたダイを示す図である。図40(a)では、ダイD1と、その下方にダイD1に隣接して形成されたダイD2を示している。図40(b)は、ステップアンドリピートによって順に取得されたフレームA〜Dの二次ビーム像を示している。撮像領域をウエハWの上から下に向けて、互いに一部がオーバラップするように移動させながら、各撮像領域について二次ビーム像を取得した場合には、図40(b)に示すようなフレームA〜Eの二次ビーム像が得られる。
二次ビーム像AにはダイD1の上側部分の二次ビーム像が含まれており、二次ビーム像BにはダイD1の下側部分の二次ビーム像とダイD2の上側の一部の二次ビーム像が含まれており、二次ビーム像CにはダイD2の上側部分の二次ビーム像が含まれており、二次ビーム像DにはダイD2の下側部分の二次ビーム像が含まれている。このような複数のフレームA〜Dの二次ビーム像が取得されたときに、これらをそのまま繋いで合成画像を生成すると、図40(c)に示すように、実際の試料とは異なる不連続な二次ビーム像が得られる。
そこで、本実施の形態では、ステップアンドリピートの検査において、試料上の撮像領域を変更する際の検査の抜けを防止できる検査装置を提供する。
(解決手段)
本実施の形態の検査装置は、試料を載置して連続的に移動するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームによる二次ビーム像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向して、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、前記2次光学系による前記二次ビームの偏向及び前記検出器による前記二次ビーム像の生成を制御する制御装置と、前記検出器で生成された前記二次ビームの像に基づいて検査を行う検査処理装置とを備える。前記制御装置は、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射することで前記検出器にて生成された前記二次ビームの像を1フレームの二次ビーム像として、隣り合うフレームの前記二次ビーム像が互いにオーバラップ部分を有するように、前記二次ビームの偏向及び前記検出器による前記二次ビーム像の生成を制御し、前記検査処理装置は、各フレームの一部又は全体の前記二次ビーム像を比較対象と比較することで、検査を行う。
この構成により、隣り合うフレームにはオーバラップ部分が確保されるので、このオーバラップの幅程度のフレームのずれが許容され、検査の抜けを防止できる。また、オーバラップ部分を考慮して複数のフレームを繋ぎ合わせることで合成画像を生成してその合成画像について比較対象と比較することはせず、得られたフレーム画像の一部又は全体の二次ビーム像を比較対象と比較するので、合成画像を生成することによる処理負荷を回避できる。
前記試料には繰り返しパターンである複数のダイが形成されており、前記検査処理装置は、異なるダイの対応する部分の二次ビーム像を別々のフレームから抜き出して、それらを互いの比較対象として互いに比較して、検査を行ってよい。
この構成により、ダイ−ダイ比較による検査を行うことができる。
本実施の形態の検査方法は、試料をステージに載置して連続的に移動させ、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射し、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームを二次元センサに導いて二次ビーム像を生成し、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向し、前記二次ビームの偏向及び前記二次ビーム像の生成を制御し、前記二次ビームの像に基づいて検査を行う。前記検査方法は、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射することで前記二次ビーム像を1フレームの二次ビーム像として、隣り合うフレームの前記二次ビーム像が互いにオーバラップ部分を有するように、前記二次ビームの偏向及び前記検出器による前記二次ビーム像の生成を制御し、各フレームの一部又は全体の前記二次ビーム像を比較対象と比較することで、検査を行う。
この構成によっても、隣り合うフレームにはオーバラップ部分が確保されるので、このオーバラップの幅程度のフレームのずれが許容され、検査の抜けを防止できる。また、オーバラップ部分を考慮して複数のフレームを繋ぎ合わせることで合成画像を生成してその合成画像について比較対象と比較することはせず、得られたフレーム画像の一部又は全体の二次ビーム像を比較対象と比較するので、合成画像を生成することによる処理負荷を回避できる。
(実施の形態)
図41は、本実施の形態に係る電子線検査装置の構成を示す図である。図41において、上記の実施の形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を適宜省略する。電子線検査装置は、主ハウジング30と、ステージ装置50と、電子光学装置70と、検出器761と、画像処理部763と、制御装置2とを備えている。
主ハウジング30は、ワーキングチャンバを画成する。ステージ装置50は、主ハウジング30内に配置される。試料であるウエハWはステージ装置50に載置される。ステージ装置50は、ウエハWの平面方向に移動することで、ウエハWを電子光学装置70に対して移動させる。電子光学装置70は、主ハウジング30の上に取り付けられる。電子光学装置70は、ウエハWに一次ビームを照射するための1次光学系72、及びウエハWから発生した二次ビームを検出器761に導くための2次光学系74を備えている。検査器761は、2次元光学系74によって投影される二次ビームを受けて二次ビーム像を生成する二次元センサ7611を備えている。
画像処理部763は、検出器761の二次元センサ7611で得られた複数の二次ビーム像に対して画像処理を行う。画像処理部763は、特に、検査処理装置として、複数の二次ビーム像を用いてウエハWの検査を行う。本実施の形態では、検査処理装置としての画像処理部763は、二次ビーム像を用いてダイ−ダイ比較を行うことによりウエハWの検査を行う。制御装置2は、ステージ装置50、電子光学装置70、及び検出器761を制御する。制御装置2は、特に、偏向制御装置90として、電子光学装置70の高速偏向器749を制御する。
図42は、本実施の形態の電子線検査装置によるダイ−ダイ比較の検査を説明する図である。図42(a)及び(b)は、図40(a)及び(b)に対応しており、図42(a)に示すようなダイD1及びダイD2が縦方向に並ぶウエハWがあったときに、図42(b)に示すようにフレームA〜Eの二次ビーム像がこの順に得られたことを示している。
図42(c)は、本実施の形態の画像処理部763におけるダイ−ダイ比較を説明する図である。画像処理部763は、まず、ダイD1の一部の二次ビーム像を含むフレームAについて、その二次ビーム像と一部又は全部が対応する別のダイ(ダイD2)の二次ビーム像を他のフレームから探索する。そのとき、フレームAより後のフレームC、フレームD、フレームEをこの撮像順に、探索の対象とする。なお、本実施の形態の場合は、フレームサイズ、オーバラップライン数、及びダイサイズから隣り合うフレーム(例えば、フレームAとフレームB)の中に異なるダイの対応する部分は存在しえないので、各フレームについて、その次の次のフレームから、それ以降のフレームについて、異なるダイの対応する部分を探索する。
図41に示すように、画像処理部763には、ピクセルサイズ、フレームサイズ、オーバラップライン数、ダイサイズの情報が与えられ、保存されている。なお、フレームサイズ及びオーバラップライン数の情報は制御装置2にも同様に与えられて、制御装置2に保存されている。制御装置2は、フレームサイズに応じてズームレンズを制御し、オーバラップライン数に応じて高速偏向器749を制御する。画像処理部763は、ピクセルサイズ、フレームサイズ、オーバラップライン数、及びダイサイズを用いて、順に得られる各フレームの二次ビーム像のどこにダイの先頭が位置しているかを確定する。
まず、画像処理部763は、フレームAとフレームCについて対応部分を探索する。図42(c)の第一段に示すように、フレームAの上部がダイD1の上部の二次ビーム像であり、フレームCの下部がダイD2の上部の二次ビーム像であり、画像処理部763は、これらが対応すると判定する。なお、フレームCの下部の何ライン目にダイD2の二次ビーム像の先頭があるかは、上述のように、ピクセルサイズ、フレームサイズ、オーバラップライン数、及びダイサイズから求めることができる。画像処理部763は、図42(c)の第一段のように、フレームAにおけるダイD1の二次ビーム像の一部とフレームCにおけるダイD2の二次ビーム像の一部とを、異なるダイの対応する部分の部分画像として判定すると、それらの部分画像を比較して、それらが一致するかを判定する。画像の一致の判定には、パターンマッチング等の公知の技術を用いることができる。
次に、画像処理部763は、フレームAとフレームDについて対応部分を探索する。図42(c)の第二段に示すように、フレームAの下部がダイD1の中段の二次ビーム像であり、フレームDの上部がダイD2の中段の二次ビーム像であり、画像処理部763は、上記と同様にして、これらが対応すると判定する。そして、画像処理部763は、図42(c)の第二段のように、フレームAにおけるダイD1の二次ビーム像の一部とフレームDにおけるダイD2の二次ビーム像の一部とを、異なるダイの対応する部分の部分画像として判定すると、それらの部分画像を比較して、それらが一致するかを判定する。
フレームAについてはフレーム全体について検査が終わったので、画像処理部763は、次にフレームBについて、それより後のフレームとの比較を行う。画像処理部763は、まず、フレームBとフレームDについて対応部分を探索する。図42(c)の第三段に示すように、フレームBの上部がダイD1の中段の二次ビーム像であり、フレームDの下部がダイD2の中段の二次ビーム像であり、画像処理部763は、これらが対応すると判定する。そして、画像処理部763は、図42(c)の第三段のように、フレームBにおけるダイD1の二次ビーム像の一部とフレームDにおけるダイD2の二次ビーム像の一部とを、異なるダイの対応する部分の部分画像として判定すると、それらの部分画像を比較して、それらが一致するかを判定する。
次に、画像処理部763は、フレームBとフレームEについて対応部分を探索する。図42(c)の第四段に示すように、フレームBの下部がダイD1の中段の二次ビーム像であり、フレームEの中段がダイD2の中段の二次ビーム像であり、画像処理部763は、これらが対応すると判定する。そして、画像処理部763は、図42(c)の第四段のように、フレームBにおけるダイD1の二次ビーム像の一部とフレームEにおけるダイD2の二次ビーム像の一部とを、異なるダイの対応する部分の部分画像として判定すると、それらの部分画像を比較して、それらが一致するかを判定する。
フレームBについてはフレーム全体について検査が終わったので、画像処理部763は、次にフレームCについて、それより後のフレームとの比較を行う。画像処理部763は、フレームCとフレームEについて対応部分を探索する。図42(c)の第五段に示すように、フレームCの上部がダイD1の下部の二次ビーム像であり、フレームEの中段がダイD2の下部の二次ビーム像であり、画像処理部763は、これらが対応すると判定する。そして、画像処理部763は、図42(c)の第五段のように、フレームCにおけるダイD1の二次ビーム像の一部とフレームEにおけるダイD2の二次ビーム像の一部とを、異なるダイの対応する部分の部分画像として判定すると、それらの部分画像を比較して、それらが一致するかを判定する。
画像処理部763は、ここで、ダイD1の全体についてダイD2とのダイ−ダイ比較による検査が終了したので、検査処理を終了する。
図43は、本実施の形態の電子線検査装置におけるダイ−ダイ比較による試料の検査のフロー図である。まず、電子線検査装置によってステップアンドリピートの二次ビーム像の撮像が行われ、複数のフレームの二次ビーム像が取得される(ステップS281)。このとき、上述のように、隣り合うフレームどうしが一部でオーバラップするように、撮像が行われる。次に、検査対象のフレーム(検査フレーム)に含まれるダイの二次ビーム像に対応する、他のダイの二次ビーム像を含む他のフレーム(比較フレーム)が探索される(ステップS282)。なお、取得された複数のフレームは、その取得順で検査フレームとなる。比較フレームが見つかると、検査フレームと比較フレームとで、対応するダイの部分を撮像した二次ビーム像の部分どうしが比較される(ステップS283)。
比較において不一致があった場合には、その旨の結果を出力するが、図43のフロー図ではこの処理は図示を省略している。比較が終了すると、次に、検査フレームの全体について比較が完了したかが判断され(ステップS284)、未だ比較されていない部分がある場合には(ステップS284にてNO)、その部分について、比較フレームの探索(ステップS282)及び比較(ステップS283)が行われる。
検査フレームの全体について比較が完了すると(ステップS284にてYES)、次にすべてのダイの検査が完了したかが判断される(ステップS285)。すべてのダイの検査が完了していない場合には(ステップS285にてNO)、検査フレームを取得順で次のフレームに切り替えて(ステップS286)、ステップS282に戻り、上記の処理を繰り返す。すべてのダイの検査が完了した場合には(ステップS285にてYES)、検査処理を終了する。
上記から明らかなように、ダイD1とダイD2において複数のフレームで撮像される部分(フレームがオーバラップする部分)については、フレームの複数の組み合わせで比較が行われ、複数回の検査が行われている。よって、フレームに多少のずれがあった場合にも、いずれかのフレームで撮像されていれば、いずれかの比較が行われることになり、従って、設定されたオーバラップライン数程度のフレームのずれは許容され、フレームのずれによる検査漏れを防止できる。
また、上記の実施の形態では、各フレーム画像を繋ぎ合わせてダイ全体の合成画像を生成してそれらの合成画像どうしを比較するのではなく、異なるダイの対応する部分を各フレームから抜き出して互いに比較するので、合成画像を生成する処理が不要となり、処理を高速化でき、かつ、上述のように、オーバラップ部分について複数回の比較による検査を行うことで精度を向上できる。
なお、上記の実施の形態では、主走査方向である縦方向に複数のフレームをオーバラップさせることを説明したが、副走査方向(図42の横方向)についても、フレームをオーバラップさせてよい。この場合には、副走査方向について、設定されたオーバラップライン数程度のフレームのずれが許容されることになる。
また、上記の実施の形態では、ダイ−ダイ比較による検査を行う場合について説明したが、ダイ−データベース比較による検査においても、上記と同様に、隣り合うフレームどうしにオーバラップ領域を持たせてもよい。
<電子像追従式の電子線検査装置における一次ビームの整形>
(背景)
試料を載置したステージを連続的に移動させるとともに、検出器における視野領域がステージとともに移動する試料の撮像領域を追従するように、試料から発生して検出器に入力する二次ビームを偏向する電子像追従式の電子線検査装置では、一次ビームも常に試料の視野領域を照射していなければならない。これを実現する手法としては、試料の移動に同期させて照射領域を移動させる方法と、検出器の視野領域の移動範囲をすべてカバーする照射領域を有する一次ビームを照射する方法とがある。
後者、すなわち、検出器の視野領域の移動範囲をすべてカバーする照射領域を有する一次ビームを照射する場合には、一次ビームの照射範囲を移動させる必要がなく、そのための構成を必要としない点で有利である。
(課題)
しかしながら、検出器の視野領域の移動範囲をすべてカバーする照射領域を有する一次ビームを照射する場合には、試料の撮像範囲でない部分にも一次ビームを照射することになるので、エネルギーの損失が発生する。従って、このようなエネルギーの損失は小さいほうがよく、そのためには、視野領域の移動範囲をカバーする最小限の範囲とすることが望ましい。
そこで、本実施の形態では、検出器の視野領域の移動範囲をすべてカバーする照射領域を有する一次ビームを照射する電子像追従式の電子線検査装置において、一次ビームのエネルギー損失を小さくすることを目的とする。
(解決手段)
本実施の形態の検査装置は、試料を載置して連続的に移動するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームによる二次ビーム像を生成する二次元センサを含む検出器と、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向して、前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系とを備えている。1次光学系は、前記一次ビームの断面形状を前記試料の移動方向に対応する方向に引き伸ばすよう前記一次ビームを整形する多極子を備えている。
この構成により、一次ビームの断面形状は試料の移動方向に対応する方向に引き伸ばされるので、試料の移動方向に垂直な方向に無駄に断面積を広けることによるエネルギーの損失を抑えることができる。
前記多極子は、前記1次光学系による前記一次ビームの光路上における前記一次ビームの焦点よりも前記試料に近い位置で、前記一次ビームを整形してよい。
この構成により、一次ビームを容易に整形できる。また、焦点よりも近い位置には、大きなレンズが配置されるので、この構成により、大きなレンズとの干渉を避けて1次光学系内に多極子を配置できる。
前記多極子は、前記一次ビームの断面形状が、前記二次ビームの偏向によって移動する前記検出器の視野領域のすべてをカバーする形状となるように、前記一次ビームを整形してよい。
この構成により、視野領域の移動に応じて一次ビームを移動させる必要がなく、そのための構成を設ける必要がなくなる。
前記多極子は、前記一次ビームの断面形状が楕円となるように、前記一次ビームを整形する。
この構成により、断面円形の一次ビームを整形して検出器の視野領域のすべてをカバーする断面形状にすることができる。
本実施の形態の検査方法は、試料をステージに載置して連続的に移動させ、前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射し、前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームを二次元センサに導いて二次ビーム像を生成し、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、前記二次ビームを偏向し、多極子を用いて前記一次ビームの断面形状を前記試料の移動方向に対応する方向に引き伸ばすよう前記一次ビームを整形する。
この構成によっても、一次ビームの断面形状は試料の移動方向に対応する方向に引き伸ばされるので、試料の移動方向に垂直な方向に無駄に断面積を広けることによるエネルギーの損失を抑えることができる。
(実施の形態)
図44は、本実施の形態に係る電子線検査装置の構成を示す図である。電子線検査装置は、1次光学系72と2次光学系74とを含む電子光学装置70と、検出器761とを備えている。1次光学系72は、電子ビームを生成し、ウエハWに向けて照射する。1次光学系72は、電子銃721と、レンズ722と、アパーチャ723と、E×Bフィルタ726と、レンズ727と、第1の高圧基準管701と、ビーム整形用多極子731とを備えている。1次光学系72は、さらに、レーザ光源7211と電光面カソード7212とを含む電子銃721と、電子銃721から発生した電子ビーム(一次ビーム)の経路に沿って、その経路を囲うように設けられた第1の高圧基準管701を備えている。電子銃721は、断面円形の電子ビームを生成する。
レンズ722及びアパーチャ723は、一次ビームを整形するとともに、一次ビームの方向を制御する。E×Bフィルタ726は、一次ビームに磁界と電界によるローレンツ力を与えることで、斜め方向からE×Bフィルタ726に入射した一次ビームを鉛直下方向に偏向し、ウエハWの表面に照射する。レンズ727は、一次ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
ビーム整形用多極子731は、電子銃721で生成された一次ビームを整形する。上述のように、電子銃721で生成された一次ビームは断面が円形状であるが、ビーム整形用多極子731は、一次ビームの断面が楕円形状になるように、一次ビームの進行方向と垂直な方向に、一次ビームを引き伸ばす。ビーム整形用多極子731は、レンズ722による焦点よりも先に配置される。この位置にビーム整形用多極子731を設けることで、図44に示すように、レンズ722からある程度離してビーム整形用多極子731を配置することができる。また、焦点より後段で整形することで整形が容易となる。
図45は、ビーム整形用多極子の構成を示す断面図である。本実施の形態のビーム整形用多極子731は、図45に示すように、電極731a〜731dからなる4極子である。なお、ビーム整形用多極子731は、8極子や12極子であってもよい。断面が円形である一次ビームbは、4極子が形成する電磁場によって、縦方向に引き伸ばされ、断面が楕円形の一次ビームb´に整形される。一次ビームb´の断面形状としての楕円形は、縦横比が例えば1:2程度であってよい。
図46は、ウエハWの表面における視野領域の移動範囲と一次ビームの照射範囲との関係を示す図である。一次ビームは、ビーム整形用多極子731によって整形された結果、断面形状が楕円形になるので、ウエハWの表面における照射範囲EFも楕円形状となる。この照射範囲EFは、視野領域の移動範囲VF、すなわち視野領域が移動したときの軌跡をすべてカバーする。
視野領域が一方向に往復を繰り返すことで、ステップアンドリピートによる電子像追従式の電子線検査が実現されるので、照射領域EFがこの視野領域となり得るすべての領域である移動範囲VFの全体をカバーしていれば、視野領域がこの移動範囲VF内のどこにあっても、1次ビームが照射されて、確かに二次ビームが生成されることになる。視野領域の移動範囲VFは、図46に示すように、2つの視野領域をウエハWの移動方向(ステップアンドリピートにおける主走査方向)に隣接して並べた範囲であり、照射領域EFはこのような移動範囲VFをカバーするように、ウエハWの移動方向に長い楕円形状である。
<ソフトウェアによる再検査シミュレーション>
(背景)
試料に生じている欠陥を検査する検査システムにおいて、真の欠陥を確実に検出し、かつ、欠陥でない箇所(疑似欠陥)を検出しないようにするためには、検出閾値等の検査条件を変えながら何度も検査を繰り返し、最適な検査条件を決定する必要がある。
(課題)
しかしながら、検査を繰り返すと、検査条件の最適化に時間がかかるという問題がある。また、検査を繰り返すことで、試料にダメージが蓄積したり、試料が汚染されたりするといった問題も生じる。
そこで、本実施の形態は、試料に与えるダメージや試料の汚染を回避して少ない検査回数で検査条件を決定できる検査システムを提供する。
(解決手段)
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査システムは、検査装置と、シミュレーション装置とからなり、検査装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力し、シミュレーション装置は、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
上記の検査システムにおいて、前記検査装置は、前記二次ビーム像から所定の閾値以上の欠陥を検出して前記欠陥画像を生成し、前記シミュレーション装置は、さらに、前記閾値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力してよい。
