JPWO2014103813A1 - ガスケット用樹脂組成物及び二次電池用ガスケット - Google Patents

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Abstract

リチウムイオン電池等に用いられるガスケット用材料としての樹脂組成物であって、透湿性及びかしめ性に優れるガスケット用樹脂組成物及び二次電池用ガスケットを提供する。(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部と、(B)官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)を合計1〜6質量部と、を含むことを特徴とするガスケット用樹脂組成物である。官能基を有するエラストマー(b1)及び官能基を有しないエラストマー(b2)の配合比(b1/b2)は、1/1〜1/10であることが好ましい。

Description

本発明は、二次電池のガスケットに用いられるガスケット用樹脂組成物及び二次電池用ガスケットに関する。
リチウムイオン電池は、一般に、正極板(シート)と負極板(シート)とをセパレータを介して重ね合わせ、それらを積層したり、ロール状に巻いたりして形成される電極構造体を、有機電解液で満たされた有底容器内に装填して製造される。そして、その容器本体の開口部は蓋部材で密閉され、これら容器本体及び蓋部材は、通常硬い金属材料を用いて形成される。このようなリチウムイオン電池において、容器本体内に満たされた有機電解液が漏洩しないようにシールすること、及び正極板と導通する正極端子との接点や、負極板と導通する負極端子との接点には端子間での短絡防止や電解液の漏出防止のためにガスケットが設けられる。このガスケットは、リチウムイオン電池の性能維持や安全性確保のために重要な部品であり、長期的な高い気密性、優れた耐熱性、耐薬品性、電気的絶縁性が要求される。
上記要求性能を満たし得る樹脂組成物として、ポリアリーレンサルファイド樹脂(以下、「PAS樹脂」とも呼ぶ。)を含むものが、耐熱性が高く低コストであるため採用されつつある。そのような樹脂組成物として、例えば、特許文献1には、優れた気密性や耐電解液性を有するガスケット材料として、ポリアリーレンサルファイド樹脂又はテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)樹脂を用いたものが提案されている。
一方、ガスケットは、電池容器内部の気密性・液密性を保つため、一定以上の圧力でかしめられた状態で使用される。そのため、ガスケット材料の剛性が高すぎると容器の変形や破壊が危惧される。従って、ガスケット材料は硬すぎることなく、かしめられた状態でも容器を変形等させない特性(本明細書において「かしめ性」と呼ぶ)を有することも要求されるが、その要求を満たすためにエラストマーを配合したものが提案されている。例えば、特許文献2には、ガスケット用材料として、熱可塑性エラストマー(A)及び所定のポリアリーレンスルフィド樹脂(B)を含有するものが提案されている。
特開平8−321287号公報 特開2011−29167号公報
しかしながら、特許文献1に記載の材料は、電池内部の圧力に対する耐久性が低く、密閉型の電池に要求される性能を満足し得ず材料としては不十分であった。
また、特許文献2に記載されたガスケット用材料(樹脂組成物)は、熱可塑性エラストマーの配合量が多いため流動性が低くなると共に透湿性が高くなるという問題があった。また、ガスケットは、かしめた後でゆるみが生じると液漏れに繋がるため、一定歪みで反発力が抜けにくい特性(本明細書において「反発力保持特性」と呼ぶ)が要求されるが、熱可塑性エラストマーの配合量が多いとその要求を満たすことができない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、リチウムイオン電池等に用いられるガスケット用材料に適した樹脂組成物であって、透湿性及びかしめ性に優れるガスケット用樹脂組成物及び二次電池用ガスケットを提供することを目的とする。
前記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部と、(B)官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)を合計1〜6質量部と、を含むことを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
(2)前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び前記官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の配合比(b1/b2)が、1/1〜1/10であることを特徴とする前記(1)に記載のガスケット用樹脂組成物。
(3)前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)の官能基が、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、酸無水物基、イソシアネート基、エステル基及びビニル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のガスケット用樹脂組成物。
(4)前記前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)がエチレン−オクテン共重合体であり、前記官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)がエチレン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のガスケット用樹脂組成物。
(5)前記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスケット用樹脂組成物を成形してなる二次電池用ガスケット。
本発明によれば、リチウムイオン電池等に用いられるガスケット用材料に適した樹脂組成物であって、透湿性及びかしめ性に優れるガスケット用樹脂組成物及び二次電池用ガスケットを提供することができる。
<ガスケット用樹脂組成物>
本発明のガスケット用樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部と、(B)官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)を合計1〜6質量部と、を含むことを特徴としている。
