JPWO2015025861A1 - 芳香族ポリエステル分解酵素及び該酵素を用いた芳香族ポリエステル分解方法 - Google Patents

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Abstract

PET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂を加水分解する酵素の提供、及び該酵素を用いたPET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂の分解方法の提供。配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素によりポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステルを分解することができる。さらに、前記ポリエステル分解酵素と配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列からなるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素によりポリエチレンテレフタレート(PET)等の芳香族ポリエステルの酵素分解により生じるMHETを分解し、完全にモノマー化することができる。

Description

本発明は、飲料用のボトル等で汎用されている合成ポリマーであるポリエチレンテレフタレート(以下PET)等の芳香族ポリエステルを加水分解する酵素に関する。
PET樹脂は、透明性が高く強度にも優れていることから、ボトル等に幅広く利用されてきた。しかし、安定であるが故に自然界で分解することが無いため、ゴミ問題が起きていた。そこで、リサイクルが行われるようになり、現在ではケミカルリサイクルが広く行われている。
一般的な加水分解によるケミカルリサイクルでは、PETを150℃〜250℃の高温で触媒と過剰の水で処理するとテレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)に解重合される。加水分解の触媒は硫酸のような酸、又は水酸化ナトリウムのような塩基が使用されている。
また、メタノール分解を使ったケミカルリサイクルでは、必要に応じて触媒を添加して、溶解したPETにメタノールを加え、20〜70 atmの圧力下で160℃〜240℃で加熱すると99%の収率で高純度のPET原料を得ることができる。
しかし、ケミカルリサイクルは純粋なPET製品にのみ可能であり、高コストや強アルカリ処理などにともなう廃液の処分問題をかかえている。
これら使用済みPETを環境に負荷をかけずに処理することを目指して、PET分解菌の探索を行い、PETを二酸化炭素と水まで完全分解する菌株(No.201-F6株)の分離に成功したという報告がある(特許文献1を参照)。該菌株はその16S rRNAの塩基配列から、ldeonella 属と同定された。しかしながら、該株からPET分解酵素群はいまだ公表されていない。
近年の研究ではクチン分解酵素であるcutinaseがPETを加水分解するという報告がされている(非特許文献1を参照)。
このように、PET樹脂のリサイクルのためには、エステル結合を加水分解して、モノマーに分解する必要があった。このため、酵素によるPET分解が検討されてきたが、高活性な酵素は報告されていない。
特開2008-199957号公報
Ribitsch, Doris et al., Biocatalysis and Biotransformation (2012), 30(1), 2-9
本発明は、PET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂を加水分解する酵素の提供、及び該酵素を用いたPET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂の分解方法の提供を目的とする。
PETを二酸化炭素と水まで完全分解する菌株であるNo.201-F6株は、PETを分解、資化する唯一の細菌である。本発明者らは、本菌のPET加水分解酵素はcutinaseとは異なり、PETを本来の基質とする新規酵素である可能性が高いと考えた。しかし、これまでにPETフィルムや、PET類似低分子化合物への活性を指標に、PET分解酵素の同定が試みられてきたが、遺伝子の同定には至っていなかった。本発明者らはNo.201-F6株のPET分解酵素遺伝子を同定するため、新たにゲノム解析を行い、目的遺伝子を探索するアプローチを試みた。これまで、小田らにより、No.201-F6株のPETフィルム分解により培養液にTPAとbis(2-hydroxyethyl)terephthalate (BHET)を遊離する知見が得られていた。そこで、No.201-F6株のゲノム上のEsteraseやLipase遺伝子をin silicoで探索したところ、42個の推定Esterase遺伝子、8個の推定Lipase遺伝子を見出した。これらの中で推定Lipase遺伝子ORF2645はThermobifida fusca由来cutinaseと51%の相同性があり、Acidoborax delafiedii BS-3 株由来のPBSA depolymeraseと82%の相同性があることがわかった。PBSAはPoly(tetramethylene succinate)-co-adipateという脂肪酸エステルの1つである。これらの結果からこのORF2645はPET樹脂を加水分解する酵素をコードしていると予測した。
本発明者らは、非結晶PET資化菌Ideonella sp. No.201-F6株のゲノム上に見出されたPET分解酵素遺伝子と予測されたORF2645の大腸菌によるタンパク質の異種発現、および精製を行い、機能同定を試みた。
精製ORF2645タンパク質を非結晶PET樹脂であるtere-PETフィルムに対して作用させたところ、実体顕微鏡による観察ではフィルム表面の白化、亀裂が確認でき、走査型電子顕微鏡 (SEM)による観察では分解溝が確認できた。HPLCによるtere-PETフィルムの分解産物の分析では、tere-PETの部分構造であるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)、およびテレフタル酸(TPA)が検出された。以上の結果からORF2645タンパク質はPET分解酵素であると同定した。
さらに発明者らは、本菌をPETを主炭素源とする培地で生育させ、トランスクリプトーム解析を行った。そして、本培地で非常に高発現する遺伝子の一つORF3352遺伝子に着目した。本遺伝子の大腸菌によるタンパク質の異種発現、および精製を行い、機能同定を試みた結果、本酵素が高特異性のMHET加水分解酵素であることが判明した。
このようにして、本発明者らは新たにPET分解酵素、MHET加水分解酵素を同定し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1] 以下の(a)又は(b)の芳香族ポリエステル分解酵素:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
[2] 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、[1]の芳香族ポリエステル分解酵素。
[3] 以下の(a)または(b)の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA:
(a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
(b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
[4] 以下の(c)または(d)の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA:
(c) 配列表の配列番号1に表される塩基配列若しくは配列番号1に示す塩基配列の82番目〜873番目の塩基配列、又は配列番号3に表される塩基配列からなるDNA;又は
(d) 配列表の配列番号1に表される塩基配列若しくは配列番号1に示す塩基配列の82番目〜873番目の塩基配列、又は配列番号3に表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、かつ芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA。
[5] 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、[3]又は[4]のDNA。
[6] [3]〜[5]のいずれかのDNAを含有する発現ベクター。
[7] [6]の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
[8] [7]の宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、芳香族ポリエステル分解酵素を産生させ、該芳香族ポリエステル分解酵素を回収することを含む芳香族ポリエステル分解酵素の製造方法。
[9] [1]又は[2]の芳香族ポリエステル分解酵素を芳香族ポリエステルに作用させることを含む、芳香族ポリエステル分解方法。
[10] 以下の(a)又は(b)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素:
(a) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列からなるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素;又は
(b) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素。
[11] 以下の(a)または(b)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA:
(a) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列からなるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素;又は
