JPWO2016076282A1 - セルラーゼ賦活剤及びそれを用いたリグノセルロース系バイオマス糖化方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、植物バイオマスのエネルギーを効率的に、かつ有効に活用するために、環境負荷を抑え、植物バイオマス、特にリグノセルロース系バイオマスを少ない工程で、効率的に、また低コストで糖化する技術を開発し、提供することである。配列番号1に示すアミノ酸配列からなるリグノセルロース分解補助因子等を有効成分とするセルラーゼ賦活剤、及びそれを用いてリグノセルロース系バイオマスを糖化する方法を提供する。
Description
本発明は、新規リグノセルロース分解補助因子を有効成分とするセルラーゼ賦活剤及びそれを用いたリグノセルロース系バイオマス糖化方法に関する。
近年、化石燃料代替エネルギー資源として、地球上に豊富に存在する植物バイオマスを利用してバイオエタノール、バイオディーゼル、バイオガス等のバイオ燃料を生産する動きが世界各国で活発化している。植物バイオマスは、再生可能資源であり、化石燃料のような枯渇問題が生じないという利点がある。また、植物バイオマスのエネルギーは、燃焼に伴い発生する二酸化炭素が光合成によって固定化された大気中の二酸化炭素に起因することから、カーボンニュートラルな循環エネルギーであり、地球温暖化防止にも寄与し得る。
しかし、植物バイオマスを利用したバイオ燃料製造には、いくつかの解決すべき問題を包含している。バイオエタノールやバイオディーゼルの原料には、現在、主にトウモロコシ、ダイズ、又はサトウキビの搾汁残渣(バガス)が利用されている。ところが、トウモロコシやダイズは、食料系植物バイオマスであることから食料や飼料との間で競合問題が発生し、国際レベルで価格高騰を招く問題がある。また、市場価格に左右される結果、必要量を安定的に確保できないという問題がある。一方、サトウキビは、温帯、冷温帯域を栽培地として利用できないという問題がある。また、耕作地の拡大に伴う森林原野の伐採等の環境破壊も大きな問題となっている。
そこで、現在では食料系植物バイオマスに代わり、リグノセルロース系バイオマス等の非食料系植物バイオマスが新たな植物バイオマスとして注目を集めている。リグノセルロース系バイオマスは、植物の木質部を構成することから地上で最も豊富に存在するバイオマスとされている。また、非食料系植物バイオマスのため、食料との間で競合問題が発生しない。さらに原料を安定的に、かつ低コストで確保できるという利点を有し、その潜在的な利用価値は極めて高い。
しかし、リグノセルロース系バイオマスを利用したバイオ燃料の製造にも変換収率と製造コスト面で問題がある。一般に、リグノセルロース系バイオマスをバイオ燃料として利用するには、リグノセルロースを単糖又は二糖等の糖類に変換する糖化反応が必須であるが、リグノセルロースは、化学的に非常に安定なセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主要成分としているため、糖化処理が容易ではない。従来、リグノセルロース系バイオマスを工業的に糖化するには、酸処理方法(非特許文献1)が採用されている。酸処理方法は、リグノセルロース系バイオマスを希硫酸や塩酸等の酸と蒸煮し、その後、蒸留する方法である。しかし、この方法は、環境負荷が大きく、また多量のエネルギーを必要とすることからコスト高になるという問題があった。
1612の化学商品,2012,化学工業日報社,p871
本発明は、植物バイオマスのエネルギーを効率的に、かつ有効に活用するために、環境負荷を抑え、植物バイオマス、特にリグノセルロース系バイオマスを少ない工程で、効率的に、また低コストで糖化する技術を開発し、提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らは、リグノセルロース系バイオマスの糖化方法に従来の酸処理方法ではなく、酵素を利用した生物学的分解方法を採用した。
セルロースは、リグノセルロース中に約50%存在する多糖類であり、セルラーゼによってβ-D-グルコース等に加水分解される。ところが、セルラーゼを単にリグノセルロース系バイオマスに添加し、反応させただけでは分解効率は非常に低い。これは、リグノセルロース中でセルロースと強固に結合したリグニンが、セルラーゼとセルロースの結合及びセルロースの分解を阻害するためと考えられている。したがって、セルラーゼを用いてリグノセルロース系バイオマスを効率的に分解するためには、リグノセルロース系バイオマスから予めリグニンを除去しておく必要がある。リグニンは、酸加水分解処理や有機溶媒による可溶化処理によって除去できるが、この方法では製造工程や環境負荷の低減という本発明の課題を解決し得ない。
ところで、シロアリ目(Isoptera)の昆虫又はキゴキブリ属(Cryptocercus)の昆虫は、リグノセルロースからリグニンを分離して、セルロース及びヘミセルロースを効率的に分解し、利用する高度なリグノセルロース分解能を獲得している。この能力は、それらの昆虫自身が生産する酵素もさることながら、主としてシロアリ目昆虫等の後腸内に共生する鞭毛虫(消化管内共生鞭毛虫)によって生産される酵素及びその補助因子に起因するところが大きい。したがって、シロアリやキゴキブリの腸内から前記鞭毛虫を単離、培養して、リグノセルロース分解機構に関与する酵素や補助因子を利用すれば、リグノセルロース系バイオマスを効率的に糖化することができる。しかし、腸内共生する前記鞭毛虫は、一般的な環境微生物と同様の方法では培養が困難であり、また鞭毛虫におけるリグノセルロースの具体的な分解機構についてもほとんど解明されていない。
そこで、本発明者らは、消化管内共生鞭毛虫を単離、培養することなく、コウシュンシロアリ(Neotermes koshunensis)及びイエシロアリ(Coptotermes formosanus)を用いて、その消化管内共生鞭毛虫全てを対象にしたメタトランスクリプトーム解析を行い、高活性セルラーゼと非セルラーゼ系のバイオマス分解補助因子の探索を行った。その結果、これらのシロアリの消化管内共生鞭毛虫群からこれまでに報告例のない新規リグノセルロース分解補助因子を得た。また、当該補助因子をセルラーゼと併用してリグノセルロース系バイオマスに用いることで、セルラーゼ活性を増強し、リグノセルロース系バイオマスの糖化を促進できることを明らかにした。本願発明は、前記研究結果に基づくものであり、具体的には以下の通りである。
(1)以下の(a)〜(c)に示すいずれか一のアミノ酸配列からなるポリペプチド又はその活性断片。
(a)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、及び
(c)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列
(2)(1)に記載のポリペプチド又はその活性断片をコードするポリヌクレオチド。
(3)以下の(d)〜(g)に示すいずれか一の塩基配列からなる、(2)に記載のポリヌクレオチド。
(d)配列番号2又は10に示す塩基配列、
(e)配列番号2又は10に示す塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列、
(f)配列番号2又は10に示す塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列、及び
(g)配列番号2又は10に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(4)(2)又は(3)に記載のポリヌクレオチドを発現可能な状態で包含する発現ベクター。
(5)(4)に記載の発現ベクターを宿主に導入した形質転換体又はその後代。
(6)宿主がトリコデルマ属(Trichoderma)糸状菌である、(5)に記載の形質転換体又はその後代。
(7)(1)に記載のポリペプチドを有効成分として包含するセルラーゼ賦活剤。
(8)リグノセルロース系バイオマスの糖化方法であって、リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼを混合するセルラーゼ混合工程、リグノセルロース系バイオマスと(7)に記載のセルラーゼ賦活剤を混合するセルラーゼ賦活剤混合工程、セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースを加水分解する反応工程を含む前記糖化方法。
(9)(8)に記載の方法を用いた、リグノセルロース系バイオマスから還元糖を製造する方法。
(a)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、及び
(c)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列
(2)(1)に記載のポリペプチド又はその活性断片をコードするポリヌクレオチド。
(3)以下の(d)〜(g)に示すいずれか一の塩基配列からなる、(2)に記載のポリヌクレオチド。
(d)配列番号2又は10に示す塩基配列、
(e)配列番号2又は10に示す塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列、
(f)配列番号2又は10に示す塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列、及び
(g)配列番号2又は10に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列
(4)(2)又は(3)に記載のポリヌクレオチドを発現可能な状態で包含する発現ベクター。
(5)(4)に記載の発現ベクターを宿主に導入した形質転換体又はその後代。
(6)宿主がトリコデルマ属(Trichoderma)糸状菌である、(5)に記載の形質転換体又はその後代。
(7)(1)に記載のポリペプチドを有効成分として包含するセルラーゼ賦活剤。
(8)リグノセルロース系バイオマスの糖化方法であって、リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼを混合するセルラーゼ混合工程、リグノセルロース系バイオマスと(7)に記載のセルラーゼ賦活剤を混合するセルラーゼ賦活剤混合工程、セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースを加水分解する反応工程を含む前記糖化方法。
(9)(8)に記載の方法を用いた、リグノセルロース系バイオマスから還元糖を製造する方法。
本明細書は本願の優先権の基礎となる日本国特許出願番号2014-230027号の開示内容を包含する。
本発明のセルラーゼ賦活剤によれば、セルラーゼと共にリグノセルロース系バイオマスに供することで、該バイオマスを少ない工程で、効率的に、また低コストで糖化することができる。
1.リグノセルロース分解補助因子又はその活性断片
1−1.概要と定義
本発明の第1の態様は、リグノセルロース分解補助因子又はその活性断片(以下、しばしば「リグノセルロース分解補助因子等」と表記する)である。本発明の補助因子又はその活性断片は、それ自身がセルラーゼのセルロース糖化能を強化、促進する製剤として、また後述する本発明のセルラーゼ賦活剤の有効成分として、リグノセルロース系バイオマスの効率的で低コストの糖化反応に寄与し得る。
1−1.概要と定義
本発明の第1の態様は、リグノセルロース分解補助因子又はその活性断片(以下、しばしば「リグノセルロース分解補助因子等」と表記する)である。本発明の補助因子又はその活性断片は、それ自身がセルラーゼのセルロース糖化能を強化、促進する製剤として、また後述する本発明のセルラーゼ賦活剤の有効成分として、リグノセルロース系バイオマスの効率的で低コストの糖化反応に寄与し得る。
「リグノセルロース」とは、植物の細胞壁や植物繊維の構成物質で、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主要成分とする。
