JPWO2016047709A1 - タイヤ - Google Patents
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Abstract
Description
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。これら熱可塑性の高分子材料(熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂材料等)は、射出成形が可能であるなど、生産性の向上の観点から有利な点が多い。例えば、前記熱可塑性の高分子材料としてポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いたタイヤが提案されている(特開2012−46030号公報参照)。
そして、低ロス性及びリム組み性は、いずれも優れており、両立されていることが、熱可塑性の高分子材料を用いたタイヤにおいて求められている。
そこで、前記タイヤにおいては、まず、タイヤ骨格体に含まれる熱可塑性エラストマーにおける、ソフトセグメント及び結合部のSP値の差を小さくして、ソフトセグメント及び結合部の相溶性を向上させることで、熱可塑性エラストマー中のソフトセグメント同士が集まりやすくしている。例えば、熱可塑性エラストマー中、ソフトセグメントが島(ドメイン相)、ハードセグメントが海(マトリックス相)の海島構造を形成している場合、前記タイヤではソフトセグメントが大きな島を形成することができる。その結果、ソフトセグメントの島とハードセグメントのマトリックス相との界面の表面積は、島が小さい場合に比べて小さくなる。このため、タイヤ骨格体に含まれる熱可塑性エラストマーは、界面に存在する中間相が少なくなり、ハードセグメントとソフトセグメントとがそれぞれ本来の特性を発揮しやすくなる。そのため、このような熱可塑性エラストマーを用いると、それぞれのセグメントが有する低ロス性及びリム組み性に関連する特性が活かされることとなり、これらの特性を両立することができる。
以上より、上記熱可塑性エラストマーを適用した前記タイヤは、樹脂材料を用いて形成され、低ロス性及びリム組み性に優れることとなる。
また、本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
<熱可塑性エラストマー>
上述のように、前記タイヤは、樹脂材料を用いたタイヤ骨格体を有する。そして、前記樹脂材料として用いられる熱可塑性エラストマーは、少なくともハードセグメントと、ソフトセグメントと、2つ以上のセグメントを結合する結合部と、を有する。本明細書において「結合部」とは、2つ以上のセグメントを結合する結合部である。結合部として具体的には、例えば、ハードセグメントとソフトセグメントとの結合部、ハードセグメント同士の結合部、及びソフトセグメント同士の結合部が挙げられる。結合部は、例えば、後述する鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。
また、前記タイヤ骨格体に用いられる熱可塑性エラストマーのソフトセグメント及び結合部のSP値の差は、絶対値で7.7以下である。前記SP値の差が絶対値で7.7を超えると、海島構造の島が小さくなることで界面の表面積増大による中間相が多くなり、ハードセグメント、ソフトセグメントそれぞれの本来の特性を発揮できなくなるために低ロス性及びリム組性の両立が困難となる。
なお、前記樹脂材料は、上記熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーや、任意の成分を含んでいてもよい。また、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を含む概念であるが、天然ゴムは含まない。
各セグメント及び結合部のSP値はソフトセグメントのSP値と結合部のSP値との差が7.7以下であれば特に限定されるものでないが、例えば、ハードセグメントのSP値は、18.0以上28.0以下が好ましく、20.0以上26.0以下がより好ましい。また、ソフトセグメントのSP値は、14.0以上24.0以下が好ましく、18.0以上20.0以下がより好ましい。結合部のSP値は、14.0以上26.0以下が好ましく、19.0以上26.0以下がより好ましく、19.0以上24.9以下がさらに好ましく、19.6以上21.1以下が特に好ましい。
(式a):δ=[(ΔH−RT)/V]1/2
具体的には、例えば、PPGのSP値が18、PTMGのSP値が18.9、トリブロック中のPPGの比率が40%であるトリブロックの重合体(PPG−PTMG−PPG)の場合、以下の式bで算出する結果、SP値が18.6である。
(式b)18×0.4+18.9×(1−0.4)=18.6
ここで、PPGはポリプロピレングリコールに、PTMGはポリテトラメチレングリコールに由来することを示す。
これらの中でも、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、及びポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)は、重付加の反応による結合部を有する重合体であって、この結合部の構造等を変化させるだけで熱可塑性エラストマーの物性を変化できる重合体であり、その手法も確立されているため、好ましい。
そして、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、及びポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)の中でも、水による物性変化、加水分解性の観点から、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)がより好ましい。その理由は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)はポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)に比べて水を吸収しにくく、また、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)を構成するアミド結合はポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)を構成するエステル結合よりも水に強く分解されにくいためである。
以下、本発明の実施形態において好ましい熱可塑性エラストマーである、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、及びポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)について説明する。
本明細書において、「ポリアミド系熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性エラストマーであって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーを用いて合成されるポリアミドを挙げることができる。
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜22の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ポリアミド11は、例えば、{CO−(CH2)10−NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド12は、例えば、{CO−(CH2)11−NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ポリアミド66は、例えば、{CO(CH2)4CONH(CH2)6NH}n(nは任意の繰り返し単位数を表す)で表すことができ、例えば、nとしては2〜100が好ましく、3〜50が更に好ましい。
