JPWO2014132632A1 - 電解コンデンサおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材と、表面に第二誘電体被膜を有する陰極部材と、陽極部材と陰極部材との間に介在する導電性高分子を含む固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、コンデンサ素子と、非水溶媒と、を封止するケースと、を含み、第二誘電体被膜が化成処理によって形成され、かつ第二誘電体被膜の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサ。誘電体被膜を有する陽極部材と、誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、コンデンサ素子と、非水溶媒と、を封止するケースと、を含み、固体電解質層の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサ。誘電体被膜を有する陽極部材と、誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液と、コンデンサ素子と溶液とを封止するケースと、を含む、電解コンデンサ。

Description

本発明は、陽極部材と陰極部材との間に導電性高分子を含む固体電解質層を具備するコンデンサ素子を具備し、コンデンサ素子に非水溶媒が含浸されている電解コンデンサの改良に関する。
また、本発明は、陽極部材の誘電体被膜の表面に固体電解質層が形成されたコンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、を具備する電解コンデンサの改良に関する。
電子機器のデジタル化に伴い、それに使用されるコンデンサにも小型、大容量で高周波領域における等価直列抵抗(ESR)が小さく、耐電圧特性に優れたものが求められるようになってきている。
小型かつ大容量で低ESRのコンデンサとしては、陽極箔の誘電体被膜上に固体電解質層を具備するコンデンサ素子を用いることが有望である。固体電解質層としては、ポリチオフェンのような導電性高分子を用いることが提案されている(特許文献1)。
特許文献1では、陽極箔の誘電体被膜の表面を、カップリング剤で処理することが提案されている。これにより、誘電体被膜と導電性高分子との親和性が高くなり、静電容量が向上すると、特許文献1には記載されている。
また、小型かつ大容量で低ESRのコンデンサには、陽極部材の誘電体被膜の表面に固体電解質層が形成されたコンデンサ素子を用いることが有望である。固体電解質層としては、ポリチオフェンのような導電性高分子を用いることが提案されている。また、固体電解質層を具備する電解コンデンサの改良も種々検討されている。
例えば、特許文献2では、カチオン化された導電性高分子と、ポリマーアニオンと、シランカップリング剤などの結合剤を含む組成物を用いて、結合剤を内部に含有する固体電解質層を形成することが提案されている。これにより、コンデンサの耐熱性が向上すると、特許文献2には記載されている。
一方、特許文献3は、モノマーと酸化剤とドーパントを含む重合液を用いて、固体電解質層を形成することを提案している。重合液を用いる場合、固体電解質層の形成後に残留する不純物(モノマー、酸化剤など)を除去するために、コンデンサ素子を洗浄する必要がある。このとき、誘電体被膜に取り込まれていた不純物の除去により、誘電体被膜が損傷を受けることがある。そこで、特許文献3は、コンデンサ素子を、シラン化合物を含む洗浄液で洗浄することを提案している。シラン化合物は、誘電体被膜の損傷を修復する機能を有する。
シラン化合物は、固体電解質層を具備しない電解コンデンサにも用いられている。例えば、特許文献4は、電解コンデンサの電解液にシランカップリング剤を添加することを提案している。シランカップリング剤は、陽極部材の表面に被膜を形成し、陽極部材の腐食を抑制する材料として用いられている。
特開2009−9999号公報 特開2011−171675号公報 特開2008−251629号公報 特開平3−34524号公報
上記のように、固体電解質層を具備する電解コンデンサの改良が種々検討されているが、従来の電解コンデンサの耐電圧特性には、未だ改善の余地がある。また、従来の電解コンデンサは、長期間にわたりESRを低く維持することが困難な場合がある。上記に鑑み、本発明は、耐電圧特性および長期信頼性が改良された電解コンデンサを提供することを目的とする。
本願の第1の発明の一局面は、表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材と、表面に第二誘電体被膜を有する陰極部材と、前記陽極部材と前記陰極部材との間に介在する導電性高分子を含む固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、前記コンデンサ素子と、前記非水溶媒と、を封止するケースと、を含み、前記第二誘電体被膜が化成処理によって形成され、かつ前記第二誘電体被膜の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサに関する。
次に、本願の第1の発明の別の局面は、表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、表面に化成処理によって形成された第二誘電体被膜を有する陰極部材を準備する工程と、前記陽極部材と前記陰極部材とを巻回して、巻回体を形成する工程と、前記巻回体における前記陽極部材と前記陰極部材との間に、導電性高分子を含む固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を形成する工程と、前記コンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる工程と、前記コンデンサ素子と前記非水溶媒とをケースに封止する工程とを有し、前記固体電解質層を形成する前に、前記第二誘電体被膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程を更に有する、電解コンデンサの製造方法に関する。
本願の第2の発明の一局面は、誘電体被膜を有する陽極部材と、前記誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、前記コンデンサ素子と、前記非水溶媒と、を封止するケースと、を含み、前記固体電解質層の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサに関する。
本願の第2の発明の別の一局面は、誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、前記誘電体被膜の表面に固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を得る工程と、前記コンデンサ素子を、シランカップリング剤を含む溶液またはシランカップリング剤に浸漬することにより、前記固体電解質層の表面をシランカップリング剤で処理する工程と、前記シランカップリング剤で処理された固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒を含浸させる工程と、前記非水溶媒を含浸させたコンデンサ素子を、ケース内に封止する工程とを含む、電解コンデンサの製造方法に関する。
本願の第3の発明の一局面は、誘電体被膜を有する陽極部材と、前記誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子に含浸された、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液と、前記コンデンサ素子と、前記溶液と、を封止するケースと、を含む、電解コンデンサに関する。
本願の第3の発明の別の一局面は、誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、前記誘電体被膜の表面に導電性高分子を含む固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を形成する工程と、前記固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液を含浸させる工程と、前記溶液を含浸させたコンデンサ素子を、ケース内に封止する工程と、を含む、電解コンデンサの製造方法に関する。
本願の第1〜第3の発明の電解コンデンサは、耐電圧特性および長期信頼性に優れている。また、本発明の製造方法によれば、耐電圧特性および長期信頼性に優れた電解コンデンサが得られる。
第1、第2、第3の発明の一実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図である。 同実施形態に係るコンデンサ素子の構成を説明するための概略図である。 第1の発明の一実施形態に係るコンデンサ素子における要部構成を示す断面模式図である。 第2、第3の発明の一実施形態に係るコンデンサ素子における要部構成を示す断面模式図である。
〔第1の発明〕
第1の発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒とを具備する。コンデンサ素子は、表面に第一誘電体被膜を有する陽極箔(以下、第1の発明において「陽極部材」という)と、表面に第二誘電体被膜を有する陰極箔(以下、第1の発明において「陰極部材」という)と、これらの間に介在する導電性高分子を含む固体電解質層とを具備する。コンデンサ素子は、陽極部材と陰極部材との間を物理的に離間させるセパレータを含んでもよい。陽極箔は陽極部材の一例であり、陰極箔は陰極部材の一例である。
陽極部材と陰極部材との間に介在する固体電解質層は、陽極部材が有する第一誘電体被膜の表面の少なくとも一部を被覆するとともに、陰極部材が有する第二誘電体被膜の表面の少なくとも一部を被覆している。
ここで、第二誘電体被膜の表面は、シランカップリング剤で処理されている。ここでの処理(以下、Si処理ともいう)とは、例えば、シランカップリング剤またはこれを含む溶液を、第二誘電体被膜の表面に接触させることである。これにより、シランカップリング剤の加水分解性基(アルコキシ基、ハロゲン基など)と、第二誘電体被膜の表面に存在する水酸基とが反応する。このような反応により、M−O−Si結合(ただし、Mは第二誘電体被膜を形成する金属元素)が形成され、シランカップリング剤の反応物が第二誘電体被膜に付着する。
上記Si処理により、電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。また、100℃以上の高温で長期間にわたり電解コンデンサに負荷をかけた場合でも、ESRを低く維持できるため、信頼性が向上する。すなわち、電解コンデンサの耐熱性が向上する。
上記のような耐電圧特性および長期信頼性の向上は、第二誘電体被膜の表面をシランカップリング剤で処理したことによる陰極部材と固体電解質層との密着性の向上に関連している。
