JPWO2013008724A1 - 複層ガラスとその製造方法 - Google Patents
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Abstract
室内外の温度差等に基づく応力を低減することによって、長期信頼性を高めることを可能にした複層ガラスを提供する。複層ガラス1は、所定の間隙を持って配置されて第1のガラス板2と第2のガラス板3とを具備する。第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙は、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる封着層4により真空封止されている。第1および第2のガラス板2、3は低膨張ガラスからなる。
Description
本発明は、複層ガラスとその製造方法に関する。
断熱性能の高い板ガラスとして、2枚のガラス板の間隙を気密封止した複層ガラス、さらには2枚のガラス板の間隙を真空状態で気密封止(真空封止)した複層ガラス(真空複層ガラスとも呼ばれる。)が知られている。真空封止した複層ガラスは、例えば2枚のガラス板を対向配置し、これら2枚のガラス板間を低融点ガラスで封着した構造を有している(特許文献1、2参照)。特許文献1には、低融点ガラスを介して積層した2枚のガラス板を、焼成炉を用いて加熱して低融点ガラスを溶融した後、常温まで冷却して低融点ガラスを固化させることにより封着層(シール部)を形成することが記載されている。
特許文献2には、低融点ガラス層を介して2枚のガラス板を積層した後、低融点ガラス層に沿ってレーザ光を照射することによって、低融点ガラス層を局所的に加熱・溶融して封着層を形成することが記載されている。特許文献3においては、低融点ガラス層へのレーザ光の照射を大気雰囲気下で実施して封着層を形成した後、一方のガラス板に設けられた貫通孔を介して真空排気することによって、2枚のガラス板間の内部空間を真空状態としている。貫通孔は内部空間を真空排気した後に封止される。
レーザ光による局所加熱を適用した封着工程は、焼成炉による加熱に比べて、エネルギー消費量が少ない、製造工数や製造コストを削減できる等の利点を有するものの、低融点ガラスを局所的に急熱・急冷するプロセスであるため、低融点ガラスの溶融固化層からなる封着層とガラス板との接着界面やその近傍に残留応力が生じやすいという問題がある。複層ガラスを家屋やビル等の建物の窓ガラスに適用する場合、複層ガラスには室内外の温度差が付加されることになる。この際に、封着層やその近傍に残留応力が生じていると、室内外の温度差やそれに基づく複層ガラスの反り等によって、ガラス板と封着層との接着界面や封着層にクラックや割れ等が発生しやすくなる。
上述したように、複層ガラスの封着にレーザ光による局所加熱を適用した場合、急熱・急冷プロセスに起因して残留応力が生じやすく、これにより複層ガラスの信頼性を長期間にわたって維持することが難しいという問題がある。すなわち、複層ガラスにはレーザ封着時に封着層やその近傍に生じる残留応力に加えて、室内外の温度差等に基づく複層ガラスを構成する部材の膨張や収縮による応力が経時的に付加されるため、ガラス板と封着層との接着界面や封着層にクラックや割れ等が生じやすい。このようなクラックや割れ等を抑制するために、室内外の温度差等に基づく応力を低減し、複層ガラスの長期信頼性を高めることが求められている。
本発明の目的は、室内外の温度差等に基づく応力を低減することによって、長期信頼性を高めることを可能にした複層ガラスとその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、「室内外の温度差等に基づく応力」は、封止後の複層ガラスの反り量と関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の態様に係る複層ガラスは、第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板と、前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域を備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス板上に所定の間隙を持って配置された、低膨張ガラスからなる第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙を真空封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる封着層とを具備することを特徴としている。
本発明の他の態様に係る複層ガラスは、第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板と、前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域を備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス板上に所定の間隙を持って配置された、低膨張ガラスからなる第2のガラス板と、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙を真空封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成された封着層とを具備し、高温側に配置される前記第1のガラス板の板厚をT1、低温側に配置される前記第2のガラス板の板厚をT2としたとき、前記第2のガラス板の板厚T2はT2<T1の条件を満足することを特徴としている。
本発明の態様に係る複層ガラスの製造方法は、第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板を用意する工程と、前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域と、前記第2の封止領域上に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を焼成した材料からなる封着材料層とを備える第2の表面を有し、低膨張ガラスからなる第2のガラス板を用意する工程と、前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記封着材料層を介して前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを積層する工程と、真空雰囲気下にて前記第1または第2のガラス板を通してレーザ光を前記封着材料層に照射し、前記封着材料層を溶融および固化させて前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間隙を真空封止する封着層を形成する工程とを具備することを特徴としている。
本発明の他の態様に係る複層ガラスの製造方法は、第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板を用意する工程と、前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域と、前記第2の封止領域上に形成され、封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層と、前記第2の封止領域上の第1の封着材料層より内周側に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を焼成した材料からなる第2の封着材料層とを備える第2の表面を有し、低膨張ガラスからなる第2のガラス板を用意する工程と、前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記第1および第2の封着材料層を介して前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを積層する工程と、真空雰囲気下にて前記第1の封着材料層を硬化させ、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間隙を真空封止する第1の封着層を形成する工程と、大気雰囲気下にて前記第1または第2のガラス板を通してレーザ光を前記第2の封着材料層に照射し、前記第2の封着材料層を溶融および固化させて第2の封着層を形成する工程とを具備することを特徴としている。
