(各実施形態の内容に至る経緯)
先ず、本開示に係る無線通信装置の各実施形態を説明する前に、各実施形態の内容に至る経緯として、上述した特許文献1及び特許文献1における課題について説明する。なお、データ送信用無線通信装置は、無線送信部及び無線受信部を含む構成であり、データ受信用無線通信装置は、無線送信部及び無線受信部を含む構成である。また、データ送信用無線通信装置とデータ受信用無線通信装置とは、同様の構成を有し、例えば直接通信する場合を想定して説明する。
ミリ波通信を用いた通信プロトコル(例えばIEEE802.11ad)では、送信アンテナ又は受信アンテナのビームパターンを決定するためのプロセス(手続き)がある(図18(A)参照)。図18(A)は、従来のミリ波通信におけるアンテナのビームパターンを設定するための設定期間PH1と通信期間PH2とを含む送信周期TRの説明図である。図18(B)は、従来のミリ波通信におけるアンテナのビームパターンを設定するための設定期間PH1と通信期間PH2とを含む送信周期TRにおいて通信環境の劣化が発生するタイミングの説明図である。
図18(A)に示す送信周期TRは、ミリ波通信におけるアンテナのビームパターンを設定するための設定期間PH1(Antenna Training Phase)と、実際の通信(データトランザクション)期間PH2(Communication Phase)とを含む。送信期間TRの時間幅は、送信周期TR毎に、同一でも良いし、異なっても良い。
設定期間PH1では、データ送信用無線通信装置は、指向性の異なる複数のアンテナのビームパターンを設定し、アンテナのビームパターンに関する情報を含む指向性検証用フレームを通信相手のデータ受信用無線通信装置に送信する。データ受信用無線通信装置は、指向性検証用フレームを受信した後、どのアンテナのビームパターンが適切であって、通信期間PH2において用いるアンテナに関する情報を含む応答フレームをデータ送信用無線通信装置に返送する。
データ送信用無線通信装置は、データ受信用無線通信装置から返送された応答フレームを基に、データ受信用無線通信装置への通信に関する送信アンテナのビームパターンを設定する。これにより、設定期間PH1では、データ送信用無線通信装置の通信相手に対する送信アンテナのビームパターンが設定される。
しかし、図18(A)に示す送信周期TRは、設定期間PH1が設定されていない送信周期と比べて、設定期間PH1の長さに応じて、通信期間PH2が短くなる。送信周期TRの時間幅は不変であるため、設定期間PH1が長くなると、通信期間PH2が短くなり、通信期間PH2において使用可能な帯域が少なくなる。
また、ミリ波の特性上、設定期間PH1後の通信期間PH2の開始から時間(Duration)が経過し、通信環境の変化が発生した場合には(図18(B)参照)、残りの通信期間PH2において、設定期間PH1と同様に、データ送信用無線通信装置の通信相手に対する送信アンテナのビームパターンを再度設定する必要があるという課題がある。
特許文献1では、上述した課題に対応して、データ送信用無線通信装置は、送信アンテナのビームパターンの設定回数を減らし、通信時に適切なアンテナのビームパターンを選択している。
しかし、特許文献1において、Ackフレームがデータ送信用無線通信装置に到達していない場合に、データ送信用無線通信装置がデータフレームを再送する原因には、次の2通りの原因が考えられる。第1の原因は、データフレームがデータ受信用無線通信装置に届かなかったので、データ受信用無線通信装置がAckフレームを返送していない場合である。第2の原因は、データフレームはデータ受信用無線通信装置に届いたが、データ受信用無線通信装置から返送されたAckフレームがデータ送信用無線通信装置に届かなかった場合である。
従って、特許文献1では、データ送信用無線通信装置がデータフレームを再送する原因が上述した第2の原因である場合には、データ送信用無線通信装置の送信アンテナのビームパターンは適切であったにも拘わらず、データ送信用無線通信装置は、送信アンテナのビームパターンを他のビームパターンに変更してデータフレームを再送することになる。このため、データ送信用無線通信装置は送信アンテナのビームパターンの不要な変更を行うので、データ送信用無線通信装置と通信相手としてのデータ受信用無線通信装置との間の通信品質が劣化するという課題があった。
そこで、以下の各実施形態では、アンテナのビームパターンの不要な変更を回避し、通信品質の劣化を抑制する無線通信装置の例を説明する。
次に、本開示に係る無線通信装置の各実施形態を説明する前に、各実施形態の内容の前提となる技術知識について、図14〜図17を参照して説明する。図14〜図17の説明では、説明を簡単にするために、2つの無線通信装置が直接通信する場合を想定し、送信側の無線通信装置をデータ送信用無線通信装置、受信側の無線通信装置をデータ受信用無線通信装置と略記する(例えば図15(A)又は図17(A)参照)。
図14(A)は、従来のMACフレームのフォーマットの一例を示す図である。図14(B)は、従来のシーケンス制御フィールドのフォーマットの一例を示す図である。図14(C)は、従来のフレーム制御フィールドのフォーマットの一例を示す図である。図14(D)は、従来のAckフレームのフォーマットの一例を示す図である。以下の第1の実施形態の無線通信装置は、例えば図14(A)に示すフォーマットのMACフレーム(例えばデータフレーム、Data frame)を送受信する。
図14(A)に示すMACフレームは、フレーム制御(Frame Control)、デュレーション(Duration)/ID、アドレス(Address)1、アドレス2、アドレス3、シーケンス制御(Sequence Control)、アドレス4、Qos(Quality of Service)制御、HT(High Throughput)制御、フレームボディ(Frame Body)及びFCS(Frame Check Sequence)の各フィールドを含む。MACフレームにおいて、フレームボディ及びFCS以外の各フィールドによりMACヘッダ(MAC Header)が構成される。
図14(B)に示すシーケンス制御フィールドは、フラグメント番号(Fragment Number)及びシーケンス番号(Sequence Number)の各フィールドを含む。シーケンス番号は、図14(A)に示すMACフレームの識別番号又は送信順序を表し、例えばシーケンス番号のフィールドが12ビットである場合には0〜4095のいずれかの整数値である。
図14(C)に示すフレーム制御フィールドは、プロトコルバージョン(Protocol Version)、タイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)、To DS(Destribution Service)、From DS、More Frag、リトライ(Retry)、パワー管理(Power Management)、More Data、Protected Frame及びOrderの各フィールドを含む。リトライフィールドは、図14(A)に示すMACフレームの再送の有無を表すリトライビットが格納され、例えばリトライビットが1であれば再送されたMACフレームであることを表し、リトライビットが0であれば新規に送信されたMACフレームであることを表す。
図14(D)に示すAckフレームは、フレーム制御(Frame Control)、デュレーション(Duration)、RA(Receiver Address、受信局アドレス)及びFCSの各フィールドを含む。Ackフレームにおいて、FCS以外の各フィールドによりMACヘッダ(MAC Header)が構成される。
高速なデータ伝送を実現する無線通信の規格(例えばIEEE802.11)では、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)又は無線基地局における無線帯域の割当による集中制御を用いた時分割多重通信(SPCA:Service Period Channel Access)の通信が規定されている。
例えばCSMA/CAでは、データ送信用無線通信装置Dv11は、データフレームを送信する前にキャリアセンスを行い、所定の規定時間にキャリアを検出しない場合にデータフレームの送信を開始する。データ送信用無線通信装置Dv11及びデータ受信用無線通信装置Dv12は、データフレームの送信によって開始されるTXOP(Transmission Opportunity)と呼ばれる一定の期間にわたり、一連のデータフレームの送信及びAckフレームの応答が行われる(図15(A)参照)。
CSMA/CAでは、データ送信用無線通信装置Dv1は、キャリアセンスによってデータ受信用無線通信装置Dv2への送信を決定した後に、例えば図18(A)に示す設定期間PH1において設定及び保持された送信アンテナのビームパターンを用いて、データフレームをデータ受信用無線通信装置Dv2に送信する。
しかし、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1がデータフレームを送信する時刻を予め知ることが困難である。また、同じ時刻に他のデータ送信用無線通信装置からデータ受信用無線通信装置Dv2に別のデータフレームが送信される可能性もあるので、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1及び他のデータ送信用無線通信装置から送信されるデータフレームを受信できるように、受信アンテナのビームパターンを広範囲に設定する(図1(A)又は図1(B)参照)。
図15(A)は、従来のデータ送信用無線通信装置Dv11とデータ受信用無線通信装置Dv12との間における単一のデータフレームのシグナリングの概念を示すシーケンス図である。データ受信用無線通信装置Dv12は、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したデータフレームを正しく受信した場合には、max ack delayと呼ばれる所定の期間内に、応答フレームとしてのAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv11に応答する。
データ送信用無線通信装置Dv11は、Ackフレームを受信することで、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したデータフレームがデータ受信用無線通信装置Dv12において正しく受信されたと判定し、Ackフレームを受信しないことで、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したデータフレームがデータ受信用無線通信装置Dv12において正しく受信されなかったと判定する。
データ送信用無線通信装置Dv11は、Ackフレームを受信した場合には、次のデータフレームの送信を決定し、各データフレームに割り当てられるシーケンス番号(SN)を1つインクリメントし、リトライビットを0とするデータフレームを生成する。なお、シーケンス番号は、データ送信用無線通信装置Dv11のアドレス、データ受信用無線通信装置Dv12のアドレス及びTID(Traffic Identifier)に対応付けて管理される。
一方、データ送信用無線通信装置Dv11は、Ackフレームを受信しない場合には、同じデータフレームを再送する。但し、再送されるデータフレームのシーケンス番号を変更されず、リトライビットは1に設定される(図15(B)参照)。
図15(B)は、従来のデータ送信用無線通信装置Dv11とデータ受信用無線通信装置Dv12との間における単一のデータフレームのシグナリングの一例を示すシーケンス図である。データ送信用無線通信装置Dv11は、送信したデータフレームに対応するAckフレームを正しく受信しない場合には、例えばシーケンス番号を1に保持し、リトライビットを1に設定したデータフレームをデータ受信用無線通信装置Dv12に再送する。
