JPWO2016051695A1 - 透明導電膜付フィルムと、透明配線付フィルム、透明シールドフィルム、タッチパネル及び表示装置 - Google Patents

透明導電膜付フィルムと、透明配線付フィルム、透明シールドフィルム、タッチパネル及び表示装置 Download PDF

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Abstract

透明導電膜付フィルムは、フィルム状の透明基材と、透明導電膜とを有する。透明基材は、第1面と、この第1面の反対側の第2面とを有する。透明導電膜は、金属ナノワイヤと、撥水添加剤を含有した透明バインダーとを含む。そして、透明基材の第1面と第2面の少なくとも一方に形成されている。透明導電膜の表面には、金属ナノワイヤの一部が露出している。透明導電膜の表面の接触角は、80度以上、125度以下である。

Description

本発明は、透明導電膜を表面に有するフィルムと、透明配線付フィルム、透明シールドフィルム、タッチパネル、表示装置に関する。
透明導電膜は、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)、タッチパネル、また有機エレクトロルミネッセンス(EL)や太陽電池などの分野で広く用いられている。そしてこのような透明で導電性を発現する透明導電膜は種々の方法で形成することができる。例えば、透明で導電性を有する材料を用いて膜を形成する。あるいは、透明樹脂に導電性フィラーを含有させて膜を形成する。この方法では、着色しても導電性フィラーの形状や配向によって透明性を確保しつつ導電性が発現した透明導電膜を形成することができる。
例えば特許文献1では、導電性フィラーとして金属ナノワイヤを用いて透明導電膜を形成することが提案されている。金属ナノワイヤの導電性は用いる金属に依存する。例えば銀は10−7Ω・cmと非常に優れた導電性を有しているので、銀ナノワイヤを透明電極に適用することが可能である。金属ナノワイヤを含有する透明導電膜を形成するには、例えば、金属ナノワイヤを分散した樹脂溶液を透明基材の表面に塗布して成膜する方法を適用することができる。この方法では、透明樹脂の塗膜中に金属ナノワイヤが含有されて透明導電膜が形成される。この場合、金属ナノワイヤ同士の接触によって、透明導電膜が導電性を発現する。
このように透明樹脂中に金属ナノワイヤを含有して形成される透明導電膜の強度は弱く、傷付きやすく、耐磨耗性が低い。このため、透明導電膜を保護するために、透明導電膜の表面にオーバーコート層が設けられる。例えば特許文献1では、透明導電膜の表面にウレタン樹脂などの被膜を形成してオーバーコート層が設けられている。
また特許文献2では、金属ナノワイヤを含む透明塗膜の上に、加水分解性シラン化合物の縮合物をマトリクス樹脂として形成することが提案されている。
特表2009−505358号 特開2011−204649号公報
本発明は、オーバーコート等からなる透明バインダーが形成された状態で、この透明バインダー越しに、金属ナノワイヤをパターニングすることで、導電パターン部と絶縁パターン部とを有する透明配線を形成できる、耐湿性の高い透明導電膜付フィルムを提供する。
本発明に係る透明導電膜付フィルムは、フィルム状の透明基材と、透明導電膜とを有する。透明基材は、第1面と、この第1面の反対側の第2面とを有する。透明導電膜は、金属ナノワイヤと、撥水添加剤を含有した透明バインダーとを含む。そして、透明基材の第1面と第2面の少なくとも一方に形成されている。透明導電膜の表面には、金属ナノワイヤの一部が露出している。透明導電膜の表面の接触角は、80度以上、125度以下である。
このように透明導電膜の表面に金属ナノワイヤの一部が露出することにより、透明導電膜と他の配線との接触抵抗を小さくすることができる。さらに透明導電膜の表面の接触角が、80度以上、125度以下であるため、透明バインダーを形成した状態での金属ナノワイヤのエッチングが容易で、金属ナノワイヤをエッチング除去した後の透明配線における信頼性や光学特性を高められる。すなわち、金属ナノワイヤを固定する透明バインダーが形成された状態で、この透明バインダー越しに金属ナノワイヤをパターニングできる。また、金属ナノワイヤの一部を除去して絶縁パターン部を形成した状態での耐湿性や信頼性を高めることができる。
図1Aは、本発明の実施の形態1による透明導電膜付フィルムの斜視図である。 図1Bは、図1Aに示す透明導電膜付フィルムの断面図である。 図1Cは、本発明の実施の形態1による他の透明導電膜付フィルムの断面図である。 図2Aは、図1Bまたは図1Cに示す透明導電膜付フィルムの製造方法の一例を説明する断面図である。 図2Bは、図2Aに続く、透明導電膜付フィルムの製造方法の一例を説明する断面図である。 図2Cは、図2Bに続く、透明導電膜付フィルムの製造方法の一例を説明する断面図である。 図3Aは、図1Cに示す透明導電膜付フィルムをパターニングする様子を説明する断面図である。 図3Bは、図3Aに続く、透明導電膜付フィルムをパターニングする様子を説明する断面図である。 図3Cは、図3Bに続く、透明導電膜付フィルムをパターニングする様子を説明する断面図である。 図4は、本発明の実施の形態1による透明配線付フィルムの接触角を測定する様子を説明する断面図である。 図5は、図4に示す透明配線付フィルムの導電パターン部の表面付近の構造の一例を説明する模式図である。 図6は、図4に示す透明配線付フィルムの絶縁パターン部の表面付近の構造の一例を示す模式図である。 図7は、本発明の実施の形態1による透明配線付フィルムを用いたタッチパネルや、表示装置の一例を示す断面図である。 図8Aは、本発明の実施の形態2による透明シールドフィルムの斜視図である。 図8Bは、図8Aに示す透明シールドフィルムの周縁部の断面図である。 図9Aは、本発明の実施の形態2による他の透明シールドフィルムの斜視図である。 図9Bは、図9Aに示す透明シールドフィルムの周縁部の断面図である。 図10は、本発明の実施の形態2において、大判の多丁取り用の透明シールドフィルムを個片に切断し、個々の透明シールドフィルムを形成する様子を示す斜視図である。 図11は、本発明の実施の形態2において、切断面での接触角の測定例を説明する断面図である。 図12Aは、図8Bに示す透明シールドフィルム作製過程において、金属ナノワイヤの一部が導電ペースト組成物と接触する様子を説明する断面図である。 図12Bは、図9Bに示す透明シールドフィルム作製過程において、金属ナノワイヤの一部が導電ペースト組成物と接触する様子を説明する断面図である。 図13Aは、本発明の実施の形態2による表示装置の側面図である。 図13Bは、本発明の実施の形態2による他の表示装置の側面図である。 図14は、本発明の実施の形態2による表示装置におけるノイズに対するシールド効果の測定結果の一例を示す図である。
本発明の実施の形態の説明に先立ち、従来の透明導電膜における問題点を簡単に説明する。透明導電膜上に多孔質のオーバーコート部を設けた場合、使用するオーバーコート材によっては、耐湿性やマイグレーション特性に問題を生じる場合がある。
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各実施の形態において、先行する実施の形態と同じ構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
なお本発明は以下の実施の形態に限定されない。本発明の思想の範囲において、実施の形態を変更することは可能である。また実施の形態の2つ以上を組み合わせることも可能である。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1による透明導電膜付フィルム(以下、フィルム)110の斜視図である。フィルム110の一つの形態は、図1Aに示したような長尺のロール形状、あるいはシート状の枚葉形状(図示せず)である。
図1Bは、フィルム110の断面構造の一例を説明するための模式図である。図1Bに示すように、フィルム110は、透明基材130と、透明導電膜150を有している。透明基材130は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製のフィルムである。透明導電膜150は透明基材130の両面に形成され、金属ナノワイヤ120と、透明バインダー140とを含んでいる。透明バインダー140は、複数の金属ナノワイヤ120の間を埋めるように形成されている。透明導電膜150の表面には、金属ナノワイヤ120の一部が露出している。
図1Cは、本発明の実施の形態1による他の透明導電膜付フィルム(以下、フィルム)111の断面構造の一例を説明するための模式図である。フィルム111は、透明基材130と、透明基材130の第1面に形成された透明導電膜150と、透明基材130の第2面に形成されたアンチブロッキング層160とを有している。透明導電膜150の構成はフィルム110と同様である。アンチブロッキング層160は透明導電膜150が形成されていない反対面に形成されている。必要に応じて、アンチブロッキング層160を設けることで、フィルム110をロール状に捲回した場合に発生するブロッキングを抑制する効果が得られる。
図1B、図1Cにおいて、透明導電膜150の上に滴下した水滴170の接触角190は、補助線180と透明導電膜150との角度に相当する。透明導電膜150の接触角190は、80度以上、125度以下である。接触角190が80度未満の場合、耐湿性などの信頼性に問題を生じる場合がある。また透明導電膜150の接触角が125度を超えた場合、フィルムの光学特性(例えばヘイズや透過率等)に問題を生じる場合がある。なお接触角190を80度以上、125度以下に制御するために、透明バインダー140は、撥水添加剤(図5参照)を含む。接触角190の測定については、JIS規格R3257を参考にすればよい。
ここでJIS規格R3257について簡単に説明する。この規格において、接触角は静滴法で測定される。すなわち、4μL以下の水滴を試験片上に静置する。この場合、水滴の形状は球の一部とみなせるので,接触角θと水滴の形状との間には,次のような関係が成り立つ。
θ=2tan−1(h/r)
rは、水滴の試験片に接している面の半径(mm)、hは、試験片表面から水滴の頂点までの高さ(mm)である。rおよびhは、光源と光学読取装置との光軸の中心に試験片上に静置した水滴が位置するように、光源と光学読取装置と試験片とを配置し、試験片上の水滴の像を光学読取装置で読み取ることにより測定する。あるいは、水滴の頂点と試験片表面上の水滴の端部とを結ぶ直線と、試験片表面とがなす角度を読み取り、その2倍を接触角としてもよい。
次に、図1A〜図1Cにおける透明基材130について説明する。透明基材130は光透過性を有する。透明基材130の光線透過率は、50%以上であることが好ましく、70%以上であればより好ましく、80%以上であれば特に好ましい。
