JPWO2015025927A1 - 糖液の製造方法 - Google Patents

糖液の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2015025927A1
JPWO2015025927A1 JP2014552414A JP2014552414A JPWO2015025927A1 JP WO2015025927 A1 JPWO2015025927 A1 JP WO2015025927A1 JP 2014552414 A JP2014552414 A JP 2014552414A JP 2014552414 A JP2014552414 A JP 2014552414A JP WO2015025927 A1 JPWO2015025927 A1 JP WO2015025927A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cellulose
containing biomass
sugar
biomass
cellulase
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2014552414A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6458498B2 (ja
Inventor
田 千 晶 山
田 千 晶 山
原 宏 征 栗
原 宏 征 栗
田 勝 成 山
田 勝 成 山
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toray Industries Inc
Original Assignee
Toray Industries Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toray Industries Inc filed Critical Toray Industries Inc
Publication of JPWO2015025927A1 publication Critical patent/JPWO2015025927A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6458498B2 publication Critical patent/JP6458498B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/02Monosaccharides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/14Preparation of compounds containing saccharide radicals produced by the action of a carbohydrase (EC 3.2.x), e.g. by alpha-amylase, e.g. by cellulase, hemicellulase
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P7/00Preparation of oxygen-containing organic compounds
    • C12P7/40Preparation of oxygen-containing organic compounds containing a carboxyl group including Peroxycarboxylic acids
    • C12P7/56Lactic acid
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P2201/00Pretreatment of cellulosic or lignocellulosic material for subsequent enzymatic treatment or hydrolysis
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P2203/00Fermentation products obtained from optionally pretreated or hydrolyzed cellulosic or lignocellulosic material as the carbon source
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E50/00Technologies for the production of fuel of non-fossil origin
    • Y02E50/10Biofuels, e.g. bio-diesel

Abstract

本発明は、以下の工程(1)〜(3)を含む、糖液の製造方法に関する:工程(1):第1のセルロース含有バイオマスを前処理する工程、工程(2):工程(1)の第1のセルロース含有バイオマス前処理物の固形分重量に対し1〜50%の範囲の量の第2のセルロース含有バイオマスを添加して、糸状菌由来セルラーゼによる加水分解を行う工程、工程(3):工程(2)の加水分解物を溶液成分と加水分解残さとに固液分離し、溶液成分を限外ろ過膜に通じてろ過して非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を回収する工程。

