JPWO2015159726A1 - キューブ型偏光ビームスプリッターモジュール - Google Patents
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Abstract
従来のプリズム型偏光ビームスプリッターやガラス偏光子のコントラストは、精度のよい測定に対しては十分ではないと課題があった。また、ガラス偏光子においては、反射防止膜などをコーティングすることによって、平面度が損なわれ、そのことに起因する波面収差によって、計測が不正確になるという課題があった。また、光源の高出力化に伴ってレーザー等による光学素子の損傷という課題があった。本発明は、2つの直角プリズムを合わせてなる立方体の両斜面間に、少なくとも一平面に偏光分離膜が形成された平板ガラス偏光子を挟んだ構造のキューブ型偏光ビームスプリッターモジュールであるから、コントラストが向上し、波面収差も抑えることができる。
Description
本発明は、様々な光学機器に用いることのできる偏光分離性能と偏光フィルター性能とを併せ持つ偏光ビームスプリッター型の光学素子に関する。
偏光ビームスプリッターとは、入射した光ビームをその偏光成分に分離させる光学素子であって、偏光分岐面においてp偏光成分を透過し、s偏光成分を反射させるものである。最も広く利用されているのは、光が入射する側の第一のプリズムの斜面に偏光分離膜が形成され、該偏光分離膜に対して、第二のプリズムの斜面を接着した立方体のプリズム型偏光ビームスプリッター(以後、プリズム型PBSと言う)である。ここで斜面とは、直角二等辺三角柱である直角プリズムにおいて、二つの二等辺三角形の斜辺で挟まれた部分をいい、偏光分岐面となる面である。
偏光分離膜とは、屈折率の異なる2種類の膜が交互に積層された多層膜からなり、所定の設計波長の光ビームが45度近傍の入射角で入射したとき、光学干渉作用によって、p偏光成分は透過しs偏光成分は反射して偏光を分離する膜である。プリズム型PBSでは、偏光分岐面である斜面に偏光分離膜が形成される。
プリズム型PBSは、一般的に、図1に示すような偏光分離性能を示す。この例では、設計波長である600nmから650nm程度の波長の光ビームが入射すると、p偏光成分の98%程度は偏光分岐面を透過し、約2%は偏光分岐面で反射する。一方、s偏光成分は、約0.1%程度しか偏光分岐面を透過せず、99.9%程度は偏光分岐面において入射方向と直角の方向に反射される。
光ビームの入射方向と同じ方向に透過してしまうs偏光成分は0.1%程度に過ぎないので、p偏光の透過率とs偏光の透過率の比であるところのp偏光の消光比は、98/0.1≒1000に達する。一方、入射方向に垂直な方向では、s偏光の反射率は99.9%に達するもののp偏光成分の約2%が反射されるため、s偏光の消光比は、99.9/2≒50程度にしかならない。なお、消光比とはコントラストを表す指標であって、より具体的には、一の偏光成分に対する他の偏光成分の割合に相当する。一の偏光成分の純度が高いほど、コントラストに優れる。性能のよいプリズム型PBSでは、p偏光透過率が高くなるよう、偏光分岐面に形成する偏光分離膜として高性能のものを用いるが、性能保証値としてのコントラストは、1000:1程度である。
次に、偏光子について説明する。偏光子とは特定方向に偏光した光以外は遮断し、偏光した光だけを通過させる偏光フィルター機能を有する光学素子であって、自然光や円偏光や楕円偏光を直線偏光に変える光学素子として一般的である。偏光子の種類としては、方解石や水晶のような結晶の複屈折を利用して自然光を直線偏光に変えるプリズム偏光子があるが、非常に高価であるため、樹脂製の偏光子が広く用いられている。これは、ポリビニルアルコール樹脂にヨウ素を添加して引き伸ばした後、透明な保護材で挟んで積層したものであって、引き伸ばされた方向にヨウ素が配向することを利用して偏光特性が実現されるものである。
耐熱性やレーザー耐力に優れた偏光子として、ガラス偏光子が開発された。特許文献1や特許文献2に製造方法及び特性が開示されている。ガラス基材の内部に数10〜数100nmのサイズのハロゲン化銀の粒子を析出させ、次いで、ガラス軟化点付近の温度で延伸することにより、この粒子を引き伸ばして一軸方向に配向させ、その後、水素ガスなどの還元雰囲気中で熱処理することにより、ガラス基材の表面層に一軸方向に配向した銀粒子を析出させたものである。