本明細書において「リグノセルロース系バイオマス」とは、リグノセルロースからなる有機資源をいう。例えば、木質系バイオマス、木質系廃棄物、草本系バイオマス、及び草本系廃棄物が該当する。木質系バイオマスの例としては、針葉樹又は広葉樹の林地残材、間伐材、未利用樹、短周期栽培木材、街路樹及び公園等の剪定材が挙げられる。木質系廃棄物の例としては、建築廃材、製材残材(バーク、オガクズ、プレナー屑、及び短材を含む)、紙資源(例えば、新聞紙、雑誌、廃棄OA紙、ダンボール)が挙げられる。草本系バイオマスの例としては、植物性農業廃棄物(例えば、茎、葉、穀粒皮等、具体的には、稲藁、麦藁、もみ殻、麦殻、綿実殻、フスマ、トウモロコシの茎、葉及び穂軸、及びソルガム茎及び葉を含む)が挙げられる。草本系廃棄物の例としては、植物体の搾汁残渣(ビール粕、バガス、ビートパルプ、オカラ、綿実粕、及び油粕を含む)が挙げられる。
「セルロース」は、分子式(C6H10O5)nで表される多糖類で、β-D-グルコース等がグリコシド結合により直鎖状に重合した化合物である。リグノセルロースにおけるセルロースの存在比率は、前述のように通常約50%である。
「ヘミセルロース」は、セルロースを除いた不溶性多糖類の総称である。例えば、キシラン、マンナン、グルクロノキシラン、グルコマンナン等が該当する。リグノセルロースにおけるヘミセルロースの存在比率は、由来する植物によって異なるが、通常30%前後である。
「リグニン」は、高分子フェノールで、リグノセルロースにおいては、セルロースやヘミセルロースと結合して固化する接着剤的な働きを果たしている。リグノセルロースにおけるリグニンの存在比率もヘミセルロースと同様、由来する植物や部位によって異なるが、通常20〜30%である。木化が進んでいない葉等の部位では、通常、さらに少ない。
本明細書において「セルラーゼ」とは、セルロースのβ-1,4-グルカン又はβ-D-グルコシド結合を加水分解して、セロオリゴ糖、セロビオース及びβ-D-グルコースを生成する酵素の総称をいう。作用機序によりエンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ(セロビオハイドラーゼ)、及びβ-グルコシダーゼ(β-D-グルコシドグルコハイドラーゼ)の3型に分類される。本明細書においては、特に断りのない限り、セルラーゼはいずれの型であってもよく、特に限定はしない。
1−2.構成
本明細書において「リグノセルロース分解補助因子」とは、リグノセルロースの分解に関与する非酵素系のタンパク質であって、単独でリグノセルロースの分解活性は、ほとんど又は全くないが、セルラーゼと共に用いることで、リグノセルロース分解におけるセルラーゼの活性を増強することのできる補助的機能を有する因子をいう。
本明細書において「リグノセルロース分解補助因子」とは、リグノセルロースの分解に関与する非酵素系のタンパク質であって、単独でリグノセルロースの分解活性は、ほとんど又は全くないが、セルラーゼと共に用いることで、リグノセルロース分解におけるセルラーゼの活性を増強することのできる補助的機能を有する因子をいう。
本明細書におけるリグノセルロース分解補助因子は、配列番号1又は9に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドである。このポリペプチドは、コウシュンシロアリ及びイエシロアリ由来の消化管内共生鞭毛虫群からメタトランスクリプトーム解析によって得られた新規のタンパク質である。配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドは、cellulose, carbohydrate binding moduleを有し、その作用機序は明らかではないが、セルラーゼと併用することで、セルラーゼ活性を増強し、リグノセルロース系バイオマスの糖化を促進できることが本明細書において明らかとなった。また、配列番号9に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アミノ酸配列の相同性からxylanase/chitin deacetylaseと予測され、前記ポリペプチドと同様に、セルラーゼと併用することで、セルラーゼ活性を増強し、リグノセルロース系バイオマスの糖化を促進できることが本明細書において明らかとなった。
本明細書において、リグノセルロース分解補助因子は、上記ポリペプチドの他にも配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、98%以上又は99%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつセルラーゼ活性を増強する補助因子としての活性を保持するポリペプチドが挙げられる。本明細書において「複数個」とは、例えば、2〜20個、2〜15個、2〜10個、2〜7個、2〜5個、2〜4個又は2〜3個をいう。「アミノ酸同一性」とは、二つのアミノ酸配列を整列(アラインメント)し、必要に応じていずれかのアミノ酸配列にギャップを導入して、両者のアミノ酸一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号1又は9に示すタンパク質の全アミノ酸残基数に対する同一アミノ酸残基の割合(%)をいう。アミノ酸同一性は、BLASTやFASTAによるタンパク質の検索システムを用いて算出することができる(Karlin,S.et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877;Altschul,S.F.et al., 1990, J. Mol. Biol., 215: 403-410;Pearson,W.R.et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2444-2448)。
本明細書において「その活性断片」とは、上記リグノセルロース分解補助因子の活性断片であって、当該補助因子のアミノ酸配列の一部を含み、かつ補助因子としての活性を有するポリペプチド断片をいう。本活性ポリペプチド断片のアミノ酸配列の長さは、本発明のリグノセルロース分解補助因子の活性を有していれば特に限定はしない。
リグノセルロース分解補助因子及びその活性断片は、1又は複数個のアミノ酸がメチル化等の修飾を受けていてもよい。また、必要に応じて、シグナルペプチド、標識ペプチド、タグアミノ酸配列のような付加的アミノ酸配列を連結することができる。リグノセルロース分解補助因子及びその活性断片が付加的アミノ酸配列を含む場合、その付加的アミノ酸配列がリグノセルロース分解補助因子等と融合タンパク質を形成するように連結すると好ましい。
「シグナルペプチド」は、細胞内で生合成されたタンパク質の細胞外移行に必要なペプチドである。通常は、目的のポリペプチドのN末端側にLysやArgのような正電荷を有するアミノ酸を配し、それの上流にAla、Leu、Val、Ile、Val、及びPheのような疎水性の高いアミノ酸配列を配する構成をもつ。本発明では、細胞外分泌タンパク質のシグナルペプチド等を利用できる。
2.リグノセルロース分解補助因子又はその活性断片をコードするポリヌクレオチド
2−1.概要
本発明の第2の態様は、前記第1態様のリグノセルロース分解補助因子又はその活性断片をコードするポリヌクレオチドである。
2−1.概要
本発明の第2の態様は、前記第1態様のリグノセルロース分解補助因子又はその活性断片をコードするポリヌクレオチドである。
2−2.構成
本発明のポリヌクレオチドは、前記第1態様のリグノセルロース分解補助因子、すなわち配列番号1又は9に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はそれらの活性断片、をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドで構成される。具体的には、例えば、配列番号1に示すアミノ酸からなるポリペプチドをコードする配列番号2に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号9に示すアミノ酸からなるポリペプチドをコードする配列番号10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号2又は10に示す塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号2又は10に示す塩基配列に対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、98%以上又は99%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号2又は10に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるポリヌクレオチド、あるいは、それらの活性断片をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じていずれかの塩基配列にギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号2又は10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの全塩基数に対する同一塩基の割合(%)をいう。前記「ストリンジェントな条件」とは、配列番号2又は10に示す塩基配列と特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが実質的に形成されない条件をいう。通常は低ストリンジェント〜高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば5×SSC、0.1% SDSを含むバッファーを用いて42℃〜50℃で洗浄する条件である。また高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。一般に、低塩濃度で、かつ高温であるほど高ストリンジェントな条件となる。ここでいう低塩濃度は、具体的には、例えば、15〜750mM、好ましくは15〜500mM、15〜300mM又は15〜200mMをいう。また、ここでいう高温は、具体的には、例えば、50〜68℃、又は55〜70℃である。
本発明のポリヌクレオチドは、前記第1態様のリグノセルロース分解補助因子、すなわち配列番号1又は9に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はそれらの活性断片、をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドで構成される。具体的には、例えば、配列番号1に示すアミノ酸からなるポリペプチドをコードする配列番号2に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号9に示すアミノ酸からなるポリペプチドをコードする配列番号10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号2又は10に示す塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなるポリヌクレオチド、配列番号2又は10に示す塩基配列に対して90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、98%以上又は99%以上の塩基同一性を有する塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号2又は10に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列からなるポリヌクレオチド、あるいは、それらの活性断片をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが挙げられる。「塩基同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じていずれかの塩基配列にギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの、配列番号2又は10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチドの全塩基数に対する同一塩基の割合(%)をいう。前記「ストリンジェントな条件」とは、配列番号2又は10に示す塩基配列と特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが実質的に形成されない条件をいう。通常は低ストリンジェント〜高ストリンジェントな条件が挙げられるが、高ストリンジェントな条件が好ましい。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば5×SSC、0.1% SDSを含むバッファーを用いて42℃〜50℃で洗浄する条件である。また高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄する条件である。一般に、低塩濃度で、かつ高温であるほど高ストリンジェントな条件となる。ここでいう低塩濃度は、具体的には、例えば、15〜750mM、好ましくは15〜500mM、15〜300mM又は15〜200mMをいう。また、ここでいう高温は、具体的には、例えば、50〜68℃、又は55〜70℃である。
