JPWO2014077114A1 - 無アルカリガラスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ガラス原料を溶融し排ガスを捕集する工程、排ガスに冷却用液体を接触させて排ガスを冷却する工程、冷却された排ガスにCaCO3、Ca(OH)2及び(Ca,Mg)CO3からなる群から選択される1種以上を添加し、集塵部材を用いて排ガスから平均粒子径(D50)が30〜100μmの粉体を回収する工程、及び粉体が回収された排ガスにMg(OH)2及び水を接触させて排ガスに含まれる成分を回収液体として回収する工程を含み、回収液体を、排ガスを冷却する工程で冷却用液体として用いる、無アルカリガラスの製造方法である。

Description

本発明は、無アルカリガラスの製造方法に関する。
一般に、ガラス溶融炉から排出される排ガス中には、ガラス原料に由来する種々の成分が含まれる。たとえばホウケイ酸ガラスを製造する場合には、排ガス中にホウ素(B)を含むホウ素成分が含まれる。また、硫黄(S)を含む硫黄成分が含まれることが多い。これらの成分はそのまま大気中に放出すると、環境に悪影響を及ぼすおそれがあるので、排ガスからこれらの成分を除去する方法が種々検討されている。
また、各種ディスプレイ用ガラス基板等には、実質的にアルカリ金属酸化物を含まない無アルカリガラスが用いられている。
特許文献1には、排ガスからホウ素成分および硫黄成分を除去する方法として、排ガスに冷却水および接触水を接触させることによって、排ガス中のホウ素成分および硫黄成分を水に溶解させて除去する方法が記載されている。この方法で生じる、ホウ素成分および硫黄成分を含む排液は、中和した後に冷却水または接触水として再利用できるようになっている。
特許文献1の実施例においては、排液の中和剤としてNaOHが用いられており、中和による沈殿物が生じないため、中和後の排液をそのまま冷却水または接触水の一部として再利用することができる。また、排ガスに含まれるホウ素成分等はガラス原料として有用なものであるから、これらを回収し、ガラス原料として再利用することも検討されている。
特許文献2には、ガラス原料を加熱溶融する際の燃料として、実質的に硫黄分を含まない燃料を使用し、ガラス溶融炉からの排ガスを水に接触させて捕集液とし、この捕集液を中和して中和捕集液を得、この中和捕集液を固液分離した後に加熱乾燥させることによって、ガラス原料として有用な砒素成分、ホウ素成分、塩素成分を回収する方法が記載されている。
国際公開第2009/072612号 日本国特開2004−238236号公報
特許文献1に記載の方法では、排液の中和剤としてNaOHを用いると、中和後の排液中にアルカリ金属塩であるナトリウム塩が含まれる。中和後の排液中には、ガラス原料として再利用可能なホウ素成分および硫黄成分が含まれているものの、アルカリ金属塩も含まれるため、この排液を無アルカリガラスの製造に使用することは適さない。
特許文献2に記載の方法では、固液分離手段としてスプレードライヤーを用いており、回収される有用成分は主として数百μm以上の比較的大きな固形分である。固形分が比較的大きいと、ガラス原料として再利用する際、他成分と均質にまぜるのが困難な場合がある。
また、特許文献2に記載の方法では、有用成分の回収サイクルにおいて、中和剤として添加されるカルシウム化合物の量が多いため、ガラス原料として再利用するためには、回収される有用成分のうち、カルシウム成分が過剰になるという問題がある。
本発明は、ガラス溶融炉から排出される排ガスから、再利用可能な成分を粉体状で回収するとともに、その組成がガラス原料として適している無アルカリガラスの製造方法を提供することを一目的とする。
本発明の一側面としては、酸化物基準の質量百分率で、SiO:50〜73%、Al:10.5〜24%、B:0.1〜12%、MgO:0.5〜10%、CaO:0.5〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、ZrO:0〜5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜29.5%、MgO/(MgO+CaO):0.1〜0.8である無アルカリガラスを製造する方法であって、ガラス原料を溶融し排ガスを捕集する工程、前記排ガスに冷却用液体を接触させて排ガスを冷却する工程、前記冷却された排ガスにCaCO、Ca(OH)及び(Ca,Mg)COからなる群から選択される1種以上を添加し、集塵部材を用いて排ガスから平均粒子径(D50)が30〜100μmの粉体を回収する工程、及び前記粉体が回収された排ガスにMg(OH)及び水を接触させて排ガスに含まれる成分を回収液体として回収する工程を含み、前記回収液体を、前記排ガスを冷却する工程で前記冷却用液体として用いる、無アルカリガラスの製造方法である。
本発明によれば、ガラス溶融炉から排出される排ガスから、再利用可能な成分を粉体状で回収するとともに、その組成がガラス原料として適している無アルカリガラスの製造方法を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態によるガラスの製造方法の一例のフロー図を示す。 図2は、本発明の一実施形態によるガラス製造方法の一例である製造ラインの概略図を示す。 図3は、本発明の一実施形態によるガラス製品を製造するための一例のフロー図を示す。
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
図1に、本実施形態の無アルカリガラス(以下、単に「ガラス」と称することがある。)の製造方法の一例のフロー図を示す。
図1では、1001においてガラス原料を溶融し排ガスを捕集し、1002において排ガスに冷却用液体を接触させて排ガスを冷却し、1003において冷却された排ガスにCaCO、Ca(OH)及び(Ca,Mg)COからなる群から選択される1種以上(以下、単に「Ca化合物」と称することがある。)を添加し、集塵部材を用いて排ガスから回収粉体を回収し、1004において粉体が回収された後の排ガスにMg(OH)及び水を接触させて排ガスに含まれる成分を回収液体として回収する。以下、1004をMg(OH)処理工程ともいう。1005において、1004で回収液体を回収した後に、排ガスを排気することができる。
1004で回収された回収液体を、1002において排ガスを冷却する工程で冷却用液体として用いる。また、1003で回収された回収粉体は、1001においてガラス原料として用いて系内で循環させてもよい。また、回収粉体は、系内で循環させなくても、別の系で用いるために取り出してもよい。
本実施形態によれば、ガラス溶融で排出される排ガスから、再利用可能な成分を粉体状で回収するとともに、その組成がガラス原料として適しているガラスの製造方法を提供することができる。これによって、排ガスから環境に負荷を与えうる成分を除去して大気中に放出することが可能となり、また、排ガス中のホウ素成分等をガラス原料として再利用することができる。
本実施形態によれば、1004のMg(OH)処理工程で添加されたMg成分が系内を循環し、粉体回収工程で添加されたCa成分とともに粉体として回収することができる。これによって、回収される粉体の組成が、Ca成分のみでなく、Mg成分をともに含むため、ガラス原料として再利用しやすい組成を提供することができる。
