JPWO2015182445A1 - 糖類誘導体の製造方法、変性糖類誘導体及び変性糖類誘導体組成物 - Google Patents

糖類誘導体の製造方法、変性糖類誘導体及び変性糖類誘導体組成物 Download PDF

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Abstract

本発明の課題は、位置選択的に糖類の置換基の加水分解ができ、安価で大量生産できる糖類誘導体の製造方法を提供することである。また、糖類誘導体を修飾することにより、耐水性に優れた変性糖類誘導体を提供することである。本発明の糖類誘導体の製造方法は、一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することを特徴とする。一般式(1):(W)m(Y)n(一般式(1)中、Wは、イオン半径が1.5〜2.0Åの範囲内のイオンを表す。Yは対イオンを表す。m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)

Description

本発明は、糖類誘導体の製造方法、変性糖類誘導体及び変性糖類誘導体組成物に関する。より詳しくは、位置選択的に糖類の置換基の加水分解ができる糖類誘導体の製造方法等に関する。
合成高分子はあらゆる産業において広く利用されているが、生産性の追求から汎用的に用いられているのは、ポリエステルや塩化ビニル等ごく一部の高分子に限られている。性能に優れるPES(ポリエーテルサルホン)やアラミドなどは、ごく一部の特殊用途にしか活用されていないのが現実である。例えば、透明性を要求される用途に対しては、ほぼPET(ポリエチレンテレフタレート)しか使われていないといっても過言でなく、本来ならばガラスを代替したい用途においても、結局、コストの面からPETが適用できないものにはいまだにガラスが使われている。
このような汎用合成高分子の弱点、問題点を洗い出してみると、その根源が分子構造のフレキシビリティーに起因する耐熱性の低さに行き着くことがわかる。
一方で、主鎖構造を剛直にした合成高分子は、ポリフェニレンやPPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリパラフェニレンテレフタルアミドであり、やはり将来的に見ても汎用性があるとは言い難い。
ここで、天然高分子に着目すると、人類が最初に商品化した高分子製品はセルロイドである。これは天然のセルロースを硝酸でニトロ化したニトロセルロースに、カンファー(樟脳)を添加した複合材料であるが、いまだにピンポン球などに使用され続けている。
最初にセルロースが使われた理由は、恐らく、セルロースを石油由来原料から化学合成すると、現在市販されているエンジニアリングプラスチックよりもさらに高価なものとなるためであると考えられる。ピラノース環を形成すること、エーテル結合を構築することに加え、キラリティーを繰り返し単位内に三つ誘導することは、今の科学技術をもってしてもたやすいことではない。
つまり、人類が合成するよりも効率的に、セルロースは植物の中で全合成されており、その原材料は全て自然のはぐくみからもたらされているものである。もちろん公害も出さず、むしろ二酸化炭素を消費してくれることで地球温暖化防止のためにも好適であり、セルロースの原料となる植物をさらに大規模に栽培することは、環境上好ましいことである。
次に、セルロースの樹脂としての性能に着目すると、頑丈な6員環構造をエーテル結合のみでつないだ剛直な主鎖を有するポリマーである。さらにキラル炭素に結合しているヒドロキシ基やメチロール基は全て立体制御されて、一定の方向を向いていることから、規則正しい配列を採りやすく、立体構造的にもほぼ完全に制御された、いわばスーパーエンジニアリングプラスチックといえる。
この分子構造の特殊性を利用して太古の昔からロープや、布として人類の発展とともに使用され続けているセルロースであるが、この剛直さ、分子間の密接なネットワークが、一方では加工のしにくさや、他のポリマーと混合することが困難である等のプロセス上の問題点となり、現時点ではその有効性や特異性が十分に活用できていない。
その問題点を解決するために、セルロースのヒドロキシ基にアセチル基等のアシル基を導入して有機溶剤に可溶にした変性セルロースが有効である。現在でも、たばこのフィルターや水処理膜、液晶ディスプレイ用の偏光板保護フィルムなどの工業製品に使われているが、まだその活用は通り一辺倒のものであり、さらなる工夫により現状の汎用樹脂を超える、高機能で安価な先端材料として活用できるのではないかと考えられる。
セルロースに限らず、天然物質由来の糖類から高機能な材料を作製する際、位置選択的に効果的な置換基を付与することにより、物性が大きく変わることが広く知られている。位置選択的に導入する置換基にバリエーションを持たせるためには、より反応しやすい基が必要であるが、多糖類に対して位置選択的に加水分解を行うことができれば、様々な基と反応しやすいヒドロキシ基を所望の位置に生じさせることができる。
糖類の加水分解反応については、水熱反応により多糖類を単糖やオリゴ糖に加水分解する例(例えば、特許文献1参照。)や、スルホン酸基含有炭素質材料を使った加水分解反応の例(例えば、特許文献2参照。)が報告されているが、位置選択的に加水分解を行う技術については知られていない。
特開2009−195189号公報 国際公開第2008/001696号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、位置選択的に糖類の置換基の加水分解ができ、安価で大量生産できる糖類誘導体の製造方法を提供することである。また、糖類誘導体を修飾することにより、耐水性に優れた変性糖類誘導体及び当該変性糖類誘導体を含有する変性糖類誘導体組成物を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、下記一般式(1)で表される化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することが、糖類の2位又は3位を位置選択的に、かつ効率的に加水分解できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.一般式(1)で表される化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することを特徴とする糖類誘導体の製造方法。
一般式(1):
(W)m(Y)n
(一般式(1)中、Wは、イオン半径が1.5〜2.0Åの範囲内のイオンを表す。Yは対イオンを表す。m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
2.前記一般式(1)において、Wは、セシウムイオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフェニルホスホニウムイオン又はテトラフェニルアルソニウムイオンを表すことを特徴とする第1項に記載の糖類誘導体の製造方法。
3.第1項又は第2項に記載の製造方法で製造された糖類誘導体を、下記一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する反応剤のうち少なくとも一つの反応剤と反応させて製造される下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする変性糖類誘導体。
一般式(2):
Rv−(L)q−X
一般式(3):
(Rv−L)
(一般式(2)及び一般式(3)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Lはカルボニル基を表し、qは0又は1を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
一般式(4):
Rv−N=C=Z
(一般式(4)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
Figure 2015182445