Description

本発明は、セルロースから糖液を製造する方法に関する。
近年、エネルギー使用量および環境負荷が少なく、かつ糖収量が多いため、セルラーゼを使用したバイオマスの加水分解方法が広く検討されている。しかしながら、セルラーゼを使用する糖液の製造方法の欠点は、セルラーゼの価格が高いため糖液製造コストが増大するという点である。こうした技術課題を解決するために加水分解に使用したセルラーゼを回収再利用する方法が提案されているが、セルロース含有バイオマスを加水分解する際に生じる加水分解残さにセルラーゼが強く吸着するため、酵素の再利用性が低いということが課題となっている。
加水分解残さに吸着したセルラーゼを脱着し、セルラーゼの回収率を高める方法としては、加水分解残さをpH8程度の水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する方法(非特許文献1)、加水分解残さにノニオン性界面活性剤を接触させる方法(特許文献1)などが開示されている。一方、セルラーゼの加水分解残さへの吸着を低減する方法としては、セルロース含有バイオマスの加水分解時、水溶性塩類を添加して電気伝導度を5〜25mS/cmに調整する方法(特許文献2)、セルロース含有バイオマスの固形物重量に対して1〜10重量%の炭酸カルシウム粒子を添加する方法(特許文献3)などが知られている。
特開昭63−87994号公報 特許第4947223号公報 特開2012−100617号公報
D. E. Otterら、"Elution of Trichoderma reesei Cellulase from Cellulose by pH Adjustment with Sodium Hydroxide" Biotechnology Letters (1984) Vol. 6、No. 6、369-374
上述の通り、セルロース含有バイオマスの加水分解に用いたセルラーゼを回収し、再利用することによりセルラーゼの使用量を削減する試みが種々なされているが、セルラーゼが加水分解残さに強く吸着するためその回収率は低く、問題の解決には至っていない。
そこで本発明では、従来の方法でのセルラーゼ使用量の削減効果を上回る糖液の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、今般、鋭意検討した結果、第1のセルロース含有バイオマスの前処理物を糸状菌由来セルラーゼにより加水分解する際、前記前処理物の固形分重量に対し1〜50%範囲の量の第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を添加したところ、糸状菌由来セルラーゼの酵素成分を顕著に高い効率で回収することができるということを見出し、発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[8]の構成を包含する。
[1]以下の工程(1)〜(3)を含む、糖液の製造方法:
工程(1):第1のセルロース含有バイオマスの前処理物を準備する工程、
工程(2):工程(1)の第1のセルロース含有バイオマス前処理物の固形分重量に対し1〜50%の範囲の量の第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を添加して、糸状菌由来セルラーゼによる加水分解を行う工程、
工程(3):工程(2)の加水分解物を溶液成分と加水分解残さとに固液分離し、溶液成分を限外ろ過膜に通じてろ過して非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を回収する工程。
[2]工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスの前処理物が、第2のセルロース含有バイオマスを水熱処理および/または酸処理した前処理物である、[1]に記載の糖液の製造方法。
[3]工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスが穀物外皮である、[1]または[2]に記載の糖液の製造方法。
[4]工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスが、トウモロコシ外皮、大豆外皮および小麦外皮よりなる群から選ばれる1以上のバイオマスである、[1]から[3]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[5]工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスが草本系バイオマスまたは木質系バイオマスである、[1]から[4]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[6]工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスがコーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わらおよびバガスよりなる群から選択される1以上のバイオマスである、[1]から[5]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[7]工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスの前処理物が、酸処理、アルカリ処理、水熱処理、亜臨界水処理、微粉砕処理および蒸煮処理よりなる群から選択される1以上の方法により前処理されたものである[1]から[6]のいずれかに記載の糖液の製造方法。
[8][1]から[7]のいずれかに記載の糖液の製造方法により糖液を製造する工程、および該工程で得られた糖液を発酵原料として微生物を培養する工程を含む、化学品の製造方法。
本発明によれば、セルロース含有バイオマスの加水分解残さへの糸状菌由来セルラーゼの吸着を抑制することができ、特に加水分解反応において重要な役割を果たすセロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼといった酵素群を高い効率で回収および/または再利用することができる。その結果、従来技術に比べセルラーゼの使用量を削減し、糖液製造コストを低く抑えることができる。
図1は、本発明の糖液の製造方法の実施の一形態を示した略図である。
発明の具体的説明
以下、本発明について工程ごとに説明する。
工程(1):第1のセルロース含有バイオマスの前処理物を準備する工程
本発明の第1のセルロース含有バイオマスとは、セルロース成分を含む生物資源のことを指す。第1のセルロース含有バイオマスに特に制限はないが、具体例としては、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、コーンコブ、ビートパルプ、稲わら、麦わらなどの草本系バイオマス、樹木、廃建材などの木質系バイオマス、あるいは藻類、海草など水生環境由来のバイオマスが挙げられ、好ましい具体例としては草本系バイオマスまたは木質系バイオマス、より好ましい具体例としては草本系バイオマス、さらに好ましい具体例としては、コーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わらおよびバガスからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
