JPWO2014080703A1 - ガレクチン9の改変タンパク質 - Google Patents

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Abstract

野生型ガレクチン9と実質的に同質の生理活性を保持し、且つ、プロテアーゼ安定性、溶解性および収率に優れるガレクチン9改変体を提供する。本発明のガレクチン9改変体は、N末端領域およびC末端領域からなる下記NCRDと下記CCRDとを有し、前記NCRDのC末端と前記CCRDのN末端とが、直接的または間接的に結合したタンパク質である。前記NCRDは、(N1)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド。前記CCRDのN末端領域は、(C−N1)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1〜17個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチドであり、前記C末端領域は、(C−C1)配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド。

Description

本発明は、ガレクチン9の改変タンパク質に関する。
野生型ガレクチン9は、T細胞の分化またはホメオスタシス等を通じて、過剰な免疫反応の抑制または癌に対する免疫の活性化等の免疫システムの破綻を修正する機能を有する。野生型ガレクチン9は、二つの糖鎖認識ドメイン(Carbohydrate Recognition Domain:CRD)と、それらをつなぐリンクペプチド領域とからなる。そして、大腸菌を宿主として生産されたリコンビナントである野生型ガレクチン9は、腫瘍細胞に対する直接的な作用(すなわち、腫瘍細胞の細胞間接着と、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する活性)および免疫系を介した作用によって、癌の転移抑制と退縮とを誘導することが示唆されている。また、野生型ガレクチン9は、非活性化リンパ球には作用せず、活性化T細胞、特に過剰免疫反応の原因となるCD4陽性T細胞のアポトーシスを誘導することも明らかにされている。さらに、リウマチにおいて関節の変形等に関与する滑膜細胞に対し、強力なアポトーシス誘導能を持つことも明らかとなっている。
このような野生型ガレクチン9の機能は、野生型ガレクチン9が、様々な疾患に対する治療薬として有用となることを示している。しかし、野生型ガレクチン9を、実際に治療薬として流通させるには、プロテアーゼ感受性、低溶解性および組換えタンパク質の低収量という3つの問題が存在する。そして、これらの問題のうち、野生型ガレクチン9のプロテアーゼ感受性の問題については、本発明者により、プロテアーゼに対してより安定な分子構造を有する安定化ガレクチン9が報告されている(特許文献1)。しかしながら、低溶解性および組換えタンパク質の低収量の問題については、有効な解決手段が報告されていない。したがって、野生型ガレクチン9の優れた機能を利用した医薬を製品化するために、溶解性および収量に優れたガレクチン9改変体の提供が、強く求められている。
国際公開番号WO2005/093064号パンフレット
そこで、本発明は、野生型ガレクチン9と実質的に同質の生理活性を保持し、且つ、プロテアーゼ安定性および溶解性に優れるガレクチン9改変体の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、NCRDとCCRDとを有し、前記NCRDのC末端と前記CCRDのN末端とが、直接的または間接的に結合したタンパク質またはその塩であって、
前記NCRDは、
(N1)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
(N2)配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド、または、
(N3)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド
であり、
前記CCRDは、
N末端領域およびC末端領域からなり、且つ糖結合能を有するペプチドであり、
前記N末端領域は、
(C−N1)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1〜17個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチドであり、
前記C末端領域は、
(C−C1)配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
(C−C2)配列番号5で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、または、
(C−C3)配列番号5で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるペプチドである
ことを特徴とする。
本発明の核酸は、前記本発明のタンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする。
本発明の発現ベクターは、前記本発明の核酸を有することを特徴とする。
本発明の形質転換体は、前記本発明の核酸または前記本発明の発現ベクターを有することを特徴とする。
本発明の医薬は、前記本発明のタンパク質およびその塩、前記本発明の核酸、ならびに前記本発明の発現ベクターの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする。
本発明のタンパク質またはその塩は、野生型ガレクチン9の改変体であり、以下、本発明のガレクチン9改変体という。
本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチン9と同質の生理活性を保持し、且つ、プロテアーゼ安定性(抵抗性または感受性ともいう)および溶解性に優れ、前記溶解性によって、例えば、さらに、組換えタンパク質として製造した際の収率にも優れる。このように、本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチンの生理活性を保持するだけでなく、その安定性、取扱性および製造時の収率にも優れることから、医薬原料として極めて有用といえる。
図1は、安定化ガレクチン9の配列を示す概略図である。 図2は、本発明の実施例1において、ガレクチン9改変体のSDS−PAGEの結果を示す写真である。 図3は、本発明の実施例1において、欠失型のガレクチン9改変体の濃度を示すグラフである。 図4は、本発明の実施例1において、欠失・置換型のガレクチン9改変体の濃度を示すグラフである。 図5は、本発明の実施例1において、プロテアーゼ安定性を示すグラフである。
1.ガレクチン9改変体
本発明のガレクチン9改変体は、前述のように、NCRDとCCRDとを有し、前記NCRDのC末端と前記CCRDのN末端とが、直接的または間接的に結合したタンパク質またはその塩であって、
前記NCRDは、
(N1)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
(N2)配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド、または、
(N3)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド
であり、
前記CCRDは、
N末端領域およびC末端領域からなり、且つ糖結合能を有するペプチドであり、
前記N末端領域は、
(C−N1)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1〜17個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチドであり、
前記C末端領域は、
(C−C1)配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
(C−C2)配列番号5で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、または、
(C−C3)配列番号5で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるペプチドである
ことを特徴とする。
野生型ガレクチン9は、前述のように、2つの糖認識ドメイン(CRD)を有するタンパク質である。本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチン9と実質的に同質の生理活性を有し、且つ、野生型ガレクチン9と比較して、優れたプロテアーゼ安定性および溶解性を示す。さらに、本発明のガレクチン9改変体は、例えば、前記溶解性によって、組換えタンパク質としての製造時において、優れた収率を示す。本発明において、「実質的に同質の生理活性」とは、例えば、前記ガレクチン9改変体の生理活性が、野生型ガレクチン9の生理活性と同じ種類の活性または類似する種類の活性であることを意味する。野生型ガレクチン9の生理活性は、例えば、特定の糖鎖に対する特異的な結合活性、細胞傷害活性、アポトーシス誘起活性、抗炎症活性、抗アレルギー活性、免疫調節活性、生理的活性または生物学的活性等があげられる。また、本発明において、「野生型ガレクチン9と実質的に同質の生理活性」とは、例えば、疾患の治療等に関連する生理活性を意味し、本発明の課題であるプロテアーゼ安定性、溶解性および収率の意味は含まない。
本発明のガレクチン9改変体は、例えば、野生型ガレクチン9と実質的に同等またはそれ以上の生理活性を有することが好ましい。「野生型ガレクチン9と実質的に同等の生理活性」とは、野生型ガレクチン9と実質的に同質の生理活性が、同程度であることを意味する。実質的に同程度またはそれ以上とは、野生型ガレクチン9の生理活性に対して、例えば、約0.001〜約100倍であり、好ましくは約0.01〜約100倍、より好ましくは約0.1〜約100倍、さらに好ましくは約0.5〜約100倍が例示できる。