本発明のガスケット用樹脂組成物は、樹脂成分としてPAS樹脂を含み、エラストマー成分として、官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の2種を併用し、さらにそれら2種の熱可塑性エラストマーの合計配合量をPAS樹脂100質量部に対して1〜6質量部の少量としたものである。すなわち、熱可塑性エラストマーの配合量が多いと流動性が低下すると共に透湿性が高くなり、逆に熱可塑性エラストマーを配合しないと剛性が高くなってかしめ性に劣るため、上記配合量としたのである。また、官能基を有する熱可塑性エラストマーが配合されることで、ポリマーとの反応により流動性が低下する。よって、官能基の有無において異なる2種の熱可塑性エラストマーを併用することで、高流動性、良好なかしめ性、低透湿性を実現するものである。
以下、各成分について詳述する。
[(A)ポリアリーレンサルファイド樹脂(PAS樹脂)]
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本発明では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基などが挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、「PPS樹脂」とも言う。)が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
本発明に使用する基体樹脂としてのPAS樹脂の溶融粘度(310℃・せん断速度1216sec−1)は、上記混合系の場合も含め600Pa・s以下が好ましく、中でも20〜300Pa・sの範囲にあるものは、機械的物性と流動性のバランスが優れており、特に好ましい。
[(B)熱可塑性エラストマー]
本発明においては、熱可塑性エラストマーとしては、官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の2種を併用する。以下に、各熱可塑性エラストマーについて順次説明する。
<官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)>
官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)の官能基としては、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、酸無水物基、イソシアネート基、エステル基、ビニル基が挙げられ、中でも、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、酸無水物基、イソシアネート基、エステル基及びビニル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、さらに、エポキシ基、酸無水物、酸、エステル等のカルボン酸由来の官能基が特に好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(b1)は、例えば、α−オレフィン類と前記官能基を有するビニル重合性化合物類とを共重合することで得られる。α−オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1等の炭素数2〜8のα−オレフィン類等が挙げられる。また、前記官能基を有するビニル重合性化合物類としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類等のα,β―不飽和カルボン酸類及びそのアルキルエステル類、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他炭素原子数4〜10の不飽和ジカルボン酸とそのモノ及びジエステル類、及びその酸無水物等のα,β―不飽和ジカルボン酸及びその無水物、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。同様に、「(メタ)アクリル酸」の表記は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
前記熱可塑性エラストマー(b1)としては、具体的には、エチレン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が好適に使用される。
あるいは、前記官能基を3以上同時に含有した共重合体を用いることができる。例えば、α−オレフィン類、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等のモノマーを重合させた三元共重合体が挙げられる。
<官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)>
官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)としては、例えば、エチレンとα−オレフィン、好ましくは炭素数3〜8のα−オレフィン(ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等)との二元以上の共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−オクテン共重合体が好適に使用される。
官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の配合比(b1/b2)は、高流動性、良好なかしめ性、低透湿性の観点から、1/1〜1/10であることが好ましく、1/2〜1/9であることがより好ましく、1/3〜1/8であることがさらに好ましく、1/4〜1/6であることが最も好ましい。
本発明において、官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の合計配合量は、PAS樹脂100質量部に対して1〜6質量部としているが、1質量部未満ではかしめ性に劣るようになり、6質量部を超えると透湿性に劣るようになる。当該合計配合量は、1.5〜5.75質量部が好ましく、2〜5.5質量部がより好ましい。
本発明のガスケット用樹脂組成物の製造する方法としては、(A)PAS樹脂及び(B)熱可塑性エラストマーを、さらに必要に応じて他の成分をタンブラー又はヘンシェルミキサーなどで均一に混合し、次いで、2軸押出機に投入し、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02〜0.2(kg/hr・rpm)なる条件下に溶融混練する方法が挙げられる。
