本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係り、特に冷却用ファンモータを備えた磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging、以下MRIと記す)装置は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMRと記す)現象を利用して被検体中の所望の検査部位から発せられる信号を計測し、前記検査部位における核スピンの密度分布や緩和時間分布などを、断層像などとして画像表示する装置である。
従来のMRI装置では、例えば水平型超電導磁界発生装置においては被検体が計測されるための計測域を形成する空間がガントリの中央部に形成され、その空間の外側に照射コイルや傾斜磁場コイルおよび静磁場発生装置などが配置されている。
近年、MRI装置の高機能化が進んでいる。これに伴い前記照射コイルに係る負荷が大きくなり、発熱量が増大する傾向にある。前記照射コイルを冷却するために空冷用ファンが用いられる。このような空冷用送風機を備えたMRI装置の一例は、(特許文献1)に記載されている。
上述したようにMRI装置は高機能化が望まれていて、計測域での磁場の質向上が益々重要となってきている。ファンモータは磁界を発生させて回転トルクを発生する構造を備えているため、ファンモータが発生する磁場がMRI装置の画質劣化において無視できない状態になってきている。
特許文献1では、冷却対象から非常に離れた位置に、例えばMRI装置の外カバーから突出した位置に、冷却用送風機が配置されている。なお、特許文献1の図8などでは前記外カバーを大きくして外カバーの天井側外周部に前記冷却用送風機を配置している。この場合には、ヘリウム冷却用冷凍機を覆うように前記外カバーを大きくしている。このようにMRI装置の計測用空間から非常に遠ざけた位置に前記送風機を配置すれば前記送風機による磁気的な影響を低減できるが、前記送風機が冷却すべき部分から非常に遠くなる問題がある。
MRI装置の磁場発生装置から非常に遠ざけた位置にファンモータを配置するのではなく、MRI装置の計測用磁場が漏洩する位置にファンモータを配置しているにも関わらず、MRI装置の計測に対するファンモータの影響をより低減することができることが望ましい。言い換えるとMRI装置の計測用磁場が漏洩する位置にファンモータを配置しているにも関わらず、計測された画像の前記ファンモータによる画質低下を抑制できることが望ましい。
本発明の目的は、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減でき、画質の低下を抑制できるMRI装置及び冷却用ファンモータの運転方法を提供することである。
上記課題を解決するために、1つの発明は、被検体が入る筒状の空間を有して該空間に静磁場を発生する静磁場発生用磁石と傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生コイルと高周波信号を照射する照射コイルとを備えるガントリと、前記被検体を載置するテーブルと、表示装置を含む入出力装置と、を有し、前記筒状の空間の長軸方向に沿って伸びると共に前記静磁場発生用磁石の水平方向における中央に位置する中心軸又は該中心軸を通る垂直面に対して略対称に配置された少なくとも一対の冷却用ファンモータが設けられている、ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
また、上記課題を解決するために、他の発明は、被検体が入る筒状の空間を有して該空間に静磁場を発生する静磁場発生用磁石と、傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生コイルと高周波信号を照射する照射コイルとを備えるガントリと、前記被検体を載置するテーブルと、表示装置を含む入出力装置と、を有し、前記筒状の空間の長軸方向に沿って伸びると共に前記静磁場発生用磁石の水平方向における中央に位置する中心軸又は該中心軸を通る垂直面に対して略対称に配置された少なくとも一対の冷却用ファンモータが設けられている、磁気共鳴イメージング装置の冷却用ファンモータの運転方法であって、前記対単位で前記冷却用ファンモータの運転開始、あるいは運転停止を行う、ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の冷却用ファンモータの運転方法を提供する。
本発明によれば、ファンモータを磁場発生装置の磁場が漏洩している場所に配置しているにも関わらず、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減でき、画質の低下を抑制できるMRI装置を提供することができる。
本発明の一実施例である磁気共鳴イメージング装置の全体斜視図
ファンモータに対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
ファンモータの変動磁場に対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
ファンモータの変動磁場の向きに対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
超電導磁石の漏れ磁束とファンモータの向きとの関係を説明する説明図
超電導磁石上のファンモータの別の向きと位置を示す図
円筒状ファントムをAX断面で観察したときの画質劣化を説明した図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石と2つのファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石と対のファンモータの動作パターンを示す図
モータシールドを示す図
ファンモータの駆動周波数を変化させたときの画像変化を示す図
ファンモータの駆動周波数を変化させる構成ブロック図
交流電力発生用インバータおよび交流電力供給用スイッチの制御を行うためのフローチャート
以下、本発明の実施形態(以下実施例と記す)を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明に係るMRI装置の一例の全体斜視図である。MRI装置100は、被検体が入る空間208を中央部に有するガントリ200と、被検体の検査部位からNMR現象に基づいて発生する信号を受信する受信装置30と、前記200に設けられた計測用機器を制御すると共に受信装置30が受信した信号に基づいて検査部位の断層像などの画像を構成する制御処理装置60と、被検体を載置するテーブル50と、入出力装置80を有している。入出力装置80は表示装置70を有しており、表示装置70は制御処理装置60で再構成された断層像表示すると共にその他必要な情報の表示を行う。
ガントリ200は、前記超電導コイルや前記傾斜磁場コイルおよび前記照射コイルを有し、空間208内にNMR現象を利用できる計測空間を形成する。テーブル50に載置された被検体を空間208に送り込み、ガントリ200内に設けられた前記超電導コイルと前記傾斜磁場コイルにより計測用磁界を発生すると共に照射コイルから高周波信号を前記被検体の検査部位に加えることにより、NMR現象に基づく前記検査部位からの信号を受信装置30で受信し、受信した信号に基づいて前記検査部位の断層像が制御処理装置60により再構成され、前記断層像が入出力装置80の表示装置70に表示される。
ガントリ200は最外部をカバー202で覆っている。このカバー202は美観および安全上の理由により設置されている。カバー202の内部には、前記超電導コイルや前記傾斜磁場コイル、前記照射コイルが配置されている。これらのコイルについては図4に記載する。受信装置30は核磁気共鳴により被検体が発する信号を受信するものである。テーブル50はガントリ200に隣接した位置に配置されている。ガントリ200の外側でテーブル50に被検体を載置し、受信装置30を計測対象部に取り付けた状態で、テーブル50は前記被検体を計測空間に搬送する。信号処理装置60は受信装置30で検出した信号を用いて画像再構成のための演算を行い、構成された画像は、入出力装置80に設けられた表示装置70に表示したり、図示していない記憶装置に記憶したりする。
本実施例では、空間208の長手方向をZ軸とし、水平方向をX軸、垂直方向をY軸として以下説明する。ガントリ200やテーブル50はMRI検査用部屋内に配置され、部屋の仕切りを介して外側に操作用の入出力装置80や制御および色々な処理のための制御処理装置60が配置されている。
ガントリ200内部の超電導コイルや傾斜磁場コイル、照射コイルの配置関係の一例を図5や図6に記載しており、図5や図6については以下で詳述するが、ここではこれらの図を用いて超電導コイル22や傾斜磁場コイル36、照射コイル38の配置関係について説明する。図5や図6は空間208の長手方向の中心軸である超電導磁石の長軸中心軸23の方向、すなわちZ軸に沿って、さらに水平面であるX軸に沿った断面図の一部である。空間208はカバー202の内側部分で形成されており、空間208の外側に高周波信号を被検体の検査部位に照射する照射コイル38が配置され、照射コイル38の外側に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル36が配置され、さらにその外側に超電導磁石21が配置されている。
超電導磁石21は、複数の超電導コイル22を有するヘリウム容器26と輻射シールド27と真空容器28を有している。ヘリウム容器26内には超電導コイル22を冷却して超電導状態に維持するために液体ヘリウムが充填させており、前記液体ヘリウムを低温に維持するために、図1に示す如くカバー202から上方向に突出しているカバー206の内部に冷凍機が収納されている。本実施例では、ガントリ200のカバー206が突出しているので、カバー202を超電導磁石21の外周に近接して設けることができ、カバー202は、超電導磁石21の外周に沿うように形成された略円弧状の形を有している。
MRI装置100が動作している間、被検体に隣接して照射コイル38には大電流が流れ続けるため、照射コイル38が発熱する。IECの規定より被検体接触部は41℃以下に維持しなければならないと定められており、本実施例では照射コイル38を冷却するための空冷手段が設けられている。また、被検体は狭い空間208内に長時間いるため自らの発熱により被検体周辺の空気が熱せられ、熱せられた空気が被検体周囲にこもる場合がある。長時間の撮影のために被検体は高周波を受ける。このためわずかながらも被検体の体温が上昇する。これらにより被検体は不快感を受けることになる。本実施例では、複数の空冷手段が設けられ、照射コイル38を冷却すると共に、さらに被検体を冷却して被検体の不快感を軽減している。
これら複数の空冷手段は、ガントリ200の空間内に配置され、被検体が入る空間208を冷却するだけでなく、照射コイル38も冷却する。図1では複数のファンモータ110や112および複数のダクト140あるいは142が見えるように、特別にカバー202の一部に、カバー202を取り除いた部分204を記載している。本来は、カバー202を取り除いた部分204は存在しない。また空間208を挟んで反対側にも複数のファンモータ110や112および複数のダクト140あるいは142が設けられているが、図1ではガントリ200の裏側となり、図1には表れない。本実施例ではファンモータ110あるいは112がガントリ200のカバー202内に、しかも図5に示す如く、超電導磁石21に近接して配置されているので、送風のためのダクト140あるいは142が比較的短く、ダクト140あるいは142での送風の損失が非常に少ない。
本実施例では、ファンモータ110や112が配置されている空間には超電導磁石21の漏洩磁束が存在する。ファンモータ110や112を超電導磁石21の漏洩磁束が存在する空間に単に配置したのでは、超電導磁石21が発する漏洩磁場によりファンモータ110や112は悪影響を受ける。ファンモータ110や112はその固定子が発生する磁界の変化に基づき回転子に回転トルクが発生して回転子が回転し、回転子に機械的に接続されているファンが回転して送風するように構成されている。超電導磁石21の漏洩磁束の影響により、ファンモータ110や112自体が動作しなくなる場合がある。もしくは動作しても、回転子に発生する回転トルクが低下し、所望の風量を確保できない場合がある。
