本発明は、絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる発熱抵抗体を埋設させたセラミックヒータおよびその製造方法に関するものである。
ディーゼルエンジンの始動を補助するために使用されるグロープラグには、例えば、絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる発熱抵抗体を埋設させたセラミックヒータが使用される。セラミックヒータの発熱抵抗体は、一般にU字状に形成され、U字の折り返し部分の径が細くされることで、この部位が発熱部として機能するように構成される。さらに、基体の先端部が発熱部のU字形状に沿うように半球状に形成されることによって、セラミックヒータは、発熱部において発生する熱を基体の外部に効率よく伝達することができる。
近年、エンジンの始動性の向上や、排気ガスに含まれるNOxの低減のため、セラミックヒータへの通電を開始してからの昇温速度の向上が求められている。発熱抵抗体自体の設計変更や通電の際に流す電流の大きさの変更を伴うことなくセラミックヒータの急速昇温性を高めるには、発熱部において生じた熱が速やかに基体の外部に伝達されるようにすればよい。そのためには、セラミックヒータの外径を従来よりも細くし、発熱抵抗体を、より基体の外表面の近くに配置させることが考えられる。もっとも、ただ外径を細くしただけではセラミックヒータに折損の虞が生じてしまうため、基体の先端側を、例えばテーパ状にして、発熱部の周囲においてセラミックヒータの外径が細くなるようにすればよい(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、セラミックヒータの外径を細くすると、基体の表面積が減って放熱量が低下し、また、基体の肉厚が薄くなるため、特に発熱部の付近における熱容量が低下してしまう。このため、例えば燃料の付着やエンジン内の気流によって基体の先端部が冷却されると、発熱部も冷却されて温度が低下し、十分な急速昇温性を確保できなくなるという問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、基体の先端部の放熱量および熱容量を確保しつつ急速昇温性を得ることができるセラミックヒータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様によれば、絶縁性セラミックからなり、軸線方向に延びる柱状の基体と、導電性セラミックからなり、前記基体に埋設され、通電によって発熱する発熱抵抗体であって、前記軸線方向における前記基体の先端部に配置される発熱部と、当該発熱部の両端から前記基体の後端側へ向けて延びるリード部とを有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータであって、前記基体の先端部には、前記軸線方向先端側に向かって先細りになる先細り部が形成されており、前記先細り部の外周面には、外向きに凸で曲率半径の異なる複数の曲面であって、前記軸線方向に連続して連なる複数の曲面が、前記曲率半径を連続的に異ならせて配設されており、前記複数の曲面のうち前記軸線方向先端側に形成された先端側曲面は、該先端側曲面よりも前記軸線方向後端側に形成された後端側曲面と比べ、前記曲率半径が小さいことを特徴とするセラミックヒータが提供される。
第1態様において、先細り部の外周面には、外向きに凸な複数の曲面が軸線方向に連続して連なって配設されている。そして、それら連続して連なる複数の曲面は、曲率半径が連続的に異なり、且つ、後端側曲面よりも先端側曲面の曲率半径が小さい。つまり、先細り部の外周面に配設された複数の曲面は、先端側ほど曲率半径の小さな曲面である。これにより、先細り部では、軸線方向後端側における基体の外径と、先端側における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。このように先細り部において、より先端側まで基体の外径に近い径を確保することで、基体の外表面の面積をより大きく確保することができるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
第1態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、2.3<D≦3.3[mm]を満たしてもよい。セラミックヒータにおいて、特に発熱性能に寄与する基体の先端から6mmまでの部分における平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体の表面積が小さくなってしまうため、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり基体の内部の熱容量が増えるため、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。よって、平均外径Dを2.3<D≦3.3[mm]とすることによって、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向における前記発熱抵抗体の先端の位置を基準位置とし、前記基準位置と前記基体の先端の位置との最短距離をAとし、前記基準位置と前記先細り部の外周面をなす前記複数の曲面上の任意の位置との最短距離をBとしたときに、B>Aを満たしてもよい。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータは、発熱抵抗体の先端の位置(基準位置)と曲面との間における基体の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置と基体の先端との間における基体の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径を確保することができるので、曲面において、基体の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、基準位置と曲面との間における基体の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径が小さくなり、曲面において、基体の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体の先端部における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
第1態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記セラミックヒータの体積Vは、V≧D×20−21[mm3]を満たしてもよい。基体の先端から6mmまでの部分は、セラミックヒータを用いたグロープラグがエンジンに取り付けられた場合に、燃焼室内に突出され、発熱性能に寄与する部位である。この基体の先端から6mmまでの部分における体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞がある。よって、V≧D×20−21を満たすことで、十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
第1態様において、前記先細り部は、前記軸線方向と直交する平面状に形成される先端面と、自身の軸線を周方向に取り囲む側周面と、前記複数の曲面からなり、前記先端面と前記側周面とをテーパ状に接続するテーパ面と、を有し、前記軸線を含む前記基体の断面をみたときに、前記先細り部の前記テーパ面における輪郭線である第1輪郭線は、前記先端面の輪郭線である第2輪郭線に接続する端点である第1端点が、前記側周面の輪郭線である第3輪郭線に接続する端点である第2端点よりも、前記軸線方向の先端側、且つ前記軸線方向と直交する径方向の内側に配置されるとともに、前記第1端点と前記第2端点との前記軸線方向の距離が、前記第1端点と前記第2端点との前記径方向の距離よりも大きく、さらに、前記第1端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度が、前記第2端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度よりも、大きくてもよい。
第1態様において、テーパ面の第1輪郭線をみたときに、第1端点が第2端点よりも軸線方向先端側且つ径方向内側に配置され、第1端点と第2端点との間の距離が軸線方向に長く、さらに、第1輪郭線の接線と軸線とのなす角度が、側周面側よりも先端面側において大きいという規定の下、テーパ面が形成されている。つまり、第1態様のテーパ面は、第1端点と第2端点とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、第2端点における基体の外径の大きさが第1端点へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面における基体の外径と、側周面における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面の外径として、側周面における基体の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。したがって、基体の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータの基体は、テーパ面が形成された部分における基体の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、特にテーパ面が形成されている部分において、基体をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータの先端部における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータが外部から冷却を受けても発熱抵抗体の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータの細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって抵抗体をよりセラミックヒータの外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向を長軸とし、前記第1端点と前記第2端点とを通る仮想的な楕円を配置した場合に、前記第1輪郭線の形状は、前記仮想的な楕円に沿う形状であってもよい。テーパ面がR面取りによって形成され、そのテーパ面の第1輪郭線が楕円に沿う形状であれば、テーパ面に稜角を生ずることがなく、ゆえにテーパ面におけるセラミックヒータの欠けを防止できる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面に前記仮想的な楕円を配置した場合の中心点の位置は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも後端側に配置されてもよい。発熱抵抗体の発熱部を、より先端面の近くに配置させることができるので、セラミックヒータの先端面側からも十分な放熱を行うことができ、セラミックヒータの発熱性能を高めることができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面に前記仮想的な楕円を配置した場合、前記軸線に対して前記径方向の両側に、2つの前記仮想的な楕円が互いに離間して配置されてもよい。このように、楕円の大きさを互いに離間して配置することのできる大きさとすれば、第1輪郭線の第1端点を楕円の長軸側の頂点に近づけることができ、また、第2端点を短軸側の頂点に近づけることができる。これにより、第1輪郭線の第1端点に接する接線の傾きを、第2輪郭線の接線の傾きに近づけることができるとともに、第1輪郭線の第2端点に接する接線の傾きを、第3輪郭線の接線の傾きに近づけることができる。よって、第1輪郭線と第2輪郭線とがなめらかに接続されるようにすることができ、同様に、第1輪郭線と第3輪郭線とも、なめらかに接続されるようにすることができる。ゆえに、第1端点や第2端点において、稜角が形成されないか、あるいは形成されても断面で180度に近い角度となるようにすることができ、稜角部分を起点として発生しうるセラミックヒータの欠けをより確実に防止することができる。
本発明の第2態様によれば、絶縁性セラミックからなり、軸線方向に延びる柱状の基体と、導電性セラミックからなり、前記基体に埋設され、通電によって発熱する発熱抵抗体であって、前記軸線方向における前記基体の先端部に配置される発熱部と、当該発熱部の両端から前記基体の後端側へ向けて延びるリード部とを有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータであって、前記基体の先端部には、前記軸線方向先端側に向かって先細りになる先細り部が形成されており、前記先細り部の外周面には、前記軸線に対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が前記軸線方向に沿って配設されており、前記複数の傾斜面のうち前記軸線方向先端側に形成された先端側傾斜面は、該先端側傾斜面よりも前記軸線方向後端側に形成された後端側傾斜面と比べ、前記傾斜角度が大きいことを特徴とするセラミックヒータが提供される。
第2態様において、先細り部の外周面には、軸線に対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が軸線方向に沿って配設されている。そして、それらの傾斜面は、後端側傾斜面の軸線に対する傾斜角度よりも、先端側傾斜面の傾斜角度が大きい。つまり、先細り部の外周面に配設された複数の傾斜面は、先端側ほど軸線に対する傾斜角度が大きい傾斜面である。それらの傾斜面が軸線方向に沿って配設されることにより、先細り部は、断面の輪郭線が先端側から後端側へ向け徐々に、軸線に対する傾斜角度が小さくなる形状となっている。これにより、先細り部では、軸線方向後端側における基体の外径と、先端側における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。このように先細り部において、より先端側まで基体の外径に近い径を確保することで、基体の外表面の面積をより大きく確保することができるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
第2態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、2.3<D≦3.3[mm]を満たしてもよい。セラミックヒータにおいて、特に発熱性能に寄与する基体の先端から6mmまでの部分における平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体の表面積が小さくなってしまうため、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり基体の内部の熱容量が増えるため、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。よって、平均外径Dを2.3<D≦3.3[mm]とすることによって、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
第2態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向における前記発熱抵抗体の先端の位置を基準位置とし、前記基準位置と前記基体の先端の位置との最短距離をAとし、前記基準位置と前記先細り部の外周面をなす前記複数の傾斜面上の任意の位置との最短距離をBとしたときに、B>Aを満たしてもよい。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータは、発熱抵抗体の先端の位置(基準位置)と傾斜面との間における基体の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置と基体の先端との間における基体の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径を確保することができるので、傾斜面において、基体の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、基準位置と傾斜面との間における基体の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径が小さくなり、傾斜面において、基体の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体の先端部における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
第2態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記セラミックヒータの体積Vは、V≧D×20−21[mm3]を満たしてもよい。基体の先端から6mmまでの部分は、セラミックヒータを用いたグロープラグがエンジンに取り付けられた場合に、燃焼室内に突出され、発熱性能に寄与する部位である。この基体の先端から6mmまでの部分における体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞がある。よって、V≧D×20−21を満たすことで、十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