なお、データ送信用無線通信装置Dv11は、シーケンス番号を1に保持し、リトライビットを1に設定したデータフレームをデータ受信用無線通信装置Dv12に送信した後、再度、Ackフレームを正しく受信しなし場合には、データフレームを再送する。また、データ送信用無線通信装置Dv11は、再送回数をカウントし、所定の上限回数を超えた再送は行わない。また、データ送信用無線通信装置Dv11は、再送対象のデータフレームの送信が成功したと判定した場合に再送回数のカウンタをリセットする。
図16(A)は、従来のA−MPDUフレームのフォーマットの一例を示す図である。図16(B)は、従来のA−MPDUサブフレームのフォーマットの一例を示す図である。図16(C)は、従来のブロックAckフレームのフォーマットの一例を示す図である。以下の第2の実施形態の無線通信装置は、例えば図16(A)に示すフォーマットのアグリゲーションフレーム(Aggregation frame、A−MPDU:Aggregate Medium Access Control Protocol Data Unit)を送受信する。
図16(A)に示すアグリゲーションフレームは、複数のA−MPDUサブフレーム(A-MPDU sub frame)の各フィールドを含む。図16(B)に示すA−MPDUサブフレームは、A−MPDUサブフレームの区切り情報としてのMPDU delimiter、図14(A)に示すMACフレームと同様のMPDU及び調整用のPaddingの各フィールドを含む。
図16(C)に示すブロックAckフレームは、フレーム制御(Frame Control)、デュレーション(Duration)/ID、ブロックAckフレームの受信先アドレスを表すRA(Receiver Address)、ブロックAckフレームの送信先アドレスを表すTA(Transmission Address)、BA制御(Block Ack Control)、BA情報(Block Ack Information)及びFCSの各フィールドを含む。ブロックAckフレームにおいて、BA制御、BA情報及びFCS以外の各フィールドによりMACヘッダ(MAC Header)が構成される。
また、伝送効率の向上を目的として、図16(A)に示すアグリゲーションフレーム(A−MPDU)の送信、及びアグリゲーションフレームの受信を示すブロックAckフレームの応答によって、複数のシーケンス番号のMACフレームを一度に送受信する方式も知られている。データ受信用無線通信装置Dv12は、ブロックAckフレームの返送により、アグリゲーションフレームとして連結された複数のデータフレーム(MPDU)に対して、正しく受信したこと(Ack)又は正しく受信しないこと(Nack(No Acknowledge))を一度に応答できる(図17(A)参照)。
図17(A)は、従来のデータ送信用無線通信装置とデータ受信用無線通信装置との間における送信アグリゲーションフレームのシグナリングの概念を示すシーケンス図である。データ受信用無線通信装置Dv12は、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したアグリゲーションフレームのうち一部又は全てのシーケンス番号のデータフレーム(MPDU)を正しく受信した場合には、max ack delayと呼ばれる所定の期間内に、応答フレームとしてのブロックAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv11に応答する。
データ送信用無線通信装置Dv11は、ブロックAckフレームを受信することで、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したアグリゲーションフレームのうち一部又は全てのシーケンス番号のデータフレーム(MPDU)がデータ受信用無線通信装置Dv12において正しく受信されたと判定し、ブロックAckフレームを受信しないことで、データ送信用無線通信装置Dv11が送信したアグリゲーションフレームがデータ受信用無線通信装置Dv12において正しく受信されなかったと判定する。
データ送信用無線通信装置Dv11は、ブロックAckフレームを受信できた場合には、ブロックAckフレームの内容を解析し、正しく受信されたデータフレーム(MPDU)のシーケンス番号と、正しく受信されなかったデータフレーム(MPDU)のシーケンス番号とを判定する。データ送信用無線通信装置Dv11は、判定結果に応じて、正しく受信されなかったデータフレーム(MPDU)のシーケンス番号と、新規の送信対象となるデータフレーム(MPDU)のシーケンス番号とを含むアグリゲーションフレームを生成する(図17(C)参照)。
一方、データ送信用無線通信装置Dv11は、ブロックAckフレームを受信しない場合には、同じアグリゲーションフレームを再送する(図17(B)参照)。
図17(B)は、従来のデータ送信用無線通信装置とデータ受信用無線通信装置との間における送信アグリゲーションフレームのシグナリングの一例を示すシーケンス図である。図17(C)は、従来のデータ送信用無線通信装置とデータ受信用無線通信装置との間における送信アグリゲーションフレームのシグナリングの他の一例を示すシーケンス図である。
次に、本開示に係る無線通信装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。各実施形態の無線通信装置は、例えばIEEE802.11adの通信規格において規定されているミリ波(例えば60[GHz])を用いて、通信相手の無線通信装置と無線通信する。また、以下の各実施形態では、各実施形態におけるデータを送信する無線通信装置(以下、「データ送信用無線通信装置」と略記する)と各実施形態におけるデータを受信する無線通信装置(以下、「データ受信用無線通信装置」と略記する)とは、同様の構成を有し、例えば直接通信する場合を想定して説明する。また、データ送信用無線通信装置は、無線送信部及び無線受信部を含む構成であり、データ受信用無線通信装置は、無線送信部及び無線受信部を含む構成である。
(アンテナのビームパターン)
先ず、各実施形態の無線通信装置の送信アンテナ又は受信アンテナのビームパターンの形成について、図1(A)〜図1(D)を参照して説明する。
図1(A)は、無指向性のビームパターンPA1を示す図である。図1(B)は、疑似無指向性のビームパターンPA2を示す図である。図1(C)は、複数(例えば3つ)の指向性を有し、いずれかの方向に主ビームを形成したビームパターンPA3を示す図である。図1(D)は、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナは特定方向の指向性を有したビームパターンPA3が設定され、データ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナは疑似無指向性のビームパターンPA2が設定された場合の通信例の説明図である。
データ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、MACフレーム又はアグリゲーションフレームを送信又は受信する場合に、各送信アンテナ又は受信アンテナのビームパターンを無指向性(omni)のビームパターンPA(図1(A)参照)、又は疑似無指向性(quasi-omni)のビームパターンPA2に設定する。
以下、データ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2の最大の半値幅を有するビームパターンの指向性を、疑似無指向性(quasi-omni)と記載する。従って、疑似無指向性のビームパターンPA2では、図1(C)に示す特定方向の指向性を有したビームパターンPA3に比べて、フレームの到達距離又は受信距離は短いが、半値幅は大きい。
また、データ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、MACフレーム又はアグリゲーションフレームを送信又は受信する場合に、各送信アンテナ又は受信アンテナのビームパターンを、特定方向に主ビームを形成したビームパターンPA3に設定することもできる(図1(C)参照)。
例えば図1(D)のように、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナが特定方向に主ビームが形成されたビームパターンPA3に設定され、データ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナが疑似無指向性のビームパターンPA2に設定されている場合、データ送信用無線通信装置Dv1が送信したMACフレーム又はアグリゲーションフレームはデータ受信用無線通信装置Dv2において受信される。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、例えばデータ送信用無線通信装置Dv1が図14(A)に示すMACフレームを送信し、データ受信用無線通信装置Dv2がMACフレームを受信したことを示すAckフレームを応答する場合を想定して説明する。
図2は、各実施形態の無線通信装置1の内部基本構成の一例を示すブロック図である。図2に示す無線通信装置1は、例えば通信相手である他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)から送信されたMACフレームを受信し、MACフレームの受信を示すAckフレームを応答するデータ受信用無線通信装置を想定した構成である。
具体的には、図2に示す無線通信装置1は、受信アンテナARXが接続された無線受信部11と、応答要否判定部12と、応答フレーム生成部13と、送信アンテナATXが接続された無線送信部14と、判定部15と、アンテナ制御部16とを含む。
受信アンテナARXは、通信相手である他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)との通信期間PH2(図18(A)参照)が開始する前に、図18(A)に示す設定期間PH1において、ビームパターンが設定される。即ち、受信アンテナARXは、アンテナ制御部16が出力したアンテナ制御信号に応じて、ビームフォーミング技術によって、所定の指向性を有したビームパターンが設定されて保持される。
受信アンテナARXは、保持されたビームパターンを用いて、他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)が送信したMACフレーム(例えばデータフレーム)又はAckフレームを受信して無線受信部11に出力する。
また、受信アンテナARXは、他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)との通信期間PH2においても、アンテナ制御部16が出力したアンテナ制御信号に応じて、ビームフォーミング技術によって、ビームパターンが変更されて保持される。
送信アンテナATXは、通信相手である他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)との通信期間PH2(図18(A)参照)が開始する前に、図18(A)に示す設定期間PH1において、ビームパターンが設定される。即ち、送信アンテナATXは、アンテナ制御部16が出力したアンテナ制御信号に応じて、ビームフォーミング技術によって、所定の指向性を有したビームパターンが設定されて保持される。
送信アンテナATXは、保持されたビームパターンを用いて、他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)が送信したMACフレーム(例えばデータフレーム)又はAckフレームを送信する。
また、送信アンテナATXは、他の無線通信装置(例えばデータ送信用無線通信装置Dv1又はデータ受信用無線通信装置Dv2)との通信期間PH2においても、アンテナ制御部16が出力したアンテナ制御信号に応じて、ビームフォーミング技術によって、ビームパターンが変更されて保持される。
