JPWO2012046717A1 - 2成分系組織接着剤及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
第1の接着剤は、シアノアクリレート系組織接着剤であり、製品としてはDERMABONDがある。この接着剤は、接着強度は高いが、生体親和性が低いという課題がある。
第2の接着剤は、バイオポリマーとアルデヒド系の組織接着剤であり、製品としてはGRF glueがある。この接着剤も、接着強度は高いが、生体親和性が低いという課題がある。
第3の接着剤は、フィブリン系組織接着剤であり、製品としてはボルヒール(Bolheal)がある。この接着剤は、逆に、生体親和性は高いが、接着強度が低いという課題がある。
このように、接着強度と生体親和性の両方の特性に優れた組織接着剤がないというのが、従来技術の課題であった。
HSAは、血液製剤から作られる血清タンパク質であり、分子量69000、直径約10nmの球状タンパク質である。また、マイナスチャージを持った酸性タンパク質である。また、架橋剤としては、酒石酸(Disuccinimidyl Tartarate:以下、DST)が用いられている。
また、特許文献3は、組織接着構成物に関するものであり、粒子形態の合成および/または架橋性の材料と、粒子状材料とが混合された組織接着構成物が開示されている。しかし、この組織接着構成物も、接着力が十分でないという課題がある。
更にまた、側鎖にアルキル基を導入したゼラチンに関する論文がある(非特許文献2、3)。
しかし、上記課題を解決するには、至っていない。
本発明は、以下の構成を有する。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態である組織接着剤及びその製造方法について説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態である2成分系組織接着剤は、疎水化ゼラチンを含有する第1剤と、架橋用分子を含有する第2剤とからなる。なお、当該第1剤には、ヒト、ブタ、ウシ、魚由来の天然ゼラチン、及び遺伝子組換えゼラチンからなる群より選択される1種、又は2種以上の組合わせであるゼラチンを含んでいてもよい。
なお、前記組織接着剤を用いて、生体組織を接着する際には、疎水化ゼラチンと架橋用分子とを架橋反応させるために、水を必要とする。前記水は、pH6〜8の緩衝液であることが好ましい。この範囲のpHの緩衝液を用いることにより、架橋反応を最も早く進行させることができる。
疎水性官能基が水溶性の場合には、疎水性度が低いため、疎水性官能基を組織に突き刺すことが困難となり、疎水化ゼラチンを組織に強固に固定することはできない。一方、疎水性官能基が水に対して不溶性の場合には、疎水性を示すので、疎水性官能基を組織にアンカーリングすることが困難となり、疎水化ゼラチンを組織に強固に固定することが難しい。
疎水性官能基として、例えば、次式(1)に示すコレステリル基の他、オレイル基、イソステアリル基、ステアリル基、イソパルミチル基、ミリスチル基、ラウリル基、カプリン基、ペラルゴル基、カプリル基、カプロル基、α−リロレニル基、ステアリドニル基、エイコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエニル基を挙げることができ、これらからなる群より選択される1種、又は2種以上の組合わせとすることができる。
前記活性エステル基は、N−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル基の1種または2種以上の組み合わせであることが好ましい。スクシンイミドは、生体内の代謝経路に存在するコハク酸の誘導体であり、アメリカ食品医薬品局で認可された組織接着剤(シーラント)に使用されている実績があるためである。
より具体的には、例えば、架橋用分子として、次式(2)に示す酒石酸ジスクシンイミジルを挙げることができる。
次に、本実施形態の2成分系組織接着剤を用いた組織の接着について説明する。
図2は、本実施形態の組織接着剤を用いた組織の接着方法の一例を説明する工程概略図である。
まず、図2左上に示すように、平面視略矩形状(例えば、長さ3cm×幅1cm、高さ0.5cm)のプラスチック基板の一面の一部に平面視略矩形状(例えば、長さ1cm×幅1cm、高さ0.5cm)の組織を形成する。組織としては、疑似皮膚としてcollagen、cellulose、glycerin等の成分から成るコラーゲンケーシングを用いる。
次に、疎水化ゼラチンの水溶液(第1剤)と架橋用分子(第2剤)を混合し、液状の接着材料を調製する。なお、本発明の2成分系組織接着剤の第1剤及び第2剤に用いる溶媒は、pH6〜8の緩衝液であることが好ましい。
次に、図2右上に示すように、プラスチック基板の一面上の組織上に上記の液状の接着材料を塗布する。
次に、図2下段に示すように、プラスチック基板の一面上の組織を、組織上の液状の接着材料に押しつけ、錘を置いて加重を付加した状態で一定時間放置する。
なお、前記放置時間は、組織接着剤が固化するのに必要な時間であり、組織接着剤中の構成材料の割合によって適宜設定する。例えば、10分程度とする。また、この際、例えば、37℃程度に加熱してもよい。
図3に示すように、加水分解反応により、疎水化ゼラチンのアミノ基と架橋用分子の一の活性エステル基が反応して、アミド結合が形成する。その際、活性エステル基中のN−ヒドロキシスクシンイミドが遊離する。また、この架橋用分子の他の活性エステル基が他の疎水化ゼラチンおよび生体組織中に存在するコラーゲンなどのタンパク質のアミノ基と反応して、アミド結合が形成する。これにより、2つの疎水化ゼラチンが一の架橋用分子により架橋される。