この構成によれば、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な閾値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態のシミュレーション装置は、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてセル−セル比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、セル−セル比較検査におけるセル周期を変更した再検査シミュレーションを行い、検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なセル周期を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてダイ−ダイ比較検査を行って欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、ダイ−ダイ比較検査におけるエッジ許容値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なエッジ許容値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像について画像処理フィルタによるフィルタ処理をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、画像処理フィルタを変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適な画像フィルタを得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
本実施の形態の検査結果レビュープログラムは、試料に一次ビームを照射して、試料からの二次ビームによって二次ビーム像を取得し、前記二次ビーム像についてシェーディング補正をした上で欠陥画像を取得し、前記欠陥画像及び前記二次ビーム像を出力する検査装置から、前記二次ビーム像を取得するシミュレーション装置にて実行されることで、前記シミュレーション装置に、前記二次ビーム像について、シェーディング補正値を変更した再検査シミュレーションを行い、再検査結果を出力するシミュレーション処理部を構成する。
この構成によっても、検査装置での実際の検査を繰り返すことなく、最適なシェーディング補正値を得るための再検査シミュレーションを行うことができる。よって、検査条件を最適化するための時間を短縮でき、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
(実施の形態)
図47は、本実施の形態の検査システムの構成を示す図である。検査システムは、検査装置100と、シミュレーション装置200とを備えている。検査装置100は、上記の実施の形態の任意の電子線検査装置であってよい。検査装置100は、主ハウジング30と、主ハウジング30の上に設置された電子光学装置70と、主ハウジング30内に設けられたステージ装置50と、電子光学装置70の上に設置された検出器761と、検出器761に接続された画像処理部763とを備えている。
電子光学装置70は、ステージ装置50に保持された試料であるウエハWに面ビームである一次ビームを照射して、それによってウエハWから発生した二次ビームを検出器761に導く。検出器761は、図示しない二次元センサによって二次ビームを捕捉して二次ビーム像の画像を生成し、画像処理部763に出力する。
画像処理部763は、検査処理装置として、検出器761から入力された二次ビーム像に対して、像処理フィルタ(平均値(Mean)フィルタ、ガウシアン(Gaussian)フィルタ、中央値(Median)フィルタ等)を用いて画像処理を施し、シェーディング補正をした上で、セル−セル比較、ダイ−ダイ比較、ダイ−データベース比較等の比較処理によって検査を行う。具体的には、画像処理部763は、比較処理において差分が所定の閾値を超える部分を欠陥として検出して、欠陥画像を生成する。画像処理部763は、欠陥画像とそれを生成するのに用いた未処理画像(二次ビーム像)をシミュレーション装置200に出力する。
画像処理部763は、設定された検査条件パラメータに従って検査を行う。この検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報が含まれる。なお、この検出したくない欠陥の分類情報は、検査後にSEMでの撮像を行って分類した結果として得られる。
シミュレーション装置200は、シミュレーション処理部201と、入力部202と、モニタ203を備えており、例えば入力手段とモニタと演算処理ユニット、メモリ、記憶装置、入出力ポート等を備えた汎用のコンピュータによって構成される。シミュレーション処理部201は、本実施の形態の検査結果レビュープログラムが演算処理ユニットによって実行されることで実現される。この検査結果レビュープログラムは、ネットワークを通じてシミュレーション装置200に提供されてもよく、シミュレーション装置200が記憶媒体に記憶された検索結果レビュープログラムを読み出すことでシミュレーション装置200に提供されてもよい。このようにして提供された検索結果レビュープログラムは、シミュレーション装置200の記憶装置に記憶され、そこから読み出されて実行されることで、シミュレーション処理部201が構成される。
シミュレーション処理部201は、検査装置100から入力した二次ビーム像に対して、検査条件パラメータを変更しながら、再検査シミュレーションを行い、最適な検査条件パラメータを決定する。シミュレーション処理部201が再検査シミュレーションのために変更する検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報等が含まれる。
図48は、セル−セル比較の場合のセル周期、及びダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値を説明する図である。いま、ウエハWの表面には、図48に示すように、複数のダイD1、D2が形成されており、それぞれのダイは、中央にセル領域Cを有し、かつセル領域の左下に「A」が形成されているとする。また、セル領域Cには、複数の「F」の繰り返しパターン(セル)が形成されているとする。
検査条件パラメータとしてのセル周期とは、検査装置100がセル−セル比較による検査を行う際の主走査方向(図48の例では下向き)の繰り返しパターンの周期pである。画像処理部763におけるセル−セル比較の際にこの周期が正しくなければ、セル−セル比較による検査結果は正しく得られない。そこで、シミュレーション処理部201は、検査装置100から得た未処理画像についてセル周期を変更しながらセル−セル比較をし直して、最適なセル周期を求める。
検査条件としてのエッジ許容値とは、検査装置100がダイ−ダイ比較による検査を行う際に、エッジ部分について欠陥を検出するための閾値である。図48に示すように、ダイ−ダイ比較において、比較対象である「A」のエッジ部分で差分dが生じやすい。よって、エッジ部分について、エッジ以外の部分と同じ閾値を用いて欠陥であるか否かの判断をすると、エッジ部分から疑似欠陥が生じやすくなる。そこで、エッジ部分については、欠陥として検出するための閾値を他の部分と比較して大きく設定する。このエッジ部分について大きく設定された閾値がエッジ許容値である。エッジ許容値を小さくしすぎるとエッジから疑似欠陥が検出されてしまい、エッジ許容値を大きくしすぎるとエッジに生じている真の欠陥を検出することができない。そこで、シミュレーション処理部201は、検査装置100から得た未処理画像についてエッジ許容値を変更しながらダイ−ダイ比較をし直して、最適なエッジ許容値を求める。
以下、上記のように構成された検査システムの動作を説明する。図49は、検査システムの動作を示すフロー図である。まず、検査装置100は検査を行い、画像処理部763は検査結果をシミュレーション装置200に出力する(ステップS331)。このとき、画像処理部763は、検査結果とともに、その検査結果を得るのに用いた未処理画像(二次ビーム像)、及び検出したくない欠陥の分類情報もシミュレーション装置200に出力する。シミュレーション装置200では、シミュレーション処理部201がこの検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に表示する(ステップS332)。
次に、シミュレーション処理部201は、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行し(ステップS333)、それによって得られた再検査結果を出力する(ステップS334)。この再検査シミュレーションでは、検査装置100における検査と同様に、検出したくない欠陥の分類情報にある欠陥については検出しないようにする。シミュレーション処理部201は、ステップS334で得られた再検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に出力する(ステップS335)。
次に、この再検査によって得られた欠陥画像を評価することで、検査条件が最適であるかが判断され(ステップS336)、検査条件が最適でなければ(ステップS336でNO)、ステップS333に戻って、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行する(ステップS333)。このように検査条件パラメータを変えながらの再検査シミュレーションを繰り返して、検査条件が最適になったときは(ステップS336でYES)、その最適になった検査条件を検査装置100で採用する検査条件として決定し(ステップS337)、処理を終了する。シミュレーション処理部201は、検索条件が最適であるか否かは、例えば、入力部202からの入力に基づいて判断してよい。
以上のように、本実施の形態の検査システムによれば、検査装置100において実際の検査を行ったうえで、シミュレーション装置200で検査装置100から出力された欠陥画像及び未処理画像を用いて、検査条件を変えながら検査結果レビューソフトウェアによって再検査シミュレーションを行うので、少ない検査回数で検査条件の最適化が可能となり、検査条件を最適化するための時間を短縮できる。また、検査装置100による実際の検査を繰り返す必要がないので、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
[産業上の利用可能性]
本実施形態によれば、偏向器によって、二次ビームの像の歪みや、ステージの振動による二次ビームの像のずれが軽減ないし解消するので、より精度の高い電子像追従型の検査装置を提供できるという効果を有し、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置等として有用である。
以上、第2の実施形態から、例えば次のような態様が想到される。
[付記1]
試料を検査する検査装置であって、
試料を載置して連続的に移動するステージと、
前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射する1次光学系と、
前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームの像を生成する二次元センサを含む検出器と、
前記二次ビームを前記二次元センサに導く2次光学系と、
前記ステージの振動を検出する振動検出手段とを備え、
前記2次光学系は、前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、多極子によって重畳電界を発生させることで前記二次ビームを偏向する偏向器を含み、
前記検査装置は、さらに、前記ステージの移動及び前記振動検出手段の検出値に基づいて、前記二次ビームの像の歪を軽減ないし解消し、前記ステージの振動による前記二次ビームの像のずれを軽減ないし解消するように、前記偏向器の前記多極子を制御して重畳電界を調整する偏向器制御部を備えたことを特徴とする検査装置。
[付記2]
前記2次光学系は、前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に、電圧が印加される第3の高圧基準管及び第4の高圧基準管を備え、
前記第3の高圧基準管と前記第4の高圧基準管とは、前記試料と前記偏向器との間で分離しており、
前記第4の高圧基準管に印加される第4の電圧は、前記第3の高圧基準管に印加される第3の電圧より低く、
前記第3の高圧基準管と前記第4の高圧基準管との間に、前記第3の電圧より低く前記第4の電圧より高い中間電圧が印加される中間電極が設けられたことを特徴とする付記1に記載の検査装置。
[付記3]
前記第4の高圧基準管に印加する前記第4の電圧を調整する電圧調整部をさらに備えたことを特徴とする付記2に記載の検査装置。
[付記4]
前記1次光学系は、前記一次ビームの経路に沿って、該経路の外周に、第1の電圧が印加される第1の高圧基準管を備え、
前記2次光学系は、さらに、
前記第1光学系から照射された前記一次ビームを前記試料に向けて偏向するビーム分離器と、
前記ビーム分離器と前記試料との間の前記一次ビーム及び前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に設けられた、第2の電圧が印加される第2の高圧基準管と、
を備え、
前記第1の電圧と、前記第2の電圧と、前記第3の電圧とは互いに等しく、前記第4の電圧と前記検出器の検出電圧である第5の電圧とは互いに等しいことを特徴とする付記2又は3に記載の検査装置。
[付記5]
前記1次光学系は、前記一次ビームの経路に沿って、該経路の外周に、第1の電圧が印加される第1の高圧基準管を備え、
前記2次光学系は、さらに、
前記第1光学系から照射された前記一次ビームを前記試料に向けて偏向するビーム分離器と、
前記ビーム分離器と前記試料との間の前記一次ビーム及び前記二次ビームの経路に沿って、該経路の外周に設けられた、第2の電圧が印加される第2の高圧基準管と、
を備え、
前記第2の電圧と前記第3の電圧とは互いに等しく、前記第1の電圧は前記第2の電圧より小さく、前記第4の電圧と前記検出器の検出電圧である第5の電圧とは互いに等しいことを特徴とする付記2又は3に記載の検査装置。
[付記6]
前記第1の電圧と、前記ビーム分離器に印加する偏向電圧とが互いに等しいことを特徴とする付記4又は5に記載の検査装置。
[付記7]
前記試料における前記一次ビームの照射領域は固定されており、前記偏向器によって前記二次ビームを偏向することで、前記二次元センサに前記二次ビームの像が形成される前記試料の領域である視野領域が、前記照射領域内で往復移動することを特徴とする付記1ないし6のいずれか一項に記載の検査装置。
[付記8]
前記ビーム分離器は、前記偏向器による前記二次ビームの偏向方向の変更に同期して前記一次ビームの偏向方向を変更することで、前記二次元センサに前記二次ビームの像が形成される前記試料の領域である視野領域が往復移動されるのに同期して、前記視野領域をカバーするように前記試料における前記一次ビームの照射領域を往復移動することを特徴とする付記1ないし6のいずれか一項に記載の検査装置。
[付記9]
試料をステージに載置して連続的に移動させ、
前記ステージ上の前記試料に対して一次ビームを照射し、
前記一次ビームを前記試料に照射することで前記試料から発生した二次ビームを二次元センサに導いて二次ビーム像を生成する検査方法であって、
前記ステージの移動に同期して、前記ステージの移動によって前記試料が移動している間に、前記試料の同じ部分から発生した二次ビームが前記二次元センサの同じ部分に入射するように、多極子によって重畳電界を発生させることで前記二次ビームを偏向し、
前記ステージの振動を検出し、前記ステージの移動及び振動の検出値に基づいて、前記二次ビームの像の歪を軽減ないし解消し、前記ステージの振動による前記二次ビームの像のずれを軽減ないし解消するように、前記多極子を制御して重畳電界を調整することを特徴とする検査方法。
[符号の説明] 2:制御装置、30:主ハウジング、50:ステージ装置、55:ホルダ、571:ミラー、572:レーザ干渉計、70、70A〜70G:光学電子装置、761:検出器、7611:二次元センサ、763:画像処理部、72:1次光学系、74:2次光学系、7211:レーザ光源、7212:電光面カソード、722:レンズ、701:第1の高圧基準管、702:第2の高圧基準管、703:第3の高圧基準管、704:第4の高圧基準管、749:高速偏向器、742:NAアパーチャ、726:E×Bフィルタ、750:中間電極、90:偏向制御装置
3.第3の実施形態
[技術分野]
本実施形態は、検査対象の表面に形成されたパターンの欠陥等を検査する検査装置及び検査方法に関する。
[背景技術]
従来の半導体検査装置は、100nmデザインルールに対応した装置と技術であった。しかし、検査対象の試料は、ウエハ、露光用マスク、EUVマスク、NIL(ナノインプリントリソグラフィ)マスク及び基板と多様化しており、現在は試料が5〜30nmのデザインルールに対応した装置及び技術が求められている。すなわち、パターンにおけるL/S(ライン/スペース)又はhp(ハーフピッチ)のノードが5〜30nmの世代に対する対応が求められている。このような試料を検査装置で検査する場合、高分解能を得ることが必要になる。
ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
従来の半導体検査装置として、ステージの連続的な移動に伴う試料の移動と偏向手段による試料より発生した二次電子を一定方向に加速させたビーム(以下、二次ビームと表記する)の軌道の偏向とを同期させて制御することで、二次元CCDセンサ上で二次ビームの像を停止させ、その同期期間中に試料の同じ検出領域の像を二次元CCDセンサの同じ個所に投影させるようにした電子像追従式の電子光学装置を用いた電子線検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような従来の検査装置に於いて、分解能向上とスループット向上を両立させるために、二次電子の加速電位を大きくする事が求められる。加速電位が5keVよりも大きな光学系のレンズは、静電レンズでは実現が難しいため、電磁レンズで構成される。その2次光学系の対物レンズとして、分解能向上の観点から磁界界浸型の電磁レンズが用いられる。磁界界浸型の電磁レンズは、物面、焦点、もしくは像面が、レンズコイルで発生させた磁界に入り込む(界浸)ように構成されたレンズである。
[本実施形態の概要]
[本実施形態が解決しようとする課題] しかしながら、2次光学系の対物レンズとして磁界界浸型の電磁レンズを用いると、視野の周辺で著しく二次電子量が低下し、かつ、周辺のボケが光学設計で予測される値よりも著しく増大する現象が発生した。収差理論を元にした光学設計では確認されなかった現象であるため、軌道計算で詳細に確認した所、レンズ磁界の中から出発する軌道で、光軸から外れた位置から光軸と平行に出発する軌道は、光軸と交わらない事がわかった。各軌道に於ける光軸と最も接近する位置での離軸距離は、出発位置(物面)の光軸との離軸距離(物高)に比例していた。したがって、従来通りの手法で、光路上に開口絞りを置いて開き角を調整しようとした際に、物高の大きなビームは、信号量の少ない開き角の大きなビームしか開口絞りを通過できないために二次電子量が低下し、また、開き角に依存する収差が大きくなって、設計で想定したよりも大きなボケが発生する事がわかった。
本実施形態は、上記の課題に鑑みてなされたもので、2次光学系の光軸以外の位置から光軸と平行に出射した二次電子が1点で光軸と交わる対物レンズを備えた検査装置を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段] 本実施形態の検査装置は、、試料を検査する検査装置であって、前記試料を載置するステージと、前記ステージ上の前記試料に対して電子ビームを所定の大きさの面形状に照射する1次光学系と、対物レンズを有し、前記電子ビームの照射により前記試料から発生した二次電子を加速させ、前記二次電子を写像投影して検出器に導く2次光学系と、を備え、前記対物レンズは、第1のコイルと、前記2次光学系の光軸に沿って前記第1のコイルと並ぶように配置され、かつ、前記第1のコイルとは非対称に設計される第2のコイルと、磁性材から構成され、前記第1のコイルを収納する第1の収容部および前記第2のコイルを収容する第2の収容部を有し、前記第1の収容部および前記第2の収容部のそれぞれについて前記2次光学系の光軸に近い箇所に前記光軸と同心の円環状の切れ目を有するヨークと、を備え、前記試料と前記2次光学系の間には電位差があり、前記試料から出発した前記二次電子はその電界で所定のポテンシャルまで加速され、前記2次光学系の光軸上における試料面の位置において、前記第1のコイルの磁束密度が、前記第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされるように前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのそれぞれに電流が印加されるように構成されている。
この構成によれば、2次光学系の光軸上における試料面の位置で、第1のコイルの磁束密度が第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされる。したがって、2次光学系の光軸以外の位置から光軸と平行に出射した二次電子が1点で光軸と交わる。これにより、視野の周辺で著しく二次電子量が低下したり、周辺のボケが光学設計で予測される値よりも著しく増大するといった現象の発生を抑制する事ができる。
また、本実施形態の検査装置では、対物レンズは、ヨークと試料との間に配置され、非磁性材を材料として構成される加速電極を備えてもよい。
この構成によれば、加速電極を設けることにより、十分な加速電圧を確保することができ、収差を小さくすることができる。
本実施形態の対物レンズは、試料を検査する検査装置に備えられる対物レンズであって、
前記検査装置では、ステージ上の試料に対して電子ビームが所定の大きさの面形状に照射され、前記電子ビームの照射により前記試料から発生した二次電子が写像投影されて検出器に導かれ、前記対物レンズは、第1のコイルと、前記2次光学系の光軸に沿って前記第1のコイルと並ぶように配置され、かつ、前記第1のコイルとは非対称に設計される第2のコイルと、磁性材から構成され、前記第1のコイルを収納する第1の収容部および前記第2のコイルを収容する第2の収容部を有し、前記第1の収容部および前記第2の収容部のそれぞれについて前記2次光学系の光軸に近い位置に前記光軸と同心の円環状の切れ目を有するヨークと、を備え、前記試料と前記2次光学系の間には電位差があり、前記試料から出発した前記二次電子はその電界で所定のポテンシャルまで加速され、前記2次光学系の光軸上における試料面の位置において、前記第1のコイルの磁束密度が、前記第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされるように前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのそれぞれに電流が印加されるように構成されている。
この対物レンズによっても、上記の検査装置と同様に、2次光学系の光軸上における試料面の位置で、第1のコイルの磁束密度が第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされる。したがって、視野の周辺で著しく二次電子量が低下したり、周辺のボケが光学設計で予測される値よりも著しく増大するといった現象の発生を抑制する事ができる。
[本実施形態の効果]
本実施形態によれば、視野の周辺で著しく二次電子量が低下したり、周辺のボケが光学設計で予測される値よりも著しく増大するといった現象の発生を抑制する事ができる。
[図面の簡単な説明]
[図50]本実施形態の一実施形態に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図である。[図51]図50に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図50の線B−Bに沿って見た図である。
