JPWO2011162348A1 - ケイ酸化合物、二次電池用正極、および二次電池の製造方法 - Google Patents

ケイ酸化合物、二次電池用正極、および二次電池の製造方法 Download PDF

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Abstract

組成や粒径を良好に制御できるケイ酸化合物の製造方法を提供する。AaMbSiOc1(AはLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、1.1≦a≦2.7、0.6≦b≦1.4、c1はa、bおよびMの価数N1に依存する数であり、加熱工程後にcとなる数。)で表される組成を有する溶融物を冷却固化し、粉砕し、加熱して、AaMbSiOc(AおよびMは前記と同じ種類の原子、aおよびbは前記と同じ数値を示し、cはa、bおよびMの価数Nに依存する数。)で表される組成を有するケイ酸化合物を製造する。

Description

本発明はケイ酸化合物、二次電池用正極、および二次電池の製造方法に関する。
近年、次世代のリチウムイオン二次電池の正極材料等として、資源面、安全面、コスト面、安定性等の点での優位性から、オリビン型の化合物が注目されている。さらに、世界的なCO2排出規制や省エネルギーの観点から、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車の開発ならびに普及が進められている。これらの実現には、二次電池の安全性を維持しつつ、高容量化、高エネルギー化、および大型化することが課題とされている。
上記した二次電池の正極の候補材料として、単位格子中に2個のLiを含み、多電子反応による高容量化が可能なオリビン型ケイ酸化合物(Li2MSiO4、M=Fe、Mn)が提案されている(非特許文献1参照)。特許文献1には、大容量で実用性が高い材料として、一般式:Li2-xMSiO4(Mは少なくともCoまたはMnを含む遷移金属、xは0≦x≦2である)で表される固溶体化合物とその製造方法として固相反応法が記載されている。特許文献1に記載された固相反応法では、各元素(Li、M、Si)の原料となる化合物の混合物を仮焼した後に本焼成してケイ酸化合物粉末を得ている。
特許文献2には、一般式:A2-yMSiO4(Aはアルカリ金属、MはMn、Fe、Co、またはNi、yは0≦y<2である)で表されるシリケート化合物の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された製造方法は、各元素(A、M、Si)の供給源となる化合物を混合、加熱して溶融した後、溶融物を徐冷する工程を有している。
特開2007−335325号公報 特開2008−218303号公報
R.Dominko et al., Electrochemistry Communications 8, 217−222 (2006)
特許文献1に記載された固相反応法は、原料混合物を仮焼と本焼成の2回の焼成工程で固相反応させる方法であり、ケイ酸化合物の製造に長時間を要するという問題を有している。さらに、高温で焼成を行うため、得られるケイ酸化合物粉末の粒径が大きくなり、それを直接正極材料として使用しがたいという問題がある。
特許文献2に記載されたケイ酸化合物の製造方法は、ルツボ等の溶融容器から固化物を取り出すのに労力がかかり、また溶融容器の損耗を早めるという問題を有している。また、得られる材料は塊状であり、粉末状の材料を得ることは困難である。そのため、正極材料として使用するためには十分な粉砕を行う必要があり、多くの労力がかかるのみならず、粉砕して得た粒子に歪みが蓄積しやすい。さらに、冷却過程での結晶化を伴うため、組成、結晶種、結晶の大きさに偏析が生じやすいという難点がある。このことは組成や粒径の制御が行いにくいことを意味する。
本発明の目的は、ケイ酸化合物の組成や粒径を良好に制御できる方法を提供することにある。本発明の方法によれば、特性や信頼性に優れるケイ酸化合物を安価にかつ簡便に製造できるケイ酸化合物の製造方法、二次電池用正極の製造方法、および二次電池の製造方法を提供できる。
本発明は、下記[1]〜[12]の発明である。
[1] 下式(1)で表される組成を有する溶融物を得る工程、
前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、および
前記粉砕物を加熱して、下式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程、を含むことを特徴とするケイ酸化合物の製造方法。
abSiOc1 (1)
(式中、AはLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子であり、aは1.1≦a≦2.7、bは0.6≦b≦1.4であり、c1はa、bおよびMの価数N1に依存する数であり、加熱後にcとなる数である。)。
abSiOc (2)
(式中、AおよびMは、それぞれ前記と同じ種類の原子であり、aおよびbは、それぞれ前記と同じ数値を示し、cはa、bおよびMの価数Nに依存する数である。)。
[2] Li、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子Aと、Fe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子Mと、Siおよび酸素とを含む原料調合物を加熱して、溶融物を得る工程、
前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、および
前記粉砕物を加熱して、下式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程、を含むことを特徴とするケイ酸化合物の製造方法。
abSiOc (2)
(式中、AおよびMは、それぞれ前記と同じ種類の原子であり、aは1.1≦a≦2.7、bは0.6≦b≦1.4であり、cはa、bおよびMの価数Nに依存する数である。)。
[3] 前記原料調合物中に含まれる原子Aが、Aの炭酸塩、Aの炭酸水素塩、Aの水酸化物、Aのケイ酸塩、Aの塩化物、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩およびAの有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、該1種以上の一部または全部は、それぞれ、水和塩を形成していてもよい。)として含まれ、
原子Mが、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物、Mのケイ酸塩、Mの金属、Mの塩化物、Mの硝酸塩、Mの硫酸塩およびMの有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種として含まれ、
Siが、酸化ケイ素、ケイ素のアルコキシド、Aのケイ酸塩(ただし、Aは前記と同じ意味である。)およびMのケイ酸塩(ただし、Mは前記と同じ意味である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種として含まれる、[2]のケイ酸化合物の製造方法。
[4] 前記原子AがLiである、[1]〜[3]のケイ酸化合物の製造方法。
[5] 前記原子MがFeおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]〜[4]のケイ酸化合物の製造方法。
