JPWO2015068768A1 - 化学品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明による化学品の製造方法は、大豆および/または大豆加工物から化学品を製造する方法であって、大豆および/または大豆加工物と、含水極性有機溶媒とを混合した後、生成した沈殿物を固液分離して、極性有機溶媒を含む糖液を得る工程(1)と、得られた糖液から極性有機溶媒を除去して糖懸濁液を得る工程(2)と、糖懸濁液に、セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方を添加するか、またはセルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を添加し、化学品を含む発酵液を得る工程(3)と、発酵液を固液分離して、得られた化学品を精製する工程(4)と、を含むことを特徴とする。

Description

本発明は、大豆または大豆加工物から化学品を製造する方法に関する。
大豆または大豆原料由来抽出物(大豆由来原料)は、植物性タンパク質、油脂に加え、スクロース、ラフィノース、スタキオースなどの糖成分を含んでいる。こうした大豆由来の糖成分を発酵原料として使用し、エタノールやブタノールを生産する方法などが開示されている(非特許文献1、非特許文献2参照)。例えば、非特許文献1には、大豆由来の糖類として含まれるオリゴ糖のα−ガラクトシド結合を加水分解し、オリゴ糖を微生物が利用可能なグルコース、ガラクトースなどに変換することで、発酵産物の収率が改善されることが開示されている。
大豆または大豆原料由来抽出物には、ポリフェノールの1種であるイソフラボン、ステロイド、ステロイドアルカロイド・トリテルペンの1種であるサポニン、リン脂質の1種であるレシチンなどの単糖およびオリゴ糖以外の有機化合物が含まれることが知られている。大豆または大豆原料由来抽出物から、このような特定の成分を分離回収する方法が検討されている。大豆または大豆原料由来抽出物から特定の成分を分離回収する方法としては、例えば、大豆モラセスにアセトンを添加し、固液分離した液体側からサポニンを回収する方法(特許文献1参照)や、限外濾過膜を使用してイソフラボンを分離回収する方法(特許文献2参照)などが開示されている。
また、大豆や大豆原料由来抽出物以外にも、発酵原料となる糖としては、さとうきび、澱粉、テンサイなどの食用原料に由来するものや、再生可能な非食用資源である、セルロース系バイオマスを原料として糖液を製造する方法が知られている。セルロース系バイオマスからエタノールを生産する方法として、例えば、セルラーゼと微生物を添加し、セルロースの加水分解と生成した糖を微生物により同時変換する方法(特許文献3参照)や、セルラーゼを発現させた微生物を利用する方法(特許文献4参照)などが開示されている。
特開2008−517875号公報 特許第3919871号公報 特開2012−235729号公報 特開2012−65604号公報
Int J Agric & Biol Eng,2013,Mar;6(1),62−68 Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology,2001;26(5):290−295
ここで、大豆由来原料から得られる糖液には、懸濁物質が含まれている。懸濁物質は、通常の遠心分離や分離膜を用いた膜処理などの一般的な固液分離方法では、分離困難であった。そのため、大豆由来原料から製造された糖を発酵原料として微生物により化学品の生産を行うにあたり、発酵培地からの化学品の分離精製、特に発酵後の固液分離の精度を向上させるため、懸濁物質をほとんど含まない発酵液が求められている。
本発明は、かかる状況に鑑み、大豆由来原料から高純度に精製された化学品を得ることができる化学品の製造方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明者らは、化学品の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、大豆原料由来の糖液に含まれる懸濁物質を除去しつつ化学品を生産することにより、高純度に精製された化学品を得ることができることを発見した。この得られた知見に基づいて、大豆原料由来の糖液に特定の微生物を混合して、セルラーゼにより大豆原料由来の糖液に含まれる、懸濁物質が凝集して生じる固形物を除去すると共に、微生物の作用により、化学品を生産することで、高純度に精製された化学品を製造することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明による化学品の製造方法は、大豆および/または大豆加工物から化学品を製造する方法であって、前記大豆および/または大豆加工物と、極性有機溶媒および水を含む含水極性有機溶媒とを混合した後、生成した沈殿物を固液分離して、前記極性有機溶媒を含む糖液を得る工程(1)と、前記工程(1)で得られた前記糖液から前記極性有機溶媒を除去して糖懸濁液を得る工程(2)と、前記工程(2)で得られた前記糖懸濁液に、セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方、またはセルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を混合し、化学品を含む発酵液を得る工程(3)と、前記工程(3)で得られた前記発酵液を固液分離して、得られた化学品を精製する工程(4)と、を含むことを特徴とする。
本発明においては、前記セルラーゼが、β−グルコシダーゼおよび/またはβ−ガラクトシダーゼであることが好ましい。
本発明においては、前記工程(2)において、前記糖液を、加熱および/または減圧して前記極性有機溶媒を除去することが好ましい。
本発明においては、前記工程(4)において、前記発酵液のpHを、0.5〜3.5の範囲に調製することが好ましい。
本発明においては、前記化学品を生産する能力を有する微生物が、細菌、酵母、糸状菌、および子嚢菌からなる群から選択されるいずれか1以上であることが好ましい。
本発明においては、前記セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物が、大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌および酵母からなる群から選択されるいずれか1以上であることが好ましい。
本発明においては、前記大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌および酵母からなる群から選択されるいずれか1以上が、セルラーゼ遺伝子を有するものであることが好ましい。
本発明においては、前記工程(3)において、前記化学品を生産する能力を有する微生物が、セルラーゼを細胞外に分泌することが好ましい。
本発明においては、前記極性有機溶媒として、エタノールを用いることが好ましい。
本発明においては、前記工程(1)において、前記大豆および/または大豆加工物と前記含水極性有機溶媒とを混合した際に、下記式(I)により算出される極性有機溶媒の濃度が、50〜90%(w/w)の範囲であることが好ましい。
極性有機溶媒の濃度=含水極性有機溶媒中の極性有機溶媒の質量/(大豆および/または大豆加工物に含まれる水分の質量+含水極性有機溶媒の全質量) ・・・(I)
本発明においては、前記工程(3)において得られる前記化学品が、アルコール、有機酸、またはアミノ酸であることが好ましい。
本発明によれば、工程(3)において、セルラーゼおよび微生物の作用により糖懸濁液に残留する懸濁物質の凝集沈殿を促進させると共に大豆由来糖を発酵させ、工程(4)において、糖懸濁液中の懸濁物質を固液分離して、糖懸濁液中から除去することにより、懸濁物質が凝集して生じる固形物をほとんど含まない発酵液を得ることができるため、大豆由来原料から高純度に精製された化学品を得ることができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
<化学品の製造方法>
本発明による化学品の製造方法の各工程について説明する。
