JPWO2014010490A1 - 強化ガラス板の切断方法 - Google Patents

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Abstract

残留圧縮応力を有する表面層及び裏面層と、両者間に形成され内部残留引張応力CT(MPa)を有する中間層とを備える強化ガラス板のレーザ光照射による切断方法。表面層及び裏面層の厚さDOL(μm)、強化ガラス板の厚さt1(μm)、ヤング率Y(MPa)を用いてUCT={CT2×(t1−2×DOL)}/(2×Y)で表現されるひずみエネルギーUCTを2.5J/m2以上とし、強化ガラス板に入射されるレーザ光の出力Pe(W)、走査速度v(mm/s)、レーザ光に対する強化ガラス板の吸収係数α(mm−1)、強化ガラス板の厚さt2(mm)、線膨張係数αL(K−1)、密度ρ(g/mm3)、比熱c(J/g/K)を用いてK=Pe/v×exp(−α×t2)×(Y×αL)/(t2×ρ×c)で表現される切断指数Kを150N/mm以下とする。

Description

本発明は強化ガラス板の切断方法に関し、特にレーザ光による内部加熱を利用した強化ガラス板の切断方法に関する。
携帯電話や携帯情報端末(PDA:Personal Data Assistance)などの携帯機器では、ディスプレイのカバーや基板にガラス板が使用されている。携帯機器における薄型化・軽量化の要求から、ガラス板についても強度の高い強化ガラス板を用いることにより、薄型化・軽量化が図られるようになってきた。
ところで、ガラス板の切断は、通常、ダイヤモンド等の硬質のローラやチップにより、主面に機械的にスクライブ線を導入し、当該スクライブ線に沿って折曲力を加えることによりなされる。このような手法では、スクライブ線の導入により、ガラス板の切断端面に多数の微細クラックが生成されることになる。従って、強化ガラス板であるにもかかわらず、切断端部に充分な強度が得られないという問題があった。
このような問題に対し、近年、レーザ光の照射により強化ガラス板の内部を加熱し、強化ガラス板の主面でなく端面に導入した初期クラックの伸展を制御することにより、強化ガラス板を切断する方法が開発された。このようなレーザ光を用いた切断では、従来のように、強化ガラス板の主面にスクライブ線を導入する必要がない。そのため、切断端面に上述の微細クラックが生成されることもなく、高強度の強化ガラス板を得ることができる。特許文献1には、レーザ光によりガラス板を切断する方法が開示されている。
国際公開第2010/126977号
発明者は、レーザ光を用いた強化ガラス板の切断に関し、以下の課題を見出した。
発明者は、レーザ光による強化ガラス板の切断において、強化ガラス板の内部に残留する引張応力(内部残留引張応力CT)によるひずみエネルギー(内部ひずみエネルギー)に着目した。
発明者は、この強化ガラス板の内部ひずみエネルギーがある臨界値よりも小さくなると、内部残留引張応力によるクラック伸展の影響が小さくなり、切断に必要なレーザ光の照射エネルギーが急激に大きくなるとともに、精度良く切断し難くなることを見出した。
本発明は、上記に鑑みなされたものであって、内部残留引張応力によるクラック伸展が支配的となり、小さい照射エネルギーで精度良く強化ガラス板を切断することを目的とする。
本発明の第1の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、
残留圧縮応力を有する表面層及び裏面層と、当該表面層及び裏面層との間に形成され、内部残留引張応力CT(MPa)を有する中間層とを備える強化ガラス板を、当該強化ガラス板に照射されるレーザ光の照射領域を移動させることで切断する工程を含む、強化ガラス板の切断方法であって、
前記表面層及び前記裏面層の厚さDOL(μm)、前記強化ガラス板の厚さt(μm)、ヤング率Y(MPa)を用いて、下式で表現される前記内部残留引張応力CTに基づく単位面積当たりのひずみエネルギーUCT(J/m)を2.5J/m以上とし、
前記強化ガラス板に入射される前記レーザ光の出力Pe(W)、前記レーザ光の走査速度v(mm/s)、前記レーザ光に対する前記強化ガラス板の吸収係数α(mm−1)、前記強化ガラス板の厚さt(mm)、ヤング率Y(MPa)、線膨張係数α(K−1)、密度ρ(g/mm)、比熱c(J/g/K)を用いて、下式で表現される切断指数K(N/mm)を150N/mm以下とするものである。
CT={CT×(t−2×DOL)}/(2×Y)
K=Pe/v×exp(−α×t)×(Y×α)/(t×ρ×c)
本発明の第2の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1の態様において、
前記レーザ光のビーム径を前記強化ガラス板の厚さ以下とするものである。
本発明の第3の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1又は2の態様において、
前記強化ガラス板に照射されるレーザ光によって前記中間層を徐冷点以下の温度で局所的に加熱し、前記中間層に圧縮応力を発生させることにより、前記内部残留引張応力によるクラックの伸展を制御しつつ、前記レーザ光の照射領域を移動させることで前記強化ガラス板を切断するものである。
本発明の第4の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1〜3のいずれかの態様において、
前記強化ガラス板と前記レーザ光とが、0<α×t≦3.0の条件を満たすものである。
本発明の第5の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1〜4のいずれかの態様において、
前記レーザ光の波長を250〜5000nmとするものである。
本発明の第6の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第5の態様において、
前記レーザ光の波長を2500〜3500nmとするものである。
本発明の第7の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1〜6のいずれかの態様において、
前記強化ガラス板の前記レーザ光の照射領域に、前記レーザ光の入射側から気体を吹き付けて冷却するものである。
本発明の第8の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1〜7のいずれかの態様において、
前記内部残留引張応力CTに基づく単位面積当たりのひずみエネルギーUCTが60J/m以下とするものである。
本発明の第9の態様に係る強化ガラス板の切断方法は、前記第1〜8のいずれかの態様において、
前記切断指数Kが5N/mm以上とするものである。
本発明により、内部残留引張応力によるクラック伸展が支配的となり、小さい照射エネルギーで精度良く強化ガラス板を切断することができる。
レーザ光を照射する前の強化ガラス板の断面図である。 レーザ光を照射する前の強化ガラス板の残留応力の分布を示す模式図である。 強化ガラス板の切断方法を説明するための斜視図である。 図3のA−A線に沿った断面図である。 図3のB−B線に沿った断面図である。 強化ガラス板から強化ガラスパネルを切り出す方法の一例を示す図である。 実施の形態1に係る強化ガラス板の切断方法に用いる冷却ノズルの断面図である。 強化ガラス板についての切断結果を示す表である。 非強化ガラス板についての切断結果を示す表である。 強化ガラス板および非強化ガラス板についての切断結果を示す表である。 レーザ光を用いて非強化ガラス板を切断する際に作用する応力を説明するための図である。 レーザ光を用いて強化ガラス板を切断する際に作用する応力の一例を示す図である。 レーザ光を用いて強化ガラス板を切断する際に作用する応力の他の例を示す図である。 実施例1に係る切断予定線の形状を示す図である。 サンプル1〜21について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、臨界照射エネルギーEc、及び両者を導出するための諸条件が示された表である。 図15の表に示した臨界照射エネルギーEcの内部ひずみエネルギーUCT依存性を示すグラフである。 図15の表に示した臨界切断指数Kcの内部ひずみエネルギーUCT依存性を示すグラフである。 サンプル31〜33及び41〜43について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、照射エネルギーE、両者を導出するための諸条件、異物としての黒色マークの有無、切断可否、断面性状が示された表である。 サンプル13、51、52について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、臨界照射エネルギーEc、両者を導出するための諸条件、ブラックマトリクス(BM)膜の形成有無、切断可否、断面性状が示された表である。
