JPWO2012029094A1 - 水質評価方法 - Google Patents

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Abstract

従来の水の成分分析法や魚・ミジンコ・藻のような水生生物のバイオアッセイでは評価確度の低い、水の複合的な人への健康影響を評価することにある。複数組織由来のヒト培養細胞を用いて、被験水を細胞に処理し、危険な急性有害性を迅速に検出する工程とともに、有害性マーカー分子を指標に低濃度域での有害性を検出することで長期摂取・暴露による慢性有害性の発生リスク情報を取得する工程を同時に行い、総合的に評価することで、人健康リスクへの確度の高い評価ができる。

Description

本発明は、水の生体に対する危険性を直接的かつ総合的に評価する方法に関する。
現在、水の安全性評価は水道水や排水、水質汚濁基準に関する分析が主であり、物理化学的分析法を利用している。物理化学的分析法は、水に含まれる化学物質成分を濃縮・抽出・精製した後にクロマトグラフィー(ガス・液体・イオン)あるいはそれらと質量分析計を組み合わせて機器分析する手法で、前処理方法が極めて煩雑な上に、測定しようとする化学物質ごとに操作手順が異なるため、あらゆる種類の化学物質について網羅的に分析する場合には多大な労力とコストが必要である。主な分析項目は、残留塩素や色度、濁度などの水道法10項目、飲料水50項目、ヒト健康保護に関する環境基準36項目などであり、このように成分分析法は、水に含まれる既知の有害性物質の濃度を明らかにする方法である。
しかしながら、水は様々な物質が溶け込んでいる混合物であり、含まれる各物質(金属や化学物質)が混合された状態にある場合、相互作用により新たな産物を生じ、それらの影響は不明である。
また新たな相互作用物質が生じる関係から、本来の測定すべき物質の量が減り、正確な値の測定ができない場合も考えられる。また水が混合物である以上、各物質の積算によって、より大きな有害性が生じる可能性も懸念される。これらの人に対する有害性の評価は、従来の成分分析法では間接評価に留まることから人への直接的な影響は評価できず、また、人に対して直接に有害性の評価を行うことも困難である。このため、物質を特定せずに人に対する健康影響を直接把握・評価する方法が必要である。
この問題を解決する技術として、生体や細胞を利用した評価技術(バイオアッセイ)が存在する。バイオアッセイは、個々の化学物質を分離分析することなく、生体に対する化学物質の有害性を、生体応答に対する影響(成長性や増殖性、細胞傷害性)として捉える方法である。
環境水の評価例として代表的なものは、米国・水質浄化法(Clean Water Act)のもとでの水質基準による排水規制:WET(Whole Effluent Toxicity)規制があり、魚・ミジンコ・藻類を用いて、排水流域内の環境水の総体的な有害性を評価している(非特許文献1、2)。これ以外は、環境水中に含まれる個々の有害化合物等を対象に、OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development:経済協力開発機構)における生態影響試験や、微生物や実験動物を用いた化学物質や毒物の試験が一般的に用いられている(非特許文献3)。
一方、医薬品、化粧品の安全性試験では実験動物に加えて培養細胞が多用されている。
毒性物質の評価法、特開2001-133452号公報
Methods for Measuring the Acute Toxicity of Effluents and Receiving Waters to Freshwater and Marine Organisms. Fifth Edition, Unites States Environmental Protection Agency, October 2002. Short-term Methods for Estimating the Chronic Toxicity of Effluents and Receiving Waters to Freshwater Organisms Fourth Edition, Unites States Environmental Protection Agency, October 2002. 生体影響試験ハンドブック、日本環境毒性学会編、朝倉出版、2003年
