JPWO2013035299A1 - 発光装置および光シート - Google Patents
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Abstract
本願に開示された発光装置は、発光層と、回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、発光層から出射する光の中心波長はλであり、回折格子の周期pは、1.0λ以上3.5λ以下であり、前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する。
Description
本願は、シートおよびこれを含む発光装置に関する。
近年、発光効率の高い発光装置の1つとして有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子が注目されている。図1は、一般的な有機EL素子の断面構造を模式的に示している。従来の有機EL素子は、基板1上に電極2、発光層3、透明電極4および透明基板5が積層された構造を備えている。透明基板5は空気層6に接している。電極2と透明電極4との間に電圧を印加することによって発光層3の内部の点Sで発光体が発光する。発生した光は一部がそのまま空気層6の方向に伝播し、一部は電極2において反射した後に空気層6の方向に伝播する。高屈折率の媒質から低屈折率の媒質に光が伝播するとき、光の入射角度が臨界角を越えると全反射が起きる。このため、空気層6に達するまでに、全反射することなく伝播した光のみが、有機EL素子の外部へ出射する。発光層3と空気層6の屈折率をそれぞれnk、n0とすると、臨界角θcは下記式(1)で示される。
θc=sin-1(n0/nk) (1)
θc=sin-1(n0/nk) (1)
従って、図1に示す有機EL素子において、素子の外部に取り出すことができる光は、点Sにおいて発光し、空気層6と透明基板5との界面に臨界角θcよりも小さい角度で入射する光に限られる。点Sからの発光が等方的で、光の干渉効果を無視し、屈折面での透過率が臨界角以内の入射角では100%であると仮定すれば、光を取り出すことのできる割合(光取り出し効率)ηは1−cosθcで表される。例えば、発光層3の屈折率が1.7である場合、取り出し効率ηは20%に満たない。このように、有機EL素子では一般的に光の利用効率が高くない。
光取り出し効率を上げるために、発光層3や透明電極4の厚さを光の波長オーダーで調整することによって、光の干渉効果を利用し、光を効率よく取り出す手法が検討されている。しかし、干渉の効果は、発生する光の伝播する方向に依存するために、全ての方向の光を効率よく取り出せるわけではない。このため、この方法で取り出し効率を100%にするのは不可能である。また、光の干渉は波長に依存するために、発光波長域内のすべての波長の光を効率よく取り出すことは難しい。このため、白色の有機EL素子の場合、見る角度によって輝度や色が変化する輝度むら、色むらが発生する原因になる。
このような有機EL素子から、より効率的に光を取り出す技術として、例えば特許文献1に開示されている技術がある。
特許文献1は、基板界面あるいは反射面に回折格子を形成し、全反射が起きる界面に対する光の入射角を変化させることにより、光の取り出し効率を向上させた有機EL素子を開示している。
しかし、特許文献1の有機EL素子では、光が回折格子構造を通過する際の回折効率と回折角度が、光の波長と入射角度に依存する。このため、有機EL素子から出射する光の強度が見る角度に対して変化する(輝度むら)。また、発光体が白色の光を発生する場合、見る角度に対して色が変化する(色むら)。さらに、素子が発光していない場合にも、回折格子構造の光の反射率、反射角度が波長に依存することから、有機EL素子の色が見る角度によって変化し、外観を悪くする。
本願の、限定的ではない例示的なある実施形態は、輝度むらおよび色むらを抑制し、光取り出し効率が向上させることのできる光シートおよび発光装置を提供する。
本発明の一態様である発光装置は、発光層と、回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、前記発光層から出射する光の中心波長はλであり、前記回折格子の周期pは1.0λ以上3.5λ以下であり、前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する。
本発明の一態様にかかる発光装置によれば、回折格子構造および拡散層を備えているため、光取り出し効率が向上し、かつ、輝度むらおよび色むらを効果的に抑制することができる。
本発明の一態様の概要は以下のとおりである。
本発明の一態様である発光装置は、発光層と、回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、前記発光層から出射する光の中心波長はλであり、前記回折格子の周期pは、1.0λ以上3.5λ以下であり、前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する。
