JPWO2013147001A1 - 血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュール - Google Patents

血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュール Download PDF

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Abstract

本発明は、血液製剤に含まれる蛋白質を除去し、安全性の高い血液製剤を効率良く得ることを可能にする、血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュールを提供することを目的としている。本発明は、血液製剤が接触する表面に親水性高分子を有し、上記親水性高分子の存在率が、40〜60質量%であり、上記表面における開孔率が、8〜30%である、血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜を提供する。

Description

本発明は、血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュールに関する。
輸血や血液製剤の製造のために用いられる献血は、全血献血と、成分献血とに大別される。献血により採取された血液等の成分を物理的に分離することで、様々な種類の血液製剤が製造されている。例えば、全血献血により採取された血液からは全血製剤、濃厚赤血球製剤、洗浄赤血球製剤、原料血漿製剤及び血漿分画製剤が、成分献血により採取された特定の血液成分からは血小板製剤及び血漿分画製剤が、それぞれ製造されている。
血液製剤の一つである血小板製剤は、非溶血性輸血副作用の出現頻度が高いとされており(非特許文献1)、中でも蕁麻疹、痒み又は重篤なアナフィラキシー・ショックといった副作用については、その原因として血小板製剤に含まれる蛋白質(血漿)の関与が推測されることから、血小板製剤に含まれる蛋白質の除去が必要である(非特許文献2)。また、同様に赤血球製剤においても、非溶血性輸血副作用は発生する現象であるため、赤血球製剤においても、蛋白質の除去が必要である。
赤血球製剤や血小板製剤等の血液製剤中に含まれる蛋白質を除去する代表的な方法としては、膜分離法と遠心分離法とが挙げられる。膜分離法は、赤血球と蛋白質との分離(特許文献1及び2)等に用いられた実績があり、目詰まりや汚れが生じにくい膜(特許文献3)といった改良技術も開発されている。一方で、遠心分離法は赤血球の溶血や血小板を活性化し易いとの(非特許文献3)指摘もあるが、日本国内での献血を手がける日本赤十字社は遠心分離法によって血小板製剤を製造しており、遠心分離法が主たる地位を確立している。
特開昭62−290469号公報 特開昭54−15476号公報 特開昭61−238834号公報
血液事業、2001年、第23巻、第4号、p.647−654 Japanese Journal of Transfusion Medicine、2001年、第47巻、第5号、p.777−782 Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy、2009年、第55巻.第6号、p.698−704
しかしながら、遠心分離法では遠心力による赤血球の溶血や、血小板の活性化や凝集が発生し易いばかりか、蛋白質の除去は十分ではなく、さらには上澄み液(蛋白質部分)の分取を手作業で行わねばならないという煩雑な操作を伴うものであった。一方で、血小板製剤の血小板濃度は全血の3倍以上であり、血小板同士が極めて凝集しやすい血液製剤である。従来の膜分離法においても、血小板と膜との接触により血小板の活性化や凝集が発生してしまうことから、血小板製剤を浄化するための新たな手段が求められているのが現状であった。さらに、遠心分離法では赤血球の溶血も発生するから、血小板製剤だけでなく血液製剤を膜分離法により分離する際においても新たな手法が求められている。
そこで本発明は、赤血球製剤及び血小板製剤に含まれる蛋白質を除去し、安全性の高い血液製剤を効率良く得ることを可能にする、血液製剤浄化用の中空糸膜及び血液製剤浄化用の中空糸膜モジュールを提供することを目的とする。
本発明は、以下の(1)〜(12)に記載した血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び中空糸膜モジュールを提供する。
(1) 血液製剤が接触する表面に親水性高分子を有し、上記親水性高分子の存在率が、40〜60質量%であり、上記表面における開孔率が、8〜30%である、血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜。
(2)透水性能が、20mL/hr/Pa/m以上である、上記(1)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(3) 上記表面における孔の真円度が、1以下である、上記(1)又は(2)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(4) 血小板製剤浄化用である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(5) 上記表面におけるエステル基由来の炭素の存在率が、0.1〜10原子数%である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(6) 上記表面は、内表面である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(7) 上記表面側の空隙長Xが、上記表面の反対表面側の空隙長Yよりも大きい、上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(8) 上記空隙長Xを上記空隙長Yで除した値が、1.1以上である、上記(7)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(9) 上記空隙長Xが、0.1〜4.0μmである、上記(7)又は(8)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(10) 上記(1)〜(9)に記載のポリスルホン系中空糸膜を備える、血液製剤浄化用の中空糸膜モジュール。
(11) 端面長を流路断面積で除した値が、50以上200未満である、上記(10)に記載の中空糸膜モジュール。
(12) 血液製剤の処理量を、中空糸膜の血液製剤が接触する表面の表面積で除した値が、0.05〜0.3である、上記(10)又は(11)に記載の中空糸膜モジュール。
また本発明は、以下の(13)〜(23)に記載した血小板製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜及び血小板製剤浄化用の中空糸膜モジュールを提供する。
(13) 血小板製剤が接触する表面に親水性高分子を有し、上記親水性高分子の存在率が、40〜60質量%であり、上記表面における開孔率が、8〜30%である、血小板製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜。
(14)透水性能が、20mL/hr/Pa/m以上である、上記(13)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(15) 上記表面における孔の真円度が、1以下である、上記(13)又は(14)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(16) 上記表面におけるエステル基由来の炭素の存在率が、0.1〜10原子数%である、上記(13)〜(15)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(17) 上記表面は、内表面である、上記(13)〜(16)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(18) 上記表面側の空隙長Xが、上記表面の反対表面側の空隙長Yよりも大きい、上記(13)〜(17)のいずれかに記載のポリスルホン系中空糸膜。
(19) 上記空隙長Xを上記空隙長Yで除した値が、1.1以上である、上記(18)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(20) 上記空隙長Xが、0.1〜4.0μmである、上記(18)又は(19)に記載のポリスルホン系中空糸膜。
(21) 上記(13)〜(20)に記載のポリスルホン系中空糸膜を備える、血小板製剤浄化用の中空糸膜モジュール。
(22) 端面長を流路断面積で除した値が、50以上200未満である、上記(21)に記載の中空糸膜モジュール。
(23) 血小板製剤の処理量を、中空糸膜の血小板製剤が接触する表面の表面積で除した値が、0.05〜0.3である、上記(21)又は(22)に記載の中空糸膜モジュール。
本発明の血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜は、血小板の活性化を抑制しながら、血小板製剤中に含まれる蛋白質を除去することができ、血小板製剤浄化用の中空糸膜モジュールとして使用すれば、高い安全性を確保しながら効率良く血小板製剤を浄化することができる。さらに、本発明の血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜は、特に赤血球の溶血を抑制しながら、赤血球製剤中の蛋白質を除去する機能をもち、赤血球製剤浄化用の中空糸膜モジュールとして使用すれば、高い安全性を確保しながら効率良く赤血球製剤を浄化することができる。