従来の生態系における水質評価(魚による水環境評価試験)はあくまでも魚に対する健康リスクを調べたものであり、人との種間差が大きいため、結果を人健康へ直接あてはめることは難しい。また、水のように「未知の混合物」が含まれる被験物質への培養細胞の適用例は極めて少ない。また細胞種によって有害性の現れ方や程度が異なるといった問題も残されている。
上記の課題を解決するために、本発明においては、成分分析法や魚・ミジンコ・藻のような水生生物のバイオアッセイでは評価確度の低い、水の複合的な人への健康影響を評価することを目的とする。
当該目的を達成するために、本発明の一例においては、人への健康影響評価に対してヒト培養細胞を適用し、被験水を細胞に処理して、急性有害性を検出する工程とともに、有害性マーカー分子を指標に低濃度域での有害性を検出することで長期摂取・暴露による慢性有害性の発生リスク情報を取得する工程を有し、総合的に健康リスクを評価する方法を提供する。
また本願発明の他の一例としては、有害物質によって標的器官が異なることに着目し、ヒト培養細胞の肝臓をはじめとして、肺、胃、腸、腎臓、神経、脳などを由来とする複数の細胞を利用し、細胞種によって有害性の現れ方や程度が異なることに起因する検出カバー率を向上させる。
このとき検出対象の一例として、代謝物や遺伝子発現量等の変化量を有害性の指標マーカーとする。
本発明による細胞を利用した水質評価法では、急性有害性評価と長期的な有害性の発生リスクの評価という二つの方法を並列に実施することで、細胞の生死のような大きな変化で高濃度の急性毒性を簡易に検出できると共に、低濃度での有害事象の検出による長期(慢性)有害性の早期予測ができるという利点がある。これにより、人の健康への幅広いリスクを評価することを可能とする。また、被験水を定期的に採取・試験することで水質を継続的に追跡評価し、現状に対しての有害性の増減情報を得ることができる。さらに被験水の全体としての毒性の程度がわかり、人の健康への影響の程度を推定することが可能になる。また、高度な技術が必要な高額の物理化学分析機器を使用せずに簡単な汎用性の高い機器(培養機器、分光器、遺伝子増幅機など)だけで結果を得ることができ、迅速・簡便な評価が可能になる。
細胞を利用した水質評価法の手順を説明するフロー図である。 実施例1、汚染地下水の評価結果に基づく急性有害性を示すグラフである。 実施例1、汚染地下水の評価結果に基づく遺伝子発現量の変動による低濃度有害性を示すグラフである。 実施例2、汚染地下水の評価結果に基づく4種類の細胞の急性有害性を示すグラフである。 実施例3、複合汚染水の評価結果に基づく急性有害性を示すグラフである。
以下に図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、この実施の形態は一例にすぎず、本発明を限定するものではない。
図1は本発明に関わる水質評価法の手順を説明するフロー図であり、S1〜S6の6工程で構成される。
S1:細胞の維持
水質評価に用いる細胞の維持は、通常の哺乳類細胞培養法により培養できる。培養液は、使用する細胞について概ね良好な生育が得られる一般的な哺乳類動物細胞用の培養液であれば、特にその種類を問わない。試験に用いる細胞はヒト細胞が望ましく、肝臓をはじめとして、肺、胃、腸、腎臓、神経、脳などを由来とする複数の細胞種を用いる。
S2:被験水からの培養液調製
細胞を暴露する被験水は、明らかな高濃度汚染地域でない限り、濃縮を行う。この際、被験水の成分が変化しないように被験水の温度を30℃以下に保ちつつ減圧法などで濃縮する。次に、被験水で粉末培地を溶解し、pHを細胞培養時に大きな有害影響が出ない6.5〜8.0の範囲に調整する。最も有効なpH範囲は7.0〜7.2である。最後にフィルター滅菌を行い、無菌の液体培養液を調製する。この際に用いるフィルターとしては、十分な滅菌効果を得るために、0.22μm以下のポアサイズのフィルターが望ましい。また、この時、使用する細胞種にあわせて必要となる添加物(血清、生長因子など)を加える。