また、1003で回収される回収粉体は、平均粒子径(D50)が30〜100μmの粉体状であるため、ガラス原料として再利用する際の利用方法の幅を広げることができる。すなわち、粉体としてそのまま使用することもでき、この粉体に別途の成分を加えることもでき、さらには、造粒体を作製して使用することもできる。また、粉体の粒子径が小さいことで、ガラス原料として再利用する際、他成分とより均質に混合することができる。
さらに、1004において、Mg(OH)及び水によって回収液体を回収することで、回収液体を溶液状で回収することができる。スラリー化した液体は、系内の配管や、各工程において液体を噴霧する際のノズル等を通過する際に、配管及びノズル等を損傷することがあるため、回収液体は溶液状であることが望ましい。
水酸化マグネシウムは、安価で取り扱いやすいことから一般的な酸性排液の中和剤として利用されているが、水への溶解度が低く、通常はスラリー状態であるため、液を循環させて再利用する場合には配管のつまり等を起こすことが懸念される。これに対し、本発明の発明者は、水酸化マグネシウムスラリーを、ホウ素成分を含む液体に加えると、マグネシウムが含まれるにも関わらず水溶液となるという知見を得て本発明に至った。
また、1003の粉体回収工程において、Ca成分を添加することで、清澄剤を由来とする成分を粉体として回収することができ、ガラス原料として再利用も可能である。特に、清澄剤を由来とするフッ素(F)成分を粉体回収工程において除去することができる。これによって、後続のMg(OH)処理工程へのフッ素成分の混入を防止することができ、Mg(OH)処理工程においてフッ素成分がMg(OH)と反応してスラリー化することを防ぐことができる。
また、1003の粉体回収工程によって回収された粉体は乾燥状態であり、加熱処理を必要とせず、そのままガラス原料として使用することができる。
<ガラス組成>
本実施形態によって製造されるガラスは、酸化物基準の質量百分率で、SiO:50〜73%、Al:10.5〜24%、B:0.1〜12%、好ましくは0.3〜12%、より好ましくは0.5〜12%、MgO:0.5〜10%、CaO:0.5〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、ZrO:0〜5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜29.5%、MgO/(MgO+CaO):0.1〜0.8を含む。このガラス組成は、ガラス原料を溶融して固化した固体ガラスの組成である。
このようなガラス組成を有するガラスは、無アルカリガラス(以下、無アルカリホウケイ酸ガラスと称することもある。)として用いることができる。
本実施形態によって製造されるガラスには、アルカリ金属酸化物の含有量が合計で1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらにアルカリ金属酸化物を実質的に含まないことが好ましい。
ここで、アルカリ土類金属は、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびバリウム(Ba)を主に意味する。
また、アルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)を主に意味する。
また、「ホウ素成分」はホウ素原子(B)を含む成分の総称である(他の成分についても同様である)。
[SiO
SiOはガラスのネットワークフォーマーであり、必須成分である。SiOはガラスの耐酸性を高め、ガラスの密度を小さくする等の効果が大きい。その含有量は、溶融ガラスの粘性が高くなりすぎ、通常の溶融方法で溶融ガラスを製造することが困難になることを考慮して、一般的には73%以下、好ましくは66%以下であり、より好ましくは61.5%以下である。一方、SiOが少なすぎると、耐酸性の劣化、線膨張係数の増大等の原因となり得るので、ディスプレイ用基板ガラスの場合、その含有量は好ましくは50%以上であり、より好ましくは54%以上であり、さらに好ましくは58%以上である。
[Al
Alはガラスの歪点を上げ、ガラスの分相性を抑制する等の目的で用いられる成分である。Alの含有量は10.5%以上が好ましく、より好ましくは15%以上である。一方、溶融ガラスの高粘性化やガラスの失透特性、耐酸性の劣化を回避する点からは、Alの含有量は24%以下が好ましく、より好ましくは22.5%以下であり、さらに好ましくは22%以下であり、一層好ましくは15%以下である。
[B
はガラスのネットワークフォーマーであり、溶融ガラス化における溶解反応性をよくする成分でもある。Bの含有量は0.1〜12%、好ましくは0.3〜12%、より好ましくは通常、0.5%以上であり、さらに好ましくは5%以上であり、特に好ましくは7%以上である。一方、Bはガラスの耐酸性を低下させる場合があり、通常12%以下であり、特にディスプレイ用基板ガラスの場合、Bの含有量は10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下である。
[MgO]
MgOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの密度を低下させ、線膨張係数を大きくせず、溶解反応性をも向上させることから、特にガラス成形工程にフロート法を用いてディスプレイ用ガラス基板を製造する場合には必須の成分である。本実施形態において、MgOの含有量は0.5%以上であり、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、一層好ましくは4%以上である。一方、ガラスの分相を回避するため、耐酸性を高める等の点からは、その含有量は10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
[CaO]
CaOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、密度や線膨張係数、歪点等のガラス特性を調整する目的で用いられることのある成分である。CaOの含有量は0.5%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、さらに好ましくは2%以上、一層好ましくは4%以上である。一方、ガラスの失透特性の劣化、線膨張係数の増大等を回避する点からは、その含有量は14.5%以下が好ましく、より好ましくは10%以下であり、一層好ましくは9%以下である。
[SrO]
SrOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの失透特性および耐酸性の改善のために含有させることのある成分である。SrOを含有させる場合の含有量は1%以上が好ましく、より好ましくは2%以上であり、一層好ましくは3%以上である。その含有量は24%以下が好ましく、より好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは12.5%以下であり、一層好ましくは6%以下である。