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
(実施の形態1)
まず、図1〜5を参照して、強化ガラス板の構造、及び強化ガラス板の切断方法について説明する。
まず、図1、2を参照して、強化ガラス板の構造について説明する。図1は、レーザ光を照射する前の強化ガラス板10の断面図である。図1において、矢印の方向は、残留応力の作用方向を示し、矢印の大きさは、応力の大きさを示す。図1に示すように、強化ガラス板10は、表面層13及び裏面層15と、表面層13と裏面層15との間に設けられた中間層17とを有する。表面層13及び裏面層15には、下記の風冷強化法や化学強化法により圧縮応力が残留している。また、その反作用として、中間層17には引張応力が残留している。
強化ガラス板10は、例えば風冷強化法や化学強化法などで作製される。強化用のガラスの種類は、用途に応じて選択される。例えば、自動車用窓ガラスや建築用窓ガラス、PDP(Plasma Display Panel)用のガラス基板、カバーガラスの場合、強化用のガラスとしては、アルカリアルミノシリケートガラスやソーダライムガラスが用いられる。
風冷強化法は、軟化点付近の温度のガラスを表面及び裏面から急冷し、ガラスの表面及び裏面と内部との間に温度差をつけることで、圧縮応力が残留する表面層及び裏面層を形成する。風冷強化法は、厚いガラスを強化するのに好適である。
化学強化法は、ガラスの表面及び裏面をイオン交換し、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を、大きなイオン半径のイオン(例えば、Kイオン)に置換することで、圧縮応力が残留する表面層及び裏面層を形成する。化学強化法は、アルカリアルミノシリケートガラスやソーダライムガラスを強化するのに好適である。
図2は、レーザ光を照射する前の強化ガラス板の残留応力の分布を示す模式図である。
図2に示すように、表面層13及び裏面層15に残留する圧縮応力(>0)は、強化ガラス板10の表面12及び裏面14から内部に向けて徐々に小さくなる傾向がある。また、中間層17に残留する引張応力(>0)は、ガラスの内部から表面12及び裏面14に向けて徐々に小さくなる傾向がある。
図2において、CSは表面層13や裏面層15における最大残留圧縮応力(表面圧縮応力)(>0)、CTは中間層17における内部残留引張応力(中間層17の残留引張応力の平均値)(>0)、DOLは表面層13及び裏面層15の厚さ、tは強化ガラス板10の厚さ、をそれぞれ示す。従って、中間層17の厚さは、t−2×DOLとなる。
また、強化ガラス板の内部残留引張応力CT(MPa)は、通常、表面圧縮応力CS(MPa)及び表面層13及び裏面層15の厚さDOL(μm)を測定し、その測定値と、強化ガラス板の厚さt(μm)とから以下の式1を用いて算出する。
CT=(CS×DOL)/(t−2×DOL) ・・・式1
そして、内部残留引張応力CTによる単位面積当たりのひずみエネルギー(以下、単に「内部ひずみエネルギー」という)UCT(J/m)は、ヤング率Y(MPa)を用いて以下の式2により求めることができる。
CT={CT×(t−2×DOL)}/(2×Y) ・・・式2
発明者は、種々の内部ひずみエネルギーUCTを有する強化ガラス板について、切断に必要なレーザ光の照射エネルギーEの最小値(以下、臨界照射エネルギーという)Ecを調査した。その結果、強化ガラス板の内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mとすると、切断条件が同一でも、臨界照射エネルギーEcが急激に(具体的には数倍程度)上昇するとともに、切断精度も悪化することを見出した。同時に、発明者は、強化ガラス板の内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとすると、強化ガラス板の材質、厚さ及びレーザ波長が同一であれば、臨界照射エネルギーEcは、略一定値となり、切断精度も向上することを見出した。つまり、発明者は、強化ガラス板を切断する場合、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとすることにより、内部残留引張応力によるクラック伸展が支配的となり、小さい照射エネルギーで精度良く切断することができることを見出した。一方、UCTがあまり大きすぎると、ガラス内部の微小な泡等の欠陥が起点となって割れてしまう。このため、最大泡サイズを一般的なガラス板の品質規格である数十μmとすると、UCT≦60J/mである事が望ましい。
つまり、内部ひずみエネルギーUCT=2.5J/m近傍において、切断モードの変換が生じているものと考えられる。具体的には、強化ガラス板を切断するためのクラック伸展エネルギーとして、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mの場合、内部ひずみエネルギーに加え、レーザ光の照射エネルギーが必要となり、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mの場合、内部ひずみエネルギーのみとなる。そして、UCT≧2.5J/mの場合には、クラックを伸展させるためでなく、逆にクラックの伸展を抑制し、制御するために、レーザ光の照射エネルギーが必要になる。
ここで、最大残留圧縮応力CSや内部残留引張応力CT、表面層13及び裏面層15の厚さDOLは、強化処理条件で調節可能である。例えば、最大残留圧縮応力CSや内部残留引張応力CT、表面層13及び裏面層15の厚さDOLは、風冷強化法の場合、ガラスの冷却速度などで調節可能である。また、最大残留圧縮応力CS、内部残留引張応力CT、表面層13及び裏面層15の厚さDOLは、化学強化法の場合、ガラスを処理液(例えば、KNO溶融塩)に浸漬してイオン交換するので、処理液の濃度や温度、浸漬時間などで調節可能である。なお、本実施の形態の表面層13及び裏面層15は、同じ厚さDOL及び最大残留圧縮応力CSを有するが、異なる厚さや最大残留圧縮応力を有してもよい。
図3は、強化ガラス板の切断方法を説明するための図である。図3に示すように、強化ガラス板10の表面12にレーザ光20を照射し、強化ガラス板10の表面12上で、レーザ光20の照射領域22を移動(走査)させることで、強化ガラス板10に応力を印加して、強化ガラス板10を切断する。
強化ガラス板10の端部には、切断開始位置に、初期クラックが予め形成されている。初期クラックの形成方法は、一般的な方法であって良く、例えばカッタやヤスリ、レーザで形成される。なお、上述の通り、レーザ光を用いた内部加熱切断では、強化ガラス板10の表面12に、切断予定線に沿ったスクライブ線(溝線)を形成する必要がない。
強化ガラス板10の表面12上において、レーザ光20の照射領域22は、強化ガラス板10の端部から内側に向けて、切断予定線に沿って、直線状や曲線状に移動される。これによって、強化ガラス板10の端部から内側に向けてクラック30を伸展させ、強化ガラス板10を切断する。
強化ガラス板10の表面12上において、レーザ光20の照射領域22を移動させるため、強化ガラス板10を支持する保持具を、移動又は回転してもよいし、レーザ光20の光源を移動してもよい。また、レーザ光20の経路の途中に設けられるミラーを回転してもよい。
強化ガラス板10の表面12上において、レーザ光20の照射領域22は、強化ガラス板10の厚さや、最大残留圧縮応力CS、内部残留引張応力CT、表面層13や裏面層15の厚さDOL、レーザ光20の光源の出力などに応じた速度で移動される。
レーザ光20の光源としては、特に限定されないが、例えば、UVレーザ(波長:355nm)、グリーンレーザ(波長:532nm)、半導体レーザ(波長:808nm、940nm、975nm)、ファイバーレーザ(波長:1060〜1100nm)、YAGレーザ(波長:1064nm、2080nm、2940nm)、中赤外光パラメトリック発振器を使用したレーザ(波長:2600〜3450nm)などが挙げられる。レーザ光20の発振方式に制限はなく、レーザ光を連続発振するCWレーザ、レーザ光を断続発振するパルスレーザのいずれも使用可能である。また、レーザ光20の強度分布に制限はなく、ガウシアン型であっても、トップハット型であってもよい。
光源から出射されたレーザ光20は、集光レンズなどで集光され、強化ガラス板10の表面12に結像される。レーザ光20の集光位置は、強化ガラス板10の表面12を基準として、レーザ光源側であってもよいし、裏面14側であってもよい。また、加熱温度が高くなりすぎない、すなわち徐冷点以下を保てる集光面積であれば、レーザ光20の集光位置は強化ガラス板10中であってもよい。
レーザ光20の光軸は、強化ガラス板10の表面12において、例えば図3に示すように表面12と直交していてもよいし、表面12と斜めに交わっていてもよい。