前記したプリズム型PBSと偏光子を組み合わせた使用法としては、次のような例が開示されている。特許文献3には、レーザー干渉計において、光源からの光を絞るピンホール部材と、光源からのs偏光を被検体側に反射し、基準面及び被検体からの反射光(p偏光)を干渉縞結像手段への透過させる機能を有するプリズム型PBSの間に、偏光素子(偏光フィルター)を介装する構成が開示されている。こうすることによって、光学系からの戻り光がピンホール部材によって反射されて再び光学系にノイズとなって戻ることを防止し、干渉縞の画質を向上させることができる。この構成において、偏光素子はp偏光を吸収しs偏光を透過するものであるが、その構成の一態様として、プリズム型PBSに偏光素子を固着した構成が開示されている。
特許文献4には、反射型液晶パネルに用いられるプリズム型PBSと1/4波長板とを組み合わせた構成及びプリズム型PBSと偏光板を組み合わせた構成が開示されている。このような構成とするのは、プリズム型PBSに入射する光線と入射光軸のなす角度が大きくなったとき、投写画像のコントラストが低下するのを改善するためであって、プリズム型PBSと1/4波長板や偏光板とを組をみ合わせることにより、偏光方向の異なる光を除外することによって、コントラストが改善されるとしている。
米国コーニング社電子カタログ:PolarcorTM Glass Polarizers, Product Information, Specialty Materials, Issued August 2010
第一の課題として、プリズム型PBSの性能の元となる偏光分離膜の特性として、前記した消光比(コントラスト)が高々1000:1程度にしかならない点があげられる。これは、偏光分離膜の形成に用いられる高屈折率材料と低屈折率材料の屈折率の比によって決まってしまう本質的な部分と、多層膜の成膜時における屈折率の安定性や膜厚制御性が十分ではないとき、透過率は設計での理論値よりもどうしても低くなり、反射率が高くなってしまうという生産技術的部分の両方に起因する。多くの利用分野で、プリズム型PBSによって分離された偏光のコントラストを高くしたいという課題が存在する。
第二の課題としては、偏光分離膜が形成された偏光分岐面への光ビームの入射角が必ずしも正確に45度近傍ではないことに起因するコントラストの悪化が挙げられる。例えばレーザー干渉計における検出光の光量を増大させるために、光源の光量を有効に利用する必要がある。その場合、アパーチャーやスライドシャッターの開口度を大きくして、プロジェクター等に取り込む入射光量を増大させる手段が用いられることになるが、このような手段では、入射光量は増大するものの、設定された入射角で入射する光だけでなく、設定された入射角から外れた角度で入射する光が含まれることになる。
このことは、45度でビームが入射するものとして設計されたプリズム型PBSの偏光分岐面に対して、例えば40度とか50度の角度で入射する光の成分が増大することを意味する。そのような場合、入射方向に対して平行な方向に透過するs偏光成分が増大し、また、入射方向に対して垂直な方向に反射するp偏光成分も増大することになり、透過する偏光においても、反射する偏光においても、コントラストが悪化してしまうのである。
第三の課題は、レーザーの高出力化への対応が必要な点である。レーザー光源は、情報・通信、超微細加工や医療分野で幅広く利用されている。そこではレーザー光の波長変換及び集光・反射や増幅素子として光学材料が用いられているが、レーザー出力が大きくなるにつれて光学材料に生じるレーザー損傷が問題となってきている。特許文献3及び特許文献4には、プリズム型PBSと偏光板の組み合わせが開示されているが、樹脂偏光板を用いた構成では、レーザー耐久性の悪化は免れない。
第四の課題は、平板偏光子(偏光板)を光路中に使用した場合の波面収差による干渉縞の不明瞭化・光強度の不均一化の問題である。これは、偏光板が完全な平板でないことに起因して、光ビームの透過や反射の際に、光ビームの位相がずれる現象である。例えば、平板ガラス偏光子の一面にのみ、反射防止膜等を形成した場合には、反射防止膜等に残留する膜応力によって、平板ガラス偏光子が撓み、平面性が損なわれる。そして、この問題を解決するため、平板ガラス偏光子の両面に、反射防止膜等を形成した場合でも、片面への反射防止膜等の形成によって一旦撓んでしまった平板ガラス偏光子を完全な平面に戻すのは困難である。結果として、平面性が不十分なことに起因して、許容できない程度の波面収差が発生するのである。
