JPWO2014208493A1 - 糖液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明による糖液の製造方法は、セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法であって、工程(1):前記セルロース含有バイオマスを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解して、加水分解物を得る工程、工程(2):前記加水分解物を、糖液と糖化残さとに固液分離する工程、工程(3):前記糖化残さをリグニンブロッキング剤を含む水溶液で洗浄して、前記糖化残さに含まれる前記糸状菌由来セルラーゼを含む洗浄された溶液を得る工程、および工程(4):前記洗浄された溶液をろ過し、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収する工程、を含む。

Description

本発明は、セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法に関する。
糖を原料とした化学品の発酵生産プロセスは、種々の工業原料の生産に利用されている。この発酵原料となる糖として、再生可能な非食用資源、すなわちセルロース含有バイオマスから効率的に糖液を製造するプロセス、または得られた糖液を発酵原料として効率的に工業原料に変換するプロセスの構築が検討されている。
セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法として、濃硫酸を使用してセルロースおよびヘミセルロースを酸で加水分解して糖液を製造する方法(特許文献1、2)、セルロース含有バイオマスを希硫酸で加水分解した後、さらにセルラーゼなどの糖化酵素を用いて糖化処理することにより糖液を製造する方法が開示されている(非特許文献1)。また、酸を使用しない方法として、250〜500℃程度の亜臨界水を使用してセルロース含有バイオマスを加水分解して糖液を製造する方法(特許文献3)、セルロース含有バイオマスを亜臨界水で処理した後、さらに糖化酵素で糖化処理することにより糖液を製造する方法(特許文献4)、セルロース含有バイオマスを240〜280℃の加圧熱水で加水分解した後、さらに糖化酵素を用いて糖化処理することにより糖液を製造する方法(特許文献5)が開示されている。これらの中でも、近年、特にエネルギー使用量および環境負荷が少なく、かつ糖収量が多い糖化酵素を使用したバイオマスの加水分解方法が広く検討されている。しかしながら、このような糖化酵素を使用して糖液を製造する方法は、酵素の費用が高いため、糖液を製造するための費用が高くなる。
そのため、前述の技術課題を解決する方法として、加水分解に使用した糖化酵素を回収して再利用する方法が提案されている。例えば、スピンフィルターで連続して固液分離を行い、得られた糖液を限外ろ過膜に通じてろ過し、酵素を回収する方法(特許文献6)、酵素糖化の段階において、セルロースを酵素で糖化した糖化液中に残存する固形分に界面活性剤を投入することで、固形分に対する酵素吸着を抑制し回収効率を向上させる方法(特許文献7)、酵素糖化後の糖化残さを通電処理することで酵素成分を回収する方法(特許文献8)、酵素糖化後の糖化残さを再度新しいバイオマスに投入することで酵素を回収して再利用する方法(特許文献9)などが開示されている。
特表平11−506934号公報 特開2005−229821号公報 特開2003−212888号公報 特開2001−95597号公報 特許3041380号公報 特開2006−87319号公報 特開昭63−87994号公報 特開2008−206484号公報 特開昭55−144885号公報
上述の通り、糖化酵素を使用したセルロース含有バイオマスを加水分解する方法が開発されているが、糖化酵素の使用量を削減するという観点から、セルロース含有バイオマスから糖液を製造する当たり、糖化酵素をより有効に利用しつつ糖液を製造する方法が求められている。
そこで、本発明は、かかる状況を鑑み、糖化酵素の使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することができる糖液の製造方法を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明者らは、糖液の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、糖化残さに吸着した糖化酵素である糸状菌由来セルラーゼを、リグニンブロッキング剤を含む水溶液に溶出させ、糸状菌由来セルラーゼが溶出した水溶液をろ過して、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収して再利用することで、糸状菌由来セルラーゼの使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
本発明は以下の[1]〜[10]の構成を有する。
[1] セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法であって、
工程(1):前記セルロース含有バイオマスを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解して、加水分解物を得る工程、
工程(2):前記加水分解物を、糖液と糖化残さとに固液分離する工程、
工程(3):前記糖化残さをリグニンブロッキング剤を含む水溶液で洗浄して、前記糖化残さに含まれる前記糸状菌由来セルラーゼを含む洗浄された溶液を得る工程、および
工程(4):前記洗浄された溶液を含む溶液をろ過し、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収する工程、
を含む、糖液の製造方法。
[2] 前記リグニンブロッキング剤が、コーンスティープリカー、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、カゼイン、牛血清由来アルブミン、スキムミルク、エタノール発酵蒸留残さ、ゼイン、魚加工廃棄物、肉加工廃棄物、ホエータンパク質、穀物加工廃棄物、糖加工廃棄物、食物、藻類タンパク質、大豆タンパク質、細菌タンパク質、および菌タンパク質からなる群から選択される1以上である、[1]に記載の糖液の製造方法。
[3] 工程(4)において、前記洗浄された溶液のろ過が、限外ろ過膜である、[1]または[2]に記載の糖液の製造方法。
[4] 工程(4)において、工程(2)において得られた糖液と、工程(3)において得られた前記洗浄された溶液とを混合する工程を含み、前記糖液および前記洗浄された溶液とを含む混合溶液をろ過して、前記糖液を含む透過液を回収する、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[5] 工程(3)において、前記リグニンブロッキング剤を含む水溶液の温度が、40〜60℃である、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[6] 前記リグニンブロッキング剤を含む水溶液が、無機塩を含む、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[7] 前記糸状菌由来セルラーゼが、トリコデルマ属微生物由来である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[8] 前記非透過液が、工程(1)の前記糸状菌由来セルラーゼに混合される、[1]〜[7]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[9] 工程(2)において、前記加水分解物の固液分離がプレスろ過により行われる、[1]〜[8]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法。
[10] [1]〜[9]のいずれか一つに記載の糖液の製造方法により糖液を製造する工程と、
前記糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を培養する工程と、