セルロース含有バイオマスには、セルロースおよびヘミセルロース(以下、セルロースとヘミセルロースの総称として「セルロース」という。)の他に芳香族高分子であるリグニン等を含有しているため、前処理を施すことによりセルラーゼによる加水分解効率を向上させることができる。前処理の方法としては、硫酸、酢酸などによる酸処理、苛性ソーダ、アンモニアなどによるアルカリ処理、水熱処理、亜臨界水処理、微粉砕処理、蒸煮処理が挙げられるが、本発明において効果的なのはアンモニア処理、水熱処理、酢酸処理または希硫酸処理であり、これらの前処理方法が好ましい。本発明では、前処理を行ったバイオマスのことを、バイオマス前処理物という。本発明の一つの態様によれば、工程(1)の準備にあっては、第1のセルロース含有バイオマスを前処理することが好ましい。しかしながら、本発明工程(1)の準備にあっては、予め上述のような前処理が行われたバイオマス前処理物を購入して用いてもよく、本発明にはかかる態様も包含される。
セルロース含有バイオマスの前処理物には、セルロース含有バイオマス由来の固形物のほか、セルロース含有バイオマスに含まれるヘミセルロースの一部が加水分解して生じたキシロースを含む溶液成分が含まれる。本発明における前処理物とは、固形物と溶液成分の両方を含む状態、あるいは固液分離および/または固形物の洗浄によりキシロースを含む溶液成分を取り除いた状態の両方を指す。
工程(2):工程(1)の第1のセルロース含有バイオマス前処理物の固形分重量に対し1〜50%の範囲の量の第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を添加して、糸状菌由来セルラーゼによる加水分解を行う工程
本発明は、第1のセルロース含有バイオマス前処理物を加水分解する際、第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を添加することを特徴とする。第2のセルロース含有バイオマスとは、第1のセルロース含有バイオマスと同じくセルロース成分を含む生物資源のことであるが、第1のセルロース含有バイオマスとは植物種または植物部位が異なっていることを特徴とする。
第2のセルロース含有バイオマスの好ましい具体例としては、穀物外皮が挙げられる。穀物とは、イネ科作物、マメ科作物、あるいはその他植物の種実を含む、デンプン質を主体とする種実のことを指し、具体的には、トウモロコシ、稲、麦、大豆、ソバ、アマランサス、キヌアなどを例示することができる。こうした穀物は、いずれも種実に相当する部分であるが、穀物外皮とは、種実の一番外側の表皮部分のことを指す。例えば、トウモロコシ、小麦、大豆、稲に関しては、食品加工の過程において、穀物外皮の部分を除去する場合がある。トウモロコシに関しては、澱粉製造において、小麦に関しては、小麦粉製造において、大豆に関しては、大豆油製造において、稲に関しては、食用部分である精米の過程においてなどがこれらにあたる。こうした穀物外皮は、セルロースを含むことから、前述穀物加工の過程で発生するセルロース含有バイオマスであると言える。本発明の第2のセルロース含有バイオマスとして最も好ましいものは、トウモロコシ外皮、大豆外皮、小麦外皮である。
第2のセルロース含有バイオマスは、そのままでも十分な効果を発揮するが、水熱処理および/または酸処理した前処理物であることが好ましい。第2のセルロース含有バイオマスを前処理することで、第2のセルロース含有バイオマスの糸状菌由来セルラーゼによる分解効率を高めるとともに、工程(3)における糸状菌由来セルラーゼの回収量を増大させることができる。
第2のセルロース含有バイオマスは、工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスの前処理物の固形分重量に対して1〜50%の範囲の量を添加する。ここでいう固形分重量とは、第1のセルロース含有バイオマスの前処理物および/または第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を105℃で乾燥させた後の重量を指し、加熱乾燥・質量測定方式の水分計を用いて含水率を測定することにより、第1のセルロース含有バイオマスの前処理物および/または第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物の固形分濃度を逆算することができる。例えば、第1のセルロース含有バイオマスの前処理物の含水率が70%、第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物の含水率が10%であった場合、その固形分濃度はそれぞれ30%、90%である。第1のセルロース含有バイオマスの前処理物の湿重量150gは固形分45gに相当し、第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物の添加量は固形分0.45〜22.5g、すなわち、湿重量0.5〜25gに相当する。
本発明では、糸状菌由来セルラーゼを用いて第1のセルロース含有バイオマスの前処理物および第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を加水分解する。糸状菌としては、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Chlostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、などの微生物を挙げることができる。また、これら微生物に変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理を施すことによりセルラーゼ生産性が向上した変異株由来のセルラーゼであってもよい。
糸状菌の中でもトリコデルマ属は、セルロースの加水分解において比活性の高い酵素成分を培養液中に大量に生産するため本発明において好ましく使用することができる。トリコデルマ属由来セルラーゼの具体例としては、トリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reesei QM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC−30(Trichoderma reesei RutC−30)、トリコデルマ・リーセイPC3−7(Trichoderma reesei PC3−7)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reesei CL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reesei MCG80)、トリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride QM9123)由来のセルラーゼが挙げられるが、中でもトリコデルマ・リーセイ由来セルラーゼがより好ましい。
糸状菌由来セルラーゼは、セルロースおよび/またはヘミセルロースを加水分解してグルコースやキシロースなどの単糖を生成する活性を有する酵素組成物であり、酵素成分としてセロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼおよびβ−キシロシダーゼからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。例えばトリコデルマ・リーセイ由来セルラーゼの酵素成分としては、セロビオハイドラーゼI、セロビオハイドラーゼII、エンドグルカナーゼI、エンドグルカナーゼIII、β−グルコシダーゼ、キシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、などが例示され、こうした複数の酵素成分の協奏効果あるいは補完効果により効率的なセルロースおよび/またはヘミセルロースの加水分解を実施することができるため、本発明において好ましく使用される。