前記回折格子構造は前記拡散層および前記発光層の間に位置していてもよい。
前記拡散層は空気と接していてもよい。
発光装置は保護層をさらに備え、前記拡散層は前記保護層および前記回折格子構造の間に位置しており、前記保護層は空気と接していてもよい。
発光装置は、前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、前記第1の電極は拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、前記回折格子構造は前記発光層の前記第1電極と接する界面に設けられていてもよい。
前記拡散層は前記回折格子構造および前記発光層の間に位置していてもよい。
発光装置は、前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、前記第1の電極は前記拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、前記第2の電極は、前記発光層から出射する光を反射してもよい。
前記発光層は前記拡散層と前記回折格子構造の間に位置していてもよい。
発光装置は、前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、前記第1の電極は拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、前記回折格子構造は前記発光層の前記第2電極と接する界面に設けられていてもよい。
本発明の他の一態様であるシートは、回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、前記発光層から出射する光の中心波長はλであり、前記回折格子の周期pは、1.0λ以上3.5λ以下であり、前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する。
(第1の実施形態)
図2は、本発明による発光装置の第1の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置101は、基板1上に設けられた電極2と、電極2上に位置する発光層3と、発光層3上に位置する電極4と、電極4上に位置する層51と、層51上に位置する回折格子構造71と、回折格子構造71上に位置する層52と、層52上に位置する拡散層72とを備える。
図2は、本発明による発光装置の第1の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置101は、基板1上に設けられた電極2と、電極2上に位置する発光層3と、発光層3上に位置する電極4と、電極4上に位置する層51と、層51上に位置する回折格子構造71と、回折格子構造71上に位置する層52と、層52上に位置する拡散層72とを備える。
本実施形態は、色むらの抑制に効果があるため、白色光を出射する発光層3を用いた場合に特に顕著な効果を得ることができる。このような発光層3を用いた発光装置としては、例えば有機EL素子を用いた発光装置が挙げられる。有機ELの場合、高い発光効率を得るために、発光層3の部分を複数の層で構成する場合があるが、以下の説明ではこのような複数の層をまとめて発光層3と表現することとする。
電極2と電極4とは、発光層3に電気的に接続されるように、発光層3に接触し、発光層3を挟んでいてもよい。電極2は発光層3から出射する光に対して透明であってもよい。基板1側から光を取り出さない場合には、電極2は発光層3から出射する光に対して不透明であってよい。
基板1は、電極2及び電極4に挟まれた発光層3を支持する。基板1の材料に特に制限はなく、ガラス等、公知の支持基板を基板1として用いることができる。
本実施形態では、発光層3から出射した光は、回折格子構造71を透過し、さらに、拡散層72を透過した後、発光装置101の外部である空気層6へ出射する。層51、層52はそれぞれの層を挟む2つの層の接着のため、保護のため、平坦性を確保するため等の目的で適宜用いられる。層51、層52は、発光層3から出射する光に対して透明であってもよい。これらの層はなくてもよいし、また、層51、52をそれぞれ2つ以上備えていてもよい。つまり、本実施形態では、回折格子構造71が拡散層72および発光層3の間に位置し、拡散層72から空気層6へ光が出射する構造であればよい。
回折格子構造71は、本実施形態ではシート形状を有している。回折格子構造71は、2次元に回折格子が形成された構造を有している。図3(a)から(e)は、2次元に配置された回折格子の例を示している。これらの図において、白く示される領域と黒く示される領域とで所定の光路長差が形成される限り、回折格子構造71は種々の構造によって構成されていてよい。たとえば、白く示される領域および黒く示される領域の一方が空気であり他方がガラス等によって構成されなど、材料の屈折率差によって光学段差が形成されていてもよいし、白く示される領域およびは黒く示される領域の両方が同じ光学材料によって構成されているが、高さ(厚さ)が異なることにより光学段差が形成されていてもよい。