透明基材130の形状は、特に制限されないが、板状又はフィルム状であることが好ましい。特に、フィルム110、111の生産性及び運搬性を向上する観点からは、透明基材130の形状はフィルム状であることが好ましい。
透明基材130がフィルム状である場合、透明基材130の厚みは10μm以上、500μm以下の範囲であることが好ましい。この場合、透明基材130の透明性が特に良好になり、またフィルム110、111の生産時及び取り扱い時の作業性も良好になる。透明基材130の厚みは、25μm以上、200μm以下の範囲であることがさらに好ましい。特に、透明基材130の厚みが25μm以上、150μm以下であると、フィルム110、111の薄型化、軽量化が可能となる。またフィルム110、111の表裏における干渉の発生が抑制される。さらに透明基材130が加熱される際の熱収縮が抑制されて透明基材130の熱収縮による加工性の低下等の不具合が抑制される。
透明基材130の材質は、特に制限されない。透明基材130の材質の例としては、シート状であればガラス(あるいは薄板ガラス)や樹脂フィルム(あるいは樹脂板)等が挙げられる。透明樹脂の例としては、PET、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル共重合体、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、非晶質ポリオレフィン、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、アクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等が挙げられる。
特に、透明基材130が、ポリエステルから形成されることが好ましい。ポリエステルのうち、特に、PET又はPENからなる2軸延伸フィルムは、優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性等を有するため好ましい。このような2軸延伸フィルムは、磁気テープ、強磁性薄膜テープ、包装用フィルム、電子部品用フィルム、電気絶縁フィルム、ラミネート用フィルム、ディスプレイ等の表面に貼るフィルム、各種部材の保護用フィルム等の素材として広く用いられている。特に、ディスプレイ用途に関しては、液晶表示装置の部材であるプリズムレンズシート、タッチパネル、バックライト等のベースフィルムや、テレビの光学フィルムのベースフィルム、プラズマテレビの前面光学フィルターに用いられる光学フィルム、近赤外線カットフィルム、電磁波シールドフィルムのベースフィルム等として用いられている。
また、ポリエステルとして芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸とグリコールとが反応することで生成する。芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸を含み、グリコールの例はエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオールを含む。特に、PET、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートなどが、好ましい。またポリエステルは、上記例示した複数の成分が共重合して生成したものでもよい。
透明基材130は有機または無機の粒子を含有してもよい。この場合、透明基材130の巻き取り性、搬送性等が向上する。透明基材130が含有することができる粒子として、炭酸カルシウム粒子、酸化カルシウム粒子、酸化アルミニウム粒子、カオリン、酸化珪素粒子、酸化亜鉛粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。
また、透明基材130は、さらに着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、他の樹脂等も、透明性を損なわない範囲で含有してもよい。
透明基材130のヘイズは3%以下であることが好ましい。この場合、導電性光学部材1を通した映像等の視認性が向上し、光学的用途の部材として特に適するようになる。ヘイズが1.5%以下であればさらに好ましい。なお、ヘイズとは、全光線透過率における拡散透過率の割合を百分率で表した値であり、一般的なPETフィルムでは4%程度であり、ガラスでは0%である。
なお、透明基材130には、低分子量のオリゴマー等の析出の少ない材料(アンチオリゴマー性の高い材料)を用いることが好ましい。例えば、透明基材の材料としてオリゴマーに対する措置が全く取られていないポリエステルフィルムを用いた場合、例えば高温高湿条件下に置かれた透明導電膜付きフィルムで表面抵抗値が増大する場合がある。この一因として、ポリエステルフィルムに含まれるオリゴマーが高温条件下で析出し、オリゴマーが透明導電膜に影響を与えることにより、表面抵抗値が増加する可能性が考えられる。
したがって、透明基材130にはオリゴマーの析出を抑える加工を施した材料を用いることで、フィルム110、111の信頼性を高めることができる。具体的には、透明基材130は、100℃で60分加熱後のヘイズの増大が0.3%以下であることが好ましい。
オリゴマーがフィルム110、111上に析出すると、フィルム110、111の表面が白濁し、ヘイズの上昇が観察される。このため、オリゴマー析出の度合いについては、ヘイズの増大で確認することが可能である。
オリゴマーの析出を抑えるには、例えば、オリゴマーの発生しにくい工法で製造された透明基材130を用いる方法が検討されている。あるいは透明基材130の表面に、オリゴマー等の析出を低減するための透明被覆層(図示せず)を形成することも好ましい。透明基材130の表面に透明被覆層を形成することで、透明基材130から低分子量成分が析出しにくくなる。そのため透明基材130の白化が抑制され、その良好な透明性が維持される。
オリゴマー等の析出を低減するための透明被覆層の材質は、特に制限されないが、例えばアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂等から形成される。また、透明被覆層が、透明基材130からの低分子量成分の析出を充分に抑制するためには、透明被覆層の厚みが、0.5μm以上、10μm以下の範囲であることが好ましい。
図1Cに示すフィルム111が図1Aに示すようにロール状に巻き回されるなどして重ねられる場合に、アンチブロッキング層160によってブロッキングが抑制されることが好ましい。そのためアンチブロッキング層160は、表面に凹凸を有するアンチブロッキング性を有する透明層であることが好ましい。アンチブロッキング層160の表面に凹凸を形成するためには、例えば、アンチブロッキング層160の表面を機械的に加工する。
またアンチブロッキング層160がシリカ粒子等のフィラーを含有することで、アンチブロッキング層160の表面に凹凸が形成されていてもよい。この場合、アンチブロッキング層160が、例えばアクリレート樹脂またはウレタンアクリレート樹脂を80質量%以上、95質量%以下の範囲で含有し、さらに平均粒子径250nm程度のシリカ粒子を5質量%以上、20質量%以下の範囲で含有することが好ましい。
また、アンチブロッキング層160は、例えばシリコーン系のレベリング剤を含有することも好ましい。この構成によりフィルム111の滑性を向上することができる。
アンチブロッキング層160と重なる透明基材130の第2面には、アンチブロッキング層160が形成される前に、表面処理が施されることが好ましい。この場合、透明基材130とアンチブロッキング層160との間の濡れ性や密着性が向上する。表面処理の方法の例としては、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理などの物理的表面処理、並びにカップリング剤、酸性成分、アルカリ性成分等による化学的表面処理が挙げられる。あるいは、透明基材130の表面に、易接着層(図示せず)を設けてもよい。易接着層を設けた透明基材130を用いることで、透明基材130とアンチブロッキング層160との間の濡れ性、密着性が向上する。易接着層の形成に加えて、プラズマ処理、コロナ放電処理、フレーム処理などの物理的表面処理、カップリング剤、酸、アルカリによる化学的表面処理などを行うことも有用である。なお、透明基材130の第1面にこれらの処理を施したり、易接着層を形成したりしてもよい。この場合、透明基材130と透明導電膜150との間の濡れ性、密着性が向上する。またこのような処理等はフィルム110にも有効である。
次に透明導電膜150について説明する。透明導電膜150は、金属ナノワイヤ120と、透明バインダー140とを含有する。金属ナノワイヤ120とは、ナノサイズ(1〜1000nm)の直径を有する金属繊維である。金属ナノワイヤ120を構成する金属の種類は、特に制限されないが、例えばAg、Au、Cu、Co、Al、Pt等が挙げられる。特に透明導電膜150の導電性をより向上するためには、金属ナノワイヤ120を構成する金属がAu、Ag、Cu及びPtから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、特にAg及びCuから選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
金属ナノワイヤ120は、銀ナノワイヤや銅ナノワイヤとすることが、特に好ましい。銀や銅のように導電率の高い金属ナノワイヤを使用することで、金属ナノワイヤ120の使用量を抑制して透明導電膜150の高い透明性を確保しつつ、透明導電膜150に高い導電性を付与することが可能となる。
金属ナノワイヤ120の製造方法としては、特に制限されず、例えば、液相法や気相法等の公知の方法を採用することができる。例えば銀ナノワイヤの製造方法の具体例として、Adv.Mater.2002,14,P833〜837、Chem.Mater.2002,14,P4736〜4745、特表2009−505358号公報等の文献に開示されている方法が挙げられる。また、Auナノワイヤ(金ナノワイヤ)の製造方法の具体例としては、特開2006−233252号公報等に開示されている方法が、挙げられる。また、Cuナノワイヤ(銅ナノワイヤ)を製造する方法としては、特開2002−266007号公報等に開示されている方法が挙げられる。また、Coナノワイヤ(コバルトナノワイヤ)を製造する方法としては、特開2004−149871号公報等に開示されている方法が挙げられる。特に、Adv.Mater.2002,14,P833〜837、並びにChem.Mater.2002,14,P4736〜4745に開示されているAgナノワイヤの製造方法では、水系で簡便にかつ大量に銀ナノワイヤを製造することができる。
