JPWO2015146899A1 - リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム電池用負極およびリチウム二次電池 - Google Patents

リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム電池用負極およびリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

充電レート特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料を提供するため、表面に空孔が形成された低結晶性炭素材料、特にピッチコークスからなるリチウム二次電池用負極炭素材料であって、空孔の開口サイズが20nm以上1μm以下であるリチウム二次電池用負極炭素材料を用いる。空孔は、ピッチコークスを酸化雰囲気中で熱処理することで形成できる。

Description

本発明は、リチウム二次電池用負極炭素材料、リチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池に関するものである。
リチウム二次電池は、エネルギー密度が高く、自己放電が少なく長期信頼性に優れる等の利点により、ノート型パソコンや携帯電話などの小型電子機器用の電池として広く実用化されている。近年では電子機器の高機能化や電気自動車への利用が進み、より性能の高いリチウム二次電池の開発が求められている。
現在、リチウム二次電池の負極活物質としては、炭素材料が一般的であり、電池性能の向上のために種々な炭素材料が提案されている。
炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの高結晶性炭素、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)や難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)などの低結晶性炭素、及び非晶質炭素(アモルファスカーボン)が知られている。高結晶性炭素である黒鉛は、Liイオンとの反応性に優れ、理論容量値に近い容量が得られることが知られている。一方、高結晶性炭素は電解液の溶媒として多用されるプロピレンカーボネート(PC)と反応しやすいことで電解液の劣化による充電レート特性低下を引き起こす。低結晶性炭素及び非晶質炭素は、理論容量値こそ黒鉛の理論容量値よりも高いが、Liイオンとの反応性が低く、長時間の充電が必要となり、単位時間当たりの容量値は黒鉛より低い。一方、PCとの反応性は低く、電解液の劣化は少ない。そこで、黒鉛と非晶質炭素(低結晶性炭素を含む)とを組み合わせた複合炭素材料が提案されている。
例えば、特許文献1では、黒鉛粒子の表面に非晶質炭素を付着させた負極活物質が開示されている。同文献では、黒鉛粒子と非晶質炭素との密着性を改善するため、黒鉛粒子を酸化処理し、黒鉛粒子表面に酸素含有官能基を生成し、また、黒鉛粒子の表面を粗面化することが開示されている。例えば、特許文献1では、200℃〜700℃の温度での空気酸化、黒鉛粒子表面にアルカリを付着させた後に300℃〜700℃で熱処理する方法が開示されている。
特開平10−40914号公報
本発明者らの検討に依れば、黒鉛を空気酸化すると、初期容量が大きく低下するという問題があることが分かった。
また、炭素材料からなる負極は、Liイオンとの反応量が多くなると入力特性と寿命が低下する。特に黒鉛はその傾向は顕著であり、高レートでの容量は少ない。一方、ソフトカーボン、ハードカーボン等の低結晶性炭素材料の入力特性は黒鉛より高くなるが、初期容量が黒鉛より小さい。そこで、Liイオンとの反応量が多く、入力特性とサイクル寿命がより良好で安価な負極材料が求められている。
本発明の目的は、上述した課題を解決することにあり、すなわち入力特性とサイクル寿命との指標となる充電レート特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料、並びにこれを用いたリチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池を提供することにある。
本発明では、黒鉛に代えてピッチコークス等の低結晶性炭素を用い、これに酸化雰囲気下に熱処理することで表面に空孔を形成したものを負極材料として用いる。
すなわち、本発明の一態様によれば、表面に空孔が形成された低結晶性炭素材料からなるリチウム二次電池用負極炭素材料であって、空孔サイズが20nm〜1μmの範囲であるリチウム二次電池用負極炭素材料が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の負極炭素材料を含むリチウム二次電池用負極が提供される。
本発明の他の態様によれば、上記の負極を含むリチウム二次電池が提供される。