2−3.ポリヌクレオチドの調製
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2又は10で示す塩基配列に基づいて、その一部配列又はそれに相補する一部配列をプローブ又はプライマーとして、適当な生物種のcDNAライブラリー、好ましくはメタゲノム解析法によって調製される複数の微生物(細菌、糸状菌、原生動物等を含む)由来のcDNAライブラリー又はゲノムライブラリーから、サザンブロッティング又はPCR等によって得ることができる。これらの方法は、当該分野で公知の技術であり、当該分野の一般的プロトコール集、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に準じて行えばよい。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2又は10で示す塩基配列に基づいて、その一部配列又はそれに相補する一部配列をプローブ又はプライマーとして、適当な生物種のcDNAライブラリー、好ましくはメタゲノム解析法によって調製される複数の微生物(細菌、糸状菌、原生動物等を含む)由来のcDNAライブラリー又はゲノムライブラリーから、サザンブロッティング又はPCR等によって得ることができる。これらの方法は、当該分野で公知の技術であり、当該分野の一般的プロトコール集、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Fourth Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New Yorkに記載の方法に準じて行えばよい。
3.発現ベクター
3−1.概要
本発明の第3の態様は、第2態様のポリヌクレオチドを発現可能な状態で包含する発現ベクターである。本発明の発現ベクターは、前記第2態様に記載のポリヌクレオチドの発現制御が容易となる。また後述するセルラーゼ賦活剤の有効成分として、宿主に導入することで、後述する第5態様の形質転換体を得ることができる。
3−1.概要
本発明の第3の態様は、第2態様のポリヌクレオチドを発現可能な状態で包含する発現ベクターである。本発明の発現ベクターは、前記第2態様に記載のポリヌクレオチドの発現制御が容易となる。また後述するセルラーゼ賦活剤の有効成分として、宿主に導入することで、後述する第5態様の形質転換体を得ることができる。
3−2.構成
「発現ベクター」とは、一般に、内部にコードされた遺伝子を発現制御できるベクターをいう。「発現可能な状態」とは、発現ベクターに含まれる前記ポリヌクレオチドが宿主内の所定条件下で転写され得る状態をいう。例えば、発現ベクターに含まれる宿主特異的なプロモーターとターミネーターの制御下に前記ポリヌクレオチドを配置した状態が該当する。
「発現ベクター」とは、一般に、内部にコードされた遺伝子を発現制御できるベクターをいう。「発現可能な状態」とは、発現ベクターに含まれる前記ポリヌクレオチドが宿主内の所定条件下で転写され得る状態をいう。例えば、発現ベクターに含まれる宿主特異的なプロモーターとターミネーターの制御下に前記ポリヌクレオチドを配置した状態が該当する。
本発明の発現ベクターの骨格(コア)部分となる母核ベクターは特に限定はしないが、宿主細胞内で複製可能なプラスミド又はウイルスが好ましい。例えば、宿主が糸状菌の場合、アグロバクテリウムを介して植物細胞に目的遺伝子を導入することができるpBI系(例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBIG2113)若しくはpRI系等のバイナリーベクターの植物プラスミドやカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、インゲンマメゴールデンモザイクウイルス(BGMV)、タバコモザイクウイルス(TMV)等の植物ウイルスを利用することができる。さらに、pUC18系、pUC19系、pUC9系等の大腸菌と植物のシャトルベクターであってもよい。これらの発現ベクターは、各ライフサイエンスメーカーから市販されており、それらを利用することもできる。
前記発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、若しくはターミネーターのような調節領域、及び/又は標識/選抜マーカー遺伝子のような標識領域を含み得る。その他、エンハンサー、ポリA付加シグナル、5'-UTR(非翻訳領域)配列、標識若しくは選抜マーカー遺伝子、マルチクローニング部位、複製開始点等を含むこともできる。それぞれの種類は、宿主細胞内でその機能を発揮し得るものであれば、特に限定されない。導入する宿主に応じて当該分野で公知のものを適宜選択すればよい。
前記調節領域は、宿主細胞内で作動可能な調節領域を使用する。本発明の発現ベクターであれば、植物細胞内や糸状菌細胞内で動作可能な調節領域が好適である。
調節領域のうち、プロモーターは、例えば、所望の発現パターンに応じて、過剰発現型プロモーター、構成的プロモーター、部位特異的プロモーター、段階特異的プロモーター、及び/又は誘導性プロモーターを用いることができる。過剰発現型で構成的プロモーターの具体例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の35Sプロモーター、Tiプラスミド由来のノパリン合成酵素遺伝子のプロモーターPnos、トウモロコシ由来のユビキチンプロモーター、イネ由来のアクチンプロモーター、タバコ由来PRタンパク質プロモーターが挙げられる。また、リブロース二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(Rubisco ssu)プロモーター、ヒストンプロモーター、システインプロテアーゼプロモーター、metallothionein(MTT)1プロモーター、及びMTT2プロモーター等も使用することができる。
また、ターミネーターは、例えば、ノパリン合成酵素(NOS)遺伝子のターミネーター、オクトピン合成酵素(OCS)遺伝子のターミネーター、CaMV 35Sターミネーター、大腸菌リポポリプロテインlppの3’ターミネーター、trpオペロンターミネーター、amyBターミネーター、ADH1遺伝子のターミネーター等が挙げられる。前記プロモーターにより転写された遺伝子の転写を終結できる配列であれば特に限定はしない。
エンハンサーであれば、例えば、CaMV 35Sプロモーター内の上流側の配列を含むCMVエンハンサー領域が挙げられる。第1態様のリグノセルロース分解補助因子等をコードするポリヌクレオチドの発現効率を増強できるものであれば特に限定はしない。
標識/選抜マーカー遺伝子としては、薬剤耐性遺伝子(例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子又はネオマイシン耐性遺伝子)、栄養素遺伝子(例えば、ロイシン、ウラシル、アデニン、ヒスチジン、リジン又はトリプトファンの合成遺伝子)、蛍光又は発光レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニターゼ(GUS)、又は緑色蛍光タンパク質(GFP))、酵素遺伝子(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPT II)、ジヒドロ葉酸還元酵素等)、ブラストサイジンS耐性遺伝子等の酵素遺伝子が挙げられる。
3−3.発現ベクターの調製
本発明の発現ベクターを調製する方法を以下に例示する。基本的な遺伝子等の操作方法については、当該分野で公知の方法、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載の方法に従って行えばよい。
本発明の発現ベクターを調製する方法を以下に例示する。基本的な遺伝子等の操作方法については、当該分野で公知の方法、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載の方法に従って行えばよい。
(1)リグノセルロース分解補助因子遺伝子のクローニング
まず、発現ベクターに挿入する第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子をクローニングする。この遺伝子は、例えば、バイオメーカーの受託合成サービスを利用して、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいてリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子を完全人工合成することによって得ることができる。また、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいて、腸内細菌を含む状態でコウシュウシロアリ及び/又はイエシロアリより調製したcDNAライブラリーから、PCR等の核酸増幅方法、又はプラークハイブリダイゼーション法等に基づいて調製してもよい。腸内細菌を含むコウシュウシロアリやイエシロアリのcDNAライブラリーの調製は、コウシュンシロアリ又はイエシロアリを入手後に、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載の方法に従って行えばよい。コウシュンシロアリは、日本では沖縄県に分布し、森林内の倒木や枯木で容易に採取できることができる。また、イエシロアリは、日本では九州、四国及び本州の太平洋側に分布し、森林内の他、古い木造家屋で比較的容易に採取することができる。核酸増幅方法によってcDNAライブラリーから目的の遺伝子を調製する場合には、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいてプライマーペアとなるオリゴヌクレオチドを化学合成し、そのプライマーペアを用いて、前記cDNAライブラリーから増幅すればよい。この時、各プライマーの5’末端側にベクター挿入用の適当な制限部位を設計しておくと便利である。また、核酸増幅に用いるDNAポリメラーゼは、pfuポリメラーゼのような3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するフィデリティー(正確性)の高い酵素を使用することが好ましい。核酸増幅の詳細な条件等ついては、例えば、Innis M. et al (Ed.), (1990) Academic Press, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applicationsに記載の方法を参照すればよい。単離した目的の遺伝子を必要に応じて適当なプラスミドに挿入し、大腸菌等の宿主微生物内でクローニングした後、全長塩基配列を公知技術に基づいて確認することが好ましい。また、プラークハイブリダイゼーション法によってcDNAライブラリーから目的の遺伝子を単離する場合には、配列番号2又は10で示される塩基配列上の適当な領域を選択し、その領域の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを化学合成する。次に、そのオリゴヌクレオチドをプローブとして前記cDNAライブラリーから目的の遺伝子を公知のプラークハイブリダイゼーション法を用いて単離すればよい。プラークハイブリダイゼーション法の詳細については、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)を参照すればよい。