ポリスルホン系中空糸膜の表面における孔の電子顕微鏡写真である(10000倍)。 ポリスルホン系中空糸膜の長手方向に対して垂直な断面の電子顕微鏡写真である。 ポリスルホン系中空糸膜の長手方向に対して垂直な断面における、内表面側の電子顕微鏡写真である(5000倍)。 ポリスルホン系中空糸膜の長手方向に対して垂直な断面における、外表面側の電子顕微鏡写真である(5000倍)。 ポリスルホン系中空糸膜の表面における孔(フィブリル構造)の電子顕微鏡写真である(10000倍)。
本発明の血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜は、血液製剤が接触する表面に親水性高分子を有し、上記表面における親水性高分子の存在率が、40〜60質量%であり、上記表面における開孔率が、8〜30%であることを特徴とする。
「血液製剤」とはヒト血液を原料として製剤化した液体をいい、本発明の中では白血球を取り除き、血球成分を残したものを指す。例えば献血で全血献血を行った全血製剤に対して、白血球を取り除いた「赤血球製剤」や、成分献血で採取した「血小板製剤」がこの「血液製剤」に含まれる。
「血小板製剤」とは、血小板と蛋白質とを含む液体をいう。例えば、全血から赤血球及び白血球を除去した血液製剤、該血液製剤からさらに蛋白質を除去した置換血小板製剤若しくは洗浄血小板製剤又はそれらの希釈液若しくは混合液が挙げられる。また、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン又はカルシウムイオン等の金属塩が添加されていてもよく、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸又はヘパリン等の抗凝固剤が添加されていてもよい。通常の血小板製剤の蛋白質濃度は約50〜60mg/mLであるが、そこから60〜70質量%の蛋白質を除去して蛋白質濃度を約10mg/mLに低減したものを置換血小板製剤といい、90質量%以上の蛋白質を除去して蛋白質濃度を6mg/mL以下に低減したものを洗浄血小板製剤という。
「赤血球製剤」とは、血液中における赤血球体積が30体積%以上である液体であり、白血球と血小板が5体積%以下である液体を言う。また、クエン酸ナトリウム、クエン酸水和物、ブドウ糖、塩化ナトリウム、アデニン、リン酸二水素ナトリウムなどの抗凝固剤が添加されていても良い。該製剤に関しても蛋白質濃度を低減したものが洗浄赤血球製剤として用いられる。
さらに「血液製剤が接触する表面」とは、血液製剤を浄化するための濾過の方式が外圧式濾過であれば、ポリスルホン系中空糸膜を構成する中空糸の外表面を、内圧式濾過であれば、ポリスルホン系中空糸膜を構成する中空糸の内表面をいう。ここで外圧式濾過とは、中空糸の外側から血液製剤を供給し、中空糸の内側から濾液を得る方式の濾過をいう。一方で内圧式濾過とは、中空糸の内側から血液製剤を供給し、中空糸の外側から濾液を得る方式の濾過をいう。
外圧式濾過は、血液製剤が接触する表面の面積が大きく、濾過効率がよい。一方で、内圧式濾過には、血液製剤のショートパスや偏流が生じにくいというメリットがあるが、本発明のポリスルホン系中空糸膜を用いた血液製剤の浄化は、内圧式濾過とすることが好ましい。すなわち、血液製剤が接触する表面は、中空糸膜の内表面であることが好ましい。
「親水性高分子」とは、水溶性高分子、又は、非水溶性であっても静電相互作用や水素結合により水分子と相互作用する高分子をいう。ここで水溶性高分子とは、25℃の純水中に1000ppm以上の割合で溶解する高分子をいい、例えば、ポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(以下、「PVP」)、ポリビニル酢酸、ポリビニルカプロラクタム、ヒドロキシエチルメタクリレート若しくはメチルメタクリレート等の非イオン性親水性高分子又はデキストラン硫酸、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン若しくはポリアリルアミン等のイオン性親水性高分子が挙げられる。
血液製剤が接触する表面における親水性高分子の存在率は、40〜60質量%である必要があるが、40〜55質量%であることが好ましい。親水性高分子の存在率が低すぎると中空糸膜表面に血小板が付着し、血小板の凝集若しくは活性化又は血小板回収率の低下等の問題が生じる。また、赤血球の場合は、赤血球の溶血、回収率の低下等の問題が起きる。一方で、親水性高分子の存在率が高すぎると親水性高分子が溶出するばかりか、血小板の活性化及び蛋白質の変性につながりかねない。
中空糸膜表面における親水性高分子の存在率は、X線電子分光法(以下、「ESCA」)で測定角を90°として測定を行い、中空糸膜表面から約10nmの深さまでにおける元素の存在比率を調べることによって算出することができる。より具体的には、以下の方法により測定及び算出することができる。
中空糸膜を片刃で半円筒状にそぎ切り、超純水でリンスした後、室温、0.5Torrにて10時間乾燥させたものを測定サンプルとする。サンプルを装置にセットし、X線の入射角に対する検出器の角度を調整して測定角を90°として測定をする。得られたC1s、N1s及びS2pのそれぞれのスペクトルの面積強度並びに装置付属の相対感度係数から、炭素原子、窒素原子及び硫黄原子の存在比率を求める。
ここで、例えば、血液製剤が接触する表面の親水性高分子がPVPである場合には、以下の式1により、表面におけるPVPの存在率を算出する。
表面におけるPVPの存在率(質量%)=N×111/(N×111+S×442)・・・式1
N : 窒素原子の存在比率
S : 硫黄原子の存在比率
111: PVPの繰り返し単位数
442: ポリスルホン系ポリマーの繰り返し単位数
中空糸膜表面に血小板が付着するメカニズムとしては、2つの経路が存在する。第1の経路は、血小板が中空糸膜表面に接触すると同時に活性化され、付着する経路である。第2の経路は、血液凝固に関与するフィブリノーゲン等の蛋白質が膜に付着して血小板を活性化し、血小板の付着を誘発する経路である。このため、中空糸膜表面への血小板付着を抑制するためには、中空糸膜表面への血小板の接近、及び、フィブリノーゲン等の蛋白質の中空糸膜表面への付着を防ぐ必要がある。
中空糸膜表面への血小板の接近を防ぐ手段としては、中空糸膜表面に、親水性高分子による散漫層を形成することが有効である。この散漫層による排除体積効果により、血小板は中空糸膜表面に近づけない。
溶血とは赤血球の細胞膜が、物理的にまたは化学的に、生物学的など様々な要因によって損傷を受け原形質が細胞外に漏出して赤血球が死に至る現象である。物理的な要因としては、圧力、遠心力など機械的ストレスが挙げられる。遠心分離の過程で過剰な遠心力に曝されることなども一つの要因である。また、生物学的な要因としては、抗体や補体によって起こる溶血が知られている。赤血球に対する抗体が結合することで、あるいは別の活性化機構によって補体活性化のシグナル伝達が始まると、補体の各成分が順次活性化されていくカスケード反応によって最終的に細胞膜を貫通するチャネル様の蛋白質複合体が形成されて細胞膜に孔があき、溶血を起こす。
溶血を防ぐ手段としては上記圧力や、遠心力などの機械的ストレスを防ぐことと、中空糸表面の親水性高分子による散漫層を形成することで赤血球との抗体が結合することでカスケード反応を防ぐことが有効である。
上記の散漫層の形成により、フィブリノーゲン等の蛋白質の中空糸膜表面への付着も防ぐことができる。しかしながら、散漫層の親水性が強すぎると、フィブリノーゲン等の蛋白質の付着抑制効果は低下する。蛋白質の周囲の結合水が散漫層にトラップされることで蛋白質の構造変化が引き起こされ、中空糸膜表面への付着が惹起されるものと推測される。ここで結合水とは、蛋白質の周囲に存在し、水素結合により運動性が束縛された水をいう。結合水は、蛋白質の構造を安定化するとされている。
以上のような理由から、親水性高分子としては、ビニルカプロラクタム、プロピレングリコール、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルメタクリレート又はメチルメタクリレート等、やや疎水的なユニットを有する非水溶性高分子が好ましく、エステル基を有する高分子がより好ましく、酢酸ビニル基又はアクリル酸メチル基等の側鎖型のエステル基を有する高分子がさらに好ましい。酢酸ビニル基又はアクリル酸メチル基等の側鎖型のエステル基はその親水性が適度であるため、結合水をトラップしないと推察される。一方でエステル基を有していても、疎水性が強いポリエチレンテレフタレートのような高分子は好ましくない。
ビニルカプロラクタム、プロピレングリコール、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルメタクリレート又はメチルメタクリレート等のユニットのホモ重合体は、膨潤した散漫層を形成しにくいことから、これらユニットと、ビニルピロリドン、エチレングリコール又ビニルアルコールユニットとの共重合体を親水性高分子とすることが好ましく、水溶性と疎水性のバランスがよい、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとの共重合体、ビニルピロリドンとメチルメタクリレートとの共重合体、エチレングリコールと酢酸ビニルとの共重合体又はエチレングリコールとメチルメタクリレートとの共重合体を親水性高分子とすることがより好ましい。
1分子の中で親水性と疎水性のバランスを好適なものにするためには、ランダム共重合体又は交互共重合体が好ましい。これら共重合体がエステル基を有する場合、エステル基ユニットのモル比は0.3〜0.7が好ましい。