拡散層72は、一方の面から他方の面へ透過する光を屈折により拡散させる構造を有し、公知の拡散板を用いることができる。
本実施形態の発光装置101は、回折格子構造71および拡散層72を組み合わせることによって、これら単体では得られることができない効果を発揮する。以下、まず、回折格子構造71および拡散層72単体の光学的特性を説明し、発光装置101の特性を説明する。なお、以下において説明する検討において行った計算では、発光層から出た光のうち、媒質が異なる界面における反射や全反射した光については無視し、透過した光のみを扱った。
1.回折格子構造の特徴
回折格子構造71として、特許文献1に開示された回折格子の特性を検討した結果を説明する。図4示すように、周期pの回折格子を有する回折格子構造71が屈折率n51である層51および屈折率n52である層52に挟まれた構造において、層51から回折格子構造71に光が角度θで入射する場合について考える。このとき、層52では式(2)を満たす角度θmの方向にm次(mは整数)の回折光が生じる。
n52sinθm−n51sinθ=mλ/p (2)
回折格子構造71として、特許文献1に開示された回折格子の特性を検討した結果を説明する。図4示すように、周期pの回折格子を有する回折格子構造71が屈折率n51である層51および屈折率n52である層52に挟まれた構造において、層51から回折格子構造71に光が角度θで入射する場合について考える。このとき、層52では式(2)を満たす角度θmの方向にm次(mは整数)の回折光が生じる。
n52sinθm−n51sinθ=mλ/p (2)
この回折により、層52で臨界角を越える角度を持った光でも、回折格子を通過した後に臨界角以内の角度の回折光となり、空気層6へ出射することができるようになる。層51が存在せず回折格子構造71が直接空気層6に接している場合でも、式(2)において、n52=1のときにθmが解を持てば、同様の理由から臨界角以上の光の取り出しが可能になる。
回折格子構造71の特性を調べるために、回折格子構造71に対して垂直に光を入射し透過した光の放射パターンを測定する実験を行った。図5(b)および(c)は、回折格子構造71の断面および平面構造を示している。回折格子構造71は、xy方向に二次元的に形成された回折格子を備える。格子の周期pは2.0μmであり、厚さhは0.6μmである。図5(c)に示すように、黒く塗りつぶした領域はガラスによって構成され、屈折率は1.47である。また、白く示される領域の屈折率は1.78である。入射したレーザーの波長はλ=633nmである。図5(a)に透過光の放射パターンを示す。回折格子構造71は四角格子によって構成されるため、4つの回折パターンが検出された。これらの回折パターンから、式(2)を満たす方向θmに光が回折していることが確認できる。
2.拡散層の特徴
上述したように、拡散層72は、屈折により一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる。一般に、公知の光を拡散させる構造としては、大きく2つに分類される。
上述したように、拡散層72は、屈折により一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる。一般に、公知の光を拡散させる構造としては、大きく2つに分類される。
ひとつは、光の波長に対して十分大きい(例えば、波長の5倍以上の大きさを有する)構造を光が通過することによる「屈折現象」を主に利用した構造である。具体的には、プリズム構造や、10μm程度の粒子を構造表面又は内部に分散させた構造などが挙げられる。
もうひとつは、光の波長程度の大きさを有する構造を光が通過することによる「回折現象」を主に利用した構造である。具体的には、波長程度の周期で規則的な屈折率分布を有する回折格子や、波長程度の微小なランダムパターン(特開2009−217292号公報に開示された構造)などが挙げられる。
本実施形態および以下の実施形態において、拡散層は、前者の光の「屈折現象」を利用して光を拡散させる構造を有している。
拡散層72には、たとえば、液晶表示装置のバックライト等の用途として市販されている拡散シートを用いることできる。拡散層72は、正面から光を入射したときの全光線透過率(JIS K7361−1)と、光の拡散度合いを示す指標であるヘーズ(JIS K7136, ISO 14782)でその性質を規定することができる。図6に拡散構造を有する各種拡散シートの全光線透過率とヘーズ値を示す。このように、種々の全光線透過率とヘーズ値との組みあわせを有する拡散シートが存在する。
3.回折格子構造71および拡散層72の光取り出しの特性