[BaO]
BaOは溶融ガラスの粘性を下げる成分であり、ガラスの分相、失透特性の向上、および耐酸性の向上等の目的で加えることのできる成分である。しかし、密度を増大させる等のためガラスが液晶用ガラス基板である場合には、不可避的含有量以内にすることが好ましい。なお、BaOを積極的に含有させる場合の含有量は13.5%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、さらに好ましくは5%以下、一層好ましくは2%以下である。
[ZrO
ZrOは必須ではないが、ガラス溶融温度を低下させるために、または焼成時の結晶析出を促進するために、5%以下で含有してもよい。5%以下であることで、ガラスを安定化させ、εが小さくすることができる。好ましくは3%以下である。
[Cl]
Clは、清澄剤として脱泡のために添加される成分であり、0.01%〜0.35%で含有される。脱泡及び再沸抑制の観点から、より好ましくは0.30%以下、さらに好ましくは0.25%以下である。脱泡をより促進するために、より好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上である。
[F]
FはClと同様に清澄剤として脱泡のために添加される成分であり、0.01〜0.15%で含有される。Fは、溶融ガラスの表面張力を低下させ、溶融ガラス表面に存在する泡を破れやすくする効果、または溶融ガラス中の微小な泡を削減する効果がある。脱泡及び再沸抑制の観点から、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。脱泡をより促進するために、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。
[SO
SOは、清澄剤として添加され、脱泡またはガラス原料の溶解を促進する成分であり、0.0001〜0.0025%で含有される。再沸抑制の観点から、より好ましくは0.0010%以下である。脱泡またはガラス原料の溶解をより促進したい場合はSOを0.0012%以上含有することがより好ましい。SO含有は、通常、ボウ硝等の硫酸塩をガラス原料に添加することによって行われるが、その他に、たとえば重油燃焼窯においては重油のS含有不純物にも起因する。
[MgO+CaO+SrO+BaO]
MgO、CaO、SrO及びBaOの合計(MgO+CaO+SrO+BaO)の含有量が小さいと溶融ガラスの粘性が高くなり、溶解反応性が悪化する。これらの合計の含有量は8%以上が好ましく、より好ましくは9%以上であり、さらに好ましくは16%以上である。一方、ガラスの密度の増大、線膨張係数の増大を回避する点からは、これらの合計の含有量は29.5%以下が好ましく、26%以下がより好ましく、さらに好ましくは18%以下、一層好ましくは15%以下である。
[MgO/(MgO+CaO)]
MgOの含有量をMgOとCaOの含有量の合計によって除したMgO/(MgO+CaO)は酸化物基準の質量比で0.1〜0.8であることが好ましい。0.2以上であることで、比重増加及び膨張係数増加を防ぐことができる。歪点及び溶解性の観点から、より好ましくは0.25〜0.55であり、さらに好ましくは0.3〜0.5であり、一層好ましくは0.3〜0.4である。
[その他のガラス成分]
その他に含有させることができるガラス成分の例としては、特に制限されず、溶解剤、成形剤等を含んでもよい。清澄剤として、上記したCl、F及びSO以外の成分が含まれてもよい。また、Fe、TiO、Y等を適宜含有してもよい。
[ガラス組成の例]
歪点及び溶解性を高くする観点から、ガラス組成のより好ましい例としては、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO:58〜66%、Al:15〜22%、B:5〜12%、MgO:0.5〜8%、CaO:0.5〜9%、SrO:3〜12.5%、BaO:0〜2%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:9〜18%、MgO/(MgO+CaO):0.35〜0.55である。
特に溶解性を高くする観点から、ガラス組成のより好ましい例としては、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO:50〜61.5%、Al:10.5〜18%、B:7〜10%、MgO:2〜5%、CaO:0.5〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:16〜29.5%、MgO/(MgO+CaO):0.3〜0.5である。
特に歪点を高くする観点から、ガラス組成のより好ましい例としては、酸化物基準の質量百分率表示で、SiO:54〜73%、Al:10.5〜22.5%、B:0.1〜12%、好ましくは0.3〜12%、より好ましくは0.5〜5.5%、MgO:0.5〜10%、CaO:0.5〜9%、SrO:0〜16%、BaO:0〜2.5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜26%、MgO/(MgO+CaO):0.3〜0.8である。
<ガラス原料>
本実施形態において、ガラス原料としては、ガラス成分としての酸化物となり得る化合物であり、粉末状であっても造粒体状であってもよい。ガラス原料は、下記のケイ素源、アルミニウム源、ホウ素源等を含んでいてよい。公知の原料粉末を適宜選択して用いることができる。
ガラス原料の組成は、目的のガラス組成が得られるように設計することができる。
ガラス原料の組成は、酸化ホウ素を除き、酸化物基準で、得ようとするガラス組成とほぼ同じ組成とされる。酸化ホウ素は、ガラス原料中のホウ素源量が、酸化物基準で、通常、得ようとするガラス組成における酸化ホウ素含有量よりも揮発分を考慮した量だけ多くなるように配合することが好ましい。
また、ガラス原料には、必要に応じて、副原料として清澄剤、着色剤、溶融助剤、乳白剤等を含有させることができる。これらの副原料は公知の成分を適宜用いることができる。
このうち清澄剤成分は、ガラス溶融工程で揮散して排ガスして捕集されるため、回収粉体として回収することができる。その場合には、清澄剤原料としても回収粉体を用いることができる。
[ケイ素源]
ケイ素源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でSiO成分となり得る化合物の粉体である。ケイ素源としてはケイ砂が好適に用いられる。
[アルミニウム源]
アルミニウム源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でAl成分となり得る化合物の粉体である。酸化アルミニウム、水酸化アルミウム等が好適に用いられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
[ホウ素源]