S3:被験水による細胞処理(暴露)
S1で継代培養されている細胞を培養容器に一定量播種し、24時間培養して、細胞を培養容器底面に接着させる。その後、被験水で調製された培養液に交換して培養を続け、6〜72時間、細胞を暴露する。暴露時間は、細胞に対する有害性が蓄積性である場合には72時間まで暴露を継続できるが、多くの有害性は暴露時間24〜48時間で確認できる。このとき、対照として細胞の継代維持用の培養液を使用して同様の処理を行う。
S4:急性有害性評価
S3の細胞処理後に細胞の活性/生存率を求め、急性有害性を評価する。細胞活性/生存率の測定には従来法を用いることができる。細胞の生存率の測定には細胞膜の透過性を指標として調べる色素法、増殖能を調べるコロニー形成試験法、MTT(メチルチアゾールテトラゾリウム)がミトコンドリアの酸化的リン酸化能に伴い還元、分解される現象を利用して細胞の生存率を出すMTT法試験法などが利用できる。
例えばニュートラルレッド法の場合、ニュートラルレッドを含む培養液に交換し、さらに2〜3時間培養することで、細胞にニュートラルレッドを取り込ませ、取り込み量を測定する。
取り込み量を測定するためには、通常、以下の後処理を行う。すなわち、ニュートラルレッドを含む培養液を除去後、塩化カルシウム含有ホルマリン溶液(例えば、塩化カルシウム1%含有1%ホルマリン溶液)を添加して培養細胞を固定し、さらに上清を除去することによって、細胞に取り込まれないニュートラルレッドを除去し、ついで酢酸含有エタノール(例えば、酢酸1%含有50%エタノール)を添加することによって、生細胞に取り込まれたニュートラルレッドを抽出する。該抽出液に含まれるニュートラルレッドの量は常法、例えば比色法や分光光度法等によって測定すればよいが、分光光度計を用いて吸光度、例えば540nmにおける吸光度を測定する方法が簡便である。
ニュートラルレッドは可溶性の色素で、生細胞のみ細胞内に取り込むことが出来る物質である。毒性によって細胞増殖が抑制された場合、あるいは細胞死が誘発され細胞数が減少した場合には、ニュートラルレッドの取り込みが減少する。したがって,洗浄後に細胞に取り込まれたニュートラルレッドを測定することで、対照群に対する相対的な生細胞数を推定することができ、相対生存率から被験水の有害性を判定することが可能である。
S5:生体応答分子計測による低濃度域の有害性評価
S4の工程と並行して、S3細胞処理後に、細胞の有害性マーカー分子を計測し、低濃度域での有害性を検出し、長期的な有害性の発生リスクを評価する。有害性の指標マーカーとしては、代謝物や遺伝子発現量等の変化があげられる。
例えば遺伝子発現の場合、細胞が有害物質で処理されると、細胞は有害物質の傷害に対し、防御・排除系、修復系、有害物質の代謝反応が起こり、これらの反応に関与する遺伝子の発現量を測定することで、細胞死という大きな変化は現れないが、細胞に弱い障害が発生していることが分かる。有害物質により蓄積性の差はあるものの、定常的に弱い有害性事象が起きた場合には慢性有害性が発生するリスクが高く、将来的なリスクの予測も可能である。
遺伝子の発現レベルの測定は、例えば、単位検体量当たりの遺伝子の転写産物量を測定する方法や、単位検体量当たりの翻訳産物量を比較する方法等により行うことができる。遺伝子の転写産物量を測定するには、該遺伝子の転写産物であるmRNA量を、例えば、定量的リアルタイム・ポリメラーゼチェイン反応(以下、定量的RT-PCRと記す。)、マイクロアレイ法等により行うことができる。
遺伝子の転写産物であるmRNA量は例えば、マーカー遺伝子の塩基配列に基づいて設計、調製されたプローブまたはプライマーを使用して、通常の遺伝子工学的手法を用いることによって測定することができる。この際、細胞における発現レベルが恒常的に一定である遺伝子(以下、対照遺伝子と記す。)、例えばTBP (TATA-box-binding protein, NM_003194) 遺伝子などのmRNA量を同時に測定する。そして、この対照遺伝子のmRNA量あたりのマーカー遺伝子のmRNA量を求める。