[6] 前記固化物を得る工程における、前記溶融物の冷却速度が−103〜−1010℃/秒である、[1]〜[5]のケイ酸化合物の製造方法。
[7] 前記粉砕物を得る工程において、前記固化物に、有機化合物および炭素系導電活物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源を含ませ、かつ該炭素源の量は、固化物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量である、[1]〜[6]のケイ酸化合物の製造方法。
[8] 前記ケイ酸化合物を得る工程において、加熱を500〜1,000℃で行う、[1]〜[7]のケイ酸化合物の製造方法。
[9] 前記ケイ酸化合物が、Li2MSiO4で表される組成を有するオリビン型結晶粒子を含む、[1]〜[8]のケイ酸化合物の製造方法。
[10] 前記ケイ酸化合物が、Li2FedMn1-dSiO4(dは0≦d≦1である。)で表される組成を有するオリビン型結晶粒子を含む、[1]〜[9]のケイ酸化合物の製造方法。
[11] [1]〜[10]の製造方法によってケイ酸化合物を得て、次に、該ケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極を製造することを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
[12] [11]の製造方法で二次電池用正極を得て、次に、該二次電池用正極を用いて二次電池を製造することを特徴とする二次電池の製造方法。
本発明の製造方法によれば、ケイ酸化合物の組成や粒径の制御がしやすいため、ケイ酸化合物を安価で効率的に製造することができる。従って、本発明により得られるケイ酸化合物を用いることにより、電池特性や信頼性に優れる二次電池用正極および二次電池が製造できる。
実施例1で製造したケイ酸化合物のX線回折パターンを示す図である。 実施例14、15、16および17で製造したケイ酸化合物のX線回折パターンを示す図である。 実施例23、24、25および26で製造したケイ酸化合物のX線回折パターンを示す図である。 実施例27、28、29および30で製造したケイ酸化合物のX線回折パターンを示す図である。
以下の説明において、AはLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を表す。Aは上記3種のアルカリ金属元素の原子を表す。Aは2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。MはFe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を表す。Mは、上記4種の遷移金属元素の原子を表す。Mは2種以上の原子の組み合わせからなっていてもよい。なお、式(1)、式(2)等の化学式は平均組成を表す。
また、オリビン型構造の結晶を以下、オリビン型結晶といい、オリビン型結晶を含む粒子を以下、オリビン型結晶粒子ともいう。オリビン型結晶粒子は、オリビン型結晶構造以外の結晶構造を部分的に含んでいてもよく、非結晶構造を部分的に含んでいてもよい。オリビン型結晶粒子としては、その実質的に全てがオリビン型結晶からなっていることが好ましい。
[ケイ酸化合物の製造方法]
本発明のケイ酸化合物の製造方法は、以下の工程(1)、工程(2)、工程(3)、および工程(4)を、この順に行う。工程(1)〜(4)の工程前、工程間および工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他の工程を行ってもよい。
工程(1):式(1)で表される組成を有する溶融物を得る工程、
工程(2):前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
工程(3):前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、
工程(4):前記粉砕物を加熱して、式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程。
以下、各工程について具体的に説明する。
(工程(1))
工程(1)では、まず各成分源(すなわち原子M、原子A、およびSiを含む化合物)を、式(1)で表される組成を有する溶融物となるように調合して原料調合物を得、該原料調合物を加熱して溶融物を得ることが好ましい。原料調合物を加熱する前に混合・粉砕し、加熱して、溶融物を得てもよい。また、各原料を予め粉砕してから、原料調合物を製造してもよい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用い、乾式または湿式で行う。分散媒の除去が不要である点で、乾式が好ましい。
式(1)で表される組成範囲、すなわちaが1.1≦a≦2.7、bが0.6≦b≦1.4である場合に、原料調合物を良好に溶融することができ、均一な溶融物が得られる。また、工程(4)で得られるケイ酸化合物の組成を式(2)とすることができ、またオリビン型結晶を含むケイ酸化合物、さらにはオリビン型結晶のみからなるケイ酸化合物が得られるので好ましい。
aおよびbの値は1.2≦a≦2.6、0.7≦b≦1.3がより好ましく、このような場合に多電子型の反応(単位モル数当たり1molを超えるAを引き抜く反応)を示すケイ酸化合物が得られ、ケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いたときに理論電気容量を高めることができる。理論電気容量をより一層高めるために、aの値は1.8≦a≦2.2、bの値は0.7≦b≦1.3であることが特に好ましい。
c1の値はa、bおよびMの価数N1に依存する数であり、後の工程(4)で変化しうる値であり、工程(4)後にcとなる値である。例えば、工程(4)で成分の酸化還元、揮発等によりc1の値が増減する場合には、該増減を考慮に入れた値とするのが好ましい。工程(4)で得られるケイ酸化合物の組成におけるcの値はa、bおよびMの価数Nに依存する数であり、正電荷の総和の1/2に相当する価である。a=2、b=1、N=+2であればc=4であり、一般にはc=(a+bN+4)/2で表される。工程(1)において、式(1)におけるMの価数N1は、2〜2.5であるのが好ましく、2〜2.2であるのが特に好ましい。
なお、溶融物は、原子A、原子M、ケイ素(Si)、および酸素(O)以外の原子を含んでいてもよい。該原子としては、La、Ca、Mg、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下、原子Zという。)が好ましい。原子Zを含有させることで、原料調合物を溶融しやすくすることができる。原子Zの含有量(複数の元素の場合には合計量)は、溶融物になったときの各原子の酸化物換算量(単位:モル%)として、0.1〜3%が好ましい。
工程(1)では、式(1)で表される組成を有する溶融物を得られるように原料調合物を選択して混合する。原料調合物は、原子Aを含む化合物、原子Mを含む化合物、Siを含む化合物からなり、さらに必要に応じて原子Zを含む化合物を含むのが好ましい。
<原子Aを含む化合物>
AはLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子ある。二次電池用正極材料として適しているため、Liを必須とするのが好ましく、Liのみであることが特に好ましい。Liを含むケイ酸化合物は、二次電池の単位体積(質量)当たりの容量を高くできる。
