しかしながら、上記従来のチャック装置では、加工材料を把持した状態で、ドリル加工やブローチ加工などの軸線方向に大きな負荷のかかる加工を行った場合に、加工材料が把持部に対して軸線方向に逃げることで、加工部品の軸線方向の加工精度が悪化したり加工部品の被把持面が損傷を受けたりすることにより、不良が発生する場合があった。特に、上述の背面加工時に上記負荷が加わると、正面加工部分と背面加工部分の間に軸線方向の加工ずれが生ずる。また、半加工品の外面が軸線方向の基端側に斜めに向いた逆テーパ形状を有する場合には、背面加工時に半加工品がチャック装置の先端側に逃げやすくなるため、さらに不良が発生しやすくなる。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、把持位置が軸線方向にずれることを防止することにより、加工部品の形状精度を向上させ、不良率を低減することのできるコレットチャック、チャック装置、及び、加工製品の製造方法を実現することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明のコレットチャックは、筒状の主コレットと、該主コレットの内周側において前記主コレットに対し軸線方向に移動可能に配置される筒状の副コレットと、を具備し、前記主コレットは、軸線方向に伸びる複数のすり割りと、外周に設けられて前記主コレットの内径を拡縮するために加圧される面であって、軸線方向のいずれかの側に向けてテーパ状若しくは逆テーパ状に構成された被加圧面と、内周に設けられて軸線方向の先端側に斜めに向いた逆テーパ状に構成された主側傾斜面と、を有し、前記副コレットは、軸線方向に伸びる複数のすり割りと、内周に設けられて被把持材を把持するための把持面と、外周に設けられて前記主側傾斜面に接する逆テーパ状に構成された副側傾斜面と、を有することを特徴とする。すなわち、このコレットチャックは、被把持材の外径を把持する外径把持タイプのコレットチャックである。
本発明によれば、被加圧面に対する加圧の有無により、主コレットの内径が拡縮し、これによって、主コレットの主側傾斜面がこれに接する副コレットの副側傾斜面を駆動することにより、副コレットの内径が拡縮するので、副コレットの内周に設けられた把持面により被把持材を外側から把持することができる。この把持状態において、被把持材に対して先端側から軸線方向に力が加わった場合には、被把持材を把持する副コレットが主コレットに対して軸線方向の基端側へ移動しようとするが、副側傾斜面が主側傾斜面に接していることにより副コレットの内径が縮小し、副コレットの把持面による被把持材に対する把持力が増大するため、被把持材の軸線方向の位置ずれが生じにくくなる。また、被把持材の位置ずれが低減されることにより被把持材の把持面と接する表面部分の損傷の発生も抑制される。
本発明において、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。これによれば、被把持材の把持状態において、副コレットが主コレットに対して軸線方向の基端側へ力を受けることによって把持力が増大した場合においても、主コレットが解放状態に移行したときに副コレットが軸線方向ばねにより軸線方向の先端側へ付勢されているため、副コレットが被把持材を解放しやすくなり、また、被把持材の挿入により副コレットが軸線方向ばねを圧縮して主コレットの基端側へ押し込まれた状態で被把持材を把持した場合でも、被把持材を解放したときに元の位置に復帰しやすくなる。
本発明において、前記副コレットは、解放状態にあるときに前記被把持材を軸線方向の基端側から係止して位置決めする位置決め係止部を有することが好ましい。これによれば、被把持材を位置決め係止部に当接させた状態で把持することで、副コレットと被把持材の軸線方向の位置精度を確保できる。この位置決め係止部は、上記把持面の一部(例えば、把持面の軸線方向の基端)に設けられていてもよく、上記把持面から(例えば、軸線方向の基端側に)離間した位置に設けられていてもよい。このとき、前記副コレットの前記把持面は、飛越し把握を可能とする半径方向に突出する係合把持部を有する場合もある。この場合において、前記位置決め係止部を前記係合把持部の軸線方向の基端側に離間させて設けることが望ましい。
本発明において、前記副コレットの前記把持面は、軸線方向の先端側に斜めに向いた錐台状の面であることが好ましい。すなわち、この把持面は、コレットチャックが上述のような外径把持タイプであれば、軸線方向の先端側に斜めに向いた逆テーパ状に構成されることが好ましい。これによれば、被把持材の形状に応じて、副コレットの把持面が逆テーパ状に構成される場合には、軸線方向の加工力や衝撃を受けたときに被把持材が当該加工力や衝撃の方向とは逆の軸線方向の先端側へ位置ずれを生ずる虞が増大するので、本発明の上記構成により、当該位置ずれを防止でき、被把持材の損傷も回避できるという効果がさらに顕著になる。
本発明において、前記主コレットは軸線方向に伸びる案内面を内周に備え、前記副コレットは前記案内面に摺接して軸線方向に案内される被案内面を外周に備えることが好ましい。これによれば、主コレットの案内面によって被案内面が軸線方向に案内されることにより、副コレットが主コレットに対して軸線方向に移動する際に、副コレットの把持面の軸ずれや角度変化が抑制されるため、被把持材の供給位置(主コレットに対する挿入深さ)がばらついた場合でも、被把持材の加工精度の低下を防止することができる。
この場合において、前記主コレットのすり割り及び前記副コレットのすり割りは軸線方向の先端縁から基端側に向けて伸びるように形成され、前記案内面は、前記主側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置される領域に形成され、前記被案内面は、前記副側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置される領域に形成されることが望ましい。これによれば、主コレットのすり割りと副コレットのすり割りは、いずれも軸線方向の先端縁から形成されることによって軸線方向の先端側の領域が拡縮する構成とされるのに対して、案内面が主側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置された領域に設けられ、また、被案内面が副側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置された領域に設けられていることから、主コレット及び副コレットが開閉動作する際における案内面及び被案内面の変形が低減されるため、主コレットに対する副コレットの軸線方向の案内精度の低下を抑制できる。
本発明において、前記主コレットの内周には主側段部が設けられ、前記副コレットの外周には前記主側段部に対して軸線方向に係合する副側段部が設けられ、前記副側段部が前記主側段部に当接することにより前記主コレットに対して前記副コレットが軸線方向の先端側へ抜け止めされることが好ましい。これによれば、主側段部と副側段部の係合構造によって副コレットが主コレットに対して軸線方向の先端側へ抜け止めされていることにより、特に被把持材の取り出し時(例えば、ノックアウトピン等による被把持材の排出時)において、副コレットが主コレット内から脱落することを防止できる。また、上記の軸線方向ばねが設けられている場合には、被把持材の解放時において副コレットが軸線方向ばねにより抜け止め位置に復帰するため、被把持材の挿入前には、主コレットに対して副コレットを常に初期位置に設定できる。なお、主コレットに対する副コレットの抜け止め構造は、上記主側段部と副側段部を有する構成に限らず、チャック装置や工作機械においてコレットチャックとは別に設けられる部材により、結果として、副コレットが主コレット内に保持される構造であってもよい。