本発明において、「溶解性」とは、例えば、水性媒体に対する溶解性を意味し、前記水性媒体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等の各種緩衝液、これらの混合液等があげられる。
本発明のガレクチン9改変体において、前記NCRDは、N末端側のC型糖認識ドメイン(CRD)であり、前記CCRDは、C末端側のC型糖認識部位(CRD)である。
本発明のガレクチン9改変体において、前記NCRDは、前述のように、(N1)、(N2)および(N3)のいずれかのペプチドである。前記NCRDは、前述のように、糖結合能を有するペプチドである。
前記(N1)のペプチドは、配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドである。
配列番号1:148aa
MAFSGSQAPYLSPAVPFSGTIQGGLQDGLQITVNGTVLSSSGTRFAVNFQTGFSGNDIAFHFNPRFEDGGYVVCNTRQNGSWGPEERKTHMPFQKGMPFDLCFLVQSSDFKVMVNGILFVQYFHRVPFHRVDTISVNGSVQLSYISFQ
前記(N2)のペプチドは、前記(N1)のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドである。前記(N2)のペプチドは、特に制限されず、前記(N1)のペプチドと同等の機能を有していればよく、具体的に、糖結合能を有していればよい。前記1または数個は、例えば、1〜45個、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、さらに好ましくは1〜7個、特に好ましくは、1個、2個または3個である。
前記(N3)のペプチドは、前記(N1)のアミノ酸配列と70%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるペプチドである。前記(N3)のペプチドは、特に制限されず、前記(N1)のペプチドと同等の機能を有していればよく、具体的に、糖結合能を有していればよい。前記同一性は、例えば、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは、85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記CCRDは、前述のように、N末端領域およびC末端領域からなり、且つ糖結合能を有するペプチドである。前記N末端領域および前記C末端領域を、それぞれ以下に示すが、これらは、連結した状態で、前記CCRDとして糖結合能を有していればよい。
前記CCRDにおける前記N末端領域は、前記(C−N1)のペプチド、すなわち、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1〜17個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチドである。前記N末端領域が、このようなアミノ酸の欠失を有することによって、前述のような本発明の効果を示すガレクチン9改変体が構成される。配列番号3において、10番目および11番目のアミノ酸(X)は、プロリンまたはヒスチジンであり、好ましくはいずれか一方がプロリンであり、XXは、例えば、Pro−Pro(PP)、Pro−His(PH)またはHis−Pro(HP)が好ましい。また、配列番号3において、12番目および13番目のアミノ酸残基(X)は、プロリンまたはアラニンであり、好ましくは、いずれか一方がプロリンであり、XXは、例えば、Pro−Pro(PP)、Pro−Ala(PA)またはAla−Pro(AP)が好ましい。
配列番号3:17aa
TPAIPPMMYXXXXYPMP
前記(C−N1)のペプチドにおいて欠失するアミノ酸残基数は、その下限が、1個であり、好ましくは6個であり、より好ましくは8個であり、その上限が、17個であり、好ましくは14個であり、より好ましくは13個であり、さらに好ましくは12個であり、その範囲は、例えば、6〜14個が好ましく、より好ましくは8〜14個または9〜14個であり、さらに好ましくは8〜13個または9〜13個、特に好ましくは、10〜12個である。なお、本発明において、数値範囲の記載は、その範囲内に含まれる値の開示も意味する。すなわち、例えば、6〜14個の記載は、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個および14個の開示を意味する。
前記(C−N1)のペプチドにおけるアミノ酸の欠失は、例えば、連続したアミノ酸の欠失および不連続のアミノ酸の欠失のいずれでもよい。好ましくは、連続したアミノ酸の欠失であり、特に、N末端のアミノ酸から連続する欠失であることが好ましい。また、前記N末端領域において、連続したアミノ酸の欠失と不連続のアミノ酸の欠失の両方が存在してもよい。連続したアミノ酸の欠失としては、N末端のアミノ酸を1番目として、例えば、前述の個数のアミノ酸を欠失することが好ましく、具体例として、例えば、6〜14個が好ましく、より好ましくは8〜14個または9〜14個であり、さらに好ましくは8〜13個または9〜13個、特に好ましくは、10〜12個である。
前記(C−N1)のペプチドにおいて、プロリン残基が保存されていることが好ましい。具体的には、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、10番目、11番目、12番目、13番目、15番目および17番目からなる群から選択された少なくとも一つのアミノ酸残基が、プロリンであることが好ましい。また、前記配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、10番目および11番目のアミノ酸残基は、前述のように、少なくとも一方がプロリンであり、例えば、Pro-Pro(PP)、Pro−His(PH)またはHis−Pro(HP)であることが好ましい。前記配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、12番目および13番目のアミノ酸残基は、前述のように、少なくとも一方がプロリンであり、例えば、Pro-Pro(PP)、Pro−Ala(PA)またはAla−Pro(AP)であることが好ましい。
前記(C−N1)のペプチドは、具体例として、例えば、配列番号7〜20のアミノ酸配列が例示できる。なお、本発明において、前記(C−N1)のペプチドは、以下のアミノ酸配列に制限されない。
前記CCRDにおけるC末端領域のペプチドは、前述のように、(C−C1)、(C−C2)および(C−C3)のいずれかのペプチドである。
前記(C−C1)のペプチドは、配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドである。
配列番号5:129aa
FITTILGGLYPSKSILLSGTVLPSAQRFHINLCSGNHIAFHLNPRFDENAVVRNTQIDNSWGSEERSLPRKMPFVRGQSFSVWILCEAHCLKVAVDGQHLFEYYHRLRNLPTINRLEVGGDIQLTHVQT
前記(C−C2)のペプチドは、前記(C−C1)のアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチドである。前記1または数個は、例えば、1〜39個、好ましくは1〜26個、より好ましくは1〜13個、さらに好ましくは1〜6個、特に好ましくは、1個、2個または3個である。
前記(C−C3)のペプチドは、前記(C−C1)のアミノ酸配列と70%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるペプチドである。前記同一性は、例えば、75%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは、85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
前記N末端領域と前記C末端領域とからなる前記CCRDは、具体例として、例えば、配列番号21〜34のアミノ酸配列が例示できる。なお、本発明において、前記CCDRのペプチドは、以下の配列に制限されない。
本発明のガレクチン9改変体において、前記NCRDと前記CCRDとは、前述のように、直接的に結合したタンパク質でもよいし、間接的に結合したタンパク質でもよく、好ましくは、前者である。
後者の場合、前記NCRDのC末端と前記CCRDのN末端は、例えば、リンカーを介して間接的に結合してもよい。前記リンカーは、例えば、アミノ酸またはペプチドがあげられる。前記ペプチドのアミノ酸残基数は、特に制限されないが、短いことが好ましく、例えば、2個〜5個、好ましくは、4個以下、3個以下、2個以下、1個である。
前記ペプチドの配列は、特に制限されず、任意に設定できる。前記ペプチドは、具体例として、例えば、His−Met(HM)、Arg−Ile−Pro(RIP)、Asn-Leu(NL)、Asp-Phe-Val(DFV)およびGly−Ser−Ala(GSA)等の配列を含むペプチド、前記配列からなるペプチド等が例示できる。
本発明のガレクチン9改変体は、具体例として、下記表3に示す配列番号35〜48のいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドがあげられる。なお、本発明のガレクチン9改変体は、これらの例示には制限されない。