この架橋反応が連鎖的に行われることにより、複数の疎水化ゼラチンが架橋用分子により強固に結合された構造体が形成される。これにより、この構造体は、化学的に強固なものとされる。
つまり、次式(3)で表される化学反応が生じていると考えられる。式(3)において、−COORは、架橋剤の活性エステル、−NH2は、疎水化ゼラチン中のアミノ基を示す。
次に、本発明の実施形態である2成分系組織接着剤の製造方法について説明する。
本発明の実施形態である2成分系組織接着剤の製造方法は、疎水化ゼラチンを合成して容器に充填する工程と、架橋用分子を別容器に充填する工程とを有する。
疎水化ゼラチン合成工程は、ゼラチンを溶解させた溶液にアミン存在下で疎水性官能基を有する有機分子を添加し、前記ゼラチンの側鎖のアミノ基の一部を前記疎水性官能基で置換して、疎水化ゼラチンを合成する工程である。
なお、前記ゼラチンとしては、分子量が10,000以上50,000未満となるものを選択する。
有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)を用いる。
有機分子としては、例えば、次式(4)に示すコレステリルクロロフォルメイトを挙げることができる。
次に、前記混合溶液を、不活性ガス雰囲気下、加熱し、攪拌する。例えば、窒素雰囲気下、加熱温度は80℃とし、攪拌時間は一昼夜とする。
更に、濾過物を有機溶媒で洗浄する。これにより、濾過物中の不純物を除去することができ、疎水化ゼラチンの純度を向上させることができる。この洗浄用の有機溶媒としては、例えば、エタノールあるいは酢酸エチルを用いる。
以上の工程により、ゼラチンの側鎖のアミノ基の一部を疎水性官能基で置換した疎水化ゼラチンを生成でき、これを適宜、所定の量の水または緩衝液と混合した後、容器に充填して第1剤とする。
架橋用分子充填工程は、一分子内に2個以上の活性エステル基又は酸無水物を有する架橋用分子を第1剤とは別個の容器に充填する工程である。
なお、本発明の実施形態である2成分系組織接着剤においては、第1剤中に、未修飾のゼラチン(オリジナルゼラチンと呼称する)を更に混合して、組織接着剤中の疎水化ゼラチンの割合を最適な値に調製して、接着強度をより向上させてもよい。
(疎水化ゼラチン(コレステリル化ゼラチン)の合成)
まず、ゼラチン300gを2.97LのDMSO中で撹拌して溶解し80℃に保った。次に、0.03Lのトリエチルアミンを添加した。
次に、ゼラチンのアミノ基に対して10%となるようコレステリル化クロロフォルメイト(Cholesteryl chloroformate)を添加し、80℃で撹拌して溶解し、窒素雰囲気化で一昼夜撹拌しながら反応させた。
得られた疎水化ゼラチン(分子量20000)をオリジナルゼラチン(分子量20000)と種々の割合で混合した溶液を0.1M−リン酸緩衝液(pH6.0)により調製した。得られた溶液200μLをスクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるように架橋用分子であるDSTと混合した。その後、5秒間攪拌することにより、組織接着剤を調製した。
実施例1では、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した。
なお、分子量20000、コレステロール導入率10%の収量は、250.3gであり収率82%であった。実施例1の組織接着剤の接着強度は、58.2kPaであった。
コレステリル基の導入は、プロトン核磁気共鳴装置(1H−NMR)によりC18プロトンのピークを0.67ppm付近に確認した。
まず、一面の約1/3の面積(1cm×1cm)を覆うようにコラーゲンケーシングを貼付したプラスチック板(縦3cm、横1cm、厚さ0.5mm)を2枚準備した。
次に、一のプラスチック板に貼り付けたコラーゲンケーシングの一面に、実施例1の組織接着剤を塗布した。なお、前記塗布は、前記得られた疎水化ゼラチンをオリジナルゼラチンと種々の割合で混合したリン酸緩衝溶液に、DSTを分散させてから、すぐに実施した。
次に、他のプラスチック板に貼り付けたコラーゲンケーシングの一面を押し付け、50gの錘を乗せた状態で、37℃で10分間放置した。
これにより、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が0(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した実施例1の組織接着剤の接着強度(平均)は、57.1kPaであった。なお、接着強度(平均)は、1回目から3回目までの平均の値を示すものであり、1回目とは、ある条件で単独に測定したものである。2回目とは1回目と同一条件で単独に調製した接着剤の強度である。3回目とは、1,2回目と同一条件で単独に調製した接着剤の強度である。
種々の組成を有する組織接着剤硬化物を直径8mm、厚さ1mmに成形し、ラット背部皮下における分解性および周辺組織の炎症を3〜28日間経時的に評価した。
比較例として、GRFグルー(日本ビー・エックス・アイ株式会社)を用いた。