ホウ素源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でB成分となり得る化合物の粉体である。具体例としては、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸(HBO)、四ホウ酸(H)等のホウ酸;酸化ホウ素(B);コレマナイト等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。安価で、入手しやすい点から、オルトホウ酸が好ましい。なお、コレマナイトは後述のカルシウム源でもある。
[マグネシウム源]
マグネシウム源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でMgO成分となり得る化合物の粉体である。具体例としては、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))および炭酸マグネシウム(MgCO)等が挙げられる。
[アルカリ土類金属源]
アルカリ土類金属源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でSrO、CaOまたはBaOとなり得る化合物の粉体である。具体例としては、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、ドロマイト(理想化学組成:CaMg(CO)等の炭酸塩;酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)等の酸化物;水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化ストロンチウム(Sr(OH))等の水酸化物;が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。なお、ドロマイトは前述のマグネシウム源でもある。
[ジルコニア源]
ジルコニア源としての原料粉末は、ガラスの製造工程中でZrO成分となり得る化合物の粉体である。ジルコニア源としては二酸化ジルコニウム、ジルコン等を挙げることができる。
[清澄剤]
ガラス原料には、例えば清澄剤として、硫酸塩、塩化物、またはフッ化物を含有させることができる。これらは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
硫酸塩、塩化物、またはフッ化物として、ガラスを構成する酸化物のカチオンを含む化合物を用いることができる。具体的にはMgまたはアルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、またはフッ化物を用いることができる。これらを用いる場合、Mgの硫酸塩、塩化物、またはフッ化物は、マグネシウム源となる。アルカリ土類金属の硫酸塩、塩化物、またはフッ化物は、アルカリ土類金属源となる。
<ガラスの製造方法>
以下、図2を参照して、本実施形態のガラスの製造方法の一例をさらに詳しく説明する。図2は、本実施形態のガラスの製造方法の一例である製造ラインを概略的に示す図である。
図2に示す製造ラインは、ガラス溶融炉1、第1冷却塔2、集塵部材としてのバグフィルター3、第2冷却塔4、スクラバー(排ガス洗浄装置)6、遠心力集塵機8、煙突10、回収液体タンク14、Mg(OH)添加装置16、循環ポンプ17、Ca化合物供給装置18、及び回収粉体タンク19を備える。
「1.ガラス原料の溶融及び排ガスの捕集」
本実施形態は、ガラス原料を溶融し排ガスを捕集する工程を有する。ガラス原料は粉末状でも造粒体状でもよい。
本実施形態のガラスの製造方法では、ガラス溶融炉1にガラス原料を投入し、これを溶融させて溶融ガラスとする。ガラス溶融方法としては、シーメンス型等のガラス溶融炉を用いる普通溶融法、気中溶融法等を挙げることができる。本実施形態では普通溶融法が好ましい。
[普通溶融法]
普通溶融法は、ガラス溶融炉内で、既に溶融している溶融ガラスの液面上に、ガラス原料を投入し、このガラス原料(バッチ山、batch pileともいう。)をバーナー等によって加熱して融解を進行させ、徐々に溶融ガラスとする方法である。
[気中溶融法]
気中溶融法は、気相雰囲気中でガラス原料に含まれるガラス粒子(造粒体も含む)の少なくとも一部を溶融させて溶融ガラス粒子とし、この溶融ガラス粒子を集積して溶融ガラスとする方法である。具体的には、まずガラス原料を気中加熱装置の高温の気相雰囲気中に導入する。気中加熱装置は公知のものを使用できる。
[排ガスの捕集]
本実施形態におけるガラス原料の溶融過程で生じる排ガスは、図1において、ガラス溶融炉1から発生する排ガスG0である。排ガスG0には、ガラス溶融炉1に投入されたガラス原料の構成成分に由来するガス成分が含まれる。
このガス成分としては、ホウ素成分を主に挙げることができる。排ガスG0中のホウ素成分は、例えば、ホウ酸ないし酸化ホウ素である。
排ガスG0には、清澄剤に由来する成分、例えば硫黄原子(S)を含む成分(硫黄成分ともいう。)、塩素原子(Cl)を含む成分(塩素成分ともいう。)、フッ素原子(F)を含む成分(フッ素成分ともいう。)等が含まれていてもよい。またガラス溶融炉1において重油等の硫黄を含む燃料を燃焼させた場合は、排ガスG0にこの燃料に由来する硫黄成分が含まれる。
排ガスG0中の硫黄成分は主に酸化物(SO)である。
排ガスG0中の塩素成分は主にHClである。
排ガスG0中のフッ素成分は主にHFである。
ガラス溶融炉1から排出される排ガスG0中に、硫黄成分、塩素成分が含まれる場合、これらの成分を水に溶解させてMg(OH)と反応させると、マグネシウム塩(MgSO、MgCl)が生成する。
したがって、本実施形態の方法は、排ガスG0にホウ素成分のほかに硫黄成分および/または塩素成分が含まれる場合にも好適であり、これらの成分をMg(OH)処理工程でマグネシウム塩として回収して、ガラスの製造に再利用することができる。これによって、回収されたMgSOおよび/またはMgClはマグネシウム源として再利用でき、かつ清澄剤としての硫酸塩および/または塩化物として再利用できる。
また、排ガスG0にフッ素成分が含まれる場合は、Mg(OH)処理をする第2冷却塔4及びスクラバー6の前で、バグフィルター3においてCa化合物にフッ素成分が吸着して回収粉体として回収することができる。そのため、フッ素成分がマグネシウム塩(MgF)となって、回収液体中で固形分として含まれることを防ぐことができる。
「2.排ガス冷却工程」
次に、本実施形態は、排ガスに冷却用液体を接触させて排ガスを冷却する工程を含む。図2では、ガラス溶融炉1から捕集した排ガスG0を配管を通して第1冷却塔2に供給し、第1冷却塔2で排ガスG0に冷却用液体を接触させて排ガスG0を冷却する。
第1冷却塔2で排ガスG0を冷却することで、後続のバグフィルター3に供給される排ガスG1の温度を下げて、バグフィルター3が熱によって損傷することを防止することができる。例えば、バグフィルター3の炉布の部分の損傷を防止して、炉布の寿命を長くすることができる。
第1冷却塔2に供給される直前の排ガスG0の温度は特に限定されない。排ガスG0の温度は、ガラス溶融炉1から排ガスが捕集された状態で、通常1000〜1600℃であり、その温度で第1冷却塔2に供給されてもよい。また、配管等である程度冷却されることで、350〜1000℃であってもよい。
