JPWO2015098474A1 - 米タンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤 - Google Patents

米タンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤 Download PDF

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Abstract

食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加により、高尿酸血症患者は年々増加している。尿酸産生抑制薬や尿酸排出促進剤等が実用化されているが、腎障害者における副作用への危惧や尿路結石などのリスクが問題となっている。尿酸値降下作用を有し、かつ日常的な摂取が可能な素材が望まれていた。米胚乳タンパク質にヒトの血清尿酸値を降下させる効果があることが見出された。米胚乳タンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤は米由来で高い安全性が期待され、日常的な摂取により血清尿酸値を低下させることができるから高尿酸血症や痛風の予防・治療に有効である。

Description

本発明は、精白米から抽出されたタンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤に関する。
尿酸は、ヒトにおいてプリン体の最終代謝産物であり、ATPの分解や食物中の核酸の代謝で産生され、最終的に尿中に排泄される。通常、尿酸の産生と排出は均衡しているが、産生量の増加や排出量の減少などの理由で均衡が崩れ血清尿酸値が7mg/dlを超えると高尿酸血症と定義され、この状態が続くと痛風の発作が起きるリスクが高いとされている。高尿酸血症はかつて日本では稀な病気であったが、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加といった要因によって患者数は年々増加し、現在の患者数は1000万人以上に達すると推定されている。高尿酸血症は痛風の原因となるだけではなく、痛風腎の原因となることや、心血管・脳血管障害のリスクを上げる可能性があることが指摘されている。高尿酸血症の治療は、痛風発作や合併症を伴わない患者においては食事療法・運動療法が中心となっている。しかし、高プリン食を避ける等の食事制限や運動を継続して行うことは容易なことではない。
また、これまでに、血清尿酸値を低下させる薬剤として、尿酸産生抑制薬のアロプリノールや、尿酸排出促進剤のベンズブロマロンなどが実用化されている。しかし、アロプリノールは腎障害を併発している例では副作用のおそれから投与に慎重を要し、尿酸排出促進薬には尿路結石などのリスクが指摘されている。したがって、血中尿酸値を降下させる作用を持ち、普段の食事に簡便にとりいれることができる食品素材があれば、痛風発作や高尿酸血症関連疾患に対する極めて有用な予防・治療法になり得る。
同様のニーズは、尿酸により誘導される単球走化性タンパク質−1による痛風発作、腎疾患、心血管障害および脳血管障害といった疾病についても存在する。
ところで、米胚乳に含まれるタンパク質の主要成分は、易消化性のグルテリン、グロブリン、アルブミンと、難消化性のプロラミンである。米胚乳から抽出されるタンパク質組成物を製造する方法としては、精白米や米粉に耐熱性アミラーゼを作用させ、残存するタンパク質を沈殿として回収する方法(酵素処理米タンパク質)と、精白米や米粉にアルカリ溶液を加えて抽出されるタンパク質を酸沈殿させ、これを回収する方法(アルカリ抽出米タンパク質)が公知である。栄養素としてのタンパク質利用効率は前者に比べて後者で有意に高く、タンパク質利用効率がカゼインに匹敵することが報告されている(非特許文献1)。
Kumagaiら、J Nutr Sci Vitaminol 第55巻、170−177頁(2009)
本発明の目的は、血中尿酸値降下作用を持ち、日常的に摂取することができる血清尿酸低下剤、食品および医薬品を提供することにある。
また、本発明の目的は、日常的に摂取することができる、単球走化性タンパク質−1を原因とする痛風発作、腎疾患、心血管障害および脳血管障害を抑制する疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、並びに高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤を提供することにもある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、アルカリ抽出米タンパク質にヒトの血清尿酸値を降下させる効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、米タンパク質の摂取が血中の高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−コレステロール)を上昇させ、炎症性ケモカインの1種である単球走化性タンパク質−1(Monocyte Chemoattractive Protein−1;MCP−1)の血中濃度を減少させることを見出した。