金属ナノワイヤ120の平均直径は、10nm以上、100nm以下の範囲であることが好ましい。平均直径が10nm以上であると、透明導電膜150の導電性が特に高くなる。また平均粒径が100nm以下であると、透明導電膜150の透明性が特に高くなる。金属ナノワイヤ120の平均直径は、20nm以上、100nm以下の範囲であればより好ましく、40nm以上、100nm以下の範囲であれば最も好ましい。
また金属ナノワイヤ120の平均長さは、1μm以上、100μm以下の範囲であることが好ましい。平均長さが1μm以上であると、透明導電膜150の導電性が特に高くなる。また平均長さが100μm以下であると、透明導電膜150中で金属ナノワイヤ120が凝集しにくくなる。このため透明導電膜150の透明性が向上する。金属ナノワイヤ120の平均長さは、1μm以上、50μm以下の範囲であればより好ましく、3μm以上、50μm以下の範囲であれば最も好ましい。
なお、金属ナノワイヤ120の平均直径は、充分な数の金属ナノワイヤ120の直径を測定し、その結果を算術平均して得られる値である。また、金属ナノワイヤ120の平均長さは、充分な数の金属ナノワイヤ120の長さを測定し、その結果を算術平均して得られる値である。金属ナノワイヤ120の直径及び長さは、金属ナノワイヤ120の電子顕微鏡画像を画像解析することで導出される。例えば電子顕微鏡画像において金属ナノワイヤ120が屈曲している場合、画像解析によって金属ナノワイヤ120の直径(投影径(D))及び面積(投影面積(S))を算出する。さらに投影面積(S)を投影径(D)で割ることで、金属ナノワイヤ120の長さ(L=S/D)を求めることができる。金属ナノワイヤ120の平均直径及び平均長さを導出するためには、少なくとも100個の金属ナノワイヤ120の直径及び長さを測定することが好ましく、300個以上の金属ナノワイヤ120の直径及び長さを測定すればさらに好ましい。
透明導電膜150における金属ナノワイヤ120の割合は、特に制限されないが、0.01質量%以上、90質量%以下の範囲であることが好ましく、0.1質量%以上、30質量%以下の範囲であればさらに好ましく、0.5質量%以上、10質量%以下の範囲であれば最も好ましい。
透明導電膜150は、例えば金属ナノワイヤ120と、樹脂成分を含有する組成物とから形成される。この場合、湿式の成膜法によって透明導電膜150を形成することができる。
透明導電膜150を形成するための透明バインダー140としては、例えば、セルロース樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ジアクリルフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、その他の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂を構成する単量体が2種以上重合して形成された共重合体でもよい。これら樹脂成分によって、金属ナノワイヤ120を、透明基材130の表面に結着する。
透明バインダー140を形成するための樹脂成分は、反応性硬化型樹脂を含有することも好ましい。反応性硬化型樹脂としては、例えば熱硬化型樹脂と電離放射線硬化型樹脂の少なくとも一方が用いられる。
透明バインダー140を形成するための熱硬化型樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が、挙げられる。組成物は、熱硬化性樹脂と共に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、溶剤等を含有してもよい。
また透明バインダー140を形成するための電離放射線硬化型樹脂としては、アクリレート系の官能基を有する樹脂が好ましい。アクリレート系の官能基を有する樹脂としては、例えば比較的低分子量の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。多官能化合物として具体的には、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂を含有する組成物は、さらに反応性希釈剤を含有することも好ましい。反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの多官能モノマーが挙げられる。
透明バインダー140を形成するための電離放射線硬化型樹脂が紫外線硬化型樹脂などの光硬化型樹脂である場合には、組成物がさらに光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類などが挙げられる。光硬化型樹脂を含有する組成物が、光重合開始剤に加えて、或いは光重合開始剤に代えて、光増感剤を含有してもよい。光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、チオキサントンなどが挙げられる。
なお、透明バインダー140を形成するための樹脂として、メタクリル官能性シランと、アクリル官能性シランとのうち少なくとも一方を含有することも好ましい。この構成により、透明基材130や複数の金属ナノワイヤ120との密着性が向上する。メタクリル官能性シランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。アクリル官能性シランとしては3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
メタクリル官能性シランとアクリル官能性シランの含有量は特に制限されないが、透明バインダー140中のメタクリル官能性シランとアクリル官能性シランの総量の割合が5〜30質量%の範囲であることが好ましい。この割合が5質量%以上であると、透明基材130や複数の金属ナノワイヤ120の密着性が十分に高くなる。また30質量%以下であると、透明バインダー140中の架橋密度が十分に向上する。
透明導電膜150の屈折率は、特に制限されないが、透明導電膜150の存在を目立たなくなるためには、1.35〜1.65の範囲であることが好ましい。また、透明導電膜150の厚みは、特に制限されないが、10〜300nmの範囲であることが好ましい。透明導電膜150の屈折率は、透明導電膜150を形成するための組成物の組成が変更されることで、容易に調整される。
また透明バインダー140は撥水添加剤を含んでいる。この撥水添加剤は、フルオロアルキル基またはフルオロアルキレン基を含む化合物を含んでいることが望ましい。そして透明導電膜150の表面に、撥水添加剤の一部、特に撥水基となるフルオロアルキル基またはフルオロアルキレン基が露出することが好ましい。この構成により、透明導電膜150の表面の接触角を、80度以上、125度以下に確実に調整することができる。
透明導電膜150を形成するための組成物(あるいは塗工液)は、必要に応じて溶媒を含有してもよい。溶媒として、例えば有機溶剤、或いは水が用いられ、或いは有機溶剤と水とが併用される。有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、並びにこれらの混合物が挙げられる。アルコール類の例は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)を含む。ケトン類の例はメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンを含む。エステル類の例は酢酸エチル、酢酸ブチルを含む。芳香族炭化水素類の例はトルエン、キシレンを含む。
透明導電膜150を形成するための組成物中の溶媒の量は、組成物中において固形分が均一に溶解又は分散することができるように、適宜調整される。組成物中の固形分濃度は、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜30質量%の範囲であればさらに好ましい。
透明導電膜150を形成するための組成物を透明基材130に塗布し、成膜することで、透明導電膜150が形成される。組成物を塗布する際には、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法などの適宜の方法が採用される。組成物を成膜するための手法は、組成物中の樹脂成分等の種類に応じて適宜選択される。例えば組成物が熱硬化型樹脂を含有する場合は、組成物を加熱して熱硬化することで、透明導電膜150が形成される。また、組成物が電離放射線硬化型樹脂を含有する場合には、組成物に紫外線等の電離放射線を照射することで組成物が硬化し、透明導電膜150が形成される。
透明導電膜150のシート抵抗は、0.1Ω/□以上、200Ω/□以下、さらには2Ω/□以上100Ω/□以下が望ましい。透明導電膜150のシート抵抗が0.1Ω/□未満であると、透明導電膜150内部に含まれる金属ナノワイヤ120の密度が増加し、フィルム110の透明度が低下する場合がある。またシート抵抗が200Ω/□より高い場合、その使用用途が限定される。
また透明導電膜150の膜厚は、20nm以上、300nm以下が望ましい。透明導電膜150の膜厚が20nm未満の場合、透明導電膜150の全体としての抵抗が増加し透明導電膜150の物理的強度が低下する場合がある。また透明導電膜150の膜厚が300nmを超えた場合、透明導電膜150の光通過性が低下したり、透明導電膜150の塗工作業性が低下したりする場合がある。
次に、図2A〜図2Cを参照しながら、透明基材130上に透明導電膜150を形成する方法の一例を説明する。以下の説明では、透明導電膜150は、次のようにして形成される。まず金属ナノワイヤ120を含む樹脂液を透明基材130に塗布し、金属ナノワイヤ層220を形成する。その後、金属ナノワイヤ層220の上に、オーバーコート液230を塗布し、オーバーコート液230を乾燥、硬化させて透明バインダー140を形成する。
図2Aは、透明基材130の第1面に、金属ナノワイヤ層220が形成された状態を説明する断面図である。金属ナノワイヤ層220は、少なくとも、複数の金属ナノワイヤ120同士を結着させる結着樹脂部210aと、透明基材130の上に金属ナノワイヤ120を結着させる結着樹脂部210bとを含む。なお結着樹脂部210aと、結着樹脂部210bは、同じ結着樹脂で形成してもよい。以下、結着樹脂部210aと結着樹脂部210bとを総称して結着樹脂部210と呼ぶ場合がある。
図2Aに示すように、複数の金属ナノワイヤ120は、互いに結着樹脂部210aや結着樹脂部210bによって、透明基材130の上に付着している。また複数の金属ナノワイヤ120の間には空隙部200を設けることが望ましい。空隙部200には結着樹脂部210aや結着樹脂部210bが存在しない。空隙部200を設けることで、図1Aに図示したようにフィルム110を湾曲させる場合に発生する、複数の金属ナノワイヤ120間の応力集中を緩和することができる。さらに図2Bを参照して説明するように、空隙部200を介して、金属ナノワイヤ層220の隅々までオーバーコート液230を充填することができる。