種々の組成を有する組織接着剤硬化物を直径5mm、厚さ1mmに成形し、炎症性の転写因子レセプターのプロモーター領域にルシフェラーゼ活性のある遺伝子改変マウス(20週齢、BALB/C−Tg(NFκB−RE−luc)−Xen)の背部皮下に埋入した。7日後、炎症の程度を300μLのルシフェリン腹腔内投与15分後の発光をIVIS LuminaII(Xenogen社製)を用いて発光量(photon/sec)を評価した。3匹に埋入した組織接着剤硬化物の平均値を発光量とした。比較例として、GRFグルー(日本ビー・エックス・アイ株式会社)を用いた。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が20(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した他は実施例1と同様にして、実施例2の組織接着剤を製造した。
実施例2の組織接着剤の接着強度は、61.5kPaであった。また、14日で分解吸収性が認められ、生体親和性を示した。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が30(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した他は実施例1と同様にして、実施例3の組織接着剤を製造した。
実施例3の組織接着剤の接着強度は、58.6kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が50(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した他は実施例1と同様にして、実施例4の組織接着剤を製造した。
実施例4の組織接着剤の接着強度は、62.0kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が70(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した他は実施例1と同様にして、実施例5の組織接着剤を製造した。
実施例5の組織接着剤の接着強度は、68.5kPaであった。
また、14日で分解吸収性が認められ、生体親和性を示した。また、実施例5の遺伝子改変マウスを用いたNFκB−REの発光量は、300.77(x106photon/sec)であり、生体親和性を示した。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が100(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製した他は実施例1と同様にして、実施例6の組織接着剤を製造した。
実施例6の組織接着剤の接着強度は、54.7kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例7の組織接着剤を製造した。
実施例7の組織接着剤の接着強度は、62.0kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が20(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例8の組織接着剤を製造した。
実施例10の組織接着剤の接着強度は、75.0kPaであった。また、実施例10の遺伝子改変マウスを用いたNFκB−REの発光量は、282.17(x106photon/sec)であり、生体親和性を示した。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が30(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例9の組織接着剤を製造した。
実施例9の組織接着剤の接着強度は、51.1kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が50(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例10の組織接着剤を製造した。
実施例10の組織接着剤の接着強度は、63.0kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が70(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例11の組織接着剤を製造した。
実施例11の組織接着剤の接着強度は、58.9kPaであった。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が100(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例12の組織接着剤を製造した。
実施例12の組織接着剤の接着強度は、55.9kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度60wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で0.2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例13の組織接着剤を製造した。
なお、分子量50000、コレステロール導入率10%の収量は、252.2gであり収率81%であった。コレステリル基の導入は、プロトン核磁気共鳴装置(1H−NMR)によりC18プロトンのピークを0.67ppm付近に確認した。