ファンモータ110や112の固定子が発生する磁界は回転子に回転トルクを発生するために常に変動する変動磁場である。この変動磁場が逆に被検体の計測空間に悪影響を及ぼす。MRI装置は多機能化が求められており、計測空間の磁場の均一化がより高い精度で求められる。ファンモータ110や112が発生する変動磁場が計測空間の磁場に悪影響を及ぼす。計測空間への悪影響は、ファンモータ110や112が発生する変動磁場の方向と超電導磁石の漏洩磁場の向きや大きさとの関係に依存する。ファンモータ110や112に起因する変動磁場が撮像空間内に到達すると、計測される画質の劣化を生じ、特に高機能シーケンスであるSSFPなど高磁場均一度を必要とするものでは、画質劣化を大きな問題となる。
図2は、本発明の一実施例を示すファンモータの構造と、ガントリ200の漏洩磁場方向とファンモータの配置方向の関係を示す図である。本実施例は、ガントリ200内の冷却が必要な場所に、特に照射コイル38が配置されている空間や被験者が入る計測空間が作られる空間208に、送風するために、安価で簡単な構造をしている単相のACモータを使用したファンモータ110や112を使用している。ファンモータ110や112はリラクタンスモータであっても良いし、リラクタンスモータにさらに永久磁石を備えたACモータであっても良い。また誘導型のモータであっても良い。
ファンモータ110や112は一例としてリラクタンスを利用したACモータであり、以下で説明するが、複数のモータに対して同じ周波数の交流電圧を供給することにより、前記複数のモータを運転することが可能なモータである。ファンモータ110もファンモータ112も同じ構造であり、代表して以下ファンモータ112でその構造を説明する。
ファンモータ112は、モータ部130とファン部120を備えている。モータ部130は固定子と回転子を備えており、前記回転子は磁性材である鉄で作られたシャフト134を有し、シャフト134にリラクタンストルクを発生するための突起136が形成されている。また前記固定子は、固定子鉄心に巻回された固定子巻線132を備えており、固定子巻線132は並列接続された2つの巻線を有している。一方の巻線には直列にコンデンサが接続されており、前記コンデンサにより2つの巻線に流れる電流に位相差が生じる。並列接続された2つの巻線に交流電圧を供給すると、完全な回転磁界ではないが回転磁界として作用する交番磁界が突起136に加わる。シャフト134に形成された突起136によりリラクタンストルクが発生し、シャフト134が回転する。
モータ部130の回転軸を回転軸線19で示す。回転軸線19はシャフト134の長軸と一致している。ファン部120は、シャフト134に固定されて回転するファン(図示せず)有しており、回転軸線19方向から空気を吸い込み、図示しない前記ファンの回転により前記ファンの径方向に吸い込まれた空気が導かれ、送風口122から吐出する。送風口122から吐出した空気はダクト140やダクト142を介して冷却すべき場所に導かれる。
図2に示すファンモータ112は、例えば図5に示すように超電導磁石21の外側と外側カバー202との間で、超電導磁石21の外側に近接して設けられている。超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向15がファンモータ112を通る位置では略X軸方向である。
設置されたファンモータ112の回転軸線19はX軸方向を向いており、漏洩磁場の磁束方向15が回転軸線19に沿う方向である。仮に超電導コイル22による漏洩磁場の磁束方向が漏洩磁場の磁束方向15ではなく、漏洩磁場の磁束方向16であったとしても、回転軸線19に対する漏洩磁場の磁束方向16の傾きは小さく、回転軸線19にほぼ沿う方向として作用する。以下で説明するが、回転軸線19と超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向との関係が、図2の関係であれば、ファンモータ112の固定子巻線が発生する変動磁場の影響を低減できる。なお、図2が示すように漏洩磁場の磁束方向とファンモータ112の回転軸線19を直交させない向きに配置することが重要であり、なるべく平行に近づけて配置することが望ましい。
図3には、ファンモータ112の変動磁場の変動幅の大きい方向20Aや20Bと、変動磁場の変動幅の小さい方向17を示した図である。固定子巻線132により発生する磁束18は供給される交流電流に基づいて切り替わる。固定子巻線132には単相交流電流が供給されるため、三相交流電流が供給されるのとは異なり、回転軸線19を中心にした綺麗な回転磁界を発生することはできないが、交互に磁界の極性が切り替わる変動磁場が発生する。この磁界の極性の切り替わりにより、シャフト134に設けられた突起136に回転トルクが発生し、モータ部130が回転する。このため変動磁場の変動幅の大きい方向20Aや20Bでは、磁界の方向が大きく変動する。超電導磁石21の超電導コイル22が発生する磁束が変動幅の大きい方向20Aや20Bであると、モータ部130の固定子巻線132が発生する磁束18と超電導コイル22が発生する磁束とが互いに干渉し合い、モータ部130に悪影響を及ぼし、また超電導コイル22が作る計測用の静磁場に対して悪影響を及ぼす。一方変動磁場の変動幅の小さい方向17は、回転軸線19に沿う方向であり、磁束18の変化が少ない方向である。変動磁場の変動幅の小さい方向17の方向は磁束18の変化量が少ないだけでなく、磁束密度そのものの絶対値が小さく、このため計測用の静磁場へ与える影響が少ない。
なお、本実施例ではシャフト134は突起136を有しており、突起136により回転トルクを発生する。しかし、突起136に限るものではない。図3に示す磁束18の変動に基づいて誘導電流を流すかご型などの短絡回路を形成することにより、回転トルクを発生させることが出来る。従ってリラクタンスモータだけでなく誘導電動機の構成であっても使用可能である。また回転トルクを増大するために、突起136に加え、回転子に永久磁石を固定しても良い。
図3に示すように、MRIの超電導磁石による漏洩磁場の磁束方向が、磁束方向15に示すようにファンモータ112の回転軸線上19と平行である場合や、磁束方向16に示すようにファンモータ112の回転軸線上19と平行に近い場合は、漏洩磁場によるファンの動作への影響を小さくすることができ、超電導磁石21の漏洩磁場によるモータ部130の風量の低下や動作停止を避けることができる。また、このときファンモータが発生する変動磁場が、漏洩磁場の磁束方向15や漏洩磁場の磁束方向16の方向では、小さいので、モータ部130による計測のための均一な静磁場への影響が少ない。超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向とファンモータ112の回転軸線上19の方向が平行に近ければ近いほど、モータ部130と超電導磁石21との干渉の影響を小さくできる。ここで、漏洩磁場と変動磁場の方向が平行であれば、互いの磁束の向きは逆向きでも構わない。
図4は、図3に示すファンモータ112をY軸方向、すなわち垂直方向から見た図である。固定子巻線132が発生する磁束18は、モータ部130の中心側すなわち回転軸線19側がN極で、モータ部130の外周側がS極の状態である。しかし、交流電流が固定子巻線132に供給されているので、交流電流の切り替わりに従って極性が反転する。このように磁束18の極性が交流電流の変化に従って常に反転するので、磁束方向20Aや20Bでの磁界が大きく変動する。一方磁束方向17の方向は変動が少ないことが分かる。さらに固定子巻線132が発生する磁束自身が非常に少ないことが分かる。上述したように漏洩磁場の磁束方向15や磁束方向16に対する磁束18による悪影響が少ないことが分かる。また漏洩磁場の磁束方向15や磁束方向16の磁束が、逆に固定子巻線132の磁界に与える影響が少ないこともわかる。
MRIの超電導磁石の漏洩磁場方向とファンモータ112の回転軸線19の向きが出来るだけ平行になるように配置した例を図5に示す。図5は既に一部説明したが、円筒型のガントリ200の長軸方向(Z軸方向)と水平方向(X軸方向)のガントリ200の断面図の一部である。ここでは、被検体が入る空間208を挟んだ両側に超電導磁石21が存在するが、図5は超電導磁石21の半分(超電導磁石の長手方向の中心軸23より一方側)のみ表示する。超電導磁石21内には、超電導コイル22が超電導磁石21の水平方向の中心軸24に対して対称となるように複数、設けられている。ここでは簡単のため、2つの超電導コイル22のみ表示する。複数の超電導コイル22は、ヘリウム容器26内で液体ヘリウムにより低温に維持されている。断熱効果を高めるために、輻射シールド27や真空容器28が設けられている。超電導コイル22により作られた磁束の漏洩磁場の磁束方向15は、被検体が入る空間208から外向きに放射状に拡がっている。
ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と平行となるような位置に、配置することが望ましい。例えば、漏洩磁場の磁束方向がX軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合、ファンモータ112の回転軸線19がX軸方向を向くように配置することが望ましい。また、漏洩磁場の磁束方向がZ軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合であれば、ファンモータ112の回転軸線19がZ軸方向を向くように配置することが望ましい(図示せず)。このとき、ファンモータ112の回転軸線19の向きは正の向きであっても負の向きであっても構わない。本実施例では、漏洩磁場の磁束方向がX軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合について説明する。
図6は、図5と略同じ位置にファンモータ112を設けた図であるが、ファンモータ112の向きが図5の状態と異なっており、ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と直交するようにファンモータ112を配置した場合の図である。ファンモータ112の回転軸線19はY軸方向、すなわち垂直方向を向いている。このため超電導磁石21からの漏洩磁場の磁束方向15は固定子巻線132が作る磁束の方向と略一致あるいは近い方向となる。このため超電導磁石21が作る磁場がファンモータ112の動作に悪影響を及ぼす。さらにファンモータ112が作る変動磁場が、超電導磁石21が作る静磁場の均一性に悪影響を及ぼす。このようなことから図5で説明した方向に(つまり、ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と平行となるように)ファンモータ112を設置することが望ましい。
漏洩磁場の影響をなくためには鉄などの磁性材でファンモータ112をシールドする方法も考えられる。しかし、磁性材でファンモータ112をシールドする場合に以下のとおり色々な問題がある。ファンモータ112を磁性材でシールドすることのみで上記課題や以下で説明する課題に対応することは困難である。上述した方法あるいは以下でさらに説明する方法を使用して説明する課題を解決することか望ましい。
ファンモータ112は定期的な交換が必要な消耗品であることから、鉄などのシールド材でシールドした場合に、以下のような問題が生じる。シールドのみで完全に影響をなくすようなシールド構造を使用すると、超電導磁石21による吸引力のため作業不可能もしくは非常に危険を伴った作業となる。もしくはファンモータ112の交換のためMRIの磁場発生部を消磁する必要が生じる。また、ファンモータ112の効能および価格を考慮すると、一々消磁によることはコスト的に全く見合わないものとなる。そのため、ファンモータ112を鉄などの磁性体で完璧にシールドする方法は望ましくない。
しかし、上述のように超電導磁石21の漏洩磁場とファンモータ112の回転軸線19とが平行に近くなるようにファンモータ112を配置したとしても、画質劣化の影響を完全に抑制することは困難である。さらに今後MRIの性能が向上するにつれて、益々問題となる。図5のようにファンモータ112を配置した場合の、ファンモータ112の変動磁場によるSSFPシーケンスの場合の画質劣化例を図7に示す。