なお図2Aに示す結着樹脂部210に撥水添加剤を加えると、液状の組成物中における金属ナノワイヤ120の分散の均一性に影響を与える場合がある。
なお図2Aの状態で、金属ナノワイヤ層220を加圧することで、複数の金属ナノワイヤ120同士の電気的接続の安定性を高めることができる。しかしながら空隙部200がなく、結着樹脂部210が緻密に金属ナノワイヤ120を埋設している場合、金属ナノワイヤ層220に対して、プレス装置等を使って加圧しても、複数の金属ナノワイヤ120同士の電気的な接続安定性が改善されにくいことがある。プレス装置等を使って加圧する場合、図2Aの状態、すなわち複数の金属ナノワイヤ120の間に空隙部200を有する状態で行うことが好ましい。
図2Aに示す金属ナノワイヤ層220は、金属ナノワイヤ120を分散した樹脂溶液を透明基材130の表面に塗工して成膜することによって形成される。この塗工にはスピンコート、スクリーン印刷、ディップコート、ダイコート、キャスト、スプレーコート、グラビアコートなど任意の方法を適用できる。
次に、図2Bに示すように、金属ナノワイヤ層220の上にオーバーコート液230を塗布し、図2Cに示すようにして、透明バインダー140を形成する。透明バインダー140を形成するためのオーバーコート液230は、熱硬化性樹脂組成物と、電離放射線硬化型樹脂組成物の、少なくとも一つ以上と、撥水添加剤とが含まれることが望ましい。オーバーコート液230は、空隙部200を介して、複数の金属ナノワイヤ120の表面や、金属ナノワイヤ120と透明基材130との結着部分に浸透する。
結着樹脂部210は、オーバーコート液230に対して、ある程度の相溶性を有することが好ましい。結着樹脂部210aが、オーバーコート液230に対して相溶性を有することで、複数の金属ナノワイヤ120の表面の一部を直接、オーバーコート液230で濡らすことができる。また結着樹脂部210aの少なくとも一部を、オーバーコート液230で置換することも可能となり、複数の金属ナノワイヤ120間の密着力を高められる。同様に、結着樹脂部210bが、オーバーコート液230に対して相溶性を有することで、透明基材130の表面の一部以上を、直接、オーバーコート液230で濡らすことができる。また結着樹脂部210bの少なくとも一部を、オーバーコート液230で置換することで、透明基材130と金属ナノワイヤ120との間の密着性を高められる。このように結着樹脂部210を、オーバーコート液230で濡らすことで、結着樹脂部210の一部または全体を透明バインダー140に置換してもよい。
金属ナノワイヤ120を結着樹脂部210で覆っておくことで、金属表面が外気(あるいは大気中)に直接触れることなく、結着樹脂部210から透明バインダー140に置換することができる。この結果、金属ナノワイヤ120の表面への、撥水添加剤の偏析を低減できる。この点については後述する。
図2Bの状態の後、オーバーコート液230に含まれる溶剤等の揮発成分を、乾燥炉あるいは硬化炉で除去し、残った樹脂成分を硬化することで、オーバーコート液230から透明バインダー140が形成される。すなわち、図2Bの状態の後に図2Cの状態が形成される。なお、透明基材130の第2面にも透明導電膜150を形成すればフィルム110が作製され、透明基材130の第2面にアンチブロッキング層160を形成すればフィルム110が作製される。
図2Cに示すように、透明導電膜150では、金属ナノワイヤ120の一部が透明バインダー140の表面から、外部(あるいは空気中)へ突出、あるいは露出している。図2Cのように、金属ナノワイヤ120の一部が、透明バインダー140の表面から、外部へ露出することで、透明導電膜150と、外部回路(図示せず)との接続性が高まる。
なお、アンチブロッキング層160は、透明バインダー140と同様に熱硬化型樹脂組成物と電離放射線硬化型樹脂組成物の少なくとも一方から形成されることが好ましい。
なお、透明導電膜150の表面には、撥水添加剤の一部が露出することが望ましい。詳細は、後述する。
次に、透明導電膜150のパターニング方法について、図1Cに示すフィルム111を例として、図3A〜図3Cを参照しながら説明する。図3A〜図3Cに示すように、透明導電膜150がパターニングされることで、透明配線付フィルム(以下、フィルム)300が形成される。
図3Aは、フィルム111の上に、レジストパターン部240を形成した様子を示す断面図である。レジストパターン部240は、透明導電膜150の上に形成されている。すなわち、レジストパターン部240は透明バインダー140の上に形成されているため、透明バインダー140が多孔質な部分を含む場合でも、その多孔質な部分もレジストパターン部240で覆うことができる。レジストパターン部240は、透明バインダー140に加えて透明導電膜150から露出した金属ナノワイヤ120も覆うように形成する。透明導電膜150から露出した金属ナノワイヤ120を、レジストパターン部240で覆うことで、レジストパターン部240を除去した後(図3Cの状態)において、透明導電膜150から露出した金属ナノワイヤ120を露出した状態で残すことができる。
レジストパターン部240は、市販の感光性レジストを使って形成することができる。図3Aに示すように、複数のレジストパターン部240の間に開口部250を形成する。開口部250は、レジストパターン部240が形成されていない部分である。そして、図3Aに示した状態のフィルム111を、金属ナノワイヤ120のエッチング液に浸漬し、開口部250に露出した金属ナノワイヤ120を除去する。その後、水洗等によりエッチング液の残渣等を除去し、図3Bの状態とする。
図3Bは、開口部250に一部が露出した金属ナノワイヤ120をエッチング除去した後の状態を説明する断面図である。図3Bにおける細孔部260は、開口部250の形成された金属ナノワイヤ120がエッチング除去されて形成される。
図3Cは、レジストパターン部240を除去した後の様子を示す断面図である。レジストパターン部240が形成され保護されていた領域は、導電パターン部280になる。そしてレジストパターン部240が形成されておらず開口部250で示した領域は、絶縁パターン部270となる。このように、透明配線290は、絶縁パターン部270と、導電パターン部280とを含む。絶縁パターン部270と導電パターン部280との間に段差を形成することなく、同じ高さとすることで金属ナノワイヤ120による配線パターンの非視認性を高められる。さらに、必要に応じて、導電パターン部280や絶縁パターン部270を覆うように、保護用の硬質保護シート(例えば、PETフィルムや、カバーガラス等の保護板)を載せてもよい。
このようにして、透明バインダー140と金属ナノワイヤ120を含む導電パターン部280と、透明バインダー140と金属ナノワイヤ120が除去されて形成された細孔部260を含む絶縁パターン部270を含む透明配線290を、フィルム状の透明基材130の片面または両面に形成する。また導電パターン部280と絶縁パターン部270とは、共に透明であり、さらに導電パターン部280と絶縁パターン部270との境目には凹凸や段差が発生しない。そのため、配線パターン部279の有無が肉眼で認識されにくい。
次に、図4を参照しながら、フィルム300の表面の接触角について説明する。
水滴170a、水滴170cはそれぞれ、導電パターン部280a、導電パターン部280bの上にある。また水滴170bは、絶縁パターン部270の上にある。水滴170aの接触角190aも、水滴170bの接触角190bも、水滴170cの接触角190aも、共に80度以上、125度以下である。接触角190a、接触角190b、接触角190cを、全て80度以上、125度以下とすることで、金属ナノワイヤ120のパターニング性(例えばエッチング性)と、信頼性(例えば高湿状態での電気的信頼性)の両方が良好になる。
接触角190a、接触角190b、接触角190cが、80度未満の場合、金属ナノワイヤ120のパターニング性は良好であっても、信頼性で問題を生じる場合がある。なお図4に示す導電パターン部280a、280bの表面とは、図1Bや図1Cに示す、パターニングする前の透明導電膜150の表面と同じである。そのため図4に示す接触角190aや接触角190cは、図1Aや図2Bの接触角190と同様である。
接触角190a、接触角190b、接触角190cが125度より大きい場合、さらには接触角が130度以上となった場合、信頼性は良好であっても、パターニング性で問題を生じる場合がある。
以上のように、図1B、図1Cに示すように金属ナノワイヤ120がパターニングされる前の状態で、透明導電膜150の接触角190は、80度以上、125度以下であり、図4に示すように金属ナノワイヤ120がパターニングされた後の状態でも、接触角190a、接触角190b、接触角190cは80度以上、125度以下である。さらに図4に示すようにパターニングされた後の状態において、導電パターン部280における接触角190a、接触角190cも、絶縁パターン部270における接触角190bも、80度以上、125度以下である。
さらに、導電パターン部280における接触角190a、接触角190cと、絶縁パターン部270における接触角190bとの差は、3σの範囲で10%以下または10度以下であることが好ましい。また、5%以下または5度以下で、ほぼ同じ値であることがさらに望ましい。両者の接触角の差が、3σで10%を超える場合、あるいは3σで10度を越える場合、パターニング時や信頼性評価時にバラツキが発生する虞がある。
次に、図5、図6を参照しながら、導電パターン部280における接触角190a、接触角190cと、絶縁パターン部270における接触角190bとの差が3σの範囲で10%以下または10度以下であることが好ましい理由を説明する。すなわち、フィルム111において、図3Aに示すエッチング前と図3Bに示すエッチング後の接触角の差についても同様である。
図5は、導電パターン部280の表面構造の一例を模式的に示している。この表面構造は、図3Aや図2Cに示すエッチング前の透明導電膜150の表面構造と同じである。
透明導電膜150は、透明バインダー140と、金属ナノワイヤ120とを含む。金属ナノワイヤ120の一部は、透明バインダー140の表面より露出している。また、透明バインダー140の最表面には、透明バインダー140に添加していた撥水添加剤310が配向するように露出していることが好ましい。撥水添加剤310の一部は、金属ナノワイヤ120の表面にも付着している。