実施例13の組織接着剤の10分後の接着強度は、11.6kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度60wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で0.5となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例14の組織接着剤を製造した。
実施例14の組織接着剤の10分後の接着強度は、12.2kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度60wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例15の組織接着剤を製造した。
実施例15の組織接着剤の10分後の接着強度は、13.9kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度60wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例16の組織接着剤を製造した。
実施例16の組織接着剤の10分後の接着強度は、5.5kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で0.2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例17の組織接着剤を製造した。
実施例17の組織接着剤の10分後の接着強度は、17.1kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で0.5となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例18の組織接着剤を製造した。
実施例18の組織接着剤の10分後の接着強度は、30.1kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例19の組織接着剤を製造した。
実施例19の組織接着剤の10分後の接着強度は、22.8kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が20(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例20の組織接着剤を製造した。
実施例20の組織接着剤の10分後の接着強度は、28.6kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が30(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例21の組織接着剤を製造した。
実施例21の組織接着剤の10分後の接着強度は、24.1kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が50(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例22の組織接着剤を製造した。
実施例22の組織接着剤の10分後の接着強度は、18.9kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が70(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例23の組織接着剤を製造した。
実施例23の組織接着剤の10分後の接着強度は、24.3kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が100(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で1となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例24の組織接着剤を製造した。
実施例24の組織接着剤の10分後の接着強度は、26.9kPaであった。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が10(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例25の組織接着剤を製造した。
実施例25の組織接着剤の15分後の接着強度は、19.5kPaであった。
また、7日で分解吸収性が認められ、生体親和性を示した。
分子量50000のゼラチンおよびコレステリル化ゼラチンを用いて、組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が80(wt%)(最終濃度70wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例26の組織接着剤を製造した。
実施例26の組織接着剤の15分後の接着強度は、25.9kPaであった。
また、7日で分解吸収性が認められ、生体親和性を示した。
組織接着剤中のコレステリル化ゼラチンの質量%が80(wt%)(最終濃度80wt%)となるように調製し、スクシンイミジル基/アミノ基がモル比で2となるようにした他は実施例1と同様にして、実施例27の組織接着剤を製造した。
実施例27の組織接着剤の接着強度は、76.2kPaであった。但し、最終濃度70wt%のものと比較して、粘性が高く操作性が劣っていた。
市販のアルデヒド系接着剤GRFグルー(日本ビー・エックス・アイ株式会社)を用いた他は実施例1と同様にして、比較例1の接着強度および生体親和性を評価した。
比較例1の組織接着剤の接着強度は、41.2kPaであった。