無線受信部11は、受信アンテナARXにおいて受信されたキャリア周波数帯域のMACフレーム又はAckフレームの信号をベースバンド信号に変換して復調する。無線受信部11は、復調されたMACフレームの宛先アドレス(例えば図14(A)に示すアドレス1(Address1)のフィールド参照)又はAckフレームの受信局アドレス(例えば図14(D)に示すRA(Receiver Address)のフィールド参照)が自局のMACアドレスと一致した場合に、自局宛てのフレームであると判定する。
無線受信部11は、MACフレーム又はAckフレームが自局宛てのフレームであると判定した後、MACフレーム又はAckフレームの内容を基にして演算した値とFCSの値とが一致するか否かを判定する。無線受信部11は、MACフレーム又はAckフレームの内容を基にして演算した値とFCS(例えCRC32(Cyclic Redundancy Code 32))の値とが一致すると判定した場合に、MACフレーム又はAckフレームを正しく受信したと判定する。
無線受信部11は、MACフレーム又はAckフレームを正しく受信したと判定した後、MACフレーム又はAckフレームを応答要否判定部12及び判定部15に出力する。
また、無線受信部11は、MACフレーム又はAckフレームを受信したが自局宛てのMACフレーム又はAckフレームではない、或いはMACフレーム又はAckフレームの内容を基にして演算した値とFCSとの値とが不一致であると判定した場合には、MACフレーム又はAckフレームを正しく受信していないと判定する。無線受信部11は、MACフレーム又はAckフレームを廃棄して次の受信まで待機する。
応答要否判定部12は、無線受信部11が復調したMACフレームのフレーム種別(例えば図14(A)に示すタイプ(Type)又はサブタイプ(Subtype)のフィールド参照)、又は応答種別(例えば図14(A)に示すQoS制御のフィールド参照)を基に、MACフレームの受信を示すAckフレームの応答の要否を判定する。
応答要否判定部12は、無線受信部11が復調したMACフレームを無線通信装置1の上位レイヤ(不図示)に出力し、Ackフレームの応答の要否の判定結果を、応答フレーム生成部13、判定部15及びアンテナ制御部16に出力する。なお、応答要否判定部12がAckフレームの応答が不要であると判定した場合には、無線通信装置1は、MACフレームの受信を示すAckフレームを応答しない。
応答フレーム生成部13は、応答要否判定部12がAckフレームの応答が必要であると判定した場合に、MACフレームの受信を示すAckフレームを生成して無線送信部14に出力する。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームを所定のキャリア周波数帯域の信号に変換して送信アンテナATXから送信する。なお、無線送信部14は、MACフレームが受信アンテナARXにおいて受信された時点から、所定の規定された時間(例えばIEEE802.11ではSIFS:Short Inter Frame Space)の経過後に、Ackフレームを応答する。これにより、無線通信装置1は、通信相手から送信されたMACフレームを正しく受信したことを通信相手に報告できる。
判定部15は、応答要否判定部12がAckフレームの応答が必要であると判定した場合に、無線受信部11が復調したMACフレームを基に、無線通信装置1の通信相手から同一のMACフレームが再送されたか否かを判定する。判定部15は、例えば図3(A)に示す無線通信装置1Aの再送ビット判定部15A、又は図3(B)に示す無線通信装置1BのSN判定部15Bを用いて構成される。
図3(A)は、図2に示す無線通信装置1において判定部15の一例として再送ビット判定部15Aを用いた無線通信装置1Aの内部構成の一例を示すブロック図である。図3(B)は、図2に示す無線通信装置1において判定部15の一例としてSN判定部15Bを用いた無線通信装置1Bの内部構成の一例を示すブロック図である。
無線通信装置1Aにおける再送ビット判定部15Aは、無線受信部11が復調したMACフレームのリトライフィールド(例えば図14(A)に示すリトライ)内のリトライビットが、再送を示す1、又は新規送信を示す0であるかを判定し、判定結果をアンテナ制御部15の送信アンテナ制御部16Tに出力する。
ここで、データ受信用無線通信装置Dv2がMACフレームを正しく受信しているため、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXとデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナARXとのビームパターンは、設定期間PH1において設定したビームパターンが有効であると判断できる。
これに対して、受信したMACフレームのリトライビットが1であるため、データ受信用無線通信装置Dv2がMACフレームを正しく受信する以前に通信相手であるデータ送信用無線通信装置Dv1からMACフレームが1回以上再送され、データ受信用無線通信装置Dv2はMACフレームの正しい受信を示すAckフレームを返送したが、返送されたAckフレームが通信相手であるデータ送信用無線通信装置Dv1には正しく受信されていないことになる。
この場合、設定期間PH1において設定したビームパターンであり、Ackフレームの返送に用いたデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXのビームパターンとデータ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンは、適切でないと考えられる。
無線通信装置1BにおけるSN判定部15Bは、無線受信部11が復調したMACフレームのシーケンス制御フィールドのシーケンス番号と、以前に無線受信部11が受信して復調したMACフレームのシーケンス制御フィールドのシーケンス番号と同一であるか否かを判定し、判定結果をアンテナ制御部16の送信アンテナ制御部16Tに出力する。
即ち、同一のシーケンス番号のMACフレームが、有限個のシーケンス番号のカウントが1周する前に複数回受信されている場合には、データ受信用無線通信装置Dv2が同一のMACフレームを重複して受信した、即ち、通信相手であるデータ送信用無線通信装置Dv1から同一のMACフレームが再送されたことになる。
このため、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXとデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナARXとのビームパターンは、設定期間PH1において設定したビームパターンが有効であると判断できる。
これに対して、設定期間PH1において設定したビームパターンであり、Ackフレームの返送に用いたデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXとデータ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンは適切ではないと考えられる。
なお、SN判定部15Bは、シーケンス番号を、宛先アドレス(例えば図14(A)に示すアドレス1参照)又は受信局アドレス(例えば図14(D)に示すRA参照)と、論理リンクの識別子を示すTID(Traffic Identifier)との全て又は一部のペア毎に対応付けて管理する。
また、SN判定部15Bは、無線通信装置1Bが以前に受信したMACフレームのシーケンス番号を記憶する。以下、本実施形態の説明を簡単にするために、SN判定部15Bが記憶する、以前に受信されたMACフレームのシーケンス番号を「記憶SN」と略記し、受信アンテナARXにおいて受信されたMACフレームのシーケンス番号を「受信SN」と略記する。
アンテナ制御部16は、送信アンテナ制御部16T及び受信アンテナ制御部16Rを含む。なお、図2に示すアンテナ制御部16は、図3(A)又は図3(B)に示す送信アンテナ制御部16T及び受信アンテナ制御部16Rを含むとして説明するが、アンテナ制御部16が送信アンテナATX及び受信アンテナARXのビームパターンを制御しても良い。
送信アンテナ制御部16Tは、通信相手との通信期間PH2(図18(A)参照)が開始する前に、設定期間PH1において、送信アンテナATXのビームパターンを設定して保持する。
送信アンテナ制御部16Tは、再送ビット判定部15AがMACフレームのリトライフィールド内のリトライビットが1であると判定、即ち、同一のMACフレームの初送又は再送が以前にあったと判定した場合には、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する。
送信アンテナ制御部16Tは、再送ビット判定部15AがMACフレームのリトライフィールド内のリトライビットが0である判定、即ち、新たなMACフレームの初送を受けた判定した場合には、設定期間PH1に設定されたAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する。
送信アンテナ制御部16Tは、応答要否判定部12がAckフレームの応答が不要であると判定した場合に、設定期間PH1に設定された送信アンテナATXのビームパターンを保持する。
受信アンテナ制御部16Rは、通信相手との通信期間PH2(図18(A)参照)が開始する前に、設定期間PH1において、受信アンテナARXのビームパターンを設定して保持する。なお、詳細は後述するが、受信アンテナ制御部16Rは、応答要否判定部12、再送ビット判定部15A又はSN判定部15Bの判定結果に応じて、受信アンテナARXのビームパターンを変更又は保持しても良い。
次に、本実施形態の無線通信装置1がMACフレームを受信してからAckフレームを送信するまでの動作手順について、図4(A)及び図4(B)を参照して説明する。
図4(A)は、第1の実施形態のデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したMACフレーム(例えばデータフレーム)に対するAckフレームの送信アンテナATXのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートである。図4(B)は、第1の実施形態のデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したMACフレーム(例えばデータフレーム)に対するAckフレームの送信アンテナATXのビームパターンの設定手順の他の一例を説明するフローチャートである。
なお、図4(A)では図3(A)に示す無線通信装置1A(データ受信用無線通信装置Dv2)がMACフレーム(例えばデータフレーム)を正しく受信したとして説明し、図4(B)では図3(B)に示す無線通信装置1B(データ受信用無線通信装置Dv2)がMACフレーム(例えばデータフレーム)を正しく受信したとして説明する(P1)。
図4(A)において、応答要否判定部12は、無線受信部11が復調したMACフレームのフレーム種別又は応答種別を基に、MACフレームの正しい受信を示すAckフレームの応答の要否を判定する(P2)。応答要否判定部12は、判定結果を、応答フレーム生成部13、再送ビット判定部15A及び送信アンテナ制御部16Tに出力する。
送信アンテナ制御部16Tは、応答要否判定部12がAckフレームの応答が不要であると判定した場合には(P2、NO)、送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P3)。
応答フレーム生成部13は、応答要否判定部12がAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P2、YES)、MACフレームの受信を示すAckフレームを生成して無線送信部14に出力する。
再送ビット判定部15Aは、応答要否判定部12がAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P2、YES)、無線受信部11が復調したMACフレームのリトライフィールド内のリトライビットが再送を示す1、又は新規送信を示す0であるかを判定する(P4)。再送ビット判定部15Aは、判定結果を送信アンテナ制御部16Tに出力する。