なお、本明細書において、糖成分とは、水溶性の糖のことを指す。水溶性の糖成分としては、単糖とオリゴ糖との2種に分類される。特に、単糖とは、グルコース、ガラクトースなどの1分子からなる糖である。オリゴ糖とは、2〜10個の単糖がグリコシド結合によって結合した糖類のことをいう。また、大豆由来糖とは、大豆原料に含まれるオリゴ糖の総称であり、主にスクロース、ラフィノース、スタキオースなどを含んで構成されており、大豆オリゴ糖ともいう。また、大豆とは、生大豆のことであり、皮付きの大豆、皮を除去した大豆のどちらであってもよい。また、予め粉砕してもよい。大豆加工物は、前述した糖を含むものであればよく、例えば、大豆を水に浸漬したもの、大豆を熱水で抽出して得られる豆乳、大豆を熱水で抽出した際の固形残渣であるオカラ、豆乳から酸沈殿などによりタンパク質などを沈殿除去して得られる大豆ホエー、または大豆から溶媒抽出により脂質を抽出除去した残渣である脱脂大豆などが好ましく用いられる。
[工程(1):極性有機溶媒による大豆由来糖の回収]
工程(1)では、大豆および/または大豆加工物を、極性有機溶媒および水を含む含水極性有機溶媒に添加して、大豆および/または大豆加工物と、極性有機溶媒および水を含む含水極性有機溶媒とを混合する。これにより、大豆および/または大豆加工物のタンパク質を主成分とする沈殿物が含水極性有機溶媒に形成される。
含水極性有機溶媒とは、極性有機溶媒と水との混合液である。極性有機溶媒は、大豆中の糖類を溶解でき、かつ大部分のタンパク質が溶解しないものであれば好ましく使用できる。極性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、アセトニトリル、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、プロパンジオール、ブタンジオールなどが使用できる。大豆由来糖液を食品用途などへ使用するという観点から、極性有機溶媒としては、特にエタノールを用いることが好ましい。
大豆および/または大豆加工物と含水極性有機溶媒とを混合した際の、極性有機溶媒の濃度は、式(I):
極性有機溶媒の濃度=含水極性有機溶媒中の極性有機溶媒の質量/(大豆および/または大豆加工物に含まれた水分の質量+含水極性有機溶媒の全質量) ・・・(I)
により算出される。
上記式(I)により算出される、極性有機溶媒の濃度は、50〜90%(w/w)の範囲であることが好ましい。極性有機溶媒の濃度が90%(w/w)以下の場合には、大豆由来糖が析出して沈殿することを抑制でき、極性有機溶媒の濃度が50%(w/w)以上の場合には、タンパク質を中心とする不純物の沈殿物が十分形成されるからである。
含水極性有機溶媒の添加量は、後述の含水極性有機溶媒を含む糖液(以下、「極性有機溶媒含有糖液」ともいう)中の糖濃度が1〜30%(w/w)の範囲となる添加量であることが好ましく、10〜25%(w/w)の範囲となる添加量であることがより好ましい。極性有機溶媒含有糖液中の糖濃度が、1%(w/w)以上の場合には、後段において大豆由来糖を濃縮するためのエネルギーまたはコストを抑制できる。また、有機溶媒含有糖液中の糖濃度が、30%(w/w)以下の場合には、大豆由来糖が析出して沈殿することを抑制でき、大豆由来糖の収率が損なわれることを抑制することができる。なお、糖濃度は、従来より公知の装置を用いて測定することができ、例えば、高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography:HPLC)を用いて標品との比較により定量し、求めることができる。
また、本明細書において、糖濃度とは、特に断りのない限り、スクロース、ラフィノース、およびスタキオースを含む大豆由来糖濃度の和をいう。
大豆および/または大豆加工物と含水極性有機溶媒との混合時間は、1分〜10時間が好ましく、10分〜3時間であることがより好ましい。混合時間が1分以上であれば、大豆由来糖の抽出が十分であり、混合時間が10時間以下の場合には、大豆由来糖の抽出量がそれ以上増大することはなく、十分な時間であるからである。
大豆および/または大豆加工物と含水極性有機溶媒との混合時の温度は、10℃〜90℃が好ましく、20℃〜40℃がより好ましい。混合時の温度が10℃以上の場合には、大豆由来糖が極性有機溶媒中に析出することを抑制できる。また、混合時の温度が、90℃以下の場合には、大豆由来糖の変性が起きることを抑制することができる。また、混合時の温度が90℃以下の場合には、メイラード反応により褐変を生じる可能性を低くすることができる。
次に、大豆および/または大豆加工物と含水極性有機溶媒とを混合した後、大豆由来糖が溶解した極性有機溶媒と、含水極性有機溶媒中に形成された沈殿物とを固液分離し、沈殿物を除去する。
固液分離の方法は、従来より公知の一般の固液分離の方法を使用することができる。固液分離の方法として、例えば、遠心分離、フィルタープレス、ベルトフィルター、自然沈降による分離、メッシュスクリーンによる濾過、不織布による濾過、濾紙による濾過などが挙げられる。極性有機溶媒と沈殿物との固液分離方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。中でも、懸濁物質が凝集して生じる粒子状の固形物などを効率よく除去でき、かつ除去した固形物を圧搾することにより、より多くの糖液を回収することができるという観点から、フィルタープレスを用いることが最も好ましい。
固液分離の方法を用いて、大豆由来糖を含む含水極性有機溶媒から沈殿物を除去した後、含水極性有機溶媒を含む糖液(以下、「極性有機溶媒含有糖液」ともいう。)を回収する。極性有機溶媒含有糖液としては、例えば、大豆由来糖およびその他不純物を含む含水極性有機溶媒の上清を、好適に用いることができる。
[工程(2):極性有機溶媒の蒸発除去]
工程(2)では、上記工程(1)で得られた糖液から極性有機溶媒を除去して、糖懸濁液を得る。
極性有機溶媒含有糖液から極性有機溶媒を除去する方法としては、有機溶媒含有糖液を加熱および/または減圧して、極性有機溶媒を蒸発させて除去する方法が好適に用いられる。極性有機溶媒を蒸発させて除去する方法に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、例えば、エバポレーター、加熱缶、効用缶、多重効用缶などを用いることができる。
極性有機溶媒を蒸発させる場合の温度は、10〜60℃が好ましい。温度が10℃以上であれば、極性有機溶媒の蒸発量は十分であり、温度が60℃以下であれば、メイラード反応による褐変を引き起こす可能性を低くすることができる。
糖懸濁液に残留する極性有機溶媒の濃度は、後述の工程(3)において、酵素であるセルラーゼの反応を阻害しないか、または失活させない濃度であればよく、例えば、10%(vol/vol)以下が好ましく、1%(vol/vol)未満であることがより好ましい。
本工程において、蒸発により、極性有機溶媒を極性有機溶媒含有糖液から除去した場合、蒸発した極性有機溶媒は、冷却トラップなどにより回収し、再び工程(1)の極性有機溶媒として再利用することができる。
本工程で得られる糖懸濁液は、大豆ホエーなどと比較してタンパク質や脂質が低減されており、大豆由来糖の粗精製液といえる。しかし、糖懸濁液は、大豆由来の糖純度が低く、分離困難な懸濁物質を含んでいる。そのため、膜濾過などを用いて糖懸濁液を精製する方法や濃縮する方法を適用することは困難である。そこで、本発明では、下記工程(3)および工程(4)において、糖懸濁液を、この状態のまま、懸濁物質を沈殿させ除去しつつ、発酵利用して化学品を生産する。
なお、本発明において、糖純度とは、下記式(1)の通り、糖の質量の合計値(g)を、水溶液中の全固形物(以下、TSともいう。)の質量(g)によって除した値とする。なお、全固形物は、蒸発残留物に相当するものである。
糖純度(%)=糖の質量の合計値(g)/全固形物のTS質量(g) ・・・(1)
[工程(3):糖懸濁液の発酵]
工程(3)では、工程(2)で得られた糖懸濁液に、セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方、またはセルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を添加して、糖懸濁液と混合する。糖懸濁液中の不純物にセルラーゼを作用させることにより、糖懸濁液に残留する懸濁物質の凝集沈殿を促進させつつ、化学品を発酵生産させ、化学品を含む発酵液を得る。