(式中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aのうち少なくとも一つは、前記一般式(2)、前記一般式(3)又は前記一般式(4)で表される構造を有する化合物に由来するRvである。L−Rv及びL−Rvによる置換度は、それぞれ、L−Rvによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。)
4.下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする変性糖類誘導体。
Figure 2015182445
(式中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aが、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基であるとき、L−R2a及びL−R3aによる置換度は、それぞれ、L−R6aによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。)
5.第3項又は第4項に記載の変性糖類誘導体を含有することを特徴とする変性糖類誘導体組成物。
本発明の上記手段により、位置選択的に糖類の置換基の加水分解ができ、安価で大量生産できる糖類誘導体の製造方法を提供することができる。また、糖類誘導体を修飾することにより、耐水性に優れた変性糖類誘導体及び当該変性糖類誘導体を含有する変性糖類誘導体組成物を提供することができる。
本発明で規定する構成により、上記問題を解決することができるのは、以下の理由によるものと推測している。
イオン半径が1.5Å以上、2.0Å以下のイオンが系中に存在すると、例えば、糖類誘導体内の隣り合う置換基内のカルボニル基等の酸素原子が、Wで表される陽イオン(カチオン)に配位し、下記のような中間体が形成される。Wのイオン半径が大きいと、中間体が安定化され、カルボニル炭素の求電子性が増し、加水分解反応が起こりやすくなる。その結果、イオンに配位していたカルボニル基が選択的に切断されるものと推測している。なお、イオン半径は、文献記載の方法を用いて算出することができる(L.Pauling,The Nature of the Chemical Bond,3rd Ed.,Cornell University Press,Ithaca,N.Y.(1960)参照)。
Figure 2015182445
20、R30及びR60はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。pは、1〜10の整数を表す。
Wのイオン半径が1.5Å未満の場合には、配位中間体が不安定であり、2.0Åを超える場合には2か所が配位しにくく、中間体が形成されない。よって、糖類の2位又は3位を効率的に加水分解することができる範囲として、Wのイオン半径が1.5〜2.0Åの範囲内であることが2位又は3位の加水分解に有効であると推察している。
一方、Wで表されるイオンが陰イオン(アニオン)の場合については、上記機構と異なるが、例えば、テトラフェニルホウ酸イオンの場合、テトラフェニルホウ酸のホウ素原子が、アシル基の酸素に配位することで中間体を形成させることができるため、同様に用いることができると推察している。
元々優れた素性を有する天然高分子を、どうやって高機能を有するスーパーエンジニアリングプラスチックに導いて行くのかが課題であり、そのためには、天然高分子の微細な化学構造やその存在状態を精密に調べるところにあると考え、我々はその解明に長年にわたり真摯に取り組んできた。
例えば、セルロースは、ピラノース環の2位と3位には2級炭素に結合したヒドロキシ基が存在し、6位には2級炭素にメチレンを介してヒドロキシ基を持っているが、同じアシル基を2位又は3位のような立体的に込み入った位置に導入した場合と、6位のような自由回転可能な立体障害の少ない位置に導入した場合では、樹脂の溶剤溶解性、耐熱性及び粘性等の物理的特性や、複屈折、光弾性及び旋光性等の光学特性が大きく変化することがわかっている。
つまり、合成上の工夫や制御をせずに置換基が導入されている従来の変性セルロースに対し、位置選択的に置換基を導入した本発明の新世代セルロースでは、紙面上の化学構造はほとんど変わらないものの、その特性は全く似て非なる物となり、まさに、高機能化スーパーエンジニアリングプラスチックに変身する、全く新しい高分子材料になり得ることを見いだし、本発明を完成するに至った。
本発明の起源は、溶剤溶解性を有するアシル基で置換されたセルロースに対し、立体的に込み入った2位と3位を選択的に加水分解する合成方法である。
2位、3位及び6位に加水分解できる置換基を有する糖類の場合、立体障害の少ない6位のアシル基が優先的に加水分解されるため、違う種類のアシル基を導入しても結局6位のアシル基が優先的に生成され、従来の変性セルロースと基本的に同じような物理的、光学的特性の樹脂しか得られなかった。
しかし、本発明の方法で選択的加水分解を施した糖類誘導体に、所望のエステルやエーテルを導入することで、これまでにない、新たな機能を有する新世代の糖類誘導体を得ることが可能になる。
このようなことから、本発明の位置選択的な加水分解方法は、今後の産業の発展に大きく寄与でき、かつセルロースをはじめとする安全性や生体適合性にも優れた天然高分子を有効利用できるという観点でも、将来の発展性が大きく、この技術は新たな高分子材料を創出する類い希な発明であると自負している。
変性糖類誘導体を用いたコーティング剤のべたつきの評価方法を示す模式図
本発明の糖類誘導体の製造方法は、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記一般式(1)において、Wは、セシウムイオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフェニルホスホニウムイオン又はテトラフェニルアルソニウムイオンを表すことが好ましい。これにより、糖類と中間体を形成し、加水分解が効率的に進行する点で好ましい。
本発明の変性糖類誘導体は、本発明の製造方法で製造された糖類誘導体を、前記一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する反応剤のうち少なくとも一つの反応剤と反応させて製造される前記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、耐水性に優れた変性糖類誘導体を得ることができる。
本発明の変性糖類誘導体は、前記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことが好ましい。これにより、耐水性に優れた変性糖類誘導体を得ることができる。
本発明の変性糖類誘導体組成物は、変性糖類誘導体を含有することが好ましい。これにより、薬剤コーティングやフィルム等の製品に応用することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。なお、セルロースアセテートを例に挙げて説明するが、他の糖類、及び化学修飾された糖類についても同様の機構が適用でき、セルロースアセテートに限定されない。
《糖類誘導体の製造方法》
本発明の糖類誘導体の製造方法は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することを特徴とする。
一般式(1):
(W)m(Y)n
一般式(1)中、Wは、イオン半径が1.5〜2.0Åの範囲内のイオンを表す。Yは対イオンを表す。m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。
本発明で用いられる糖類、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び糖類誘導体の製造方法を順に説明する。
本発明における糖類としては、公知の各種糖類を用いることができ、具体例を以下に挙げる。