光学系によっては、プリズム型PBSに代えて平板ガラス偏光子を使用するケースがあり、平板ガラス偏光子の表面に反射防止膜や、その他の機能膜を形成して使用することも考えられる。そこでは、膜形成に伴う残留応力によって平板ガラス偏光子の平面性が損なわれ、透過するp偏光成分、反射するs偏光成分の両者を重ね合わせて使用する干渉計用途などでは、波面収差の発生が課題となっている。
本発明は主に上記した四つの課題を解決するためになされたものであって、第一の発明は、第一の直角プリズムと第二の直角プリズムを合わせて形成される立方体の、該直角プリズムが合わせられる斜面同士の間に、該斜面に平行な二つの平面を有するガラス偏光子の少なくとも一つの平面に偏光分離膜を形成された偏光分離膜付き平板ガラス偏光子が挟まれてなるキューブ型偏光ビームスプリッターモジュールである。二つの直角プリズムを用いる点では、従来のプリズム型偏光ビームスプリッター(プリズム型PBS)と同様に立方体の形状となるが、混同を避けるため、「キューブ型偏光ビームスプリッターモジュール(以後、キューブ型PBSモジュール)」ということにする。
ここで、「平板ガラス偏光子」とは、前記したガラス偏光子と同じ意味であるが、ガラス偏光子が平行平板であることを表すために平板ガラス偏光子とした。「モジュール」としたのは、従来のプリズム型PBSを構成する二つの直角プリズムの斜面間に、平板型ガラス偏光子が挟まれた複合的な光学素子だからである。
第二の発明は、第一の直角プリズムと第二の直角プリズムを合わせて形成される立方体の、少なくとも一方の直角プリズムの斜面に偏光分離膜が形成され、該偏光分離膜が形成された斜面と対面する他方の直角プリズムの斜面との間に、斜面に平行に、平板ガラス偏光子が挟まれてなるキューブ型偏光ビームスプリッターモジュールである。
第一の発明では、平板ガラス偏光子の少なくとも一つの平面に偏光分離膜が形成されているのに対して、第二の発明では、二つの直角プリズムの少なくとも一つの直角プリズムの斜面に偏光分離膜が形成されている。
本発明は、偏光分離膜の偏光分離性能と平板ガラス偏光子の偏光フィルター機能を組み合わせたもので、本発明のキューブ型PBSモジュールに入射した光ビームは、偏光分離膜によってs偏光が反射され、p偏光は透過し、透過したp偏光は平板ガラス偏光子に入射して、混在しているs偏光成分が吸収除去されて、p偏光成分のコントラストが向上する。光ビームが、平板ガラス偏光子に入射する前に、先に偏光分離膜に入射する態様においては、偏光分離膜で反射されたs偏光成分を、その後の光学系の中で利用することも可能である。
また別の態様では、本発明のキューブ型PBSモジュールに入射した光ビームは、平板ガラス偏光子によってs偏光が吸収除去され、透過したp偏光は偏光分離膜に入射し、混在していたs偏光がさらに反射によって除去されて、p偏光のコントラストが向上する。この態様のように、光ビームが、偏光分離膜に入射する前に、先に平板ガラス偏光子に入射する場合は、s偏光成分はガラス偏光子によって吸収除去されてしまうので、その後の光学系の中で、s偏光成分を利用することは難しい。
平板ガラス偏光子の両平面に偏光分離膜が形成されている場合、又は、二つの直角プリズムの両方の斜面に偏光分離膜が形成されている場合は、p偏光成分に混在するs偏光成分が除去され、p偏光のコントラストをさらに向上させることが可能である。これらの構成態様では、光ビームは、まず偏光分離膜に入射するので、偏光分離膜で反射したs偏光成分を、その後の光学系の中で利用することが可能である。
本発明においては、プリズム型PBSの両斜面の間に平板ガラス偏光子が挟み込まれるが、これは平板ガラス偏光子においては、45度という傾斜した角度で光ビームが入射しても、ガラス偏光子の光吸収による偏光フィルター性能が維持されていることを見出したことに基づいている。図2は、平板ガラス偏光子の偏光フィルター性能を示したものであるが、角度依存性の小さいことが明らかである。