透明バインダー140は、撥水基を有する化合物である撥水添加剤310を含む。そのため、透明導電膜150の接触角を、80度以上、125度以下に制御することができる。撥水基とは、表面自由エネルギーが特に低い官能基のことであり、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルキレン基である。このような化学構造を保有している分子鎖を、透明導電膜150の最表面、すなわち透明バインダー140の最表面に存在させるためには、例えばパーフルオロポリエーテル基含有シランを、撥水添加剤310として用いることが好ましい。パーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物としては、ダイキン工業株式会社よりオプスールDSXやオプツールAES4,信越化学工業株式会社よりKY−164やKY−130,株式会社フロロテクノロジーよりフロロサーフFG−5020、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン株式会社よりFluoroLink S10等が提供されている。
透明バインダー140に添加された撥水添加剤310には、撥水添加剤310が有するフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基等の撥水機能によって、表面自由エネルギーを最小にしようとするドライビングフォースが発生する。このドライビングフォースは、主に外気(あるいは大気)に接する表面に発生すると考えられる。この結果、効率的に透明導電膜150の表面近くにフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基等の撥水基を偏析させることができる。
このように撥水添加剤310の一部、すなわちフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基等の撥水基を、透明導電膜150の表面に露出させることで、透明バインダー140に添加する撥水添加剤310の添加量が少量であっても、透明導電膜150の表面の撥水性を高め、接触角を80度以上、125度以下に制御できる。また、複数の金属ナノワイヤ120同士が接触して、導電パスを形成する際の阻害要因になることを撥水添加剤310が防止することができる。
なお透明導電膜150の接触角が125度より大きい場合、さらには接触角が130度以上の場合、透明バインダー140に添加する撥水添加剤310の添加量を増やす必要がある。この場合、余剰となった撥水添加剤310が、透明バインダー140の内部で、ミセル(micelle)等を形成し、透明バインダー140の光学特性に影響を与える場合がある。
図6は、絶縁パターン部270の表面構造を模式的に説明している。透明導電膜150は、透明バインダー140と、細孔部260とを含む。透明バインダー140の表面に、一部の撥水添加剤310aが露出しているため、透明バインダー140の接触角が80度以上、125度以下になっている。さらに、細孔部260の周辺や内部、あるいは細孔部260を形成する内壁等に一部の撥水添加剤310bが露出している。これによる効果については後述する。
図6において、透明バインダー140の最表面には、透明バインダー140に添加された撥水添加剤310aが配向するように露出している。そして細孔部260にも、撥水添加剤310bが配向するように露出する。このように、透明バインダー140の表面や細孔部260の開口部周辺に撥水添加剤310aが露出し、細孔部260の内部(あるいは内壁)等、細孔部260の周囲に撥水添加剤310bが露出する。すなわちフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基を、細孔部260に偏析させることで、細孔部260に水分が侵入しにくくなり、さらに細孔部260内の水分を外部に速やかに排出させることができる。
すなわち図5に示す状態では、撥水添加剤310は、主に外気(あるいは大気)と接する表面に偏析している。そのため、金属ナノワイヤ120と透明バインダー140との接触界面には撥水添加剤310は偏析しにくい。しかし図6に示すように、金属ナノワイヤ120がエッチング除去され細孔部260が形成されると、細孔部260内の表面が外気と接する。そのため、撥水添加剤310が有するフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基等の機能によって、表面自由エネルギーを最小にしようとするドライビングフォースが発生し、細孔部260内の表面に撥水添加剤310の撥水基が配向する。その結果、細孔部260への水分の侵入を抑制する効果が得られる。
図4や、図5、図6に示すように、導電パターン部280aや絶縁パターン部270等の表面に偏析した撥水基は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)等の高価な表面分析方法で調べることができる。しかしながら、こうした分析方法は被測定物の表面にダメージを与える可能性がある。一方、接触角を用いた測定法は安価であり、大面積にも対応でき、被測定物の表面にダメージを与えることがない。そのため、細孔部260を有する絶縁パターン部270における撥水基の存在を簡易的に調べるために、接触角190bの測定が有効である。
なお絶縁パターン部270や導電パターン部280の形状が微細になった場合は、ピコリットルオーダーの微小液滴を用いた市販の表面接触角の測定機を用いることができる。こうした微小液滴を用いた接触角の測定機は、インクジェット用の微小インク液滴の接触角や、インクジェット装置から発射された液滴が紙の上に着弾した後の濡れ性評価、ウエハやガラス基板等に刻まれた微細パターン上での接触角の測定、髪の毛の上での接触角の測定等の目的で使われている。
以下に、図7を参照しながら、本実施の形態におけるタッチパネル360や表示装置390について説明する。タッチパネル360や表示装置390は、透明配線付フィルム(以下、フィルム)300を含む。
タッチパネル360は、フィルム300と、半導体素子350と、硬質保護シート340とを有する。半導体素子350は、配線等を介してフィルム300の導電パターン部280に電気的に接続されている。硬質保護シート340は、フィルム300の透明配線290が設けられた面を覆っている。
タッチパネル360は、例えば指先の静電容量を感知する静電容量式タッチパネルである。指先320が、矢印370に示すように透明導電膜150に近づくことで、半導体素子350が指先320の容量成分330を検知して、指先320の位置情報や動きを検知する。
また透明配線290の上で、絶縁パターン部270と導電パターン部280を覆うように、極薄のガラス板やPETフィルム等の硬質保護シート340を設けることで、タッチパネル360の表面での指先320のすべり性や物理的強度、信頼性等が高まる。
さらに硬質保護シート340で追われる絶縁パターン部270は、細孔部260を有する。図6に示したように、細孔部260には撥水添加剤310bが露出していることが好ましい。この構成によりタッチパネル360の信頼性が高まる。
なお、透明配線290に含まれる金属ナノワイヤ120は、水を吸いやすいことが知られている。そのため金属ナノワイヤ120が透明バインダー140より露出している場合、この露出部から金属ナノワイヤ120をエッチング除去することができる。しかしながら、金属ナノワイヤ120をエッチングにより除去して形成された開口部250の内部には、信頼性に影響を与える水分等が堆積されやすい。これに対し、透明配線290の上には、硬質保護シート340が接着材等を介して固定される。そして、硬質保護シート340が、細孔部260の表面を封止するため、細孔部260の内部へ水分が侵入、堆積することを防止することができる。
一般的な硬質保護シート340の外面には、指先320から伝わる油脂性の汚れ等の付着防止のため撥水処理されることがある。このような撥水処理は硬質保護シート340の表面にだけ施され、透明配線290(絶縁パターン部270)に含まれる細孔部260には施されない。これは硬質保護シート340と透明配線290との密着力に影響を与えるためである。しかしながら本実施の形態では前述のように細孔部260に撥水添加剤310bが露出している。そのため、細孔部260が撥水性を有する。
表示装置390は、例えば携帯電話やタブレット端末、パソコン等である。表示装置390は、タッチパネル360と、タッチパネル360に対向して設置された表示素子380とを有する。表示素子380は、例えば液晶やEL等の表示素子である。このように、タッチパネル360の片側に表示素子380を設置することで、信頼性の高い表示装置390を提供できる。
なおフィルム110、111や、フィルム300において、硬質保護シート340との密着性を高めるためには、プラズマ処理等の濡れ性改善処理を行うことは有用である。フィルム110、111や、フィルム300の場合、プラズマ処理等の濡れ性改善処理を行っても、細孔部260に露出している撥水添加剤310に影響を与えない。すなわち、このような外的な処理は細孔部260の内部にまで影響を与えない。これは細孔部260の直径が細く、細孔部260の長さや深さが大きいためである。一方、細孔部260に露出している撥水添加剤310は、内的な処理となる。すなわち、透明バインダー140に添加された撥水添加剤310は、その表面自由エネルギーを最小にしようとするドライビングフォースによって、細孔部260の大きさに関係なく、細孔部260内に露出する。
またフィルム110、111を、透明電磁シールド(透明シールドフィルム)として活用することも可能である。透明電磁シールドは、液晶表示装置等の表面に貼り付けられ、液晶表示装置から放射される各種電磁波をカットあるいは減衰させる機能を有する。透明電磁シールドの一例は、液晶表示装置の外形に合わせて切断したフィルム111と、フィルム111の周縁部に設けられたグランド用の配線等を有する。なお電磁シールドの目的で用いる場合、透明導電膜150のパターニングは不要である。透明シールドフィルムとしての詳細は実施の形態2で説明する。
次に、具体的な例を用いて、本実施の形態による効果について詳しく説明する。
(金属ナノワイヤ層の形成)
アクリル樹脂(新中村化学工業(株)製「A−DPH」)14.55質量部を、メチルエチルケトン34.87質量部とメチルイソブチルケトン34.86質量部の混合溶媒に溶解する。次にこの溶液に金属ナノワイヤを配合する。具体的にはメチルエチルケトンを分散媒として金属ナノワイヤの固形分3.0質量%を分散して分散液を調製し、上記の溶液にこの分散液を12.0質量部加えてよく混合する。さらに光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー社製「イルガキュア184」)0.72質量部を加えてよく混合し、25℃の恒温雰囲気下で1時間撹拌混合する。このようにして、金属ナノワイヤ層を形成するためのコーティング材組成物を調製する。