本発明において、主コレットの主側傾斜面と副コレットの副側傾斜面の少なくともいずれか一方の面に、軸線方向と交差する向きの溝が形成されることが好ましい。この溝を設けることで生ずる一方の傾斜面の角部が他方の傾斜面に喰い付くため、把持状態における主コレットと副コレットの間の軸線方向の位置ずれを低減することができる。
次に、本発明のチャック装置は、上述のコレットチャックと、軸線方向に移動可能に構成されるとともに前記主コレットを軸線方向に加圧して半径方向に拡縮(内周の縮径を生じるように)させる作用部材と、を具備することを特徴とする。これによれば、作用部材が主コレットの被加圧面を加圧することにより、主コレットが動作し、相互に接する主側傾斜面と副側傾斜面の逆テーパ状の嵌合構造を介して副コレットも動作する。例えば、作用部材の加圧により主コレットが縮径し、これにより副コレットが縮径して被把持材を把持する。このとき、前記主コレットの前記被加圧面は、内径を拡縮するために前記作用部材により軸線方向に加圧される面であって、軸線方向の少なくともいずれか一方の側に向けてテーパ状若しくは逆テーパ状に構成されたものとする。この場合において、前記副コレットは軸線方向の先端側に抜け止めされることによって前記主コレット内に保持され、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。
次に、本発明の加工製品の製造方法は、チャック装置により被加工材を把持した状態で前記被加工材を加工して加工製品を成形する加工製品の製造方法であって、前記チャック装置は、上記のコレットチャックと、軸線方向に移動可能に構成されるとともに前記主コレットを軸線方向に加圧して半径方向に拡縮(例えば、内周の縮径を生じるように)させる作用部材と、を具備し、前記作用部材を解放駆動位置に配置することにより前記主コレット及び前記副コレットを解放状態にして、前記被加工材を前記副コレットの内周側に装着し、その後、前記作用部材を把持駆動位置に配置して前記主コレット及び前記副コレットを把持状態にし、前記被加工材を加工することを特徴とする。
本発明において、前記副コレットは軸線方向の先端側に抜け止めされることによって前記主コレットに対して保持され、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。これによれば、副コレットが軸線方向の先端側へ抜け止めされるとともに、軸線方向ばねによって軸線方向の先端側へ付勢されていることにより、被加工材の解放時において副コレットが軸線方向ばねにより抜け止め位置に復帰するため、被加工材の挿入前には、主コレットに対して副コレットを常に初期位置に設定できる。したがって、被加工材の導入時において被加工材の副コレットに対する軸線方向の導入位置の精度を高めることができ、その結果、加工精度を向上させることができる。また、被加工材の取り出し時(例えば、ノックアウトピン等による被把持材の排出時)において副コレットが主コレット内から脱落することを防止できることは勿論である。なお、主コレットに対する副コレットの抜け止め構造は、上記のように主コレットとの間に設けられていてもよく、或いは、チャック装置や工作機械においてコレットチャックとは別に設けられる部材との間に設けられていてもよい。
本発明において、前記副コレットは、解放状態にあるときに前記被加工材を軸線方向の基端側から係止して位置決めする位置決め係止部を(例えば、前記把持面の軸線方向の基端側に)有し、前記被加工材は、前記副コレットの内周側に装着されるときに前記位置決め係止部に突き当てられた状態で前記副コレットに把持されることが好ましい。これによれば、被加工材が位置決め係止部に突き当てられた状態で副コレットに把持されることにより、副コレットに対する被加工材の軸線方向の位置を一定とすることができるため、被加工材を加工することによって得られる製品の軸線方向の寸法のばらつきを低減し、当該製品の軸線方向の形状精度を高めることができる。
この場合において、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備し、前記被加工材は、前記副コレットに装着されるときに前記被加工材が前記位置決め係止部に突き当てられるとともに前記軸線方向ばねが圧縮された状態で、前記副コレットに把持されることが望ましい。これによれば、軸線方向ばねが副コレットを軸線方向の先端側へ付勢しているため、被加工材を副コレットの先端側から装着して軸線方向ばねが圧縮された状態とするだけで、被加工材が位置決め係止部に突き当てられた状態を維持することができることから、副コレットに把持されたときの被加工材の位置決め状態を確実に得ることができ、副コレットに対する被加工材の軸線方向の位置精度をさらに高めることができる。
本発明において、前記被加工材を主軸に装着して正面加工を施す第1工程と、前記正面加工が完了した前記被加工材を、前記チャック装置を備えた背面主軸に受け渡し、該背面主軸において前記チャック装置により前記被加工材を把持する第2工程と、前記背面主軸に装着された前記被加工材に背面加工を施す第3工程と、を具備することが好ましい。これによれば、背面加工において被加工材に対して軸線方向の基端側へ加工力が加わったときでも、当該加工力によって被加工材が軸線方向の基端側へ移動しようとすると、副コレットと主コレットの間の副側傾斜面と主側傾斜面との摺接構造によって被加工材に対する把持力が増大するため、結果として被加工材の軸線方向の基端側への位置ずれを回避することができる。したがって、被加工材の軸線方向の加工精度を高めることができるとともに、被加工材と副コレットの把持面との間で生ずる損傷を低減できる。また、背面加工時における被加工材の軸線方向の位置ずれを防止できるため、加工後の製品における正面加工部分と背面加工部分の間の軸線方向の加工ずれも低減できる。
さらに、本発明の別のコレットチャックは、筒状の主コレットと、該主コレットの外周側において前記主コレットに対し軸線方向に移動可能に配置される筒状の副コレットと、を具備し、前記主コレットは、軸線方向に伸びる複数のすり割りと、内周に設けられて外径を拡縮するために加圧される面であって、軸線方向のいずれかの側に向けてテーパ状若しくは逆テーパ状に構成された被加圧面と、外周に設けられて軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状に構成された主側傾斜面と、を有し、前記副コレットは、軸線方向に伸びる複数のすり割りと、外周に設けられて被把持材を把持するための把持面と、内周に設けられて前記主側傾斜面に接するテーパ状に構成された副側傾斜面と、を有することを特徴とする。すなわち、このコレットチャックは、被把持材の内径を把持する内径把持タイプのコレットチャックである。