具体的に例えば定量的RT-PCRを用いる場合について説明する。遺伝子の発現レベルを測定しようとする細胞から、商用のキットなど(例えば、RNeasy Micro Kit、キアゲン社)を用いてmRNAを抽出し、逆転写反応キット(例えばスーパースクリプトIII CellsDirect cDNA Synthesis Kit、インビトロジェン社)を用いて逆転写反応をしてmRNAに対応する逆転写反応産物(cDNA)を調製する。調製されたcDNAを鋳型にして、マーカー遺伝子の塩基配列の一部を有するDNAをプライマーとしてPCRを行う。増幅されたDNAの蛍光を測定することにより、マーカー遺伝子のmRNA量を測定することができる。この際、対照遺伝子TBPなどのmRNA量を同時に測定し、この対照遺伝子のmRNA量あたりのマーカー遺伝子のmRNA量を求める。発現量を比較し、被験水処理群のマーカー遺伝子の発現量が対照培養液処理群の発現量に対して有意に変動している場合に有害性ありと判定することができる。
S6:総合評価
S4の工程で得られる急性有害性の評価結果と、S5の工程で得られる低濃度域での有害性検出による慢性有害性の予測結果を総合的に判断し、人の健康に対する水質評価を行う。
以下に、本発明の細胞を利用した水質評価法を汚染地下水に適用した結果ついて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)被験水からの培養液調製
被験水は汚染の疑いがある井戸水(汚染地下水)を用いた。減圧濃縮で10倍に濃縮した被験水を希釈し、1/100、1/10、等倍、3倍、5倍、8倍、10倍の希釈系列を作成した。次いでDMEM (Dulbecco's Modified Eagle's Medium)培地の粉末を溶解し、pHを7.2に調整し、0.22μmのフィルターでろ過滅菌し、10(v/v)% FBS (Fetal Bovine Serum)を添加して、液体培養液を調製した。
(2)細胞処理
ヒト肝臓がん由来細胞HepG2を96ウェルの培養プレートに、5×104cells/100μLとなるように細胞を播種し、37℃、5% CO2環境下で24時間培養した。培養液は10(v/v)% FBSを含むDMEM培地を使用した。各ウェルの細胞が底面に接着していることを確認した後、被験水の濃縮・希釈系列水で調製した培養液、対照培養液(継代維持用の培養液)に交換し、さらに24時間培養し、細胞処理した。
(3)急性有害性評価
ニュートラルレッド・アッセイにより生細胞数を測定し、対照培養液の生細胞数を100%とした相対細胞生存率を算出した。具体的には、被験水で調製した培養液を除去し、150μg/mLの濃度でニュートラルレッドを含むDMEM培地に交換し、さらに3時間培養することで、細胞にニュートラルレッドを取り込ませた。その後、ニュートラルレッドを含む培養液を除去し、塩化カルシウム1%含有1%ホルマリン溶液を添加して培養細胞を固定し、さらに上清を除去することによって、細胞に取り込まれないニュートラルレッドを除去し、ついで酢酸1%含有50%エタノールを添加することによって、生細胞に取り込まれたニュートラルレッドを抽出した。分光光度計を用いて540nmにおける吸光度を測定し、抽出液に含まれるニュートラルレッドの量を測定した。ニュートラルレッド法では、生細胞のみが細胞内にニュートラルレッドを取り込むため、ニュートラルレッドの吸光度を生細胞数とみなすことができる。対照培養液の吸光度を100%として相対値を求め、被験水処理群の相対生存率を求めた。
図2に示す通り、被験水は等倍から濃縮率が高くなるにつれて有害性が増し、10倍濃縮水では全細胞が死滅した。本被験水を成分分析したところ、約1mg/Lの高濃度で無機ヒ素を含む汚染水であり、1mg/L以上のヒ素汚染を検出できること、濃縮を加えることで更に低濃度の有害性も検出できることが確認された。
(4)遺伝子発現量の計測による低濃度域の有害性評価