陰極部材と固体電解質層との密着性の向上により、耐電圧特性が向上する理由は定かではない。電解コンデンサの耐電圧特性は、陽極部材の第一誘電体被膜の耐圧性に大きく依存するものであり、陰極部材の第二誘電体被膜と固体電解質層との密着性に依存するものではないと考えられるからである。従って、耐電圧特性および長期信頼性の向上には、コンデンサ素子に含浸されている非水溶媒の存在も関連していると考えられる。例えば、陰極部材と固体電解質層との密着性が向上することで、陰極部材と非水溶媒との副反応が抑制されるものと推測される。また、陰極部材に第二誘電体被膜を形成することにより、陰極部材の欠損部が減少することも、上記密着性の向上や副反応の抑制に寄与していると考えられる。
シランカップリング剤としては、ESRの低減や高容量化に有利であることから、エポキシ基を有するシランカップリング剤、アクリル基を有するシランカップリング剤などが好ましい。エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。また、アクリル基を有するシランカップリング剤としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)などが挙げられる。その他のシランカップリングとしては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。後述の第2の発明及び第3の発明においても本段落で説明したシランカップリング剤を用いることができる。
表面に第二誘電体被膜を有する陰極部材は、陰極部材の原料である第二金属箔を化成処理することにより得られる。すなわち、陰極部材が有する第二誘電体被膜は、化成処理を施さなくても陰極部材の表面に通常存在する薄い酸化被膜とは異なっている。
ここで、第二誘電体被膜は、3V以上、更には3〜10Vの電圧で化成処理することにより形成されたものであることが好ましい。これにより、耐電圧特性および長期信頼性の向上効果が大きくなる。また、適度な厚さの第二誘電体被膜が形成され、陰極静電容量の減少や整流作用の低減が抑制される。
また、陰極部材を構成する第二誘電体被膜の表面は、凹凸を有するように粗面化されていることが好ましい。これにより、陰極静電容量が増加するとともに、電解コンデンサの製造過程で巻回体を形成する際に、セパレータと陰極部材との間に適度な空隙が生じる。そのため、陽極部材と陰極部材との間に導電性高分子が浸透しやすくなり、良好な固体電解質層が形成される。
上記電解コンデンサは、陽極部材と陰極部材とを巻回して、巻回体を形成した後、巻回体の陽極部材と陰極部材との間に導電性高分子を含む固体電解質層を形成し、得られたコンデンサ素子に非水溶媒を含浸させてケースに封止することにより製造することができる。ただし、固体電解質層を形成する前に、陰極部材の第二誘電体被膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程が行われる。
なお、陰極部材を構成する第二誘電体被膜の表面に凹凸を形成する場合は、陰極部材の原料である第二金属箔の表面をエッチングにより粗面化し、その後、第二金属箔を化成処理すればよい。
固体電解質層は、コンデンサ素子に、導電性高分子を含む液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより形成することが好ましい。このような方法は、コンデンサ素子にモノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させて導電性高分子を生成させる方法に比べて容易であり、製造コストを低減することができる。また、化学重合により固体電解質層を形成する場合、残存モノマーや酸化剤を除去するために洗浄を行う必要がある。一方、コンデンサ素子に導電性高分子を含む液状組成物を含浸させる方法は、洗浄を行う必要がない点でも優れている。
導電性高分子を含む液状組成物は、例えば、溶媒と、その溶媒に溶解させた導電性高分子とを含む溶液(高分子溶液)、または、分散媒と、その分散媒に分散させた導電性高分子とを含む分散液(高分子分散液)であればよい。溶媒および分散媒は、水でもよく、水と非水溶媒との混合物でもよく、非水溶媒でもよい。非水溶媒とは、水および水を含む液体を除く、液体の総称であり、有機溶媒やイオン性液体が含まれる。非水溶媒は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などを用いることができる。なお、本段落から「導電性高分子の重量平均分子量」を説明した段落までの事項は、後述の第2の発明及び第3の発明においても同様に適用できる。
導電性高分子は、ドーパントを含んでいてもよい。導電性高分子に対するドーパントの量としては、固体電解質層に十分な導電性を付与できる量を適宜選択すればよい。
高分子溶液に含まれる導電性高分子は、溶媒に溶解しており、溶液中に均一に分布している。よって、高分子溶液は、より均一な固体電解質層を形成しやすい点で好ましい。高分子分散液に含まれる導電性高分子は、粒子または粉末の状態で分散媒に分散している。高分子分散液は、例えば、分散媒に導電性高分子を分散させる方法や、分散媒中で導電性高分子の前駆体モノマーを重合させて、分散媒中に導電性高分子の粒子を生成させる方法などにより得ることができる。
高分子溶液における導電性高分子の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましく、高分子分散液における導電性高分子の粒子または粉末の濃度も、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の高分子溶液または分散液は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、巻回体に対して含浸されやすい。
導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリチオフェンビニレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
ドーパントとしては、ポリアニオンを用いることができる。ポリアニオンとしては、ポリスチレンスルホン酸由来のポリアニオンが好ましい。ポリアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸などのアニオンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらは単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。
導電性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。また、ポリアニオンの重量平均分子量は、特に限定されないが、例えば1000〜100000である。このような導電性高分子およびポリアニオンは、均質な固体電解質層を形成しやすい。また、導電性高分子が、粒子または粉末の状態で分散媒に分散している場合、その粒子または粉末の平均粒径D50は、例えば0.01〜0.5μmであることが好ましい。ここで、平均粒径D50は、レーザー回折式の粒度分布測定装置により求められる体積粒度分布におけるメディアン径である。
コンデンサ素子は、これに含浸された非水溶媒とともに、ケース内に封止されている。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。有機溶媒としては、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール類、スルホランなどの環状スルホン類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、ホルムアルデヒド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられるが、高沸点溶媒が望ましい。
非水溶媒にイオン性物質(溶質)として有機塩を溶解させた電解液を用いてもよい。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。有機塩としては、有機アミン塩が好ましく、特に有機アミンと有機酸との塩が好ましい。具体的には、マレイン酸トリメチルアミン、ボロジサリチル酸トリエチルアミン、フタル酸エチルジメチルアミン、フタル酸モノ1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、フタル酸モノ1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウムなどを用いることができる。
有機塩を含む非水溶媒、すなわち電解液中における有機塩の濃度は、例えば5〜50重量%とすることができる。
以下、第1の発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は第1の発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同実施形態に係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図であり、図3は、同コンデンサ素子における要部構成を示す断面の拡大模式図である。
図1において、電解コンデンサは、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を収容する有底ケース11と、有底ケース11の開口を塞ぐ封止部材12と、封止部材12を覆う座板13と、封止部材12から導出され、座板13を貫通するリード線14A,14Bと、各リード線とコンデンサ素子10の各電極とを接続するリードタブ15A,15Bと、を備える。有底ケース11の開口端近傍は、内側に絞り加工されており、開口端は封止部材12に加締めるようにカール加工されている。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材21と表面に第二誘電体被膜を有する陰極部材22との間に、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成されていないものをいう。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極部材21と、リードタブ15Bと接続された陰極部材22と、セパレータ23とを備える。陽極部材21および陰極部材22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。なお、図2は、巻回体の最外周を止める前の、一部が展開された状態を示している。
図3に示すように、コンデンサ素子10は、巻回体の陽極部材21と陰極部材22との間に形成された固体電解質層34を有する。固体電解質層34は、陽極部材21の第一誘電体被膜31の表面の少なくとも一部を被覆するとともに、陰極部材22の第二誘電体被膜32の表面の少なくとも一部を被覆している。また、固体電解質層34は、セパレータ23の表面を被覆していてもよい。
陽極部材21は、図3に示すように、表面が凹凸を有するように粗面化された第一金属箔21aを具備することが好ましい。凹凸を有する第一金属箔21a上には、第一誘電体被膜31が形成されている。第一誘電体被膜31は、シランカップリング剤により処理されていてもよく、処理されていなくてもよい。