ここで、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。また、前記副コレットは、解放状態にあるときに前記被把持材を軸線方向の基端側から係止して位置決めする位置決め係止部を(例えば、前記把持面の軸線方向の基端側に)有することが好ましい。さらに、前記副コレットの前記把持面は、軸線方向の先端側に斜めに向いた錐台状の面であることが好ましい。すなわち、この把持面は、内径把持タイプの場合には軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状に構成されることが好ましい。また、前記主コレットは、軸線方向に伸びる案内面を外周に備え、前記副コレットは、前記案内面に摺接して軸線方向に案内される被案内面を内周に備えることが好ましい。さらに、この場合において、前記主コレットのすり割り及び前記副コレットのすり割りは軸線方向の先端縁から基端側へ向けて伸びるように形成され、前記案内面は、前記主側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置された領域に形成され、前記被案内面は、前記副側傾斜面に対して軸線方向の基端側に配置された領域に形成されることが望ましい。また、前記主コレットの外周には主側段部が設けられ、前記副コレットの内周には前記主側段部に対して軸線方向に係合する副側段部が設けられ、前記副側段部が前記主側段部に当接することにより前記主コレットに対して前記副コレットが軸線方向の先端側へ抜け止めされることが好ましい。さらに、前記副コレットの前記把持面は、飛越し把握を可能とする半径方向に突出する係合把持部を有することが好ましい。この場合において、前記位置決め係止部を前記係合把持部の軸線方向の基端側に離間させて設けることが望ましい。また、主コレットの主側傾斜面と副コレットの副側傾斜面の少なくともいずれか一方の面に、軸線方向と交差する向きの溝が形成されることが好ましい。
この別のコレットチャックは、上記チャック装置において用いることができる。すなわち、上記作用部材の代わりに、軸線方向に移動可能に構成されるとともに前記主コレットを軸線方向に加圧して半径方向に拡縮(外周の拡径を生じるように)させる作用部材とともに用いられる。このとき、前記主コレットの前記被加圧面は、外径を拡縮するために前記作用部材により軸線方向に加圧される面であって、軸線方向の少なくともいずれか一方の側に向けてテーパ状若しくは逆テーパ状に構成されたものとする。この場合において、前記副コレットは軸線方向の先端側に抜け止めされることによって前記主コレット内に保持され、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。
また、上記の別のコレットチャックを用いたチャック装置は、上記本発明の加工製品の製造方法において用いられ、前記作用部材を解放駆動位置に配置することにより前記主コレット及び前記副コレットを解放状態にして、前記被加工材を前記副コレットの外周側に装着し、その後、前記作用部材を把持駆動位置に配置して前記主コレット及び前記副コレットを把持状態にし、前記被加工材を加工することを特徴とする。この場合において、前記副コレットは軸線方向の先端側に抜け止めされることによって前記主コレットに対して保持され、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備することが好ましい。また、前記副コレットの前記把持面は、解放状態にあるときに前記被加工材を軸線方向の基端側から係止して位置決めする位置決め係止部を(例えば、前記把持面の軸線方向の基端側に)有し、前記被加工材は、前記副コレットの外周側に装着されるときに前記位置決め係止部に突き当てられた状態で前記副コレットに把持されることが好ましい。このときに、前記チャック装置は、前記副コレットを前記主コレットに対して軸線方向の先端側へ付勢する軸線方向ばねをさらに具備し、前記被加工材は、前記副コレットに装着されるときに前記被加工材が前記位置決め係止部に突き当てられるとともに前記軸線方向ばねが圧縮された状態で、前記副コレットに把持されることが望ましい。さらに、前記被加工材を主軸に装着して正面加工を施す第1工程と、前記正面加工が完了した前記被加工材を、前記チャック装置を備えた背面主軸に受け渡し、該背面主軸において前記チャック装置により前記被加工材を把持する第2工程と、前記背面主軸に装着された前記被加工材に背面加工を施す第3工程と、を具備することが好ましい。
なお、本発明において、テーパ状とは、軸線方向の先端側へ向けて先細り状に構成されていることを言い、逆テーパ状とは、軸線方向の基端側へ向けて先細り状に構成されていることを言う。また、筒状とは、典型的には円筒状であるが、楕円筒状、長円筒状、角筒状などの任意の筒形状を含む。さらに、錐台状の面とは、錐台の側面の形状を有する面を言い、典型的には円錐台状であるが、楕円錐台状、長円錐台状、角錐台状などの任意の錐台形状を含む。
本発明によれば、把持位置が軸線方向にずれることを防止することにより、加工部品の形状精度を向上させ、不良率を低減することのできるコレットチャック、チャック装置、及び、加工製品の製造方法を実現することができるという優れた効果を奏し得る。
[第1実施形態]次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、コレットチャックの第1実施形態について、図1乃至図3を参照して説明する。本実施形態のコレットチャック10は、図1及び図2に示すように、全体として筒状(図示例では円筒状)に構成された主コレット11と、この主コレット11の内部の軸線方向の先端側部分に収容され、図1及び図3に示すように、全体として筒状(図示例では円筒状)に構成された副コレット12と、上記主コレット11の内部において、副コレット12の軸線方向の基端側に配置、収容された軸線方向ばね13と、上記主コレット11の軸線方向の基端に取り付けられ、上記軸線方向ばね13を軸線方向の基端側から支持するばね受け14とを有する。
主コレット11は、軸線方向の先端縁から基端側(図示右側)へ伸び、中間位置までの範囲に形成され、軸線周りに複数(図示例では3つ)設けられたすり割り11aを備えている。このすり割り11aの軸線方向の基端部は大きな円状(長円状や楕円状でもよい。)の開口部とされ、この開口部よりも軸線方向の先端側(図示左側)にある部分は一定の幅を有するスリット状に構成されている。すり割り11aの軸線方向の形成領域内にある外周部分には軸線方向の基端側に斜めに向いた逆テーパ状(円錐台状)に構成された被加圧面11bが形成される。この被加圧面11bの先端側には、軸線方向の基端側へ向いた段差面であって、軸線と直交する垂直面に形成された外周段部11pが形成されている。
主コレット11は、上記被加圧面11bにおいて後述するチャックスリーブ(作用部材)により加圧力を受けることにより、軸線方向の先端側部分にある主側傾斜面11cの内径が拡縮するように構成される。この主側傾斜面11cは、主コレット11の最も先端側にある部分の内周に設けられている。また、主側傾斜面11cは、軸線方向に沿った所定のテーパ角を有する円錐台状の面であり、主コレット11の軸線方向の先端側に向かうほど内径が増大する逆テーパ状となっている。この主側傾斜面11cには、図2に示すように、軸線と直交する環状の溝11q1、11q2が形成されている。また、主側傾斜面11cの軸線方向の基端側に隣接する部分には、後述する主側段部11eとの間に配置される、円筒面11rが形成されている。この円筒面11rは、主側傾斜面11cの軸線方向の基端縁にある最小径の部分と同じ内径を備える。