なお、「Materials Chemistry and Physics vol.114 p333−338“Preparation of Agnanorodswith high yield by polyol process”」に準じて作製した金属ナノワイヤを用いている。この金属ナノワイヤの平均直径は50nm、平均長さは5μmであり、素材は銀である。
そして、上記の金属ナノワイヤ層を形成するためのコーティング材組成物を、透明基材であるPETフィルムの表面に、厚さが100nmになるようにコーターによって塗布し、加熱して乾燥する。このようにして、金属ナノワイヤ層を形成する。なお、上記配合比で作製された金属ナノワイヤ層が形成されたシートのシート抵抗は40Ω/□である。
さらに、金属ナノワイヤの配合量を調整することにより、それぞれ、シート抵抗が10Ω/□、100Ω/□となる金属ナノワイヤ層が形成されたシートを作製する。
(透明バインダーの形成)
アクリル樹脂(新中村化学工業株式会社製、品番U−6LPA)2.1質量部に、メチルエチルケトン48.3質量部及びメチルイソブチルケトン48.3質量部を加えて混合することで、アクリル樹脂を溶解させ、これにより混合液を調製する。この混合液に、撥水添加剤として、ダイキン工業(株)製オプツールDSX(固形分20質量%)1.0質量部を加え、室温で混合する。この混合液にさらに光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバガイギー社製、品名イルガキュア184)0.3質量部を加え、よく混合した後、25℃の恒温雰囲気下で30分間撹拌混合する。これにより、透明バインダーを形成するためのオーバーコート液を調製する。
このようにして調製されたオーバーコート液を、前述の金属ナノワイヤ層の上に塗布・乾燥し、図2Bに示すように、透明バインダーを形成して、評価用サンプルを作製する。なお、上記配合比で作製されたサンプルの接触角は105度である。
さらに撥水添加剤の添加量を調整して、接触角がそれぞれ、75度、80度、125度、130度となる評価サンプルを作製している。また、上記の手順において、撥水添加剤を添加しないオーバーコート液も調製し、透明バインダーを形成している。この場合、接触角は55度である。
以上のように、金属ナノワイヤ層については、金属ナノワイヤの配合量が異なりシート抵抗が10Ω/□、40Ω/□、100Ω/□となる3種類を用意し、透明バインダーについては撥水添加剤の添加量の異なる6種類を準備する。これらの組み合わせにより18種類の評価サンプルを作製し、評価している。
(評価1−1:エッチング性)
エッチング性は、以下のようにして評価している。各評価サンプルにおける透明電極膜上にエッチングレジストを形成する。続いて、各評価サンプルに、35℃のエッチング液(塩化第二鉄水溶液)を用いてエッチング処理を施す。この操作にて、エッチングレジストに覆われていない領域から金属ナノワイヤを除去する。このとき、金属ナノワイヤが除去されて絶縁パターン部が形成されるまでのエッチング処理の所用時間を測定している。この所要時間が1分以内の場合をGD(Good)、所要時間が1分より長い場合をOK、エッチング不可能の場合をNG(No Good)と評価している。「GD〜OK」は、複数種類のエッチング条件において評価した結果、GDの場合や、OKの場合があることを意味する。すなわち、エッチング液の種類や濃度によってはGDの場合や、OKの場合があることを意味する。
(評価1−2:信頼性)
信頼性は、エッチングにより櫛刃電極等のパターンで導電パターン部と絶縁パターン部を形成し、85℃、湿度85%RHの環境中で、96時間の間、導電パターン部間に直流(DC)3V印加し続ける前後の抵抗の変化率で評価している。抵抗変化率が、1.5倍未満である場合はGD(Good)、1.5倍以上、2.0倍未満である場合はOK、2.0倍以上である場合はNG(No Good)と評価している。なお信頼性評価については、JIS−C−5028(電子部品の耐湿信頼性試験)や,JIS−Z−3284(ソルダーペーストの絶縁抵抗試験等を参考にしている。
(評価1−3:光学特性)
光学特性は、撥水添加剤を添加していないサンプルを基準とし、同等の場合をGD(Good)、それより光学特性(ヘイズや透過率等)が低下する場合をOKと評価している。「GD〜OK」は、透明バインダーに加える撥水添加剤の品番や濃度、分子量等を複数、変化させて実験すると、GDとなったり、OKとなったりする場合があることを意味する。
(総合評価1)
総合評価は、サンプルの品質に量産性を加味した総合評価であり、Aは良好(Good)、Bは解決すべき課題が残る場合がある(OK)、CはNo GoodまたはPoorを意味する。
各評価サンプルの、評価結果を(表1)〜(表3)に示す。(表1)は、シート抵抗が10Ω/□となる金属ナノワイヤ層を用い、撥水添加剤の添加量の異なるオーバーコート液で接触角の異なる透明バインダーを形成した場合の各サンプルの評価結果を示している。同様に、(表2)、(表3)はシート抵抗がそれぞれ、40Ω/□、100Ω/□となる金属ナノワイヤ層を用いた場合の評価結果を示している。
Figure 2016051695
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接触角が55度であるサンプルAC1、AC11、AC21の結果を比較すると、信頼性評価において、AC1ではOK、AC11ではOK〜NG、AC21ではNGとなっている。これはシート抵抗が高くなるほど、透明導電膜の中に含まれる金属ナノワイヤの密度が低下するため、抵抗値変化が大きくなるためと考えられる。すなわち一般的な金属のマイグレーションでは、隣接した電極間がデントライト等の発生によりショート(短絡)してしまう。しかしながら、金属ナノワイヤを含む透明導電膜の場合、二つの導電パターン部の間に、一つの絶縁パターン部を設けて、この二つの導電パターン部間に電圧を印加した場合、デントライトの発生によるショート(短絡)ではなくて、導電パターン部間の断線となる。このような場合、図6に示すように、絶縁パターン部270において、細孔部260の表面が撥水性を有していることが有用である。なお、細孔部260以外に、透明バインダー140に含まれる細孔やボイド等の内表面も撥水性を有していることが有用である。
すなわち、金属ナノワイヤ120を構成する金属材料がイオン化しても、導電パターン部280間が、細孔部260を有する絶縁パターン部270で絶縁される。その際、細孔部260の表面に偏析したフルオロアルキル基、フルオロアルキレン基等の撥水基が、イオン化した金属材料の移動を抑制し、電気的な信頼性を高めると考えられる。
なおサンプルAC1、AC11、AC21において、金属ナノワイヤが湿式でエッチング除去されて形成された細孔部を封止するために、細孔封止処理(例えば、表面に薄く樹脂層を塗布形成する等)を行えば、信頼性は改善される。例えば、表面に薄く樹脂層を塗布形成すればよい。しかしながら、湿式エッチングの後に新たに細孔封止処理を加えることは、製品価格に影響を与える。
サンプルAC2、AC12、AC22の接触角は75度である。信頼性評価結果は、シート抵抗10Ω/□のAC2と40Ω/□のAC12の場合はOK、シート抵抗100Ω/□のAC22の場合はOK〜NGである。これは、図6に示したような、撥水添加剤による細孔部における水分排除効果が得られなかったためと考えられる。
一方、接触角が80度以上、125度以下のサンプルAE1〜AE23では、シート抵抗に関わらず、信頼性がGDである。このように接触角が80度以上、125度以下となるように撥水添加剤の配合量を調整とすることで、図6に示した撥水添加剤310による細孔部260における水分除去効果が充分に得られることがわかる。
またサンプルAE1〜AE23において、シート抵抗に関わらず、光学特性はGDである。これは、接触角が75度以上、125度以下となる撥水添加剤の配合量の範囲では、透明バインダー140に添加された撥水添加剤310が、効果的に透明導電膜150の表面に偏析しているためと考えられる。
一方、接触角が130度であるサンプルAC3、AC13、AC23ではいずれも、光学特性がGD〜OKとなっている。これは透明バインダーに添加された撥水添加剤の一部が、飽和状態を超えて余剰になり、透明導電膜(透明バインダー)等においても、ミセルのように析出してしまい、光学特性に影響を与えたと考えられる。
(実施の形態2)
図8Aは、本発明の実施の形態2による透明シールドフィルム(以下、フィルム)410の斜視図である。図8Bは、図8Aに示す8B−8B線における断面の一部の拡大図である。フィルム410の一つの形態は、図8Aに示すようなシート状の枚葉形状を有するが、実施の形態1で図1Aに示したように長尺の連続したロール状の形状を有してもよい。
フィルム410は、フィルム状の透明基材130と、透明導電膜150と、導電硬化物430とを有する。透明基材130は第1面と、この第1面の反対側の第2面とを有する。透明導電膜150は、金属ナノワイヤ120と、撥水添加剤を含有した透明バインダー140とを含み、透明基材130の第1面に形成されている。導電硬化物430は、透明導電膜150の周縁部の少なくとも一部を覆っている。さらに、フィルム410は、透明基材130の第2面に形成されたアンチブロッキング層160を有している。すなわち、フィルム410において、透明基材130と透明導電膜150とアンチブロッキング層160とは、実施の形態1における透明導電膜付フィルム111を構成している。以下、透明基材130、透明導電膜150、アンチブロッキング層160については実施の形態1と同様であるので、詳細な説明を省略する場合がある。
図8Bに示すように、透明導電膜150から露出した金属ナノワイヤ120の一部は、透明導電膜150の上を覆う導電硬化物430と接触している。あるいは導電硬化物430の内部に侵入している。そのため、透明導電膜150と導電硬化物430とが電気的に安定に接続されている。また、互いの間の接着力が高まっている。
なお、透明導電膜150の周縁部とは、透明導電膜150あるいは透明基材130の端部から10mm以内の額縁状の部分である。周縁部に設けられた導電硬化物430は光透過性を有しないため、周縁部を10mmよりも大きくした場合、フィルム410の透明部分の面積割合が低下する。なお、周縁部の幅は5mm以下、さらには2mm以下であることが望ましい。
図8Bに示すように、透明導電膜150の接触角190は、透明導電膜150の上に滴下した水滴170に対して引かれた補助線180と透明導電膜150との角度に相当する。実施の形態1と同様に、接触角190は、80度以上、125度以下である。
次に、図9A、図9Bを参照しながら、透明導電膜150の表面に、接着層付保護フィルムを設けた透明シールドフィルム(以下、フィルム)411について説明する。図9Aは、フィルム411の斜視図である。図9Bは、図9Aに示す9B−9B線における断面の一部の拡大図である。フィルム411が図8A、図8Bに示すフィルム410と異なるのは、透明導電膜150上に接着層520を介して保護フィルム510が設けられている点である。それ以外の構成はフィルム410と同様である。