原子Aを含む化合物としては、Aの炭酸塩(A2CO3)、Aの炭酸水素塩(AHCO3)、Aの水酸化物(AOH)、Aのケイ酸塩(A2O・2SiO2、A2O・SiO2、2A2O・SiO2等)、Aの塩化物(ACl)、Aの硝酸塩(ANO3)、Aの硫酸塩(A2SO4)およびAの酢酸塩(CH3COOA)やシュウ酸塩((COOA)2)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、該1種以上の一部または全部は、それぞれ、水和塩を形成していてもよい。)が好ましい。なかでも、安価かつ取扱いが容易な点で、A2CO3またはAHCO3が特に好ましい。
<原子Mを含む化合物>
MはFe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子である。ケイ酸化合物を二次電池用正極材料に適用する場合、コストの点から、MとしてはFeおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を用いるのが好ましい。二次電池用正極材料の理論容量を発現し易くなる点から、Feが特に好ましい。作動電圧を高くする点からは、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子が好ましい。なお、原子Mの価数は本発明の製造方法の各工程で変化しうる数値であり、+2〜+4の範囲である。原子MがFeの場合は+2、+8/3、+3、Mnの場合は+2、+3、+4、Coの場合は+2、+8/3、+3、およびNiの場合は+2、+4が好ましい。
原子Mを含む化合物としては、Mの酸化物(FeO、Fe34、Fe23、MnO、Mn23、Mn34、MnO2、CoO、Co34、Co23、NiO等)、Mのオキシ水酸化物(MO(OH))、Mのケイ酸塩(MO・SiO2、2MO・SiO2等)、金属M、Mの塩化物(MCl2、MCl3)、Mの硝酸塩(M(NO32、M(NO33)、Mの硫酸塩(MSO4、M2(SO43)およびMの酢酸塩(M(CH3COO)2)やシュウ酸塩(M(COOH)2)等の有機酸塩が好ましい。安価かつ入手のしやすさから、Fe34、Fe23、MnO、Mn23、MnO2、Co34またはNiOがより好ましく、Fe34、Fe23またはMnO2が特に好ましい。
<Siを含む化合物>
Siを含む化合物としては、酸化ケイ素(SiO2)、ケイ素のアルコキシド(Si(OCH34、Si(OC254等)、Aのケイ酸塩またはMのケイ酸塩が好ましい。Siを含む化合物は結晶質であっても、非晶質であってもよい。なかでも、SiO2が安価であるので特に好ましい。
原料調合物の好適な組み合わせは、原子Aを含む化合物がAの炭酸塩または炭酸水素塩、原子Mを含む化合物がMの酸化物、Siを含む化合物が酸化ケイ素である場合の組み合わせである。
原料調合物の組成は、原則として、当該原料調合物から得られる溶融物の組成と理論上対応するものである。ただし、該原料調合物中には、溶融中に揮発等により失われやすい成分、例えばLi等が存在するため、得られる溶融物の組成は各原料の仕込み量から計算される各原子の含有量の酸化物換算量(単位:モル%)と若干相違する場合がある。そのような場合には、揮発等により失われる量を考慮して、各原料の仕込み量を設定することが好ましい。
原料調合物中の各原料の純度は特に限定されないが、所望特性を低下させない範囲が好ましい。水和水を除いた純度が99質量%以上であることが好ましく、純度99.9%以上が特に好ましい。また、混合操作、混合物の溶融容器への充填操作、原料調合物の溶融性等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、各原料の粒度は特に限定されない。
加熱に用いる容器は、アルミナ製、カーボン製、炭化ケイ素製、ホウ化ジルコニウム製、ホウ化チタン製、窒化ホウ素製、炭素製、白金製またはロジウムを含む白金合金が好ましいが、耐火物系煉瓦を用いることもできる。さらに、揮発および蒸発防止のために、容器に蓋を装着することが好ましい。
加熱は、抵抗加熱炉、高周波誘導炉またはプラズマアーク炉を用いて行うことが好ましい。抵抗加熱炉は、ニクロム合金等の合金製、炭化ケイ素製またはケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉が特に好ましい。
<溶融条件>
原料調合物を加熱して溶融させる温度は、1,300〜1,600℃が好ましく、1,400〜1,550℃が特に好ましい。溶融させる温度が上記範囲の下限値以上であると溶融が容易になり、上限値以下であると原料の揮発がしにくくなる。ここで、溶融とは各原料が融解し、目視で透明な状態となることをいう。
また、原料調合物を加熱して溶融させる時間は、0.2〜2時間が好ましく、0.5〜2時間が特に好ましい。溶融させる時間が上記範囲の下限値以上であると溶融物の均一性が充分になり、上限値以下であると原料が揮発しにくい。
工程(1)において、溶融物の均一性を上げるために撹拌してもよい。また、次の工程(2)を行うまで、溶融温度より低い温度で溶融物を清澄させてもよい。
原料調合物を加熱して溶融させる雰囲気は、空気中、不活性ガス中または還元ガス中のいずれでもよい。容器、加熱炉の種類や熱源等の加熱方法に適した条件を選択することができる。また、圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれでもよい。さらに、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。溶融物がより還元的である方が好ましいが、より酸化的であっても続く工程(4)において還元(例えばM3+からM2+への変化)をすることができる。
ここで、不活性ガスとは、窒素ガス(N2)、およびヘリウムガス(He)およびアルゴンガス(Ar)等の希ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスを99体積%以上含むガスをいう。還元ガスとは、上記した不活性ガスに、還元性を有するガスを添加し、実質的に酸素を含まないガスをいう。還元性を有するガスとしては、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)およびアンモニアガス(NH3)等が挙げられる。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全気体体積中に還元性を有するガスが0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%が特に好ましい。酸素の含有量は、該気体体積中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下が特に好ましい。
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で得られた溶融物を急速に室温付近(20〜25℃)まで冷却して固化物を得る。固化物は、非晶質部分を含むことが好ましく、非晶質物であることが好ましい。非晶質部分を含むことにより、結晶質部分に比べて柔らかいので粉砕しやすく、また非晶質部分中の物質拡散が速いため、反応性を高めることができる。ケイ酸化合物の組成を制御しやすくなる。さらに、後工程の工程(4)において、生成物が塊状になるのを防ぐことができ、かつ生成物の粒度が制御しやすくなる。非晶質部分は固化物の80〜100質量%であるのが好ましい。非晶質部分が該範囲であると、固化物が制御しやすく、反応性が高まるので好ましい。結晶質部分を多く含むと粒状またはフレーク状の固化物を得ることが困難となる。また、冷却機器の損耗を早め、その後の工程(3)の負担が大きくなる。