セロビオハイドラーゼは、セルロース鎖の加水分解によりセロビオースを放出する酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.91としてセロビオハイドラーゼに帰属される酵素群が記載されている。セロビオハイドラーゼIはセルロース鎖の還元末端側から、セロビオハイドラーゼIIは非還元末端側から加水分解反応を開始する。
エンドグルカナーゼは、セルロース鎖の中央部分から加水分解することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.4としてエンドグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
β−グルコシダーゼとは、セロオリゴ糖あるいはセロビオースに作用することをと特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.21としてβ−グルコシダーゼに帰属する酵素群が記載されている。
キシラナーゼとは、ヘミセルロースあるいは特にキシランに作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.8としてキシラナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
β−キシロシダーゼとは、キシロオリゴ糖に作用することを特徴とする酵素の総称であり、EC番号:EC3.2.1.37としてキシロシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
こうしたセルラーゼ成分は、ゲルろ過、イオン交換、二次元電気泳動などの公知手法により分離し、分離した成分のアミノ酸配列(N末端分析、C末端分析、質量分析)を行い、データベースとの比較により同定することができる。
また、糸状菌由来セルラーゼの酵素活性は、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、セロビオース、キシラン、マンナンなどといった多糖を基質とし、その加水分解活性によって評価することができる。結晶セルロース分解活性を示す主たる酵素は、セルロース末端部分から加水分解する特徴を有するセロビオハイドラーゼである。セロビオース分解活性を示す主たる酵素は、β−グルコシダーゼである。CMC分解活性に関与する主たる酵素は、セロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼである。キシラン分解活性を示す主たる酵素はキシラナーゼ、β−キシロシダーゼである。ここで“主たる”という意味は、最も分解に関与することが知られていることからの表現であり、これ以外の酵素成分もその分解に関与していることを意味している。
糸状菌は培養液中にセルラーゼを産生するため、その培養液を粗酵素剤としてそのまま使用してもよいし、公知の方法で酵素群を精製し、製剤化したものを糸状菌由来セルラーゼ混合物として使用してもよい。糸状菌由来セルラーゼを精製し、製剤化したものとして使用する場合、プロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤、安定化剤など、酵素以外の物質を添加したものをセルラーゼ製剤として使用してもよい。なお、本発明ではこれらの中でも粗酵素物が好ましく使用される。粗酵素物は、糸状菌がセルラーゼを産生するよう調製した培地中で、任意の期間該微生物を培養した培養上清に由来する。使用する培地成分は特に限定されないが、セルラーゼの産生を促進するためにセルロースを添加した培地が一般的に使用できる。そして、粗酵素物として、培養液をそのまま、あるいはトリコデルマ菌体を除去したのみの培養上清が好ましく使用される。
粗酵素物中の各酵素成分の重量比は特に限定されるものではないが、例えば、トリコデルマ・リーセイ由来の培養液には、50〜95重量%のセロビオハイドラーゼが含まれており、残りの成分にエンドグルカナーゼ、β−グルコシダーゼなどが含まれている。また、トリコデルマ属の微生物は、強力なセルラーゼ成分を培養液中に生産する一方で、β−グルコシダーゼに関しては、その多くを細胞内あるいは細胞表層に保持しているため培養液中のβ−グルコシダーゼ活性は低い。そこで、粗酵素物に、さらに異種または同種のβ−グルコシダーゼを添加してもよい。異種のβ−グルコシダーゼとしては、アスペルギルス属由来のβ−グルコシダーゼが好ましく使用できる。アスペルギルス属由来のβ−グルコシダーゼとして、ノボザイム社より市販されているNovozyme188などを例示することができる。また、トリコデルマ属の微生物に遺伝子を導入し、その培養液中に産生されるよう遺伝子組み換えされたトリコデルマ属の微生物を培養し、β−グルコシダーゼ活性の向上した培養液を用いてもよい。
第1のセルロース含有バイオマスの前処理物および第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物の固形分濃度は特に限定されないが、1〜30重量%の範囲が好ましい。かかる固形物濃度に設定することは、生成する糖濃度およびハンドリングを勘案すれば有利である。
加水分解反応の温度は、糸状菌由来セルラーゼの好ましい反応条件に準じていれば特に限定されないが、30〜75℃の範囲であることが好ましく、特にトリコデルマ属由来セルラーゼを使用する場合、40〜60℃の範囲であることがさらに好ましい。
加水分解反応のpHも同様に糸状菌由来セルラーゼの好ましい反応条件に準じていれば特に限定されないが、pH3.0〜7.0の範囲が好ましく、pH4.0〜6.0の範囲であることがさらに好ましい。糸状菌由来セルラーゼとしてトリコデルマ属由来セルラーゼを使用する場合、その反応最適pHは5.0である。さらに、加水分解の過程でpHの変化が起きるため、反応液に緩衝液を添加する、あるいは酸やアルカリを用いて一定pHを保持しながら実施することが好ましい。
加水分解反応の時間は、2時間〜200時間の範囲であることが好ましい。加水分解反応の時間をかかる範囲に設定することは、十分な糖を生成することおよび回収セルラーゼの失活を防ぐ上で有利である。
工程(3):工程(2)の加水分解物を溶液成分と加水分解残さに固液分離し、溶液成分を限外ろ過膜に通じてろ過して非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を回収する工程
工程(2)で得られた加水分解物を固液分離して得られる溶液成分には糸状菌由来セルラーゼ成分および糖成分が含まれ、これらは限外ろ過膜を用いたろ過によって分離することができる。
限外ろ過膜とは、分画分子量が500〜200,000となる膜のことであり、ウルトラフィルトレーション、UF膜などと略称されるものである。また、限外ろ過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡等で計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤(1993年、共立出版) P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように、限外ろ過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。
限外ろ過膜を用いた糸状菌由来セルラーゼと糖成分の分離においては、その分画分子量は糖液の主成分の単糖であるグルコース(分子量180)やキシロース(分子量150)を透過し、糸状菌由来セルラーゼを阻止できるものであれば特に限定されないが、分画分子量500〜100,000が好ましく、糸状菌由来セルラーゼ成分の収率を担保し、また酵素反応に阻害的作用を示す夾雑物質を糸状菌由来セルラーゼ成分と分離するという観点から、より好ましくは分画分子量5,000〜50,000の範囲であり、さらに好ましくは分画分子量10,000〜30,000の範囲である。