回折格子構造71および拡散層72の光取り出しの特性について行った実験結果を説明する。実験に用いた回折格子構造71は、図5(b)、(c)に示す構造を備えている。回折格子の単位となる正方形の形状の一辺は0.6μmであり、周期pは1.2μmである。拡散層72には、図6に示すシート14を用いた。
回折格子構造71および拡散層72の光取り出しの特性について行った実験結果を説明する。実験に用いた回折格子構造71は、図5(b)、(c)に示す構造を備えている。回折格子の単位となる正方形の形状の一辺は0.6μmであり、周期pは1.2μmである。拡散層72には、図6に示すシート14を用いた。
図7(a)に示すように、層51に半円柱プリズム8を取り付けた構造(以下、平面構造と呼ぶ)、回折格子構造71に層51を介して半円柱プリズム8を取り付けた構造(回折格子構造)、および、拡散層72に層51を介して半円柱プリズム8を取り付けた構造(拡散構造)を作成した。そして、これらの構造に、波長633nmのレーザーを垂直線に対する角度θが0度から80度までで変化させて入射させた。回折格子構造71については、図5(c)に示すy軸に垂直な平面(0度方向)および、その平面をy軸方向に45度傾けた平面(45度方向)において測定を行った。これらの構造を透過した光の透過率を入射角度に対してプロットしたグラフを図7(b)に示す。
平面構造では42度付近に臨界角が存在し、それ以上の角度で光を入射させたときには光が透過しないのに対して、回折格子構造や拡散構造では臨界角以上の光でも透過していることが分かる。拡散構造の場合は、透過率が角度に対してなめらかに変化するのに対して、回折格子では透過率が急峻に変化していることが分かる。
次に、回折格子構造や拡散層を面光源に用いた計算結果を説明する。図8(a)に示すように、図2に示す本実施形態の発光装置101から拡散層72を取り除いた構造における配光分布を計算した。回折格子構造71は図5(b)、(c)を参照して説明した構造を備え、周期pは1μmであり高さhは0.6μmである。また、層51における配光分布は等方的である、つまり、どの角度に対しても同じ強度の光が存在すると仮定し、その光の波長は565nmとした。
図8(b)に、回折格子構造71と層52を通過して、空気層6に出てくる光の配光分布を極座標表示したものを示す。この結果から、取り出される光の強度は、回折格子構造71がない場合に比べて、ある場合の方が大きいことが分かる。しかし、急激に強度が強くなる角度が存在する。これは、見る角度によって輝度が変化する輝度むらが生じていることを意味している。また、式(2)の回折条件は波長に依存することから、このピークの位置も透過する光の波長に依存する。よって、白色の有機ELを用いた場合には、角度によって色が変化する色むらも生じることを意味している。このような特性は、式(2)で表わされる光の回折によって生じる。したがって、回折格子構造71を空気層に直接接するように配置した場合にも同様の特性を示す。
次に、拡散構造を面光源に用いた計算結果を説明する。図9(a)に示すように、図2に示す本実施形態の発光装置101から回折格子構造71および層52を取り除いた構造における配光分布を計算した。拡散層72には、ヘーズ85%、全光線透過率75%ものを使用した。その他の条件は、回折格子構造の配光分布の測定と同様の条件に従った。
図9(b)に拡散層72を透過し、空気層6に出てくる光の配光分布を極座標表示したものを示す。拡散層72がない場合の分布に比べて、取り出される光の強度が上がっていることが分かる。また、回折格子を用いたときとは異なり、配光分布を示す曲線はなめらかであり、輝度むらが発生しないことが分かる。ただし、拡散層72の透過率が75%であるため、拡散層72を設けない場合に比べて、全透過光量はあまり増加しない。
以上の結果から、発光装置に回折格子構造71を設ければ、角度によっては、透過光の光量は増大するが、色むらおよび輝度むらが生じる。また、発光装置に拡散層72を設ければ、均一な配光分布が得られるが、全透過光量は大幅には増加しない。これに対し、本実施形態の発光装置101によれば、優れた配光分布でかつ光の取り出し効率を増大させることができる。
以下、本実施形態の発光装置101の光学的特性を、実験結果を参照しながら説明する。図10(a)および(b)は、本実施形態の発光装置101において、回折格子構造71の周期と光取り出し効率および色差との関係をそれぞれ示している。色差は、CIE表示系における(u’,v’)を測定し、視野角に対する(u’v’)の最大変化量Δu’v’をプロットした。つまり、Δu’v’の値が大きい程、見る角度によって色が大きく変化する(色むらが大きくなる)ことになる。
比較のため、上述した拡散層72のみまたは回折格子構造71のみを備えた構造の測定結果も示している。回折格子構造71は図5(b)および(c)に示す構造を有している。また、拡散層72には、図6におけるシート14(図10(a))及びシート7(図10(b))を用いた。なお、シート14は、シート1から15の中でシート単体として最も取り出し効率が高くなるものである。シート7は、シート1から15の中でシート単体として最も色差Δu’v’が小さくなるものである。詳細は後述する。