本発明の複層ガラスは、第1および第2のガラス板に低膨張ガラスを適用しているため、室内外の温度差のような複層ガラスの内外の温度差等に基づく応力を低減できる。従って、長期信頼性に優れる複層ガラスを提供できる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態による複層ガラスの構成を示す断面図である。図2は第1の実施形態による複層ガラスの製造工程を示す断面図である。図3ないし図6は複層ガラスの製造工程で用いる第1および第2のガラス板の構成を示す図である。
これらの図に示す複層ガラス1は、第1の表面2aを有する第1のガラス板2と、第2の表面3aを有する第2のガラス板3とを具備している。第1のガラス板2と第2のガラス板3とは、第1の表面2aと第2の表面3aとが対向するように、所定の間隙をもって積層されている。第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙は、ガラス板2、3の外周領域(封止領域)に設けられた封着層4により真空状態で気密封止(真空封止)されている。すなわち、複層ガラス1の内部空間5は所定の真空状態に保持されている。
封着層4は、封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる。封着用ガラス材料は、後述するようにレーザ吸収能を有していることが好ましい。封着層4は、そのようなレーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を焼成した層にレーザ光を局所的に照射し、封着用ガラス材料を溶融および固化させて形成した材料層であることが好ましい。第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙には、所望の間隙を維持するための複数のスペーサ6が配置されている。スペーサ6は、例えば第1のガラス板2の表面2aに固着されている。また、第2のガラス板3の表面3aには、低放射率膜7が形成されている。
第1の実施形態の複層ガラス1の構成を以下に詳述する。第1のガラス板2の表面2aの外周領域には、図3および図4に示すように、第1の封止領域8が設けられている。第2のガラス板3の表面3aの外周領域には、図5および図6に示すように、第1の封止領域8に対応する第2の封止領域9が設けられている。第1および第2の封止領域8、9は封着層4の形成領域(すなわち、第1の封止領域8については封着材料層の形成領域)となる。封着層4は、第1のガラス板2の封止領域8に形成された封着材料層10をレーザ光で溶融させて、第2のガラス板3の封止領域9に固着させた溶融固化層からなる。
すなわち、複層ガラス1の作製に用いられる第1のガラス板2の封止領域8には、図3および図4に示すように、枠状の封着材料層10が形成されている。第1のガラス板2の封止領域8に形成された封着材料層10を、レーザ光の熱で第2のガラス板3の封止領域9に溶融して固着させることによって、第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙(すなわち、内部空間5の間隔)を真空封止する封着層4が形成される。封着材料層10は、封着用ガラス材料を焼成して形成した材料層からなる。
なお、図1においては、第1のガラス板が下側に、第2のガラス板が上側に位置する複層ガラスについて説明しているが、図1の複層ガラスの上下を反転させ、上側のガラス板を第1のガラス板、下側のガラス板を第2のガラス板をしても同様である。また、図7の複層ガラスにおいてもこのことは同様である。
なお、図1においては、第1のガラス板が下側に、第2のガラス板が上側に位置する複層ガラスについて説明しているが、図1の複層ガラスの上下を反転させ、上側のガラス板を第1のガラス板、下側のガラス板を第2のガラス板をしても同様である。また、図7の複層ガラスにおいてもこのことは同様である。
封着用ガラス材料は、必須成分として低融点ガラスからなる封着ガラス(ガラスフリット)を含んでおり、また任意成分としてレーザ吸収材や低膨張充填材等の無機充填材を含んでいる。封着用ガラス材料は、これら以外の他の添加材を必要に応じて含有していてもよい。他の添加材としては、レーザ吸収材および低膨張充填材以外の無機充填材が挙げられる。ただし、他の添加材は焼成の際に消失する成分を除くものとする。
封着用ガラス材料の組合せや配合量等は、ガラス板2、3との相性等を考慮して選定される。封着用ガラス材料中の封着ガラスの含有量は50〜100体積%が好ましい。任意成分である無機充填材の含有量は0〜50体積%が好ましい。封着ガラスの含有量が50体積%未満であると、封着時の封着用ガラス材料の流動性が低下し、良好に封着できないおそれがある。封着ガラスの含有量は60体積%以上がより好ましい。上限値は特に限定されないが、ガラス板2、3に対する熱膨張係数の調整等を考慮して97体積%以下、さらに90体積%以下が好ましい。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、特段の定めがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用され、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
封着ガラスには、例えばビスマス系ガラス、錫−リン酸系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス、シリカホウ酸アルカリガラス等の低融点ガラスが用いられる。これらのうち、ガラス板2、3に対する封着性(接着性)やその信頼性(接着信頼性や気密封止性)、さらには環境や人体に対する影響性等を考慮して、ビスマス系ガラスからなる封着ガラスが好ましい。
封着ガラスとしてのビスマス系ガラスは、下記酸化物換算の質量割合で70〜90%のBi2O3、1〜20%のZnO、および2〜12%のB2O3を含有する組成(基本的には合計量を100%とする)が好ましい。Bi2O3、ZnO、およびB2O3の3成分で形成されるガラスは、透明でガラス転移点が低い等の特性を有することから、封着用ガラス材料の主成分(必須成分)としての封着ガラスに好適である。
上述した3成分で形成されるビスマス系ガラスにおいて、Bi2O3はガラスの網目を形成する成分であり、封着ガラス中に70〜90質量%の範囲で含有させることが好ましい。Bi2O3の含有量が70質量%未満であると封着ガラスの軟化温度が高くなる。Bi2O3の含有量が90質量%を超えるとガラス化しにくくなり、ガラスの製造が困難になると共に、熱膨張係数が高くなりすぎる傾向がある。封着温度等を考慮して、Bi2O3の含有量は78〜87質量%の範囲がより好ましい。
ZnOは熱膨張係数や軟化温度を下げる成分であり、封着ガラス中に1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。ZnOの含有量が1質量%未満であるとガラス化が困難になる。ZnOの含有量が20質量%を超えると封着ガラス成形時の安定性が低下し、失透が発生しやすくなって、ガラスが得られないおそれがある。ガラス製造の安定性等を考慮して、ZnOの含有量は7〜12質量%の範囲がより好ましい。
B2O3はガラス骨格を形成してガラス化が可能になる範囲を広げる成分であり、封着ガラス中に2〜12質量%の範囲で含有させることが好ましい。B2O3の含有量が2質量%未満であるとガラス化が困難になる。B2O3の含有量が12質量%を超えると軟化点が高くなる。ガラスの安定性や封着温度等を考慮して、B2O3の含有量は5〜10質量%の範囲がより好ましい。
