JPWO2012169150A1 - 有機エレクトロルミネッセント素子 - Google Patents

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Abstract

アルカリ金属等の強電子供与性物質を使用せず、電荷発生(キャリア発生)部位からみて陽極の方向に電子電荷を移動させて発光層へ注入させ得る構造として、発光層への電荷の移動に対する障壁となる部位に絶縁性有機物層を設けた構造を有し、更に駆動電圧を低減し得る有機EL素子の新たな構造を提供する。本発明は、陽極と、陰極と、陽極と陰極との間に位置する、発光層を含む複数の発光ユニットと、複数の発光ユニットの間に位置する中間層と、を有し、中間層が、中間層から発光ユニットへの電荷の移動に対する障壁となる部位に設けられた絶縁性有機物層と、絶縁性有機物層に隣接して設けられた有機物と金属とからなる混合層と、を含むこと、を特徴とする有機エレクトルミネッセント素子に関する。

Description

本発明は、平面光源や表示素子に利用される有機エレクトロルミネッセント素子(以下、「有機EL素子」と略記することがある。)に関する。
対向する陽極と陰極との間に、有機化合物からなる発光層を有する有機EL素子は、近年、低電圧駆動の大面積表示素子を実現するものとして注目されている。イーストマンコダック社のTangらは、素子の高効率化のため、キャリア輸送性の異なる有機化合物を積層し、ホール及び電子がそれぞれ陽極及び陰極よりバランスよく注入される構造を採用し、しかも陰極と陽極に挟まれた有機層の層厚を200nm以下とすることで、10V以下の印加電圧で1000cd/m2と外部量子効率1%の実用化に十分な高輝度及び高効率を得ることに成功した。
例えば特許文献1〜特許文献6によれば、陰極と陽極に挟まれた有機層全体の膜厚を1μm以下とすることで、より低い印加電圧によって発光できるデバイスを提供できるとされており、好ましくは前記膜厚を100〜500nmの範囲とすれば、25V以下の印加電圧で発光を得るに有用な電場(E=Vcm-1)が得られるとされている。
有機EL素子の構造は、上記のようなTangらが示した構造を基礎として発展してきたが、最近では、例えば特許文献7及び特許文献8に示されているように、電極に挟まれた構造を一つの単位(発光ユニット)とし、この発光ユニットを直列に接続し得るように複数積層した構造を有する有機EL素子が開発されている。この技術は、有機EL素子の、飛躍的な長寿命化、光源や照明に要求される高輝度の実現、及び大面積の均一発光、を可能とする技術として注目されている。低電圧であるにもかかわらず大電流を必要とするTangらの有機EL素子の構造では、これらの要求を満たすことができなかったからである。
次に、特許文献8に記載のように、本願の発明者は直列型(タンデム型)構造を有する有機EL素子を考案及び実現し、ユニットの接続層部分にITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)のような透明電極材料の代わりに、導電性の低い電荷発生層を使用することにより複数の発光ユニットの直列接続を可能とした。この有機EL素子では、従来型有機EL素子と同様に陰極と陽極の交差した領域のみが発光し、さらに透明電極の成膜に必須とされるスパッタリング工程も不要となるため、現在では、直列型の有機EL素子の構造のなかでも最も有用と認識され、マルチフォトン有機EL素子と呼称されて広く知られるに至っている。マルチフォトンと呼称される理由は、発光ユニットの数を所定以上とすれば、有機EL素子を通過する電子数を上回る光子数を発生させることができるからである。
しかしながら、このマルチフォトン有機EL素子は、従来型有機EL素子に比べて、数倍の製造工程が必要になるという問題があり、さらに、導電性の低い電荷発生層を、例えば特許文献9〜特許文献14に記載の化学ドーピングの手法を駆使して作製しなければならず、その製造工程の制御が困難であるという問題もある。
直列型有機EL素子は、大面積を均一の強度で発光させるのに適している。直列型有機EL素子では、従来型有機EL素子と比べた場合、同輝度を得るために必要な電圧Vをほぼユニット数を乗じた分大きくすることができ、逆に電流Iはほぼユニット数で除した分だけ小さくできる。その結果、素子抵抗(電圧と電流の比:VI-1)がユニット数の略二乗分だけ上昇して、外部電極の面抵抗による電圧降下が低減でき、面内における略均一な電位を実現できるからである。
この電位の均一性、換言すると輝度の均一性は、ユニット数を増やせば増やすほど向上することは言うまでもない。ただし、本発明者のこれまでの知見によれば、照明に必要な3000cdm-2以上の輝度が必要な場合、対角5インチ程度の発光面積ならば、数ユニット程度の積層体で略均一の発光を実現できるが、例えば対角15インチ以上の発光面積となると、数ユニット程度の積層体でそのような高輝度での均一発光は不可能で、少なくとも15ユニット程度は必要と思われる。これほどの多数のユニットの積層体を効率よく低コストで生産するのはほぼ不可能である。
このような多数のユニットの積層体を効率よく低コストで生産するのが不可能な理由は、第一に、製法が複雑である点にある。即ち、本発明者らが特許文献8において提案しているように、ホール電荷と電子電荷を生成するために設けられる電荷発生層の作製が非常に複雑だからである。
例えば、特許文献8の請求項1又は2には、電子供与性の強い金属酸化物と電子受容性の高いアミン系有機化合物の混合または積層による接触界面に於いて生じる電荷移動錯体によって、あたかも電荷発生層から発光ユニットに、発光物質の励起に必要な電子電荷とホール電荷が供給されるような記載がされている。しかしながら、実際にはこの特許文献8に記載されている構成では、前記界面に於いて印加電界により金属酸化物に電子がアミン系有機化合物にホールが発生するものの、これらの電荷は該電荷移動錯体により発光物質にホール及び電子の両電荷が自動的に供給されるわけではなく、その実施例に具体的に示されるように、電荷発生層の陽極側に接する部位において、必ずアルカリ金属等の強電子供与性物質を電子輸送性有機物に作用させ、当該有機物に対し電子注入を促進させる手法を必要とする。