溶融物の冷却は、設備等の点から空気中で行うことが好ましいが、不活性ガス中や還元ガス中で行ってもよい。
冷却速度は、−1×103℃/秒以上が好ましく、−1×104℃/秒以上が特に好ましい。本明細書では、冷却する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち冷却速度)を負の値で示し、加熱する場合の単位時間当たりの温度変化(すなわち加熱速度)を正の値で示す。冷却速度を該値以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度の上限値は製造設備や大量生産性の点から、−1×1010℃/秒程度が好ましく、実用性の点からは−1×108℃/秒程度が特に好ましい。
溶融物の冷却方法としては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下して冷却する方法、回転する単ローラに溶融物を滴下して冷却する方法、または溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして冷却する方法が好ましい。なかでも、双ローラを用いた冷却方法が、冷却速度が速く、大量に処理できるので特に好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製またはセラミックス製のものを用いることが好ましい。さらに、高速で回転するドラムにより、溶融物から連続的にファイバー状の固化物(長繊維)を巻き取る方法や、高速で回転し側壁に細孔を設けたスピナーを用いてファイバー状の固化物(短繊維)を得る方法を用いてもよい。これらの装置を用いれば、溶融物を効果的に冷却して、高純度で化学組成が均一な固化物が得られる。
なお、冷却方法として、溶融物を水に直接投入する方法もあるが、該方法は制御が難しく、非晶質物を得るのが難しく、固化物が塊状となり、粉砕に多くの労力を要する欠点がある。冷却方法としては、液体窒素に溶融物を直接投入する方法もあり、水の場合よりも冷却速度を速くできるが、水を使用する方法と同様な問題があり、高コストである。
固化物は、フレーク状または繊維状が好ましい。
フレーク状の場合には、平均厚さは200μm以下が好ましく、100μm以下が特に好ましい。フレーク状の場合の平均厚さに垂直な面の平均直径は、特に限定されない。繊維状の場合には、平均直径は50μm以下が好ましく、30μm以下が特に好ましい。平均厚さや平均直径を上記の上限値以下とすることにより、続く工程(3)の負担を軽減することができ、結晶化効率を高くすることができる。平均厚さおよび平均直径は、ノギスやマイクロメータにより測定することができる。平均直径は、顕微鏡観察により測定することもできる。
(工程(3))
工程(3)は、工程(2)で得られた固化物を粉砕して粉砕物を得る工程である。ケイ酸化合物は絶縁物質であるため、これを二次電池用正極材料として用いる場合には導電性を高めるために、微粒子状であることが好ましい。例えば、固相反応によってケイ酸化合物を製造する場合、焼成後に粉砕するが、この場合には粉砕によって歪みが生じ、ケイ酸化合物の特性を悪化させる。これに対し、本発明の製造方法では工程(4)の前に、すなわち前駆体状態で粉砕するので、生じた歪みは工程(4)によって低減または除去できる。
固化物には、有機化合物および炭素系導電活物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源を含ませてもよい。固化物に炭素源を含ませてから粉砕してもよく、また、固化物を予め粉砕してから炭素源を含ませて混合してもよく、固化物と炭素源をそれぞれ予め粉砕してから混合してもよい。該炭素源は、工程(3)および工程(4)における酸化防止、還元促進の作用を有する。炭素源は、固化物に混合されて粉砕され、固化物の表面を均一に被覆したり、固化物間の界面に存在するため、ケイ酸化合物を二次電池正極材料に用いた場合に正極材料の導電材となり得る。
混合・粉砕は、ジョークラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用い、乾式または湿式で行うのが好ましい。特に炭素源を含ませる場合には、炭素源を粉砕物の表面に均一に分散させる上で、湿式で粉砕することが好ましい。特に炭素源が有機化合物の場合、該有機化合物を溶解しうる分散媒を使用した湿式粉砕が好ましい。
湿式粉砕の際の分散媒としては、水あるいはエタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。水は安価な点で特に好ましい。なお、混合・粉砕を湿式で行った場合には、続く工程(4)は、分散媒を沈降、濾過、減圧乾燥、加熱乾燥等で除去した後に実施するのが好ましい。
粉砕物の平均粒径は、二次電池用正極材料に適用した場合に導電性を高めるために、体積換算のメディアン径で1nm〜100μmが好ましく、10nm〜10μmがより好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。平均粒径が上記範囲の下限値以上であると、続く工程(4)で粉砕物同士が焼結して粒径が大きくなりすぎることがなく、好ましい。また上限値以下であると、続く工程(4)の加熱温度や時間を低減できるために好ましい。
<有機化合物>
有機化合物としては、糖類、アミノ酸類、ペプチド類、アルデヒド類、ケトン類、(ポリ)エチレングリコール、ポリビニルアルコールおよび脂肪酸からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、糖類、アミノ酸類、またはペプチド類が特に好ましい。
糖類としては、グルコース、フラクトース、ガラクトース等の単糖類;スクロース、マルトース、セロビオース、トレハロース等のオリゴ糖;転化糖;デキストリン、アミロース、アミロペクチン、セルロース等の多糖類;およびアスコルビン酸等のこれらの類縁物質が挙げられる。
アミノ酸類としては、アラニン、グリシン等のアミノ酸が挙げられる。
ペプチド類としては、分子量が1,000以下の低分子ペプチドが挙げられる。
有機化合物としては、具体的にはグルコース、スクロース、グルコース−フラクトース転化糖、カラメル、澱粉、α化した澱粉、カルボキシメチルセルロース等が好適である。
<炭素系導電活物質>
炭素系導電活物質としては、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、カーボンファイバおよびアモルファスカーボン等が好ましい。炭素系導電活物質を固化物の混合・粉砕時に含ませることによって、工程(4)でケイ酸化合物を製造した後に、炭素系導電活物質を混合する工程を別途設ける必要がなくなる。さらに、炭素系導電活物質を有機化合物と共に含ませることによって、ケイ酸化合物の粉末内での炭素系導電活物質の分布が均一となり、また有機化合物またはその熱分解物(炭化物)との接触面積が大きくなる。これによって、炭素系導電活物質のケイ酸化合物に対する結合力を高めることが可能となる。
炭素源の量は、固化物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量が好ましく、2〜10質量%となる量が特に好ましい。炭素源を上記範囲の下限値以上にすることにより、ケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いる場合の導電性を充分に高めることができる。上記範囲の上限値以下にすることにより、ケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いる場合に、二次電池用正極材料としての特性を高いままに保持できる。