送信アンテナ制御部16Tは、再送ビット判定部15AがMACフレームのリトライフィールド内のリトライビットが0であると判定した場合には(P4、YES)、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P5)。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームを、ステップP5において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P6)。
一方、送信アンテナ制御部16Tは、再送ビット判定部15TがMACフレームのリトライフィールド内のリトライビットが1であると判定した場合には(P4、NO)、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する(P7)。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームを、ステップP7における変更後の送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P8)。なお、ステップP3、ステップP6又はステップP8の後の無線通信装置1Aの動作は、ステップP1に戻る。
次に、図4(B)を参照して、無線通信装置1BがMACフレームを受信してからAckフレームを応答するまでの動作手順を説明するが、図4(A)に示す各動作と同一の動作には同一のステップ番号を付与して説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図4(B)において、SN判定部15Bは、応答要否判定部12がAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P2、YES)、記憶SNと受信SNとが同一であるか否かを判定する(P4A)。SN判定部15Bは、ステップP4Aの判定結果に拘わらず、受信SNを記憶する(P9,P10)。
ステップP9の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNと受信SNとが不一致であると判定した場合に、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P5)。
記憶SNと受信SNとが不一致であれば、無線通信装置1Bは、新たなシーケンス番号が付与されたMACフレームを受信したことになる。従って、無線通信装置1Bは、前回のAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要が無いと判断する。
一方、ステップP9の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNと受信SNとが一致していると判定した場合に、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する(P7)。
記憶SNと受信SNとが一致であれば、無線通信装置1Bは、同一のシーケンス番号が付与されたMACフレームを受信したことになる。従って、無線通信装置1Bは、前回のAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが不適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要があると判断する。
次に、本実施形態の無線通信装置同士が直接に無線通信する場合のシグナリングの一例について、図5(A)、図5(B)、図6(A)及び図6(B)を参照して説明する。図5(B)、図6(A)及び図6(B)の説明では、図5(A)に示す各動作と同一の動作については同一の符号を用いて説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図5(A)は、第1の実施形態のデータ送信用無線通信装置及びデータ受信用無線通信装置における、Ackフレームの受信によってシーケンス番号SNが変更されるシグナリングの一例を示すシーケンス図である。図5(B)は、第1の実施形態のデータ送信用無線通信装置及びデータ受信用無線通信装置における、再送回数の上限到達によってシーケンス番号SNが変更されるシグナリングの一例を示すシーケンス図である。
図6(A)は、第1の実施形態のデータ送信用無線通信装置及びデータ受信用無線通信装置における、Ackフレームの受信によってシーケンス番号SNが変更されるシグナリングの他の一例を示すシーケンス図である。図6(B)は、第1の実施形態のデータ送信用無線通信装置及びデータ受信用無線通信装置における、再送回数の上限到達によってシーケンス番号SNが変更されるシグナリングの他の一例を示すシーケンス図である。
以下のシーケンス図では、本実施形態のデータを送信する無線通信装置をデータ送信用無線通信装置Dv1、本実施形態のデータを受信する無線通信装置をデータ受信用無線通信装置Dv2として説明する。
また、図5(A)及び図5(B)は、図3(A)に示す無線通信装置1Aの構成を有するデータ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2の動作を示し、図6(A)及び図6(B)に示す無線通信装置1Bの構成を有するデータ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2の動作を示す。
図5(A)において、データ送信用無線通信装置Dv1は、「シーケンス番号=1、リトライビット=0」のデータフレームをデータ受信用無線通信装置Dv2に送信する(S1)。データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたMACフレーム(例えばデータフレーム)を正しく受信し、送信アンテナATXのビームパターン(例えばPtA)を用いてAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S1)。しかし、ステップS1では、Ackフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1に到達しない(S1)。
データ送信用無線通信装置Dv1は、リトライビットを0から1に変更し、「シーケンス番号=1、リトライビット=1」のデータフレームを再送する(S2)。データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送されたデータフレームを正しく受信し、送信アンテナATXのビームパターンを、例えばビームパターンPtAからビームパターンPtBに変更してAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S2)。
ステップS2においてデータ受信用無線通信装置Dv2から送信されたAckフレームがデータ送信用無線通信装置Dv1に到達した、即ちデータ送信用無線通信装置Dv1において正しく受信されたため、データ送信用無線通信装置Dv1は、例えばシーケンス番号を1つインクリメントし(S3)、「シーケンス番号=2、リトライビット=0」のデータフレームを生成してデータ受信用無線通信装置Dv2に送信する(S4)。
データ受信用無線通信装置Dv2は、ステップS4においてデータ送信用無線通信装置Dv1から送信されたデータフレームを正しく受信し、ステップS2における変更後の送信アンテナATXのビームパターンPtBを用いて、Ackフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S4)。
なお、ステップS4において送信されたAckフレームは、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信環境と各アンテナのビームパターンとが適切であれば、データ送信用無線通信装置Dv1において正しく受信される。
図5(B)において、データ送信用無線通信装置Dv1は、「シーケンス番号=1、リトライビット=1」のデータフレームを再送する(S5)。データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送されたデータフレームを正しく受信し、送信アンテナATXのビームパターンを、例えばビームパターンPtAからビームパターンPtBに変更してAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S5)。しかし、ステップS5では、Ackフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1に到達しない(S5)。
ステップS6でも同様に、データ受信用無線通信装置Dv2は、送信アンテナATXのビームパターンを、例えばビームパターンPtBからビームパターンPtCに変更してAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S6)。しかし、ステップS6では、Ackフレームは、データ送信用無線通信装置Dv1に到達しない(S6)。
データ送信用無線通信装置Dv1は、データフレームの再送回数が所定の再送回数の上限に到達したと判定した場合に、実際には「シーケンス番号=1」のデータフレームはデータ受信用無線通信装置Dv2において正しく受信されているが、「シーケンス番号=1」のデータフレームの再送を中止し、シーケンス番号を1つインクリメントしてシーケンス番号を変更し(S7)、「シーケンス番号=2、リトライビット=0」のデータフレームをデータ受信用無線通信装置Dv2に送信する(S8)。
データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信された「シーケンス番号=2、リトライビット=0」のデータフレームを正しく受信し、送信アンテナATXのビームパターンを、例えばステップS6において設定されたビームパターンPtCを用いてAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S8)。しかし、ステップS8では、Ackフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1に到達しない(S8)。
なお、ステップS8において、データ受信用無線通信装置Dv2は、送信アンテナATXのビームパターンを、ステップS6と同じビームパターンPtCを用いてAckフレームを送信している。これは、データ送信用無線通信装置Dv1によるステップS7の判断が、データ受信用無線通信装置Dv2にとっては未知であるため、ステップS8において、データ受信用無線通信装置Dv2は、シーケンス番号が2に変更された原因が、Ackフレームの到達によるものであるか、ステップS7による再送回数の上限達成によるものであるかを、判断することは困難である。
このため、データ受信用無線通信装置Dv2は、ステップS8において、Ackフレームの送信に用いてビームパターンはステップS6と同じビームパターンを用いることで、再度、ビームパターンPtCによる送信が到達するか否かを試す手順とした。この手順によって、ステップS8において、全てのビームパターンを試すことによる不要な期間の短縮を図ることができる。
データ送信用無線通信装置Dv1は、リトライビットを0から1に変更し、「シーケンス番号=2、リトライビット=1」のデータフレームを再送する(S9)。データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送されたデータフレームを正しく受信し、送信アンテナATXのビームパターンを、例えばビームパターンPtCからビームパターンPtDに変更してAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S9)。なお、ステップS9において送信されたAckフレームは、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信環境と各アンテナのビームパターンとが適切であれば、データ送信用無線通信装置Dv1において正しく受信される。