発光層3から出射する光の中心波長は、565nmである。中心波長は、スペクトルにおいてその波長よりも大きな波長を持つ光の強度の合計と、その波長よりも小さな波長を持つ光の強度の合計が等しくなるように定義した。取り出し効率は、取り出し構造がない有機EL素子の効率を1とした値をプロットした。
図10(a)に示すように、本実施形態の発光装置101によれば、測定した0.3μmから12μmまでのすべての回折格子の周期において、回折格子構造のみを有する構造に比べて光の取り出し効率が向上している。特に、周期が0.55μm以上2μm以下の範囲では、回折格子構造のみ、あるいは拡散シートのみを有する構造において得られる最も高い取り出し効率を超える取り出し効率が得られることが分かる。
また図10(b)に示すように、色差Δu’v’は、回折格子構造のみを有する構造に比べ、特に回折格子の周期が小さい範囲において、大幅に改善している。より具体的には、回折格子構造のみを有する構造または、周期が0.3μm以上12μm以下の全ての範囲において色差Δu’v’が小さくなっている。さらに、回折格子の周期が0.55μm以上2μm以下であれば、回折格子構造のみ、あるいは拡散シートのみを有する構造において得られる最も小さい色差よりも小さな色差を得ることができる。
これらの結果から、本実施形態の発光装置101のように拡散層72及び回折格子構造71を備えた発光装置の場合、光取り出し構造として回折格子構造のみを有する発光装置と比較すると、回折格子の周期が0.3μm以上12μm以下の全ての場合において、取り出し効率及び色差の改善が見られる。また、回折格子の周期が0.55μm以上2μm以下であれば、拡散シートのみを有する発光装置と比較しても光取り出し効率および色差の改善が見られる。
上記の実験は、中心波長が565nmの発光装置において行った。発光波長が異なる場合、それに比例するように回折格子の周期の条件を変えることで、同じ特性を得ることができる。即ち、発光層3から出射する光の中心波長をλとした場合、回折格子の周期が0.5(0.3/0.565)λ以上21(12/0.565)λ以下が好ましく、1.0(0.55/0.565)λ以上3.5(2/0.565)λ以下であることがより好ましいことを示している。
回折格子の回折効率は、回折格子構造71の高さおよび屈折率差に比例する。このため、回折効率を高めるという点では、回折格子構造の高さおよび屈折率差は大きい方が好ましい。一方、回折格子の周期パターンは、回折光の方位方向にのみ影響するので、取り出し効率あまり影響しない。ただし、方位角方向における色差も低減するためには、回折光が多く生じる周期パターンが好ましく、6個の回折光が生じる三角格子であることが好ましい。
図11および図12は、種々のヘーズおよび透過率の拡散層72を用いた場合における取り出し効率および色差Δu’v’の値を示している。
それぞれの図において、左端のデータは、拡散層72および回折格子構造71を含まない構造および拡散層72を含まず、回折格子構造71のみを含む構造を用いた測定結果を示している。回折格子の周期は1.2μm、高さは1.0μmであり、回折格子における屈折率差は0.32(1.46と1.78)あでる。
図11、図12に示すように、全てのシートにおいて、回折格子構造71を含まない構造よりも取り出し効率及び色差が改善している。さらに、シート6からシート15においては、拡散層72を含まない構造よりも取り出し効率および色差が大幅に改善している。これらのシートのヘーズ値は、図6に示すように、80%以上の値である。したがって、取り出し効率の向上および色差の低減のために拡散層72のヘーズは大きい方が好ましいことが分かる。一方、全光線透過率がシート6から15と比較して高い値であるシート1から5を有する本構成は、シート6から15に比べて取り出し効率の向上および色差の低減効果は小さい。特に、シート5は80%を超えるヘーズを有しているにも関わらず、シート5を有する本構成の取り出し効率は拡散層72を備えない構造とほぼ同じであり、色差も十分小さくない。これは、取り出し効率の向上および色差の低減のためには、ヘーズ値が80%以上の値であるだけでなく、全光線透過率が比較的小さいことが好ましいことを示している。
シート5を有する発光装置の拡散光を詳細に検討した結果、その広がり角度は、他のシートに比べて小さいことがわかった。つまり、本実施形態で用いる拡散層72は高いヘーズを有し、かつ、大きな拡散の広がり角度を有していることが重要である。大きな拡散の広がり角度を有するシートは、拡散によって反射成分も増えるため、全光線透過率が必然的に低下してしまう。このため、常識に反し、全光線透過率は大きくない方が好ましいといえる。上述の結果から、拡散層72は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有していることが好ましい。なお、当然のことながら、シートが吸収性の材質で作られていることによって全光線透過率が低い場合には、上記のような効果は得られない。