(工程(4))
工程(4)は、工程(3)で得られた粉砕物を昇温過程で加熱し、式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物、好ましくはその結晶粒子、特に好ましくはオリビン型結晶粒子を得る工程である。
工程(4)は、粉砕により生じた応力の緩和、粉砕物の結晶核生成および粒成長を含むことが好ましい。粉砕物(粉末)の昇温過程における加熱であるので、塊状物質の降温過程におけるそれに比べて、残留応力の緩和が促進される。また、昇温過程における結晶核生成および粒成長であるので、降温過程におけるそれに比べて、組成、粒径およびその分布の制御が簡便である。
前の工程(3)において炭素源を含ませた場合には、得られるケイ酸化合物、好ましくはその結晶粒子の表面に、有機化合物、炭素系導電活物質およびこれらの反応物からなる群より選ばれる少なくとも1種を結合させる工程であることが好ましい。工程(3)を湿式で行った場合には、分散媒の除去を加熱時に同時に行ってもよい。
<加熱条件>
加熱温度は、500〜1,000℃が好ましく、600〜900℃が特に好ましい。加熱温度が500℃以上であると、反応が生じやすくなる。加熱温度が1,000℃以下であると、粉砕物が融解しにくく、結晶系や粒子径を制御しやすい。該加熱温度であると、適度な結晶性、粒子径、粒度分布等を有するケイ酸化合物、好ましくはその結晶粒子、特に好ましくはオリビン型の結晶粒子が得られやすくなる。
工程(4)は一定温度で保持しても、多段階に温度を変化させて行ってもよい。加熱温度を高くするほど、生成する粒子の粒子径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定するのが好ましい。
加熱時間(加熱温度による保持時間)は所望の粒子径を考慮して1〜72時間が好ましい。
加熱は、電気、石油、ガス等を熱源とする、ボックス炉、トンネルキルン炉、ローラーハースキルン炉、ロータリーキルン炉、マイクロウェーブ加熱炉等で行うのが好ましい。
工程(4)は、不活性ガス中または還元ガス中で行うのが好ましい。圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれでもよい。また、加熱炉内に還元剤(例えばグラファイト)を入れた容器を装填してもよい。このような工程(4)によれば、粉砕物中のMイオンの還元(例えばM3+からM2+への変化)を促進することができる。これによって、式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を再現性よく得ることができる。工程(4)において、式(2)におけるMの価数Nは、2〜2.2であるのが好ましく、2であるのが特に好ましい。
工程(4)の加熱が終了した後、通常は室温まで冷却する。該冷却における冷却速度は、−30℃/時間〜−300℃/時間が好ましい。冷却速度を該範囲にすることにより、加熱による除去でき、生成物が結晶質粒子である場合は、結晶構造を保ったまま目的物を得ることができる。また、冷却手段を用いずに冷却できる利点もある。冷却は放置して常温まで冷却させてもよい。冷却は不活性ガス中または還元ガス中で行うのが好ましい。
工程(3)で粉砕物の表面に付着した有機化合物や炭素系導電活物質は、工程(4)で生成したケイ酸化合物の粒子表面に結合して導電材として機能し得る。有機化合物は工程(4)で熱分解され、さらに少なくとも一部が炭化物となって導電材として機能し得る。有機化合物の熱分解は400℃以下で行うことが好ましく、炭化は600℃以下で行うことが好ましい。熱分解を600℃以下で行うと、炭素系導電活物質の炭化に加えて、熱分解反応に伴う体積変化を小さくできるため、炭化物および炭素系導電活物質が、導電性炭素質層として、ケイ酸化合物の粒子表面またはケイ酸化合物粒子間の界面に均一かつ強固に結合できる。
ケイ酸化合物の粒子が、さらに導電性炭素質層を含有し、かつ、ケイ酸化合物と導電性炭素質層との合計質量に対して、0.1〜20質量%の導電性炭素質層を、該粒子の表面または粒子間界面に含有するのが好ましく、2〜10質量%含有するのが特に好ましい。
上述した工程(1)〜(4)の各工程を経ることによって、式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物が製造される。該ケイ酸化合物は粒子を含むことが好ましく、粒子であることがより好ましく、オリビン型の結晶粒子であることが好ましい。このような組成および結晶系であると、前述したように多電子型の理論電気容量の材料を得ることができる。ケイ酸化合物は、Li2MSiO4で表される組成を有することが好ましく、Li2FedMn1-dSiO4(0≦d≦1)で表される組成を有することが特に好ましい。
なお、本発明により得られるケイ酸化合物において、電池性能向上のために、原子Mの一部を0.1〜3モル%、La、Ca、Mg、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換してもよい。
該粒子としては、一次粒子および二次粒子の双方を含む。また、固化物に炭素源を含ませた場合には、ケイ酸化合物の結晶粒子の生成と同時に、その表面に炭素源に基づく導電材を均一にかつ強固に結合させたケイ酸化合物を製造できる。この粉末材料は二次電池用正極材料に好適である。なお、得られたケイ酸化合物やそれを含む粉末材料中に二次粒子が存在する場合、一次粒子が破壊されない程度の範囲で解砕および粉砕してもよい。
本発明のケイ酸化合物の粒子の平均粒径は、体積換算のメディアン径で10nm〜10μmが好ましく、10nm〜2μmが特に好ましい。平均粒径を該範囲とすることにより、ケイ酸化合物の粒子の導電性がより高くなる。平均粒径は、電子顕微鏡による観察やレーザ回折式粒度分布径による測定等によって求められる。
結晶粒子の比表面積は、0.2〜200m2/gが好ましく、1〜200m2/gが特に好ましい。比表面積を該範囲にすることにより、ケイ酸化合物の粒子の導電性が高くなる。比表面積は、例えば窒素吸着法による比表面積測定装置で測定できる。
本発明の製造方法は、ケイ酸化合物の製造性や組成制御性に優れるため、ケイ酸化合物を安価にかつ効率的に製造することができる。特に、ケイ酸化合物の結晶粒子の製造性を高めることができる。さらに、化学組成や粒子径の均一性に優れ、かつ高い結晶性を有するケイ酸化合物の結晶粒子を得ることができる。
[二次電池用正極の製造方法]
本発明の製造方法により得られたケイ酸化合物を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極を製造できる。
本発明のケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いると、原子Mが例えばFeおよび/またはMnの場合は、これらの2価/3価および3価/4価のレドックス反応を充放電に利用して、作用する。
本発明の製造方法により得られたケイ酸化合物の結晶粒子は高い結晶性を有しているため、二次電池用正極材料に適用した際に、繰返し使用における機能低下を抑制することができる。したがって、電池特性や信頼性に優れる二次電池用正極を安価に提供することが可能となる。