上述した3成分で形成されるビスマス系ガラスはガラス転移点が低く、封着ガラスに適したものであるが、Al2O3、CeO2、SiO2、Ag2O、WO3、MoO3、Nb2O3、Ta2O5、Ga2O3、Sb2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、CaO、SrO、BaO、P2O5、SnOx(xは1または2である)等の任意成分を含有していてもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、ガラス転移点や軟化点が上昇するおそれがあるため、任意成分の合計含有量は10質量%以下が好ましい。任意成分の合計含有量の下限値は特に限定されるものではなく、添加内容に基づいて有効量の任意成分を配合できる。
上記した任意成分のうち、Al2O3、SiO2、CaO、SrO、BaO等は、ガラスの安定化に寄与する成分であり、その含有量は0〜7質量%の範囲が好ましい。中でも、Al2O3やBaOは優れているので、0.1〜7質量%の範囲で第4成分として含有させることもできる。Li2O、Na2O、K2O、Cs2O等は、ガラスの軟化温度を下げる効果を有し、CeO2はガラスの流動性を安定化させる効果を有する。Ag2O、WO3、MoO3、Nb2O3、Ta2O5、Ga2O3、Sb2O3、P2O5、SnOx等は、ガラスの粘性や熱膨張係数等を調整する成分として含有させることができる。これら各成分の含有量は任意成分の合計含有量が10質量%を超えない範囲内で適宜に設定できる。
封着用ガラス材料に任意成分として配合される無機充填材のうち、低膨張充填材は、ガラス板2、3と封着層4との熱膨張係数を近似させるものである。一般的に、封着ガラスの熱膨張係数は、ガラス板2、3のそれより大きいため、熱膨張率を調整するために低膨張充填材が用いられる。低膨張充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージェライト、ユークリプタイト、スポジュメン、リン酸ジルコニウム系化合物、酸化錫系化合物、および石英固溶体からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。リン酸ジルコニウム系化合物としては、(ZrO)2P2O7、NaZr2(PO4)3、KZr2(PO4)3、Ca0.5Zr2(PO4)3、NbZr(PO4)3、Zr2(WO3)(PO4)2、これらの複合化合物が挙げられる。
低膨張充填材の含有量は、封着用ガラス材料の溶融固化層である封着層4の熱膨張率がガラス板2、3の熱膨張率に近づくように適宜に設定される。低膨張充填材は、封着ガラスやガラス板2、3の熱膨張係数にもよるが、封着用ガラス材料に対して0〜50体積%の範囲で含有させることが好ましい。低膨張充填材の含有量が50体積%を超えると、封着用ガラス材料の流動性が低下して接着強度が低下するおそれがある。低膨張充填材の含有量の下限値は特に限定されるものではなく、封着ガラスやガラス板2、3の熱膨張係数に応じて適宜に設定される。低膨張充填材の含有量の好ましい下限値は3体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上である。
レーザ吸収材は、封着用ガラス材料にレーザ光を照射して加熱する際に、封着用ガラス材料によるレーザ光の吸収能を高める充填材である。なお、封着ガラス自体がレーザ吸収能を有する場合には、レーザ吸収材を添加しなくてもよい。レーザ吸収材としては、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、およびCuからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属(合金も含む)、または前記金属の少なくとも1種の金属を含む酸化物、Ni−Mn−Fe−Co−O、Co−Cr−Fe−O、Cu−Cr−Mn−O等の化合物の少なくとも1種が用いられる。レーザ吸収材はこれら以外の顔料であってもよい。封着用ガラス材料におけるレーザ吸収材の含有量は0.1〜40体積%の範囲が好ましい。レーザ吸収材の含有量が40体積%を超えると封着用ガラス材料の溶融時の流動性が低下し、良好に封着を行うことができないおそれがある。レーザ吸収材の含有量は25体積%以下がより好ましく、さらに好ましくは20体積%以下である。
第1の実施形態による複層ガラス1において、第1および第2のガラス板2、3は低膨張ガラスからなる。第1および第2のガラス板2、3を構成する低膨張ガラスは、55×10−7/℃以下の熱膨張係数(0〜300℃の温度範囲における熱膨張係数。以下同様である。)が好ましい。このような低膨張ガラスとしては、例えばホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリアルミノケイ酸ガラス、石英ガラス、および結晶化ガラスからなる群より選ばれる1種が挙げられる。第1のガラス板2と第2のガラス板3とは、同種または異種の低膨張ガラスからなるものである。
第1および第2のガラス板2、3を低膨張ガラスで構成することによって、複層ガラス1を家屋やビル等の建物の窓ガラスに適用した際の室内外の温度差のような複層ガラス1の内外における温度差に基づいて発生する応力を低減できる。第1のガラス板2を高温側(例えば、寒冷地での室内側、また夏季において温度が上がる温暖地での室外側)に配置し、第2のガラス板3を低温側(例えば、寒冷地での室外側、また夏季において温度が上がる温暖地での室内側)に配置する場合、複層ガラス1にはその内外の温度差(室内外の温度差)等に基づいて、第1のガラス板2と第2のガラス板3の膨張量に差が生じる。このため、複層ガラス1には第2のガラス板3が外側に凹状となるような反りが生じるが、第1および第2のガラス板2、3を低膨張ガラスで構成しておくことで、複層ガラス1の反り量、さらには反りやその繰り返しによる応力を低減できる。
従って、低膨張ガラスで構成した第1および第2のガラス板2、3を有する複層ガラス1によれば、上記した反りや応力の繰り返しによるガラス板2、3と封着層4との接着界面や封着層4のクラックや割れ等の発生を長期間にわたって抑制できる。すなわち、長期信頼性に優れる複層ガラス1の提供が可能となる。また、複層ガラス1の内外の温度差や複層ガラス1の反り等に基づいて発生する応力を低減することで、複層ガラス1が許容可能な温度差を広げられる。複層ガラス1を外側と内側の温度差が大である環境下において使用される場合、例えば複層ガラス1を寒冷地等に設置する場合、複層ガラス1の内外の温度差に対する許容範囲を広げることができる。具体的には、複層ガラス1を室内外の温度差が例えば50℃もしくはそれ以上になるような環境に設置する場合においても、複層ガラス1の長期信頼性を保つことが可能となる。
第1および第2のガラス板2、3は、上記した室内外の温度差や複層ガラス1の反り等に基づく応力を低減する上で、55×10−7/℃以下の熱膨張係数を有する低膨張ガラスで構成することが好ましい。このような熱膨張係数を有する低膨張ガラスの適用によって、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力を再現性よく低減できる。ただし、ガラス板2、3の熱膨張係数が小さくなりすぎると、封着用ガラス材料との熱膨張差が大きくなり、逆に封着層4の近傍等に生じる応力が上昇するおそれがある。このため、封着ガラスの熱膨張係数にもよるが、ガラス板2、3の熱膨張係数は20×10−7/℃以上であることが好ましい。なお、後述するように第1および第2のガラス板2、3の板厚を調整した場合、この限りではない。
第1および第2のガラス板2、3の厚さは、それぞれ0.5mm〜6mmの範囲であることが好ましい。ガラス板2、3の厚さが0.5mm未満であると、複層ガラス1の強度や信頼性が不充分になるおそれがある。一方、ガラス板2、3の厚さが6mmを超えると、複層ガラス1が重くなるだけでなく、内外の温度差等に基づく反りや応力も大きくなるおそれがある。複層ガラス1の重さや信頼性を考慮すると、ガラス板2、3の厚さは1mm〜5mmがより好ましく、さらに好ましくは2mm〜5mmである。