を含む、化学品の製造方法。
本発明によれば、糖化残さに吸着した糸状菌由来セルラーゼを、リグニンブロッキング剤を含む水溶液に溶出させ、糸状菌由来セルラーゼが溶出した水溶液をろ過することで、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を得ることができる。得られた糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収して再利用することにより、糸状菌由来セルラーゼの使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することができる。これにより、糖液の製造コストを大幅に削減することができる。
本発明による糖液の製造方法を示す図である。 本発明による糖液の製造方法の他の一例を示す図である。 本発明による糖液の製造方法を用いた糖液製造装置の一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明を実施するための形態は、以下に限定されるものではない。
<糖液の製造方法>
本発明による糖液の製造方法を図1に示す。本発明による糖液の製造方法について、以下、各工程ごとに説明する。
[工程(1)]
工程(1)では、セルロース含有バイオマスに、糖化酵素である糸状菌由来セルラーゼを添加して、セルロース含有バイオマスを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解する。これにより、加水分解物が得られる。加水分解は、セルロースを低分子量化し、単糖またはオリゴ糖を生成することを目的とするが、セルロース含有バイオマスの加水分解では、キシラン、マンナン、アラビナンなどのヘミセルロース成分も同時に加水分解される。
セルロース含有バイオマスとは、セルロース成分を含む生物資源のことをいう。具体的には、バガス、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、コーンストーバー、ビートパルプ、綿実殻、パーム殻房、稲わら、麦わら、竹、笹などの草本系バイオマス、または、シラカバ、ブナなどの樹木、廃建材などの木質系バイオマス、さらに藻類、海草など水生環境由来のバイオマスを挙げることができる。なお、セルロース含有バイオマスには、糖から構成されるセルロースおよびヘミセルロース(以下、セルロースとヘミセルロースの総称として「セルロース」という。)の他に、芳香族高分子であるリグニンなどを含有している。
糖化酵素による加水分解の反応条件としては、糖化酵素の好ましい反応条件に準じて行えばよく、本発明においては、糸状菌由来セルラーゼを使用するため、反応温度は、15〜100℃の範囲が好ましく、40〜60℃がより好ましく、50℃前後が更に好ましい。
加水分解の反応時間は、2時間〜200時間の範囲であることが好ましい。2時間以上であれば、十分な糖が生成される。また、200時間以下であれば、酵素活性の低下を抑制し、回収した糖化酵素を再利用することができる。
加水分解反応のpHは、糸状菌由来セルラーゼの至適pHにおいて糸状菌由来セルラーゼによる加水分解の効果が最も高くなるため、セルラーゼ処理時のpHは、糸状菌由来セルラーゼの至適pHとすることが好ましい。本発明においては、糸状菌由来セルラーゼを使用するため、pHは、3〜9の範囲が好ましく、4〜5.5がより好ましく、5前後がさらに好ましい。また、糸状菌由来セルラーゼとしてトリコデルマ属由来セルラーゼを使用する場合、その反応最適pHは5.0である。
セルロース含有バイオマスおよび糸状菌由来セルラーゼを含む反応溶液のpHの調整は、後述する、工程(2)において、加水分解物を固液分離する直前、または加水分解物を固液分離するのと同時に行ってもよい。pHの調整は加水分解物の固液分離を行う前に行い、固液分離を開始するまで一定時間静置することにより、さらに効果を高めることができる。例えば、加水分解物のpH調整後、1時間静置した後、固液分離を行う方法などがある。
さらに、加水分解の過程でpHの変化が起きるため、pH調整には、酸またはアルカリを使用して一定のpHとなるように調整することが好ましい。また、pH調整は、適宜、加水分解物に緩衝液を使用してもよい。pH調整に用いる、酸またはアルカリは、特に限定されるものではない。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられ、好ましくは、本発明において得られる糖液の発酵時の阻害が起こりにくいという観点から、硫酸、硝酸、リン酸が用いられ、より好ましくは、経済性の観点から、硫酸が用いられる。アルカリとしては、好ましくは、経済性の観点から、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムとそれらを含む水溶液が用いられ、より好ましくは、後述の行程(4)において膜分離する際に膜ファウリングが生じることを抑制する観点から、1価イオンである、アンモニア、水酸化ナトリウムが用いられ、さらに好ましくは、発酵時の阻害が起こり難いという観点から、アンモニアが用いられる。
セルロース含有バイオマスと糖化酵素との接触を促進させると共に、加水分解物の糖濃度を均一にするため、セルロース含有バイオマスと糖化酵素とを攪拌しながら混合することが好ましい。
セルロースの固形分濃度は、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%の範囲となるようにする。
糖化酵素として用いられる糸状菌由来セルラーゼとしては、トリコデルマ属(Trichoderma)、アスペルギルス属(Aspergillus)、セルロモナス属(Cellulomonas)、クロストリジウム属(Clostridium)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、フミコラ属(Humicola)、アクレモニウム属(Acremonium)、イルペックス属(Irpex)、ムコール属(Mucor)、タラロマイセス属(Talaromyces)、ファネロカエーテ(Phanerochaete)属、白色腐朽金、褐色腐朽菌などの微生物に由来するセルラーゼを挙げることができる。また、これらの微生物に変異剤あるいは紫外線照射などで変異処理を施してセルラーゼ生産性が向上した変異株由来のセルラーゼであってもよい。こうした糸状菌由来セルラーゼの中でも、セルロースの加水分解において比活性の高い酵素成分を培養液中に大量に生産するトリコデルマ属由来セルラーゼを使用することが好ましい。
トリコデルマ属由来セルラーゼとは、トリコデルマ属微生物由来のセルラーゼを主成分とする酵素組成物である。トリコデルマ属微生物は特に限定されないが、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)が好ましく、具体的にはトリコデルマ・リーセイQM9414(Trichoderma reesei QM9414)、トリコデルマ・リーセイQM9123(Trichoderma reeseiQM9123)、トリコデルマ・リーセイRutC−30(Trichoderma reeseiRut C−30)、トリコデルマ・リーセイPC3−7(Trichoderma reesei PC3−7)、トリコデルマ・リーセイCL−847(Trichoderma reeseiCL−847)、トリコデルマ・リーセイMCG77(Trichoderma reesei MCG77)、トリコデルマ・リーセイMCG80(Trichoderma reeseiMCG80)、トリコデルマ・ビリデQM9123(Trichoderma viride9123)を例示することができる。
糸状菌由来セルラーゼは、セルロースを加水分解する複数の酵素を含んでおり、セルロースおよび/またはヘミセルロースを加水分解して糖化する活性を有する酵素組成物である。セルロースを加水分解する酵素としては、セロビオハイドラーゼ、エンドグルカナーゼ、エキソグルカナーゼ、βグルコシダーゼ、キシラナーゼ、キシロシダーゼなどが挙げられる。糸状菌由来セルラーゼは、こうした複数の酵素を含んでいるため、セルロース分解において複数の酵素の協奏効果または補完効果により効率的にセルロースおよび/またはヘミセルロースの加水分解を行うことができる。