限外ろ過膜の素材としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロース、セルロース、セルロースエステル、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ4フッ化エチレンなどを使用することができるが、再生セルロース、セルロース、セルロースエステルは糸状菌由来セルラーゼによる分解を受けるため、PES、PVDFなどの合成高分子を素材とした限外ろ過膜を使用することが好ましい。
限外ろ過膜のろ過方式として、デッドエンドろ過、クロスフローろ過があるが、膜ファウリング抑制の観点から、クロスフローろ過であることが好ましい。また使用する限外ろ過膜の膜形態としては、平膜型、スパイラル型、チューブラー型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。具体的には、DESAL社のG−5タイプ、G−10タイプ、G−20タイプ、G−50タイプ、PWタイプ、HWSUFタイプ、KOCH社のHFM−180,HFM−183、HFM−251、HFM−300、HFK−131、HFK−328、MPT−U20、MPS−U20P、MPS−U20S、Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30、旭化成株式会社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズの分画分子量3,000から10,000に相当するもの、日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450などが挙げられる。
限外ろ過膜によるろ過の非透過液として回収される糸状菌由来セルラーゼは、工程(2)の加水分解工程に再利用することができる。本発明では、回収セルラーゼを再利用することにより糸状菌由来セルラーゼの使用量が減り、糖液製造コストを削減することができる。なお、回収セルラーゼを用いてセルロース含有バイオマスの加水分解を行う場合、回収セルラーゼに未使用の糸状菌由来セルラーゼを新たに添加してもよい。新たに添加する糸状菌由来セルラーゼの量が増加するとコスト面で不利になるため、十分な糖収量を得るために必要最低限の未使用セルラーゼを添加することが好ましい。
限外ろ過膜によるろ過の透過液として回収される糖液は単糖であるグルコースおよびキシロースを主成分とするものであり、そのままでも後述の発酵工程での発酵原料として使用可能であるが、発酵工程の効率を高めるためにさらに糖濃度を高める濃縮処理をおこなってもよい。糖液の濃縮処理としては、蒸発濃縮、減圧濃縮、膜濃縮などを例示することができるが、エネルギー使用量が少なく、糖液に含まれる発酵阻害物質を分離することが可能なWO2010/067785号に記載される、ナノろ過膜および/または逆浸透膜に通じてろ過する方法により、糖成分が濃縮された濃縮糖液を得ることができる。
本発明により得られた糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を培養することで、各種化学品を製造することができる。ここでいう発酵原料として微生物を成育させるとは、糖液に含まれる糖成分あるいはアミノ源を微生物の栄養素として利用し、微生物の増殖、生育維持を行うことを意味している。こうした化学品は、糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産される。化学品の具体例としては、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのアミン化合物を挙げることができる。さらに、本発明のセルロース由来糖液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産に適用することも可能である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)タンパク質濃度の測定
タンパク質濃度は、市販のタンパク質濃度測定試薬(Quick Start Bradfordプロテインアッセイ、Bio−Rad製)を使用した。室温に戻したタンパク質濃度測定試薬250μLに希釈したセルラーゼ溶液を5μL添加し、室温で5分間静置後の595nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(POWERSCAN HT、大日本住友製薬株式会社製)で測定した。牛血清アルブミン水溶液を標準液とし、検量線に照らし合わせてセルラーゼ溶液のタンパク質濃度を算出した。
(参考例2)糖濃度の測定
糖液に含まれるグルコースおよびキシロース濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/分)
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例3)糸状菌由来セルラーゼの活性測定方法
セルラーゼ活性は、セルロースの分解に関与する酵素群の活性として(1)4−ニトロフェニル−β−D−ラクトピラノシド(pNP−Lac)および(2)4−ニトロフェニル−β−D−グルコピラノシド(pNP−Glc)の分解活性を、ヘミセルロースの主成分であるキシランの分解に関与する酵素群の活性として(3)4−ニトロフェニル−β−D−キシロピラノシド(pNP−Xyl)の分解活性を以下に示す方法で測定評価した。なお、上記(1)〜(3)の基質をまとめてpNP−糖という。
各基質をそれぞれ1.1mMの濃度で含む55mM酢酸緩衝液(pH5.0) 0.9mLに酵素液を0.1mL加え、30℃で反応させた(基質の終濃度1mM、緩衝液の終濃度50mM)。反応時間は、基質がpNP−Lacの場合60分間、pNP−Glcの場合10分間、pNP−Xylの場合30分間とし、それぞれの時間正確に反応させた後、0.1mLの2M炭酸ナトリウム水溶液を添加して反応を停止させ、405nmにおける吸光度を測定した(ODtest)。ブランクとして、基質溶液に2M炭酸ナトリウム水溶液、酵素液の順に添加したものについても同様に405nmにおける吸光度を測定した(ODblank)。上記反応系で1分間に1μmolの4−ニトロフェノールを生成する酵素量を1Uと定義し、活性値(U/mL)を下記式に従って算出した。なお、上記反応系における4−ニトロフェノールのミリモル分子吸光係数は17.2L/mmol/cmである。
pNP−Lac分解活性(U/mL)={(ODtest−ODblank)×1.1(mL)×酵素希釈倍率}/{17.2×60(分間)×0.1(mL)}
pNP−Glc分解活性(U/mL)={(ODtest−ODblank)×1.1(mL)×酵素希釈倍率}/{17.2×10(分間)×0.1(mL)}
pNP−Xyl分解活性(U/mL)={(ODtest−ODblank)×1.1(mL)×酵素希釈倍率}/{17.2×60(分間)×0.1(mL)}。
(比較例1)第1のセルロース含有バイオマスのみを使用する場合
(工程1:第1のセルロース含有バイオマスの前処理)
(前処理1)第1のセルロース含有バイオマスのアンモニア処理
第1のセルロース含有バイオマス(コーンコブまたは稲わら)を小型反応器(耐圧硝子工業製、TVS−N2 30ml)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、試料を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバス中にて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで真空引きし乾燥させた。コーンコブの前処理物を前処理物1、稲わらの前処理物を前処理物2とし、以下の実施例に使用した。