図7(A)は、ファンモータ112による変動磁場の影響が、撮像空間に及ぼした場合の画質劣化を示した実験結果であり、撮像空間に円形の1個のファントムを置いて撮影した画像である。本来ファントム画像31のみが表示されるはずである。しかし、ファンモータ112による変動磁場の影響が撮影空間の静磁場の均一性に悪影響を及ぼすことにより、複数の偽像32がずれながら重なるように表示される。特に、以下で説明するようにファンモータ112を対に配置するのではなく、図5に示すように1個のファンモータ112のみ動作させた場合には、図7(B)に示す画像が表示される。図7(A)および図7(B)で、符号34は撮像空間の撮像範囲(FOV)を示す。
撮影空間におかれたファントムは1個であり、表示装置70の表示画面には真のファントム画像31が1つ表示されるはずである。しかし後述する図8のファンモータ112あるいはファンモータ110の変動磁場の影響を受けると図7(A)に示すように位相方向にずれた複数の偽像32が表示される。さらにファンモータ112あるいはファンモータ110を1つだけ図5の如く動作させた場合には、図7(B)に示すように偽像32に加え輝度斑33が表示される。この輝度斑33は偽像32の信号値より信号の強度が強いので、画質劣化がより顕著となってしまう。
このような輝度斑33は時間的および空間的な磁場の変化によるものだと考えられている。つまり、ファンモータ112やファンモータ110を1つだけ動作させたことにより、変動磁場の影響が非対称に現れて、輝度斑33が発生するものだと考えられる。このような輝度斑33を抑制することができれば、画質劣化を大幅に改善することができる。
図8に示す実施例は、輝度斑33を抑制することができる実施例である。図8は超電導磁石の長軸中心23を含む断面図を示している。空間208を挟んで対称な構造を有する超電導磁石21に対して、空間208の長軸方向に沿って、しかも図示における超電導磁石21の中央に描かれた超電導磁石の長軸中心軸23に対して、略対称の状態にファンモータ112が配置さている。
超電導磁石の長軸中心軸23はZ軸に沿っており、超電導磁石の長軸中心軸23に対して1対のファンモータ112が対称的に配置されている。さらにこれら1対のファンモータ112は超電導磁石21の外側に超電導磁石21に近接して設けられており、各ファンモータ112の回転シャフト134はX軸に沿っている。そして、2個のファンモータ112からそれぞれ送風ダクト142を介して、照射コイル38が配置されている空間に風が送られる。このように一対のファンモータ112を超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称な配置とすることにより、変動磁場が略対称的に静磁場に影響するようになり、互いの影響をある程度相殺できる。2つのファンモータ112の影響が該に相殺し合うことで、図7(B)に記載の輝度斑33を抑制することができる。当然ではあるがファンモータ112からの風量も1個の場合に比べて多くなり、照射コイル38への冷却能力も増加する。
ファンモータ112の適切な配置についての詳細は後述するが、図8に示すようにファンモータ112が2個である場合、超電導磁石21の長手方向の中心軸23に対して略対称に配置すること、又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置することが望ましい。ただし、図2で示したように漏洩磁場の方向とシャフト134とが極力平行となるような位置が望ましい。また、図8に示すようにファンモータ112の向きも長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称とすることが更に望ましい。以降では、ファンモータ112を中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置する場合には、ファンモータの向きも中心軸23又は前記垂直面に対して略対称に配置することとする。
また、中心軸23に垂直な面であって超電導磁石21の中心軸23の中央を通る面を中央面と定義し、この中央面と超電導磁石21の断面との交線を中心軸24と定義すると、中心軸24に対して、一対のファンモータ112とは中心軸24又は上記中央面に対して略対称に他の一対のファンモータ110が設けられている。他の一対のファンモータ110は互いに超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称にしかも超電導磁石21の外周に隣接して配置されている。2つのファンモータ110の各回転軸線19はX軸方向を向いている。このように各対のファンモータ112あるいはファンモータ110を超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に近い状態に配置することにより、撮像空間に到達する各ファンモータ110やファンモータ112の変動磁場の影響を互いに相殺するように作用させることができ、図7(B)で説明した複数の偽像32に対して表れる複数の輝度斑33の信号を抑制することが可能となり、複数の輝度斑33の画像が表れるのを抑制できる。このため画像の劣化を抑制できる。
上記のようにファンモータ110又はファンモータ112が複数個設置されている場合には、例えば一対のファンモータ112で照射コイル38を冷却することが望ましく、他の一対のファンモータ110で被検体が入る空間208を冷却することが望ましい。このため、一対のファンモータ112でダクト142をそれぞれ介して照射コイル38が設けられている空間を冷却し、他の一対のファンモータ110でダクト140をそれぞれ介して空間208を冷却するように構成することが望ましい。
図9は、一対のファンモータ110あるいはファンモータ112を、前記変動磁場の影響を抑制するにはどのように配置したらよいかの一例を説明する、説明図である。ガントリ200の内部に配置された超電導磁石21の内部に設けられている超電導コイル22の超電導磁石21の長軸中心軸23に対するファンモータ112の配置を図9は示している。超電導磁石21の長軸中心軸23は空間208の中心軸と考えても良い。ファンモータ112の配置を説明し易くするために、図9の如くファンモータ112A〜ファンモータ112Dの符号をつける。
ファンモータ112A〜ファンモータ112Dの各回転軸線(図示せず)がそれぞれ超電導磁石21の漏洩磁束に沿う方向となるようにファンモータ112A〜ファンモータ112Dが配置されているものとする。
超電導コイル22の超電導磁石21の長軸中心軸23を中心とする円周上に対を成す2つのファンモータ112を配置することで、各ファンモータ112が発生する変動磁場に起因する悪影響の内、特定成分の悪影響が互いに相殺し合うこととなり、構成されたMRI画像の質を改善する効果がある。例えばファンモータ112Aを例として説明すると、ファンモータ112Bあるいはファンモータ112C、ファンモータ112Dを設けることにより、構成されたMRI画像の質を改善する効果がある。
さらに、ファンモータ112Aに対してファンモータ112Bを対として配置すること、言い換えると中心軸23を通る垂直面に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Aに対してファンモータ112Cを対として配置すること、言い換えると中心軸23に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Aに対してファンモータ112Dを対として配置すること、言い換えると中心軸23を通る水平面(X-Y面)に対して略対称な配置関係とすることで、ファンモータ112Aが与える変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果がより顕著である。
また、ファンモータ112Dを中心に考えると、ファンモータ112Dに対してファンモータ112Cを対として配置すること、言い換えると中心軸23を通る垂直面に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Dとファンモータ112Bを対として配置すること、言い換えると中心軸23に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Dに対してファンモータ112Aを対として配置すること、言い換えると中心軸23を通る水平面(X-Y面)に対して略対称な配置関係とすることで、ファンモータ112Dが与える変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果がより顕著である。
特にファンモータ112Aに対してファンモータ112Cを対として配置した場合、あるいはファンモータ112Bに対してファンモータ112Dを対として配置した場合には、変動磁場の悪影響の内多くの成分に起因する悪影響が互いに相殺されるので、大きな効果がある。
検討の結果、図9の超電導磁石の長軸中心軸23を通る垂直面すなわちY軸に沿うように表示した垂直面25から一方側および他方側にX軸に沿うように長さが等しくなるように配置する、例えば互いに長さY1はなれた位置に配置することで変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果が得られる。他の表現をすると、対を成すファンモータ112を垂直面25に対して略面対称な配置、あるいは超電導磁石の長軸中心軸23に対して略線対称な対置にすることにより、ファンモータ112に起因する変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果が得られる。今、ファンモータ112について説明したが、ファンモータ110においても同様である。
上述超電導磁石の長軸中心軸23(Z軸)に対して略線対称になるようにファンモータ112を配置する、あるいは超電導磁石の長軸中心軸23を通る垂直面に対して略面対称となるようにファンモータ112を配置すると上記効果が得られる。ここで、デザイン的な面や安全性の面から、ファンモータ112をガントリ200のカバー202の内側に配置することが望ましい。また、ファンモータやダクトのメンテナンスや検査などを考えると、ガントリ200が置かれている床面に近い部分、例えば図9のファンモータ112Aやファンモータ112Bの位置に配置することが望ましい。
次にファンモータ112が4個の場合の実施例を、図10を用いて説明する。この場合のファンモータ112の配置が、図8の配置と類似である。ファンモータ112が4個の場合に超電導磁石21の長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対して略対称に配置されている。
また、上述のとおりこれら4個のファンモータ112の回転軸線は、超電導磁石の長軸中心軸23や水平方向の中心軸24に対して略対称となるようにファンモータ112を配置することで、ファンモータ112に起因する磁気変動の影響を抑えることができ、偽像32の輝度斑33の影響を抑制することができる。この応用として、4の倍数個のファンモータ112を用いる場合も同様の法則に則って配置することで偽像32の輝度斑33を抑制することができる。
図10の実施例では、ファンモータ112が4の倍数個ある場合において、長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称に配置されるのが望ましいことを説明したが、ファンモータ112が2の倍数個でかつ4の倍数個ではない場合、例えば6個の場合について説明する。
図11は、ファンモータ112が6個の場合の配置例である。6個のうち4個のファンモータ112は、図10で示したものと同様に、長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称な配置とする。残る2個は、図8の一対のファンモータ112で説明したのと同様であり、長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称であれば任意の位置に配置してもそれなりの効果が得られる。ただし、漏洩磁場の方向15とシャフト134とが極力平行となるような位置が望ましい。
実験の結果により、ファンモータ112を偶数個配置する場合には、まず最初に長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置することが望ましい。
次に水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称に配置することが望ましい。