本発明の二次電池用正極は、本発明の製造方法で得られるケイ酸化合物を用いる以外は、公知の電極の製造方法に従って製造できる。例えば、ケイ酸化合物の粉末を必要に応じて公知の結着材(ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等)、さらに必要に応じて公知の導電材(アセチレンブラック、カーボン、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等)と混合した後、得られた混合粉末をステンレス鋼製等の支持体上に圧着成形したり、金属製容器に充填すればよい。また、例えば、該混合粉末を有機溶剤(N−メチルピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等)と混合して得られたスラリーをアルミニウム、ニッケル、またはステンレス等の金属基板上に塗布する等の方法も採用できる。
[二次電池の製造方法]
本発明の製造方法により得られたケイ酸化合物を、二次電池用正極材料として用いて、二次電池を製造できる。二次電池としては、金属リチウム二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池等が挙げられるが、リチウムイオン二次電池が好ましい。電池形状は制限されることはなく、例えば円筒状、角型、コイン型等の種々の形状およびサイズを適宜採用できる。
二次電池の構造は、本発明の製造方法で得られる二次電池用正極を電極として用いる以外は、公知の二次電池における構造を採用することができる。セパレータ、電池ケース等についても同様である。負極としては、活物質として公知の負極用活物質を使用でき、炭素材料、アルカリ金属材料およびアルカリ土類金属材料からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。電解液としては、非水系の電解液が好ましい。すなわち、本発明の製造方法で得られる二次電池としては、非水電解質リチウムイオン二次電池が好ましい。
本発明の二次電池の製造方法によれば、本発明の二次電池用正極の製造方法により得られた二次電池用正極を二次電池の正極に適用することにより、特性や信頼性に優れる二次電池とすることができる。
[本発明の好ましい実施形態]
本発明のケイ酸化合物の製造方法としては、下記の方法が好ましい。本発明の二次電池用正極材料としては、該方法によって製造したケイ酸化合物を用いるのが好ましい。本発明の二次電池としては、該二次電池用正極材料を用いた二次電池が好ましい。
原子Aを含む化合物がAの炭酸塩または炭酸水素塩、原子Mを含む化合物がMの酸化物、Siを含む化合物が酸化ケイ素として含まれる原料調合物を加熱して溶融物を得る工程、該溶融物を冷却して固化物を得る工程、該固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、および該粉砕物を加熱して式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程、を含むケイ酸化合物の製造方法。
本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の説明に限定されない。
[実施例1〜22]
(工程(1))
溶融物の組成がLi2O、Na2O、FeO、MnO、CoO、NiOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、それぞれ表1に示す割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、四酸化三鉄(Fe34)、二酸化マンガン(MnO2)、四酸化三コバルト(Co34)、酸化ニッケル(NiO)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕し、原料調合物を得た。なお溶融物中の原子Mの酸化数を求めることは困難なので、これを+2であると仮定して、式(1)中のc1を算出した。
Figure 2011162348
得られた原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のるつぼに充填した。次に、該るつぼをケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉(モトヤマ社製、型式名:NH−3035)の中に入れた。該電気炉を、流量2L/分でN2ガスを流通しつつ、300℃/時間の速度で昇温し、1,450〜1,500℃で0.5時間加熱した。目視で透明になったことを確認して、溶融物を得た。
(工程(2))
次に、るつぼ中の溶融物を毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことによって、溶融物を−1×105℃/秒で冷却し、フレーク状の固化物を得た。得られた固化物はガラス状物質であった。
(工程(3))
得られたフレーク状固化物を軽く手で揉み粗粉砕した後、乳棒および乳鉢を用い、粗粉砕した。さらに、粉砕媒体をジルコニア製ボールとし、遊星ミルを用いて乾式で粉砕して粉砕物を得た。実施例1の粉砕物の粒子径をレーザ回折/散乱式粒度分析計(堀場製作所社製、装置名:LA−950)を用いて測定したところ、体積換算のメディアン径で、2.8μmであった。
(工程(4))
得られた粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて、700℃で8時間加熱することによって、ケイ酸化合物粒子を得た。さらに各例において、各粉砕物を3体積%H2−Arガス中にて、600℃×8時間の加熱により、また800℃×8時間の加熱により、また900℃×8時間の加熱により、いずれの温度においてもそれぞれケイ酸化合物粒子を得た。
(X線回折)
得られたケイ酸化合物粒子の鉱物相を、X線回折装置(リガク社製、装置名:RINT TTRIII)を用いて調べた。その結果、実施例1〜22の粒子はいずれも斜方晶であり、空間群Pmn21に属するオリビン型(K.Zaghib et al., Journal of Power Sources, 160, 1381−1386, 2006 参照)の結晶が得られた。実施例1において、600℃、700℃、800℃および900℃で8時間加熱して得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ図1の(a)、(b)、(c)および(d)に示す。また、実施例14、15、16および17において、700℃で8時間加熱して得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ図2の(a)、(b)、(c)および(d)に示す。
(粒度分布および比表面積)
実施例1で得られたケイ酸化合物の粒径分布をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製、装置名:LA−920)を用いて測定したところ、体積換算のメディアン径は4.2μmであった。さらに、実施例1で得られたケイ酸化合物の比表面積を比表面積測定装置(島津製作所社製、装置名:ASAP2020)で測定したところ、5.0m2/gであった。
(組成分析)