まず、発現ベクターに挿入する第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子をクローニングする。この遺伝子は、例えば、バイオメーカーの受託合成サービスを利用して、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいてリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子を完全人工合成することによって得ることができる。また、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいて、腸内細菌を含む状態でコウシュウシロアリ及び/又はイエシロアリより調製したcDNAライブラリーから、PCR等の核酸増幅方法、又はプラークハイブリダイゼーション法等に基づいて調製してもよい。腸内細菌を含むコウシュウシロアリやイエシロアリのcDNAライブラリーの調製は、コウシュンシロアリ又はイエシロアリを入手後に、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載の方法に従って行えばよい。コウシュンシロアリは、日本では沖縄県に分布し、森林内の倒木や枯木で容易に採取できることができる。また、イエシロアリは、日本では九州、四国及び本州の太平洋側に分布し、森林内の他、古い木造家屋で比較的容易に採取することができる。核酸増幅方法によってcDNAライブラリーから目的の遺伝子を調製する場合には、配列番号2又は10で示される塩基配列に基づいてプライマーペアとなるオリゴヌクレオチドを化学合成し、そのプライマーペアを用いて、前記cDNAライブラリーから増幅すればよい。この時、各プライマーの5’末端側にベクター挿入用の適当な制限部位を設計しておくと便利である。また、核酸増幅に用いるDNAポリメラーゼは、pfuポリメラーゼのような3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するフィデリティー(正確性)の高い酵素を使用することが好ましい。核酸増幅の詳細な条件等ついては、例えば、Innis M. et al (Ed.), (1990) Academic Press, PCR Protocols: A Guide to Methods and Applicationsに記載の方法を参照すればよい。単離した目的の遺伝子を必要に応じて適当なプラスミドに挿入し、大腸菌等の宿主微生物内でクローニングした後、全長塩基配列を公知技術に基づいて確認することが好ましい。また、プラークハイブリダイゼーション法によってcDNAライブラリーから目的の遺伝子を単離する場合には、配列番号2又は10で示される塩基配列上の適当な領域を選択し、その領域の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを化学合成する。次に、そのオリゴヌクレオチドをプローブとして前記cDNAライブラリーから目的の遺伝子を公知のプラークハイブリダイゼーション法を用いて単離すればよい。プラークハイブリダイゼーション法の詳細については、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)を参照すればよい。
(2)プラスミド発現ベクターの調製
次に、プラスミド発現ベクターを調製する。これは、前記(1)でクローニングしたリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子、すなわち第2態様のポリヌクレオチドを、所望の発現ベクターの母核ベクター部分における所定の部位に挿入すればよい。
次に、プラスミド発現ベクターを調製する。これは、前記(1)でクローニングしたリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子、すなわち第2態様のポリヌクレオチドを、所望の発現ベクターの母核ベクター部分における所定の部位に挿入すればよい。
具体的には、例えば、第2態様のポリヌクレオチドの両端を適当な制限酵素で切断する。その一方で、発現ベクターの母核ベクター部分を対応する制限酵素部位で切断する。マルチクローニング部位を有する発現ベクターであれば、それを利用すると便利である。続いて、両核酸の末端を、リガーゼ等を用いて連結し、リグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子を発現ベクターに挿入する。この時、発現ベクター中のプロモーター制御下に挿入するように留意する。なお、市販の遺伝子発現システム又はキットを用いて発現ベクターを調製してもよい。
(3)ウイルス発現ベクターの調製
基本操作は、前記プラスミド発現ベクターの方法に準ずればよい。まず、ウイルスゲノムを当該分野で公知の方法により調製した後、それを適当なクローニングベクター(例えば、大腸菌由来のpBI系、pPZP系、pSMA系、pUC系、pBR系、pBluescript系)に挿入して組換え体を得る。次に、組換え体に含まれるウイルスゲノム内の所定の部位に前記(1)でクローニングしたリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子を挿入し、クローニングする。続いて、制限酵素によって前記組換え体からウイルスゲノム領域を切り出せばよい。それによって、目的のウイルス発現ベクターが得ることができる。
基本操作は、前記プラスミド発現ベクターの方法に準ずればよい。まず、ウイルスゲノムを当該分野で公知の方法により調製した後、それを適当なクローニングベクター(例えば、大腸菌由来のpBI系、pPZP系、pSMA系、pUC系、pBR系、pBluescript系)に挿入して組換え体を得る。次に、組換え体に含まれるウイルスゲノム内の所定の部位に前記(1)でクローニングしたリグノセルロース分解補助因子をコードする遺伝子を挿入し、クローニングする。続いて、制限酵素によって前記組換え体からウイルスゲノム領域を切り出せばよい。それによって、目的のウイルス発現ベクターが得ることができる。
4.形質転換体又はその後代
4−1.概要
本発明の第4の態様は、第3態様の発現ベクターを宿主細胞内に導入した形質転換体又はその後代(以下、しばしば「形質転換体等」と表記する)である。本発明の形質転換体等によれば、その培養及び発現誘導処理によって、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子を生産することができる。
4−1.概要
本発明の第4の態様は、第3態様の発現ベクターを宿主細胞内に導入した形質転換体又はその後代(以下、しばしば「形質転換体等」と表記する)である。本発明の形質転換体等によれば、その培養及び発現誘導処理によって、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子を生産することができる。
4−2.構成
本明細書において「形質転換体」とは、第3態様の発現ベクターの導入により形質転換された宿主であり、形質転換体の第1世代をいう。本態様の形質転換体は、第3態様の発現ベクターを宿主細胞内で独立した状態で又はゲノム内に組み込まれた状態で包含する。形質転換体の細胞1つあたりが包含する発現ベクターの種類は、通常1種で足りるが、複数種の発現ベクターを包含していてもよい。
本明細書において「形質転換体」とは、第3態様の発現ベクターの導入により形質転換された宿主であり、形質転換体の第1世代をいう。本態様の形質転換体は、第3態様の発現ベクターを宿主細胞内で独立した状態で又はゲノム内に組み込まれた状態で包含する。形質転換体の細胞1つあたりが包含する発現ベクターの種類は、通常1種で足りるが、複数種の発現ベクターを包含していてもよい。
本明細書において「宿主」とは、第3態様の発現ベクターの導入体で、その発現ベクターに含まれる第2態様のポリヌクレオチドの発現を可能にして、第1態様のポリペプチド、すなわちリグノセルロース分解補助因子を生産する生物体又は細胞若しくは組織をいう。本態様の形質転換体の宿主は、導入された発現ベクターの複製が可能で、かつその発現ベクターに含まれる第2態様のポリペプチドを発現することができれば、特に限定されない。例えば、真菌、細菌、又は植物のいずれであってもよいまた、前記真菌は、糸状菌、担子菌及び酵母を含む。ここで、糸状菌(カビ)には、例えば、トリコデルマ属(Trichoderma)菌、アスペルギルス属(Aspergillus)菌、ペニシリウム属(Penicillium)菌、ニューロスポラ属(Neurospora)菌、フザリウム属(Fuzarium)菌、ストレプトマイセス属(Streptomyces)菌等が含まれる。酵母には、例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)又はメタノール資化性酵母(Pichia pastoris)が含まれる。また、細菌には、例えば、大腸菌、バチルス属(Bacillus)菌、シュードモナス属(Pseudomonas)菌、アクチノマイセス属(Actinomyces)菌が含まれる。植物には、コケ類、シダ類、被子植物及び裸子植物が含まれる。好ましい宿主は、糸状菌であり、より好ましくはトリコデルマ属菌である。
本明細書において「形質転換体の後代」とは、前記形質転換体(第1世代)から無性生殖又は有性生殖を介して得られる形質転換体第2世代以降であって、かつ第3態様の発現ベクターを保持している個体をいう。例えば、単細胞微生物であれば、形質転換体第1世代以降から分裂又は出芽等によって新たに生じた細胞(クローン体)が該当する。また、形質転換される宿主が糸状菌であれば、形質転換体第1世代以降の菌体から採取した菌糸の一部から再生させた菌体、又は形質転換体第1世代以降の実生(胞子を含む)が該当する。
4−3.形質転換体の調製
第3態様の発現ベクターを宿主に導入して本発明の形質転換体を調製する方法は、当該分野で公知の形質転換方法に準じて行えばよい。
第3態様の発現ベクターを宿主に導入して本発明の形質転換体を調製する方法は、当該分野で公知の形質転換方法に準じて行えばよい。
宿主が細菌であれば、例えば、ヒートショック法、カルシウムイオン法(例えば、リン酸カルシウム法)、エレクトロポレーション法等が挙げられる。また、宿主が酵母であれば、例えば、リチウム法、エレクトロポレーション法等を用いればよい。これらの技術は、いずれも当該分野で公知であり、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)をはじめ、様々な文献に記載されているので、具体的な方法については、それらを参考にすればよい。
宿主が糸状菌又は植物であって、かつ前記発現ベクターがプラスミドベクターである場合には、形質転換方法は、当該分野で公知の任意の適当な方法を用いればよい。好適な形質転換方法として、アグロバクテリウム(Agrobacterium)法、プロトプラスト法、又はパーティクルガン法等を用いることができる。
アグロバクテリウム法は、形質転換因子としてアグロバクテリウム属の菌(例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)、アグロバクテリウム・リゾゲネス(A. rhizogenes)等)及びそれに由来するTiプラスミドを用いる形質転換方法であって、目的のDNA(ここでは第3態様の発現ベクター)を宿主糸状菌又は宿主植物のゲノムDNA中に導入することができる。