第2態様において、前記先細り部は、前記軸線方向と直交する平面状に形成される先端面と、自身の軸線を周方向に取り囲む側周面と、前記複数の傾斜面からなり、前記先端面と前記側周面とをテーパ状に接続するテーパ面と、を有し、前記軸線を含む前記基体の断面をみたときに、前記先細り部の前記テーパ面における輪郭線である第1輪郭線は、前記先端面の輪郭線である第2輪郭線に接続する端点である第1端点が、前記側周面の輪郭線である第3輪郭線に接続する端点である第2端点よりも、前記軸線方向の先端側、且つ前記軸線方向と直交する径方向の内側に配置されるとともに、前記第1端点と前記第2端点との前記軸線方向の距離が、前記第1端点と前記第2端点との前記径方向の距離よりも大きく、さらに、前記第1端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度が、前記第2端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度よりも、大きくてもよい。
第2態様において、テーパ面の第1輪郭線をみたときに、第1端点が第2端点よりも軸線方向先端側且つ径方向内側に配置され、第1端点と第2端点との間の距離が軸線方向に長く、さらに、第1輪郭線の接線と軸線とのなす角度が、側周面側よりも先端面側において大きいという規定の下、テーパ面が形成されている。つまり、第2態様のテーパ面は、第1端点と第2端点とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、第2端点における基体の外径の大きさが第1端点へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面における基体の外径と、側周面における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面の外径として、側周面における基体の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。したがって、基体の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータの基体は、テーパ面が形成された部分における基体の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、特にテーパ面が形成されている部分において、基体をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータの先端部における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータが外部から冷却を受けても発熱抵抗体の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータの細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって抵抗体をよりセラミックヒータの外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
第2態様において、前記第1輪郭線を構成する複数の線分同士がなす角度と、前記第2輪郭線と前記第1輪郭線とが前記第1端点においてなす角度と、前記第3輪郭線と前記第1輪郭線とが前記第2端点においてなす角度とは、いずれも、145度以上であってもよい。テーパ面がC面取である場合、輪郭線において稜角部分が生ずるが、これら稜角部分における角度(輪郭線の線分がなす角度)がどの部位においても145度以上であれば、テーパ面におけるセラミックヒータの欠けを防止する上で有効である。
第1または第2態様において、前記第3輪郭線は、前記第2端点から前記軸線方向の後端側へ向けて、前記径方向の外向きに広がりつつ延びる第4輪郭線と、前記第4輪郭線に接続し、前記軸線方向と平行に延びる第5輪郭線とを含み、前記第2端点は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも先端側に配置され、前記第4輪郭線と前記5輪郭線との接続点は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも後端側に配置されてもよい。
発熱抵抗体の先端位置を跨いで側周面のうちのテーパ状をなす部分(第4輪郭線)が配置されるので、発熱抵抗体の発熱部が、そのテーパ状の部分に配置されることとなり、基体の外表面に近くなるので、発熱部で生じた熱を効率よく外部に放熱することができ、セラミックヒータの発熱性能を高めることができる。
第1または2態様において、前記先端面の面積をS1とし、直径が、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径である円の面積をS2としたときに、S1/S2×100≧27[%]を満たしてもよい。先端面の面積S1が小さいほど、テーパ面の形成部位における基体の外径の窄みが大きいので、テーパ面が形成されている部分において、基体の外径の確保が難しくなる。すると、テーパ面における基体の表面積を十分に確保できず、セラミックヒータの放熱量が低下する虞がある。具体的に、S1/S2×100≧27[%]が満たされれば、セラミックヒータの特にテーパ面における基体の表面積を十分に確保して、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。
本発明の第3態様によれば、第1または2態様に係るセラミックヒータの製造方法であって、前記基体と前記発熱抵抗体とが一体に焼成された柱状の焼成体の側面および端面を研磨し、前記軸線に平行な前記側周面と、前記軸線と直交する前記先端面とを形成する第1研磨工程と、前記焼成体の前記先端面と前記側周面とがなす稜角部分を研磨して、前記テーパ面を形成する第2研磨工程と、前記側周面の先端側を、前記テーパ面との接続部位を含めて、先端向きに窄むテーパ状に研磨する第3研磨工程と、を含むセラミックヒータの製造方法が提供される。このような工程を経て、セラミックヒータの研磨を行いテーパ面を形成すれば、第1または2態様と同様の効果を得られるセラミックヒータを容易に製造することができる。
グロープラグ1の縦断面図である。
セラミックヒータ2を部分的な断面でみた斜視図である。
セラミックヒータ2の軸線Pを含む断面の輪郭線を先端部22において拡大してみた図である。
セラミックヒータ2の先端から6mmまでの部分を切り取り部分的な断面でみた斜視図である。
セラミックヒータ2の製造過程を示す図である。
変形例としてのセラミックヒータ202の軸線Pを含む断面の輪郭線を先端部22において拡大してみた図である。
規定対象部位における体積Vと平均外径Dとの関係を示すグラフである。
セラミックヒータ2の先端部22に対して行った衝撃試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明を具体化したセラミックヒータおよびその製造方法の一実施の形態について、図面を参照して説明する。一例としてグロープラグ1が備えるセラミックヒータ2を挙げ、図1,図2を参照して、グロープラグ1の構造について説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、主体金具4の軸線を軸線Oとし、軸線Oを、主体金具4に組み付けられた、グロープラグ1を構成する各部品の位置関係や向き、方向を説明する上での基準とする。図1では、軸線Oの延伸方向(以下、「軸線O方向」ともいう)において、セラミックヒータ2の配置された側(図中下側)をグロープラグ1の先端側とする。また、図2において、グロープラグ1に組み付ける前のセラミックヒータ2の軸線を、軸線Pとし、発熱抵抗体24の発熱部27が配置された側(図中上側)を、セラミックヒータ2の先端側として説明する。
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、封止部材7と、接続リング85とを備える。
まず、セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は絶縁性セラミックからなる基体21の内部に、導電性セラミックからなり、通電によって発熱する発熱抵抗体24を埋設したものである。図2に示すように、セラミックヒータ2は軸線Pに沿って延びる丸棒状をなし、先端部22側の端面である先端面11は、軸線Pと直交する平面状に形成されている。また、先端面11と、軸線Pを周方向に取り囲む側周面15とがなす稜角部分はR面取りによって面取りされ、先端面11と側周面15とを先端向きに窄むテーパ状に接続するテーパ面12が形成されている。
セラミックヒータ2の側周面15は、先端部22において先端向きに窄むテーパ状に形成された第1側周面13と、第1側周面13よりも後端側で非テーパ状の第2側周面14とを含む。第1側周面13は、側周面15とテーパ面12との稜角部分をC面取りすることによって形成され、テーパ面12と、側周面15において面取りされなかった第2側周面14とをテーパ状に接続する。先端面11、テーパ面12および第1側周面13は、基体21の先端部22において、軸線P方向の先端側へ向けて先細っており、以下、先端面11、テーパ面12および第1側周面13を総称して先細り部16という。また、図示しないが、セラミックヒータ2の後端部23にも、縁端部分にテーパ状のC面取が施されている。
セラミックヒータ2の基体21に埋設された発熱抵抗体24は、導電性セラミックからなり、断面略U字状に形成され、発熱部27とリード部28,29とを有する。発熱部27は略U字状に形成され、U字の折り返し部分が先端側へ向けられた状態で、基体21の先端部22に配置されている。リード部28,29は発熱部27の両端(U字形状の両端)にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱部27の断面積は、リード部28,29の断面積よりも小さくなるように成形されており、通電時、主に発熱部27において発熱が行われる。また、セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28,29は、それぞれ、軸線O方向において互いにずれた位置にて基体21の外周面に露出されている。
次に、保持部材8について説明する。図1に示すように、保持部材8は、軸線O方向に延びる円筒状の金属部材であり、セラミックヒータ2の胴部分を径方向に保持する。また、保持部材8は、自身の筒孔内でセラミックヒータ2のリード部28の露出部分と電気的に接続する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の筒孔の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の後端側には肉厚の鍔部82が形成されており、後述する主体金具4の先端部41が接合される。
また、保持部材8の後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング85が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2のリード部29の露出部分は、接続リング85と電気的に接続されている。接続リング85には、後述する中軸3の先端部31が接合される。
次に、主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4は、先端部41の内周が保持部材8の鍔部82に嵌められ、両者の合わせ部位がレーザ溶接されることによって、保持部材8と一体に接合され、且つ、電気的に接続されている。これにより、主体金具4は保持部材8を介してセラミックヒータ2のリード部28と電気的に接続される。また、主体金具4の先端部41と後端部45との間の胴部44には、グロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成された取付部42が設けられている。そして、主体金具4の後端部45には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する六角形状の工具係合部46が形成されている。
次に、中軸3について説明する。中軸3は、軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43に挿通され、主体金具4とは絶縁状態に配置される。中軸3の先端部31は、上記の接続リング85の内周に係合され、レーザ溶接によって一体に接合されるとともに、電気的に接続されている。これにより、中軸3は、接続リング85を介してセラミックヒータ2のリード部29と電気的に接続される。また、中軸3の後端部32は、主体金具4の後端部45よりも後端側へ突出される接続端部36と、後端部45に配置される接続基部37とを有する。
次に、主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37の外周面との間には、例えばフッ素ゴム等、絶縁性および弾性を有する部材から形成される円筒状の封止部材7が配置される。封止部材7は、軸孔43内で中軸3の後端部32を保持して中軸3の振れを抑制するとともに、軸孔43内の気密性を保つ。また、封止部材7よりも後端側には、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から筒状に形成される絶縁部材6が配置される。絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、中軸3の後端部32を挿通され、主体金具4の後端部45の開口部分に配置される。
そして、中軸3の接続端部36には、接続端子5が加締めにより固定される。接続端子5には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱抵抗体24は、一端側(リード部29側)が、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される。そして、発熱抵抗体24の他端側(リード部28)は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地され、接続端子5と主体金具4との間に通電されることによって、発熱部27が発熱する。
このような構造を有するグロープラグ1等に用いるセラミックヒータ2の熱容量を確保しつつ、急速昇温性を得るため、本実施の形態では、セラミックヒータ2の先端部22の形状を以下のように規定している。まず、図3に示すように、セラミックヒータ2の先端部22において、軸線Pを含む断面をみたときに、先端面11の輪郭線をL2、テーパ面12の輪郭線をL1、側周面15の輪郭線をL3とする。また、側周面15の輪郭線L3のうち、側周面15の含む第1側周面13の輪郭線をL4、第2側周面14の輪郭線をL5とする。そして、輪郭線L1の両端の端点のうち、輪郭線L2側の端点をM1、輪郭線L3側(輪郭線L4側)の端点をM2とする。なお、図3では、セラミックヒータ2の先端面11の輪郭線L2が配置された図中上側を、軸線P方向における先端側として説明を行う。
このとき、端点M1が、端点M2よりも、軸線P方向において先端側に位置し<1>、且つ、端点M1が、端点M2よりも、径方向の内側(軸線P寄り)に配置されること<2>を規定している。また、端点M1と端点M2との軸線P方向における距離をJ、端点M1と端点M2との径方向(軸線Pと直交する方向)における距離をKとする。このとき、距離Jが、距離Kよりも大きいこと<3>を規定している。さらに、輪郭線L1の接線で任意の2つの接線を、仮にT1,T2とする。そして、接線T1,T2のうち、端点M1に近い側の接点を通る接線をT1とし、端点M2に近い側の接点を通る接線をT2とする。このとき、接線T1と軸線Pとがなす角度α1が、接線T2と軸線Pとがなす角度α2よりも、大きいこと<4>を規定している。
<1>が満たされ、且つ、<2>が満たされることにより、先端側の端点M1が、後端側の端点M2よりも軸線P方向において先端側に位置し、且つ、径方向において内側に位置することが規定される。また、<4>が満たされることで、輪郭線L1が、少なくともM1,M2を通る直線よりも径方向外向きに、2以上の異なる接線を有して膨らむ形態であることが規定される。さらに、<3>が満たされることで、距離Jの大きさが距離K以下の場合と比べ、軸線P方向の、より先端側まで、径方向の大きさが確保される。すなわち、テーパ面12は、端点M1と端点M2とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、端点M2における基体21の外径の大きさが端点M1へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面12における基体21の外径と、側周面15における基体21の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面12の外径として、側周面15における基体21の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。細径化により外径を小さくすると、特にテーパ面12における外径が小さくなって基体21の外表面の面積も小さくなるが、テーパ面12のより先端側まで側周面15における基体21の外径に近い径を確保することで、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータ2の基体21は、テーパ面12が形成された部分における基体21の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、軸線P方向の、特にテーパ面12が形成されている部分において、基体21をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータ2が外部から冷却を受けても発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータ2の細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって発熱抵抗体24をよりセラミックヒータ2の外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態では、テーパ面12の輪郭線L1の形状が、端点M1と端点M2とを通る仮想的な楕円Eに沿う形状であること<5>を規定している。輪郭線L1の形状が上記の<1>〜<4>を満たしつつ端点M1と端点M2とを通る楕円Eは、軸線Pに平行な長軸Xと、軸線Pと直交する短軸Yをもつ楕円となる。このような楕円Eに沿うテーパ面12は、R面取りによって形成することができる。よって、テーパ面12には稜角が生じず、ゆえにテーパ面12におけるセラミックヒータ2の欠けを防止できる。