前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステルや、ポリエーテルが挙げられ、更に、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができ、例えば、ABA型トリブロックポリエーテルジアミンを用いることができる。
上述のジアミンは単独で使用してもよいし、2種類以上を適宜組合せて使用してもよい。
上述の通り、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの結合部は、例えば、鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。
前記鎖長延長剤としては、例えば、ジカルボン酸、ジオール、及びジイソシアネート等が挙げられる。前記ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも一種又はこれらの誘導体を用いることができる。前記ジオールとしては、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオールが挙げられる。前記ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、及び脂環式ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種又はこれらの混合物を用いることができる。
樹脂材料に含まれるポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、例えば15,700〜200,000が挙げられる。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が15,700未満であると、リム組み性が低下してしまう場合がある。また、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量が200,000を超えると、溶融粘度が高くなり、タイヤ骨格体の際に充填不足が発生するおそれがあるため、成形温度、金型温度を高くする必要がある場合がある。そして、充填不足を防ぐために成形温度及び金型温度を高くした場合、サイクルタイムが長くなる為、生産性が劣る。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量としては、20,000〜160,000が好ましい。前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、例えば、東ソー株式会社製の「HLC−8320GPC EcoSEC」等のGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー中のハードセグメントの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー全量に対して、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、15〜90質量%が特に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー中のソフトセグメントの含有量は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー全量に対して、10〜95質量%が好ましく、10〜90質量%が更に好ましく、10〜90質量%が特に好ましい。
前記鎖長延長剤を用いる場合、その含有量は前記ソフトセグメントを構成するモノマーの水酸基又はアミノ基と、鎖長延長剤のカルボキシル基とがほぼ等モルになるように設定されることが好ましい。
例えば、前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを構成するモノマー(例えば、12−アミノドデカン酸などのω−アミノカルボン酸や、ラウリルラクタムなどのラクタム)と鎖長延長剤(例えば、アジピン酸又はセバシン酸)とを容器内で重合させた後、ソフトセグメントを構成するモノマー(例えば、前記ABA型トリブロックポリエーテルや前記ABA型トリブロックポリエーテルジアミン)を添加し、さらに重合させることで得ることができる。
特に、ハードセグメントを構成するモノマーとしてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合に、更に減圧溶融重合を行って合成することができる。ハードセグメントを構成するモノマーとしてラクタムを用いる場合には、適量の水を共存させることができ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。また、これら合成反応は、回分式及び連続式のいずれでも実施することができる。また、上述の合成反応には、バッチ式反応釜、一槽式若しくは多槽式の連続反応装置、又は管状連続反応装置などを単独で又は適宜組み合わせて用いてもよい。
例えば、無機系リン化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機スズ化合物等が挙げられる。
具体的には、無機系リン化合物としては、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン含有酸、リン含有酸のアルカリ金属塩、リン含有酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
有機チタン化合物としては、チタンアルコキシド〔チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等〕等が挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムアルコキシド〔ジルコニウムテトラブトキシド(「Zr(OBu)4」または「Zr(OC4H8)4」とも称される)等〕等が挙げられる。
有機スズ化合物としては、ジスタノキサン化合物〔1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等〕、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレート等が挙げられる。
触媒添加量及び触媒添加時期は、目的物を速やかに得られる条件であれば特に制限されない。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントを形成する結晶性のポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。
ハードセグメントを形成する芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル及び脂肪族ポリエーテルから選択されたポリマーが挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
結合部は、例えば、鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。鎖長延長剤としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて上述したものが挙げられる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーの鎖長延長剤としては、反応性の観点から、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリエステル)の数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(a)及びソフトセグメント(b)との体積比(a:b)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70がより好ましく、98:2〜57:43が更に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