主コレット11の内周には、上記主側傾斜面11cに対して軸線方向の基端側にある領域に、軸線方向に一定の内径を備えた円筒面よりなる案内面11dが形成される。また、この案内面11dと、上記主側傾斜面11cとの間には、軸線方向の基端側に向いた段差面を備えた主側段部11eが設けられている。図示例の場合、上記案内面11d及び上記主側段部11eは、外周に上記被加圧面11bが設けられた軸線方向の領域に形成されている。当該領域は、主コレット11において、軸線方向の基端側にある部分よりも厚肉に構成された領域となっている。また、図2に示すように、主側段部11eの段差面は、軸線方向の基端側に向くとともに、内周側へ斜めに傾斜した円錐台状のテーパを有するテーパ状段差面11e1と、このテーパ状段差面11e1の外周側に隣接して形成され、軸線と直交する垂直段差面11e2とを有する。テーパ状段差面11e1は上記円筒面11rと接し、垂直段差面11e2は上記案内面11dと接している。
副コレット12は、軸線方向の先端縁から基端側にそれぞれ伸びる、軸線周りに複数(図示例では3つ)のすり割り12aを備えている。このすり割り12aの軸線方向の基端部は大きな円状(長円状や楕円状でもよい。)の開口部とされ、この開口部よりも軸線方向の先端側にある部分は一定の幅を有するスリット状に構成されている。副コレット12の内周には、すり割り12aが形成された軸線方向の領域内において、図示例では軸線方向の最も先端側に、被把持材や被加工材(以下、単に「ワークW」という。)を把持するための把持面12bが形成されている。この把持面12bは、副コレット12の内径の縮小によりワークWの外径を把持できるものであればよく、一般的には、軸線方向に一定の内径を有する円筒面状に構成されていてもよい。しかし、図示例では、把持面12bは、軸線方向の先端側に向けて拡径した逆テーパ状の内面形状を備えている。この把持面12bの内面形状はワークの外面形状に対応するものであり、本実施形態では軸線方向の先端側に向けて逆テーパ状の外形を備えたワークWを把持するように設計されている。また、把持面12bの軸線方向の基端側には、副コレット12が主コレット11により締め付けられていない解放状態にあっても、ワークWが副コレット12内に挿入されたときにその先端に当接して軸線方向の基端側から係止し、位置決めする位置決め係止部12sが設けられる。
副コレット12の外周部分には、上記の主コレット11に設けられた主側傾斜面11cと接する副側傾斜面12cが形成されている。この副側傾斜面12cは、図示例では、副コレット12の最も先端側にある部分に設けられている。また、副側傾斜面12cは、軸線方向に沿ったテーパ角を有する円錐台状の面に形成され、副コレット12の軸線方向の先端側に向かうほど外径が増大する逆テーパ状とされている。この副側傾斜面12cは、ワークWを把持した状態で、主側傾斜面11cと密着し、ぴったりと嵌合することができるように、主側傾斜面11cとほぼ同じテーパ角となるように形成される。
副コレット12の内周には、上記副側傾斜面12cが形成された領域よりも軸線方向の基端側において、軸線方向に一定の内径を備えた円筒面よりなる被案内面12dが形成される。また、この被案内面12dと、上記副側傾斜面12cとの間には、軸線方向の基端側に向いた段差面を備えた副側段部12eが設けられている。この副側段部12eは、図示例では、軸線方向の先端側に向くとともに外周側へ傾斜した円錐台状(逆テーパ状)に構成されている。図示例の場合、被案内面12dは上記案内面11dに摺接し、これにより副コレット12は主コレット11に対して軸線方向に移動可能に案内される。また、副側段部12eは上記主側段部11eと嵌合する位置及び形状に形成されている。具体的には、主側段部11eと副側段部12eが嵌合したとき、副側段部12eは主側段部11eの上記テーパ状段差面11e1と密接するが、上記垂直段差面11e2は副側段部12eの表面から離間している。この主側段部11eと副側段部12eの係合構造により、副コレット12は、主コレット11の内部に収容された状態で、軸線方向の先端側に抜け止めされている。
副コレット12の上記把持面12bの内面形状に対応する外面形状を備えた図1(c)に示すワークWは、軸線方向に延長された形状を有するとともに、軸線方向の基端側に斜めに向いた、逆テーパ状に構成された外周包絡形状Wo(図示一点鎖線)を備えている。例えば、この外周包絡形状Woを構成する外周面形状の例としては、軸線周りに形成された雄ねじ構造が挙げられる。また、コレットチャックの軸線方向の基端には、上記位置決め係止部12sに嵌合する小径端Wpが形成される。さらに、軸線方向の先端にある開口端に開口する軸穴Wiが形成される。例えば、軸穴Wiの例としては、レンチなどの工具を嵌合させる六角穴が挙げられる。
コレットチャック10では、主コレット11の被加圧面11bに軸線方向の基端側から圧力が加わると、主側傾斜面11cの内径が縮小し、これが副コレット12の副側傾斜面12cの外径を縮小させることで、把持面12bの内径が縮小する。したがって、副コレット12の内部においてワークWを把持することができる。また、副コレット12とばね受け14との間には、軸線方向ばね13が圧縮状態で主コレット11の内部に収容されている。この軸線方向ばね13の弾性力により、主コレット11が副コレット12を締め付けていない解放状態では、副コレット12は、その被案内面12dが主コレット11の案内面11dに案内されることにより軸線方向に移動可能に構成されるとともに、副側段部12eが主側段部11eに当接(嵌合)する初期位置に位置決め保持される。
ここで、上記主側傾斜面11cに設けられた溝11q1,11q2は、上記把持状態において溝11q1,11q2を設けることで形成される環状の角部が副側傾斜面12cに喰い付くことにより、上記主側傾斜面11cと上記副側傾斜面12cとの軸線方向の位置ずれを抑制する。ただし、これらの溝11q,11q2は、上記解放状態においては、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの軸線方向の摺動を妨げない。なお、本実施形態において、当該溝11q1,11q2は主側傾斜面11cに形成されているが、その代わりに、副側傾斜面12cに形成してもよく、また、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの双方に設けてもよい。また、上記角部の喰い付き作用を得るためには、上記溝は軸線方向と交差する方向に伸びるように形成されていればよい。
また、主側段部11eと副側段部12eの当接構造においては、主側段部11eのテーパ状段差面11e1に副側段部12eが密接するように構成され、垂直段差面11e2と副側段部12との間には隙間が形成されるようになっている。このように、主側段部11eの内周側に形成されたテーパ状段差面11e1を副側段部12eに当接し、副コレット12を軸線方向に位置決めするとともに、外周側に形成された垂直段差面11e2が副側段部12eから離れた構造とすることにより、主コレット11の内部加工が容易になるとともにテーパ状段差面11e1の面精度も高めやすくなる。また、主コレット11及び副コレット12の先端部分が半径方向に拡縮したときの変形に起因する、副コレット12の主コレット11に対する軸線方向の抜け止め位置の変動も抑制できる。なお、テーパ状段差面11e1は必ずしもテーパ状である必要はなく、副側段部12eの表面形状に対応して、副側段部12eとの間で相互に密着することのできる段差面であればよい。また、垂直段差面11e2も必ずしも垂直面である必要はなく、副側段部12eから離れた(接触しない)面であればよい。