図9Aに示すフィルム411では、図8Aに示す中央部の透明導電膜150の上に保護フィルム510が設けられている。保護フィルム510は透明導電膜150を保護する。保護フィルム510としては、ポリエステルフィルム(例えば、PETフィルム)や、ガラス板(極薄のガラス板も含む)を用いることができる。
図9Bに示すように、透明導電膜150の中央部分は、接着層520を有する保護フィルム510で覆われている。透明導電膜150から露出した金属ナノワイヤ120の一部は、接着層520に侵入している。そのため、透明導電膜150と接着層520や保護フィルム510との接着力が高まっている。保護フィルム510の上に、導電硬化物430の一部を重ねることで、保護フィルム510の端部からの剥がれ等の発生を低減できる。
なお保護フィルム510が設けられた中央部とは、周縁部を除く部分、すなわち透明基材130や透明導電膜150の端部から10mmの位置よりも中央寄りの部分である。保護フィルム510を設ける中央部を広げるほど、フィルム410における光透過部分の面積が大きくなるため好ましい。
一般的な保護フィルム510の外面には、指先等から伝わる油脂性の汚れ等の付着防止のため撥水処理されることがある。このような撥水処理は保護フィルム510の表面にだけ施され、透明導電膜150には施されない。しかしながら本実施の形態では前述のように透明導電膜150の表面に撥水添加剤が露出している。そのため、透明導電膜150が撥水性を有する。その結果、透明導電膜150の湿度に対する長期信頼性を向上することができる。
次に、図10を参照しながら、大判の多丁取りの部材から、個々の透明シールドシートを製造する様子を説明する。図10は、本実施の形態において、大判の多丁取り用の透明シールドフィルムを個片に切断し、個々の透明シールドフィルムを形成する様子を示す斜視図である。
連続品550は、多丁取り用の部材であり、連続品550を切断線530にて切断することで、矢印で示すような単品560である透明シールドフィルムが得られる。保護フィルム510が無い連続品550を用いれば、単品560としてフィルム410が得られる。また保護フィルム510を有する連続品を用いれば、単品としてフィルム411が得られる。
切断線530で連続品550を切断することで、透明基材130の外形と、透明導電膜150の端面と、導電硬化物430の外周とを揃えることができる。その結果、導電硬化物430の幅を狭くできる。
なお透明導電膜150の表面に、接着層520を介して保護フィルム510が設けられると、透明導電膜150の表面の接触角の測定が難しい場合がある。このような場合は、図11に示すように、図10の切断線530で切断した場合の、フィルム411の端面(あるいは切断面)で、接触角190を測定することができる。図11は、フィルム411の切断面に露出した透明導電膜150の表面張力を測定する様子を示す。なおフィルム411の切断角度を変化させることによって、透明導電膜150の表面張力を測定しやすくなる。フィルム411の切断角度を変化させるには、例えば、フィルム410を斜めに切断する。なお微細部分の表面張力を測定するためには、ピコリットルオーダーの微小液滴を用いた市販の表面接触角の測定機を用いることができる。
なお透明導電膜150のシート抵抗は、10Ω/□以上、さらには100Ω/□以上、10KΩ/□以下が望ましい。透明導電膜150のシート抵抗が10Ω/□未満になると、透明導電膜150内部に含まれる金属ナノワイヤ120の密度が増加し、フィルム410の透明度が低下し、コストアップする場合がある。またシート抵抗が10KΩ/□より高い場合、金属ナノワイヤ120の密度や濃度ムラが発生し、面内でのシート抵抗のバラツキが大きくなる場合がある。
次に、図8Bや図11で説明した、フィルム410の表面の接触角について説明する。前述のように、接触角190は、80度以上、125度以下である。接触角190が、80度未満の場合、信頼性(例えば高湿状態での電気的信頼性)で問題を生じる場合がある。接触角190が125度より大きい場合、透明導電膜150の上に形成する保護フィルム510の付着強度が低下したり、透明導電膜150の膜質が低下したりする虞がある。例えば、透明導電膜150の物理的強度が低下したり、割れやすくなったり、凝集しやすくなったりする虞がある。
次に、図12A、図12Bを参照しながら、透明導電膜150の周縁部に、スクリーン印刷等を使って、導電ペースト組成物620を印刷する工程を説明する。図12Aは、図8Bに示すフィルム410の作製過程において、金属ナノワイヤ120の一部が導電ペースト組成物620と接触する様子を説明する断面図である。図12Bは、図9Bに示すフィルム411の作製過程において、金属ナノワイヤ120の一部が導電ペースト組成物620と接触する様子を説明する断面図である。
図12Aに示すように、透明導電膜150の周縁部に導電ペースト組成物620を塗布し、乾燥および/または硬化することにより図8Aに示すように導電硬化物430を形成することができる。また、図12Bに示すように、透明導電膜150の中央部に、接着層520を介して保護フィルム510を貼り付け、保護フィルム510の周縁部と透明導電膜150の外周との間に導電ペースト組成物620を塗布し、乾燥および/または硬化する。このようにして図9Aに示すように導電硬化物430を形成することができる。なお、この際、導電ペースト組成物620を保護フィルム510の一部の上にも塗布することで、導電硬化物430と保護フィルム510とを強固に接合することができる。
導電ペースト組成物620としては、銀粉や銀フレークと、熱硬化性エポキシ樹脂等を含む市販の液状の導電ペーストを用いることができる。液状の導電ペースト組成物620を用いることで、透明導電膜150の表面に露出した、あるいは表面から突出した金属ナノワイヤ120の一部が、導電ペースト組成物620に濡れやすく、あるいは侵入しやすくなる。
導電ペースト組成物620は、銀粉末と熱硬化性のバインダー樹脂と溶剤を含んでもよい。導電ペースト組成物620に含まれるバインダー樹脂としては、硬化剤による硬化反応によって硬化する、一液型のエポキシ樹脂を使ってもよい。また導電ペースト組成物620の硬化温度としては、80℃〜120℃が有用であるが、透明基材130の耐熱性に合わせて調整すればよい。
なお、図1Bに示すフィルム110を用いて、透明基材130の両面に透明導電膜150を設けた透明シールドフィルムを形成してもよい。しかしながら、費用対効果を考慮すると、透明基材130の片面(第1面)にのみ透明導電膜150を設けるほうが好ましい。またシールドのためには透明導電膜150をグラウンドと接続する必要があり、透明基材130の両面に透明導電膜150を設けた場合、それぞれの透明導電膜150にてグラウンドに接続する構造はやや煩雑である。
またアンチブロッキング層160は、ロール状に捲回した場合に発生するブロッキングを抑制するために設けられている。したがって、図8A、図9Aに示すように、フィルム410、411がシート状の枚葉形状を有する場合、アンチブロッキング層160を設けなくてもよい。このことは実施の形態1におけるフィルム110、111についても同様である。
以下に、図13A、図13Bを参照しながら本実施の形態における表示装置670A、670Bについて説明する。表示装置670A、670Bは、上述のフィルム410と、フィルム410と対向して設けられた表示素子である液晶部630とを有する。なお、これらの図ではアンチブロッキング層160を示していないが、上述のようにアンチブロッキング層160はあってもなくてもよい。
図13Aは、フィルム410を用いた第1の構造例を示している。表示部分660Aは、液晶部630と、上側液晶ガラス640と、上側偏光板650を含む。上側偏光板650の上には、フィルム410が設けられている。フィルム410では、透明基材130の第1面に透明導電膜150が設けられ、第2面が上側偏光板650と接している。
液晶部630に形成された薄膜トランジスタ(TFT)部分や駆動装置から発生した電磁波ノイズは、表示装置670Aの透明導電膜150に吸収される。そのため、フィルム410の上に設置された透明タッチパネル(図示せず)への影響を抑えることができる。図13Aに示す構成により、フィルム410が、リタデーション(retardation)と呼ばれる、複屈折性を有する物質を光が通過する際の常光と異常光との位相差の影響を抑えられる。
図13Bは、フィルム410を用いた第2の構造例を示している。表示装置670Bの場合、表示部分660Bは、液晶部630と、上側液晶ガラス640とを含む。そして、表示部分660Bの上にフィルム410が設けられ、フィルム410の上の最外部に上側偏光板650が設けられている。この構造では、表示装置670Aに比べて、上述のノイズの発生源にフィルム410がより近い。この結果、優れたノイズシールド効果が得られる。なお図13Bの構成とする場合は、リタデーションの影響を受けないように、透明基材130等を適切に選択することが望ましい。
次に、具体的な例を用いて、本実施の形態による効果について詳しく説明する。
(金属ナノワイヤ層の形成)
実施の形態1における具体例で説明したのと同じ材料でコーティング材組成物を調製し、PETフィルムの表面に、厚さが100nmになるようにコーターによって塗布し、加熱して乾燥する。このようにして、金属ナノワイヤ層を形成する。なおこの際、金属ナノワイヤの配合量を調整することにより、それぞれ、シート抵抗が100Ω/□となる金属ナノワイヤ層が形成されたシートを作製する。
(透明バインダーの形成)
実施の形態1における具体例で説明したのと同じ材料、組成のオーバーコート液を調製する。このようにして調製されたオーバーコート液を、前述の金属ナノワイヤ層の上に塗布・乾燥し、図2Bに示すように、透明バインダーを形成して、透明導電膜付フィルムを作製する。その際、撥水添加剤の添加量を調整して、接触角がそれぞれ、75度、80度、105度、125度、130度となる透明導電膜付フィルムを作製している。また、撥水添加剤を添加しないオーバーコート液も調製し、透明バインダーを形成している。この場合、接触角は55度である。以上のように、接触角の異なる6種類の透明導電膜付フィルムを作製している。
次にこれらの透明導電膜付フィルムの表面に、図12Bに示すように接着層520付き保護フィルム510を設けた後、導電ペースト組成物620を印刷形成し、100℃で20分硬化する。このようにして、図9A、図9Bで示す透明シールドフィルムの評価サンプルを作製する。
(評価2−1:導電ペースト組成物による透明導電膜上のファインパターン印刷性)
透明導電膜の周縁部に、市販の導電ペースト組成物(いわゆる熱硬化性銀ペースト)を、スクリーン印刷や凹版オフセット等のファインパターン用の印刷装置で印刷する。その際の印刷性を評価している。ここで周縁部に印刷する導電パターンの線幅は1mm以下である。ファインパターン印刷性に問題が生じる場合があればOK、問題が全く生じなければGDと評価する。