すなわち本発明は、米胚乳タンパク質を有効成分とする、血清尿酸低下剤であり、また尿酸により誘導される単球走化性タンパク質(MCP)−1の低下または、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−コレステロール)の上昇により誘導されるMCP−1の低下を介して、高尿酸血症に伴う痛風発作、痛風腎等の腎疾患、心血管・脳血管障害リスクの低下剤である。
さらに、本発明は上記の血清尿酸値降下作用を持つ血清尿酸低下剤並びにMCP−1の低下を介した、痛風発作、痛風腎等の腎疾患、心血管・脳血管障害リスクの低下剤を含む、医薬品または食品である。
好ましくは、米胚乳タンパク質は、米胚乳よりアルカリにて抽出後に酸で沈殿することで回収されるタンパク質を乾燥させたものである。
肥満、糖尿病、心血管障害、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜炎等の各種炎症の誘導にはMCP-1が関与することが知られている(Paneeら、Cytokine 第60巻、1−12頁(2012))。また血中のMCP−1レベルは尿酸値が正常な人と比べて高尿酸血症患者で高く、尿酸がMCP−1の産生を誘導していることも知られている(Kanellisら、Hypertension 第41巻、1287−1293頁(2003)、Graingerら、Rheumatology(Oxford) 第52巻、1018−1021頁(2013))。またHDL−コレステロールは尿酸により誘導されるMCP−1の産生を抑制することが報告されている(Acanuら、Arthritis Res Ther 第12巻、R23(2010))。
米タンパク質の摂取は単に血清尿酸値を低下させるのみならず、尿酸により誘導されるMCP−1の産生を直接的にまたはHDL−コレステロールの上昇を介して抑制し、痛風や痛風腎、心血管障害等のリスク低下に貢献する。
本発明の血清尿酸低下剤は米の食経験の豊富さから高い安全性が期待され、日常的に摂取することにより血清尿酸値を低下させることができるために、高尿酸血症や痛風の予防・治療に極めて有効である。
米タンパク質の摂取に伴う血中尿酸値の変化(血中尿酸値上位6名の層別解析)を示す図であり、*印は摂取前の値と比較して危険率5%で有意であることを示す。 米タンパク質の摂取に伴う血中尿酸値の変化(尿中尿酸/クレアチニン比上位7名の層別解析)を示す図であり、*及び**は摂取前の値と比較してそれぞれ危険率5%及び1%で有意であることを示す。
以下、米胚乳よりアルカリ抽出された米タンパク質を含む組成物を略して、「米胚乳タンパク質」と称する。タンパク質抽出に用いる米の品種はどのようなものであってもよい。米胚乳タンパク質は、精白米または米粉等の米胚乳部分を原料としてアルカリにより抽出することができる。精白米を用いる場合には、それをアルカリ溶液に浸漬することでタンパク質の一部が抽出される。浸漬した米を湿式磨砕等により粉砕すると、米の組織中に含まれるタンパク質も抽出されるため、回収率を高めることができる。米粉を用いる場合には、アルカリ溶液中に1時間〜1昼夜浸漬することでタンパク質が高効率で抽出される。
抽出に用いるアルカリの濃度は0.1%〜2%であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.25%である。抽出されるタンパク質溶液にはアルカリ可溶性の繊維質が多量に含まれていることから、これを目開きの細かい篩や濾布等を用いて除去することが好ましい。タンパク質溶液に塩酸等の酸を加えてpH5〜6に調整することにより、凝集するタンパク質を沈殿として回収することができる。タンパク質溶液をあらかじめ50℃程度に加熱した後に中和する場合にはpH7でもタンパク質の凝集体が得られ、またこれを80℃以上に加熱すると凝集体がさらに大きく成長することから、遠心分離を行わずとも篩やフィルタープレス等の濾過によりタンパク質の凝集体を効率良く回収することができる。回収されるタンパク質凝集体を適宜水洗し、これを気流乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥等を用いて乾燥することで、米胚乳タンパク質を得ることができる。中和時に加熱を行うことにより、膨潤したタンパク質凝集物が得られ、この凝集物を乾燥することにより、加熱しない場合に比べて保水性や舌触りに優れた米胚乳タンパク質が得られ、より広い用途に利用することができる。
本発明における米胚乳タンパク質は、それのみで血清尿酸値降下剤、疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、又は高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤として用いてもよいが、米胚乳タンパク質を有効成分として賦形剤や食品素材とともに加工して用いてもよい。米胚乳タンパク質組成物を配合した加工食品としては、飲料、焼き菓子、ゼリー状食品、スープ類、お粥等への利用が可能である。特に、賦形剤とともにチュアブル錠に用いる、焼き菓子に用いる、あるいはデンプン質のとろみをつけた飲料・スープに用いる場合が、米胚乳タンパク質を食感良く加工できるため好ましい。
本発明において、その用量は、患者の年齢・体重・症状・米胚乳タンパク質の加工形態などの要因を考慮して適宜決定されることが望ましい。好ましくは、1日あたり純タンパク質として0.5〜20g、さらに好ましくは3〜10gの摂取が良い。1日あたり純タンパク質として3〜10gを摂取し続けた場合、2週間〜6ヵ月程度で血清尿酸値降下効果が表れることが期待される。
