JP2019183156A - ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及びインサート成形品 - Google Patents

ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及びインサート成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】タルクとエラストマーとを併用しながらも、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を提供する。【解決手段】所定の溶融粘度のポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体(以下、共重合体)を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、共重合体が、特定の3つの構成単位を含み、共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%、共重合体中0.3〜2.4質量%であり、ガラス繊維が、異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維のみからなり、タルクを15〜50質量部含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアリーレンサルファイド樹脂を含む樹脂組成物及びインサート成形品に関する。
ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下「PPS樹脂」と呼ぶ場合がある)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS樹脂」と呼ぶ場合がある)は、高い耐熱性、機械的物性、耐化学薬品性、寸法安定性、難燃性を有していることから、電気・電子機器部品材料、自動車機器部品材料、化学機器部品材料等に広く使用されている。
このようなPAS樹脂は、上記のような優れた性能を有するものの、エポキシ樹脂やエポキシにより変性した樹脂等との接着性に劣るためその接着性を向上させるため種々の検討がなされている。例えば、特許文献1〜4においては、PAS樹脂を含む樹脂組成物に、タルク及びエポキシ樹脂のいずれか又は両方を配合することで接着性の向上を図っている。
一方、PAS樹脂において、PAS樹脂単独では、靱性に乏しく脆弱であり、例えばインサート成形品の高温と低温とに交互に晒される場合の耐久性、いわゆる耐ヒートショック性(耐高低温衝撃性)に劣ることが知られている。樹脂組成物において、耐ヒートショック性の向上を図るために、PAS樹脂に限らずエラストマー(α−オレフィン系重合体)を添加することが一般的に行われている(例えば、特許文献5〜7参照)。
また、エポキシ樹脂との接着性の向上と、耐ヒートショック性の向上との両立を図るため、タルクとエラストマーとを併用することが提案されている(例えば、特許文献8参照)。ところが、タルクとエラストマーとを併用した場合、エラストマーの量が多いと接着性が向上しないという問題があった。接着性が向上しない問題については、エポキシ樹脂を添加することにより解決できることが確認されている。
特開2009−179757号公報 特開2005−306926号公報 特許第4614024号公報 特開2001−278951号公報 特開2002−129014号公報 特開2008−214383号公報 特開2005−161693号公報 特許第2801788号公報
しかしながら、PAS樹脂を含む樹脂組成物にエポキシ樹脂を添加すると、当該樹脂組成物は成形機内で滞留したときに増粘するという問題が生じる傾向にある。エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性に優れながらも、成形機内における滞留安定性を確保し得る樹脂組成物を得ることは容易ではない。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、タルクとエラストマーとを併用しながらも、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及び該ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を用いたインサート成形品を提供することにある。
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
(1)温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が5〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、
エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、
エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、
ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維のみからなり、
タルクを15〜50質量部含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(2)温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が24〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、
エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、
エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、
ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維と、前記異径比が1.5以下である円形の断面形状を有する円形ガラス繊維とを含み、