(前処理2)第1のセルロース含有バイオマスの水熱処理
第1のセルロース含有バイオマス(コーンコブ)を水に浸し、撹拌しながら180℃で20分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は10MPaであった。処理後は遠心分離(3,000G)により溶液成分と固形物に固液分離した固形物を前処理物3とし、以下の実施例に使用した。
(前処理3)第1のセルロース含有バイオマスの希硫酸処理
硫酸2%水溶液に第1のセルロース含有バイオマス(コーンストーバー、麦わらまたはバガス)を懸濁し、固形分濃度30%のスラリーを調製した。該スラリーを150℃で30分間、オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。処理後は遠心分離(3,000g)により溶液成分と固形物に固液分離し、コーンストーバーの前処理により得られた固形物を前処理物4、麦わらの前処理により得られた固形物を前処理物5、バガスの前処理により得られた固形物を前処理物6として以下の実施例に使用した。
(工程2:糸状菌由来セルラーゼによる加水分解)
糸状菌由来セルラーゼとして、市販のセルラーゼ酵素液(“アクセルレースデュエット”、ジェネンコア製)を使用した。参考例1に従ってセルラーゼ酵素液のタンパク質濃度を測定したところ、その濃度は40g/Lであった。
工程1で調製した前処理物1から前処理物6をそれぞれ1.0g(固形分重量)秤量し、50mL遠沈管の中で7.0mLの水に懸濁し、スラリーを調製した。希硫酸もしくはアンモニア水を用いてスラリーのpHを4.7〜5.3の範囲内に調整した後、総重量が10gになるようセルラーゼ酵素液0.2mLおよび水を添加し、固形分濃度10%とした。50℃で24時間、ハイブリダイゼーションローテーター(日伸理化株式会社製 SN−06BN)を用いて回転混和し、加水分解物を得た。
(工程3:糸状菌由来セルラーゼと糖液の回収)
工程2の加水分解物を遠心分離(8,000G、10分間)にて固液分離し、溶液成分8gと加水分解残さ2gを得た。加水分解残さを8mLの水で再懸濁し、再度遠心分離(8,000G、10分間)を行うことで、加水分解残さに残った溶液成分を回収した。回収した溶液成分を合一し、ポアサイズ0.2μmの精密ろ過膜(25mm GD/Xシリンジフィルター 材質:PVDF、GEヘルスケア・ジャパン製)に通じて微粒子を除いた後、分画分子量10,000の限外ろ過膜(VIVASPIN20 材質:PES、Sartorius stedim biotech製)を用いてろ過した。非透過側を回収セルラーゼ液として回収し、透過液を糖液として回収した。糖液については、参考例2に従って糖濃度を測定した。回収セルラーゼ液については、参考例3に従って酵素活性測定を行った。
糖濃度を表1に、投入したセルラーゼ酵素液の酵素活性に対する回収セルラーゼ液の酵素活性の割合を残存率として表2にまとめた。
(実施例1)第2のセルロース含有バイオマスの使用
第1のセルロース含有バイオマスとして前処理物1または前処理物3を使用し、比較例1の工程2での第2のセルロース含有バイオマスとしてトウモロコシ外皮、大豆外皮、小麦外皮(ふすま)の3種のいずれかを第1のセルロース含有バイオマスの固形分重量に対し10%量添加した。その結果、第1のセルロース含有バイオマスの固形分濃度が10%、第2のセルロース含有バイオマスの固形分濃度が1%のスラリーが調製された。その他は比較例1と同様に糖液の製造を行い、糖液と回収セルラーゼ液を得た。糖液は参考例2に従って糖濃度を測定し、回収セルラーゼ液は参考例3に従って活性測定を行った。
(実施例2)第2のセルロース含有バイオマスの前処理物の使用
第2のセルロース含有バイオマスとしてトウモロコシ外皮、大豆外皮、小麦外皮(ふすま)の3種の水熱処理物あるいは酸処理物を使用した。
水熱処理物は、固形分濃度30%の第2のセルロース含有バイオマスのスラリーを150℃で30分間、オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)して得た。
酸処理物は、硫酸0.5%、固形分濃度30%の第2のセルロース含有バイオマスのスラリーを150℃で30分間、オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)して得た。
比較例1の工程2において、第2のセルロース含有バイオマスの前処理物を第1のセルロース含有バイオマスの固形物重量に対し10%量添加する他は比較例1と同様に糖液の製造を行った。ただし、第1のセルロース含有バイオマスとして前処理物1または前処理物3を使用する場合には第2のセルロース含有バイオマス(トウモロコシ外皮、大豆外皮、小麦外皮)のいずれかの熱水処理物または酸処理物を、第1のセルロース含有バイオマスとして前処理物2、前処理物4,前処理物5または前処理物6を使用する場合には第2のセルロース含有バイオマスとしてはトウモロコシ外皮の酸処理物のみを使用した。得られた糖液と回収セルラーゼ液について、糖液は参考例2に従って糖濃度を測定し、回収セルラーゼ液は参考例3に従って活性測定を行った。
実施例1および実施例2の糖濃度を表3、表4および表5に、酵素活性の残存率を表6、表7および表8にまとめた。その結果、第2のセルロース含有バイオマスを使用することにより、糖収量および回収セルラーゼ液の初期投入酵素に対する活性残存率が向上した。
(実施例3)第2のセルロース含有バイオマスの添加量の影響
比較例1の工程2における第2のセルロース含有バイオマスとしてトウモロコシ外皮の酸処理物を使用し、第1のセルロース含有バイオマスの前処理物3(水熱処理コーンコブ)の固形分重量に対し1〜50%量を添加した。その他は比較例1と同様に糖液の製造を行い、糖液と回収セルラーゼ液を得た。糖液は参考例2に従って糖濃度を測定し、回収セルラーゼ液は参考例3に従って活性測定を行った。糖濃度を表9に、酵素活性の残存率を表10にまとめた。
その結果、第2のセルロース含有バイオマスの添加量が多いほど糖収量は増大した。回収セルラーゼ液の初期投入酵素に対する活性残存率は、第2のセルロース含有バイオマスを第1のセルロース含有バイオマス前処理物の固形分重量に対して10%以上添加した場合に最大となった。
(実施例4)セルロース含有バイオマス由来糖液を発酵原料とする乳酸発酵生産
第1のセルロース含有バイオマス前処理物として前処理物3(水熱処理コーンコブ)を使用し、比較例1で製造した糖液(糖液1)および、実施例2において第2のセルロース含有バイオマスとして酸処理したトウモロコシ外皮を用いて製造した糖液(糖液2)を発酵原料として使用して、ラクトコッカス・ラクティスJCM7638株を24時間、37℃の温度で静置培養した。培養液に含まれるL−乳酸濃度を以下条件で分析した。
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)
移動相A:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
移動相B:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
上記分析の結果、表11に示されるようにいずれの糖液を発酵原料とした乳酸発酵においてもL−乳酸が生産できることが確認されたが、本発明により製造した糖液が乳酸発酵の収率において優れる結果となった。
本発明における糖液の製造方法は、セルロースを含むバイオマスから発酵原料となる糖液を製造することに使用できる。また本発明で製造した糖液は、各種化学品の発酵原料として使用することができる。