単糖類としては、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、マンノース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース、タガトース、フコース及びラムノース等が挙げられる。
オリゴ糖類としては、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース及びスタキオース等が挙げられる。
多糖類としては、セルロース、ヘミセルロース、スターチ、デキストラン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、アルギン酸、コンドロイチン硫酸、デンプン、プルラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、ペクチン、アガロース、アルギン酸、アラビアガム、トラガカントガム、キサンタンガム、シクロデキストリン等、それらの塩及びそれらの誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチル化ヒアルロン酸、アセチル化キチン類等)等が挙げられる。
糖類の分子量としては500〜5000000が好ましく、さらに、30000〜400000が好ましい。
ここで、糖類の「加水分解」とは、糖類の環と環をつなぐエーテル結合を加水分解する反応ではなく、糖類が有する置換基を加水分解する反応を指す。
加水分解可能な置換基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、グリシル基、アラニル基、β−アラニル基、バリル基又はリシル基等が挙げられる。
本発明の糖類誘導体の製造方法は、一般式(1)で表される構造を有する化合物が用いられ、一般式(1)中、Wが、セシウムイオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフェニルホスホニウムイオン又はテトラフェニルアルソニウムイオンを表すことが好ましい。これにより、糖類と中間体を形成し、加水分解が効率的に進行する点で好ましい。
一般式(1)において、Wはイオン半径が1.6Å以上のイオンを表し、Yは対イオンを表す。m及びnはそれぞれ独立に1以上の整数を表す。
Wで表されるイオンとしては、例えば、セシウムイオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフェニルホスホニウムイオン、テトラフェニルアルソニウムイオン、エチルバイオレットを構成する(N−[4−[ビス[4−(ジエチルアミノ)フェニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチルエタンアミニウムイオン)等が挙げられる。
一般式(1)で表される構造を有する化合物の具体例としては、炭酸セシウム、フッ化セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルアルソニウムクロリドなどがある。
好ましくは、炭酸セシウム、フッ化セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホスホニウムブロミドである。中でも、特に好ましくは、炭酸セシウム又はフッ化セシウムである。
本発明の位置選択的アシル基切断反応において、特に、Wがセシウムイオンの場合には、
(1)セシウムカチオンのイオン半径が大きく、一般式(1)で表される構造を有するセルロース誘導体の2,3位アシル基のカルボニル基が配位した場合に安定な中間体を形成できる。
(2)セシウムイオンを含有する化合物として、例えば、炭酸セシウム、フッ化セシウムは、副反応を生じることなく、アシル基切断反応は進行するバランスの良い塩基性である点で好ましい。
(3)さらに、炭酸セシウム、フッ化セシウム共に、有機溶媒への溶解度が高く(例えば、J.Org.Chem.,49,6,1984,1123参照)、糖類誘導体を溶解する溶媒にも溶解するため反応系が均一であり、反応速度が速い。
という利点を持つため、最も好ましいイオンである。
また、反応後の処理も容易であるため大量生産にも適している。
さらに、アシル基切断反応に続き、ランニングでベンゾイル化反応などの別の反応を行う場合にも、副反応が起こりにくく、不都合のない塩基である。
加水分解反応で用いられる反応溶媒としては、水、アルコール類や、一般式(1)で表される構造を有する化合物を溶解する有機溶媒等、様々な溶媒が使用できる。これらの溶媒は単独で用いても、複数を混合させて使用してもよい。溶媒の種類によっては、公知の相間移動触媒(例えば、18−クラウン−6等のクラウンエーテル、テトラブチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩など)を用いることもできる。使用する溶媒の量としては、特に制限はされないが、原料の樹脂の質量の3〜30倍の範囲内が好ましく、より好ましくは、5〜20倍の範囲内である。
本発明の製造方法における反応温度は、原料の種類によっても異なるが、通常0〜150℃の範囲内が好ましく、より好ましくは30〜80℃の範囲内である。
反応剤の添加方法としては、原料の糖類を溶媒に溶解した後に、前記化合物を添加する方法が好ましい。前記化合物は一度に添加しても、何度かに分けて添加してもよい。
反応時間は、反応条件などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、3〜24時間程度、好ましくは6〜12時間程度である。
反応後に生成した糖類誘導体を精製する手段としては、糖類誘導体を含む溶液に、当該糖類誘導体の貧溶媒を逐次添加する方法(晶析法)や、糖類誘導体を含む溶液を当該糖類誘導体の貧溶媒中に添加して析出させる方法(沈殿法)などがあるが、これらの方法に制限されない。
使用する貧溶媒としては、生成した糖類誘導体の溶解度の低い溶媒であればよく、水やアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−ブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノールなど)、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、又は水とアルコール類の混合溶媒、水と酢酸の混合溶媒、水とアセトンの混合溶媒、水と酢酸及びアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)の混合溶媒、水とアセトン及びアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなど)の混合溶媒等を挙げることができる。
前記アルコール類として、好ましくは、メタノールである。精製操作の際に用いる貧溶媒の量は、糖類誘導体の反応溶液に対して、例えば3〜20質量部、好ましくは3〜10質量部である。貧溶媒の量が少なすぎると、高品質の糖類誘導体を効率よく取得することが困難になる場合があり、逆に貧溶媒の量が多すぎると、経済的に不利になる。
上記精製により得られた結晶の乾燥は、周知慣用の方法を使用することができ、例えば、減圧乾燥法などを挙げることができる。減圧乾燥法における乾燥圧力としては、例えば、0.0〜100kPa・A程度、乾燥温度としては、例えば、20〜140℃程度である。減圧乾燥法に使用する乾燥機としては、例えば、ナウター型乾燥機、コニカルドライヤー、パドルドライヤー、棚型乾燥機、振動流動乾燥機、バンド通風乾燥機などが挙げられる。
以上のとおり、本発明の製造方法では、安価で入手しやすい、一般式(1)で表される構造を有する化合物及び汎用的な溶媒を利用し、処理・精製操作の安定性、ランニングコスト等に優れつつ、糖類誘導体を高い収率で得ることができる。
また、反応効率が高く反応に要する時間が短時間で済む上に、反応温度も高温を必要としないため、生成物の着色や副生物の生成が高度に抑制される。また、生成物の精製負荷も低減され、目的物を高収率で得ることができるため、大量生産が可能となる。さらに、糖類誘導体に機能性置換基を導入した付加価値の高い変性糖類誘導体への変換も容易である点で有効である。