扁平ガラス繊維を25〜50質量部、円形ガラス繊維を30〜50質量部、及びタルクを15〜50質量部含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(3)エチレン・α−オレフィン系共重合体及びα−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体をさらに含む、前記(1)又は(2)に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を含む樹脂部材と、金属、合金又は無機固体物を含むインサート部材とを有する、インサート成形品。
本発明によれば、タルクとエラストマーとを併用しながらも、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができるポリアリーレンサルファイド樹脂組成物及び該ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を用いたインサート成形品を提供することができる。
引張試験に用いた試験片を模式的に示す図である。 図1の試験片を用いた引張試験を模式的に示す図である。
<ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物>
第1の実施形態のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物(PAS樹脂組成物)は、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が5〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維のみからなり、タルクを15〜50質量部含むことを特徴としている。
また、第2の実施形態のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物は、温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が24〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維と、前記異径比が1.5以下である円形の断面形状を有する円形ガラス繊維とを含み、扁平ガラス繊維を25〜50質量部、円形ガラス繊維を30〜50質量部、及びタルクを15〜50質量部含むことを特徴としている。
第1及び第2の実施形態のPAS樹脂組成物において大きな違いはガラス繊維である。すなわち、第1の実施形態においては、ガラス繊維として扁平ガラス繊維のみを用いるのに対し、第2の実施形態においては、ガラス繊維として扁平ガラス繊維と円形ガラス繊維とを併用して用いる。
上述の通り、PAS樹脂組成物において、エポキシ樹脂との接着性の向上と、耐ヒートショック性の向上との両立を図るためにタルクとエラストマーとを併用する場合、エラストマーの量が多いと接着性が向上しないという問題がある。接着性が向上しない問題については、エポキシ樹脂を添加することにより解決可能であるが、そうすると成形機内で滞留したときに樹脂組成物が増粘するという問題が生じやすい。そこで、本実施形態の樹脂組成物においては、いずれの形態においても、エラストマー(エポキシ基含有オレフィン系共重合体)の含有量をPAS樹脂100質量部に対して13.5質量部以下に減じて接着性低下を抑制し、かつ、エポキシ樹脂を添加しないことで、成形機内で滞留したときの樹脂組成物の増粘を抑制している。このように、エラストマーの含有量を減じ、かつ、エポキシ樹脂を添加しないことによる効果によって接着性向上と滞留安定性を確保している。そして、エラストマー(エポキシ基含有オレフィン系共重合体)の減少に伴う耐ヒートショック性の低下は扁平ガラスを添加することにより回避している。つまり、本実施形態のPAS樹脂組成物は、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができる。
以下に、各実施形態のPAS樹脂組成物の各成分について説明する。なお、以下において、特に示さない限り、第1及び第2の実施形態において共通する内容である。また、以下において、「本実施形態」と記した場合、第1及び第2の実施形態の双方を指すものとする。
[ポリアリーレンサルファイド樹脂]
PAS樹脂は、機械的性質、電気的性質、耐熱性その他物理的・化学的特性に優れ、且つ加工性が良好であるという特徴を有する。
PAS樹脂は、主として、繰返し単位として−(Ar−S)−(但しArはアリーレン基)で構成された高分子化合物であり、本実施形態では一般的に知られている分子構造のPAS樹脂を使用することができる。
上記アリーレン基としては、例えば、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、置換フェニレン基、p,p’−ジフェニレンスルフォン基、p,p’−ビフェニレン基、p,p’−ジフェニレンエーテル基、p,p’−ジフェニレンカルボニル基、ナフタレン基等が挙げられる。PAS樹脂は、上記繰返し単位のみからなるホモポリマーでもよいし、下記の異種繰返し単位を含んだコポリマーが加工性等の点から好ましい場合もある。
ホモポリマーとしては、アリーレン基としてp−フェニレン基を用いた、p−フェニレンサルファイド基を繰返し単位とするポリフェニレンサルファイド樹脂が好ましく用いられる。また、コポリマーとしては、前記のアリーレン基からなるアリーレンサルファイド基の中で、相異なる2種以上の組み合わせが使用できるが、中でもp−フェニレンサルファイド基とm−フェニレンサルファイド基を含む組み合わせが特に好ましく用いられる。この中で、p−フェニレンサルファイド基を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含むものが、耐熱性、成形性、機械的特性等の物性上の点から適当である。また、これらのPAS樹脂の中で、2官能性ハロゲン芳香族化合物を主体とするモノマーから縮重合によって得られる実質的に直鎖状構造の高分子量ポリマーが、特に好ましく使用できる。尚、本実施形態に用いるPAS樹脂は、異なる2種類以上の分子量のPAS樹脂を混合して用いてもよい。