同様に、陰極部材22は、図3に示すように、表面が凹凸を有するように粗面化された第二金属箔22aを具備することが好ましい。凹凸を有する第二金属箔22a上には、第二誘電体被膜32が形成されている。ただし、第二誘電体被膜32は、シランカップリング剤により処理されており、これにより陰極部材22と固体電解質層34との密着性の向上が達成されている。
上記構成においては、陽極部材21が第一誘電体被膜31を有するだけでなく、陰極部材22も第二誘電体被膜32を有することから、陰極部材22の欠損部が減少しており、陰極部材22と固体電解質層34との密着性を向上する効果が高められている。また、コンデンサ素子10が非水溶媒33を含む一方で、第二誘電体被膜32と固体電解質層34との密着性が向上していることから、陰極部材22と非水溶媒との副反応は強く抑制される。これにより、電解コンデンサの耐電圧特性および長期信頼性も向上することとなる。
非水溶媒33を含浸させたコンデンサ素子10は、図1に示すように、有底ケース11、封止部材12などで構成された外装ケースに収容される。
≪電解コンデンサの製造方法≫
次に、実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。
(i)第一誘電体被膜31を具備する陽極部材21を準備する工程
まず、陽極部材21の原料である第一金属箔21aを準備する。金属の種類は特に限定されないが、第一誘電体被膜31の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
次に、第一金属箔21aの表面を粗面化する。粗面化により、第一金属箔21aの表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、第一金属箔21aをエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、例えば直流電解法や交流電解法により行えばよい。
次に、粗面化された第一金属箔21aの表面に第一誘電体被膜31を形成する。第一誘電体被膜31の形成方法は特に限定されないが、例えば第一金属箔21aを30〜60Vで化成処理することにより形成することができる。化成処理では、例えば、第一金属箔をアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬して熱処理する。また、第一金属箔を化成液に浸漬して電圧を印加してもよい。
通常は、量産性の観点から、大判の弁作用金属などの箔(第一金属箔21a)に対して、粗面化処理および化成処理が行われる。その場合、処理後の箔を所望の大きさに裁断することによって、陽極部材21が準備される。
(ii)第二誘電体被膜32を具備する陰極部材22を準備する工程
まず、陰極部材22の原料である第二金属箔22aを準備する。金属の種類は特に限定されないが、第二誘電体被膜32の形成が容易である点から、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。
次に、必要に応じて、第二金属箔22aの表面を粗面化する。粗面化により、第二金属箔22aの表面に、複数の凹凸が形成される。粗面化は、第二金属箔22aをエッチング処理することにより行うことが好ましい。エッチング処理は、第一金属箔と同様、直流電解法や交流電解法により行えばよい。なお、第二金属箔22aの表面を粗面化する工程は、必須ではないが、耐電圧性の向上と陰極静電容量のバランスの観点から、粗面化することが望ましい。
次に、粗面化された第二金属箔22aの表面に第二誘電体被膜32を形成する。第二誘電体被膜32は、第二金属箔22aを化成処理することにより形成することが好ましい。ここでも、通常は、大判の第二金属箔22aに対して、粗面化処理および化成処理が行われる。例えば、第二金属箔22aをアジピン酸アンモニウム溶液などの化成液に浸漬し、3V以上、好ましくは3〜10Vで化成処理すればよい。
(iii)巻回体の作製
次に、陽極部材21および陰極部材22を用いて巻回体を作製する。
まず、陽極部材21と陰極部材22とを、セパレータ23を介して巻回する。このとき、リードタブ15A,15Bを巻き込みながら巻回することにより、図2に示すように、リードタブ15A,15Bを巻回体から植立させることができる。
セパレータ23の材料は、例えば、合成セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、アラミド繊維などを主成分とする不織布を用いることができる。
リードタブ15A,15Bの材料も特に限定されず、導電性材料であればよい。リードタブ15A,15Bの各々に接続されるリード線14A,14Bの材料についても、特に限定されず、導電性材料であればよい。
次に、巻回された陽極部材21、陰極部材22およびセパレータ23のうち、最外層に位置する陰極部材22の外側表面に、巻止めテープ24を配置し、陰極部材22の端部を巻止めテープ24で固定する。なお、陽極部材21および陰極部材22を大判の金属箔を裁断することによって準備した場合には、陽極部材21および陰極部材22の裁断面に第一または第二誘電体被膜を設けるために、巻回体に対し、さらに化成処理を行ってもよい。
(iv)第二誘電体被膜をシランカップリング剤で処理する工程
次に、第二誘電体被膜32にシランカップリング剤を接触させることにより、第二誘電体被膜32の表面をシランカップリング剤で処理する。具体的には、溶媒にシランカップリング剤を溶解させた溶液(以下、単にカップリング剤溶液という)を第二誘電体被膜32の表面に塗布し、その後、乾燥させればよい。このとき、溶媒としては、特に限定されないが、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの1価アルコールを用いることができる。カップリング剤溶液におけるカップリング剤の濃度は、例えば0.5〜15質量%であればよく、1〜10質量%が好ましい。カップリング剤の濃度が0.5質量%以上であれば、第二誘電体被膜32の表面に十分量のカップリング剤を付着させることができるので、耐電圧特性および長期信頼性の向上効果を十分に得ることができる。また、カップリング剤の濃度を15質量%以下とすることで、シランカップリング剤がコンデンサ素子内に不純物として残存しにくくなくなり、導電性高分子の機能が阻害されにくい。また、ESRの変化も起りにくくなる。
カップリング剤溶液を第二誘電体被膜32の表面に塗布する工程は、上記(iii)において巻回体を作製する前に行ってもよく、巻回体を作製した後に行ってもよい。巻回体を作製する前であれば、例えば、カップリング剤溶液を、第二誘電体被膜32の表面に満遍なく塗布すればよい。また、巻回体を作製した後であれば、カップリング剤溶液に巻回体を浸漬し、その後、カップリング剤溶液から巻回体を引き上げ、乾燥させればよい。
カップリング剤溶液に巻回体を浸漬する方法は、特に限定されないが、例えば、容器に収容されたカップリング剤溶液に巻回体を浸漬する方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体にカップリング剤溶液が十分に浸み込む時間であればよい。また、乾燥は、80〜100℃で、10〜20分間行えば十分である。このとき、第二誘電体被膜32の表面だけでなく、第一誘電体被膜31の表面も同時にシランカップリング剤で処理することができる。
(v)固体電解質層を形成する工程
次に、巻回体に導電性高分子を含む液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、陽極部材21と陰極部材22との間に導電性高分子を含む固体電解質層34を形成する。
導電性高分子を含む液状組成物は、高分子溶液でも、高分子分散液でもよい。溶媒や分散媒は、水、非水溶媒または水と非水溶媒との混合物であればよい。導電性高分子は、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどであればよい。非水溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、ホルムアルデヒド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類や、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などを用いることができる。
液状組成物における導電性高分子(ドーパントもしくはポリアニオンを含む)の濃度は、0.5〜10質量%であることが好ましい。このような濃度の液状組成物は、適度な厚みの固体電解質層を形成するのに適するとともに、巻回体に対して含浸されやすいため、生産性を向上させる上でも有利である。
巻回体に液状組成物を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、容器に収容された液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、巻回体のサイズにもよるが、例えば1秒〜5時間、好ましくは1分〜30分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。また、液状組成物に浸漬させながら、巻回体または液状組成物に超音波振動を付与してもよい。
次に、液状組成物から、巻回体を引き上げ、巻回体を乾燥させることにより、第一誘電体被膜31および第二誘電体被膜32の表面を覆うように、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成される。このとき、第一誘電体被膜31および第二誘電体被膜32の表面だけでなく、セパレータの表面にも固体電解質層34が形成されてもよい。
液状組成物から巻回体を引上げた後、巻回体を加熱することにより、液状組成物に含まれる溶媒または分散媒の蒸散を促進してもよい。加熱温度は、例えば50〜300℃が好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
巻回体に液状組成物を含浸させる工程と、巻回体を乾燥させる工程は、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、第一誘電体被膜31および第二誘電体被膜32に対する固体電解質層34の被覆率を高めることができる。
以上により、陽極部材21と陰極部材22との間に固体電解質層34が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、第一誘電体被膜31の表面に形成された固体電解質層34は、事実上の陰極材料として機能する。
(vi)コンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、非水溶媒33を含浸させる。これにより、コンデンサ素子10が有する隙間、特に第一誘電体被膜31上に形成された固体電解質層34の隙間や第二誘電体被膜32上に形成された固体電解質層34の隙間に、非水溶媒33が侵入する。また、非水溶媒33は、固体電解質層34により被覆されていない第一誘電体被膜31の隙間にも侵入することができる。よって、第一誘電体被膜31の修復機能が向上する。