本発明の実施形態によれば、充電レート特性が改善されたリチウム二次電池が得られる負極炭素材料、並びにこれを用いたリチウム二次電池用負極およびリチウム二次電池を提供することができる。
熱処理前のピッチコークスの表面状態を示すSEM像であり、aは2000倍、bは1万倍での倍率で測定したものである。 酸化雰囲気下で熱処理後のピッチコークスの表面状態を示すSEM像である。 熱処理前後のピッチコークスのXRDデータである。 実施例4,比較例4,5の炭素材料を用いた二次電池のレート特性を示す図である。 実施例4と比較例4の炭素材料を用いた二次電池の充放電カーブである。
以下、本発明の実施形態例について詳細に説明する。
本発明の実施形態例によるリチウム二次電池用負極炭素材料は、低結晶性炭素材料、いわゆるソフトカーボンやハードカーボンと呼ばれる炭素材料からなり、表面に所定の空孔を有することで、通常の低結晶性炭素材料に比べてリチウム二次電池の充電レート特性を改善することができる。ここで、空孔は、溝状に形成されるものも含む。この空孔を有する低結晶性炭素材料は、結晶質の黒鉛類似構造(グラフェンの積層構造、以下、グラフェン層という)を含み、少なくとも表面側のグラフェン層にも複数の空孔が形成されていることが好ましく、表面から内部にかけて複数のグラフェン層に空孔が形成されていることがより好ましい。これらの空孔は、リチウムイオン(Liイオン)を通過させることができ、グラフェン層間内へのLiイオンの経路(Liパス)として機能することができる。通常の炭素材料では、Liイオンのグラフェン層間内へのLiパスはグラフェン層のエッジ面側からの経路にほぼ限られ、また、グラフェン層間内の奥(グラフェン層平面方向の中央)に至るまでの距離が長く、そのため、リチウムとの反応量が多くなると、充電レート特性が低下していた。本実施形態例による低結晶性炭素材料においては、エッジ面側からのLiパスに加えて、グラフェン層平面(ベーサル面)にLiパスとして機能する空孔を有するため、Liパスが増加し、またグラフェン層内の奥に至る経路が短くなる。その結果、リチウム二次電池の充電レート特性を向上することができる。
このような空孔は、表面側グラフェン層の内側のグラフェン層平面にも形成されていることが好ましく、少なくとも表層から内側に向かって空孔が形成されていることがより好ましい。低結晶性炭素材料を構成する全てのグラフェン層に空孔を形成することができる。また、複数のグラフェン層を貫通するように空孔を形成することもできる。このような空孔が形成されることにより、グラフェン層の積層方向(グラフェン層平面に垂直方向)の内部へ至るLi経路が形成され、充電レート特性をより向上することができる。内部のグラフェン層平面の空孔は、種々の方法で低結晶性炭素材料を切断して断面を出し、TEM、SEM等の電子顕微鏡で観測することができる。
これらの空孔の開口サイズは、リチウムイオンを通過させることができ、且つ空孔形成により炭素材料の特性を大きく劣化させない限り、特に制限はないが、20nm以上であることが好ましく、50nm以上がより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。また、炭素材料の特性を劣化させない点から、開口サイズは、1μm以下が好ましく、800nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。ここで、「開口サイズ」とは、開口の最大長さ(最大開口サイズ)を意味し、開口の輪郭を収容できる最小面積の円の直径に相当する。また、リチウムイオン通過の観点から、空孔開口の輪郭の内側に存在できる最大面積の円の直径に相当する開口サイズ(最小開口サイズ)も20nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましく、100nm以上がさらに好ましい。
このような開口サイズを有する空孔の数密度は、1〜50個/μmの範囲であることが好ましい。少なくとも表面層においてこの範囲の数密度の空孔が形成されていることが好ましい。空孔の数密度が低すぎると十分な充電レート特性向上効果が得られず、逆に空孔の数密度が高すぎると比表面積が大きくなりすぎて充放電時の副反応が生じやすくなり、充放電効率が低下する場合がある。この空孔の数密度は、低結晶性炭素材料表面の電子顕微鏡画像において、表面の1μm×1μmの領域を任意に10カ所選び、各領域内で開口サイズが20nm以上の空孔の個数をカウントし、10カ所における平均値(個数/μm)として求めることができる。本実施形態によれば、表層から内部へ空孔の数密度がほとんど変わらない低結晶性炭素材料を形成することができる。また、表層から内部へ複数のグラフェン層を貫通する空孔を形成することができ、グラフェン層であれば30層程度までに到達する空孔を形成することもできる。その際、表層から内側へ奥にいくほど、空孔の開口径は小さくなり、数密度も低下する傾向がある。