図4及び図5には、上記のコレットチャック10を用いたチャック装置20の構造を示す。ただし、このコレットチャック10は、図1〜図3に示す上記コレットチャック10と僅かに異なり、上記溝11q1,11q2が形成されておらず、また、主側段部11eの段差面は、全体が副側段部12eに密接する面形状を備えている。このように構成されていても、基本的な作用効果は上記と同様である。しかしながら、説明の都合上、図4及び図5に示すコレットチャックやこれに含まれる各部材には、図1〜図3と同一の符号を付す。
図5に示すように、チャック装置20は、コレットチャック10が工作機械の主軸(背面主軸)32に装着されたチャックスリーブ21内に収容され、軸線方向の先端側からチャックスリーブ21に取り付けられるキャップナット22により軸線方向の先端側に位置決めされるとともに、軸線方向の基端側からコイルばね等の保持ばね23によって先端側に向けて付勢された状態に組み付けられる。ここで、図4に示すばね受け24は、チャックスリーブ21に装着されて保持ばね23の基端側を支持するストッパである。なお、図5に二点鎖線で示すノックアウトピン25は、軸線方向の基端側から主コレット11の内部に挿入されている。このノックアウトピン25は、常時は軸線方向の基端側に待機し、ワークWを排出する際に、別機構によって駆動されることによって軸線方向の先端側へ突出し、ワークWを副コレット12内から軸線方向の先端側へ突き出して排出する。
チャックスリーブ21は、主軸32に対してコレットチャック10と同軸に取り付けられている。チャックスリーブ21の軸線方向の基端側の外周部分には縦溝21aが形成され、この縦溝21aは主軸32に嵌合し、チャック装置20が主軸32と一体に軸線周りに回転するように構成される。このチャックスリーブ21は、コレットチャック10の主コレット11及び副コレット12を半径方向に拡縮させるための作用部材として機能する。筒状のチャックスリーブ21の軸線方向の先端側の内周部分には、軸線方向の先端側に向けて開くように形成された円錐台状(逆テーパ状)の加圧面21bが形成されている。そして、チャックスリーブ21は周知の駆動機構により軸線方向に移動される。チャックスリーブ21が図6(a)に示す位置(解放駆動位置)にあるときには、主コレット11及び副コレット12の先端部分は外周側へ広がった解放状態にある。一方、チャックスリーブ21が軸線方向の先端側へ移動して図6(b)に示す位置(把持駆動位置)にあるときには、上記加圧面21bが上記被加圧面11bを加圧し、主コレット11及び副コレット12を縮径させ、把持状態とすることができる。
キャップナット22は、主コレット11及び副コレット12の軸線方向の先端部を通過させることのできる開口部22aを備えるとともに、この開口部22aの開口内縁にある位置決め面22bが主コレット11の外周段部11pに当接している。キャップナット22の基端部はねじ構造等により主軸32に固定される。コレットチャック10は、キャップナット22の位置決め面22bに当接した状態で、上記保持ばね23により軸線方向の先端側に付勢されることにより、軸線方向に位置決めされる。また、このコレットチャック10は、主軸32に対してチャックスリーブ21が軸線方向に移動してコレットチャック10が開閉動作する際においても、主軸32に対して軸線方向に位置決めされ、固定された状態とされる。
なお、解放状態を示す図6(a)では、主コレット11及び副コレット12が拡径された状態を強調するために、実際よりもすり割り11aと12aが開いた態様で描いてあるが、実際には外力が加わらない自然状態とされ、図示しないワークWに対して把持力が生じない程度に構成される。ただし、この解放状態においても、図示のように主コレット11の上記被加圧面11bがチャックスリーブ21の加圧面21bに当接したり、主コレット11の先端部の外周がキャップナット22の開口部22aの開口縁に当接したりした状態となることにより、コレットチャック10の軸ずれ等を防止することができる。このとき、副コレット12の副側傾斜面12cが主コレット11の主側傾斜面11cに当接した状態になっていれば、結果として副コレット12の把持面12bの軸ずれをも回避することができる。これは、後述する製造方法において、ワークWをチャック装置20に対して挿入する際の不具合、すなわち、ワークWが副コレット12の把持面12bの先端開口に整合せず、ワークWを副コレット12の内部に挿入できなくなる事態を防止できる、という利点をもたらす。
一方、把持状態を示す図6(b)では、ワークWが軸線方向の先端側(図示左側)から副コレット12の内部に挿入され、チャックスリーブ21の加圧力によって主コレット11を介して縮径された副コレット12の把持面12aがワークWを把持する。解放状態から把持状態へ移行する過程では、図6(a)に示される解放状態において、ワークWが副コレット12に挿入されたとき、ワークWが把持面12aの軸線方向の基端側に設けられた位置決め係止部12sに突き当てられると、副コレット12は軸線方向ばね13を圧縮して軸線方向の基端側へ僅かに移動する。このとき、副コレット12の被案内面12dが主コレット11の案内面11dによって軸線方向に案内されるため、副コレット12の軸ずれはほとんど生じない。その後、図6(b)に示すように、チャックスリーブ21の移動によりワークWは把持面12bにより把持される。このとき、図1〜図3に示すように溝11q1,11q2が形成される場合には、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの間で溝11q1,11q2により形成される角部の喰い付きにより、解放状態から把持状態へ移行する際の副コレット12の主コレット11に対する軸線方向の位置ずれは低減される。なお、溝を副側傾斜面12cに設ける場合でも同様である。
本実施形態では、ワークWは軸線方向の基端側に斜めに向いた逆テーパ状に構成されるため、副コレット12の把持面12bが軸線方向の先端側に斜めに向いた逆テーパ状となっていることにより、軸線方向の先端側に移動しやすい状況にある。したがって、もし図6(b)に示される把持状態においてワークWに対して軸線方向の先端側からドリル加工やブリーチ加工などが行われることにより、ワークWに軸線方向の基端側へ向かう加工力が加わることになると、当該加工力の変動に伴う衝撃と逆テーパ状の把持面から与えられる把持力の作用により、ワークWが軸線方向の先端側に位置ずれを生じる可能性がある。また、本実施形態の状況とは異なるが、ワークWが上記位置決め係止部12sにより軸線方向の基端側に位置決めされていない場合には、把持面12bやワークWが逆テーパ状か、テーパ状か、円筒状かに拘わらず、上記加工力が加わることにより、ワークWが軸線方向の基端側へ位置ずれを生ずる可能性がある。