Claims (8)

  1. 以下の工程(1)〜(3)を含む、糖液の製造方法:
    工程(1):第1のセルロース含有バイオマスの前処理物を準備する工程、
    工程(2):工程(1)の第1のセルロース含有バイオマス前処理物の固形分重量に対し1〜50%の範囲の量の第2のセルロース含有バイオマスまたはその前処理物を添加して、糸状菌由来セルラーゼによる加水分解を行う工程、
    工程(3):工程(2)の加水分解物を溶液成分と加水分解残さとに固液分離し、溶液成分を限外ろ過膜に通じてろ過して非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収し、透過液として糖液を回収する工程。
  2. 工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスの前処理物が、第2のセルロース含有バイオマスを水熱処理および/または酸処理した前処理物である、請求項1に記載の糖液の製造方法。
  3. 工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスが穀物外皮である、請求項1または2に記載の糖液の製造方法。
  4. 工程(2)の第2のセルロース含有バイオマスが、トウモロコシ外皮、大豆外皮および小麦外皮よりなる群から選ばれる1以上のバイオマスである、請求項1から3のいずれかに記載の糖液の製造方法。
  5. 工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスが草本系バイオマスまたは木質系バイオマスである、請求項1から4のいずれかに記載の糖液の製造方法。
  6. 工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスがコーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わらおよびバガスよりなる群から選択される1以上のバイオマスである、請求項1から5のいずれかに記載の糖液の製造方法。
  7. 工程(1)の第1のセルロース含有バイオマスの前処理物が、酸処理、アルカリ処理、水熱処理、亜臨界水処理、微粉砕処理および蒸煮処理よりなる群から選択される1以上の方法で前処理されたものである、請求項1から6のいずれかに記載の糖液の製造方法。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の糖液の製造方法により糖液を製造する工程、および該工程で得られた糖液を発酵原料として微生物を培養する工程を含む、化学品の製造方法。
JP2014552414A 2013-08-22 2014-08-21 糖液の製造方法 Active JP6458498B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013172186 2013-08-22
JP2013172186 2013-08-22
PCT/JP2014/071911 WO2015025927A1 (ja) 2013-08-22 2014-08-21 糖液の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2015025927A1 true JPWO2015025927A1 (ja) 2017-03-02
JP6458498B2 JP6458498B2 (ja) 2019-01-30