第1冷却塔2内では、排ガスG0に冷却用液体を接触させる。例えば、第1冷却塔2内の上部にノズルを設けて、ノズルから冷却用液体を排ガスG0に噴霧することができる。排ガスG0は冷却用液体と接触することにより温度が低下して、冷却後排ガスG1として排出される。このとき排ガスG0中の成分の一部が、冷却用液体に溶解してもよい。排ガスG0と接触した冷却用液体は、排ガスG0中に分散されて、排ガスG1として後続のバグフィルター3に供給される。冷却用液体の一部が第1冷却塔2底部に貯留する場合は、再度排ガスG0に噴霧するようにしてもよい。
本実施形態では、後述のMg(OH)処理工程で回収された回収液体を冷却用液体として用いる。この回収液体は、水及びMg塩が主に含まれる水溶液状の液体であることが好ましい。回収液体は固形分量が少ないため、固形分による配管や装置の損傷を防止することができる。特に、第1冷却塔2のノズルの損傷を防止することができる。
なお、冷却用液体は製造ラインの初期においては特に限定されず、排ガスG0と接触することで排ガスG0を冷却できるものを用いることができる。この場合、排ガスG0中の成分を溶解するものが好ましく、水(工業用水、蒸留水等)または水溶液(溶質はガラス原料中の成分として許容されるもの)が好ましい。また、回収液体に加えてこれらの冷却用液体を併せて用いてもよい。
冷却後の排ガスG1の温度は、350℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。これによって、後続の装置の材質が加熱によって損傷することを防止することができる。この冷却後の排ガスG1の温度の下限は、ガス中の成分が析出しない温度範囲であることが好ましい。例えば150℃以上が好ましく、180℃以上がより好ましい。
「3.粉体回収工程」
次に、本実施形態は、冷却された排ガスにCaCO、Ca(OH)(消石灰とも称する。)及び(Ca,Mg)CO(ドロマイトとも称する。)からなる群から選択される1種以上のCa化合物を添加し、集塵部材としてバグフィルター3を用いて排ガスから平均粒子径(D50)が30〜100μmの粉体を回収する工程を含む。
図2では、第1冷却塔2からの排ガスG1を配管を通してバグフィルター3に供給し、その間で、Ca化合物供給装置18から上記Ca化合物を添加し、バグフィルター3で排ガスG1から回収粉体を回収する。図中符号G2はバグフィルター3から排気されて第2冷却塔4に供給される前の排ガスを示す。
回収粉体は回収粉体タンク19に供給される。その後、後述するようにガラス溶融炉1に供給されてガラス原料として再利用することができる。なお、回収粉体タンク19を設けないで、バグフィルター3で回収された回収粉体を配管で直接ガラス溶融炉1に供給してもよい。
Ca化合物供給装置18では、CaCO、Ca(OH)及び(Ca,Mg)COを単独で、又は組み合わせて供給することができる。これらは、排ガスG1の1Nmに対し、1.0〜5.0gで供給することが好ましく、さらに好ましくは2.0〜3.0gである。
ここで、バグフィルター3に供給される排ガスG1中のホウ素成分、硫黄成分、塩素成分、フッ素成分等の除去率(即ち、バグフィルターでの反応性)を考慮すると、Ca化合物は、Ca(OH)及び/またはCaCOが好ましく、Ca(OH)がより好ましい。
また、回収原料をガラス原料に再利用する際に、ガラス中のβ−OHの上昇を低減することを考慮すると、CaCO及び/または(Ca,Mg)COが好ましく、(Ca,Mg)COがより好ましい。β―OHは、溶融ガラス中に含まれる水分であり、ガラスに含まれると燃焼効率が低下することがあるため、その含有量は少ない方がよい。
一方、ガラスの安定生産(即ち、バグフィルター3でのホウ素成分、硫黄成分、塩素成分、フッ素成分等の除去率向上や、ガラス中のβ−OHの低減)を考慮すると、Ca(OH)及び/または(Ca,Mg)COが好ましく、Ca(OH)がより好ましい。
バグフィルター3は公知のものを適宜用いることができる。バグフィルター3を設けることにより、排ガスG1中の固体分を除去することができる。
排ガスG1中にフッ素成分が含まれる場合は、第1冷却塔2からバグフィルター3へ至る経路において、排ガスG1中に上記したCa化合物を供給することで、排ガスG1中のフッ素成分を除去することができる。Ca化合物は粉状で添加するとよい。Ca化合物は、排ガスG1中のフッ素成分を吸着した後、フッ素成分とともにバグフィルター3で除去される。このようにして予め、排ガスG1中のフッ素成分を除去しておくことにより、後述のMg(OH)処理工程で、フッ素成分とMg(OH)との反応により、水に難溶のマグネシウム塩(MgF)が生成することを防止することができる。
バグフィルター3において、粉体回収後の排ガスG2に含まれるフッ素成分の濃度は、30mg/Nm以下であることが好ましく、より好ましくは10mg/Nm以下であり、さらに好ましくは5mg/Nm以下である。これによって、後続のMg(OH)処理工程にフッ素成分が混入を防止し、水に難溶のマグネシウム塩(MgF)が生成することを防止することができる。また、バグフィルター3で回収した回収粉体にフッ素成分が含まれ、これをガラス原料として再利用する際に、清澄剤としてフッ素成分を含む組成を提供することができる。
このフッ素成分の濃度は、排ガスを定量ポンプで採取し、吸収液に吸収させ、溶液中のフッ素成分の濃度をICPで測定し、排ガス1Nmあたりのフッ素成分量から求めることができる。
「4.Mg(OH)処理工程」
次に、本実施形態は、粉体が回収された排ガスにMg(OH)及び水を接触させて排ガスに含まれる成分を回収液体として回収する工程を含む。
図2では、バグフィルター3で排ガスG1から粉体を回収した後に、排ガスG2は第2冷却塔4へ供給され、第2冷却塔4内で排ガスG2に第1の接触用液L1を接触させて、排ガスG3としてスクラバー6に供給され、続いてスクラバー6内で排ガスG3に第2の接触用液L2を接触させる。この第1の接触用液L1及び第2の接触用液L2がMg(OH)及び水を含み、第2冷却塔4及びスクラバー6で処理された後に第1の回収液体S1及び第2の回収液体S2として回収液体タンク14に回収される。
第1の接触用液L1及び第2の接触用液L2は、中和剤としてMg(OH)を含有する。本実施形態では、第2冷却塔4及びスクラバー6で使用された後、第1の回収液体S1及び第2の回収液体S2は、系内を循環する。
ここで、中和剤にCa成分が含まれていると、回収液体タンク14内に石膏やホウ酸カルシウム等の沈殿物が生成される。このような沈殿物は、回収液体タンク14の底部、第1冷却塔2の底部、第2冷却塔4の底部、スクラバー6の底部、またそれらをつなぐ各配管内、各装置のノズル等に付着し閉鎖する可能性がある。そのため、中和剤としてCa成分は含まれないことが望ましい。
また、本実施形態によるガラス組成には所定量のMgOが含まれる。中和剤として水酸化カルシウムを用いた場合には、Mg成分が含まれないため、回収粉体中のMg成分が不足して、好ましくない。
第2冷却塔4に供給される直前の排ガスG2の温度は特に限定されない。例えば、130〜180℃が好ましい。