[図52]本実施形態の一実施形態に係る電子光学装置の構成を示す図である。
[図53]図52に示す電子光学装置におけるビーム経路を説明するための図である。
[図54](a)本実施形態の一実施形態に係る二次ビームが試料の移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器の動作を説明する図である。 (b)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。 (c)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。
[図55]本実施形態の一実施形態に係る高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図である。
[図56]本実施形態の一実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフロー図である。
[図57]本実施形態の一実施形態に係る対物レンズの構成を示す図である。
[図58]本実施形態の一実施形態に係る対物レンズの磁束密度を示す図である。
以下、本実施形態の実施の形態の検査装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本実施形態を実施する場合の一例を示すものであって、本実施形態を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本実施形態の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。また、先行の実施形態とは別個に符号を付していることに留意されたい。
図50及び図51において、本実施形態による検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態による検査装置1は、複数枚の試料を収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、試料をカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、主ハウジング30に取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002と、を備え、それらは図50及び図51に示されるような位置関係で配置されている。検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、試料に電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上での試料の位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871と、を備えている。
ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)の試料が上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テーブル11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図51で鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図51で実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニット61の回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図50で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すればよいので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
なお、カセットc内に収納される試料は、検査を受ける試料であり、そのような検査は、半導体製造工程中で試料を処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた試料、表面にパターンが形成された試料、又はパターンが未だに形成されていない試料が、カセット内に収納される。カセットc内に収容される試料は多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置の試料を第1の搬送ユニット61で保持できるように、第1の搬送ユニット61のアーム612を上下移動できるようになっている。
<ミニエンバイロメント装置>
図50及び図51において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての試料を粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間21内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された第1の搬送ユニット61による搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃が試料に付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。試料近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間21内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、第1の搬送ユニット61の試料搬送面より下側の位置で第1の搬送ユニット61の下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー(図示せず)と、吸入ダクト241とブロワーとを接続する導管(図示せず)と、を備えている。この排出装置24は、第1の搬送ユニット61の周囲を流れ下り、第1の搬送ユニット61により発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管及びブロワーを介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、試料に形成されたオリエンテーションフラット(円形の試料の外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、試料の外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出して試料の軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナ25は検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ25自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
<主ハウジング>
図50及び図51において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体32及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁には試料出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
<ローダハウジング>
図50及び図51において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間で試料のやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで周壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキングチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで周壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけばよい。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)の試料を上下に隔てて水平の状態で支持するサンプルラック47が配設されている。サンプルラック47は、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部が形成され、その支持部の上に試料Wの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間から試料に接近させてアームにより試料を把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、試料の汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ41及び42内に収容されていて次に欠陥検査される試料をワーキングチャンバ31内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ41及び42を採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求されるレーザ光源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42には、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図50において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図50において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55の試料載置面551上に試料を解放可能に保持する。ホルダは、試料を機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持された試料を電子光学装置70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図50において上下方向)に、更に試料の支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えて試料のノッチ或いはオリフラの位置を測定して試料の電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対する試料の回転位置やX、Y位置を後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することで、検査の際に得られる試料の回転位置やX、Y位置を示す信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられた試料チャック機構は、試料をチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、試料の外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。試料チャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図51で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等の試料を把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダ10に保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容された試料をアームの上に載せ、或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図51に示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアーム612が再び伸びてアーム612に保持された試料をプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にして試料を受け取った後は、アーム612は更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のサンプルラック47に試料を受け渡す。なお、機械的に試料を把持する場合には試料の周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これは試料には周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、試料の搬送をサンプルラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダ10に保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆の試料の搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、試料のカセットからの取り出し及びそれへの挿入、試料のサンプルラックへの載置及びそこからの取り出し、及び、試料のステージ装置50への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型の試料、例えば直径30cmや45cmの試料の移動もスムースに行うことができる。
<試料の搬送>
次にカセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへの試料の搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(図示せず)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセットc内及びミニエンバイロメント空間21内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM2の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されている試料のうち1枚を受け取る。なお、アーム612と、カセットcから取り出されるべき試料との上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブル11の上下動で行ってもよいし、或いはその両者を行ってもよい。
アーム612による試料の受け取りが完了すると、アーム612は縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アーム612は伸びて、先端に載せられ或いはチャックで把持された試料をプリアライナ25の上に載せ、プリアライナ25によって試料の回転方向の向き(試料表面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると第1の搬送ユニット61はアーム612の先端にプリアライナ25から試料を受け取った後、アーム612を縮ませ、方向M4に向けてアーム612を伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びて試料を第1のローディングチャンバ41内のサンプルラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてサンプルラック47に試料が受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
第1の搬送ユニット61による試料の搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃が試料の上面に付着するのを防止する。搬送ユニット61周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジング22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のサンプルラック47内に第1の搬送ユニット61により試料が載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ41の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口435を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でサンプルラック47から1枚の試料を受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。試料の受け取りが完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めサンプルラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット63のアーム632はワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図51で上方に移動し、また、Xテーブル53は図51で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アーム632が伸びて試料を保持したアーム632の先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上に試料を載置する。試料の載置が完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内の試料をステージ装置50上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置50に載せられて処理が完了した試料をステージ装置50からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行う。また、サンプルラック47に複数の試料を載置しておくため、第2の搬送ユニット63でサンプルラック47とステージ装置50との間で試料の搬送を行う間に、第1の搬送ユニット61でカセットcとサンプルラック47との間で試料の搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、サンプルラック47に、既に処理済の試料Aと未処理の試料Bがある場合、(1)まず、ステージ装置50に未処理の試料Bを移動し、処理を開始し、(2)この処理中に、処理済試料Aを、アーム632によりステージ装置50からサンプルラック47に移動し、未処理の試料Cを同じくアーム632によりサンプルラック47から抜き出し、プリアライナ25で位置決めした後、ローディングチャンバ41のサンプルラック47に移動する。このようにすることで、サンプルラック47の中は、試料Bを処理中に、処理済の試料Aが未処理の試料Cに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのサンプルラック47から試料を移動することで、複数枚の試料を同時処理することもできる。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置50への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
<電子光学装置>
図52は、電子光学装置70の構成を示す図である。図53は、電子光学装置70におけるビーム経路を説明するための図である。電子光学装置70の検査対象(試料)は、試料Wである。試料Wは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料Wの表面上の異物の存在を検出する。異物は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。
図52及び図53に示すように、電子光学装置70は、電子ビームを生成する1次光学系72と、試料Wからの2次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる2次光学系74と、それらの電子を検出する検出器761と、検出器761からの信号を処理する画像処理部763と、を備えている。
1次光学系72は、電子ビームを生成し、試料Wに向けて照射する構成である。1次光学系72は、電子銃721と、レンズ722、725と、アパーチャ723、724と、E×Bフィルタ726と、レンズ727、729、730と、アパーチャ728と、を有している。電子銃721は、レーザ光源7211と電光面カソード7212とを有しており、電子銃721により電子ビームが生成される。レンズ722、725及びアパーチャ723、724は、電子ビームを整形するとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ726にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ726に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料Wの方に向かう。レンズ727、729、730は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
1次光学系72は、電子ビームを試料Wへ照射する。1次光学系72は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、試料Wの表面21上の異物と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物の上方の位置(検出器761により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。このLE1とLE2との差異は、望ましくは5〜20〔eV〕である。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
E×Bフィルタ726の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料Wに対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ726の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料Wに対する1次系の電子ビームの入射角度を傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
このように、異物に対して所定の角度θの傾きを持って電子ビームを照射させることにより、異物からの信号を強くすることができる。これにより、ミラー電子の軌道が2次系光軸中心から外れない条件を形成することができ、したがって、ミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
ステージ装置50上には試料Wがあり、試料Wの上に異物がある。1次光学系72は、ランディングエネルギーLE−5〜−10〔eV〕で試料Wの表面21に電子ビームを照射する。異物がチャージアップされ、1次光学系72の入射電子が異物に接触せずに跳ね返される。これにより、ミラー電子が2次光学系74により検出器761に導かれる。このとき、2次放出電子は、試料Wの表面21から広がった方向に放出される。そのため、2次放出電子の透過率は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。これに対し、ミラー電子の方向は散乱しないので、ミラー電子は、ほぼ100%の高い透過率を達成できる。ミラー電子は異物で形成される。したがって、異物の信号だけが、高い輝度(電子数が多い状態)を生じさせることができる。周囲の2次放出電子との輝度の差異・割合が大きくなり、高いコントラストを得ることが可能である。