上記の製造方法についてさらに詳述すれば、前記した各成分を2軸押出機内に投入し、シリンダー温度320℃の温度条件下に溶融混練する方法が挙げられる。この際、樹脂成分の吐出量は回転数150〜250rpmで5〜50kg/hrの範囲となる。中でも特に分散性の点から20〜35kg/hrであることが好ましい。
このようにして溶融混練されたガスケット用樹脂組成物は、通常ペレット状にカッティングされる。また、得られたペレットを成形機に供給して溶融成形することにより、最終的に目的とする形状の成形物が得られる。
ここで溶融成形する方法は、例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられるが、このうち二次電池用ガスケットを成形する方法としては、射出成形が特に好ましい。
本発明のガスケット用樹脂組成物は、上記のようにして成形することで、二次電池用ガスケットに適用することができる。例えば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)等の車載用途に用いられるリチウムイオン二次電池、あるいはノート型パソコン、携帯電話、ビデオカメラ等の電気機器用途、特に高容量リチウムイオン二次電池用のガスケット等に特に有用である。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜9、比較例1〜4]
各実施例・比較例において、表1に示す各原料成分をドライブレンドして得た混合物を、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入し、溶融混練し、ペレット化した。表1に示す各原料成分の詳細を以下に記す。
(1)PPS樹脂
PPS樹脂1:(株)クレハ製、フォートロンKPS W214A(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS W220A(溶融粘度:220Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
東洋精機(株)製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
(2)熱可塑性エラストマー
i)熱可塑性エラストマー(b1)(官能基あり):E/GMA(E/GMA=88/12)、住友化学(株)製 ボンドファーストE
ii)熱可塑性エラストマー(b2)(官能基なし):エチレンオクテン、ダウ・ケミカル日本(株)製 Engage 8003
次いで、上記のようにして得られたペレットを用いて以下の各種評価試験を行った。
[曲げ試験]
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃でISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製し、ISO178に準じて曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率により、かしめ性を評価した。測定結果を表1に示す。
[圧縮応力保持率]
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃で直径5mm×厚み3mmtの試験片を作製し、株式会社オリエンテック製引張クリープ試験機内に小型の籠冶具を作製して据え付けた。これにより、引張方向が圧縮方向へ変換される。サンプルを籠冶具中央に設置後、1mm/minで引張クリープ試験を行い、圧縮荷重が750kgf(7350N)となった段階で停止した。その後の反発力の経時変化について初期荷重に対する1000時間後の保持率を評価した。結果を表1に示す。
[吸水率(透湿性)]
射出成形にて、シリンダー温度320℃、金型温度150℃でISO3167に準じた試験片(幅10mm、厚み4mmt)を作製し、ISO62に準拠して吸水率を評価した。測定結果を表1に示す。
Figure 2014103813
表1より、実施例1〜9においては、曲げ強さ、曲げ弾性率(かしめ性)、圧縮応力保持率、及び吸水率(透湿性)のいずれの評価においても良好な結果が得られたことが分かる。これに対して、熱可塑性エラストマーを全く含まない比較例1及び2においては、曲げ弾性率が大きく、かしめ性が不良であった。また、熱可塑性エラストマーの配合量が多い比較例3及び4は圧縮応力保持率及び透湿性(吸水率)に劣っていた。

Claims (5)

  1. (A)ポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部と、(B)官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)を合計1〜6質量部と、を含むことを特徴とするガスケット用樹脂組成物。
  2. 前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)及び前記官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)の配合比(b1/b2)が、1/1〜1/10であることを特徴とする請求項1に記載のガスケット用樹脂組成物。
  3. 前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)の官能基が、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、酸無水物基、イソシアネート基、エステル基及びビニル基からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット用樹脂組成物。
  4. 前記前記官能基を有する熱可塑性エラストマー(b1)がエチレン−オクテン共重合体であり、前記官能基を有しない熱可塑性エラストマー(b2)がエチレン・グリシジル(メタ)アクリレート共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスケット用樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスケット用樹脂組成物を成形してなる二次電池用ガスケット。
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