また、空孔は炭素材料表面全面にわたって形成されていることが好ましく、均一に分布していることがより好ましい。複数の空孔の間隔(隣り合う空孔の開口間の最小距離、平均値)は、100nm〜1μmの範囲にあることが好ましい。このように空孔が形成されていることにより、低結晶性炭素材料の特性による電池特性を損なうことなく、充電レート特性を向上することができる。この空孔間隔は、低結晶性炭素材料表面の電子顕微鏡画像において、表面の1μm×1μmの領域を任意に10カ所選び、各領域内で空孔の間隔を測定し、10カ所における平均値として求めることができる。
本実施形態例による低結晶性炭素材料に用いられる原料の低結晶性炭素としては、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)が好ましく、中でも、石油ピッチコークス、石炭ピッチコークス、メゾフェーズピッチコークスなどのピッチコークスを用いることがより好ましい。ピッチコークスは、軟ピッチをディレードコーカーに装入し、乾留(炭化)させたもので、更にロータリーキルンでか焼(かしょう)するとか焼ピッチコークス(calcined pitch coke)となる。さらにこれらピッチコークスを1500℃以上、特に2000〜3300℃で熱処理することで人造黒鉛が得られる。本発明では、人造黒鉛より安価に得られるピッチコークスを使用するものである。
このような低結晶性炭素表面に空孔を形成するため、本発明では、酸化雰囲気で加熱処理する。なお、酸化雰囲気下での熱処理は、低結晶性炭素の発火温度未満の温度で行う。発火してしまうと、炭素材料の燃焼により温度制御ができなくなり、所望の空孔を形成することが困難となる。低結晶性炭素の組成により発火温度は種々異なるが、通常、熱処理温度は常圧下では350〜800℃の範囲から選択できる。また、熱処理時間は30分から24時間程度の範囲である。酸化雰囲気としては、酸素、二酸化炭素、空気などが挙げられる。又、酸素濃度や圧力を適宜調整することもできる。
空孔の開口サイズ、数密度、分布は、熱処理温度、熱処理時間、酸化雰囲気等の熱処理条件によって制御することができる。
このように炭素材料表面に形成された空孔は、低結晶性炭素に固有の空隙(一次粒子間の空隙や、欠陥、エッジ近傍の空隙や割れ)とは異なる。空隙を有する通常の低結晶性炭素を負極に用いても、リチウム二次電池の充電レート特性は低い。また、低結晶性炭素の表面を荒らす処理(例えば低結晶性炭素をアルカリ溶液に浸漬した後に超音波を照射する処理)を行い、このような処理後の低結晶性炭素を負極に用いても、リチウム二次電池の充電レート特性は低い。また、活性炭の製造において行われる薬品賦活法やガス賦活法による賦活処理は、炭化処理によってできた空隙を拡大したり、閉孔部を開口したり、空隙内にさらに多くの細孔を付加したりするものであり、このような通常の賦活処理を低結晶性炭素に対して行っても、所望の充電レート特性を有するリチウム二次電池を得ることは困難である。特に、結晶性の高いグラフェン層が優先的に酸化され、非晶質構造部分はグラフェン層を保護する保護層の役割を果たす。これによって、互いに隔離された空孔が炭素材料表面に形成される。黒鉛を酸化した場合は、このような互いに隔離された空孔とはならず、連続した溝(チャネル)状となり、明らかに異なる。
本実施形態例によれば低結晶性炭素の構造を著しく劣化させることなく、表面層に空孔を形成することができるため、低結晶性炭素本来の特性による電池特性を大きく損なうことなく、リチウム二次電池の充電レート特性を改善することができる。
このように本実施形態例による空孔形成後の低結晶性炭素材料は、原料の低結晶性炭素に応じた構造や物性を有することができる。本実施形態による低結晶性炭素材料の(002)面の面間隔d002は0.350nm以下であることが好ましく、0.347nm以下であることがより好ましい。なお、面間隔d002は、一般的な黒鉛よりも大きく、通常、0.340nm以上である。この面間隔d002はX線回折法(X−Ray Diffraction:XRD)により求めることができる。
また、低結晶性炭素材料に含まれるグラフェン層は、黒鉛に比してそのサイズははるかに小さい。グラフェン層のサイズは、Diamond法により得られるベンゼン環を基本とした平均網目サイズ(六角網目の個数)で表されるが、本実施形態による低結晶性炭素材料は原料の低結晶性炭素材料よりも平均網目サイズが増加するという特徴を有する。本発明では平均網目サイズが60個以上であることが好ましい。
本実施形態例による低結晶性炭素材料は、充填効率や混合性、成形性等の点から、粒子状のものを用いることができる。粒子の形状としては、球状、楕円球状、鱗片状(フレーク状)が挙げられる。一般的な球状化処理を行ってもよい。