図13および図14は、輝度と色差の角度依存性を示している。図13および図14から、本実施形態の発光装置は、いずれの角度から見た場合でも輝度が高く、また色差も小さいことが分かる。さらに、角度に対する光取り出し効率および色差の変化がなめらかであり、輝度むらおよび色むらが効果的に抑制されていることが分かる。
このように本実施形態の発光装置によれば、回折格子構造および拡散層を備えているため、光取り出し効率が向上し、かつ、輝度むらおよび色むらを効果的に抑制することができる。
(第2の実施形態)
図15は、本発明による発光装置の第2の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置103は、拡散層72上に位置する層53をさらに備え、層53が空気層6としている点で第1の実施形態と異なる。層53はたとえば、拡散層72を外部から保護するための保護層である。
図15は、本発明による発光装置の第2の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置103は、拡散層72上に位置する層53をさらに備え、層53が空気層6としている点で第1の実施形態と異なる。層53はたとえば、拡散層72を外部から保護するための保護層である。
拡散層72の光を拡散させる構造が拡散層72の内部にある場合、実質的に層53も存在しているのと同等である。
したがって、層53をさらに備える場合であっても、実施的には拡散層72と層53とが一体化した拡散層とみなすことができる。層53において光が吸収される可能性があり、これにより、数%程のロスが生じることを除けば、本実施形態の発光装置は第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
(第3の実施形態)
図16は、本発明による発光装置の第3の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置104は、回折格子構造71と拡散層72との位置が入れ替わっている点、電極2が反射性を有する点で第1の実施形態と異なる。
図16は、本発明による発光装置の第3の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置104は、回折格子構造71と拡散層72との位置が入れ替わっている点、電極2が反射性を有する点で第1の実施形態と異なる。
回折格子構造71と拡散層72との位置が入れ替わっているため、本実施形態では、拡散層72が回折格子構造71と発光層3との間に位置している。また、電極2が発光層3から出射する光を反射する構造を備えている。
このため、発光装置104によれば回折格子構造71や拡散層72によって、発光層3側に反射した光を電極2によって再度拡散層72側へ反射させ、外部へ出射させることができる。この場合、回折格子構造71において反射した光は、拡散層72を2回透過するため、より配光分布の偏りが緩和される。よって、第1の実施形態に比べ、より配光むらおよび色むらが抑制された発光装置が実現する。
(第4の実施形態)
図17は、本発明による発光装置の第4の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置105は、回折格子構造71が発光層3と電極4との界面に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
図17は、本発明による発光装置の第4の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置105は、回折格子構造71が発光層3と電極4との界面に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
上述したように回折格子構造72は、周期的な光路長差が設けられた構造であるため、発光層3の電極4との界面や、電極4の発光層3との界面に形成することができる。より具体的には、発光層3の表面や電極4の表面を周期的にエッチングし、発光層3や電極4と異なる屈折率を有する物質で埋め込むことによって回折格子構造72を形成することができる。あるいは、陽極酸化ポーラスアルミナ等の微細パターンを有するマスクを用いて、発光層3や4を周期的なパターンで形成することも可能である。
このような構造によれば、回折格子構造72を有する層を別途設ける必要がないため、そのような層における光の吸収を抑制することができたり、発光装置全体の厚さを小さくすることができる。
(第5の実施形態)
図18は、本発明による発光装置の第5の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置106は、回折格子構造71が発光層3と電極2との界面に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