プロトプラスト法は、セルラーゼ等の酵素的処理によって細胞壁を除去した細胞(プロトプラスト)を用いて、目的のDNAを糸状菌又は植物の細胞中に導入する方法である。この方法は、DNA導入の方法により、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法又はポリエチレングリコール法等に、さらに分類することができる。エレクトロポレーション法は、プロトプラストと目的のDNAの混合液に電気パルスを与えてプロトプラスト内にDNAを導入する方法である。また、マイクロインジェクション法は、微針を用いて顕微鏡下でプロトプラスト中に目的のDNAを直接導入する方法である。そして、ポリエチレングリコール法は、ポリエチレングリコールを作用させてプロトプラストに目的のDNAを導入する方法である。
パーティクルガン法は、金又はタングステン等の微粒子に目的のDNAを付着させて、それを高圧ガスにより糸状菌又は植物の宿主細胞内に打ち込み、目的のDNAを細胞内に導入する方法である。この方法は、宿主のゲノムDNA中に目的の遺伝子が取り込まれた形質転換細胞を得ることができる。形質転換した細胞は、通常、発現ベクター内の標識/選抜マーカー遺伝子の産物に基づいて選択される。この他、発現ベクターの導入の有無は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノザンハイブリダイゼーション法、in situハイブリダイゼーション等によって確認することができる。
上記の方法は、いずれも当該分野においては公知の方法であり、詳細については植物遺伝子操作の適当なプロトコールを参照すればよい。
また、発現ベクターがウイルス発現ベクターの場合、(例えば、前述のCaMV、BGMV、TMV等)の場合には、第3態様に記載の発現ベクターを宿主細胞に感染させることによって、形質転換細胞を得ることができる。このようなウイルス発現ベクターを用いた遺伝子導入方法の詳細については、Hohnらの方法(Molecular Biology of Plant Tumors, Academic Press, New York, 1982、pp549)を参照すればよい。
4−4.後代取得法
本発明の形質転換体から後代を得る方法は、その形質転換体の宿主である生物種において後代を得るために用いられる通常の方法で行えばよい。例えば、形質転換体の宿主が細菌や酵母であれば、適当な公知培地で培養することによって容易に得ることができる。培地組成については、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(上述)を参照すればよい。また、形質転換体の宿主が糸状菌や植物であれば、後代は、通常、胞子や種子、栄養繁殖器官又は菌体若しくは植物体の一部を栽培することにより得ることができる。
本発明の形質転換体から後代を得る方法は、その形質転換体の宿主である生物種において後代を得るために用いられる通常の方法で行えばよい。例えば、形質転換体の宿主が細菌や酵母であれば、適当な公知培地で培養することによって容易に得ることができる。培地組成については、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(上述)を参照すればよい。また、形質転換体の宿主が糸状菌や植物であれば、後代は、通常、胞子や種子、栄養繁殖器官又は菌体若しくは植物体の一部を栽培することにより得ることができる。
4−5.効果
本発明の形質転換体等を用いることで、適当な発現条件下で、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を産生させることができる。
本発明の形質転換体等を用いることで、適当な発現条件下で、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を産生させることができる。
5.セルラーゼ賦活剤
5−1.概要
本発明の第5の態様は、セルラーゼ賦活剤である。本発明のセルラーゼ賦活剤は、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を有効成分として包含する。本発明のセルラーゼ賦活剤によれば、本発明の課題であるリグノセルロース系バイオマスを、環境負荷を抑えながら、低コストで糖化することができる。
5−1.概要
本発明の第5の態様は、セルラーゼ賦活剤である。本発明のセルラーゼ賦活剤は、第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を有効成分として包含する。本発明のセルラーゼ賦活剤によれば、本発明の課題であるリグノセルロース系バイオマスを、環境負荷を抑えながら、低コストで糖化することができる。
5−2.構成
(1)有効成分
本発明のセルラーゼ賦活剤は、有効成分として第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を少なくとも一つ含有する。複数種のリグノセルロース分解補助因子等を含む場合、その組み合わせについては特に限定はしない。互いに他の因子等の活性を抑制せず、好ましくはセルラーゼ活性の増強に関して相乗効果をもたらす組み合わせであればよい。
(1)有効成分
本発明のセルラーゼ賦活剤は、有効成分として第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を少なくとも一つ含有する。複数種のリグノセルロース分解補助因子等を含む場合、その組み合わせについては特に限定はしない。互いに他の因子等の活性を抑制せず、好ましくはセルラーゼ活性の増強に関して相乗効果をもたらす組み合わせであればよい。
本発明のセルラーゼ賦活剤の所定量あたりにおける有効成分の含有量は、リグノセルロースバイオマスの種類、セルラーゼ賦活剤の剤形、及び施用方法、施用目的等の諸条件によって異なる。通常は、本発明の本発明のセルラーゼ賦活剤中で、有効成分のリグノセルロース分解補助因子等が失活、変性をせず、施用時にはリグノセルロース系バイオマス中で共在するセルラーゼの活性を増強できれば、含有量は特に限定はしない。適当な条件を勘案し、適宜定めればよい。
また、本発明のセルラーゼ賦活剤は、適当な溶媒で10〜1000倍に希釈して施用する濃縮形態であってもよい。この場合は、セルラーゼ賦活剤の原液中には通常の10〜1000倍量で有効成分を包含していればよい。
(2)溶媒及び/又は担体
本発明のセルラーゼ賦活剤は、上記有効成分のリグノセルロース分解補助因子等に加えて、溶媒及び/又は担体を含むことができる。
本発明のセルラーゼ賦活剤は、上記有効成分のリグノセルロース分解補助因子等に加えて、溶媒及び/又は担体を含むことができる。
本明細書において「溶媒」及び「担体」は、セルラーゼ賦活剤中の有効成分の活性を維持し、該有効成分のリグノセルロースへの施用を容易にする機能を有する。また、リグノセルロースへの施用時におけるpH等の反応条件を調整して、有効成分のセルラーゼ活性増強作用を制御する機能を有していてもよい。溶媒及び担体は、原則としてリグノセルロース系バイオマスの利用において、その使用が法的に認められており、水質汚染等の環境に対する有害性がないか若しくは低く、及び/又は動物、特にヒトに対する有害性がないか若しくは少ない物質が望ましい。
「溶媒」には、水、又はそれ以外の水溶液が含まれる。水溶液としては、例えば、リン酸塩バッファーのような緩衝剤、生理的食塩水、液体培地が挙げられる。特に液体培地は、第4態様に記載の形質転換体等の培養上清をそのまま本発明のセルラーゼ賦活剤と使用できることから、リグノセルロース分解補助因子等の精製工程等が不要となり、セルラーゼ賦活剤を簡便かつ低コストで作製できる点で便利である。液体培地は、第4態様に記載の形質転換体等を培養可能な培地であれば特に限定はしない。培地の種類や組成は、形質転換体における宿主の種類に応じて使用される当該分野で公知の種類又は組成であればよい。例えば、宿主が真菌又は藻類であれば、YPD培地(Yeast extract 20 g/L, Proteose peptone 10 g/L, D-glucose 5 g/L)、King B培地(2%[w/v]ペプトン、1%[w/v]グリセリン、0.15%[w/v]リン酸水素二カリウム、0.15%[w/v]硫酸マグネシウム・7水和物)、PSB培地(200 g/L ジャガイモ煎汁、0.5%[w/v]ショ糖)、C培地(Ca(NO3)2・4H2O 150mg/L、KNO3 100mg/L、β-Na2 glycerophosphate・5H2O 50mg/L、MgSO4・7H2O 40mg/L、Vitamin B12 0.1μg/L, Biotin 0.1μg/L、Thiamine HCl 10μg/L、PIV metals 3mL/L、Tris (hydroxymethyl) aminomethane 500mg/L,pH7.5)等を利用できる。各宿主の具体的な培地やその組成については、各種プロトコール集、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(前述)に記載されているので、それを参照すればよい。
「担体」には、粉砕天然鉱物(例えば、カオリン、クレイ、タルク及びチョーク)、粉砕合成鉱物(例えば、高分散シリカ及びシリケート)、乳化剤(例えば、非イオン性乳化剤やアニオン性乳化剤)、分散剤(リグノ亜硫酸廃液及びメチルセルロース)、流動添加調節剤(例えば、ケイ酸塩、ステアリン酸塩又はポリエチレングリコール)、pH調整剤、界面活性剤、等張化剤、可溶化剤、懸濁剤、希釈剤、及び安定剤等が挙げられる。セルラーゼ賦活剤は、これらの担体を1種以上包含していてもよい。
(3)他の成分
本発明のセルラーゼ賦活剤は、上記有効成分や溶媒及び/又は担体に加えて、必要に応じて他の成分を含むことができる。例えば、リグノセルロースの糖化において、主反応を担うセルラーゼが挙げられる。
本発明のセルラーゼ賦活剤は、上記有効成分や溶媒及び/又は担体に加えて、必要に応じて他の成分を含むことができる。例えば、リグノセルロースの糖化において、主反応を担うセルラーゼが挙げられる。
本明細書において「セルラーゼ」とは、セルロースのβ-1,4-グルカン又はβ-D-グルコシド結合を加水分解して、セロオリゴ糖、セロビオース及びβ-D-グルコースを生成する酵素の総称をいう。セルラーゼには、作用形式によりエンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、及びβ-グルコシダーゼの3型が知られている。エンドグルカナーゼは、主としてセルロース繊維の非結晶部分に作用してセルロース糖鎖の内部を切断し、エキソグルカナーゼは、結晶性セルロースに作用してセルロース糖鎖の末端を分解し、セロビオースを産生する。一方、β-グルコシダーゼは、エンドグルカナーゼ及び/又はエキソグルカナーゼの作用によって生じたセロビオース及び/又はセロオリゴ糖等から最終産物であるβ-D-グルコースを遊離させる。本明細書においてはいずれの型のセルラーゼであってもよく、特定はしない。
5−3.剤形
本発明のセルラーゼ賦活剤の剤形は、リグノセルロース系バイオマスに施用可能な剤形であれば、いかなる状態であってもよい。例えば、液剤、固形剤とすることができる。液剤の例としては、有効成分を適当な溶媒に懸濁した溶液剤、油性分散液剤、エマルション剤、懸濁剤が挙げられる。固形剤は、有効成分がリグノセルロース系バイオマス中に共在するセルラーゼに作用し得る状態であれば、特に制限はしない。例えば、粉剤、散剤、ペースト剤、ペレット剤、ゲル剤が挙げられる。
本発明のセルラーゼ賦活剤の剤形は、リグノセルロース系バイオマスに施用可能な剤形であれば、いかなる状態であってもよい。例えば、液剤、固形剤とすることができる。液剤の例としては、有効成分を適当な溶媒に懸濁した溶液剤、油性分散液剤、エマルション剤、懸濁剤が挙げられる。固形剤は、有効成分がリグノセルロース系バイオマス中に共在するセルラーゼに作用し得る状態であれば、特に制限はしない。例えば、粉剤、散剤、ペースト剤、ペレット剤、ゲル剤が挙げられる。
5−4.セルラーゼ賦活剤の製造方法
本発明のセルラーゼ賦活剤の製造方法は、有効成分調製工程及び製剤工程を含む。
(1)有効成分調製工程