本実施形態例による低結晶性炭素材料の平均粒径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、入出力特性の観点や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、40μm以下が好ましく、35μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(メジアン径:D50)を意味する。
本実施形態例による低結晶性炭素材料のBET比表面積(窒素吸着法による77Kでの測定に基づく)は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、10m/g未満が好ましく、5m/g以下がより好ましい。一方、十分な入出力特性を得る点から、BET比表面積は、0.5m/g以上が好ましく、1m/g以上がより好ましい。
本実施形態例による低結晶性炭素材料は、対リチウム電位が0〜2Vにおける充放電において放電容量が240mAh/g以上であることが好ましく、また、充放電効率が75%以上であることが好ましい。なお、充放電効率は、室温において少なくとも初期の充放電において示される値を意味する。本実施形態による低結晶性炭素材料は、原料の低結晶性炭素材料よりも、リチウムパスの形成により放電容量が増加するという特徴を有する。
本実施形態例による低結晶性炭素材料は、その表面及び空孔内に、Liと合金化できる金属またはその酸化物を形成してもよい。この金属または金属酸化物は、リチウムと反応可能であり、リチウム二次電池の充放電において電気化学的に活性なものである。このような金属または金属酸化物としては、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In及びMgからなる群から選ばれる少なくとも一種の金属またはその酸化物を用いることができる。
このような金属または金属酸化物は、低結晶性炭素材料に形成された空孔周辺に形成されることが好ましい。
このような金属または金属酸化物を形成することにより、反応容量を増大することができる。特に、金属または金属酸化物が空孔周辺に形成されることにより、空孔周辺において、その他の部位と比べて金属または金属酸化物がグラフェン層と強く結合でき、可逆性に優れるLi反応サイトが増加し、反応容量を向上させることができる。
このような金属または金属酸化物の形成手法としては、CVD、スパッタ、電解めっき、無電解めっき、水熱合成法などが挙げられる。
本実施形態例による負極炭素材料における金属または金属酸化物の含有量は、低結晶性炭素材料に対して0.1〜30質量%が好ましい。この含有量が少なすぎると十分な含有効果が得られず、この含有量が多すぎると、金属または金属酸化物の充放電時の体積膨張収縮の影響が大きく、低結晶性炭素材料が劣化しやすくなる。
本実施形態例による低結晶性炭素材料は非晶質炭素で被覆することができる。これにより、非晶質炭素が低結晶性炭素材料と電解液との副反応を抑制でき、充放電効率が向上し、反応容量を増大することができる。また、前述のリチウム(Li)と合金化できる金属またはその酸化物が表面に形成された低結晶性炭素材料を非晶質炭素で被覆することもできる。これにより、電解液との副反応を抑えながら、反応容量をさらに増大することができる。なお、ここでいう非晶質炭素とは、完全に結晶性のない材料のみを意味するものでは無く、原料の低結晶性炭素材料よりも結晶化度(黒鉛化度)の低い材料を意味する。一般的には、アモルファスカーボンと呼ばれる結晶化度の極めて低い材料である。又、下記のような方法で形成できる材料である。
低結晶性炭素材料への非晶質炭素の被覆方法としては、水熱合成法、CVD、スパッタなどが挙げられる。
水熱合成法による非晶質炭素の被覆は、例えば次のようにして行うことができる。まず、空孔が形成された低結晶性炭素材料の粉末を炭素前駆体溶液に浸漬し、混合する。水熱反応装置で180℃3時間処理して、その後、真空ろ過を行って粉末を分離する。次に、分離された粉末を不活性雰囲気下で熱処理する。次いで、得られた粉末の凝集体を粉砕して所望の粒径に揃える。また、空孔を形成する前の低結晶性炭素材料に非晶質炭素を被覆し、その後、酸化雰囲気で熱処理して、非晶質炭素と低結晶炭素とに連続する空孔を形成することもできる。
炭素前駆体溶液としては種々の糖溶液を用いることができ、特にスクロース水溶液が好ましい。この水溶液のスクロース濃度は0.1〜6Mに設定でき、浸漬時間は1分〜24時間に設定できる。熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性雰囲気下で、400〜1200℃、0.5〜24時間行うことができる。
また、本発明の別の実施形態例によれば、ピッチコークスを酸化雰囲気下、350〜800℃の範囲から選択される温度で熱処理して得られるリチウム二次電池用負極炭素材料であって、(002)面の面間隔d002が0.340以上0.350nm以下、ラマン分光分析におけるグラファイト構造を反映したGピークに対して不規則性を反映したDピークの強度比(I/I比)が0.8未満、グラフェン積層構造の質量分率が66%以上であるリチウム二次電池用負極炭素材料が提供される。