以上より、ファンモータ112を4×n個設置する場合、超電導磁石21の長手方向の中心軸23又は中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称な配置とすることが望ましい。また、ファンモータ112が2×(2n-1)個の場合、2n対のファンモータ112略対称配置、言い換えると長手方向の中心軸23又は垂直面と水平方向の中心軸24又は中央面に対して略対称配置とし、残る1対は長手方向の中心軸23に対して略対称配置とすることが望ましい。このように配置することで偽像32の輝度斑33を抑制することができる。
4個以上のファンモータ112を配置した場合、被検体用空冷ファンモータと照射コイル空冷ファンモータなど2系統以上となる可能性がある。この場合、少なくとも超電導磁石21の長手方向の中心軸23に略対称配置された一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は同じような磁束が発生するように動作させることが望ましい。共通の交流電源から前記一対のファンモータ112あるいはファンモータ110に交流電力を供給することで、一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は同じような磁束を発生する。この場合に一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は互いに変動磁場を相殺する方向に作用し、前記輝度斑33が表示される影響を低減できる。
例として図8や図10で説明した、4個のファンモータ110あるいは112を配置した場合のファンモータの運転パターンを、図12を用いて説明する。図12(A)は、超電導磁石21の長手方向の中心軸23に略対称な1対のファンモータ110と1対のファンモータ112を備えており、これらをそれぞれA群とB群とする。A群およびB群を構成する1対のファンモータ110と1対のファンモータ112はそれぞれ、中心軸24又は中央面に対して略対称に配置し、その距離はY2である。
図12(B)には、好ましい運転パターンを示す。運転パターン1はA群とB群の両方を動作させた場合である。このときA群とB群には必ずしも共通する交流電圧を供給する必要がないが、それぞれの群のファンモータ、すなわち1対のファンモータ110あるいは他の1対のファンモータ112には、共通の電源から電圧を供給することが望ましい。
運転パターン2は、A群のファンモータ112だけ動作させた場合であり、運転パターン3は、B群のファンモータ112だけ動作させた場合である。従って、もしファンモータの運転を停止する場合、あるいは運転を開始する場合に、1対のファンモータ単位、言い換えると図12に示す群単位で制御することが望ましい。運転パターン1〜3の効果を比較した場合、A群とB群の両方を動作させた場合である運転パターン1が、他の運転パターン2や3よりファンモータ112の数が倍であるため冷却効果は大きく、偽像32の輝度斑33を抑制できる効果も大きい。パターン2と3の効果は略同じである。
以上ファンモータ110や112に起因する変動磁場の影響の低減策について説明したが、さらにファンモータ110や112が発する変動磁場の影響を抑制する方法を、図13を用いて説明する。図13はファンモータ112のモータ部130を電気抵抗の小さい材料で作られた板、例えば銅板やアルミ板で覆うための導体カバー138を用いた例である。画質劣化を引き起こす原因となる変動磁場は、供給される交流電源の周波数に基づき周期的に変化するので、電気抵抗の小さい導体で覆うことにより、渦電流を利用して磁気遮蔽することができる。モータ部130を覆う導体カバー138には、変動磁場による磁束の変化に基づき、前記磁束を打ち消す方向の渦電流が常に流れる。導体カバー138の電気抵抗が小さければ小さいほど渦電流は大きくなり、磁気遮蔽効果が向上する。また銅板やアルミ板は、磁性材ではないので、超電導磁石21からの磁気に対して反応しない。
従って非磁性体でしかも抵抗値の小さい銅板やアルミ板を使用することで磁気遮蔽効果が向上するのに加え、MRIが有する磁気の影響を受けないので、ファンモータ112のメンテナンスなどが容易である。
図13はファンモータ112のモータ部130を覆っているが、ファンモータ112全体を覆うようにしても良い。また、ファンモータ112について記載したがファンモータ110も同様である。
上述したファンモータ112は、計測空間に対してファンモータ112が発生する変動磁場の影響をできるだけ及ぼさないようにすることが望ましいことは上述したとおりである。このため、共通の交流電源から対を成す複数のファンモータ110あるいは112を同時に共通の電源で駆動できることが望ましい。上述したように固定子が発生した磁場の周期的な極性変化に基づいて回転子の突極あるいは回転子に設けられた永久磁石に回転トルクを発生する構造のモータや、誘導電流を利用した誘導電動機では、固定子が発生した磁場の回転成分に対して回転子が追随しながら回転する構造ある。このため共通の交流電源から複数のモータを駆動する構成において使用するのに適している。
また上述した構造のモータでは、固定子が発生する磁場の極性切り替えを、供給される交流電源の変化に基づいて行うことができ、特別なスイッチング手段がいらない。従って、電気的なノイズが少なく、他の機器へ及ぼす影響が少ない。DCモータを使用すると、DCモータが有する整流子などが必要である。このためDCモータからの電気的なノイズの発生が問題となる。さらにモータの寿命が短い問題がある。ACモータはこのような問題が無く、望ましい。また制御の簡素化の観点やモータを駆動する電源の観点から単相交流モータがファン用のモータとして最適である。
また、ファンモータ112が発する変動磁場による画質劣化を抑制する方法として、ファンモータ112を駆動する交流電源の周波数を変更し、影響の少ない周波数でファンモータ112を駆動する方法もある。動作周波数を変更すると必然的に発生する変動磁場の周波数も変化する。この場合に当然であるが変動磁場の高調波成分も変化する。MRIの原理として周波数成分を用いるため、偽像の発生状況も変化する。
図14は、図7と同様に、円筒状のファントムを計測空間において計測した画像であり、四角で囲まれた範囲は、撮像空間の撮像範囲34を示す。図14(A)と(B)に周波数が異なった場合の画質劣化の例を示す。図14(A)では周波数がAであり、図14(B)では周波数がBであり、周波数がBの方が偽像32の数が少なく、偽像32の位置も離れている。このように偽像32の数と出現位置はファンモータ110やファンモータ112を駆動する交流電源の周波数に依存する。この現象を利用し、偽像32が撮像範囲34より外側にシフトする周波数で動作させるようにする。なお、任意の周波数にするためには交流電力を発生する回路が必要であり、例えばインバータ52を用いて任意の周波数の交流電力を発生することができる。
図15は、ファンモータ110やファンモータ112に供給する任意の周波数の交流電力を発生する回路である。任意の周波数の交流電力を発生するためにインバータ52には、電源54から直流電力が供給される。直流電力は例えば交流電力を整流してコンデンサに蓄えることで供給することが出来る。
インバータ52は制御部56によりスイッチングタイミングが制御され、交流電力を発生することが出来る。制御部56はインバータ52のスイッチングタイミングを変えることにより、発生する交流電力の周波数を変えることができる。スイッチ58を閉じることにより、A群のファンモータ112とB群のファンモータ110に同じ周波数の交流電力を供給することが出来る。またスイッチ58やスイッチ59を制御することにより、図12(B)で説明した運転パターンを実行することが可能となる。
図16に示すフローチャートは、インバータ52に制御指令として与える交流電力の周波数を演算などにより求め、さらに冷却の必要性を判断してスイッチ58やスイッチ59を制御して、ファンモータ110やファンモータ112を運転あるいは停止するためのフローチャートである。なおこの明細書で演算の概念に、既知のデータを予め記憶しておき検索により必要なデータを求める処理も含める。図16のフローチャートは例えば一定時間毎に実行される(ステップS1002)。このためインバータ52が発生する交流電力の周波数の変更が、輝度斑33の出現や偽像32の出現に関する画質劣化の観点で、改善方向か悪化の方向かを検知しながら改善の方向を自動的に探ることも、可能となる。
ステップS1004で現在のMRI装置100の動作状態が検知される。このステップで、既に入力されている情報から、交流電力の周波数の設定に必要なデータを取り込み、またスイッチ58やスイッチ59の制御に必要なデータを取り込む。次にステップS1006で、照射コイル38が設けられている空間の温度や被検体が置かれている空間208の温度が計測される。さらにステップS1008で、今ファンモータ110やファンモータ112に供給されている交流電力の周波数の状態で撮影が行われたかどうかを判断し、撮影が行われた場合には、撮影された画像に偽像32や輝度斑33が表れているかどうか、またさらに以前に撮影された撮影画像の質に対して偽像32や輝度斑33の点で改善されているか、劣化しているかを検知する。
上記ステップS1004や上記ステップS1008で検知された情報に基づき、ステップS1010で、輝度斑33の信号強度を低減させたり、偽像32を撮像範囲34の外に移動させたり、するための交流電源の周波数を求める演算処理を行い、より好ましい交流電源の周波数を得る。得られた交流電源の周波数が一時的に保持される。ステップS1006で検知された温度に基づいて、照射コイル38が置かれている空間へ送風される風量や空間208への風量が求められ、この結果もステップS1010での演算に反映される。ファンモータ110やファンモータ112のモータ部130の回転速度は、交流電源の周波数に依存する。従って交流電源の周波数を増加させることにより、ファンモータ110やファンモータ112の風量を増加させることができる。
ステップS1012では、ステップS1006で検知された温度に基づいて、照射コイル38が置かれている空間や空間208への送風を行うかどうかの判断が為される。照射コイル38が置かれている空間や空間208へ送風する場合には、スイッチ58やスイッチ59が閉状態に制御され、送風が停止される場合にはスイッチ58やスイッチ59が開状態に制御される。
次にステップS1014で、インバータ52を制御するための周波数が制御部56からインバータ52に送られる。これにより、インバータ52は送られてきた周波数に基づいて交流信号を発生し、出力する。電源54から送られてきた商用の電力は一旦インバータ52で直流に直され、制御部56からの周波数の指令値に従い直流を再び指令された周波数の交流電力に変換する。このようにして、A群やB群を構成するファンモータ112やファンモータ110の運転を、A群やB群の単位で制御し、またファンモータ112やファンモータ110に供給する交流電力の周波数を最適に制御できる。上述したようにA群やB群の単位でファンモータを制御することにより、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減できる。またファンモータに供給する交流電力の周波数を適切に決定することにより、図14で説明のごとく、画質の低下を低減できる。ファンモータが発生する変動磁場は、きれいな回転磁場を発生するモータに比べ高調波成分の割合が高く、供給する交流電源の周波数を変更することで、ファンモータが発生する変動磁場の高調波成分の状態が比較的大きく変化することが多い。このため供給する交流電源の周波数を変更することにより、画質の低下を低減できる効果が期待できる。
以上のように、本発明の実施例に係るMRI装置は、超電導磁石近傍にファンモータを配置して効率的に被検体を冷却することができる。また、ファンモータの配置を最適化したことにより、高機能シーケンスの画質劣化を抑制することができる。
15,16 漏洩磁場の磁束方向、17 変動磁場の変動幅の小さい方向、18 固定子巻線132により発生する磁束、19 回転軸線、20A,B 変動磁場の変動幅の大きい方向、21 超電導磁石、22 超電導コイル、26 ヘリウム容器、27 輻射シールド、28 真空容器、30 受信装置、31 ファントム画像、32 偽像、33 輝度斑、33、34 撮像範囲、36 傾斜磁場コイル、38 照射コイル、50 テーブル、52 インバータ、54 電源、56 制御部、58,59 スイッチ、60 制御処理装置、70 表示装置、80 入出力装置80、100 MRI装置、110,112 ファンモータ、120 ファン部、122 送風口、130 モータ部、132 固定子巻線、134 シャフト、136 突起、138 導体カバー、140,142 ダクト、200 ガントリ、202,206 カバー、204 カバーを取り除いた部分、208 空間