《変性糖類誘導体》
次に、変性糖類誘導体について説明する。
本発明の変性糖類誘導体は、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする。
Figure 2015182445
式中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aが、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基であるとき、L−R2a及びL−R3aによる置換度は、それぞれ、L−R6aによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。
ここで、L−R2a、L−R3a及びL−R6aによる置換度とは、無水グルコースユニットに対して、三つの炭素原子に結合しているヒドロキシ基のうち、平均して何個が水素原子ではない置換基で置換されているかを表す数値である。
本発明の変性糖類誘導体は、本発明の製造方法で製造された糖類誘導体に、下記一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する反応剤のうち少なくとも一つの反応剤と反応させて製造される前記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする。
一般式(2):
Rv−(L)q−X
一般式(3):
(Rv−L)
一般式(2)及び一般式(3)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Lはカルボニル基を表し、qは0又は1を表す。Xはハロゲン原子を表す。
一般式(4):
Rv−N=C=Z
一般式(4)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。
また、前記一般式(5)中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aのうち少なくとも一つは、前記一般式(2)、前記一般式(3)又は前記一般式(4)で表される構造を有する化合物に由来するRvである。L−Rv及びL−Rvによる置換度は、それぞれ、L−Rvによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。
一般式(2)及び一般式(3)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表し、Lはカルボニル基を表し、qは0又は1を表す。Xはハロゲン原子を表す。
Rvで表される脂肪族基は、直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよい。炭素数1〜25のものが好ましく、1〜20のものがより好ましく、2〜15のものが特に好ましい。
脂肪族基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、シクロプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、アミル、iso−アミル、tert−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビシクロオクチル、アダマンチル、n−デシル、tert−オクチル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ジデシルなどが挙げられる。
Rvで表される芳香族基は、芳香族炭化水素基でもよいし、芳香族複素環基でもよい。芳香族炭化水素基としては、炭素数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがさらに好ましい。
芳香族炭化水素基の具体例としては、例えば、フェニル、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフタレン、ビフェニルが特に好ましい。芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含むものが好ましい。芳香族複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジン、チオフェンが好ましい。
一般式(4)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表し、Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。
Rvで表される脂肪族基又は芳香族基の具体例としては、前記一般式(2)及び一般式(3)中、Rvで表される脂肪族基又は芳香族基の具体例として挙げた例が同様に挙げられる。一般式(4)中、Rvとして好ましくは、芳香族基であり、より好ましくは、フェニル、ナフタレン、ビフェニル、ピリジン、チオフェンである。
反応に塩基を添加してもよく、塩基としては、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム第3級ブトキシドのようなアルカリ金属アルコキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムのような炭酸塩;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムのような重炭酸塩、アンモニア、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルモルホリンのようなアミン類、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンのようなピリジン類などから1種又は2種以上を適宜選択できる。
反応溶媒としては、原料や生成物の溶解性に優れ、かつ反応を阻害しないような溶媒であれば特に限定されず、原料の種類等により適宜選択できる。そのような溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、アセトニトリルなどの含窒素化合物、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソランなどのエーテル類(環状エーテル類、鎖状エーテル類)、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物などが例示される。これらの中でも、原料や生成物の溶解性等の点で、アセトン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンが好ましい。溶媒は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。溶媒の量としては、特に制限はないが、原料の多糖類誘導体の3〜30倍、より好ましくは、5〜20倍である。
反応温度は、原料の種類によっても異なるが、通常0〜150℃の範囲内が好ましく、より好ましくは30〜100℃の範囲内である。
反応剤の添加方法としては、原料の糖類誘導体を溶媒に溶解した後に、一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する化合物を添加する方法が好ましい。一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する化合物は、一度に添加しても、時間をかけて何度かに分けて添加してもよい。
反応時間は、反応条件などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜24時間程度、好ましくは3〜12時間程度である。
反応後に生成した変性糖類誘導体を精製する手段としては、糖類誘導体を精製する方法と同様に、晶析法又は沈殿法を利用することができ、これらの方法に制限されない。
使用する貧溶媒としては、生成した変性糖類誘導体の溶解度の低い溶媒であればよく、糖類誘導体の精製に用いた貧溶媒を同様に用いることができる。精製操作の際に用いる貧溶媒の量は、変性糖類誘導体の反応溶液に対して、例えば3〜20質量部の範囲内が好ましく、より好ましくは3〜10質量部の範囲内である。