しかしながら、本実施形態では、副コレット12の副側傾斜面12cが逆テーパ状に構成され、主コレット11の逆テーパ状の主側傾斜面11cと接している逆テーパ状の嵌合構造を有している。これにより、上記加工力が加わってワークWが軸線方向の基端側へ移動しようとすると、副コレット12も主コレット11に対して軸線方向の基端側へ移動しようとして、上記の逆テーパ状の嵌合構造により、把持面12bによりワークWに加えられる把持力が増大するため、ワークWの軸線方向の位置ずれ(特に、把持面12bやワークWの逆テーパ形状による軸線方向の先端側への位置ずれ)が抑制される。このとき、図1〜図3に示すように溝11q1,11q2が形成される場合には、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの間で溝11q1,11q2により形成される角部の喰い付きにより、上記加工力に起因する副コレット12の主コレット11に対する軸線方向の位置ずれはさらに低減される。なお、溝を副側傾斜面12cに設ける場合でも同様である。
また、本実施形態のように把持面12bに上記位置決め係止部12sが設けられている場合には、チャック装置20の解放状態においてワークWが副コレット12の内部に挿入されたとき、ワークWが上記位置決め係止部12sに突き当たることによって軸線方向の基端側に位置決めされ、この位置決め状態でワークWが副コレット12に把持されるため、副コレット12に対するワークWの軸線方向の位置精度及びその再現性を高めることができる。特に、軸線方向ばね13が副コレット12を主コレット11に対して軸線方向の先端側へ付勢していることにより、ワークWと副コレット12の軸線方向の位置決め精度はさらに向上する。したがって、ワークWの加工基準を副コレット12とすることにより、ワークWの軸線方向の加工精度を向上させ、加工形状の再現性を高めることができる。
図7(a)〜(e)は、本実施形態の上記コレットチャック10若しくは上記チャック装置20を有効に用いることのできるワークWの加工方法、或いは、ワークWの加工によって製造される製品の製造方法を示す工程図である。主軸台1は主軸2を搭載し、主軸2の先端に設けられたチャック装置3によってワークWの原材料W0が把持される。原材料W0は例えば丸棒材であり、予めワークWに対応する所定の長さに形成された材料であってもよく、或いは、主軸移動型自動旋盤(スイス型自動旋盤)等を用いることを前提とした長尺材料であってもよい。このとき、加工精度を高めるためにガイドブッシュ装置4(図示点線)を用いることが特に上記長尺材料を用いる場合には好適である。
上記原材料W0は、図7(a)に示すように、上記主軸2に保持された状態で、適宜の工具5によって加工される。本実施形態の場合には、原材料W0の先端をテーパ状に加工し、必要に応じて、ねじ加工などを実施する。例えば、製品として歯科用インプラント材(歯科用インプラントフィクスチャ、歯科用インプラントアバットメント等)を製造する場合には、最初に製品外面の慨形を形成し、その後に外表面の詳細構造、例えば、外面ねじ構造(タッピングねじなど)等を成形する。この歯科用インプラント材等からなる製品ワークW2の断面形状は図7(f)に示してあるが、詳細は後述する。多くの場合、歯科用インプラント材の外面の慨形はテーパ形状を有するので、図7(b)に示すように、ワークW0の外表面をテーパ状に加工する。
ここで、図7(b)に示すように、背面主軸台31に搭載された主軸32を、上記主軸2と同軸線上に配置して、上記チャック装置20を原材料W0と対向する位置に配置する。なお、主軸32を含む背面主軸機構は、周知のように工作機械内に主軸2とともに移動可能に設けられていることが好ましいが、相対的な位置精度が担保されるのであれば、主軸2を有する装置とは別装置に設けられていても構わない。
次に、図7(c)に示すように、背面主軸台31を軸線方向に移動させ、主軸2に把持されている原材料W0の先端部分を、図6(a)に示す解放状態のチャック装置20の上記副コレット12内に挿入する。ここで、背面主軸台31ではなく、主軸台1を移動させてもよく、背面主軸台31と主軸台1を共に移動させても構わない。そして、上述のように副コレット12の把持面12bに上記位置決め係止部12sが設けられている場合には、原材料W0の先端部分が位置決め係止部12sに当接し、図6(b)に示すように副コレット12が僅かに軸線方向の基端側へ押し入れられる。このとき、副コレット12は軸線方向ばね13によって軸線方向の先端側へ付勢されているので、原材料W0の先端部分は位置決め係止部12sに当接した状態に維持される。
一方、副コレット12に上記位置決め係止部12sが設けられていない場合には、主軸2と主軸32の位置関係によって副コレット12に対する原材料W0の挿入深さを設定する。このとき、原材料W0の先端部分の把持面12b内の軸線方向の位置は、解放状態において軸線方向ばね13によって位置決めされた副コレット12の初期位置を基準として、上記主軸2と主軸32の軸線方向の相対的間隔によって定められる。ここで、上記位置決め係止部12sが設けられていない場合としては、例えば、本実施形態のように把持面12bがワークWの先端部と後端部を除く外形部分に対応する逆テーパ状の内形を有しているが、ワークWの小径端Wpの形状を反映した部分を有していない場合が挙げられる。また、ワークWの全体が逆テーパ形状ではなく、少なくとも軸線方向の一部領域に円筒形状の部分を有する場合などにおいては、当該円筒形状の部分を把持するための円筒面上の把持面12bとすることも可能である。
上記のようにして、原材料W0が挿入され、上記いずれかの方法で位置決めされた後に、チャック装置20は把持状態に移行する。すなわち、チャックスリーブ21が軸線方向に駆動され、主コレット11及び副コレット12が縮径して、図6(b)に示すように原材料W0の先端部分を把持する。この状態で、図7(c)に示すように、主軸2及び背面主軸32を同時に回転させながら突っ切りバイト等の工具6を用いること等により、原材料W0から主面加工が施された先端部分を切り離す。この先端部分は、主面加工済みの中間ワークW1である。図7(d)は、背面主軸32のチャック装置20が中間ワークW1を把持した状態で、背面主軸台32を主軸台1から離間させた状態を示す。
その後、図7(e)に示すように、背面主軸32のチャック装置20に把持された中間ワークW1に対して背面加工を施す。この背面加工の種類、態様は特に限定されないが、例えば、図示のように、工具7として示すドリルやブローチ等により、中間ワークW1の切り離し面に穿孔加工を施したり、六角穴などの工具係合構造を形成したりする、軸線方向の基端側へ向けた加工を施すものが典型である。ただし、図示のように中間ワークW1に対してチャック装置20の軸線方向の基端側へ直接に加工力が加わる態様の加工を行う場合に限らず、切削バイト等による外周面(チャック装置20から飛び出した部分)の旋削加工においても、ワークW1に対して工具を軸線方向の基端側へ送る態様の加工を行う場合には、間接的に軸線方向の基端側へ向けた加工力がワークW1に加わることになる。
上記のように中間ワークW1に対して軸線方向の基端側へ加工力が加わる場合には、副コレット12にも軸線方向の基端側へ向かう力が及ぼされるが、当該力によって副コレット12が軸線方向の基端側へ移動しようとすると、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの逆テーパ状の嵌合構造により副コレット12の把持面12bがさらに縮径されて、中間ワークW1の把持力が増大するため、結果として、中間ワークW1の副コレット12に対する軸線方向の位置ずれや、副コレット12自体の軸線方向の位置ずれも抑制される。また、中間ワークW1の上記把持面12bによって把持されている外面の位置ずれによる損傷を防止することができる。この効果は、すり割り11a及び12aが主コレット11及び副コレット12の軸線方向の先端縁から基端側へ向けて伸びるように形成されていることにより、上記加工力に起因して生ずる主コレット11及び副コレット12の縮径作用が、軸線方向の基端側部分よりも先端側部分においてより強くなることによって、さらに高められる。