上述の工程(2)で得られた糖懸濁液には、大豆由来糖の他に様々な不純物が含まれる。不純物としては、脂質が最も多く含まれ、次いで、サポニン、イソフラボン、レシチンなどの両親媒性物質が含まれる。また、糖懸濁液は、さらに微量のタンパク質を含んでいる。脂質、両親媒性物質、およびタンパク質などのこれら不純物が複合的に作用し、糖懸濁液中に非常に安定なミセル状の懸濁物質を形成しているため、これら不純物と大豆由来糖とを分離することは困難である。本発明においては、本工程において、糖懸濁液に、セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方を混合するか、またはセルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を混合し、糖懸濁液中の不純物にセルラーゼを作用させている。これにより、糖懸濁液に残留する懸濁物質の凝集沈殿を促進させつつ、大豆由来糖を発酵させて化学品を生産することができる。このため、糖懸濁液中の大豆由来糖と懸濁物質が凝集して生じる固形物との固液分離の性能を向上させつつ、大豆由来糖を発酵させ、生産した化学品を効率的に分離して回収することができる。これは、セルラーゼにより、不純物中のサポニンやイソフラボン中の糖鎖が分解され、両親媒性物質としての性質を失うことや、液体に溶解している糖が微生物に消費されて比重が下がり、固体成分と液体成分を分離しやすくなることなどによると考えられる。
なお、本発明において、セルラーゼとは、糖鎖中のβ−グルコシド結合の加水分解を触媒する酵素の総称であり、β−グルコシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ、およびエンドグルカナーゼからなる群から選択される1種または2種以上の成分が含まれる酵素また酵素剤のことをいう。
β−グルコシダーゼとは、セロビオースを加水分解する活性を有する酵素のことをいう。セロビオース分解活性(以下、「BGL活性」ともいう)は、セロビオースを基質として酵素を作用させた際に遊離してくるグルコースの量より測定することができる。BGL活性は、例えば、非特許文献1(Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ)に記載の“Cellobiase assay”の方法に従って測定することができる。具体的には、例えば、50℃、pH5.0の反応条件において活性測定を行い、酵素液1mLあたりのBGL活性(単位は、U/mL)などとして算出できる。なお、本発明においては、β−ガラクトシダーゼなど他の酵素に一般に分類される酵素であっても、その酵素が上記BGL活性を有する場合は、これをβ−グルコシダーゼの一種と見なすものとする。
また、本発明においては、BGL活性1単位(U)を、「セロビオース分解反応において、1分間に1μmolのセロビオースを分解する(または、1分間に2μmolのグルコースを生成する)酵素活性」と定義する。
セロビオハイドロラーゼとは、結晶性セルロースを末端から分解する活性を有する酵素のことをいう。結晶性セルロース分解活性は、結晶性セルロースを基質として酵素を作用させた際に遊離してくるグルコース量より測定することができる。結晶性セルロース分解活性の具体的な測定方法としては、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」の“FILTER PAPER ASSAY FOR SACCHARIFYING CELLULASE”に記載の方法などを使用できる。
エンドグルカナーゼとは、非結晶性セルロースを中心から切断する活性を有する酵素のことをいう。非結晶性セルロース分解活性は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を基質として酵素を作用させた際に遊離してくる還元糖の量より測定することができる。非結晶性セルロース分解活性の具体的な測定方法としては、例えば、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」の“CARBOXYL CELLULASE ASSAY FOR ENDO−β−1,4−GLUCANASE”に記載の方法などを使用できる。
本発明において使用するセルラーゼ、または微生物から産生するセルラーゼは、使用量をタンパク質量が等しくなるように統一した場合、β−グルコシダーゼ比活性(BGL比活性)が高いものほど、懸濁物質の凝集沈殿の促進効果が高い。なお、BGL比活性とは、酵素剤に含まれるタンパク質量当たりのBGL活性のことである。本発明においては、BGL比活性は、ブラッドフォード法による測定キット(Quick Start Bradford Protein Assay、Bio−Rad社製)を使用して測定した酵素液中のタンパク質の濃度はタンパク質濃度の値であり、酵素液1mLあたりのBGL活性の測定値(U/mL)を除した値として算出する(単位は、U/mg)。
工程(1)および工程(2)で製造した糖懸濁液を発酵原料として用いるにあたって、そのまま使用することもできるが、必要に応じて窒素源や無機塩類などを添加してもよい。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば、油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトンなどのペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩などを適宜添加して使用することができる。また、本発明で使用される微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品またはそれを含有する天然物として添加する。また、消泡剤も必要に応じて使用してもよい。
(セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方を用いる場合)
本発明において使用される「化学品を生産する能力を有する微生物」は、後述のような目的とする化学品を効率的に生産可能な微生物であればよく、例えば、細菌、酵母、糸状菌、子嚢菌などの微生物を好適に使用することができる。細菌としては、例えば、大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌などが用いられる。これらの微生物を、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方を用いる場合、セルラーゼを酵素または酵素剤として、糖懸濁液に添加して用いることができる。または、β−グルコシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ、およびエンドグルカナーゼからなる群から選択される1種または2種以上の成分が含まれる酵素のうちいずれか1以上を産生する能力を有する微生物を添加してもよい。
本発明において使用されるセルラーゼは、トリコデルマ属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、フサリウム属、またはアクレモニウム属などから生産されるが、添加されるセルラーゼの由来は、特に限定されない。
添加されるセルラーゼは、精製酵素であっても、市販のセルラーゼ製剤であっても、セルラーゼ産生微生物の培養液であってもよい。
セルラーゼを添加するタイミングは、特に限定されず、発酵の前に添加してもよいし、発酵開始と同時に添加してもよいし、発酵途中で添加してもよいし、発酵後に添加してもよい。
セルラーゼの添加量は、特に限定されないが、一般に、セルラーゼ添加量を増やせば、セルラーゼのコストが増大するが、懸濁物質の凝集沈殿にかかる時間は短くなる。一方、セルラーゼの添加量を減らせば、セルラーゼのコストは低減できるが、必要な処理時間は長くなり、懸濁物質の凝集沈殿が十分に促進されるまでに要する時間が長くなる。そのため、セルラーゼの種類など状況に応じ、セルラーゼの添加のタイミングとその添加量を適宜調節することが好ましい。
また、本発明においては、工程(3)において、上記のような微生物を用いて、糖懸濁液の発酵と同時に、または発酵の前後に、糖懸濁液に、さらにエステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、インベルターゼなど多糖または大豆由来糖を加水分解する別の酵素をさらに添加して混合してもよい。大豆由来糖として含まれる、スクロース(2糖)、ラフィノース(3糖)、スタキオース(4糖)などを単糖まで加水分解することにより、微生物の糖利用効率を高めることができる。