図6(A)及び図6(B)の各シーケンス図において、図5(A)及び図5(B)の各シーケンス図と異なるのは、データ受信用無線通信装置Dv2が同一のデータフレームが再送されたか否かを判定するための方法であり、判定方法以外の内容は同一であるため、説明を省略する。
即ち、図6(A)及び図6(B)では、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたデータフレームを正しく受信し、Ackフレームの応答が必要であると判定した場合には、記憶SNと受信SNとが同一でないと判定した場合に、設定された送信アンテナATXのビームパターンを用いてAckフレームを送信する。
次に、本実施形態の無線通信装置同士が直接に無線通信する場合の各アンテナのビームパターンの一例について、図7(A)、図7(B)、図7(C)、図7(D)、図7(E)及び図7(F)を参照して説明する。
図7(A)は、ビームパターンが決定された後にデータ送信用無線通信装置Dv1からデータ受信用無線通信装置Dv2へのデータフレームの送信が成功した例を示す説明図である。図7(B)は、ビームパターンが決定された後にデータ受信用無線通信装置Dv2からデータ送信用無線通信装置Dv1へのAckフレームの送信が成功した例を示す説明図である。
図7(C)は、データ受信用無線通信装置Dv2が回転した後にデータ送信用無線通信装置Dv1からデータ受信用無線通信装置Dv2へのデータフレームの送信が成功した例を示す説明図である。図7(D)は、データ受信用無線通信装置Dv2が回転した後にデータ受信用無線通信装置Dv2からデータ送信用無線通信装置Dv1にAckフレームの送信が失敗した例を示す説明図である。
図7(E)は、データ受信用無線通信装置Dv2が回転した後にデータ送信用無線通信装置Dv1からデータ受信用無線通信装置Dv2へのデータフレームの送信が成功した例を示す説明図である。図7(F)は、データ受信用無線通信装置Dv2が回転し、かつ、送信アンテナATXのビームパターンが変更された後にデータ受信用無線通信装置Dv2からデータ送信用無線通信装置Dv1へのAckフレームの送信が成功した例を示す説明図である。
図7(A)、図7(C)及び図7(E)では、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXのビームパターンを太い実線にて示し、データ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナARXのビームパターンを太い点線にて示す。図7(B)、図7(D)及び図7(F)では、データ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンを太い点線にて示し、データ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXのビームパターンを太い実線にて示す。
図7(A)及び図7(B)では、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナARXのビームパターンとの組み合わせは一部において重複する。このため、図7(A)では、データ送信用無線通信装置Dv1が送信したデータフレームはデータ受信用無線通信装置Dv2において受信される。また、図7(B)では、データ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXのビームパターンとの組み合わせが一部において重複する。このため、データ受信用無線通信装置Dv2が送信したAckフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1において受信される。
図7(C)及び図7(D)では、データ受信用無線通信装置Dv2が回転したために、データ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナARXのビームパターンと送信アンテナATXのビームパターンとの重複状態が変化する。図7(C)では、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナARXのビームパターンとの組み合わせが一部において重複する。このため、データ送信用無線通信装置Dv1が送信したデータフレームはデータ受信用無線通信装置Dv2において受信される。
しかし、図7(D)では、データ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXのビームパターンとの組み合わせは重複しない。このため、データ受信用無線通信装置Dv2が送信したAckフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1において受信されず、データ受信用無線通信装置Dv2は、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する。
図7(E)及び図7(F)では、図7(C)及び図7(D)と同様にデータ受信用無線通信装置Dv2が回転した状態について説明する。図7(E)では、データ送信用無線通信装置Dv1の送信アンテナATXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナARXのビームパターンとの組み合わせが一部において重複する。データ送信用無線通信装置Dv1が送信したデータフレームはデータ受信用無線通信装置Dv2において受信される。
図7(F)では、図7(D)におけるビームパターンを変更したため、データ送信用無線通信装置Dv1の受信アンテナARXのビームパターンとデータ受信用無線通信装置Dv2の送信アンテナATXのビームパターンとの組み合わせは一部において重複する。このため、データ受信用無線通信装置Dv2は、変更された送信アンテナATXのビームパターンを用いてAckフレームを送信した場合、データ受信用無線通信装置Dv2が送信したAckフレームはデータ送信用無線通信装置Dv1において受信される。
以上により、本実施形態の無線通信装置1は、通信相手から送信されたMACフレーム(例えばデータフレーム)を正しく受信し、MACフレームの応答を示すAckフレームの応答が必要であると判定した場合には、MACフレームのリトライビットの内容、又は記憶SNと受信SNとの比較によって、通信相手から同一のMACフレームが再送されたか否かを判定する。
無線通信装置1は、通信相手から同一のMACフレームが再送されたと判定した場合には、前回送信したAckフレームの送信に用いた送信アンテナATXのビームパターンが適切ではなかったと判断して、送信アンテナATXのビームパターンを変更する。無線通信装置1は、変更後のビームパターンを用いて、Ackフレームを送信する。
これにより、無線通信装置1は、通信相手から同一のMACフレームが再送されなければ、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更せず、同一のMACフレームが再送された場合に送信アンテナATXのビームパターンを変更するので、送信アンテナATXのビームパターンの不要な変更を回避できる。従って、無線通信装置1は、早期に通信路を回復できるので、通信相手との間の通信環境(通信品質)の劣化を抑制できる。即ち、無線通信装置1は、通信帯域の不要な占有時間を減少できるので、実効スループットを向上でき、更に消費電力及び通信相手への接続に要する時間を低減できる。
また本実施形態では、無線通信装置1は、MACフレームのシーケンス番号を基にして通信相手から同一のMACフレームが再送されたか否かを判定できるので、例えばリトライビットが含まれないフォーマットのMACフレームに対応してMACフレームの再送の有無を判定できる。なお、無線通信装置1は、同一の送信元アドレスを有し、再送であることを示すMACフレームを一定時間内に複数回以上受信した場合には、以前に送信したAckフレームが不到達であったと判定しても良い。
また、無線通信装置1は、例えば図18(A)に示す設定期間PH1が完了してから所定の一定期間が経過した後の通信期間PH2において、通信相手から送信されたMACフレームのリトライビットが0でも、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更しても良い。
例えば図18(A)に示す設定期間PH1が完了してから所定の一定期間が経過した後の通信期間PH2では、通信期間PH2の開始時の通信環境から劣化している場合がある。従って、無線通信装置1は、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更することで、通信相手との間の通信路を早期に回復できる。
なお、所定の一定期間は、例えば無線通信装置1がMACフレームのシーケンス番号を1つインクリメントする時間である。これにより、無線通信装置1は、通信相手におけるAckフレームの到達によるシーケンス番号の素早いインクリメント処理と、Ackフレームの不到達によるMACフレームの再送後から一定時間経過後のシーケンス番号のインクリメント処理とを的確に判別できるので、同一のMACフレームの再送を高精度に判定でき、更に、送信アンテナATXのビームパターンを適切に変更できる。
次に、本実施形態において、無線通信装置1が通信相手から送信されたMACフレーム(例えばデータフレーム)のリトライビットが0である、又はシーケンス番号が変化した場合には、無線通信装置1がAckフレームの送信に用いた送信アンテナATXのビームパターンは、Ackフレームの送信時では適切であったと考えられる。
従って、無線通信装置1は、Ackフレームの送信後にMACフレーム(例えばデータフレーム)を送信する場合に、Ackフレームの送信時の送信アンテナATXのビームパターンを用いても良い(図8(A)及び図8(B)参照)。Ackフレームの送信からMACフレーム(例えばデータフレーム)の送信までの時間は、通信環境にも依存するが、概ね数十μs〜数十ms程度と見込まれ、図18(A)に示す設定期間PH1(例えば数十ms〜数百ms)に比べて十分に短い期間である。
図8(A)は、第1の実施形態のデータ受信用無線通信装置Dv2がAckフレームを送信するための送信アンテナATXのビームパターンを用いてデータフレームを送信する動作手順の一例を説明するフローチャートである。図8(B)は、図8(A)に示すデータ受信用無線通信装置Dv2がAckフレームを送信するための送信アンテナATXのビームパターンを用いてデータフレームを送信するシグナリングの一例を示すシーケンス図である。なお、図8(A)では、図4(B)に示す各動作と同一の動作については同一の符号を用いて説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図8(A)において、ステップP6の後、無線送信部14は、MACフレーム(例えばデータフレーム)を、ステップP5において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P11)。
図8(B)において、ステップS4の後、データ受信用無線通信装置Dv2は、MACフレーム(例えばデータフレーム)を、ステップS4において用いた送信アンテナATXのビームパターンを用いてデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S10)。
これにより、無線通信装置1(データ受信用無線通信装置Dv2)は、通信相手から送信されたMACフレームの受信を示すAckフレームを応答する間に、データフレームの送信用の送信アンテナATXのビームパターンを実質的に設定できるので、データ受信用無線通信装置Dv2がMACフレームを送信するための設定期間PH1を省略することができる、また、設定期間PH1の設定にかかる手順、時間を省略することができるため、実効スループットを向上できる。