なぜならば、電子輸送性有機物と前記金属酸化物との間には、大きなエネルギー差があり、金属酸化物に発生した電子を電子輸送性有機物に注入するためにはアルカリ金属のような強い電子供与性物質によりキャリアドープを行い、イオン化したドーパントの空間電荷により実効的に電子輸送性有機物との注入障壁を低減する必要があるためである。
この注入効率が低い場合、電荷発生層より陽極側に位置する発光ユニット内で発光物質を含有する発光層の中をホールが優勢に移動し、その過剰のホールは電荷発生層で過剰に存在する電子と非発光再結合を起し電流が流れる過程を経る。発光層部位はホール電流の抵抗体としてのみ存在し、発光物質は発光しない。即ち、特許文献8における「電荷移動錯体からなる電荷発生層」を形成してマルチフォトン有機EL素子を作製しても、実際は何らの効果も得られない。
膜中へのアルカリ金属の供給方法としては、アルカリ金属を抵抗加熱によって直接蒸発させる方法(抵抗加熱蒸着法)や、アルカリ金属イオンを含む化合物を含有する膜を用いる方法等があり、これらの方法は特許文献8において提案されている。
また、さらにアルカリ金属イオンを含む酸化物、炭酸化物、複合酸化物、複合炭酸化物、等を電子ビーム蒸着法で蒸着すれば、その電子ビーム蒸着法自体が、化合物中の金属をイオン状態から金属原子状態へ還元する手段の一つであることから、結果的にアルカリ金属を電子輸送性有機物に作用させることもできる。さらに例外的には、炭酸セシウム(CsCO3)のように、電子ビーム蒸着法を使用せずとも、単なる真空中での抵抗加熱により、還元により金属セシウムを生成させ得る場合もある。
これらのような酸化物、炭酸化物、複合酸化物、複合炭酸化物等のアルカリ金属化合物については、例えば特許文献9又は特許文献10に、炭酸リチウムや酸化リチウムを含む電子注入層や中間陰極層(界面層)と称する層を、電荷発生層の陽極側に接するように形成させることが記載されており、これらの文献には蒸着法が明記されていない。もし電子ビーム蒸着法によらず通常の抵抗加熱蒸着法によって膜形成した場合には、化合物中のアルカリ金属イオンが金属に還元されないため、前述のように発光物質に電子電荷を輸送できなくなることは、実験によって簡単に確かめられる。
このアルカリ金属は、有機EL素子の発光性有機物に接触作用すると、その強い還元性によって発光性有機物の発光性を失わせるため(この現象は発光クエンチングと呼称されることがある。)、実際の製造プロセスにおいては、発光層等の有機物からなる層の形成のための製造チャンバーとは隔離した場所に設置する必要がある。したがって、複数の発光ユニットを有するマルチフォトン有機EL素子のように、略同一の工程を何度も繰り返して製造しなければならない場合には、複数の蒸着チャンバーを設置して、かつ、その間を何度も行き来する必要が生じ、電荷発生層及びそれに接する層を形成する工程が煩雑になり、個々の工程の制御の複雑さと相まって、製品価格を押し上げてしまうという問題がある。
上記のような従来技術に対し、本発明者らは、鋭意検討の結果、従前に提案、開発してきたマルチフォトン有機EL素子の構造に必須であったアルカリ金属等の還元性物質(強電子供与性物質)の使用を回避しながらも(したがって製造工程を格段に簡素化し)、従来と略同等の性能を発揮する有機EL素子を提案している(特許文献11)。より具体的には、本発明者らは、鋭意検討の結果、アルカリ金属等の強電子供与性物質を使用しなくても、電荷発生部位からみて陽極の方向に電子電荷(ラジカルアニオン状態の電子受容性半導体分子)を移動させて発光層へ注入させ得る構造として、発光層への電荷の移動に対する障壁となる部位に絶縁性有機物層を設ける構造を見出し、アルカリ金属を用いずにスタック型構造を有する有機EL素子を完成した。
特開昭59−194393号公報 特開昭63−264692号公報 特開平2−15595号公報 米国特許第4,539,507号明細書 米国特許第4,769,292号明細書 米国特許第4,885,211号明細書 特開平11−329748号公報 特許第3933591号明細書 特開2006−135145号公報 特開2007−123611号公報 国際公開 WO2010/113493号公報
しかしながら、上記特許文献11において提案されているスタック型有機EL素子は、従来の有機EL素子と同様の高さの駆動電圧を必要としており、本発明者らは、省エネ等の観点からは未だ改善の余地があると考えていたところ、更に有機EL素子の構造について鋭意実験を繰返して検討を行った。そして、上記特許文献11における有機EL素子において、電荷発生部位からみて陽極の方向に絶縁性有機物層を設けた素子に対し、発光層への電荷注入をより効率良くさせることができれば、駆動電圧を低減したスタック型有機EL素子の構造が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の目的は、アルカリ金属等の強電子供与性物質を使用せず、電荷発生(キャリア発生)部位からみて陽極の方向に電子電荷を移動させて発光層へ注入させ得る構造として、発光層への電荷の移動に対する障壁となる部位に絶縁性有機物層を設ける構造を有し、更にその駆動電圧を低減し得る有機EL素子の新たな構造を提供することにある。
上記の課題を解決すべく、本発明は、
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に位置する、発光層を含む複数の発光ユニットと、
前記複数の発光ユニットの間に位置する中間層と、を有し、