(b) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素。
[12] 以下の(c)または(d)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA:
(c) 配列表の配列番号9に表される塩基配列若しくは配列番号9に示す塩基配列の52番目〜1812番目の塩基配列、又は配列番号11に表される塩基配列からなるDNA;又は
(d) 配列表の配列番号9に表される塩基配列若しくは配列番号9に示す塩基配列の52番目〜1812番目の塩基配列、又は配列番号11に表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、かつモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA。
[13] [11]又は[12]のDNAを含有する発現ベクター。
[14] [13]の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
[15] [14]の宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を産生させ、該モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を回収することを含むモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素の製造方法。
[16] [1]若しくは[2]の芳香族ポリエステル分解酵素、並びに[10]のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素に作用させることを含む、芳香族ポリエステル分解方法。
[17] 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、[16]の分解方法。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2013-171745号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
PET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂に本発明の芳香族ポリエステル分解酵素ORF2645タンパク質を作用させることにより、モノマーへと分解することができる。従って、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を用いることにより、PETボトル等の廃棄物を適切に処理することができ、またPET樹脂をリサイクルし有効利用することができる。さらに、PET繊維の表面に本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を作用させて、親水基を露出させることにより、染色性やしなやかさを向上させることができる。
また、さらに、PET樹脂等の芳香族ポリエステル樹脂に本発明の芳香族ポリエステル分解酵素ORF2645タンパク質とモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素ORF3352タンパク質を作用させることにより、完全にモノマーへと分解することができる。
Ideonella由来ORF2645遺伝子の塩基配列を示す図である。 E. coliで発現させるためにコドン使用頻度の至適化を行ったoptORF2645遺伝子の塩基配列を示す図である。 ニッケルアフィニティークロマトグラフィーにおけるORF2645タンパク質の精製結果を示す図である。 pNP-butyrateの構造式(A)及びp-nitrophenolの構造式(B)を示す図である。 Bis(2-Hydroxyethyl)Terephtalic Acid(BHET)の構造式を示す図である。 tere-PETフィルムを用いた活性評価実験の反応液のHPLCを用いた解析結果を示す図であり、tere-PETフィルムを用いた活性評価実験の反応液から検出されたMHET濃度を示す図である。 ORF2645タンパク質のBHET分解活性を示した図である。 図6−1を定量し、図示したものである。 ORF2645タンパク質で処理したtere-PETフィルムの実体顕微鏡による観察写真を示す図である。 ORF2645タンパク質のtere-PETフィルムに対する活性を示すSEMによる表面観察写真像を示す図である。 ORF2645タンパク質のpH依存的活性を示す図であり、各pH条件におけるpNP-butyrateに対するORF2645タンパク質の比活性(酵素 1 μMがpNP-butyrateから1秒間に遊離するpNP濃度)を示す図である。 ORF2645タンパク質によるPET及びBHETの加水分解反応を示す図である。 Ideonella由来ORF3352遺伝子の塩基配列を示す図である。 E. coliで発現させるためにコドン使用頻度の至適化を行ったoptORF3352遺伝子の塩基配列を示す図である。 ORF3352タンパク質によるMHETの分解と、それに伴うTPAの生成を経時的に測定した図である。 ORF3352タンパク質の、MHET、没食子酸エチル、フェルラ酸エチル及びクロロゲン酸水和物に対する活性を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、新規な芳香族ポリエステル分解酵素(ポリエチレンテレフタレート(PET)又はその部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を加水分解するORF2645タンパク質)である。
また、本発明は、上記の新規な芳香族ポリエステル分解能を有する酵素及び該酵素を用いた芳香族ポリエステル分解方法である。本発明において、芳香族ポリエステル分解能を有する酵素を代表的な基質の名をとりPET分解酵素と呼ぶこともある。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、土壌から単離されたIdeonella属に属するグラム陰性桿菌であるIdeonella sp. No.201-F6株より単離することができる。Ideonella属微生物の単離は公知の方法で行なうことができる。Ideonella sp. No.201-F6株については、特開2008-199957号公報に記載されている。
Ideonella sp. No.201-F6株から単離された芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNAの塩基配列を図1及び配列番号1に示す。該酵素のアミノ酸配列を配列番号2に示す。本発明において、該芳香族ポリエステルPET分解酵素をコードする遺伝子をORF2645遺伝子と呼ぶ。図1及び配列番号1に示す塩基配列はシグナル配列をコードするDNAの塩基配列も含み(第1〜81番目の塩基からなる配列がシグナル配列をコードする配列)、配列番号2に示すアミノ酸配列はシグナル配列も含む(第1〜27番目のアミノ酸からなる配列がシグナル配列)。本発明の芳香族ポリエステル分解酵素はシグナル配列を含むものも、含まないものも包含する。また、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNAは、シグナル配列をコードする塩基配列を含むものも、含まないものも包含する。シグナル配列を含まないものとして、配列番号1に示す塩基配列の82番目〜873番目の塩基からなるDNAが挙げられる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、上記のIdeonella sp. No.201-F6株を培養し、該株に産生させ精製することもでき、本発明の酵素をコードする遺伝子で宿主微生物を形質転換し、該形質転換微生物を培養することによっても得ることができる。後者の方法で製造する場合、宿主微生物での発現量を上げるためにコドンの利用率を宿主微生物に合わせて最適化することが好ましい。コドンの最適化は公知の方法で行うことができる。例えば、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を、大腸菌を宿主として組換え酵素として作製するときに、コドンを最適化した塩基配列を配列番号3に示す。本発明において、該配列からなる遺伝子をoptORF2645遺伝子と呼ぶ。optORF2645遺伝子がコードする芳香族ポリエステル分解酵素のアミノ酸配列を配列番号4に示す。配列番号4に示すアミノ酸配列は、配列番号2に示すアミノ酸配列からシグナル配列を除いたアミノ酸配列と同じである。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、そのアミノ酸配列からなるタンパク質が芳香族ポリエステル分解酵素活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
例えば、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2又は4で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
このような配列番号2又は4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2又は4のアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
このような配列番号2又は4のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は配列番号2又は4のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