本発明のガレクチン9改変体のアミノ酸配列において、各アミノ酸は、例えば、それぞれが属するクラスにおける他のアミノ酸またはアミノ酸類縁体に置換されてもよい。前記クラスは、例えば、化学的特性および/または物理的特性により分類されたクラスがあげられる。前記特性としては、例えば、疎水性と親水性、電荷、大きさ等があげられ、具体例として、非極性アミノ酸(疎水性アミノ酸)、極性アミノ酸(中性アミノ酸)、陽電荷性アミノ酸(酸性アミノ酸)、陰電荷性アミノ酸(酸性アミノ酸)等があげられる。前記非極性アミノ酸は、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、トリプトファン、メチオニン等があげられ、前記極性アミノ酸は、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン等があげられ、前記陽電荷性アミノ酸は、アルギニン、リジン、ヒスチジン等があげられ、陰電荷性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸等があげられる。
本発明のガレクチン9改変体において、前記タンパク質の塩は、特に制限されず、前述したタンパク質が塩となった形態でもよい。
本発明のガレクチン9改変体は、本発明の効果を奏する限りにおいて、例えば、さらに、アミノ酸残基が修飾されもよい。前記修飾は、例えば、アミノ酸残基に対する部分的な分解、誘導体への改変、保護基の結合、糖鎖の結合等があげられ、具体例としては、C末端等のカルボキシル基に対する、アミド化またはエステル化等があげられる。
本発明のガレクチン9改変体の製造方法は、特に制限されず、例えば、そのアミノ酸配列に基づいて、遺伝子工学的手法により製造してもよいし、合成手法により製造してもよい。前者は、例えば、宿主を用いた細胞系でもよいし、無細胞タンパク質合成系でもよい。前記遺伝子工学的手法の場合、例えば、前記アミノ酸配列に対応する塩基配列の核酸、および、前記核酸を有する発現ベクター等が使用できる。前記ガレクチン9改変体の製造方法、前記ガレクチン9改変体をコードする核酸および前記発現ベクターに関しては、後述する。
2.核酸、発現ベクターおよび形質転換体
(1)核酸
本発明の核酸は、前記本発明のガレクチン9改変体をコードする塩基配列を有することを特徴とする。本発明の核酸を使用し、例えば、遺伝子工学的手法により、宿主または無細胞タンパク質合成系において、前記核酸がコードするタンパク質を発現させることによって、前記本発明のガレクチン9改変体を製造できる。
本発明の核酸の塩基配列は、特に制限されず、前記本発明のガレクチン9改変体のアミノ酸配列に基づいてコドンに置き換えることで設計できる。本発明の核酸は、例えば、遺伝子工学的手法または有機合成的手法によって合成でき、cDNA等の合成DNA、合成RNAということもできる。また、本発明の核酸は、例えば、センス鎖およびアンチセンス鎖のいずれであってもよく、そのハイブリッドでもよい。
本発明の核酸は、例えば、前記NCRDをコードするポリヌクレオチド(NCRDポリヌクレオチド)、前記CCRDをコードするポリヌクレオチド(CCRDポリヌクレオチド)を有し、前記NCRDポリヌクレオチドの3’末端に、前記CCRDポリヌクレオチドの5’末端が、直接的または間接的に結合したポリヌクレオチドがあげられる。前記NCRDポリヌクレオチドと前記CCRDポリヌクレオチドとは、例えば、それぞれの読み枠が、前記NCRDおよび前記CCRDのアミノ酸に対応するように、結合している。間接的な結合の場合、前記NCRDポリヌクレオチドと前記CCRDポリヌクレオチドとの間に、リンカーを有してもよい。この場合、前記CCRDポリヌクレオチドの読み枠が変らないように、前記リンカーの配列を設計することが好ましい。前記リンカーは、例えば、ポリヌクレオチドである。
前記NCRDの中でも、前記(N1)のペプチドをコードする(n1)ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2の塩基配列で表わされる。
配列番号2
atggccttcagcggttcccaggctccctacctgagtccagctgtccccttttctgggactattcaaggaggtctccaggacggacttcagatcactgtcaatgggaccgttctcagctccagtggaaccaggtttgctgtgaactttcagactggcttcagtggaaatgacattgccttccacttcaaccctcggtttgaagatggagggtacgtggtgtgcaacacgaggcagaacggaagctgggggcccgaggagaggaagacacacatgcctttccagaaggggatgccctttgacctctgcttcctggtgcagagctcagatttcaaggtgatggtgaacggtatcctcttcgtgcagtacttccaccgcgtgcccttccaccgtgtggacaccatctccgtcaatggctctgtgcagctgtcctacatcagcttccag
前記CCRDの前記N末端領域である前記(C−N1)のペプチドをコードする(c−n1)ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号4の塩基配列において、3個の連続する塩基を1セットとするコドンが、1〜17セット欠失した塩基配列で表わされる。前記欠失するコドンのセット数および欠失するコドンの位置は、例えば、前記(C−N1)のペプチドにおいて説明した、欠失するアミノ酸残基数および欠失するアミノ酸の位置に対応する。配列番号4において、下線部の塩基は、配列番号3における10番目〜13番目の4つのアミノ酸をコードする配列であり、前記アミノ酸に応じて設定できる。
配列番号4
actcccgccatcccacctatgatgtacnnnnnnnnnnnntatccgatgcct
前記(c−n1)ポリヌクレオチドは、具体例として、例えば、以下の塩基配列が例示できる。なお、本発明において、前記(c-n1)のポリヌクレオチドは、以下の配列に制限されない。
前記CCRDのC末端領域の中でも、前記(C−C1)のペプチドをコードする(c−c1)ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号6の塩基配列で表わされる。
配列番号6
ttcatcaccaccattctgggagggctgtacccatccaagtccatcctcctgtcaggcactgtcctgcccagtgctcagaggttccacatcaacctgtgctctgggaaccacatcgccttccacctgaacccccgttttgatgagaatgctgtggtccgcaacacccagatcgacaactcctgggggtctgaggagcgaagtctgccccgaaaaatgcccttcgtccgtggccagagcttctcagtgtggatcttgtgtgaagctcactgcctcaaggtggccgtggatggtcagcacctgtttgaatactaccatcgcctgaggaacctgcccaccatcaacagactggaagtggggggcgacatccagctgacccatgtgcagacatag
前記N末端領域と前記C末端領域とからなる前記CCRDをコードするポリヌクレオチド(CCRDポリヌクレオチド)は、具体例として、前記表2に示す各配列番号の塩基配列の3’末端に、配列番号6の塩基配列の5’末端が連結している塩基配列があげられる(表2に示す配列番号63〜76)。なお、本発明において、前記CCRDポリヌクレオチドは、これらの配列に制限されない。
本発明のガレクチン9改変体をコードする核酸は、具体例として、前記表3に示す配列番号77〜90のいずれか一つの塩基配列からなるポリヌクレオチドがあげられる。なお、本発明の核酸は、これらの例示には制限されない。
前記核酸は、例えば、ポリヌクレオチドは、例えば、DNAでもRNAでもよい。RNAは、例えば、例示したDNAの塩基配列において、TをUに置換した塩基配列が例示できる。DNAは、例えば、デオキシリボヌクレオチドを含む配列、デオキシリボヌクレオチドからなる配列等があげられ、RNAは、例えば、リボヌクレオチドを含む配列、リボヌクレオチドからなる配列等があげられる。また、前記核酸は、例えば、人工核酸からなる配列でもよいし、前記DNAまたはRNAが、さらに人工核酸を含む配列でもよい。人工核酸は、例えば、LNA、PNA、BNA等があげられる。
(2)発現ベクター
本発明の発現ベクターは、前記本発明の核酸を有することを特徴とする。本発明の発現ベクターは、例えば、宿主に導入し、得られた形質転換体で前記核酸がコードするタンパク質を発現させることによって、前記本発明のガレクチン9改変体を製造できる。本発明の発現ベクターは、前記本発明のガレクチン9改変体を発現可能なように、前記本発明の核酸を機能的に有していればよく、その他の構成は、特に制限されない。
前記発現ベクターは、例えば、非ヒト宿主に導入することで、前記本発明のガレクチン9改変体を発現できればよい。前記非ヒト宿主は、特に制限されず、適宜選択できる。前記非ヒト宿主は、例えば、微生物、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、またはこれらの培養細胞等があげられる。前記微生物は、例えば、原核生物および真核生物等があげられる。前記原核生物は、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バシラス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバシラス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属等の細菌があげられる。前記真核生物は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母等があげられる。前記動物細胞は、例えば、COS細胞、CHO細胞等があげられ、前記昆虫細胞は、例えば、Sf9細胞、Sf21細胞等があげられる。