第2冷却塔4内では、排ガスG2に第1の接触用液L1を接触させる。図2に示す例では、第2冷却塔4は、排ガスG2が上部から導入される導入管部分4aと、導入管部分4aから供給される排ガスG2が下部から導入されて上部に排出する冷却塔部分4bとを有する。第1の接触用液L1は、導入部分4aの上部に設けたノズルから排ガスG2の流れ方向に向けて噴霧され、また、冷却塔部分4bの下部に設けたノズルから排ガスG2の流れに反する方向に噴霧される。
排ガスG2は第1の接触用液L1と接触することにより温度が低下して、冷却後排ガスG3として排出される。このとき排ガスG2中の成分の一部が、第1の接触用液L1に溶解してもよい。排ガスG2と接触した第1の接触用液L1は、第2冷却塔4の底部に第1の回収液体S1として貯留する。
第1の接触用液L1としては、水及びMg(OH)を含む液体であることが好ましい。後述する第2の接触用液L2が水及びMg(OH)を含む液体である場合は、第1の接触用液L1は水及びMg(OH)を含む液体に限定されず、排ガスG2と接触することで排ガスG2を冷却できるものであればよい。この場合、排ガスG2中の成分を溶解するものが好ましく、水(工業用水、蒸留水等)または水溶液(溶質はガラス原料中の成分として許容されるもの)が好ましい。本実施形態では、運転開始時の第1の接触用液L1は水であり、後述の回収液体タンク14に回収される回収液体の一部を第1の接触用液L1として再利用することができる。
冷却後排ガスG3の温度は、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましい。これによって、後続の装置が熱によって損傷することを防止することができる。この冷却後排ガスG3の温度の下限は、ガス中の成分が析出しない温度範囲であることが好ましい。例えば40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
冷却後排ガスG3は、配管5を通り、スクラバー6へ供給される。スクラバー6は公知のスクラバー(排ガス洗浄装置)を用いることができる。例えば、ベンチュリースクラバーを用いることができる。
スクラバー6内では、冷却後排ガスG3に第2の接触用液L2を接触させる。例えば、スクラバー6の上部にノズルを設けて、第2の接触用液L2を噴霧することができる。冷却後排ガスG3に第2の接触用液L2を接触させることにより、冷却後排ガスG3中のホウ素成分が第2の接触用液L2に溶解する。このとき、冷却後排ガスG3中の、ホウ素成分以外の成分が第2の接触用液L2に溶解してもよい。
例えば、排ガスG0が硫黄成分および/または塩素成分を含む場合は、冷却後排ガスG3中の、硫黄成分および/または塩素成分が第2の接触用液L2に溶解する。
第2の接触用液L2としては、水及びMg(OH)を含む液体であることが好ましい。前述した第1の接触用液L1が水及びMg(OH)を含む液体である場合は、第2の接触用液L2は水及びMg(OH)を含む液体に限定されず、排ガスG3と接触することで排ガスG3中の、少なくともホウ素成分を溶解してガス中から除去できるものを用いる。この場合、水(工業用水、蒸留水等)または水溶液(溶質はガラス原料中の成分として許容されるもの)が好ましい。本実施形態では、運転開始時の第2の接触用液L2は水であり、後述の回収液体タンク14に回収される回収液体を第2の接触用液L2として再利用することができる。
排ガスを効率よく洗浄するためには、第1の接触用液L1及び第2の接触用液L2のうち第2の接触用液L2が水及びMg(OH)を含む液体であることがより好ましく、さらに、両方が水及びMg(OH)を含む液体であることが好ましい。
本実施形態では、スクラバー6内に高差圧部位7を設けてもよい。例えば、冷却後排ガスG3に第2の接触用液L2が噴霧された直後、これらの混合流体は、圧力損失を生じさせる高差圧部位7を通過する。これにより、この混合流体が乱流状態となり、冷却後排ガスG3と第2の接触用液L2の混合がより充分に行われ、冷却後排ガスG3中の成分の、第2の接触用液L2への溶解をより促進させることができる。
冷却後排ガスG3と接触した後の第2の接触用液L2は、第2の回収液体S2として、スクラバー6の底部に貯留する。
このようにして、冷却後排ガスG3中のホウ素成分等が回収液体中に溶解して除去された清浄ガスG4を得ることができる。
本実施形態では、遠心力集塵機8を設けてもよい。例えば、清浄ガスG4は、遠心力集塵機8でミスト状の水分が除去されて排出清浄ガスG5となり、煙突10から大気へ放散される。本実施形態では、遠心力集塵機8と煙突10との間にファン9を設けてもよく、これによって第2冷却塔4の入り口から煙突10の出口までの装置内におけるガス流量を調整できる。
遠心力集塵機8で分離されたミスト状の水分は、遠心力集塵機8の底部に第3の回収液体S3として貯留する。
第1の回収液体S1は、第2冷却塔4の底部から、配管11を通じて抜き取られ、回収液体タンク14に集められる。
第2の回収液体S2は、スクラバー6の底部から、配管12を通じて抜き取られ、回収液体タンク14に集められる。
第3の回収液体S3は、遠心力集塵機8の底部から配管13を通じて抜き取られ、回収液体タンク14に集められる。
なお、回収液体タンク14には、第1の回収液体S1、第2の回収液体S2及び第3の回収液体S3のいずれか1種が回収されればよいが、全ての回収液体S1〜S3を回収することで排ガスからのガラス成分の回収率を上げることができる。また、回収液体タンク14には、水及びMg(OH)で処理された後の回収液体が回収されることが好ましい。すなわち、第1の接触用液L1及び第2の接触用液L2のうち水及びMg(OH)を含む液体であるものの回収液体であることが好ましい。
図2に示す例では、第1冷却塔2とともに第2冷却塔4を備えるが、第1冷却塔によって排ガスを十分に冷却することで第2冷却塔を省略することも可能である。この場合、スクラバー6において排ガスを水及びMg(OH)と接触すればよい。
「5.回収液体の再利用」
本実施形態では、回収液体を、排ガスを冷却する工程で冷却用液体として用いる。
図2では、回収液体が回収された回収液体タンク14はpH測定装置15およびMg(OH)添加装置16を備える。第1〜第3の回収液体S1〜S3は回収液体タンク14内で混合されて回収液体混合物となる。この回収液体混合物には、少なくとも排ガスG0中のホウ素成分が溶解している。回収液体タンク14内では、この回収液体混合物に対してMg(OH)を添加する。これにより、ホウ素成分とマグネシウム成分を含む液が得られる。
Mg(OH)の添加により、回収液体混合物中のホウ素成分がMg(OH)と反応してホウ酸マグネシウムが生成すると考えられる。Mg(OH)の添加により得られる液は、生成したホウ酸マグネシウムと場合により未反応のホウ素成分やMg(OH)を含む。この液をホウ素成分とマグネシウム成分を含む液という。
ホウ素成分とマグネシウム成分を含む液はそれら成分を溶解した水溶液であることが好ましい。なお、ホウ酸マグネシウム等の液中の成分はその濃度、液温、液のpHなどの変化により充分溶解せず、回収液体混合物へのMg(OH)の添加によって多少の白濁が生じる場合がある。しかし、この白濁を生じた状態の液であっても、第1冷却塔2、第2冷却塔4及びスクラバー6の各種液体として用いることができる。