糖懸濁液のpHは、特に限定されるものではなく、化学品の収量が最も高く、かつ懸濁物質の凝集沈殿が十分に形成されるpHを設定すればよい。すなわち、酵素と微生物の至適pHを参考に適宜設定すればよい。用いる微生物によるが、一般的な発酵条件では、pH3〜9の範囲に設定されることが多く、一般的に用いられるセルラーゼは至適pHが4〜6の範囲にあることが多いことから、pH調整は適宜必要な場合にのみ行うようにすればよい。
また、糖懸濁液の発酵中に中和剤を適宜添加して、pHを一定に保ってもよい。発酵が進むにつれて酸性になっていくか、アルカリ性になっていくか、さらに微生物の発酵能が低下しないか、などという観点から、用いる中和剤を適宜選択すればよいが、一般的に、酸性になる場合は、水酸化カルシウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウムなどが用いられる。アルカリ性になる場合は、塩酸、硫酸などが用いられる。
本工程における温度は、特に限定されるものではなく、基本的には、化学品の収量が最も高く、かつ懸濁物質の凝集沈殿が十分に形成されればよい。すなわち、酵素と微生物の至適温度を参考に適宜設定すればよい。微生物の至適温度は15〜40℃であることが多く、セルラーゼの至適温度は、由来によって様々であるが、例えば、市販セルラーゼ製剤の至摘温度は40〜60℃である場合が多い。
(セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を用いる場合)
セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物としては、β−グルコシダーゼ、セロビオハイドロラーゼ、エンドグルカナーゼのうちいずれか1以上のセルラーゼを元来産生し、かつ目的の化学品を生産する能力を有する微生物、元来セルラーゼを生産する微生物に、遺伝子組換え等により目的の化学品を発酵生産する能力を付与した微生物、元来セルラーゼを産生せず化学品を生産する能力を有する微生物に、遺伝子組換え等によりセルラーゼ産生能を付与した微生物、元来セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物に対して、さらに遺伝子組換えや変異導入等を行うことで、セルラーゼ産生能を強化した微生物などが挙げられる。本発明においては、上記のような微生物から適宜選択して使用することができる。
微生物のセルラーゼ産生能の有無は、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)、NCBI(National Center for Biotechnology Information)、BLENDA(BRaunschweig Enzyme DAtabase)などのデータベースを検索することによって、遺伝子を有するか否かを調べることによって判断できるが、データベースに情報がない場合は、微生物の培養液などを利用して上述のセルラーゼ活性測定を行うことによって判断できる。
上記のセルラーゼを元来生産し、かつ化学品を発酵生産する能力を有する微生物としては、乳酸菌などが用いられる。具体的には、例えば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属などが挙げられ、さらに具体的には、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)などが挙げられる。
また、上記の元来セルラーゼを産生しないが、化学品を生産する能力を有する微生物に、遺伝子組換えなどによりセルラーゼ遺伝子を導入し、発現させることでセルラーゼ産生能を付与することで、セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を作出できる。この調整方法として、例えば、特開2012−65604号公報に記載の方法などを用いることができる。
セルラーゼ遺伝子を導入できる微生物としては、例えば、大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌、および酵母などがある。本発明においては、セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物としては、大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌、および酵母からなる群から選択されるいずれか1以上を用いることができる。すなわち、セルラーゼ遺伝子を有する大腸菌、セルラーゼ遺伝子を有するコリネ菌、セルラーゼ遺伝子を有するザイモモナス菌、セルラーゼ遺伝子を有するザイモバクター菌、セルラーゼ遺伝子を有する乳酸菌、セルラーゼ遺伝子を有する酵母などが、セルラーゼ遺伝子が導入された微生物として用いることができる。
セルラーゼ遺伝子が導入されるための宿主として用いられる微生物として、具体的には、大腸菌、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ザイモモナス モビリス(Zymomonas mobilis)、ザイモバクター パルマエ(Zymobacter palmae)、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア スチピティス(Pichia stipitis)、キャンディダ シハタエ(Candida shehatae)、キャンディダ グラブラータ(Candida glabrata)などが挙げられる。
導入するセルラーゼ遺伝子としては、特に制限はなく、例えば、トリコデルマ(Trichoderma)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリウム(Penicillium)属、フサリウム(Fusarium)属、アクレモニウム(Acremonium)属、クロストリジウム(Clostridium)属、フミコラ(Fumicola)属、サッカロマイコプシス(Saccharomycopsis)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、パイロコッカス(Pyrococcus)属、サーモトーガ(Thermotoga)属、スルフォロバス(Sulfolobus)属、サーマス(Thermus)属、パエニバチルス(Paenibacillus)属、バチルス(Bacillus)属などに由来のセルラーゼ遺伝子を用いることができる。
セルラーゼ遺伝子は、KEGG、NCBI、GenBankなどのデータベースを検索することによって、塩基配列やアミノ酸配列を簡単に調べることができる。
目的のセルラーゼ遺伝子の塩基配列は、人工遺伝子合成による全合成、または、目的のセルラーゼ遺伝子を有する微生物のゲノムを鋳型としてPCR法により増幅する方法などを用いることで得ることができる。そして、この得られたセルラーゼ遺伝子を、元来セルラーゼを産生しない微生物に導入することにより、元来セルラーゼを産生しない微生物にセルラーゼ遺伝子を発現させることができる。セルラーゼ遺伝子の導入方法は、セルラーゼ遺伝子を搭載したプラスミドを保持させてもよいし、宿主の染色体上に導入してもよい。これにより、セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物が得られる。
また、目的のセルラーゼ遺伝子は、さらに、発現を制御するプロモーターや、その他の発現制御領域とともに導入してもよい。プロモーターは、微生物に応じて適切なプロモーターを選択すればよく、特に限定されないが、例えば、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、ピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子、3−ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子などのプロモーターが挙げられる。