本発明において、2つの直角プリズムの両斜面間に挟まれる前記平板ガラス偏光子は、平板ガラス偏光子の一平面又は少なくとも一方の直角プリズムの斜面に形成された偏光分離膜よりも、高い消光比を有することが望ましい。これは、平板型ガラス偏光子の消光比が、プリズム型PBSに形成された偏光分離膜の消光比より低い場合、これら二つを直列的に組み合わせても、消光比はほとんど改善されないのに対して、平板型ガラス偏光子の消光比が、偏光分離膜の消光比より高い場合には、これら二つを直列的に組み合わせることにより、消光比が改善されるからである。
本発明において、偏光分離膜と偏光フィルター機能を有する平板ガラス偏光子を直列につなぐことによって、所定の角度から外れた角度で入射してきた光のうち不要な偏光成分を、平板ガラス偏光子の偏光フィルター性能によって除去できるので、コントラストをさらに改善することができる。
また、平板ガラス偏光子が二つの直角プリズムの間に挟まれた構成とすることによって、平板ガラス偏光子の撓みをなくすことができるので、撓みに起因する波面収差を実質的にゼロに抑えることができる。
本発明においては、2つの直角プリズムを合わせて形成される立方体の、s偏光及びp偏光のいずれか又は両方の出射側端面に、さらに平板ガラス偏光子が貼り合わすことによって、s偏光やp偏光の消光比をさらに向上させることができる。プリズム型PBSと平板型ガラス偏光子はともにガラス製であるので、容易に貼り合わせることができる。
本発明のキューブ型PBSモジュールに入射する光ビームが、平板ガラス偏光子より先に偏光分離膜に入射する場合、偏光分離膜によって反射されたs偏光を、その後の光学系の中で利用することができるが、偏光分離膜の性能に依存して、十分なコントラストとはなっていない。従来技術の欄で説明したように、コントラストは50:1程度の場合もあるのに対して、このようなs偏光の出射面にガラス偏光子を貼り付けておくことによって、s偏光に混在しているp偏光を吸収除去し、s偏光のコントラストを大幅に改善することができる。
本発明において、プリズム型PBSと組み合わせる偏光子として、平板ガラス偏光子を用いるのは、レーザー耐力などの耐久性の点からも有利である。基材であるガラスが耐久性に優れ、高出力レーザーなどの強い光源から光を受けても劣化しないからである。
本発明に用いる平板ガラス偏光子として、ガラス基材の表面層に一軸配向して分散している金属銀粒子の平均アスペクト比が1.5:1以上3:1以下であり、かつ平均粒子長さが30nm以上150nm以下となるように延伸した平板ガラス偏光子を利用すると、可視光線の赤色領域(波長が580nm−680nmの範囲)の波長に光に対して、90%以上という高い透過率と高いコントラストが実現できる。このような偏光ビームスプリッターモジュールは、高出力赤色レーザー光源を用いる光学装置用として好適である。なお、平均粒子長さが150nmを超えると、粒子散乱の影響でガラス偏光子の透過率が低下し、またアスペクト比が前記範囲外になると、可視光線の全領域の光に対してコントラストが急激に低下してしまうので好ましくない。
平板ガラス偏光子の表面層に一軸配向して分散している金属銀粒子のアスペクト比及び粒子長さは、ガラス偏光子製造過程において、熱処理によってガラス基材中に析出させた塩化銀粒子(延伸後に還元処理される)を延伸する荷重の大きさによって調整することができる。強い荷重で引っ張ることによってガラス基材に強い応力が働き、塩化銀粒子が強く延伸される結果、大きなアスペクト比になる。そして、延伸時の温度や荷重を調整することにより、金属銀粒子のアスペクト比や粒子長さを好適な範囲に調整することができる。
表1は、平板ガラス偏光子の製造条件とガラス表層中に一軸配向して分散している金属銀粒子に平均アスペクト比及び平均粒子長さ、及びガラス偏光子の透過率とコントラストの関係をまとめたものである。
金属銀が分散している様子を透過電子顕微鏡で撮影した写真の例を図3に示す。そして、このような写真から金属銀のアスペクト比及び粒子長さを計測し、それぞれ平均値が算出される。これら金属銀粒子の平均アスペクト比及び平均粒子長さとして適切な範囲とその作製条件を、表1に示した評価結果に基づいて定めることができる。