得られたケイ酸化合物粒子の化学組成を測定した。まず、ケイ酸化合物粒子を2.5mol/LのKOH溶液で120℃にて加熱密閉分解し、分解液を塩酸酸性下で乾固し、再び塩酸酸性溶液として濾過した後、濾液および残渣を得た。濾液中のSi、Fe、Mn、CoおよびNiは、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(セイコーインスツル社製、装置名:SPS3100)を用いて定量した。また濾液中のLiおよびNaは、原子吸光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製、装置名:Z−2310)を用いて定量した。測定したSi、Fe、Mn、Co、Ni、LiおよびNa含量から、SiO2、FeO、MnO、CoO、NiO、Li2OおよびNa2Oを算出した。さらに、残渣は灰化した後、フッ酸−硫酸で分解処理し、この処理による重量減少をSiO2含量とした。なお、全SiO2量は、この値と濾液中のSiO2量の合量とした。測定した元素の酸化物換算の含量は、溶融物の目標組成に比べ、いずれも±3mol%以内であった。また、LiO、MOおよびSiO含量の合量を求めたところ98〜102mol%であり、測定の再現性が確認された。また、FeO、MnO、CoOおよびNiO含量をFe、Mn、CoおよびNi含量から算出することの妥当性が、確認された。実施例1、4、12、14〜19、21および22において、700℃で8時間加熱して得られたケイ酸化合物粒子について、これらの定量値から求めたケイ酸化合物粒子の化学組成を表2に示す。
Figure 2011162348
[実施例23〜26]
実施例1および14〜16で工程(1)〜(3)を経て得られた粉砕物をArガス中にて、実施例1と同様に700℃×8時間の加熱により、また800℃×8時間の加熱により、また900℃×8時間の加熱によりケイ酸化合物粒子を析出させた。得られたケイ酸化合物粒子の鉱物相を調べた。いずれも斜方晶であり、空間群Pmn21に属するオリビン型(R.Dominko et al., Electrochemistry Communications 8, 217−222 2006 参照)の結晶が得られた。実施例23〜26において、700℃で8時間加熱して得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンを、それぞれ図3の(a)、(b)、(c)および(d)に示す。
[実施例27〜30]
実施例1および14〜16で工程(1)〜(2)を経て、次に粗粉砕して得られた粗粉砕物とアセチレンブラックとを、粗粉砕物とアセチレンブラック中の炭素量との質量比で9:1となるように混合し、実施例1と同様にして遊星ミルを用いて粉砕した。炭素含有粉砕物をArガス中にて700℃および900℃で8時間加熱してケイ酸化合物粒子を得た。得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンは、オリビン型ケイ酸鉄リチウムのそれと一致した。実施例27〜30において、700℃で加熱して得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンをそれぞれ図4の(a)、(b)、(c)および(d)に示す。得られたケイ酸化合物粒子の炭素含有量を炭素分析装置(堀場製作所社製、装置名:EMIA−920V)で測定したところ、9.8質量%であった。また、実施例27で700℃で8時間加熱して得られたケイ酸化合物粒子の比表面積を炭素分析装置(堀場製作所社製、装置名:EMIA−920V)で測定したところ、17.0m2/gであった。さらに、同じケイ酸化合物の粒径分布を測定したところ、体積換算のメディアン径で3.6μmであった。
[実施例31]
実施例1で工程(1)〜(2)を経て、次に粗粉砕して得られた粗粉砕物とシュークロース水溶液とを、粗粉砕物とシュークロース中の炭素量との質量比で9:1となるように混合し、実施例27と同様にして、粉砕、加熱してケイ酸化合物粒子を得た。得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンは、オリビン型ケイ酸鉄リチウムのそれと一致した。得られたケイ酸化合物粒子の炭素含量を測定したところ、2.5質量%であった。また、ケイ酸化合物の比表面積を測定したところ、25.3m2/gであった。さらに、同じケイ酸化合物の粒径分布を測定したところ、体積換算のメディアン径で3.5μmであった。
[実施例32]
実施例1で工程(1)〜(2)を経て、次に粗粉砕して得られた粗粉砕物とアセチレンブラックとシュークロース水溶液とを、粉砕物とアセチレンブラック中の炭素量とシュークロース中の炭素量との質量比で9:0.5:0.5となるように混合し、実施例27と同様にして、粉砕、加熱してケイ酸化合物粒子を得た。得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンは、オリビン型ケイ酸鉄リチウムのそれと一致した。得られたケイ酸化合物の炭素含量を測定したところ、7.1質量%であった。ケイ酸化合物粒子の比表面積を測定したところ、22.3m2/gであった。
[実施例33]
溶融物の組成がLi2O、FeOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、33.3%、33.3%および33.3%(式(1)におけるaが2、bが1、c1が4。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe23)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を実施例1と同様に、工程(1)〜(2)を経て、次に粗粉砕して粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物とアセチレンブラックとを、実施例27と同様に混合、粉砕し、さらに炭素含有粉砕物をArガス中にて700℃で8時間加熱してケイ酸化合物粒子を得た。得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンは、オリビン型ケイ酸鉄リチウムのそれと一致した。得られたケイ酸化合物粒子の炭素含有量を測定したところ、3.6質量%であった。ケイ酸化合物粒子の比表面積を測定したところ、18.0m2/gであった。
[実施例34]
溶融物の組成がLi2O、FeOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、33.3%、33.3%および33.3%(式(1)におけるaが2、bが1、c1が4。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、三酸化二鉄(Fe23)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を雰囲気制御することなく空気中で溶融する以外は実施例1と同様に、工程(1)〜(2)を経て、次に粗粉砕して粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物とアセチレンブラックとを、実施例27と同様に混合、粉砕し、さらに炭素含有粉砕物をArガス中にて700℃で8時間加熱してケイ酸化合物粒子を得た。得られたケイ酸化合物粒子のX線回折パターンは、オリビン型ケイ酸鉄リチウムのそれと一致した。得られたケイ酸化合物粒子の炭素含有量を測定したところ、4.1質量%であった。また、ケイ酸化合物粒子の比表面積を測定したところ、20.1m2/gであった。
[比較例1]
溶融物の組成がLi2O、FeOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、50.0%、25.0%および25.0%(式(1)におけるaが4、bが1、c1が5。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe34)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を実施例1と同様に溶融したが、式(1)におけるaが1.1≦a≦2.7でないため、溶融物は冷却までに結晶化し、工程(2)を行うことができなかった。