さらに、第1のガラス板2を高温側に配置し、第2のガラス板3を低温側に配置する場合、第2のガラス板3の厚さT2は第1のガラス板2の厚さT1より薄い(T2<T1)ことが好ましい。具体的には、第1のガラス板1の板厚T1が2mm〜5mmの範囲であるとき、第2のガラス板3の厚さT2は第1のガラス板2の厚さT1に対する差(T1−T2)が1mm〜4mmであることが好ましい。このような板厚差を満足する第2のガラス板3を使用することによって、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力をより一層小さくできる。
すなわち、第1のガラス板2の厚さT1と第2のガラス板3の厚さT2との差(T1−T2)を1mm以上とすることによって、低温側に配置されて引張り応力が発生する第2のガラス板3のガラス厚の方が、対面する第1のガラス板2よりも相対的に薄くなるので、変形により引張り応力を開放することになる。このため、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力がより一層小さくなる。従って、複層ガラス1の長期信頼性をより一層向上させることが可能となる。第1のガラス板2の厚さT1と第2のガラス板3の厚さT2との差(T1−T2)は2mm以上であることがより好ましい。ただし、第1のガラス板2と第2のガラス板3の板厚差が大きくなりすぎると、第2のガラス板3が薄くなり強度的に問題となるため、第1のガラス板2と第2のガラス板3の板厚差(T1−T2)は4mm以下となることが好ましい。なお、第1のガラス板2と第2のガラス板3との板厚比(T2/T1)で示した場合、0.2以上0.8以下が好ましい。
また、上述したような第1のガラス板2と第2のガラス板3の板厚差(T1−T2)を満足する場合には、熱膨張係数がより小さいガラスを用いるほど、応力や変形をより一層抑制可能となるため、ガラス板2、3に熱膨張係数がより小さい低膨張ガラスを適用できる。従って、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力をより一層低減することが可能となる。ただし、低膨張ガラスの実用的な熱膨張係数の観点から、ガラス板2、3の熱膨張係数は20×10−7/℃以上であることが好ましい。
複層ガラス1の内部空間5、すなわち第1のガラス板2と第2のガラス板3との間隙に形成される内部空間5の圧力は、複層ガラス1に求められる特性に応じて適宜に設定されるものであるが、1.0Pa以下の真空状態に保持されていることが好ましい。これによって、複層ガラス1による良好な断熱特性を得ることができる。内部空間5の圧力は、さらに0.1Pa以下がより好ましい。第1の実施形態による複層ガラス1によれば、後述する製造工程からも明らかなように、より高真空状態の内部空間5を得ることができる。すなわち、断熱特性に優れる複層ガラス1の提供が可能となる。
複層ガラス1の内部空間5には、複層ガラス1の大きさ等にもよるが、前述したスペーサ6を配置することが好ましい。これによって、例えば1.0Pa以下というような真空状態とされている内部空間5の形状を安定して維持できる。スペーサ6は、例えば円柱状、角柱状、ボール状等のガラス柱や樹脂柱等により形成される。後述するように、封着材料層10の形成時の焼成条件等を考慮して、スペーサ6はガラス柱で形成することが好ましい。ガラス柱からなるスペーサ6は、例えばガラスフリットペーストの塗布、焼成により形成できる。スペーサ6は、例えば、図3に示されるように、複層ガラス1の内部空間5に所定パターンをもって点在するように設けるのが好ましい。スペーサ6の個数や配置間隔等は、複層ガラス1の大きさ、内部空間5の圧力等により適宜に設定される。
ここで、第1のガラス板2を高温側に配置し、第2のガラス板3を低温側に配置する場合、スペーサ6は第2のガラス板3の表面3aには固着されておらず、第1のガラス板2の表面2aのみに固着されていることが好ましい。このように、スペーサ6を第1のガラス板2の表面2aのみに固着することで、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力をより一層低減できる。すなわち、低温側に配置する第2のガラス板3には引張り応力が発生するが、スペーサ6に固着しないことで自由に変形可能となるため、複層ガラス1の内外の温度差や反り等に基づく応力をより一層小さくできる。従って、複層ガラス1の長期信頼性をより一層向上させることが可能となる。
なお、第1のガラス板と第2のガラス板の複層ガラスにおける配置の位置関係について、使用環境によって、高温側に第1のガラス板を配置するということを考慮しなくてよい場合には、上記した第1のガラス板と第2のガラス板の板厚の関係については、上記限定にかぎられない。又、スペーサ6を形成するガラス板面に関しても、同様に上記関係に限定されない。
なお、第1のガラス板と第2のガラス板の複層ガラスにおける配置の位置関係について、使用環境によって、高温側に第1のガラス板を配置するということを考慮しなくてよい場合には、上記した第1のガラス板と第2のガラス板の板厚の関係については、上記限定にかぎられない。又、スペーサ6を形成するガラス板面に関しても、同様に上記関係に限定されない。
第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙(すなわち、内部空間5の間隙)は、複層ガラス1の熱貫流率や封着層4の形成性等を考慮して30μm以下が好ましく、さらに15μm以下がより好ましい。すなわち、第1のガラス板2と第2のガラス板3との間隙を狭くすることで、レーザ光で封着材料層10を均一に溶融しやすくなる。従って、封着層4の形成性、ガラス板2、3との接着性やその信頼性を高めることが可能となる。また、第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙の下限は、特に限定はないが、複層ガラスの断熱性の確保という点から、5μm以上が好ましい。
さらに、複層ガラス1の断熱特性を向上させる上で、例えば低温側に配置される第2のガラス板3の表面3aに低放射率膜7を形成することが好ましい。低放射率膜(Low−E膜)7には各種公知の材料を使用でき、例えばLow−E膜とは基材(例えば、ガラス板)上に誘電体層と金属層とが積層されたことをいう(例えば特開2000−229378号公報や特公平08−032436号公報等参照。)。例えば、「基材/誘電体層/金属層/誘電体層」、「基材/誘電体層/誘電体層/金属層/誘電体層」、「基材/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層」、「基材/誘電体層/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層」、「基材/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層」、「基材/誘電体層/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層/金属層/誘電体層」等の構成が考えられる。基材と基材に最も近い金属層との間に存在する誘電体層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。同様に、金属層上の誘電体層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。ここで、誘電体層としては、金属酸化物層が一般的であり、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等が代表的である。金属層としては、金、銀が代表的である。ここで、金属層が銀の場合、100%銀であってもよく、パラジウムを3原子%以下添加したものでもよい。なお、封着層4の形成性を損なわないように、低放射率膜7は封止領域9の内側に形成することが好ましい。
なお、低放射率膜が、第2のガラス板に形成された場合の第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙は、その低放射率膜の面と第1のガラス板面との間隔をいう。
上記した例においては、第2のガラス板の表面(複層ガラスの間隙側の表面)に低放射率膜が形成された例を示しているが、複層ガラスの仕様態様によっては、第1のガラス板の表面(複層ガラスの間隙側の表面)に低放射率膜を形成しても良いし、また第1および第2のガラス板の複層ガラスの間隙側の表面の両面に形成してもよい。