また、仮想的な楕円Eの中心点(長軸Xと短軸Yとの交点)の位置C1が、軸線P方向において、発熱抵抗体24の先端位置C2よりも後端側に配置されること<6>を規定している。ここで、発熱抵抗体24の先端位置C2は、基体21の内部に埋設される発熱抵抗体24の輪郭線L6が、軸線P方向においてもっとも先端に位置する部位を指す。発熱抵抗体24がU字形状を有するので、先端位置C2は、通常は軸線P上に位置しており、基体21内における発熱抵抗体24が軸線Pの周方向においてどの向きにあっても、軸線Pを含む断面において先端位置C2は一点に定まる。<1>〜<5>を満たしつつ、先端位置C2を楕円Eの中心点の位置C1よりも先端側、すなわち、楕円Eの長半径(長軸の半径)内に配置することで、発熱抵抗体24の発熱部27を、より先端面11の近くに配置させることができるので、セラミックヒータ2の先端面11側からも十分な放熱を行うことができ、セラミックヒータ2の発熱性能を高めることができる。
また、楕円Eは、軸線Pを挟んで径方向の両側にそれぞれ1つずつ仮想的に配置されるが、2つの楕円Eが互いに重ならず、離間して配置されること<7>を規定している。すなわち、楕円Eの短半径(短軸の半径)が、楕円Eの中心点の位置C1と軸線Pとの距離よりも小さい。このように、楕円Eの大きさを互いに離間して配置することのできる大きさとすれば、輪郭線L1の端点M1を楕円Eの長軸側の頂点に近づけることができ、また、端点M2を短軸側の頂点に近づけることができる。これにより、輪郭線L1の端点M1に接する接線の傾きを、輪郭線L2の接線の傾きに近づけることができるとともに、輪郭線L1の端点M2に接する接線の傾きを、輪郭線L3の接線の傾きに近づけることができる。よって、輪郭線L1と輪郭線L2とがなめらかに接続されるようにすることができ、同様に、輪郭線L1と輪郭線L3とも、なめらかに接続されるようにすることができる。ゆえに、端点M1や端点M2において、稜角が形成されないか、あるいは形成されても断面で180度に近い角度となるようにすることができる。
後述するが、セラミックヒータ2は、その製造過程の焼成工程において、公知のホットプレス法により径方向に縮められ軸線P方向に延びる圧縮変形を受けながら焼成されるため、基体21を構成するセラミックの粒子の配向方向が、ホットプレス時の加圧方向に直交する面方向に揃う。このため、端点M1や端点M2に稜角部分が残ると、先端面11側から外力を受けた場合に、その稜角部分が、亀裂が軸線P方向に沿って延びて生ずる裂けの発生の起点となりうる。したがって、端点M1や端点M2に稜角部分ができる限り生じないようにすることによって、稜角部分を起点として発生しうるセラミックヒータ2の欠けを、より確実に防止できる。
そして、本実施の形態では、端点M2が、先端位置C2よりも先端側に配置されること<8>を規定している。さらに、第1側周面13の輪郭線L4と、第2側周面14の輪郭線L5との接続点C3が、軸線P方向において、先端位置C2よりも後端側に配置されること<9>を規定している。端点M2と接続点C3は、輪郭線L4の両側の端点である。また、輪郭線L4は、側周面15のうち、先端部22において先端向きに窄むテーパ状に形成された第1側周面13の輪郭線である。すなわち、先端位置C2は、径方向において第1側周面13に面している。このため、発熱抵抗体24の発熱部27も、径方向において第1側周面13に面することとなり、基体21の外表面に近くなるので、発熱部27で生じた熱を効率よく外部に放熱することができ、セラミックヒータ2の発熱性能を高めることができる。
なお、上記<5>では、先細り部16のテーパ面12の形状について、輪郭線L1に着目して仮想的な楕円Eに沿う形状として規定した。このテーパ面12について、表面形状をさらに規定すると、曲率半径の異なる複数の曲面が連続して連なり、且つ、後端側曲面よりも先端側曲面の曲率半径が小さい点を満たす形状である<10−1>ともいうことができる。具体的に、図3に示すように、曲率半径の異なる複数の曲面を連ねてテーパ面12を構成し、各曲面の曲率半径についてそれぞれ比較した場合、軸線Pの先端側に配設される曲面ほど、曲率半径が小さい。例えば、曲率半径G1(図3において一点鎖線G1で示す円の半径)の曲面よりも軸線P方向後端側にある曲面の曲率半径G2、G3、G4、G5は、いずれもG1よりも大きい。同様に、曲率半径G2の曲面よりも軸線P方向後端側にある曲面の曲率半径G3、G4、G5は、いずれもG2よりも大きい。このように、軸線P方向先端側ほど曲率半径が小さくなる曲面が無数に連なって形成されるテーパ面12は、上記同様、基体21の外径の大きさが軸線P方向先端側へ向けて減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。ゆえに、テーパ面12のより先端側まで基体21の外径に近い径を確保でき、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。そして、このようなテーパ面12はR面取りによって形成され、ゆえに稜角が生じず、テーパ面12におけるセラミックヒータ2の欠けを防止できる。
先端面11、テーパ面12および第1側周面13からなる先細り部16の形状を、上記<1>〜<10−1>の規定を満たす形状とすることにより、セラミックヒータ2は、先端部22における熱容量を確保しつつ急速昇温性を得ることができる。また、本実施の形態では、セラミックヒータ2の先端部22における各部位の大きさや面積、体積等を以下のように規定することで、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量と急速昇温性の確保を図っている。
図4に示すように、セラミックヒータ2の先端部22で、軸線P方向において、先端面11の位置から後端側に6mmまでの部分(以下、「規定対象部位」ともいう。)に着目する(図4において実線で示す。)。この規定対象部位におけるセラミックヒータ2の平均外径をDとする。具体的に、平均外径Dは、軸線P方向で、先端面11の位置で測定した外径D0、および先端面11から6mmの位置まで1mmごとに測定した外径D1〜D6の平均値を求めたものである。なお、規定対象部位として先端面11から6mmまでの部分に着目するのは、一般的に、セラミックヒータ2を用いたグロープラグ1がエンジンに取り付けられた場合に、先端面11から6mm程度の部位が燃焼室内に突出され、着火性に寄与することによる。
まず、本実施の形態では、規定対象部位における平均外径Dの大きさが、2.3<D≦3.3[mm]を満たすこと<11>を規定している。後述する実施例1によれば、平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体21の表面積が小さくなり、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。一方、平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体24が基体21の外表面から遠くなり基体21の内部の熱容量が増えるため、基体21の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。<11>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
次に、直径が平均外径Dである仮想円(図4において点線で示す。)を想定し、その仮想円の面積をS2とする。また、先端面11(直径は上記の外径D0である。)の面積をS1とする。面積S2に対する面積S1の割合を求めた場合に、その割合が27%以上となること<12>を規定している。先端面11の面積S1が小さいほど、テーパ面12の形成部位における基体21の外径の窄みが大きいので、テーパ面12が形成されている部分において、基体21の外径の確保が難しくなる。すると、テーパ面12における基体21の表面積を十分に確保できず、セラミックヒータ2の放熱量が低下する虞がある。
後述する実施例2によれば、面積S2に対する面積S1の割合が27%未満である場合、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を確保できなくなる虞がある。なお、エンジン始動時の着火性を確保するには、具体的に、軸線P方向において、先端面11の位置から後端側に4mmまでの部分における放熱量で、13W以上が必要とされる。また、テーパ面12が形成されている部分において基体21の外径が小さくなれば、上記のように、基体21の肉厚(径方向の厚みすなわち体積)を確保できない。ゆえに、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量が低下し、外部から基体21が冷却を受けた際の発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より大きくなり、発熱温度を維持し難くなる虞がある。<12>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量を確保でき、また、先端部22における熱容量を確保することができる。
次に、図4に示すように、基体21の断面において、上記した、軸線P方向における発熱抵抗体24の先端位置C2を、基準となる基準位置とする。この断面において、先端位置C2(基準位置)と、先端面11の位置との最短距離をAとする。上記したように、先端位置C2は、通常は軸線P上に位置しており、また、先端面11も、通常は軸線Pと直交する面に形成される。よって、軸線P上で先端面11の位置をF1とすると、先端位置C2と位置F1との距離が最短距離Aに相当する。また、基体21の断面において、テーパ面12上の任意の位置をF2とする。そして、この断面において、先端位置C2(基準位置)と、位置F2との最短距離をBとする。このとき、本実施の形態では、B>Aを満たすこと<13>を規定している。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータ2は、先端位置C2とテーパ面12との間における基体21の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置(先端位置C2)と先端面11との間における基体21の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、先端位置C2、すなわち発熱抵抗体24よりも基体21の先端側において、基体21の外径を確保することができるので、テーパ面12において、基体21の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部22における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体21が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体24の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、先端位置C2とテーパ面12との間における基体21の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体24よりも基体21の先端側において、基体21の外径が小さくなり、テーパ面12において、基体21の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体21の先端部22における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体21が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体24の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
後述する実施例3によれば、基体21がB≦Aであるセラミックヒータ2は、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量(13W以上)を確保できなくなる虞がある。また、B≦Aとなってテーパ面12が形成されている部分において基体21の肉厚が確保できないと、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量が低下する。上記同様、外部から基体21が冷却を受けた際の発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より大きくなり、発熱温度を維持し難くなる虞がある。<13>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量を確保でき、また、先端部22における熱容量を確保することができる。
次に、規定対象部位におけるセラミックヒータ2の体積をVとする。このとき、本実施の形態では、V≧D×20−21[mm3]を満たすこと<14>を規定している。上記したように、セラミックヒータ2を用いたグロープラグ1がエンジンに取り付けられた場合に、規定対象部位は燃焼室内に突出される。そして、規定対象部位は、燃料の付着や燃焼室内で生ずる気流(スワール)などによって規定対象部位が冷却を受けるため、規定対象部位における熱容量の大きさがグロープラグ1の着火性に寄与することとなる。後述する実施例4によれば、規定対象部位の体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞があることが確認された。すなわち、<14>の規定を満たすことで、所定の環境の下であっても十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
このようなセラミックヒータ2は、概略、以下のように組み立てられる。まず、「形成工程」では、図5に示すように、導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱抵抗体24の原形となる素子成形体110が形成される。素子成形体110は、略U字形状の未焼成の発熱部111の両極に接続された未焼成のリード部115,116が略平行に配置される。リード部115,116の末端には両者を接続するサポート部119が設けられ、素子成形体110を環状とすることで強度が得られ、製造時の取り扱い容易性が確保される。また、リード部115,116には、研磨後に基体21の側周面15に露出され、グロープラグ1の保持部材8および接続リング85との電気的な接続を担う突起部がそれぞれ形成される。
また、バインダ等の添加剤が添加された絶縁性セラミックの原料粉末を材料としてプレス成形が行われ、未焼成の基体120が作製される。基体120は、半割状の成形体として一対の平板に成形され、対向する合わせ面に、素子成形体110を収容するための凹部121が形成される。なお、基体120の合わせ面とは反対側の外側面では、長手方向の角部が面取りされている。
素子成形体110は、半割の基体120の凹部121に収納され、対の半割の基体120で挟まれて、さらに図示外のプレス機にてプレス加工が施されることによって、複合成形体130として基体120と一体に成形される。そして複合成形体130に、窒素雰囲気下で800℃、1時間の脱バインダ処理が施される。次に「焼成工程」において、公知のホットプレス法による複合成形体130の焼成が行われる。複合成形体130は図示しない成形型に径方向に挟まれて、圧縮変形されつつ加熱される。このとき、複合成形体130の基体120を構成するセラミックの粒子が加圧に対して90°の向きで成長するため、その配向方向がホットプレス時の加圧方向に直交する面方向に揃う。このように複合成形体130が焼成されることによって、焼成体140が形成される。
次に「第1研磨工程」において、焼成体140の両側の端面の切断と、センタレス研磨とが行われる。素子成形体110が焼成されてなる発熱抵抗体24の発熱部27側の端面が切断されることによって、セラミックヒータ2の先端面11が形成される。また、反対側の端面の切断によって、素子成形体110に設けられていたサポート部119が除去される。そして公知のセンタレス研磨機を用い、焼成体140の外周が研磨される。これによって、焼成体140の八角形の外周が円形に研磨され、側周面15が形成される。また、リード部28,29が側周面15から露出される。