血液製剤が接触する表面におけるエステル基由来の炭素の存在率は、ESCAで測定角を90°として測定を行い、中空糸膜表面から約10nmの深さまでにおけるC1sのピーク全体から、エステル基由来の成分のピークを分割することによって算出することができる。より具体的には、C1sを構成する、主にCHx、C−C、C=C及びC−S由来の成分、主にC−O及びC−N由来の成分、π−πサテライト由来の成分、C=O由来の成分及びエステル基由来の成分の5つの成分のピーク全体から、エステル基由来の成分のピークを分割して、C1sのピーク全体の面積に対するエステル基由来の成分のピーク面積比(以下、「エステル基由来ピーク面積比」)を求めることで算出することができる。なお、エステル基由来の成分のピークは、CHx等由来の成分のメインピーク(285eV付近)から+4.0〜4.2eVに現れる。C1sの炭素量(原子数%)にエステル基由来ピーク面積比(3箇所について測定をし、その平均値(小数第一位を四捨五入)を算出する;エステル基由来ピーク面積比が0.4%以下の場合には、検出限界以下として扱う)を乗じた値が、血液製剤が接触する表面におけるエステル基由来の炭素の存在率となる。エステル基由来の炭素の存在率は、0.1〜10原子数%以上が好ましく、0.5〜5原子数%以上がより好ましく、0.5〜1原子数%以上がさらに好ましい。
親水性高分子の重量平均分子量は、5000〜1500000が好ましく、10000〜1000000がより好ましい。親水性高分子が中空糸膜表面に保持されるためには架橋点が多い、すなわち重量平均分子量が大きいものが有利である。しかしながら、重量平均分子量が高すぎると、高粘性やゲル化によって中空糸膜表面における均一な状態で膜表面を保持することが困難となり、膨潤した散漫層が形成されなくなる。一方で、重量平均分子量が低すぎると、その溶出につながりかねない。
親水性高分子は単一の重量平均分子量のものを用いても、重量平均分子量の異なるものを複数混合して用いても構わない。また、市販の製品を精製して重量平均分子量分布をシャープにしたものを用いても構わない。
親水性高分子がPVPの場合には、K15〜K120といわれるものが好ましい。PVPの重量平均分子量は、親水性を向上させるために10000以上が好ましく、40000以上がより好ましい。PVPはN−ビニルピロリドンをビニル重合させた水溶性高分子であり、例えば、ルビテック(BASF)、プラスドン(ISP)、ピッツコール(第一工業製薬)の商品名で、各種の分子量の製品が市販されている。
PVPと酢酸ビニルとの共重合体としては、その重量比率が(7/3)、(6/4)、(5/5)又は(3/7)等のものが市販されているが、重量比率が6/4であるコリドンVA64や、VA73、VA55、VA37又はPVC55(BASF)等を用いることが好ましい。
血液製剤が接触する表面における開孔率は、8〜30%である必要があるが、10〜20%であることが好ましい。開孔率が高ければ、血液製剤と接触する中空糸膜の面積を小さくでき、血液製剤の供給流量や濾過量を大きくすることが可能である。一方で、開孔率が高すぎると中空糸膜表面の凹凸は大きくなり、赤血球や血小板への刺激も大きくなり中空糸膜の強度も低下しかねない。
血液製剤が接触する表面における孔の平均孔径は、分離の対象であるヒト血小板の大きさが3〜4μm、ヒト赤血球の大きさが7〜8μmであることから、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。ヒト血小板に比べて上記の平均孔径が同等又は大きい場合、すなわち、上記の平均孔径が3〜4μm以上の場合には、孔に血小板が入り込み、閉塞によって濾過効率が低下するばかりか、血小板の活性化につながりかねない。高い圧力を加えて閉塞を除去することは可能であるが、これもやはり血小板の活性化につながりかねない。また、ヒト赤血球に比べて上記の平均孔径が同等又は大きい場合、すなわち、上記の平均孔径が7〜8μm以上の場合には、孔に赤血球が入り込み、閉塞によって濾過効率が低下するばかりか、高い圧力を加えて閉塞を除去することで溶血に繋がりかねない。
一方で、上記の平均孔径が2μm以下であれば、中空糸膜表面にはケーク層といわれる血小板の層が積層し、濾過効率が一時的に低下する。しかしながら、ケーク層の閉塞力は弱く、低い圧力によるずりを与えることで血小板を活性化または赤血球を溶血することなく剥離することができる。
血液製剤が接触する表面における開孔率、及び、血液製剤が接触する表面における孔の平均孔径は、以下の方法により測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡で血液製剤が接触する表面の1000倍画像を撮影する。次に、Matrox Inspector2.2(Matrox Electronic Systems Ltd.)で、孔の部分を白く、それ以外の部分を黒く反転させる画像処理を行い、白い孔の個数(以下、「総開孔数」)及び白い孔の部分のピクセル数の総和(以下、「総開孔面積」)を求め、以下の式2及び式3により、画像1枚当たりの開孔率及び平均孔径を算出する。これらの測定作業を中空糸膜5本につきそれぞれランダムに10箇所ずつ、計50回繰り返し、全50枚の画像についての平均値を「血液製剤が接触する表面における開孔率」とする。なお、上記の1000倍画像の撮影条件は以下のとおりである。
画像サイズ: 655×740ピクセル
画像解像度: 0.140845μm/ピクセル
画像面積S: 9615.2μm (縦92.3μm×横104.2μm角)
開孔率(%)=総開孔面積/画像サイズ×100・・・式2
平均孔径(μm)=総開孔数×(総開孔面積/π)0.5・・・式3
血液製剤が接触する表面における孔の形状は、真円に近いことが好ましく、真円度が1以下であることがより好ましく、真円度が0.6以下であることがさらに好ましい。血液製剤が接触する表面における孔の真円度は、以下の方法により測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡で血液製剤が接触する表面を10000倍に拡大して観察し、その孔の輪郭を同心の幾何学的円で挟んだとき、同心円の間隔が最小となる場合の、2円の半径の差を求める。この測定作業を孔10個について繰り返し、その平均値を真円度とする。内表面における孔の形状を観察した電子顕微鏡写真の一例を、図1に示す。
血液製剤が接触する表面側の空隙長は、中空糸膜の強度を保持しながら、中空糸膜と血液製剤との接触面積を小さくするために、反対表面側の空隙長の1.1倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。空隙長は、ポリマー骨格間の距離の指標となる。
空隙長は、以下の方法により測定することができる。まず、電子顕微鏡で中空糸膜の長手方向に対して垂直な断面の内表面側、及び、外表面側を、それぞれ5000倍に拡大して観察する。中空糸膜の長手方向に対して垂直な断面の電子顕微鏡写真を図1に、5000倍に拡大した内表面側の電子顕微鏡写真を図2に、5000倍に拡大した外表面側の電子顕微鏡写真を図3に、それぞれ示す。次に、図2及び図3に示すように、中空糸膜表面に直線11及び直線21を引く。また、直線11(又は直線21)と平行であって、直線11(又は直線21)から中空糸膜の内側に向かって3μmの距離に位置するように、直線12及び22を引く。直線21(又は22)と接触している空隙を任意に10個選び、その中で最大である空隙の長さを、内表面側及び外表面側のそれぞれについて測定する。同様の測定を、異なる断面について計10回繰り返し、内表面側及び外表面側のそれぞれについての平均値を、内表面側の空隙長及び外表面側の空隙長とする。
血液製剤が接触する表面側の空隙の空隙長は、0.1〜4.0μmであることが好ましく、0.2〜3.0μmであることがより好ましい。空隙長がすぎると中空糸膜表面近傍における血小板や赤血球の滞留時間が長くなり、血小板や赤血球が活性化されてしまう。一方で、空隙長が大きすぎると、血小板や赤血球が中空糸膜を通過して漏洩しかねない。
中空糸膜表面における開孔率と同じように濾過抵抗に大きな影響を与える指標として、中空糸膜の透水性能がある。中空糸膜の透水性能は、20mL/hr/Pa/m以上であることが好ましく、30mL/hr/Pa/m以上であることがより好ましい。中空糸膜の透水性能が20mL/hr/Pa/m未満の場合には、蛋白質の濾過速度が低下してしまう。加圧による濾過速度向上も可能であるが、血小板の活性化につながりかねない。
中空糸膜の透水性能は、以下の方法により測定及び算出することができる。まず、プラスチック管に中空糸膜を挿入し、中空糸膜の両端をプラスチック管両端部の内壁にポッティングして、有効長10cmのモジュールを作製する。次に、中空糸膜の血液製剤が接触する表面側から1.3×10Paの水圧をかけ、中空糸膜の濾液が得られる表面側に流出してくる単位時間当たりの水の量を測定し、以下の式4により中空糸膜の透水性能を算出する。
透水性能(mL/hr/Pa/m)=QW/(T×P×A)・・・式4
QW: 濾液が得られる側に流出した水の量(mL)
T : 水圧をかけた時間(hr)
P : 水圧(Pa)
A : 血液製剤が接触する表面側の面積(m
「ポリスルホン系中空糸膜」とは、ポリスルホン系ポリマーを主たる原料として製膜した中空糸膜をいう。ここで「ポリスルホン系ポリマー」とは、その主鎖に芳香環、スルフォニル基及びエーテル基を有するポリマーをいう。