式A中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。式A又は式B中、Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素を表す。式B中、P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は、芳香族炭化水素を表す。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート及び4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。更に、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は、芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール及び1,10−デカンジオールが挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、及びシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、及び2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、式B中のRは、式A中のRと同じである。
結合部は、例えば、鎖長延長剤により結合された部分が挙げられる。鎖長延長剤としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて上述したものが挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの好ましい鎖延長剤としては、反応性の観点から、脂肪族ジオール、脂環族ジオール、及び芳香族ジオールが挙げられる。
ハードセグメントを構成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000が更に好ましく、特に好ましくは500〜3000である。また、ハードセグメント(a)及びソフトセグメント(b)との質量比(a:b)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10がより好ましく、60:40〜90:10がさらに好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
次に、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の好ましい物性について説明する。前記タイヤ骨格体は、上述の樹脂材料を用いるものである。
このように、融点が120℃〜250℃の樹脂材料を用いることで、例えばタイヤの骨格体を、その分割体(骨格片)を融着して形成する場合に、120℃〜250℃の周辺温度範囲で融着された骨格体であってもタイヤ骨格片同士の接着強度が十分である。このため、前記タイヤは耐パンク性や耐摩耗性など走行時における耐久性に優れる。尚、前記加熱温度は、タイヤ骨格片を形成する樹脂材料の融点(又は軟化点)よりも10℃〜150℃高い温度が好ましく、10℃〜100℃高い温度が更に好ましい。
溶融混合して得られた樹脂材料は、必要に応じてペレット状にして用いることができる。
以下に、図面に従って本発明の第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1Aは、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1Bは、リムに装着したビード部の断面図である。図1Aに示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
以下、本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
まず、上述のように熱可塑性樹脂エラストマーを含む樹脂材料を用いて、タイヤケース半体を形成する。これらタイヤケースの形成は、射出成形で行うことが好ましい。次に、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体17Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する樹脂材料の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱や加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱してもよく、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧してタイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、図を省略するが、補強コード26を巻き付けたリール、コード加熱装置、各種ローラ等を備えたコード供給装置を用い、加熱した補強コード26をクラウン部16の外周面に埋設しながら巻き付けることで、タイヤケース17のクラウン部16の外周側に補強コード層28を形成することができる。
本実施形態のタイヤ10は、タイヤケース17が、ハードセグメントと、ソフトセグメントと、2つ以上のセグメントを結合する結合部と、を有し、前記ソフトセグメント及び前記結合部のSP値の差が、絶対値で7.7以下である熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料によって形成される。このため、本実施形態のタイヤ10は、低ロス性及びリム組み性に優れる。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、1,2−アミノドデカン酸(アルドリッチ製)43.7g、アミノドデカノラクタム(アルドリッチ製)601g、ドデカン二酸(結合部となる鎖長延長剤、アルドリッチ製)24.4gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、280℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で4時間反応させた。圧力を解放したあと、窒素気流下でさらに1時間反応させ、重量平均分子量6000のナイロン12重合物(鎖長延長剤が末端に結合したハードセグメント「PA12」)である白色固体を得た(重合反応A)。
得られたナイロン12重合物250gに、ソフトセグメントとしてポリオキシプロピレンジアミン(PPG、HUNTSMAN社製 エラスタミン RP−2009、重量平均分子量:2000)83.3g、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム71mgを加え、230℃で6時間撹拌を行った(重合反応B)。さらにIrganox1010を1g加え、白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:80,000)を得た。得られたポリアミド系熱可塑性エラストマーをペレット化し、220℃で射出成形し、サンプル片を得た。各種測定は、このサンプル片から試験片を打ち抜いたサンプルを用いて実施した。
ドデカン二酸24.4gの代わりにエイコサン二酸(東京化成製)36.3gを用いた以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:100,000)を得た。