本発明に用いる平板ガラス偏光子において、ガラス基材の表面層に一軸配向して分散している金属銀粒子の平均アスペクト比が1.3:1以上2.6:1以下であり、かつ平均粒子長さが30nm以上50nm以下となるように延伸されている場合は、可視光線の緑色領域(波長が500nm−600nmの範囲)の波長に光に対して、85%以上という高い透過率と高いコントラストが実現できる。このような平板ガラス偏光子を用いた場合、本発明のキューブ型PBSモジュールは、緑色レーザーを用いるレーザープロジェクター等の光学機器において用いることができる。平均粒子長さが50nmを超えると、緑色領域の波長の光に対する透過率が低下し、平均アスペクト比が前記範囲外になるとコントラストが急激に低下してしまうので好ましくない。なお、前記平均アスペクト比及び平均粒子長さの範囲とその作製条件は、表1と同様の評価試験を実施して定めたものである。
特許文献1や特許文献2に開示された方法に基づいて製造された従来のガラス偏光子の性能は、例えば、製造販売会社のホームページ上に電子カタログ(インフォメーション・シート)として開示されている(非特許文献1)。それによると、主として光通信用の光アイソレーターとして使用されるものであって、近赤外線の領域で優れた透過率とコントラストを有するものの、可視光線の領域では透過率が急激に低下するという課題があるため、本発明のうち、可視光線の領域で用いるキューブ型PBSモジュール用の平板ガラス偏光子としては適したものとは言えない。
従来技術による偏光ビームスプリッターや偏光子ではコントラストと明るさが両立した偏光を得ることが困難であったが、本発明によれば、s偏光成分についてもp偏光成分についても、比較的高い透過率を維持しながらコントラストを大幅に高めることができる。これによって、レーザー干渉計や光検出装置の検出光中に含まれるノイズを減少させることができる。
本発明においては、偏光分離膜と平板ガラス偏光子を利用しているので、入射する光が所定の角度から外れてしまっているような場合であっても、それら不要成分の光を平板ガラス偏光子が吸収除去することで、出射する偏光のコントラストを高く保つことができる。
本発明においては、平板ガラス偏光子を、キューブ型PBSの両斜面の間に挟み込んでいるので、波面収差を生ずることなく、所定の位置にコントラストの高い偏光を到達させることができる。
本発明のキューブ型PBSモジュールは、プリズム型PBSと平板ガラス偏光子からなるので、耐久性に優れ、レーザー耐性も有している。
本発明によるキューブ型PBSモジュールは、プリズム型PBSの両斜面間に、平板型ガラス偏光子を挟み込んだ光学素子であるので、外形は通常のプリズム型PBSと同じであって、プリズム型PBSと同じように取り扱うことができる。
本発明の実施形態の例を図4〜図7に示す。
図4に示した本発明のキューブ型PBSモジュール4は、平板ガラス偏光子21の両平面に偏光分離膜31、32を形成し、直角プリズム11及び12で挟んだ構成である。便宜上、直角プリズム11、12と平板ガラス偏光子21は隙間をあけて描かれているが、実際には接しており、周辺を接着剤で固めている。この構成では、第一の直角プリズム11に入射した光ビームは、偏光分岐面となる直角プリズムの斜面に接して、平板ガラス偏光子21の平面に設けられた偏光分離膜31において、s偏光の光ビームは反射されて出射面111に向かう。一方、偏光分離膜を透過したp偏光の光ビームは、平板ガラス偏光子21に入射し、平板ガラス偏光子の有する偏光フィルター機能によって、混在しているs偏光が吸収によって除去され、p偏光のコントラストが向上する。そして、平板ガラス偏光子21の本体を出射した光ビームは直ちに偏光分離膜32に入射し、残存していたs偏光が反射される。そして、コントラストが高められたp偏光は、第二の直角プリズム12の出射面121から出射する。