非水溶媒33は、特に限定されないが、例えば、プロピレングリコール、スルホラン、γ−ブチロラクトン、エチレングリコールなどの高沸点溶媒が好ましい。具体的には、非水溶媒の沸点は100℃以上であることが好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。非水溶媒33は、耐熱性や耐リフロー性に優れていることが望まれるからである。非水溶媒33は、有機塩などのイオン性物質(溶質)を含んでもよい。非水溶媒33がイオン性物質を含有することより、ESRが低く、信頼性の高い電解コンデンサを得やすくなる。
コンデンサ素子10に非水溶媒33を含浸させる方法も、特に限定されないが、容器に収容された非水溶媒33にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒〜5分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
(vii)コンデンサ素子を封止する工程
次に、コンデンサ素子10を封止する。具体的には、まず、リード線14A,14Bが有底ケース11の開口する上面に位置するように、コンデンサ素子10を有底ケース11に収納する。有底ケース11の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮などの金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
次に、リード線14A,14Bが貫通するように形成された封止部材12を、コンデンサ素子10の上方に配置し、コンデンサ素子10を有底ケース11内に封止する。封止部材12は、絶縁性物質であればよい。絶縁性物質としては弾性体が好ましく、中でも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどが好ましい。
次に、有底ケース11の開口端近傍に、横絞り加工を施し、開口端を封止部材12に加締めてカール加工する。そして、カール部分に座板13を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサが完成する。その後、定格電圧を印加しながら、エージング処理を行ってもよい。
上記の実施形態では、巻回型の電解コンデンサについて説明したが、第1の発明の適用範囲は上記に限定されず、他の電解コンデンサ、例えば、陽極部材として金属の焼結体を用いるチップ型の電解コンデンサや、金属板を陽極部材として用いる積層型の電解コンデンサにも適用することができる。このことは後述する第2の発明や第3の発明の適用範囲においても同様である。
[実施例]
以下、実施例に基づいて、第1の発明をより詳細に説明するが、第1の発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例1〜4》
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量22μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極部材を準備する工程)
厚さ100μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、第一誘電体被膜を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに60Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陽極部材を準備した。
(陰極部材を準備する工程)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔の表面に、化成処理により、第二誘電体被膜を形成した。化成処理は、アジピン酸アンモニウム溶液にアルミニウム箔を浸漬し、これに3Vの電圧を印加することにより行った。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陰極部材を準備した。
(巻回体の作製)
陽極部材および陰極部材に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極部材と陰極部材とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極部材および陰極部材の切断された端部にも誘電体被膜を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(カップリング剤溶液の調製)
溶媒としてn−ブタノールを用い、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを表1に示す濃度(質量%)で含むカップリング剤溶液を調製した。
(Si処理)
所定容器に収容されたカップリング剤溶液に巻回体を10分間浸漬した。その後、巻回体をカップリング剤溶液から引き上げ、100℃で、30分間乾燥させた。これにより、第一誘電体被膜とともに第二誘電体被膜の表面をシランカップリング剤で処理した。
(導電性高分子を含む液状組成物の調製)
重量平均分子量が10000〜20000の導電性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸アニオンとを合計で3質量%含む水溶液を液状組成物として準備した。
(固体電解質層の形成)
減圧雰囲気(40kPa)中で、所定容器に収容された液状組成物に巻回体を5分間浸漬し、その後、液状組成物から巻回体を引き上げた。
次に、液状組成物を含浸した巻回体を、150℃の乾燥炉内で20分間乾燥させ、導電性高分子を含む固体電解質層を陽極部材と陰極部材との間に形成した。
(電解液の調製)
非水溶媒としてγ−ブチロラクトンを用い、溶質としてマレイン酸トリメチルアミンを20質量%含む電解液を調製した。
(電解液(非水溶媒)の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液に、固体電解質層を具備する巻回体(コンデンサ素子)を5分間浸漬し、その後、電解液から巻回体を引き上げた。
(コンデンサ素子を封止する工程)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。具体的には、まず、有底ケースの開口側にリード線が位置するようにコンデンサ素子を有底ケースに収納し、リード線が貫通するように形成された封止部材であるゴムパッキングをコンデンサ素子の上方に配置して、コンデンサ素子を有底ケース内に封止した。そして、有底ケースの開口端近傍に絞り加工を施し、更に開口端をカール加工し、カール部分に座板を配置することによって、図1に示すような電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、135℃で2時間エージング処理を行った。
得られた電解コンデンサについて、静電容量、ESRおよびリーク電流(LC)を測定した。その結果を表1に示す。また、1.0V/秒のレートで昇圧しながら電圧を印加し、0.5Aの過電流が流れる破壊耐電圧(BDV)を測定した。更に、長期信頼性を評価するために、定格電圧を印加しながら125℃で1000時間保持し、ESRの増加率(ΔESR)を確認した。ΔESRは、初期値(X0)に対する1000時間保持後のESR(X)の比(X/X0)で示した。それぞれの特性を20個の試料の平均値として求めた。
《実施例5》
コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒に、マレイン酸トリメチルアミンを含ませなかったこと以外、実施例2と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例1》
陰極部材を構成するアルミニウム箔に第二誘電体被膜を形成しなかったこと以外、実施例2と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例2》
陰極部材の第二誘電体被膜をカップリング剤で処理しなかったこと以外、実施例1と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。ただし、化成処理後の陽極部材に陽極リードタブを接続後、陽極部材のみ、実施例2と同様のカップリング剤溶液でSi処理を施した。その後、巻回体を構成した。
《比較例3》
コンデンサ素子に非水溶媒(電解液)を含浸させなかったこと以外、実施例3と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例4》
陰極部材の第二誘電体被膜をカップリング剤で処理せず、コンデンサ素子に非水溶媒(電解液)を含浸させなかったこと以外、実施例1と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
Figure 2014132632
*:非水溶媒のみ(溶質なし)
Si濃度:シランカップリング剤溶液におけるシランカップリング剤の濃度
LC:リーク電流
BDV:破壊電圧
表1より、陰極部材を構成するアルミニウム箔に化成による第二誘電体被膜を形成する(すなわち、陰極部材が第二誘電体被膜を有する)とともに、第二誘電体被膜をシランカップリング剤により処理し、更にコンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる場合、電解コンデンサの耐電圧特性および長期信頼性が向上することが理解できる。
また、例えば実施例1と比較例1、2のBDVおよびΔESRを対比すると、陰極部材が化成処理によって形成された第二誘電体被膜を有する場合でも、Si処理が施されない場合には、BDVの向上やΔESRの低減の効果が見られない。すなわち、第二誘電体被膜を有する比較例2と、第二誘電体被膜を有さない比較例1には、有意差がないことが理解できる。このことから、化成処理によって形成された第二誘電体被膜は、Si処理との組み合わせによらなければ、耐電圧特性や耐熱性の向上に寄与しないことが示唆される。
また、比較例4と比較例2、3とを対比すると、Si処理または非水溶媒の使用により、BDVが3.6〜8.7V向上している。一方、比較例4と実施例2とを対比すると、実施例2では、BDVは、24.5Vも向上している。このことから、化成処理によって形成された第二誘電体被膜と、Si処理と、非水溶媒とを組み合わせることにより、耐電圧特性が顕著に向上することが理解できる。
〔第2の発明〕
以下に、第2の発明について説明する。なお、第1の発明と重複する事項については説明を省略又は簡略化することとする。
第2の発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、コンデンサ素子と非水溶媒とを封止するケースを具備する。コンデンサ素子は、第一誘電体被膜を有する陽極部材と、第一誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層とを具備する。固体電解質層は、第一誘電体被膜の表面の少なくとも一部を被覆している。また、固体電解質層の表面は、シランカップリング剤で処理されている。