前記中間層が、前記中間層から前記発光ユニットへの電荷の移動に対する障壁となる部位に設けられた絶縁性有機物層と、前記絶縁性有機物層に隣接して設けられた有機物と金属とからなる混合層と、を含むこと、
を特徴とする有機エレクトルミネッセント素子(以下、「有機EL素子」という。)を提供する。このような構成を有する本発明によれば、発光層への電荷注入の効率を上げて、駆動電圧の増大を抑えたスタック型有機EL素子を実現することができる。
上記本発明の有機EL素子においては、前記混合層を構成する前記有機物の電子親和力と、前記混合物層の前記絶縁性有機物層側とは反対側に隣接する層のイオン化ポテンシャルとの差が、1.4eV以下であること、が好ましい。このような構成を有する本発明によれば、充分なキャリア密度を生成することができ、より確実に発光層への電荷注入の効率を上げて、駆動電圧の増大を抑えることができる。
また、上記本発明の有機EL素子においては、前記混合層を構成する前記有機物が、ヘキサアザトリフェニレン誘導体を含むこと、が好ましい。ヘキサアザトリフェニレン誘導体は深い電子親和力を有することから、これを用いれば、より確実に充分なキャリア密度を生成することができ、より確実に発光層への電荷注入の効率を上げて、駆動電圧の増大を抑えることができる。
また、上記本発明の有機EL素子においては、前記混合層を構成する前記金属が、3族から13族に属する金属元素を含むこと、が好ましい。これを用いれば、中間層における電圧ロスを大きく低減させることができ、駆動電圧の増大を抑えることができる。
上記本発明の有機EL素子において、前記混合層は、前記有機物の層と前記金属の層との積層体で構成されていても、前記有機物と前記金属の共蒸着層(co-deposition layer)で構成されていてもよい。即ち、前記混合層は、有機物の層と金属の層とを順次積層して形成される積層体であっても、有機物と金属とを共蒸着して形成される共蒸着層であってもよい。これによれば、再現性が高く、より確実に電荷の注入効率の良い中間層が得られ、駆動電圧の増大を抑えることができる。
ここで、本発明の特徴である「発光ユニットへの電荷の移動に対する障壁となる部位に設けられた絶縁性有機物層と、絶縁性有機物層に隣接して設けられた有機物と金属とからなる混合層と、とを含む中間層」について説明する。この中間層の役割は、隣接する発光ユニットに対し、中間層より陽極側のユニットに対しては電子を、陰極側のユニットに対しては正孔を、それぞれ同量ずつ注入することにある。この注入のバランスが保たれることで、各発光ユニットは等価的に直列接続となり、スタック化素子として期待される動作が得られる。
本発明の有機EL素子における中間層は、層中又は一方の界面で、いわゆる「電荷発生層」として作用(より正確にはキャリア生成層又はキャリア生成界面として作用)し、他方の界面で、生成したキャリアをその界面に接する発光ユニットに注入する機能を持つものである。具体的には、深い電子親和力を持つ材料を含む層又は当該材料で構成される層を、浅いイオン化ポテンシャルを持つ正孔輸送層(例えばNPBやその他のトリフェニルアミン誘導体等によって構成される層)に隣接させ、電界を印加することで正孔輸送層側にホールを生成させ、同時に、中間層側に電子を生成させることができる。
従来、種々の文献において、このような機能を有する層を「電荷発生層」と称し、特別な構成は或いは効果を発生させているかのような記述がなされてきたものの、この現象自体は有機EL素子の技術分野においては何ら特別なものではなく、当該技術者であれば周知の事実である。例えば、従来有機EL素子の陽極に用いられてきたITOがアミン系の正孔輸送層に対してホール注入可能であることは周知の事実である。また、ITOはn型半導体であり、その「仕事関数」は伝導帯のエネルギーレベル、即ち電子親和力であるという事実からすれば、このようなエネルギーレベルの関係にある界面があれば、アミン側にホールを注入することが可能であることは直ちに理解される。したがって、従来、種々の文献においては、いわゆる「電荷発生層」について、電子受容性化合物と電子供与性化合物の組合せや、電荷移動錯体の生成が必要であるかの誤解が多く見られ、特別な構成によりこれを達成したかの記述も多数あるが、純粋にエネルギーの関係のみでこの性質は決定される。
次に、上記のように、前記混合層を構成する前記有機物の深い電子親和力と、前記混合物層の前記絶縁性有機物層側とは反対側に隣接する層(例えば発光ユニット中の正孔輸送層)のイオン化ポテンシャルとの差が、1.4eV以下、好ましくは0.8eV以下であれば、より確実にキャリア生成が可能であり好ましい。なお、ITOとアミン系正孔輸送材料の場合、ITOの仕事関数、即ち電子親和力は、酸素による表面処理等によって変化し、概ね4.7eVから5.3eVの範囲にあることが知られている。更に、例えば、D. J. Milliron, I. G. Hill, C. Shen, A. Kahn, J. Schwartz, J. Appl. Phys. Vol. 87(2000), 572では、4.1eVから4.5eV程度のものも得られ、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルとの差が1.34eVの場合にでも正孔注入が可能であることが示されている。
アミン系の正孔輸送材料の電子親和力としては、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPB)が5.4eV、トリフェニレンジアミン(TPD)で5.5eV、スターバーストアミン誘導体が約5.0eVから5.2eVであることが知られている。従って、深い電子親和力を持つ層の電子親和力と正孔輸送層のイオン化ポテンシャルとの差が1.4eV以下であれば、充分にキャリア生成が可能である。