本発明の血清尿酸値降下剤、疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、又は高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤を含有する食品、医薬品(特に高尿酸血症、痛風、痛風腎、心血管、脳血管障害の1以上の治療又は予防用医薬品)を調製する際、他の尿酸産生抑制効果を持つ成分や尿酸排出促進効果を持つ成分を併せて用いても、用いなくてもよい。併せて用いる成分や混合比に特に制限はないが、それぞれの成分の有効量に対して十分な量が望ましい。なお、医薬品の形態は特に限定されないが、経口投与可能な形態であることが好ましい。
<実施例1> 臨床試験用米胚乳タンパク質の調製と試験食製造
25kgのコシヒカリ米粉(新潟製粉株式会社より購入)を100Lの0.2%水酸化ナトリウム溶液に懸濁し、一夜放置した。コクサン社製遠心分離機「H−130I」に上記懸濁液を約5L/分の流速で給液した。回転数は1,400rpmとした。流出する遠心上清を集め、これを再度同一条件にて遠心分離を行うことにより澱粉粒が除去されたタンパク質抽出液を得た。この抽出液を285メッシュ(目開き53μm)の篩を通過させることにより繊維質を除去した。この液を50℃に加熱し、6N塩酸を添加してpHを7.0に調整した。この液を80℃で30分保温することによりタンパク質の凝集体を大きく成長させ、これを冷却した後に285メッシュの篩を用いて篩上としてタンパク質を回収した。タンパク質を約50Lの水に懸濁して同様の篩処理を行い、この操作を3回繰り返してタンパク質の水洗を行った。得られた湿タンパク質は絞り袋に入れて圧搾することにより水分を除去し、その後凍結乾燥した。同様の操作を10回反復し、約7.5kgの米胚乳タンパク質標品を得た。
<実施例2>
米胚乳タンパク質標品を用いて臨床試験用試験食を製造した(表1参照)。本試験食品1包には純タンパク質として5gの米胚乳タンパク質が含まれるよう、配合を決定した。
Figure 2015098474
倫理委員会の承認のもとでメタボリックシンドロームと診断された患者を対象に、米胚乳タンパク質を摂取させる臨床試験を実施した。臨床試験は4週間+4週間のクロスオーバー形式とした。被験者を2群に分け、米胚乳タンパク質配合の試験食または米胚乳タンパク質をカゼインに置き換えた対照試験食を摂取させた。前半4週間の試験終了後、3日間の中止期間をおき、その後試験食を入れ替えてさらに4週間試験を続行した。米胚乳タンパク質配合およびカゼイン配合の試験食それぞれの組成を表1に示す。試験食は11gずつ(米胚乳タンパク質純品としては5g)アルミ包材に充填し、これを1日2回水または湯に溶いて飲用させた。試験期間中は通常の食生活を継続するように指導し、試験食は通常摂取している食品に追加する形とした。
被験者は以下の基準に合致する者とした。
(I)選択基準
1)メタボリックシンドロームと診断された患者
2)趣旨を理解し(データ使用を含む)、文書同意が得られた者
(II)除外基準
1)心、腎、肝臓などに重篤な疾患のある者
2)重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある者
3)食物アレルギーを有する者
4)その他、担当医が医学的根拠から研究参画に不適切とした者
メタボリックシンドロームと診断された男性24名が被験者となり、12名ずつ2群に分け、試験を実施した。被験者のうち除外された6名を除く18名(各群9名ずつ)が試験を完遂し、解析の対象になった。試験開始時(ベースライン)における測定値を表2に示した。
Figure 2015098474
試験開始時、試験食摂取開始後4週目、8週目の合計3回、採血を行い血清尿酸値、脂質代謝マーカー、腎機能マーカーの値を調べた。表2に結果を記載した通り、クロスオーバー試験の前半期間(4週間)において、米胚乳タンパク質摂取群では血清尿酸値の低下傾向(−0.40mg/dL)が認められた。一方で、カゼイン摂取群では血清尿酸値がやや上昇(+0.17mg/dL)していた。初期値から4週間目の血清尿酸値の変化量を両群で比較すると、両側5%の水準で有意な差があった。本臨床試験に参加した被験者の血清尿酸値の平均は6.38mg/dLであり、高尿酸血症の基準値である7.0mg/dLを下回っている。それにもかかわらず血清尿酸値の低下傾向がみられたことから、米胚乳タンパク質は高尿酸血症に対して治癒的な効果だけでなく予防的な効果をも持つことが示唆された。
同様に、MCP−1について解析した結果、米タンパク質摂取群で若干の減少を示したのに対してカゼイン摂取群では有意な上昇が認められ、変化量の群間比較では両側5%水準で有意であった。逆にHDL−コレステロールは米タンパク質群で上昇傾向を示したのに対してカゼイン群で若干の低下を示し、変化量の群間比較では5%水準で有意となった。総コレステロールやLDL−コレステロール、中性脂肪の値には両群ともに顕著な変動は認められなかった。
Figure 2015098474
試験後半のデータを含めて解析したクロスオーバー解析の結果を表4に示した。前半と同様に米タンパク質摂取による尿酸の有意な低下、MCP−1レベルの低下、並びにHDL−コレステロールの有意な上昇が認められた。