ここで、シランカップリング剤による処理(以下、Si処理ともいう)とは、例えば、シランカップリング剤もしくはシランカップリング剤を溶媒に溶解させた溶液を、固体電解質層の表面に接触させることである。これにより、シランカップリング剤と、固体電解質層の表面に存在する導電性高分子とが反応する。このような反応により、シランカップリング剤の反応物が固体電解質層に付着する。
上記Si処理により、電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。また、100℃以上の高温で長期間にわたり電解コンデンサに負荷をかけた場合でも、ESRを低く維持できるため、信頼性が向上する。すなわち、電解コンデンサの耐熱性が向上する。これは、シランカップリング剤の作用により、コンデンサ素子とともにケース内に封止される非水溶媒に対する固体電解質層の耐性が向上し、固体電解質層の劣化が抑制されるためであると考えられる。
第2の発明の一態様において、コンデンサ素子は、固体電解質層を介して陽極部材と対向する陰極部材を備え、陽極部材と陰極部材とが巻回されて巻回体を構成している。コンデンサ素子は、陽極部材と陰極部材との間を物理的に離間させる多孔質セパレータを含んでもよい。ここで、巻回体の軸方向の端部において固体電解質層に付着しているシランカップリング剤(シランカップリング剤に由来する成分、例えばシランカップリング剤と固体電解質層との反応生成物を含む)の量は、巻回体の軸方向の中央部において固体電解質層に付着しているシランカップリング剤の量よりも多くなっている。
上記構成によれば、コンデンサ素子とともにケース内に封止される非水溶媒に対する固体電解質層の耐性が更に向上する。これは、巻回体の軸方向の端部における固体電解質層は劣化しやすいのに対し、劣化しやすい箇所を選択的にシランカップリング剤で処理することができるためである。また、上記構成によれば、適量のシランカップリング剤に由来する成分をコンデンサ素子に付着させることができる。よって、過剰のシランカップリング剤が不純物として電解コンデンサ内に残存しにくくなる。
シランカップリング剤は、固体電解質層の表面から、ある程度は内部にまで入り込んでいてもよい。この場合、シランカップリング剤の構成元素の濃度は、固体電解質層の表面から深さ方向に向かって減少することになる。すなわち、固体電解質層と非水溶媒との接触界面付近に、選択的にシランカップリング剤が存在するため、固体電解質層の本来の機能は損なわれない。
シランカップリング剤としては、第1の発明で説明したものを用いることができる。
上記電解コンデンサは、例えば、第一誘電体被膜を有する陽極部材を準備し、第一誘電体被膜の表面に固体電解質層を形成してコンデンサ素子とし、固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒を含浸させ、ケース内に封止することにより製造することができる。ただし、コンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる前に、コンデンサ素子を、シランカップリング剤で処理する工程が行われる。具体的には、シランカップリング剤を溶媒に溶解させた溶液またはシランカップリング剤自体に、コンデンサ素子を浸漬する。
上記方法は、コンデンサ素子を、シランカップリング剤を含む溶液またはシランカップリング剤に浸漬する点などが異なるだけで、従来の一般的な電解コンデンサの製造方法を大きく変更するものではない。従って、既存設備を有効利用することができ、製造コストの増大を抑制することができる。
固体電解質層は、コンデンサ素子にモノマーやオリゴマーを含浸させ、その後、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させて導電性高分子を生成させる方法により形成することができる。あるいは、導電性高分子と、水および非水溶媒の少なくとも一方と、を含む液状組成物を、陽極部材に含浸させ、導電性高分子を第一誘電体被膜に付着させることにより形成することもできる。例えば、コンデンサ素子に上記液状組成物に浸漬し、その後、コンデンサ素子を液状組成物から引き上げ、乾燥させることにより、固体電解質層を形成することができる。液状組成物を用いる方法は、化学重合や電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させて導電性高分子を生成させる方法に比べて容易である。また、化学重合により固体電解質層を形成する場合、残存モノマーや酸化剤を除去するために洗浄を行う必要がある。一方、コンデンサ素子に導電性高分子を含む液状組成物を含浸させる方法は、洗浄を行う必要がない点でも優れている。
導電性高分子および液状組成物は、第1の発明で説明したものを用いることができる。
コンデンサ素子は、これに含浸された非水溶媒とともに、ケース内に封止されている。非水溶媒は、第1の発明で説明したものを用いることができる。
非水溶媒にイオン性物質(溶質)として有機塩を溶解させた電解液を用いてもよい。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩であり、第1の発明で説明したものを用いることができる。
有機塩を含む非水溶媒、すなわち電解液中における有機塩の濃度は、例えば5〜50重量%とすることができる。
以下、第2の発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は第2の発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同実施形態に係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図であり、図4は、同コンデンサ素子における要部構成を示す断面の拡大模式図である。電解コンデンサの構成(図1)は第1の発明と同じであるため、詳細な説明は省略する。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材21と陰極部材22との間に、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成されていないものをいう。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極部材21と、リードタブ15Bと接続された陰極部材22と、セパレータ23とを備える。陽極部材21および陰極部材22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。
図4に示すように、陽極部材21は、表面が凹凸を有するように粗面化された第一金属箔21aを具備し、凹凸を有する第一金属箔21a上に第一誘電体被膜31が形成されている。
コンデンサ素子10は、巻回体の陽極部材21と陰極部材22との間に形成された固体電解質層34を有する。固体電解質層34は、陽極部材21の第一誘電体被膜31の表面の少なくとも一部を被覆するとともに、陰極部材22の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。また、固体電解質層34は、セパレータ23の表面を被覆していてもよい。
コンデンサ素子10は、非水溶媒33とともに、有底ケース11、封止部材12などで構成された外装ケースに収容されている。非水溶媒33は、第一誘電体被膜31の損傷を修復する機能を有する。一方、非水溶媒33を構成する分子は、固体電解質層34を攻撃し、固体電解質層34を劣化させる要因ともなる。固体電解質層34の表面をシランカップリング剤で処理することにより、このような劣化が抑制される。よって、固体電解質層34の絶縁化による自己修復機能が向上し、電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。また、シランカップリング剤の作用により固体電解質層34が安定化するため、高温で長期間にわたり電解コンデンサに負荷をかけた場合でも、ESRが低く維持される。
≪電解コンデンサの製造方法≫
次に、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。
(i)第一誘電体被膜31を具備する陽極部材21を準備する工程
第1の発明で説明した工程と同じ工程を用いることにより、第一誘電体被膜31を具備する陽極部材21を準備する。
(ii)陰極部材22を準備する工程
陰極部材22にも、陽極部材と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陰極部材22の表面を粗面化してもよい。なお、第2の発明では、陰極部材22の表面に第二誘電体被膜32が形成されていなくても良い。
(iii)巻回体の作製
次に、陽極部材21および陰極部材22を用いて巻回体を作製する。第1の発明と同じ製造方法により巻回体を作製するので、詳細な説明は省略する。
(iv)固体電解質層を形成する工程
次に、巻回体に導電性高分子を含む液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、陽極部材21の第一誘電体被膜31の表面に、導電性高分子を含む固体電解質層34を形成する。
導電性高分子を含む液状組成物や、液状組成物における導電性高分子(ドーパントもしくはポリアニオンを含む)の濃度は、第1の発明で説明したものを用いることができる。またその濃度による効果も第1の発明と同じである。
巻回体に液状組成物を含浸させる方法は、第1の発明で説明したものを用いることができ、例えば、容器に収容された液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。
次に、液状組成物から、巻回体を引き上げ、巻回体を乾燥させる。これにより、第一誘電体被膜31の表面の少なくとも一部を覆うように、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成される。このとき、第一誘電体被膜31の表面だけでなく、陰極部材22およびセパレータ23の表面にも固体電解質層34が形成されてもよい。
液状組成物から巻回体を引上げた後、巻回体を加熱することにより、液状組成物に含まれる水や非水溶媒の蒸散を促進しもよい。加熱温度は、例えば50〜300℃が好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
巻回体に液状組成物を含浸させる工程と、巻回体を乾燥させる工程は、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、第一誘電体被膜31に対する固体電解質層34の被覆率を高めることができる。
以上により、陽極部材21と陰極部材22との間に固体電解質層34が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、第一誘電体被膜31の表面に形成された固体電解質層34は、事実上の陰極材料として機能する。
(v)固体電解質層をシランカップリング剤で処理する工程