また、この1.4eVという値は、有機層のエネルギーレベルの分布から理論的にも妥当性を見出せる。例えば、アモルファス性の薄膜の場合、分子間距離の不均一性、分子の配向分布から、電荷に対する分極エネルギーに分布が生じ、このため電子親和力及びイオン化ポテンシャルが空間分布を持ち、偏差が0.2〜0.3eVのガウス分布を生じる。このため、1.4eVの差はこの分布のすそ野で重なりを与え、その重なり幅は分布中心から2.33〜3.5σに位置することになり、ガウスの誤差関数を用いてerfc(2.33)^2〜erfc(3.5)^2の状態密度を持つこととなる。これは、全状態密度を10^22としたときに、1015〜1018/cm3の状態密度に相当し、有機ELの発光に必要とされる1014〜1017/cm3のキャリア密度から考えても、1.4eV以内であれば十分なキャリア密度を生成可能であることがわかる。
ここで、上記の構成を逆にし、中間層側にホールを生成させ、隣接する陽極側の発光ユニットに電子を生成する場合には、中間層側に浅いイオン化ポテンシャルを持つ材料で構成された層或いは当該材料を含む層を配置し、陰極側の発光ユニットとの界面に絶縁性有機化合物からなる層を配する。この場合の浅いイオン化ポテンシャルの層と陽極側の発光ユニットの接する層の電子親和力との差も、同様に1.4eV以下であればキャリア生成が可能であり好ましい。
また、混合層を構成する有機物の深い電子親和力と、混合物層の絶縁性有機物層側とは反対側に隣接する層のイオン化ポテンシャルとの差が、負になる場合(例えば、深い電子親和力を持つ層の電子親和力が正孔輸送層のイオン化ポテンシャルより大きくなった場合等)は、電界を印加すること無く界面でキャリアを生成することとなる。電子親和力の定義、即ち「(中性分子のエネルギー)−(アニオン分子のエネルギー)」と、イオン化ポテンシャルの定義、即ち「(カチオン分子のエネルギー)−(中性分子のエネルギー)」から、両分子が中性でいるよりもアニオンとカチオンになった方がエネルギーが低いため、熱平衡状態に於いてキャリア生成を自発的に引き起こす。従って、このように上記差が負になる場合でもキャリア生成の効果があるため、上記のようなエネルギーレベルの関係にある層を中間層として利用可能である。
なお、このキャリアが生成され、両キャリアが存在している場合を時として「電荷移動錯体が生成されている。」と誤解するきらいがあるが、電荷移動錯体は錯体を形成する束縛エネルギーを持つもので、この束縛エネルギーがアクセプターの電子親和力とドナーのイオン化ポテンシャルとの差より大きいことは、周知の事実であり、先に述べた議論からも明らかである。この電荷移動錯体が生成されると、電荷移動錯体から自由キャリアとして電子とホールを生成するには、束縛エネルギーを超えるエネルギーを与える必要がある。これは、単一分子に対してそのエネルギーに相当する電位差を与えることに等しく、界面にこの錯体が全て配列している場合でも、その電位差分の印加電圧上昇を引き起こす。混合層の場合であって、層内に電荷移動錯体が分布している場合は、その電圧上昇は分子層数倍となり、数nm程度の膜厚でさえ数V以上の電位差となり、中間層として機能させることが困難となる。
中間層として重要な点は、この例の構成の場合、深い電子親和力を持つ層側に生成された電子は陽極側に位置する発光ユニットへ高いバリアを超えて注入されねばならず、これをどのような手法で実現するかにある。本発明者らは、上記特許文献11において、この界面に絶縁性有機化合物の薄層を配置することで、深い電子親和力の層より、浅い電子親和力を持つ電子輸送層に電子注入が可能となり、等価的に直列動作が可能となることを見出した。更に、本発明者らは鋭意検討を進め、絶縁性有機物層に隣接し深い電子親和力を持つ有機物からなる層に対して金属をドーズして混合層とした場合、又は、絶縁性有機物層に隣接し深い電子親和力を持つ有機物からなる層に対して金属層を積層して混合層とした場合に、当該絶縁性有機物層と当該混合層とからなる中間層における電圧ロスが大きく低減し、より低い駆動電圧で動作することを見いだし、本発明に至った。
深い電子親和力をもつ有機物としては、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(例えばHAT−CN6)が好ましい化合物であるが、用いる有機物としてはこの例に限らない。深い電子親和力を持つ有機物と金属元素とは、強い配位結合を引き起こす傾向にある。金属配位した有機物分子は、それ自身がもとの有機物とは異なる分子として機能するため、金属をドーズすることで異なる機能及び物性を実現することができる。
ここで、図4に、HAT−CN6にAlを共蒸着により配位させた膜の導電率の測定結果を示す。測定素子は二本の平行するITO電極を間隔0.2mmで配置し、100nmの厚さの膜を真空蒸着法により形成し測定した。この例では、ドーズ量又は積層量がモル比で3を超え始めると急激に導電率が上昇し、また本来のHAT−CN6の半導体特性からオーミックに変化している。導電性が高くなることで絶縁層を介しての電子注入効率が向上する理由は、正確なところは不明であるが、おそらくは導電性が向上することで発生したキャリアが生成界面付近に留まらず層内全体に広がり絶縁層界面に到達し、発光ユニット側で封じ込められ貯まっているホールの作る電位と、この中間層内の電子の作る電位が有効に絶縁層に作用し電界を印加し、電子注入を促進しているものと考えられる。このため、発光ユニット側からは無効なホール電流が中間層に流れ込まない十分なホールバリアとなる絶縁層及び/又は電子輸送層が必要となる。
中間層の導電性が低い場合、即ち、熱平衡キャリアが存在していない絶縁体等の場合、生成したキャリアはそれぞれの電荷が作る空間電荷により,生成界面に留まる状態に「バンドベンディング」を引き起こすことは容易に理解できる。このベンディングを解いて、電子とホールを移動させるには、更に印加電圧を高くしていく必要がある。