「有効成分調製工程」は、セルラーゼ賦活剤の有効成分であるリグノセルロース分解補助因子等を調製する工程である。第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を調製する方法は、特に制限はしない。ここでは、一例として、第4態様に記載の形質転換体等を用いて、有効成分を調製する方法を説明する。この方法では、有効成分調製工程は、培養ステップ、発現誘導ステップ及び回収ステップをさらに含む。
本発明のセルラーゼ賦活剤の製造方法は、有効成分調製工程及び製剤工程を含む。
(1)有効成分調製工程
「有効成分調製工程」は、セルラーゼ賦活剤の有効成分であるリグノセルロース分解補助因子等を調製する工程である。第1態様に記載のリグノセルロース分解補助因子等を調製する方法は、特に制限はしない。ここでは、一例として、第4態様に記載の形質転換体等を用いて、有効成分を調製する方法を説明する。この方法では、有効成分調製工程は、培養ステップ、発現誘導ステップ及び回収ステップをさらに含む。
「培養ステップ」は、第4態様に記載の形質転換体等を適当な培養条件で培養するステップである。第4態様に記載の形質転換体等は、第3態様に記載の発現ベクターを有する。この発現ベクターは、有効成分であるリグノセルロース分解補助因子等を発現可能な状態で包含する。したがって、第4態様に記載の形質転換体等を培養し、次の発現誘導ステップで発現誘導処理することによって、形質転換体等は、包含する発現ベクターから目的のリグノセルロース分解補助因子等を生成することができる。第4態様に記載の形質転換体等を培養する方法は、形質転換体の宿主に用いられる通常の培養方法に従えばよい。培養に用いる培地は、宿主が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、かつ生育、増殖可能なものであれば特に限定はしない。天然培地、又は合成培地のいずれを用いてもよい。形質転換体等の具体的な培養方法は、宿主に当該分野で公知の培養方法に従って行えばよい。これらの方法は、各種プロトコール集、例えば、Green, M.R. and Sambrook, J., 2012(上述)に記載されているので、それを参照すればよい。また、培養温度や培養時間は、宿主に応じて適宜定めればよく、特に限定はしないが、通常は10〜45℃、15〜40℃、又は18〜37℃の温度下で1時間〜14日間、10時間〜10日間、又は15時間〜7日間培養すればよい。必要に応じて通気、照射、及び/又は攪拌することもできる。
「発現誘導ステップ」は、培養した前記形質転換体等に所定の発現誘導処理を行い、形質転換体等が有する発現ベクター中のリグノセルロース分解補助因子等をコードするポリヌクレオチドの発現を誘導させるステップである。発現誘導の方法は、発現ベクターに含まれるプロモーター等によって異なるため、形質転換体等が有する発現ベクターに適した誘導処理を行えばよい。リグノセルロース分解補助因子等の誘導は、通常、培地に適当量の誘導物質を添加することで達成される。なお、形質転換体等に包含される発現ベクターが、恒常的にリグノセルロース分解補助因子等を発現する場合には、特段の誘導処理をしなくても、培養ステップで本ステップを同時に達成することができる。
「回収ステップ」は、発現誘導ステップで誘導されたリグノセルロース分解補助因子等を形質転換体等又はその培養液から回収するステップである。発現したリグノセルロース分解補助因子等が形質転換体の細胞内に生産される場合には、細胞を遠心等によって回収した後、ソニケーター等の細胞破砕機を用いて破砕して細胞抽出液又は遠心分離等によりそれから細胞破砕物を除去した抽出上清を得る。これによって細胞抽出液中に含まれる有効成分のリグノセルロース分解補助因子等を調製することができる。さらに、必要に応じて、得られた細胞抽出液又は抽出上清を公知のタンパク質の精製方法、例えば、溶媒抽出法、塩析法、溶媒沈殿法、透析法、限外濾過法、ゲル電気泳動法、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で、あるいは適宜組み合わせて、前記培養物中から分離してもよい。この場合、有効成分として精製されたリグノセルロース分解補助因子等が調製される。タンパク質の精製方法は、具体的には、Hayashiらの方法 (Hayashi et al., 1996, Phytochemistry, 42: 665-666)やNoguchiらの方法(Noguchi et al., 2007, J. Biol. Chem., 282: 23581-23590)を参照すればよい。また、発現したリグノセルロース分解補助因子等が形質転換体の細胞外に分泌される場合には、培養液又は遠心分離等によりそれから形質転換体等を除去した培養上清を得る。これによって培養液又は培養上清中に含まれる有効成分のリグノセルロース分解補助因子等を調製することができる。さらに、必要に応じて、培養液又は培養上清からリグノセルロース分解補助因子等を公知のタンパク質の精製方法で分離精製し、調製してもよい。
(2)製剤工程
「製剤工程」は、有効成分調製工程で調製されたリグノセルロース分解補助因子等を有効成分として、セルラーゼ賦活剤を製剤化する工程である。
「製剤工程」は、有効成分調製工程で調製されたリグノセルロース分解補助因子等を有効成分として、セルラーゼ賦活剤を製剤化する工程である。
本工程では、有効成分調製工程で調製された有効成分リグノセルロース分解補助因子等を前述の溶媒及び/又は担体と混合し、また必要に応じてセルラーゼ等の他の成分を添加して、本発明のセルラーゼ賦活剤を製剤化する。その際、リグノセルロース分解補助因子等の含有量は、前述のようにリグノセルロースバイオマスの種類、セルラーゼ賦活剤の剤形、及び施用方法、施用目的等の諸条件を勘案し、適宜定めればよい。
前述の回収ステップで得られた細胞抽出液やリグノセルロース分解補助因子等が形質転換体の細胞外に分泌される場合の培養液は、本工程で特段の処理をすることなく、それをそのままセルラーゼ賦活剤として使用することができる。特に第4態様に記載の形質転換体等を培養した培養液をそのままセルラーゼ賦活剤とする方法は、形質転換体等から簡便に、少ない工程で、コストをかけずに本態様のセルラーゼ賦活剤を製造できる。
6.リグノセルロース系バイオマスの糖化方法
6−1.概要
本発明の第6の態様は、リグノセルロース系バイオマスを糖化する方法である。本方法は、セルラーゼを用いてリグノセルロース系バイオマスを加水分解し、リグノセルロースの分解産物である還元糖β-D-グルコースを製造する糖化方法において、セルラーゼによる分解前又は分解中に前記第5態様に記載のセルラーゼ賦活剤を添加することで、セルラーゼの活性を増強することができる。
6−1.概要
本発明の第6の態様は、リグノセルロース系バイオマスを糖化する方法である。本方法は、セルラーゼを用いてリグノセルロース系バイオマスを加水分解し、リグノセルロースの分解産物である還元糖β-D-グルコースを製造する糖化方法において、セルラーゼによる分解前又は分解中に前記第5態様に記載のセルラーゼ賦活剤を添加することで、セルラーゼの活性を増強することができる。
6−2.方法
本発明の糖化方法は、必須工程としてセルラーゼ混合工程、セルラーゼ賦活剤混合工程、反応工程を含む。選択工程としてリグノセルロース前処理工程を含むことができる。以下、各工程について説明をする。
本発明の糖化方法は、必須工程としてセルラーゼ混合工程、セルラーゼ賦活剤混合工程、反応工程を含む。選択工程としてリグノセルロース前処理工程を含むことができる。以下、各工程について説明をする。
(1)リグノセルロース前処理工程
「リグノセルロース前処理工程」は、本発明の糖化方法において使用するリグノセルロース系バイオマスを予め加水分解されやすい状態に前処理しておく工程である。本工程は選択工程であり、必要に応じて実施すればよい。本工程を実施する場合、後述するセルラーゼ混合工程及びセルラーゼ賦活剤混合工程に先立ち実施する。
「リグノセルロース前処理工程」は、本発明の糖化方法において使用するリグノセルロース系バイオマスを予め加水分解されやすい状態に前処理しておく工程である。本工程は選択工程であり、必要に応じて実施すればよい。本工程を実施する場合、後述するセルラーゼ混合工程及びセルラーゼ賦活剤混合工程に先立ち実施する。
リグノセルロースの前処理は、断片化処理及び/又は水熱処理を含む。
本発明において「断片化処理」とは、リグノセルロース系バイオマスを断片化する処理である。「断片化」とは、切断及び/又は粉砕により、リグノセルロース系バイオマスをチップ状、顆粒状、又は粉末状にすることをいう。粉末状に断片化するのが好ましい。リグノセルロース系バイオマスの断片化は、コンバージミル、ウッドチッパー、ストローカッター等の公知の装置を用いて行えばよい。断片化処理によって、リグノセルロースの内部組織を露出させ、表面積率を高めることができる。これによって、リグノセルロースとセルラーゼとの接触率を向上させ、リグノセルロースの加水分解効率を高めることができる。
本発明において「水熱処理」とは、高温高圧条件下での亜臨界水を利用してリグノセルロース系バイオマスを処理する方法をいう。水熱処理の溶媒には、水や多糖の単糖化を促進する作用があるリン酸水溶液を用いることができる。リン酸水溶液の場合、リン酸濃度は、0.1〜5重量%(wt%)、好ましくは0.2〜4重量%の範囲にあればよい。加える圧力は、初気圧で1〜5MPa(10〜50気圧)、好ましくは1.5〜3MPaの範囲であればよい。処理温度は、140〜280℃、好ましくは140〜260℃の範囲で行うことが好ましい。リグノセルロース中のヘミセルロースは、通常140〜260℃で加水分解されるからである。処理時間は、5分〜2時間、好ましくは10分〜1時間の範囲で行えばよい。ただし、前記処理温度に達するまでの昇温時間は含まない。加圧は、耐圧性密閉容器内で行う。容器内の気体は、本処理前に反応性の低い不活性ガスに置換しておくことが好ましい。不活性ガスには、窒素の他、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスが挙げられる。好ましくは、窒素又はアルゴンである。
(2)セルラーゼ混合工程
「セルラーゼ混合工程」は、リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼを混合する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。
「セルラーゼ混合工程」は、リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼを混合する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。
本工程で使用するリグノセルロース系バイオマスは、適当な溶媒と混合した懸濁液であることが好ましい。本発明の糖化方法は、液体中で反応が進行する酵素的分解方法であるからである。ただし、本工程において、反応槽内で乾燥状態のリグノセルロース系バイオマスと溶媒を混合して、懸濁液の状態にしてもよい。溶媒は、水、又は塩濃度やpHをセルラーゼの至適反応条件に調整したバッファーが好ましい。
本工程で添加するセルラーゼは、セルロースの加水分解活性を有するものであれば、その由来種は問わない。例えば、細菌由来、真菌由来、粘菌由来、シロアリやキゴキブリ等の昆虫又は原生動物由来のいずれであってもよい。例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼ(エンドグルカナーゼ)を使用することができる。また、本工程で使用するエンドグルカナーゼは、必ずしも精製されている必要はなく、例えば、トリコデルマ・リーゼイの培養上清のようにセルラーゼを包含する未精製(クルードな)溶液を使用することもできる。
リグノセルロース系バイオマスに対するセルラーゼの添加量は、リグノセルロースの前処理の有無、セルラーゼの種類によって異なることから、各条件を勘案して適宜定めればよい。通常は、例えば、1gのリグノセルロースに対して1〜10mgの添加でよい。また、セルラーゼを生成する生物の培養上清のように、セルラーゼを含む未精製溶液を本工程で使用する場合、1gのリグノセルロースに対して1〜10mLの未精製溶液を添加すればよい。