前記発現ベクターは、例えば、骨格となるベクター(以下、「基本ベクター」ともいう)に、前記核酸を挿入することで作製できる。前記基本ベクターの種類は、特に制限されず、例えば、前記発現ベクターを導入する前記宿主の種類に応じて、適宜決定できる。大腸菌等の細菌に形質転換を行う場合、前記基本ベクターとして、例えば、pETベクター(Merck社)、pColdベクター(タカラバイオ株式会社)、PQEベクター(QIAGEN社)等があげられる。酵母等の真核生物に形質転換を行う場合、前記基本ベクターとして、例えば、pYE22m等があげられ、また、pYES(Invitrogen社)、pESC(Stratagene社)等の市販の酵母発現用ベクターを用いることもできる。前記基本ベクターは、アグロバクテリウム法を用いて形質転換を行う場合、例えば、バイナリーベクターが好ましく、例えば、pBI121、pPZP202、pBINPLUSおよびpBIN19等があげられる。
前記発現ベクターは、例えば、核酸の発現およびタンパク質の発現を調節する、調節配列を有することが好ましい。前記調節配列は、例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル配列、複製起点配列(ori)等があげられる。前記プロモーターの由来は、特に制限されず、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、シミアンウイルス−40(SV−40)、筋βアクチンプロモーター、単純ヘルペスウイルス(HSV)等があげられる。前記プロモーターは、この他に、例えば、チミジンキナーゼプロモーター等の組織特異的プロモーター、成長ホルモン調節性プロモーター等の調節性プロモーター、lacオペロン配列の制御下にあるプロモーター、亜鉛誘導性メタロチオネインプロモーター等の誘導性プロモーター等があげられる。前記発現ベクターにおいて、前記調節配列の配置は、特に制限されない。前記発現ベクターにおいて、前記調節配列は、例えば、核酸の発現およびタンパク質の発現を、機能的に調節できるように配置されていればよく、公知の方法に基づいて配置できる。前記調節配列は、例えば、前記基本ベクターが予め備える配列を利用してもよいし、前記基本ベクターに、さらに、前記調節配列を挿入してもよいし、前記基本ベクターが備える調節配列を、他の調節配列に置き換えてもよい。
前記発現ベクターは、例えば、さらに、選択マーカーのコード配列を有してもよい。前記選択マーカーは、例えば、薬剤耐性マーカー、蛍光タンパク質マーカー、酵素マーカー、細胞表面レセプターマーカー等があげられる。
(3)形質転換体
本発明の形質転換体は、前記本発明の核酸または前記本発明の発現ベクターを有することを特徴とする。本発明の形質転換体は、前記本発明のガレクチン9改変体を発現可能なように、前記本発明の核酸を機能的に有していればよく、その他の構成は、特に制限されない。
前記形質転換体は、例えば、宿主に前記本発明の核酸を導入することによって得られる。前記宿主は、特に制限されず、前述した非ヒト宿主があげられる。また、本発明の形質転換体は、例えば、前記本発明の核酸を、前記本発明の発現ベクターとして有してもよく、その場合、例えば、宿主に前記本発明の発現ベクターを導入することによって得られる。
前記核酸または前記発現ベクターを前記宿主に導入する方法は、特に制限されず、公知の方法により行うことができる。前記導入方法は、例えば、前記宿主の種類に応じて、適宜設定できる。
前記導入方法は、例えば、パーティクルガン等の遺伝子銃による導入法、リン酸カルシウム法、ポリエチレングリコール法、リポソームを用いるリポフェクション法、エレクトロポレーション法、超音波核酸導入法、DEAE−デキストラン法、微小ガラス管等を用いた直接注入法、ハイドロダイナミック法、カチオニックリポソーム法、導入補助剤を用いる方法、アグロバクテリウムを介する方法等があげられる。前記リポソームは、例えば、リポフェクタミンおよびカチオニックリポソーム等があげられ、前記導入補助剤は、例えば、アテロコラーゲン、ナノ粒子およびポリマー等があげられる。
3.ガレクチン9改変体の製造方法
本発明のガレクチン9改変体の製造方法は、例えば、前記本発明の核酸を発現させる工程を有することを特徴とする。本発明の製造方法によれば、例えば、野生型ガレクチン9を組換えタンパク質として製造する場合と比較して、優れた収率でガレクチン9改変体を得ることができる。
本発明の製造方法は、前記本発明の核酸の発現により、前記核酸の転写および前記核酸がコードするタンパク質への翻訳を行い、前記本発明のガレクチン9改変体を合成することが特徴であり、その他の工程および条件は、特に制限されない。
本発明の製造方法において、前記本発明の核酸の発現は、例えば、前述のように、宿主を用いた細胞系で行ってもよいし、無細胞タンパク質合成系で行ってもよい。
前記細胞系の場合、例えば、宿主に前記本発明の核酸を導入することで、本発明のガレクチン9改変体を合成できる。前記宿主は、例えば、前述の通りであって、前記宿主への前記本発明の核酸の導入は、前記本発明の発現ベクターの導入でもよい。
そして、さらに、前記宿主への前記本発明の核酸の導入によって得られた形質転換体を、培養する工程を含むことが好ましい。前記培養工程における条件は、特に制限されず、前記宿主の種類に応じて適宜決定できる。
発現させた前記本発明のガレクチン9改変体は、例えば、発現後そのまま使用してもよいし、精製したものを使用してもよい。精製方法は、特に制限されず、例えば、塩析、電気泳動、各種クロマトグラフィー等があげられる。
4.ガレクチン9改変体の用途
本発明のガレクチン9改変体は、医薬としての用途があげられる。具体的に、前記ガレクチン9改変体は、例えば、野生型ガレクチン9の活性、例えば、悪性腫瘍に対する細胞傷害活性、悪性腫瘍に対するアポトーシス誘導活性、悪性腫瘍に対する抗腫瘍活性、活性化T細胞(例えば、CD4陽性T細胞)または活性化B細胞のアポトーシス誘導活性、免疫調節活性、抗炎症活性および/または抗アレルギー活性等が保存されている。このため、本発明のガレクチン9改変体は、例えば、野生型ガレクチン9と同様の医薬用途があげられる。
すなわち、本発明の医薬は、前記本発明のガレクチン9改変体(タンパク質またはその塩)、前記本発明の核酸および前記本発明の発現ベクターの少なくともいずれか一つを含み、免疫調節剤(免疫抑制剤の意味も含む)、抗腫瘍剤、腫瘍転移阻害剤、鎮痛剤、抗炎症剤および消炎剤からなる群から選択された少なくとも一つの用途に使用する医薬であることを特徴とする。本発明の医薬が、前記本発明の核酸または前記本発明の発現ベクターを含む場合、例えば、投与した患者の体内で、前記核酸から前記本発明のガレクチン9改変体が発現できればよい。
なお、本発明の医薬は、例えば、疾患の治療または予防に使用でき、前記治療は、例えば、原因療法および対症療法のいずれでもよく、また、症状の消失、症状の緩和(改善)、および症状の進行の阻害等のいずれでもよい。
本発明の医薬の投与対象は、特に制限されず、ヒト、ヒトを除く非ヒト動物があげられる。非ヒト動物は、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ等の哺乳類、魚類、ニワトリ等の鳥類、蠕虫類、昆虫類、爬虫類、両生類等があげられる。
本発明の医薬の投与方法は、特に制限されず、疾患の種類に応じて適宜決定できる。前記投与方法は、例えば、経口投与および非経口投与のいずれでもよく、また、直接的な投与でも間接的な投与でもよい。非経口投与は、例えば、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内および腹腔内等の投与があげられる。
本発明の医薬が前記本発明のガレクチン9改変体を含む場合、その投与量は、特に制限されず、投与対象、疾患の種類、疾患の程度等によって、適宜決定できる。具体例として、1日の投与量は、体重1kgあたり、例えば、5μg〜5mgであり、好ましくは50μg〜500μgであり、より好ましくは100μg〜500μgであり、さらに好ましくは200μg〜250μgである。1日の投与回数は、例えば、1〜3回である。
本発明の医薬が前記本発明の核酸を含む場合、投与方法は、例えば、in vivoおよびex vivoのいずれでもよい。前者の場合、例えば、前記本発明の核酸を患者の生体に投与すればよく、後者の場合、例えば、単離した組織または細胞に、前記本発明の核酸を導入した後、前記組織または細胞を、患者の生体に導入すればよい。
本発明の医薬が前記本発明の核酸を含む場合、その投与量は、特に制限されず、投与対象、疾患の種類、疾患の程度等によって、適宜決定できる。前記投与量は、例えば、前述した量の前記本発明のガレクチン9改変体を発現する量であることが好ましい。具体例として、前記核酸を局所的に投与する場合、1日の投与量は、ヒトの組織あたり、例えば、100ng〜200mgであり、好ましくは500ng〜50mgであり、より好ましくは1μg〜2mgであり、さらに好ましくは5μg〜500μgである。1日の投与回数は、例えば、1〜3回である。
本発明の医薬の形態は、例えば、前述のような投与方法に応じて適宜決定できる。前記形態は、例えば、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤等があげられる。具体例として、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤、液体製剤を調製するための粉末剤、凍結乾燥製剤およびゲル調製品等があげられる。
本発明の医薬は、前記本発明のガレクチン9改変体、前記本発明の核酸または前記本発明の発現ベクターの他に、薬学的に許容できる添加剤を含んでもよい。前記添加剤は、特に制限されず、医薬の形態に応じて適宜選択でき、医薬の製造における公知の物質が使用できる。また、医薬において、前記添加剤の添加量は、特に制限されず、有効成分として含まれる前記本発明のガレクチン9改変体の性質を阻害しない範囲であればよい。前記添加剤としては、例えば、担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤および無痛化剤等があげられ、いずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は、実施例に記載された態様に限定されるものではない。