次に「第2研磨工程」では、上記の<1>〜<7>および<10−1>の規定を満たす仮想的な楕円Eに沿った輪郭線L1を有するように、テーパ面12が形成される。すなわち、テーパ面12は、焼成体140の先端面11と側周面15との稜角部分を削るR面取りが施されることによって、形成される。
そして「第3研磨工程」において、上記の<8>、<9>の規定を満たす輪郭線L4を有するように、第1側周面13が形成される。すなわち第1側周面13は、焼成体140の先端側に、テーパ面12と側周面15との稜角部分を含め、先端向きに窄むテーパ状の研磨が施されることによって、形成される。側周面15のうち第1側周面13の形成対象部位とならず研磨されずに残った部分が、上記のように、第2側周面14とも称される。以上のように第1〜第3研磨工程を経て焼成体140の外周面が研磨されることによって、棒状で先端部22に<1>〜<14>の規定を満たす輪郭線形状を有したセラミックヒータ2が形成される。
なお、本発明は各種の変形が可能である。テーパ面12はR面取りによって形成したが、例えば図6に示すセラミックヒータ202のテーパ面112のように、C面取りによって形成してもよい。この場合、上記の<1>〜<4>の規定を満たすように、テーパ面112を形成する上で、2段以上のC面取りを行うとよい。図6の例では先端面11および第1側周面13と共に先細り部116を構成するテーパ面112を、軸線P方向先端側の第1テーパ面108と、後端側の第2テーパ面109とからなる2段に構成している。第1テーパ面108の輪郭線をL7、第2テーパ面109の輪郭線をL8として示す。
本変形例では、輪郭線L2と輪郭線L7とがなす角度β1と、輪郭線L7と輪郭線L8とがなす角度β2と、輪郭線L8と輪郭線L4(L3)とがなす角度β3とのいずれもが、145度以上となること<21>を規定している。前述したように、基体21を構成するセラミックの粒子の配向方向が軸線P方向に揃うため、C面取りによって生じうる各テーパ面間の稜角部分が、亀裂が軸線P方向に沿って延びて生ずる裂けの発生の起点となりうる。テーパ面212におけるセラミックヒータ202の欠けの発生を抑制するには、稜角部分を構成するテーパ面の輪郭線同士のなす角度が、できる限り180度(稜角部分がない状態)に近い角度となることが好ましい。
後述する実施例5によれば、稜角部分を形成するテーパ面の輪郭線同士のなす角度が145度未満であると、その稜角部分が、こうした裂けを発生しうる起点となって、欠けを生じてしまう虞があることがわかった。もちろん、上記のテーパ面112を形成する上で、テーパ面の段数が3段以上であっても同様であり、それぞれの輪郭線のなす角度がいずれも145度以上であればよい。なお、<21>の規定は、本実施の形態において、先端面11、テーパ面12および第1側周面13を研磨によって形成することで生じうる各面間の稜角部分に対しても適用できる。すなわち、テーパ面12の輪郭線L1の端点M1における楕円Eの接線と、先端面11の輪郭線L2とがなす角度が、145度以上となることが望ましい。同様に、テーパ面12の輪郭線L1の端点M2における楕円Eの接線と、第1側周面13の輪郭線L3とがなす角度も、145度以上となることが望ましい。このようにすれば、テーパ面112におけるセラミックヒータ202の欠け防止する上で有効である。
なお、上記変形例では、先細り部116のテーパ面112をC面取りによって形成した。このテーパ面112について、表面形状をさらに規定すると、軸線Pに対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が連続して連なり、且つ、後端側傾斜面よりも先端側傾斜面の傾斜角度が大きい点を満たす形状である<10−2>ともいうことができる。具体的に、図6に示すように、軸線Pに対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面(例えば第1テーパ面108、第2テーパ面109)を連ねてテーパ面112を構成し、各傾斜面の傾斜角度についてそれぞれ比較した場合、軸線Pの先端側に配設される傾斜面ほど、傾斜角度が大きい。例えば、軸線P方向先端側に形成された先端側傾斜面の例である第1テーパ面108の傾斜角度をγ1とし、後端側に形成された後端側傾斜面の例である第2テーパ面109の傾斜角度をγ2とする。図6に示すように、軸線Pに対する第1テーパ面108の傾斜角度γ1は、第2テーパ面109の傾斜角度γ2より大きい。この例では傾斜面が2面であるが、さらに複数の傾斜面を有する場合であっても、先端側傾斜面の傾斜角度γ1が後端側傾斜面の傾斜角度γ2より大きくなるように、各傾斜面を形成する。このようにすれば、テーパ面112のより先端側まで基体21の外径に近い径を確保でき、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。
また、本実施の形態では、テーパ面12をR面取りによって形成し、その輪郭線L1が、仮想的な楕円Eに沿う形状となることを規定したが、上記のようなC面取りと、R面取りとを組合せてテーパ面を形成してもよい。また、テーパ面12の輪郭線L1は、楕円に限らず、仮想的な円に沿う形状であってもよく、この場合、<1>〜<4>の規定が満たされるとよい。また、本実施の形態および変形例では、セラミックヒータ2の先端部22に先端面11が形成されているが、先端面11を省略してもよい。先端面11が省略されたセラミックヒータにおいても、上記<11>、<13>、<14>の規定を満たすことで、放熱量および急速昇温性を確保できることやエンジンの始動性を確保できることを確認している。さらに、セラミックヒータ2は、内燃機関等に使用するグロープラグ1に用いられるものに限らず、家電等として使用するヒータに用いてもよい。
セラミックヒータ2の先端部22を肉厚に形成することによって、放熱量および熱容量を確保しつつ急速昇温性が得られることを確認するため、評価試験を行った。なお、以下の評価試験において用いたセラミックヒータのサンプルは、作製および比較を容易にするため、テーパ面をC面取りによって形成した。具体的に、外径をφ2.4〜φ3.5[mm]の範囲で適宜異ならせた複数種類のセラミックヒータの焼成体を作製した。第1研磨工程によって各焼成体を研磨して先端面と側周面を形成した。なお、先端面と発熱抵抗体の先端位置C2との最短距離Aは、0.8mmである。容易化のため、第3研磨工程によって、あらかじめ第1側周面を形成した。そして第2研磨工程において、外径に応じて面取り寸法を0〜1.3[mm]の範囲で適宜異ならせたC面取りにより、先端面と第1側周面との間の稜角部分を研磨して、テーパ面を形成した。なお、面取り寸法は、径方向における面取り量(幅)とした。
このように作製した22種類のセラミックヒータのサンプルの規定対象部位において、上記したように、1mmごとの外径D0〜D6を測定した。各サンプル1〜22の平均外径Dを測定したところ、表1に示すように、φ2.3〜φ3.4[mm]の範囲で適宜異なる値となった。そして各サンプル1〜22の外径D0(すなわち先端面の直径)から、先端面の面積S1を算出した。また、各サンプル1〜22の平均外径Dを直径とする仮想円の面積S2をそれぞれ算出した。さらに各サンプル1〜22についてS1/S2を求めた結果を、表1に、百分率で示した。
まず、各サンプル1〜22の放熱量を、演算により求めた。具体的には、先端面の位置から後端側に4mmまでの部分を軸線Pと直交する平面で複数に輪切りにした微小区間を想定する。そして公知の演算式に基づき、微小区間ごとに、表面積(外周面の面積)と温度とから放熱量を算出し、全微小区間の放熱量を足し合わせることによって求めた。なお、放熱量は、セラミックヒータの表面に接触する空気への熱伝達量Q1[W]と、表面から輻射による空気への熱伝達量Q2[W]とを足し合わせることによって求めることができる。伝導による熱伝達量Q1は、Q1=hA(T(素子)−T(気体))によって求められる。また、輻射による熱伝達量Q2は、Q2=σεA((T(素子))4−(T(気体))4)によって求められる。ただし、hはセラミックヒータの基体の熱伝導率であり、σはステファンボルツマン定数であり、εは放射率(セラミックヒータの基体の輻射率)であり、Aは表面積である。また、T(素子)は発熱抵抗体の発熱部の温度であり、印加する電圧に応じてあらかじめ求められている。T(気体)はセラミックヒータの基体の表面温度であり、放射温度計により測定する。
各サンプル1〜22の放熱量を算出した結果を表1に示す。一般に、ディーゼルエンジンにおける着火性を確保するには放熱量として13Wが必要とされている。表1に示すように、放熱量が13Wに満たないサンプルは、1,3,6,9〜11,14〜16,19〜21であった。
さらに、各サンプル1〜22にそれぞれ11Vの電圧を印加し、表面温度が1000℃に到達するまでにかかる時間を測定した結果を表1に示す。一般に、ディーゼルエンジンにおける急速昇温性を確保するには、表面温度の1000℃到達時間として1.3秒以下であることが望ましいとされる。表1に示すように、表面温度の1000℃到達時間が1.3秒を越えたサンプルは22であった。
ここでサンプル1に着目すると、サンプル1は、面取り寸法が0mmで、すなわちテーパ面が形成されていない。サンプル1の平均外径Dはφ2.3mmと小さく、テーパ面を形成せずとも放熱量を確保するのに十分な表面積が得られないことがわかる。したがって、セラミックヒータの平均外径Dは、φ2.3mmより大きいことが好ましい。
一方、サンプル22は、表面温度の1000℃到達に1.31秒かかっている。サンプル18とサンプル22とを比較すると、サンプル22の面取り寸法はサンプル18と同じ大きさであるが、サンプル18よりもサンプル22の平均外径Dは大きい。前述したように基体の内部に埋設される発熱抵抗体の設計(大きさや発熱量)には変更がなく、平均外径Dが大きい分、サンプル22はサンプル18よりも発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり、また、基体の内部の熱容量が大きい。よって、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、表面温度の1000℃到達が1.3秒を越えて急速昇温性が得られない。したがって、セラミックヒータの平均外径Dは、φ3.3mm以下であることが望ましい。以上より、<11>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保できることが確認された。
次に、表1に示すように、放熱量が13Wに満たないサンプルのうち、サンプル6,9〜11,14〜16,19〜21は、S1/S2が27%未満であった。これらのサンプルは、平均外径Dに対して先端面の大きさ(直径)を十分に確保できなかったサンプルである。つまり、テーパ面の形成による基体の先端部の窄み具合が大きく、テーパ面が形成されている部分において十分な外径を確保できていない。ゆえに、特にテーパ面の部分において十分な表面積を確保できず、放熱量として13W以上を得られなかった。以上より、<12>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、十分な放熱量を確保できることが確認された。
なお、サンプル3は、もともとの平均外径Dがφ2.5mmと小さい。このため、面取り寸法を0.45mmとしてテーパ面を大きく形成すると、放熱量を確保するのに十分な表面積を得られなくなる。サンプル3は、S1/S2が31%であって27%以上を満たしても、放熱量として13W以上を得られなかった。
上記の<11>および<12>の規定を満たすサンプル8と同寸法の平均外径D(φ2.9mm)と面取り寸法(0.6mm)に設定したサンプル(シミュレーションサンプル)をシミュレータによって作製した。さらに、発熱抵抗体の先端位置C2(基準位置)と先端面の位置との最短距離A、および、基準位置とテーパ面上の任意の位置F2との最短距離Bを、0.4〜1.6mmの範囲で適宜異ならせた複数のシミュレーションサンプルを作製した。ここで、最短距離Bは、面取り寸法を0.6mmとしたまま、基体の軸線Pに対するC面取りの角度を異ならせることによって調整した。
そして、これらのサンプルの放熱量を、前述したように、先端面の位置から後端側に4mmまでの部分を輪切りにした微小区間ごとの熱伝達量Q1,Q2を算出して足し合わせることによって求めた。演算の結果を表2に示す。
表2に示すように、BがA以下となったシミュレーションサンプルでは、放熱量が13Wに満たなかった。B≦Aであると、基体の先端部における径方向の厚みがB>Aの場合と比べ薄くなる。つまり、テーパ面が形成されている部分において、基体の外径が小さくなる。ゆえに、基体の先端部における表面積が小さくなり、熱伝達量Q1が小さくなって、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量(13W以上)を確保できなくなる。以上より、<13>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、十分な放熱量を確保できることが確認された。
次に、規定対象部位の体積Vと、平均外径Dとの関係について評価を行った。表1に示すように、各サンプル1〜22の規定対象部位(先端面の位置から後端側に6mmまでの部分)の体積V[mm3]をそれぞれ求めた。なお、体積Vは、例えば、先端面から6mmの位置まで0.1mmごとに外径を測定し、その外径の円柱の体積を足し合わせて求めればよい。
そして、各サンプル1〜22をそれぞれ組み付けたグロープラグを、試験用のディーゼルエンジンに取り付け、−20℃の低温環境において、エンジンの始動試験を行う。このとき、グロープラグへの予熱通電(昇温のための通電)の開始と同時にエンジンのクランキング(セルモータによる始動)を行った。つまり、セルモータの始動に電力が使用され、予熱通電のための電力が安定しない状況における低温環境下での始動試験である。この状態でエンジンの始動ができたサンプルは、2,4,5,7〜10,12〜15,17〜20,22であり、表1に「○」で示した。また、エンジンを始動できなかったサンプル(1,3,6,11,16,21)は、表1に「×」で示した。
さらに、規定対象部位の体積Vを縦軸とし、平均外径Dを横軸とする図7のグラフに、始動試験の結果を、同様に、「○」「×」で示した。図7のグラフから明らかに、上記低温環境下においてエンジンを始動するために必要とされる規定対象部位の体積Vの大きさとして、平均外径Dの大きさに応じた大きさがあることがわかる。このグラフをもとに、発明者らが、規定対象部位の体積Vと平均外径Dとの関係を示す所定の関係式を求めたところ、「V=D×20−21」の式が得られた。
V≧D×20−21を満たすサンプルは、規定対象部位に十分な体積を有するため、満たさないサンプルと比べて熱容量が大きい。ゆえに、上記のような低温環境下で、セラミックヒータの受けた冷却が、直ちに発熱抵抗体の温度低下に大きな影響を及ぼすことが低減される。したがって、<14>の規定が満たされることにより、上記の予熱通電のための電力が安定しない状況における低温環境下においても、十分に、エンジンを始動でき、規定対象部位において十分な熱容量を確保できることが確認された。
次に、セラミックヒータ202のテーパ面112をC面取りによって形成し、その際に先端部に形成される稜角部分の輪郭線同士がなす角度の大きさを規定することによって、欠けの発生を抑制できることを確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、面取り寸法が0.6mmで平均外径Dがφ2.9mmの上記のサンプル8を作製する際に形成した焼成体をもとに、テーパ面に形成される稜角部分の輪郭線同士のなす角度を90°、135°、145°、151°とした4種類のセラミックヒータのサンプルを作製した。90°のサンプルは、第1研磨工程のみを行い、テーパ面および第1側周面を形成しなかったサンプルである。135°のサンプルは、上記同様、あらかじめ第3研磨工程によって第1側周面を形成した上で、第2研磨工程で先端面に対して45°の傾斜角を有するように1段のC面取りを行ってテーパ面を形成した上記のサンプル8である。145°と151°のサンプルは、同様に、あらかじめ第3研磨工程によって第1側周面を形成した上で、図6に示す、なす角度β1およびβ3がともに、それぞれ145°と151°になるように2段のC面取を行ってテーパ面を形成したサンプルである。なお、なす角度β2が、いずれも145°以上となるように、第1側周面が形成される。これら4種のサンプルは、それぞれ200個ずつ用意した。
公知のシャルピー試験機を用い、これらのセラミックヒータのサンプルに対してシャルピー衝撃試験を行った。シャルピー衝撃試験では、グロープラグの製造過程やエンジンへの組み付けの際に落下する虞のある高さとして最大で50cmを見込み、衝撃試験においてサンプルに与える衝撃エネルギーを設定する上での目安とした。具体的に、4種のサンプルそれぞれ100個ずつに対し、2.5m(安全率5)の高さからサンプルを落下した場合に相当する衝撃エネルギーを、各サンプルの先端部に与えた。同様に、4種のサンプルそれぞれ100個ずつに対し、10mの高さからサンプルを落下した場合に相当する衝撃エネルギーを、各サンプルの先端部に与えた。そして試験後に、各サンプルの欠けの発生の有無を観察し、欠けの発生したサンプルの個数を数えてその割合を求めた。この試験の結果を図8のグラフに示す。