Family

ID=52483698

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014552414A Active JP6458498B2 (ja) 2013-08-22 2014-08-21 糖液の製造方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US10563238B2 (ja)
JP (1) JP6458498B2 (ja)
CN (1) CN105473729B (ja)
BR (1) BR112016003282B8 (ja)
CA (1) CA2921891C (ja)
WO (1) WO2015025927A1 (ja)

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8617281B2 (en) * 2007-08-13 2013-12-31 Applied Cleantech, Inc Methods and systems for feedstock production from sewage and product manufacturing therefrom
US11453899B2 (en) 2016-03-31 2022-09-27 Toray Industries, Inc. Method of producing protein
EP3530743A1 (en) 2018-02-21 2019-08-28 Cambridge Glycoscience Ltd Method of production
CN113163828B (zh) 2018-08-15 2024-04-26 剑桥糖质科学有限公司 新型组合物、其用途及其形成方法
WO2021032647A1 (en) 2019-08-16 2021-02-25 Cambridge Glycoscience Ltd Methods of treating biomass to produce oligosaccharides and related compositions
CN110894522A (zh) * 2019-12-01 2020-03-20 齐齐哈尔龙江阜丰生物科技有限公司 一种玉米皮水解产物及其在发酵制备苏氨酸中的应用
JP2023506464A (ja) 2019-12-12 2023-02-16 ケンブリッジ グリコサイエンス エルティーディー 低糖の多相食料品
WO2021153585A1 (ja) * 2020-01-28 2021-08-05 東レ株式会社 糖液の製造方法
CN111593082B (zh) * 2020-07-03 2023-10-13 浙江华康药业股份有限公司 一种稳定木质纤维素酶解过程的方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01312997A (ja) * 1988-06-08 1989-12-18 Uop Inc 加水分解によってとうもろこし粒外皮から選択された単糖類を製造するためのコンビネーション方法
JP2010536558A (ja) * 2007-08-22 2010-12-02 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー バイオマス処理方法
WO2011115040A1 (ja) * 2010-03-15 2011-09-22 東レ株式会社 糖液の製造方法およびその装置
WO2013096698A1 (en) * 2011-12-22 2013-06-27 Xyleco, Inc. Processing of biomass materials
JP2013530724A (ja) * 2010-07-19 2013-08-01 ザイレコ,インコーポレイテッド バイオマスの加工

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6387994A (ja) 1986-10-02 1988-04-19 Res Assoc Petroleum Alternat Dev<Rapad> 糖化液から糖液および酵素を得る方法
US8765405B2 (en) 2008-12-09 2014-07-01 Toray Industries, Inc. Method for producing sugar liquid
US8597431B2 (en) * 2009-10-05 2013-12-03 Andritz (Usa) Inc. Biomass pretreatment
JP4947223B1 (ja) 2010-08-31 2012-06-06 王子製紙株式会社 リグノセルロース含有バイオマスの酵素糖化処理方法
JP5621528B2 (ja) 2010-11-12 2014-11-12 王子ホールディングス株式会社 リグノセルロース系原料の酵素糖化処理方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01312997A (ja) * 1988-06-08 1989-12-18 Uop Inc 加水分解によってとうもろこし粒外皮から選択された単糖類を製造するためのコンビネーション方法
JP2010536558A (ja) * 2007-08-22 2010-12-02 イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー バイオマス処理方法
WO2011115040A1 (ja) * 2010-03-15 2011-09-22 東レ株式会社 糖液の製造方法およびその装置
JP2013530724A (ja) * 2010-07-19 2013-08-01 ザイレコ,インコーポレイテッド バイオマスの加工
WO2013096698A1 (en) * 2011-12-22 2013-06-27 Xyleco, Inc. Processing of biomass materials

Also Published As

Publication number Publication date
CN105473729B (zh) 2019-05-14
CN105473729A (zh) 2016-04-06
BR112016003282A2 (ja) 2017-08-01
CA2921891A1 (en) 2015-02-26
CA2921891C (en) 2022-08-02
BR112016003282B8 (pt) 2022-04-05
JP6458498B2 (ja) 2019-01-30
BR112016003282B1 (pt) 2022-03-22
WO2015025927A1 (ja) 2015-02-26
US20160208300A1 (en) 2016-07-21
US10563238B2 (en) 2020-02-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6458498B2 (ja) 糖液の製造方法
JP6565684B2 (ja) 糖液の製造方法
JP6447126B2 (ja) 糖液の製造方法
JP6597311B2 (ja) 糖液およびキシロオリゴ糖の製造方法
US9909158B2 (en) Method of producing sugar solution including washing with aqueous alkaline and inorganic salt solutions
JP2014064563A (ja) 糖液の製造方法
WO2014208493A1 (ja) 糖液の製造方法
JP6485042B2 (ja) 糖液の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20161209

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170807

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180914

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181113

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181127

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181210

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6458498

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151