貧溶媒の量が少なすぎると、高品質の変性糖類誘導体を効率よく取得することが困難になる場合があり、逆に貧溶媒の量が多すぎると、経済的に不利になる。
精製により得られた結晶の乾燥は、糖類誘導体の場合に用いた乾燥方法を同様に使用することができる。
<置換位置及び平均置換度の測定方法>
本発明において置換基の平均置換度及び平均置換度分布は、Cellulose Communication 6,73−79(1999)及びChirality 12(9),670−674に記載されている方法を用いて、H−NMR又は13C−NMRにより、決定することができる。
例えば、アセチル平均置換度の測定は、手塚ら(Y.Tezuka et al.,Carbohydr.Res.,273,83(1995))の方法及び特開2002−338601号公報を参考に測定した。測定条件は次に示すとおりである。
測定機器:JEOL製
測定モード:H−NMR、13C−NMR
測定溶媒:重ジメチルスルホキシド
測定温度:40℃
例えば、セルロースアセテートベンゾエートの場合、試料をピリジン溶媒中、無水プロピオン酸でプロピオニル化した後、重ジメチルホルムアミド溶媒中でH−NMRスペクトルを測定し、アセチル基、ベンゾイル基による、それぞれの積分値から置換度を算出する(H NMR(300MHz,DMSO)δ=1.80−2.10(m,3H×アセチル置換度),4.10(q,1H×空いているヒドロキシ基の置換度),3.00−5.80(m,7H))。次いで、13C−NMRスペクトルを測定し、164〜167ppm付近に現れるベンゾイルカルボニル炭素のシグナルを、高磁場側から2、3、6位の各ベンゾイルカルボニル炭素の積分強度と定義して、積分比率から各置換位置の置換度を算出する。
他の糖類における置換基についても同様にして、測定及び算出できる。
《組成物と薬剤コーティング剤》
本発明の組成物は、変性糖類誘導体を含有することが好ましく、フィルム、塗料用樹脂、コーティング材料、接着剤、増粘剤、特に生体用フィルム、生体用コーティング材料、生体用接着剤、生体用増粘剤等の組成物として用いることが好ましい。
本発明の組成物は、本発明の変性糖類誘導体を所定の溶剤に溶解させた後、従来からのフィルム、塗料用樹脂、コーティング材料、接着剤、増粘剤等と同様に、常法に従って製造を行うことができる。
本発明の組成物は、特に、医薬用、農薬用又は食品用の固形製剤のコーティング膜を得るのに好適なコーティング剤に用いることができる。医薬用固形製材のコーティング剤としては、服用性の改善、製剤の形状維持、主薬の保護及び外観の改善の目的で、固体薬剤のコーティング剤として、特に好ましい。
ここで、薬剤とは、生体内で治療的生物学的効果をもたらすことができる物質を指す。薬剤は中性であってもよいし、正又は負の電荷を帯びていてもよい。好ましくは、診断薬、薬品、薬剤、合成有機分子、タンパク質、ペプチド、ビタミン及びステロイドを含む。治療薬の具体的な例としては、炎症抑制剤、解熱剤、鎮痙剤又は鎮痛剤などが挙げられる。
既存の多糖類系のコーティング膜は水溶性が高く、水溶液中での薬剤のコーティングに効果的である一方で、高温高湿下ではべたつきが発生し、薬剤同士が付着したり、形状が崩壊したりするという問題があったが、本発明の糖類誘導体をコーティング剤として使用した固形薬剤は、優れた耐水性を有するため、錠剤コーティング後の耐湿性を改良できる。
本発明のコーティング剤でコーティングされる薬剤は、通常の製造方法で製造される。例えば、薬物単体又は薬剤と賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等とを少量の水又は有機溶媒等で練合し、次いで造粒、乾燥、整粒及び必要により打錠工程を経ることによって適当な大きさの錠剤を得ることができる。
《組成物と薬剤コーティング剤》
糖類誘導体は生体材料として広く利用されているが、特に、アミノ多糖類であるキチンは優れた生体親和性を有するため医療用生体材料として使われている。創傷被覆材として止血などの効果を持ち、更に創傷治癒を促進することも知られている。その他、抗菌、保湿、植物成長促進などの作用も有し、衣料や農業分野への応用もなされている。
同様な生分解性ポリマーであるポリε−カプロラクトン(以下、PCLともいう。)は生分解性脂肪族ポリエステルであり、機械的物性や加工性に優れるため、フィルム、シート、繊維などに加工され医療用、食品用などの包装材料として利用されているが、低融点であるためにPCL単独での使用には限界があった。キチンとPCLを組み合わせることで両者の特性を活かした材料が実現できる。また、生分解性物質を医療材料や環境を配慮した産業用材料として利用する際には、その用途に応じて、耐熱性を合わせ持つ生分解性が要求されるが、本発明の変性糖類誘導体は、導入する置換基により、耐薬品性や耐溶剤性を制御することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。なお、比較化合物C−1及びC−2の構造は同一であるが、合成方法が異なるため、区別している。また、測定条件は次に示すとおりである。
測定機器:JEOL製
測定モード:H−NMR、13C−NMR
測定溶媒:重ジメチルホルムアミド
測定温度:40℃
[実施例1]
[例示化合物A−1(セルロース誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、セルロースアセテートa−1(アセチル置換度2.88、重量平均分子量154000)50gを入れ、N−メチルピロリドン(NMP)500mLを加え、室温でかき混ぜて溶解させ、炭酸セシウム57gを加え、8時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール500mLと水1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールで洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、セルロース誘導体A−1が42g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.72−2.23(brm,6.1H),3.08−5.22(brm,7.9H))。収率95%
Figure 2015182445
[例示化合物A−2(キチン誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、O−アセチル化されたキチン(O−アセチル置換度1.9、N−アセチル置換度0.75)50gを、ジメチルアセトアミド500mL/塩化リチウム8%溶液に加え、室温でかき混ぜて溶解させ、フッ化セシウム25gを加え、12時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール500mLと水1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールで洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、キチン誘導体A−2が38g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.88−1.93(brs,6.3H),3.10−5.52(brm,7.9H))。収率89%。
Figure 2015182445
[例示化合物A−3(ヒアルロン酸誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、O−アセチル化されたヒアルロン酸(O−アセチル置換度2.0、N−アセチル置換度0.70)50gを、ジメチルアセトアミド500mL/塩化リチウム8%溶液に加え、室温でかき混ぜて溶解させ、テトラフェニルホウ酸カリウム60gを加え、6時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール500mLと水1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールで洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、ヒアルロン酸誘導体A−3が40g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.85−1.98(brs,6.5H),3.03−5.30(brm,7.8H),8.30(s,1H))。収率96%。