尚、直鎖状構造のPAS樹脂以外にも、縮重合させるときに、3個以上のハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物等のモノマーを少量用いて、部分的に分岐構造または架橋構造を形成させたポリマーや、低分子量の直鎖状構造ポリマーを酸素等の存在下、高温で加熱して酸化架橋または熱架橋により溶融粘度を上昇させ、成形加工性を改良したポリマーも挙げられる。
温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定したPAS樹脂の溶融粘度(以下、単に「溶融粘度」と呼ぶことがある。)は各実施形態において異なる。第1の実施形態においては、溶融粘度5〜55Pa・sのPAS樹脂を使用するのに対し、第2の実施形態においては、溶融粘度24〜55Pa・sのPAS樹脂を使用する。各実施形態において、PAS樹脂の溶融粘度の下限が異なるのは以下の理由による。すなわち、扁平ガラス繊維は量産時に毛綿が発生することがあり、成形時にフィード不良が発生することが懸念されるところ、円形ガラス繊維と併用することによりフィード不良を低減することができる。ところが、扁平ガラス繊維と円形ガラス繊維とを併用する、つまり扁平ガラス繊維を相対的に減らすと耐ヒートショック性の向上効果が小さくなることがある。そこで、扁平ガラス繊維と円形ガラス繊維とを併用する第2の実施形態においてはPAS樹脂の溶融粘度の下限を24Pa・sと大きくし、耐ヒートショック性の低下を抑えている。
PAS樹脂の溶融粘度は、第1の実施形態においては15〜50Pa・sが好ましく、第2の実施形態においては29〜50Pa・sが好ましい。
[ガラス繊維]
第1の実施形態においては、ガラス繊維は、断面が扁平形状の扁平ガラス繊維のみからなる。一方、第2の実施形態においては、ガラス繊維は、断面が扁平形状の扁平ガラス繊維と、断面が円形状の円形ガラス繊維とが併用される。そして、上述の通り、いずれの形態においてもエポキシ基含有オレフィン系共重合体の減少に伴う耐ヒートショック性の低下を、扁平ガラスを添加することにより回避している。以下に、各ガラス繊維について説明する。
〈扁平ガラス繊維〉
扁平ガラス繊維は、繊維の長さ方向と直交する面で切断した断面の形状が扁平(異形)のものをいう。また、扁平(異形)とは、断面の形状の中心点を通る長径(d1;最大長)と、中心点を通る短径(d2;最小長)の比(扁平率d1/d2)が3.0以上である形状をいう。扁平ガラス繊維の異径比(扁平率)は、好ましくは、3.5以上、より好ましくは、3.8以上である。異径比(扁平率)の上限値は、10.0以下であり、好ましくは、8.0以下であり、より好ましくは、6.0以下である。扁平(異形)形状の具体例としては、長円型、楕円型等を挙げることができる。なお、本実施形態において、扁平形状として、まゆ型及びひょうたん型は含まないものとする。
扁平ガラス繊維の断面積は、製造しやすさ及び耐ヒートショック性の低下抑制効果をより高める点で、1×10−5〜1×10−3mmであることが好ましく、1×10−4〜5×10−4mmであることがより好ましい。扁平ガラス繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、成形品の機械的物性、成形加工性等を考慮し、成形品内の平均繊維長で50〜1000μmが好ましい。「平均繊維長」は、数十本程度の繊維片の長さの平均値である。また、樹脂組成物の比重を小さくする等の目的で、扁平ガラス繊維として中空の繊維を使用することも可能である。
扁平ガラス繊維は、一般的に知られているエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物、脂肪酸等の各種表面処理剤により表面処理されていてもよい。表面処理により、PAS樹脂との密着性を向上させることができる。表面処理剤は、材料調製の前に予め扁平ガラス繊維に適用して表面処理又は収束処理を施しておくか、または材料調製の際に同時に添加してもよい。
本発明において使用可能な扁平ガラス繊維として、上市しているものとしては、例えば、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド(CSG 3PA―830、d1:28μm、d2:7μm)、日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド(CSG 3PA―820、d1:28μm、d2:7μm)等が挙げられる。
〈円形ガラス繊維〉
円形ガラス繊維は、繊維の長さ方向と直交する面で切断した断面の形状が円形のものをいう。また、円形とは、断面の形状の中心点を通る長径(d1;最大長)と、中心点を通る短径(d2;最小長)の比(異径比d1/d2)が1.5以下である形状をいう。
円形ガラス繊維の異径比は、好ましくは、1.0以上、1.3以下である。当該円形ガラス繊維は、第2の実施形態において扁平ガラスと併用されるものであり、第1の実施形態には含まれない。すなわち、上述の通り、扁平ガラス繊維を単独で使用した場合に懸念される、成形時のフィード不良の発生を低減するため、円形ガラス繊維は扁平ガラス繊維と併用される。
円形ガラス繊維の断面積は、製造しやすさ及び上記のようなフィード不良の発生を低減する観点から、1×10−5〜1×10−3mmであることが好ましく、2×10−5〜8×10−3mmであることがより好ましい。円形ガラス繊維の平均繊維長は、特に限定されないが、成形品の機械的物性、成形加工性等を考慮し、成形品内の平均繊維長で50〜1000μmが好ましい。「平均繊維長」は、上記のとおりである。円形ガラス繊維としては、扁平ガラス繊維と同様に、中空の繊維を使用することも可能である。円形ガラス繊維に対して必要に応じて行う表面処理についても、上記した扁平ガラス繊維と同じであるので、ここでは記載を省略する。