Figure 2015098474
<実施例3>
倫理委員会の承認のもとで、維持透析患者9名(男性3名・女性6名)を対象に米胚乳タンパク質を摂取させる臨床試験を実施した。各被験者は、米胚乳タンパク質を含む試験食(実施例2)を2週間に亘り、1日1回水または湯に溶いて飲用した。試験期間中は通常の食生活を継続するように指導し、試験食は通常摂取している食品に追加する形で摂取させた。
被験者として、全身状態が安定した低栄養傾向のある成人の維持血液透析患者をリクルートした。選択基準は、血清アルブミン値が3.8mg/dl以下を示して低栄養傾向が認められ、かつ本臨床試験の趣旨を理解し文書による同意が得られた者(性別不問)であること、にした。心臓、肝臓等に重篤な疾患のある者、重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある者、食物アレルギーを有する者、その他、担当医が研究参画に不適切と判断した者は除外した。
試験開始時および米胚乳タンパク質摂取2週間目に採取した血液から、血清尿酸値を測定した。その結果を表5に示す。なお、2番の被験者は試験期間中の感冒により試験食を5日間摂取しなかったため、解析対象からは除外し、9名での解析を行った。摂取2週間目の血清尿酸値の平均値を開始時の数値と比較すると、8.00mg/dLから7.09mg/dLに低下しており、この差は両側5%の水準で有意であった。
実施例3と比較して、本例では米胚乳タンパク質の摂取量、摂取期間ともに少ないにもかかわらず、本例の方が尿酸値の低下量が平均0.91mg/dLと顕著な結果となった。これは、米胚乳タンパク質の尿酸値低下効果は、尿酸値が高い事例でより顕著にあらわれることを示唆するものである。また、本試験の被験者は維持透析患者であるため、尿による尿酸の排出が起こらない。したがって、米胚乳タンパク質の血清尿酸値低下効果には、尿酸の尿中への排出促進以外のメカニズムが働いていることが示唆された。
Figure 2015098474
<実施例4>
倫理委員会の承認のもとに、血清尿酸値が高め(6.0〜8.0mg/dL)の被験者男性8名に対して表6に示す組成のゼリー状試験食品を1日1回4週間摂取させた。試験食は毎日朝食後に摂取するものとし、試験期間中は日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、節食や過食を制限するよう指導した。また検査日の前日は、禁酒し、食事は夜10時までに終えて、以降は飲食しないように指導するとともに、 検査日の当日は、起床後は検査終了まで絶食とし(水を飲むことは可)、午前中に来院させて、前夜から8時間以上絶食したことを確認したうえで、検査を受けさせた。来院時に採血及び採尿を行い、血液学的検査、尿酸を含む血液生化学的検査、尿検査を行った。
表7に結果を示した通り、米胚乳タンパク質を毎日5g摂取することにより、尿酸値は平均で0.33mg/dL低下した。また尿酸値の低下は摂取前の尿酸値が高めの人ほど顕著であった。
Figure 2015098474
Figure 2015098474
<実施例5>
倫理委員会の承認のもとに、血清尿酸値が高め(7.0〜9.0mg/dL)の被験者男性13名に対して表8に示す組成の粉末状試験食品を1日1回8週間摂取させた。試験食は毎日朝食後に摂取するものとし、試験期間中は日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、節食や過食を制限するよう指導した。また検査日の前日は、禁酒し、食事は夜10時までに終えて、以降は飲食しないように指導するとともに、検査日の当日は、起床後は検査終了まで絶食とし(水をのむことは可)、午前中に来院させて、前夜から8時間以上絶食したことを確認したうえで、検査を受けさせた。来院時に採血及び採尿を行い、血液学的検査、尿酸を含む血液生化学的検査、尿検査を行った。
Figure 2015098474
表9に結果を示した通り、米胚乳タンパク質を毎日5g以上摂取することにより、尿酸値は4週目において平均で0.20mg/dL、8週目においては平均値で0.22mg/dL低下した。尿酸値の低下は摂取前の尿酸値が高めの人ほど顕著であり、また尿中尿酸値(クレアチニン補正値)が高い人ほど顕著であったため、層別解析を行った。その結果を図1及び図2に示した。血中尿酸値の上位6名での解析では摂取前と比較して4週目及び8週目の尿酸値が有意に低下しており、また尿中尿酸値の上位7名での解析でも4週目及び8週目の血中尿酸値が摂取前の値と比較して有意に低下していた。
Figure 2015098474
これらの解析結果より、米胚乳タンパク質は、毎日5g以上摂取することにより、血中尿酸値が高い人またはクレアチニン補正した尿中尿酸値が高い人の血中尿酸値を有意に低下させることがわかる。
【0005】
熱した後に中和する場合にはpH7でもタンパク質の凝集体が得られ、またこれを80℃以上に加熱すると凝集体がさらに大きく成長することから、遠心分離を行わずとも篩やフィルタープレス等の濾過によりタンパク質の凝集体を効率良く回収することができる。回収されるタンパク質凝集体を適宜水洗し、これを気流乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥等を用いて乾燥することで、米胚乳タンパク質を得ることができる。中和時に加熱を行うことにより、膨潤したタンパク質凝集物が得られ、この凝集物を乾燥することにより、加熱しない場合に比べて保水性や舌触りに優れた米胚乳タンパク質が得られ、より広い用途に利用することができる。