レーザ光20に対する強化ガラス板10の吸収係数をα(mm−1)、強化ガラス板10の厚さをt(mm)として、強化ガラス板10とレーザ光20とが、0<α×t≦3.0の式を満たす場合、レーザ光20のみの作用ではなく、中間層17の残留引張応力によるクラックの伸展を利用して強化ガラス板10を切断することができる。すなわち、上記条件で、レーザ光20の照射領域22における中間層17を徐冷点以下の温度で加熱することによって、中間層17に内部残留引張応力の値よりも小さい引張応力、または、圧縮応力を発生させることによって強化ガラス板10に生じるクラック30の伸展を制御して、残留引張応力によるクラック30によって強化ガラス板10を切断することが可能となる。なお、中間層17を徐冷点以下の温度で加熱するのは、徐冷点を超えて加熱すると、レーザ光が通過する短時間でもガラスが高温となり粘性流動が発生しやすい状態となるため、この粘性流動によりレーザ光によって発生させた応力が緩和されるからである。なお、強化ガラス板10の厚さtの値t(mm)は式1、2における値t(μm)と単位のみが異なる。
強化ガラス板10に入射する前のレーザ光20の強度をIとし、強化ガラス板10中を距離L(mm)だけ移動したときのレーザ光20の強度をIとすると、ランベルト・ベールの法則により次式が成立する。
I=I×exp(−α×L)
α×tを0より大きく3.0以下とすることで、レーザ光20が、強化ガラス板10の表面で吸収されずに内部にまで到達するようになるため、強化ガラス板10の内部を十分に加熱できる。その結果、強化ガラス板10に生じる応力は、図1に示す状態から、図4や図5に示す状態に変化する。
図4は、図3のA−A線に沿った断面図であって、レーザ光の照射領域を含む断面図である。図5は、図3のB−B線に沿った断面図であって、図4に示す断面よりも後方の断面である。ここで、「後方」とは、レーザ光20の走査方向後方を意味する。図4及び図5において、矢印の方向は、応力の作用方向を示し、矢印の長さは、応力の大きさを示す。
レーザ光20の照射領域22における中間層17では、レーザ光20の強度が十分に高いので、温度が周辺に比べて高くなり、図1及び図2に示す残留引張応力よりも小さい引張応力、又は、圧縮応力が生じる。残留引張応力よりも小さい引張応力、又は、圧縮応力が生じている部分では、クラック30の伸展が抑制される。クラック30の伸展を確実に防止するため、図4に示すように、圧縮応力が生じていることが好ましい。
なお、図4に示すように、レーザ光20の照射領域22における表面層13や裏面層15では、図1及び図2に示す残留圧縮応力よりも大きい圧縮応力が生じているので、クラック30の伸展が抑制されている。
図4に示す圧縮応力との釣り合いのため、図4に示す断面よりも後方の断面では、図5に示すように、中間層17に引張応力が生じる。この引張応力は、残留引張応力よりも大きく、引張応力が所定値に達している部分に、クラック30が形成される。クラック30は強化ガラス板10の表面12から裏面14まで貫通しており、図3に示す切断は所謂フルカット切断である。
この状態で、レーザ光20の照射領域22を移動させると、照射領域22の位置に追従するようにクラック30の先端位置が移動する。すなわち、図3に示す切断方法では、強化ガラス板10を切断する際に、レーザ光の走査方向後方に発生する引張応力(図5参照)によりクラック30の伸展方向を制御し、レーザ光が照射されている領域に発生する圧縮応力(図4参照)を用いて、クラック30の伸展を抑制しながら切断している。つまり、レーザ光20の照射により発生する圧縮応力を用いてクラック30の伸展を制御している。この結果、クラック30が切断予定線から外れて自走することを抑制することができる。
ガラスは、用途によっては、高い透明度が要求されるので、使用レーザ波長が可視光の波長領域に近い場合、α×tは0に近い程よい。しかし、α×tは、小さすぎると吸収効率が悪くなるので、好ましくは0.0005以上(レーザ光吸収率0.05%以上)、より好ましくは0.002以上(レーザ光吸収率0.2%以上)、さらに好ましくは0.004以上(レーザ光吸収率0.4%以上)である。
ガラスは、用途によっては、逆に低い透明度が要求されるので、使用レーザ波長が可視光の波長領域に近い場合、α×tは大きい程よい。しかし、α×tが大きすぎるとレーザ光の表面吸収が大きくなるのでクラック伸展を制御できなくなる。このため、α×tは、好ましくは3.0以下(レーザ光吸収率95%以下)、より好ましくは0.1以下(レーザ光吸収率10%以下)、さらに好ましくは0.02以下(レーザ光吸収率2%以下)である。
強化ガラス板10の厚さt(mm)は、用途に応じて設定されるが、0.1〜2.0mmであることが好ましい。化学強化ガラスの場合、厚さt(mm)を2.0mm以下とすることで、内部残留引張応力CTを十分に高めることができる。一方、厚さt(mm)が0.1mm未満になると、ガラスに化学強化処理を施すことが難しい。厚さt(mm)は、より好ましくは0.3〜1.5mm、さらに好ましくは0.5〜1.5mmである。
吸収係数αは、レーザ光20の波長、強化ガラス板10のガラス組成などで定まる。
例えば1000nm付近の近赤外線波長領域での吸収係数αは、強化ガラス板10中の酸化鉄(FeO、Fe、Feを含む)の含有量、酸化コバルト(CoO、Co、Coを含む)の含有量、酸化銅(CuO、CuOを含む)の含有量が多くなるほど大きくなる。つまり、酸化鉄などの含有量を調節することにより、α×tの値を所望の範囲に調節可能である。強化ガラス板10中の酸化鉄の含有量は、強化ガラス板10を構成するガラスの種類によるが、ソーダライムガラスの場合、例えば0.02〜1.0質量%である。但し、酸化鉄などの含有量が多くなるほど、強化ガラス板10の可視光領域の透明度は低下する。
1000nm付近の近赤外線波長領域での吸収係数(α)は、用途に応じて設定される。例えば、自動車用窓ガラスの場合、吸収係数(α)は0.3mm−1以下であることが好ましい。また、建築用窓ガラスの場合、吸収係数(α)は0.06mm−1以下であることが好ましい。また、ディスプレイ用ガラスの場合、吸収係数(α)は0.02mm−1以下であることが好ましい。
また、希土類原子の吸収波長付近での吸収係数αは、強化ガラス板10中の希土類元素(例えばYb)の酸化物の含有量が多くなるほど大きくなる。
さらに、3000nm付近の中赤外線波長領域での吸収係数αは、強化ガラス板10中のOH基の含有量が多くなるほど大きくなる。ここで、OH基の含有量は、可視光領域の透明度に影響を及ぼさない。
レーザ光20の波長は、250〜5000nmであればよいが、2500〜3500nmとすることが好ましい。レーザ光20の波長が2500〜3500nm(3000nm近傍)の場合、上述の通り、可視光領域の透明度を低下させずに吸収係数αを高めることができる。その結果、レーザ光20による加熱効率を高めることができる。レーザ光20の波長は、2700〜3200nmとすることがさらに好ましい。
例えばレーザ光の波長が1000nm近傍の場合、酸化鉄含有量0.04質量%の強化ガラス板の吸収率は、板厚t(mm)が1mmの場合、約2%(透過率:約98%)である。そのため、レーザ光の照射による加熱効率が悪い。また、Fe濃度により吸収率が変化するため、強化ガラス板の組成によりレーザ光の照射条件を大幅に変更する必要がある。
これに対し、例えばレーザ光の波長が3000nm近傍の場合、酸化鉄含有量によらず強化ガラス板の吸収率は、板厚が1mmの場合、約50%(透過率:約50%)である。そのため、波長が1000nm近傍の場合に比べ、加熱効率が向上する上、強化ガラス板の組成によりレーザ光の照射条件を大幅に変更する必要がない。
また、波長が1000nm近傍で吸収率が約2%の場合、例えば切断に2Wの吸収パワーが必要であれば、100Wが投入され、98Wが透過する。そのため、レーザ光の通過する切断予定線の下にテーブルが位置していると、レーザ光によりテーブルまで損傷を受けてしまう。そのため、強化ガラス板から切り出す強化ガラスパネルよりもテーブルを一回り小さくするなどの工夫が必要であった。また、透過したレーザ光の処理も必要であった。さらに、透過率が高いため、強化ガラス板の端面における反射光が悪影響を及ぼす場合があった。また、表面あるいは裏面に付着した異物によりレーザ光の吸収率が高まると、吸収量の変化が大きく、悪影響を及ぼす場合があった。さらに、Fe濃度により吸収率が2%から1%へ1%しか変化しなかった場合でも、投入するパワーを100Wから200Wへ100Wも変更する必要がある。