また、ミラー電子の像は、前述したように、光学倍率よりも大きい倍率で拡大される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。このとき、ピクセルサイズが異物サイズの3倍以上であっても、異物を検出可能である。したがって、高速・高スループットで実現できる。
例えば、異物のサイズが直径20〔nm〕である場合に、ピクセルサイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上のピクセルサイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
2次光学系74は、試料Wから反射した電子を、検出器761に導く手段である。2次光学系74は、レンズ740、743と、NAアパーチャ742と、アライナ744と、検出器761と、を有している。電子は、試料Wから反射して、対物レンズ730、レンズ729、アパーチャ728、レンズ727及びE×Bフィルタ726を再度通過する。そして、電子は2次光学系74に導かれる。2次光学系74においては、レンズ740、NAアパーチャ742、レンズ743を通過して電子が集められる。電子はアライナ744で整えられて、検出器761に検出される。
NAアパーチャ742は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ742が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と2次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、2次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。
例えば、1次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、2次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
異物は、任意の種類の材料で構成されてよく、例えば半導体、絶縁物、金属等でよく、又はそれらが混在してもよい。異物表面には自然酸化膜等が形成されるので、異物は絶縁材料で覆われることになる。よって、異物の材料が金属であっても、酸化膜にてチャージアップが発生する。このチャージアップが本例に好適に利用される。
検出器761は、2次光学系74により導かれた電子を検出する手段である。検出器761は、二次元センサ7611を含んでいる。二次元センサ7611には、二次元方向に複数の画素が配列されている。
二次元センサ7611には、EB(Electron Bombardment)半導体センサを適用することができる。例えば、二次元センサ7611には、EB−CMOSセンサが適用されてよい。EB−CMOSセンサは、電子ビーム(二次ビーム)をそれに直接入射させることができる。したがって、光電変換機構や光伝達機構による分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。従来は、小さい異物の検出が不安定であった。これに対して、EB−CMOSを用いると、小さい異物の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。なお、二次元センサとして、EB−CCDセンサが用いられてもよく、EB−TDIセンサが用いられてもよい。
また、二次元センサ7611には、CCD(Charge Coupled Device)またはTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
なお、二次元センサ7611の画素数は、2k×2k〜10k×10kとすることができる。また、二次元センサ7611のデータレートは、10GPPS以下とすることができる。さらに、二次元センサ7611の画素サイズは1〜15μmとすることができる。
画像処理部763は、検出器761で得られた二次ビーム像に対して、ノイズリダクション処理、積算処理、サブピクセルアライメント等の画像処理を行う。この画像処理部763の処理速度は、10GPPS以下とすることができる。
電子光学装置70について、さらに説明する。試料Wは、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ装置50に設置される。ステージ装置50と光学顕微鏡871により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料Wの異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料Wの表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料W上の2次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する2次光学系74においてフォーカス制御が行われる。試料Wの2次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面円電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度のよい安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
図53に示す例では、2次光学系74は、NAアパーチャ742に入射する電子の検出電流を測定可能に構成され、更に、NAアパーチャ742の位置にEB−CCD745が設置できるように構成されている。このような構成は大変有利であり、効率的である。NAアパーチャ742とEB−CCD745とは、開口747、748を有する一体の保持部材746に設置されている。そして、NAアパーチャ742の電流吸収とEB−CCD745の画像取得を夫々、独立に行える機構を、2次光学系74が備えている。この機構を実現するために、NAアパーチャ742、EB−CCD745は、真空中で動作するX、Yステージ746に設置されている。したがって、NAアパーチャ742及びEB−CCD745についての位置制御及び位置決めが可能である。そして、ステージ746には開口747、748が設けられているので、ミラー電子及び2次放出電子がNAアパーチャ742又はEB−CCD745を通過可能である。
このような構成の2次光学系74の動作を説明する。まず、EB−CCD745が、二次電子ビームのスポット形状とその中心位置を検出する。そして、そのスポット形状が円形であって最小になるように、スティグメーター、レンズ740、743及びアライナ744の電圧調整が行われる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ742の位置でのスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
また、ビームスポットの中心位置が容易に検出可能となる。そこで、ビームスポット位置に、NAアパーチャ742の孔中心を配置するように、NAアパーチャ742の位置調整が可能となる。この点に関し、従来は、NAアパーチャ742の位置の調整を直接行うことができなかった。本実施の形態では、直接的にNAアパーチャ742の位置調整を行うことが可能となる。これにより、NAアパーチャ742の高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
また、異物の検査では、異物からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ742の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次放出電子は、試料Wの表面21から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、2次放出電子は、NAアパーチャ742の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料Wの表面21での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ742に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、2次放出電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ742の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ742の中心位置を配置することが、大変有利である。
このような適切な位置へのNAアパーチャ742の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ742が、電子コラムの真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ742を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ742の中心が設置される。
信号強度の計測には、EB−CCD745が大変有利に用いられる。これにより、ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器761に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
あるいは、NAアパーチャ742の位置と検出器761の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、アパーチャ配置が定められてよく、また、NAアパーチャ742と検出器761の間にあるレンズ743の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ742の位置のビームの像を、検出器761の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ742の位置におけるビームプロファイルを、検出器761を用いて観察することができる。
また、NAアパーチャ742のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、NAサイズは、好ましくは、ビーム径に対して+10〜100〔%〕大きいサイズである。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と2次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物のコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
<電子像追従方式>
電子光学装置70について、さらに説明する。図52に示すように、1次光学系72は、一次ビームの経路に沿って、その経路を囲うように設けられた第1の高圧基準管701を備えている。なお、1次光学系72において、エミッション電流は10μA〜10mAとすることができ、透過率は20〜50%とすることができ、スポットサイズはφ1〜φ100μmとすることができ、照射領域のサイズ(照野サイズ)はφ10〜φ1000μmとすることができ、光学系倍率は1/1〜1/10とすることができる。
2次光学系74における二次ビームの経路の途中には、高速偏向器749が設けられている。具体的には、高速偏向器749は、NAアパーチャ742よりも検出器761側に設けられている。この高速偏向器749は、多極子(本実施の形態では、12極)から構成され、8極子場及び6極子場を生成し、二次ビームを任意の方向に偏向する。この偏向方向(偏向量)は、偏向制御装置90として機能する制御装置2によって制御される。高速偏向器749の構成についてはさらに後述する。なお、高速偏向器749に用いる多極子は、8極、4極等の多極子であってもよい。また、多極子は、6極子場のみを生成するものであっても、8極子場のみを生成するものであってもよい。
なお、2次光学系74において、倍率は10〜10000倍とすることができ、二次元センサ7611の1画素で捉える試料のサイズを3〜100nm(3〜100nmPx)とすることができ、NAアパーチャ742の透過率を10〜50%とすることができ、欠陥感度を1〜50nmとすることができる。
制御装置2は、上述のように高速偏向器749の偏向方向を制御する偏向制御装置として機能するとともに、電子光学装置70のその他の動作を制御する電子光学制御装置、ステージ装置50を制御するステージ制御装置、試料Wを搬送するための構成を制御する搬送制御装置、二次元センサ7611の撮像を制御する撮像制御装置等としても機能する。特に、本実施の形態では、検査中にステージ装置50によって試料Wが一定速度で移動するが、制御装置2は、ステージ装置50を制御して、この試料Wの移動制御を行う。なお、図52では、図50及び図51における固定テーブル51、Yテーブル52、Xテーブル53及び回転テーブル54の組に符号56を付して示している。
図54(a)は、二次ビームが試料Wの移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器749の動作を説明する図である。図54(a)に示すように、試料Wが右方向に連続的に移動している場合において、高速偏向器749は、試料W上の位置A1からの二次ビームが二次元センサ7611に二次ビーム像を結像するように二次ビームを偏向し、この試料Wが右方向に移動していく間、その移動に伴って、位置A1にあった試料Wの部分の二次ビーム像が常に二次元センサ7611に結像するように、二次ビームの偏向方向を変更する。即ち、高速偏向器749は、二次元センサ7611に二次ビーム像が結像される空間上の絶対位置を、試料Wの移動に追従して移動させる。なお、高速偏向器749の偏向周期は100kHz〜100MHzとすることができる。
このような二次ビームの偏向方向の変更(追従)によって、位置A1にあった試料Wの部分が移動によって位置A2の位置に到達するまでの間、二次元センサ7611には、常に、最初に位置A1にあった試料Wの部分からの二次ビームが入射することになり、この期間(一周期)は、二次元センサ7611は試料Wの同じ領域について、二次ビーム像を撮影することになる。位置A1にあった試料Wの部分が位置A2に達すると、高速偏向器749は、視野領域を再び位置A1に戻す。これによって、試料Wの新たな部分の二次ビーム像を撮影することができる。二次元センサ7611の視野領域が位置A2から位置A1に戻った後は、同様にして、高速偏向器749によって二次ビームの偏向方向が変更されることによって、試料Wの移動に追従して、二次元センサ7611の視野領域が位置A1から位置A2に向けて移動する。
上記のように二次元センサ7611の視野領域は、位置A1と位置A2との間を往復するが、視野領域には常に一次ビームが照射されていなければならない。これを実現するためには、図54(b)に示すように、一次ビームの照射領域EFが、位置A1における視野領域VF1と位置A2における視野領域VF2とをすべてカバーするように一次ビームを試料Wに照射すればよく、すなわち、照射領域EFが視野領域2個分の大きさを有していればよい。この場合には、一次ビームの照射領域EFは常にこの位置に固定しておくことができる。
また、図54(c)に示すように、一次ビームの照射領域を試料W及び視野領域の移動に追従させて、位置A1における照射領域EF1から位置A2における照射領域EF2まで移動させてもよい。このときの1次ビームの照射領域の変更は、E×Bフィルタ726によって一次ビームの偏向方向を変更することによって行うことができる。
2次光学系74には、試料である試料Wに近い方から順に第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、及び第4の高圧基準管704が、それぞれ二次ビームの経路に沿って、この経路を囲うように設けられている。第2の高圧基準管702は、試料Wとビーム分離器としてのE×Bフィルタ726との間に設けられ、第3の高圧基準管703は、E×Bフィルタ726よりも二次元センサ7611側に設けられ、第4の高圧基準管704は、第3の高圧基準管703と検出器761との間に設けられる。NAアパーチャ742は第3の高圧基準管703の内部に設けられ、高速偏向器749は第4の高圧基準管704の内部に設けられる。
第1の高圧基準管701、第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、第4の高圧基準管704には、それぞれ第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4が印加される。実施の形態では、検出器761における検出電圧をV5とすると、これらの電圧は、V1=V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係にある。すなわち、高速偏向器749で二次ビームを高速に偏向するために、第4の高圧基準管704に印加する電圧V4を第3の電圧V3より小さくして、二次ビームの電子エネルギーを小さくしている。ここで、第3の電圧V3は、例えば40kVであり、第4の電圧V4は、例えば5kVである。
上述のように高速偏向器749で二次ビームを偏向するが、そのときの二次ビームの電子エネルギーが例えば10kVより大きいと、高速偏向器749における偏向電圧を高くする必要があり、二次ビームの高速な偏向が困難でとなる。そこで、第4の高圧基準管704を第3の高圧基準管とは切り離して設けて、第4の高圧基準管704に印加する電圧を例えば5kV程度にまで落として、高速偏向器749に入射する二次ビームの電子エネルギーを小さくする必要がある。一方で、このような第3の電圧から第4の電圧への急激な変化によって、二次ビームに湾曲収差が生じ、検出器761に形成される二次ビームの像(二次ビーム像)に歪が生じてしまう。
そこで、本実施の形態では、第3の高圧基準管703と第4の高圧基準管704との間に、中間電極(緩和電極)750を設けて、この中間電極に、第3の電圧V3より大きく、第4の電圧V4より小さい中間電圧を印加する。これによって、上述の湾曲収差の発生を抑えることができ、よって二次ビーム像の歪を抑えることができる。
図55は、高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図である。中間電極750は、例えば40kVの第3の電圧を印加される第3の高圧基準管703と、例えば5kVの第4の電圧を印加される第4の高圧基準管704との間に、第3の高圧基準管703及び第4の高圧基準管704に接することなく配置され、例えば10kV〜13kVの中間電圧を印加される。
高速偏向器749は、二次ビームの偏向を高精度で行うため、上述のように12極子構造を用いている。12極は、等角度間隔で配置されており、制御装置2によって個別に電圧を印加することが可能である。第4の高圧基準管によって第4の電圧V4に重畳された高速偏向用の電源及びアンプを用いることで、高速偏向器749の電圧精度を向上させている。
結像レンズ741には、2重の磁場レンズ方式を採用している。上側コイル7411と下側コイル7412の磁束方向を逆にすることで、二次ビーム像を回転させることができる。また、この磁場レンズ用コイル7411、7412は、2配線方式であり、これによって一定電力で温度を安定化させることができる。第3の高圧基準管703による第3の電圧V3から第4の高圧基準管704による第4の電圧V4に電子エネルギーが変化した状態で結像を行うため、電位が変化した付近に結像レンズ741を配置し、その前段に電界変化によるレンズ効果の影響を緩和するための中間電極(電界緩和用電極)750を配置する。これにより、急激な電位変化による二次ビーム像の歪を抑えることができる。
二次ビーム像は、結像レンズ741による拡大結像を行う検出器761に近づくと、像が大きくなる。よって、二次ビーム像が小さい状態の結像レンズ741に近い位置で高速偏向を行うために、結像レンズ付近に高速偏向器749を設置する。即ち、二次ビーム像が大きくなると、二次ビームを偏向するのに要する偏向電圧が大きくなり、偏向感度が低下するため、高速偏向が困難になり、上述の歪補正精度が低下し、後述の振動補正精度も低下してしまう。よって、中間電極750、結像レンズ741、高速偏向器749は、二次ビームの進行方向にこの順でなるべく近く配置されることが望ましく、これらが一体となったユニットとして構成されるのが望ましい。
高速偏向器749は、試料Wの移動に追従するための偏向だけでなく、上述のような二次ビーム像の歪補正や、後述の振動補正も行うが、これらの機能は制御装置2によって12極に個別に電圧を印加することで実現される。
図52に戻って、振動補正について説明する。上述のように、試料Wはステージ装置50によって連続的に一定速度で移動し、高速偏向器749は、この試料Wの移動に追従して視野領域が移動するように二次ビームの偏向方向を変更するが、このとき、ステージ装置50による試料Wの移動に、意図しない振動が与えられることがある。上述のように、視野領域の移動の一周期の間には、二次元センサ7611は常に試料Wの同一の部分の二次ビーム像を撮像しているが、試料Wに意図しない振動が加わると、二次元センサ7611の各画素に、試料Wの他の部分からの二次ビームが入射するというコンタミネーションが生じる。
上述のように、ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、複数のテーブルを動作させることにより、ホルダ55に保持された試料WをX方向、Y方向及びZ方向(図50において上下方向)に、更に試料の支持面に垂直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めする。このための構成として、ホルダ55にはミラー571が固定され、主ハウジング30の内壁にはミラー571にレーザビームを照射して、ミラー571から反射して戻ってきたレーザが入射されるレーザ干渉計572が設けられる。
本実施の形態の検査装置1では、このホルダ55に固定されたミラー571とレーザ干渉計572を振動検出手段として用いて、振動補正を行う。レーザ干渉計572にて検出された試料Wの意図しない振動は、制御装置2に入力される。制御装置2には、試料Wが意図しない振動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されているが、制御装置2は、本来の試料Wの移動だけでなく、レーザ干渉計572にて検出された試料Wの意図しない振動も考慮して、高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御する。なお、制御装置2に、試料Wが意図しない振動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されていなくてもよく、この場合には、制御装置2は、レーザ干渉計572にて検出された、試料Wの意図しない振動も含む試料W(を保持したホルダ55)の位置を検出して、この位置に基づいて高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御してもよい。
以上のように、本実施の形態の電子光学装置70を含む検査装置1では、試料Wが移動している間に、試料Wの移動に同期して、試料Wの同じ部分の二次ビームが二次元センサ7611の同じ部分に入射するように、二次ビームを偏向する高速偏向器749が、二次ビーム像の歪を補正する歪み補正器、及び試料Wの意図しない振動によるコンタミネーションを補正する振動補正器としても機能するので、二次元センサ7611では精度の高い二次ビーム像が得られる。