[0017]
[0018]
本発明において、その用量は、患者の年齢・体重・症状・米胚乳タンパク質の加工形態などの要因を考慮して適宜決定されることが望ましい。好ましくは、1日あたり純タンパク質として0.5〜20g、さらに好ましくは3〜10gの摂取が良い。1日あたり純タンパク質として3〜10gを摂取し続けた場合、2週間〜6ヵ月程度で血清尿酸値降下効果が表れることが期待される。
[0019]
本発明の血清尿酸値降下剤、疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、又は高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤を含有する食品、医薬品(特に高尿酸血症、痛風、痛風腎、心血管、脳血管障害の1以上の治療又は予防用医薬品)を調製する際、他の尿酸産生抑制効果を持つ成
本発明は、精白米から抽出されたタンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤に関する。
尿酸は、ヒトにおいてプリン体の最終代謝産物であり、ATPの分解や食物中の核酸の代謝で産生され、最終的に尿中に排泄される。通常、尿酸の産生と排出は均衡しているが、産生量の増加や排出量の減少などの理由で均衡が崩れ血清尿酸値が7mg/dlを超えると高尿酸血症と定義され、この状態が続くと痛風の発作が起きるリスクが高いとされている。高尿酸血症はかつて日本では稀な病気であったが、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加といった要因によって患者数は年々増加し、現在の患者数は1000万人以上に達すると推定されている。高尿酸血症は痛風の原因となるだけではなく、痛風腎の原因となることや、心血管・脳血管障害のリスクを上げる可能性があることが指摘されている。高尿酸血症の治療は、痛風発作や合併症を伴わない患者においては食事療法・運動療法が中心となっている。しかし、高プリン食を避ける等の食事制限や運動を継続して行うことは容易なことではない。
また、これまでに、血清尿酸値を低下させる薬剤として、尿酸産生抑制薬のアロプリノールや、尿酸排出促進剤のベンズブロマロンなどが実用化されている。しかし、アロプリノールは腎障害を併発している例では副作用のおそれから投与に慎重を要し、尿酸排出促進薬には尿路結石などのリスクが指摘されている。したがって、血中尿酸値を降下させる作用を持ち、普段の食事に簡便にとりいれることができる食品素材があれば、痛風発作や高尿酸血症関連疾患に対する極めて有用な予防・治療法になり得る。
同様のニーズは、尿酸により誘導される単球走化性タンパク質−1による痛風発作、腎疾患、心血管障害および脳血管障害といった疾病についても存在する。
ところで、米胚乳に含まれるタンパク質の主要成分は、易消化性のグルテリン、グロブリン、アルブミンと、難消化性のプロラミンである。米胚乳から抽出されるタンパク質組成物を製造する方法としては、精白米や米粉に耐熱性アミラーゼを作用させ、残存するタンパク質を沈殿として回収する方法(酵素処理米タンパク質)と、精白米や米粉にアルカリ溶液を加えて抽出されるタンパク質を酸沈殿させ、これを回収する方法(アルカリ抽出米タンパク質)が公知である。栄養素としてのタンパク質利用効率は前者に比べて後者で有意に高く、タンパク質利用効率がカゼインに匹敵することが報告されている(非特許文献1)。
Kumagaiら、J Nutr Sci Vitaminol 第55巻、170−177頁(2009)
本発明の目的は、血中尿酸値降下作用を持ち、日常的に摂取することができる血清尿酸低下剤、食品および医薬品を提供することにある。
また、本発明の目的は、日常的に摂取することができる、単球走化性タンパク質−1を原因とする痛風発作、腎疾患、心血管障害および脳血管障害を抑制する疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、並びに高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤を提供することにもある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、アルカリ抽出米タンパク質にヒトの血清尿酸値を降下させる効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。また、米タンパク質の摂取が血中の高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−コレステロール)を上昇させ、炎症性ケモカインの1種である単球走化性タンパク質−1(Monocyte Chemoattractive Protein−1;MCP−1)の血中濃度を減少させることを見出した。
すなわち本発明は、米胚乳タンパク質を有効成分とする、血清尿酸低下剤であり、また尿酸により誘導される単球走化性タンパク質(MCP)−1の低下または、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL−コレステロール)の上昇により誘導されるMCP−1の低下を介して、高尿酸血症に伴う痛風発作、痛風腎等の腎疾患、心血管・脳血管障害リスクの低下剤である。