また、配列番号1又は3に表される塩基配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと下記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって芳香族ポリエステル分解酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。すなわち、DNAを固定したフィルターを用いて、0.7〜1.0 MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。あるいは、サザンブロッティング法によりニトロセルロース膜上にDNAを転写、固定後、ハイブリダイゼーション緩衝液〔50% フォルムアミド、4×SSC、50 mM HEPES(pH7.0)、10×デンハルツ(Denhardt, s)溶液、100μg/mlサケ精子DNA〕中で42℃で一晩反応させることによりハイブリッドを形成することができるDNAである。
また、配列番号1又は3に表される塩基配列からなるDNAとBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているDNAであって、芳香族ポリエステル分解酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNAに包含される。
さらに、上記DNAに対するRNA、又は該RNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるRNAであって芳香族ポリエステル分解酵素活性を有するタンパク質をコードするRNAも本発明に含まれる。
本発明において、「ポリエステル」とは、主鎖にエステル結合を有する高分子物質をいう。また、本発明の酵素の基質となる「芳香族ポリエステル」とは、芳香族成分を繰り返し単位として含むポリエステルをいう。該繰り返し単位の含有量は、例えば50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%、さらに好ましくは95〜100重量%である。芳香族ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられ、さらに、エチレンテレフタレート繰り返し単位を95重量%以上含むPETが挙げられる。
芳香族ポリエステルはジカルボン酸成分及びジオール成分の重縮合により製造することができる。例えば、PETジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用し、ジオール成分としてエチレングリコールを使用し製造することができる。テレフタル酸以外の他のジカルボン酸成分として、フタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその誘導体;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその誘導体が挙げられる。また、エチレングリコール以外の他のジオール成分としては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール等が挙げられる。
本発明の酵素を用いて芳香族ポリエステルを分解する場合、分解する芳香族ポリエステルの形態に限定はなく、例えば、繊維状、粒状、フレーク状、ペレット状、フィルム状、塊状、ボトル状のものが挙げられる。また、これらの混合体を用いることもできる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、芳香族ポリエステルを分解し得る。例えば、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、イソフタル酸共重合非晶質PET(isoPET)及びテレフタル酸共重合非晶質PET(tere PET)を分解し得る。例えば、フィルム上のiso PETフィルム及びtere PETフィルムを分解し得る。例えば、iso PET及びtere PETを、0.02 mg/cm2・日以上、好ましくは0.05 mg/cm2・日以上、より好ましくは0.1 mg/cm2・日以上、かつ例えば0.3 mg/cm2・日以下、好ましくは0.5 mg/cm2・日以下、より好ましくは1.0 mg/cm2・日以下の速度で分解することができる。本発明の芳香族ポリエステル分解酵素によりPETが分解されたか否かは、例えば、PETの分解産物である、モノヒドロキシエチルテレフタレート(TA-EG、MHET)、或いはテレフタル酸(TPA)の生成を指標にすることによりわかる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、芳香族ポリエステル(例えば、PET)の主鎖を分解し得る。従って、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、芳香族ポリエステル分解中間産物を分解し得る。例えば、芳香族ポリエステルがPETの場合、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)をモノヒドロキシエチルテレフタレート(TA-EG、MHET)に分解することができる。すなわち、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素であるORF2645タンパク質は、PET又はPETの部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を基質として加水分解し、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)を生じる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素の芳香族ポリエステル分解能は、芳香族ポリエステルからなる材料(例えば、フィルム)を酵素で処理し酵素反応を行い、材料の白化を観察すること、あるいは酵素反応後の材料の重量損失を測定することによって調べることができる。また、芳香族ポリエステルや、BHET、TPA・2Na等のPET分解中間産物を薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等により検出することによっても調べることができる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素により、PETボトルなどの廃棄物を処理することができる。本発明の芳香族ポリエステル分解酵素により、PET等の芳香族ポリエステルを分解し、分解物をリサイクルに用いることができる。さらに、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を用いて、PETフィルム等のPET加工品の表面の修飾、PET繊維の表面修飾、PET繊維を使用した衣類の洗浄、リサイクルに供するPET樹脂の洗浄等を行うこともできる。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素による芳香族ポリエステルの分解は、上記の芳香族ポリエステルに本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を作用させることにより行うことができる。ここで、作用とは、芳香族ポリエステルと酵素を接触させ、酵素反応を起こさせることをいう。酵素反応させるときの芳香族ポリエステル分解酵素の濃度は、0.5〜20μg/mL、好ましくは1〜10μg/mL、さらに好ましくは1〜5μg/mL、特に好ましくは1〜3μg/mL程度であるが、この濃度に限定はされず、分解する芳香族ポリエステルの量等に応じ適宜設定することができる。反応温度は、15〜50℃、好ましくは20〜40℃、特に好ましくは25〜30℃である。反応時のpHは、pH6.0付近であり、好ましくは4.0〜8.0、さらに好ましくは4.5〜7.5、特に好ましくは5.0〜6.5である。反応時間は、分解する芳香族ポリエステルの量等により適宜設定でき、また、芳香族ポリエステル繊維の修飾や芳香族ポリエステルの表面の修飾等を目的とするかにより異なるが、数時間から数か月である。長時間の処理を行う場合は、定期的に芳香族ポリエステル分解酵素を添加してもよい。
本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、Ideonella sp. No.201-F6株を培養し、製造することができ、Ideonella sp. No.201-F6株の培養液等の培養物から公知の方法を用いて単離することができる。また、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素は、該芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。本発明のDNAを挿入するためのベクターは、細菌、酵母又は動物細胞等の宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。発現ベクターの構築に用いられるベクターDNAは、広く普及した入手の容易なものが用いられる。例えば、pETベクター、pQEベクター、pColdベクター、pUC19ベクター等が挙げられる。本発明の発現ベクターの構築方法は、特に限定されるものではなく常法により行うことができる。本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、本発明のDNAを発現し得るものであれば特に制限されないが、例えば、細菌としては大腸菌、枯草菌等が、酵母としてはサッカロマイセス・セレビィシエ等が、動物細胞としては、チャイニーズ・ハムスター・卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、マウス線維芽細胞等が挙げられる。
本発明は、上記DNAを含む宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、本発明の芳香族ポリエステル分解酵素を産生させ、該芳香族ポリエステル分解酵素を回収することを含む芳香族ポリエステル分解酵素の製造方法を包含する。宿主細胞により産生された芳香族ポリエステル分解酵素は、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、クロマトフォカシング、等電点電気泳動法、ゲル電気泳動法等の公知の精製法を単独又は組み合わせて精製することができる。
モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素(ORF3352タンパク質)