次に、固体電解質層34にシランカップリング剤を接触させることにより、固体電解質層34の表面をシランカップリング剤で処理する。具体的には、溶媒にシランカップリング剤を溶解させた溶液(以下、単にカップリング剤溶液という)に巻回体を浸漬し、その後、カップリング剤溶液から巻回体を引き上げ、乾燥させればよい。このとき、溶媒としては、特に限定されないが、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの1価アルコールを用いることができる。カップリング剤溶液におけるカップリング剤の濃度は、例えば0.5〜15質量%であればよく、1〜10質量%が好ましい。カップリング剤の濃度が0.5質量%以上であれば、固体電解質層34の表面に十分量のカップリング剤を付着させることができるので、耐電圧特性および長期信頼性の向上効果を十分に得ることができる。また、カップリング剤の濃度を15質量%以下とすることで、過剰のシランカップリング剤が不純物として電解コンデンサ内に残存しにくくなり、ESRの変化が更に抑制される。
カップリング剤溶液に巻回体を浸漬する方法は、特に限定されないが、例えば、容器に収容されたカップリング剤溶液に巻回体を浸漬する方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、例えば5〜30分間であればよい。また、乾燥は、80〜100℃で、10〜30分間行えば十分である。
上記方法によれば、カップリング剤溶液は、巻回体の軸方向の端部から徐々に中央部に向かって浸透していく。従って、巻回体の軸方向の端部において固体電解質層に作用するシランカップリング剤の量は、巻回体の軸方向の中央部において固体電解質層に作用するシランカップリング剤の量よりも多くなる。これにより、巻回体の軸方向の端部において固体電解質層に付着するシランカップリング剤の量は、巻回体の軸方向の中央部において固体電解質層に付着するシランカップリング剤の量よりも多くなる。よって、劣化しやすい巻回体の軸方向の端部における固体電解質層を選択的にシランカップリング剤で処理することができる。
また、シランカップリング剤で処理した後の固体電解質層34の断面を深さ方向に沿って分析すると、シランカップリング剤の構成元素の濃度は、固体電解質層34の表面から深さ方向に向かって減少している。つまり、固体電解質層34の中でも、非水溶媒33との接触界面付近が選択的にシランカップリング剤で処理される。
(vi)コンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、非水溶媒33を含浸させる。これにより、コンデンサ素子10が有する隙間に、非水溶媒33が侵入する。また、非水溶媒33は、固体電解質層34により被覆されていない第一誘電体被膜31の隙間にも侵入することができる。よって、第一誘電体被膜31の修復機能が向上する。
非水溶媒33の種類や効果は第1の発明で説明したものと同じであるので説明を省略する。
コンデンサ素子10に非水溶媒33を含浸させる方法も、第1の発明で説明したものを用いることができるので説明を省略する。
(vii)コンデンサ素子を封止する工程
次に、第1の発明で説明したものと同じ工程によりコンデンサ素子10を封止する。なお、詳細な説明は省略する。

[実施例]
以下、実施例に基づいて、第2の発明をより詳細に説明するが、第2の発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例6〜9》
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量22μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極部材を準備する工程)
実施例1と同じ工程を用いて陽極部材を準備した。
(陰極部材を準備する工程)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陰極部材を準備した。
(巻回体の作製)
陽極部材および陰極部材に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極部材と陰極部材とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(導電性高分子を含む液状組成物の調製)
実施例1で説明したものと同じ液状組成物を準備した。
(固体電解質層の形成)
実施例1で説明したものと同じ方法を用いて、導電性高分子を含む固体電解質層を第一誘電体被膜の表面に形成した。
(カップリング剤溶液の調製)
溶媒としてn−ブタノールを用い、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを表2に示す濃度(質量%)で含むカップリング剤溶液を調製した。
(Si処理)
所定容器に収容されたカップリング剤溶液にコンデンサ素子を10分間浸漬した。その後、コンデンサ素子をカップリング剤溶液から引き上げ、100℃で、30分間乾燥させた。これにより、固体電解質層の表面をシランカップリング剤で処理した。
(電解液の調製)
非水溶媒としてγ−ブチロラクトンを用い、イオン性物質としてマレイン酸トリメチルアミンを20質量%含む電解液を調製した。
(電解液(非水溶媒)の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、電解液に、固体電解質層を具備するコンデンサ素子を5分間浸漬し、その後、電解液からコンデンサ素子を引き上げた。
(コンデンサ素子を封止する工程)
電解液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、135℃で2時間エージング処理を行った。
得られた電解コンデンサについて、第1の発明で説明した項目に加え、ピーク温度240℃、試験時間85秒のVPS(Vaper phase soldering)試験を行い、ゴム膨れの発生率を測定した。その結果を表2に示す。ΔESRは、初期値(X0)に対する1000時間保持後のESR(X)の比(X/X0)で示した。それぞれの特性を300個の試料の平均値として求めた。
《実施例10》
コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒に、マレイン酸トリメチルアミンを含ませなかったこと以外、実施例7と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《実施例11》
シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外、実施例7と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例5》
導電性高分子を含む液状組成物に、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5質量%の濃度で含ませて固体電解質層を形成するとともに、固体電解質層に対するSi処理を行わなかったこと以外、実施例6と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例6》
固体電解質層に対するSi処理を行わなかったこと以外、実施例6と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例7》
コンデンサ素子に非水溶媒(電解液)を含浸させなかったこと以外、実施例8と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
Figure 2014132632
*:非水溶媒のみ(イオン性物質なし)
**:γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用
***:シランカップリング剤を固体電解質層の内部に混入
Si濃度:シランカップリング剤溶液におけるシランカップリング剤の濃度
LC:リーク電流
BDV:破壊電圧
VPS:300個のうちゴム膨張が見られたコンデンサ数
表2より、固体電解質層をシランカップリング剤により処理し、更にコンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる場合、電解コンデンサの耐電圧特性および長期信頼性が向上することが理解できる。
また、比較例5と比較例6とを対比すると、固体電解質層の内部にシランカップリング剤を混入させたとしても、BDVを向上させる効果は僅かであり、ΔESRについては却って上昇することが理解できる。ΔESRの上昇は、固体電解質層の内部に存在するシランカップリング剤の変質や、これに伴う固体電解質層の劣化などに起因すると考えられる。
一方、実施例6と比較例5、6とを対比すると、固体電解質層の表面をシランカップリング剤で処理することにより、耐電圧特性が大きく向上するとともに、ΔESRが低減し、耐熱性が向上することが理解できる。
なお、シランカップリング剤溶液におけるシランカップリング剤の濃度が10質量%を超える高濃度では、ΔESRが、若干、上昇する傾向がみられる。よって、シランカップリング剤溶液におけるシランカップリング剤の濃度は、1〜10質量%の範囲が好適であると考えられる。
〔第3の発明〕
以下に、第3の発明について説明する。なお、第1の発明と重複する事項については説明を省略又は簡略化することとする。
第3の発明の電解コンデンサは、コンデンサ素子と、コンデンサ素子に含浸された非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液と、コンデンサ素子と溶液とを封止するケースを具備する。コンデンサ素子は、第一誘電体被膜を有する陽極部材と、第一誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層とを具備する。固体電解質層は、第一誘電体被膜の表面の少なくとも一部を被覆している。溶液は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解または分散させたシランカップリング剤とを含む。すなわち、溶液は、シランカップリング剤(またはその縮合反応により生成するポリマーまたはオリゴマー)を分散させた分散液でもよい。
シランカップリング剤は、固体電解質層の表面に付着している。シランカップリング剤は、固体電解質層と化学結合により結合していてもよく、電気的相互作用により固体電解質層の表面に付着しているだけでもよい。
上記構成により、電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。また、100℃以上の高温で長期間にわたり電解コンデンサに負荷をかけた場合でも、ESRを低く維持できるため、信頼性が向上する。すなわち、電解コンデンサの耐熱性が向上する。これは、シランカップリング剤の作用により、コンデンサ素子とともにケース内に封止される非水溶媒に対する固体電解質層の耐性が向上し、固体電解質層の劣化が抑制されるためであると考えられる。
ここで、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液におけるシランカップリング剤の濃度は、0.1〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。このような濃度範囲であれば、適量のシランカップリング剤を固体電解質層に付着させるのに有利である。また、過剰のシランカップリング剤により、電解コンデンサの本来の性能が大きく損なわれることもない。
シランカップリング剤としては、第1の発明で説明したものを用いることができる。