[実施例1]
前述のように、国際公開第WO2005/093064号において、野生型ガレクチン9Mの149番目のプロリンから177番目のセリンまでの領域を欠失したアミノ酸配列からなる安定化ガレクチン9が報告されている。前記安定化ガレクチン9のアミノ酸配列を、図1に示す(配列番号91)そして、前記安定化ガレクチン9について、野生型ガレクチン9Mの生理活性を保持すること、および、野生型ガレクチン9Mと比較して、優れたプロテアーゼ安定性を有することが証明されている。そこで、前記安定化ガレクチン9を改変したガレクチン9改変体について、溶解性、生理活性およびプロテアーゼ安定性を確認した。
(1)発現ベクターの構築
(1−1)欠失型のガレクチン9改変体
ガレクチン9改変体は、NCRDとCCRDとが直接連結したアミノ酸配列からなるタンパク質とした。各改変体の間において、NCRDのアミノ酸配列(配列番号1)およびCCRDのC末端領域のアミノ酸配列(配列番号5)は共通とし、CCRDのN末端領域のみ、配列番号3のアミノ酸配列(17アミノ酸残基)において、N末端から4個、6個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個または16個のアミノ酸残基を欠失させたアミノ酸配列に設定した。各ガレクチン9改変体は、前記CCRDのN末端領域における欠失アミノ酸の個数に応じて、ガレクチン9改変体mC4、mC6、mC8、mC9m、mC10、mC11、mC12、mC13、mC14、mC16とした。以下に、前記安定化ガレクチン9および各ガレクチン9改変体について、CCRDのN末端領域のアミノ酸配列と塩基配列ならびに全長のアミノ酸配列と塩基配列を示す。
※1 配列番号4において、12個の連続する塩基は、PHPA(配列番号132)をコードするccccaccccgcc(配列番号130)
前記ガレクチン9改変体を発現する発現ベクターを、以下の方法により構築した。国際公開第WO2005/093064号の実施例1における前記安定化ガレクチン9(以下、G9Nullともいう)のアミノ酸配列(配列番号91)を、図1に示す。まず、前記G9Nullのコード配列(配列番号92)を、pET−11aのクローニングサイト(BamHIサイト)に挿入し、前記G9Nullの発現ベクターpET−G9Nullを、定法により作製した。前記安定化ガレクチン9について、野生型ガレクチン9の細胞死誘導活性を有し、且つ、前記野生型ガレクチン9と比較して、プロテアーゼ安定性が有意に優れることは、国際公開WO2005/093064号において確認済みである。
配列番号92
ATGGCCTTCAGCGGTTCCCAGGCTCCCTACCTGAGTCCAGCTGTCCCCTTTTCTGGGACTATTCAAGGAGGTCTCCAGGACGGACTTCAGATCACTGTCAATGGGACCGTTCTCAGCTCCAGTGGAACCAGGTTTGCTGTGAACTTTCAGACTGGCTTCAGTGGAAATGACATTGCCTTCCACTTCAACCCTCGGTTTGAAGATGGAGGGTACGTGGTGTGCAACACGAGGCAGAACGGAAGCTGGGGGCCCGAGGAGAGGAAGACACACATGCCTTTCCAGAAGGGGATGCCCTTTGACCTCTGCTTCCTGGTGCAGAGCTCAGATTTCAAGGTGATGGTGAACGGTATCCTCTTCGTGCAGTACTTCCACCGCGTGCCCTTCCACCGTGTGGACACCATCTCCGTCAATGGCTCTGTGCAGCTGTCCTACATCAGCTTCCAGCATATGACTCCCGCCATCCCACCTATGATGTACCCCCACCCCGCCTATCCGATGCCTTTCATCACCACCATTCTGGGAGGGCTGTACCCATCCAAGTCCATCCTCCTGTCAGGCACTGTCCTGCCCAGTGCTCAGAGGTTCCACATCAACCTGTGCTCTGGGAACCACATCGCCTTCCACCTGAACCCCCGTTTTGATGAGAATGCTGTGGTCCGCAACACCCAGATCGACAACTCCTGGGGGTCTGAGGAGCGAAGTCTGCCCCGAAAAATGCCCTTCGTCCGTGGCCAGAGCTTCTCAGTGTGGATCTTGTGTGAAGCTCACTGCCTCAAGGTGGCCGTGGATGGTCAGCACCTGTTTGAATACTACCATCGCCTGAGGAACCTGCCCACCATCAACAGACTGGAAGTGGGGGGCGACATCCAGCTGACCCATGTGCAGACATAG
そして、前記pET−G9Nullを標的配列とし、下記プライマーA1およびA2を用いたPCRによって、NCRDペプチド(配列番号1)をコードするNCRDポリヌクレオチド(配列番号2)を増幅し、アガロースゲル電気泳動によって精製した。
(プライマー)
A1:5'-CGTCCTCGTCCTCATATGGCCTTCAGCGGTTCCCAGGCT-3'(配列番号93)
A2:5'-CTGGAAGCTGATGTAGGACAGCTG-3'(配列番号94)
同様に、前記pET−G9Nullを標的配列として、下記プライマーA4および各改変体に応じた下記プライマーB1〜K1を用いたPCRによって、各改変体のCCRD(CCRD1〜CCRD10、10種類)をコードするポリヌクレオチドを増幅し、アガロースゲル電気泳動によって精製した。
(プライマー)
B1:5'-TACATCAGCTTCCAGCCACCTATGATGTACCCCCACCCC-3'(配列番号95)
C1:5'-TACATCAGCTTCCAGATGATGTACCCCCACCCCGCCTAT-3'(配列番号96)
D1:5'-TACATCAGCTTCCAGTACCCCCACCCCGCCTATCCGATG-3'(配列番号97)
E1:5'-TACATCAGCTTCCAGCCCCACCCCGCCTATCCGATGCCT-3'(配列番号98)
F1:5'-TACATCAGCTTCCAGCACCCCGCCTATCCGATGCCTTTC-3'(配列番号99)
G1:5'-TACATCAGCTTCCAGCCCGCCTATCCGATGCCTTTCATC-3'(配列番号100)
H1:5'-TACATCAGCTTCCAGGCCTATCCGATGCCTTTCATCACC-3'(配列番号101)
I1:5'-TACATCAGCTTCCAGTATCCGATGCCTTTCATCACCACC-3'(配列番号102)
J1:5'-TACATCAGCTTCCAGCCGATGCCTTTCATCACCACCATT-3'(配列番号103)
K1:5'-TACATCAGCTTCCAGCCTTTCATCACCACCATTCTGGGA-3'(配列番号104)
つぎに、前記NCRDをコードするポリヌクレオチド(NCRD)と前記CCRDをコードする各ポリヌクレオチド(CCRD1〜CCRD10)とを混合し、これらの混合物に対して、前記プライマーA1および下記プライマーA4を用いた2段階目のPCRを行い、得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製した。精製したPCR産物を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断し、精製した後、同じ制限酵素で切断したpET−11aベクターにライゲーションし、定法にしたがって、正しい配列を含むクローンを選択した。これらのクローンを、各ガレクチン9改変体の発現ベクターとした。
(プライマー)
A4:5'-CGACCGGGATCCCTATGTCTGCACATGGGTCAGCTG-3'(配列番号105)
そして、前記クローンを、E.coli BL21(DE3)に導入し、組換えタンパク質発現用の形質転換体を作製し、約15%のグリセリン存在下、−80℃で保存した。
(1−2)欠失・置換型のガレクチン9改変体
ガレクチン9改変体として、前記ガレクチン9改変体mC9〜mC12について、さらに、前記CCRDのN末端領域のアミノ酸を置換したタンパク質を設計した。以下に、各ガレクチン9改変体について、種類、前記N末端領域のアミノ酸配列および塩基配列、全長のアミノ酸配列および塩基配列を示す。下記配列において、下線部は、mC9〜mC12のアミノ酸配列に対して、置換したアミノ酸残基を示す。
前記ガレクチン9改変体を発現する発現ベクターを、以下の方法により構築した。まず、mC9、mC10、mC11およびmC12の発現ベクターを、それぞれ標的配列として、前記プライマーA1と、前記置換したアミノ酸配列に対応する変異配列を含む下記プライマーL2〜W2を用いたPCRを行い、得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製した(muNCRD1〜muNCRD12、12種類)。
(プライマー)
L2:5'-ATAGGCGGGCGGGTGCTGGAAGCTGATGTAGGA-3'(配列番号106)
M2:5'-GATAGGCGGCGTGCTGGAAGCTGATGTA-3'(配列番号107)
N2:5'-AAGGCATCGCATAGGCGGGGTGCTGGAA-3'(配列番号108)
O2:5'-TGATGAAAGCCATCGGATAGGCGGGGTG-3'(配列番号109)
P2:5'-TGATGAAAGCCATCGCATAGGCGGCGTGCTGGAAGCTGATG-3'(配列番号110)
Q2:5'-TGAAAGGCGGCGGATAGGGGGGGTGCTG-3'(配列番号111)
R2:5'-GGCATCGGCGGGGCGGGGTGCTGGAAGCT-3'(配列番号112)
S2:5'-TCGGATAGGGGGGGTGCTGGAAGCTGAT-3'(配列番号113)
T2:5'-CGGATAGGGGGCCTGGAAGCTGATGTAGGA-3'(配列番号114)