さらに、本発明は芳香族ポリエステル分解産物である、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を包含する。
該酵素は、土壌から単離されたIdeonella属に属するグラム陰性桿菌であるIdeonella sp. No.201-F6株より単離することができる。Ideonella属微生物の単離は公知の方法で行なうことができる。Ideonella sp. No.201-F6株については、特開2008-199957号公報に記載されている。
Ideonella sp. No.201-F6株から単離されたモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNAの塩基配列を図11及び配列番号9に示す。該酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す。本発明において、該モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードする遺伝子をORF3352遺伝子と呼ぶ。図11及び配列番号9に示す塩基配列はシグナル配列をコードするDNAの塩基配列も含み(第1〜51番目の塩基からなる配列がシグナル配列をコードする配列)、配列番号9に示すアミノ酸配列はシグナル配列も含む(第1〜17番目のアミノ酸からなる配列がシグナル配列)。本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素はシグナル配列を含むものも、含まないものも包含する。また、本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNAは、シグナル配列をコードする塩基配列を含むものも、含まないものも包含する。シグナル配列を含まないものとして、配列番号9に示す塩基配列の52番目〜1812番目の塩基からなるDNAが挙げられる。
本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素は、上記のIdeonella sp. No.201-F6株を培養し、該株に産生させ精製することもでき、該酵素をコードする遺伝子で宿主微生物を形質転換し、該形質転換微生物を培養することによっても得ることができる。後者の方法で製造する場合、宿主微生物での発現量を上げるためにコドンの利用率を宿主微生物に合わせて最適化することが好ましい。コドンの最適化は公知の方法で行うことができる。例えば、本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を、大腸菌を宿主として組換え酵素として作製するときに、コドンを最適化した塩基配列を配列番号11に示す。本発明において、該配列からなる遺伝子をoptORF3352遺伝子と呼ぶ。optORF3352遺伝子がコードするモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素のアミノ酸配列を配列番号12に示す。配列番号12に示すアミノ酸配列は、配列番号10に示すアミノ酸配列からシグナル配列を除いたアミノ酸配列と同じである。
本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素は、そのアミノ酸配列からなるタンパク質がモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有する限り、当該アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
例えば、配列番号10又は12で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号10又は12で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号10又は12で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1〜10個、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
このような配列番号10又は12のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号10又は12のアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
このような配列番号10又は12のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は配列番号10又は12のアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
また、配列番号9又は11に表される塩基配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと下記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであってモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のDNAに含まれる。すなわち、DNAを固定したフィルターを用いて、0.7〜1.0 MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150 mM NaCl、15 mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。あるいは、サザンブロッティング法によりニトロセルロース膜上にDNAを転写、固定後、ハイブリダイゼーション緩衝液〔50% フォルムアミド、4×SSC、50 mM HEPES(pH7.0)、10×デンハルツ(Denhardt, s)溶液、100μg/mlサケ精子DNA〕中で42℃で一晩反応させることによりハイブリッドを形成することができるDNAである。
また、配列番号9又は11に表される塩基配列からなるDNAとBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の配列同一性を有しているDNAであって、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNAに包含される。
さらに、上記DNAに対するRNA、又は該RNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるRNAであってモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するタンパク質をコードするRNAも本発明に含まれる。
本発明のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素は、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)を加水分解し、テレフタル酸(TPA)及びエチレングリコール(EG)を生成する。
上記の芳香族ポリエステル分解酵素であるORF2645タンパク質は、PET又はPETの部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を加水分解し、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)を生じる。ORF2645タンパク質による加水分解により生じたモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)を、さらにモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素であるORF3352タンパク質で加水分解することにより、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)が生成する。これら2つの酵素によりPET又はBHETをテレフタル酸(TPA) とエチレングリコール(EG)にまで分解することができる。
ORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質を用いた芳香族ポリエステルの分解
本発明は、ORF2645タンパク質とORF3352タンパク質をPET等の芳香族ポリエステルに作用させることを含む、芳香族ポリエステルの分解方法を包含する。ここで、作用とは、PET等の芳香族ポリエステルをORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質と接触させ、酵素反応を起こさせることをいう。ORF2645タンパク質によりPET又はその部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)がモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)に加水分解され、さらに、ORF3352タンパク質によりモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)がテレフタル酸(TPA)に加水分解される。
酵素反応させるときのORF2645タンパク質又はORF3352タンパク質の濃度は、0.5〜20μg/mL、好ましくは1〜10μg/mL、さらに好ましくは1〜5μg/mL、特に好ましくは1〜3μg/mL程度であるが、この濃度に限定はされず、分解する芳香族ポリエステルの量等に応じ適宜設定することができる。反応温度は、15〜50℃、好ましくは20〜40℃、特に好ましくは25〜30℃である。反応時のpHは、pH6.0付近であり、好ましくは4.0〜8.0、さらに好ましくは4.5〜7.5、特に好ましくは5.0〜6.5である。反応時間は、分解する芳香族ポリエステルの量等により適宜設定でき、また、芳香族ポリエステル繊維の修飾や芳香族ポリエステルの表面の修飾等を目的とするかにより異なるが、数時間から数か月である。長時間の処理を行う場合は、定期的に芳香族ポリエステル分解酵素を添加してもよい。
この際、ORF3352タンパク質とORF2645タンパク質を混合して用いればよい。