また、第1のガラス板と第2のガラス板の複層ガラスにおける配置の位置関係について、使用環境によって、低温側に第2のガラス板を配置するということを考慮しなくてよい場合には、上記した低放射率膜は、第1のガラス板と第2のガラス板のどちらに形成してもよいし、場合によっては双方に形成してもよい。
なお、低放射率膜が、第2のガラス板に形成された場合の第1のガラス板2と第2のガラス板3との間の間隙は、その低放射率膜の面と第1のガラス板面との間隔をいう。
上記した例においては、第2のガラス板の表面(複層ガラスの間隙側の表面)に低放射率膜が形成された例を示しているが、複層ガラスの仕様態様によっては、第1のガラス板の表面(複層ガラスの間隙側の表面)に低放射率膜を形成しても良いし、また第1および第2のガラス板の複層ガラスの間隙側の表面の両面に形成してもよい。
また、第1のガラス板と第2のガラス板の複層ガラスにおける配置の位置関係について、使用環境によって、低温側に第2のガラス板を配置するということを考慮しなくてよい場合には、上記した低放射率膜は、第1のガラス板と第2のガラス板のどちらに形成してもよいし、場合によっては双方に形成してもよい。
第1の実施形態の複層ガラス1は、例えば以下のようにして作製される。まず、図2(a)に示すように、第1のガラス板2の表面2aの封止領域に封着材料層10を形成する。封着材料層10は、封着用ガラス材料の必須成分である封着ガラスと任意成分である無機充填材とを、ビヒクルと混合して調製された封着用ガラス材料ペーストを第1のガラス板2の表面2aに塗布した後に乾燥および焼成することにより形成される。また、封着ガラスを用いてスペーサ6を形成する場合には、封着ガラスをビヒクルと混合して調製されたスペーサ用ガラスペーストを所定の塗布パターンをもって第1のガラス板2の表面2aに塗布した後に乾燥および焼成してスペーサ6を形成する。
ビヒクルは、バインダ成分である樹脂を溶剤に溶解したものである。ビヒクル用の樹脂としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーの1種以上を重合して得られるアクリル系樹脂等の有機樹脂が用いられる。溶剤としては、セルロース系樹脂の場合はターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が、アクリル系樹脂の場合はメチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が用いられる。
封着用ガラス材料ペーストやスペーサ用ガラスペーストの粘度は、第1のガラス板2に塗布する装置に対応した粘度に合わせればよく、樹脂と溶剤の割合、封着用ガラス材料とビヒクルとの割合や、封着ガラスの種類とビヒクルの種類とにより調整できる。なお、樹脂は焼成時に消失する成分である。封着用ガラス材料ペーストやスペーサ用ガラスペーストには、消泡剤や分散剤のようにガラスペーストで公知の添加物を加えてもよい。これらの添加物も通常焼成時に消失する成分である。各ペーストの調製には、撹拌翼を備えた回転式の混合機やロールミル、ボールミル等を用いた公知の方法が適用できる。
図2(a)に示すように、封着用ガラス材料ペーストを第1のガラス板2の封止領域(外周領域)に塗布し、これを乾燥させて封着用ガラス材料ペーストの塗布膜を形成する。封着用ガラス材料ペーストは、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を適用して塗布したり、あるいはディスペンサ等を用いて塗布する。塗布膜の幅は、強度を保つために0.5mm〜20mmが好ましい。塗布膜の厚さは、第1のガラス板2と第2のガラス板3との間隔に応じて設定され、次工程の乾燥工程や仮焼成工程における膜の収縮を考慮して設定することが好ましい。また、同様にしてスペーサ用ガラスペーストの塗布膜を第1のガラス板2の表面2aに形成する。
封着用ガラス材料ペーストやスペーサ用ガラスペーストの塗布膜は、例えば60〜150℃の温度で30秒〜10分間乾燥させ、塗布膜内の溶剤を除去することが好ましい。続いて、焼成炉で封着ガラスのガラス転移点より30℃以上低い温度に加熱し、塗布膜内のバインダ成分等を除去した後、封着ガラスの軟化点以上の温度(例えば軟化点の温度より10〜100℃高い温度)に加熱し、封着用ガラス材料やスペーサ用ガラスフリットを第1のガラス板2に焼き付けることによって、第1のガラス板2の表面2aに枠状の封着材料層10やスペーサ6を形成する。封着材料層10およびスペーサ6の形成工程は同時に実施してもよいし、別々に実施してもよい。本明細書において、ガラス転移点は示差熱分析(DTA)の第1変曲点の温度で定義され、ガラス軟化点は示差熱分析(DTA)の第4変曲点の温度で定義される。
次に、図2(b)に示すように、第2のガラス板3の表面3aに必要に応じて低放射率膜7を形成する。低放射率膜7は、封着層4が形成される領域を除く所望の形状に形成してもよいし、あるいは予め第2のガラス板3の表面3aの全面に低放射率膜を形成した後、封着層4が形成される領域をトリミングして所望の形状としてもよい。
次に、図2(c)に示すように、第1のガラス板2と第2のガラス板3を真空チャンバ11内に配置し、真空チャンバ11内を所望の真空状態となるまで排気した後、封着材料層10およびスペーサ6を有する第1の表面2aと低放射率膜7を有する表面3aとが対向するように、第1のガラス板2と第2のガラス板3とを積層する。そして、所定の真空状態とされた真空チャンバ11内で、第2のガラス板3(または第1のガラス板2)を通して封着材料層10にレーザ光12を照射する。レーザ光12は封着材料層10に沿って走査しながら照射される。レーザ光は特に限定されず、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、HeNeレーザ等からのレーザ光が使用される。
封着材料層10はそれに沿って走査されるレーザ光12が照射された部分から順に溶融し、レーザ光12の照射終了と共に急冷固化されて第2のガラス板3に固着する。そして、封着材料層10の全周にわたってレーザ光12を照射することで、図2(d)に示すように第1のガラス板2と第2のガラス板3との間を気密封止する封着層4が形成される。レーザ光12の照射は、所望の真空状態とされた真空チャンバ11内で実施されるため、第1のガラス板2と第2のガラス板3との間隙は、真空チャンバ11内の真空状態に応じた圧力(例えば1Pa以下)に保持された状態で気密封止される。
すなわち、所望の真空状態に保持された内部空間5を有する複層ガラス1を得ることができる。封着材料層10をレーザ光12で溶融および固化させた材料からなる封着層4は気密性に優れるため、真空チャンバ11の真空圧に応じた真空状態を有する内部空間5を再現性よく得ることができ、そのような真空状態を有する内部空間5を長期間にわたって維持できる。第1の実施形態による複層ガラス1の内部空間5は、例えば1.0Pa以下、さらには0.1Pa以下というような真空状態にできる。さらに、レーザ光12の照射を真空チャンバ11内で実施しているため、後から内部空間を真空引きするための貫通孔等を必要としない。貫通孔やそれに装着される吸引部は複層ガラスの強度等を低下させる要因となるため、複層ガラス1の信頼性を高めることができる。
レーザ光12による封着材料層10の加熱温度は、封着ガラスの軟化点以上とする。レーザ光12による局所加熱を適用した場合、ガラス板2、3の温度は封着材料層10の温度より低いため、焼成炉を用いた製造工程より封着材料層10の加熱温度を高く設定できる。加熱温度は、例えば封着ガラスの軟化点の温度T(℃)に対して、(T+200℃)以上で(T+800℃)以下の温度が好ましい。ここで、ガラス板2、3は低膨張ガラスからなるため、封着ガラスとの熱膨張差が大きくなりやすい。このような点に対し、特にホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、石英ガラスおよび結晶化ガラスなどの低膨張ガラスはソーダライムガラスに比べ歪み量が小さいため、例えばレーザ光12の出力を上げて封着ガラスの均一溶融性を高めることで、封着層4の形成性を高めることができる。また、封着材料層10の膜厚を薄くすることも有効である。