さらに、本発明は上記の血清尿酸値降下作用を持つ血清尿酸低下剤並びにMCP−1の低下を介した、痛風発作、痛風腎等の腎疾患、心血管・脳血管障害リスクの低下剤を含む、医薬品または食品である。
好ましくは、米胚乳タンパク質は、米胚乳よりアルカリにて抽出後に酸で沈殿することで回収されるタンパク質を乾燥させたものである。
肥満、糖尿病、心血管障害、糖尿病性腎症や糖尿病性網膜炎等の各種炎症の誘導にはMCP−1が関与することが知られている(Paneeら、Cytokine 第60巻、1−12頁(2012))。また血中のMCP−1レベルは尿酸値が正常な人と比べて高尿酸血症患者で高く、尿酸がMCP−1の産生を誘導していることも知られている(Kanellisら、Hypertension 第41巻、1287−1293頁(2003)、Graingerら、Rheumatology(Oxford) 第52巻、1018−1021頁(2013))。またHDL−コレステロールは尿酸により誘導されるMCP−1の産生を抑制することが報告されている(Acanuら、Arthritis Res Ther 第12巻、R23(2010))。
米タンパク質の摂取は単に血清尿酸値を低下させるのみならず、尿酸により誘導されるMCP−1の産生を直接的にまたはHDL−コレステロールの上昇を介して抑制し、痛風や痛風腎、心血管障害等のリスク低下に貢献する。
本発明の血清尿酸低下剤は米の食経験の豊富さから高い安全性が期待され、日常的に摂取することにより血清尿酸値を低下させることができるために、高尿酸血症や痛風の予防・治療に極めて有効である。
米タンパク質の摂取に伴う血中尿酸値の変化(血中尿酸値上位6名の層別解析)を示す図であり、*印は摂取前の値と比較して危険率5%で有意であることを示す。 米タンパク質の摂取に伴う血中尿酸値の変化(尿中尿酸/クレアチニン比上位7名の層別解析)を示す図であり、*及び**は摂取前の値と比較してそれぞれ危険率5%及び1%で有意であることを示す。
以下、米胚乳よりアルカリ抽出された米タンパク質を含む組成物を略して、「米胚乳タンパク質」と称する。タンパク質抽出に用いる米の品種はどのようなものであってもよい。米胚乳タンパク質は、精白米または米粉等の米胚乳部分を原料としてアルカリにより抽出することができる。精白米を用いる場合には、それをアルカリ溶液に浸漬することでタンパク質の一部が抽出される。浸漬した米を湿式磨砕等により粉砕すると、米の組織中に含まれるタンパク質も抽出されるため、回収率を高めることができる。米粉を用いる場合には、アルカリ溶液中に1時間〜1昼夜浸漬することでタンパク質が高効率で抽出される。
抽出に用いるアルカリの濃度は0.1%〜2%であることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.25%である。抽出されるタンパク質溶液にはアルカリ可溶性の繊維質が多量に含まれていることから、これを目開きの細かい篩や濾布等を用いて除去することが好ましい。タンパク質溶液に塩酸等の酸を加えてpH5〜6に調整することにより、凝集するタンパク質を沈殿として回収することができる。タンパク質溶液をあらかじめ50℃程度に加熱した後に中和する場合にはpH7でもタンパク質の凝集体が得られ、またこれを80℃以上に加熱すると凝集体がさらに大きく成長することから、遠心分離を行わずとも篩やフィルタープレス等の濾過によりタンパク質の凝集体を効率良く回収することができる。回収されるタンパク質凝集体を適宜水洗し、これを気流乾燥、流動層乾燥、凍結乾燥等を用いて乾燥することで、米胚乳タンパク質を得ることができる。中和時に加熱を行うことにより、膨潤したタンパク質凝集物が得られ、この凝集物を乾燥することにより、加熱しない場合に比べて保水性や舌触りに優れた米胚乳タンパク質が得られ、より広い用途に利用することができる。
本発明における米胚乳タンパク質は、それのみで血清尿酸値降下剤、疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、又は高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤として用いてもよいが、米胚乳タンパク質を有効成分として賦形剤や食品素材とともに加工して用いてもよい。米胚乳タンパク質組成物を配合した加工食品としては、飲料、焼き菓子、ゼリー状食品、スープ類、お粥等への利用が可能である。特に、賦形剤とともにチュアブル錠に用いる、焼き菓子に用いる、あるいはデンプン質のとろみをつけた飲料・スープに用いる場合が、米胚乳タンパク質を食感良く加工できるため好ましい。
本発明において、その用量は、患者の年齢・体重・症状・米胚乳タンパク質の加工形態などの要因を考慮して適宜決定されることが望ましい。好ましくは、1日あたり純タンパク質として0.5〜20g、さらに好ましくは3〜10gの摂取が良い。1日あたり純タンパク質として3〜10gを摂取し続けた場合、2週間〜6ヵ月程度で血清尿酸値降下効果が表れることが期待される。