さらに、本発明のORF2645タンパク質とORF3352タンパク質を共発現させてもよい。共発現させるには、ORF2645タンパク質をコードするDNAとORF3352タンパク質をコードするDNAをそれぞれ、別々に2つの発現ベクターに挿入したもので宿主微生物を形質転換してもよいし、ORF2645タンパク質をコードするDNAとORF3352タンパク質をコードするDNAを1つの発現ベクターに挿入したもの(2遺伝子発現ベクター)で宿主微生物を形質転換してもよい。共発現させることにより、ORF2645タンパク質とORF3352タンパク質が混合した状態で製造することができる。得られたORF2645タンパク質とORF3352タンパク質の混合物を用いてPET等の芳香族ポリエステルを分解することができる。
本発明のORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質を用いて芳香族ポリエステルを分解する場合、分解する芳香族ポリエステルの形態に限定はなく、例えば、繊維状、粒状、フレーク状、ペレット状、フィルム状、塊状、ボトル状のものが挙げられる。また、これらの混合体を用いることもできる。
本発明のORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質により、PETボトルなどの廃棄物を処理することができる。本発明のORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質により、PET等の芳香族ポリエステルを分解し、分解物をリサイクルに用いることができる。さらに、本発明のORF2645タンパク質及びORF3352タンパク質を用いて、PETフィルム等のPET加工品の表面の修飾、PET繊維の表面修飾、PET繊維を使用した衣類の洗浄、リサイクルに供するPET樹脂の洗浄等を行うこともできる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1 No. 201-F6株由来ORF2645の調製
京都工芸繊維大学名誉教授 小田 耕平博士より非結晶PET資化菌ldeonella sp. No.201-F6株の供与を受けた。該菌株については、特開2008-199957号公報に記載されている。
本実施例及び後記の実施例2〜4において、非結晶PET資化菌ldeonella sp. No.201-F6株の次世代シークエンサーにより得られたゲノム情報を基にPET分解酵素遺伝子と予測された ORF2645遺伝子の機能同定について述べる。
方法
1.ORF2645タンパク質発現ベクターの構築
Ideonella由来ORF2645は、Escherichia coli (E. coli)では使用頻度の低いレアコドンが多数含まれている。図1及び配列番号1にIdeonella由来ORF2645遺伝子の塩基配列を示す。配列番号2にIdeonella由来ORF2645タンパク質のアミノ酸配列を示す。また、ORF2645タンパク質のN末端には膜輸送するシグナル配列 (推定)が存在する。図中下線部はシグナル配列を示す。これまでにIdeonella由来ORF2645のNative配列からシグナルペプチド配列を除いた配列を用いたE. coli によるタンパク質の発現が試みられたが、SDS-PAGE上のバンドとして確認できなかった。そこでE. coliで目的タンパクを発現させるために本遺伝子のコドン使用頻度の至適化および全合成を行った。この遺伝子の配列をoptORF2645とした。図2及び配列番号3にoptORF2645遺伝子の塩基配列を示す。図2中、下線部は最適化したコドンを示す。さらに、配列番号4にoptORF2645遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を示す。DNA PolymeraseにPrimeSTAR-GC (タカラバイオ社)を使用し、optORF2645をPCRで増幅した。プライマーは、optORF2645-f (5’- GGGAATTCCATATGCCAAACAAACCCGTATGCGCTG -3’)(配列番号5)、optORF2645-r (5’- GGGAATTCCATATGGGTGCCATTGCGATTGTTCCG -3)(配列番号6)を用いた。その後、脱塩精製した。
プラスミドベクターとしてpET-21b(+) Vector (Novagen社)を使用した。ベクター、インサートともにXho IとNde I (ともにタカラバイオ社)を用い、制限酵素処理を行った。
電気泳動で制限酵素によりpET-21b Vectorsとインサートが切断されていることを確認後、セルフライゲーションを防ぐために、Bacterial Alkaline Phosphatase(BAP) (タカラバイオ社)により脱リン酸化処理を行った。
BAP処理済のプラスミドベクターとインサートをT4 DNA ligase (New England BioLab社)を使用し、ライゲーションを行った。プラスミドベクターとインサートのモル比は1:3とした。
プラスミドベクターに組み込まれたDNA断片の長さをコロニーPCRにより確認した。PCRはGotaq Green Master Mix (Promega社)を用い、プライマーとしてT7 promoter (5’- CGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG -3’)(配列番号7)とT7 terminator (5’- GCTAGTTATTGCTCAGCGGTGG -3’)(配列番号8)を使用した。
次に長さが確認できたプラスミドベクターのインサートの塩基配列を確認するためにサンガーシークエンスを行った。Plasmid Mini Purification Kit (Cosmo Genetch社)により、プラスミドを抽出した。これをテンプレートとして、プライマーにT7 promoter、T7 terminator、optORF2645-fとoptORF2645-rを使用し、BigDye terminator v.3.1Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems社)によりPCRを行った。
その後、ABI PRISM(登録商標)3100 Genetic Analyzer (Applied Biosystems社)により配列を解読した。
解析データはBio Editで確認、修正し、Clustal Wにより得られた配列と既知配列の比較を行った。
2.ORF2645タンパク質の発現
コンピテントセルBL21 Codon Plus (DE3) RIPL (Agilent社)にORF2645発現ベクターをヒートショック法で導入した。タンパク質発現誘導剤としてIPTGを用いタンパク質を発現させた。菌体を集め、超音波破砕機を使用し破砕し、4℃で14,000 rpm 20分間遠心し上清を粗酵素液とした。
得られた粗酵素液中の発現タンパク質をSDS-PAGEにより確認した。
IPTGを添加した後、16℃で一晩培養した。
3. ORF2645タンパク質の精製
COSMOGEL His-Accept (ナカライテスク社)を使用して、ニッケルアフィニティクロマトグラフィーを行った。各溶出液をSDS‐PAGEでバンドを確認し目的のタンパク質が精製されているかどうか確認を行った。
精製タンパク質を280 nmの波長により、吸光度計BioSpec-mini(SHIMADZU社)で測定し、濃度を算出した。
ORF2645タンパク質のモル吸光係数εはSwiss Institute of Bioinformatics社のProtParam tool (http://web.expasy.org/protparam/)を使い、そのアミノ酸配列より1.389Lg-1cm-1とした。
結果
1.ORF2645タンパク質発現ベクターの構築
pET-21b(+) VectorのXho IとNde IサイトにoptORF2645を組み込み、サンガーシークエンスによりoptORF2645の塩基配列を確認した。作製した発現ベクターをpET21-b/optORF2645とした。
2.ORF2645タンパク質の発現・可溶化
E. coli BL21 Codon Plus (DE3) RIPLに発現ベクター(pET21-b/optORF2645)を導入し、IPTGにより16℃で発現を誘導した。SDS-PAGEにより確認したところ、目的タンパク質の発現を確認することができた。
3.ORF2645タンパク質の精製
ORF2645タンパク質を発現させた大腸菌の粗酵素液からニッケルアフィニティクロマトグラフィーによりORF2645タンパク質を精製した。各溶出液をSDS‐PAGEでバンドを確認したところ、イミダゾール濃度が50 mM、100 mM、250 mMの溶出液にORF2645タンパク質と考えられる30 kDa付近のバンドを確認した(図3)。結果、100 mLの培養液から、20μgの精製ORF2645タンパク質を得た。
実施例2 ORF2645タンパク質の活性実験
方法
1.tere-PETフィルムを使用した活性実験
精製タンパク質のPET樹脂に対する活性評価は、京都工芸繊維大学名誉教授 小田 耕平博士から提供された非結晶性tere-PETフィルムを使用して行った。tere-PETとは、ベンゼン環のパラ位に2つのカルボキシル基が結合したテレフタル酸とエチレングリコールの縮重合体である。固体の状態は結晶と非晶質固体(非結晶性)の2つある。結晶は、結晶を構成する分子が3次元にわたって規則正しく積み重なった状態である。
非結晶性PET樹脂は、融解状態の樹脂を260℃の融点からガラス転移温度の73℃以下まで急冷することで調製できる。フィルム表面にタンパク質が付着するのを防ぐために手袋を着用し、穴あけパンチでフィルムを径6 mmの小片に抜き取った。その後、小片を5分間70%エタノールに入れ殺菌し室温で乾燥させた。滅菌処理された96穴プレートに小片を各穴に1枚ずつ入れ、100 mMリン酸Buffer (pH 7.0)で濃度を調整した精製ORF2645タンパク質溶液を200μLを加えた。30℃のインキュベータで静置し反応させた。1日おきにフィルム表面を実体顕微鏡で観察し、実体顕微鏡の接眼レンズにデジタルカメラのレンズをあてて撮影を行った。
2.逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるtere-PET分解産物の検出