図8に示すように、10m落下相当の衝撃エネルギーを与える衝撃試験において、上記の90°のサンプルのうち欠けを生ずるサンプルが90%あり、135°のサンプルも欠けを生ずるサンプルが73%あった。また、145°,151°のサンプルでも10m落下相当の衝撃エネルギーが与えられると欠けを生じてしまうサンプルが、それぞれ26%、27%あったが、90°や135°のサンプルと比べ、その数(割合)は大幅に減少した。一方、目安に対する安全率が5である2.5m落下相当の衝撃エネルギーを与える衝撃試験では、90°のサンプルにおいては、欠けを生ずるサンプルが17%あった。135°のサンプルでも欠けを生ずるサンプルが7%あったが、145°,151°のサンプルには欠けが発生しなかった。このシャルピー衝撃試験の結果より、セラミックヒータのテーパ面をC面取りによって形成する場合、先端部に形成される稜角部分の輪郭線同士のなす角度の大きさが145度以上となるようにテーパ面を形成すれば、テーパ面におけるセラミックヒータの欠けを十分に防止できることがわかった。
本発明は、絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる発熱抵抗体を埋設させたセラミックヒータおよびその製造方法に関するものである。
ディーゼルエンジンの始動を補助するために使用されるグロープラグには、例えば、絶縁性セラミックからなる基体に導電性セラミックからなる発熱抵抗体を埋設させたセラミックヒータが使用される。セラミックヒータの発熱抵抗体は、一般にU字状に形成され、U字の折り返し部分の径が細くされることで、この部位が発熱部として機能するように構成される。さらに、基体の先端部が発熱部のU字形状に沿うように半球状に形成されることによって、セラミックヒータは、発熱部において発生する熱を基体の外部に効率よく伝達することができる。
近年、エンジンの始動性の向上や、排気ガスに含まれるNOxの低減のため、セラミックヒータへの通電を開始してからの昇温速度の向上が求められている。発熱抵抗体自体の設計変更や通電の際に流す電流の大きさの変更を伴うことなくセラミックヒータの急速昇温性を高めるには、発熱部において生じた熱が速やかに基体の外部に伝達されるようにすればよい。そのためには、セラミックヒータの外径を従来よりも細くし、発熱抵抗体を、より基体の外表面の近くに配置させることが考えられる。もっとも、ただ外径を細くしただけではセラミックヒータに折損の虞が生じてしまうため、基体の先端側を、例えばテーパ状にして、発熱部の周囲においてセラミックヒータの外径が細くなるようにすればよい(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、セラミックヒータの外径を細くすると、基体の表面積が減って放熱量が低下し、また、基体の肉厚が薄くなるため、特に発熱部の付近における熱容量が低下してしまう。このため、例えば燃料の付着やエンジン内の気流によって基体の先端部が冷却されると、発熱部も冷却されて温度が低下し、十分な急速昇温性を確保できなくなるという問題があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、基体の先端部の放熱量および熱容量を確保しつつ急速昇温性を得ることができるセラミックヒータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様によれば、絶縁性セラミックからなり、軸線方向に延びる柱状の基体と、導電性セラミックからなり、前記基体に埋設され、通電によって発熱する発熱抵抗体であって、前記軸線方向における前記基体の先端部に配置される発熱部と、当該発熱部の両端から前記基体の後端側へ向けて延びるリード部とを有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータであって、前記基体の先端部には、前記軸線方向先端側に向かって先細りになる先細り部が形成されており、前記先細り部は、前記軸線方向と直交する平面状に形成される先端面と、自身の軸線を周方向に取り囲む側周面と、前記複数の曲面からなり、前記先端面と前記側周面とをテーパ状に接続するテーパ面と、を有し、前記先細り部の外周面には、外向きに凸で曲率半径の異なる複数の曲面であって、前記軸線方向に連続して連なる複数の曲面が、前記曲率半径を連続的に異ならせて配設されており、前記複数の曲面のうち前記軸線方向先端側に形成された先端側曲面は、該先端側曲面よりも前記軸線方向後端側に形成された後端側曲面と比べ、前記曲率半径が小さく、且つ、前記軸線を含む前記基体の断面をみたときに、前記先細り部の前記テーパ面における輪郭線である第1輪郭線は、前記先端面の輪郭線である第2輪郭線に接続する端点である第1端点が、前記側周面の輪郭線である第3輪郭線に接続する端点である第2端点よりも、前記軸線方向の先端側、且つ前記軸線方向と直交する径方向の内側に配置されるとともに、前記第1端点と前記第2端点との前記軸線方向の距離が、前記第1端点と前記第2端点との前記径方向の距離よりも大きく、さらに、前記第1端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度が、前記第2端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度よりも、大きいことを特徴とするセラミックヒータが提供される。
第1態様において、先細り部の外周面には、外向きに凸な複数の曲面が軸線方向に連続して連なって配設されている。そして、それら連続して連なる複数の曲面は、曲率半径が連続的に異なり、且つ、後端側曲面よりも先端側曲面の曲率半径が小さい。つまり、先細り部の外周面に配設された複数の曲面は、先端側ほど曲率半径の小さな曲面である。これにより、先細り部では、軸線方向後端側における基体の外径と、先端側における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。このように先細り部において、より先端側まで基体の外径に近い径を確保することで、基体の外表面の面積をより大きく確保することができるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
第1態様において、テーパ面の第1輪郭線をみたときに、第1端点が第2端点よりも軸線方向先端側且つ径方向内側に配置され、第1端点と第2端点との間の距離が軸線方向に長く、さらに、第1輪郭線の接線と軸線とのなす角度が、側周面側よりも先端面側において大きいという規定の下、テーパ面が形成されている。つまり、第1態様のテーパ面は、第1端点と第2端点とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、第2端点における基体の外径の大きさが第1端点へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面における基体の外径と、側周面における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面の外径として、側周面における基体の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。したがって、基体の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータの基体は、テーパ面が形成された部分における基体の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、特にテーパ面が形成されている部分において、基体をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータの先端部における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータが外部から冷却を受けても発熱抵抗体の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータの細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって抵抗体をよりセラミックヒータの外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
第1態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、2.3<D≦3.3[mm]を満たしてもよい。セラミックヒータにおいて、特に発熱性能に寄与する基体の先端から6mmまでの部分における平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体の表面積が小さくなってしまうため、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり基体の内部の熱容量が増えるため、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。よって、平均外径Dを2.3<D≦3.3[mm]とすることによって、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向における前記発熱抵抗体の先端の位置を基準位置とし、前記基準位置と前記基体の先端の位置との最短距離をAとし、前記基準位置と前記先細り部の外周面をなす前記複数の曲面上の任意の位置との最短距離をBとしたときに、B>Aを満たしてもよい。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータは、発熱抵抗体の先端の位置(基準位置)と曲面との間における基体の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置と基体の先端との間における基体の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径を確保することができるので、曲面において、基体の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、基準位置と曲面との間における基体の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径が小さくなり、曲面において、基体の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体の先端部における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
第1態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記セラミックヒータの体積Vは、V≧D×20−21[mm3]を満たしてもよい。基体の先端から6mmまでの部分は、セラミックヒータを用いたグロープラグがエンジンに取り付けられた場合に、燃焼室内に突出され、発熱性能に寄与する部位である。この基体の先端から6mmまでの部分における体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞がある。よって、V≧D×20−21を満たすことで、十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向を長軸とし、前記第1端点と前記第2端点とを通る仮想的な楕円を配置した場合に、前記第1輪郭線の形状は、前記仮想的な楕円に沿う形状であってもよい。テーパ面がR面取りによって形成され、そのテーパ面の第1輪郭線が楕円に沿う形状であれば、テーパ面に稜角を生ずることがなく、ゆえにテーパ面におけるセラミックヒータの欠けを防止できる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面に前記仮想的な楕円を配置した場合の中心点の位置は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも後端側に配置されてもよい。発熱抵抗体の発熱部を、より先端面の近くに配置させることができるので、セラミックヒータの先端面側からも十分な放熱を行うことができ、セラミックヒータの発熱性能を高めることができる。
第1態様において、前記軸線を含む前記基体の断面に前記仮想的な楕円を配置した場合、前記軸線に対して前記径方向の両側に、2つの前記仮想的な楕円が互いに離間して配置されてもよい。このように、楕円の大きさを互いに離間して配置することのできる大きさとすれば、第1輪郭線の第1端点を楕円の長軸側の頂点に近づけることができ、また、第2端点を短軸側の頂点に近づけることができる。これにより、第1輪郭線の第1端点に接する接線の傾きを、第2輪郭線の接線の傾きに近づけることができるとともに、第1輪郭線の第2端点に接する接線の傾きを、第3輪郭線の接線の傾きに近づけることができる。よって、第1輪郭線と第2輪郭線とがなめらかに接続されるようにすることができ、同様に、第1輪郭線と第3輪郭線とも、なめらかに接続されるようにすることができる。ゆえに、第1端点や第2端点において、稜角が形成されないか、あるいは形成されても断面で180度に近い角度となるようにすることができ、稜角部分を起点として発生しうるセラミックヒータの欠けをより確実に防止することができる。
本発明の第2態様によれば、絶縁性セラミックからなり、軸線方向に延びる柱状の基体と、導電性セラミックからなり、前記基体に埋設され、通電によって発熱する発熱抵抗体であって、前記軸線方向における前記基体の先端部に配置される発熱部と、当該発熱部の両端から前記基体の後端側へ向けて延びるリード部とを有する発熱抵抗体と、を備えるセラミックヒータであって、前記基体の先端部には、前記軸線方向先端側に向かって先細りになる先細り部が形成されており、前記先細り部は、前記軸線方向と直交する平面状に形成される先端面と、自身の軸線を周方向に取り囲む側周面と、前記複数の傾斜面からなり、前記先端面と前記側周面とをテーパ状に接続するテーパ面と、を有し、前記先細り部の外周面には、前記軸線に対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が前記軸線方向に沿って配設されており、前記複数の傾斜面のうち前記軸線方向先端側に形成された先端側傾斜面は、該先端側傾斜面よりも前記軸線方向後端側に形成された後端側傾斜面と比べ、前記傾斜角度が大きく、且つ、前記軸線を含む前記基体の断面をみたときに、前記先細り部の前記テーパ面における輪郭線である第1輪郭線は、前記先端面の輪郭線である第2輪郭線に接続する端点である第1端点が、前記側周面の輪郭線である第3輪郭線に接続する端点である第2端点よりも、前記軸線方向の先端側、且つ前記軸線方向と直交する径方向の内側に配置されるとともに、前記第1端点と前記第2端点との前記軸線方向の距離が、前記第1端点と前記第2端点との前記径方向の距離よりも大きく、さらに、前記第1端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度が、前記第2端点に近い側における前記第1輪郭線の接線と前記軸線とがなす角度よりも、大きいことを特徴とするセラミックヒータが提供される。
第2態様において、先細り部の外周面には、軸線に対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が軸線方向に沿って配設されている。そして、それらの傾斜面は、後端側傾斜面の軸線に対する傾斜角度よりも、先端側傾斜面の傾斜角度が大きい。つまり、先細り部の外周面に配設された複数の傾斜面は、先端側ほど軸線に対する傾斜角度が大きい傾斜面である。それらの傾斜面が軸線方向に沿って配設されることにより、先細り部は、断面の輪郭線が先端側から後端側へ向け徐々に、軸線に対する傾斜角度が小さくなる形状となっている。これにより、先細り部では、軸線方向後端側における基体の外径と、先端側における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。このように先細り部において、より先端側まで基体の外径に近い径を確保することで、基体の外表面の面積をより大きく確保することができるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
第2態様において、テーパ面の第1輪郭線をみたときに、第1端点が第2端点よりも軸線方向先端側且つ径方向内側に配置され、第1端点と第2端点との間の距離が軸線方向に長く、さらに、第1輪郭線の接線と軸線とのなす角度が、側周面側よりも先端面側において大きいという規定の下、テーパ面が形成されている。つまり、第2態様のテーパ面は、第1端点と第2端点とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、第2端点における基体の外径の大きさが第1端点へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面における基体の外径と、側周面における基体の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面の外径として、側周面における基体の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。したがって、基体の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータの放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータの基体は、テーパ面が形成された部分における基体の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、特にテーパ面が形成されている部分において、基体をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータの先端部における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータが外部から冷却を受けても発熱抵抗体の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータの細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって抵抗体をよりセラミックヒータの外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