次に、第2の実施形態による複層ガラスについて、図7および図8を参照して説明する。図7は第2の実施形態による複層ガラスの構成を示す断面図である。図8は第2の実施形態による複層ガラスの製造工程を示す断面図である。これらの図に示す複層ガラス21は、封着用樹脂材料を固化させた材料からなる第1の封着層(封着樹脂層)22と、第1の実施形態における封着層4と同様に、封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる第2の封着層(封着ガラス層)23とを有している。第1の封着層(封着樹脂層)22は、第2の封着層(封着ガラス層)23の外周側に設けられている。なお、これら以外の構成については、第1の実施形態と同様とされている。
第2の実施形態の複層ガラス21は、例えば以下のようにして作製される。まず、図8(a)に示すように、第1のガラス板2の表面2aの封止領域に、封着樹脂層22の形成用の封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層(封着用樹脂材料層)24と、封着ガラス層23の形成用の封着用ガラス材料からなる第2の封着材料層(封着用ガラス材料層)25とを形成する。第2の封着材料層25は、第1の実施形態の封着材料層10と同様にして第1のガラス板2の封止領域に形成される。また、第2の封着材料層25の形成と同時に、もしくは第2の封着材料層25の形成とは別に、第1の実施形態と同様にしてスペーサ6を形成する。
第1の封着材料層24は、例えばアクリレート樹脂やエポキシ樹脂等の紫外線硬化型樹脂を含む樹脂組成物ペーストを、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を適用して塗布したり、あるいはディスペンサ等を用いて塗布して形成される。樹脂組成物ペーストは、第2の封着材料層25の外周側に塗布され、必要に応じて紫外線処理が施される。例えば、第1の封着材料層24の形成材料として紫外線硬化型樹脂組成物を用いた場合には、封止処理前に半硬化状態とするための紫外線処理等を施してもよい。このようにして、第1のガラス板2の封止領域の外周側に封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層24を形成すると共に、内周側に封着用ガラス材料からなる第2の封着材料層25を形成する。
第2のガラス板3の表面3aには、第1の実施形態と同様に、必要に応じて低放射率膜7が形成される(図8(b))。低放射率膜7は、第2のガラス板3の封着層4が形成される領域を除く所望の領域に形成してもよいし、あるいは予め第2のガラス板3の表面の全面に低放射率膜を形成し、封着層4が形成される領域をトリミングして所望の形状の低放射率膜7としてもよい。次いで、図8(c)に示すように、第1のガラス板2と第2のガラス板3を真空チャンバ11内に配置し、真空チャンバ11内を所望の真空状態となるまで排気した後、封着材料層24、25およびスペーサ6を有する第1の表面2aと低放射率膜7を有する表面3aとが対向するように、第1のガラス板2と第2のガラス板3とを積層する。そして、所定の真空状態とされた真空チャンバ11内で、第1の封着材料層24を紫外線処理して硬化させ、第1の封着層22を形成する。
次に、図8(d)に示すように、第1の封着層(封着樹脂層)22を形成した第1のガラス板2と第2のガラス板3との積層体を大気雰囲気下に晒した後、直ちに第2のガラス板3(または第1のガラス板2)を通して第2の封着材料層(封着用ガラス材料層)25にレーザ光12を照射する。レーザ光12の照射は大気雰囲気下で実施することを除いて、第1の実施形態と同様して行う。第2の封着材料層25の全周にわたってレーザ光12を照射し、図8(e)に示すように第1のガラス板2と第2のガラス板3との間を気密封止する第2の封着層(封着ガラス層)23を形成する。
第2の実施形態においては、第1の封着層22を所望の真空状態とされた真空チャンバ11内で形成しているため、第1の封着層22の内側は真空チャンバ11内の真空状態に応じた圧力に保持される。従って、第1の封着層22の内側に配置されている第2の封着材料層25に対するレーザ光12の照射を大気雰囲気下で実施しても、第2の封着層23の内側の空間、すなわち複層ガラス21の内部空間5を所望の真空状態(例えば10Pa以下)に保持できる。そして、第2の封着層23は気密性に優れるため、所望の真空状態を有する内部空間5を再現性よく得ることができ、さらにそのような真空状態を有する内部空間5を長期間にわたって維持できる。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
(実施例1)
酸化物換算の質量割合でBi2O3 83.2%、B2O3 5.6%、ZnO 10.7%、Al2O3 0.5%の組成を有し、さらに質量割合で150ppmのNa2Oを含み、平均粒径(D50)が1.0μmのビスマス系ガラス(軟化点:410℃)と、低膨張填材として平均粒径(D50)が4.3μmのコージェライト粉末と、Fe2O3−CuO−MnO−Al2O3の組成を有し、平均粒径(D50)が1.2μmのレーザ吸収材とを用意した。
酸化物換算の質量割合でBi2O3 83.2%、B2O3 5.6%、ZnO 10.7%、Al2O3 0.5%の組成を有し、さらに質量割合で150ppmのNa2Oを含み、平均粒径(D50)が1.0μmのビスマス系ガラス(軟化点:410℃)と、低膨張填材として平均粒径(D50)が4.3μmのコージェライト粉末と、Fe2O3−CuO−MnO−Al2O3の組成を有し、平均粒径(D50)が1.2μmのレーザ吸収材とを用意した。
粒度分布は、レーザ回折・散乱法を用いた粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.75、Fluid Refractive index:1.33とした。
上述したビスマス系ガラス66.8体積%とコージェライト粉末32.2体積%とレーザ吸収材1.0体積%とを混合して封着用ガラス材料およびスペーサ用ガラス材料を調製した。このガラス材料83質量%を、樹脂バインダ成分としてのエチルセルロース5質量%を2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールモノイソブチレート95質量%に溶解して作製したビヒクル17質量%と混合して封着用およびスペーサ用のガラスペーストを調製した。
次に、熱膨張係数(0〜300℃)が32.5×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなる第1のガラス板(寸法:370mm×370mm×3mm)を用意し、このガラス板の封止領域の内側領域に所望の印刷パターンをもって上記したスペーサ用のガラスペーストをスクリーン印刷法で塗布し、スペーサ塗布層を形成した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。スペーサの印刷パターンは、スペーサの配置パターンに応じて、直径0.25mmのドットを340mm×340mmの範囲に20mm間隔で並べる配置とした。続いて、この塗布膜を300℃×30分の条件で加熱し、樹脂バインダ成分を除去した後、大気雰囲気中にて480℃×10分の条件で焼成することによって、高さが12μmのスペーサを形成した。
次いで、図3のように、第1のガラス板の封止領域に上記した封着用のガラスペーストをディスペンサで額縁状に塗布し、封着材料層を形成した後、120℃×10分の条件で乾燥させた。この印刷パターンは、線幅が0.5mmの340mm×340mmの額縁状パターンとした。続いて、塗布膜を300℃×30分の条件で加熱し、樹脂バインダ成分を除去した後、大気雰囲気中にて480℃×10分の条件で焼成することによって、膜厚が15μmの封着材料層(封着用ガラス材料層)を形成した。