U2:5'-TCGGATAGGGGGGCTGGAAGCTGATGTA-3'(配列番号115)
V2:5'-TGGTGATGAAAGCCATCGCATAGGCCTGGAAGCTGAT-3'(配列番号116)
W2:5'-AGGCATCGGAGGGGCCTGGAAGCTGATGTA-3'(配列番号117)
同様に、mC9、mC10、mC11およびmC12の発現ベクターを、それぞれ標的配列として、前記プライマーA4と、前記置換したアミノ酸配列に対応する変異配列を含む下記プライマーL1〜W1を用いたPCRを行い、得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製した(muCCRD1〜muCCRD12、12種類)。
(プライマー)
L1:5'-AGCTTCCAGCACCCGCCCGCCTATCCGATGCCT-3'(配列番号118)
M1:5'-TTCCAGCACGCCGCCTATCCGATGCCTT-3'(配列番号119)
N1:5'-CCCGCCTATGCGATGCCTTTCATCACCA-3'(配列番号120)
O1:5'-TATCCGATGGCTTTCATCACCACCATTC-3'(配列番号121)
P1:5'-TTCCAGCACGCCGCCTATGCGATGGCTTTCATCACCACCATTC-3'(配列番号122)
Q1:5'-CTATCCGCCGCCTTTCATCACCACCATT-3'(配列番号123)
R1:5'-CCCCGCCCCGCCGATGCCTTTCATCACC-3'(配列番号124)
S1:5'-CAGCACCCCCCCTATCCGATGCCTTTCA-3'(配列番号125)
T1:5'-TTCCAGGCCCCCTATCCGATGCCTTTCA-3'(配列番号126)
U1:5'-CCAGCCCCCCTATCCGATGCCTTTCATC-3'(配列番号127)
V1:5'-TTCCAGGCCTATGCGATGGCTTTCATCACCACCATTC-3'(配列番号128)
W1:5'-TTCCAGGCCCCTCCGATGCCTTTCATCACC-3'(配列番号129)
つぎに、前者のPCR産物(muNCRD1〜muNCRD12)と後者のPCR産物(muCCRD1〜muCCRD12)とを混合し、これらの混合物に対して、前記プライマーA1およびA4を用いた2段階目のPCRを行い、得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動で精製した。精製したPCR産物を制限酵素NdeIおよびBamHIで切断し、精製した後、同じ制限酵素で切断したpET−11aベクターにライゲーションし、定法にしたがって、正しい配列を含むクローンを選択した。これらのクローンを、各ガレクチン9改変体の発現ベクターとした。
そして、前記クローンを、E.coli BL21(DE3)に導入し、形質転換体を作製し、約15%のグリセリン存在下、−80℃で保存した。
(2)ガレクチン9改変体の発現および収量の測定
前記(1)で作製した形質転換体を用いて、以下の方法によりガレクチン9改変体を発現させ、発現直後の組換えタンパク質の被検サンプル(発現直後の標品ともいう)と、発現後3ヶ月保存した後に不溶物を除去した組換えタンパク質の被検サンプル(保存3ヶ月後の標品ともいう)について、収量の測定を行った。
前記形質転換体を、100μg/mLのアンピシリンを含むLB−brothに添加して、37℃で一夜培養した。1000mLフラスコに、400mLの2XYT、4mLの10mg/mLアンピシリンおよび前記培養で得られたE.coli培養液8mLを加えた。ついで、前記フラスコを振とうしながら、A600nmが約0.7になるまで37℃で培養し、さらに、前記フラスコあたり0.4mLの0.1mol/L イソプロピル−β−D(−)チオガラクトピラノシド(IPTG)を加えて、20℃で一夜(16〜20時間)培養した。そして、遠心分離により前記培養液から菌体を回収した。
回収した前記菌体を、前記フラスコあたり80mLの抽出用緩衝液に懸濁した。前記抽出用緩衝液の組成は、10mmol/L Tris−HCl(pH7.5)、0.5mol/L NaCl、1mmol/Lジチオトレイトール(DTT)、1mmol/L フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)および1%Triton X−100とした。そして、前記懸濁液を、out put control=5、%duty cycle=100の条件で、超音波波処理した後、4℃で30分間攪拌した。前記超音波処理は、2分間の処理および1分間の休止を1サイクルとして、4サイクル繰り返した。ついで、前記懸濁液を、15,000xgで30分間遠心分離して、不溶物を除去し、上清を回収した。
得られた上清に、3mLのラクトース−アガロース懸濁液(50%[v/v]in PBS、ゲルとして1.5ml)を加えて、4℃で1時間攪拌した。さらに、2,000xgで5分間遠心分離して前記ラクトース−アガロースゲルを回収し、0.03%の3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸(CHAPS)を含むTBSに懸濁して、ミニカラムに充填した。ついで、ゲルの10倍量の0.03%CHAPS含有TBSでゲルを洗浄した後、3mLの溶出液でタンパク質を溶出した。前記溶出液の組成は、20mmol/L Tris−HCl(pH7.5)、0.15mol/L NaClおよび0.2mol/Lラクトースとした。前記溶出液をPBSに対して透析した後、25,000xgで20分間遠心分離して、不溶物を除去し、得られた上清をろ過滅菌して最終サンプルを得た。これを、以下、調製直後の被検サンプルという。前記サンプル3μgについてSDS−PAGEを行い、クマシーブリリアントブルーR−250で染色した。そして、定法に基づいて、前記SDS−PAGEによるタンパク質の純度検定およびタンパク質濃度の測定を行い、各ガレクチン9改変体の収量を算出した。これを、調製直後の組換えタンパク質の収量とした。
また、この調製直後の被検サンプルを、さらに4℃で3ヶ月間保存した。保存後、前記サンプルを、25,000xgで20分間遠心分離して、不溶物を除去し、得られた上清をろ過滅菌して、3ヶ月保存後の被検サンプルを得た。そして、前記調製直後の被検サンプルと同様に、定法に基づいて、タンパク質濃度の測定を行い、各ガレクチン9改変体の収量を算出した。これを、保存3ヶ月後の組換えタンパク質の収量とした。
また、比較例として、前記安定化ガレクチン9の発現ベクターpET−G9Nullを使用し、同様にしてタンパク質の発現ならびに評価を行った。
図2に、SDS−PAGEの写真を示す。図2において、レーンMは、分子量マーカーであり、各レーンは、各ガレクチン9改変体の調製直後の被検サンプルを示す。図2および図3に示すように、いずれのガレクチン9改変体も大腸菌内で発現し、さらに、ラクトース−アガロースを利用したアフィニティークロマトグラフィーによって、高度に精製できることが確認された。
図3に、前記(1−1)で調製した欠失型のガレクチン9改変体および安定化ガレクチン9の濃度を示す。図3において、Aは、調製直後の被検サンプルの結果であり、Bは、保存3ヶ月後の被検サンプルの結果である。図3において、縦軸は、前記サンプルにおける前記ガレクチン9改変体または前記安定化ガレクチン9の濃度(μg/ml)であり、前記ガレクチン9改変体は、2回の発現実験の平均値を示し、前記安定化ガレクチン9は、12回の平均値と標準偏差を示した。
図3に示すように、調製直後の被検サンプルの場合、ガレクチン9改変体mC8、mC9、mC10、mC11、mC12、mC13およびmC14は、安定化ガレクチン9(G9Null)と比較して、タンパク質濃度が有意に高かった。中でも、mC9、mC10、mC12およびmC14は、極めて高いタンパク質濃度を示した。また、保存3ヶ月後の被検サンプルにおいても、ガレクチン9改変体mC10、mC11、mC12,mC13は、安定化ガレクチン9(G9Null)と比較して、タンパク質濃度が有意に高かった。
安定化ガレクチン9(G9Null)は、発現後に最終サンプル(調製直後の被検サンプル)を調製する際、前記カラムからの溶出工程で、最大溶解度を超えたため、一部の安定化ガレクチン9が不溶化した。そして、この不溶物は、前記溶出工程後の遠心工程およびろ過工程により除去された。このため、図3に示すように、安定化ガレクチン9は、前述のように、前記被検サンプルにおけるタンパク質濃度が低いという結果となった。他方、ガレクチン9改変体は、前記溶出工程における不溶化が、安定化ガレクチン9と比較して、有意に抑制されていた。このため、図3に示すように、ガレクチン9改変体は、安定化ガレクチン9と比較して、前記被検サンプルにおけるタンパク質濃度が、有意に高い結果となった。
本実施例では、いずれの組換えタンパク質についても、同じ条件で一定体積の最終サンプル(調製直後の被検サンプル)を調製した。このため、前記被検サンプルにおけるガレクチン9改変体の濃度が、前記被検サンプルにおける安定化ガレクチン9の濃度と比較して、有意に高いということは、ガレクチン9改変体の溶解度が安定化ガレクチン9の溶解度よりも有意に高いことを意味する。また、前記被検サンプルにおけるガレクチン9改変体の濃度の高さは、ガレクチン9改変体が高い収率で回収できたことを意味する。
目的のタンパク質の合成、遠心処理やろ過処理等を伴う前記タンパク質の精製、また、前記タンパク質の製剤化においては、一般的に、緩衝液等の水性溶媒に対して、前記タンパク質の可溶化が利用される。このため、前記タンパク質の溶解度が高い程、例えば、回収における前記タンパク質のロスが防止され、また、取扱性にも優れることとなる。本発明のガレクチン9改変体は、前述のように優れた溶解度であることから、同様の生理活性を有する前記安定化ガレクチン9よりも、タンパク質の製造、精製および製剤化等において優れているといえる。