ポリスルホン系ポリマーとしては、例えば、一般式(I)で示されるポリスルホン、一般式(II)で示されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリアリルエーテルスルホン等が挙げられるが、一般式(I)で示されるポリスルホン又は一般式(II)で示されるポリスルホンが好ましく、中でもn数が50〜80であるものがより好ましい。なお、一般式(I)で示されるポリスルホン等と、他のモノマーとのブロック共重合体や、一般式(I)で示されるポリスルホン等の変性体もポリスルホン系ポリマーに包含される。一般式(I)で示されるポリスルホン等と、他のモノマーとのブロック共重合体における他のモノマー由来の構造は、ブロック共重合体全体に対して10質量%以下であることが好ましい。
より具体的なポリスルホンとしては、例えば、ユーデル(登録商標)ポリスルホンP−1700、P−3500(ソルベイ社製)、ウルトラソンS3010、S6010(BASF社)、ビクトレックス(住友化学株式会社)、レーデルA(ソルベイ社)、ウルトラソンE(BASF社)が挙げられる。
中空糸膜の血液製剤が接触する表面に親水性高分子を存在させる方法としては、例えば、製膜プロセスにおける中空糸膜の製膜原液や芯液に親水性高分子を添加する方法、又は、製膜後に親水性高分子をコーティングする方法が挙げられる。より具体的には、例えば、オリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒からポリスルホン系ポリマーを含む製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、乾式部を通過させた後、凝固溶液を入れた凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに温水洗浄をする製膜プロセスにおいて、上記の方法を用いることができる。
上記の製膜原液に含まれるポリスルホン系ポリマーの濃度は、10〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がより好ましい。ポリスルホン系ポリマーの濃度は、中空糸膜表面における開孔率に大きく影響するが、ポリスルホン系ポリマー濃度が高すぎると製膜プロセスにおいてポリスルホン系ポリマー同士の凝集力が強くなり、圧力上昇や開孔率の低下等の問題が生じる。一方で、ポリスルホン系ポリマー濃度が低すぎると開孔率は高くなるものの、中空糸膜の強度不足による糸切れが発生しかねない。
上記の製膜プロセスにおける芯液とは、ポリスルホン系ポリマーに対する良溶媒を含む溶液をいい、例えば、ジメチルアセトアミド(以下、「DMAc」)、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、グリセリン又はこれらの混合溶媒が挙げられる。紡糸安定性を増すために、芯液にPVP、ビニルピロリドンを含む共重合体、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はポリエチレンイミン等を添加しても構わない。
芯液の組成は、中空糸膜表面における開孔率、平均孔径、孔の形状、空隙長及び親水性高分子の存在率に大きく影響する。芯液に含まれる良溶媒の濃度を高めればポリスルホン系ポリマー同士の凝集を緩和でき、中空糸膜表面における開孔率が高い中空糸膜が得られる。芯液に親水性高分子を添加すれば親水性高分子を中空糸膜の内表面に局在化させることができるばかりでなく、親水性高分子が核となって相分離を誘発することから、中空糸膜の内表面における親水性高分子の存在率が高く、かつ、開孔率が高い中空糸膜が得られる。
上記の製膜プロセスにおける芯液温度は、血液製剤が接触する表面が内表面である場合には、製膜原液温度よりも5℃以上低いことが好ましく、10℃以上で低いことがより好ましい。製膜原液温度よりも芯液温度が低いことで、芯液拡散速度を緩和することができ、中空糸膜の内表面における開孔率及び親水性高分子の存在率を高めることが可能となる。一方で、血液製剤が接触する表面が外表面である場合には、芯液温度が製膜原液温度よりも高いことが好ましい。
上記の製膜プロセスにおける乾式部の露点温度は、特に中空糸膜の外表面に大きく影響するが、露点温度の管理によって製膜原液の相分離反応の制御が可能であり、例えば、中空糸膜の外表面に水分を供給して緻密層を形成することができる。血液製剤が接触する表面が内表面である場合には、露点20〜40℃に調湿されていることが好ましい。一方で、血液製剤が接触する表面が外表面である場合には、露点30〜50℃に調湿されていることが好ましい。
上記の製膜プロセスにおける乾式部の長さは、中空糸膜表面の孔の形成から凝固までの時間を決定するものであり、10〜250mmが好ましい。乾式部の長さが短すぎると、中空糸膜表面における平均孔径が小さくなる。一方で、乾式部の長さが短すぎると、製膜プロセスにおいて糸揺れが生じかねない。
上記の製膜プロセスにおける凝固溶液とは、ポリスルホン系ポリマーに対する貧溶媒をいい、例えば、アルコール、水又はグリセリンが挙げられるが、水が好ましい。
上記の製膜プロセスにおける凝固浴の温度は、30〜90℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。凝固浴の温度は、中空糸膜表面における平均孔径、脱溶媒速度、得られた中空糸膜の透水性能に大きく影響する。凝固浴の温度が低すぎると中空糸膜の外表面の孔径が小さくなり、透水性能が低下して親水性高分子が過剰に残存する。一方で、凝固浴温度が高すぎると、中空糸膜表面における開孔率が高くなり、血小板や赤血球と蛋白質との分離が困難になりかねない。なお、製膜原液の粘度は脱溶媒速度に影響するため、原液粘度によって凝固浴温度を適宜変更することが重要である。
上記の製膜プロセスにおける凝固浴には、水等の凝固溶液の他に、ポリスルホン系ポリマーに対する良溶媒を3〜10質量%の割合で添加することが好ましい。良溶媒を添加すれば、脱溶媒における芯液拡散速度を緩和でき、中空糸膜の両表面の空隙長の比を好適なものにすることが可能となる。良溶媒の濃度が低すぎると、中空糸膜の両表面の空隙長の比の制御が困難になる。一方で、良溶媒の濃度が高すぎると、親水性高分子の脱溶媒が過度に促進されかねない。
上記の製膜プロセスにおける温水洗浄とは、凝固浴に浸漬した後の中空糸膜を60℃以上の温水浴に1分以上浸漬することをいう。温水洗浄により、中空糸膜に残存する余分な溶媒及び親水性高分子が除去される。芯液に親水性高分子を添加した場合には、余分な親水性高分子の効果的な除去及び中空糸膜の透水性能の向上のために、温水洗浄後の中空糸膜を巻き取り、これを一定の長さに切断して小分けしてから追加の温水洗浄をすることが好ましい。より具体的には、温水洗浄後の中空糸膜を巻き取り、これを400mmに切断して小分けした中空糸膜束をガーゼで巻き、70℃以上の温水で1〜5時間追加の温水洗浄をすることが好ましい。90℃以上の温水で温水洗浄を行えば、中空糸膜に含浸していない余分な親水性高分子や、中空糸表面膜の孔を埋めていた親水性高分子が温水に溶出するため、これらを除去できる。温水が70℃未満であるか、温水洗浄の時間が1時間未満又であると、洗浄効果は不十分となり、中空糸膜から必要以上の親水性高分子が溶出しかねない。
上記の温水洗浄後の中空糸膜は湿潤状態であるが、このままでは中空糸膜の透水性能が不安定であることから、乾燥工程が必要となる。乾燥工程の温度は、水分を蒸発させることから100℃以上であることが好ましく、ポリスルホン系ポリマーのガラス転移点を超えないよう、180℃以下であることが好ましい。
本発明の血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜は、血液製剤が接触する表面における親水性高分子の存在率が40〜60質量%と高いため、親水性高分子の溶出を抑制することが重要である。親水性高分子の溶出を抑制するためには、得られた中空糸膜を加熱架橋及び放射線照射架橋に供することが有効である。
得られた中空糸膜を加熱する加熱架橋では、中空糸膜表面に存在する、親水性高分子同士が架橋される。親水性高分子同士を架橋させつつも分解反応が生じないよう、加熱架橋の温度は、120〜250℃が好ましく、130〜200℃がより好ましい。一また、加熱架橋の時間は、1〜10時間が好ましく、3〜8時間がより好ましい。
得られた中空糸膜に放射線を照射する放射線架橋では、親水性高分子と、ポリスルホン系ポリマーとが架橋される。架橋反応を進行させつつも分解反応が生じないよう、放射線架橋の照射線量は、5〜75kGyが好ましく、10〜50kGyがより好ましい。照射する放射線としては、α線、β線、X線、γ線又は電子線が用いられるが、なかでもγ線又は電子線が好ましい。なお、架橋反応を進行し易くするために、放射線架橋に供する中空糸膜に水を含ませることも好ましい。
また、製膜原液に添加する親水性高分子量を低減するために、製膜プロセスにより得られた中空糸膜の表面に親水性高分子をコーティングしたものを、加熱架橋又は放射線架橋に供することが好ましい。
製膜後の中空糸膜表面に親水性高分子をコーティングする方法としては、例えば、中空糸膜を、親水性高分子を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。親水性高分子を溶解する溶媒としては、水又はアルコール等が好ましい。溶液中における親水性高分子の濃度は、親水性高分子の種類によって適宜決定されるが、濃度が高すぎると溶出物が増加するため、10ppm〜1質量%が好ましく、100ppm〜0.5質量%がより好ましく、1000ppm〜0.5質量%がさらに好ましい。
ポリスルホン系中空糸膜の中空糸膜外径は、中空糸膜本数を増やすことなく一定の有効中空糸膜面積を大きくするために、300μm以上が好ましく、400μm以上がより好ましい。
上記の中空糸膜外径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の外径をレーザー変位計(LS5040T;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して求めた平均値をいう。なお、中空糸膜内径とは、ランダムに選別した16本の中空糸膜の膜厚をマイクロウォッチャーの1000倍レンズ(VH−Z100;株式会社KEYENCE)でそれぞれ測定して平均値aを求め、以下の式5により算出した値をいう。