本発明において使用可能な円形ガラス繊維として、上市しているものとしては、例えば、日本電気硝子(株)製、チョップドストランド(ECS03T−747、d1:13μm、d2:13μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドストランド(ECS03T−747H、d1:10.5μm、d2:10.5μm)、日本電気硝子(株)製、チョップドストランド(ECS03T−790DE、d1:6μm、d2:6μm)、富士ファイバーグラス(株)製、チョップドガラス繊維(CS 3DE−257、d1:6μm、d2:6μm)、オーウェンスコーニング製造(株)製、チョップドガラス繊維(CS03DE 416A、d1:6μm、d2:6μm)等が挙げられる。
第2の実施形態において、扁平ガラス繊維は、扁平ガラス繊維及び円形ガラス繊維の合計の30質量%以上含むことが好ましく、40質量%以上含むことがより好ましい。
(タルク)
タルクは、ケイ酸塩鉱物の一種であり、水酸化マグネシウム及びケイ酸塩等を含み、エポキシ樹脂との接着性を向上させるために使用される。
本実施形態において、前記タルクの、レーザー回折法で測定した平均粒子径(D50%)は、そり変形の防止及び流動性の維持という観点から、4〜20μmであることが好ましく、10〜18μmであることがより好ましい。
上記タルクとしては松村産業(株)製クラウンタルクPP及び日本タルク(株)製MS−K等の市販品を使用することができる。
本実施形態において、PAS樹脂100質量部に対して、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部含み、90〜120質量部含むことが好ましい。ガラス繊維及びタルクが合計80質量部未満ではエポキシ樹脂との接着性に劣る傾向があり、150質量部を超えると、機械的強度や耐ヒートショック性が低下しやすい。
一方、第1の実施形態においては、ガラス繊維及びタルクの合計80〜150質量部中において、タルクを15〜50質量部含み、20〜40質量部含むことが好ましい。タルクが15質量部未満では、エポキシ樹脂との接着性に劣る傾向があり、50質量部を超えると、機械的強度や耐ヒートショック性が低下しやすい。
第2の実施形態においては、ガラス繊維及びタルクの合計80〜150質量部中において、扁平ガラス繊維を25〜50質量部、円形ガラス繊維を30〜50質量部、タルクを15〜50質量部含む。扁平ガラス繊維が25質量部未満では、耐ヒートショック性の向上の効果が得られにくく、50質量部を超えると、成形時にフィード不良が発生しやすい。また、円形ガラス繊維が30質量部未満では、相対的に扁平ガラス繊維が多くなり成形時にフィード不良が発生しやすく、50質量部を超えると、相対的に扁平ガラス繊維が少なくなり、耐ヒートショック性の向上の効果が得られにくくなる。さらに、タルクが15質量部未満であると、エポキシ樹脂との接着性に劣る傾向があり、50質量部を超えると、機械的強度や耐ヒートショック性が低下しやすい。扁平ガラス繊維は30〜50質量部含むことが好ましく、円形ガラス繊維は40〜50質量部含むことが好ましく、タルクは20〜40質量部含むことが好ましい。
[エポキシ基含有オレフィン系共重合体]
本実施形態において、エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、耐ヒートショック性を向上させるために使用され、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含む。エポキシ基含有オレフィン系共重合体が上記3つの構成単位を含む場合、熱安定性が良く、成形機内で滞留したときでも分解が起こりにくいため好ましい。エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
以下、各構成単位について説明する。なお、以下、(メタ)アクリル酸エステルを(メタ)アクリレートともいう。例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルエステルをグリシジル(メタ)アクリレートともいう。また、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートとの両方を意味する。
(α−オレフィン由来の構成単位)
α−オレフィンとしては、特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられ、特にエチレンが好ましい。α−オレフィンは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。α−オレフィンに由来する共重合成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中1質量%以上8質量%以下とすることができる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体がα−オレフィン由来の構成単位を共重合成分として含むことで、樹脂部材には可撓性が付与されやすい。可撓性の付与により樹脂部材が軟らかくなることは、耐ヒートショック性の改善に寄与する。
(α,β−不飽和酸のグリシジルエステル由来の構成単位)
α,β−不飽和酸のグリシジルエステルとしては、特に限定されず、例えば、以下の一般式(1)に示される構造を有するものを挙げることができる。
Figure 2019183156

(但し、Rは、水素又は炭素原子数1以上10以下のアルキル基を示す。)
上記一般式(1)で示される化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等が挙げられ、特にメタクリル酸グリシジルエステルが好ましい。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する共重合成分の含有量は、エポキシ基含有量として算出したときに、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%である。当該エポキシ基含有量は、全樹脂組成物中においては、好ましくは0.020〜0.10質量%であり、更に好ましくは0.030〜0.10質量%である。また、当該エポキシ基含有量は、エポキシ基含有オレフィン系共重合体中においては、好ましくは0.6〜2.1質量%であり、更に好ましくは0.7〜2.0質量%である。α,β−不飽和酸のグリシジルエステルに由来する共重合成分の含有量が上記範囲である場合、エポキシ樹脂との接着性低下を抑制することができ、また、成形機内における滞留安定性を確保することができる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体がα,β−不飽和酸のグリシジルエステルを共重合成分として含むことで、α−オレフィン系共重合体とPAS樹脂との相溶性が高まり、耐ヒートショック性が向上する効果が得られやすい。尚、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を2種以上併用した場合のエポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量は、2種以上を混合した後のオレフィン系共重合体全量中のエポキシ基含有量である。
((メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位)
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−オクチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−アミル、メタクリル酸−n−オクチル等のメタクリル酸エステルが挙げられる。中でも、特にアクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で使用することもでき、2種以上を併用することもできる。(メタ)アクリル酸エステルに由来する共重合成分の含有量は、特に限定されないが、例えば、全樹脂組成物中0.5質量%以上3質量%以下とすることができる。(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位は、耐ヒートショック性の向上に寄与する。
エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、従来公知の方法で共重合を行うことにより製造することができる。例えば、通常よく知られたラジカル重合反応により共重合を行うことによって、上記エポキシ基含有オレフィン系共重合体を得ることができる。エポキシ基含有オレフィン系共重合体の種類は、特に問われず、例えば、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態に用いるエポキシ基含有オレフィン系共重合体は、本発明の効果を害さない範囲で、他の共重合成分由来の構成単位を含有することができる。
より具体的には、エポキシ基含有オレフィン系共重合体としては、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−エチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−プロピルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体等が挙げられ、中でも、エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体が好ましい。エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体の具体例としては、「ボンドファースト」(住友化学(株)製)等が挙げられる。
本実施形態のPAS樹脂組成物において、エポキシ基含有オレフィン系共重合体の含有量は、PAS樹脂100質量部に対して3.0〜13.5質量部であり、耐ヒートショック性と成形機内における滞留安定性とのバランスの観点から、4.0〜13.5質量部が好ましく、4.0〜13.0質量部がより好ましい。
本実施形態のPAS樹脂組成物においては、耐ヒートショック性の更なる向上のため、エチレン・α−オレフィン系共重合体及びα−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体をさらに含むことが好ましい。そのようなオレフィン系共重合体としては、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体等のエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体や、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体等のエチレンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン系共重合体及びα−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体の含有量は、PAS樹脂100質量部に対して0〜10質量部が好ましい。
[他の成分]
本実施形態においては、その効果を害さない範囲で、上記各成分の他、その目的に応じた所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ちバリ抑制剤、離型剤、潤滑剤、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤、結晶化促進剤、結晶核剤、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤、その他の樹脂等の高分子、タルク以外の非繊維状フィラー等を配合してもよい。なお、本実施形態のPAS樹脂組成物には、上記の通りエポキシ樹脂を添加しないが、本実施形態の効果を害さない範囲で含むことは構わない。その場合、エポキシ樹脂の含有量は、PAS樹脂100質量部に対して3質量部未満である。
本実施形態のPAS樹脂組成物成形品の接着の対象となるエポキシ樹脂は、特に限定されるものではなく、通常、封止剤又は接着剤、塗料等として使用される硬化性のエポキシ系樹脂であればよい。一般にはビスフェノールA等の如き活性水素化合物とエピクロールヒドリンとの反応、又は二重結合化合物の酸化等によって得られるエポキシ基を有する有機化合物に硬化剤又は触媒の存在下、室温下で放置又は加熱することによって反応し硬化する物質である。当該物質は、目的に応じ各種の粘度のものを用いることができる。また、本実施形態のPAS樹脂組成物成形品は上部の如きエポキシ系樹脂の塗料による塗装に対してもその接着性に効果を有する。