本発明の血清尿酸値降下剤、疾病リスク低減剤、単球走化性タンパク質−1発現低下剤、又は高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤を含有する食品、医薬品(特に高尿酸血症、痛風、痛風腎、心血管、脳血管障害の1以上の治療又は予防用医薬品)を調製する際、他の尿酸産生抑制効果を持つ成分や尿酸排出促進効果を持つ成分を併せて用いても、用いなくてもよい。併せて用いる成分や混合比に特に制限はないが、それぞれの成分の有効量に対して十分な量が望ましい。なお、医薬品の形態は特に限定されないが、経口投与可能な形態であることが好ましい。
<実施例1> 臨床試験用米胚乳タンパク質の調製と試験食製造
25kgのコシヒカリ米粉(新潟製粉株式会社より購入)を100Lの0.2%水酸化ナトリウム溶液に懸濁し、一夜放置した。コクサン社製遠心分離機「H−130I」に上記懸濁液を約5L/分の流速で給液した。回転数は1,400rpmとした。流出する遠心上清を集め、これを再度同一条件にて遠心分離を行うことにより澱粉粒が除去されたタンパク質抽出液を得た。この抽出液を285メッシュ(目開き53μm)の篩を通過させることにより繊維質を除去した。この液を50℃に加熱し、6N塩酸を添加してpHを7.0に調整した。この液を80℃で30分保温することによりタンパク質の凝集体を大きく成長させ、これを冷却した後に285メッシュの篩を用いて篩上としてタンパク質を回収した。タンパク質を約50Lの水に懸濁して同様の篩処理を行い、この操作を3回繰り返してタンパク質の水洗を行った。得られた湿タンパク質は絞り袋に入れて圧搾することにより水分を除去し、その後凍結乾燥した。同様の操作を10回反復し、約7.5kgの米胚乳タンパク質標品を得た。
<実施例2>
米胚乳タンパク質標品を用いて臨床試験用試験食を製造した(表1参照)。本試験食品1包には純タンパク質として5gの米胚乳タンパク質が含まれるよう、配合を決定した。
Figure 2015098474
倫理委員会の承認のもとでメタボリックシンドロームと診断された患者を対象に、米胚乳タンパク質を摂取させる臨床試験を実施した。臨床試験は4週間+4週間のクロスオーバー形式とした。被験者を2群に分け、米胚乳タンパク質配合の試験食または米胚乳タンパク質をカゼインに置き換えた対照試験食を摂取させた。前半4週間の試験終了後、3日間の中止期間をおき、その後試験食を入れ替えてさらに4週間試験を続行した。米胚乳タンパク質配合およびカゼイン配合の試験食それぞれの組成を表1に示す。試験食は11gずつ(米胚乳タンパク質純品としては5g)アルミ包材に充填し、これを1日2回水または湯に溶いて飲用させた。試験期間中は通常の食生活を継続するように指導し、試験食は通常摂取している食品に追加する形とした。
被験者は以下の基準に合致する者とした。
(I)選択基準
1)メタボリックシンドロームと診断された患者
2)趣旨を理解し(データ使用を含む)、文書同意が得られた者
(II)除外基準
1)心、腎、肝臓などに重篤な疾患のある者
2)重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある者
3)食物アレルギーを有する者
4)その他、担当医が医学的根拠から研究参画に不適切とした者
メタボリックシンドロームと診断された男性24名が被験者となり、12名ずつ2群に分け、試験を実施した。被験者のうち除外された6名を除く18名(各群9名ずつ)が試験を完遂し、解析の対象になった。試験開始時(ベースライン)における測定値を表2に示した。
Figure 2015098474
試験開始時、試験食摂取開始後4週目、8週目の合計3回、採血を行い血清尿酸値、脂質代謝マーカー、腎機能マーカーの値を調べた。表2に結果を記載した通り、クロスオーバー試験の前半期間(4週間)において、米胚乳タンパク質摂取群では血清尿酸値の低下傾向(−0.40mg/dL)が認められた。一方で、カゼイン摂取群では血清尿酸値がやや上昇(+0.17mg/dL)していた。初期値から4週間目の血清尿酸値の変化量を両群で比較すると、両側5%の水準で有意な差があった。本臨床試験に参加した被験者の血清尿酸値の平均は6.38mg/dLであり、高尿酸血症の基準値である7.0mg/dLを下回っている。それにもかかわらず血清尿酸値の低下傾向がみられたことから、米胚乳タンパク質は高尿酸血症に対して治癒的な効果だけでなく予防的な効果をも持つことが示唆された。
同様に、MCP−1について解析した結果、米タンパク質摂取群で若干の減少を示したのに対してカゼイン摂取群では有意な上昇が認められ、変化量の群間比較では両側5%水準で有意であった。逆にHDL−コレステロールは米タンパク質群で上昇傾向を示したのに対してカゼイン群で若干の低下を示し、変化量の群間比較では5%水準で有意となった。総コレステロールやLDL−コレステロール、中性脂肪の値には両群ともに顕著な変動は認められなかった。
Figure 2015098474
試験後半のデータを含めて解析したクロスオーバー解析の結果を表4に示した。前半と同様に米タンパク質摂取による尿酸の有意な低下、MCP−1レベルの低下、並びにHDL−コレステロールの有意な上昇が認められた。
Figure 2015098474
<実施例3>
倫理委員会の承認のもとで、維持透析患者9名(男性3名・女性6名)を対象に米胚乳タンパク質を摂取させる臨床試験を実施した。各被験者は、米胚乳タンパク質を含む試験食(実施例2)を2週間に亘り、1日1回水または湯に溶いて飲用した。試験期間中は通常の食生活を継続するように指導し、試験食は通常摂取している食品に追加する形で摂取させた。