ドーズする金属、即ち、上記混合層に含まれる金属としては、13族のAl、Ga、Inが好ましいが、3族〜12族の遷移金属元素も同様の効果をもたらすため用いることができる。13族の金属が好ましい理由としては、正確なところは不明ではあるが、最外殻軌道電子が深く関わっていると考えられる。13族の金属は、HAT−CN6等に対しては2つの窒素に挟まれた構造を取り2座で配位するため、孤立電子が1つ余り、この電子が分子間の電子移動を誘発していると考えられる。また、13族の金属は、芳香環やCC二重結合に対しては、電子対として配位するため、やはり1個の過剰電子が存在し同様な効果が得られるものと考えられる。
また、3族〜12族の遷移金属が効果を発揮する理由も明確ではないが、おそらくは配位する際に最外殻電子の配置が換わり、一部s電子がd軌道に移り、配位する際に1電子欠乏することとなり、13族とは逆の状態を引き起こすためと考えられる。このような遷移金属は、元素自体でも例えばAgは4d103s1の配置をとり、同様にs1となるものはCu、Cr、Rh、Ru、Au、Pt等多数ある。有機分子と配位し変化する場合も考慮すると、全ての遷移金属元素を本発明における上記金属として使用し得ると言える。もちろん、3族〜12族の遷移金属は、有機分子との配位により、その電子配置が変化してしまうため、効果を発現するか否かは組合せに依存する。
なお、本発明の有機EL素子における絶縁性有機物層は、絶縁性有機物のみからなる単一膜でもよく、また、絶縁性有機物と、電子輸送層に用いられる電子輸送性有機物及び/又は中間層に利用する深い電子親和力を持つ有機物を含む混合膜であってもよい。
本発明によれば、従来のスタック型有機EL素子の構造に必須であったアルカリ金属等の還元性物質の使用を回避し、製造工程を格段に簡素化しながらも、従来と略同等の性能を有しかつ駆動電圧を低減させたスタック型有機EL素子を実現することができる。
本発明の有機EL素子の典型的な構成を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子の典型的な構成を示すエネルギーダイアグラムの概略図である。 実施例1と比較例1で作製した有機EL素子について、電圧(V)−輝度(cd/m2)をプロットしたグラフである。 実施例2と比較例2で作製した有機EL素子について、電流密度(mA/cm2)−電流効率(cd/A)をプロットしたグラフである。 実施例2と比較例2で作製した有機EL素子について、電圧(V)−輝度(cd/m2)をプロットしたグラフである。
本発明の有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に位置する、発光層を含む複数の発光ユニットと、前記複数の発光ユニットの間に位置する中間層と、を有し、前記中間層が、前記中間層から前記発光ユニットへの電荷の移動に対する障壁となる部位に設けられた絶縁性有機物層と、前記絶縁性有機物層に隣接して設けられた有機物と金属とからなる混合層と、を含むこと、を特徴とする。以下において、本発明の有機EL素子の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では重複する説明は省略することがある。
図1は、本実施形態の有機EL素子の構成を示す概略断面図であり、図2は、本発明の有機EL素子の典型的な構成を示すエネルギーダイアグラムの概略図である。図1に示すように、本実施形態の有機EL素子1は、n個の発光ユニットを含み(nは2以上の整数)、例えばガラス基板2上に順に形成された、陽極4と;第1の発光ユニット6−1と;第1の絶縁性有機物層8−1及び第1の混合層(有機物と金属とからなる混合層)10−1を含む第1の中間層9−1と;第2の発光ユニット6−2と;第2の絶縁性有機物層8−2及び第2の混合層10−2を含む第2の中間層9−2と;第(n−1)の絶縁性有機物層8−(n−1)及び第(n−1)の混合層10−(n−1)を含む第(n−1)の中間層9−(n−1)と;第nの発光ユニット6−nと;陰極14と;を含む構造を有している。
以下においては、第1の発光ユニット6−1、第2の発光ユニット6−2及び第nの発光ユニット6−nを「発光ユニット6」と総称し、第1の絶縁性有機物層8−1、第2の絶縁性有機物層8−2及び第(n−1)の絶縁性有機物層8−(n−1)を「絶縁性有機物層8」と総称することがある。また、第1の中間層9−1、第2の中間層9−2及び第(n−1)の中間層9−(n−1)を「中間層9」と総称することがあり、第1の混合層、第2の混合層10−2及び第(n−1)の混合層10−(n−1)を「混合層10」と総称することがある。
上記のように、本実施形態の有機EL素子1は、発光ユニット6に含まれる発光性有機物をクエンチングするアルカリ金属等の強電子供与性物質を一切含まない。また、発光ユニット6中に効率よく電子電荷を供給するために、低誘電率の絶縁性有機物層8が混合層10と発光ユニット6との間に設けられた構成を有している。
本発明の有機EL素子1における絶縁性有機物層8は、上述のように、比誘電率の低い絶縁性有機物で構成されていればよく、かかる絶縁性有機物としては、種々の有機化合物を使用することが期待される。なかでも、例えば、下記式:
で表わされるCa(dpm)2(ビス−ジ−ピバロイル−メタナート−カルシウム)等のβジケトン型配位子を有する金属錯体等が挙げられる。
また、絶縁性有機物層8は、例えば、電子電荷が移動する部位に設けられる場合は、電子電荷の輸送に対して絶縁性を有する層として機能するものであればよく、したがって、ホール(正孔)輸送性有機物で形成されたホール輸送性有機物層であってもよい。
本実施形態における混合層10を構成する有機物は、は、上述のとおり、隣接する層(例えばホール輸送層)との界面において、電子及びホールを発生させる部位を形成し得る物質であればよい。例えば、混合層10を深い電子親和力を持つ有機物(例えばHAT−CN6)と3族〜13族の元素(例えばAl)で構成し、陰極14側に隣接するホール輸送層(例えばNPB)で構成すれば、電圧を印加すると界面において、電子及びホールのキャリア生成を起こし、かつ絶縁性有機物層8を経て発光ユニット6へ良好なキャリア注入を行うことができる。