特に、本発明で使用する糸状菌由来セルラーゼは、セロビオハイドラーゼおよびキシラナーゼを含むことが好ましい。本発明においては、高濃度の無機塩を、セルロース含有バイオマスの加水分解時にセルロース含有バイオマスおよび糸状菌由来セルラーゼに添加することにより、セルロース含有バイオマスの加水分解前である、バイオマス前処理物に対するセロビオハイドラーゼおよびキシラナーゼの吸着を低減させ、高い酵素回収率が得られるためである。
セロビオハイドラーゼとは、セルロースを末端部分から加水分解を開始し、セロビオースを放出するセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.91として、セロビオハイドラーゼに帰属される酵素群が記載されている。セルロース分解活性は、セルロースを基質として酵素を作用させた際に遊離してくるグルコース量より測定することができ、具体的な方法は、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」の“FILTER PAPER ASSAY FOR SACCHARIFYING CELLULASE”に記載の方法を使用できる。
エンドグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の中央部分から加水分解する活性を有するセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.4、EC3.2.1.6、EC3.2.1.39、EC3.2.1.73としてエンドグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。セルロース分解活性は、カルボキシメチルセルロース(CMC)を基質として酵素を作用させた際に遊離してくる還元糖の量より測定することができ、具体的な方法は、例えば、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」の“CARBOXYL CELLULASE ASSAY FOR ENDO−β−1,4−GLUCANASE”に記載の方法を使用できる。
エキソグルカナーゼとは、セルロース分子鎖の末端から加水分解するセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.74、EC3.2.1.58としてエキソグルカナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
βグルコシダーゼとは、セロオリゴ糖またはセロビオースを加水分解するセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.21としてβグルコシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。セロビオース分解活性(以下、「BGL活性」ともいう)は、セロビオースを基質として酵素を作用させた際に遊離してくるグルコースの量より測定することができ、例えば、「Pure & Appl.Chem.、Vol.59、No.2、257−268ページ」に記載の“Cellobiase assay”の方法に従って測定することができる。
キシラナーゼとは、ヘミセルロースまたは特にキシランに作用することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.8としてキシラナーゼに帰属される酵素群が記載されている。
キシロシダーゼとは、キシロオリゴ糖に作用することを特徴とするセルラーゼの総称であり、EC番号:EC3.2.1.37としてキシロシダーゼに帰属される酵素群が記載されている。
こうした糸状菌由来セルラーゼに含まれる酵素は、ゲルろ過、イオン交換、二次元電気泳動などの公知手法により分離し、分離した成分のアミノ酸配列(N末端分析、C末端分析、質量分析)を行い、データベースとの比較により同定することができる。
また、糸状菌由来セルラーゼの酵素活性は、アビセル分解活性、キシラン分解活性、カルボキシメチルセルロース(CMC)分解活性、セロビオース分解活性、マンナン分解活性などの多糖の加水分解活性によって評価することができる。アビセル分解活性を示す主たる酵素は、セルロース末端部分から加水分解する特徴を有するセロビオハイドラーゼあるいはエキソグルカナーゼである。キシラン分解活性を示す主たる酵素はキシラナーゼ、β−キシロシダーゼである。CMC分解活性に関与する主たる酵素は、セロビオハイドラーゼ、エキソグルカナーゼ、エンドグルカナーゼである。セロビオース分解活性を示す主たる酵素は、β−グルコシダーゼである。ここで、“主たる”という意味は、最も分解に関与することが知られていることからの表現であり、これ以外の酵素成分もその分解に関与していることを意味している。
糸状菌は、培養液中にセルラーゼを産生するため、その培養液を粗酵素剤としてそのまま使用してもよいし、公知の方法で酵素群を精製し、製剤化したものを糸状菌由来セルラーゼ混合物として使用してもよい。糸状菌由来セルラーゼを精製し、製剤化したものとして使用する場合、プロテアーゼ阻害剤、分散剤、溶解促進剤、安定化剤など、酵素以外の物質を添加したものをセルラーゼ製剤として使用してもよい。
本発明においては、糸状菌由来セルラーゼとしては、粗酵素物が好ましく使用される。粗酵素物は、トリコデルマ属の微生物がセルラーゼを産生するよう調整した培地中で、任意の期間、該微生物を培養した培養上清に由来する。使用する培地成分は特に限定されないが、セルラーゼの産生を促進するために、セルロースを添加した培地が一般的に使用できる。そして、粗酵素物として、培養液をそのまま、またはトリコデルマ菌体を除去したのみの培養上清が好ましく使用される。
粗酵素物中の各酵素成分の重量比は特に限定されるものではないが、例えば、トリコデルマ・リーセイ由来の培養液には、50〜95重量%のセロビオハイドラーゼが含まれており、残りの成分にエンドグルカナーゼ、βグルコシダーゼなどが含まれている。また、トリコデルマ属の微生物は、強力なセルラーゼ成分を培養液中に生産する一方で、βグルコシダーゼに関しては、細胞内または細胞表層に保持しているため培養液中のβグルコシダーゼ活性は低い。そのため、粗酵素物に、さらに異種または同種のβグルコシダーゼを添加してもよい。異種のβグルコシダーゼとしては、アスペルギルス属由来のβグルコシダーゼが好ましく使用できる。アスペルギルス属由来のβグルコシダーゼとして、ノボザイム社より市販されているNovozyme188などを例示することができる。粗酵素物に異種または同種のβグルコシダーゼを添加する方法としては、トリコデルマ属の微生物に遺伝子を導入し、その培養液中に産生されるよう遺伝子組換えされたトリコデルマ属の微生物を培養し、その培養液を単離する方法でもよい。
(前処理)
セルロース含有バイオマスは、上記のように、セルロースの他に、リグニンなどを含有している。そのため、セルロース含有バイオマスを前処理しておくことが好ましい。これにより、糸状菌由来セルラーゼによるセルロース含有バイオマスの加水分解効率を向上させることができる。セルロース含有バイオマスの前処理方法としては、酸処理、硫酸処理、希硫酸処理、酢酸処理、アルカリ処理、苛性ソーダ処理、アンモニア処理、水熱処理、亜臨界水処理、微粉砕処理、蒸煮処理などが挙げられる。本発明においては、後述の工程(3)で種々の酵素を効率よく回収するという観点から、アンモニア処理、水熱処理または希硫酸処理を行うことが好ましい。