図5に示した本発明のキューブ型PBSモジュール5は、二つの直角プリズム13、14の両斜面に偏光分離膜33、34を形成して、平板ガラス偏光子22を挟んだ構成である。図5においても、便宜上、直角プリズム13、14と平板ガラス偏光子22は隙間をあけて描かれているが、実際には接しており、周辺を接着剤で固めている。この構成では、第一の直角プリズム13に入射した光ビームは、偏光分岐面となる直角プリズムの斜面に設けられた偏光分離膜33において、s偏光の光ビームは反射されて出射面131に向かう。一方、偏光分離膜33を透過したp偏光の光ビームは、平板ガラス偏光子22に入射し、平板ガラス偏光子の偏光フィルター機能によって、混在しているs偏光が吸収によって除去され、p偏光のコントラストが向上する。そして、平板ガラス偏光子22を出射した光ビームは直ちに偏光分離膜34に入射し、残存していたs偏光が反射され、p偏光のコントラストがさらに高められた後、出射面141から出射する。
図6に示した本発明のキューブ型PBSモジュール6は、二つの直角プリズム15、16のうち、直角プリズム15の斜面にのみ、偏光分離膜35を形成し、平板ガラス偏光子23を挟んだ構成である。図6においても、便宜上、直角プリズム15、16と平板ガラス偏光子23は隙間をあけて描かれているが、実際には接しており、周辺を接着剤で固めている。この構成では、第一の直角プリズム15に入射した光ビームは、偏光分岐面となる直角プリズムの斜面に設けられた偏光分離膜35において、s偏光の光ビームは反射されて出射面151に向かう。一方、偏光分離膜を透過したp偏光の光ビームは、平板ガラス偏光子23に入射し、平板ガラス偏光子の偏光フィルター機能によって、混在しているs偏光が吸収によって除去され、p偏光のコントラストが向上する。その後、p偏光は第二の直角プリズム16に入射し、出射面161から出射することになる。
図7は、図4に示したキューブ型偏光PBSモジュールのs偏光出射面に平板ガラス偏光子25を貼り付けた構成である。この構成は、偏光分離膜で反射されたs偏光のコントラストを向上させるためのものであって、p偏光については、図4に示したキューブ型PBSモジュールと同じ働きをする。平板ガラス偏光子24の両平面に偏光分離膜36、37が形成され、直角プリズム17及び18で挟まれている。第一の直角プリズム17に入射した光ビームは、偏光分岐面となる直角プリズムの斜面に接して、平板ガラス偏光子24の平面に設けられた偏光分離膜36において、s偏光の光ビームは反射されて出射面171に向かう。そして、出射面171に貼り付けられた平板ガラス偏光子25に入射し、平板ガラス偏光子の偏光フィルター機能によってs偏光のコントラストが高められ、平板ガラス偏光子の出射面251から出射する構成である。
以下、本発明について、実施例に基づいて具体的に説明する。
プリズム型PBSとして、BK7ガラス製の市販のプリズムガラス一対19、20を用意した。二等辺の長さが各々15mm、斜辺の長さが約22mmで、斜面は設計波長λに対してλ/4の面精度まで研磨されている。次に、設計波長が532nmの偏光分離膜38、39を平板ガラス偏光子26の平面にコーティングし、一対のBK7プリズムガラス19、20の間に隙間がないように押さえつけた後、周辺を接着して貼り合わせることによって、本発明のキューブ型PBSモジュール8を作製した(図8)。なお、平板ガラス偏光子26は、15mmx21mmのサイズで、厚さは約0.7mmであり、両面が設計波長λに対して4λの面精度まで研磨された後、偏光分離膜が形成された。プリズムガラス19、20と平板ガラス偏光子26の周辺部の接着には、UV硬化型光学接着剤(NORLAND OPTICAL ADHESIVE 65番)を用いた。
平板ガラス偏光子26は、特許文献6に開示された実施例に記載の方法に基づいて作製した。波長532nmを含む緑色領域において高い透過率と偏光フィルター機能を有するものである。この平板ガラス偏光子26の偏光特性を図9に示した。
偏光分離膜38、39は、高屈折率材料としてTa2O5、低屈折率材料としてSiO2を用いて、交互に22層積層した。膜構成を表2に示す。本実施例においては、偏光分離膜38、39が形成された平板ガラス偏光子26への光ビームの入射媒体は、BK7ガラス製の直角プリズムであるが、この偏光分離膜をBK7ガラス基板上に形成し、入射媒体が空気である場合の光学特性を図10に示す。