これに対し、波長が3000nm近傍で吸収率が約50%の場合、切断に2Wの吸収パワーが必要であれば、4Wが投入され、2Wが透過する。このように、波長が1000nm近傍の場合に比べ、投入パワーを劇的に減少させ、加熱効率を向上させることができる。その上、透過光も劇的に減少するので、レーザ光の通過する切断予定線の下にテーブルが位置していても、テーブルが損傷を受けることがない。そのため、切断する強化ガラス板より大きなテーブルに強化ガラスを載せることにより、より安定した状態で切断することができる。また、透過したレーザ光の処理も不要となる。さらに、強化ガラス板の端面における反射光のパワーも小さく、悪影響を及ぼし難い。また、表面あるいは裏面に付着した異物によりレーザ光の吸収率が高まっても、吸収量の変化が小さく、悪影響を及ぼし難い。さらに、Fe濃度による吸収率の変動もない上、仮に吸収率が50%から40%へ10%も減少した場合でも、投入するパワーを4Wから5Wへ1Wだけ変更すればよい。
ここで、図6は、強化ガラス板から強化ガラスパネルを切り出す方法の一例を示す図である。図6は、強化ガラス板10を上面から見た図である。また、強化ガラス板10に示す破線は、上記で説明した切断方法を用いて、強化ガラス板10から強化ガラスパネル40を切り出すための切断予定線235を示している。強化ガラスパネル40は、所定の曲率半径Rを有する4つのコーナー部C1、C2、C3、C4、及び直線部41、42、43、44を有する四角形状である。なお、図6に示す強化ガラスパネル40の形状は一例であり、他の任意の形状の強化ガラスパネル40を強化ガラス板10から切り出す場合にも、本実施の形態に係る強化ガラスの切断方法を用いることができる。
強化ガラス板10から強化ガラスパネル40を切り出す際は、切断予定線235を通過するようにレーザ光を走査する。具体的には、直線部41の延長上の端面に位置する切断開始位置45からレーザ光の走査を開始する。そして、直線部41、コーナー部C1、直線部42、コーナー部C2、直線部43、コーナー部C3、直線部44、コーナー部C4、を経由して、コーナー部C4と直線部41との接続点である切断終了位置46までレーザ光を走査する。このとき、切断開始位置45、つまり強化ガラス板10の端部には初期クラックが予め形成されている。初期クラックは、例えばカッタ、ヤスリ、レーザで形成することができる。
また、本実施の形態に係る強化ガラス板の切断方法では、レーザ光20の照射領域22に空気を吹き付けることにより冷却している。図7は、実施の形態1に係る強化ガラス板の切断方法に用いる冷却ノズルの断面図である。図7に示す冷却ノズル28により、強化ガラス板10の表面12に気体を吹き付ける。図7に示すように、冷却ノズル28は、内部を気体(空気や窒素など)が矢印方向へ流れるように、テーパー状の空洞が形成されている。ここで、冷却ノズル28の軸はレーザ光の光軸と一致しており、レンズ25で集光されたレーザ光20は、冷却ノズル28の内部を通過し、冷却ノズル28の先端に設けられた直径φnの開口部から出射する。また、レーザ光の照射領域の移動と同期して(つまり、レーザ光と同じ走査速度で)移動することができる。このような構成により、レーザ照射部が気体により冷却される。この冷却により、図3に示したクラック30の先端位置と、レーザ光20の照射領域22との間の距離が短くなり、切断精度が向上する。
冷却ノズル28の開口部の直径φn、及び冷却ノズル28の先端と強化ガラス板10の表面12とのギャップG2は任意に決定することができる。ここで、冷却ノズル28の開口部の直径φnが小さい程、強化ガラス板10に吹き付けられる気体の流速が速くなり、強化ガラス板10の表面12における冷却能力が向上する。また、冷却ノズル28の先端と強化ガラス板10の表面とのギャップG2が小さい程、強化ガラス板10の表面12における冷却能力が向上する。
<参考例>
ここで、図8〜10を参照して、強化ガラス板の切断方法と非強化ガラス板の切断方法とでは、クラックの伸展の仕方が異なることについて説明する。図8は、強化ガラス板についての切断結果を示す表である。図9は、非強化ガラス板についての切断結果を示す表である。図10は、強化ガラス板(参考例)及び非強化ガラス板(比較例)についての切断結果を示す表である。図10に示す切断結果は、図8、図9に示した切断結果よりもレーザ光のスポット径を小さくした場合の切断結果である。
参考例101〜103、106〜108では強化ガラス板を用意し、比較例104〜105、109〜110では非強化ガラス板を用意した。参考例101〜103、106〜108の強化ガラス板は、比較例104〜105、109〜110の非強化ガラス板と同じ寸法形状(矩形、長辺100mm、短辺60mm、板厚0.7mm)、同じ化学組成のガラス板を化学強化法で強化して作製した。強化ガラス板は、内部残留引張応力(CT)30.4MPa、最大残留圧縮応力(CS)763MPa、圧縮応力層(表面層や裏面層)の厚さ(DOL)25.8μmを有していた。ここで、内部ひずみエネルギーUCTは4.04J/mであった。
参考例101〜103、106〜108、比較例104〜105、109〜110では、ガラス板の種類(強化、非強化の別)、光源の出力、及びレーザスポット径以外、同じ条件下で切断実験を行った。
<共通の条件>
レーザ光光源:ファイバーレーザ(波長1070nm)
レーザ光のガラス板への入射角:0°
レーザ光の集光角:2.5°
レーザ光の集光位置:ガラス板の表面から光源側に23mm離れた位置
ガラス板の表面におけるレーザスポット径:φ1mm
レーザ光に対するガラス板の吸収係数α:0.09cm−1(0.009mm−1
ガラス板の板厚t:0.07cm(0.7mm)
ガラス板のヤング率Y:74000MPa
α×t:0.0063
ノズルの出口径:φ1mm
ノズルからの冷却ガス(室温の圧縮空気)の流量:30L/min
目標切断位置:ガラス板の短辺と平行な直線(一方の短辺からの距離10mm、他方の短辺からの距離90mm)
切断速度:2.5mm/s
図8、図9に示す参考例101〜103及び比較例104〜105では、ガラス板の表面におけるレーザスポット径φを1mmとした。また、図10に示す参考例106〜108及び比較例109〜110では、ガラス板の表面におけるレーザスポット径φを0.1mmとした。
切断後、ガラス板の切断面を顕微鏡で観察した。ガラス板の切断面で観察される縞模様は、断続的に伸展するクラックの先端位置の経時変化を表す。縞模様の各線の形状から、クラックの伸展の様子がわかる。図8〜10に示す顕微鏡写真において、縞模様の代表的な線を太い白線で強調表示する。
また、ガラス板の切断の途中で、レーザ照射及びガス冷却を中断したときのクラックの様子を目視で観察した。
各実験結果を図8〜10に示す。図8〜10において、ガラス板にクラックが形成された場合(切断できた場合)を「○」、ガラス板にクラックが形成されなかった場合(切断できなかった場合)を「×」として示した。
図8〜10の切断面の顕微鏡写真における縞模様の線は、ある時点でのクラックの先端位置を表す。
図8〜10における「自走」とは、レーザ照射等の中断後に、ガラス板の2つの短辺のうち、切断位置から近い方の短辺に向けてクラックが伸展することを意味する。
凸量、及び直線誤差量は、ガラス板を切断した際の誤差量を示している。つまり、ガラス板を上面側から見た際に、ガラス板の切断線が切断予定線(グラフのX軸で示す)からずれている量(グラフのY軸で示す)を示している。凸量、及び直線誤差量(つまり、Y軸の絶対値)が小さいほど、ガラス板が切断予定線に沿って切断されている。
図9に示すように、比較例104〜105に係る非強化ガラス板の切断では、切断面の顕微鏡写真から明らかなように、ガラス板の板厚方向両端部が、ガラス板の板厚方向中央部よりも先に割れる傾向にあった。また、切断の途中でレーザ照射及びガス冷却を中断すると、クラックの伸展が停止した。また、非強化ガラスの切断では、大きな光源出力が必要であった。更に、非強化ガラス板の切断では、凸量、及び直線誤差量が大きくなった。
これに対し、図8に示す参考例101〜103に係る強化ガラス板の切断では、切断面の顕微鏡写真から明らかなように、ガラス板の板厚方向中央部が、ガラス板の板厚方向両端部よりも先に割れる傾向にあった。これは、元々強化ガラス板の内部に残留引張応力が存在しており、この残留引張応力によってクラックが伸展するためである。また、切断の途中でレーザ照射及びガス冷却を中断すると、クラックが意図しない方向に自ら伸展した。この結果から、レーザ光の照射により、残留引張応力によるクラックの伸展が抑制されていることが分かる。また、強化ガラス板の切断では、凸量、及び直線誤差量が非強化ガラス板の切断の場合よりも小さかった。図10に示す参考例106〜108に係る強化ガラス板の切断においても同様の結果となった。
また、図10に示すように、レーザスポット径を小さくした場合(参考例106〜108)は、参考例101〜103よりも小さい光源出力で強化ガラス板を切断することができた。また、参考例106〜108では、図8に示す参考例101〜103と比べて凸量、及び直線誤差量が小さくなった。つまり、参考例106〜108では、参考例101〜103よりも精度よく強化ガラス板を切断することができた。また、参考例106〜108に示すように、光源出力を低くするほど、凸量、及び直線誤差量が小さくなった。特に参考例108では、凸量が15μmと非常に小さい値となった。