中空糸膜内径(μm)=中空糸膜外径−2×膜厚・・・式5
本発明の血液製剤浄化用の中空糸膜モジュールは、本発明のポリスルホン系中空糸膜を備えることを特徴とする。
中空糸膜モジュールは、主として、筒状のケースと、そのケースに充填される中空糸膜とから構成される。筒状のケースの端面付近には、血液製剤を導入するための入口ポート、濾液を排出するための排出ポート、赤血球や血小板を回収するための回収ポートがそれぞれ設けられる。
血液製剤を内圧式濾過する場合には、入口ポート及び回収ポートはケースの両端面に、排出ポートはケース側面に設けられることが好ましい。
血液製剤を外圧式濾過する場合には、入口ポート及び回収ポートはケース側面に、排出ポートはケース端面に設けられることが好ましい。
入口ポート又は排出ポートがケース側面に設けられる場合には、各ポートは、ケース端面から端面長の20%までの範囲に設けられることが好ましく、10%までの範囲に設けられることがより好ましい。各ポートがケースの長手方向における中央付近に設けられた場合には、中空糸膜の有効長が低減し、濾過効率が低下しかねない。ここで端面長とは、ケースの長手方向における両端面の間の距離をいう。
中空糸膜は、U字形状等に折り曲げてケースに充填しても構わないが、中空糸膜を折り曲げた箇所が抵抗となって滞留が生じ、血小板が活性化され易くなることや、赤血球が溶血することから、中空糸膜は直線状のままケースに充填されることが好ましい。
ケースに充填された中空糸膜は、ケースの内壁との間にポッティング剤を注入することで、すなわちポッティングによって、ケースに接着固定される。ポッティングの位置としては、例えば、ケースの両端付近(2箇所)でのポッティングが挙げられる。
端面長が長ければ、中空糸膜表面への血小板及び赤血球の堆積の度合いは減少するが、端面長が長くなりすぎると、血小板や赤血球と中空糸膜表面との接触時間が長くなり、血小板が活性化したり、赤血球が溶血し易くなる。また、流路断面積が小さければ供給線速度は速くなり、血小板や赤血球が中空糸膜表面に堆積しづらくなるが、流路断面積が小さくなりすぎると、モジュール圧損が増大して血小板の活性化や赤血球の溶血につながりかねない。このため、端面長を流路断面積で除した値は、50〜200であること好ましく、70〜180であることがより好ましい。
なお、流路断面積とは、以下の式6(内圧式濾過の場合)又は式7(外圧式濾過の場合)により算出した値をいう。
流路断面積(cm)=(中空糸膜内径/2)×π×中空糸膜本数・・・式6
流路断面積(cm)=
π×{(ケース内径/2)−(中空糸膜内径/2)×中空糸膜本数}・・・式7
中空糸膜の充填率は、内圧式濾過の場合には10〜60%が好ましく、20〜50%であることがより好ましい。充填率が低すぎると、入口ポート付近で、血液製剤が滞留し、血小板が活性化したり、赤血球が溶血し易くなる。一方で、充填率が高すぎると、濾液が中空糸膜の外側に流れにくくなって蛋白質の除去効率が低下するばかりか、ポッティング剤が浸透せず、リークが生じかねない。
中空糸膜の充填率は、外圧式濾過の場合には20〜60%が好ましく、30〜55%がより好ましい。充填率が低くすぎると、血液製剤のショートパスや偏流が起こり、蛋白質の除去効率が低下する。一方で、充填率が高すぎると、血液製剤が中空糸膜に流れにくくなり、蛋白質の除去効率が低下する。
充填率は、以下の式8及び式9により算出される。
充填率(%)={π×(中空糸膜外径/2)×中空糸膜本数}/D・・・式8
D=π×(ケースの内径/2)・・・式9
中空糸膜モジュールに充填される中空糸膜を構成する中空糸本数は、その開孔率若しくは平均孔径又は血液製剤の処理量によって適宜決定されるが、血液製剤の処理量(mL)を血液製剤が接触する中空糸膜の表面積で除した値が、0.05〜0.3であることが好ましく、0.15〜0.28であることがより好ましい。この値が小さすぎると、血小板や赤血球と中空糸膜との接触面積が増えることで、血小板回収率の低下や赤血球の溶血につながりかねない。一方で、この値が大きすぎると、処理液量が多いことからモジュール圧損が増大して中空糸膜への目詰まりが生じかねない。
中空糸膜の表面積は、以下の式10により算出される。
中空糸膜の表面積(cm)=B×π×中空糸膜本数×C・・・式10
B: 中空糸膜内径(μm)/1000 (内圧式濾過の場合)
中空糸膜外径(μm)/1000 (外圧式濾過の場合)
C: 中空糸膜有効長(mm)/10
本発明の中空糸膜モジュールを血小板製剤浄化に用いる場合の供給液線速度は、1〜10cm/秒であることが好ましい。ここで、供給液線速度とは、以下の式11により算出される値をいう。
供給液線速度(cm/秒)=(E/t)/血小板製剤の流れる流路断面積・・・式11
E: 血小板製剤の処理量
t: 濾過時間
供給液線速度が高ければ、中空糸膜に堆積した血小板等の剥離効果が期待できるが、供給線速度が10cm/秒より高いと、血小板の活性化につながりかねない。
本発明の中空糸膜モジュールを用いて血小板製剤浄化をする方法としては、血小板以外の成分を濾過する濾過ステップと、濾過されなかった血小板を保存液で回収する回収ステップと、を備えること方法が挙げられる。ここで保存液とは、血小板に対して緩衝作用を有する溶液をいい、例えば、ACD液、PASIII−M、M−sol又は生理食塩水が挙げられる。
上記の濾過ステップにおいて、中空糸膜表面に積層したケーク層を効果的に剥離するためには、中空糸膜表面に負荷を与えるずり速度を、10〜2000秒−1の範囲とすることが好ましく、100〜1500秒−1の範囲とすることがより好ましく、400〜1200秒−1の範囲とすることがさら好ましい。ずり速度が低すぎると、積層したケーク層を剥離する効果が低くなり、中空糸膜表面に血小板が堆積して蛋白質の濾過困難になるばかりか、血小板も活性化されてしまう。一方で、ずり速度が高すぎると、血小板の活性化につながりかねない。
ここで、ずり速度とは、中空糸膜表面に対しずり応力を与えるための、血小板製剤の流動速度をいい、より具体的には、以下の式12〜式14により算出される値をいう。
ずり速度(1/秒)=4×F/G・・・式12
F: 供給液線速度(cm/秒)
G: 相当半径(中空糸膜内径の半径)(cm)
G=2×(H/I)・・・式13
H: 管路の断面積(cm
I: 管路断面の血小板製剤に接触する部分の長さ(浸辺長)(cm)
H=C−{π×(中空糸膜内径/2)×中空糸膜本数} ・・・式14
濾過ステップにおける濾過流量は、血小板製剤から除去される蛋白質の量及び血小板の活性化に大きく影響する。ここで濾過比率とは、濾過ステップにおける濾過流量を、中空糸膜に供給される血小板製剤量の流量で除した値をいう。濾過ステップにおける濾過比率は、0.2〜0.95が好ましく、0.5〜0.9がより好ましい。濾過比率が低すぎると蛋白質を十分に除去できず、一方で、濾過比率が高すぎると血小板が中空糸膜表面に強く押しつけられ、血小板同士が凝集しかねない。
血小板製剤、濾過ステップで得られた濾液並びに濾過ステップ及び回収ステップで得られた回収液のそれぞれに含まれる血小板数は、全自動血球測定器(Celltacα(MEC−6318);日本光電工業株式会社)により測定することができる。また、血小板回収率は、以下の式15により算出される。
血小板回収率(%)=(J+K)/L×100・・・式15
J: 濃縮液に含まれる血小板数
K: 回収液に含まれる血小板数
L: 血小板製剤に含まれる血小板数
濾過ステップ及び回収ステップによる血小板の活性化を示す指標として、CD62P陽性率の増加率が挙げられる。CD62Pは、血小板内の分泌顆粒膜に内在する分子量140kDaの糖蛋白質である。血小板が外部からの刺激等で活性化されると、CD62Pが血小板の細胞膜表面に移行して発現するため、CD62P陽性となった血小板の割合が、血小板の活性化の度合いを示す指標となる。
CD62P陽性率は、フローサイトメーターを用いて、以下の測定により測定することができる。被測定試料に活性化非依存性の血小板特異マーカーに対する抗体であるCD61抗体及びマウスIgGを加えたサンプル(以下、「サンプルA」)と、被測定試料にCD61抗体及びCD62P抗体を加えたサンプル(以下、「サンプルB」)と、をそれぞれ用意する。サンプルAを用いて、フローサイトメーターで散乱光パターンによる血小板ゲートに加えて、CD61の蛍光標識を用いて、血小板をゲートする。次に、血小板用マウスIgGの蛍光標識を用いて、血小板の0.5±0.1%が超過するように、抗体と反応した血小板をゲートする。この時のゲートを固定したまま、サンプルAをサンプルBに置き変えて同様の測定を行い、固定化されたゲートを超過した血小板数の割合から、CD62P陽性率を決定する。なお、CD62P陽性率の増加率は、以下の式16により算出される。
CD62P活性の増加率(%)=M/N×100・・・式16
M: 濃縮液と回収液との混合液のCD62P活性
N: 血小板製剤のCD62P活性
また、血小板製剤の品質を簡便かつ短時間に把握できる有用な方法として、スワーリング検査が挙げられる。ここでスワーリングとは、血小板製剤の容器を光にかざしてゆっくりと撹拌すると、渦巻き状のパターンが見られる現象をいう。活性化されていない血小板の形態は円盤状であることから、撹拌によって円盤状血小板が光を一様に屈折させて光散乱現象が生じ、スワーリングが観察される。一方で、活性化により血小板の形態が変化すると、光散乱現象は生じず、スワーリングは低下し消失する。