第2態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、2.3<D≦3.3[mm]を満たしてもよい。セラミックヒータにおいて、特に発熱性能に寄与する基体の先端から6mmまでの部分における平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体の表面積が小さくなってしまうため、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり基体の内部の熱容量が増えるため、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。よって、平均外径Dを2.3<D≦3.3[mm]とすることによって、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
第2態様において、前記軸線を含む前記基体の断面において、前記軸線方向における前記発熱抵抗体の先端の位置を基準位置とし、前記基準位置と前記基体の先端の位置との最短距離をAとし、前記基準位置と前記先細り部の外周面をなす前記複数の傾斜面上の任意の位置との最短距離をBとしたときに、B>Aを満たしてもよい。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータは、発熱抵抗体の先端の位置(基準位置)と傾斜面との間における基体の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置と基体の先端との間における基体の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径を確保することができるので、傾斜面において、基体の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、基準位置と傾斜面との間における基体の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体よりも基体の先端側において、基体の外径が小さくなり、傾斜面において、基体の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体の先端部における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
第2態様において、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径をDとしたとき、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記セラミックヒータの体積Vは、V≧D×20−21[mm3]を満たしてもよい。基体の先端から6mmまでの部分は、セラミックヒータを用いたグロープラグがエンジンに取り付けられた場合に、燃焼室内に突出され、発熱性能に寄与する部位である。この基体の先端から6mmまでの部分における体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞がある。よって、V≧D×20−21を満たすことで、十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
第2態様において、前記第1輪郭線を構成する複数の線分同士がなす角度と、前記第2輪郭線と前記第1輪郭線とが前記第1端点においてなす角度と、前記第3輪郭線と前記第1輪郭線とが前記第2端点においてなす角度とは、いずれも、145度以上であってもよい。テーパ面がC面取である場合、輪郭線において稜角部分が生ずるが、これら稜角部分における角度(輪郭線の線分がなす角度)がどの部位においても145度以上であれば、テーパ面におけるセラミックヒータの欠けを防止する上で有効である。
第1または第2態様において、前記第3輪郭線は、前記第2端点から前記軸線方向の後端側へ向けて、前記径方向の外向きに広がりつつ延びる第4輪郭線と、前記第4輪郭線に接続し、前記軸線方向と平行に延びる第5輪郭線とを含み、前記第2端点は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも先端側に配置され、前記第4輪郭線と前記5輪郭線との接続点は、前記軸線方向において、前記発熱抵抗体の先端位置よりも後端側に配置されてもよい。
発熱抵抗体の先端位置を跨いで側周面のうちのテーパ状をなす部分(第4輪郭線)が配置されるので、発熱抵抗体の発熱部が、そのテーパ状の部分に配置されることとなり、基体の外表面に近くなるので、発熱部で生じた熱を効率よく外部に放熱することができ、セラミックヒータの発熱性能を高めることができる。
第1または2態様において、前記先端面の面積をS1とし、直径が、前記軸線方向における前記基体の先端の位置から後端側に6mmまでの部分における前記基体の平均外径である円の面積をS2としたときに、S1/S2×100≧27[%]を満たしてもよい。先端面の面積S1が小さいほど、テーパ面の形成部位における基体の外径の窄みが大きいので、テーパ面が形成されている部分において、基体の外径の確保が難しくなる。すると、テーパ面における基体の表面積を十分に確保できず、セラミックヒータの放熱量が低下する虞がある。具体的に、S1/S2×100≧27[%]が満たされれば、セラミックヒータの特にテーパ面における基体の表面積を十分に確保して、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。
本発明の第3態様によれば、第1または第2態様に係るセラミックヒータの製造方法であって、前記基体と前記発熱抵抗体とが一体に焼成された柱状の焼成体の側面および端面を研磨し、前記軸線に平行な前記側周面と、前記軸線と直交する前記先端面とを形成する第1研磨工程と、前記焼成体の前記先端面と前記側周面とがなす稜角部分を研磨して、前記テーパ面を形成する第2研磨工程と、前記側周面の先端側を、前記テーパ面との接続部位を含めて、先端向きに窄むテーパ状に研磨する第3研磨工程と、を含むセラミックヒータの製造方法が提供される。このような工程を経て、セラミックヒータの研磨を行いテーパ面を形成すれば、第1または第2態様と同様の効果を得られるセラミックヒータを容易に製造することができる。
グロープラグ1の縦断面図である。
セラミックヒータ2を部分的な断面でみた斜視図である。
セラミックヒータ2の軸線Pを含む断面の輪郭線を先端部22において拡大してみた図である。
セラミックヒータ2の先端から6mmまでの部分を切り取り部分的な断面でみた斜視図である。
セラミックヒータ2の製造過程を示す図である。
変形例としてのセラミックヒータ202の軸線Pを含む断面の輪郭線を先端部22において拡大してみた図である。
規定対象部位における体積Vと平均外径Dとの関係を示すグラフである。
セラミックヒータ2の先端部22に対して行った衝撃試験の結果を示すグラフである。
以下、本発明を具体化したセラミックヒータおよびその製造方法の一実施の形態について、図面を参照して説明する。一例としてグロープラグ1が備えるセラミックヒータ2を挙げ、図1,図2を参照して、グロープラグ1の構造について説明する。なお、参照する図面は、本発明が採用し得る技術的特徴を説明するために用いるものであり、記載しているグロープラグの構成等は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。以下の説明では、主体金具4の軸線を軸線Oとし、軸線Oを、主体金具4に組み付けられた、グロープラグ1を構成する各部品の位置関係や向き、方向を説明する上での基準とする。図1では、軸線Oの延伸方向(以下、「軸線O方向」ともいう)において、セラミックヒータ2の配置された側(図中下側)をグロープラグ1の先端側とする。また、図2において、グロープラグ1に組み付ける前のセラミックヒータ2の軸線を、軸線Pとし、発熱抵抗体24の発熱部27が配置された側(図中上側)を、セラミックヒータ2の先端側として説明する。
図1に示すグロープラグ1は、例えば直噴式ディーゼルエンジンの燃焼室(図示外)に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。グロープラグ1は、主体金具4と、保持部材8と、セラミックヒータ2と、中軸3と、接続端子5と、絶縁部材6と、封止部材7と、接続リング85とを備える。
まず、セラミックヒータ2について説明する。セラミックヒータ2は絶縁性セラミックからなる基体21の内部に、導電性セラミックからなり、通電によって発熱する発熱抵抗体24を埋設したものである。図2に示すように、セラミックヒータ2は軸線Pに沿って延びる丸棒状をなし、先端部22側の端面である先端面11は、軸線Pと直交する平面状に形成されている。また、先端面11と、軸線Pを周方向に取り囲む側周面15とがなす稜角部分はR面取りによって面取りされ、先端面11と側周面15とを先端向きに窄むテーパ状に接続するテーパ面12が形成されている。
セラミックヒータ2の側周面15は、先端部22において先端向きに窄むテーパ状に形成された第1側周面13と、第1側周面13よりも後端側で非テーパ状の第2側周面14とを含む。第1側周面13は、側周面15とテーパ面12との稜角部分をC面取りすることによって形成され、テーパ面12と、側周面15において面取りされなかった第2側周面14とをテーパ状に接続する。先端面11、テーパ面12および第1側周面13は、基体21の先端部22において、軸線P方向の先端側へ向けて先細っており、以下、先端面11、テーパ面12および第1側周面13を総称して先細り部16という。また、図示しないが、セラミックヒータ2の後端部23にも、縁端部分にテーパ状のC面取が施されている。
セラミックヒータ2の基体21に埋設された発熱抵抗体24は、導電性セラミックからなり、断面略U字状に形成され、発熱部27とリード部28,29とを有する。発熱部27は略U字状に形成され、U字の折り返し部分が先端側へ向けられた状態で、基体21の先端部22に配置されている。リード部28,29は発熱部27の両端(U字形状の両端)にそれぞれ接続され、セラミックヒータ2の後端部23へ向けて互いに略平行に延設されている。発熱部27の断面積は、リード部28,29の断面積よりも小さくなるように成形されており、通電時、主に発熱部27において発熱が行われる。また、セラミックヒータ2の中央より後端側において、リード部28,29は、それぞれ、軸線O方向において互いにずれた位置にて基体21の外周面に露出されている。
次に、保持部材8について説明する。図1に示すように、保持部材8は、軸線O方向に延びる円筒状の金属部材であり、セラミックヒータ2の胴部分を径方向に保持する。また、保持部材8は、自身の筒孔内でセラミックヒータ2のリード部28の露出部分と電気的に接続する。セラミックヒータ2の先端部22および後端部23は、保持部材8の筒孔の両端からそれぞれ露出している。保持部材8の後端側には肉厚の鍔部82が形成されており、後述する主体金具4の先端部41が接合される。
また、保持部材8の後端側に露出されたセラミックヒータ2の後端部23には、金属製で筒状の接続リング85が圧入によって嵌められている。セラミックヒータ2のリード部29の露出部分は、接続リング85と電気的に接続されている。接続リング85には、後述する中軸3の先端部31が接合される。
次に、主体金具4について説明する。主体金具4は、軸線O方向に貫通する軸孔43を有する長細い筒状の金属部材である。主体金具4は、先端部41の内周が保持部材8の鍔部82に嵌められ、両者の合わせ部位がレーザ溶接されることによって、保持部材8と一体に接合され、且つ、電気的に接続されている。これにより、主体金具4は保持部材8を介してセラミックヒータ2のリード部28と電気的に接続される。また、主体金具4の先端部41と後端部45との間の胴部44には、グロープラグ1を内燃機関のエンジンヘッド(図示外)に取り付けるためのねじ山が形成された取付部42が設けられている。そして、主体金具4の後端部45には、グロープラグ1をエンジンヘッドに取り付ける際に使用される工具が係合する六角形状の工具係合部46が形成されている。
次に、中軸3について説明する。中軸3は、軸線O方向に延びる棒状の金属部材であり、主体金具4の軸孔43に挿通され、主体金具4とは絶縁状態に配置される。中軸3の先端部31は、上記の接続リング85の内周に係合され、レーザ溶接によって一体に接合されるとともに、電気的に接続されている。これにより、中軸3は、接続リング85を介してセラミックヒータ2のリード部29と電気的に接続される。また、中軸3の後端部32は、主体金具4の後端部45よりも後端側へ突出される接続端部36と、後端部45に配置される接続基部37とを有する。
次に、主体金具4の軸孔43の内周面と中軸3の接続基部37の外周面との間には、例えばフッ素ゴム等、絶縁性および弾性を有する部材から形成される円筒状の封止部材7が配置される。封止部材7は、軸孔43内で中軸3の後端部32を保持して中軸3の振れを抑制するとともに、軸孔43内の気密性を保つ。また、封止部材7よりも後端側には、例えばナイロン(登録商標)等、耐熱性および絶縁性を有する部材から筒状に形成される絶縁部材6が配置される。絶縁部材6は、主体金具4と中軸3および接続端子5(後述)との接触による短絡を防止するため、中軸3の後端部32を挿通され、主体金具4の後端部45の開口部分に配置される。
そして、中軸3の接続端部36には、接続端子5が加締めにより固定される。接続端子5には、グロープラグ1がエンジンヘッド(図示外)に取り付けられる際に、プラグキャップ(図示外)が嵌められる。セラミックヒータ2の発熱抵抗体24は、一端側(リード部29側)が、接続端子5および中軸3を介してプラグキャップに接続される。そして、発熱抵抗体24の他端側(リード部28)は、保持部材8および主体金具4を介してエンジンに接地され、接続端子5と主体金具4との間に通電されることによって、発熱部27が発熱する。
このような構造を有するグロープラグ1等に用いるセラミックヒータ2の熱容量を確保しつつ、急速昇温性を得るため、本実施の形態では、セラミックヒータ2の先端部22の形状を以下のように規定している。まず、図3に示すように、セラミックヒータ2の先端部22において、軸線Pを含む断面をみたときに、先端面11の輪郭線をL2、テーパ面12の輪郭線をL1、側周面15の輪郭線をL3とする。また、側周面15の輪郭線L3のうち、側周面15の含む第1側周面13の輪郭線をL4、第2側周面14の輪郭線をL5とする。そして、輪郭線L1の両端の端点のうち、輪郭線L2側の端点をM1、輪郭線L3側(輪郭線L4側)の端点をM2とする。なお、図3では、セラミックヒータ2の先端面11の輪郭線L2が配置された図中上側を、軸線P方向における先端側として説明を行う。
このとき、端点M1が、端点M2よりも、軸線P方向において先端側に位置し<1>、且つ、端点M1が、端点M2よりも、径方向の内側(軸線P寄り)に配置されること<2>を規定している。また、端点M1と端点M2との軸線P方向における距離をJ、端点M1と端点M2との径方向(軸線Pと直交する方向)における距離をKとする。このとき、距離Jが、距離Kよりも大きいこと<3>を規定している。さらに、輪郭線L1の接線で任意の2つの接線を、仮にT1,T2とする。そして、接線T1,T2のうち、端点M1に近い側の接点を通る接線をT1とし、端点M2に近い側の接点を通る接線をT2とする。このとき、接線T1と軸線Pとがなす角度α1が、接線T2と軸線Pとがなす角度α2よりも、大きいこと<4>を規定している。
<1>が満たされ、且つ、<2>が満たされることにより、先端側の端点M1が、後端側の端点M2よりも軸線P方向において先端側に位置し、且つ、径方向において内側に位置することが規定される。また、<4>が満たされることで、輪郭線L1が、少なくともM1,M2を通る直線よりも径方向外向きに、2以上の異なる接線を有して膨らむ形態であることが規定される。さらに、<3>が満たされることで、距離Jの大きさが距離K以下の場合と比べ、軸線P方向の、より先端側まで、径方向の大きさが確保される。すなわち、テーパ面12は、端点M1と端点M2とを通る直線よりも径方向外向きに膨らみ、端点M2における基体21の外径の大きさが端点M1へ向けて一定の割合で徐々に減少するのではなく、減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。これにより、テーパ面12における基体21の外径と、側周面15における基体21の外径との径差を、より先端側まで、小さい状態に維持することができる。言い換えると、テーパ面12の外径として、側周面15における基体21の外径に近い径を、より先端側まで確保することができる。細径化により外径を小さくすると、特にテーパ面12における外径が小さくなって基体21の外表面の面積も小さくなるが、テーパ面12のより先端側まで側周面15における基体21の外径に近い径を確保することで、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。