アンモニア処理は、特開2008−161125号公報や特開2008−535664号公報などに記載の方法に準拠して行うことができる。例えば、使用するアンモニア濃度はバイオマスに対して0.1〜15重量%の範囲で添加し、4〜200℃、好ましくは90〜150℃で処理する。添加するアンモニアは、液体または気体のどちらでもよい。添加する形態は、純粋なアンモニアでもアンモニア水溶液の形態でもよい。処理回数は、特に限定されず、前記処理を1回以上行えばよい。特に、前記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で行ってもよい。アンモニア処理によって得られた処理物は、さらに酵素による加水分解反応を行うため、アンモニアの中和またはアンモニアの除去を行う必要がある。中和は、加水分解物より固形分を固液分離により除去したアンモニアに対し行ってもよいし、固形分を含んだままの状態で行ってもよい。中和に使用する酸試薬は、特に限定されない。アンモニアの除去は、アンモニア処理物を減圧状態に保つことでアンモニアを気体状態に揮発させて除去することができる。また、除去したアンモニアは、回収して再利用してもよい。
水熱処理の場合、セルロース含有バイオマスが、0.1〜50重量%となるよう水を添加後、100〜400℃の温度で、1秒〜60分処理する。このような温度条件で処理することにより、セルロースの加水分解が生じる。処理回数は、特に限定されず、該処理を1回以上行えばよい。特に、該処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
希硫酸処理の場合、硫酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。反応温度は、100〜300℃の範囲で設定することができ、120〜250℃で設定することが好ましい。反応時間は、1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は、特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。特に、上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で行ってもよい。希硫酸処理によって得られた加水分解物は、酸を含んでおり、さらにセルラーゼによる加水分解反応を行うため、または発酵原料として使用するために、中和を行う必要がある。
[工程(2)]
工程(2)では、工程(1)で得られた加水分解物を、糖液と糖化残さとに固液分離する。
工程(2)で加水分解物を固液分離する方法は、特に限定されず、従来より公知の一般の固液分離の方法を使用することができる。固液分離の方法として、例えば、スクリューデカンタなどの遠心分離、フィルタープレスなどの膜分離、ベルトフィルター、自然沈降による分離、またはメッシュスクリーン、不織布、および濾紙などによるろ過などが挙げられる。加水分解物の固液分離方法は、膜分離を用いることが好ましい。膜分離の中でも、加水分解物の固液分離方法は、粒子状の固形物である糖化残さを効率よく除去でき、かつ除去した糖化残さを圧搾することで、より多くの糖液を回収することができるという観点から、加水分解物の固液分離をプレスろ過により行うフィルタープレスを用いることが最も好ましい。加水分解物を固液分離する方法は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
[工程(3)]
工程(3)では、糖化残さをリグニンブロッキング剤を含む水溶液で洗浄して、糖化残さに吸着などして含まれる糸状菌由来セルラーゼをリグニンブロッキング剤を含む水溶液に溶出させる。これにより、糖化残さに含まれる糸状菌由来セルラーゼを含む洗浄された溶液が得られる。
リグニンブロッキング剤とは、セルロース含有バイオマスに含まれるリグニン成分に対し親和性を有しており、疎水性相互作用、水素結合、イオン結合などにより吸着可能な成分のことである。前記成分として、具体的には、ペプチド、タンパク質、多糖などの親水性の高分子化合物などが挙げられる。また、リグニンブロッキング剤は、これら高分子化合物を単独で含むものよりも、それ以外の成分、例えば、糖、アミノ酸、塩類、脂肪なども含まれていることが、糖化残さに吸着した糸状菌由来セルラーゼの溶出効果を高めるという観点で好ましい。
前記高分子化合物とそれ以外の成分を含む好ましいリグニンブロッキング剤の具体例としては、コーンスティープリカー(CSL)、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、カゼイン、スキムミルク、牛血清由来アルブミン(BSA)、エタノール発酵蒸留残さ(DDGS)、ゼイン、魚加工廃棄物、肉加工廃棄物、ホエータンパク質(乳清タンパク質)、糖加工廃棄物、穀物加工廃棄物、食物、藻類タンパク質、大豆タンパク質、細菌タンパク質、菌タンパク質などが挙げられる。これらは、1種類単独で使用してもよいしも複数種類混合して使用してもよい。これらの中でも、コースティープリカーおよび/またはエタノール発酵蒸留残さが、より好ましい。また、上記の例示したリグニンブロッキング剤は、単位あたりの値段が安いという利点を有する。
リグニンブロッキング剤は、水溶液中に1g/L以上の濃度で含まれることが、糖化残さに吸着した糸状菌由来セルラーゼの溶出効果を高めるという観点から、好ましく、1〜10g/Lであることがより好ましい。なお、水溶液に含まれるリグニンブロッキング剤は、すべて水に溶解した状態である必要はなく、一部は不溶化した状態であってもよい。
リグニンブロッキング剤を含む水溶液は、さらに無機塩を含むことが好ましい。これにより、リグニンブロッキング剤のみでは溶出させられない酵素成分、具体的には、キシロシダーゼなどのヘミセルラーゼ成分を溶出させることができる。
無機塩としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、硫酸アンモニウムが好ましい。リグニンブロッキング剤を含む水溶液中に含まれる無機塩の濃度は、1〜25g/Lであることが好ましい。
糖化残さの洗浄は、糖化残さをリグニンブロッキング剤を含む水溶液に分散させて攪拌混合する方法でもよいし、糖化残さに対して、リグニンブロッキング剤を含む水溶液を通液させる方法であってもよい。糖化残さに吸着した糸状菌由来セルラーゼの溶出効果を高めるという観点から、糖化残さに対して、リグニンブロッキング剤を含む水溶液を通液させる方法が好ましい。
リグニンブロッキング剤を含む水溶液で糖化残さを洗浄する際の、リグニンブロッキング剤を含む水溶液の温度は、40〜60℃であることが好ましい。洗浄時の温度が40℃以上であると、糖化残さの洗浄効果が高まり、糸状菌由来セルラーゼの溶出量が増大する。洗浄時の温度が60℃以下の場合には、糸状菌由来セルラーゼの失活が進むことを抑制できるため、洗浄された溶液中の糸状菌由来セルラーゼの各活性が減少することを抑制することができる。
[工程(4)]
工程(4)では、洗浄された溶液をろ過して、糖液を含む透過液と、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液とに分離する。これにより、透過液が回収されると共に、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液が回収される。透過液は、糖液を含んでいるため、工程(2)で得られた糖液に混合されることで、糖液として利用できる。
洗浄された溶液のろ過は、単糖であるグルコース(分子量180)やキシロース(分子量150)が透過可能であって、糸状菌由来セルラーゼの透過を阻止できる方法が用いられる。
本発明においては、洗浄された溶液のろ過には、限外ろ過膜(UF膜)が用いられることが好ましい。限外ろ過膜は、洗浄された溶液中に含まれる糸状菌由来セルラーゼなどの高分子の透過を阻止しつつ糖を透過させることができる。糖化残さを洗浄して得られた洗浄された溶液には、糖化残さに吸着していた糸状菌由来セルラーゼが溶出している。洗浄された溶液を限外ろ過膜でろ過することで、洗浄された溶液中に含まれる糸状菌由来セルラーゼを限外ろ過膜の非透過液として、洗浄された溶液から分離して、回収することができる。また、洗浄された溶液は、逐次的または連続して限外ろ過膜に通じてろ過するようにしてもよい。
限外ろ過膜は、グルコースやキシロースなどの単糖が透過でき、かつ糸状菌由来セルラーゼの透過を阻止できる分画分子量を有するものを用いることが好ましい。本発明においては、限外ろ過膜の分画分子量は、好ましくは500〜100,000である。この範囲内の分画分子量を有する限外ろ過膜を用いれば、糸状菌由来セルラーゼが透過することを阻止しつつ単糖を糖液として透過させることができる。また、限外ろ過膜の分画分子量は、酵素反応に阻害的作用を示す夾雑物質を酵素と分離するという観点から、より好ましくは10,000〜50,000である。