図4に、前記(1−2)で調製した欠失・置換型のガレクチン9改変体および前記(1−1)で調製した欠失型のガレクチン9改変体の濃度を示す。図4において、Aは、調製直後の被検サンプルの結果であり、Bは、保存3ヶ月後の被検サンプルの結果である。図4において、縦軸は、前記被検サンプルにおける前記ガレクチン9改変体の濃度(μg/ml)であり、前記ガレクチン9改変体は、2回の発現実験の平均値を示し、前記安定化ガレクチン9は、12回の平均値と標準偏差を示した。
図4に示すように、調製直後の被検サンプルの場合、欠失・置換型のガレクチン9改変体であるmC9−HP、mC10−1P1A1、mC10−1P1A2、mC10−HPAP、mC10−HPPY、mC11−APおよびmC11−PPは、安定化ガレクチン9と比較して、タンパク質濃度が高かった。また、3ヵ月保存後の被検サンプルの場合、欠失・置換型のガレクチン9改変体であるmC10−HPAP、mC10−HPPYおよびmC11−APは、安定化ガレクチン9と比較して、タンパク質濃度も高かった。
また、図4に示すように、調製直後の被検サンプルの場合、欠失・置換型のガレクチン9改変体であるmC10−HPAP、mC10−HPPY、mC11−APおよびmC11−PPは、それぞれ対応する欠失型のガレクチン9改変体と比較して、タンパク質濃度が高かった。また、3ヵ月保存後の被検サンプルにおいても、欠失・置換型のガレクチン9改変体であるmC10−HPPYおよびmC11−APは、それぞれ対応するガレクチン9改変体と比較して、タンパク質濃度が高かった。中でも、3ヶ月保存後の被検サンプルで比較した場合、欠失型のmC10に対して、プロリン残基が保存され且つチロシン残基がプロリン残基に置換された欠失・置換型のmC10−HPPYは、タンパク質濃度が約3.3倍に増加した。また、欠失型のmC11に対して、プロリン−アラニンがアラニン−プロリンに置換された欠失・置換型のmC11−APは、タンパク質濃度が約2.2倍に増加した。この結果から、前記CCRDのN末端領域が、配列番号3の12番目または15番目および17番目のプロリン残基を保存し、さらに、プロリン残基への置換を有することによって、ガレクチン9改変体の溶解性をより向上できることがわかった。
(3)Jurkat細胞に対する、ガレクチン9改変体の細胞死誘導活性の測定
RPMI1640−10%FBS培地中で培養したJurkat細胞を遠心分離により回収し、3x10細胞/90μLの濃度となるように新たな培地に懸濁した。得られた懸濁液を、96ウェルプレートに1ウェルあたり90μL播種した。そして、炭酸ガス培養器中で3時間培養した後、ガレクチン9改変体を含むサンプル10μLを各ウェルに加えた。前記サンプルは、各ウェルにおける前記ガレクチン9改変体の濃度が、0.01、0.03、0.1、0.3、1μmol/Lとなるように、前記(1)の各ガレクチン9改変体をPBSで希釈して調製した。つぎに、24時間培養した後、10μLのWST−8試薬を各ウェルに加えて、さらに3時間培養した。そして、10μLの1.2%SDSを各ウェルに加えて、マイクロプレートリーダーを使用して、各ウェルの450nmおよび620nmにおける吸光度を測定し、450nmおよび620nmにおける吸光度の差を算出した。このアッセイは、3ウェルを一組として行った。また、コントロールとして、前記サンプルに代えて10μlのPBSを添加し、同様の測定を行った。そして、コントロールの算出値を100%として、前記サンプルを添加した場合の算出値について、相対値(%)を求めた。この相対値を、細胞数を示す値とした。
また、比較例として、前記ガレクチン9改変体に代えて、前記安定化ガレクチン9(G9Null)を使用し、同様にして細胞数の測定を行った。
この結果から、ガレクチン9改変体および安定化ガレクチン9が、Jurkat細胞の数を50%減少させる濃度(LD50)を求め、安定化ガレクチン9のLD50を100%とした時の、各ガレクチン9改変体の相対値(%)を比活性として求めた。この結果を、下記表7に示す。
表7に示すように、前記ガレクチン9改変体は、安定化ガレクチン9(G9Null)と比較して、Jurkat細胞に対する細胞死誘導活性が有意に高かった。この結果から、十分に安定化ガレクチン9の生理活性を維持し、且つ、前述のように溶解性にも優れるガレクチン9改変体であることがわかった。
(4)プロテアーゼ安定性
前記(2)で調製したガレクチン9改変体mC10−HPPYについて、ヒト組織中に存在するプロテアーゼに対する安定性を確認した。
0.06mg/mLとなるように、ガレクチン9改変体を150mmol/LのNaClと1mmol/LのCaClを含む100mmol/LのTris−HCl(pH8.0)に溶解し、さらにプロテアーゼを混合し、37℃でインキュベートした。ガレクチン9変異体(G)に対するプロテアーゼ(P)の添加割合は、重量比でG:P=100:1とした。プロテアーゼは、エラスターゼ(商品名Elastase、Elastin Products Company, Inc.社製)またはマトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3、商品名Matrix Metalloproteinase−3、Biogenesis社製)を使用した。MMP−3は、使用前に20mmol/LのAminophenyl mercuric acetateによる活性化処理(37℃、8時間)を行った。インキュベータ中に経時的にサンプリングを行い、各サンプルについてSDS−PAGEを行い、クマシーブリリアントブルーR−250で染色した。また、比較例として、ガレクチン9改変体に代えて、野生型ガレクチン9標品(G9S、配列番号131のアミノ酸配列)または前記(2)で作製した安定化ガレクチン9(G9Null)を使用した。
図5に、SDS−PAGEの写真を示す。図5において、Aは、エラスターゼを使用した結果であり、Bは、MMP−3を使用した結果である。図5において、レーンMは、分子量マーカーである。図5のAおよびBに示すように、野生型G9Sは、インキュベート開始から0.5時間で、すでに分解が確認され、2時間で大部分が分解された。これに対して、ガレクチン9改変体であるmC10−HPPYは、国際公開第WO2005/093064号においてプロテアーゼ安定性が確認されている安定化ガレクチン9と同様に、2時間のインキュベートによっても分解は確認されなかった。この結果から、mC10−HPPYは、プロテアーゼ安定性にも優れることが確認された。なお、他のガレクチン9改変体についても同様である。
以上のように、本発明のガレクチン9改変体は、安定化ガレクチン9よりも溶解性に優れ、野生型ガレクチン9の生理活性を維持し、且つ、野生型ガレクチンよりもプロテアーゼ安定性に優れることが確認された。具体的には、前記(2)に示すように、いずれのガレクチン9改変体も、安定化ガレクチン9と比較して、溶解性(すなわち収率)が有意に増加し、中でも、mC10、mC11、mC12、mC10−HPPY、mC10−HPAPおよびmC11−APは、安定化ガレクチン9と比較して、5倍以上の増加を示した。特に、mC10−HPPYは、PBS中で、少なくとも2.5mg/mLの濃度まで安定に存在でき、これは、安定化ガレクチン9の約7倍の濃度であることが確認できた。また、前記(3)に示すように、いずれのガレクチン9改変体も、野生型ガレクチン9の生理活性の一つである、Jurkat細胞に対する細胞死誘導活性を示し、中でも、mC10、mC11、mC12、mC10−HPPY、mC10−HPAPおよびmC11−APは、安定化ガレクチン9と比較して、2〜2.5倍の活性を示した。さらに、前記(4)に示すように、ガレクチン9改変体は、野生型ガレクチン9よりも有意なプロテアーゼ安定性を示した。これらの結果から、前記ガレクチン9改変体は、生産性が高い医薬原料として優れた性質を備えており、中でも、mC10−HPPYは、極めて優れた性質を備えているといえる。
[実施例2]
前記ガレクチン9改変体について、長期保存による溶解性への影響およびRBL−2H3細胞に対する、ガレクチン9改変体の脱顆粒抑制活性を確認した。
(1)長期保存時の溶解性への影響
前記ガレクチン9改変体を、4℃で約1年間(344日間)保存した後、この長期保存による溶解性への影響を確認した。
前記実施例1(2)で調製したろ過滅菌済の調製直後の被検サンプル(前記ガレクチン9改変体)を、4℃で約1年間(344日間)保存した。前記被検サンプルのタンパク質濃度は、それぞれ、mC10−HPPYが1.88mg/mL、mC10−HPAPが1.16mg/mL、mC11−APが1.14mg/mLに調整した。つぎに、保存後の前記被検サンプルを25,000xgで20分間遠心分離して、不溶物を除去し、上清を回収した。1年保存後の前記被検サンプルについて、280nmの吸光度を測定してタンパク質濃度を算出した。そして、保存前の被検サンプルにおけるガレクチン9改変体のタンパク質濃度を100%として、保存後の被検サンプルにおけるガレクチン9改変体のタンパク質濃度について、相対値(%)を求めた。これらの結果を下記表8に示す。
表8に示すように、mC10−HPPYおよびmC10−HPAPは、約1年間の保存後も、タンパク質濃度がほとんど変化せず、長期保存後においても、優れた溶解性を維持できることがわかった。
(2)RBL−2H3細胞に対する、ガレクチン9改変体の脱顆粒抑制活性の測定
RPMI1640−10%FBS培地中で培養したRBL−2H3細胞をトリプシン処理により回収し、2x10細胞/100μLの濃度となるように新たな培地に懸濁した。得られた懸濁液を、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μL播種した後、炭酸ガス培養器中で24時間培養した。