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態では、データ受信用無線通信装置Dv2において、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化したこと、或いはシーケンス番号が変化したことの原因が、データ送信用無線通信装置Dv1がAckフレームを正しく受信したこと、又はデータ送信用無線通信装置Dv1が再送したMACフレームの再送回数が所定の再送回数が上限に到達したことのいずれであるかが区別されていない。
第1の実施形態の変形例1(以下、「本変形例1」という)では、データ受信用無線通信装置Dv2は、次の4通りのケースのいずれかに該当すると判定した場合に、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化したこと、或いはシーケンス番号が変化した原因を、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したからであると判定する。即ち、データ受信用無線通信装置Dv2は、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持せずに変更する(図9参照)。
第1のケースでは、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送回数が所定の上限回数に到達した旨の通知を受けるまで、再送された同一のMACフレームの受信回数をカウントする。
データ受信用無線通信装置Dv2は、カウントされた受信回数と再送の上限回数とが一致し、更に、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化した場合、或いはシーケンス番号が変化した場合、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したことが原因であると判定する。
第2のケースでは、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送回数が所定の上限回数に到達した旨の通知を受けるまで、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたMACフレームに含まれる再送回数の情報を取得する。データ受信用無線通信装置Dv2は、取得した再送回数と再送の上限回数とが一致し、更に、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化した場合、或いはシーケンス番号が変化した場合、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したことが原因であると判定する。
第3のケースでは、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたMACフレームに含まれる再送できる残り回数の情報を取得する。データ受信用無線通信装置Dv2は、取得した再送できる残り回数が0になり、更に、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化した場合、或いはシーケンス番号が変化した場合、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したことが原因であると判定する。
第4のケースでは、データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたMACフレームから最終再送であることを示すフラグを検出し、更に、例えばMACフレームのリトライビットが1から0に変化した場合、或いはシーケンス番号が変化した場合、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達した原因であると判定する。
図9は、第1の実施形態の変形例1におけるデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したデータフレームに対するAckフレームの送信アンテナATXのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートである。なお、図9では、図8(A)に示す各動作と同一の動作については同一の符号を用いて説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図9において、SN判定部15Bは、上述した第1〜第4のケースを基に、ステップP1において受信されたMACフレーム(例えばデータフレーム)のシーケンス番号が変化した要因が、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したからであるか否かを判定する(S12)。
送信アンテナ制御部16Tは、MACフレーム(例えばデータフレーム)のシーケンス番号が変化した要因について、SN判定部15Bが、上記の第1のケースから第4のケースのいずれかに該当する場合に、MACフレームの再送回数が所定の上限回数に到達したか否かを判定し、上限回数に到達したと判断した場合には(S12、YES)、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する(P7)。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームを、ステップP7における変更後の送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P8)。
一方、送信アンテナ制御部16Tは、MACフレーム(例えばデータフレーム)のシーケンス番号が変化した要因について、SN判定部15BがMACフレームの再送回数が所定の再送上限回数に到達したためではないと判定した場合には(P12、NO)、Ackフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P5)。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームを、ステップP5において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)に送信し(P6)、データ受信用無線通信装置Dv2がMACフレーム(例えばデータフレーム)を、ステップP5において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)に送信する(P11)。
以上により、本変形例1の無線通信装置1は、データ受信用無線通信装置Dv2において、シーケンス番号が変化した要因について判断する構成とすることで、Ackフレームの送信回数を低減でき、通信相手へのAckフレームの送信に適切な送信アンテナATXのビームパターンを短期間に設定できる。
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態において、無線通信装置1(データ受信用無線通信装置Dv2)が通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)から送信されたMACフレーム(例えばデータフレーム)のリトライビットが0である場合、又はシーケンス番号が変化した場合、無線通信装置1(データ受信用無線通信装置Dv2)がAckフレームの送信に用いた送信アンテナATXのビームパターンは、Ackフレームの送信時では適切であったと考えられる。
第1の実施形態の変形例2(以下、「本変形例2」という)では、データ受信用無線通信装置Dv2は、Ackフレームの送信時の送信アンテナATXのビームパターンと同一のビームパターンを、受信アンテナARXのビームパターンとして用いる(図10参照)。
データ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、例えばMACフレームの受信時では、受信アンテナARXのビームパターンを、無指向性(omni)又は疑似無指向性(quasi-omni)のビームパターンに設定することが多い。
例えば、CSMA/CAにおけるTXOP(Transmission Opportunity)の期間では、データ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、第3の局から送信されたMACフレームを受信する必要がないので、受信アンテナARXのビームパターンを、無指向性(omni)又は疑似無指向性(quasi-omni)のビームパターンに設定しなくても良い。
また、SPCA通信におけるSP(Service Period)の期間でも、データ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、受信するMACフレームの送信元を特定できるので、受信アンテナARXのビームパターンを、無指向性(omni)又は疑似無指向性(quasi-omni)のビームパターンに設定しなくても良い。
図10は、第1の実施形態の変形例2におけるデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したデータフレームに対するAckフレームを送信するための送信アンテナのビームパターン及び次回のデータフレームを受信するための受信アンテナのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートである。なお、図10では、図8(A)に示す各動作と同一の動作については同一の符号を用いて説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図10において、ステップP6の後、データ受信用無線通信装置Dv2の受信アンテナ制御部16Rは、通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)から送信されるMACフレームを受信するため受信アンテナARXのビームパターンとして、送信アンテナATXのビームパターンと同じビームパターンを用いる(P14)。
以上により、本変形例2の無線通信装置1(データ受信用無線通信装置Dv2)は、受信アンテナARXのビームパターンとして無指向性(omni)又は疑似無指向性(quasi-omni)に設定せずに、特定方向に主ビームを形成すれば良いので、通信帯域を有効に用い、消費電力を低減できる。
更に、本変形例2の無線通信装置1(データ受信用無線通信装置Dv2)は、Ackフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持又は変更した後、次の送信周期TRにおける設定期間PH1では、例えば受信アンテナARXのビームパターンの設定を省略し、送信アンテナATXのビームパターンと同じビームパターンを設定することができる。
これにより、本変形例2の無線通信装置1は、次の送信周期TRにおける設定期間PH1では、受信アンテナARXのビームパターンの設定に必要な通信路(通信帯域)の使用を抑制できるので、通信帯域を有効に用い、消費電力を低減できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、例えばデータ送信用無線通信装置Dv1が図16(A)に示すアグリゲーションフレームを送信し、データ受信用無線通信装置Dv2がアグリゲーションフレームのうち一部又は全てのMACフレーム(MPDU)を受信したことを示すブロックAckフレームを応答する場合について説明する。なお、本実施形態のデータ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2は、図3(A)に示す無線通信装置1A又は図3(B)に示す無線通信装置1Bと同様の構成を有する。
先ず、本実施形態のデータ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2間の直接の無線通信の動作概要について、図11を参照して説明する。図11は、第2の実施形態のデータ送信用無線通信装置Dv1及びデータ受信用無線通信装置Dv2における、アグリゲーションデータフレームの送信に関するシグナリングの一例を示すシーケンス図である。