図18は、本発明による発光装置の第5の実施形態の断面構造を模式的に示している。発光装置106は、回折格子構造71が発光層3と電極2との界面に設けられている点で第1の実施形態と異なる。
この場合、発光層3で発生した光のうち、電極2方向へ向う光を回折する効果がある。電極2上に形成された回折格子構造71に角度θで入射した光は、θm方向に回折される。その条件は以下の式(3)で表すことができる。
n3(sinθm−sinθ)=mλ/p (3)
n3(sinθm−sinθ)=mλ/p (3)
これは式(2)と同じであり、上記第1から第4の実施形態と同様の効果を奏する。また、発光層3より上側にある層により反射した光を再度回折し、外部へ出射させることもできるため、効果的な光取り出しが可能となる。
本発明は上記実施形態に限られず、種々の変形が可能である。たとえば、第1から第5の実施形態では、回折格子構造71および拡散層72はそれぞれ1つであったが、2つ以上発光装置が含んでいてもよい。回折格子構造71を2つ以上含む場合、積層方向にも回折格子を構成し、全体として3次元の回折格子構造を実現してもよい。また、第1から第5の実施形態を組み合わせてもよい。
さらに回折格子構造や拡散層の垂直な断面形状は矩形形状に限らず、台形や円錐形状であってもよく、斜面が曲線になってもよい。実際に、切削や半導体プロセス等でミクロンオーダーの構造を加工する場合、角の部分に斜面や曲線ができる。これらの要因により、上述の実施形態において説明したような回折格子やランダム構造の性質が失われない限り、それらの形状は本発明の実施形態に含まれる。
また、上記実施形態では、本発明を発光装置として説明したが、上記説明から明らかなように、本発明の構造は種々の面発光素子に適用可能であり、種々の面発光素子と組み合わせ可能な光シートとして本発明を実施してもよい。
本願に開示された発光装置および光シートは種々の発光装置に好適に用いられ、面発光装置、たとえば、有機EL素子に好適に用いることができる。
1 基板
2 電極
3 発光層
4 電極
6 空気層
51、52、53 層
71 回折格子構造
72 拡散層
2 電極
3 発光層
4 電極
6 空気層
51、52、53 層
71 回折格子構造
72 拡散層
Claims (10)
- 発光層と、回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、
前記発光層から出射する光の中心波長はλであり、
前記回折格子の周期pは、1.0λ以上3.5λ以下であり、
前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する、発光装置。 - 前記回折格子構造は前記拡散層および前記発光層の間に位置している、請求項1に記載の発光装置。
- 前記拡散層は空気と接している、請求項2に記載の発光装置。
- 保護層をさらに備え、
前記拡散層は前記保護層および前記回折格子構造の間に位置しており、前記保護層は空気と接している請求項2に記載の発光装置。 - 前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、
前記第1の電極は拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、
前記回折格子構造は前記発光層の前記第1電極と接する界面に設けられている請求項2から4のいずれかに記載の発光装置。 - 前記拡散層は前記回折格子構造および前記発光層の間に位置している、請求項1から5のいずれかに記載の発光装置。
- 前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、
前記第1の電極は前記拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、
前記第2の電極は、前記発光層から出射する光を反射する請求項6に記載の発光装置。 - 前記発光層は前記拡散層と前記回折格子構造の間に位置している、請求項1に記載の発光装置。
- 前記発光層に接しており、前記発光層を挟む第1及び第2の電極をさらに備え、
前記第1の電極は拡散層と前記発光層に挟まれており、前記発光層から出射する光に対して透明であり、
前記回折格子構造は前記発光層の前記第2電極と接する界面に設けられている請求項8に記載の発光装置。 - 回折格子を含む回折格子構造と、一方の面から他方の面へ透過する光を拡散させる構造を有する拡散層を備え、
前記発光層から出射する光の中心波長はλであり、
前記回折格子の周期pは、1.0λ以上3.5λ以下であり、
前記拡散層は、80%以上のヘーズおよび80%以下の全光線透過率を有する、シート。
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