被験水を処理した細胞からトータルRNAを抽出して逆転写反応物(cDNA)を調製し、細胞障害のマーカー遺伝子であるNFE2L2 (nuclear factor (erythroid-derived 2)-like 2, NM_006164)、DEFB1 (defensin, beta 1, NM_005218)、TBP(対照遺伝子)の3遺伝子の定量PCRを行った。対照培養液処理の細胞に対し、マーカー遺伝子であるNFE2L2、DEFB1の遺伝子発現量が有意に変動している場合は、細胞傷害が起きており、この水を毎日摂取・暴露することで慢性傷害が起こる危険性が予想できる。以下により具体的に説明する。
被験水で6時間処理した1×105細胞から、市販のキット・RNeasy Micro Kit (キアゲン社)を用い、キット添付プロトコルに沿ってトータルRNAを抽出した。
定量的RT−PCRに用いるcDNAの調製は、市販のキット・スーパースクリプトIII CellsDirect cDNA Synthesis Kit(インビトロジェン社)に含まれる試薬を用いて、2μgのトータルRNAから、以下のように逆転写反応をし、cDNA溶液を調製した。2μgのトータルRNA(22μL)に50mM Oligo dT(20) 2μL、10mM dNTP mix 2μLを加え、65℃で5分間反応後に氷上に1分間以上放置した。さらに、5×First Strand Buffer 8μL、0.1M DTT 2μL、RNase OUT 2μL、SuperScript III 2μLを添加して全量を40μLとし、50℃で60分反応後、70℃で15分反応させ、氷冷し、cDNAを得た。
定量的RT-PCRを用いた3遺伝子の発現レベルの測定は、被験水処理群と対照培養液処理の細胞から得られたcDNAを鋳型として、以下の反応条件を用いてPCRを行うことにより、求めた。定量には、各遺伝子のTaqMan Gene Expression Assay(PCR Forward Primer, PCR Reverse Primer, TaqManプローブの混合物、AppliedBiosystem社)を購入し用いた。すなわち、上記cDNA溶液1μLに対して、TaqMan Gene Expression Assay 1μL、Premix Ex Taq 12.5μL、DW10.5μLを含む25μLの反応液を調製し、調製された反応液をThermal Cycler Dice TP800 (Takara社)を用いて、95℃ 10秒間保温した後、95℃5秒、次いで60℃ 30秒を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する反応条件を用いてPCRを行った。
対照遺伝子TBPのmRNA量当たりのNFE2L2遺伝子およびDEFB1遺伝子のmRNA量を算出し、対照培養液処理に対し被験水処理のマーカー遺伝子の発現量を比較した。図3に示す通り、NFE2L2とDEFB1遺伝子は共に対照培養液処理に対して発現量が増加しており、何らかの有害事象が起きていることが分かる。これより、細胞の有害性マーカー分子を計測し、低濃度域での弱い有害性を検出することができることが確認できた。
(5)総合評価
上記の(3)における急性有害性の評価結果(図2)と、上記の(4)における遺伝子発現量の計測による低濃度域の有害性評価結果(図3)を総合的に判断する。本被験水(1倍液)は生存率(図2)およびマーカー遺伝子発現量(図3)ともに有害性があることが示され、特に相対生存率(図2)に影響が認められたことから、人の健康に対し有害であると判断した。また、仮に1/100、1/10濃度と同等の有害性を含む被験水を評価した場合、図2の相対生存率では有害性は検出できないが、図3の遺伝子発現量の比較では有害性を検出することができ、人の健康に対して慢性的に摂取した場合有害であると予測できる。
このように、本発明では急性有害性評価と遺伝子発現量の計測による低濃度域の有害性評価を並行して行うことによって、人の健康への幅広いリスクを評価することが可能である。