ここで、限外ろ過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡などで計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤(1993 共立出版) P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように、限外ろ過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。
使用する限外ろ過膜の素材としては、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)、再生セルロース、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリ4フッ化エチレンなどの有機材料、あるいはステンレスなどの金属、またはセラミックなど無機材料などが挙げられる。使用する限外ろ過膜の材質としては、再生セルロース、セルロース、セルロースエステルはセルラーゼによる分解を受けるため、PES、PVDFなどを使用することが好ましい。
限外ろ過膜の形態は、チューブラー型、スパイラル型、平膜型、中空糸型などが好ましく使用できる。具体的には、DESAL社のG−5タイプ、G−10タイプ、G−20タイプ、G−50タイプ、PWタイプ、HWSUFタイプ、KOCH社のHFM−180、HFM−183、HFM−251、HFM−300、HFK−131、HFK−328、MPT−U20、MPS−U20P、MPS−U20S、Synder社のSPE1、SPE3、SPE5、SPE10、SPE30、SPV5、SPV50、SOW30、旭化成株式会社製のマイクローザ(登録商標)UFシリーズの分画分子量3,000から10,000に相当するもの、日東電工株式会社製のNTR7410、NTR7450などが挙げられる。
限外ろ過膜のろ過方式は、クロスフローろ過方式、デッドエンドろ過方式などが挙げられるが、膜ファウリング、フラックスの抑制などを図る観点から、クロスフローろ過方式が好ましい。
ろ過方法としては、圧ろ過、真空ろ過、遠心ろ過などが好ましく使用できる。また、ろ過操作として、定圧ろ過、定流量ろ過、非定圧非定流量ろ過などが挙げられる。ろ過操作は、上記限外ろ過膜を2回以上使用する多段ろ過でもよい。
工程(4)で回収された非透過液は、糸状菌由来セルラーゼを含んでいるため、回収された非透過液を、工程(1)で使用される糸状菌由来セルラーゼに混合することで、工程(1)の糸状菌由来セルラーゼとして使用することができる。これにより、工程(1)で新たに使用する糸状菌由来セルラーゼの量を低減することができるため、糸状菌由来セルラーゼの費用の低減を図ることができる。
このように、本発明の糖液の製造方法によれば、糖化残さに吸着した糸状菌由来セルラーゼをリグニンブロッキング剤を含む水溶液に溶出させ、糸状菌由来セルラーゼが溶出した水溶液をろ過することにより、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を得ることができる。得られた非透過液中の糸状菌由来セルラーゼを回収して再利用することで、糖化酵素の使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することができる。これにより、糖液の製造コストを大幅に削減することができる。
(他の形態)
本発明においては、工程(4)で洗浄された液をろ過して、得られた非透過液を回収する場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、工程(2)で得られた糖液も洗浄された溶液とは別にろ過して、糖液に含まれる糸状菌由来セルラーゼを糖液から分離し、透過液を糖液として回収し、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収するようにしてもよい。これにより、糖液に含まれる糸状菌由来セルラーゼも有効に再利用することができる。
また、工程(2)で得られた糖液と工程(3)で得られた洗浄された溶液とを混合した後、この混合溶液をろ過し、混合溶液に含まれる糸状菌由来のセルラーゼを分離するようにしてもよい。これにより、糖液を含む透過液を回収することができると共に、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収することができる。混合溶液をろ過する形態の一例を図2に示す。図2に示すように、糖液と洗浄された溶液とを混合して混合溶液とする。その後、工程(4)において、混合溶液を限外ろ過膜でろ過して、糸状菌由来のセルラーゼを含む非透過液と、糖液を含む透過液とに分離する。これにより、糖液を含む透過液が回収されると共に、糸状菌由来のセルラーゼを含む非透過液が回収される。透過液は、そのまま糖液として使用してもよいし、糖液以外の成分を分離して得られた糖液のみを使用してもよい。回収された非透過液は、工程(1)で添加される糸状菌由来セルラーゼに混合して、工程(1)において再利用することができる。工程(2)で得られた糖化残さには、糸状菌由来セルラーゼの多くが吸着しているが、工程(2)で得られた糖液にも、工程(1)でセルロース含有バイオマスの加水分解に使用された糸状菌由来セルラーゼ成分が含まれている。そのため、工程(4)において、工程(2)で得られた糖液に含まれる糸状菌由来セルラーゼも洗浄された溶液に含まれる糸状菌由来セルラーゼとまとめて回収することができるため、糸状菌由来セルラーゼの回収量を更に高めることができる。これにより、糖化酵素の使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することが可能となる。また、工程(2)で得られた糖液を洗浄された溶液とは別にろ過する場合に比べ、混合溶液をろ過する場合の方が、製造装置の簡略化を図りつつ糸状菌由来セルラーゼを効率良く回収することができる。
また、混合溶液は、工程(2)で得られた糖液を、ろ過する前に一時保持しておき、工程(3)で得られた洗浄された溶液と混合して調製しておくことが好ましい。一般的に、タンパク質は、限外ろ過膜の表面に吸着する傾向がある他、配管、タンクなどにも吸着しうる。工程(2)で得られる糖液に含まれる主なタンパク質成分は、糸状菌由来セルラーゼ成分であるため、限外ろ過膜、配管、タンク内にタンパク質成分が吸着してしまうと、回収される糸状菌由来セルラーゼ量が減少することになる。そこで、工程(2)の糖液と工程(3)で得られた洗浄された溶液とを予め混合しておき、この混合溶液を、限外ろ過膜などのろ過膜でろ過することにより、糖液中の糸状菌由来セルラーゼ成分が、特に限外ろ過膜、配管、タンク内などに吸着することを抑制することができる。これにより、糸状菌由来セルラーゼの回収量を更に高めることができる。
<糖液製造装置>
本発明による糖液の製造方法を用いた糖液製造装置について説明する。なお、糖液製造装置の形態は、以下に限定されるものではない。図3は、本発明による糖液の製造方法を用いた糖液製造装置の一例を示す図である。なお、図3は、上記の図2に記載の本発明による糖液の製造方法を用いた装置である。図3に示すように、本発明による糖液の製造方法を用いた糖液製造装置10は、加水分解反応槽11、固液分離装置12、洗浄水槽13、ろ液回収タンク14、限外ろ過膜装置15、および糖化酵素回収ラインL11を有する。
加水分解反応槽11は、加水分解を行う攪拌タンク21、セルロース含有バイオマス22を攪拌混合する撹拌装置23、および攪拌タンク21を保温する保温設備24を備える。攪拌タンク21は、上部に、セルロース含有バイオマス22が供給される供給口25と、糸状菌由来セルラーゼ26が供給される供給口27とを備える。セルロース含有バイオマス22および糸状菌由来セルラーゼ26が攪拌タンク21内に供給されると、攪拌タンク21において、セルロース含有バイオマス22は、糸状菌由来セルラーゼ26により加水分解され、加水分解物28が得られる(工程(1))。