<インサート成形品>
インサート成形により、以上の本実施形態のPAS樹脂組成物を含む樹脂部材と、金属、合金又は無機固体物とを含むインサート部材とを有するインサート成形品とすることができる。
本実施形態のインサート成形品は、本実施形態のPAS樹脂組成物を用いるため、エポキシ樹脂との接着性と、耐ヒートショック性と、成形機内での滞留安定性とに優れる。
本実施形態のインサート成形品は、成形用金型に金属等をあらかじめ装着し、その外側に上記配合のPAS樹脂組成物を充填して複合成形品としたものである。樹脂を金型に充填するための成形法としては射出、押出圧縮成形法等があるが、射出成形法が一般的である。また、樹脂にインサートする素材は、その特性を生かし且つ樹脂の欠点を補う目的で使用されるため、成形時に樹脂と接触したとき、形が変化したり溶融したりしないものが使用される。このため、主としてアルミニウム、マグネシウム、銅、鉄、真鍮及びそれらの合金等の金属類やガラス、セラミックスのような無機固体物であらかじめ平板状、棒、ピン、ネジ等に成形されているものが使用される。
本実施形態のインサート成形品は、耐ヒートショック性が要求される部材に適用することができる。このような部材としては、例えば、イグニッション関連部品、ディストリビューター部品、各種センサー部品、各種アクチュエーター部品、スロットル部品、パワーモジュール部品、ECU部品、各種コネクタ部品等が挙げられる。
以下、実施例により本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
[実施例1〜10、比較例1〜6](第1の実施形態)
各実施例・比較例において、表1、表2に示す各原料成分をドライブレンドした後、シリンダー温度320℃の二軸押出機に投入して(フィラーは押出機のサイドフィード部より別添加)、溶融混練し、ペレット化した。なお、表1、表2において、各成分の数値は質量部を示す。
また、使用した各原料成分の詳細を以下に示す。
(A)PAS樹脂
・PPS樹脂1:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:20Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
・PPS樹脂2:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:29Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
・PPS樹脂3:(株)クレハ製、フォートロンKPS(溶融粘度:130Pa・s(せん断速度:1216sec−1、310℃))
なお、上記PPS樹脂の溶融粘度は以下のようにして測定した。
(PPS樹脂の溶融粘度の測定)
東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1216sec−1での溶融粘度を測定した。
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体
・E−GMA−MA1:住友化学(株)製、ボンドファースト(登録商標)BF−7M(エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体)
・E−GMA−MA2:住友化学(株)製、ボンドファースト(登録商標)BF−7L(エチレン−グリシジルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体)
・E−GMA−g−BA−MMA:日油(株)製、モディパーA4300(製品名)(エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体70質量部にメチルメタクリレート−ブチルアクリレート共重合体30質量部をグラフト重合させた共重合体)
(C)α−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体
・EEA:(株)NUC製、NUC−6570(エチレン−エチルアクリレート共重合体)
(D)エチレン・α−オレフィン系共重合体
・エチレンオクテン(エチレン/オクテン共重合体):ダウ・ケミカル日本(株)製、Engage 8003
(E)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂:三菱化学(株)製、エピコートJER1004K
(F)フィラー
・扁平ガラス繊維:日東紡績(株)製、異形断面チョップドストランド CSG 3PA−830(d1:28μm,d2:7μm)
・円形ガラス繊維:日本電気硝子(株)製、チョップドストランド ECS03T−747H(d1:10.5μm、d2:10.5μm)
・タルク:松村産業(株)製、クラウンタルクPP(平均粒子径(D50%)14μm)
・炭酸カルシウム:旭鉱末(株)製、ミクロンカルMC−35W、平均粒子径25μm
Figure 2019183156
Figure 2019183156
[評価]
(1)接着強度
各実施例・比較例で得たペレットを用い、射出成形により、シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で厚み4mmのダンベル型引張試験片(ISO多目的試験片 A形)を成形した。
次いで、成形したダンベル型引張試験片を長手方向中央で切断し、同一形状を有する一対の試験片を得た。その後、一対の試験片の切断部近傍の接着面をイソプロパノールで拭き取った。さらにその後、一対の試験片にPTFEシート(日東電工(株)製、ニトフロン粘着テープ、No.903UL 0.08mmt)2枚を、図1において網掛けで示す領域(2箇所)に貼付した。PTFE2枚の間の領域が接着領域であり、その領域に、エポキシ接着剤(ナガセケムテックス(株)製、XN1244SR)を所定の面積(12.5mm×20.0mm)に塗布し、一対の試験片の接着剤塗布領域同士を貼付し、150℃で1時間硬化させた。
硬化後、JIS K 6850の引張せん断試験に従い、試験速度5mm/分で両端を引っ張り(図2参照)、接着強度(MPa)を測定した。接着強度が5.0MPa以上である場合にエポキシ樹脂との接着性が優れている。