本工程での両者の混合順序は問わない。反応槽内でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼが混合されればよい。例えば、反応槽中のリグノセルロース系バイオマスにセルラーゼを添加してもよく、逆にセルラーゼを入れた反応槽にリグノセルロース系バイオマスを添加してもよい。両者を同時に反応槽に入れることもできる。
混合の方法は、リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼが十分に混合できれば手段は問わない。例えば、撹拌棒等の撹拌装置を用いる方法や、反応槽を反転、回転、振動する方法が挙げられる。
(3)セルラーゼ賦活剤混合工程
「セルラーゼ賦活剤混合工程」は、リグノセルロース系バイオマスに第5態様に記載のセルラーゼ賦活剤を混合する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。本工程と前記セルラーゼ混合工程との順序は、問わない。本工程前後に、又は同時にセルラーゼ混合工程を行うことができる。
「セルラーゼ賦活剤混合工程」は、リグノセルロース系バイオマスに第5態様に記載のセルラーゼ賦活剤を混合する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。本工程と前記セルラーゼ混合工程との順序は、問わない。本工程前後に、又は同時にセルラーゼ混合工程を行うことができる。
リグノセルロース系バイオマスに対するセルラーゼ賦活剤の添加量は、リグノセルロースの前処理の有無、セルラーゼの種類、セルラーゼ賦活剤の種類や状態によって異なることから、各条件を勘案して適宜定めればよい。本発明の第4態様に記載の形質転換体の培養上清をセルラーゼ賦活剤とする場合、例えば、1gのリグノセルロースに対して0.5〜10mgの添加でよい。
混合方法は、セルラーゼ混合工程に記載の方法に準ずる。
(4)反応工程
「反応工程」は、セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースを加水分解する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。本工程は、前記セルラーゼ混合工程及びセルラーゼ賦活剤混合工程後に行われる。
「反応工程」は、セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースを加水分解する工程である。本工程は、本発明の糖化方法において必須の工程である。本工程は、前記セルラーゼ混合工程及びセルラーゼ賦活剤混合工程後に行われる。
反応槽内において、セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースをセルラーゼによって加水分解し、セルラーゼ賦活剤の働きでそのセルラーゼの活性を増強することで、リグノセルロースの効率的な糖化反応を進行させることができる。
本工程における反応条件は、リグノセルロース系バイオマスの前処理の有無及びその量、添加したセルラーゼ及びセルラーゼ賦活剤の種類や量によって異なるが、セルラーゼ賦活剤の存在下でセルラーゼが高い活性を維持できれば、特に限定はしない。各条件を勘案して適宜定めればよい。通常は、pH4〜pH6、好ましくはpH4.5〜pH5.5の範囲内で、40℃〜60℃、好ましくは45℃〜55℃の温度下で、24時間〜150時間、好ましくは48時間〜120時間インキュベートすればよい。
反応工程では、混合反応液を撹拌してもよいし、静置していてもよい。
反応後、遠心及び/又は濾過等によって反応残渣を除去すれば、リグノセルロース系バイオマスに由来するβ-D-グルコースの糖化液を得ることができる。
<実施例1:リグノセルロース分解補助因子の単離>
(目的)コウシュンシロアリ、イエシロアリ及びキゴキブリの消化管内共生鞭毛虫からメタトランスクリプトーム解析により非セルラーゼ系のバイオマス分解補助因子を単離する。
(目的)コウシュンシロアリ、イエシロアリ及びキゴキブリの消化管内共生鞭毛虫からメタトランスクリプトーム解析により非セルラーゼ系のバイオマス分解補助因子を単離する。
(方法)
沖縄県西表島産のコウシュンシロアリ及びイエシロアリを入手し、オリゴキャッピング法(Maruyama, K., Sugano., Gene 138:171-174, 1994)に基づいて、それらの腸内原生生物全体のmRNAより完全長cDNAライブラリーを調製し、得られたライブラリー(メタトランスクリプトームライブラリー)に含まれるmRNAの塩基配列を網羅的に解析した。得られた塩基配列を用いてblastによる解析を行い、さらにCAZy(http://www.cazy.org/)の情報に基づいて、ヘミセルロース及びリグニン分解関連因子と推測されるcellulose, carbohydrate binding moduleの塩基配列を有する2636A49クローン及びxylanase/chitin deacetylaseの塩基配列を有する1028A66クローンをリグノセルロース分解補助因子として単離した。
沖縄県西表島産のコウシュンシロアリ及びイエシロアリを入手し、オリゴキャッピング法(Maruyama, K., Sugano., Gene 138:171-174, 1994)に基づいて、それらの腸内原生生物全体のmRNAより完全長cDNAライブラリーを調製し、得られたライブラリー(メタトランスクリプトームライブラリー)に含まれるmRNAの塩基配列を網羅的に解析した。得られた塩基配列を用いてblastによる解析を行い、さらにCAZy(http://www.cazy.org/)の情報に基づいて、ヘミセルロース及びリグニン分解関連因子と推測されるcellulose, carbohydrate binding moduleの塩基配列を有する2636A49クローン及びxylanase/chitin deacetylaseの塩基配列を有する1028A66クローンをリグノセルロース分解補助因子として単離した。
<実施例2:セルラーゼ賦活剤の調製>
(目的)
実施例1で単離したリグノセルロース分解補助因子を有効成分とする本発明のセルラーゼ賦活剤を調製する。
(目的)
実施例1で単離したリグノセルロース分解補助因子を有効成分とする本発明のセルラーゼ賦活剤を調製する。
(方法及び結果)
(1)発現ベクターの構築
図1に示すように、植物形質転換用のバイナリーベクターであるpBI101を母核ベクターとして、Trichodermaをアグロバクテリウム法により形質転換する発現ベクターp2636A49-101及びp1028A66-101を構築した。
(1)発現ベクターの構築
図1に示すように、植物形質転換用のバイナリーベクターであるpBI101を母核ベクターとして、Trichodermaをアグロバクテリウム法により形質転換する発現ベクターp2636A49-101及びp1028A66-101を構築した。
配列番号3で示すRB-F及び配列番号4で示すLB-Rのプライマーセットを用いて、pBI101を鋳型としてInverse PCRを行い、発現ベクターを調製した。PCR反応には、KOD-plus-DNA polymerase(TOYOBO)を使用した。
Trichoderma由来セルラーゼのプロモーター領域を包含するegl1遺伝子の開始コドンから上流約1kbの塩基配列(配列番号7)、配列番号2で示す2636A49 cDNA配列、トリコデルマ属由来セルラーゼのターミネーター領域を包含するegl1の終止コドンから下流約1kbの塩基配列(配列番号8)、マーカー配列(ハイグロマイシン耐性遺伝子:Hyg)を含む発現カセットの両端に配列番号5で示す2636A49-F及び配列番号6で示す2636A49-Rのプライマーセットを用いてPCR増幅し、得られたPCR増幅断片をベクターへIn-fusion kit (タカラバイオ)を使用して連結し、発現ベクターp2636A49-101を構築した(図1)。
同様に、Trichoderma由来セルラーゼのプロモーター領域を包含するegl1遺伝子の開始コドンから上流約1kbの塩基配列(配列番号7)、配列番号9で示す1028A66 cDNA配列、トリコデルマ属由来セルラーゼのターミネーター領域を包含するegl1の終止コドンから下流約1kbの塩基配列(配列番号8)、マーカー配列(ハイグロマイシン耐性遺伝子:Hyg)を含む発現カセットの両端に配列番号11で示す1028A66-F及び配列番号12で示す1028A66-Rのプライマーセットを用いてPCR増幅し、得られたPCR増幅断片をベクターへIn-fusion kit (タカラバイオ)を使用して連結し、発現ベクターp1028A66を構築した。
(2)Trichoderma形質転換体の作製
(1)で構築した発現ベクターp2636A49-101及びp1028A66-101をそれぞれアグロバクテリウム法により、トリコデルマ属ATCC66589株に導入した。
(1)で構築した発現ベクターp2636A49-101及びp1028A66-101をそれぞれアグロバクテリウム法により、トリコデルマ属ATCC66589株に導入した。
LB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl)にクロラムフェニコール(20μg/mL)、リファンピシリン(20μg/mL)を添加し、アグロバクテリウム(EHA105株)を植菌し、28℃、250rpmにて18時間振とう培養した。培養菌体を50mL遠心チューブ(FALCON)に移し、遠心機(TOMY MX-300:トミー)を用いて4,000rpm、5分、4℃で遠心分離し、上清を除去した。氷冷滅菌水で菌体を懸濁後、4,000rpm、5分、4℃で再度遠心分離し、上清を除去した。この操作を2回繰り返して菌体を洗浄した。さらに、40mLの10%グリセロールを加えて菌体を懸濁後、4,000rpm、5分、4℃で遠心分離し、上清を除去し、10%グリセロール1mLに懸濁した。その後、1.5mLエッペンドルフチューブに50μLずつ分注し、コンピーテントセルとして使用した。
調製したコンピーテントセルに、p2636A49-101又はp1028A66-101を1μL加えて混合し、エレクトロポレーションシステム(Micro Pulser;Bio-Rad)によりパルス印加後、直ちにSOC培地(2%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、50 mM NaCl、25 mM KCl、10 mM MgCl2、10 mM MgSO4、20 mMグルコース)1mLを加えて、30℃、1時間振とう培養し、終濃度25μg/mLとなるようにカナマイシン含有LB寒天培地に塗布した。これを30℃にて3日間倒置培養し、次のアグロバクテリウム法の前培養に使用した。なお、p2636A49-101及びp1028A66-101の対照用として、これらの発現ベクターの母核ベクターであるpBI101を同様の方法で導入した。
終濃度25μg/mLとなるようカナマイシンを添加したLB培地に前記調製したアグロバクテリウムの前培養菌を植菌し、28℃、250rpm、18時間培養した。培養菌体を50mL遠心チューブ(FALCON)に移し、遠心機(トミー;TOMY MX-300)を用いて4,000rpm、5分、4℃で遠心分離し、上清を除去した後、IM培地に懸濁、4,000rpm、5分、4℃で遠心分離し菌体を洗浄した。洗浄した菌体をOD600が0.2程度になるようにIM培地に懸濁し、200μMのアセトシリンゴン(シグマアルドリッチ)を添加、28℃、250rpmで8時間振とう培養し、OD600が1.0程度になるまで培養を行った。これをアグロバクテリウム培養液とした。
続いて、トリコデルマATCC66589株の胞子懸濁液(1x106/mL)及び調製した前記アグロバクテリウム培養液を等量混合し、セロファン膜を敷いたIM寒天培地上に塗布した。トリコデルマATCC66589株は、トリコデルマにAspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼを導入した株である。24℃、3日間共存培養を行った後、セロファン膜を終濃度100μg/mLとなるようハイグロマイシン及び200μMセフォタキシムを添加したPDA培地(Difco)に移し、28℃で3〜5日間培養してアグロバクテリウムの除去及びTrichodermaの形質転換体の選抜を行った。