さらに、前記セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物は、目的のセルラーゼを細胞外に分泌発現させてもよい。「分泌発現させる」とは、菌体内で合成したセルラーゼを培養液中に分泌させること、または菌体の細胞膜上に発現させて菌体外に露出(細胞表層に提示)させることである。
上記の菌体内で合成したセルラーゼを培養液中に分泌させる方法は、目的のセルラーゼ遺伝子に分泌発現シグナル配列を付加して発現させることによって可能となる。分泌シグナル配列は、微生物に応じて適切な分泌シグナルを選択すればよく、特に限定されないが、例えば、大腸菌であればpelBシグナル配列、酵母であればα因子シグナル配列などが挙げられる。
上記の細胞膜上に発現させて菌体外に露出させる方法は、目的のセルラーゼ遺伝子に細胞表層局在タンパク質やペリプラズム遊離型タンパク質の全部または一部を付加して発現させることによって可能となる。さらに具体的には、細胞表層局在タンパク質のGPIアンカーを介して細胞表層に提示させる方法、細胞表層局在タンパク質の糖鎖結合タンパク質ドメインを介して細胞表層に提示させる方法、ペリプラズム遊離型タンパク質を介して細胞表層に提示させる方法がある。細胞表層局在タンパク質は、微生物に応じて適切なタンパク質を選択すればよく、特に限定されないが、例えば、大腸菌であればポリ−γ−グルタミン酸生合成酵素など、酵母であればα−アグルニチンやFlo1タンパク質などが挙げられる。
目的のセルラーゼ遺伝子の微生物への導入は、発現ベクターを保持させることで行ってもよいし、ゲノム上に挿入または置換することによって行ってもよい。遺伝子の導入方法としては、形質転換方法として知られている従来より公知のいかなる手法をも適用することができ、微生物によって最も効率のよい方法を適宜選択すればよい。例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、スフェロプラスト法などがある。
また、微生物の糖利用効率を高めるため、セルラーゼと同時に、さらにエステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、インベルターゼなどを発現させてもよいし、本工程の前、または同時にこれらの酵素を添加して、大豆由来糖として含まれる、スクロース(2糖)、ラフィノース(3糖)、スタキオース(4糖)などを単糖まで加水分解してもよい。
本工程におけるpHは、特に限定されず、微生物の至適pHにより適宜設定すればよい。用いる微生物によるが、一般的な発酵条件では、pH3〜9の範囲に設定されることが多いが、化学品の収量が高くなるように、用いる微生物によってpHを設定することが好ましい。
また、発酵中に中和剤を適宜添加して、pHを一定に保ってもよい。発酵が進むにつれて酸性になっていくか、アルカリ性になっていくか、さらに微生物の発酵能が低下しないかなどという観点から用いる中和剤を適宜選択すればよい。一般的に、酸性になる場合は、水酸化カルシウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウムなどが用いられる。アルカリ性になる場合は、塩酸、硫酸などが用いられる。
本工程における温度は、特に限定されないが、使用する微生物の至適温度とすることが好ましい。微生物の至適温度は、15〜40℃であることが多いが、化学品の収量が高くなるように、用いる微生物によって温度を設定することが好ましい。
[工程(4):発酵液からの化学品の回収]
工程(4)では、上記工程(3)で得られた発酵液を固液分離して、工程(3)で発酵液中に懸濁物質を凝集して沈殿させた固形物を除去し、得られた化学品を精製している。得られた化学品は、発酵液中の懸濁物質の大部分が除去されていることから、本工程において、純度および清澄性の高い化学品を得ることができる。また、化学品としては、固液分離後の発酵液の上清が、タンパク質や脂質、サポニン、イソフラボンなど、微生物の増殖や代謝を阻害する物質など懸濁物質の大部分が除去されていることから、好適に用いることができる。
固液分離の方法は、特に限定されず、上記工程(1)の固液分離の方法と同様、遠心分離、フィルタープレス、ベルトフィルター、自然沈降による分離、メッシュスクリーンによる濾過、不織布による濾過、濾紙による濾過、およびこれらの組み合わせなどを使用することができる。中でも遠心分離が好ましく、特に、連続的に発酵液の上清の回収を行うことができる連続遠心機を用いることがより好ましい。連続遠心機としては、例えば、スクリューデカンタやデラバル型の遠心機などが好適に用いられる。
本工程において、発酵液のpHは、0.3〜4.5の範囲であることがより好ましく、0.5〜3.5の範囲であることがより好ましい。発酵液のpHを上記範囲内とすることにより、発酵液に含まれる固形物を固液分離する時の発酵液の固液分離性を改善することができる。これにより、著しく清澄で膜濾過の容易な化学品が得られる。なお、pH調整には、上記の工程(3)において、発酵液のpH調整に使用する酸またはアルカリと同様の酸またはアルカリなどが用いられる。
工程(3)の後で、発酵液に含まれる固形物の固液分離性が十分でない場合は、さらに酸を用いてpH調整を行ってもよく、発酵液に含まれる固形物の固液分離を開始するまで一定時間静置することにより、さらに効果を高めることができる。例えば、発酵液のpH調整後、1時間静置した後、固液分離を行なう方法などが挙げられる。
得られた化学品は、固形物をほとんど含んでいないため、ハンドリング性の良い清澄な化学品を得ることができる。そのため、さらにこの化学品をより高純度に容易に精製することができる。
得られた化学品の精製は、従来公知の方法を用いることができるが、本発明においては、工程(4)で得られた化学品を、精密濾過膜および/または限外濾過膜を用いて濾過することが好ましい。本発明の工程(3)で得られる化学品を含む発酵液は、固形物を含んでいるため、膜濾過性が悪く、上記各種濾過膜や逆浸透膜の目詰まりを引き起こす。そのため、大豆由来糖の発酵液に適用することは非常に困難である。これに対し、本工程で回収した化学品は、ほとんどの固形物が除去されているため、精密濾過膜および/または限外濾過膜に化学品を通しても膜の目詰まりを大幅に低減することができる。このため、工程(4)で得られた化学品を精密濾過膜および/または限外濾過膜を用いて濾過し、化学品に含まれるミクロンオーダーの大きさの粒子を除去することで、工程(4)で得られた化学品を更に高純度に精製することができる。
なお、本発明において使用される精密濾過膜とは、平均細孔径が0.01μm〜5mmの膜であり、MF(Microfiltration)膜などと略称されるものである。また、本発明に使用する限外濾過膜とは、分画分子量が1,000〜200,000となる膜のことであり、UF(Ultrafiltration)膜などと略称されるものである。ここで、限外濾過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡などで計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤(1993 共立出版) P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように、限外濾過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。
これら精密濾過膜または限外濾過膜の材質としては、上述した微粒子の除去という本発明の目的を達成できるものであれば、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどの有機材料、ステンレスなどの金属、またはセラミックなどの無機材料が挙げられる。精密濾過膜または限外濾過膜の材質は、加水分解物の性状、またはランニングコストを鑑みて適宜選択すればよいが、有機材料であることが好ましく、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンであることが好ましい。
また、精密濾過膜および限外濾過膜を用いた濾過方法としては、例えば、国際公開第2010/067785号に記載されている方法に準じて行うことができる。
また、本発明においては、工程(4)で得られた化学品の精製方法は、化学品によって適した分離精製方法を適宜選択すればよく、特に限定されない。