攪拌タンク21で得られた加水分解物28は、調節弁V11を開くことで、攪拌タンク21から抜き出され、ポンプP1により圧送されて、供給口31から固液分離装置12に供給される。
固液分離装置12は、プレスろ過過装置32と、コンプレッサー33とを備える。加水分解物28は、コンプレッサー33によりプレスろ過過装置32において圧搾されることで、糖液と糖化残さ(固形物)とに固液分離される(工程(2))。糖液は、プレスろ過過装置32から糖液供給ラインL21に排出され、ろ過室内には糖化残さが保持される。
糖液供給ラインL21は、その途中に、洗浄水槽13と連結した分岐ラインL22が連結されている。糖液供給ラインL21に調節弁V21が設けられ、分岐ラインL22に調節弁V22が設けられている。調節弁V21を開き、かつ調節弁V22を閉じることで、プレスろ過過装置32から排出された糖液は、糖液供給ラインL21を通って、ろ液回収タンク14に供給され、ろ液回収タンク14内に保持される。また、調節弁V21を閉じ、かつ調節弁V22を開くことで、プレスろ過過装置32から排出された糖液は、分岐ラインL22を通って、洗浄水槽13に供給され、洗浄水槽13内に保持される。
リグニンブロッキング剤を含む水溶液34は、洗浄水槽13から洗浄液供給ラインL23を通って、通水口35よりプレスろ過過装置32に供給される。プレスろ過過装置32で生じた糖化残さは、リグニンブロッキング剤を含む水溶液34で洗浄され、糖化残さに付着している糸状菌由来セルラーゼがリグニンブロッキング剤を含む水溶液34に溶出して、糸状菌由来セルラーゼを含む洗浄された溶液が得られる(工程(3))。なお、リグニンブロッキング剤を含む水溶液34は、調節弁V23の開度を調整することで洗浄水槽13から抜き出され、ポンプP2で圧送されて、洗浄水槽13からプレスろ過過装置32に供給される。
また、洗浄水槽13は、その周囲に保温設備36を備えている。これにより、洗浄水槽13内のリグニンブロッキング剤を含む水溶液34は、所定温度に保温される。洗浄水槽13は、循環ラインL11および洗浄液供給ラインL24と連結されている。リグニンブロッキング剤を含む水溶液34は、洗浄液供給ラインL24を介して洗浄水槽13に供給される。リグニンブロッキング剤を含む水溶液34の供給量は、調節弁V24の開度を調整することで調整される。
プレスろ過過装置32で得られた洗浄液は、糖液供給ラインL21を通って、ろ液回収タンク14に供給され、ろ液回収タンク14内で糖液と混合される。また、プレスろ過過装置32で得られた洗浄液は、分岐ラインL22を通って洗浄水槽13に循環させるようにしてもよい。この時、調節弁V21、V25の開度が調整され、調節弁V21は閉じて調節弁V25は開くようにする。
ろ液回収タンク14は、糖液、洗浄液、またはこれらが混合された混合溶液41を貯留するためのタンクである。ろ液回収タンク14には、ろ液回収タンク14内の溶液を限外ろ過膜装置15に供給する糖液供給ラインL31と、ろ液回収タンク14内の溶液を攪拌タンク21に供給される糸状菌由来セルラーゼ26に混合する糖化酵素回収ラインL11とが連結されている。
混合溶液41は、糖液供給ラインL31を通って、限外ろ過膜装置15に供給される。糖液供給ラインL31には、調節弁V31が設けられており、混合溶液41の限外ろ過膜装置15への供給量は、調節弁V31の開度を調整することにより調整される。混合溶液41は、ポンプP3で圧送されて、限外ろ過膜装置15に供給される。
限外ろ過膜装置15は、混合溶液41をろ過して、透過液42と非透過液43とに分離する。限外ろ過膜装置15内の限外ろ過膜を透過した透過液42は、糖液を回収される。限外ろ過膜を透過しない非透過液43は、ろ液回収タンク14内の混合溶液41が排出された後、ろ液回収タンク14に供給される。
ろ液回収タンク14に回収された非透過液43は、糖化酵素回収ラインL11を通って、攪拌タンク21に供給される糸状菌由来セルラーゼと混合されて、攪拌タンク21に供給される。糖化酵素回収ラインL11には、調節弁V32が設けられており、非透過液の供給量は、調節弁V32の開度を調整することで調整される。ろ液回収タンク14に回収された非透過液43は、糸状菌由来セルラーゼを含んでいるため、攪拌タンク21で糸状菌由来セルラーゼとして再利用することができる。
本発明による糖液の製造方法を用いた糖液製造装置は、糖化残さに付着した糸状菌由来セルラーゼを回収して再利用することで、糸状菌由来セルラーゼの使用量をさらに低減しつつ糖液を製造することができる。これにより、糖液の製造コストの大幅な削減を図ることができる。
<糖液の用途>
本発明により得られた糖液は、食品原料、医薬品原料、化学品などの発酵原料などのさまざまな用途に使用することができる。本発明により得られた糖液は、発酵原料として使用し、化学品を生産する能力を有する微生物を生育させることで、各種化学品を製造することができる。なお、微生物を生育させるとは、糖液に含まれる糖成分またはアミノ源を微生物の栄養素として利用し、微生物の増殖、生育維持を行うことをいう。化学品の具体例としては、アルコール、有機酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。こうした化学品は、糖液中の糖成分を炭素源として、その代謝の過程において生体内外に化学品として蓄積生産する。微生物によって生産可能な化学品として、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセロールなどのアルコール、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸などの有機酸、イノシン、グアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチド、カダベリンなどのアミン化合物を挙げることができる。さらに、本発明の糖液の製造方法により得られる糖液は、酵素、抗生物質、組換えタンパク質などの生産に適用することも可能である。こうした化学品の製造に使用する微生物としては、目的の化学品を効率的に生産可能な微生物であればよく、大腸菌、酵母、糸状菌、担子菌などの微生物を使用することができる。
以下、本発明の糖液の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(参考例1)糸状菌由来セルラーゼ(培養液)の調製
糸状菌由来セルラーゼ(培養液)は、次の方法で調製した。
(前培養)
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14(w/vol)、リン酸二水素カリウム0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、および七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるように蒸留水に添加し、上記各成分を含む蒸留水100mLを500mLバッフル付き三角フラスコに張り込み、121℃の温度で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別に、それぞれ121℃の温度で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80とを、上記の500mLバッフル付き三角フラスコにそれぞれ0.01%(w/vol)添加した。この前培養培地に、トリコデルマ・リーセイATCC66589を1×10個/mLになるように植菌し、振とう装置(TAITEC社製 BIO−SHAKER BR−40LF)を用いて、28℃の温度で72時間、180rpmで振とう培養し、前培養とした。
(本培養)