ピッチコークスとしてはか焼ピッチコークスを使用することが好ましい。また、グラフェン積層構造の質量分率は70%以上が好ましい。
本実施形態例の負極炭素材料は、上記した実施形態例と同様の各種特性を有することが好ましく、上記した実施形態例と同様の非晶質炭素被覆処理等を行うことができる。
本実施形態例では、か焼ピッチコークスを使用した場合には必ずしも初期容量や初期効率が向上するものではないが、上記の実施形態例と同様に、Liパスが増加し、またグラフェン層内の奥に至る経路が短くなる結果、リチウム二次電池の充電レート特性を有利に向上することができる。
以上に説明した低結晶性炭素材料は、リチウムイオン二次電池の負極活物質に適用でき、この低結晶性炭素材料を負極活物質として用いることにより充電レート特性が改善されたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
リチウムイオン二次電池用の負極は、例えば、負極集電体上に、この低結晶性炭素材料からなる負極活物質と結着剤を含む負極活物質層を形成することで作製することができる。この負極活物質層は、一般的なスラリー塗布法で形成することができる。具体的には、負極活物質、結着剤および溶媒を含むスラリーを調製し、これを負極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加圧することで、負極を得ることができる。負極スラリーの塗布方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、ディップコーティング法が挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を集電体として形成して、負極を得ることもできる。
負極用の結着剤としては、特に制限されるものではないが、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴムが挙げられる。スラリー溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)や水を用いることができる。水を溶媒として用いる場合、さらに増粘剤として、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールを用いることができる。
この負極用の結着剤の含有量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、負極活物質100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲にあることが好ましく、0.5〜25質量部の範囲がより好ましく、1〜20質量部の範囲がさらに好ましい。
負極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性から、銅、ニッケル、ステンレス、モリブデン、タングステン、タンタルおよびこれらの2種以上を含む合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
本発明の実施形態によるリチウムイオン二次電池は、上記負極と正極と電解質を含む。
正極は、例えば、正極活物質、結着剤及び溶媒(さらに必要により導電補助材)を含むスラリーを調製し、これを正極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じて加圧することにより、正極集電体上に正極活物質層を形成することにより作製できる。
正極活物質としては、特に制限されるものではないが、例えば、リチウム複合酸化物やリン酸鉄リチウムなどを用いることができる。リチウム複合酸化物としては、マンガン酸リチウム(LiMn);コバルト酸リチウム(LiCoO);ニッケル酸リチウム(LiNiO);これらのリチウム化合物のマンガン、コバルト、ニッケルの部分の少なくとも一部をアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛など他の金属元素で置換したもの;マンガン酸リチウムのマンガンの一部を少なくともニッケルで置換したニッケル置換マンガン酸リチウム;ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を少なくともコバルトで置換したコバルト置換ニッケル酸リチウム;ニッケル置換マンガン酸リチウムのマンガンの一部を他の金属(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛の少なくとも一種)で置換したもの;コバルト置換ニッケル酸リチウムのニッケルの一部を他の金属元素(例えばアルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛の少なくとも一種)で置換したものが挙げられる。