また、上記、混合層10は、深い電子親和力を持つ有機物(例えばHAT−CN6)と3族〜13族の元素(例えばAl)とから構成され、更に、その陰極側に隣接して、深い電子親和力を持つ有機物のみからなる層が積層されていてもよい。即ち、隣接するホール輸送層との界面における電子及びホールのキャリア生成が、3族〜13族の元素の存在によって却って阻害される場合は、このような2層構造を採用するのが好適である。
陰極14を構成する材料としては、一般的には仕事関数の小さい金属、またそれらを含む合金、金属酸化物等が用いられる。具体的には、Li等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、Eu等の希土類金属等からなる金属単体、もしくは、これらの金属とAl、Ag、In等との合金等が挙げられる。
また、陰極14と有機層との界面に金属ドーピングされた有機層を用いる構成(例えば、特開平10−270171号公報及び特開2001−102175号公報参照)を採用する場合には、陰極は導電性材料であれば、その仕事関数等の性質は別段、制限とはならない。
例えば特開平11−233262号公報及び特開2000−182774号公報に開示された技術を使用して、陰極14に接する有機層(発光ユニット6中の有機層)をアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び希土類金属イオンの少なくとも1種を含有する有機金属錯体化合物により構成する場合には、当該有機金属錯体化合物中に含有される金属イオンを真空中で金属に還元し得る金属、例えば、Al、Zr、Ti、Si等の(熱還元性)金属、又はこれらの金属を含有する合金を陰極材料として使用することもできる。これらのうち、特に、配線電極として一般に広く使用されているAlが蒸着の容易さ、光反射率の高さ、化学的安定性等の観点から好ましい。
陽極4を構成する材料としては、特に制限はなく、例えば、ITO(インジウム・すず酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)等の透明導電材料を使用することができる。例えば、特開2002−332567号公報に記載された手法を用いてITO成膜を有機膜に損傷の無いようなスパッタリング法によって行う場合は、陰極14の場合と同様に、特開平10−270171号公報に記載されている金属ドーピングされた有機層を電子注入層に用いれば、前述のITOやIZO等の透明導電材料を陰極14に使用することもできる。
したがって、陰極14及び陽極4の両方を透明とすれば、有機層を含む発光ユニットも中間層も同様に透明であるから、透明な有機EL素子を作ることもできる。また、一般的な有機EL素子の場合とは逆に、陽極4を金属で構成して陰極14を透明電極とすることで、ガラス基板2側からではなく陰極14側から光をとり出す構造の有機EL素子1とすることも可能である。また、各層の形成順序に関しては、必ずしも陽極14の形成(成膜)から始める必要はなく、陰極4から形成を始めてもよい。
本実施形態における発光ユニット6は、従来公知の有機EL素子と同様に、種々の構造を採ることができ、例えば、発光層と、ホール輸送層及び/又は電子輸送層と、の組合せで構成すればよく、その組合せとしても種々の態様を採用することが可能である。
発光ユニット6に含まれる「発光層」は、従来の有機EL素子に用いられる従来の発光層であればよく、発光層を構成する発光材料についても、特に制限はなく、各種の蛍光材料又は燐光材料等の公知の任意のものを使用することができる。例えば、下記式:
で表わされるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq3)等が挙げられる。
「ホール輸送層」は、従来の有機EL素子のホール輸送層を構成するホール輸送性物質を用いて形成すればよく、特に制限はないが、例えばイオン化ポテンシャルが5.7eVより小さく、ホール輸送性即ち電子供与性を有する有機化合物(電子供与性物質)が挙げられる。一般に電子供与性を有する有機化合物が容易にラジカルカチオン状態となるにはイオン化ポテンシャルが5.7eVより小さいことが望ましい。
例えば、一般式(I):
(式(I)中、Ar1、Ar2及びAr3は、それぞれ独立して置換基を有してよい芳香族炭化水素基を表わす。)で示されるアリールアミン化合物であるのが好ましい。なかでも、4,4’−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(NPB)が好ましい。
また、「ホール輸送層」には、上記アリールアミン化合物以外にも、従来から有機EL素子のホール注入材料として用いられてきたフタロシアニン化合物を含む顔料系有機材料を用いてもよく、電圧印加時に電荷発生できる材料であれば、適宜選択して使用することができる。
「電子輸送層」は、従来の有機EL素子の電子輸送層を構成する電子輸送性物質を用いて形成すればよく、特に制限はないが、本実施形態で使用する電子輸送性物質は、一般に有機EL素子に用いられる電子輸送性物質のなかでも比較的深いイオン化ポテンシャルを有するものが好ましい。具体的には、少なくとも概ね6.0eV以上のイオン化ポテンシャルを有する電子輸送性物質を用いるのが好ましい。このようにイオン化ポテンシャルの深い電子輸送性物質を使用すると、電子輸送性物質に向かってホール電荷が移動しにくく、上述のように、中間層9で発生した電子電荷がホール電荷を電気的に中和することなく、確実に発光物質を励起して発光させることができる。