Figure 2015182445
[例示化合物A−4(デキストリン誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、プロピオニル化デキストリン(プロピオニル置換度2.5)50gを、ジメチルアセトアミド500mL/塩化リチウム8%溶液に加え、室温でかき混ぜて溶解させ、テトラフェニルホスホニウムクロリド52gを加え、10時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール500mLと水1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールで洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、デキストリン誘導体A−4が35g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.01−1.89(brm,6H),(1.71−2.24(brm,4H),3.08−5.22(brm,7.9H))。収率82%。
Figure 2015182445
[比較化合物C−1(セルロース誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、セルロースアセテートa−1(アセチル置換度2.88)50gを入れ、アセトン500mLを加え、室温でかき混ぜて溶解させ、硫酸6mLを加え、6時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール200mLとクエン酸リン酸緩衝液1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールと水で洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、比較セルロース誘導体C−1が30g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.72−2.24(brm,5.3H),3.07−5.18(brm,8.2H))。収率70%。
2,3位アセチル基よりも6位アセチル基が多く加水分解され、また、分子量も減少した。
Figure 2015182445
[比較化合物C−2(セルロース誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、セルロースアセテートa−1(アセチル置換度2.88)50gを入れ、アセトン500mLを加え、室温でかき混ぜて溶解させ、炭酸カリウム13gを加え、6時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール200mLとクエン酸リン酸緩衝液1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールと水で洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、比較セルロース誘導体C−2が33g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.74−2.22(brm,5.4H),3.09−5.20(brm,8.2H))。収率84%。
2,3位アセチル基よりも6位アセチル基が多く加水分解された。
Figure 2015182445
[比較化合物C−3(セルロース誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、セルロースプロピオネートa−2(プロピオニル置換度2.88)50gを入れ、アセトン500mを加え、室温でかき混ぜて溶解させ、アンモニア水(28%)300mLを加え、12時間かき混ぜ、反応溶液を作製した。
メタノール200mLとクエン酸リン酸緩衝液1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールと水で洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、比較セルロース誘導体C−3が38g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.05−1.45(brm,5.5H)(1.83−1.93(brm,3.7H),3.11−5.25(brm,8.1H))。収率89%。
2,3位アセチル基よりも6位アセチル基が多く加水分解された。
Figure 2015182445
[比較化合物C−4(キチン誘導体)の合成例]
1L四つ口フラスコに、O−アセチル化されたキチン(O−アセチル置換度1.9、N−アセチル置換度0.75)50gを入れ、アセトン500mLを加え、室温でかき混ぜて溶解した。硫酸10mLを加え、12時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
メタノール200mLとクエン酸リン酸緩衝液1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールと水で洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、キチン誘導体C−4が42g得られた。
2位、3位及び6位の置換度は、H−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.88−1.93(brs,6.1H),3.10−5.52(brm,7.8H))。収率87%。
2位及び3位のアセチル基よりも6位アセチル基が多く加水分解され、また、分子量も減少した。
Figure 2015182445
実施例1で得られた化合物について、アセチル置換度及び重量平均分子量を表1に示した。
Figure 2015182445
表1からわかるように、本発明の糖類誘導体は、6位のアセチル置換度が高いままであることから、6位はアセチル基を有したままであり、2位又は3位がヒドロキシ基に加水分解されていることがわかる。
なお、C−1のセルロース誘導体は、加水分解において、主鎖が切れてしまうため、分子量が低下していると考えられる。
[実施例2]
[例示化合物B−1の合成例(セルロース誘導体(A−1)のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコに、セルロース誘導体(A−1)42gとジクロロメタン420mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル28gを何度かに分けて添加し、トリエチルアミン30gを入れた。さらに、ジメチルアミノピリジン1.0gを加え、15時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したセルロース酸誘導体B−1が50g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.72−2.23(brm,6.1H),3.08−5.22(brm,7.4H),7.23−8.06(brm,2.4H),13C NMR(75MHz,DMF):δ=128.08、128.60、129.22、163.91、164.23、164.95)。なお、13C−NMRのスペクトルデータについては、導入したベンゾイル基に対応する部分を示した。収率95%。
Figure 2015182445