血小板製剤、濾過ステップで得られた濾液並びに濾過ステップ及び回収ステップで得られた回収液のそれぞれに含まれる蛋白質の濃度は、総蛋白質の定量法により測定することができる。総蛋白質の定量法としては、発色法が一般的である。発色法は、蛋白質と発色色素との化学結合を利用したBradford法等と、蛋白質存在下で生じる還元銅イオンのキレート錯体を利用したBCA法等に大別されるが、定量精度の観点からBCA法が好ましい。
BCA法による蛋白質濃度の測定には、市販のBCAキットが利用できる。まず、BCA試薬と検量線用サンプルを調製する。キットの仕様に従って検量線用サンプル及び被測定試料に対してBCA試薬を加え、室温で30分間、ミクロミキサーを用いて撹拌する。その後37℃で30分間インキュベートするが、発色が十分に進んでいればこの操作は省いても構わない。処理後の被測定試料を室温に戻してから、波長562±20nmにおける吸光度を測定する。検量線サンプルから作成した、蛋白質濃度と吸光度の検量線に基づいて、被測定試料の蛋白質濃度を求めることができる。なお、蛋白質除去率は、以下の式17により算出される。
蛋白質除去率(%)=(O−P)×100/O・・・式17
O: 血小板製剤の蛋白質濃度
P: 濃縮液と回収液との混合液の蛋白質濃度
さらに本発明の中空糸膜モジュールを赤血球剤浄化に用いる場合の供給液線速度は、0.05〜0.5cm/秒であることが好ましい。ここで、供給液線速度とは、以下の式18により算出される値をいう。
供給液線速度(cm/秒)=
(Q/t)/赤血球製剤の流れる流路断面積・・・式18
Q: 赤血球製剤の処理量
t: 濾過時間
供給液線速度が高ければ、中空糸膜に堆積した赤血球等の剥離効果が期待できるが、供給線速度が0.5cm/秒より高いと、赤血球の溶血につながりかねない。
本発明の中空糸膜モジュールを用いて赤血球製剤浄化をする方法としては、赤血球以外の成分を濾過する濾過ステップと、濾過されなかった赤血球を保存液で回収する回収ステップと、を備えること方法が挙げられる。ここで保存液とは、赤血球に対して緩衝作用を有する溶液をいい、例えば、MAP液又は生理食塩水が挙げられる。
上記の濾過ステップにおいて、中空糸膜表面に積層したケーク層を効果的に剥離するためには、中空糸膜表面に負荷を与えるずり速度を、5〜200秒−1の範囲とすることが好ましく、10〜100秒−1の範囲とすることがより好ましく、15〜80秒−1の範囲とすることがさら好ましい。ずり速度が低すぎると、積層したケーク層を剥離する効果が低くなり、中空糸膜表面に赤血球が堆積して蛋白質の濾過困難になる。一方で、ずり速度が高すぎると、赤血球の溶血、濾過時の圧力上昇につながりかねない。
ここで、ずり速度とは、中空糸膜表面に対しずり応力を与えるための、赤血球製剤の流動速度をいい、より具体的には、赤血球製剤と同様に、以下の式19〜式21により算出される値をいう。
ずり速度(1/秒)=4×R/U・・・式19
R: 供給液線速度(cm/秒)
U: 相当半径(中空糸膜内径の半径)(cm)
U=2×(V/W)・・・式20
V: 管路の断面積(cm
W: 管路断面の赤血球製剤に接触する部分の長さ(浸辺長)(cm)
V=C−{π×(中空糸膜内径/2)×中空糸膜本数} ・・・式21
濾過ステップにおける濾過流量は、赤血球製剤から除去される蛋白質の量及び赤血球の溶血に大きく影響する。ここで濾過比率とは、濾過ステップにおける濾過流量を、中空糸膜に供給される赤血球製剤量の流量で除した値をいう。濾過ステップにおける濾過比率は、0.1〜0.95が好ましく、0.5〜0.9がより好ましい。濾過比率が低すぎると蛋白質を十分に除去できず、一方で、濾過比率が高すぎると赤血球が中空糸膜表面に強く押しつけられ、赤血球が溶血しかねない。
赤血球製剤、濾過ステップで得られた濾液並びに濾過ステップ及び回収ステップで得られた回収液のそれぞれに含まれる赤血球数は、全自動血球測定器(Celltacα(MEC−6318);日本光電工業株式会社)により測定することができる。また、赤血球回収率は、以下の式22により算出される。
赤血球回収率(%)=(X+Y)/Z×100・・・式22
X: 濃縮液に含まれる赤血球数
Y: 回収液に含まれる赤血球数
Z: 赤血球製剤に含まれる赤血球数
赤血球製剤の品質を簡便かつ短時間に把握できる有用な方法として、溶血率が挙げられる。ここで溶血とは、赤血球の細胞膜が、物理的または化学的、生物学的など様々な要因によって損傷し、原形質が細胞外に漏出し、赤血球が破壊される現象を言う。この溶血を表す指標として溶血率を用いる。
溶血率は、吸光光度計を用いて、以下の測定により測定することができる。赤血球製剤10mlに0.2mlのウサギ脱繊維血を加えて、37℃で1時間インキュベーションする。750gで遠心分離した後の上澄み液について、576nmにおける吸光度を測定する。陰性対照として、生理食塩水10ml、陽性対照として注射用水10mlに0.2mlのウサギ脱繊維血を加えて同様に吸光度を測定し、以下の式23により算出される。なお、溶血率は赤血球製剤の状態を表すため、40%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
溶血率(%)=(AA−AB)/(AC−AB)×100・・・式23
AA: 赤血球製剤吸光度
AB: 陰性対照吸光度
AC: 陽性対照吸光度
赤血球製剤、濾過ステップで得られた濾液並びに濾過ステップ及び回収ステップで得られた回収液のそれぞれに含まれる蛋白質の濃度は、総蛋白質の定量法により測定することができる。総蛋白質の定量法としては、発色法が一般的である。発色法は、蛋白質と発色色素との化学結合を利用したBradford法等と、蛋白質存在下で生じる還元銅イオンのキレート錯体を利用したBCA法等に大別されるが、定量精度の観点からBCA法が好ましい。
BCA法による蛋白質濃度の測定には、市販のBCAキットが利用できる。まず、BCA試薬と検量線用サンプルを調製する。キットの仕様に従って検量線用サンプル及び被測定試料に対してBCA試薬を加え、室温で30分間、ミクロミキサーを用いて撹拌する。その後37℃で30分間インキュベートするが、発色が十分に進んでいればこの操作は省いても構わない。処理後の被測定試料を室温に戻してから、波長562±20nmにおける吸光度を測定する。検量線サンプルから作成した、蛋白質濃度と吸光度の検量線に基づいて、被測定試料の蛋白質濃度を求めることができる。なお、蛋白質除去率は、以下の式24により算出される。
蛋白質回収率(%)=(AD−AE)×100/AD・・・式24
AD: 赤血球製剤の蛋白質濃度
AE: ろ液側の蛋白質濃度
以下、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
15部のユーデル(登録商標)ポリスルホン(P3500;ソルベイ社)、8部のPVP(K90;ISP社)、75部のDMAC及び2部の水からなる混合物を、90℃で混合溶解した後に、50℃に保温したものを製膜原液とした。また、80部のDMAC及び20部の水からなる混合溶液に、30部のPVP(K30;ISP社)を加え混合溶解したものを芯液とした。
外径1.0mm/内径0.7mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ80mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のDMACからなる混合溶液を入れた90℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温水浴で温水洗浄してからカセ枠に巻き取り、湿潤状態の中空糸膜を得た。なお、製膜速度を40m/分としたところ、中空糸膜内径は300μm、中空糸膜の膜厚は80μmとなった。
得られた湿潤状態の中空糸膜を0.4mの長さに切断して小分けし、90℃の温水浴に30分間浸漬して温水洗浄した後、100℃で10時間の乾燥処理を行い、さらに乾熱乾燥機により170℃で5時間の加熱架橋処理を行って、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜から、以下のようにして中空糸膜モジュールを作製した。まず、φ18×310mmのサイズの円筒状のケースであって、排出ポートがケース端面から21mmの箇所、すなわちケース端面から端面長に対して7%の箇所に設けられたプラスチックモジュールに、上記製膜操作により得られた528本の中空糸膜の束を挿入し、これを60質量%グリセリン水溶液に浸漬した後に、50℃で一昼夜乾燥した。続いて、遠心器にセットしたプラスチックモジュールの両端にウレタン樹脂すなわちポッティング剤5mLを2つのノズルからそれぞれ注入し、60G/15分で回転させた(1度目のポッティング)。その15分後に、さらにプラスチックモジュールの両端にポッティング剤10mLをそれぞれ注入し、再び60G/15分で回転させて(2度目のポッティング)、中空糸膜モジュールを作製した。なお、入口ポートを一方の端面に、回収ポートを他方の端面に設けた。
作製した中空糸膜モジュールの充填率は34.5%、中空糸膜面積は1433cm、中空糸膜内径断面積は0.373cmであった。
作製した中空糸膜モジュールの内部に、0.1質量%のエタノールを溶解したVA64 1000ppm水溶液を充填し、中空糸膜モジュールの外側からγ線25kGyを照射して放射線照射架橋処理をした。
放射線照射架橋処理後の中空糸膜の透水性能は75mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は9.69%、内表面における孔の平均孔径は0.55μm、内表面における親水性高分子の存在率は54.2%、内表面におけるエステル基由来の炭素のピーク面積百分率は0.5原子数%であった。また、内表面側の空隙長は1.1μm、外表面側の空隙長は0.5μmであり、内表面側の空隙長は外表面側の空隙長の2.2倍であった。内表面における孔の真円度は、0.4であった。
