JPWO2016021432A1 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
[1] 厚みが65μm以下である長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールから巻出しつつ搬送させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程と、
膨潤浴から引き出されたフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程と、
をこの順に含み、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが膨潤浴に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度が90°未満である、偏光フィルムの製造方法。
前記2以上のロールに関し、隣り合うロール間の距離の最大値をL、隣り合うロール間の搬送に要する時間の最大値をTとするとき、Lが2m以下であるか、又はTが30秒以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000〜10000、好ましくは約1500〜5000程度である。
膨潤処理は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
染色処理は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色処理は、ガイドロール33〜35及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色処理工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
架橋処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図1を参照して、架橋処理は、ガイドロール36〜38及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、架橋浴17(架橋槽に収容された処理液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。
本発明の製造方法は、架橋処理工程後の洗浄処理工程を含むことができる。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄処理は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19(水)に浸漬、又は該フィルムに対して水をシャワーとして噴霧、若しくはこれらを併用することによって行うことができる。
上述のように原反フィルム10は、上記一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸処理工程は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
洗浄処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥温度は、例えば30〜100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30〜600秒程度である。以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5〜30μm程度である。
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋処理の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
以上のようにして製造される偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;シクロオレフィン系樹脂フィルム;(メタ)アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
膨潤浴13へ浸漬する直前に通過したロールから膨潤浴13中の最初のガイドロールの方向に沿ってフィルムを目視し、フィルムが浸漬する直前の位置に設置した角度の目印に従いフィルム端部先端が示す角度領域を15°毎に測定した(例えば角度領域が0°以上15°未満のとき、測定角度は0°となり、角度領域が15°以上30°未満のとき、測定角度は15°といったように、測定角度は角度領域の最小値となる。以下同様。)。また、巻出し直後から膨潤浴13に浸漬する前に通過するロールの直前にも角度目印を設置し、同様にカール角度の測定を行った。
2つの架橋浴17(以下では、1つ目の架橋浴を17aといい、2つ目の架橋浴を17bという。)を用いたこと以外は図1に示される偏光フィルム製造装置と同様の装置を用いて偏光フィルムを製造した。ガイドロール30〜41にはすべてフラットロールを使用した。
厚み60μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#6000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反ロール11より連続的に巻出しながら搬送し、30℃の純水が入った膨潤浴13に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま100秒間浸漬した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの時間(巻出し工程の時間)は60秒、巻出し工程における雰囲気は温度23℃、相対湿度60%RHであった。また、ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は30°以下であった。
次に、ニップロール51を通過したフィルムを、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水(重量比)が0.05/2/100である30℃の染色浴15に120秒間浸漬した。この染色処理では、ニップロール51,52間に周速差をつけてロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。
次に、耐水化を目的とする第1の架橋処理を施すため、ニップロール52を通過したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が12/4.4/100である56℃の第1架橋浴17aに30秒間浸漬した。この第1の架橋処理においても、ニップロール間に周速差をつけて、原反フィルム10を基準とする累積延伸倍率が5.5倍になるまでロール間延伸(縦一軸延伸)を行った。次いで、第1の架橋処理後のフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水(重量比)が9/2.9/100である40℃の第2架橋浴17bに15秒間浸漬した(第2の架橋処理)。
巻出し工程における雰囲気を温度23℃、相対湿度40%RHとしたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は15°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレポバールフィルムVF−PE#3000」、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕を原反フィルムとして用いたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を480秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を600秒としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を720秒としたこと以外は実施例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を600秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を720秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルムの製造を行った。ポリビニルアルコールフィルムが膨潤浴13に浸漬するときのフィルム幅方向両端部のカール角度は105°であった。架橋処理における延伸処理時にフィルムの破断が生じ偏光フィルムを得ることができなかった。
ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでの間に、ポリビニルアルコールフィルムのカール面とは反対側の面側から30℃の温風を30秒間吹き付けたこと以外は比較例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は75°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程のニップロール50の直前に、フィルム幅方向両端部を押さえ付けるための金属製のバーを設置し、ポリビニルアルコールフィルムの幅方向両端部の拡幅処理を行ったこと以外は比較例1と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は60°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を300秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は45°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
巻出し工程の時間を150秒としたこと以外は実施例3と同様にして、偏光フィルム製造を連続して24時間実施した。ポリビニルアルコールフィルムを原反ロール11より巻出してから膨潤浴13に浸漬するまでを通じて、フィルム幅方向両端部のカール角度は45°以下であった。24時間の稼働中、いずれの処理工程においてもフィルム破断は起こらず、フィルム幅方向両端部の折れ込みも認められなかった。
Claims (6)
- 厚みが65μm以下である長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールから巻出しつつ搬送させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤浴に浸漬させた後に引き出す膨潤処理工程と、
膨潤浴から引き出されたフィルムを染色浴に浸漬させた後に引き出す染色処理工程と、
をこの順に含み、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが膨潤浴に浸漬するときのフィルム幅方向両端部の少なくとも一方におけるカール角度が90°未満である、偏光フィルムの製造方法。 - 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの時間が750秒以下である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの間に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して乾燥処理を施す、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにおけるカール面の乾燥度がその反対側の面よりも小さくなるように前記乾燥処理を施す、請求項3に記載の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを原反ロールより巻出してから膨潤浴に浸漬するまでの間に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して拡幅処理を施す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記膨潤処理工程において、原反ロールより巻出した前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、ガイドロール及びニップロールから選択される2以上のロールに沿って搬送させることより膨潤浴に浸漬させ、
前記2以上のロールに関し、隣り合うロール間の距離の最大値をL、隣り合うロール間の搬送に要する時間の最大値をTとするとき、Lが2m以下であるか、又はTが30秒以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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