(評価2−2:導電硬化物との界面抵抗の信頼性)
信頼性評価として透明導電膜と、その周縁部に形成した導電硬化物との接続部分の抵抗値の変化率を評価する。その際、85℃、湿度85%RHの環境中で、96時間の間、透明導電膜と導電硬化物との間に直流(DC)3V印加し続ける前後の抵抗の変化率で評価している。抵抗変化率が、1.5倍未満である場合はGD(Good)、1.5倍以上、2.0倍未満である場合はOK、2.0倍以上である場合はNG(No Good)と評価している。
なお、接触角は、保護フィルムを貼り付ける前の、透明導電膜の表面の水(純水)に対する接触角である。
Figure 2016051695
表4に示す結果より、接触角が125度以下の場合、透明導電膜上への導電ペースト組成物の印刷性はGDであるが、接触角が130度のサンプルBC3では、ファインパターン印刷性に問題が生じる場合があることがわかる。
導電硬化物との界面抵抗の信頼性については、サンプルBC1の結果がNGになっているのは、透明導電膜が吸水性を有するためと考えられる。なおサンプルBC2の信頼性はOKであるのは、撥水添加剤の添加効果が限定的だったためと考えられる。サンプルBE1〜BE3の信頼性はGDである。一方、サンプルBC3の信頼性はOKである。この理由は、撥水添加剤の添加量が多くなった結果、導電硬化物と透明導電膜との接続部分の信頼性が影響を受けたためと考えられる。
なお、本実施の形態による透明シールドシートに含まれる透明導電膜付フィルムの部分の、光学特性や保護フィルムなしでの信頼性については、実施の形態1における具体例の結果を援用できる。そのためそれらの説明は省略する。
(総合評価2)
総合評価は、サンプルの品質に量産性を加味した総合評価であり、Aは良好(Good)、Bは解決すべき課題が残る場合がある(OK)、ことを意味する。
次に、図14を参照しながら、種々の表示装置のサンプルの近傍電磁界測定結果の一例を示す。図14において、横軸は周波数(単位はMHz)、縦軸はノイズレベル(単位はdBμV)である。ノイズの測定として、表示素子を駆動させた状態で、近傍電磁界プローブを表示装置の最表面上で走査させることにより電界を測定し、その値をノイズとしている。この試験に供したサンプルは以下のとおりである。
サンプルBE4は、上記サンプルBE1の透明シールドフィルム410を用いて構成した、図13Aに示す構成の表示装置670Aの評価サンプルである。
サンプルBE5は、上記サンプルBE1の透明シールドフィルム410を用いて構成した、図13Bに示す構成の表示装置670Bの評価サンプルである。
サンプルBC4は、図13Aに示す構成の表示装置において、シート抵抗が400Ω/□のインジウム・スズ酸化物膜(ITO)をシールド層として、透明シールドフィルム410に代えて構成した評価サンプルである。
サンプルBC5は、図13Aに示す構成の表示装置において、透明シールドフィルム410なしで構成した評価サンプルである。
図14より、サンプルBC4、BC5に比べて、サンプルBE4、BE5は、特に1MHz以下の低周波数域で10〜20dBという大きなノイズ低減効果があることがわかる。またサンプルBE4、BE5は、1MHz以上の周波数帯においても、5〜10dBという優れたノイズ低減効果があることがわかる。
なおシールド層やシールドフィルムのシート抵抗(Ω/□)が低いほど、シールド効果は高い。しかしながら、ITOで構成されたシールド層の場合、シート抵抗を低くするためITOを厚くすると膜が着色する。またITOを厚くするには、スパッタ時間を長くする必要があるため、プロセス上の課題が発生する。また、スパッタ時間を長くすると、ITOを形成する下地となるカラーフィルタへの影響も生じる。
一方、透明シールドフィルム410を用いた場合、シート抵抗を低くしても、着色することはない。また金属ナノワイヤ120を用いたシールド層である透明導電膜150は塗布で形成することができるので、シート抵抗の大小に関わらず、一回の塗布工程で形成できる。そのため、プロセス上の問題が生じることもない。
本発明によれば、金属ナノワイヤを含む透明導電膜において、透明バインダーを介して湿式でパターニングでき、さらにパターニングした後も、電気的な信頼性が高い透明導電膜付フィルムを提供することができる。またこの透明導電膜付フィルムを用いて作製した透明配線付フィルム、タッチパネル及び表示装置の信頼性を高められる。
また、本発明によれば、金属ナノワイヤを含む透明シールドフィルムおよびそれを用いた表示装置において、湿度に対する長期信頼性を高めることができる。また、低いシート抵抗を有する透明シールドフィルムを用いることで、商業設備における大型のデジタルサーネージ(Digital Sirgnage)等の大面積の機器におけるシールド対策が可能となる。
110,111 透明導電膜付フィルム(フィルム)
120 金属ナノワイヤ
130 透明基材
140 透明バインダー
150 透明導電膜
160 アンチブロッキング層
170,170a,170b,170c 水滴
180 補助線
190,190a,190b,190c 接触角
200 空隙部
210,210a,210b 結着樹脂部
220 金属ナノワイヤ層
230 オーバーコート液
240 レジストパターン部
250 開口部
260 細孔部
270 絶縁パターン部
280,280a,280b 導電パターン部
290 透明配線
300 透明配線付フィルム(フィルム)
310,310a,310b 撥水添加剤
320 指先
330 容量成分
340 硬質保護シート
350 半導体素子
360 タッチパネル
370 矢印
380 表示素子
390 表示装置
410,411 透明シールドフィルム(フィルム)
430 導電硬化物
510 保護フィルム
520 接着層
530 切断線
550 連続品
560 単品
620 導電ペースト組成物
630 液晶部
640 上側液晶ガラス
650 上側偏光板
660A,660B 表示部分
670A,670B 表示装置

Claims (16)

  1. 第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有するフィルム状の透明基材と、
    金属ナノワイヤと、撥水添加剤を含有した透明バインダーとを含み、前記透明基材の前記第1面と前記第2面の少なくとも一方に形成された透明導電膜と、を備え、
    前記透明導電膜の表面には、前記金属ナノワイヤの一部が露出し、
    前記透明導電膜の表面の接触角は、80度以上、125度以下である、
    透明導電膜付フィルム。
  2. 前記透明基材の100℃で60分過熱後のヘイズの増大が0.3%以下である、
    請求項1記載の透明導電膜付フィルム。
  3. 前記透明バインダーは、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との少なくとも一つをさらに含有し、
    前記撥水添加剤は、フルオロアルキル基またはフルオロアルキレン基を含む化合物を含む、
    請求項1、2のいずれか一項に記載の透明導電膜付フィルム。
  4. 前記透明導電膜の前記表面には、前記撥水添加剤の一部がさらに露出している、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電膜付フィルム。
  5. 前記透明導電膜のシート抵抗は、0.1Ω/□以上、200Ω/□以下であり、
    前記透明導電膜の厚さは、20nm以上、300nm以下である、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電膜付フィルム。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電膜付フィルムと、
    前記透明導電膜の周縁部の少なくとも一部を覆う導電硬化物と、をさらに備えた、
    透明シールドフィルム。
  7. 前記透明導電膜の表面に設けられた保護フィルムをさらに備えた、
    請求項6記載の透明シールドフィルム。
  8. 請求項6、7のいずれか一項に記載の透明シールドフィルムと、
    前記透明シールドフィルムと対向して設けられた表示素子と、を備えた、
    表示装置。
  9. 第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有するフィルム状の透明基材と、
    金属ナノワイヤと、撥水添加剤を含有した透明バインダーとを含み、前記透明基材の前記第1面と前記第2面の少なくとも一方に形成された透明導電膜と、を備え、
    前記透明導電膜は、前記金属ナノワイヤが存在する導電パターン部と、前記透明バインダーに形成され前記金属ナノワイヤが存在しない細孔部を含む絶縁パターン部とを有し、
    前記透明導電膜における前記導電パターン部の表面には、前記金属ナノワイヤの一部が露出し、
    前記透明導電膜における前記導電パターン部の表面の接触角は、80度以上、125度以下である、
    透明配線付フィルム。
  10. 前記透明導電膜における、前記導電パターン部の表面の接触角と、前記絶縁パターン部の表面の接触角との差は、10%以下または10度以下のいずれか一方を満たす、
    請求項9記載の透明配線付フィルム。
  11. 前記透明バインダーは、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との少なくとも一つをさらに含有し、
    前記撥水添加剤は、フルオロアルキル基またはフルオロアルキレン基を含む化合物を含む、
    請求項9、10のいずれか一方に記載の透明配線付フィルム。
  12. 前記撥水添加剤の一部は、前記細孔部内に露出している、
    請求項9〜11のいずれかに一項に記載の透明配線付フィルム。
  13. 請求項9〜12のいずれか一項に記載の透明配線付フィルムと、
    前記導電パターン部に電気的に接続された半導体素子と、
    前記透明配線を覆う硬質保護シートと、を備えた、
    タッチパネル。
  14. 前記撥水添加剤の一部は、前記細孔部内に露出している、
    請求項13記載のタッチパネル。
  15. 請求項9〜12のいずれか一項に記載の透明配線付フィルムと、
    前記導電パターン部に電気的に接続された半導体素子と、
    前記透明配線を覆う硬質保護シートと、を有するタッチパネルと、
    前記タッチパネルに対向して設置された表示素子と、を備えた、
    表示装置。
  16. 前記撥水添加剤の一部は、前記細孔部内に露出している、
    請求項15に記載の表示装置。
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