tere-PETフィルムを用いた活性評価実験において得られた各サンプル反応上清からPET分解産物を検出するため、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた。まず各サンプルを限外濾過膜(Amicon Ultra, cut off; 5 kDa)に通過させてタンパク質を取り除いた。リン酸Buffer(20 mM NaH2PO4, H3PO4, pH 2.5)で10倍希釈後、HPLCに各サンプルを20μLずつアプライした。展開溶媒はメタノール(A)と20 mMリン酸Buffer(pH 2.5) (B)を使用した。2つの溶媒の直線的濃度勾配により溶出を試みた。
HPLCの条件及び勾配条件は表1に示すとおりであった。
Figure 2015025861
TPAの検量線は検出されるピーク面積と、濃度を対応させることによって作成した。TPA溶液はDMSOに溶かし20 mMリン酸Buffer (pH 2.5)で希釈し1 mMに調整した。その後、1 mM TPA溶液を2倍ずつ20 mMリン酸Buffer (pH 2.5)で段階希釈しHPLCにアプライし、ピークを検出した。
3.para-nitorophenyl (pNP)-butyrateを用いた活性実験
より簡便、且つ定量的に加水分解活性を評価するために、人工基質であるpNP-butyrate (p-ニトロフェニル酪酸)(図4−1A)を用いた。pNP-butyrateは加水分解されるとp-nitrophenol(図4−1B)が遊離する。p-nitrophenolは黄色を呈し、吸光度計で濃度を測定することができる。120秒間吸光度計で波長415 nmで遊離したp-nitrophenol濃度を計測した。反応液組成を表2に示す。
Figure 2015025861
次に、濃度を調製したp-nitrophenol溶液の波長415 nmにおける吸光度を測定し(n=3)、その平均値と濃度を対応させた検量線の傾きからモル吸光係数εを算出した。p-nitrophenolをDMSOに10 mM溶かし終濃度が1 mMになるように100 mMリン酸Buffer(pH 7.0)で希釈し調整した。1 mM p-nitrophenol溶液を100 mMリン酸Buffer(pH 7.0)で2倍ずつ段階希釈し吸光度を測定した。
4.Bis (2-Hydroxyethyl) Terephtalic Acid (BHET)を用いた活性実験
PETの部分構造であるBHET(図4−2)に対する活性を調べた。反応時間30分後、60分後、180分後、1日後に反応液を氷上で急冷し、限外濾過膜(Amicon Ultra, cut off; 5 kDa)によってORF2645タンパク質を取り除くことで反応を停止させた。各サンプルを2つずつ用意した。HPLC条件は表1に示す条件と同様とした。BHETはDMSOに溶かし100 mMリン酸Buffer (pH 7.0)で希釈し10 mM溶液を調製した。調製したBHETの検量線BHET濃度を上記の3と同条件で測定し、検出されるピーク面積と対応させて検量線を作成した。BHET溶液は最初にDMSOに10 mMになるように溶かし、終濃度が1 mMになるように20 mMリン酸Buffer (pH 2.5)で希釈し調整した。反応液組成を表3に示す。
Figure 2015025861
結果
1.tere-PETフィルムを使用した活性実験
精製したORF2645タンパク質のtere-PETフィルムに対する活性を実体顕微鏡で観察した。
2.2μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルでは反応を始めて3日目に四方に亀裂が入り著しい変化が確認できた。時間経過とともに亀裂がさらに広がり肉眼でもフィルム表面が白く濁っていることが確認できた。
22μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルでは反応を始めて3日目に横方向にはいる亀裂を確認した。2.2μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルに比べ変化は少ないが、時間経過とともに亀裂が広がっていくことが確認できた。
ORF2645タンパク質のtere-PETフィルムへの活性は濃度が2.2μg/mLにおいて最も高く、次に22μg/mL、そして0.22μg/mLにおいては活性が確認できなかった。
2.逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるtere-PET分解産物の検出
tere-PETフィルムを用いた活性実験の反応開始後29日後の各サンプル反応上清を用いて、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるPET分解産物の検出を試みた。まず、標準サンプルにより、TPAは7.5 min付近に、BHETは9.5 min付近に検出されピークが現れることがわかった。
次に、tere-PETフィルムにORF2645タンパク質溶液を添加したサンプルの解析をHPLCを用いて行った。図5に、tere-PETフィルムを用いた活性評価実験の反応液のHPLCを用いた解析結果を示すORF2645タンパク質溶液を添加していないコントロールにはPET分解産物と考えられるピークは検出されず、22μg/mL、2.2μg/mL、0.22μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルには主な分解産物であるMHETのピークが検出された。つまり、tere-PETフィルムは自発的に分解されず、ORF2645タンパク質はtere-PETフィルムからTPAを遊離する活性があることが示された。
その結果、実体顕微鏡観察で最も活性が高いと推察された2.2μg/mLのタンパク質溶液を添加したサンプルの反応液が最も高いTPA遊離活性を持つことが定量的にも示された(図5)。この実験結果からも、ORF2645タンパク質は濃度が2.2μg/mL付近で最も活性が高いことが示された。
また実体顕微鏡で亀裂が観察されなかった精製ORF2645タンパク質を添加した他のサンプルの反応液からもTPAが遊離し、活性があることがわかった(図5)。
3.pNP-butyrateを使用した活性実験
ORF2645タンパク質のpNP-butyrate からのpNP 遊離活性を測定した。まず、pNPのpH 7.0における波長415 nmでの検量線を作成、活性を定量化した。検量線の傾きよりモル吸光係数ε=8.3 mM-1cm-1と算出された。
活性測定の結果、ORF2645タンパク質はpNP-butyrateに対して活性を示し、tere-PETと違いORF2645タンパク質濃度が濃いほどpNP遊離活性が高くなっていくことも示された。比活性は、それぞれを平均したところ、ORF2645タンパク質1μMあたり1秒間に11μMのpNP-butyrateを加水分解していることが示された。
4.Bis (2-Hydroxyethyl) Terephtalic Acid(BHET)に対しての活性実験
ORF2645タンパク質のBHETに対する活性をHPLCで測定した。HPLCの結果を、図6−1に示す(縦軸:検出強度μV、横軸:経過時間)より9.0 min付近のBHETのピークが反応時間が長くなるほど減少し、8.0 min付近に、それとともに増加するピークが確認できた。ORF2645タンパク質はPET樹脂の部分構造であるBHETに対して酵素活性があることがわかった。BHETの減少を定量するために、ピーク面積とBHET濃度が対応した検量線を作成した。算出したBHET濃度をもとに、反応開始から反応時間60分後を初速度として比活性を計算したところ、ORF2645タンパク質1μMあたり1秒間に6.3μMのBHETを分解していると算出された(図6−2)。
実施例3 走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)を使用したtere-PETフィルムの表面観察
方法
実施例2の活性実験で使用したtere-PETフィルム表面の細部を観察するために、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した。96穴プレートからtere-PETフィルムを取り出し70%アルコールで洗浄した。その後、ハサミでフィルムを半分に切りSEM試料台(日新EM社)にカーボン両面テープ(日新EM社)を使い固定した。これらの作業はゴミが付着しないようピンセットと手袋を着用して行った。各サンプルを固定した後、Osmium Plasma Coater(真空デバイス社)を使用して真空中でオスミウム(Wako社)コーティングをした。その後、SEM内にある試料ステージを引き出し、試料ホルダーにSEM試薬台をセットした。試料室を真空にし、SEM本体にいれ観察を行った。
結果
実体顕微鏡観察の結果からtere-PETフィルム表面に亀裂が確認できた。より詳細にこれらの分解痕を観察するため、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。実施例2の活性実験1回目の77日後のサンプルを使いSEMで観察を行った。まず、77日後のtere-PETフィルムの様子を実体顕微鏡で観察した(図7)。
3日後のサンプルの実体顕微鏡写真と同様に、ORF2645タンパク質を添加してないサンプル2は特に亀裂は確認できず、顕微鏡写真からは分解の様子は観察されなかった。ORF2645タンパク質を添加したサンプル(図7B,C,D)はtere-PETフィルム表面に亀裂が広がっていることが観察された。特に、0.22μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルは14日後では観察できなかった亀裂がtere-PETフィルム表面全体に観察できた。
亀裂が確認されなかった(図7A)コントロールでは、SEMによる高倍率で観察してもフィルムの表面に変化は見られなかった(図8A)。
フィルム表面の白化は確認されず亀裂のみ確認できた(図7B)、22μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルでは、観察の結果、亀裂のみ確認できた。亀裂の周囲表面にはコントロールと同様に凹凸は観察されなかった(図8B)。