次に、本実施例のキューブ型PBSモジュール8を、図11に示す評価用光学系の試料位置にアライメントし、光強度とコントラストを測定した。評価用レーザー光源としては波長532nmの緑色レーザー光源ユニット81を用いた。光源から出射したレーザー光ビームは1/4波長板82によって円偏光に変換された後、キューブ型PBSモジュール8(以後、試料8とする)に入射する。そして、入射光ビームのうち、s偏光は偏光分離膜38で反射され、回転素子87を備えたグラントムソンプリズム86を通って、フォトディテクター88に入り、光強度が測定される。一方、p偏光は、平板ガラス偏光子26の偏光フィルター機能によって、残存するs偏光が吸収除去され、コントラストが向上する。そして、偏光分離膜39に入射してさらにs偏光が反射によって除去され、直角プリズム20の出射面201から出射する。出射したp偏光ビームは、回転素子84を備えたグラントムソンプリズム83に入射する。そして、回転素子を回転し調整することによって振動方向が垂直なp偏光の強度と、振動方向が水平なs偏光の強度が、フォトディテクター85によって測定され、それらの比から消光比(コントラスト)が算出された。
コントラストの測定結果の一例を図12に示す。このデータは、試料8を透過してきたp偏光の強度をs偏光の強度で割って算出した消光比である。測定は、グラントムソンプリズムを回転してs偏光の強度とp偏光の強度を読み取ることによって行った。グラントムソンプリズムに取り付けた回転素子の角度の読みが90度になったとき、コントラストが最大になり、さらに角度を増やしていくと、コントラストが低下していく様子がわかる。試料8を透過するp偏光のコントラストは50dB以上であることがわかった。
比較のため、図11の評価光学系において、評価試料としての試料8の位置に、従来のプリズム型PBS9(以後、試料9という)又は平板ガラス偏光子27(以後、試料27という)を設置し、同様の方法でコントラストを測定した。ここで、試料9は、市販(SK社製)のプリズム型偏光ビームスプリッターで、p波透過光の消光比が30dB以上との記載があった。試料27は、前記した平板ガラス偏光子26と同時に製作したものである。また、試料27の両平面に表2と同一の偏光分離膜を形成したものも試料10として作製し、同様に測定した。
また、本発明による試料8において、s波のコントラストを改善するため、図7に示したのと同様に、s波出射面191に平板ガラス偏光子28を貼り付けて、図11の評価光学系におけるs偏光側のフォトディテクター88を用いて測定を行った。
以上のようにして測定されたそれぞれの試料のコントラスト測定結果を表3に整理して示した。
表3に示した結果から、試料8である本発明のキューブ型PBSモジュールは、p偏光に対して53dBという非常に優れた消光比を有していることがわかった。また、s偏光消光比は26dBと、それほど優れた性能とは言えないが、s波出射面に平板ガラス偏光子を貼り付けることにより、55dBまでコントラストが向上することがわかった。
なお、試料10は、平板ガラス偏光子27の両平面に偏光分離膜を形成したもので、このような構成によっても、p偏光のコントラストは市販のプリズム型PBSよりもはるかに優れたものとなる。発明者らはこの構成について既に特許出願済みである。
次に、波面収差の影響を評価するため、図13に示した評価用光学系を組み立てた。評価用光学系の光源には、波長532nmでレーザー光源ユニット91を用いた。レーザー光ビームはビームエキスパンダーによって拡大した後、ガラス偏光子を通して純度の高い直線偏光とした。そして、1/2波長板92によって偏光方向が45度の直線偏光として、本発明のキューブ型PBSモジュールである試料8に入射した。偏光方向を45度とされた直線偏光は試料8によって二分され、反射したs偏光はガラス偏光子93を通って水平方向に振動するs偏光となってCCD素子95に入射する。ここで、ガラス偏光子93は、回転素子94を調整して、水平方向に振動する偏光のみが透過するようにセットされている。
一方、試料8を透過したp偏光は、光学系の3ヶ所に備えられた全反射ミラー97で反射し、計測物98に入射する。ここで、計測物として、内部に歪が残留したガラスを用いた。計測物98に入射したp偏光は、計測物98の歪の大きさに応じて偏光方向が回転し、再び試料8を透過する。そして、ガラス偏光子93によって水平方向に振動するp偏光とされ、試料8で反射したs偏光ビームと干渉して干渉縞を生ずる。このようにして、計測物98の歪の情報を含んだ偏光の干渉縞はモニター96に映し出された。本発明によるキューブ型PBSモジュールである試料8を用いて、計測物98を観測した結果、得られた干渉縞を図14に示した。