(3)セルラーゼ賦活剤の作製
選抜したトリコデルマ形質転換体の胞子1×106個をトリコデルマ用発現培地(1% Avicel、0.14%(NH4)2SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1%ポリペプトン、0.05%酵母エキス、0.1% Tween 80、0.1% Trace element、終濃度50mM クエン酸buffer、pH4.0 / Trace element: 6mg H3BO3、26mg (NH4)6MO7O24・4H2O、100mg FeCl3・6H2O、40mg CuSO4・5H2O、8mg MnCl2・4H2O、200mg ZnCl2/L)に植菌し、28℃、180rpmで7日間培養した。続いて、培養液を9,000rpm、10分、4℃で遠心分離した。分離した培養上清は、トリコデルマATCC66589株自身が生産したセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及び発現ベクターp2636A49-101又はp1028A66-101由来の本発明のセルラーゼ賦活剤を混合した状態で包含する。トリコデルマATCC66589株由来のセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及びp2636A49-101由来のセルラーゼ賦活剤を含む溶液を2636A49酵素溶液、及びトリコデルマ由来のセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及びp1028A66由来のセルラーゼ賦活剤を含む溶液を1028A66酵素液として次の実施例3で使用した。対照用酵素溶液には、形質転換していないトリコデルマATCC66589株で調製した酵素溶液を用いた。
選抜したトリコデルマ形質転換体の胞子1×106個をトリコデルマ用発現培地(1% Avicel、0.14%(NH4)2SO4、0.2% KH2PO4、0.03% CaCl2・2H2O、0.03% MgSO4・7H2O、0.1%ポリペプトン、0.05%酵母エキス、0.1% Tween 80、0.1% Trace element、終濃度50mM クエン酸buffer、pH4.0 / Trace element: 6mg H3BO3、26mg (NH4)6MO7O24・4H2O、100mg FeCl3・6H2O、40mg CuSO4・5H2O、8mg MnCl2・4H2O、200mg ZnCl2/L)に植菌し、28℃、180rpmで7日間培養した。続いて、培養液を9,000rpm、10分、4℃で遠心分離した。分離した培養上清は、トリコデルマATCC66589株自身が生産したセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及び発現ベクターp2636A49-101又はp1028A66-101由来の本発明のセルラーゼ賦活剤を混合した状態で包含する。トリコデルマATCC66589株由来のセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及びp2636A49-101由来のセルラーゼ賦活剤を含む溶液を2636A49酵素溶液、及びトリコデルマ由来のセルラーゼ、Aspergillus aculeatusのβ-グルコシダーゼ及びp1028A66由来のセルラーゼ賦活剤を含む溶液を1028A66酵素液として次の実施例3で使用した。対照用酵素溶液には、形質転換していないトリコデルマATCC66589株で調製した酵素溶液を用いた。
<実施例3:リグノセルロース系バイオマスの糖化>
(目的)
実施例2で作製したセルラーゼ賦活剤を用いて、リグノセルロース系バイオマスの糖化効果を検証する。
(目的)
実施例2で作製したセルラーゼ賦活剤を用いて、リグノセルロース系バイオマスの糖化効果を検証する。
(方法)
(1)基質バイオマスの調製
稲わらを特開2012-139211記載の方法に従い水熱処理をした。処理後の稲わらを5分間フードミキサーにて破砕し、100μmメッシュのふるいにかけて、100μm以下の粒子を回収した。回収した粒子にミリQ水を加えて60℃の温槽で加温しながら1時間以上撹拌した。その後、6000rpm、4℃の条件で15分間遠心分離して上清を除去した。粒子回収から上清除去までの一連の操作を上清が着色しなくなるまで繰り返した。洗浄後のバイオマスを凍結乾燥器により乾燥させた後、精密天秤で重量を計測し、ミリQ水で5%(w/vol)のバイオマス懸濁液を作製した。
(1)基質バイオマスの調製
稲わらを特開2012-139211記載の方法に従い水熱処理をした。処理後の稲わらを5分間フードミキサーにて破砕し、100μmメッシュのふるいにかけて、100μm以下の粒子を回収した。回収した粒子にミリQ水を加えて60℃の温槽で加温しながら1時間以上撹拌した。その後、6000rpm、4℃の条件で15分間遠心分離して上清を除去した。粒子回収から上清除去までの一連の操作を上清が着色しなくなるまで繰り返した。洗浄後のバイオマスを凍結乾燥器により乾燥させた後、精密天秤で重量を計測し、ミリQ水で5%(w/vol)のバイオマス懸濁液を作製した。
(2)バイオマス酵素糖化測定法
各5%バイオマス懸濁液を100μLずつ96穴プレートに分注し、4000rpm、4℃の条件で10分間遠心(KUBOTA6930;KUBOTA)し、上清を水流ポンプで除去した。上清を取り除いたバイオマスに100mM 酢酸バッファー(pH5.0)、実施例2で調製した2636A49酵素溶液を1.0 mg/g-biomassで、また1028A66酵素溶液を0.5 mg/g-biomassで加え、反応液量を100μLとし、1300rpmで振とうさせながら45℃で、2636A49酵素溶液を加えたサンプルは48時間、また1028A66酵素溶液を加えたサンプルは24、48及び72時間、インキュベートした。その後、96穴プレートフィルターを用いて4000rpm、4℃の条件で10分間遠心し、上清を回収した。
各5%バイオマス懸濁液を100μLずつ96穴プレートに分注し、4000rpm、4℃の条件で10分間遠心(KUBOTA6930;KUBOTA)し、上清を水流ポンプで除去した。上清を取り除いたバイオマスに100mM 酢酸バッファー(pH5.0)、実施例2で調製した2636A49酵素溶液を1.0 mg/g-biomassで、また1028A66酵素溶液を0.5 mg/g-biomassで加え、反応液量を100μLとし、1300rpmで振とうさせながら45℃で、2636A49酵素溶液を加えたサンプルは48時間、また1028A66酵素溶液を加えたサンプルは24、48及び72時間、インキュベートした。その後、96穴プレートフィルターを用いて4000rpm、4℃の条件で10分間遠心し、上清を回収した。
酵素活性は、反応液の上清中に存在する反応産物である還元糖量をDNS(3,5-ジニトロサリチル酸)法により測定した。上清20μLとDNS試薬40μLを混合した。DNS試薬は、80mLの0.5M NaOH、0.5gのDNS、30gのKNaC4H4O6-4H2Oを加え、純水で100mLにメスアップしたものを用いた。前記混合液を95℃で5分間加熱後、直ちに氷水中で冷却し、ミリQを180μL加えて撹拌し、プレートリーダー(Molecular Devices:SpectraMaxM2e)を用いて540nmの吸光度を測定した。グルコース濃度0、0.125、0.25、0.5、1.0、1.5、2.0、及び2.5 mg/mLのグルコース標準液から検量線を作成し、グルコース換算で遊離還元糖量を求めた。なお、DNS法は、トリプレットで行った。
(結果)
2636A49酵素溶液を加えた稲わらの糖化反応の結果を図2に、1028A66酵素溶液を加えた稲わらの糖化反応の結果を図3に示す。
2636A49酵素溶液を加えた稲わらの糖化反応の結果を図2に、1028A66酵素溶液を加えた稲わらの糖化反応の結果を図3に示す。
図2において、Aは市販のCellic(登録商標)CTec2(Novozymes)を、BはpBI101で形質転換したトリコデルマATCC66589株で調製した対照用酵素溶液を、Cは2636A49酵素溶液を示す。Cellic(登録商標)CTec2は、市販のリグノセルロース分解酵素の中で現在最も分解活性の高い酵素として知られている。2636A49酵素液を添加したCでは、Aや対照用酵素溶液のBよりも有意に高い糖化効率を得ることができた。
図3において、Aは形質転換していないトリコデルマATCC66589株で調製した対照用酵素溶液を、Bは1028A66酵素溶液を加えたときの結果である。Bは、酵素溶液添加後、24、48及び72時間反応させた場合の結果を示している。#1〜#3はp1028A66によるトリコデルマATCC66589株の形質転換体として独立に選抜されたクローンを示す。いずれもトリコデルマATCC66589株単独の場合(A)と比較して遊離還元糖量が高かった。また、遊離還元糖量は反応時間依存的に増加することも明らかとなった。
以上の結果から、本発明のセルラーゼ賦活剤がセルラーゼ活性を増強し、リグノセルロース系バイオマスの糖化を促進できることが立証された。
なお、本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願はそのまま引用により本明細書に組み入れられるものとする。
Claims (9)
- 以下の(a)〜(c)に示すいずれか一のアミノ酸配列からなるポリペプチド又はその活性断片。
(a)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列、
(b)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、及び
(c)配列番号1又は9に示すアミノ酸配列に対して90%以上のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列 - 請求項1に記載のポリペプチド又はその活性断片をコードするポリヌクレオチド。
- 以下の(d)〜(g)に示すいずれか一の塩基配列からなる、請求項2に記載のポリヌクレオチド。
(d)配列番号2又は10に示す塩基配列、
(e)配列番号2又は10に示す塩基配列において、1〜複数個の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列、
(f)配列番号2又は10に示す塩基配列に対して90%以上の塩基同一性を有する塩基配列、及び
(g)配列番号2又は10に示す塩基配列に相補的な塩基配列の一部とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列 - 請求項2又は3に記載のポリヌクレオチドを発現可能な状態で包含する発現ベクター。
- 請求項4に記載の発現ベクターを宿主に導入した形質転換体又はその後代。
- 宿主がトリコデルマ属(Trichoderma)糸状菌である、請求項5に記載の形質転換体又はその後代。
- 請求項1に記載のポリペプチドを有効成分として包含するセルラーゼ賦活剤。
- リグノセルロース系バイオマスの糖化方法であって、
リグノセルロース系バイオマスとセルラーゼを混合するセルラーゼ混合工程、
リグノセルロース系バイオマスと請求項7に記載のセルラーゼ賦活剤を混合するセルラーゼ賦活剤混合工程、
セルラーゼ賦活剤の存在下でリグノセルロース系バイオマスとセルラーゼとを接触させてリグノセルロースを加水分解する反応工程
を含む前記糖化方法。 - 請求項8に記載の方法を用いた、リグノセルロース系バイオマスから還元糖を製造する方法。
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-
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