このように、本発明による化学品の製造方法は、上記工程(1)〜工程(4)を含んでおり、工程(3)において、セルラーゼおよび微生物の作用により糖懸濁液に残留する懸濁物質の凝集沈殿を促進させると共に大豆由来糖を発酵させ、工程(4)において、発酵液中の懸濁物質が凝集して生じた固形物を固液分離して、発酵液から除去している。これにより、固形物をほとんど含まない発酵液を得ることができるため、化学品の精製を容易に行なうことができる。したがって、本発明によれば、大豆原料から高純度に精製された化学品を得ることができる。
このようにして得られる化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。こうした化学品は、大豆由来糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産する。微生物によって生産可能な化学品の具体例として、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール類、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、アジピン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリン、プトレシンなどのアミン化合物などを挙げることができる。さらに、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産も可能である。
以下、本発明の化学品の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
以下の実施例および比較例において、糖濃度、オリゴ糖純度、濁度、タンパク質濃度、β−グルコシダーゼ(BGL)活性およびBGL比活性、微生物のβ−グルコシダーゼ(BGL)活性、オリゴ糖液の濾過性、乳酸濃度、発酵液の濾過性、およびエタノール濃度の評価は、以下のようにして測定した。
[参考例1:糖濃度の測定]
各実施例、比較例において得られた糖液(水溶液)に含まれる単糖(グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、ラフィノース、およびスタキオース)の各濃度は、下記に示す高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography:HPLC)条件で分析し、標品との比較により定量した。
(HPLC条件)
機器:ACQUITY UPLC システム(Waters社製)
カラム:ACQUITY UPLC BEH Amide 1.7μm 2.1×100mm Column(Waters社製)
移動相:A液;80%アセトニトリル+0.2%TEA、B液;30%アセトニトリル+0.2%TEA
流速:0.12mL/min
温度:35℃
[参考例2:オリゴ糖純度の測定]
オリゴ糖純度(%)は、下記式(1)の通り、上記参考例1に記載の方法によって測定した各オリゴ糖(スクロース、ラフィノース、スタキオース)の質量(g)の合計値を、水溶液中の全固形物(TS)の質量(g)によって除した値とした。水溶液中の全固形物の質量は、赤外式水分計(FD−720、Kett社製)を使用して測定した。なお、TS質量を全水溶液の質量で除した値を、TS濃度(%(w/w))という。
オリゴ糖純度(%)=各オリゴ糖(スクロース、ラフィノース、スタキオース)の質量の合計値(g)/水溶液中のTS質量(g) ・・・(1)
[参考例3:濁度の測定]
水溶液の濁度は、濁度計(ポータブル濁度計、2100P、Hach社製)を使用して測定した(単位は、NTU)。なお、本装置の濁度の測定上限は、1000NTUであるため、以下の実施例および比較例では、濁度の測定上限を超えるものは全て「1000(NTU)以上」と記載した。
[参考例4:タンパク質濃度の測定]
水溶液中のタンパク質の濃度は、ブラッドフォード法による測定キット(Quick Start Bradford Protein Assay、Bio−Rad社製)を使用して測定した。
[参考例5:β−グルコシダーゼ(BGL)活性およびBGL比活性の測定]
水溶液中のBGL活性の測定は、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」に記載の“Cellobiase assay”の方法に従って行なった。反応条件は、50℃、pH5.0とし、酵素液1mLあたりのBGL活性として算出した(単位は、U/mL)。さらに、上記参考例4の方法により測定したタンパク質濃度より、タンパク質1mgあたりのBGL活性を算出した(以下、これを“BGL比活性”という。単位は、U/mg)。なお、ここでは、BGL活性1単位(U)を、セロビオース分解反応において、1分間に1μmolのセロビオースを分解する(または、1分間に2μmolのグルコースを生成する)酵素活性と定義する。
[参考例6:微生物のβ‐グルコシダーゼ(BGL)の活性測定]
微生物の有するBGL活性の測定は、微生物の培養上清を用いて測定した。Pediococcus acidilactici(NBRC12231)、Lactobacillus plantalum(NBRC15891)、Lactobacillus sakei(NBRC15893)は、1g/Lの酵母エキスと20g/Lのグルコースと20g/Lの炭酸カルシウムからなる培地5mLにMRS寒天プレートに生育させたコロニーから白金耳にて植菌し、30℃、24時間前培養した。この前培養液を新たな20mLの培地に全量植菌し、さらに24時間培養した。E. coli KO11(ATCC55124)は、LB寒天プレート培地に生育させたコロニーをLB培地5mLに白金耳にて植菌し、30℃、24時間前培養した。この前培養液を新たな20mLの培地に全量植菌し、さらに24時間培養した。各微生物の培養液10mLを15mLの遠沈管にとり、8000rpm、10分間の遠心分離により菌体を沈殿させ、回収した上清を平均細孔径が0.22μmの精密濾過膜に通した。これを、VIVASPIN500−10k(ザルトリウス)を用いて100μL程度まで濃縮した。さらに、400μLの50mM酢酸ナトリウムバッファー(pH5.0)を通じる操作を3回行なった後、培養液上清の濃縮液を回収し、参考例4の方法でタンパク質濃度を測定し、参考例5に記載のBGL活性測定の酵素液として用いて、活性測定を行った。
[参考例7:乳酸濃度の測定]
水溶液中の乳酸濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/分)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/分)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃
[参考例8:発酵液の濾過性評価]
各発酵液の濾過性を評価するため、以下の手順でろ液量による目詰まりしやすさの測定を行った。
(1)サンプル2mLを、0.22μmの平均細孔径を有する濾過膜(Ultrafree−CL Centrifugal Device Low−binding Durapore PVDF membrane、ミリポア社製)を用いて、500G×1分間濾過し、ろ液量(V1)を測定した。
(2)(1)で濾過された分のサンプルを追加し、更に500G×1分間濾過し、ろ液量(V2)を測定した。
(3)下式に当てはめて、目詰まりしやすさGIを計算した(GI値が低いほど目詰まりしにくく、GI値が高いほど目詰まりしやすい。)。
GI=(1−V2/V1)×100
なお、参考として、上記方法を用いて純水のろ液量を測定した場合には、GI=6となった。
[参考例9:エタノール濃度の測定]
水溶液中のエタノール濃度は、下記に示すガスクロマトグラフィー(GC)条件で、水素塩イオン化検出器により検出・算出して、標品との比較により定量した。
機器:Shimadzu GC−2010(株式会社島津製作所製)
カラム:TC−1(内径0.53mm、長さ15m、膜厚1.50μm(GL サイエンス株式会社製)
検出方法:水素炎イオン化検出器(FID)
<実施例1:大豆由来糖液の製造>
(工程(1):極性有機溶媒による大豆由来糖の回収)
市販の無調整豆乳と96%(vol/vol)エタノールとを、液量比で3:7の割合で混合後、十分に攪拌した。これを、遠心分離装置を用いて8000Gで1分間、遠心分離した後、上清として有機溶媒含有糖液を回収した。