ドデカン二酸24.4gの代わりにフェニレン二酢酸(東京化成製)20.6gを用いた以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:75,000)を得た。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、1,2−アミノヘキサン酸(アルドリッチ製)46.4g、カプロラクタム(アルドリッチ製)600g、ドデカン二酸(結合部となる鎖長延長剤、アルドリッチ製)40.7gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、250℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で4時間反応させた。圧力を解放したあと、窒素気流下でさらに1時間反応させ、重量平均分子量6000のナイロン6重合物(鎖長延長剤が末端に結合したハードセグメント「PA6」)である白色固体を得た(重合反応A)。
得られたナイロン6重合物250gに、ソフトセグメントとしてポリオキシプロピレンジアミン(PPG、HUNTSMAN社製 エラスタミン RP−2009、重量平均分子量:2000)83.3g、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム71mgを加え、230℃で6時間撹拌を行った(重合反応B)。さらにIrganox1010を1g加え、白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:100,000)を得た。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、4,4’−メチレンビス(イソシアン酸フェニル)(アルドリッチ製)120g、1,4−ブタンジオール(東京化成製)26g、ポリオキシプロピレンジアミン(PPG、HUNTSMAN社製 エラスタミン RP−2009、重量平均分子量:2000)384gを入れ、容器内を十分窒素置換した後、100℃まで昇温し、4時間撹拌を行った。さらにIrganox1010を1g加え、白色のポリウレタン系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:80,000)を得た。
攪拌機、窒素ガス導入口、及び縮合水排出口を備えた容積2リットルの反応容器に、1,4−ブタンジオール(東京化成製)46g、ポリテトラメチレングリコール(PTMG、和光純薬製、製造元コード:160−17725、重量平均分子量:1000)388g、テレフタル酸(東京化成製)150g、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム132mgを加え、容器内を十分窒素置換した後、230℃まで昇温し、0.6MPaの加圧下で6時間撹拌を行った。さらにIrganox1010を1g加え、白色のポリエステル系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:25,000)を得た。
ドデカン二酸24.4gの代わりにアジピン酸(アルドリッチ製)15.5gを用い、ポリオキシプロピレンジアミン83.3gの代わりにポリオキシプロピレン−ポリテトラメチレングリコール−ポリオキシプロピレンジアミン(PPG−PTMG−PPG、HUNTSMAN社製 品名:ジェファーミン 型番:XTJ−548、重量平均分子量1700)70.9gを用いた以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:75,000)を得た。
ポリオキシプロピレンジアミン83.3gの代わりにポリテトラメチレングリコールジアミン(両末端を下記方法でアミン化したPTMG、重量平均分子量:2000)83.3gを用いた以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:77,000)を得た。
アミン化方法:原料である両末端水酸基のポリテトラメチレングリコール(PTMG、和光純薬製、製造元コード:164−17745、重量平均分子量:2000)とトシルクロリドと反応させトシル化させたのち、アジ化ナトリウムによるアジド化、白金触媒による還元反応を経て両末端アミンPTMGを合成した。
ドデカン二酸24.4gの代わりにアジピン酸(アルドリッチ製)15.5gを用いた以外は、実施例1と同様にして白色のポリアミド系熱可塑性エラストマー(重量平均分子量:80,000)を得た。
実施例及び比較例から得た熱可塑性エラストマーを用いて、以下の項目について評価した。結果を表1に示す。
粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、φ8mm、厚さ2mmのサンプルを用いて温度30℃、歪み1%、周波数20Hzで損失正接(tanδ)を測定した。tanδが小さい程、低ロス性に優れている。
次に、上記測定方法で得られた低ロス性の実測値に対して、最も低ロス材料であった実施例8の値を100として計算を行い、換算値を求めた。この換算値が、100以上140以下のものをA、141以上のものをBとした。
各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマーを用いて、それぞれ上述の第1の実施形態を参照し、タイヤを形成した。次いで、タイヤをリムに装着し、エアシール性が確保できた場合を「A」、リム組みの際に、硬くてハンドリング性に劣る場合を「B」、割れの発生や、エアシール性が確保できなかった場合を「C」とした。
示差走査型熱量分析(DSC)装置〔ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、DSC Q2000〕を用い、各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマーを、0℃から200℃まで10℃/分で昇温した。融解開始温度が155℃以上の場合を「A」、145℃以上155℃未満の場合を「B」、145℃未満の場合を「C」とした。
また、表1中、「PA12」はナイロン12に、「PA6」はナイロン6に、「MDI」は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートと1,4−ブタンジオールとで形成されたポリウレタンに、「PBT」はポリブチレンテレフタレートに、「PPG」はポリプロピレングリコールに、「PTMG」はポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来することを意味する。さらに、「PPG−PTMG−PPG」は、PTMG由来の構成単位とPPG由来の構成単位を有する三元共重合体を意味する。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (4)
- 樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有し、
前記樹脂材料は、ハードセグメントと、ソフトセグメントと、2つ以上のセグメントを結合する結合部と、を有し、前記ソフトセグメント及び前記結合部の溶解度パラメータ(SP値)の差が、絶対値で7.7以下である熱可塑性エラストマーを含むタイヤ。 - 前記SP値の差が、絶対値で6.0以下である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性エラストマーが、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリエステル系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
- 前記熱可塑性エラストマーが、ポリアミド系熱可塑性エラストマーである請求項1又は請求項2に記載のタイヤ。
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