図11(A)において、データ送信用無線通信装置Dv1は、複数のMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションフレームをデータ受信用無線通信装置Dv2に送信する(S21)。アグリゲーションフレームは、例えば「シーケンス番号=1」のMACフレームと、「シーケンス番号=2」のMACフレームと、「シーケンス番号=3」のMACフレームとが連結された構成である。
データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から送信されたアグリゲーションフレームを正しく受信し、更に、ブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には、送信アンテナATXのビームパターン(例えばPt2)を用いてブロックAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S21)。しかし、図11では、ブロックAckフレームがデータ送信用無線通信装置Dv1に到達しない(S21)。
データ送信用無線通信装置Dv1は、ステップS21において送信したアグリゲーションフレームに対応するブロックAckフレームを受信しないため、ステップS21において送信したアグリゲーションフレームと同一のアグリゲーションフレームを再送する(S22)。
データ受信用無線通信装置Dv2は、データ送信用無線通信装置Dv1から再送された同じシーケンス番号のアグリゲーションフレームを正しく受信し、更に、ブロックAckフレームの応答が必要であると判定したため、送信アンテナATXのビームパターン(例えばPt2)を変更する(S22)。即ち、データ受信用無線通信装置Dv2は、全て同一のシーケンス番号を有するMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションフレームの初送又は再送が以前にあったと判定した場合には、送信アンテナATXのビームパターンは適切ではないとして、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する。
従って、データ受信用無線通信装置Dv2は、変更後の送信アンテナATXのビームパターン(例えばPt1)を用いて、ブロックAckフレームをデータ送信用無線通信装置Dv1に送信する(S22)。なお、図11では、ステップS22において送信されたブロックAckフレームは、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信環境と各アンテナのビームパターンとが適切であるため、データ送信用無線通信装置Dv1において正しく受信される。
なお、データ受信用無線通信装置Dv2は、全て同一のシーケンス番号を有するMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションフレームの初送又は再送はない、即ちアグリゲーションフレームのうち一部のMACフレーム(MPDU)は新規に送信されたと判定した場合には、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更せずに保持する。
次に、本実施形態の無線通信装置1がアグリゲーションフレームを受信してからブロックAckフレームを送信するまでの動作手順について、図12を参照して説明する。図12は、第2の実施形態のデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したアグリゲーションデータフレームに対応するブロックAckフレームを送信するための送信アンテナのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートである。
なお、図12では、図3(B)に示す無線通信装置1Bがアグリゲーションフレームのうち少なくとも1つのMACフレーム(MPDU)を正しく受信したとして説明する(P21)。
図12において、無線受信部11は、正しく受信したアグリゲーションフレームのうち全てのMACフレーム(MPDU)を正しく受信していたか否かを判定する(P22)。全てのMACフレーム(MPDU)が正しく受信されたと判定された場合(P22、YES)、応答要否判定部12は、無線受信部11が復調したアグリゲーションフレームの各MPDUのフレーム種別又は応答種別を基に、アグリゲーションフレームの受信を示すブロックAckフレームの応答の要否を判定する(P23)。応答要否判定部12は、判定結果を、応答フレーム生成部13、SN判定部15B及び送信アンテナ制御部16Tに出力する。
送信アンテナ制御部16Tは、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が不要であると判定した場合には(P23、NO)、送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P24)。
応答フレーム生成部13は、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P23、YES)、アグリゲーションフレームの受信を示すブロックAckフレームを生成して無線送信部14に出力する。
SN判定部15Bは、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P23、YES)、記憶SNパターンと受信SNパターンとが同一であるか否かを判定する(P25)。SN判定部15Bは、ステップP25の判定結果に拘わらず、受信SNパターンを記憶する(P26,P29)。
なお、本実施形態の説明を簡単にするために、SN判定部15Bが記憶する、以前に受信されたアグリゲーションフレームのうち正しく受信されたMACフレーム(MPDU)のシーケンス番号の組(パターン)を「記憶SNパターン」と略記し、受信アンテナARXにおいて今回受信されたアグリゲーションフレームのうち正しく受信されたMACフレーム(MPDU)のシーケンス番号の組(パターン)を「受信SNパターン」と略記する。
ステップP26の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNパターンと受信SNパターンとが不一致であると判定したため、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P27)。
記憶SNパターンと受信SNパターンとが不一致であれば、無線通信装置1Bは、新たなシーケンス番号が付与されたMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションフレームを受信したことになる。従って、前回のブロックAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要が無いと考えられる。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたブロックAckフレームを、ステップP27において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)に送信する(P28)。
一方、ステップP29の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNパターンと受信SNパターンとが一致していると判定したため、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する(P30)。
記憶SNパターンと受信SNパターンとが一致であれば、無線通信装置1Bは、同一のシーケンス番号が付与されたMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションが再送され、再送されたアグリゲーションフレームを受信したことになる。従って、前回のブロックAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが不適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要があると考えられる。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたブロックAckフレームを、ステップP30における変更後の送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手(データ送信用無線通信装置Dv1)に送信する(P31)。
また、無線受信部11が、全てのMACフレーム(MPDU)が正しく受信されなかったと判定した場合(P22、NO)、応答要否判定部12は、無線受信部11が復調したアグリゲーションフレーム、即ち、正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)のフレーム種別又は応答種別を基に、アグリゲーションフレームの受信を示すブロックAckフレームの応答の要否を判定する(P32)。応答要否判定部12は、判定結果を、応答フレーム生成部13、SN判定部15B及び送信アンテナ制御部16Tに出力する。
送信アンテナ制御部16Tは、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が不要であると判定した場合には(P32、NO)、送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P33)。
応答フレーム生成部13は、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P32、YES)、アグリゲーションフレームの受信を示すブロックAckフレームを生成して無線送信部14に出力する。
SN判定部15Bは、応答要否判定部12がブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には(P32、YES)、記憶SNパターンと正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)の受信SNパターンとが同一であるか否かを判定する(P34)。SN判定部15Bは、ステップP25の判定結果に拘わらず、受信SNパターンを記憶する(P35,P38)。
ステップP35の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNパターンと正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)の受信SNパターンとが不一致であると判定したため、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを保持する(P36)。
記憶SNパターンと正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)の受信SNパターンとが不一致であるため、無線通信装置1Bは、新たなシーケンス番号が付与されたMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションフレームを受信したことになる。従って、前回のブロックAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要が無いと考えられる。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたブロックAckフレームを、ステップP36において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P37)。
一方、ステップP38の後、送信アンテナ制御部16Tは、SN判定部15Bが記憶SNパターンと正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)の受信SNパターンとが一致していると判定したため、ブロックAckフレームの応答に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更する(P39)。