(工程(2):極性有機溶媒の蒸発除去)
上記工程(1)で得られた上清のうちの600mLを、1L容積のナスフラスコに投入し、ロータリーエバポレータ(NVC−2100、EYELA社製)および湯浴(SB−1000、EYELA社製)を使用して、50℃、230hPaとして減圧濃縮を行った。濃縮は、液量が150mLになるまで行い、残った液を大豆由来糖懸濁液として回収した。なお、必要量の大豆由来糖懸濁液が得られるまで本工程を繰り返し行った。得られた大豆由来糖懸濁液中の糖濃度、オリゴ糖純度、濁度、および全固形物濃度(TS濃度)を、参考例1〜3に記載の方法で測定した結果を、表1に示す。
Figure 2015068768
以下の実施例および比較例で示す大豆由来糖は、本実施例によって作製したものを用いた。
<比較例1:Pediococcus acidilacticiを使用した大豆由来糖からの乳酸の製造>
[前培養]
微生物は、Pediococcus acidilactici(NBRC12231)を用いた。MRS培地(Difco)2mLを試験管に投入し、121℃にて20分間オートクレーブ殺菌した。放冷後、クリーンベンチ内において、下記MRS寒天培地でプレート培養(30℃、1〜2日)して形成された乳酸菌のコロニーを、白金耳を使用して植菌した。これを、振とう装置(TAITEC社製、BIO−SHAKER BR−40LF)を用いて、30℃、120rpmで24時間、振とう培養し、前培養液を得た。
[本培養]
発酵原料となる大豆由来糖液(pH5.5)に更に炭酸カルシウムを2%(w/vol)の終濃度となるように10mL調製し、さらに、上記前培養液0.5mLを試験管に投入・混合した。これを30℃、120rpmにて68時間振とう培養した。
[固液分離]
発酵液を回収し、4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間の遠心分離を行った。遠心分離後、得られた上清を回収し、参考例6に記載の方法で微生物のBGL活性を測定し、参考例7に記載の方法で乳酸蓄積濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。
<実施例2:Pediococcus acidilacticiとセルラーゼ製剤を使用した大豆由来糖からの乳酸の製造>
(セルラーゼ製剤のBGL活性)
市販のセルラーゼ製剤(Accellerase DUET(以下、DUETともいう。)、Genencor社製)のタンパク質濃度とBGL活性測定を、参考例4と参考例5に準じて測定し、BGL比活性を算出した。DUETのタンパク質濃度およびBGL比活性を、表2に示す。
Figure 2015068768
[前培養]
微生物は、Pediococcus acidilactici(NBRC12231)を用いた。MRS培地2mLを試験管に投入し、121℃にて20分間オートクレーブ殺菌した。放冷後、クリーンベンチ内において、MRS寒天培地でのプレート培養(30℃、1〜2日)して形成された乳酸菌のコロニーを、白金耳を使用して植菌した。これを30℃、120rpmで24時間振とう培養し、前培養液を得た。(振とう装置:TAITEC社製 BIO−SHAKER BR−40LF)
[本培養]
発酵原料となる大豆由来糖液(pH5.5)に更に炭酸カルシウムを2%(w/vol)の終濃度となるように10mL調製し、ここに、DUETを120μL添加・混合した。さらに、上記前培養液0.5mLを試験管に添加・混合した。これを30℃、120rpmにて68時間振とう培養した。
[固液分離]
発酵液を回収し、4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間の遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例6に記載の方法で微生物のBGL活性を測定し、参考例7に記載の方法で乳酸蓄積濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。
<実施例3:Lactobacillus plantalum、またはLactobacillus sakeiを使用した大豆由来糖からの乳酸の製造>
[前培養]
微生物は、Lactobacillus plantalum(NBRC15891)、Lactobacillus sakei(NBRC15893)をそれぞれ用いた。MRS培地(Difco)2mLを試験管に投入し、121℃にて20分間オートクレーブ殺菌した。放冷後、クリーンベンチ内において、MRS寒天培地でプレート培養(30℃、1〜2日)によって形成された乳酸菌のコロニーを、白金耳を使用して植菌した。これを30℃、120rpmで24時間、振とう培養し、前培養液を得た。
[本培養]
発酵原料となる大豆由来糖液(pH5.5)に更に炭酸カルシウムを2%(w/vol)の終濃度となるように10mL調製し、さらに、上記前培養液0.5mLを試験管に投入・混合した。これを、振とう装置(TAITEC社製、BIO−SHAKER BR−40LF)を用いて30℃、120rpmで68時間振とう培養した。
[固液分離]
発酵液を回収し、4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間の遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例6に記載の方法で微生物のBGL活性を測定し、参考例7に記載の方法で乳酸蓄積濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。
比較例1、実施例2、3の微生物のBGL活性、乳酸蓄積濃度、濁度、および発酵液の濾過性の結果を、表3に示す。
Figure 2015068768
<比較例2:大腸菌を使用した大豆由来糖からのエタノールの製造>
[前培養]
微生物は、E.coli KO11(ATCC55124)を用いた。LB培地(Sigma)2mLを試験管に投入し、121℃にて20分間オートクレーブ殺菌した。放冷後、クリーンベンチ内において、LB寒天培地でプレート培養(30℃、16時間)して形成された大腸菌のコロニーを、白金耳を使用して植菌した。これを、比較例1と同様の振とう装置を用いて、30℃、120rpmで72時間振とう培養し、前培養液を得た。
[本培養]
前培養液を回収し、遠心分離により菌体を回収して、上清を取り除いた後、0.5mLのLB培地で再懸濁し、10mLの大豆由来糖液(pH5.5)とアンピシリン100μg/mLとイソプロピル‐β‐チオガラクトピラノシド(終濃度1mM)が入った試験管に投入・混合した。これを、30℃、120rpmにて72時間、振とう培養した。
[固液分離]
発酵液を回収し、4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間、遠心分離を行った。遠心分離後、得られた上清を回収して、参考例3に記載の方法で濁度を測定した後、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。
<実施例4:セルラーゼ生産組換え大腸菌を使用した大豆由来糖からのエタノール製造>
(セルラーゼ発現株の作出)
E.coli KO11(ATCC55124)に、Lactobacillus plantarum(NBRC15891)のBGLの発現ベクターを保持および発現させることでセルラーゼ発現株の作出を行った。下記配列番号1および配列番号2に記載のプライマー(Primer1、Primer2)を用いて、Lactobacillus plantarum(NBRC15891)の菌体から抽出されたゲノムを鋳型としてPCR法により、目的遺伝子を増幅した。なお、本プライマーを設計するにあたっては、NCBIのウェブデータベースの検索により、Protein ID:CAD65701の配列を参考にし、N末端にBamHI、C末端にXhoIの制限酵素サイトをそれぞれ付加した。また、Primer1、Primer2に示す下線箇所が、制限部位を示す。
Primer1:ggatccatgactatggtagagtttccggaag(配列番号1)
Primer2:ctcgagtcaaaacccattccgttccccaag(配列番号2)
PCR反応液のアガロースゲル電気泳動を行うことで目的遺伝子の増幅確認、および目的遺伝子に該当するバンドの切り出しを行い、illustra GFX PCR DNA and Gel Band Purification kit(GEヘルスケア)を用いて、増幅したDNAをゲルから精製した。