なお、第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4、検出電圧V5は、上記の例に限られず、例えば、V1<V2、V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係であってもよく、すなわち、第1の電圧V1を第2の電圧V2及び第3の電圧V3より小さくしてもよい。1次光学系72における第1の高圧基準管701に印加する電圧V1を小さくすると、第1の高圧基準管701における放電リスクを低減できる。即ち、1次光学系は、第1の高圧基準管701内にアパーチャ723があり、このアパーチャ723において電子銃721からのエミッションの50%以上を吸収するので、リーク電流量は大きく、また、リーク電流量の変動も大きい。これに対して、第1の高圧基準管701に印加する第1の電圧V1を小さくすることで、放電のリスクを低減ないし解消できる。
また、上記の検査装置1において、第4の高圧基準管704に印加する第4の電圧V4を調整する電圧制御装置を設け、第4の電圧V4を可変としてもよい。このとき、第4の電圧V4は、例えば、±1kVの範囲で調整可能としてよい。このように第4の電圧V4を調整することで、検出器761への入射する二次ビームの電子エネルギー(入射エネルギー)を調整できることになる。これによって、二次元センサ7611のゲイン(すなわち、二次ビーム像の輝度)を調整できる。
<ソフトウェアによる再検査シミュレーション>
図52に戻って、上述したように、電子光学装置70は、ステージ装置50に保持された試料である試料Wに面ビームである一次ビームを照射して、それによって試料Wから発生した二次ビームを検出器761に導く。検出器761は、図示しない二次元センサによって二次ビームを捕捉して二次ビーム像の画像を生成し、画像処理部763に出力する。
画像処理部763は、検査処理装置として、検出器761から入力された二次ビーム像に対して、像処理フィルタ(平均値(Mean)フィルタ、ガウシアン(Gaussian)フィルタ、中央値(Median)フィルタ等)を用いて画像処理を施し、シェーディング補正をした上で、セル−セル比較、ダイ−ダイ比較、ダイ−データベース比較等の比較処理によって検査を行う。具体的には、画像処理部763は、比較処理において差分が所定の閾値を超える部分を欠陥として検出して、欠陥画像を生成する。
画像処理部763は、設定された検査条件パラメータに従って検査を行う。この検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報が含まれる。なお、この検出したくない欠陥の分類情報は、検査後にSEMでの撮像を行って分類した結果として得られる。
ところで、試料に生じている欠陥を検査する検査装置において、真の欠陥を確実に検出し、かつ、欠陥でない箇所(疑似欠陥)を検出しないようにするためには、検出閾値等の検査条件を変えながら何度も検査を繰り返し、最適な検査条件を決定する必要がある。
しかしながら、検査を繰り返すと、検査条件の最適化に時間がかかるという問題がある。また、検査を繰り返すことで、試料にダメージが蓄積したり、試料が汚染されたりするといった問題も生じる。
そこで、試料に与えるダメージや試料の汚染を回避して少ない検査回数で検査条件を決定するために、本実施の形態の検査装置1には、シミュレーション装置200が設けられている。画像処理部763は、欠陥画像とそれを生成するのに用いた未処理画像(二次ビーム像)をシミュレーション装置200に出力する。
シミュレーション装置200は、シミュレーション処理部201と、入力部202と、モニタ203と、を備えており、例えば入力手段とモニタと演算処理ユニット、メモリ、記憶装置、入出力ポート等を備えた汎用のコンピュータによって構成される。シミュレーション処理部201は、本実施の形態の検査結果レビュープログラムが演算処理ユニットによって実行されることで実現される。この検査結果レビュープログラムは、ネットワークを通じてシミュレーション装置200に提供されてもよく、シミュレーション装置200が記憶媒体に記憶された検索結果レビュープログラムを読み出すことでシミュレーション装置200に提供されてもよい。このようにして提供された検索結果レビュープログラムは、シミュレーション装置200の記憶装置に記憶され、そこから読み出されて実行されることで、シミュレーション処理部201が構成される。
シミュレーション処理部201は、検査装置100から入力した二次ビーム像に対して、検査条件パラメータを変更しながら、再検査シミュレーションを行い、最適な検査条件パラメータを決定する。シミュレーション処理部201が再検査シミュレーションのために変更する検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報等が含まれる。
図56は、シミュレーション装置200の動作を示すフロー図である。まず、電子光学装置70は検査を行い、画像処理部763は検査結果をシミュレーション装置200に出力する(ステップS331)。このとき、画像処理部763は、検査結果とともに、その検査結果を得るのに用いた未処理画像(二次ビーム像)、及び検出したくない欠陥の分類情報もシミュレーション装置200に出力する。シミュレーション装置200では、シミュレーション処理部201がこの検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に表示する(ステップS332)。
次に、シミュレーション処理部201は、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行し(ステップS333)、それによって得られた再検査結果を出力する(ステップS334)。この再検査シミュレーションでは、電子光学装置70における検査と同様に、検出したくない欠陥の分類情報にある欠陥については検出しないようにする。シミュレーション処理部201は、ステップS334で得られた再検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に出力する(ステップS335)。
次に、この再検査によって得られた欠陥画像を評価することで、検査条件が最適であるかが判断され(ステップS336)、検査条件が最適でなければ(ステップS336でNO)、ステップS333に戻って、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行する(ステップS333)。このように検査条件パラメータを変えながらの再検査シミュレーションを繰り返して、検査条件が最適になったときは(ステップS336でYES)、その最適になった検査条件を電子光学装置70で採用する検査条件として決定し(ステップS337)、処理を終了する。シミュレーション処理部201は、検索条件が最適であるか否かは、例えば、入力部202からの入力に基づいて判断してよい。
以上のように、本実施の形態によれば、電子光学装置70において実際の検査を行ったうえで、シミュレーション装置200で電子光学装置70から出力された欠陥画像及び未処理画像を用いて、検査条件を変えながら検査結果レビューソフトウェアによって再検査シミュレーションを行うので、少ない検査回数で検査条件の最適化が可能となり、検査条件を最適化するための時間を短縮できる。また、電子光学装置70による実際の検査を繰り返す必要がないので、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
<対物レンズ>
図57は、本実施の形態の検査装置の2次光学系に用いられる対物レンズ730の構成を示す図である。図57に示すように、対物レンズ730は、第1のコイル7301、第2のコイル7302(キャンセル用コイル)、ヨーク7303、加速電極7304を備えている。第1のコイル7301は、メインコイルであり、第2のコイル7302は、キャンセル用コイルである。第2のコイル7302は、2次光学系の光軸に沿って第1のコイル7301と並ぶように配置されており、例えば、第1のコイル7301の試料面側(図57における下側)に配置されている。ヨーク7303は、第1のコイル7301を収容する第1の収容部7306と、第2のコイル7302を収容する第2の収容部7307を備えており、それぞれの収容部に対して、2次光学系の光軸に近い位置に光軸と同心の円環状の切れ目7308を有している。ヨーク7303は、磁性体で構成される。試料と2次光学系の間には電位差があり、試料から出発した二次電子はその電界で所定のポテンシャルまで加速される。加速電極7304は、ヨーク7303と試料との間に配置されており、この場合、ヨーク7303の試料面側(図57における下側)に配置されている。
第2のコイル7302は、第1のコイル7301とは非対称に設計されてもよい。すなわち、第2のコイル7302のサイズや巻き数は、第1のコイル7301のサイズや巻き数と異なってもよい。例えば、第2のコイル7302のサイズは、第1のコイル7301のサイズより小さく、第2のコイル7302の巻き数は、第2のコイル7302の巻き数より少なくてもよい。また、第2のコイル7302の流される電流値は、第1のコイル7301に流される電流値より小さくてもよい。さらに、第2のコイル7302は、第1のコイル7301と反対の磁場を発生させるように構成されている。例えば、第2のコイル7302の巻き方向は、第1のコイル7301の巻き方向と反対である(この場合、第2のコイル7302に流される電流の向きと、第1のコイル7301に流される電流の向きは同じである)。あるいは、第2のコイル7302に流される電流の向きと、第1のコイル7301に流される電流の向きは反対である(この場合、第2のコイル7302の巻き方向は、第1のコイル7301の巻き方向と同じである)。この対物レンズ730は、非対称のダブルギャップレンズで構成されているともいえる。
図58は、本実施の形態の対物レンズ730の磁束密度を示す図である。図58に示すように、2次光学系の光軸上における試料面の位置(試料面上)において、第1のコイル7301の磁束密度は、第2のコイル7302の磁束密度によりキャンセルされる。この場合、試料面上において、第1のコイル7301の磁束密度と第2のコイル7302の磁束密度の和がゼロである。
本実施の形態の対物レンズ730によれば、2次光学系の光軸上における試料面の位置で、第1のコイル7301の磁束密度が第2のコイル7302の磁束密度によりキャンセルされると、2次光学系の光軸以外の位置から光軸と平行に出射した二次電子は1点で光軸と交わるので、そこに開口絞りを配置する事により、試料面上の広い視野に亘って開口絞りを通過する開き角分布が一定になり、開き角分布の不均一に起因する信号量の不均一や収差の不均一の問題が発生しない。同時に、物体側テレセントリックな光学系を構成する事が可能になる。
また、本実施の形態の対物レンズ730によれば、さらに加速電極7304を設けることにより、十分な加速電圧を確保することができ、収差を小さくすることができる。
以上、本実施形態の実施の形態を例示により説明したが、本実施形態の範囲はこれらに限定されるものではなく、付記に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
例えば、上記の実施の形態では、試料面上において、第1のコイル7301の磁束密度と第2のコイル7302の磁束密度の和がゼロである場合について説明したが、第1のコイル7301の磁束密度と第2のコイル7302の磁束密度の和は必ずしもゼロでなくてもよい。すなわち、試料面上において、第1のコイル7301の磁束密度と第2のコイル7302の磁束密度の和はゼロに近い値でもよく、2次光学系の視野内の位置から光軸と平行に出発した二次電子が、開口絞りの位置で、光軸との離軸距離が開口径の例えば20%以内であれば、開き角分布の不均一に起因する信号量の不均一や収差の不均一の問題に影響せず、また、物体側テレセントリックな光学系を構成する事にも支障がない。
以上、第3の実施形態から、例えば次のような態様が想到される。
[付記1]
試料を検査する検査装置であって、
前記試料を載置するステージと、
前記ステージ上の前記試料に対して電子ビームを所定の大きさの面形状に照射する1次光学系と、
対物レンズを有し、前記電子ビームの照射により前記試料から発生した二次電子を加速させ、前記二次電子を写像投影して検出器に導く2次光学系と、
を備え、
前記対物レンズは、
第1のコイルと、
前記2次光学系の光軸に沿って前記第1のコイルと並ぶように配置され、かつ、前記第1のコイルとは非対称に設計される第2のコイルと、
磁性材から構成され、前記第1のコイルを収納する第1の収容部および前記第2のコイルを収容する第2の収容部を有し、前記第1の収容部および前記第2の収容部のそれぞれについて前記2次光学系の光軸に近い箇所に前記光軸と同心の円環状の切れ目を有するヨークと、
を備え、
前記試料と前記2次光学系の間には電位差があり、前記試料から出発した前記二次電子はその電界で所定のポテンシャルまで加速され、
前記2次光学系の光軸上における試料面の位置において、前記第1のコイルの磁束密度が、前記第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされるように前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのそれぞれに電流が印加されることを特徴とする検査装置。
[付記2]
前記対物レンズは、前記ヨークと前記試料との間に配置され、非磁性材を材料として構成される加速電極を備える、付記1に記載の検査装置。
[付記3]
試料を検査する検査装置に備えられる対物レンズであって、
前記検査装置では、ステージ上の試料に対して電子ビームが所定の大きさの面形状に照射され、前記電子ビームの照射により前記試料から発生した二次電子が写像投影されて検出器に導かれ、
前記対物レンズは、
第1のコイルと、
前記2次光学系の光軸に沿って前記第1のコイルと並ぶように配置され、かつ、前記第1のコイルとは非対称に設計される第2のコイルと、
磁性材から構成され、前記第1のコイルを収納する第1の収容部および前記第2のコイルを収容する第2の収容部を有し、前記第1の収容部および前記第2の収容部のそれぞれについて前記2次光学系の光軸に近い位置に前記光軸と同心の円環状の切れ目を有するヨークと、
を備え、
前記試料と前記2次光学系の間には電位差があり、前記試料から出発した前記二次電子はその電界で所定のポテンシャルまで加速され、
前記2次光学系の光軸上における試料面の位置において、前記第1のコイルの磁束密度が、前記第2のコイルの磁束密度によりキャンセルされるように前記第1のコイルおよび前記第2のコイルのそれぞれに電流が印加されることを特徴とする対物レンズ。
[符号の説明]
1:検査装置、2:制御装置、30:主ハウジング、50:ステージ装置、55:ホルダ、571:ミラー、572:レーザ干渉計、70:電子光学装置、761:検出器、7611:二次元センサ、763:画像処理部、72:1次光学系、74:2次光学系、7211:レーザ光源、7212:電光面カソード、722:レンズ、701:第1の高圧基準管、702:第2の高圧基準管、703:第3の高圧基準管、704:第4の高圧基準管、730:対物レンズ、749:高速偏向器、742:NAアパーチャ、726:E×Bフィルタ、750:中間電極、90:偏向制御装置、7301:第1のコイル、7302:第2のコイル、7303:ヨーク、7304:加速電極、7306:第1の収容部、7307:第2の収容部、7308:切れ目
4.第4の実施形態
[技術分野]
本実施形態は、直交する電界と磁界から構成され、電子ビームのエネルギー分離器であるウィーンフィルターに関する。
[背景技術]
従来の半導体検査装置として、ステージの連続的な移動に伴う試料の移動と偏向手段による試料への電子照射によって試料から出射した電子ビーム(以下二次ビームと記す)の軌道の偏向とを同期させて制御することで、二次元CCDセンサ上で二次ビームの像を停止させ、その同期期間中に試料の同じ検出領域の像を二次元CCDセンサの同じ個所に投影させるようにした電子像追従式の電子光学装置を用いた電子線検査装置が知られている(例えば、特許文献5参照)。
また、試料に照射する電子ビーム(以下一次ビームと記す)の試料へ入射するエネルギーが数eVになると、照射領域の電流密度の均一化のみならず、試料への入射角分布の均一性も求められるようになり、それも考慮した電子光学系の設計が必要になる。
ウィーンフィルターで光軸が曲げられる一次ビームにおいて、電界方向と磁界方向の集束特性の差が生じることについては、特許文献2で述べられているが、一次ビームの曲げ角度が45°程度になると、もはや収差と呼べない程の著しい差が生じる。
[本実施形態の概要]
[本実施形態が解決しようとする課題]
一次ビームの電子光学系を設計する上で、段落0004で記したような電界方向と磁界方向の集束特性の差はない方が好ましい。さらに、それはウィーンフィルター単体で実現できる方が好ましい。特許文献2では、電極の角度を変化させる事で実現しているが、多極子の電磁極で構成されるウィーンフィルターにおいては、そのような構成は採用しづらい。
本実施形態は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本実施形態の目的は、多極子の電磁極で構成され、かつ一次ビームの電界方向と磁界方向の集束特性の差が生じにくいウィーンフィルターを提供する。
[課題を解決するための手段]
本実施形態の一態様によれば、試料に一次ビームを照射し、これによって前記試料から発生した二次ビームに基づいて前記試料の検査を行う検査装置に用いられ、斜め上方から入射した前記一次ビームの向きをほぼ鉛直下方向に変えて出射し、かつ、鉛直上向きに入射した前記二次ビームの向きをほとんど変えずに出射させるウィーンフィルターであって、前記二次ビームの光軸を中心として等角度間隔で8個以上配置され、導電材料かつ軟磁性材料からなる電磁極と、それぞれの前記電磁極の周りに巻回されたコイルと、前記電磁極の周囲を覆うように配置されるシールド部材と、を備え、前記電磁極には、一次ビームが偏向する方向に均一平行電界を二次ビームの光軸近傍に発生させるように、それぞれ異なる電位を印加可能であり、前記コイルには、一次ビームが偏向する方向に均一平行磁界を二次ビームの光軸近傍に発生させるように、それぞれ異なる電流を印加可能であり、前記シールド部材には、斜め上方から前記一次ビームが入射する第1ビーム孔と、前記電磁極により偏向された前記一次ビームが出射し、かつ、前記試料から発生した前記二次ビームが入射する第2ビーム孔と、前記二次ビームが出射する第3ビーム孔と、が設けられ、前記第1ビーム孔の出口面は非水平である、ウィーンフィルターが提供される。
前記第1ビーム孔の出口面が非水平であることで、斜め上方から入射される一次ビームの集束特性を改善できる。
望ましくは、前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束特性と、磁界方向の集束特性と、に応じて設定される。
前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束特性と、磁界方向の集束特性と、のずれを減少させる角度に設定されてもよい。
また、前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束位置と、磁界方向の集束位置と、のずれを減少させる角度に設定されてもよい。
斜め上方45度から前記一次ビームが前記第1ビーム孔に入射し、前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、略90度であってもよい。
また、前記電磁極は、前記均一平行電界および前記均一平行磁界に加えて、四極子電界または四極子磁界を重畳してもよい。
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、新たな光学要素を付加することなく、一次ビームの二方向集束を達成できる。また、シールド部材の形状を変化させるだけなので、特許文献2のように、電極や磁極の形状を非対称に変化させる必要がないので、より簡便に二方向集束が実現でき、同時に二次ビームの直進性を損ないがちな要因がない。
[図面の簡単な説明]
[図59]本実施形態の一実施形態に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図である。[図60]図59に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図59の線B−Bに沿って見た図である。
[図61]本実施形態の一実施形態に係る電子光学装置の構成を示す図である。
[図62]図61に示す電子光学装置におけるビーム経路を説明するための図である。
[図63](a)本実施形態の一実施形態に係る二次ビームがウエハの移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器の動作を説明する図である。 (b)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。 (c)本実施形態の一実施形態に係る照射領域と視野領域との関係を示す図である。
[図64]本実施形態の一実施形態に係る高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図である。
[図65]本実施形態の一実施形態に係るシミュレーション装置の動作を示すフロー図である。
[図66](a)本実施形態に係るウィーンフィルター726の断面図である。(b)本実施形態に係るウィーンフィルター726における一次ビームB1〜B4の出射位置を示す図である。
[図67]複数の電磁極90を模式的に示す斜視図である。
[図68]シールド部材91の断面を斜めから見た図を模式的に示す図である。
[図69]本実施形態に係るウィーンフィルター726における一次ビームB1〜B4の電界方向及び磁界方向の集束特性を示す図である。
[図70]変形例に係るウィーンフィルター726の断面図である。
[図71](a)比較例に係るウィーンフィルター726’の断面図である。(b)本実施形態に係るウィーンフィルター726’における一次ビームB1〜B4の出射位置を示す図である。
[図72]比較例に係るウィーンフィルター726’における一次ビームB1〜B4の電界方向及び磁界方向の集束特性を示す図である。
以下、本実施形態の実施の形態の検査装置について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本実施形態を実施する場合の一例を示すものであって、本実施形態を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。本実施形態の実施にあたっては、実施の形態に応じた具体的構成が適宜採用されてよい。また、先行の実施形態とは別個に符号を付していることに留意されたい。
図59及び図60において、本実施形態による検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施形態による検査装置1は、複数枚の試料を収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、試料をカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、主ハウジング30に取り付けられた電子光学装置70と、光学顕微鏡3000と、走査型電子顕微鏡(SEM)3002と、を備え、それらは図59及び図60に示されるような位置関係で配置されている。検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、試料に電位を印加する電位印加機構と、電子ビームキャリブレーション機構と、ステージ装置50上での試料の位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871と、を備えている。
ここで試料とは、露光用マスク、EUVマスク、ナノインプリント用マスク(及びテンプレート)、半導体ウエハ、光学素子用基板、光回路用基板等である。これらは、パターンを有するものとパターンがないものとがある。パターンが有るものは、凹凸のあるものとないものとが有る。凹凸のないパターンは、異なった材料によるパターン形成がなされている。パターンがないものには、酸化膜がコーティングされているものと、酸化膜がコーティングされていないものとが有る。
<カセットホルダ>