また、本実施形態で使用する電子輸送性物質の電子親和力は、中間層9内に使用される(強)電子受容性物質の電子親和力と発光ユニット6に含まれる発光性有機物の電子親和力との間に位置することが好ましい。
なお、電子輸送性物質(有機物)としては、例えば、ケミプロ化成(株)製のKLET02等を用いることができる。なお、ケミプロ化成(株)製の電子輸送性物質(有機物)の物性値は以下に示されている(ケミプロ化成(株)のHPより。http://www.chemipro.co.jp/Yuki#EL/Products.html)。
ここで、本実施形態における中間層9を構成する混合層10に用いられる有機物としては、例えば、下記式:
で表わされるヘキサアザトリフェニレン誘導体(HAT−CN6)等が挙げられる。
以上、本発明の有機EL素子の典型的な積層構造(単位)を有する実施形態について説明したが、本発明は、本発明の技術的思想の範囲内で種々の設計変更が可能であり、これら設計変更した発明も当然に本発明に含まれる。
<変形態様>
例えば、本発明の有機EL素子において絶縁性有機物層に電子輸送層が隣接している場合、絶縁性有機物層には、電子輸送層を構成する電子輸送性有機物が混合されていてもよい。即ち、本発明の有機EL素子は、絶縁性有機物層に代えて、絶縁性有機物・電子輸送性物質混合層を有していてもよい。
また、本発明の有機EL素子において絶縁性有機物層に強電子受容物質層が隣接している場合、絶縁性有機物層には、強電子受容性物質層を構成する強電子受容性物質が混合されていてもよい。即ち、本発明の有機EL素子は、絶縁性有機物層に代えて、絶縁性有機物・強電子受容性物質混合層を有していてもよい。このような構成であっても、電子輸送性物質と強電子受容性物質の好ましくない相互作用を回避することができる場合があり、このことは適宜実験によって確かめることができる。
また、一般的に、発光ユニット中の発光層は、ホスト材料と、当該ホスト材料中に分散された発光物質と、で構成されている場合が多く、また、当該ホスト材料は、電子輸送性物質と同一の材料である場合もある。したがって、本発明の有機EL素子において発光層に電子輸送層が隣接している場合、発光層と電子輸送層とは、同一の材料を用いて一体的に形成された単一の層で構成してもよい。
また、本発明の有機EL素子において発光層にホール輸送層が隣接している場合、ホール輸送性物質が発光したり発光層のホスト材料として機能したりすることもあるため、この場合は、発光層とホール輸送層とを一体的に形成された単一の層で構成してもよい。更にこの場合、ホール輸送層の陰極寄りの部位のみに発光物質が分散混合されている場合もある。
より具体的には、本発明の有機EL素子は、例えば次のような積層構造をとることもできる。
a)陽極
b)深い電子親和力を持つ有機物層
c)ホール輸送層
d)発光層
e)電子輸送層
f)絶縁性有機物層
g)有機物及び金属を含む混合層
h)上記b)〜上記g)の繰り返し
-------------------------------
i)陰極
本発明の有機EL素子は、下記のように、上記積層構造において、深い電子親和力を持つ有機物とホール輸送性物質の混合層を有する積層構造を有していてもよい。なお、上記のように、混合層は、複数の蒸着源を別々に加熱して成膜し、積層膜として形成したり、複数の蒸着源を同時に加熱して混合膜として形成することができ(共蒸着)、後者が一般的ではあるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明の有機EL素子は、例えば次のような積層構造をとることもできる。
a)陽極
b)深い電子親和力を持つ有機物層・ホール輸送物質混合層
c)ホール輸送層
d)発光層
e)電子輸送層
f)絶縁性有機物層
g)有機物及び金属を含む混合層
h)上記b)〜上記g)の繰り返し
-------------------------------
i)陰極
更に、上記積層構造において、電子輸送層と絶縁性有機物層とが隣接する積層構成部分(「電子輸送層/絶縁性有機物層」)を、電子輸送層と電子輸送性有機物・絶縁性有機物混合層とが隣接する積層構成部分(「電子輸送層/電子輸送性有機物・絶縁性有機物混合層」)に変更してもよい。即ち、電子輸送層を構成する電子輸送性有機物を、絶縁性有機物層に混合して使用してもよい。
また、更には、電子輸送層部分全体が予め「電子輸送性有機物・絶縁性有機物混合層」に置換されていてもよく、「電子輸送性有機物・絶縁性有機物混合層/絶縁性有機物層」のように、混合層に絶縁性有機物層が隣接して積層されていてもよい。
また、上記積層構造において、電子輸送層と絶縁性有機物層とが隣接する積層構成部分(「電子輸送層/絶縁性有機物層」)を、電子輸送層と絶縁性有機物・強電子受容性物質混合層とが隣接する積層構成部分(「電子輸送層/絶縁性有機物・強電子受容性物質混合層」)に変更してもよい。即ち、強電子受容性物質層を構成する強電子受容性物質を、絶縁性有機物層に混合して使用してもよい。このような構成であっても電子輸送性有機物と強電子受容性物質の好ましくない相互作用を回避できる場合があり、これらは適宜実験によって確かめることができる。
また、一般的に、発光層においては、発光物質がホスト材料に分散されて存在する場合が多く、当該ホスト材料は電子輸送物質と同一である場合もある。したがって、本発明の有機EL素子においては、発光層と電子輸送層とが隣接する積層構成部分は、同一の材料からなる一層であってもよい。
上記積層構造のホール輸送材料が、発光層を構成する場合や、発光層のホスト材料として機能する場合もあるので、これらの場合は、「ホール輸送層/発光層/電子輸送層」の積層構成部位が、「ホール輸送層(発光層)/電子輸送層」の積層構成部位に変更されてもよい。ホール輸送層の陰極寄りの部位のみに発光物質が分散混合されている場合は、「ホール輸送層/発光層/電子輸送層」の積層構成部位が、「ホール輸送層/ホール輸送材料・発光材料混合層/電子輸送層」の積層構成部位に変更されてもよい。