尚、上記接着試験は、一対の試験片を5組(n=5)使用して5回の試験を行い、5回の平均値を求めた。
(2)耐ヒートショック性
各実施例・比較例で得たペレットと金属製のインサート部材(8mm×23mm×40mm)とを用い、射出成形によりシリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で、樹脂部の肉厚が1mmとなるようにインサート射出成形し、インサート成形品を製造し試験片とした。この試験片について、冷熱衝撃試験機(エスペック(株)製)を用い、140℃にて0.5時間加熱後、−40℃に降温して0.5時間冷却後、さらに140℃に昇温する過程を1サイクルとする高低温衝撃試験を行い、成形品にクラックが入るまでのサイクル数を測定した。クラックが発生したときのサイクル数を高低温衝撃性の指標として評価した。サイクル数が30以上である場合に耐ヒートショック性が優れている。
(3)滞留安定性
各実施例・比較例で得たペレット状の樹脂組成物について、東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmLのフラットダイを使用し、バレル温度310℃、せん断速度1000sec−1の条件で、バレル内で5分間保持後(5分滞留)と30分間保持後(30分滞留)とのそれぞれについて、溶融粘度を測定した。そして、5分滞留の測定値を100%として30分滞留での増粘倍率を計算した。110%以下の場合、滞留安定性が優れている。
表1、表2より、実施例1〜10においては、接着強度、耐ヒートショック性、及び滞留性のいずれの評価も良好な結果であった。すなわち、実施例1〜10においては、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができたことが分かる。
これに対して、比較例1〜6は、接着強度、耐ヒートショック性、及び滞留性のすべてを同時に満足させることができなかった。
[実施例11〜21、比較例7〜12](第2の実施形態)
原料成分を表3、表4に示す成分に変更したこと以外は上記の実施例1等と同様にしてペレットを得た。なお、実施例1等で使用していないE−GMAは以下の通りである。
・E−GMA:住友化学(株)製、ボンドファースト(登録商標)BF−2C(エチレン−グリシジルジメタクリレート共重合体)
Figure 2019183156
Figure 2019183156
表3、表4より、実施例11〜21においては、接着強度、耐ヒートショック性、及び滞留性のいずれの評価も良好な結果であった。すなわち、実施例11〜21においては、エポキシ樹脂との接着性及び耐ヒートショック性を向上させつつ、成形機内における滞留安定性を確保することができたことが分かる。
これに対して、比較例7〜12は、接着強度、耐ヒートショック性、及び滞留性のすべてを同時に満足させることができなかった。

Claims (4)

  1. 温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が5〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、
    前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、
    前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、
    前記ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維のみからなり、
    前記タルクを15〜50質量部含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  2. 温度310℃及びせん断速度1216sec−1で測定した溶融粘度が24〜55Pa・sのポリアリーレンサルファイド樹脂100質量部に対して、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を3.0〜13.5質量部と、ガラス繊維及びタルクを合計80〜150質量部とを含み、
    前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体が、α−オレフィン由来の構成単位、α,β−不飽和酸グリシジルエステル由来の構成単位、及び(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含み、
    前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中のエポキシ基含有量が、全樹脂組成物中0.010〜0.10質量%であり、かつ、前記エポキシ基含有オレフィン系共重合体中0.3〜2.4質量%であり、
    前記ガラス繊維が、長手方向に直角な断面の長径と短径との比である異径比が3.0以上である扁平な断面形状を有する扁平ガラス繊維と、前記異径比が1.5以下である円形の断面形状を有する円形ガラス繊維とを含み、
    前記扁平ガラス繊維を25〜50質量部、前記円形ガラス繊維を30〜50質量部、及び前記タルクを15〜50質量部含む、ポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  3. エチレン・α−オレフィン系共重合体及びα−オレフィン由来の構成単位とα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル由来の構成単位とを含有するオレフィン系共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のオレフィン系共重合体をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアリーレンサルファイド樹脂組成物を含む樹脂部材と、金属、合金又は無機固体物を含むインサート部材とを有する、インサート成形品。
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