これらのリチウム複合酸化物は一種を単独で使用してもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。正極活物質の平均粒径については、電解液との反応性やレート特性等の観点から、例えば平均粒径が0.1〜50μmの範囲にある正極活物質を用いることができ、好ましくは平均粒径が1〜30μmの範囲にある正極活物質、より好ましくは平均粒径が5〜25μmの範囲にあるものを用いることができる。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒径(メジアン径:D50)を意味する。
正極用の結着剤としては、特に制限されるものではないが、負極用結着剤と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。正極用の結着剤の含有量は、トレードオフの関係にある結着力とエネルギー密度の観点から、正極活物質100質量部に対して1〜25質量部の範囲が好ましく、2〜20質量部の範囲がより好ましく、2〜10質量部の範囲がさらに好ましい。ポリフッ化ビニリデン(PVdF)以外の結着剤としては、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミドが挙げられる。スラリー溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いることができる。
正極集電体としては、特に制限されるものではないが、電気化学的な安定性の観点から、例えば、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼(SUS)、その他のバルブメタル、又はそれらの合金を用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。
正極の作製に際して、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
電解質としては、1種又は2種以上の非水溶媒に、リチウム塩を溶解させた非水系電解液を用いることができる。非水溶媒としては、特に制限されるものではないが、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)などの鎖状カーボネート;ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;γ−ブチロラクトンなどのγ−ラクトン;1,2−エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテルが挙げられる。その他、非水溶媒として、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ジオキソラン誘導体、空孔ムアミド、アセトアミド、ジメチル空孔ムアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を用いることもできる。
非水溶媒に溶解させるリチウム塩としては、特に制限されるものではないが、例えばLiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCFCO、Li(CFSO、LiN(CFSO、リチウムビスオキサラトボレートが挙げられる。これらのリチウム塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。また、非水系電解液の代わりにポリマー電解質を用いてもよい。
正極と負極との間にはセパレータを設けることができる。このセパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリイミド等からなる多孔性フィルムや織布、不織布を用いることができる。
電池形状としては、円筒形、角形、コイン型、ボタン型、ラミネート型が挙げられる。ラミネート型の場合、正極、セパレータ、負極および電解質を収容する外装体としてラミネートフィルムを用いることが好ましい。このラミネートフィルムは、樹脂基材と、金属箔層、熱融着層(シーラント)を含む。この樹脂基材としては、ポリエステルやナイロンが挙げられ、この金属箔層としては、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン箔が挙げられる。熱溶着層の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性高分子材料が挙げられる。また、樹脂基材層や金属箔層はそれぞれ1層に限定されるものではなく2層以上であってもよい。汎用性やコストの観点から、アルミニウムラミネートフィルムが好ましい。