シランカップリング剤は、反応性が高いため、電解コンデンサ内でシランカップリング剤の分子同士が徐々に反応することがある。従って、シランカップリング剤の少なくとも一部は、縮合反応によりポリマーまたはオリゴマーを形成していてもよい。ただし、未反応のシランカップリング剤が溶液中に残存していることが望ましい。未反応のシランカップリング剤は、固体電解質層に付着していたシランカップリング剤が剥離した場合などに剥離部を修復する作用を有する。
上記電解コンデンサは、例えば、第一誘電体被膜を有する陽極部材を準備し、第一誘電体被膜の表面に固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を形成し、固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒とこれに溶解または分散させたシランカップリング剤とを含む溶液を含浸させ、ケース内に封止することにより製造することができる。
上記方法は、コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒に、シランカップリング剤を溶解または分散させる点などが異なるだけで、従来の電解コンデンサの製造方法を大きく変更する必要がない。従って、既存設備を有効利用することができ、製造コストの増大を抑制することができる。
コンデンサ素子に含浸させる前の、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液におけるシランカップリング剤の濃度は、0.5〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。
固体電解質層は、第2の発明と同様に重合や液状組成物を用いて形成できるので、詳細な説明を省略する。
コンデンサ素子は、非水溶媒およびこれに溶解または分散させたシランカップリング剤を含む溶液とともに、ケース内に封止されている。非水溶媒は、有機溶媒でもよく、イオン性液体でもよい。非水溶媒としては、高沸点溶媒が望ましい。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなとの多価アルコール類、スルホランなどの環状スルホン類、γ−ブチロラクトンなどのラクトン類、ホルムアルデヒド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類、酢酸メチルなどのエステル類、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、メチルエチルケトンなどのケトン類などを用いることができる。
溶液にイオン性物質(溶質)として有機塩を溶解させた電解液を用いてもよい。有機塩とは、アニオンおよびカチオンの少なくとも一方が有機物を含む塩である。有機塩としては、第1の発明で説明したものを用いることができる。
シランカップリング剤に加え、有機塩含む溶液、すなわち電解液中における有機塩の濃度は、例えば1〜50重量%とすることができる。
以下、第3の発明を実施形態に基づいて、より具体的に説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
≪電解コンデンサ≫
図1は、本実施形態に係る電解コンデンサの断面模式図であり、図2は、同実施形態に係るコンデンサ素子の一部を展開した概略図であり、図4は、同コンデンサ素子における要部構成を示す断面の拡大模式図である。電解コンデンサの構成(図1)は第1の発明と同じであるため、詳細な説明は省略する。
コンデンサ素子10は、図2に示すような巻回体から作製される。巻回体とは、コンデンサ素子10の半製品であり、表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材21と陰極部材22との間に、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成されていないものをいう。巻回体は、リードタブ15Aと接続された陽極部材21と、リードタブ15Bと接続された陰極部材22と、セパレータ23とを備える。陽極部材21および陰極部材22は、セパレータ23を介して巻回されている。巻回体の最外周は、巻止めテープ24により固定される。
図4に示すように、陽極部材21は、表面が凹凸を有するように粗面化された第一金属箔21aを具備し、凹凸を有する第一金属箔21a上に第一誘電体被膜31が形成されている。
コンデンサ素子10は、巻回体の陽極部材21と陰極部材22との間に形成された固体電解質層34を有する。固体電解質層34は、陽極部材21の第一誘電体被膜31の表面の少なくとも一部を被覆するとともに、陰極部材22の表面の少なくとも一部を被覆していてもよい。また、固体電解質層34は、セパレータ23の表面を被覆していてもよい。
コンデンサ素子10は、シランカップリング剤が溶解または分散された非水溶媒33(溶液)とともに、有底ケース11、封止部材12などで構成された外装ケースに収容されている。非水溶媒33にシランカップリング剤が溶解または分散されていることにより、第一誘電体被膜31の損傷を修復する機能が向上する。一方、非水溶媒33を構成する分子は、固体電解質層34を攻撃し、固体電解質層34を劣化させる要因ともなる。非水溶媒33にシランカップリング剤を溶解または分散させ、固体電解質層34の表面にシランカップリング剤を付着させることにより、このような劣化が抑制される。よって、固体電解質層34の絶縁化による自己修復機能が向上し、電解コンデンサの耐電圧特性が向上する。また、シランカップリング剤の作用により固体電解質層34が安定化するため、高温で長期間にわたり電解コンデンサに負荷をかけた場合でも、ESRが低く維持される。
≪電解コンデンサの製造方法≫
次に、本実施形態に係る電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。
(i)第一誘電体被膜31を具備する陽極部材21を準備する工程
第1の発明で説明した工程と同じ工程を用いることにより、第一誘電体被膜31を具備する陽極部材21を準備する。
(ii)陰極部材22を準備する工程
陰極部材22にも、陽極部材と同様、金属箔を用いることができる。金属の種類は特に限定されないが、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁作用金属または弁作用金属を含む合金を用いることが好ましい。必要に応じて、陽極部材22の表面を粗面化してもよい。なお、第3の発明では、陰極部材22の表面に第二誘電体被膜32が形成されていなくても良い。
(iii)巻回体の作製
次に、陽極部材21および陰極部材22を用いて巻回体を作製する。第1の発明と同じ製造方法により巻回体を作製するので、詳細な説明は省略する。
(iv)固体電解質層を形成する工程
次に、巻回体に導電性高分子を含む液状組成物を含浸させ、その後、乾燥させることにより、陽極部材21と陰極部材22との間に導電性高分子を含む固体電解質層34を形成する。
導電性高分子を含む液状組成物や、液状組成物における導電性高分子(ドーパントもしくはポリアニオンを含む)の濃度は、第1の発明で説明したものを用いることができる。
巻回体に液状組成物を含浸させる方法は、第1の発明で説明したものを用いることができ、例えば、容器に収容された液状組成物に巻回体を浸漬させる方法が簡易で好ましい。
次に、液状組成物から、巻回体を引き上げ、巻回体を乾燥させることにより、第一誘電体被膜31の表面の少なくとも一部を覆うように、導電性高分子を含む固体電解質層34が形成される。このとき、第一誘電体被膜31の表面だけでなく、陰極部材22およびセパレータ23の表面にも固体電解質層34が形成されてもよい。
液状組成物から巻回体を引上げた後、巻回体を加熱することにより、液状組成物に含まれる水や非水溶媒の蒸散を促進してもよい。加熱温度は、例えば50〜300℃が好ましく、100〜200℃が特に好ましい。
巻回体に液状組成物を含浸させる工程と、巻回体を乾燥させる工程は、2回以上繰り返してもよい。これらの工程を複数回行うことにより、第一誘電体被膜31に対する固体電解質層34の被覆率を高めることができる。
以上により、陽極部材21と陰極部材22との間に固体電解質層34が形成され、コンデンサ素子10が作製される。なお、第一誘電体被膜31の表面に形成された固体電解質層34は、事実上の陰極材料として機能する。
(v)コンデンサ素子に非水溶媒とシランカップリング剤を含む溶液を含浸させる工程
次に、コンデンサ素子10に、シランカップリング剤を溶解または分散させた非水溶媒33(溶液)を含浸させる。これにより、コンデンサ素子10が有する隙間に、シランカップリング剤とともに非水溶媒33が侵入する。また、シランカップリング剤および非水溶媒33は、固体電解質層34により被覆されていない第一誘電体被膜31の隙間にも侵入することができる。よって、第一誘電体被膜31の修復機能が向上する。
溶液におけるシランカップリング剤の濃度は、0.5〜4質量%であることが好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。シランカップリング剤の濃度が1質量%以上であれば、固体電解質層34の表面に十分量のカップリング剤を付着させることができるので、耐電圧特性および長期信頼性の向上効果を十分に得ることができる。また、シランカップリング剤の濃度を4質量%以下とすることで、ESRの変化を抑制しやすくなる。
非水溶媒33の種類や効果は第1の発明で説明したものと同じであるので説明を省略する。
コンデンサ素子10に溶液を含浸させる方法も、特に限定されないが、容器に収容された溶液にコンデンサ素子10を浸漬させる方法が簡易で好ましい。浸漬時間は、コンデンサ素子10のサイズにもよるが、例えば1秒〜5分である。また、含浸は、減圧下、例えば10〜100kPa、好ましくは40〜100kPaの雰囲気で行うことが好ましい。
(vi)コンデンサ素子を封止する工程
次に、第1の発明で説明したものと同じ工程によりコンデンサ素子10を封止する。なお、詳細な説明は省略する。
[実施例]
以下、実施例に基づいて、第3の発明をより詳細に説明するが、第3の発明は実施例に限定されるものではない。
《実施例12〜15》
本実施例では、定格電圧35V、定格静電容量22μFの巻回型の電解コンデンサ(Φ8.0mm×L(長さ)12.0mm)を作製した。以下に、電解コンデンサの具体的な製造方法について説明する。
(陽極部材を準備する工程)
実施例1と同じ工程を用いて陽極部材を準備した。
(陰極部材を準備する工程)
厚さ50μmのアルミニウム箔にエッチング処理を行い、アルミニウム箔の表面を粗面化した。その後、アルミニウム箔を、縦×横が6mm×120mmとなるように裁断して、陰極部材を準備した。
(巻回体の作製)
陽極部材および陰極部材に陽極リードタブおよび陰極リードタブを接続し、陽極部材と陰極部材とを、リードタブを巻き込みながら、セパレータを介して巻回した。巻回体から突出する各リードタブの端部には、陽極リード線および陰極リード線をそれぞれ接続した。そして、作製された巻回体に対して、再度化成処理を行い、陽極部材の切断された端部に第一誘電体被膜を形成した。次に、巻回体の外側表面の端部を巻止めテープで固定して巻回体を作製した。
(液状組成物の調製)