本発明は、磁気共鳴イメージング装置に係り、特に冷却用ファンモータを備えた磁気共鳴イメージング装置に関する。
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging、以下MRIと記す)装置は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、以下NMRと記す)現象を利用して被検体中の所望の検査部位から発せられる信号を計測し、前記検査部位における核スピンの密度分布や緩和時間分布などを、断層像などとして画像表示する装置である。
従来のMRI装置では、例えば水平型超電導磁界発生装置においては被検体が計測されるための計測域を形成する空間がガントリの中央部に形成され、その空間の外側に照射コイルや傾斜磁場コイルおよび静磁場発生装置などが配置されている。
近年、MRI装置の高機能化が進んでいる。これに伴い前記照射コイルに係る負荷が大きくなり、発熱量が増大する傾向にある。前記照射コイルを冷却するために空冷用ファンが用いられる。このような空冷用送風機を備えたMRI装置の一例は、(特許文献1)に記載されている。
上述したようにMRI装置は高機能化が望まれていて、計測域での磁場の質向上が益々重要となってきている。ファンモータは磁界を発生させて回転トルクを発生する構造を備えているため、ファンモータが発生する磁場がMRI装置の画質劣化において無視できない状態になってきている。
特許文献1では、冷却対象から非常に離れた位置に、例えばMRI装置の外カバーから突出した位置に、冷却用送風機が配置されている。なお、特許文献1の図8などでは前記外カバーを大きくして外カバーの天井側外周部に前記冷却用送風機を配置している。この場合には、ヘリウム冷却用冷凍機を覆うように前記外カバーを大きくしている。このようにMRI装置の計測用空間から非常に遠ざけた位置に前記送風機を配置すれば前記送風機による磁気的な影響を低減できるが、前記送風機が冷却すべき部分から非常に遠くなる問題がある。
MRI装置の磁場発生装置から非常に遠ざけた位置にファンモータを配置するのではなく、MRI装置の計測用磁場が漏洩する位置にファンモータを配置しているにも関わらず、MRI装置の計測に対するファンモータの影響をより低減することができることが望ましい。言い換えるとMRI装置の計測用磁場が漏洩する位置にファンモータを配置しているにも関わらず、計測された画像の前記ファンモータによる画質低下を抑制できることが望ましい。
本発明の目的は、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減でき、画質の低下を抑制できるMRI装置及び冷却用ファンモータの運転方法を提供することである。
上記課題を解決するために、1つの発明は、被検体が入る筒状の空間を有して該空間に静磁場を発生する静磁場発生用磁石と傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生コイルと高周波信号を照射する照射コイルとを備えるガントリと、前記被検体を載置するテーブルと、表示装置を含む入出力装置と、を有し、前記筒状の空間の長軸方向に沿って伸びると共に前記静磁場発生用磁石の水平方向における中央に位置する中心軸又は該中心軸を通る垂直面に対して略対称に配置された少なくとも一対の冷却用ファンモータが設けられている、ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置を提供する。
また、上記課題を解決するために、他の発明は、被検体が入る筒状の空間を有して該空間に静磁場を発生する静磁場発生用磁石と、傾斜磁場を発生する傾斜磁場発生コイルと高周波信号を照射する照射コイルとを備えるガントリと、前記被検体を載置するテーブルと、表示装置を含む入出力装置と、を有し、前記筒状の空間の長軸方向に沿って伸びると共に前記静磁場発生用磁石の水平方向における中央に位置する中心軸又は該中心軸を通る垂直面に対して略対称に配置された少なくとも一対の冷却用ファンモータが設けられている、磁気共鳴イメージング装置の冷却用ファンモータの運転方法であって、前記対単位で前記冷却用ファンモータの運転開始、あるいは運転停止を行う、ことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置の冷却用ファンモータの運転方法を提供する。
本発明によれば、ファンモータを磁場発生装置の磁場が漏洩している場所に配置しているにも関わらず、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減でき、画質の低下を抑制できるMRI装置を提供することができる。
本発明の一実施例である磁気共鳴イメージング装置の全体斜視図
ファンモータに対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
ファンモータの変動磁場に対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
ファンモータの変動磁場の向きに対する超電導磁石の漏洩磁場方向を説明する説明図
超電導磁石の漏れ磁束とファンモータの向きとの関係を説明する説明図
超電導磁石上のファンモータの別の向きと位置を示す図
円筒状ファントムをAX断面で観察したときの画質劣化を説明した図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石と2つのファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石とファンモータの位置関係を示す図
超電導磁石と対のファンモータの動作パターンを示す図
モータシールドを示す図
ファンモータの駆動周波数を変化させたときの画像変化を示す図
ファンモータの駆動周波数を変化させる構成ブロック図
交流電力発生用インバータおよび交流電力供給用スイッチの制御を行うためのフローチャート
以下、本発明の実施形態(以下実施例と記す)を図面に基づいて説明する。なお、発明の実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明に係るMRI装置の一例の全体斜視図である。MRI装置100は、被検体が入る空間208を中央部に有するガントリ200と、被検体の検査部位からNMR現象に基づいて発生する信号を受信する受信装置30と、前記ガントリ200に設けられた計測用機器を制御すると共に受信装置30が受信した信号に基づいて検査部位の断層像などの画像を構成する制御処理装置60と、被検体を載置するテーブル50と、入出力装置80を有している。入出力装置80は表示装置70を有しており、表示装置70は制御処理装置60で再構成された断層像表示すると共にその他必要な情報の表示を行う。
ガントリ200は、前記超電導コイルや前記傾斜磁場コイルおよび前記照射コイルを有し、空間208内にNMR現象を利用できる計測空間を形成する。テーブル50に載置された被検体を空間208に送り込み、ガントリ200内に設けられた前記超電導コイルと前記傾斜磁場コイルにより計測用磁界を発生すると共に照射コイルから高周波信号を前記被検体の検査部位に加えることにより、NMR現象に基づく前記検査部位からの信号を受信装置30で受信し、受信した信号に基づいて前記検査部位の断層像が制御処理装置60により再構成され、前記断層像が入出力装置80の表示装置70に表示される。
ガントリ200は最外部をカバー202で覆っている。このカバー202は美観および安全上の理由により設置されている。カバー202の内部には、前記超電導コイルや前記傾斜磁場コイル、前記照射コイルが配置されている。これらのコイルについては図4に記載する。受信装置30は核磁気共鳴により被検体が発する信号を受信するものである。テーブル50はガントリ200に隣接した位置に配置されている。ガントリ200の外側でテーブル50に被検体を載置し、受信装置30を計測対象部に取り付けた状態で、テーブル50は前記被検体を計測空間に搬送する。制御処理装置60は受信装置30で検出した信号を用いて画像再構成のための演算を行い、構成された画像は、入出力装置80に設けられた表示装置70に表示したり、図示していない記憶装置に記憶したりする。
本実施例では、空間208の長手方向をZ軸とし、水平方向をX軸、垂直方向をY軸として以下説明する。ガントリ200やテーブル50はMRI検査用部屋内に配置され、部屋の仕切りを介して外側に操作用の入出力装置80や制御および色々な処理のための制御処理装置60が配置されている。
ガントリ200内部の超電導コイルや傾斜磁場コイル、照射コイルの配置関係の一例を図5や図6に記載しており、図5や図6については以下で詳述するが、ここではこれらの図を用いて超電導コイル22や傾斜磁場コイル36、照射コイル38の配置関係について説明する。図5や図6は空間208の長手方向の中心軸である超電導磁石の長軸中心軸23の方向、すなわちZ軸に沿って、さらに水平面であるX軸に沿った断面図の一部である。空間208はカバー202の内側部分で形成されており、空間208の外側に高周波信号を被検体の検査部位に照射する照射コイル38が配置され、照射コイル38の外側に傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル36が配置され、さらにその外側に超電導磁石21が配置されている。
超電導磁石21は、複数の超電導コイル22を有するヘリウム容器26と輻射シールド27と真空容器28を有している。ヘリウム容器26内には超電導コイル22を冷却して超電導状態に維持するために液体ヘリウムが充填させており、前記液体ヘリウムを低温に維持するために、図1に示す如くカバー202から上方向に突出しているカバー206の内部に冷凍機が収納されている。本実施例では、ガントリ200のカバー206が突出しているので、カバー202を超電導磁石21の外周に近接して設けることができ、カバー202は、超電導磁石21の外周に沿うように形成された略円弧状の形を有している。
MRI装置100が動作している間、被検体に隣接して照射コイル38には大電流が流れ続けるため、照射コイル38が発熱する。IECの規定より被検体接触部は41℃以下に維持しなければならないと定められており、本実施例では照射コイル38を冷却するための空冷手段が設けられている。また、被検体は狭い空間208内に長時間いるため自らの発熱により被検体周辺の空気が熱せられ、熱せられた空気が被検体周囲にこもる場合がある。長時間の撮影のために被検体は高周波を受ける。このためわずかながらも被検体の体温が上昇する。これらにより被検体は不快感を受けることになる。本実施例では、複数の空冷手段が設けられ、照射コイル38を冷却すると共に、さらに被検体を冷却して被検体の不快感を軽減している。
これら複数の空冷手段は、ガントリ200の空間内に配置され、被検体が入る空間208を冷却するだけでなく、照射コイル38も冷却する。図1では複数のファンモータ110や112および複数のダクト140あるいは142が見えるように、特別にカバー202の一部に、カバー202を取り除いた部分204を記載している。本来は、カバー202を取り除いた部分204は存在しない。また空間208を挟んで反対側にも複数のファンモータ110や112および複数のダクト140あるいは142が設けられているが、図1ではガントリ200の裏側となり、図1には表れない。本実施例ではファンモータ110あるいは112がガントリ200のカバー202内に、しかも図5に示す如く、超電導磁石21に近接して配置されているので、送風のためのダクト140あるいは142が比較的短く、ダクト140あるいは142での送風の損失が非常に少ない。
本実施例では、ファンモータ110や112が配置されている空間には超電導磁石21の漏洩磁束が存在する。ファンモータ110や112を超電導磁石21の漏洩磁束が存在する空間に単に配置したのでは、超電導磁石21が発する漏洩磁場によりファンモータ110や112は悪影響を受ける。ファンモータ110や112はその固定子が発生する磁界の変化に基づき回転子に回転トルクが発生して回転子が回転し、回転子に機械的に接続されているファンが回転して送風するように構成されている。超電導磁石21の漏洩磁束の影響により、ファンモータ110や112自体が動作しなくなる場合がある。もしくは動作しても、回転子に発生する回転トルクが低下し、所望の風量を確保できない場合がある。