実施例1と同じ汚染地下水を被験水とし、複数の臓器由来のヒト培養細胞を用いて急性有害性評価した例を示す。
被験水の培養液調製、細胞処理、急性有害性評価の手順は実施例1と同様である。細胞は、ヒト肝臓がん由来細胞HepG2、ヒト胎児腎由来細胞HEK293、ヒト大腸がん由来細胞CACO-2、ヒト肺がん由来細胞A549の4種を用いた。培養液はHepG2とA549はDMEM培地を、HEK293とCACO-2は10% FBSと0.1mM NEAA (Non-Essential Amini Acid) を含むMEM (Minimum Essential Medium)を用いた。
図4に示すように、被験水の有害性は肝、腎、大腸といった消化器系の細胞で検出され、なかでも腎由来の細胞の感受性が比較的高く、肺のような呼吸器系の細胞では検出されにくい傾向が得られた。細胞種によって有害性の応答性が異なることから、本評価法では複数の細胞種を用いて試験することが望ましいことが明らかとなった。
模擬的に作成した環境水を用い、複合有害性を検出した例を示す。
日本の飲用水の基準値はヒ素0.01mg/L、フッ素0.8mg/L、クロム0.05mg/Lであるが、基準値に対して、10倍、100倍の濃縮をかけた値を想定し混合し、急性有害性を評価した。模擬水は純水に亜ヒ酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、二クロム酸カリウムを添加して作成した。各元素の濃度は化合物の分子量から換算して算出した。ヒト肝臓がん由来細胞HepG2を用い、被験水以外の手法は実施例1と同様に行った。このとき、生存率と有害性強度は相反し、生存率が低いほど有害性は高いと判断する。
図5に示すように、(a) 日本の飲用水の基準値の10倍濃度のヒ素0.1mg/L、フッ素8mg/L、六価クロム0.5mg/Lでは、ヒ素、フッ素の有害性は単独では検出されず、混合液では非常に低い有害性が検出された。対して六価クロムの有害性は顕著であり、六価クロムにヒ素、フッ素を混合した場合でも有害性に変動はなかった。しかしながら、(b) 日本の飲用水の基準値の100倍濃度のヒ素1mg/L、六価クロム5mg/Lでは単独での有害性に比べ、(a)で有害性の増強効果がなかった10倍濃度のフッ素の混合で生存率が低下し有害性が増した。三種の混合液ではさらに生存率が低下し、有害物質の混合により増強された有害性が検出された。これにより数種の有害物質が混合されている水の有害性評価に本発明が有効であることが確認された。
101・・・細胞の維持工程を示すブロック
102・・・被験水からの培養液調製工程を示すブロック
103・・・被験水による細胞処理(暴露)工程を示すブロック
104・・・急性有害性評価工程を示すブロック
105・・・生体応答分子計測による低濃度域の有害性評価工程を示すブロック
106・・・総合評価工程を示すブロック

Claims (5)

  1. 被験水をヒト培養細胞に処理し、当該処理された前記ヒト培養細胞の活性及び生存率を計測することにより急性有害性を検出する工程と、有害性マーカー分子を指標に低濃度域での有害性を検出することで慢性有害性の発生リスク情報を取得する工程とを有することを特徴とする水質評価方法。
  2. 請求項1に記載の水質評価方法において、
    前記ヒト培養細胞として、肝臓、肺、胃、腸、腎臓、神経、脳を含む人組織を由来とする複数の細胞種を用いる請求項1の記載の水質評価方法。
  3. 請求項1に記載の水質評価方法において、
    前記有害性マーカー分子として、細胞の有害事象に伴い量が変動する遺伝子を用いる請求項1の記載の水質評価方法。
  4. 請求項3に記載の水質評価方法において、
    前記有害性マーカーとして代謝物または遺伝子発現量の時系列変化を検出することを特徴とする水質評価方法。
  5. 請求項1に記載の水質評価方法において、
    前記被験水を、定期的に採取・試験して水質を継続的に評価し、初期値に対する有害性の増減を管理する請求項1の記載の水質評価方法。
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