実施例1の(導電性高分子を含む液状組成物の調製)で説明したものと同じ液状組成物を準備した。
(固体電解質層の形成)
実施例1で説明したものと同じ方法を用いて、導電性高分子を含む固体電解質層を陽極部材と陰極部材との間に形成した。
(非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液(電解液)の調製)
非水溶媒としてγ−ブチロラクトンを用い、イオン性物質としてマレイン酸トリメチルアミンを20質量%含む電解液を調製した。得られた電解液に、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを表3に示す濃度(質量%)で含ませて溶液を調製した。
(溶液(電解液)の含浸)
減圧雰囲気(40kPa)中で、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液に、固体電解質層を具備するコンデンサ素子を5分間浸漬し、その後、溶液からコンデンサ素子を引き上げた。
(コンデンサ素子を封止する工程)
非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液を含浸させたコンデンサ素子を封止して、電解コンデンサを完成させた。その後、定格電圧を印加しながら、135℃で2時間エージング処理を行った。
得られた電解コンデンサについて、第1の発明で説明した項目を測定した。その結果を表3に示す。また、ΔESRは、初期値(X0)に対する1000時間保持後のESR(X)の比(X/X0)で示した。それぞれの特性を300個の試料の平均値として求めた。
《実施例16》
シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりに、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いたこと以外、実施例13と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例8》
導電性高分子を含む液状組成物に、シランカップリング剤として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを5質量%の濃度で含ませて固体電解質層を形成するとともに、コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒(電解液)にシランカップリング剤を含ませなかったこと以外、実施例12と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
《比較例9》
コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒(電解液)にシランカップリング剤を含ませなかったこと以外、実施例12と同様に、電解コンデンサを作製し、上記と同様に評価した。
Figure 2014132632
*:γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用
**:導電性高分子を含む液状組成物にシランカップリング剤に混入
Si含有:電解液におけるシランカップリング剤の含有の有無
Si濃度:電解液におけるシランカップリング剤の濃度
LC:リーク電流
BDV:破壊電圧
表3より、コンデンサ素子に含浸させる非水溶媒(電解液)にシランカップリング剤を含ませることにより固体電解質層の表面にシランカップリング剤を付着させた場合、電解コンデンサの耐電圧特性および長期信頼性が向上することが理解できる。
また、比較例8と比較例9とを対比すると、固体電解質層の内部にシランカップリング剤を混入させたとしても、BDVを向上させる効果は僅かであり、ΔESRについては却って上昇することが理解できる。ΔESRの増大は、固体電解質層の内部に存在するシランカップリング剤により固体電解質層の変質が進行することに起因すると考えられる。
一方、実施例12と比較例8、9とを対比すると、電解液にシランカップリング剤を含ませることにより、耐電圧特性が大きく向上するとともに、ΔESRが低減し、耐熱性が向上することが理解できる。
なお、電解液におけるシランカップリング剤の濃度が3質量%を超える高濃度では、ΔESRが、若干、上昇する傾向がみられる。よって、電解液におけるシランカップリング剤の濃度は、0.1〜4質量%の範囲が好ましく、1〜3質量%が更に好適であると考えられる。
第1〜第3の発明は、陰極材料として固体電解質層を具備する電解コンデンサに利用することができる。
10:コンデンサ素子、11:有底ケース、12:封止部材、13:座板、14A,14B:リード線、15A,15B:リードタブ、21:陽極部材、22:陰極部材、23:セパレータ、24:巻止めテープ、31:第一誘電体被膜、32:第二誘電体被膜、33:非水溶媒、34:固体電解質層

Claims (16)

  1. 表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材と、表面に第二誘電体被膜を有する陰極部材と、前記陽極部材と前記陰極部材との間に介在する導電性高分子を含む固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、
    前記コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、
    前記コンデンサ素子と、前記非水溶媒と、を封止するケースと、
    を含み、
    前記第二誘電体被膜が化成処理によって形成され、かつ前記第二誘電体被膜の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサ。
  2. 前記第二誘電体被膜は、3V以上の電圧で化成処理することにより形成されたものである、請求項1に記載の電解コンデンサ。
  3. 前記第二誘電体被膜の表面は、凹凸を有するように粗面化されている、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
  4. 表面に第一誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、
    表面に化成処理によって形成された第二誘電体被膜を有する陰極部材を準備する工程と、
    前記陽極部材と前記陰極部材とを巻回して、巻回体を形成する工程と、
    前記巻回体における前記陽極部材と前記陰極部材との間に、導電性高分子を含む固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を形成する工程と、
    前記コンデンサ素子に非水溶媒を含浸させる工程と、
    前記コンデンサ素子と前記非水溶媒とをケースに封止する工程と
    を有し、
    前記固体電解質層を形成する前に、前記第二誘電体被膜の表面をシランカップリング剤で処理する工程を更に有する、電解コンデンサの製造方法。
  5. 前記化成処理の電圧は、3V以上である、請求項4に記載の電解コンデンサの製造方法。
  6. 誘電体被膜を有する陽極部材と、前記誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、
    前記コンデンサ素子に含浸された非水溶媒と、
    前記コンデンサ素子と、前記非水溶媒と、を封止するケースと、
    を含み、
    前記固体電解質層の表面が、シランカップリング剤で処理されている、電解コンデンサ。
  7. 前記固体電解質層は、導電性高分子と、水および非水溶媒の少なくとも一方と、を含む液状組成物を、前記誘電体被膜に接触させ、前記導電性高分子を前記誘電体被膜に付着させることにより形成されている、請求項6に記載の電解コンデンサ。
  8. 前記コンデンサ素子は、前記固体電解質層を介して前記陽極部材と対向する陰極部材を備え、
    前記陽極部材と前記陰極部材とが巻回されて巻回体を構成しており、
    前記巻回体の軸方向の端部において前記固体電解質層に付着している前記シランカップリング剤の量は、前記巻回体の軸方向の中央部において前記固体電解質層に付着している前記シランカップリング剤の量よりも多い、請求項6または7に記載の電解コンデンサ。
  9. 前記シランカップリング剤の構成元素の濃度が、前記固体電解質層の表面から深さ方向に向かって減少している、請求項6〜8のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  10. 誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、
    前記誘電体被膜の表面に固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を得る工程と、
    前記コンデンサ素子を、シランカップリング剤を含む溶液またはシランカップリング剤に浸漬することにより、前記固体電解質層の表面をシランカップリング剤で処理する工程と、
    前記シランカップリング剤で処理された固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒を含浸させる工程と、
    前記非水溶媒を含浸させたコンデンサ素子を、ケース内に封止する工程と
    を含む、電解コンデンサの製造方法。
  11. 誘電体被膜を有する陽極部材と、前記誘電体被膜の表面に形成された固体電解質層と、を具備するコンデンサ素子と、
    前記コンデンサ素子に含浸された、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液と、
    前記コンデンサ素子と、前記溶液と、を封止するケースと、を含む、電解コンデンサ。
  12. 前記シランカップリング剤が、前記固体電解質層の表面に付着している、請求項11に記載の電解コンデンサ。
  13. 前記溶液における前記シランカップリング剤の含有量が、0.1〜4質量%である、請求項11または12に記載の電解コンデンサ。
  14. 前記シランカップリング剤の少なくとも一部が、縮合反応によりポリマーまたはオリゴマーを形成している、請求項11〜13のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  15. 前記固体電解質層は、導電性高分子と、水および非水溶媒の少なくとも一方と、を含む液状組成物を、前記誘電体被膜に接触させ、前記導電性高分子を前記誘電体被膜に付着させることにより形成されている、請求項11〜14のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
  16. 誘電体被膜を有する陽極部材を準備する工程と、
    前記誘電体被膜の表面に導電性高分子を含む固体電解質層を形成して、コンデンサ素子を形成する工程と、
    前記固体電解質層を具備するコンデンサ素子に、非水溶媒とシランカップリング剤とを含む溶液を含浸させる工程と、
    前記溶液を含浸させたコンデンサ素子を、ケース内に封止する工程と、を含む、電解コンデンサの製造方法。
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