また、ガラス溶融炉1で溶融されるガラスが無アルカガラスの場合には、Mg(OH)添加により得られる液には、塩素、フッ素、カルシウムなどが微量であるが含まれる場合がある。
なお、Mg(OH)は水に難溶であるため、Mg(OH)添加装置16において、Mg(OH)を水に分散させたスラリー(以下、Mg(OH)の水スラリーということもある。)を調製し、これを回収液体混合物に添加することが好ましい。このMg(OH)の水スラリーにおけるMg(OH)の濃度は一定でもよく、回収液体タンク14内の水位に応じて適宜変更してもよい。
またMg(OH)の水スラリーが添加された液中で、未反応のMg(OH)による沈殿物の生成または白濁を防止するために、回収液体タンク14内にバブラー等の撹拌手段を設けて、この液を撹拌することが好ましい。
回収液体タンク14において、回収液体混合物に添加されるMg(OH)の量は、回収液体混合物中のホウ酸等のホウ素成分をマグネシウム塩に転化させるのに充分な量であることが好ましい。また回収液体混合物中に硫黄成分および/または塩素成分等が含まれている場合には、これらの成分とホウ素成分をマグネシウム塩に転化させるのに充分な量であることが好ましい。
一方、Mg(OH)の供給量が多すぎると、液中に未反応のMg(OH)の沈殿を生じる。かかる沈殿が多く生じると、この液を冷却用液体、第1の接触用液L1または第2の接触用液L2として再利用することが難しくなるため好ましくない。
したがって、pH測定装置15で回収液体タンク14の液のpHを測定し、このpHが6.5〜7.7の範囲内に維持されるように、Mg(OH)の水スラリーの供給量を制御することが好ましい。この液のpHが6.5以上であると、回収液体混合物中のホウ素成分等を良好にマグネシウム塩に転化させることができ、液中に残る未反応のホウ素成分等を少なくすることができる。
一方、液中でMg(OH)による沈殿または白濁が生じるのを良好に防止するには、この液のpHが7.7以下に維持されることが好ましく、7.5以下がより好ましく、7.0以下が特に好ましい。
こうして得られた液は、回収液体タンク14から第1冷却塔2に供給され、冷却用液体として再利用される。
また、本実施形態では、この液の一部を、第1の接触用液L1および第2の接触用液L2として再利用してもよい。すなわち回収液体タンク14内の液の一部は、循環ポンプ17を経て、必要に応じて温度調整された後、第2冷却塔4内に噴霧される第1の接触用液L1、およびスクラバー6に噴霧される第2の接触用液L2として使用することができる。
<回収粉体>
次に、バグフィルター3で回収した回収粉体について説明する。この回収粉体は、平均粒子径(D50)が30〜100μmである。
本実施形態によれば、系内でアルカリ金属が添加されないため、回収粉体は、無アルカリホウケイ酸ガラス製造用のガラス原料として用いることができる。回収粉体は、バグフィルター3から回収後に、同じライン上でガラス溶融炉1に投入されて、ガラス原料として再利用することができる。また、回収粉体は、バグフィルター3から回収後に、別のガラスの製造ラインで用いるために、取り出されてもよい。
この回収粉体は、アルカリ成分を含むソーダライムガラスよりも融点が100℃以上高く、難溶解性である無アルカリガラス原料をガラス溶融炉1にて溶解する際に、このガラス原料に添加することに適している。この回収粉体を無アルカリガラス原料に添加することで、溶解性を向上することができ、また清澄性を向上することができる。これによって、生産性が高く、高品質の無アルカリガラスを得ることができる。
回収粉体には、バグフィルター3で回収された成分として、排ガスG0中に含まれるホウ素成分、硫黄成分、塩素成分、フッ素成分等が含まれうる。また、回収粉体には、Ca化合物供給装置18から添加されるカルシウム成分が含まれうる。また、回収粉体には、回収液体タンク14から第1冷却塔2に添加される成分として、マグネシウム成分、ホウ素成分、硫黄成分、塩素成分等が含まれうる。
回収粉体は、酸化物基準の質量比でMgO/(CaO+MgO)が0.1〜1.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.8であり、さらに好ましくは0.1〜0.4である。これによって、ガラス原料として再利用しやすい組成を提供することができる。
排ガスG0に清澄剤成分としてフッ素成分が含まれる場合には、バグフィルター3でカルシウム成分にフッ素成分が吸着されてともに回収粉体として回収することができる。
回収粉体は、粉体全体に対しフッ素成分が酸化物基準で0.1〜2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0質量%である。これによって、ガラス原料として再利用する際に清澄剤としてフッ素を含む組成を提供することができる。回収粉体に含まれるフッ素成分は、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム等を挙げることができる。
ガラス溶融炉1で、重油などの燃料を用いる場合、硫黄成分が排ガスG0に混入することがある。この場合、排ガス処理の系内に硫黄成分が循環して濃縮されることがある。この場合は、回収粉体をガラス原料として再利用する際に、硫黄成分の増加分を考慮して、配合量を調整すればよい。
一方、ガラス溶融炉1で、硫黄成分の含有量が少ない燃料を用いる場合は、硫黄成分が濃縮されることを防止することができるため、回収粉体の全量をガラス原料として再利用することも可能である。
この場合、ガラス溶融炉1から捕集される排ガスG0中の硫黄酸化物ガスの体積濃度が500vol.ppm以下となるようにガラス原料を溶融することが好ましく、より好ましくは50vol.ppm以下であり、さらには硫黄酸化物ガスを実質的に含まないことが一層好ましい。このような溶解方法としては、例えばガス燃焼、電気加熱等がある。
ここで、排ガスG0中の硫黄酸化物ガスとしては、主にSO及びSOを挙げることができる。
[回収粉体の粒子径]
回収粉体の平均粒子径(D50)の下限値としては、30μm以上であればよいが、より好ましくは35μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。一方、上限値としては、100μm以下であればよいが、より好ましくは80μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。
回収粉体を、普通溶融法で溶融させる方法に用いる場合、溶融ガラス中における気泡の発生が抑えられやすい点からも、平均粒子径(D50)は100μm以下であることが好ましい。
また、回収粉体の体積基準の90%累計粒子径(D90)としては、200μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、一層好ましくは80μm以下である。
上記した平均粒子径(D50)及び体積基準の90%累計粒子径(D90)は、バグフィルター3の炉布の種類、厚さ及び通気性等によって調整することができる。
ここで、平均粒子径(D50)は、粒子が1mm未満の場合にレーザー回析散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における、体積累計50%のメディアン径である。