次に、試料8に代えて、平板ガラス偏光子27の両平面に偏光分離膜を形成した構成である試料10を設置して、同様の測定を行った。得られた干渉縞を図15に示す。図14に示した干渉縞と異なり、図15は非常に不鮮明なものであった。試料10は、表3に示した結果からわかるように、光学的には本発明のキューブ型PBSモジュールである試料8と同等の高いコントラストを有している。しかしながら、平板ガラス偏光子の両面に偏光分離膜を形成していることから、平板ガラス偏光子が少なからず撓んでしまい、完全な平行平板になっていなかったため、波面収差が残り、干渉縞が不鮮明になったものと考えられる。なお、これら干渉縞の画像である図14、図15は白黒画像であるが、カラー画像としてははるかに鮮明なものが得られている。
4、5、6、7、8・・・本発明のキューブ型PBSモジュールの例
9・・・プリズム型PBS
10・・・平板ガラス偏光子に偏光分離膜を形成した素子
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20・・・直角プリズム
21、22、23、24、25、26、27、28・・・平板ガラス偏光子
31、32、33、34、35、36、37、38、39・・・偏光分離膜
81、91・・・レーザー光源ユニット
82・・・1/4波長板、 92・・・1/2波長板
83、86・・・グラントムソンプリズム
84、87、94・・・回転素子
85、88・・・フォトディテクター、95・・・CCD素子
93・・・ガラス偏光子、 96・・・モニター
97・・・ミラー
111、121、131、141、151、161、171、181、191・・・直角プリズムの出射面
251・・・平板ガラス偏光子の出射面
9・・・プリズム型PBS
10・・・平板ガラス偏光子に偏光分離膜を形成した素子
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20・・・直角プリズム
21、22、23、24、25、26、27、28・・・平板ガラス偏光子
31、32、33、34、35、36、37、38、39・・・偏光分離膜
81、91・・・レーザー光源ユニット
82・・・1/4波長板、 92・・・1/2波長板
83、86・・・グラントムソンプリズム
84、87、94・・・回転素子
85、88・・・フォトディテクター、95・・・CCD素子
93・・・ガラス偏光子、 96・・・モニター
97・・・ミラー
111、121、131、141、151、161、171、181、191・・・直角プリズムの出射面
251・・・平板ガラス偏光子の出射面
Claims (4)
- 第一の直角プリズムと第二の直角プリズムを合わせて形成される立方体の、該直角プリズムが合わせられる斜面同士の間に、該斜面に平行な二つの平面を有するガラス偏光子の少なくとも一つの平面に偏光分離膜が形成された偏光分離膜付き平板ガラス偏光子が挟まれてなるキューブ型偏光ビームスプリッターモジュール。
- 第一の直角プリズムと第二の直角プリズムを合わせて形成される立方体の、少なくとも一方の直角プリズムの斜面に偏光分離膜が形成され、該偏光分離膜が形成された斜面と対面する他方の直角プリズムの斜面との間に、斜面に平行に、平板ガラス偏光子が挟まれてなるキューブ型偏光ビームスプリッターモジュール。
- 前記第一の直角プリズムと第二の直角プリズムの斜面間に挟まれる前記平板ガラス偏光子は、平板ガラス偏光子の少なくとも一つの平面又は少なくとも一方の直角プリズムの斜面に形成される前記偏光分離膜よりも、高い消光比を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のキューブ型偏光ビームスプリッターモジュール。
- 前記2つの直角プリズムを合わせて形成される立方体の、s偏光及びp偏光のいずれか又は両方の出射側端面に、平板ガラス偏光子が貼り合わされていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキューブ型偏光ビームスプリッターモジュール。
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