一方、レーザスポット径を小さくした場合は、非強化ガラス板を切断することができなかった。つまり、比較例109に示すように、光源の出力を200Wとした場合は非強化ガラス板が溶融し、切断することができなかった。すなわち、非強化ガラスの温度が徐冷点以上になり切断できなかった。また、比較例110に示すように、光源の出力を100Wとした場合は非強化ガラス板に変化がなかった。よって、レーザスポット径を小さく(例えば、板厚未満)した場合は、光源の出力によらずに非強化ガラス板を切断できなかった。
このように、強化ガラス板の切断方法と非強化ガラス板の切断方法とでは、切断のメカニズムが根本的に異なり、クラックの伸展の仕方が全く異なる。そのため、本発明では、非強化ガラス板の切断方法からは予測できない効果が得られる。その理由を以下に説明する。
例えば、非強化ガラス板の切断方法では、レーザ光と冷却液の両方を用いてガラス板に熱応力場を形成し、切断に必要な引張応力を発生させる。より具体的には、レーザ光をガラス板に照射してガラス板内部に熱応力を発生させ、その熱応力により生じた圧縮応力を冷却液で急冷して、引張応力を発生させてクラックを伸展させる。従って、クラックの伸展は、レーザ光の照射エネルギーのみで行われ、ガラス板に照射するレーザのパワー(W)を大きく設定する必要がある。
このような方法では、ガラス板に形成される割断亀裂の先端位置は、ガラス板を冷却する冷却液の位置で決まる。冷却液の位置に引張応力が生じるためである。従って、切断の途中で、レーザ光による加熱や冷却液による冷却を中断すると、クラックの伸展が止まる。
図11は、レーザ光を用いて非強化ガラス板を切断する際に作用する応力を説明するための図である。図11では非強化ガラス板110の上面図と、非強化ガラス板110の板厚中心部に発生する応力の分布を示している。図11に示すように、非強化ガラス板110にレーザ光を照射すると、レーザ光の照射領域122に圧縮応力133が働く。この圧縮応力133は、レーザ光の照射により発生する熱応力である。そして、この圧縮応力133と釣り合うように、照射領域122の走査方向後方に引張応力135が発生する。この引張応力135がクラック130に作用することで非強化ガラス板110が切断される。
図11のグラフに示すように、非強化ガラス板110では内部残留引張応力CTは略ゼロである。このため、非強化ガラス板110を切断する際にクラック130に作用する引張応力135は、レーザ光の照射によってのみ発生する。よって、引張応力135を大きくするために、レーザ光の照射エネルギーを高くしたり、レーザスポット径を大きくしたりする必要がある。このため、非強化ガラス板110では、レーザ光の吸収率が小さいガラスでは切断が困難となる。
また、非強化ガラス板110を切断する際は、レーザ光の照射エネルギーと走査速度でクラックの伸展を制御している。このとき、レーザ光の照射エネルギーが、切断に必要な照射エネルギーよりも小さいとクラックの伸展が停止する。つまり、図11のグラフに示すように、クラック130を伸展させるためには、クラック130の伸展に必要な引張応力S_thよりも大きな引張応力をクラック130に作用させる必要がある。非強化ガラス板110では内部残留引張応力CTが略ゼロであるため、レーザ光の照射エネルギーのみでこの引張応力S_thの値よりも大きな引張応力を発生させる必要がある。
これに対し、強化ガラス板の切断方法では、元々ガラス板内部に内部残留引張応力が存在するため、非強化ガラス板の切断の場合のように、レーザ光の照射エネルギーのみで大きな引張応力を発生させる必要がない。また、内部残留引張応力がクラックの伸展に必要な引張応力S_thよりも大きな引張応力の場合、強化ガラス板に何らかの力を作用させてクラックを発生させると、内部残留引張応力のためにクラックは自ら伸展する。他方、内部残留引張応力はガラス板内部に全体的に存在しているので、クラックの伸展を制御しない限り、クラックが意図しない方向に伸展してしまう。
そのため、本発明では、照射領域の中心における中間層に内部残留引張応力の値よりも小さい引張応力、または、圧縮応力を発生させ、内部残留引張応力によるクラックの伸展を抑制している。即ち、レーザ光を照射することにより強化ガラス板の中間層における残留引張応力をクラックの伸展に必要な引張応力S_thよりも小さくして、クラックの伸展を制御している。
図12は、レーザ光を用いて強化ガラス板を切断する際に作用する応力の一例を示す図である。図12では強化ガラス板10の上面図と、強化ガラス板10の板厚中心部に発生する応力の分布を示している。図12に示すように、強化ガラス板10にレーザ光を照射すると、レーザ光の照射領域22に圧縮応力33が働く。また、照射領域22の走査方向後方に引張応力35が発生する。そして、この引張応力35に内部残留引張応力が加算される事でクラックの伸展に必要な引張応力S_thよりも大きな引張応力が発生し、クラック30に作用することで強化ガラス板10が切断される。このとき、圧縮応力33によってクラック30の伸展が制御される。
図12のグラフに示すように、強化ガラス板10には内部残留引張応力CTが存在する。このため、クラック30の伸展に必要な引張応力35は小さくてすむ。換言すると、引張応力S_th(クラック30の伸展に必要な引張応力)よりも大きな引張応力をクラック30に作用させるために必要なレーザ光により発生させる圧縮応力33を小さくすることができる。
ここで、強化ガラス板10を切断する際に必要な圧縮応力33や引張応力35は、非強化ガラス板110を切断する際に必要な応力よりも小さくすることができるため、レーザ光の照射エネルギーを小さくしたり、レーザスポット径を小さくしたりすることができる。このため、切断精度を向上させることができる。また、レーザ光の吸収率が小さいガラスであっても容易に切断することができる。
図13は、レーザ光を用いて強化ガラス板を切断する際に作用する応力の他の例を示す図である。図13では強化ガラス板10の上面図と、強化ガラス板10の板厚中心部に発生する応力の分布を示している。図13に示す強化ガラス板10では、内部残留引張応力CTが、クラック30の伸展に必要な引張応力S_thよりも大きい。つまり、図13に示すように、強化ガラス板10にレーザ光を照射すると、レーザ光の照射領域22には内部残留引張応力CTの値よりも小さい引張応力37が発生する。ここで、引張応力37は、レーザ光の照射により発生した圧縮応力33と内部残留引張応力CTとの合力である。また、照射領域22の走査方向後方には引張応力35が発生する。この場合は、内部残留引張応力CTの値よりも小さい引張応力37を、クラック30の伸展に必要な引張応力S_thよりも小さくすることで、クラック30の伸展を抑えることができる。
図13に示す場合も、強化ガラス板10を切断する際に必要な、内部残留引張応力CTの値よりも小さい引張応力37や引張応力35は、非強化ガラス板110を切断する際に必要な応力よりも小さくすることができるため、レーザ光の照射エネルギーを小さくしたり、レーザスポット径を小さくしたりすることができる。このため、切断精度を向上させることができる。また、レーザ光の吸収率が小さいガラスであっても容易に切断することができる。
上記で説明したように、強化ガラス板10を切断する際は、内部残留引張応力CTとレーザ光の照射エネルギーと走査速度のバランスを保つことで、クラック30を自走させることなくクラック30の伸展を制御している。よって、レーザ光の照射エネルギーが小さすぎると、内部残留引張応力CTの値よりも小さい引張応力37がクラック30の伸展に必要な引張応力S_thよりも大きくなり、クラック30の伸展は止まらずに自走する(図13の場合)。
このように、強化ガラス板の切断方法と非強化ガラス板の切断方法とでは、切断のメカニズムが根本的に異なり、クラックの伸展の仕方が全く異なる。そのため、本発明では、非強化ガラス板の切断方法からは予測できない効果が得られる。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。実施例1では、内部ひずみエネルギーUCTと切断可能な照射エネルギーEの最小値である臨界照射エネルギーEcとの関係を説明する。
<実施例1>
実施例1では、内部ひずみエネルギーUCTが異なる21個のサンプル1〜21について、臨界照射エネルギーEcとの関係を調査した。なお、サンプル18〜21は、非強化ガラス板である。
図14は、実施例1に係る切断予定線の形状を示す図である。図14に示すように、実施例1に係る切断予定線は、2つの直線部と、クランク形状を構成する2つのコーナー部(曲率半径R=5mm)を備えている。
化学強化用のガラス板として、複数種類の原料を混ぜて調整したガラス原料を溶解し、溶解した溶融ガラスを板状に成形した。これを室温付近まで徐冷した後、切断、切削、両面鏡面研磨することにより、所定の厚さを有する50mm×50mmのガラス板を作製した。ガラス原料は、ガラス板のレーザ光に対する吸収係数αが所望の値となるように、同じ配合比のベース材に対する酸化鉄(Fe)の粉末の添加量を変えて調製した。