また、体積基準の90%累計粒子径(D90)は、粒子が1mm未満の場合にレーザー回析散乱法を用いて測定された粒径分布曲線における、体積累計90%の粒子径である。
[造粒体]
本実施形態によって回収された回収粉体は、造粒体として提供してもよい。造粒体の製造方法としては、粉体と任意の液体を混合して、公知の造粒法を適宜用いて造粒することができる。例えば、転動造粒などの乾式造粒法またはスプレードライ法などの湿式造粒法が好適に用いられる。粉体と混合する液体としては、第1〜第3の回収液体S1〜S3を用いることで、排ガスからのガラス原料の回収率を上げることができる。
また、回収粉体にアルカリ土類金属成分及びホウ酸成分が含まれることで、造粒体においてアルカリ土類金属のホウ酸塩水和物を生成することができる。造粒体にアルカリ土類金属のホウ酸塩水和物が含まれることで、造粒体の強度を向上することができる。アルカリ土類金属としては、Ca及び/またはSrが好ましい。特にCaは粉体回収工程で添加される成分であるため、回収粉体に含まれている。このCa成分はドロマイト((Ca,Mg)CO)の形態で添加されることで、カルシウムのホウ酸塩水和物をより生成しやすくすることができる。
また、回収粉体にマグネシウム成分が含まれることで、造粒体とするときに、造粒体の強度を向上することができる。Mgは第2冷却塔4及びスクラバー6で添加される成分であるため、回収粉体に含まれている。
<ガラス製品の製造方法>
本実施形態によれば、上記したガラスの製造方法において得られた溶融ガラスを成形して徐冷することで最終製品として得ることができる。なおガラスの最終製品は、室温で固体状であり実質的に流動性を有していないガラスが、一部または全部に用いられた製品であり、ガラス表面が加工されているもの等も含まれる。
図3は、本実施形態のガラスの製造方法の一例を示すフロー図である。符号101はガラス溶融工程であり、上記したガラス溶融工程に相当する。
まず、ガラス溶融工程101で得た溶融ガラスを、成形工程102で目的の形状に成形した後、徐冷工程103にて公知の方法で徐冷する。その後、必要に応じて後加工工程104において切断や研磨など、公知の方法で後加工を施すことによりガラスが得られる。
成形工程102はフロート法、ダウンドロー法、フュージョン法な等の公知の方法で行うことができる。フロート法は、溶融スズ上で溶融ガラスを板状に成形する方法である。本実施形態では、フロート法等によって溶融ガラスを板状に成形することが好ましい。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2012年11月15日出願の日本特許出願2012−250944に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
1 ガラス溶融炉
2 第1冷却塔
3 バグフィルター
4 第2冷却塔
5、11、12、13 配管
6 スクラバー
7 高差圧部位
8 遠心力集塵機
9 ファン
10 煙突
14 回収液体タンク
15 pH測定装置
16 Mg(OH)添加装置
17 循環ポンプ
18 Ca化合物供給装置
19 回収粉体タンク
G0、G1、G2 排ガス
G3 冷却後排ガス
G4 清浄ガス
G5 排出清浄ガス
L1 第1の接触用液
L2 第2の接触用液
S1 第1の回収液体
S2 第2の回収液体
S3 第3の回収液体
101 ガラス溶融工程(造粒体溶融工程)
102 成形工程
103 徐冷工程
104 後加工工程
1001 ガラス溶融・排ガス捕集工程
1002 排ガス冷却工程
1003 集塵部材での粉体回収工程
1004 Mg(OH)及び水での液体回収工程
1005 排気工程

Claims (10)

  1. 酸化物基準の質量百分率で、SiO:50〜73%、Al:10.5〜24%、B:0.1〜12%、MgO:0.5〜10%、CaO:0.5〜14.5%、SrO:0〜24%、BaO:0〜13.5%、ZrO:0〜5%、Cl:0.01〜0.35%、F:0.01〜0.15%、及びSO:0.0001〜0.0025%を含み、MgO+CaO+SrO+BaO:8〜29.5%、MgO/(MgO+CaO):0.1〜0.8である無アルカリガラスを製造する方法であって、
    ガラス原料を溶融し排ガスを捕集する工程、
    前記排ガスに冷却用液体を接触させて排ガスを冷却する工程、
    前記冷却された排ガスにCaCO、Ca(OH)及び(Ca,Mg)COからなる群から選択される1種以上を添加し、集塵部材を用いて排ガスから平均粒子径(D50)が30〜100μmの粉体を回収する工程、及び
    前記粉体が回収された排ガスにMg(OH)及び水を接触させて排ガスに含まれる成分を回収液体として回収する工程を含み、
    前記回収液体を、前記排ガスを冷却する工程で前記冷却用液体として用いる、
    無アルカリガラスの製造方法。
  2. 前記集塵部材を用いて回収した粉体を前記ガラス原料に添加して溶融する、請求項1に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  3. 前記集塵部材を用いて回収した粉体は、酸化物基準の質量比でMgO/(CaO+MgO)が0.1〜1.0である、請求項1または2に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  4. 前記集塵部材を用いて粉体を回収する工程は、粉体回収後の排ガスに含まれるフッ素成分が30mg/Nm以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  5. 前記集塵部材を用いて回収した粉体は、フッ素成分が酸化物基準で0.1〜2.0質量%である、請求項1から4のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  6. 前記集塵部材を用いて回収した粉体は、体積基準の90%累計粒子径(D90)が200μm以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  7. 前記ガラス原料は、捕集される排ガス中の硫黄酸化物ガスの濃度が500vol.ppm以下となるように溶融される、請求項1から6のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  8. 前記排ガスからホウ素成分を回収する、請求項1から7のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  9. 前記ガラスはアルカリ金属酸化物の含有量が酸化物基準の質量百分率で1%以下である、請求項1から8のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
  10. 前記ガラス原料を溶融した後に、溶融ガラスを板状に成形する、請求項1から9のいずれか1項に記載の無アルカリガラスの製造方法。
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