即ち、陽極、陰極、陽極と陰極との間に位置する、発光層を含む複数の発光ユニット、及び複数の発光ユニットの間に位置する中間層、を含む有機EL素子において、中間層から発光層への電荷の移動に対する障壁となる部位に絶縁性有機物層が設けられており、その絶縁性有機物層に有機物と金属の混合層が隣接して形成される積層構造を含む有機EL素子は、他の構成要素を含んでいても、基本的には本発明の有機EL素子の技術的範囲に含まれる。
上記では、本発明の有機EL素子の基本単位の構造を説明したが、本発明の有機EL素子は、これらの基本単位が複数積層された構造を有していてもよい。そして、上記のような本発明の有機EL素子は、真空蒸着装置を用いて従来公知の方法で製造することができる。特に、陽極及び陰極以外の各層が有機化合物で形成された構成を有する有機EL素子を得る場合には、工程が煩雑になることなく簡便に製造を実施することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
≪実施例1≫
実施例1の有機EL素子として、ガラス基板上に以下の表1に示す材料及び厚さの層を順に積層し、図1に示す構造を含む有機EL素子1を作製した。各層の形成には、(株)エイコー製の真空蒸着機を使用した。各層の厚さは、触針式表面形状測定器(DEKTAK3030)を用いて測定し、得られた有機EL素子の特性評価には、ケースレーインスツルメンツ(株)製のソースメータ2400及びトプコン(株)製の輝度計BM−7を使用した。
≪比較例1≫
比較例1の有機EL素子として、実施例1と同様にして、ガラス基板上に以下の表2に示す材料及び厚さの層を順に積層し、比較有機EL素子1を作製した。
[評価試験]
上記のようにして作製した有機EL素子1(実施例1)及び比較有機EL素子1(比較例1)それぞれの陽極と陰極との間に、直流電圧を0.1V/2秒又は0.5V/2秒の割合でステップ状に印加して、電圧上昇1秒後の輝度(発光層からの緑色発光)及び電流値を測定した。図3に電圧(V)−輝度(cd/m2)をプロットしたグラフを示した。図3に示されたとおり、比較例1に対し実施例1は大幅な低電圧化が達成されている。
≪実施例2及び比較例2≫
実施例2及び比較例2の有機EL素子として、それぞれ表3及び表4に示す材料で構成された層を有する構造の2種類の有機EL素子(緑色燐光発光素子)2及び比較有機EL素子2を作製した。比較有機EL素子2は、発光ユニットが単一である素子であり、有機EL素子2は本発明の構成を有する中間層によって発光ユニットが3個接続された構成を有する素子である。
なお、ここで使用した化合物は、以下のとおりとした。
1)HT04(商品名):ケミプロ化成(株)製のホール輸送材料
2)Ir(ppy)3:下記式:
の構造を有するtris(2−phenylpyridine)iridium
3)Mg(acac)2: 下記式:
の構造を有するMagnesium acetylacetonate dehydrate
4)TCTA:下記式:
の構造を有する4,4',4''−Tris(carbazol−9−yl)−triphenylamine
5)NS60(商品名):新日鐵化学(株)製の発光層ホスト材料
実施例2及び比較例2の結果を図4及び5に示した。図4のグラフに示されるように、本発明の中間層によって接続された、発光ユニット3個を有する有機EL素子(表4に示す構造を有する素子)2は、単一の発光ユニットを有する比較有機EL素子(表3の構造を有する素子)2と比較して、電流効率が略3倍となった(〜60cd/A→〜180cd/A)。更に、図5のグラフに示されるように、駆動電圧も略3倍であることから、理想的に直列接続されていることが証明された。
以上のことから、本発明の有機EL素子は、低エネルギー消費であることが要求される各種光源及び画像表示装置等、光発生を必要とする広範囲の製品分野で使用可能であるといえる。

Claims (6)

  1. 陽極と、
    陰極と、
    前記陽極と前記陰極との間に位置する、発光層を含む複数の発光ユニットと、
    前記複数の発光ユニットの間に位置する中間層と、を有し、
    前記中間層が、前記中間層から前記発光ユニットへの電荷の移動に対する障壁となる部位に設けられた絶縁性有機物層と、前記絶縁性有機物層に隣接して設けられた有機物と金属とからなる混合層と、を含むこと、
    を特徴とする有機エレクトルミネッセント素子。
  2. 前記混合層を構成する前記有機物の電子親和力と、前記混合物層の前記絶縁性有機物層側とは反対側に隣接する層のイオン化ポテンシャルとの差が、1.4eV以下であること、
    を特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
  3. 前記混合層を構成する前記有機物が、ヘキサアザトリフェニレン誘導体を含むこと、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
  4. 前記混合層を構成する前記金属が、3族〜13族に属する金属元素を含むこと、
    を特徴とする請求項1〜3のうちのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
  5. 前記混合層が、前記有機物の層と前記金属の層との積層体で構成されていること、
    を特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
  6. 前記混合層が、前記有機物と前記金属の共蒸着層で構成されていること
    を特徴とする請求項1〜4のうちのいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセント素子。
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