次に、第2のガラス板(第1のガラス板と同組成、同形状、同寸法のホウケイ酸ガラスからなる板)の表面に、低放射率膜として「ZnO/Ag/ZnO/Ag/ZnO」の膜をスパッタリング法により成膜した。スパッタリング法による成膜は、封止領域に膜が付着しないようにマスキングして実施した。マスキングテープは成膜後に剥離した。また、マスキングテープの粘着剤が封止領域に残留しないように、封止領域のみを有機溶剤で洗浄した。
上述した封着材料層とスペーサとを有する第1のガラス板と、低放射率膜を有する第2のガラス板とを、封着材料層とスペーサを有する第1の表面2aと、低放射率膜を有する表面3aとが対向するように、真空チャンバ内に配置した後、真空チャンバ内を排気した。真空チャンバ内の圧力が0.1Paに到達した後、第1のガラス板と第2のガラス板とを積層した。そして、第2のガラス板を通して封着材料層に、波長808nm、出力16Wのレーザ光(CW半導体レーザ)を4mm/秒の走査速度で照射し、封着材料層を溶融ならびに急冷固化することによって、第1のガラス板と第2のガラス板との間隙を真空封止する封着層を形成した。このようにして得た複層ガラスの特性を以下のようにして評価した。
得られた複層ガラスの封着層の状態を観察したところ、未接着の箇所やクラック等の接着不良は見られず、十分な接着が得られていることが確認された。封着後の複層ガラスの内外に低温側−20℃、高温側+30℃の温度差を与え、複層ガラスの中央から50cmの地点での反り量を測定した。また、100枚の複層ガラスを作製し、レーザ封着による割れの発生率を測定した。これらの測定結果を併せて表1に示す。
(実施例2〜6)
第1および第2のガラス板として、表1に示すような熱膨張係数および板厚を有するガラス板を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。これら複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
第1および第2のガラス板として、表1に示すような熱膨張係数および板厚を有するガラス板を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。これら複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
(比較例1)
第1および第2のガラス板として、熱膨張係数(0〜300℃)が85×10−7/℃であるソーダライムガラスからなるガラス板(寸法:370mm×370mm×3mm)を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
第1および第2のガラス板として、熱膨張係数(0〜300℃)が85×10−7/℃であるソーダライムガラスからなるガラス板(寸法:370mm×370mm×3mm)を使用する以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
(参考例1)
第1のガラス板と第2のガラス板との間の間隔(すなわち、間隙)を200μmとする以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
第1のガラス板と第2のガラス板との間の間隔(すなわち、間隙)を200μmとする以外は、実施例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
(比較例2)
第1のガラス板と第2のガラス板との間の間隔を200μmとする以外は、比較例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
第1のガラス板と第2のガラス板との間の間隔を200μmとする以外は、比較例1と同様にして複層ガラスを作製した。この複層ガラスの特性等を実施例1と同様にして測定した。それらの測定結果を併せて表1に示す。
表1において、「低温側/真空層/高温側」の表記は、「低温側(第2のガラス板)/真空層/高温側(第1のガラス板)」を意味する。また、表1において「ガラス板の間隔」とは「第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙」を意味する。
表1から明らかなように、実施例1〜6の複層ガラスは比較例1に比べて、複層ガラスとしたときのガラス板の反りが低減することが分かる。
表1から明らかなように、実施例1〜6の複層ガラスは比較例1に比べて、複層ガラスとしたときのガラス板の反りが低減することが分かる。
(実施例7)
熱膨張係数(0〜300℃)が32.5×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなる第1のガラス板(寸法:370mm×370mm×3mm)を用意し、このガラス板に実施例1と同様にしてスペーサと封着用ガラス材料からなる第2の封着材料層とを形成した。続いて、第1の封着材料層の外側にウレタンアクリレート組成の樹脂ペーストをディスペンサで塗布することによって、封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層を形成した。
熱膨張係数(0〜300℃)が32.5×10−7/℃であるホウケイ酸ガラスからなる第1のガラス板(寸法:370mm×370mm×3mm)を用意し、このガラス板に実施例1と同様にしてスペーサと封着用ガラス材料からなる第2の封着材料層とを形成した。続いて、第1の封着材料層の外側にウレタンアクリレート組成の樹脂ペーストをディスペンサで塗布することによって、封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層を形成した。
次に、上記した第1のガラス板と、実施例1と同様にして低放射率膜を形成した第2のガラス板(第1のガラス板と同組成、同形状、同寸法のホウケイ酸ガラスからなるガラス板)とを、封着材料層とスペーサと封着用樹脂材料を有する第1の表面2aと、低放射率膜を有する表面3aとが対向するように、真空チャンバ内に配置した後、真空チャンバ内を排気した。真空チャンバ内の圧力が0.1Paに到達した後、第1のガラス板と第2のガラス板とを積層した。そして、真空チャンバ内で紫外線硬化処理を行うことによって、第1の封着層(封着樹脂層)を形成した。
続いて、第1の封着層を形成した積層体を大気雰囲気下に晒し、この状態で第2のガラス板を通して第2封着材料層に、波長808nm、出力18Wのレーザ光(CW半導体レーザ)を4mm/秒の走査速度で照射し、第2の封着材料層を溶融ならびに急冷固化することによって、第1のガラス板と第2のガラス板との間隙を真空封止する第2の封着層(封着ガラス層)を形成した。このようにして得た複層ガラスの特性を実施例1と同様にして評価した。その結果、複層ガラスとしたときのガラス板の反り量が悪化することはなかった。
なお、上記実施例ではガラス材料ペーストでスペーサを形成したが、シリカ粒子のような球状スペーサを用いてもよい。より具体的には、液晶ディスプレイ用に広く用いられている粒径10μm程度のシリカ粒子を用いることができる。
本発明によれば、第1および第2のガラス板に低膨張ガラスを適用しているため、室内外の温度差のような複層ガラスの内外の温度差等に基づく応力を低減でき、従って長期信頼性に優れる複層ガラスを提供できる。
なお、2011年7月8日に出願された日本特許出願2011−152320号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
なお、2011年7月8日に出願された日本特許出願2011−152320号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
1,21…複層ガラス、2…第1のガラス板、3…第2のガラス板、4…封着層、5…内部空間(真空気密空間)、6…スペーサ、7…低放射率膜、8…第1の封止領域、9…第2の封止領域、10…封着材料層、11…真空チャンバ、12…レーザ光、22…第1の封着層(封着樹脂層)、23…第2の封着層(封着ガラス層)、24…第1の封着材料層(封着用樹脂材料層)、25…第2の封着材料層(封着用ガラス材料層)。
Claims (20)
- 第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板と、