被験者として、全身状態が安定した低栄養傾向のある成人の維持血液透析患者をリクルートした。選択基準は、血清アルブミン値が3.8mg/dl以下を示して低栄養傾向が認められ、かつ本臨床試験の趣旨を理解し文書による同意が得られた者(性別不問)であること、にした。心臓、肝臓等に重篤な疾患のある者、重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある者、食物アレルギーを有する者、その他、担当医が研究参画に不適切と判断した者は除外した。
試験開始時および米胚乳タンパク質摂取2週間目に採取した血液から、血清尿酸値を測定した。その結果を表5に示す。なお、2番の被験者は試験期間中の感冒により試験食を5日間摂取しなかったため、解析対象からは除外し、9名での解析を行った。摂取2週間目の血清尿酸値の平均値を開始時の数値と比較すると、8.00mg/dLから7.09mg/dLに低下しており、この差は両側5%の水準で有意であった。
実施例3と比較して、本例では米胚乳タンパク質の摂取量、摂取期間ともに少ないにもかかわらず、本例の方が尿酸値の低下量が平均0.91mg/dLと顕著な結果となった。これは、米胚乳タンパク質の尿酸値低下効果は、尿酸値が高い事例でより顕著にあらわれることを示唆するものである。また、本試験の被験者は維持透析患者であるため、尿による尿酸の排出が起こらない。したがって、米胚乳タンパク質の血清尿酸値低下効果には、尿酸の尿中への排出促進以外のメカニズムが働いていることが示唆された。
Figure 2015098474
<実施例4>
倫理委員会の承認のもとに、血清尿酸値が高め(6.0〜8.0mg/dL)の被験者男性8名に対して表6に示す組成のゼリー状試験食品を1日1回4週間摂取させた。試験食は毎日朝食後に摂取するものとし、試験期間中は日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、節食や過食を制限するよう指導した。また検査日の前日は、禁酒し、食事は夜10時までに終えて、以降は飲食しないように指導するとともに、 検査日の当日は、起床後は検査終了まで絶食とし(水を飲むことは可)、午前中に来院させて、前夜から8時間以上絶食したことを確認したうえで、検査を受けさせた。来院時に採血及び採尿を行い、血液学的検査、尿酸を含む血液生化学的検査、尿検査を行った。
表7に結果を示した通り、米胚乳タンパク質を毎日5g摂取することにより、尿酸値は平均で0.33mg/dL低下した。また尿酸値の低下は摂取前の尿酸値が高めの人ほど顕著であった。
Figure 2015098474
Figure 2015098474
<実施例5>
倫理委員会の承認のもとに、血清尿酸値が高め(7.0〜9.0mg/dL)の被験者男性13名に対して表8に示す組成の粉末状試験食品を1日1回8週間摂取させた。試験食は毎日朝食後に摂取するものとし、試験期間中は日常範囲を大きく逸脱する過度な運動、節食や過食を制限するよう指導した。また検査日の前日は、禁酒し、食事は夜10時までに終えて、以降は飲食しないように指導するとともに、検査日の当日は、起床後は検査終了まで絶食とし(水をのむことは可)、午前中に来院させて、前夜から8時間以上絶食したことを確認したうえで、検査を受けさせた。来院時に採血及び採尿を行い、血液学的検査、尿酸を含む血液生化学的検査、尿検査を行った。
Figure 2015098474
表9に結果を示した通り、米胚乳タンパク質を毎日5g以上摂取することにより、尿酸値は4週目において平均で0.20mg/dL、8週目においては平均値で0.22mg/dL低下した。尿酸値の低下は摂取前の尿酸値が高めの人ほど顕著であり、また尿中尿酸値(クレアチニン補正値)が高い人ほど顕著であったため、層別解析を行った。その結果を図1及び図2に示した。血中尿酸値の上位6名での解析では摂取前と比較して4週目及び8週目の尿酸値が有意に低下しており、また尿中尿酸値の上位7名での解析でも4週目及び8週目の血中尿酸値が摂取前の値と比較して有意に低下していた。
Figure 2015098474
これらの解析結果より、米胚乳タンパク質は、毎日5g以上摂取することにより、血中尿酸値が高い人またはクレアチニン補正した尿中尿酸値が高い人の血中尿酸値を有意に低下させることがわかる。

Claims (7)

  1. 米胚乳タンパク質を有効成分とする血清尿酸低下剤。
  2. 前記米胚乳タンパク質は、米胚乳よりアルカリで抽出後に酸で沈殿させたタンパク質を乾燥させたものである請求項1に記載の血清尿酸低下剤。
  3. 請求項1又は2に記載の血清尿酸低下剤を含む医薬品。
  4. 米胚乳タンパク質を有効成分とし、尿酸により誘導される単球走化性タンパク質−1の発現を低下させ、痛風発作、腎疾患、心血管障害および脳血管障害を抑制する疾病リスク低減剤。
  5. 尿酸により誘導される単球走化性タンパク質−1の発現低下が高密度リポタンパク質コレステロールの上昇に伴う作用である請求項4の疾病リスク低減剤。
  6. 米胚乳タンパク質を有効成分とする単球走化性タンパク質−1発現低下剤。
  7. 米胚乳タンパク質を有効成分とする高密度リポタンパク質コレステロール亢進剤。
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