フィルム表面全体が白化し、一番早く亀裂が確認された(図7C) 2.2μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルでは、フィルム表面全てに分解痕が確認され、一部分ではより深い分解溝も確認できた(図8C)。
亀裂が観察され(図7D)、フィルム表面の白化が確認された0.22μg/mLのORF2645タンパク質を添加したサンプルではフィルム全体に分解溝が確認できたが、分解溝がなく凹凸のない部分も残っていた(図8D)。また、2.2μg/mLのORF2645タンパク質を添加したときの分解溝(図8C)と比べ凹凸が浅い様子が確認できた。
実施例4 ORF2645タンパク質の種々のpHにおける活性測定
方法
pH 3.5からpH 9.0まで0.5刻みでクエン酸Buffer(100 mM クエン酸, pH 3.5 - pH 6.0, 100 mM NaCl)、リン酸Buffer(100 mM Na2HPO4, pH 6.0 - pH 8.0, 100 mM NaCl)、ビシンBuffer(100 mM ビシン, pH 8.0 - pH 9.0, 100 mM NaCl)を作製、各Buffer条件における、pNP-butyrateに対する活性を測定した。
測定は温度一定30℃の条件下で行った。まず酵素液を除く反応液を1.5 mLチューブに入れ湯浴で30℃に温めた。また、吸光度計のセルチャンバーを30℃に維持した。反応液をキュベットに移し、セルチャンバー内で1分間静置した。またその間に100 mMリン酸Buffer (pH 7.0)に溶けた精製ORF2645タンパク質も湯浴で30℃に温めておいた。セルに酵素液を加え転倒混和して反応開始させ、波長415 nmで3分間経時的にpNPの遊離を測定した。このときブランクは、酵素液の代わり100 mMリン酸Buffer (pH 7.0)を加えたものとした。反応液組成を表4に示す。
Figure 2015025861
pNP-butyrateから、酵素反応で遊離するp-nitrophenol (pNP)はモル吸光係数εがpHに依存する。波長415 nmで2回ずつ各pHにおけるpNPの吸光度を吸光度計で測定した。pNP濃度はpH 3.5からpH 6.0までを20 mMから、pH 6.5からpH 9.0までを1 mMから段階希釈して調整した。測定結果から最低5プロットをもとに検量線を作成し、その傾きから各pHにおけるpNPのモル吸光係数εを算出した。
実験で算出した各pHにおけるpNPのモル吸光係数εと測定結果から反応開始60秒後から120秒後までの傾きを求め比活性を算出した。
結果
各pHにおけるpNPのモル吸光係数を実験により求め、ORF2645タンパク質のpNP-butyrate に対する比活性の定量化に用いた。ORF2645タンパク質の各pHにおける比活性を測定した。結果を図9に示す。比活性は、酵素1μMがpNP-butyrateから1秒間に遊離するpNP濃度(μM)と定義した。図9に示すように、ORF2645タンパク質の至適pHはpH 6.0付近であり、低pH(< pH 4.0)、高pH(< pH 7.5)条件下では活性がほとんど認められなかった。
実施例5 ORF2645のPET、BHETに対する加水分解活性
ORF2645タンパク質の加水分解活性を測定した。
ORF2645タンパク質は、図10に示すようにPETを加水分解し、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)及びエチレングリコール(EG)を生じ(図10A)、また、PETの部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を加水分解し、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)及びエチレングリコール(EG)を生じた(図10B)。
実施例6 No.201-F6株由来ORF3352タンパク質の調製
ORF2645タンパク質を用いてPETを分解した場合、PETの分解産物としてモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)とテレフタル酸(TPA)が生じた。また、PETの部分構造であるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)に作用させるとTPAを生成せずMHETを生じた(図10)。このことから、No.201-F6株は、PETを分解、資化するためには、MHET加水分解酵素を備えていると考えられた。そこで、該酵素についての検討を行った。
マルトース、テレフタル酸、及びtere-PETフィルムを主な炭素源とした培地で生育させたNo.201-F6株からmRNAを抽出し、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を行った。その結果、ORF3351〜ORF3356の遺伝子群がテレフタル酸、tere-PETフィルムを炭素源とした場合に、マルトースを炭素源として生育させた場合と比べ、mRNAの発現量が著しく上昇することを見出した。ORF3352はエステラーゼの一種であるTannase遺伝子と推測された。また、ORF3352の周辺領域に存在するORF3355,3356遺伝子は、テレフタル酸分解の第一段階に関わるテレフタル酸ジオキシゲナーゼをコードする遺伝子と推定され、これらの事から、ORF3352はPET分解に関与している遺伝子であることが示唆された。そこで、大腸菌によるORF3352タンパク質の組み換え型タンパク質を作製した。
方法
1.ORF3352タンパク質発現ベクターの構築
Ideonella由来ORF3352は、Escherichia coli (E. coli)では使用頻度の低いレアコドンが多数含まれている。図11及び配列番号9にIdeonella由来ORF3352遺伝子の塩基配列を示す。配列番号10にIdeonella由来ORF3352タンパク質のアミノ酸配列を示す。また、ORF3352タンパク質のN末端には膜輸送するシグナル配列(推定)が存在する。図11中下線部はシグナル配列を示す。これまでにIdeonella由来ORF3352のNative配列からシグナルペプチド配列を除いた配列を用いたE. coliによるタンパク質の発現が試みられたが、SDS-PAGE上のバンドとして確認できなかった。そこでE. coliで目的タンパクを発現させるために本遺伝子のコドン使用頻度の至適化、及び全合成を行った。この遺伝子の配列をoptORF3352とした。図12及び配列番号11にoptORF3352遺伝子の塩基配列を示す。図12中、下線部は最適化したコドンを示す。さらに、配列番号12にoptORF3352遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列を示す。
DNA PolymeraseにTks Gflex (タカラバイオ社)を使用し、optORF3352をPCRで増幅した。Ideonella sp. No 201のゲノムをテンプレートに、NdeIの制限酵素サイトを付加したフォワードプライマーのoptORF3352f,XhoIの制限酵素サイトを付加したリバースプライマーoptORF3352-r及びTks Gflexを用いて、optORF3352遺伝子のPCRによる増幅を行った。得られたPCR産物を1 %アガロースゲル電気泳動で確認し、目的の約60 kbpのバンドをゲルから切り出し、抽出、精製した。 37℃の条件でO/NでXho Iおよび Nde Iで処理し、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した。
本願出願人ら保有のpET-21bを、先と同条件でXho I、NdeI処理し、精製した。その後、1%アガロースゲル電気泳動した。約5 kbpのバンドをゲルから抽出し、protocolに従ってWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いて精製した。E. coli Alkaline Phosphatase (BAP,タカラバイオ)を用いて、37℃ 70 min静置し、Nde I及びXho Iで処理したpET-21bプラスミドの5’側のリン酸基を除去した。
精製したPCR産物をpCold IIと混合(モル比3:1)し、T4 DNA ligase(NEB社)によりベクターに組み込んだ。
このライゲーション産物を,XL10 Goldにヒートショック法により導入した。プラスミドを導入したTOP10をLB+amp寒天培地に撒き、37℃でO/N培養をした。
その後、生育したコロニーをテンプレートに、T7promoter’、T7terminator’及びGoTaq Green Master Mixを用いてコロニーPCRを行い、アガロースゲル電気泳動した。
約1.8 kbpの目的バンドが確認できたコロニーをFastGene Plasmid Mini Kit(日本ジェネティクス)を用いてプラスミドの抽出を行い、T7 promoter (5’- CGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGG -3’)(配列番号13)とT7 terminator (5’- GCTAGTTATTGCTCAGCGGTGG -3’)(配列番号14)のプライマーを用いて、プロトコルに従ってサンガーシークエンシングによりインサートの配列確認を行った。
2.ORF3352タンパク質の発現
コンピテントセルRosseta-gami B(DE3)にORF3352発現ベクターをヒートショック法で導入した。タンパク質発現誘導剤としてIPTGを用いタンパク質を発現させた。菌体を集め超音波破砕機を使用し破砕し、4℃で14,000 rpm、20分間遠心し上清を粗酵素液とした。
得られた粗酵素液中の発現タンパク質をSDS-PAGEにより確認した。
IPTGを添加した後、16℃で24時間培養した。
3.ORF3352タンパク質の精製
COSMOGEL His-Accept(ナカライテスク社)を使用して、ニッケルアフィニティクロマトグラフィーを行った。各溶出液をSDS‐PAGEにより目的のタンパク質が精製されているかどうか確認を行った。
結果
1. ORF3352タンパク質発現ベクターの構築