前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域を備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス板上に所定の間隙を持って配置された、低膨張ガラスからなる第2のガラス板と、
前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙を真空封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる封着層と
を具備することを特徴とする複層ガラス。 - 前記低膨張ガラスは55×10−7/℃以下の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項1記載の複層ガラス。
- 前記第1および第2のガラス板は、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリアルミノケイ酸ガラス、石英ガラス、および結晶化ガラスからなる群より選ばれる同種または異種のガラスからなることを特徴とする請求項1または2記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙が30μm以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙に、複数のスペーサが配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 高温側に配置される前記第1のガラス板の板厚をT1、低温側に配置される前記第2のガラス板の板厚をT2としたとき、前記第2のガラス板の板厚T2はT2<T1の条件を満足することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板の板厚T1が2mm〜5mmの範囲であると共に、前記第1のガラス板の板厚T1と前記第2のガラス板の板厚T2との差(T1−T2)が1mm〜4mmであることを特徴とする請求項6記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙に、複数のスペーサが配置されていると共に、前記スペーサは前記第1のガラス板の前記第1の表面のみに固着されていることを特徴とする請求項6または7記載の複層ガラス。
- 前記封着用ガラス材料は、下記酸化物換算の質量割合で70〜90%のBi2O3、1〜20%のZnO、および2〜12%のB2O3を含むビスマス系ガラスからなる封着ガラスを含有し、かつ0.1〜40体積%のレーザ吸収材と0〜50体積%の低膨張充填材とを、前記レーザ吸収材と前記低膨張充填材との合計量として0.1〜50体積%の範囲で含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記第1および第2のガラス板は、真空引き用の貫通孔を有しないことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙は1.0Pa以下の真空状態に保持されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記第1のガラス板の第1の表面および前記第2のガラス板の第2の表面の少なくともいずれか一方に、低放射率膜が設けられていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 前記封着用ガラス材料を溶融および固化させた材料からなる前記封着層の外周側に、さらに封着用樹脂材料を硬化させた材料からなる封着樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項記載の複層ガラス。
- 第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板と、
前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域を備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス板上に所定の間隙を持って配置された、低膨張ガラスからなる第2のガラス板と、
前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙を真空封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成された封着層とを具備し、
高温側に配置される前記第1のガラス板の板厚をT1、低温側に配置される前記第2のガラス板の板厚をT2としたとき、前記第2のガラス板の板厚T2はT2<T1の条件を満足することを特徴とする複層ガラス。 - 前記第1のガラス板の板厚T1が2mm〜5mmの範囲であると共に、前記第1のガラス板の板厚T1と前記第2のガラス板の板厚T2との差(T1−T2)が1mm〜4mmであることを特徴とする請求項14記載の複層ガラス。
- 第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板を用意する工程と、
前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域と、前記第2の封止領域上に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を焼成した材料からなる封着材料層とを備える第2の表面を有し、低膨張ガラスからなる第2のガラス板を用意する工程と、
前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記封着材料層を介して前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを積層する工程と、
真空雰囲気下にて前記第1または第2のガラス板を通してレーザ光を前記封着材料層に照射し、前記封着材料層を溶融および固化させて前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間隙を真空封止する封着層を形成する工程と
を具備することを特徴とする複層ガラスの製造方法。 - 第1の封止領域を備える第1の表面を有し、低膨張ガラスからなる第1のガラス板を用意する工程と、
前記第1の封止領域に対応する第2の封止領域と、前記第2の封止領域上に形成され、封着用樹脂材料からなる第1の封着材料層と、前記第2の封止領域上の第1の封着材料層より内周側に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を焼成した材料からなる第2の封着材料層とを備える第2の表面を有し、低膨張ガラスからなる第2のガラス板を用意する工程と、
前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記第1および第2の封着材料層を介して前記第1のガラス板と前記第2のガラス板とを積層する工程と、
真空雰囲気下にて前記第1の封着材料層を硬化させ、前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間隙を真空封止する第1の封着層を形成する工程と、
大気雰囲気下にて前記第1または第2のガラス板を通してレーザ光を前記第2の封着材料層に照射し、前記第2の封着材料層を溶融および固化させて第2の封着層を形成する工程と
を具備することを特徴とする複層ガラスの製造方法。 - 前記第1のガラス板と前記第2のガラス板との間の間隙を1.0Pa以下の真空状態に保持することを特徴とする請求項16または17記載の複層ガラスの製造方法。
- 前記低膨張ガラスは55×10−7/℃以下の熱膨張係数を有することを特徴とする請求項16ないし18のいずれか1項記載の複層ガラスの製造方法。
- 高温側に配置される前記第1のガラス板の板厚をT1、低温側に配置される前記第2のガラス板の板厚をT2としたとき、前記第2のガラス板の板厚T2はT2<T1の条件を満足することを特徴とする請求項16ないし19のいずれか1項記載の複層ガラスの製造方法。
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