ファンモータ110や112の固定子が発生する磁界は回転子に回転トルクを発生するために常に変動する変動磁場である。この変動磁場が逆に被検体の計測空間に悪影響を及ぼす。MRI装置は多機能化が求められており、計測空間の磁場の均一化がより高い精度で求められる。ファンモータ110や112が発生する変動磁場が計測空間の磁場に悪影響を及ぼす。計測空間への悪影響は、ファンモータ110や112が発生する変動磁場の方向と超電導磁石の漏洩磁場の向きや大きさとの関係に依存する。ファンモータ110や112に起因する変動磁場が撮像空間内に到達すると、計測される画質の劣化を生じ、特に高機能シーケンスであるSSFPなど高磁場均一度を必要とするものでは、画質劣化を大きな問題となる。
図2は、本発明の一実施例を示すファンモータの構造と、ガントリ200の漏洩磁場方向とファンモータの配置方向の関係を示す図である。本実施例は、ガントリ200内の冷却が必要な場所に、特に照射コイル38が配置されている空間や被検体が入る計測空間が作られる空間208に、送風するために、安価で簡単な構造をしている単相のACモータを使用したファンモータ110や112を使用している。ファンモータ110や112はリラクタンスモータであっても良いし、リラクタンスモータにさらに永久磁石を備えたACモータであっても良い。また誘導型のモータであっても良い。
ファンモータ110や112は一例としてリラクタンスを利用したACモータであり、以下で説明するが、複数のモータに対して同じ周波数の交流電圧を供給することにより、前記複数のモータを運転することが可能なモータである。ファンモータ110もファンモータ112も同じ構造であり、代表して以下ファンモータ112でその構造を説明する。
ファンモータ112は、モータ部130とファン部120を備えている。モータ部130は固定子と回転子を備えており、前記回転子は磁性材である鉄で作られたシャフト134を有し、シャフト134にリラクタンストルクを発生するための突起136が形成されている。また前記固定子は、固定子鉄心に巻回された固定子巻線132を備えており、固定子巻線132は並列接続された2つの巻線を有している。一方の巻線には直列にコンデンサが接続されており、前記コンデンサにより2つの巻線に流れる電流に位相差が生じる。並列接続された2つの巻線に交流電圧を供給すると、完全な回転磁界ではないが回転磁界として作用する交番磁界が突起136に加わる。シャフト134に形成された突起136によりリラクタンストルクが発生し、シャフト134が回転する。
モータ部130の回転軸を回転軸線19で示す。回転軸線19はシャフト134の長軸と一致している。ファン部120は、シャフト134に固定されて回転するファン(図示せず)有しており、回転軸線19方向から空気を吸い込み、図示しない前記ファンの回転により前記ファンの径方向に吸い込まれた空気が導かれ、送風口122から吐出する。送風口122から吐出した空気はダクト140やダクト142を介して冷却すべき場所に導かれる。
図2に示すファンモータ112は、例えば図5に示すように超電導磁石21の外側と外側カバー202との間で、超電導磁石21の外側に近接して設けられている。超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向15がファンモータ112を通る位置では略X軸方向である。
設置されたファンモータ112の回転軸線19はX軸方向を向いており、漏洩磁場の磁束方向15が回転軸線19に沿う方向である。仮に超電導コイル22による漏洩磁場の磁束方向が漏洩磁場の磁束方向15ではなく、漏洩磁場の磁束方向16であったとしても、回転軸線19に対する漏洩磁場の磁束方向16の傾きは小さく、回転軸線19にほぼ沿う方向として作用する。以下で説明するが、回転軸線19と超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向との関係が、図2の関係であれば、ファンモータ112の固定子巻線が発生する変動磁場の影響を低減できる。なお、図2が示すように漏洩磁場の磁束方向とファンモータ112の回転軸線19を直交させない向きに配置することが重要であり、なるべく平行に近づけて配置することが望ましい。
図3には、ファンモータ112の変動磁場の変動幅の大きい方向20Aや20Bと、変動磁場の変動幅の小さい方向17を示した図である。固定子巻線132により発生する磁束18は供給される交流電流に基づいて切り替わる。固定子巻線132には単相交流電流が供給されるため、三相交流電流が供給されるのとは異なり、回転軸線19を中心にした綺麗な回転磁界を発生することはできないが、交互に磁界の極性が切り替わる変動磁場が発生する。この磁界の極性の切り替わりにより、シャフト134に設けられた突起136に回転トルクが発生し、モータ部130が回転する。このため変動磁場の変動幅の大きい方向20Aや20Bでは、磁界の方向が大きく変動する。超電導磁石21の超電導コイル22が発生する磁束が変動幅の大きい方向20Aや20Bであると、モータ部130の固定子巻線132が発生する磁束18と超電導コイル22が発生する磁束とが互いに干渉し合い、モータ部130に悪影響を及ぼし、また超電導コイル22が作る計測用の静磁場に対して悪影響を及ぼす。一方変動磁場の変動幅の小さい方向17は、回転軸線19に沿う方向であり、磁束18の変化が少ない方向である。変動磁場の変動幅の小さい方向17の方向は磁束18の変化量が少ないだけでなく、磁束密度そのものの絶対値が小さく、このため計測用の静磁場へ与える影響が少ない。
なお、本実施例ではシャフト134は突起136を有しており、突起136により回転トルクを発生する。しかし、突起136に限るものではない。図3に示す磁束18の変動に基づいて誘導電流を流すかご型などの短絡回路を形成することにより、回転トルクを発生させることが出来る。従ってリラクタンスモータだけでなく誘導電動機の構成であっても使用可能である。また回転トルクを増大するために、突起136に加え、回転子に永久磁石を固定しても良い。
図3に示すように、MRI装置の超電導磁石による漏洩磁場の磁束方向が、磁束方向15に示すようにファンモータ112の回転軸線19と平行である場合や、磁束方向16に示すようにファンモータ112の回転軸線19と平行に近い場合は、漏洩磁場によるファンの動作への影響を小さくすることができ、超電導磁石21の漏洩磁場によるモータ部130の風量の低下や動作停止を避けることができる。また、このときファンモータが発生する変動磁場が、漏洩磁場の磁束方向15や漏洩磁場の磁束方向16の方向では、小さいので、モータ部130による計測のための均一な静磁場への影響が少ない。超電導磁石21の漏洩磁場の磁束方向とファンモータ112の回転軸線上19の方向が平行に近ければ近いほど、モータ部130と超電導磁石21との干渉の影響を小さくできる。ここで、漏洩磁場と変動磁場の方向が平行であれば、互いの磁束の向きは逆向きでも構わない。
図4は、図3に示すファンモータ112をY軸方向、すなわち垂直方向から見た図である。固定子巻線132が発生する磁束18は、モータ部130の中心側すなわち回転軸線19側がN極で、モータ部130の外周側がS極の状態である。しかし、交流電流が固定子巻線132に供給されているので、交流電流の切り替わりに従って極性が反転する。このように磁束18の極性が交流電流の変化に従って常に反転するので、磁束方向20Aや20Bでの磁界が大きく変動する。一方磁束方向17の方向は変動が少ないことが分かる。さらに固定子巻線132が発生する磁束自身が非常に少ないことが分かる。上述したように漏洩磁場の磁束方向15や磁束方向16に対する磁束18による悪影響が少ないことが分かる。また漏洩磁場の磁束方向15や磁束方向16の磁束が、逆に固定子巻線132の磁界に与える影響が少ないこともわかる。
MRI装置の超電導磁石の漏洩磁場方向とファンモータ112の回転軸線19の向きが出来るだけ平行になるように配置した例を図5に示す。図5は既に一部説明したが、円筒型のガントリ200の長軸方向(Z軸方向)と水平方向(X軸方向)のガントリ200の断面図の一部である。ここでは、被検体が入る空間208を挟んだ両側に超電導磁石21が存在するが、図5は超電導磁石21の半分(超電導磁石の長手方向の長軸中心軸23より一方側)のみ表示する。超電導磁石21内には、超電導コイル22が超電導磁石21の水平方向の中心軸24に対して対称となるように複数、設けられている。ここでは簡単のため、2つの超電導コイル22のみ表示する。複数の超電導コイル22は、ヘリウム容器26内で液体ヘリウムにより低温に維持されている。断熱効果を高めるために、輻射シールド27や真空容器28が設けられている。超電導コイル22により作られた磁束の漏洩磁場の磁束方向15は、被検体が入る空間208から外向きに放射状に拡がっている。
ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と平行となるような位置に、配置することが望ましい。例えば、漏洩磁場の磁束方向がX軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合、ファンモータ112の回転軸線19がX軸方向を向くように配置することが望ましい。また、漏洩磁場の磁束方向がZ軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合であれば、ファンモータ112の回転軸線19がZ軸方向を向くように配置することが望ましい(図示せず)。このとき、ファンモータ112の回転軸線19の向きは正の向きであっても負の向きであっても構わない。本実施例では、漏洩磁場の磁束方向がX軸方向のあたりにファンモータ112を配置する場合について説明する。
図6は、図5と略同じ位置にファンモータ112を設けた図であるが、ファンモータ112の向きが図5の状態と異なっており、ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と直交するようにファンモータ112を配置した場合の図である。ファンモータ112の回転軸線19はY軸方向、すなわち垂直方向を向いている。このため超電導磁石21からの漏洩磁場の磁束方向15は固定子巻線132が作る磁束の方向と略一致あるいは近い方向となる。このため超電導磁石21が作る磁場がファンモータ112の動作に悪影響を及ぼす。さらにファンモータ112が作る変動磁場が、超電導磁石21が作る静磁場の均一性に悪影響を及ぼす。このようなことから図5で説明した方向に(つまり、ファンモータ112の回転軸線19が漏洩磁場の磁束方向15と平行となるように)ファンモータ112を設置することが望ましい。
漏洩磁場の影響をなくすためには鉄などの磁性材でファンモータ112をシールドする方法も考えられる。しかし、磁性材でファンモータ112をシールドする場合に以下のとおり色々な問題がある。ファンモータ112を磁性材でシールドすることのみで上記課題や以下で説明する課題に対応することは困難である。上述した方法あるいは以下でさらに説明する方法を使用して説明する課題を解決することが望ましい。
ファンモータ112は定期的な交換が必要な消耗品であることから、鉄などのシールド材でシールドした場合に、以下のような問題が生じる。シールドのみで完全に影響をなくすようなシールド構造を使用すると、超電導磁石21による吸引力のため作業不可能もしくは非常に危険を伴った作業となる。もしくはファンモータ112の交換のためMRI装置の磁場発生部を消磁する必要が生じる。また、ファンモータ112の効能および価格を考慮すると、一々消磁によることはコスト的に全く見合わないものとなる。そのため、ファンモータ112を鉄などの磁性体で完璧にシールドする方法は望ましくない。
しかし、上述のように超電導磁石21の漏洩磁場とファンモータ112の回転軸線19とが平行に近くなるようにファンモータ112を配置したとしても、画質劣化の影響を完全に抑制することは困難である。さらに今後MRI装置の性能が向上するにつれて、益々問題となる。図5のようにファンモータ112を配置した場合の、ファンモータ112の変動磁場によるSSFPシーケンスの場合の画質劣化例を図7に示す。