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)の試料が上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施形態では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施形態では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テーブル11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図60で鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図60で実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置20内の第1の搬送ユニット61の回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図59で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すればよいので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
なお、カセットc内に収納される試料は、検査を受ける試料であり、そのような検査は、半導体製造工程中で試料を処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた試料、表面にパターンが形成された試料、又はパターンが未だに形成されていない試料が、カセット内に収納される。カセットc内に収容される試料は多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置の試料を第1の搬送ユニット61で保持できるように、第1の搬送ユニット61のアーム612を上下移動できるようになっている。
<ミニエンバイロメント装置>
図59及び図60において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての試料を粗位置決めするプリアライナ25とを備えている。
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有し、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施形態では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間21内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施形態では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された第1の搬送ユニット61による搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃が試料に付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。試料近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3ないし0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間21内でなくその外側に設けてもよい。
排出装置24は、第1の搬送ユニット61の試料搬送面より下側の位置で第1の搬送ユニット61の下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー(図示せず)と、吸入ダクト241とブロワーとを接続する導管(図示せず)と、を備えている。この排出装置24は、第1の搬送ユニット61の周囲を流れ下り、第1の搬送ユニット61により発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管及びブロワーを介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナ25は、試料に形成されたオリエンテーションフラット(円形の試料の外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、試料の外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出して試料の軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナ25は検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナ25自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
なお、図示しないが、プリアライナ25の下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナ25から排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
<主ハウジング>
図59及び図60において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施形態では、上に載置されるステージ装置50等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施形態において、ハウジング本体32及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁には試料出し入れ用の出入り口325が形成されている。
なお、防振装置37は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
<ローダハウジング>
図59及び図60において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間で試料のやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置20のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで周壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで周壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置20を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけばよい。
第1のローディングチャンバ41内には、複数(本実施形態では2枚)の試料を上下に隔てて水平の状態で支持するサンプルラック47が配設されている。サンプルラック47は、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部が形成され、その支持部の上に試料Wの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間から試料に接近させてアームにより試料を把持するようになっている。
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、試料の汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ41及び42内に収容されていて次に欠陥検査される試料をワーキングチャンバ31内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバ41及び42を採用することによって、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求されるレーザ光源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42には、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
<ステージ装置>
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図59において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図59において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55の試料載置面551上に試料を解放可能に保持する。ホルダは、試料を機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持された試料を電子光学装置70から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図59において上下方向)に、更に試料の支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えて試料のノッチ或いはオリフラの位置を測定して試料の電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御したりする。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置50用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
電子ビームに対する試料の回転位置やX、Y位置を後述する信号検出系或いは画像処理系に予め入力することで、検査の際に得られる試料の回転位置やX、Y位置を示す信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられた試料チャック機構は、試料をチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、試料の外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。試料チャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
なお、この実施形態では図60で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
図59及び図60に示すように、本実施の形態のステージ装置1は、第1及び第2の試料Wを載置して連続的に移動し、第1の電子光学装置701の一次光学系76が第1の試料Wに一次ビームを照射している間に、第2の電子光学装置702の一次光学系は第2の試料に一次ビームを照射するようになっている。このような態様によれば、複数の試料Wの検査に要する時間を大幅に短縮することができる。
<ローダー>
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施形態では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等の試料を把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダ10に保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容された試料をアームの上に載せ、或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図60に示すような状態)、アームがプリアライナ25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアーム612が再び伸びてアーム612に保持された試料をプリアライナ25に載せる。プリアライナ25から前記と逆にして試料を受け取った後は、アーム612は更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のサンプルラック47に試料を受け渡す。なお、機械的に試料を把持する場合には試料の周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これは試料には周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニット61と構造が基本的に同じであり、試料の搬送をサンプルラック47とステージ装置50の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダ10に保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆の試料の搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、試料のカセットからの取り出し及びそれへの挿入、試料のサンプルラックへの載置及びそこからの取り出し、及び、試料のステージ装置50への載置及びそこからの取り出しのときだけである。したがって、大型の試料、例えば直径30cmや45cmの試料の移動もスムースに行うことができる。
<試料の搬送>
次にカセットホルダ10に支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへの試料の搬送について、順を追って説明する。
カセットホルダ10は、上述したように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施形態において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
カセットが出入り口225に整合されると、カセットcに設けられたカバー(図示せず)が開き、また、カセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセットc内及びミニエンバイロメント空間21内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
一方、第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM2の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されている試料のうち1枚を受け取る。なお、アーム612と、カセットcから取り出されるべき試料との上下方向の位置調整は、この実施形態では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダ10の昇降テーブル11の上下動で行ってもよいし、或いはその両者を行ってもよい。
アーム612による試料の受け取りが完了すると、アーム612は縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アーム612は伸びて、先端に載せられ或いはチャックで把持された試料をプリアライナ25の上に載せ、プリアライナ25によって試料の回転方向の向き(試料表面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると第1の搬送ユニット61はアーム612の先端にプリアライナ25から試料を受け取った後、アーム612を縮ませ、方向M4に向けてアーム612を伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びて試料を第1のローディングチャンバ41内のサンプルラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてサンプルラック47に試料が受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
第1の搬送ユニット61による試料の搬送過程において、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃が試料の上面に付着するのを防止する。搬送ユニット61周辺の空気の一部(この実施形態では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジング22の底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のサンプルラック47内に第1の搬送ユニット61により試料が載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバ41の真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口435を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でサンプルラック47から1枚の試料を受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。試料の受け取りが完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めサンプルラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ42内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ41内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット63のアーム632はワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置50では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図60で上方に移動し、また、Xテーブル53は図60で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバ42がワーキングチャンバ31の真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アーム632が伸びて試料を保持したアーム632の先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置50に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上に試料を載置する。試料の載置が完了するとアーム632が縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
以上は、カセットc内の試料をステージ装置50上に搬送するまでの動作について説明したが、ステージ装置50に載せられて処理が完了した試料をステージ装置50からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行う。また、サンプルラック47に複数の試料を載置しておくため、第2の搬送ユニット63でサンプルラック47とステージ装置50との間で試料の搬送を行う間に、第1の搬送ユニット61でカセットcとサンプルラック47との間で試料の搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
具体的には、サンプルラック47に、既に処理済の試料Aと未処理の試料Bがある場合、(1)まず、ステージ装置50に未処理の試料Bを移動し、処理を開始し、(2)この処理中に、処理済試料Aを、アーム632によりステージ装置50からサンプルラック47に移動し、未処理の試料Cを同じくアーム632によりサンプルラック47から抜き出し、プリアライナ25で位置決めした後、ローディングチャンバ41のサンプルラック47に移動する。このようにすることで、サンプルラック47の中は、試料Bを処理中に、処理済の試料Aが未処理の試料Cに置き換えることができる。
また、検査や評価を行うこのような装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、それぞれの装置に一つのサンプルラック47から試料を移動することで、複数枚の試料を同時処理することもできる。
上記の実施形態によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(A)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(B)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(C)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを、一体的に振動防止装置を介して支持したので、外部の環境に影響されずにステージ装置50への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
<電子光学装置>
図61は、電子光学装置70の構成を示す図である。図62は、電子光学装置70におけるビーム経路を説明するための図である。電子光学装置70の検査対象(試料)は、試料Wである。試料Wは、シリコンウエハ、ガラスマスク、半導体基板、半導体パターン基板、又は、金属膜を有する基板等である。本実施の形態に係る電子線検査装置は、これらの基板からなる試料Wの表面上の異物の存在を検出する。異物は、絶縁物、導電物、半導体材料、又はこれらの複合体等である。異物の種類は、パーティクル、洗浄残物(有機物)、表面での反応生成物等である。
図61及び図62に示すように、電子光学装置70は、電子ビームを生成する一次光学系72と、試料Wからの二次放出電子又はミラー電子の拡大像を結像させる二次光学系74と、それらの電子を検出する検出器761と、を備えている。検出器761には、検出器761からの信号を処理する画像処理部763が接続されている。
一次光学系72は、電子ビームを生成し、試料Wに、検出器761の検出サイズをカバーする領域を一括照射する構成である。一次光学系72は、電子銃721と、レンズ722と、アパーチャ723と、ウィーンフィルター726と、レンズ727を有している。電子銃721は、レーザ光源7211と電光面カソード7212とを有しており、電子銃721により電子ビームが生成される。生成された電子ビームは加速され、レンズ722及びアパーチャ723によって整形される。そして、ウィーンフィルター726にて、電子ビームは、磁界によるローレンツ力と電界によるクーロン力の影響を受け、斜め上方から入射して、鉛直下方向に偏向され、試料Wに向かう。レンズ727は、ウィーンフィルター726付近に形成された中間像を試料Wに投影する。一次ビームは、試料W付近で減速され、試料Wに入射する、もしくは試料W近傍で反射される。
一次光学系72は、プレチャージの帯電用電子ビームと撮像電子ビームの双方の照射を行う。一次ビームの試料Wへの入射エネルギー(ランディングエネルギー)は、試料電位と電子銃の加速電位との差で定義されるが、実験結果では、プレチャージのランディングエネルギーLE1と、撮像電子ビームのランディングエネルギーLE2との差異は、好適には5〜20〔eV〕である。
この点に関し、試料Wの表面21上の異物と周囲との電位差があるときに、プレチャージのランディングエネルギーLE1を負帯電領域で照射したとする。LE1の値に応じて、チャージアップ電圧は異なる。LE1とLE2の相対比が変わるからである(LE2は上記のように撮像電子ビームのランディングエネルギーである)。LE1が大きいとチャージアップ電圧が高くなり、これにより、異物の上方の位置(検出器761により近い位置)で反射ポイントが形成される。この反射ポイントの位置に応じて、ミラー電子の軌道と透過率が変化する。したがって、反射ポイントに応じて、最適なチャージアップ電圧条件が決まる。また、LE1が低すぎると、ミラー電子形成の効率が低下する。このLE1とLE2との差異は、望ましくは5〜20〔eV〕である。また、LE1の値は、好ましくは0〜40〔eV〕であり、更に好ましくは5〜20〔eV〕である。