作製した中空糸膜モジュールを用いて、血小板製剤の浄化を行った。具体的には、まず、746.2mLのSalacet F(テルモ)に、52.2mLのMeylon(大塚製薬)、テルモ社製126.8mLのACD−A液(テルモ)、1mEq/mLの硫酸Mg補正液(大塚製薬)及び71.6mL蒸留水(大塚製薬)を加え、血小板保存液であるM−solを調整した。また、浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。
200mLの血小板製剤(10単位)について、62.5mL/minに設定した血流ポンプを用いて、内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は50mL/min、濾過比率は0.8、ずり速度は744秒−1であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、40mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。濃縮液と回収液との混合液を、置換血小板製剤とした。この置換血小板製剤についての蛋白質除去率は、72%であった。
得られた置換血小板製剤を、同一の中空糸膜モジュールに62.5mL/minで流し、再び内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は56.3mL/min、濾過比率は0.9であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、20mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。濃縮液と回収液との混合液を、洗浄血小板製剤とした。この洗浄血小板製剤についての蛋白質除去率は95%であり、血小板回収率は80%であり、CD62Pの増加率は1.4であった。また、得られた洗浄血小板製剤についてスワーリング検査を実施したところ、スワーリングが観察された。
(実施例2)
実施例1と同等の方法で、中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの内部に、0.1質量%のエタノールを溶解したPVPK90 1000ppm水溶液を充填し、中空糸膜モジュールの外側からγ線25kGyを照射して放射線照射架橋処理をした。
放射線架橋処理後の中空糸膜の透水性能は50mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は8.5%、内表面における孔の平均孔径は0.50μm、内表面における親水性高分子の存在率は48%であった。また、内表面側の空隙長は1.1μm、外表面側の空隙長は0.5μmであり、内表面側の空隙長は外表面側の空隙長の2.2倍であった。
浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。200mLの血小板製剤(10単位)について、62.5mL/minに設定した血液ポンプを用いて、内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は50mL/min、濾過比率は0.8、ずり速度は744秒−1であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、40mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。濃縮液と回収液との混合液を、置換血小板製剤とした。この置換血小板製剤についての蛋白質除去率は、72%除去であった。
得られた置換血小板製剤を、同一の中空糸膜モジュールに62.5mL/minで流し、再び内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は56.3mL/min、濾過比率は0.9であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、20mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/min流し手回収ステップを行い、回収液を200mLに得た。濃縮液と回収液との混合液を、洗浄血小板製剤とした。この洗浄血小板製剤についての蛋白質除去率は92%、血小板回収率は82%、CD62Pの増加率は1.5であった。また、得られた洗浄血小板製剤についてスワーリング検査を実施したところ、スワーリングが観察された。
(実施例3)
実施例1と同等の方法で、中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの内部に、0.1質量%のエタノールを溶解させたVA64 1000ppm水溶液を充填し、中空糸膜モジュールの外側からγ線25kGyを照射して放射線照射架橋処理をした。
放射線架橋処理後の中空糸膜の透水性能は60mL/hr/Pa/m、外表面における開孔率は14.6%、外表面における孔の平均孔径は0.7μm、外表面における親水性高分子の存在率は44.8%、外表面におけるエステル基由来の炭素のピーク面積百分率は0.8原子%であった。また、内表面側の空隙長は0.6μm、外表面側の空隙長は1.2μmであり、外表面側の空隙長は内表面側の空隙長の2.0倍であった。外表面における孔の形状は、繊維同士が絡み合った様なフィブリル構造であったため、外表面における孔の真円度は測定できなかった。外表面における孔の形状を撮影した電子顕微鏡写真を、図5に示す。
浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。200mLの血小板製剤(10単位)について、9.8mL/minに設定した血液ポンプを用いて、外圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は6.7mL/min、濾過比率は0.7、ずり速度は11秒−1であった。濾過ステップで中空糸膜の外側を通過した濃縮液は、40mLであった。その後、M−solを中空糸膜外側に9.8mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mLに得た。濃縮液と回収液との混合液を、置換血小板製剤とした。この置換血小板製剤についての蛋白質除去率は、58%であった。
得られた置換血小板製剤を、同一の中空糸膜モジュールに9.8mL/minで流し、再び外圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は7.8mL/minであり、濾過比率は0.8であった。その後、M−solを中空糸膜外側に9.8mL/min流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。濃縮液と回収液との混合液を、洗浄血小板製剤とした。この洗浄血小板製剤についての蛋白質除去率は80%、血小板回収率は75%、CD62Pの増加率は1.9であった。また、得られた洗浄血小板製剤についてスワーリング検査を実施したところ、スワーリングが観察できた。
(実施例4)
実施例1と同様の方法で、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜から、以下のようにして中空糸膜モジュールを作製した。まず、φ30×270mmのサイズの円筒状のケースであって、排出ポートがケース端面から21mmの箇所、すなわちケース端面から端面長に対して7%の箇所に設けられたプラスチックモジュールに、上記製膜操作により得られた1200本の中空糸膜の束を挿入し、これを60質量%グリセリン水溶液に浸漬した後に、50℃で一昼夜乾燥した。続いて遠心器にセットしたプラスチックモジュールの両端にウレタン樹脂すなわちポッティング剤10mLを2つのノズルからそれぞれ注入し、60G/15分で回転させた(1度目のポッティング)。その15分後に、さらにプラスチックモジュールの両端にポッティング剤10mLをそれぞれ注入し、再び60G/15分で回転させて(2度目のポッティング)、中空糸膜モジュールを作製した。なお、入口ポートを一方の端面に、回収ポートを他方の端面に設けた。
作製した中空糸膜モジュールの充填率は28.2%、中空糸膜面積は1433cm、中空糸膜内径断面積は0.373cmであった。
作製した中空糸膜モジュールの内部に、0.1質量%のエタノールを溶解したVA64 1000ppm水溶液を充填し、中空糸膜モジュールの外側からγ線25kGyを照射して放射線照射架橋処理をした。
放射線照射架橋処理後の中空糸膜の透水性能は75mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は9.69%、内表面における孔の平均孔径は0.55μm、内表面における親水性高分子の存在率は54.2%、内表面におけるエステル基由来の炭素のピーク面積百分率は0.5原子数%であった。また、内表面側の空隙長は1.1μm、外表面側の空隙長は0.5μmであり、内表面側の空隙長は外表面側の空隙長の2.2倍であった。内表面における孔の真円度は、0.4であった。
作製した中空糸膜モジュールを用いて、赤血球製剤の浄化を行った。具体的には、405mLの赤血球製剤について、12mL/minに設定した血流ポンプを用いて、内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は11mL/min、濾過比率は0.9、ずり速度は62秒−1であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、146mLであった。その後、生理食塩水を中空糸膜内側に12mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。この処理を行って得られた蛋白質回収率は87%であった。溶血率は0.05%であった。