特に、本実施形態の場合には、中間ワークW1の外周包絡形状Woが軸線方向の基端側へ斜めに向いた逆テーパ状に構成され、これに対応して、副コレット12の把持面12bが軸線方向の先端側へ斜めに向いた逆テーパ状に構成される。したがって、把持面12bに位置決め係止部12sを設ける場合であっても、本来的に副コレット12の把持面12bによる中間ワークW1の把持状態は不安定であり、把持力の軸線方向の先端側に向かう成分により、衝撃を受けたときに中間ワークW1が軸線方向の先端側へ位置ずれを生ずる虞がある。また、これと同様の理由により、主側傾斜面11cと副側傾斜面12cの逆テーパ状の嵌合構造が衝撃を受けたときに、副コレット12が主コレット11に対して軸線方向の先端側へ位置ずれを生ずる虞もある。しかし、本実施形態では、上述のように衝撃を受けたときでも上記理由により副コレット12の把持面12bによる中間ワークW1に及ぼす把持力が増大し、また、上記逆テーパ状の嵌合構造の締め付け力も増大するため、上記の中間ワークW1や副コレット12の位置ずれを回避することができる。もちろん、把持面12bに位置決め係止部12sを設けず、中間ワークW1が軸線方向の基端側へ位置ずれを起こす虞がある場合においても、当該位置ずれを抑制することができる。
図1〜図3に示すコレットチャック10を用いた場合には、主側傾斜面11cの溝11q1,11q2により、把持状態では、当該溝によって形成される角部が対向する副側傾斜面12cに対して喰い付くため、主コレット11に対する副コレット12の軸線方向の位置ずれはさらに生じにくくなる。これは、上記溝を副側傾斜面12cに設ける場合も同様である。
最後に、上述のノックアウトピン25などを用いて、背面加工の終了した製品ワークW2をチャック20から排出する。この製品ワークW2の例としては、図6(f)に示すように、歯科用インプラントを構成するものが挙げられる。この製品ワークW2は、軸線方向にテーパ状に構成された外周包絡形状を有し、外周面にタッピングスクリュー等を構成する外周ねじ構造Wsが形成されている。また、軸線方向の基端には、凸曲面状の小径端Wpを備えている。これらの外周包絡形状、外周ねじ構造Ws及び小径端Wpは、上記主面加工によって形成される。また、製品ワークW2の軸線方向の長さは、上記の主軸2から背面主軸32への受け渡し時の切断加工によって決まる。この切断加工を、背面主軸32のチャック装置20に把持された状態で、当該チャック装置20の副コレット12を基準に行うことにより、上記軸線方向の長さを高精度化することができるとともに、背面加工により形成される形状(軸穴Wi)との整合性を高めることができる。さらに、製品ワークW2には、軸線方向の先端側の開口端に開口する軸穴Wiが形成されている。この軸穴Wiは、上記背面加工によって形成される。
[第2実施形態]次に、図8を参照して、上記コレットチャック10とは異なる別の第2実施形態について説明する。図8に示すコレットチャック10′は、基本的に上記第1実施形態と同様の主コレット11′、軸線方向ばね13′、ばね受け14′を有するが、主コレット11′の内部に配置される副コレット12′等の構成が異なる。本実施形態の副コレット12′は、主コレット11′の軸線方向の先端側に設けられた主側傾斜面11c′と密接する副側傾斜面12c′を備える点は上記と同様であるが、副コレット12′の軸線方向の先端側には、上記の把持面12bに相当する部分として、外周側から内周側へ突出する係合把持部12b′が形成されている。この係合把持部12b′は、副コレット12′の軸線方向の基端側の内周面よりも内周側へ突出している。これは、図示のように外周側へ向けて突出した大きな外径を有する大径部Ws′が軸線方向の基端側に形成された形状のワークW′を把持できるように、いわゆる飛越し把握を可能にするためである。すなわち、この副コレット12′では、ワークW′が係合把持部12b′の内周側に挿入されたとき、上記係合把持部12b′が大径部Ws′を越えて軸線方向の先端側にあるワークW′の部分を把持できるようになっている。
また、本実施形態では、副コレット12′の上記係合把持部12b′よりも軸線方向の基端側に、係止部材12t′が取付固定されている。この係止部材12t′は、図示例では、副コレット12′の基端部に対してねじ止め等により固定される。係止部材12t′の軸線方向の先端には、ワークW′に当接し、軸線方向の位置決めを行う位置決め係止部12s′が形成されている。この位置決め係止部12s′は、ワークW′の上記大径部Ws′を収容可能とするために、上記係合把持部12b′に対して軸線方向の基端側に離間した位置に配置される。
主コレット11′の内部には、軸線方向の基端側において筒状の案内部材11d′が取り付けられている。この案内部材11d′の内部には、上記副コレット12′の基端部の外周面に設けられた被案内面12d′が軸線方向に摺動可能に案内される。また、副コレット12′は、案内部材11d′の内部に収容され、主コレット11′の軸線方向の基端に取り付けられたばね受け14′に支持された軸線方向ばね13′により、軸線方向の先端側に付勢されている。副コレット12′の基端部には位置決めピン12e′が取り付けられ、この位置決めピン12e′は上記案内部材11d′に設けられた位置決め孔11e′に挿入されている。図8(b)に示すコレットチャック10′の解放状態では、位置決めピン12e′が位置決め孔11e′の軸線方向の先端縁に当接することにより、副コレット12′が主コレット11′に対して軸線方向の先端側に位置決めされ、抜け止めされた状態となっている。
図8(b)に示す上記解放状態のコレットチャック10′にワークW′を挿入し、ワークW′が位置決め係止部12s′に当接した状態でワークW′をさらに押し込むと、図8(c)に示すように軸線方向ばね13′が押し縮められながら副コレット12′が軸線方向の基端側へ移動する。このとき、副コレット12′の副側傾斜面12c′が主コレット11′の主側傾斜面11c′に案内されることにより、副コレット12′は縮径し、上記係合把持部12b′は、ワークW′の大径部Ws′よりも軸線方向の先端側にある外形の小さな被把持部分の外面に近づく。また、ワークW′の押し込みにより、上記位置決めピン12e′は位置決め孔11e′の軸線方向の基端縁に当接し、位置決めされた状態となる。その後、第1実施形態と同様の図示しない作用部材により主コレット11′の被加圧面11b′が加圧されると、主コレット11′が縮径し、主側傾斜面11c′が副側傾斜面12c′を締め付けるので、図8(d)に示すように副コレット12′の係合把持部12b′がワークW′を把持する。