ウィーンフィルター726の電界と磁界の条件を調整することにより、一次電子ビームの試料Wへの入射角を定めることができる。例えば、一次ビームが、試料Wに対して垂直に入射するように、ウィーンフィルター726の条件を設定可能である。更に感度を増大するためには、例えば、試料Wに対する一次光学系の電子ビームの入射角度をわずかに傾けることが効果的である。適当な傾き角は、0.05〜10度であり、好ましくは0.1〜3度程度である。
このように、異物に対してわずかな入射角を持って電子ビームを照射させることにより、異物からの信号を強くし、同時に、ミラー電子の軌道が二次光学系光軸中心から外れない条件を形成することができるためにミラー電子の透過率を高めることができる。したがって、異物をチャージアップさせて、ミラー電子を導くときに、傾いた電子ビームが大変有利に用いられる。
ステージ装置50上には試料Wがあり、試料Wの上に異物がある。一次ビームは、ランディングエネルギーLE5〜10〔eV〕で試料Wの表面21に照射される。予めチャージアップされた異物によって一次ビームの電子が異物に接触せずに跳ね返される。こうして生成されたミラー電子が二次光学系74により検出器761に導かれる。同時に、チャージアップされていない試料Wの表面21に照射された一次ビームによる二次放出電子も生成される。しかし、ランディングエネルギーLE5〜10〔eV〕程度の電子照射による二次電子放出効率は0に近い上、二次電子は、試料Wの表面21からLambertのcos則に近い角度分布で放出されるため、二次電子は二次電子光学系のアパーチャ742によりそのほとんどがカットされ、検出器761に到達する二次電子割合は、低い値であり、例えば、0.5〜4.0%程度である。一方、一次電子に対するミラー電子の割合はほぼ1であり、かつ、散乱は二次電子の角度分布よりも少ないので、ミラー電子は、高い透過率で検出器761に到達する。したがって、異物由来の信号が、高いコントラストで検出される。
また、異物由来のミラー電子の像は、チャージアップした異物が形成する局所電界の効果によって、実際の大きさよりも大きく検出器761に投影される。拡大率は5〜50倍に及ぶ。典型的な条件では、拡大率が20〜30倍であることが多い。拡大された異物のサイズが、検出器761の画素サイズの3倍以上あれば、異物として検出可能であるから、二次光学系74の投影倍率を小さくして検出器761の画素サイズを大きくして一度に検出できる面積を大きくすることにより、高速・高スループットな検査が実現できる。
例えば、異物のサイズが直径20〔nm〕である場合に、検出器761の画素サイズが60〔nm〕、100〔nm〕、500〔nm〕等でよい。この例ように、異物の3倍以上の検出器761の画素サイズを用いて異物の撮像及び検査を行うことが可能となる。このことは、SEM方式等に比べて、高スループット化のために著しく優位な特徴である。
二次光学系74は、試料Wから反射した電子もしくは試料Wの表面21から放出された二次電子の分布を、検出器761に拡大投影する手段である。二次光学系74は、レンズ727、740、741、と、NAアパーチャ742と、検出器761と、を有している。電子は、試料Wから反射して、対物レンズ727及びウィーンフィルター726を再度通過する。そして、電子は二次光学系74に導かれる。二次光学系74においては、レンズ740、NAアパーチャ742、レンズ741を通して試料W由来の電子信号を検出器761に結像させる。
NAアパーチャ742は、二次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。異物からの信号(ミラー電子等)と周囲(正常部)の信号の差異が大きくなるようにNAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。あるいは、周囲の信号に対する異物からの信号の割合が大きくなるように、NAアパーチャ742のサイズ及び位置が選択される。これにより、S/Nを高くすることができる。
例えば、φ50〜φ3000〔μm〕の範囲で、NAアパーチャ742が選択可能であるとする。検出される電子には、ミラー電子と二次放出電子が混在しているとする。このような状況でミラー電子像のS/Nを向上するために、アパーチャサイズの選択が有利である。この場合、二次放出電子の透過率を低下させて、ミラー電子の透過率を維持できるようにNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。
例えば、一次電子ビームの入射角度が3°であるとき、ミラー電子の反射角度がほぼ3°である。この場合、ミラー電子の軌道が通過できる程度のNAアパーチャ742のサイズを選択することが好適である。例えば、適当なサイズはφ250〔μm〕である。NAアパーチャ(径φ250〔μm〕)に制限されるために、二次放出電子の透過率は低下する。したがって、ミラー電子像のS/Nを向上することが可能となる。例えば、アパーチャ径をφ2000からφ250〔μm〕にすると、バックグランド階調(ノイズレベル)を1/2以下に低減できる。
異物は、任意の種類の材料で構成されてよく、例えば半導体、絶縁物、金属等でよく、又はそれらが混在してもよい。異物表面には自然酸化膜等が形成されるので、異物は絶縁材料で覆われることになる。よって、異物の材料が金属であっても、酸化膜にてチャージアップが発生する。このチャージアップが本例に好適に利用される。
検出器761は、二次光学系74により導かれた電子を検出する手段である。検出器761は、二次元イメージセンサ7611を含んでいる。二次元イメージセンサ7611には、二次元方向に複数の画素が配列されている。
二次元イメージセンサ7611には、EB(Electron Bombardment)半導体センサを適用することができる。例えば、二次元イメージセンサ7611には、EB−CMOSセンサが適用されてよい。EB−CMOSセンサは、電子ビーム(二次ビーム)をそれに直接入射させることができる。したがって、光電変換機構や光伝達機構による分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。また、EB−CMOSを用いると、小さい異物の弱い信号のS/Nを上げることが可能である。したがって、より高い感度を得ることができる。S/Nの向上は1.2〜2倍に達する。なお、二次元イメージセンサとして、EB−CCDセンサが用いられてもよく、EB−TDIセンサが用いられてもよい。
また、二次元イメージセンサ7611には、CCD(Charge Coupled Device)またはTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換やシンチレータを用いて、電子が光に変換される。光の像情報は、光を検知するTDIに伝達される。こうして電子が検出される。
なお、二次元イメージセンサ7611の画素数は、2k×2k〜10k×10kとすることができる。また、二次元イメージセンサ7611のデータレートは、10GPPS以下とすることができる。さらに、二次元イメージセンサ7611の画素サイズは1〜15μmとすることができる。
画像処理部763は、検出器761で得られた二次ビーム像に対して、ノイズリダクション処理、積算処理、サブピクセルアライメント等の画像処理を行う。この画像処理部763の処理速度は、10GPPS以下とすることができる。
電子光学装置70について、さらに説明する。試料Wは、x、y、z、θ方向に移動可能なステージ装置50に設置される。ステージ装置50と光学顕微鏡871により、高精度のアライメントが行われる。そして、写像投影光学系が電子ビームを用いて試料Wの異物検査及びパターン欠陥検査を行う。ここで、試料Wの表面21の電位が重要である。表面電位を測定するために、真空中で測定可能な表面電位測定装置がメインチャンバ160に取り付けられている。この表面電位測定器が、試料W上の二次元の表面電位分布を測定する。測定結果に基づき、電子像を形成する二次光学系74においてフォーカス制御が行われる。試料Wの二次元的位置のフォーカスマップが、電位分布を元に製作される。このマップを用いて、検査中のフォーカスを変更制御しながら、検査が行われる。これにより、場所による表面電位の変化に起因する像のボケや歪みを減少でき、精度のよい安定した画像取得及び検査を行うことが可能となる。
また、異物の検査では、異物からのミラー信号を効率よく取得することが重要である。NAアパーチャ742の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。試料Wの表面21の一点から出射した二次放出電子は、概ねLambertのコサイン則に従い放出され、NA位置では均一に広い領域(例えば、φ3〔mm〕)に到達する。したがって、二次放出電子は、NAアパーチャ742の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料Wの表面21での反射角度が、一次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でNAアパーチャ742に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次放出電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、NAアパーチャ742の位置に大変敏感である。NA位置でのミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にNAアパーチャ742の中心位置を配置することが、大変有利である。
このような適切な位置へのNAアパーチャ742の設置を実現するために、好ましい実施の形態では、NAアパーチャ742が、電子コラムの真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動される。NAアパーチャ742を移動させながら、信号強度が計測される。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置にNAアパーチャ742の中心が設置される。
信号強度の計測には、EB−CCD745が大変有利に用いられる。これにより、ビームの二次元的な情報を知ることができ、検出器761に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となるからである。
あるいは、NAアパーチャ742の位置と検出器761の検出面の位置とが共役の関係を実現するように、レンズ741の条件が設定されてよい。この構成も大変有利である。これにより、NAアパーチャ742の位置のビームの像を、検出器761の検出面に結像される。したがって、NAアパーチャ742の位置におけるビームプロファイルを、検出器761を用いて観察することができる。
また、NAアパーチャ742のNAサイズ(アパーチャ径)も重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なNAサイズは、10〜200〔μm〕程度である。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。上記のアパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、異物のコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して二次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー信号は変化せず、異物の階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、異物のコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャの位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。この構成も有利である。アパーチャは、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、二次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
<電子像追従方式>
電子光学装置70について、さらに説明する。図61に示すように、一次光学系72は、一次ビームの経路に沿って、その経路を囲うように設けられた第1の高圧基準管701を備えている。なお、一次光学系72において、エミッション電流は10μA〜10mAとすることができ、透過率は20〜50%とすることができ、スポットサイズはφ1〜φ100μmとすることができ、照射領域のサイズ(照野サイズ)はφ10〜φ1000μmとすることができ、光学系倍率は10〜1/10とすることができる。
二次光学系74における二次ビームの経路の途中には、高速偏向器749が設けられている。具体的には、高速偏向器749は、NAアパーチャ742よりも検出器761側に設けられている。この高速偏向器749は、多極子(本実施の形態では、12極)から構成され、二次ビームを任意の方向に偏向すると同時に、4極子場、6極子場および8極子場を重畳して印加することにより、偏向に伴って発生する収差を低減することができる。この偏向方向(偏向量)は、偏向制御装置90として機能する制御装置2によって制御される。高速偏向器749の構成についてはさらに後述する。なお、高速偏向器749に用いる多極子は、8極、4極等の多極子であってもよい。
なお、二次光学系74の結像倍率は10〜10000倍とすることができ、二次元イメージセンサ7611の1画素で捉える試料のサイズを1〜1000nm(1〜1000nm/pixel)とすることができ、NAアパーチャ742の透過率を10〜50%とすることができ、最小欠陥感度を1〜200nmとすることができる。
制御装置2は、上述のように高速偏向器749の偏向方向を制御する偏向制御装置として機能するとともに、電子光学装置70のその他の動作を制御する電子光学制御装置、ステージ装置50を制御するステージ制御装置、試料Wを搬送するための構成を制御する搬送制御装置、二次元イメージセンサ7611の撮像を制御する撮像制御装置等としても機能する。特に、本実施の形態では、検査中にステージ装置50によって試料Wが一定速度で移動するが、制御装置2は、ステージ装置50を制御して、この試料Wの移動制御を行う。なお、図61では、図59及び図60における固定テーブル51、Yテーブル52、Xテーブル53及び回転テーブル54の組に符号56を付して示している。
図63(a)は、二次ビームが試料Wの移動に追従するように二次ビームを偏向する高速偏向器749の動作を説明する図である。図63(a)に示すように、試料Wが右方向に連続的に移動している場合において、高速偏向器749は、試料W上の位置A1からの二次ビームが二次元イメージセンサ7611に二次ビーム像を結像するように二次ビームを偏向し、この試料Wが右方向に移動していく間、その移動に伴って、位置A1にあった試料Wの部分の二次ビーム像が常に二次元イメージセンサ7611上の同じ位置に結像するように、タイムステップdt毎に二次ビームの偏向方向と偏向量を変更する。即ち、高速偏向器749は、二次元イメージセンサ7611から見ると二次ビーム像が一定時間静止しているように、動作させる。なお、タイムステップdtは、試料Wの移動速度vと二次光学系74の結像倍率の絶対値Mとを積算した二次元イメージセンサ7611上の移動速度(像面移動速度)とdtとの積が、二次元イメージセンサ7611の1画素の大きさを超えない程度である事が望ましく、動作周期としては100kHz〜100MHzが好適である。
このような二次ビームの偏向方向と偏向量の変更(追従)によって、位置A1にあった試料Wの部分が移動によって位置A2の位置に到達するまでの間、二次元イメージセンサ7611には、常に、最初に位置A1にあった試料Wの部分からの二次ビームが入射することになり、この期間(一周期)は、二次元イメージセンサ7611は試料Wの同じ領域について、二次ビーム像を撮像することになる。位置A1にあった試料Wの部分が位置A2に達すると、高速偏向器749は、視野領域を再び位置A1に戻す。これによって、現在位置A1にある試料Wの先の撮像領域の隣接領域の二次ビーム像を撮像する。二次元イメージセンサ7611の視野領域が位置A2から位置A1に戻った後は、同様にして、試料Wの移動に追従して、試料Wの部分の二次ビーム像が常に二次元イメージセンサ7611上の同じ位置に結像するように、高速偏向器749によって二次ビームの偏向方向と偏向量をタイムステップdt毎に変更させる。
上記のように二次元イメージセンサ7611の視野領域は、位置A1と位置A2との間を往復するが、視野領域には常に一次ビームが照射されていなければならない。これを実現するためには、図63(b)に示すように、一次ビームの照射領域EFが、位置A1における視野領域VF1と位置A2における視野領域VF2とをすべてカバーするように一次ビームを試料Wに照射すればよく、すなわち、照射領域EFが視野領域2個分の大きさを有していればよい。この場合には、一次ビームの照射領域EFは常にこの位置に固定しておくことができる。
また、図63(c)に示すように、一次ビームの照射領域を試料W及び視野領域の移動に追従させて、位置A1における照射領域EF1から位置A2における照射領域EF2まで移動させてもよい。このときの一次ビームの照射領域の変更は、ウィーンフィルター726より電子銃721側に配置した高速偏向器(図示せず)によって一次ビームの偏向方向と偏向量を変更することによって行うことができる。
二次光学系74には、試料である試料Wに近い方から順に第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、及び第4の高圧基準管704が、それぞれ二次ビームの経路に沿って、この経路を囲うように設けられている。第2の高圧基準管702は、試料Wとビーム分離器としてのウィーンフィルター726との間に設けられ、第3の高圧基準管703は、ウィーンフィルター726よりも二次元イメージセンサ7611側に設けられ、第4の高圧基準管704は、第3の高圧基準管703と検出器761との間に設けられる。NAアパーチャ742は第3の高圧基準管703の内部に設けられ、高速偏向器749は第4の高圧基準管704の内部に設けられる。
第1の高圧基準管701、第2の高圧基準管702、第3の高圧基準管703、第4の高圧基準管704には、それぞれ第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4が印加される。実施の形態では、試料Wを接地電位、検出器761における検出電圧をV5とすると、これらの電圧は、V1=V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係にある。検出器761への電子ビームの好適入射エネルギーはその設計段階で予め決まっており、例えば、5keVとすると、V5は5kVである。V1(=V2=V3)は、一次ビームや二次ビームの空間電荷効果の影響や取扱の容易さから決定され、20〜50kVが望ましい。また、NAアパーチャ742に於いて二次ビームの過半はカットされるので、NAアパーチャ742から検出器761までの光路中の空間電荷効果の影響は軽微であるから、第3の高圧基準管703と第4の高圧基準管704の接続部はNAよりも検出器761側に設けられる。このことは、第4の高圧基準管704内に配置される高速偏向器749の電圧電源の高速応答性を確保する上でも好適である。
一方で、異なる2つの電位が接することにより、バイポテンシャルレンズが形成される。この電位差は強いレンズ作用を起こし、また、接する2つの高圧基準管の電位差によって決まるがゆえに固定焦点距離であるので、このレンズ要素の電子光学設計に於ける取扱いが非常に難しい。
そこで、本実施の形態では、第3の高圧基準管703と第4の高圧基準管704との間に、中間電極750を設けて、この中間電極にV3ともV4とも異なる電位を印加する。多くはV3よりも小さくV4よりも大きい電位であるが、V3より大きくても良いし、V4より小さくても良い。また、V3もしくはV4と同電位でも良い。これによって、異なる電位が接することによって発生するレンズ作用を調整することができる。さらに、中間電極750を、投影レンズ741の物面付近に配置して、投影レンズ741のフィールドレンズとして用いた。
図64は、高速偏向器と結像レンズと中間電極との組み合わせユニットの構成を示す図である。中間電極750は、例えば40kVの第3の電圧を印加される第3の高圧基準管703と、例えば5kVの第4の電圧を印加される第4の高圧基準管704との間に、第3の高圧基準管703及び第4の高圧基準管704に接することなく配置され、例えば5kV〜20kVの中間電圧を印加される。
高速偏向器749は、二次ビームの偏向を高精度で行うため、上述のように12極子構造を用いている。12極は、光軸に対して周方向に等角度間隔で配置されており、制御装置2によって個別に電圧を印加することが可能である。第4の高圧基準管によって第4の電圧V4に重畳された高速偏向用の電源及びアンプを用いることで、高速偏向器749の電圧精度を向上させている。
投影レンズ741には、ダブルギャップ型磁場レンズを採用している。上側コイル7411と下側コイル7412の磁束方向を逆にすることで、二次ビームの像をほぼ無回転で投影させることができる。また、上側コイル7411と下側コイル7412の磁束の比を変化させることで、像の回転を微調整し、S字歪と呼ばれる磁場レンズ特有の歪を低減することができる。また、この磁場レンズ用コイル7411、7412は、2配線方式であり、これによって一定電力で温度を安定化させることができる。
高速偏向器749は、投影レンズ741の像側焦点位置付近に配置されることが望ましい。
高速偏向器749は、試料Wの移動に追従するための偏向だけでなく、上述のような二次ビーム像の歪補正や、後述の位置変動補正も行うが、これらの機能は制御装置2によって本来の位置とのずれを元に算出された偏向場を重畳して印加することで実現される。
図61に戻って、位置変動補正について説明する。上述のように、試料Wはステージ装置50によって連続的に一定速度で移動し、高速偏向器749は、この試料Wの移動に追従して視野領域が移動するように二次ビームの偏向方向を変更するが、このとき、ステージ装置50による試料Wの移動に、意図しない位置変動が加わることがある。上述のように、視野領域の移動の一周期の間には、二次元イメージセンサ7611は常に試料Wの同一の部分の二次ビーム像を撮像しているが、試料Wに意図しない位置変動が加わると、二次元イメージセンサ7611の各画素に、試料Wの他の部分からの二次ビームが入射するというコンタミネーションが生じる。
上述のように、ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、複数のテーブルを動作させることにより、ホルダ55に保持された試料WをX方向、Y方向及びZ方向(図59において上下方向)に、更に試料の支持面に垂直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めする。このための構成として、ホルダ55にはミラー571が固定され、主ハウジング30の内壁にはミラー571にレーザビームを照射して、ミラー571から反射して戻ってきたレーザが入射されるレーザ干渉計572が設けられる。
本実施の形態の検査装置1では、このホルダ55に固定されたミラー571とレーザ干渉計572を位置変動検出手段として用いて、位置変動補正を行う。レーザ干渉計572にて検出された試料Wの意図しない位置変動は、制御装置2に入力される。制御装置2には、試料Wが意図しない位置変動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されているが、制御装置2は、本来の試料Wの移動だけでなく、レーザ干渉計572にて検出された試料Wの意図しない位置変動も考慮して、高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御する。なお、制御装置2に、試料Wが意図しない位置変動をせずに移動した場合の高速偏向器749による二次ビームの偏向方向の変更が指示されていなくてもよく、この場合には、制御装置2は、レーザ干渉計572にて検出された、試料Wの意図しない位置変動も含む試料W(を保持したホルダ55)の位置を検出して、この位置に基づいて高速偏向器749による二次ビームの偏向方向を決定して、高速偏向器749を制御してもよい。