[例示化合物B−2の合成例(ヒアルロン酸誘導体(A−3)のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコに、ヒアルロン酸誘導体(A−3)40gと、ジクロロメタン420mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル25gを何度かに分けて添加し、トリエチルアミン(TEA)28gを入れた。さらに、ジメチルアミノピリジン(DMAP)1.0gを加え、15時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したヒアルロン酸誘導体B−2が48g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.85−1.98(brs,6.3H),3.03−5.30(brm,7.6H),7.21−8.07(brm,1.6H),8.30(s,0.3H),13C NMR(75MHz,DMF):δ=128.09、128.63、129.23、163.89、164.26、164.99)。なお、13C−NMRのスペクトルデータについては、導入したベンゾイル基に対応する部分を示した。収率89%。
Figure 2015182445
[例示化合物B−3の合成例(キチン誘導体(A−2)のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコに、キチン誘導体(A−2)を38gとジクロロメタン380mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル33gを何度かに分けて添加し、トリエチルアミン30gを入れた。ジメチルアミノピリジン1.0gを加え、20時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したキチン誘導体B−3が40g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMRから算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.88−1.93(brs,6.5H),3.10−5.52(brm,7.6H),7.20−8.05(brm,1.4H),8.21(s,1.45H),13C NMR(75MHz,DMF):δ=128.10、128.62、129.23、163.93、164.25、164.97)。なお、13C−NMRのスペクトルデータについては、導入したベンゾイル基に対応する部分を示した。収率91%。
Figure 2015182445
[比較化合物D−1の合成例(セルロース誘導体(C−2)のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコにセルロース誘導体(C−2)と、ジクロロメタン420mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル23gを何度かに分けて添加し、トリエチルアミン25gを入れた。さらに、ジメチルアミノピリジン1.0gを加え、15時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したセルロース誘導体D−1が48g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMR(Cellulose Solvents:For Analysis,Shaping and Chemical Modification,Chapter 1,2010,pp3−54及びBiomacromolecules,2011,12(6),pp 1956−1972参照)から算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.83−1.93(brs,5.31H),3.10−5.52(brm,7.8H),7.19−8.06(brm,2.3H))。収率88%。
Figure 2015182445
[比較化合物D−2の合成例(ヒアルロン酸誘導体のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコに、O−アセチル化されたヒアルロン酸(O−アセチル置換度2.0、N−アセチル置換度0.70)50gを、アセトン200mL溶液に加え、室温でかき混ぜて溶解した。硫酸10gを加え、4時間かき混ぜた。メタノール500mLと水1Lの混合溶液に反応溶液を注入し、析出した固体をろ別した。固体をメタノールで洗浄した後に、50℃で12時間乾燥させ、ヒアルロン酸誘導体d−2が35g得られた。2,3,6位の置換度はH−NMRから算出した。アセチル基残量は6位が少なかった。
Figure 2015182445
1L四つ口フラスコに作製したヒアルロン酸誘導体d−2を35gと、ジクロロメタン350mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル12gを何度かに分けて添加し、トリエチルアミン23gを入れた。さらに、ジメチルアミノピリジン1.0gを加え、8時間かき混ぜた。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したセルロース誘導体D−2が33g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMR(Cellulose Solvents:For Analysis,Shaping and Chemical Modification,Chapter 1,2010,pp3−54及びBiomacromolecules,2011,12(6),pp 1956−1972参照)から算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.83−1.97(brs,5.6H),3.04−5.32(brm,7.8H),7.21−8.07(brm,1.6H),8.30(s,0.2H))。収率83%。
Figure 2015182445
[比較化合物D−3の合成例(キチン誘導体(C−4)のベンゾイル化)]
1L四つ口フラスコに、キチン誘導体(C−4)を42gとジクロロメタン420mLを加えてかき混ぜた。溶解したところに、塩化ベンゾイル38gを分別添加し、トリエチルアミン30gを入れた。さらに、ジメチルアミノピリジン1.0gを加え、20時間かき混ぜて反応溶液を作製した。
反応溶液をメタノール1Lと水1Lの混合溶媒に滴下し、析出した固体をろ別した。得られた固体をメタノール1L中に分散させ、1時間かき混ぜて再びろ別した。50℃で12時間乾燥し、ベンゾイル化したキチン誘導体D−3が45g得られた。
2位、3位及び6位の置換度分布は、H−NMR及び13C−NMR(Cellulose Solvents:For Analysis,Shaping and Chemical Modification,Chapter 1,2010,pp3−54及びBiomacromolecules,2011,12(6),pp 1956−1972参照)から算出した(H NMR(300MHz,DMF):δ=1.83−1.93(brs,6.2H)、3.10−5.52(brm,7.8H)、7.19−8.06(brm,1.6H)。収率90%。
Figure 2015182445
Figure 2015182445
[実施例3]
(本発明の糖類誘導体(B−2)でコーティングした錠剤の調製)
共役エストロゲン(プレマリン(登録商標)、0.45mg)を含む薬剤を、実施例2で作製した、ベンゾイル化したヒアルロン酸誘導体(B−2)を含むコーティング懸濁液(固体60%、水30%、エタノール10%)に漬け込むことでコーティングすることによりコーティング済みの錠剤を調製した。
(比較例の糖類誘導体(D−1)でコーティングした錠剤の調製)
共役エストロゲン(プレマリン(登録商標)、0.45mg)を含む薬剤を、実施例2で作製した、ベンゾイル化したセルロース誘導体(D−1)を含むコーティング懸濁液(固体60%、水30%、エタノール10%)に漬け込むことでコーティングすることによりコーティング済みの錠剤を調製した。