コーンスティップリカー5%(w/vol)、グルコース2%(w/vol)、セルロース(アビセル)10%(w/vol)、酒石酸アンモニウム0.37%(w/vol)、硫酸アンモニウム0.14%(w/vol)、リン酸二水素カリウム0.2%(w/vol)、塩化カルシウム二水和物0.03%(w/vol)、硫酸マグネシウム七水和物0.03%(w/vol)、塩化亜鉛0.02%(w/vol)、塩化鉄(III)六水和物0.01%(w/vol)、硫酸銅(II)五水和物0.004%(w/vol)、塩化マンガン四水和物0.0008%(w/vol)、ホウ酸0.0006%(w/vol)、および七モリブデン酸六アンモニウム四水和物0.0026%(w/vol)となるように蒸留水に添加し、上記各成分を含む蒸留水2.5Lを5L容撹拌ジャー(DPC−2A、ABLE社製)容器に張り込み、121℃の温度で15分間オートクレーブ滅菌した。放冷後、これとは別に、それぞれ121℃で15分間オートクレーブ滅菌したPE−MとTween80とを、それぞれ0.1%添加し、予め前記の方法で液体培地で前培養したトリコデルマ・リーセイATCC66589を250mL接種した。その後、振とう装置(TAITEC社製 BIO−SHAKER BR−40LF)を用いて、28℃で87時間、300rpm、通気量1vvmの条件で振とう培養を行った。その後、遠心分離した後、上清を膜ろ過(ステリカップ−GV、材質:PVDF、ミリポア社製)した。得られた培養液を糸状菌由来セルラーゼとして、以下の実施例に使用した。
以下の実施例および比較例において、糖濃度、糸状菌由来セルラーゼの活性は、以下のようにして測定した。
(参考例2)糖濃度の測定
糖液に含まれるグルコースおよびキシロースの各濃度は、下記に示す高速液体クロマトグラフィー(High performance liquid chromatography:HPLC)条件で、標品との比較により定量した。
(HPLC条件)
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:ミリQ:アセトニトリル=25:75
流速:0.6mL/分
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例3)糸状菌由来セルラーゼの活性の測定
糸状菌由来セルラーゼの酵素活性は、(1)アビセル分解活性および(2)キシラン分解活性の2種の分解活性に分けて、次の手順で活性を測定評価した。
(1)アビセル分解活性
回収した酵素液(100μL)に対し、アビセル(メルク社製)を1g/Lと酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を100mMとなるように添加し、50℃の温度で24時間反応させた。反応液は1mLチューブで調整し、前記の条件で回転混和しながら反応を行った。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のグルコース濃度を測定した。グルコース濃度は、参考例2に記載の方法に準じて測定した。アビセル分解活性は、生成したグルコース濃度(g/L)をそのまま活性値とした。
(2)キシラン分解活性
酵素液に対し、キシラン(Birch wood xylan、和光純薬工業株式会社製)10g/Lと酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を100mMとなるように添加し、50℃で4時間反応させた。反応液は1mLチューブで調整し、前記の条件で回転混和しながら反応を行った。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のキシロース濃度を測定した。キシロース濃度は、参考例2に記載の方法に準じて測定した。キシロース分解活性は、生成したキシロース濃度(g/L)をそのまま活性値とした。
<実施例1:セルロース含有バイオマスの加水分解(工程(1))>
[セルロース含有バイオマスの前処理]
(セルロース含有バイオマスのアンモニア処理(前処理1))
セルロース含有バイオマスとして稲藁を使用した。稲藁を小型反応器(耐圧硝子工業製、TVS−N2 30ml)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、試料を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバス中にて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで真空引きし乾燥させた。これを前処理物1として、以下の実施例に使用した。
(セルロース含有バイオマスの水熱処理(前処理2))
セルロース含有バイオマスとして稲藁を使用した。稲藁を水に浸し、撹拌しながら180℃で20分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は10MPaであった。処理後は溶液成分(以下、水熱処理液という。)と処理バイオマス成分に遠心分離(3000G)を用いて固液分離した。この処理バイオマス成分を前処理物2として、以下の実施例に使用した。
[セルロース含有バイオマスの糸状菌由来セルラーゼによる加水分解]
前述の前処理物1および前処理物2をそれぞれ糸状菌由来セルラーゼで加水分解を行った。それぞれの前処理物(0.5g)に蒸留水を加えた後、参考例2で調製した糸状菌由来セルラーゼ0.5mLを添加した。その後、それぞれの前処理物(0.5g)に、総重量が10gとなるように、さらに蒸留水を添加した。さらに、それぞれの本組成物のpHが4.5〜5.3の範囲となるように、希釈硫酸または希釈苛性ソーダを添加して調整した。それぞれの本組成物を枝付き反応容器(東京理化器械株式会社製、φ30、NS14/23)に移した。その後、この枝付き反応容器を恒温槽(MG−2200、東京理化社製)に入れて、小型攪拌機(CPS−1000、東京理化社製)を用いて、50℃で24時間、前記本組成物を保温および攪拌しながら加水分解を行った。前処理物1から得られた加水分解物を「加水分解物1」、前処理物2から得られた加水分解物を「加水分解物2」として、以下工程(2)以降の実施例に使用した。
<実施例2:加水分解物の固液分離(工程(2))>
実施例1において得られた加水分解物1および加水分解物2をそれぞれ遠心分離(3000G、10分)して固液分離し、糖液(6g)と糖化残さ(4g)とに分離した。加水分解物1から得られた糖液および糖化残さを、「糖液1」および「糖化残さ1」とし、加水分解物2から得られた糖液および糖化残さを、「糖液2」および「糖化残さ2」として、工程(3)以降の実施例に使用した。また、得られた糖液1および糖液2の糖濃度(グルコースおよびキシロース濃度)は、参考例1に記載の方法で測定した。得られた糖液1および糖液2の糖濃度(グルコースおよびキシロース濃度)の測定結果を、表1に示す。
Figure 2014208493
<実施例3:糖化残さの洗浄(工程(3))、および得られた洗浄された溶液のろ過(工程(4))>
実施例2で得られた各糖化残さに対し、リグニンブロッキング剤を含む水溶液で洗浄操作を室温で行った。リグニンブロッキング剤としては、BSA(牛血清由来アルブミン、シグマアルドリッチ社製)、カゼイン(シグマアルドリッチ社製)、DDGS(トウモロコシ蒸留残さ、BP−50、Wilbur−Ellis製)、CSL(コーンスティープリカー、王子コーンスターチ株式会社製)、スキムミルク(和光純薬工業株式会社製)、ペプトン(BBLペプトン、ベクトン・ディッキンソン製)を使用した。リグニンブロッキング剤を滅菌水に最終濃度5g/Lとなるように添加し、洗浄された溶液を調製した。これら洗浄された溶液を「糖化残さ1」および「糖化残さ2」に対し、6g(6mL)添加し混合した。混合後、30分、室温で放置した後、遠心分離(3000G、10分)して固液分離し、糖化残さ1および糖化残さ2の各洗浄された溶液6gを各遠心上清として回収した。回収した上清成分は、マイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して精密濾過を行った。得られたろ液は、分画分子量10000の限外ろ過膜(Sartorius stedim biotech社製 VIVASPIN 20 材質:PES)でろ過し、膜画分が1mLになるまで4500Gで遠心した。さらに蒸留水6mLを膜画分に添加し、再度膜画分が1mLになるまで4500Gで遠心した。その後、膜画分から酵素を回収した。回収酵素の各活性は、参考例3に準じて測定した。また、従来技術との比較のため、比較例1として蒸留水のみ(リグニンブロッキング剤を含まない)で糖化残さを洗浄した際のそれぞれの回収酵素成分の活性を基準1として、相対値として回収酵素成分の活性を表2および表3に示す。