正極と負極とこれらの間に配置されたセパレータは、ラミネートフィルム等からなる外装容器に収容され、電解液が注入され、封止される。複数の電極対が積層された電極群が収容された構造とすることもできる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
(実施例1)
平均粒径10μmのピッチコークスを空気中で480℃、1時間熱処理し、空孔のある炭素材料を得た。熱処理前のピッチコークスのSEM像を図1(aは2000倍、bは1万倍)に、熱処理後のSEM像を図2に示す。熱処理後のピッチコークスには、直径20nm〜1μmの空孔が形成されていることがわかる。また熱処理前後の炭素材料のXRDパターンを図3に示す。なお、図3において、空気酸化ピッチコークスについてはベースラインを引き上げて表示している。このXRDパターンから得られたグラフェン間の面間隔d002、グラフェンの平均積層数n、グラフェンの積層構造を形成する炭素原子の重量分率Ps、およびDiamond法により得られるベンゼン環を基本としたグラフェンの平均網目サイズを表1に示す。表1に示すように、熱処理によって面間隔、平均積層数、重量分率はほとんど変わらないが、平均網目サイズは増加していることがわかる。これは、非常に小さなグラフェンが熱処理により消失し、平均網目サイズが増加したものと考えられる。
Figure 2015146899
(実施例2)
熱処理温度を600℃にした以外は実施例1と同様にして、空孔のある炭素材料を得た。
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じピッチコークスで、熱処理しないものを用いた。
(比較例2)
実施例1で雰囲気を窒素とし、熱処理温度を800℃にした以外は実施例1と同様に熱処理したものを用いた。
これらの炭素材料と導電剤と結着剤(PVdF)を、黒鉛材:導電剤:結着剤=92:1:7の質量比率で混合し、NMPに分散させてスラリーを作製した。このスラリーを銅箔上に塗布し、乾燥、圧延した後、22×25mmに切り出して電極を得た。この電極を作用極とし、セパレータを挟んで対極のLi箔と組み合わせて積層体を得た。この積層体と電解液(1MのLiPFを含むECとDECの混合溶液、容量比EC/DEC=1/1)をアルミラミネート容器内に封入し、電池を作製した。
所定の電流値で、対極に対する作用極の電位が0Vまで充電(作用極にLiを挿入)し、1.5Vまで放電(作用極からLiを脱離)した。この充放電時の電流値は、作用極の放電容量を1時間で流す電流値を1Cとした。1サイクル目の充放電は0.1C定電流充電−0.025C定電流充電−0.1C放電とし、2サイクル目の充放電は0.1C定電流充電−0.1C放電とし、3サイクル目は1C定電流充電−0.1C放電とし、4サイクル目は10C定電流充電−0.1C放電とした。
充放電特性として、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)、初期効率(1サイクル目の放電容量/1サイクル目の充電容量)、1C/0.1C充電レート特性(3サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)、10C/0.1C充電レート特性(4サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)を求めた。結果を表2に示す。なお合わせて得られた炭素材料の酸化状態O/C比をCHN法で測定した結果を示す。
Figure 2015146899
表2から、ピッチコークスを空気中で熱処理した実施例1、2は、未熱処理の比較例1および窒素中で熱処理した比較例2に比べ、初期放電容量、初期効率、充電レート特性に優れることがわかった。
比較例3
フレーク状のピッチコークス(平均最大径15μm)を、比較例3の炭素材料とした。
実施例3
比較例3の炭素材料を、O:N=1:4(容量比)の雰囲気中500℃で1時間の熱処理を実施し、実施例3の炭素材料とした。
負極の塗布量を100g/mとした以外は上記と同様に電池を作製し、初期放電容量、初期効率、充電レート特性(1C/0.1C、4C/0.1C、6C/0.1C、10C/0.1C)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2015146899
フレーク状のピッチコークスについても、酸化雰囲気中で熱処理することで、初期放電容量、初期効率、充電レート特性に優れた炭素材料となることがわかった。
比較例4
フレーク状のか焼ピッチコークスを比較例4の炭素材料とした。このピッチコークスは原料炭を窒素雰囲気下で1000〜1500℃で熱処理したもので、この炭素材料は通常のピッチコークス(比較例1及び3相当)よりも相対的に高い結晶性を有している。
実施例4
比較例4の炭素材料を、O:N=1:4(容量比)の雰囲気中600℃で1.5時間の熱処理を実施し、実施例4の炭素材料とした。
比較例5