活性測定用緩衝液(20mmol/L HEPES−NaOH(pH7.5)、1mg/mLウシ血清アルブミンを含むハンクス平衡塩類溶液)で各ウェルを一度洗浄し、1ウェルあたり90μLの前記活性測定用緩衝液を加え、さらに前記ガレクチン9改変体を含むサンプル10μLを加えた。前記サンプルは、各ウェルにおける前記ガレクチン9改変体の濃度が、0.1、0.25、0.5、0.75、1μmol/Lとなるように、前記実施例1(1)の各ガレクチン9改変体をPBSで希釈して調製した。つぎに、10分間静置した後、各ウェルにおける濃度が、それぞれ0.3μg/mLおよび0.048μg/mLとなるように、抗2,4,6−トリニトロフェニル(TNP)マウスモノクローナル抗体(IgE)とTNP−標識ウシ血清アルブミンとを加え、1時間培養した。そして、前記各ウェルから培地を回収した後、0.1%Triton X−100で培養した細胞を可溶化し、回収した培地中および細胞可溶化液中のβ−hexosaminidase(β−HEX)活性を測定した。前記培地中および前記細胞可溶化液中のβ−HEX活性の合計を総β−HEX活性とし、前記総β−HEX活性に対する培地中のβ−HEX活性の割合(%)を求めた。この割合を、脱顆粒の指標とした。このアッセイは、3ウェルを一組として行った。
また、コントロールとして、前記サンプルに代えて10μLのPBSを、比較例として、前記ガレクチン9改変体に代えて、前記実施例1の前記安定化ガレクチン9(G9Null)を添加し、同様の測定を行った。
この結果から、前記ガレクチン9改変体および前記安定化ガレクチン9が、RBL−2H3細胞の脱顆粒を50%減少させる濃度(LD50)を求め、前記安定化ガレクチン9のLD50を100%として、各ガレクチン9改変体の相対値(%)を求め、これを脱顆粒抑制活性(%)とした。これらの結果を下記表9に示す。
表9に示すように、各ガレクチン9改変体は、前記安定化ガレクチン9(G9Null)と同様にRBL−2H3細胞に対する脱顆粒抑制活性を示した。中でも、mC8、mC9、mC10、mC11、mC12、mC13、mC10−HPPY、mC10−HPAPおよびmC11−APは、前記安定化ガレクチン9(G9Null)と比較して、有意に高い脱顆粒抑制活性を示した。これらの結果から、前記ガレクチン9改変体は、十分に前記安定化ガレクチン9の生理活性を維持していることがわかった。
以上のように、本発明のガレクチン9改変体は、長期保存後も、優れた溶解性を維持することが確認された。また、本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチン9の生理活性を維持していることが確認された。具体的には、前記(1)に示すように、いずれのガレクチン9改変体も、約1年間の保存後も、タンパク質濃度がほとんど変化せず、長期保存後においても、優れた溶解性を維持した。また、前記(2)に示すように、いずれのガレクチン9改変体も、前記野生型ガレクチン9の生理活性の一つである、RBL−2H3細胞に対する脱顆粒抑制活性を維持し、中でも、mC8、mC9、mC10、mC11、mC12、mC13、mC10−HPPY、mC10−HPAPおよびmC11−APは、前記安定化ガレクチン9と比較して1.5〜2.5倍の活性を示した。これらの結果から、前記ガレクチン9改変体は、安定性が高い医薬原料として優れた性質を備えているといえる。
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
この出願は、2012年11月20日に出願された日本出願特願2012−254349を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
以上のように、本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチン9と同質の生理活性を保持し、且つ、プロテアーゼ安定性および溶解性に優れ、さらに、組換えタンパク質として製造した際の収率にも優れる。このように、本発明のガレクチン9改変体は、野生型ガレクチンの生理活性を保持するだけでなく、その安定性、取扱性および製造時の収率にも優れることから、医薬原料として極めて有用といえる。

Claims (19)

  1. NCRDとCCRDとを有し、前記NCRDのC末端と前記CCRDのN末端とが、直接的または間接的に結合したタンパク質またはその塩であって、
    前記NCRDは、
    (N1)配列番号1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (N2)配列番号1で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド、または、
    (N3)配列番号1で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、且つ糖結合能を有するペプチド
    であり、
    前記CCRDは、
    N末端領域およびC末端領域からなり、且つ糖結合能を有するペプチドであり、
    前記N末端領域は、
    (C−N1)配列番号3で表わされるアミノ酸配列において、1〜17個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチドであり、
    前記C末端領域は、
    (C−C1)配列番号5で表わされるアミノ酸配列からなるペプチド、
    (C−C2)配列番号5で表わされるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド、または、
    (C−C3)配列番号5で表わされるアミノ酸配列と80%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなるペプチドである
    ことを特徴とするタンパク質またはその塩。
  2. 前記CCRDの前記N末端領域のアミノ酸の欠失が、連続したアミノ酸の欠失または不連続のアミノ酸の欠失である、請求項1記載のタンパク質またはその塩。
  3. 前記CCRDの前記N末端領域のアミノ酸の欠失が、連続したアミノ酸の欠失である、請求項1記載のタンパク質またはその塩。
  4. 前記CCRDの前記N末端領域のアミノ酸の欠失が、N末端のアミノ酸から連続する欠失である、請求項3記載のタンパク質またはその塩。
  5. 前記CCRDの前記N末端領域において欠失するアミノ酸残基数が、6〜14個である、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  6. 前記CCRDの前記N末端領域において欠失するアミノ酸残基数が、8〜14個である、請求項5記載のタンパク質またはその塩。
  7. 前記(C−N1)のペプチドにおいて、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の10番目、11番目、12番目、13番目、15番目および17番目からなる群から選択された少なくとも一つのアミノ酸残基が、プロリンである、請求項1から6のいずれか一記記載のタンパク質またはその塩。
  8. 前記(C−N1)のペプチドにおいて、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の10番目および11番目のアミノ酸残基が、Pro−Pro、Pro−HisまたはHis−Proである、請求項1から7のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  9. 前記(C−N1)のペプチドにおいて、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の12番目および13番目のアミノ酸残基が、Pro−Pro、Pro−AlaまたはAla−Proである、請求項1から8のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  10. 前記NCRDとCCRDとが、リンカーを介して間接的に結合しており、
    前記リンカーが、アミノ酸またはペプチドである、請求項1から9のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  11. 前記リンカーがペプチドであり、そのアミノ酸残基数が、2〜8個である、請求項10記載のタンパク質またはその塩。
  12. 前記リンカーが、His−Met、Arg−Ile−Pro、Asn-Leu、Asp-Phe-ValおよびGly−Ser−Alaからなる群から選択された少なくとも一つの配列を含むペプチド、または、前記配列からなるペプチドである、請求項11記載のタンパク質またはその塩。
  13. 前記CCRDのN末端領域が、配列番号7〜20のいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項1から12のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  14. 前記CCRDが、配列番号21〜34のいずれか一つのアミノ酸配列からなるペプチドである、請求項1から13のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  15. 前記タンパク質が、配列番号35〜48のいずれか一つのアミノ酸配列を含むタンパク質である、請求項1から14のいずれか一項に記載のタンパク質またはその塩。
  16. 請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質をコードする塩基配列を有することを特徴とする、核酸。
  17. 請求項16記載の核酸を有することを特徴とする、発現ベクター。
  18. 請求項16記載の核酸または請求項17記載の発現ベクターを有することを特徴とする、形質転換体。
  19. 請求項1から15のいずれか一項に記載のタンパク質およびその塩、請求項16記載の核酸、ならびに請求項17記載の発現ベクターの少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする、医薬。
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