記憶SNパターンと正しく受信した一部のMACフレーム(MPDU)の受信SNパターンとが一致しているため、無線通信装置1Bは、同一のシーケンス番号が付与されたMACフレーム(MPDU)を含むアグリゲーションが再送され、再送されたアグリゲーションフレームを受信したことになる。従って、前回のブロックAckフレームの応答に用いた送信アンテナATXのビームパターンが不適切であり、送信アンテナATXのビームパターンは変更の必要があると考えられる。
無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたブロックAckフレームを、ステップP39における変更後の送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P40)。
なお、ステップP28、ステップP31、ステップP37又はステップP40の後の無線通信装置1Aの動作は、ステップP21に戻る。
以上により、本実施形態の無線通信装置1は、通信相手から送信されたアグリゲーションフレームのうち一部又は全てのMACフレーム(MPDU)を正しく受信し、アグリゲーションフレームの応答を示すブロックAckフレームの応答が必要であると判定した場合には、記憶SNパターンと受信SNパターンとの比較によって、通信相手から同一のアグリゲーションフレームが再送されたか否かを判定する。
無線通信装置1は、通信相手から同一のアグリゲーションフレームが再送されたと判定した場合には、前回送信したブロックAckフレームの送信に用いた送信アンテナATXのビームパターンが適切ではなかったとして、送信アンテナATXのビームパターンを変更する。無線通信装置1は、変更後のビームパターンを用いて、ブロックAckフレームを送信する。
これにより、無線通信装置1は、通信相手から同一のアグリゲーションフレームが再送されなければ、ブロックAckフレームの送信に用いる送信アンテナATXのビームパターンを変更せず、同一のアグリゲーションフレームが再送された場合に送信アンテナATXのビームパターンを変更するので、送信アンテナATXのビームパターンの不要な変更を回避できる。
従って、無線通信装置1は、送信アンテナATXのビームパターンの不要な変更を回避することで、設定期間PH1及び設定期間PH1を設定するための準備期間を省略できるため、早期に通信路を回復でき、通信相手との間の通信環境(通信品質)の劣化を抑制できる。即ち、無線通信装置1は、通信帯域の不要な占有時間(例えば、設定期間PH1及び設定期間PH1を設定するための準備期間)を減少できるので、実効スループットを向上でき、更に消費電力及び通信相手への接続に要する時間を低減できる。
なお、本実施形態において、アグリゲーションフレームのうち全てのMACフレーム(MPDU)が受信されるとは限らず、例えば3個のMACフレームが連結している場合、合計8通りの受信の組み合わせが考えられる。このため、図12に示すステップP21では、無線通信装置1Bは、アグリゲーションフレームのうち所定の閾値以上のMACフレームを受信した場合に、一部のMACフレームを含むアグリゲーションフレームを受信したと判定しても良い。
従って、無線通信装置1Bは、アグリゲーションフレームのうち所定の閾値未満のMACフレームを受信し、その他フレームを受信しなかった場合には、記憶SNパターンと受信SNパターンとの比較が困難となるとして、アグリゲーションフレームを受信しなかったと判定する。これにより、無線通信装置1Bは、アグリゲーションフレームを正しく受信した後に、記憶SNパターンと受信SNパターンと比較を高精度に処理でき、アグリゲーションフレームの再送の誤判定を回避でき、アンテナのビームパターンを高精度に設定できる。
以上、図面を参照して各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
なお、上述した各実施形態において、無線通信装置1は、通信相手がMACフレーム(例えばデータフレーム)の送信に用いた周波数と同一の周波数を用いて、Ackフレーム又はブロックAckフレームを送信するが、通信相手がMACフレーム(例えばデータフレーム)の送信に用いた周波数と異なる周波数を用いて、Ackフレーム又はブロックAckフレームを送信しても良い。
なお、上述した各実施形態では、無線通信装置1の通信相手は、directional band(例えばミリ波)を用いてデータフレームを送信するが、un-directional band(例えばマイクロ波)を用いてデータフレームを送信しても良い。
(第1の実施形態の変形例3)
なお、第1又は第2の実施形態では、データ受信用無線通信装置Dv2が正しく受信したMACフレーム又はアグリゲーションフレームにおいて、リトライビットと、シーケンス番号と、シーケンス番号のパターンとによって、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信路の状況が的確に判別できる。例えば送信アンテナATX又は受信アンテナARXのビームパターンが保持される通信環境では、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信品質が高いと考えられる。
第1の実施形態の変形例3として、無線通信装置1は、例えば送信電力を低減し(図13参照)、受信アンテナARXのゲインを低減し、MCS(Modulation and Coding Scheme:変調度)又は符号化率を増加し、MACフレームのフレーム長を増加し、又は、アグリゲーションフレームにおけるMACフレームの連結数を増加しても良い。これにより、無線通信装置1は、無線帯域を有効に用いることができ、無線通信装置1の消費電力を低減できる。
また、例えば送信アンテナATX又は受信アンテナARXのビームパターンが変更される通信環境では、データ送信用無線通信装置Dv1とデータ受信用無線通信装置Dv2との間の通信品質が劣化していると考えられる。
第1の実施形態の変形例3として、無線通信装置1は、例えば送信電力を増加し(図13参照)、受信アンテナARXのゲインを増加し、MCS(Modulation and Coding Scheme:変調度)を減少し、MACフレームのフレーム長を減少し、アグリゲーションフレームにおけるMACフレームの連結数を減少し、又は使用キャリア周波数を他のキャリア周波数に変更しても良い。
例えば無線通信装置1は、通信品質の劣化に応じて、周波数帯域をスキャンすることで通信品質の高い周波数帯域を推定する。これにより、無線通信装置1は、不要なMACフレーム又はアグリゲーションフレームの再送を回避できるので無線帯域を有効に用いることができ、無線通信装置1の消費電力を低減できる。
図13は、第1の実施形態の変形例3におけるデータ受信用無線通信装置Dv2が受信したMACフレームに対応するAckフレームを送信するための送信アンテナATXのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートである。なお、図13では、図4(A)に示す各動作と同一の動作については同一の符号を用いて説明を省略又は簡略化し、異なる内容について説明する。
図13において、ステップP5の後、無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームの送信電力を低減し(P15)、ステップP5において保持された送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P6)。
また、ステップP7の後、無線送信部14は、応答フレーム生成部13により生成されたAckフレームの送信電力を増加し(P16)、ステップP7における変更後の送信アンテナATXのビームパターンを用いて通信相手に送信する(P8)。
(第1の実施形態の変形例4)
なお、上述した各実施形態では、MACフレームの送信及びAckフレームの応答送信、アグリゲーションフレームの送信及びブロックAckフレームの応答送信を例示して説明したが、送信及び応答送信の組み合わせは、例えばRTS(Request To Send)の送信及びCTS(Clear To Send)、SSW(Sector Sweep)、SSW−FB(Sector Sweep-Feedback)及びSSW−Ack(Sector Sweep-Ack)、Association Request/Ack、Association Response/Ackの各組み合わせでも良い。
図19(A)は、第1の実施形態の変形例4におけるデータ受信用無線通信装置が受信したMACフレーム(例えばRTSフレーム)に対する応答フレーム(例えばCTSフレーム)の送信アンテナのビームパターンの設定手順の一例を説明するフローチャートであり、図19(B)は、第1の実施形態の変形例4のデータ送信用無線通信装置及びデータ受信用無線通信装置における、CTSフレームの受信によってフレーム種別が変更されるシグナリングの一例を示すシーケンス図である。
図19は、図4(A)、図5(A)のdata、Ackをフレームに置き換えた場合のフローチャート及びシーケンス図である。
図4(A)のP2では、Ackフレームの応答送信の要否について確認したが、図19(A)では、フレームの応答送信の要否について確認している。図4(A)のP4においては、データフレームのリトライビットについて確認したが、図19(A)では、先の受信フレーム種別と今回の受信フレーム種別とは別か否かについて確認する。つまり、P4RのYESは、後述する図19(B)のS4Rでの判断となり、P4RのNOは、図19(B)のS2Rでの判断となる。
また、図4(A)のP6,P8において、Ackフレームを応答返信していたが、図19(A)のP6R、P8Rでは、受信フレーム種別に対応するフレームの応答送信を行う。つまり、P6Rでは、図19のS4RのAckフレームの応答送信になり、P8Rでは、図19のS2RのCTSフレームの応答送信になる。
次に、図19(B)はRTS、CTSの送受信の後に、データ、Ackの送受信についてのシーケンス図である。RTSには、シーケンス番号、リトライビットが含まれていないため、データ受信用無線通信装置Dv2は、RTSの再送は判断しないが、2回目のRTSを受信したため、2回目のCTSの送信ではビームパターンを変更する(S2R)。つまり、図19(A)のP4RのNOに相当するため、ビームパターンを変更する。
次に、データ送信用無線通信装置Dv1は、CTSを受信することで送信フレーム種別をRTSからデータに変更し、シーケンス番号、リトライビットの情報を含むデータを送信する(S3R)。
次に、データ受信用無線通信装置Dv2は、CTSを送信した後にデータを受信するため、CTSがデータ送信用無線通信装置Dv1に受信されたと判断し、ビームパターンを変更しないで、Ackを返送する(S4R)。つまり、図19(A)のP4RのYESに相当するため、ビームパターンを変更しない。
また、応答送信ではAckフレームを送信する場合に限らず、データフレームとAckフレームとを含めて送信するReverse Direction方式を用いても良い。
なお、上述した各実施形態において、データ受信用無線通信装置Dv2は、送信アンテナATXのビームパターンを変更する場合、切り換え可能な複数のビームパターンの中から現時点のビームパターンに隣接するビームパターン、ビームパターン毎に付与された識別番号に応じたビームパターン、又はランダムに選択されたビームパターンのいずれかに設定しても良い。
なお、上述した各実施形態において、データ受信用無線通信装置Dv2は、MACフレーム又はアグリゲーションフレームが所定の閾値を超えて複数回、連続して受信された場合に、送信アンテナATXのビームパターンを変更しても良い。これにより、データ受信用無線通信装置Dv2は、例えば通信環境の瞬間的な変動によってAckフレーム又はブロックAckフレームの不到達を起因とした送信アンテナATXのビームパターンの不要な変更を回避できる。
本出願は、2013年6月14日出願の日本特許出願(特願2013-126060)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。