各化学強化用ガラス板は、酸化物基準の質量%表示で、SiO:60.9%、Al:12.8%、NaO:12.2%、KO:5.9%、MgO:6.7%、CaO:0.1%、SrO:0.2%、BaO:0.2%、ZrO:1.0%を含有しており、酸化鉄(Fe)を外割りで所定量含有していた。
各強化ガラス板は、上記の化学強化用ガラス板をKNO溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却することにより作製した。KNO溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、内部残留引張応力CTが所望の値となるように設定した。
強化ガラス板の内部残留引張応力CT(MPa)は、表面応力計FSM−6000(折原製作所製)にて表面圧縮応力CS(MPa)及び圧縮応力層(表面層及び裏面層)の厚さDOL(μm)を測定し、その測定値と、強化ガラス板の厚さt(μm)とから以下の式1を用いて計算した。
CT=(CS×DOL)/(t−2×DOL) ・・・式1
内部ひずみエネルギーUCT(J/m)は、強化ガラス板のヤング率Y(MPa)を用いて以下の式2により求めた。
CT={CT×(t−2×DOL)}/(2×Y) ・・・式2
単位照射面積あたりのレーザ光の照射エネルギー(J/mm)は、強化ガラス板に反射されずに入射される実効的なレーザ出力をPe(W)、レーザ光の走査速度をv(mm/s)、強化ガラス板10に照射されるレーザ光のビーム径をφ(mm)とすると、Pe/(v×φ)で表すことができる。ここで、実効的なレーザ出力Pe(W)は、レーザ出力P(W)と強化ガラス板での反射率r(%)とを用いて、Pe=P×(1−r/100)と表すことができる。しかしながら、切断性を判断するためには、これにビーム径φ(mm)を掛けた単位長さあたりのレーザ光の照射エネルギーE(J/mm)を用いることが好ましい。詳細な理由については後述する。この照射エネルギーE(J/mm)を以下の式3に示す。
E=Pe/v ・・・式3
サンプル1〜11についての照射エネルギーEの臨界値である臨界照射エネルギーEcは、照射エネルギーEを約1(J/mm)ずつ変化させて切断を繰り返すことにより求めた。その際、レーザ光の走査速度v(mm/s)は固定したまま、レーザ出力P(W)のみを2.5Wずつ変化させた。
また、非強化ガラス板のサンプル18〜21についての臨界照射エネルギーEcは、照射エネルギーEを約4(J/mm)ずつ変化させて切断を繰り返すことにより求めた。その際、レーザ光の走査速度v(mm/s)は固定したまま、レーザ出力P(W)のみを10Wずつ変化させた。
他方、サンプル12〜17についての臨界照射エネルギーEcは、照射エネルギーEを徐々に変化させて切断を繰り返すことにより求めた。その際、レーザ出力P(W)は固定したまま、レーザ光の走査速度v(mm/s)のみを0.25mm/sずつ変化させた。
図15は、サンプル1〜21について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、臨界照射エネルギーEc、及び両者を導出するための諸条件が示された表である。表の左列から順に、レーザ波長λ(nm)、サンプル番号、強化ガラス板のヤング率Y(MPa)、線膨張係数α(K−1)、密度ρ(g/mm)、比熱c(J/g/K)、厚さt(mm)、吸収係数α(mm−1)、強化ガラス板での反射率r(%)、表面圧縮応力CS(MPa)、表面層及び裏面層の厚さDOL(μm)、内部残留引張応力CT(MPa)、内部ひずみエネルギーUCT(J/m)、レーザ光の走査速度v(mm/s)、レーザ光のビーム径φ(mm)、レーザ出力P(W)、実効的なレーザ出力Pe(W)、臨界照射エネルギーEc(J/mm)、臨界吸収エネルギーEa(J/mm)、臨界切断指数Kc(N/mm)が示されている。
図15に示すように、サンプル1〜11、18〜21については、レーザ光の光源にファイバーレーザ(中心波長帯:1070nm)を用い、サンプル12〜17については、レーザ光の光源に中赤外光パラメトリック発振器を使用したCr:ZnSeレーザ(中心波長帯:2950nm)を用いた。
また、いずれのサンプルも材質は同じであるため、図15に示す通り、ヤング率Y=74000MPa、線膨張係数α=9.8×10−6−1、密度ρ=2.48×10−3g/mm、比熱c=0.918J/g/Kで共通である。
なお、図15に示す通り、サンプル1〜11については、ビーム径φ=0.1mm、サンプル12〜17については、ビーム径φ=0.2mmとした。また、非強化ガラス板のサンプル18についてはビーム径φ=0.5mm、サンプル19についてはビーム径φ=0.8mm、サンプル20についてはビーム径φ=1.0mm、サンプル21についてはビーム径φ=2.0mmとした。
また、全てのサンプルについて、レーザ光照射側から直径1mmφのノズルを用いて、流量15L/minの空気を吹き付けた。ここで、強化ガラス板とノズル先端との距離(ギャップ)は3mmとした。
図16Aは、図15の表に示した臨界照射エネルギーEcの内部ひずみエネルギーUCT依存性を示すグラフである。図16Aの横軸は内部ひずみエネルギーUCT(J/m)、縦軸は臨界照射エネルギーEc(J/mm)である。図16Aにおいて、●印はサンプル1〜11、18〜21(レーザ波長λ=1070nm)、○印はサンプル12〜17(レーザ波長λ=2950nm)を示している。
図15、図16Aに示すように、レーザ波長λ=1070nmの場合、強化ガラス板の内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mでは、臨界照射エネルギーEc=9〜15J/mmで安定している(サンプル1〜10)。これに対し、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mでは、臨界照射エネルギーEc=56J/mmまで急激に(具体的には数倍程度)上昇する(サンプル11)。この臨界照射エネルギーEcの上昇に伴い、サンプル11では、切断精度も悪化した。この結果から、強化ガラス板を切断する場合、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとすることにより、小さい照射エネルギーで精度良く切断することができることが分かった。
さらに、非強化ガラス板のサンプル18については切断することができなかった。すなわち、板厚t(=0.7mm)以下のビーム径φ=0.5mmでは、非強化ガラス板のサンプルは切断することができなかった。そして、ビーム径φ=0.8mmのサンプル19については臨界照射エネルギーEc=83J/mm、ビーム径φ=1.0mmのサンプル20については臨界照射エネルギーEc=76J/mm、ビーム径φ=2.0mmのサンプル21については臨界照射エネルギーEc=65J/mmであった。すなわち、ビーム径の増大とともに、臨界照射エネルギーEcは漸減した。ここで、ビーム径が大きくなる程、レーザ光の中心とクラックの先端位置とが離れるため、切断精度が低下する。そのため、強化ガラス板の切断において、ビーム径φは板厚t以下とすることが好ましく、板厚tの1/2以下とすることがさらに好ましい。
図16Aのグラフから、内部ひずみエネルギーUCT=2.5J/m近傍において、切断モードの変換が生じているものと考えられる。具体的には、強化ガラス板を切断するためのクラック伸展エネルギーとして、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mの場合、内部ひずみエネルギーに加え、レーザ光の照射エネルギーが必要となり(図12参照)、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mの場合、内部ひずみエネルギーのみになるものと考えられる(図13参照)。
また、レーザ波長λを1070nmから2950nmへ変更することにより、強化ガラス板の吸収係数αが0.011mm-1から0.59mm-1へ向上する。そのため、図15、12に示すように、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mにおいて、臨界照射エネルギーEc=9〜15J/mm程度(サンプル1〜10)から臨界照射エネルギーEc=0.3〜0.5J/mm(サンプル12〜15)まで2桁も低減することができる。
このように、レーザ波長を3000nm近傍とすることにより、透明度を低下させずに吸収係数αを高めることができ、照射エネルギーを低減することができる。そのため、加熱効率が向上する。その上、強化ガラス板の組成によりレーザ光の照射条件を大幅に変更する必要がない。