比較例4の炭素材料を、100%Nの雰囲気中600℃で1.5時間の熱処理を実施し、比較例5の炭素材料とした。
負極の塗布量を50g/mとした以外は上記と同様に電池を作製し、初期放電容量、初期効率を測定した。結果を表4に示す。また、各炭素材料をラマン分光分析により測定し、グラファイト構造を反映したGピークに対して不規則性を反映したDピークの強度比(I/I)を求めた。さらに、XRDパターンから各炭素材料のグラフェン間の面間隔d002及びグラフェン積層構造の質量分率Psを求めた。結果を表4にまとめて示す。
Figure 2015146899
また、各実施例の炭素材料を用いて得られた電池のレート特性(各炭素材料の充電レートに対する容量維持率)を図4に示す。図5に実施例4と比較例4の炭素材料を用いた電池の充放電カーブを示す。
比較例4と実施例4の結果から、高容量のソフトカーボンの空気酸化は初期容量、初期効率を低下させるものの、レート特性を大いに改善していることが分かる。これは、比較例4の炭素材料ではピッチコークスのナノ空洞に由来する余剰容量を有していたが、空気酸化によりこのようなナノ空洞が燃焼し容量の低下となったと考えられる。加熱処理自体はI/I比の減少として全体的な結晶性の増加を示しているが(実施例4及び比較例5)、酸化処理によりナノ空洞の減少した実施例4は、グラフェン積層構造の質量分率の上昇をももたらしている。窒素雰囲気下で同じように加熱処理を行った比較例5では、容量がさらに減少しているが、これは、グラフェン間の面間隔d002の増加による。空気酸化では面間隔d002は増加していない。また、図4に示したように、レート特性は比較例4と比較例5は殆ど変わらず、単に加熱処理してもレート特性は改善されない。このように、酸化雰囲気下での加熱処理により低結晶性炭素材料をレート特性に優れた負極活物質とすることができる。
以上、実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施例に限定されものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
この出願は、2014年3月26日に出願された日本出願特願2014−63286を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。

Claims (12)

  1. 表面に空孔が形成された低結晶性炭素材料からなるリチウム二次電池用負極炭素材料であって、前記空孔の開口サイズが20nm以上1μm以下であるリチウム二次電池用負極炭素材料。
  2. 前記空孔の数密度は、1〜50個/μmの範囲にある、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  3. Diamond法で測定した平均網面サイズが60個以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  4. 前記低結晶性炭素材料は、易黒鉛化性炭素である請求項1に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  5. 前記易黒鉛化性炭素は、ピッチコークスである、請求項4に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  6. 前記リチウム二次電池用負極炭素材料は、ピッチコークスを酸化雰囲気下で熱処理して形成された、請求項5に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  7. 前記低結晶性炭素材料の表面にリチウムと合金化できる金属またはその酸化物が形成された、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  8. 前記低結晶性炭素材料が非晶質炭素で被覆されている、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  9. ピッチコークスを酸化雰囲気下、350〜800℃の範囲から選択される温度で熱処理して得られるリチウム二次電池用負極炭素材料であって、(002)面の面間隔d002が0.340以上0.350nm以下、ラマン分光分析におけるグラファイト構造を反映したGピークに対して不規則性を反映したDピークの強度比(I/I比)が0.8未満、グラフェン積層構造の質量分率が66%以上であるリチウム二次電池用負極炭素材料。
  10. 前記ピッチコークスとしてか焼ピッチコークスを使用する請求項9に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極炭素材料を含むリチウム二次電池用負極。
  12. 請求項11に記載の負極を含むリチウム二次電池。
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