発現ベクターには、pTrcHis(Invirtogen)を利用した。PCR産物と発現ベクターをそれぞれBamHIとXhoIの制限酵素で処理し、pTrcHis(Invirtogen)のマルチクローニングサイトのBamHI−XhoI間に目的のBGL遺伝子をライゲーションにより挿入した。ライゲーション試薬には、2×Ligation MIX(ニッポンジーン)を利用し、16℃、15分間の反応で行った。
形質転換は、特開2012−170440号公報を参考にエレクトロポレーション法で行い、LBとアンピシリンとを合わせて100μg/mL含む寒天プレートにてコロニー形成させた。
[前培養]
LBとアンピシリンとを合わせて100μg/mL含む培地5mLを試験管に投入し、121℃にて20分間オートクレーブ殺菌した。放冷後、クリーンベンチ内において、上記LB+アンピシリン100μg/mL寒天培地でのプレート培養にてコロニー形成したセルラーゼ発現株を、白金耳を使用して植菌した。これを30℃、120rpmでOD600が0.8になるまで振とう培養した。
[本培養]
前培養液を回収し、遠心分離により菌体を回収して、上清を取り除いた後、0.5mLのLB培地で再懸濁し、10mLの大豆由来糖液(pH5.5)とアンピシリン100μg/mLとイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(終濃度1mM)が入った試験管に投入・混合した。これを30℃、120rpmにて72時間振とう培養した。
[固液分離]
発酵液を回収し、4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間の遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例6に記載の方法で微生物のBGL活性を測定し、参考例9に記載の方法でエタノール濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。微生物のBGL活性、エタノール蓄積濃度、濁度、および発酵液の濾過性の測定した結果を、表4に示す。
Figure 2015068768
<実施例5:実施例2で本培養を行った後の発酵液のpHの影響の評価>
(培養後のpH調整)
実施例2で本培養を行った後の発酵液を用い、pH0.3〜4.5になるように、6規定の硫酸を添加して調整を行った。4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間、遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例7に記載の方法で乳酸蓄積濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。それぞれのpH調整条件での乳酸蓄積濃度、濁度、および発酵液の濾過性の測定した結果を、表5に示す。
Figure 2015068768
<実施例6:実施例3で本培養を行った後の発酵液のpHの影響の評価>
(培養後のpH調整)
実施例3で本培養を行った後の発酵液を用い、pH0.3〜4.5になるように、6規定の硫酸を添加して調整を行った。4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例7に記載の方法で乳酸蓄積濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。それぞれのpH調整条件での乳酸蓄積濃度、濁度、および発酵液の濾過性の測定した結果を、表6、7に示す。なお、Lactobacillus plantalumを使用した試験結果については表6に、Lactobacillus sakeiを使用した試験結果については表7にそれぞれ示す。
Figure 2015068768
Figure 2015068768
<実施例7:実施例4で本培養を行った後の発酵液のpHの影響の評価>
(培養後のpH調整)
実施例4で本培養を行った後の発酵液を用い、pH0.3〜4.5になるように、6規定の硫酸を添加して調整を行った。4℃で1時間静置した後、8000rpm、10分間、遠心分離を行った。得られた上清を回収し、参考例9に記載の方法でエタノール濃度を測定し、参考例3に記載の方法で濁度を測定し、参考例8に記載の方法で発酵液の濾過性を評価した。それぞれのpH調整条件でのエタノール蓄積濃度、濁度、および発酵液の濾過性の測定した結果を、表8に示す。
Figure 2015068768

Claims (11)

  1. 大豆および/または大豆加工物から化学品を製造する方法であって、
    前記大豆および/または大豆加工物と、極性有機溶媒および水を含む含水極性有機溶媒とを混合した後、生成した沈殿物を固液分離して、前記極性有機溶媒を含む糖液を得る工程(1)と、
    前記工程(1)で得られた前記糖液から前記極性有機溶媒を除去して糖懸濁液を得る工程(2)と、
    前記工程(2)で得られた前記糖懸濁液に、セルラーゼと、化学品を生産する能力を有する微生物との両方、またはセルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物を混合し、化学品を含む発酵液を得る工程(3)と、
    前記工程(3)で得られた前記発酵液を固液分離して、得られた化学品を精製する工程(4)と、
    を含むことを特徴とする、化学品の製造方法。
  2. 前記セルラーゼが、β−グルコシダーゼおよび/またはβ−ガラクトシダーゼである、請求項1に記載の化学品の製造方法。
  3. 前記工程(2)において、前記糖液を、加熱および/または減圧して前記極性有機溶媒を除去する、請求項1または2に記載の化学品の製造方法。
  4. 前記工程(4)において、前記発酵液のpHを、0.5〜3.5の範囲に調製する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
  5. 前記化学品を生産する能力を有する微生物が、細菌、酵母、糸状菌、および子嚢菌からなる群から選択されるいずれか1以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
  6. 前記セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物が、大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌、および酵母からなる群から選択されるいずれか1以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
  7. 前記大腸菌、コリネ菌、ザイモモナス菌、ザイモバクター菌、乳酸菌、および酵母からなる群から選択されるいずれか1以上が、セルラーゼ遺伝子を有するものである、請求項6に記載の化学品の製造方法。
  8. 前記工程(3)において、前記セルラーゼを産生しかつ化学品を生産する能力を有する微生物が、セルラーゼを細胞外に分泌する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
  9. 前記極性有機溶媒として、エタノールを用いる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
  10. 前記工程(1)において、前記大豆および/または大豆加工物と前記含水極性有機溶媒とを混合した際に、下記式(I)により算出される極性有機溶媒の濃度が、50〜90%(w/w)の範囲である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
    極性有機溶媒の濃度=含水極性有機溶媒中の極性有機溶媒の質量/(大豆および/または大豆加工物に含まれる水分の質量+含水極性有機溶媒の全質量) ・・・(I)
  11. 前記工程(3)において得られる前記化学品が、アルコール、有機酸、またはアミノ酸である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の化学品の製造方法。
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