さらに、上述の通り、切断する強化ガラス板より大きなテーブルに強化ガラスを載せ、より安定した状態で切断することができる。また、透過光が劇的に減少するため、その処理も不要となる。さらに、強化ガラス板の端面における反射光も劇的に減少するため、悪影響を及ぼし難い。
また、レーザ波長λが2950nmの場合も、1070nmの場合と同様に、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mでは、臨界照射エネルギーEc=0.9〜1.2J/mm程度あるいはそれ以上まで急激に上昇する(サンプル16、17)。この臨界照射エネルギーEcの上昇に伴い、サンプル16、17では、切断精度も悪化した。この結果から、レーザ波長λ=2950nmで強化ガラス板を切断する場合も、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとすることにより、小さい照射エネルギーで精度良く切断することができることが分かった。
ここで、臨界照射エネルギーEcのうち、切断に使用されるエネルギーは強化ガラス板に吸収されるエネルギー(以下、臨界吸収エネルギーという)Eaである。臨界吸収エネルギーEa(J/mm)は、臨界照射エネルギーEc(J/mm)、吸収係数α(mm−1)、厚さt(mm)を用いて、ランベルト・ベールの法則から次式で表すことができる。
Ea=Ec×exp(−α×t) ・・・式4
図15に示すように、臨界吸収エネルギーEa(J/mm)の値は、レーザ波長λが2950nmの場合と1070nmの場合とを比較しても、ほとんど差が無い。
強化ガラス板の厚さや材質による影響を排除し、より一般化するため、臨界吸収エネルギーEaでの内部加熱(温度変化ΔT)によって発生する熱応力(臨界圧縮応力)σcについて考察する。この臨界圧縮応力σcは、切断に必要な最小の圧縮応力である。ここで、臨界圧縮応力σcは、内部残留引張応力CTを基準とした場合に圧縮応力となるので「臨界圧縮応力」と表現している。しかし、図12、13に示すように、強化ガラス板の板厚中心部に発生する応力で考えた場合は、内部残留引張応力CTと臨界圧縮応力σcとの合力で表されるので、引張応力となる場合もある。
臨界圧縮応力σcは、図12、13に示すように、ガウス分布様のプロファイルを有している。この臨界圧縮応力σcの積分値(図12、13における斜線部の面積)が、切断可否を決定する。内部ひずみエネルギーUCTが同じであれば、臨界圧縮応力σcの積分値は、強化ガラス板の厚さt、材質によらず一定であると考えられる。臨界圧縮応力σcのプロファイルの幅は、ビーム径φに比例するから、臨界圧縮応力σcの積分値も、σc×φに比例すると考えてよい。
ここで、単純化のために、内部加熱によっても強化ガラス板の板厚tは変化せず、表面層13と裏面層15との間で拘束されることによりこの臨界圧縮応力σcが生じるものとする。すなわち、両端拘束モデルを考える。
臨界圧縮応力σc(MPa)は、ヤング率Y(MPa)、線膨張係数α(K−1)、温度変化ΔT(K)を用いて、次式5で表すことができる。
σc=Y×α×ΔT ・・・式5
また、臨界吸収エネルギーEaが供給されることによる強化ガラス板の温度変化ΔTは、ΔT=(臨界吸収エネルギー)/(レーザ照射部の強化ガラス板の熱容量)により求めることができる。
ここで、レーザ照射面積S(mm)とすれば、(臨界吸収エネルギー)は、臨界吸収エネルギーEa(J/mm)をφ(mm)で割った単位面積当たりの臨界吸収エネルギーEa/φ(J/mm)を用いて、Ea×S/φ(J)で表すことができる。
また、強化ガラス板における加熱領域の面積S(mm)とすると、(レーザ照射部の強化ガラス板の熱容量)は、強化ガラス板の厚さt(mm)、密度ρ(g/mm)、比熱c(J/g/K)を用いて、S×t×ρ×c(J/K)で表すことができる。
従って、温度変化ΔT(K)は次式6で表すことができる。
ΔT=Ea×S/(S×t×ρ×c)/φ
=(S/S)×Ea/(t×ρ×c)/φ ・・・式6
式5に式6を代入することにより、臨界圧縮応力σc(MPa)は次式7で表すことができる。
σc=(S/S)×Y×α×Ea/(t×ρ×c)/φ ・・・式7
ここで、単純化のために、S/S=一定と考えれば、求めるべき臨界圧縮応力σcの積分値に比例するσc×φは次式8で表すことができる。
σc×φ∝Ea×(Y×α)/(t×ρ×c)=Kc ・・・式8
式8のKcを臨界切断指数と名付ける。切断可能な臨界値を示すこの臨界切断指数Kcの値が小さくなる程、切断が容易になり、臨界切断指数Kcの値が大きくなる程、切断が困難になる。このように、切断性は、式3で示された単位長さあたりのレーザ光の照射エネルギーE(J/mm)により判断できる。
臨界切断指数Kcを構成するヤング率Y、線膨張係数α、密度ρ、比熱cは、いずれも温度依存性を有するが、あくまで指標として室温の値を用いている。
図15の最右列に臨界切断指数Kc(N/mm)を示した。
図16Bは、図15の表に示した臨界切断指数Kcの内部ひずみエネルギーUCT依存性を示すグラフである。図16Bの横軸は内部ひずみエネルギーUCT(J/m)、縦軸は臨界切断指数Kc(N/mm)である。図16Bにおいて、●印はサンプル1〜11、18〜21(レーザ波長λ=1070nm)、○印はサンプル12〜17(レーザ波長λ=2950nm)を示している。
図15、図16Bに示すように、レーザ波長λによらず、強化ガラス板の内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mでは、臨界切断指数Kc=50N/mm近傍で安定している(サンプル1〜10、12〜15)。これに対し、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mでは、臨界切断指数Kc=150N/mm(サンプル16)あるいは200N/mm近傍になる(サンプル11、17)。さらに、非強化ガラス板では200N/mmを超えるようになる(サンプル18〜21)。ここで、ビーム径が小さくなる程、臨界切断指数Kcが大きくなり、ビーム径が0.5mm以下では切断できなくなる(サンプル18)。
この臨界切断指数Kcの上昇に伴い、切断精度も悪化した。この結果から、強化ガラス板を切断する場合、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとすることにより、小さい照射エネルギーで精度良く切断することができることが分かった。また、ビーム径が大きくなる程、レーザ光の中心とクラックの先端位置とが離れるため、切断精度が低下する。そのため、ビーム径φは板厚t(mm)以下とすることが好ましく、板厚t(mm)の1/2以下とすることがさらに好ましい。
単位照射面積当たりの照射エネルギーE(J/mm)での切断指数Kは、式4におけるEcをEに置き換えた上で、式8におけるEaに代入することにより、次式9で表すことができる。ここで、切断指数Kが臨界切断指数Kc以上であれば切断可能となる。
K=E×exp(−α×t)×(Y×α)/(t×ρ×c) ・・・式9
さらに、式9に式3を代入することにより、以下の式10が得られる。
K=Pe/v×exp(−α×t)×(Y×α)/(t×ρ×c)・・式10
図16Bから、内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mであれば、臨界切断指数Kcが50N/mm程度であるため、切断指数K≦150N/mmを満たす照射エネルギーEで十分に切断できる。一方、図16Bから、内部ひずみエネルギーUCT<2.5J/mであれば、臨界切断指数Kcが150N/mm以上となるため、切断指数K≦150N/mmを満たす照射エネルギーEでは、切断が不可能あるいは困難になる。内部ひずみエネルギーUCT≧2.5J/mとした上で、切断指数K≦150N/mmを満たす照射エネルギーEとすることにより、小さい照射エネルギーで精度良く切断することができる。切断指数K≦100N/mmを満たす照射エネルギーEとすることにより、さらに小さい照射エネルギーでさらに精度良く切断することができる。一方、切断指数Kが小さすぎると、クラック伸展を制御できないため切断出来なくなる。このため、切断指数K≧5N/mmを満たす照射エネルギーEとする事により、安定して切断できる。
<実施例2>
実施例2では、レーザ光の吸収率を高める異物付着に対するレーザ波長λの影響を調査した。
図17は、サンプル31〜33及び41〜43について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、照射エネルギーE、両者を導出するための諸条件、異物としての黒色マークの有無、切断可否、断面性状が示された表である。具体的には、表の左列から順に、レーザ波長λ(nm)、サンプル番号、ヤング率Y(MPa)、強化ガラス板の厚さt(μm)、表面圧縮応力CS(MPa)、表面層及び裏面層の厚さDOL(μm)、内部残留引張応力CT(MPa)、内部ひずみエネルギーUCT(J/m)、レーザ光の走査速度v(mm/s)、ビーム径φ(mm)、レーザ出力P(W)、照射エネルギーE(J/mm)、黒色マークの有無、切断可否、断面性状が示されている。内部ひずみエネルギーUCT及び照射エネルギーEは、実施例1と同様に導出した。但し、簡易に評価するため、反射率r=0%とした。