さらに、セラミックヒータ2の基体21は、テーパ面12が形成された部分における基体21の体積も大きく確保することができ、従来の半球状の先端部を有するものと比べ、軸線P方向の、特にテーパ面12が形成されている部分において、基体21をより厚肉な状態とすること(つまり径方向の厚みを確保して体積を確保すること)ができる。ゆえに、従来のものと比べ、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量を、より大きく確保することができる。これにより、セラミックヒータ2が外部から冷却を受けても発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より小さくなり、発熱温度を維持しやすくなるので、セラミックヒータ2の細径化を行う場合に、発熱性能を確保することができる。そして細径化によって発熱抵抗体24をよりセラミックヒータ2の外表面の近くに配置できれば、さらなる発熱性能の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態では、テーパ面12の輪郭線L1の形状が、端点M1と端点M2とを通る仮想的な楕円Eに沿う形状であること<5>を規定している。輪郭線L1の形状が上記の<1>〜<4>を満たしつつ端点M1と端点M2とを通る楕円Eは、軸線Pに平行な長軸Xと、軸線Pと直交する短軸Yをもつ楕円となる。このような楕円Eに沿うテーパ面12は、R面取りによって形成することができる。よって、テーパ面12には稜角が生じず、ゆえにテーパ面12におけるセラミックヒータ2の欠けを防止できる。
また、仮想的な楕円Eの中心点(長軸Xと短軸Yとの交点)の位置C1が、軸線P方向において、発熱抵抗体24の先端位置C2よりも後端側に配置されること<6>を規定している。ここで、発熱抵抗体24の先端位置C2は、基体21の内部に埋設される発熱抵抗体24の輪郭線L6が、軸線P方向においてもっとも先端に位置する部位を指す。発熱抵抗体24がU字形状を有するので、先端位置C2は、通常は軸線P上に位置しており、基体21内における発熱抵抗体24が軸線Pの周方向においてどの向きにあっても、軸線Pを含む断面において先端位置C2は一点に定まる。<1>〜<5>を満たしつつ、先端位置C2を楕円Eの中心点の位置C1よりも先端側、すなわち、楕円Eの長半径(長軸の半径)内に配置することで、発熱抵抗体24の発熱部27を、より先端面11の近くに配置させることができるので、セラミックヒータ2の先端面11側からも十分な放熱を行うことができ、セラミックヒータ2の発熱性能を高めることができる。
また、楕円Eは、軸線Pを挟んで径方向の両側にそれぞれ1つずつ仮想的に配置されるが、2つの楕円Eが互いに重ならず、離間して配置されること<7>を規定している。すなわち、楕円Eの短半径(短軸の半径)が、楕円Eの中心点の位置C1と軸線Pとの距離よりも小さい。このように、楕円Eの大きさを互いに離間して配置することのできる大きさとすれば、輪郭線L1の端点M1を楕円Eの長軸側の頂点に近づけることができ、また、端点M2を短軸側の頂点に近づけることができる。これにより、輪郭線L1の端点M1に接する接線の傾きを、輪郭線L2の接線の傾きに近づけることができるとともに、輪郭線L1の端点M2に接する接線の傾きを、輪郭線L3の接線の傾きに近づけることができる。よって、輪郭線L1と輪郭線L2とがなめらかに接続されるようにすることができ、同様に、輪郭線L1と輪郭線L3とも、なめらかに接続されるようにすることができる。ゆえに、端点M1や端点M2において、稜角が形成されないか、あるいは形成されても断面で180度に近い角度となるようにすることができる。
後述するが、セラミックヒータ2は、その製造過程の焼成工程において、公知のホットプレス法により径方向に縮められ軸線P方向に延びる圧縮変形を受けながら焼成されるため、基体21を構成するセラミックの粒子の配向方向が、ホットプレス時の加圧方向に直交する面方向に揃う。このため、端点M1や端点M2に稜角部分が残ると、先端面11側から外力を受けた場合に、その稜角部分が、亀裂が軸線P方向に沿って延びて生ずる裂けの発生の起点となりうる。したがって、端点M1や端点M2に稜角部分ができる限り生じないようにすることによって、稜角部分を起点として発生しうるセラミックヒータ2の欠けを、より確実に防止できる。
そして、本実施の形態では、端点M2が、先端位置C2よりも先端側に配置されること<8>を規定している。さらに、第1側周面13の輪郭線L4と、第2側周面14の輪郭線L5との接続点C3が、軸線P方向において、先端位置C2よりも後端側に配置されること<9>を規定している。端点M2と接続点C3は、輪郭線L4の両側の端点である。また、輪郭線L4は、側周面15のうち、先端部22において先端向きに窄むテーパ状に形成された第1側周面13の輪郭線である。すなわち、先端位置C2は、径方向において第1側周面13に面している。このため、発熱抵抗体24の発熱部27も、径方向において第1側周面13に面することとなり、基体21の外表面に近くなるので、発熱部27で生じた熱を効率よく外部に放熱することができ、セラミックヒータ2の発熱性能を高めることができる。
なお、上記<5>では、先細り部16のテーパ面12の形状について、輪郭線L1に着目して仮想的な楕円Eに沿う形状として規定した。このテーパ面12について、表面形状をさらに規定すると、曲率半径の異なる複数の曲面が連続して連なり、且つ、後端側曲面よりも先端側曲面の曲率半径が小さい点を満たす形状である<10−1>ともいうことができる。具体的に、図3に示すように、曲率半径の異なる複数の曲面を連ねてテーパ面12を構成し、各曲面の曲率半径についてそれぞれ比較した場合、軸線Pの先端側に配設される曲面ほど、曲率半径が小さい。例えば、曲率半径G1(図3において一点鎖線G1で示す円の半径)の曲面よりも軸線P方向後端側にある曲面の曲率半径G2、G3、G4、G5は、いずれもG1よりも大きい。同様に、曲率半径G2の曲面よりも軸線P方向後端側にある曲面の曲率半径G3、G4、G5は、いずれもG2よりも大きい。このように、軸線P方向先端側ほど曲率半径が小さくなる曲面が無数に連なって形成されるテーパ面12は、上記同様、基体21の外径の大きさが軸線P方向先端側へ向けて減少の度合いが次第に大きくなりつつ減少していく形態となる。ゆえに、テーパ面12のより先端側まで基体21の外径に近い径を確保でき、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。そして、このようなテーパ面12はR面取りによって形成され、ゆえに稜角が生じず、テーパ面12におけるセラミックヒータ2の欠けを防止できる。
先端面11、テーパ面12および第1側周面13からなる先細り部16の形状を、上記<1>〜<10−1>の規定を満たす形状とすることにより、セラミックヒータ2は、先端部22における熱容量を確保しつつ急速昇温性を得ることができる。また、本実施の形態では、セラミックヒータ2の先端部22における各部位の大きさや面積、体積等を以下のように規定することで、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量と急速昇温性の確保を図っている。
図4に示すように、セラミックヒータ2の先端部22で、軸線P方向において、先端面11の位置から後端側に6mmまでの部分(以下、「規定対象部位」ともいう。)に着目する(図4において実線で示す。)。この規定対象部位におけるセラミックヒータ2の平均外径をDとする。具体的に、平均外径Dは、軸線P方向で、先端面11の位置で測定した外径D0、および先端面11から6mmの位置まで1mmごとに測定した外径D1〜D6の平均値を求めたものである。なお、規定対象部位として先端面11から6mmまでの部分に着目するのは、一般的に、セラミックヒータ2を用いたグロープラグ1がエンジンに取り付けられた場合に、先端面11から6mm程度の部位が燃焼室内に突出され、着火性に寄与することによる。
まず、本実施の形態では、規定対象部位における平均外径Dの大きさが、2.3<D≦3.3[mm]を満たすこと<11>を規定している。後述する実施例1によれば、平均外径Dが2.3mm以下の場合、基体21の表面積が小さくなり、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得られなくなる虞がある。一方、平均外径Dが3.3mmより大きいと、発熱抵抗体24が基体21の外表面から遠くなり基体21の内部の熱容量が増えるため、基体21の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、急速昇温性を得られなくなる虞がある。<11>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量と急速昇温性を確保することができる。
次に、直径が平均外径Dである仮想円(図4において点線で示す。)を想定し、その仮想円の面積をS2とする。また、先端面11(直径は上記の外径D0である。)の面積をS1とする。面積S2に対する面積S1の割合を求めた場合に、その割合が27%以上となること<12>を規定している。先端面11の面積S1が小さいほど、テーパ面12の形成部位における基体21の外径の窄みが大きいので、テーパ面12が形成されている部分において、基体21の外径の確保が難しくなる。すると、テーパ面12における基体21の表面積を十分に確保できず、セラミックヒータ2の放熱量が低下する虞がある。
後述する実施例2によれば、面積S2に対する面積S1の割合が27%未満である場合、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を確保できなくなる虞がある。なお、エンジン始動時の着火性を確保するには、具体的に、軸線P方向において、先端面11の位置から後端側に4mmまでの部分における放熱量で、13W以上が必要とされる。また、テーパ面12が形成されている部分において基体21の外径が小さくなれば、上記のように、基体21の肉厚(径方向の厚みすなわち体積)を確保できない。ゆえに、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量が低下し、外部から基体21が冷却を受けた際の発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より大きくなり、発熱温度を維持し難くなる虞がある。<12>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量を確保でき、また、先端部22における熱容量を確保することができる。
次に、図4に示すように、基体21の断面において、上記した、軸線P方向における発熱抵抗体24の先端位置C2を、基準となる基準位置とする。この断面において、先端位置C2(基準位置)と、先端面11の位置との最短距離をAとする。上記したように、先端位置C2は、通常は軸線P上に位置しており、また、先端面11も、通常は軸線Pと直交する面に形成される。よって、軸線P上で先端面11の位置をF1とすると、先端位置C2と位置F1との距離が最短距離Aに相当する。また、基体21の断面において、テーパ面12上の任意の位置をF2とする。そして、この断面において、先端位置C2(基準位置)と、位置F2との最短距離をBとする。このとき、本実施の形態では、B>Aを満たすこと<13>を規定している。
B>Aを満たすことで、セラミックヒータ2は、先端位置C2とテーパ面12との間における基体21の肉厚(径方向の厚み)を、基準位置(先端位置C2)と先端面11との間における基体21の肉厚(軸方向の厚み)よりも大きく確保することができる。つまり、先端位置C2、すなわち発熱抵抗体24よりも基体21の先端側において、基体21の外径を確保することができるので、テーパ面12において、基体21の表面積を確保することができる。これにより、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量を得ることができる。また、先端部22における体積を確保して熱容量を確保できるので、基体21が外部からの冷却を受けても、発熱抵抗体24の温度低下への影響を、より小さくすることができ、発熱温度を維持しやすくなる。一方で、B≦Aの場合、先端位置C2とテーパ面12との間における基体21の肉厚が、B>Aを満たす場合よりも小さくなる。つまり、発熱抵抗体24よりも基体21の先端側において、基体21の外径が小さくなり、テーパ面12において、基体21の表面積を確保することが難しくなり、放熱量が低下する虞がある。また、基体21の先端部22における体積も確保することが難しくなり、熱容量が低下して、基体21が外部からの冷却を受けた場合の発熱抵抗体24の温度低下への影響が大きくなる虞がある。
後述する実施例3によれば、基体21がB≦Aであるセラミックヒータ2は、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量(13W以上)を確保できなくなる虞がある。また、B≦Aとなってテーパ面12が形成されている部分において基体21の肉厚が確保できないと、セラミックヒータ2の先端部22における熱容量が低下する。上記同様、外部から基体21が冷却を受けた際の発熱抵抗体24の温度低下への影響が、より大きくなり、発熱温度を維持し難くなる虞がある。<13>の規定を満たすことで、セラミックヒータ2は、放熱量を確保でき、また、先端部22における熱容量を確保することができる。
次に、規定対象部位におけるセラミックヒータ2の体積をVとする。このとき、本実施の形態では、V≧D×20−21[mm3]を満たすこと<14>を規定している。上記したように、セラミックヒータ2を用いたグロープラグ1がエンジンに取り付けられた場合に、規定対象部位は燃焼室内に突出される。そして、規定対象部位は、燃料の付着や燃焼室内で生ずる気流(スワール)などによって規定対象部位が冷却を受けるため、規定対象部位における熱容量の大きさがグロープラグ1の着火性に寄与することとなる。後述する実施例4によれば、規定対象部位の体積Vと平均外径Dとの関係が、V<D×20−21となる場合、所定の環境下(例えば環境温度が低い場合など)におけるエンジンの始動性に影響が生ずる虞があることが確認された。すなわち、<14>の規定を満たすことで、所定の環境の下であっても十分に、エンジンの始動性を確保することができる。
このようなセラミックヒータ2は、概略、以下のように組み立てられる。まず、「形成工程」では、図5に示すように、導電性のセラミック粉末やバインダ等を原料として射出成形によって、セラミックヒータ2の発熱抵抗体24の原形となる素子成形体110が形成される。素子成形体110は、略U字形状の未焼成の発熱部111の両極に接続された未焼成のリード部115,116が略平行に配置される。リード部115,116の末端には両者を接続するサポート部119が設けられ、素子成形体110を環状とすることで強度が得られ、製造時の取り扱い容易性が確保される。また、リード部115,116には、研磨後に基体21の側周面15に露出され、グロープラグ1の保持部材8および接続リング85との電気的な接続を担う突起部がそれぞれ形成される。
また、バインダ等の添加剤が添加された絶縁性セラミックの原料粉末を材料としてプレス成形が行われ、未焼成の基体120が作製される。基体120は、半割状の成形体として一対の平板に成形され、対向する合わせ面に、素子成形体110を収容するための凹部121が形成される。なお、基体120の合わせ面とは反対側の外側面では、長手方向の角部が面取りされている。
素子成形体110は、半割の基体120の凹部121に収納され、対の半割の基体120で挟まれて、さらに図示外のプレス機にてプレス加工が施されることによって、複合成形体130として基体120と一体に成形される。そして複合成形体130に、窒素雰囲気下で800℃、1時間の脱バインダ処理が施される。次に「焼成工程」において、公知のホットプレス法による複合成形体130の焼成が行われる。複合成形体130は図示しない成形型に径方向に挟まれて、圧縮変形されつつ加熱される。このとき、複合成形体130の基体120を構成するセラミックの粒子が加圧に対して90°の向きで成長するため、その配向方向がホットプレス時の加圧方向に直交する面方向に揃う。このように複合成形体130が焼成されることによって、焼成体140が形成される。
次に「第1研磨工程」において、焼成体140の両側の端面の切断と、センタレス研磨とが行われる。素子成形体110が焼成されてなる発熱抵抗体24の発熱部27側の端面が切断されることによって、セラミックヒータ2の先端面11が形成される。また、反対側の端面の切断によって、素子成形体110に設けられていたサポート部119が除去される。そして公知のセンタレス研磨機を用い、焼成体140の外周が研磨される。これによって、焼成体140の八角形の外周が円形に研磨され、側周面15が形成される。また、リード部28,29が側周面15から露出される。
次に「第2研磨工程」では、上記の<1>〜<7>および<10−1>の規定を満たす仮想的な楕円Eに沿った輪郭線L1を有するように、テーパ面12が形成される。すなわち、テーパ面12は、焼成体140の先端面11と側周面15との稜角部分を削るR面取りが施されることによって、形成される。