Figure 2014208493
Figure 2014208493
表2および表3から明らかなように、リグニンブロッキング剤を含む水溶液による洗浄で糸状菌由来セルラーゼの回収が高まり、回収酵素成分中のアビセル分解活性が特に高まることが判明した。
<実施例4:工程(2)の糖液と洗浄された溶液との混合溶液のろ過(工程(4))>
実施例2の糖液1(6g)と実施例3の洗浄された溶液(6g)(糖化残さ1をCSLで洗浄した洗浄された溶液)とを混合して、限外ろ過膜に通じてろ過を行った。マイレクスHVフィルターユニット(33mm、PVDF製、細孔径0.45μm)を使用して精密ろ過を行った。得られたろ液を、分画分子量10000の限外ろ過膜(Sartorius stedim biotech社製 VIVASPIN 20 材質:PES)でろ過し、膜画分が1mLになるまで4500Gで遠心した。さらに蒸留水6mLを膜画分に添加し、再度膜画分が1mLになるまで4500Gで遠心した。この後、膜画分から酵素を回収した。回収酵素の各活性は、参考例3に準じて測定した。また、回収酵素活性の比較のため、工程(2)の糖液と比較例1の糖化残さの洗浄された溶液とを混合した後、限外ろ過膜に通じてろ過して、非透過液として糸状菌由来セルラーゼを回収する工程(比較例2)で得られた回収酵素活性を基準(1)として、相対値として表4に示した。
Figure 2014208493
表4から明らかなように、比較例2に対して、実施例4では各回収酵素活性が高まることが判明した。また、実施例4では比較例2との相対的な各回収酵素活性の差が、実施例3に対して大きくなっていることが判明した。
<実施例5:リグニンブロッキング剤を含む水溶液での糖化残さの洗浄時の温度の影響>
リグニンブロッキング剤を含む水溶液を用いて糖化残さを洗浄する場合において、洗浄時の温度による糖化残さの洗浄への影響を検討した。40℃、50℃、60℃の各温度に設定した湯浴に対し、糖化残さ1に洗浄された溶液を添加したものを浸し、30分放置した。その後、実施例3と同様の操作で回収酵素を得て、各酵素活性を測定した。
Figure 2014208493
Figure 2014208493
表5および表6に示すように、40〜60℃の温度範囲で糖化残さ1を洗浄して回収された洗浄された溶液の酵素活性が室温に比べて増大することが判明した。
<実施例6:リグニンブロッキング剤と硫酸アンモニウムを含む水溶液による糖化残さの洗浄>
リグニンブロッキング剤を含む水溶液による糖化残さの洗浄において、さらに、無機塩として硫酸アンモニウムを添加する場合の洗浄効果を検討した。リグニンブロッキング剤として、BSA(牛血清由来アルブミン、シグマアルドリッチ社製)、CSL(コーンスティープリカー、王子コーンスターチ株式会社製)を使用した。前記リグニンブロッキング剤を滅菌水に最終濃度5g/Lとなるように添加し、本実施例ではさらに硫酸アンモニウムを1g/L、5g/L、10g/Lとなるように添加して、洗浄された溶液を調製した。これら洗浄された溶液を「糖化残さ1」に対し、6g(6mL)添加して混合した。混合後、30分、室温で放置した後、遠心分離(3000G、10分)して固液分離し、糖化残さ1の洗浄された溶液6gを各遠心上清として回収した。回収した上清成分は、実施例3と同じ手順で各酵素活性を測定した。結果を表7および表8に示す。
Figure 2014208493
Figure 2014208493
表7および表8から明らかなように、硫酸アンモニウムをさらに洗浄された溶液に添加することによって、酵素活性が増大することが判明した。特にこの効果は、キシラン分解活性に対して大きいことが判明した。
<実施例7:乳酸の生産>
実施例2の糖液1および糖液2を発酵原料として使用して、ラクトコッカス・ラクティスJCM7638株を24時間、37℃の温度で静置培養した。培養液に含まれるL−乳酸濃度を以下の条件で分析した。結果を表9に示す。
カラム:Shim−Pack SPR−H(株式会社島津製作所製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃
Figure 2014208493
表9に示す通り、糖液1および糖液2を発酵原料として使用することで、L−乳酸を生産することが可能であることが確認された。
10 糖液製造装置
11 加水分解反応槽
12 固液分離装置
13 洗浄水槽
14 ろ液回収タンク
15 限外ろ過膜装置
21 攪拌タンク
22 セルロース含有バイオマス
23 撹拌装置
24、36 保温設備
25、31 供給口
26 糸状菌由来セルラーゼ
28 加水分解物
32 プレスろ過過装置
33 コンプレッサー
34 リグニンブロッキング剤を含む水溶液
35 通水口
41 混合溶液
42 糖液(透過液)
43 非透過液
L11 糖化酵素回収ライン

Claims (10)

  1. セルロース含有バイオマスから糖液を製造する方法であって、
    工程(1):前記セルロース含有バイオマスを糸状菌由来セルラーゼにより加水分解して、加水分解物を得る工程、
    工程(2):前記加水分解物を、糖液と糖化残さとに固液分離する工程、
    工程(3):前記糖化残さをリグニンブロッキング剤を含む水溶液で洗浄して、前記糖化残さに含まれる前記糸状菌由来セルラーゼを含む洗浄された溶液を得る工程、および
    工程(4):前記洗浄された溶液を含む溶液をろ過し、糸状菌由来セルラーゼを含む非透過液を回収する工程、
    を含む、糖液の製造方法。
  2. 前記リグニンブロッキング剤が、コーンスティープリカー、ペプトン、酵母エキス、肉エキス、カゼイン、スキムミルク、牛血清由来アルブミン、エタノール発酵蒸留残さ、ゼイン、魚加工廃棄物、肉加工廃棄物、ホエータンパク質、穀物加工廃棄物、糖加工廃棄物、食物、藻類タンパク質、大豆タンパク質、細菌タンパク質、および菌タンパク質からなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の糖液の製造方法。
  3. 工程(4)において、前記洗浄された溶液のろ過が、限外ろ過膜である、請求項1または2に記載の糖液の製造方法。
  4. 工程(2)において得られた糖液と、工程(3)において得られた前記洗浄された溶液とを混合する工程を含み、
    工程(4)において、前記糖液および前記洗浄された溶液とを含む混合溶液をろ過して、前記糖液を含む透過液を回収する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  5. 工程(3)において、前記リグニンブロッキング剤を含む水溶液の温度が、40〜60℃である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  6. 前記リグニンブロッキング剤を含む水溶液が、無機塩を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  7. 前記糸状菌由来セルラーゼが、トリコデルマ属微生物由来である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  8. 前記非透過液が、工程(1)の前記糸状菌由来セルラーゼに混合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  9. 工程(2)において、前記加水分解物の固液分離がプレスろ過により行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の糖液の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の糖液の製造方法により糖液を製造する工程と、
    前記糖液を発酵原料として化学品を生産する能力を有する微生物を培養する工程と、
    を含む、化学品の製造方法。
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