図7(A)は、ファンモータ112による変動磁場の影響が、撮像空間に及ぼした場合の画質劣化を示した実験結果であり、撮像空間に円形の1個のファントムを置いて撮影した画像である。本来ファントム画像31のみが表示されるはずである。しかし、ファンモータ112による変動磁場の影響が撮影空間の静磁場の均一性に悪影響を及ぼすことにより、複数の偽像32がずれながら重なるように表示される。特に、以下で説明するようにファンモータ112を対に配置するのではなく、図5に示すように1個のファンモータ112のみ動作させた場合には、図7(B)に示す画像が表示される。図7(A)および図7(B)で、符号34は撮像空間の撮像範囲(FOV)を示す。
撮影空間におかれたファントムは1個であり、表示装置70の表示画面には真のファントム画像31が1つ表示されるはずである。しかし後述する図8のファンモータ112あるいはファンモータ110の変動磁場の影響を受けると図7(A)に示すように位相方向にずれた複数の偽像32が表示される。さらにファンモータ112あるいはファンモータ110を1つだけ図5の如く動作させた場合には、図7(B)に示すように偽像32に加え輝度斑33が表示される。この輝度斑33は偽像32の信号値より信号の強度が強いので、画質劣化がより顕著となってしまう。
このような輝度斑33は時間的および空間的な磁場の変化によるものだと考えられている。つまり、ファンモータ112やファンモータ110を1つだけ動作させたことにより、変動磁場の影響が非対称に現れて、輝度斑33が発生するものだと考えられる。このような輝度斑33を抑制することができれば、画質劣化を大幅に改善することができる。
図8に示す実施例は、輝度斑33を抑制することができる実施例である。図8は超電導磁石の長軸中心軸23を含む断面図を示している。空間208を挟んで対称な構造を有する超電導磁石21に対して、空間208の長軸方向に沿って、しかも図示における超電導磁石21の中央に描かれた超電導磁石の長軸中心軸23に対して、略対称の状態にファンモータ112が配置さている。
超電導磁石の長軸中心軸23はZ軸に沿っており、超電導磁石の長軸中心軸23に対して1対のファンモータ112が対称的に配置されている。さらにこれら1対のファンモータ112は超電導磁石21の外側に超電導磁石21に近接して設けられており、各ファンモータ112の回転シャフト134はX軸に沿っている。そして、2個のファンモータ112からそれぞれ送風ダクト142を介して、照射コイル38が配置されている空間に風が送られる。このように一対のファンモータ112を超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称な配置とすることにより、変動磁場が略対称的に静磁場に影響するようになり、互いの影響をある程度相殺できる。2つのファンモータ112の影響が該に相殺し合うことで、図7(B)に記載の輝度斑33を抑制することができる。当然ではあるがファンモータ112からの風量も1個の場合に比べて多くなり、照射コイル38への冷却能力も増加する。
ファンモータ112の適切な配置についての詳細は後述するが、図8に示すようにファンモータ112が2個である場合、超電導磁石21の長手方向の長軸中心軸23に対して略対称に配置すること、又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置することが望ましい。ただし、図2で示したように漏洩磁場の方向とシャフト134とが極力平行となるような位置が望ましい。また、図8に示すようにファンモータ112の向きも長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称とすることが更に望ましい。以降では、ファンモータ112を長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置する場合には、ファンモータの向きも長軸中心軸23又は前記垂直面に対して略対称に配置することとする。
また、長軸中心軸23に垂直な面であって超電導磁石21の長軸中心軸23の中央を通る面を中央面と定義し、この中央面と超電導磁石21の断面との交線を中心軸24と定義すると、中心軸24に対して、一対のファンモータ112とは中心軸24又は上記中央面に対して略対称に他の一対のファンモータ110が設けられている。他の一対のファンモータ110は互いに超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称にしかも超電導磁石21の外周に隣接して配置されている。2つのファンモータ110の各回転軸線19はX軸方向を向いている。このように各対のファンモータ112あるいはファンモータ110を超電導磁石の長軸中心軸23に対して略対称又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に近い状態に配置することにより、撮像空間に到達する各ファンモータ110やファンモータ112の変動磁場の影響を互いに相殺するように作用させることができ、図7(B)で説明した複数の偽像32に対して表れる複数の輝度斑33の信号を抑制することが可能となり、複数の輝度斑33の画像が表れるのを抑制できる。このため画像の劣化を抑制できる。
上記のようにファンモータ110又はファンモータ112が複数個設置されている場合には、例えば一対のファンモータ112で照射コイル38を冷却することが望ましく、他の一対のファンモータ110で被検体が入る空間208を冷却することが望ましい。このため、一対のファンモータ112でダクト142をそれぞれ介して照射コイル38が設けられている空間を冷却し、他の一対のファンモータ110でダクト140をそれぞれ介して空間208を冷却するように構成することが望ましい。
図9は、一対のファンモータ110あるいはファンモータ112を、前記変動磁場の影響を抑制するにはどのように配置したらよいかの一例を説明する、説明図である。ガントリ200の内部に配置された超電導磁石21の内部に設けられている超電導コイル22の超電導磁石21の長軸中心軸23に対するファンモータ112の配置を図9は示している。超電導磁石21の長軸中心軸23は空間208の中心軸と考えても良い。ファンモータ112の配置を説明し易くするために、図9の如くファンモータ112A〜ファンモータ112Dの符号をつける。
ファンモータ112A〜ファンモータ112Dの各回転軸線(図示せず)がそれぞれ超電導磁石21の漏洩磁束に沿う方向となるようにファンモータ112A〜ファンモータ112Dが配置されているものとする。
超電導コイル22の超電導磁石21の長軸中心軸23を中心とする円周上に対を成す2つのファンモータ112を配置することで、各ファンモータ112が発生する変動磁場に起因する悪影響の内、特定成分の悪影響が互いに相殺し合うこととなり、構成されたMRI画像の質を改善する効果がある。例えばファンモータ112Aを例として説明すると、ファンモータ112Bあるいはファンモータ112C、ファンモータ112Dを設けることにより、構成されたMRI画像の質を改善する効果がある。
さらに、ファンモータ112Aに対してファンモータ112Bを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Aに対してファンモータ112Cを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Aに対してファンモータ112Dを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23を通る水平面(X-Y面)に対して略対称な配置関係とすることで、ファンモータ112Aが与える変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果がより顕著である。
また、ファンモータ112Dを中心に考えると、ファンモータ112Dに対してファンモータ112Cを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Dとファンモータ112Bを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23に対して略対称な配置関係とすること、あるいはファンモータ112Dに対してファンモータ112Aを対として配置すること、言い換えると長軸中心軸23を通る水平面(X-Y面)に対して略対称な配置関係とすることで、ファンモータ112Dが与える変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果がより顕著である。
特にファンモータ112Aに対してファンモータ112Cを対として配置した場合、あるいはファンモータ112Bに対してファンモータ112Dを対として配置した場合には、変動磁場の悪影響の内多くの成分に起因する悪影響が互いに相殺されるので、大きな効果がある。
検討の結果、ファンモータ112は図9の超電導磁石の長軸中心軸23を通る垂直面すなわちY軸に沿うように表示した垂直面25から一方側および他方側にX軸に沿うように長さが等しくなるように配置する、例えば互いに長さY1はなれた位置に配置することで変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果が得られる。他の表現をすると、対を成すファンモータ112を垂直面25に対して略面対称な配置、あるいは超電導磁石の長軸中心軸23に対して略線対称な対置にすることにより、ファンモータ112に起因する変動磁場の悪影響を互いに相殺する効果が得られる。今、ファンモータ112について説明したが、ファンモータ110においても同様である。
上述超電導磁石の長軸中心軸23(Z軸)に対して略線対称になるようにファンモータ112を配置する、あるいは超電導磁石の長軸中心軸23を通る垂直面に対して略面対称となるようにファンモータ112を配置すると上記効果が得られる。ここで、デザイン的な面や安全性の面から、ファンモータ112をガントリ200のカバー202の内側に配置することが望ましい。また、ファンモータやダクトのメンテナンスや検査などを考えると、ガントリ200が置かれている床面に近い部分、例えば図9のファンモータ112Aやファンモータ112Bの位置に配置することが望ましい。
次にファンモータ112が4個の場合の実施例を、図10を用いて説明する。この場合のファンモータ112の配置が、図8の配置と類似である。ファンモータ112が4個の場合に超電導磁石21の長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対して略対称に配置されている。
また、上述のとおりこれら4個のファンモータ112の回転軸線は、超電導磁石の長軸中心軸23や水平方向の中心軸24に対して略対称となるようにファンモータ112を配置することで、ファンモータ112に起因する磁気変動の影響を抑えることができ、偽像32の輝度斑33の影響を抑制することができる。この応用として、4の倍数個のファンモータ112を用いる場合も同様の法則に則って配置することで偽像32の輝度斑33を抑制することができる。
図10の実施例では、ファンモータ112が4の倍数個ある場合において、長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称に配置されるのが望ましいことを説明したが、ファンモータ112が2の倍数個でかつ4の倍数個ではない場合、例えば6個の場合について説明する。
図11は、ファンモータ112が6個の場合の配置例である。6個のうち4個のファンモータ112は、図10で示したものと同様に、長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称な配置とする。残る2個は、図8の一対のファンモータ112で説明したのと同様であり、長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称であれば任意の位置に配置してもそれなりの効果が得られる。ただし、漏洩磁場の方向15とシャフト134とが極力平行となるような位置が望ましい。
実験の結果により、ファンモータ112を偶数個配置する場合には、まず最初に長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置することが望ましい。次に水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称に配置することが望ましい。