そして「第3研磨工程」において、上記の<8>、<9>の規定を満たす輪郭線L4を有するように、第1側周面13が形成される。すなわち第1側周面13は、焼成体140の先端側に、テーパ面12と側周面15との稜角部分を含め、先端向きに窄むテーパ状の研磨が施されることによって、形成される。側周面15のうち第1側周面13の形成対象部位とならず研磨されずに残った部分が、上記のように、第2側周面14とも称される。以上のように第1〜第3研磨工程を経て焼成体140の外周面が研磨されることによって、棒状で先端部22に<1>〜<14>の規定を満たす輪郭線形状を有したセラミックヒータ2が形成される。
なお、本発明は各種の変形が可能である。テーパ面12はR面取りによって形成したが、例えば図6に示すセラミックヒータ202のテーパ面112のように、C面取りによって形成してもよい。この場合、上記の<1>〜<4>の規定を満たすように、テーパ面112を形成する上で、2段以上のC面取りを行うとよい。図6の例では先端面11および第1側周面13と共に先細り部116を構成するテーパ面112を、軸線P方向先端側の第1テーパ面108と、後端側の第2テーパ面109とからなる2段に構成している。第1テーパ面108の輪郭線をL7、第2テーパ面109の輪郭線をL8として示す。
本変形例では、輪郭線L2と輪郭線L7とがなす角度β1と、輪郭線L7と輪郭線L8とがなす角度β2と、輪郭線L8と輪郭線L4(L3)とがなす角度β3とのいずれもが、145度以上となること<21>を規定している。前述したように、基体21を構成するセラミックの粒子の配向方向が軸線P方向に揃うため、C面取りによって生じうる各テーパ面間の稜角部分が、亀裂が軸線P方向に沿って延びて生ずる裂けの発生の起点となりうる。テーパ面212におけるセラミックヒータ202の欠けの発生を抑制するには、稜角部分を構成するテーパ面の輪郭線同士のなす角度が、できる限り180度(稜角部分がない状態)に近い角度となることが好ましい。
後述する実施例5によれば、稜角部分を形成するテーパ面の輪郭線同士のなす角度が145度未満であると、その稜角部分が、こうした裂けを発生しうる起点となって、欠けを生じてしまう虞があることがわかった。もちろん、上記のテーパ面112を形成する上で、テーパ面の段数が3段以上であっても同様であり、それぞれの輪郭線のなす角度がいずれも145度以上であればよい。なお、<21>の規定は、本実施の形態において、先端面11、テーパ面12および第1側周面13を研磨によって形成することで生じうる各面間の稜角部分に対しても適用できる。すなわち、テーパ面12の輪郭線L1の端点M1における楕円Eの接線と、先端面11の輪郭線L2とがなす角度が、145度以上となることが望ましい。同様に、テーパ面12の輪郭線L1の端点M2における楕円Eの接線と、第1側周面13の輪郭線L3とがなす角度も、145度以上となることが望ましい。このようにすれば、テーパ面112におけるセラミックヒータ202の欠け防止する上で有効である。
なお、上記変形例では、先細り部116のテーパ面112をC面取りによって形成した。このテーパ面112について、表面形状をさらに規定すると、軸線Pに対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面が連続して連なり、且つ、後端側傾斜面よりも先端側傾斜面の傾斜角度が大きい点を満たす形状である<10−2>ともいうことができる。具体的に、図6に示すように、軸線Pに対する傾斜角度の異なる複数の傾斜面(例えば第1テーパ面108、第2テーパ面109)を連ねてテーパ面112を構成し、各傾斜面の傾斜角度についてそれぞれ比較した場合、軸線Pの先端側に配設される傾斜面ほど、傾斜角度が大きい。例えば、軸線P方向先端側に形成された先端側傾斜面の例である第1テーパ面108の傾斜角度をγ1とし、後端側に形成された後端側傾斜面の例である第2テーパ面109の傾斜角度をγ2とする。図6に示すように、軸線Pに対する第1テーパ面108の傾斜角度γ1は、第2テーパ面109の傾斜角度γ2より大きい。この例では傾斜面が2面であるが、さらに複数の傾斜面を有する場合であっても、先端側傾斜面の傾斜角度γ1が後端側傾斜面の傾斜角度γ2より大きくなるように、各傾斜面を形成する。このようにすれば、テーパ面112のより先端側まで基体21の外径に近い径を確保でき、基体21の外表面の面積を確保できるので、セラミックヒータ2の放熱量を大きくすることができる。
また、本実施の形態では、テーパ面12をR面取りによって形成し、その輪郭線L1が、仮想的な楕円Eに沿う形状となることを規定したが、上記のようなC面取りと、R面取りとを組合せてテーパ面を形成してもよい。また、テーパ面12の輪郭線L1は、楕円に限らず、仮想的な円に沿う形状であってもよく、この場合、<1>〜<4>の規定が満たされるとよい。また、本実施の形態および変形例では、セラミックヒータ2の先端部22に先端面11が形成されているが、先端面11を省略してもよい。先端面11が省略されたセラミックヒータにおいても、上記<11>、<13>、<14>の規定を満たすことで、放熱量および急速昇温性を確保できることやエンジンの始動性を確保できることを確認している。さらに、セラミックヒータ2は、内燃機関等に使用するグロープラグ1に用いられるものに限らず、家電等として使用するヒータに用いてもよい。
セラミックヒータ2の先端部22を肉厚に形成することによって、放熱量および熱容量を確保しつつ急速昇温性が得られることを確認するため、評価試験を行った。なお、以下の評価試験において用いたセラミックヒータのサンプルは、作製および比較を容易にするため、テーパ面をC面取りによって形成した。具体的に、外径をφ2.4〜φ3.5[mm]の範囲で適宜異ならせた複数種類のセラミックヒータの焼成体を作製した。第1研磨工程によって各焼成体を研磨して先端面と側周面を形成した。なお、先端面と発熱抵抗体の先端位置C2との最短距離Aは、0.8mmである。容易化のため、第3研磨工程によって、あらかじめ第1側周面を形成した。そして第2研磨工程において、外径に応じて面取り寸法を0〜1.3[mm]の範囲で適宜異ならせたC面取りにより、先端面と第1側周面との間の稜角部分を研磨して、テーパ面を形成した。なお、面取り寸法は、径方向における面取り量(幅)とした。
このように作製した22種類のセラミックヒータのサンプルの規定対象部位において、上記したように、1mmごとの外径D0〜D6を測定した。各サンプル1〜22の平均外径Dを測定したところ、表1に示すように、φ2.3〜φ3.4[mm]の範囲で適宜異なる値となった。そして各サンプル1〜22の外径D0(すなわち先端面の直径)から、先端面の面積S1を算出した。また、各サンプル1〜22の平均外径Dを直径とする仮想円の面積S2をそれぞれ算出した。さらに各サンプル1〜22についてS1/S2を求めた結果を、表1に、百分率で示した。
まず、各サンプル1〜22の放熱量を、演算により求めた。具体的には、先端面の位置から後端側に4mmまでの部分を軸線Pと直交する平面で複数に輪切りにした微小区間を想定する。そして公知の演算式に基づき、微小区間ごとに、表面積(外周面の面積)と温度とから放熱量を算出し、全微小区間の放熱量を足し合わせることによって求めた。なお、放熱量は、セラミックヒータの表面に接触する空気への熱伝達量Q1[W]と、表面から輻射による空気への熱伝達量Q2[W]とを足し合わせることによって求めることができる。伝導による熱伝達量Q1は、Q1=hA(T(素子)−T(気体))によって求められる。また、輻射による熱伝達量Q2は、Q2=σεA((T(素子))4−(T(気体))4)によって求められる。ただし、hはセラミックヒータの基体の熱伝導率であり、σはステファンボルツマン定数であり、εは放射率(セラミックヒータの基体の輻射率)であり、Aは表面積である。また、T(素子)は発熱抵抗体の発熱部の温度であり、印加する電圧に応じてあらかじめ求められている。T(気体)はセラミックヒータの基体の表面温度であり、放射温度計により測定する。
各サンプル1〜22の放熱量を算出した結果を表1に示す。一般に、ディーゼルエンジンにおける着火性を確保するには放熱量として13Wが必要とされている。表1に示すように、放熱量が13Wに満たないサンプルは、1,3,6,9〜11,14〜16,19〜21であった。
さらに、各サンプル1〜22にそれぞれ11Vの電圧を印加し、表面温度が1000℃に到達するまでにかかる時間を測定した結果を表1に示す。一般に、ディーゼルエンジンにおける急速昇温性を確保するには、表面温度の1000℃到達時間として1.3秒以下であることが望ましいとされる。表1に示すように、表面温度の1000℃到達時間が1.3秒を越えたサンプルは22であった。
ここでサンプル1に着目すると、サンプル1は、面取り寸法が0mmで、すなわちテーパ面が形成されていない。サンプル1の平均外径Dはφ2.3mmと小さく、テーパ面を形成せずとも放熱量を確保するのに十分な表面積が得られないことがわかる。したがって、セラミックヒータの平均外径Dは、φ2.3mmより大きいことが好ましい。
一方、サンプル22は、表面温度の1000℃到達に1.31秒かかっている。サンプル18とサンプル22とを比較すると、サンプル22の面取り寸法はサンプル18と同じ大きさであるが、サンプル18よりもサンプル22の平均外径Dは大きい。前述したように基体の内部に埋設される発熱抵抗体の設計(大きさや発熱量)には変更がなく、平均外径Dが大きい分、サンプル22はサンプル18よりも発熱抵抗体が基体の外表面から遠くなり、また、基体の内部の熱容量が大きい。よって、基体の内部の昇温と外部への熱の伝達に時間がかかり、表面温度の1000℃到達が1.3秒を越えて急速昇温性が得られない。したがって、セラミックヒータの平均外径Dは、φ3.3mm以下であることが望ましい。以上より、<11>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、放熱量と急速昇温性を確保できることが確認された。
次に、表1に示すように、放熱量が13Wに満たないサンプルのうち、サンプル6,9〜11,14〜16,19〜21は、S1/S2が27%未満であった。これらのサンプルは、平均外径Dに対して先端面の大きさ(直径)を十分に確保できなかったサンプルである。つまり、テーパ面の形成による基体の先端部の窄み具合が大きく、テーパ面が形成されている部分において十分な外径を確保できていない。ゆえに、特にテーパ面の部分において十分な表面積を確保できず、放熱量として13W以上を得られなかった。以上より、<12>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、十分な放熱量を確保できることが確認された。
なお、サンプル3は、もともとの平均外径Dがφ2.5mmと小さい。このため、面取り寸法を0.45mmとしてテーパ面を大きく形成すると、放熱量を確保するのに十分な表面積を得られなくなる。サンプル3は、S1/S2が31%であって27%以上を満たしても、放熱量として13W以上を得られなかった。
上記の<11>および<12>の規定を満たすサンプル8と同寸法の平均外径D(φ2.9mm)と面取り寸法(0.6mm)に設定したサンプル(シミュレーションサンプル)をシミュレータによって作製した。さらに、発熱抵抗体の先端位置C2(基準位置)と先端面の位置との最短距離A、および、基準位置とテーパ面上の任意の位置F2との最短距離Bを、0.4〜1.6mmの範囲で適宜異ならせた複数のシミュレーションサンプルを作製した。ここで、最短距離Bは、面取り寸法を0.6mmとしたまま、基体の軸線Pに対するC面取りの角度を異ならせることによって調整した。
そして、これらのサンプルの放熱量を、前述したように、先端面の位置から後端側に4mmまでの部分を輪切りにした微小区間ごとの熱伝達量Q1,Q2を算出して足し合わせることによって求めた。演算の結果を表2に示す。
表2に示すように、BがA以下となったシミュレーションサンプルでは、放熱量が13Wに満たなかった。B≦Aであると、基体の先端部における径方向の厚みがB>Aの場合と比べ薄くなる。つまり、テーパ面が形成されている部分において、基体の外径が小さくなる。ゆえに、基体の先端部における表面積が小さくなり、熱伝達量Q1が小さくなって、ディーゼルエンジン始動時の着火性の確保に必要とされる放熱量(13W以上)を確保できなくなる。以上より、<13>の規定を満たすことで、セラミックヒータは、十分な放熱量を確保できることが確認された。
次に、規定対象部位の体積Vと、平均外径Dとの関係について評価を行った。表1に示すように、各サンプル1〜22の規定対象部位(先端面の位置から後端側に6mmまでの部分)の体積V[mm3]をそれぞれ求めた。なお、体積Vは、例えば、先端面から6mmの位置まで0.1mmごとに外径を測定し、その外径の円柱の体積を足し合わせて求めればよい。
そして、各サンプル1〜22をそれぞれ組み付けたグロープラグを、試験用のディーゼルエンジンに取り付け、−20℃の低温環境において、エンジンの始動試験を行う。このとき、グロープラグへの予熱通電(昇温のための通電)の開始と同時にエンジンのクランキング(セルモータによる始動)を行った。つまり、セルモータの始動に電力が使用され、予熱通電のための電力が安定しない状況における低温環境下での始動試験である。この状態でエンジンの始動ができたサンプルは、2,4,5,7〜10,12〜15,17〜20,22であり、表1に「○」で示した。また、エンジンを始動できなかったサンプル(1,3,6,11,16,21)は、表1に「×」で示した。
さらに、規定対象部位の体積Vを縦軸とし、平均外径Dを横軸とする図7のグラフに、始動試験の結果を、同様に、「○」「×」で示した。図7のグラフから明らかに、上記低温環境下においてエンジンを始動するために必要とされる規定対象部位の体積Vの大きさとして、平均外径Dの大きさに応じた大きさがあることがわかる。このグラフをもとに、発明者らが、規定対象部位の体積Vと平均外径Dとの関係を示す所定の関係式を求めたところ、「V=D×20−21」の式が得られた。
V≧D×20−21を満たすサンプルは、規定対象部位に十分な体積を有するため、満たさないサンプルと比べて熱容量が大きい。ゆえに、上記のような低温環境下で、セラミックヒータの受けた冷却が、直ちに発熱抵抗体の温度低下に大きな影響を及ぼすことが低減される。したがって、<14>の規定が満たされることにより、上記の予熱通電のための電力が安定しない状況における低温環境下においても、十分に、エンジンを始動でき、規定対象部位において十分な熱容量を確保できることが確認された。
次に、セラミックヒータ202のテーパ面112をC面取りによって形成し、その際に先端部に形成される稜角部分の輪郭線同士がなす角度の大きさを規定することによって、欠けの発生を抑制できることを確認するため、評価試験を行った。この評価試験では、面取り寸法が0.6mmで平均外径Dがφ2.9mmの上記のサンプル8を作製する際に形成した焼成体をもとに、テーパ面に形成される稜角部分の輪郭線同士のなす角度を90°、135°、145°、151°とした4種類のセラミックヒータのサンプルを作製した。90°のサンプルは、第1研磨工程のみを行い、テーパ面および第1側周面を形成しなかったサンプルである。135°のサンプルは、上記同様、あらかじめ第3研磨工程によって第1側周面を形成した上で、第2研磨工程で先端面に対して45°の傾斜角を有するように1段のC面取りを行ってテーパ面を形成した上記のサンプル8である。145°と151°のサンプルは、同様に、あらかじめ第3研磨工程によって第1側周面を形成した上で、図6に示す、なす角度β1およびβ3がともに、それぞれ145°と151°になるように2段のC面取を行ってテーパ面を形成したサンプルである。なお、なす角度β2が、いずれも145°以上となるように、第1側周面が形成される。これら4種のサンプルは、それぞれ200個ずつ用意した。
公知のシャルピー試験機を用い、これらのセラミックヒータのサンプルに対してシャルピー衝撃試験を行った。シャルピー衝撃試験では、グロープラグの製造過程やエンジンへの組み付けの際に落下する虞のある高さとして最大で50cmを見込み、衝撃試験においてサンプルに与える衝撃エネルギーを設定する上での目安とした。具体的に、4種のサンプルそれぞれ100個ずつに対し、2.5m(安全率5)の高さからサンプルを落下した場合に相当する衝撃エネルギーを、各サンプルの先端部に与えた。同様に、4種のサンプルそれぞれ100個ずつに対し、10mの高さからサンプルを落下した場合に相当する衝撃エネルギーを、各サンプルの先端部に与えた。そして試験後に、各サンプルの欠けの発生の有無を観察し、欠けの発生したサンプルの個数を数えてその割合を求めた。この試験の結果を図8のグラフに示す。
図8に示すように、10m落下相当の衝撃エネルギーを与える衝撃試験において、上記の90°のサンプルのうち欠けを生ずるサンプルが90%あり、135°のサンプルも欠けを生ずるサンプルが73%あった。また、145°,151°のサンプルでも10m落下相当の衝撃エネルギーが与えられると欠けを生じてしまうサンプルが、それぞれ26%、27%あったが、90°や135°のサンプルと比べ、その数(割合)は大幅に減少した。一方、目安に対する安全率が5である2.5m落下相当の衝撃エネルギーを与える衝撃試験では、90°のサンプルにおいては、欠けを生ずるサンプルが17%あった。135°のサンプルでも欠けを生ずるサンプルが7%あったが、145°,151°のサンプルには欠けが発生しなかった。このシャルピー衝撃試験の結果より、セラミックヒータのテーパ面をC面取りによって形成する場合、先端部に形成される稜角部分の輪郭線同士のなす角度の大きさが145度以上となるようにテーパ面を形成すれば、テーパ面におけるセラミックヒータの欠けを十分に防止できることがわかった。