(比較例1)
実施例1と同等の方法で、中空糸膜モジュールを作製した。なお、放射線架橋処理は行わなかった。
中空糸膜の透水性能は90mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は10.2%、内表面における孔の平均孔径は0.55μm、内表面における親水性高分子の存在率は35%であった。また、内表面側の空隙長は1.0μm、外表面側の空隙長は0.6μmであり、内表面側の空隙長は外表面側の空隙長の1.6倍であった。
浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。200mLの血小板製剤(10単位)について、62.5mL/minに設定した血液ポンプを用いて、内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は50mL/min、濾過比率は0.8、ずり速度は744秒−1であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、40mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/minで流し、回収液を200mL得た。
得られた濃縮液と回収液の混合液を、同一の中空糸膜モジュールに62.5mL/minで流し、再び内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は56.3mL/min、濾過比率は0.9であった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/min流し、回収液を200mLに得た。濃縮液と回収液との混合液を、置換血小板製剤とした。この置換血小板製剤についての蛋白質除去率は76%、血小板回収率は68%、CD62Pの増加率は2.1であった。
(比較例2)
18部のユーデル(登録商標)ポリスルホン(P3500;ソルベイ社)、3部のPVP(K90;ISP社)、6部のPVP(K30;ISP社)、72部のDMAC及び1部の水からなる混合物を、90℃で混合溶解した後に、50℃に保温したものを製膜原液とした。また、80部のDMAC及び20部の水からなる混合溶液を芯液とした。
外径1.0mm/内径0.7mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ80mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のDMACからなる混合溶液を入れた90℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温水浴で温水洗浄してからカセ枠に巻き取り、湿潤状態の中空糸膜を得た。なお、製膜速度を30m/分としたところ、中空糸膜内径は400μm、中空糸膜の膜厚は100μmとなった。
得られた湿潤状態の中空糸膜を0.4mの長さに切断して小分けし、90℃の温水浴に30分間浸漬して温水洗浄した後、100℃で10時間の乾燥処理を行い、さらに乾熱乾燥機により170℃で5時間の熱架橋処理を行って、中空糸膜を得た。
上記製膜操作により得られた400本の中空糸膜の束を挿入した以外は、実施例1と同様に血小板製剤用中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの内部に、0.1質量%のエタノールを溶解させたVA64 1000ppm水溶液を充填し、中空糸膜モジュールの外側からγ線25kGyを照射して放射線架橋処理をした。
放射線架橋処理後の中空糸膜モジュールの充填率は44.4%、中空糸膜面積は1447cm、中空糸膜内径断面積は0.503cmであった。
放射線架橋処理後の中空糸膜の透水性能は15mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は4%、内表面における孔の平均孔径は0.5μm、内表面における親水性高分子の存在率は42%であった。また、内表面側の空隙長は0.1μm、外表面側の空隙長は0.6μmであり、内表面側に緻密層が存在した。
浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。200mLの血小板製剤(10単位)について、62.5mL/minに設定した血液ポンプを用いて、内圧式濾過を行った。濾過流量は50mL/min、濾過比率は0.8であった。濾過ステップで中空糸膜の内側を通過した濃縮液は、80mLであった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/minで流して回収ステップを行い、回収液を200mL得た。
得られた濃縮液と回収液の混合液を、同一の中空糸膜モジュールに62.5mL/minで流し、再び内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は56.3mL/min、濾過比率は0.9であった。その後、M−solを中空糸膜内側に62.5mL/min流し、回収液を200mL得た。得られた濃縮液と回収液の混合液についての蛋白質除去率は52%、血小板回収率は53%、CD62Pの増加率は4.2であった。また、得られた混合液についてスワーリング検査を実施したところスワーリングは観察されなかった。
(比較例3)
16部のユーデル(登録商標)ポリスルホン(P3500;ソルベイ社)、2部のPVP(K90;ISP社)、4部のPVP(K30;ISP社)77部のDMAC及び1部の水からなる混合物を、90℃で混合溶解した後に、50℃に保温したものを製膜原液とした。また、70部のDMAC及び30部の水からなる混合溶液を芯液とした。
外径1.0mm/内径0.7mmのオリフィス型二重円筒型口金を用いて、外側の筒から製膜原液を、内側の筒から芯液を、それぞれ同時に吐出し、30℃に設定した長さ250mmの乾式部を通過させた後、90部の水及び10部のDMACからなる混合溶液を入れた90℃の凝固浴に浸漬して凝固させ、さらに80℃の温水浴で温水洗浄してからカセ枠に巻き取り、湿潤状態の中空糸膜を得た。なお、製膜速度を30m/分としたところ、中空糸膜内径は50μm、中空糸膜の膜厚は300μmとなった。
得られた湿潤状態の中空糸膜を0.4mの長さに切断して小分けし、90℃の温水浴に30分間浸漬して温水洗浄した後、100℃で10時間の乾燥処理を行い、さらに乾熱乾燥機により170℃で5時間の加熱架橋処理を行って、中空糸膜を得た。
上記製膜操作により得られた800本の中空糸膜の束を挿入した以外は、実施例1と同様に血小板製剤用中空糸膜モジュールを作製した。
作製した中空糸膜モジュールの充填率は39.5%、中空糸膜面積は2171cm、中空糸膜内径断面積は0.565cmであった。なお、放射線架橋処理は行わなかった。
中空糸膜の透水性能は30mL/hr/Pa/m、内表面における開孔率は2.8%、内表面における孔の平均孔径は0.39μm、内表面における親水性高分子の存在率は34%であった。また、内表面側の空隙長は0.9μm、外表面側の空隙長は0.3μmであり、内表面側の空隙長は外表面側の空隙長の3倍であった。
浄化の対象である血小板製剤中の血小板数、血小板製剤のCD62P活性を予め測定しておいた。200mLの血小板製剤(10単位)について、62.5mL/minに設定した血液ポンプを用いて、内圧式濾過による濾過ステップを行った。濾過流量は50mL/min、濾過比率としては0.8であった。濾過ステップ中に、中空糸膜の内側を通過した濃縮液中に血小板の凝集塊が確認されたため、血液ポンプを停止し、濾過ステップを中止した。
本発明は、医療分野において赤血球製剤や血小板製剤を含む血液製剤浄化用の中空糸膜モジュールとして用いることができる。
11,12,21,22・・・直線

Claims (12)

  1. 血液製剤が接触する表面に親水性高分子を有し、
    前記親水性高分子の存在率が、40〜60質量%であり、
    前記表面における開孔率が、8〜30%である、血液製剤浄化用のポリスルホン系中空糸膜。
  2. 透水性能が、20mL/hr/Pa/m以上である、請求項1記載のポリスルホン系中空糸膜。
  3. 前記表面における孔の真円度が、1以下である、請求項1又は2記載のポリスルホン系中空糸膜。
  4. 血小板製剤浄化用である、請求項1〜3のいずれか一項記載のポリスルホン系中空糸膜。
  5. 前記表面におけるエステル基由来の炭素の存在率が、0.1〜10原子数%である、請求項1〜4のいずれか一項記載のポリスルホン系中空糸膜。
  6. 前記表面は、内表面である、請求項1〜5のいずれか一項記載のポリスルホン系中空糸膜。
  7. 前記表面側の空隙長Xが、前記表面の反対表面側の空隙長Yよりも大きい、請求項1〜6のいずれか一項記載のポリスルホン系中空糸膜。
  8. 前記空隙長Xを前記空隙長Yで除した値が、1.1以上である、請求項7記載のポリスルホン系中空糸膜。
  9. 前記空隙長Xが、0.1〜4.0μmである、請求項7又は8記載のポリスルホン系中空糸膜。
  10. 請求項1〜9記載のポリスルホン系中空糸膜を備える、血液製剤浄化用の中空糸膜モジュール。
  11. 端面長を流路断面積で除した値が、50以上200未満である、請求項10記載の中空糸膜モジュール。
  12. 血液製剤の処理量を、中空糸膜の血液製剤が接触する表面の表面積で除した値が、0.05〜0.3である、請求項10又は11記載の中空糸膜モジュール。
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