また、14日においても分解吸収性が認められず、生体親和性が低かった。また、比較例1の遺伝子改変マウスを用いたNFκB−REの発光量は、516.30(×106photon/sec)であり、実施例と比較して炎症性を示した。
分子量2000のコレステリル化ゼラチンも同様に合成したが、溶液粘度が低く接着強度が得られなかった。
ブタ血管中膜を用いた疎水化ゼラチン-DST接着剤の接着試験
(実験方法)
ブタ血管中膜を露出させ、1cm×3cmに切り出し、基材として用いた。分子量20,000の疎水化ゼラチンを0.1M、pH6のPBSで70w/v&に調製し、37℃に保った。そこに、ゼラチン中のアミノ基:DSTスクシンイミジル基が1:1となるように秤量したジスクシンイミジル・タルタレート(DST)粉末を添加した。ペンシルミキサーで5秒間撹拌し、すぐに暑さ0.5mmの1cm×1cmに切りぬいたシリコーンシートでマスクした基材に塗布し、37℃で10分間インキュベートし、直ちに接着強度を測定した。
せん断試験の結果を図4〜図6に示す。
図4中、Hxはヘキサノイル基、Pamはパルミトイル基、Steはステアリル基、Oleはオレイル基を意味する。また、10Hx、10OPam、10Ste、10Oleは、それぞれゼラチン中のアミノ基に対する疎水基導入率が10%であることを意味する。また50Hx、50OPam、50Ste、50Oleは、それぞれゼラチン中のアミノ基に対する疎水基導入率が50%であることを意味する。GRFは、市販品のGRFグルーを意味し、Gltnは、未処理ゼラチンを意味する。
図5中、30%-10Oleは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを30:70(w/w)で混合したものを意味する。50%-10Oleは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを50:50(w/w)で混合したものを意味する。70%-10Oleは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを70:30(w/w)で混合したものを意味する。100%-10Oleは、疎水化率10%のゼラチンを意味する。
図6中、30%-10Steは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを30:70(w/w)で混合したものを意味する。50%-10Steは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを50:50(w/w)で混合したものを意味する。70%-10Steは、疎水化率10%のゼラチンと未処理のゼラチンを70:30(w/w)で混合したものを意味する。100%-10Steは、疎水化率10%のゼラチンを意味する。
20−10Ste(ステアリル基)及びOle(オレイル基)において、効果的な接着強度が確認された。これはゲルの強度自体が高いこと、ステアロイル基の基材への浸透によるものと示唆される。疎水基の導入率が多くなると、接着強度は弱くなった。
Claims (7)
- 側鎖にアミノ基と疎水性官能基とを備えた疎水化ゼラチンを含有する第1剤;及び
一分子内に2個以上の活性エステル基又は酸無水物を有する架橋用分子を含有する第2剤;からなる、2成分系組織接着剤。 - 前記疎水化ゼラチンが、2個以上のアミノ酸が直鎖状に連結された高分子であり、且つ当該アミノ酸中のLys残基の一部が前記疎水性官能基で置換されている、請求項1に記載の2成分系組織接着剤。
- 前記疎水性官能基がコレステリル基、オレイル基、イソステアリル基、ステアリル基、イソパルミチル基、ミリスチル基、ラウリル基、カプリン基、ペラルゴル基、カプリル基、カプロル基、α−リロレニル基、ステアリドニル基、エイコサペンタエノイル基、ドコサヘキサエニル基からなる群より選択される1種、または2種以上の組み合わせである、請求項1又は請求項2に記載の2成分系組織接着剤。
- ヒト、ブタ、ウシ、魚由来の天然ゼラチン、及びこれらの遺伝子組換えゼラチンからなる群より選択される、1種、または2種以上の組み合わせであるゼラチンを前記第1剤に更に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の2成分系組織接着剤。
- 前記疎水化ゼラチンの分子量が10000以上50000未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の2成分系組織接着剤。
- 前記架橋用分子が、ゲニピン、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、オキサル酢酸、cis−アコニット酸、2−ケトグルタル酸、ポリ酒石酸、ポリクエン酸、ポリリンゴ酸、ポリグルタミン酸、及びポリアスパラギン酸からなる群から選ばれる、1種または2種以上の組合せである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の2成分系組織接着剤。
- ゼラチンを溶解させた溶液にアミン存在下で疎水性官能基を有する有機分子を添加し、前記ゼラチンの側鎖のアミノ基の一部を前記疎水性官能基で置換して、疎水化ゼラチンを合成して、これを第1容器に充填する工程;及び
一分子内に2個以上の活性エステル基又は酸無水物を有する架橋用分子を第2容器に充填する工程;
を有する、2成分系組織接着剤の製造方法。
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