以上より、ファンモータ112を4×n個設置する場合、超電導磁石21の長手方向の長軸中心軸23又は長軸中心軸23を通る垂直面に対して略対称に配置されかつ、水平方向の中心軸24又は中央面に対しても略対称な配置とすることが望ましい。また、ファンモータ112が2×(2n-1)個の場合、2n対のファンモータ112略対称配置、言い換えると長手方向の長軸中心軸23又は垂直面と水平方向の中心軸24又は中央面に対して略対称配置とし、残る1対は長手方向の長軸中心軸23に対して略対称配置とすることが望ましい。このように配置することで偽像32の輝度斑33を抑制することができる。
4個以上のファンモータ112を配置した場合、被検体用空冷ファンモータと照射コイル空冷ファンモータなど2系統以上となる可能性がある。この場合、少なくとも超電導磁石21の長手方向の長軸中心軸23に略対称配置された一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は同じような磁束が発生するように動作させることが望ましい。共通の交流電源から前記一対のファンモータ112あるいはファンモータ110に交流電力を供給することで、一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は同じような磁束を発生する。この場合に一対のファンモータ112あるいはファンモータ110は互いに変動磁場を相殺する方向に作用し、前記輝度斑33が表示される影響を低減できる。
例として図8や図10で説明した、4個のファンモータ110あるいは112を配置した場合のファンモータの運転パターンを、図12を用いて説明する。図12(A)は、超電導磁石21の長手方向の長軸中心軸23に略対称な1対のファンモータ110と1対のファンモータ112を備えており、これらをそれぞれA群とB群とする。A群およびB群を構成する1対のファンモータ110と1対のファンモータ112はそれぞれ、中心軸24又は中央面に対して略対称に配置し、その距離はY2である。
図12(B)には、好ましい運転パターンを示す。運転パターン1はA群とB群の両方を動作させた場合である。このときA群とB群には必ずしも共通する交流電圧を供給する必要がないが、それぞれの群のファンモータ、すなわち1対のファンモータ110あるいは他の1対のファンモータ112には、共通の電源から電圧を供給することが望ましい。
運転パターン2は、A群のファンモータ112だけ動作させた場合であり、運転パターン3は、B群のファンモータ112だけ動作させた場合である。従って、もしファンモータの運転を停止する場合、あるいは運転を開始する場合に、1対のファンモータ単位、言い換えると図12に示す群単位で制御することが望ましい。運転パターン1〜3の効果を比較した場合、A群とB群の両方を動作させた場合である運転パターン1が、他の運転パターン2や3よりファンモータ112の数が倍であるため冷却効果は大きく、偽像32の輝度斑33を抑制できる効果も大きい。パターン2と3の効果は略同じである。
以上ファンモータ110や112に起因する変動磁場の影響の低減策について説明したが、さらにファンモータ110や112が発する変動磁場の影響を抑制する方法を、図13を用いて説明する。図13はファンモータ112のモータ部130を電気抵抗の小さい材料で作られた板、例えば銅板やアルミ板で覆うための導体カバー138を用いた例である。画質劣化を引き起こす原因となる変動磁場は、供給される交流電源の周波数に基づき周期的に変化するので、電気抵抗の小さい導体で覆うことにより、渦電流を利用して磁気遮蔽することができる。モータ部130を覆う導体カバー138には、変動磁場による磁束の変化に基づき、前記磁束を打ち消す方向の渦電流が常に流れる。導体カバー138の電気抵抗が小さければ小さいほど渦電流は大きくなり、磁気遮蔽効果が向上する。また銅板やアルミ板は、磁性材ではないので、超電導磁石21からの磁気に対して反応しない。
従って非磁性体でしかも抵抗値の小さい銅板やアルミ板を使用することで磁気遮蔽効果が向上するのに加え、MRIが有する磁気の影響を受けないので、ファンモータ112のメンテナンスなどが容易である。
図13はファンモータ112のモータ部130を覆っているが、ファンモータ112全体を覆うようにしても良い。また、ファンモータ112について記載したがファンモータ110も同様である。
上述したファンモータ112は、計測空間に対してファンモータ112が発生する変動磁場の影響をできるだけ及ぼさないようにすることが望ましいことは上述したとおりである。このため、共通の交流電源から対を成す複数のファンモータ110あるいは112を同時に共通の電源で駆動できることが望ましい。上述したように固定子が発生した磁場の周期的な極性変化に基づいて回転子の突極あるいは回転子に設けられた永久磁石に回転トルクを発生する構造のモータや、誘導電流を利用した誘導電動機では、固定子が発生した磁場の回転成分に対して回転子が追随しながら回転する構造である。このため共通の交流電源から複数のモータを駆動する構成において使用するのに適している。
また上述した構造のモータでは、固定子が発生する磁場の極性切り替えを、供給される交流電源の変化に基づいて行うことができ、特別なスイッチング手段がいらない。従って、電気的なノイズが少なく、他の機器へ及ぼす影響が少ない。DCモータを使用すると、DCモータが有する整流子などが必要である。このためDCモータからの電気的なノイズの発生が問題となる。さらにモータの寿命が短い問題がある。ACモータはこのような問題が無く、望ましい。また制御の簡素化の観点やモータを駆動する電源の観点から単相交流モータがファン用のモータとして最適である。
また、ファンモータ112が発する変動磁場による画質劣化を抑制する方法として、ファンモータ112を駆動する交流電源の周波数を変更し、影響の少ない周波数でファンモータ112を駆動する方法もある。動作周波数を変更すると必然的に発生する変動磁場の周波数も変化する。この場合に当然であるが変動磁場の高調波成分も変化する。MRI装置の原理として周波数成分を用いるため、偽像の発生状況も変化する。
図14は、図7と同様に、円筒状のファントムを計測空間において計測した画像であり、四角で囲まれた範囲は、撮像空間の撮像範囲34を示す。図14(A)と(B)に周波数が異なった場合の画質劣化の例を示す。図14(A)では周波数がAであり、図14(B)では周波数がBであり、周波数がBの方が偽像32の数が少なく、偽像32の位置も離れている。このように偽像32の数と出現位置はファンモータ110やファンモータ112を駆動する交流電源の周波数に依存する。この現象を利用し、偽像32が撮像範囲34より外側にシフトする周波数で動作させるようにする。なお、任意の周波数にするためには交流電力を発生する回路が必要であり、例えばインバータ52を用いて任意の周波数の交流電力を発生することができる。
図15は、ファンモータ110やファンモータ112に供給する任意の周波数の交流電力を発生する回路である。任意の周波数の交流電力を発生するためにインバータ52には、電源54から直流電力が供給される。直流電力は例えば交流電力を整流してコンデンサに蓄えることで供給することが出来る。
インバータ52は制御部56によりスイッチングタイミングが制御され、交流電力を発生することが出来る。制御部56はインバータ52のスイッチングタイミングを変えることにより、発生する交流電力の周波数を変えることができる。スイッチ58を閉じることにより、A群のファンモータ112とB群のファンモータ110に同じ周波数の交流電力を供給することが出来る。またスイッチ58やスイッチ59を制御することにより、図12(B)で説明した運転パターンを実行することが可能となる。
図16に示すフローチャートは、インバータ52に制御指令として与える交流電力の周波数を演算などにより求め、さらに冷却の必要性を判断してスイッチ58やスイッチ59を制御して、ファンモータ110やファンモータ112を運転あるいは停止するためのフローチャートである。なおこの明細書で演算の概念に、既知のデータを予め記憶しておき検索により必要なデータを求める処理も含める。図16のフローチャートは例えば一定時間毎に実行される(ステップS1002)。このためインバータ52が発生する交流電力の周波数の変更が、輝度斑33の出現や偽像32の出現に関する画質劣化の観点で、改善方向か悪化の方向かを検知しながら改善の方向を自動的に探ることも、可能となる。
ステップS1004で現在のMRI装置100の動作状態が検知される。このステップで、既に入力されている情報から、交流電力の周波数の設定に必要なデータを取り込み、またスイッチ58やスイッチ59の制御に必要なデータを取り込む。次にステップS1006で、照射コイル38が設けられている空間の温度や被検体が置かれている空間208の温度が計測される。さらにステップS1008で、今ファンモータ110やファンモータ112に供給されている交流電力の周波数の状態で撮影が行われたかどうかを判断し、撮影が行われた場合には、撮影された画像に偽像32や輝度斑33が表れているかどうか、またさらに以前に撮影された撮影画像の質に対して偽像32や輝度斑33の点で改善されているか、劣化しているかを検知する。
上記ステップS1004や上記ステップS1008で検知された情報に基づき、ステップS1010で、輝度斑33の信号強度を低減させたり、偽像32を撮像範囲34の外に移動させたり、するための交流電源の周波数を求める演算処理を行い、より好ましい交流電源の周波数を得る。得られた交流電源の周波数が一時的に保持される。ステップS1006で検知された温度に基づいて、照射コイル38が置かれている空間へ送風される風量や空間208への風量が求められ、この結果もステップS1010での演算に反映される。ファンモータ110やファンモータ112のモータ部130の回転速度は、交流電源の周波数に依存する。従って交流電源の周波数を増加させることにより、ファンモータ110やファンモータ112の風量を増加させることができる。
ステップS1012では、ステップS1006で検知された温度に基づいて、照射コイル38が置かれている空間や空間208への送風を行うかどうかの判断が為される。照射コイル38が置かれている空間や空間208へ送風する場合には、スイッチ58やスイッチ59が閉状態に制御され、送風が停止される場合にはスイッチ58やスイッチ59が開状態に制御される。
次にステップS1014で、インバータ52を制御するための周波数が制御部56からインバータ52に送られる。これにより、インバータ52は送られてきた周波数に基づいて交流信号を発生し、出力する。電源54から送られてきた商用の電力は一旦インバータ52で直流に直され、制御部56からの周波数の指令値に従い直流を再び指令された周波数の交流電力に変換する。このようにして、A群やB群を構成するファンモータ112やファンモータ110の運転を、A群やB群の単位で制御し、またファンモータ112やファンモータ110に供給する交流電力の周波数を最適に制御できる。上述したようにA群やB群の単位でファンモータを制御することにより、ファンモータが発生する変動磁場の影響を低減できる。またファンモータに供給する交流電力の周波数を適切に決定することにより、図14で説明のごとく、画質の低下を低減できる。ファンモータが発生する変動磁場は、きれいな回転磁場を発生するモータに比べ高調波成分の割合が高く、供給する交流電源の周波数を変更することで、ファンモータが発生する変動磁場の高調波成分の状態が比較的大きく変化することが多い。このため供給する交流電源の周波数を変更することにより、画質の低下を低減できる効果が期待できる。
以上のように、本発明の実施例に係るMRI装置は、超電導磁石近傍にファンモータを配置して効率的に被検体を冷却することができる。また、ファンモータの配置を最適化したことにより、高機能シーケンスの画質劣化を抑制することができる。
15,16 漏洩磁場の磁束方向、17 変動磁場の変動幅の小さい方向、18 固定子巻線132により発生する磁束、19 回転軸線、20A,B 変動磁場の変動幅の大きい方向、21 超電導磁石、22 超電導コイル、26 ヘリウム容器、27 輻射シールド、28 真空容器、30 受信装置、31 ファントム画像、32 偽像、33 輝度斑、33、34 撮像範囲、36 傾斜磁場コイル、38 照射コイル、50 テーブル、52 インバータ、54 電源、56 制御部、58,59 スイッチ、60 制御処理装置、70 表示装置、80 入出力装置、100 MRI装置、110,112 ファンモータ、120 ファン部、122 送風口、130 モータ部、132 固定子巻線、134 シャフト、136 突起、138 導体カバー、140,142 ダクト、200 ガントリ、202,206 カバー、204 カバーを取り除いた部分、208 空間