以上のように、本実施の形態の電子光学装置70を含む検査装置1では、試料Wが移動している間に、試料Wの移動に同期して、試料Wの同じ部分の二次ビームが二次元イメージセンサ7611の同じ部分に入射するように、二次ビームを偏向する高速偏向器749が、試料Wの意図しない位置変動によるコンタミネーションを補正する位置変動補正器としても機能するので、二次元イメージセンサ7611では精度の高い二次ビーム像が得られる。
なお、第1の電圧V1、第2の電圧V2、第3の電圧V3、第4の電圧V4、検出電圧V5は、上記の例に限られず、例えば、V1<V2、V2=V3、V3>V4、V4=V5の関係であってもよく、すなわち、第1の電圧V1を第2の電圧V2及び第3の電圧V3より小さくしてもよい。一次光学系72における第1の高圧基準管701に印加する電圧V1を小さくすると、第1の高圧基準管701における放電リスクを低減できる。即ち、一次光学系は、第1の高圧基準管701内にアパーチャ723があり、このアパーチャ723において電子銃721からのエミッションの50%以上を吸収するので、リーク電流量は大きく、また、リーク電流量の変動も大きい。これに対して、第1の高圧基準管701に印加する第1の電圧V1を小さくすることで、放電のリスクを低減ないし解消できる。
また、上記の検査装置1において、第4の高圧基準管704に印加する第4の電圧V4を調整する電圧制御装置を設け、第4の電圧V4をV5と同調して可変としてもよい。このとき、第4の電圧V4(とV5)は、例えば、±1kVの範囲で調整可能としてよい。このように第4の電圧V4(とV5)を調整することで、検出器761への入射する二次ビームの電子エネルギー(入射エネルギー)を調整できることになる。これによって、二次元イメージセンサ7611のゲイン(すなわち、二次ビーム像の輝度)を調整できる。
<ソフトウェアによる再検査シミュレーション>
図61に戻って、上述したように、電子光学装置70は、ステージ装置50に保持された試料である試料Wに面ビームである一次ビームを照射して、それによって試料Wから発生した二次ビームを検出器761に導く。検出器761は、図示しない二次元イメージセンサによって二次ビームを捕捉して二次ビーム像の画像を生成し、画像処理部763に出力する。
画像処理部763は、検査処理装置として、検出器761から入力された二次ビーム像に対して、像処理フィルタ(平均値(Mean)フィルタ、ガウシアン(Gaussian)フィルタ、中央値(Median)フィルタ等)を用いて画像処理を施し、シェーディング補正をした上で、セル−セル比較、ダイ−ダイ比較、ダイ−データベース比較等の比較処理によって検査を行う。具体的には、画像処理部763は、比較処理において差分が所定の閾値を超える部分を欠陥として検出して、欠陥画像を生成する。
画像処理部763は、設定された検査条件パラメータに従って検査を行う。この検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報が含まれる。なお、この検出したくない欠陥の分類情報は、検査後にSEMでの撮像を行って分類した結果として得られる。
ところで、試料に生じている欠陥を検査する検査装置において、真の欠陥を確実に検出し、かつ、欠陥でない箇所(疑似欠陥)を検出しないようにするためには、検出閾値等の検査条件を変えながら何度も検査を繰り返し、最適な検査条件を決定する必要がある。
しかしながら、検査を繰り返すと、検査条件の最適化に時間がかかるという問題がある。また、検査を繰り返すことで、試料にダメージが蓄積したり、試料が汚染されたりするといった問題も生じる。
そこで、試料に与えるダメージや試料の汚染を回避して少ない検査回数で検査条件を決定するために、本実施の形態の検査装置1には、シミュレーション装置200が設けられている。画像処理部763は、欠陥画像とそれを生成するのに用いた未処理画像(二次ビーム像)をシミュレーション装置200に出力する。
シミュレーション装置200は、シミュレーション処理部201と、入力部202と、モニタ203と、を備えており、例えば入力手段とモニタと演算処理ユニット、メモリ、記憶装置、入出力ポート等を備えた汎用のコンピュータによって構成される。シミュレーション処理部201は、本実施の形態の検査結果レビュープログラムが演算処理ユニットによって実行されることで実現される。この検査結果レビュープログラムは、ネットワークを通じてシミュレーション装置200に提供されてもよく、シミュレーション装置200が記憶媒体に記憶された検索結果レビュープログラムを読み出すことでシミュレーション装置200に提供されてもよい。このようにして提供された検索結果レビュープログラムは、シミュレーション装置200の記憶装置に記憶され、そこから読み出されて実行されることで、シミュレーション処理部201が構成される。
シミュレーション処理部201は、検査装置100から入力した二次ビーム像に対して、検査条件パラメータを変更しながら、再検査シミュレーションを行い、最適な検査条件パラメータを決定する。シミュレーション処理部201が再検査シミュレーションのために変更する検査条件パラメータには、セル−セル比較の場合のセル周期、ダイ−ダイ比較の場合のエッジ許容値、欠陥を検出するための閾値、画像処理フィルタ、シェーディング補正値、ダイ−データベース比較のパラメータ、検出したくない欠陥の分類情報等が含まれる。
図65は、シミュレーション装置200の動作を示すフロー図である。まず、電子光学装置70は検査を行い、画像処理部763は検査結果をシミュレーション装置200に出力する(ステップS331)。このとき、画像処理部763は、検査結果とともに、その検査結果を得るのに用いた未処理画像(二次ビーム像)、及び検出したくない欠陥の分類情報もシミュレーション装置200に出力する。シミュレーション装置200では、シミュレーション処理部201がこの検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に表示する(ステップS332)。
次に、シミュレーション処理部201は、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行し(ステップS333)、それによって得られた再検査結果を出力する(ステップS334)。この再検査シミュレーションでは、電子光学装置70における検査と同様に、検出したくない欠陥の分類情報にある欠陥については検出しないようにする。シミュレーション処理部201は、ステップS334で得られた再検査結果を読み込んで、欠陥画像を生成し、モニタ203に出力する(ステップS335)。
次に、この再検査によって得られた欠陥画像を評価することで、検査条件が最適であるかが判断され(ステップS336)、検査条件が最適でなければ(ステップS336でNO)、ステップS333に戻って、検査条件を変更して再検査シミュレーションを実行する(ステップS333)。このように検査条件パラメータを変えながらの再検査シミュレーションを繰り返して、検査条件が最適になったときは(ステップS336でYES)、その最適になった検査条件を電子光学装置70で採用する検査条件として決定し(ステップS337)、処理を終了する。シミュレーション処理部201は、検索条件が最適であるか否かは、例えば、入力部202からの入力に基づいて判断してよい。
以上のように、本実施の形態によれば、電子光学装置70において実際の検査を行ったうえで、シミュレーション装置200で電子光学装置70から出力された欠陥画像及び未処理画像を用いて、検査条件を変えながら検査結果レビューソフトウェアによって再検査シミュレーションを行うので、少ない検査回数で検査条件の最適化が可能となり、検査条件を最適化するための時間を短縮できる。また、電子光学装置70による実際の検査を繰り返す必要がないので、試料へのダメージを減少させることができ、試料の汚染を減少できる。
次に、図61および図62に示したウィーンフィルター726について詳しく説明する。ウィーンフィルター726は、そこで発生する直交する平行磁界と平行電界の効果により、一次光学系72からの一次ビームを偏向して下方の試料Wに導くとともに、試料Wで発生した二次ビームを上方の検出器761に導くものである。まずは、比較例を説明する。
図71は、比較例に係るウィーンフィルター726’の断面図である。図71(a)に示すウィーンフィルター726’は、複数の電磁極90’と、個々の電磁極90’に巻回されたコイル(図示せず)と、シールド部材91’とを有する。
シールド部材91’は、電磁極90’とコイルを覆うように配置され、シールド部材91’内に磁界及び電界を閉じ込める。シールド部材91’には、入射孔92’と、中間孔93’と、出射孔94’とが形成されている。入射孔92’に一次ビームが入射する。この一次ビームは電磁極90’が発生する磁界と電界の作用で偏向し、中間孔93’から出射する。さらに、試料Wから発生した二次ビームは中間孔93’に入射し、直進して出射孔94’から出射する。
ここで、図61及び図62に示すように一次ビームは斜め上方から(より正確には、鉛直方向とはずれた角度から)入射されるので、入射孔92’は一次ビームの入射角度に沿った斜めの孔となっている。そして、比較例においては、入射孔92’の出口面92b’は水平面上にある。
図71(b)に示すように、入射孔92’に入射される一次ビームは空間的な拡がりを持っている。ここでは、一次ビーム光軸を中心に30°ピッチで配置されたビームB1〜B4が、一次ビーム光軸と平行に入射孔92’からウィーンフィルター726’の内部に入射する様子を示す。
図72は、比較例に係るウィーンフィルター726’において、図71(b)に示した一次ビームB1〜B4の電界方向及び磁界方向の、一次光学系の光軸に対する相対距離の推移を示す図である。同図の横軸は一次光学系の光軸の進行方向距離である。また、同図の縦軸は、一次光学系の光軸との相対位置である。
図示のように、電界方向に対しては、入射孔92’の中心から外れた位置から一次光学系の光軸と平行に入射した一次ビームB1〜B4は、入射孔92’を通過した後一次光学系の光軸に近づき、やがて特定の距離zoで一点に集束する。しかしながら、磁界方向に対しては、入射孔92’の中心から外れた位置から一次光学系の光軸と平行に入射した一次ビームB1〜B4は入射孔92’を通過後一旦一次光学系の光軸から遠ざかり、中間孔93’の手前付近から一転一次光学系の光軸に近づくようになる。このような一次ビームの軌道が何故発生するかについては、まだ明確にはわかっていないが、おそらく、一次ビーム入射側に位置する電磁極90’の電位(正に大)とシールド部材91’の間に発生する電界(ポテンシャルの変化)により、軌道の位置による偏向特性に差が生じてこのような結果になっているものと思われる。いずれにせよ、このような極端な非スティグマティックな集束特性は、光学設計の難易度が増し、また、この非スティグマティックな集束特性を補正するための新たな光学要素を追加する必要が生じる。
そこで、本実施形態では次のようにする。
図66は、本実施形態に係るウィーンフィルター726の断面図である。図66(a)に示すように、ウィーンフィルター726は、複数(8つ以上)の電磁極90と、電磁極90を覆うように配置されたシールド部材91とを有する。電磁極90は一次ビームを偏向させ、二次ビームを直進させるための磁界及び電界を発生させる。シールド部材91は、例えばパーマロイCのような軟磁性体から成る。シールド部材91には、入口面92a及び出口面92bを有する入射孔92と、中間孔93と、出射孔94とが設けられる。なお、入射孔92に物理的な入口面92a及び出口面92bがあるわけではないが、仮想的な面を想定してこのように呼ぶ。入射孔92は、一次ビームを通過させる用途として1か所あれば良いが、電場および磁場の対称性を考慮して、二次ビームの光軸に対して回転対称に複数か所開いていても良い。
図67は、複数の電磁極90を模式的に示す斜視図である。本ウィーンフィルター726は二次ビームの光軸に対して周方向に等間隔に並んだ8つの導電材料かつ軟磁性材料からなる電磁極90から構成される。また、各電磁極90にはコイル90aが巻回されている。個々の電磁極90は、それぞれ異なる電位を印加可能であり、一次ビームが入射する方向を基準として、個々の電磁極90の配置位相角の余弦に電圧VEをかけた電位を各電磁極90に印加すると、電磁極90で囲まれた二次ビーム光軸近傍に均一平行電界が発生する。また、個々のコイル90aには、それぞれ異なる電流を与える事が可能であり、一次ビームが入射する方向を基準として、個々の電磁極90の配置位相角の正弦に電流IBをかけた電流を各コイル90aに与える事で、先述の均一平行電界と直交する均一平行磁界が二次ビームの光軸近傍に発生する。この電界及び磁界により、8つの電磁極90の内側の空間(以下、ビーム通過孔90bという)を通る一次ビームが偏向される。さらに、電圧VEと電流IBを調整する事によって、入射孔92から入射した一次ビームが偏向されて中間孔93から出射し、かつ中間孔93から入射した二次ビームが直進して、出射孔94から出射する。
図68は、シールド部材91の断面を斜めから見た図を模式的に示す図である。図66(a)および図68を参照して、シールド部材91の形状について説明する。なお、本実施形態では、一次ビームが斜め45度上方から(より詳しくは、鉛直方向から45度傾けた角度)入射されることを想定している。
シールド部材91は、シールド部材91中の磁束密度がその材料の飽和磁束密度の例えば半分以下で使用するように厚さや配置を考慮して設計される。また、電磁極90で発生される均一平行電界と均一平行磁界が限られた領域にのみ存在するようにするため、シールド部材91の電子の出入孔に於いては、電子軌道に沿って一定度の長さを持つシールド形状にする事が肝要である。
シールド部材91下部は、中央が鉛直上向きに屈曲しており、この屈曲した面91aにより中間孔93が形成される。同じ中間孔93形状は、シールド部材91下部の中央を鉛直下向きに屈曲させても、シールド部材91下部の板厚を大きくしても実現できるが、いずれも電磁極90との距離が小さくなり、シールド部材91内の磁束密度が大きくなるので、本構成が望ましい。
シールド部材91上部の上面に於いて、一次ビームの軌道と概ね直交する面91bを形成し、そこに入射孔92を形成する。さらに、シールド部材91上部の上面の中央を鉛直下向きに屈曲させ、この屈曲した面91cに出射孔94が形成される。面91bは、一次ビームの軌道に沿ったシールドの長さが例えば入射孔92の直径の5倍以上あれば、一次ビームとの交差角が概ね直角でなくても構わない。
シールド部材91上部の下面は、ほぼ鉛直方向の面91dを形成し、そこに入射孔の出口面92bが設けられる。鉛直方向の面の上端は水平方向に屈曲して延び、その後鉛直下向きに伸びている。
入射孔92の入口面92aは一次ビームと直交しており、より詳しくは水平方向から45度傾けて設けられる。また、入射孔92は一次ビームの入射角度に合わせて、斜め45度に傾いている。また、本実施形態では、比較例と異なり、入射孔92の出口面92bは非水平であり、より詳しくは鉛直である。この出口面92bから出射した一次ビームが、電磁極90によって発生した電界及び磁界内に入射する。
中間孔93は、電磁極90におけるビーム通過孔90bの下方にあり、電磁極90により偏向された一次ビームが、ウィーンフィルター726の下方に置かれた試料Wに向かって出射する。また、中間孔93には試料Wから発生した二次ビームが入射する。二次ビームは、電磁極90が発生する平行電界によるクーロン力と平行磁界によるローレンツ力の釣り合いによって、偏向されることなく鉛直上向きに進む。
出射孔94は、電磁極90におけるビーム通過孔90bの上方にあり、二次ビームがウィーンフィルター726の上方に配置された検出器に向かって出射する。
なお、図66(b)に示すように、入射孔92に入射される一次ビームは空間的な拡がりを持っている。ここでは、一次ビーム光軸を中心に30°ピッチで配置されたビームB1〜B4が、一次ビーム光軸と平行に入射孔92の入口面92aからウィーンフィルター726の内部に入射する様子を示す。
図69は、本実施形態に係るウィーンフィルター726における一次ビームB1〜B4の電界方向及び磁界方向の、一次光学系の光軸に対する相対距離の推移を示す図である。同図の縦軸および横軸は図72と同様である。本実施形態によれば、ビームB1〜B4のいずれも、電界方向及び磁界方向のいずれにも、特定の距離zoで集束している。
このように、比較例(図71および図72)と本実施形態(図66〜図69)とで集束特性が異なる理由は、シールド部材91の形状が異なり、そのためシールド部材91内に形成される電位分布、電界、磁界、並びにその端面への入射角が異なるためである。より詳しく説明する。
裏克己著「ナノ電子光学」(共立出版)163〜165ページにあるとおり、磁界端面へ非垂直に電子ビームが入射すると、電子ビームに対して、入射角に応じて、集束する方向に力が作用したり、発散する方向に力が作用したりする。同様な事が電界端面に於いても起こり得る。ただし、端面斜め入射により発生する力は、比較例に於いて、電界方向に発散方向、磁界方向に集束方向であり、軌道計算の結果とは逆方向である。よって、別の効果、例えば、電子ビームの持つポテンシャルとウィーンフィルター内の軌道周辺の空間電位の違いによって発生する力、が支配的に作用している可能性もある。
いずれにせよ、シールド部材91の形状、特に入射孔92における出口面92bの角度(つまり、電磁極90によって発生した電界及び磁界への入射角度)は、数値解析を利用して、入射される一次ビームの電界方向の集束特性、及び、磁界方向の集束特性に応じて適宜定めればよい。より具体的には、出口面92bの角度は、電界方向の集束特性と、磁界方向の集束特性とのずれが減少するような(望ましくは一致するような)角度に設定される。言い換えると、出口面92bの角度は、電界方向の集束位置と、磁界方向の集束位置とのずれが減少するような(望ましくは一致するような)角度に設定される。
図70は、変形例に係るウィーンフィルター726の断面図であり、図66との相違点を中心に説明する。本変形例では、一次ビームが斜め35度上方から入射されることを想定している。ウィーンフィルター726においても、入射孔92における出口面92bは非水平である。
シールド部材91上部の下面の形状、および、シールド部材91上部の上面の形状は、図66とほぼ同様であるが、面91bの傾斜角度が異なる。
シールド部材91上部の下面は、ほぼ55°に傾斜した面91dを形成し、そこに入射孔の出口面92bが設けられる。傾斜した面91dの上端は水平方向に延び、その後鉛直下向きに屈曲している。
入射孔92の入口面92aは一次ビーム入射角とほぼ直交するように傾斜して設けられる。また、入射孔92は一次ビームの入射角度に合わせて、斜め35度になっている。入射孔92の出口面92bはやはり傾いており、この出口面92bから出射した一次ビームが、電磁極90によって発生した電界及び磁界に入射される。
このように、一次ビームが45以外の角度で入射される場合も、その入射角度に合わせてシールド部材91の形状、特に入射孔92における出口面92bの角度を上述したように適宜定めればよい。
このように、本実施形態では、入射孔92の出口面92bを非水平とし、一次ビームの入射角度に合わせて適切な角度に設定する。すると、入射孔92から一次ビームの光軸と平行に入射した一次ビームは、磁界方向と電界方向でほぼ同じ進行距離で一点に集束する。したがって、新たな光学要素を付加することなく、一次ビームの二方向集束を達成できる。また、シールド部材の形状を変化させるだけであり、電極や磁極の形状を非対称に変化させる必要がないので、より簡便に二方向集束が実現でき、同時に二次ビームの直進性を損ないがちな要因がない。
本実施形態で、8極以上の電磁極90で構成する理由は、単に、ビーム通過孔90bに亘って広い範囲で均一平行電界と均一平行磁界を形成する、というだけではない。単純に直交する均一平行電界と均一平行磁界を与えただけでは、二次ビームに於いて、例えビーム直進条件に調整してビームを通過させても、電界方向のみに集束作用が発生する。これは、通過ビームのポテンシャルと、空間の電位分布の差異によって発生する作用であり、なくす事はできない。これにより、ウィーンフィルターの電子ビーム進行方向下流側に開口アパーチャを配置する際、電界方向と磁界方向で最適位置が異なってしまうため、最適位置に配置できないという問題があった。
本実施形態の電磁極90であれば、四極子電界や四極子磁界をビーム通過孔90bに重畳して発生させる事が可能であり、発生した四極子電界や四極子磁界によって、電界方向のビーム集束作用を緩和させ、同時に磁界方向に新たに集束作用を付与する事で、直進通過ビームの二方向集束が達成でき、開口アパーチャも最適位置に配置可能となる。
重畳して発生させる四極子電界や四極子磁界は、両方発生してもよいが、どちらか片方でも二方向集束は達成可能である。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
以上、第4の実施形態から、例えば次のような態様が想到される。
[付記1]
試料に一次ビームを照射し、これによって前記試料から発生した二次ビームに基づいて前記試料の検査を行う検査装置に用いられ、斜め上方から入射した前記一次ビームの向きをほぼ鉛直下方向に変えて出射し、かつ、鉛直上向きに入射した前記二次ビームの向きをほとんど変えずに出射させるウィーンフィルターであって、
前記二次ビームの光軸を中心として等角度間隔で8個以上配置され、導電材料かつ軟磁性材料からなる電磁極と、
それぞれの前記電磁極の周りに巻回されたコイルと、
前記電磁極の周囲を覆うように配置されるシールド部材と、を備え、
前記電磁極には、一次ビームが偏向する方向に均一平行電界を二次ビームの光軸近傍に発生させるように、それぞれ異なる電位を印加可能であり、
前記コイルには、一次ビームが偏向する方向に均一平行磁界を二次ビームの光軸近傍に発生させるように、それぞれ異なる電流を印加可能であり、
前記シールド部材には、
斜め上方から前記一次ビームが入射する第1ビーム孔と、
前記電磁極により偏向された前記一次ビームが出射し、かつ、前記試料から発生した前記二次ビームが入射する第2ビーム孔と、
前記二次ビームが出射する第3ビーム孔と、が設けられ、
前記第1ビーム孔の出口面は非水平である、ウィーンフィルター。
[付記2]
前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束特性と、磁界方向の集束特性と、に応じて設定される、付記1に記載のウィーンフィルター。
[付記3]
前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束特性と、磁界方向の集束特性と、のずれを減少させる角度に設定される、付記1または2に記載のウィーンフィルター。
[付記4]
前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、前記一次ビームの電界方向の集束位置と、磁界方向の集束位置と、のずれを減少させる角度に設定される、付記1乃至3のいずれかに記載のウィーンフィルター。
[付記5]
斜め上方45度から前記一次ビームが前記第1ビーム孔に入射し、
前記第1ビーム孔の出口面と水平面との間の角度は、略90度である、付記1乃至4のいずれかに記載のウィーンフィルター。
[付記6]
前記電磁極は、前記均一平行電界および前記均一平行磁界に加えて、四極子電界または四極子磁界を重畳する、付記1乃至5のいずれかに記載のウィーンフィルター。
[符号の説明]
90:電磁極、90a:コイル、90b:ビーム通過孔、91:シールド部材、91a〜91d:面、92:入射孔、92a:入口面、92b:出口面、93:中間孔、94:出射孔
なお、以上説明した各実施形態を任意に組み合わせてもよい。