本実施形態では、図8(d)に示す把持状態において、ワークW′に対して軸線方向の基端側へ向かう加工力や衝撃が加えられたとき、副コレット12′が主コレット11′に対して軸線方向の基端側へ移動しようとしても、主側傾斜面11c′と副側傾斜面12c′の逆テーパ状の嵌合構造により、把持力が増大するため、ワークW′の軸線方向の位置ずれを防止することができ、当該位置ずれによるワークW′の損傷も回避できる。図示例では、把持状態において、位置決め孔11e′の軸線方向の基端縁に位置決めピン12e′が当接して副コレット12′が主コレット11′に対して軸線方向に位置決めされた状態となっているが、上記加工力や衝撃が加わったときには副コレット12′に軸線方向の移動がほとんど生じなくても把持力は一時的に増大し得る。ただし、把持状態においても副コレット12′が主コレット11′に対して軸線方向の基端側へ移動可能となるように、上記位置決めピン12e′と位置決め孔11e′の軸線方向の基端縁との間に間隙があるように構成し、或いは、位置決め孔11e′が軸線方向の基端側に開口縁を有しない構成としてもよい。
[第3実施形態]図9は、さらに別のコレットチャックの第3実施形態を備えたチャック装置20″の解放状態(a)と把持状態(b)を示す縦断面図である。このコレットチャックは、ワークの内径を内側から把持する内径把持タイプのコレットチャックであり、上記第1実施形態のコレットチャック10とは内周側と外周側の関係が逆転した構造を有する。主コレット11″は、軸線周りに複数のすり割り11a″を備えた筒状(円筒状)に構成されており、内周に逆テーパ状及びテーパ状の被加圧面11b″を備えている。この被加圧面11b″は、軸線方向の先端側に形成された逆テーパ状(円錐台状)の先端側被加圧面部分と、軸線方向の基端側に形成されたテーパ状(円錐台状)の基端側被加圧面部分とによって構成され、後述する作用部材の加圧面21a″,22a″によってそれぞれ加圧されるようになっている。一方、主コレット11″の外周には、軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状(円錐台状)の主側傾斜面11c″が形成されている。なお、図示例のコレットチャックは、軸線方向の先端縁から形成され基端側へ伸びるすり割り11a″と、軸線方向の基端縁から形成され先端側へ伸びるすり割り11a″(図示せず)とが軸線周りに見て交互に形成された両割りコレット構造を有するが、軸線方向の先端縁から形成され基端側へ伸びるすり割りのみを有する片割りコレット構造を有するものであってもよい。
本実施形態のチャック装置20″では、上記主コレット11″を駆動するための作用部材として、軸線方向の基端側に斜めに向いた逆テーパ状(円錐台状)の加圧面21a″を備えるとともに、軸線方向の基端側へ伸びる摺動軸部21b″を有する第1作用部材21″と、この第1作用部材21″の摺動軸部21b″が軸線方向に移動可能に挿通される筒状(円筒状)の部材であって、軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状(円錐台状)の加圧面22a″を備えるとともに、軸線方向の基端側に同径の円筒面からなる案内面22b″を有する第2作用部材22″を備えている。ここで、第2作用部材22″は図示しない主軸に固定され、第1作用部材21″は図示しない駆動機構により軸線方向の位置を前後に変化させることができるようになっている。
本実施形態では、上記主コレット11″の外周側に筒状(円筒状)の副コレット12″が配置される。この副コレット12″は、軸線方向の先端縁から形成され基端側へ伸びる複数のすり割り12a″を軸線周りに有する。また、副コレット12″の内周には、上記主コレット11″の外周に設けられた主側傾斜面11c″に密接する副側傾斜面12c″が軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状(円錐台状)の面として形成されている。副コレット12″の軸線方向の基端側には、上記すり割り12a″が形成されない領域において筒状に伸びる基端部が形成され、当該基端部の内面は、図9(a)に示すように、上記第2作用部材22″の案内面22b″によって案内される被案内面12d″となっている。また、副コレット12″の上記基端部には、主コレット11″の軸線方向の基端に設けられた端面11e″に係合する段差面12e″が設けられ、端面11e″と段差面12e″との当接により、副コレット12″が主コレット11″に対して軸線方向の先端側に位置決めされ、抜け止めされる。また、副コレット12″は、軸線方向の基端側に配置された軸線方向ばね13″によって軸線方向の先端側へ付勢されている。
本実施形態において、副コレット12″の外周に設けられた把持面12b″は、ワークW″の内径部分の形状に合わせて形成される。図示例では、把持面12b″は単なる円筒面として描いてある。ただし、ワークW″の内周の形状に応じて、例えば、把持面12b″を軸線方向の先端側に斜めに向いたテーパ状(円錐台状)の面に形成してもよい。このようにすると、上記把持面12bを有する第1実施形態と同様の作用効果が得られる。把持面12b″の軸線方向の基端側には、把持面12b″より外周側に張り出した段差面として形成された位置決め係止部12s″が設けられる。この位置決め係止部12s″は、ワークW″を軸線方向の先端側から副コレット12″の外周側に装着したとき、ワークW″の端縁に当接し、ワークW″を軸線方向に位置決めする。
本実施形態においては、図9(a)に示す解放状態においてワークW″を軸線方向の先端側から副コレット12″の外周に装着する。このとき、必要に応じてワークW″を位置決め係止部12s″に当接させるが、その際に、副コレット12″を主コレット11″に対して軸線方向ばね13″を押し縮めて軸線方向の基端側へ移動させてもよい。その後、第1作用部材21″を第2作用部材22″に対して軸線方向の基端側へ移動させると、主コレット11″の被加圧面11b″が加圧面21a″及び22a″に加圧されるので、主コレット11″は拡径し、主コレット11″の主側傾斜面11c″が副側傾斜面12c″を押し広げることにより、副コレット12″も拡径する。これにより、図9(b)に示すように、副コレット12″の把持面12b″がワークW″の内径を内側から把持する。
本実施形態では、チャック装置20″の把持状態において、ワークW″に対して軸線方向の先端側から加工力や衝撃が加わったときには、副コレット12″が主コレット11″に対して軸線方向の基端側へ移動しようとするが、主側傾斜面11c″と副側傾斜面12c″のテーパ状の嵌合構造により、副コレット12″の把持面12b″のワークW″に対する把持力が増大するため、ワークW″や副コレット12″の軸線方向の位置ずれが防止され、当該位置ずれに起因するワークW″の損傷も抑制される。
なお、図9(b)に二点鎖線で示すように、主コレット11″において軸線方向の基端側に伸びる筒状の延長部を形成し、当該延長部の外周面を案内面11d″とし、この案内面11d″に沿って副コレット12″の被案内面12d″が軸線方向に案内されるように構成してもよい。このとき、上記延長部の基端面を主側段部11e″とし、この主側段部11e″が副コレット12″の副側段部12e″に当接することにより、副コレット12″が主コレット11″に対して軸線方向に位置決めされ、抜け止めされるようにしてもよい。
本発明のコレットチャック、チャック装置及び加工製品の製造方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、第1実施形態の図1〜図3に示す溝11q1,11q2の滑り止め構造や主側段部11eと副側段部12eの抜け止め構造を第2実施形態において用いてもよく、また、上記滑り止め構造を第3実施形態において対応する部分に用いてもよい。