〔コーティングされた錠剤のべたつき評価〕
得られたコーティングされた錠剤を、図1に示すように、1錠置き(1)及び2錠重ね置き(2)で各3セット、シャーレ(3)に載せ、50℃、90%RHの環境下に放置した。
また、放置から1時間、3時間、6時間及び24時間経過時に、コーティングされた錠剤の付着状況を観察し、評価した。ここで付着とは、単に接していることを表すのではなく、コーティング剤の一部又は全てが溶解し、隣接するシャーレ又は他の錠剤にくっついている状態を表す。
具体的には、1錠置きについては、放置から各時間経過時における3セットの錠剤が、シャーレとの付着がない場合を○、3セットのうち1セット又は2セットが付着する場合を△、3セット全てが付着する場合を×とした。
2錠重ね置きについては、1錠置きの場合のシャーレとの付着状況の評価に加え、錠剤同士の付着についても評価した。放置から各時間経過時における3セットの錠剤が、錠剤同士の付着がない場合を○、3セットのうち1セット又は2セットの錠剤同士が付着する場合を△、3セット全ての錠剤同士が付着する場合を×とした。シャーレとの付着状況の評価については、1錠置きの場合と同様に、シャーレと接する側の錠剤とシャーレとの付着状況を評価した。
さらに、コーティング錠の吸湿率を測定した。吸湿率は、50℃、90%RHの環境下に静置した錠剤を各時間で取り出し、質量増加を測定し、増加分の質量割合の平均値を吸湿率として計算した。
Figure 2015182445
上記の結果から、本発明の変性糖類誘導体をコーティング剤に使用することで、シャーレとの付着、錠剤同士の付着及び吸湿率の上昇を抑えることができる点で優れた性能を有することがわかった。
[実施例4]
(例示化合物の変性キチン誘導体(B−3)を用いたフィルムE−1の作製)
100メッシュに粉砕した変性キチン誘導体B−3の粉末を、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールに溶解し10質量%の変性キチン誘導体溶液を得た。同様にして、10質量%のPCL(ポリε−カプロラクトン)溶液を得た。
このようにして得られた変性キチン誘導体溶液とPCL溶液を、変性キチン誘導体とPCLの質量比が、変性キチン誘導体:PCL=30:70になるように室温下で1時間撹拌して混合した。混合溶液をポリテトラフルオロエチレン製の板にキャスト成膜し、室温で3日間乾燥後、さらに40℃で真空下3日間乾燥し溶剤を完全に除去したフィルムE−1を作製した。
(比較化合物の変性キチン誘導体(D−3)を用いたフィルムE−2の作製)
上記変性キチン誘導体(B−3)に代えて、比較化合物の変性キチン誘導体D−3を用いた点以外は同様にして、フィルムE−2を作製した。
得られたフィルムE−1及びE−2について、生分解性を下記の方法により分析した。
〔生分解性の評価〕
TAITEC 200−F BODテスターを使用し、JIS K 0400−21−10に基づいて、BOD(Biochemical oxygen demand;生物化学的酸素要求量)の測定を行った。BOD測定は採取した河川水に無機塩を加え、25℃、撹拌下で反応させた。15日後のフィルムの残存率(質量%)を分解性の指標とした。
〔耐熱性の評価〕
フィルムを100℃のオーブンに10分間放置してから取り出し、下記の基準で目視評価した。結果を表4に示す。ここで、変形とは、形状のよれ、歪み、カール等の目視で確認できる形状の変化をいう。
○:変形は認められない。
×:フィルム面積に対して10%以上の変形が認められた。
Figure 2015182445
本発明のフィルムは、残存率が低いことから、生分解性が高いことがわかった。また、変形も認められず、高い耐熱性を有していることがわかった。
本発明により、位置選択的に糖類の置換基の加水分解ができ、安価で大量生産できる糖類誘導体の製造方法を提供することができ、当該製造方法により製造された糖類誘導体を用いて製造される変性糖類誘導体及び変性糖類誘導体組成物は、フィルム、塗料用樹脂、コーティング材料、接着剤、増粘剤、特に生体用フィルム、生体用コーティング材料、生体用接着剤及び生体用増粘剤等に利用することができる。
1 1錠置き
2 2錠重ね置き
3 シャーレ

Claims (5)

  1. 一般式(1)で表される構造を有する化合物の存在下、加水分解可能な置換基を二つ以上有する糖類を加水分解し、糖類誘導体を製造することを特徴とする糖類誘導体の製造方法。
    一般式(1):
    (W)m(Y)n
    (一般式(1)中、Wは、イオン半径が1.5〜2.0Åの範囲内のイオンを表す。Yは対イオンを表す。m及びnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
  2. 前記一般式(1)において、Wは、セシウムイオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラフェニルホスホニウムイオン又はテトラフェニルアルソニウムイオンを表すことを特徴とする請求項1に記載の糖類誘導体の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の製造方法で製造された糖類誘導体を、下記一般式(2)から一般式(4)で表される構造を有する反応剤のうち少なくとも一つの反応剤と反応させて製造される下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする変性糖類誘導体。
    一般式(2):
    Rv−(L)q−X
    一般式(3):
    (Rv−L)
    (一般式(2)及び一般式(3)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Lはカルボニル基を表し、qは0又は1を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
    一般式(4):
    Rv−N=C=Z
    (一般式(4)中、Rvは脂肪族基又は芳香族基を表す。Zは酸素原子又は硫黄原子を表す。)
    Figure 2015182445
    (式中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aのうち少なくとも一つは、前記一般式(2)、前記一般式(3)又は前記一般式(4)で表される構造を有する化合物に由来するRvである。L−Rv及びL−Rvによる置換度は、それぞれ、L−Rvによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。)
  4. 下記一般式(5)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする変性糖類誘導体。
    Figure 2015182445
    (式中、R2a、R3a及びR6aは、それぞれ、水素原子、炭化水素基、ハロゲン原子、アルキル基、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基を表し、前記置換基はさらに置換基を有していてもよい。R2a、R3a及びR6aが、アミノ基、シリル基、芳香族基、芳香族複素環基、非芳香族炭化水素環基又は非芳香族複素環基であるとき、L−R2a及びL−R3aによる置換度は、それぞれ、L−R6aによる置換度よりも大きい。L、L及びLは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CO−、−NH−CO−又は−(Lw−O)t−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Lwは、アルキレン基を表し、tは、1〜10の整数を表す。paは、平均重合度を表し、1〜2000の整数を表す。)
  5. 請求項3又は請求項4に記載の変性糖類誘導体を含有することを特徴とする変性糖類誘導体組成物。
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