pCold II VectorのNot IとNde IサイトにoptORF3352を組み込んだのち、サンガーシークエンスにより、optORF3352の塩基配列を確認した。本発現ベクターをpCold II/optORF3352とした。
2. ORF3352タンパク質の発現・精製
Rosetta-gami B(DE3)に発現ベクター(pCold II/optORF3352)を導入し、IPTGを加え発現を誘導した。SDS-PAGEにより61.4 kDaのORF3352タンパク質のIPTGによる発現の誘導を確認した。発現細胞の超音波破砕後、可溶画分をニッケルアフィニティークロマトグラフィーに供することで、ORF3352タンパク質を精製し、十分量の精製タンパク質を得た。
実施例7 ORF3352タンパク質の活性実験
方法
1. ORF3352タンパク質によるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)、および類縁基質の分解
1.5 mLチューブに、2 mM MHET基質溶液(終濃度0.5 mM)を加え、pH7、50 mMリン酸バッファー(100 mM NaCl含)とDMSOを加え、最終的に100μLとなるように調整した。精製酵素のタンパク量を0,50,500 ngになるようにそれぞれ調整し30℃でインキュベートした。反応時間3時間終了後、リン酸バッファー(pH 2.5)を20μL加えクエンチした後、遠心機で17400 gで20分間遠心し、逆相HPLCで分解産物の解析を行った。HPLCによる解析条件を表5に示す。また、同様の実験をEthyl gallate、 Ethyl ferulate、 Chlorogenic Acid Hydrateをそれぞれ基質として行った。
Figure 2015025861
結果
ORF3352タンパク質のMHETに対する活性をHPLCで測定した。その結果、MHETのピークが反応時間とともに減少しTPAのピークが増加した。この結果から、ORF3352タンパク質はMHETに対して酵素活性があることがわかった。MHETの減少を定量するために、ピーク面積とMHET濃度が対応した検量線を作成し、算出したMHET濃度をもとに、反応開始から反応時間60分後を初速度として比活性を計算したところ、ORF3352タンパク質1 ngあたり1秒間に21.7 nMのMHETを分解していると算出された(図13)。
ORF3352タンパク質は、そのアミノ酸配列から、タンナーゼ、フェルラ酸エステラーゼ、クロロゲン酸エステラーゼと最も近縁と考えられる。そこで、これらの酵素が触媒すると考えられる基質の没食子酸エチル(Ethyl gallate、フェルラ酸エチル(Ethyl ferulate、及びクロロゲン酸水和物(Chlorogenic Acid Hydrate:に対する活性測定を行った。反応産物の定量は逆相HPLCを用いた。
ORF3352タンパク質は、没食子酸エチル、フェルラ酸エチル、及びクロロゲン酸水和物に対して、非常に低い活性を示すのみであった(図14)。このことから、ORF3352タンパク質はMHETに特異的に活性をしめすと確認できる。
本発明のPET分解酵素は、PET樹脂の有効利用に寄与することができる。
配列番号5〜8、13、14 プライマー
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

Claims (17)

  1. 以下の(a)又は(b)の芳香族ポリエステル分解酵素:
    (a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
    (b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
  2. 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項1記載の芳香族ポリエステル分解酵素。
  3. 以下の(a)または(b)の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA:
    (a) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列からなる芳香族ポリエステル分解酵素;又は
    (b) 配列表の配列番号2又は4に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素。
  4. 以下の(c)または(d)の芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA:
    (c) 配列表の配列番号1に表される塩基配列若しくは配列番号1に示す塩基配列の82番目〜873番目の塩基配列、又は配列番号3に表される塩基配列からなるDNA;又は
    (d) 配列表の配列番号1に表される塩基配列若しくは配列番号1に示す塩基配列の82番目〜873番目の塩基配列、又は配列番号3に表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、かつ芳香族ポリエステル分解活性を有する芳香族ポリエステル分解酵素をコードするDNA。
  5. 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項3又は4に記載のDNA。
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載のDNAを含有する発現ベクター。
  7. 請求項6記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
  8. 請求項7記載の宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、芳香族ポリエステル分解酵素を産生させ、該芳香族ポリエステル分解酵素を回収することを含む芳香族ポリエステル分解酵素の製造方法。
  9. 請求項1又は2に記載の芳香族ポリエステル分解酵素を芳香族ポリエステルに作用させることを含む、芳香族ポリエステル分解方法。
  10. 以下の(a)又は(b)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素:
    (a) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列からなるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素;又は
    (b) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素。
  11. 以下の(a)または(b)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA:
    (a) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列からなるモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素;又は
    (b) 配列表の配列番号10又は12に表されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素。
  12. 以下の(c)または(d)のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA:
    (c) 配列表の配列番号9に表される塩基配列若しくは配列番号9に示す塩基配列の52番目〜1812番目の塩基配列、又は配列番号11に表される塩基配列からなるDNA;又は
    (d) 配列表の配列番号9に表される塩基配列若しくは配列番号9に示す塩基配列の52番目〜1812番目の塩基配列、又は配列番号11に表される塩基配列の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができ、かつモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素活性を有するモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素をコードするDNA。
  13. 請求項11又は12に記載のDNAを含有する発現ベクター。
  14. 請求項13記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
  15. 請求項14記載の宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を産生させ、該モノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素を回収することを含むモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素の製造方法。
  16. 請求項1若しくは2に記載の芳香族ポリエステル分解酵素、並びに請求項10に記載のモノヒドロキシエチルテレフタレート(MHET)加水分解活性を有する酵素に作用させることを含む、芳香族ポリエステル分解方法。
  17. 芳香族ポリエステルがポリエチレンテレフタレート(PET)である、請求項16記載の分解方法。
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中嶌沙和, 外5名: "PET分解細菌由来テレフタル酸ビス(2−ヒドロキシエチル)分解酵素の精製と性質", 日本農芸化学会大会講演要旨集, JPN6014048822, 2009, pages 1 - 1 *
吉田昭介, 外3名: "新規ポリエチレンテレフタレート代謝酵素群の同定と機能解析", 日本農芸化学会2014年度大会講演要旨集, JPN6014048825, 5 March 2014 (2014-03-05) *
小田耕平, 外3名: "難生分解性芳香族ポリマーPETの微生物分解", 日本化学会第94春季年会(2014)講演予稿集I, JPN6014048823, 12 March 2014 (2014-03-12), pages p.21 *

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