図17に示すように、サンプル31〜33については、レーザ光の光源にファイバーレーザ(中心波長帯:1070nm)を用い、サンプル41〜43については、レーザ光の光源に中赤外光パラメトリック発振器を使用したCr:ZnSeレーザ(中心波長帯:2950nm)を用いた。
図17に示すように、サンプル31、41については、強化ガラス板の表面(レーザ光入射側)及び裏面(レーザ光出射側)のいずれにも黒色マークを付さなかった。サンプル32、42については、表面のみに黒色マークを付した。サンプル33、43については、裏面のみに黒色マークを付した。黒色マークの付着には、油性のサインペンを用いた。
なお、図17に示すように、サンプル31〜33についてはビーム径φ=0.1mm、サンプル41〜43についてはビーム径φ=0.2mmとした。また、図17には記載していないが、全てのサンプルについて、レーザ光照射側から直径1mmφのノズルを用いて、流量15L/minの空気を吹き付けた。ここで、強化ガラス板とノズル先端との距離(ギャップ)は3mmとした。
図17に示すように、レーザ波長λ=1070nmでは、照射エネルギーE=6J/mm(サンプル31〜33)であるのに対し、レーザ波長λ=2950nmでは、照射エネルギーE=2J/mm(サンプル41〜43)に低減することができた。
黒色マークのないサンプル31、41は、レーザ波長によらず、いずれも切断可能であって、断面性状も鏡面すなわち良好であった。
レーザ波長λ=1070nmのサンプル32では、表面に黒色マークが付されたことにより、その部分でのレーザ光の吸収率が高まり、切断はできたものの断面に欠点が発生した。
また、レーザ波長λ=1070nmのサンプル33では、裏面に黒色マークが付されたことにより、切断すらできなかった。
これに対し、レーザ波長λ=2950nmのサンプル42、43では、黒色マークが付さているにも関わらず、いずれも切断可能であって、断面性状も鏡面すなわち良好であった。
このように、レーザ波長を3000nm近傍とすることにより、レーザ光の吸収率が高まる。そのため、表面あるいは裏面に付着した異物によりレーザ光の吸収率が高まっても、吸収率の変化の割合が小さいため、悪影響を及ぼし難いことが分かった。
<実施例3>
実施例3では、レーザ波長λ=2950nmとした場合において、ブラックマトリクス膜の形成有無が臨界照射エネルギーEcに及ぼす影響について調査した。実施例1と同様に、図14に示した切断予定線に沿って切断した。
図18は、サンプル51、52について、レーザ波長λ、内部ひずみエネルギーUCT、臨界照射エネルギーEc、両者を導出するための諸条件、ブラックマトリクス(BM)膜の形成有無、切断可否、断面性状が示された表である。また、比較のために、実施例1のサンプル13についての結果が並べて示されている。
具体的には、図18の表の左列から順に、レーザ波長λ(nm)、サンプル番号、ヤング率Y(MPa)、強化ガラス板の厚さt(μm)、表面圧縮応力CS(MPa)、表面層及び裏面層の厚さDOL(μm)、内部残留引張応力CT(MPa)、内部ひずみエネルギーUCT(J/m)、レーザ光の走査速度v(mm/s)、ビーム径φ(mm)、レーザ出力P(W)、臨界照射エネルギーEc(J/mm)、BM膜の形成有無、切断可否、断面性状が示されている。内部ひずみエネルギーUCT及び臨界照射エネルギーEcは、実施例1と同様に導出した。但し、簡易に評価するため、反射率r=0%とした。
臨界照射エネルギーEcは、照射エネルギーEを徐々に変化させて切断を繰り返すことにより求めた。その際、レーザ出力P(W)は固定したまま、レーザ光の走査速度v(mm/s)のみを0.25mm/sずつ変化させた。
図18に示すように、レーザ光の光源に中赤外光パラメトリック発振器を使用したCr:ZnSeレーザ(中心波長帯:2950nm)を用いた。サンプル51については、表面にBM膜を形成し、サンプル52については、裏面にBM膜を形成した。また、図18に並べて示した実施例1のサンプル13と同様に、レーザ光照射側から直径1mmφのノズルを用いて、流量15L/minの空気を吹き付けた。ここで、強化ガラス板とノズル先端との距離(ギャップ)は3mmとした。
図18に示すように、BM膜が形成されたサンプル51、52は、いずれも臨界照射エネルギーEc=0.41J/mmであり、BM膜が形成されていない実施例1のサンプル13の臨界照射エネルギーEc=0.43J/mmと差がなかった。この結果から、レーザ波長λ=2950nmとした場合、臨界照射エネルギーEcは、BM膜の形成有無及び形成面に影響されず、BM膜が形成されていても低い照射エネルギーで精度よく切断できることが分かった。
以上、本発明を上記実施形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
本出願は、2012年7月9日出願の日本特許出願2012−153400、2012年11月30日出願の日本特許出願2012−261909に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明により、内部残留引張応力によるクラック伸展が支配的となり、小さい照射エネルギーで精度良く強化ガラス板を切断することができる。
10 強化ガラス板
12 表面
13 表面層
14 裏面
15 裏面層
17 中間層
20 レーザ光
22 照射領域
25 レンズ
28 冷却ノズル
30 クラック
40 強化ガラスパネル
41〜44 直線部
45 切断開始位置
46 切断終了位置
235 切断予定線
C1〜C4 コーナー部

Claims (9)

  1. 残留圧縮応力を有する表面層及び裏面層と、当該表面層及び裏面層との間に形成され、内部残留引張応力CT(MPa)を有する中間層とを備える強化ガラス板を、当該強化ガラス板に照射されるレーザ光の照射領域を移動させることで切断する工程を含む、強化ガラス板の切断方法であって、
    前記表面層及び前記裏面層の厚さDOL(μm)、前記強化ガラス板の厚さt(μm)、ヤング率Y(MPa)を用いて、下式で表現される前記内部残留引張応力CTに基づく単位面積当たりのひずみエネルギーUCT(J/m)を2.5J/m以上とし、
    前記強化ガラス板に入射される前記レーザ光の出力Pe(W)、前記レーザ光の走査速度v(mm/s)、前記レーザ光に対する前記強化ガラス板の吸収係数α(mm−1)、前記強化ガラス板の厚さt(mm)、ヤング率Y(MPa)、線膨張係数α(K−1)、密度ρ(g/mm)、比熱c(J/g/K)を用いて、下式で表現される切断指数K(N/mm)を150N/mm以下とする、強化ガラス板の切断方法。
    CT={CT×(t−2×DOL)}/(2×Y)
    K=Pe/v×exp(−α×t)×(Y×α)/(t×ρ×c)
  2. 前記レーザ光のビーム径を前記強化ガラス板の厚さ以下とする、
    請求項1に記載の強化ガラス板の切断方法。
  3. 前記強化ガラス板に照射されるレーザ光によって前記中間層を徐冷点以下の温度で局所的に加熱し、前記中間層に圧縮応力を発生させることにより、前記内部残留引張応力によるクラックの伸展を制御しつつ、前記レーザ光の照射領域を移動させることで前記強化ガラス板を切断する、請求項1又は2に記載の強化ガラス板の切断方法。
  4. 前記強化ガラス板と前記レーザ光とが、0<α×t≦3.0の条件を満たす、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の強化ガラス板の切断方法。
  5. 前記レーザ光の波長を250〜5000nmとする、
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の強化ガラス板の切断方法。
  6. 前記レーザ光の波長を2500〜3500nmとする、
    請求項5に記載の強化ガラス板の切断方法。
  7. 前記強化ガラス板の前記レーザ光の照射領域に、前記レーザ光の入射側から気体を吹き付けて冷却する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の強化ガラス板の切断方法。
  8. 前記内部残留引張応力CTに基づく単位面積当たりのひずみエネルギーUCTが60J/m以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の強化ガラス板の切断方法。
  9. 前記切断指数Kが、5N/mm以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の強化ガラス板の切断方法。
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