[比較例2]
溶融物の組成がLi2O、FeOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、25.0%、50.0%および25.0%(式(1)におけるaが2、bが2。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe34)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を実施例1と同様に加熱溶融したが、式(1)におけるbが0.6≦b≦1.4でないため、完全に溶融できなかった。
[実施例35]
溶融物の組成がLi2O、FeOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、33.3%、33.3%および33.3%(式(1)におけるaが2、bが1、c1が4。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe34)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を実施例1と同様に、1,450℃で加熱溶融した後、300℃/時間で冷却して固化物を得た。得られた固化物の鉱物相をX線回折で同定したところ、冷却速度が−103〜−1010℃/秒よりも遅かったため、オリビン型のLi2FeSiO4の生成は確認されたものの主成分ではなく、Li2SiO3およびFe34を主成分とするものであった。
[実施例36]
実施例35で得られた固化物を粉砕し、3体積%H2−Arガス中にて700℃で8時間加熱した。また、900℃で8時間加熱した。得られた化合物の鉱物相をX線回折で同定したところ、Li2SiO3およびFe34を主成分とするものであり、オリビン型のLi2FeSiO4の生成は確認されたものの主成分ではなかった。
[実施例37]
溶融物の組成がLi2O、MnOおよびSiO2換算量(単位:モル%)で、33.3%、33.3%および33.3%(式(1)におけるaが2、bが1、c1が4。)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、二酸化マンガン(MnO2)、二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。該原料調合物を実施例35と同様に、加熱溶融した後に冷却して固化物を得た。得られた固化物の鉱物相をX線回折で同定したところ、冷却速度が−103〜−1010℃/秒よりも遅かったため、オリビン型のケイ酸化合物の生成は確認されたものの主成分ではなく、Li2SiO3、MnO2およびMn34を主成分とするものであった。
[実施例38]
実施例37で得られた固化物を粉砕し、3体積%H2−Arガス中にて700℃で8時間加熱した。また、900℃で8時間加熱した。得られた化合物の鉱物相をX線回折で同定したところ、Li2SiO3およびMn34を主成分とするものであり、オリビン型のケイ酸化合物の生成は確認されたものの主成分ではなかった。
[実施例39]
(Liイオン二次電池用正極および評価用電池の製造)
実施例7で得たケイ酸化合物粒子を活物質とし、これと結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂と導電材としてアセチレンブラックとを、質量比で85:5:10の比率となるように秤量し、N−メチルピロリドンを溶媒としてよく混合してスラリーを調製した。次いで、スラリーをバーコータで厚さ30μmのアルミニウム箔に塗布した。空気中で120℃で乾燥させて溶媒を除去し、次いで、ロールプレスで塗工層を圧密化し、幅10mm×長さ40mmの短冊状に切り出した。
塗工層は短冊状アルミニウム箔の先端10×10mmの部分を残して剥離し、これを電極とした。得られた電極のロールプレス後の塗工層厚は20μmであった。得られた電極は150℃で真空乾燥した後、精製アルゴンガスが満たされたグローブボックス中に搬入し、ニッケルメッシュにリチウム箔を圧着した対極と多孔質ポリエチレンフィルム製セパレータを介して対向させ、さらに両側をポリエチレン板で挟んで固定した。
対向電極をポリエチレン製ビーカに入れ、六フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合溶媒(1:1体積比)に1mol/Lの濃度で溶解した非水電解液を注入して充分に含浸させた。電解液含浸後の電極をビーカから取り出し、アルミニウムラミネートフィルム袋に入れ、リード線部を取り出して封止して半電池を構成した。この半電池の特性を以下のようにして測定した。
(Liイオン二次電池用正極の充放電特性評価)
得られた半電池を25℃の恒温槽に入れ、定電流充放電試験機(北斗電工社製、装置名:HJ201B)に接続して充放電試験を行った。電流密度は電極活物質の質量(導電材と結着剤とを除いた質量)当たりの電流値を10mA/gとして充放電を行った。充電終止電位はLi対極基準で4.2Vとし、終止電圧に到達後即座に放電を開始した。放電終止電圧はLi対極基準で1.5Vとした。この充放電サイクルを10サイクル繰り返した。10サイクル目の放電容量は159mAh/gであった。さらに、60℃で同様にして充放電サイクルを10サイクル繰り返した。10サイクル目の放電容量は150mAh/gであった。
[実施例40〜41]
実施例27および29で得たケイ酸化合物粒子を活物質として用いて、これと結着剤としてポリフッ化ビニリデン樹脂と導電材としてアセチレンブラックとを、質量比で90:5:5の比率とする以外は実施例39と同様にして電極を製造し、60℃で充放電特性を評価した。10サイクル目の放電容量は、それぞれ160mAh/g(実施例27)、225mAh/g(実施例29)であった。
[比較例3]
溶融物の組成が実施例7と同様な割合となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、四酸化三鉄(Fe34)および二酸化ケイ素(SiO2)をそれぞれ秤量し、実施例1と同様にして工程(1)〜(3)を経て粉砕物を得て、該粉砕物を目開き106μmの篩を通して粗大粒子を取り除いた。この粉砕物を工程(4)を経ることなく正極活物質とした。正極活物質を用いて、実施例39と同様に電極を製造し、25℃で充放電特性を評価した。ケイ酸化合物の製造において工程(4)を経なかったため、10サイクル目の放電容量は5mAh/gであった。
[実施例42]
実施例36で得られた粉砕物を700℃で8時間加熱して得たケイ酸化合物粒子を活物質として用いて、実施例39と同様にして電極を製造し、25℃で充放電特性を評価した。ケイ酸化合物の製造において工程(2)の冷却速度が−103〜−1010℃/秒よりも遅かったため、10サイクル目の放電容量は7mAh/gであった。
本発明のケイ酸化合物の製造方法は、ケイ酸化合物の組成制御をしやすくかつ、製造しやすいので有用である。得られたケイ酸化合物は、二次電池用正極材料さらには二次電池に適用して有用である。
なお、2010年6月25日に出願された日本特許出願2010−144790号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。

Claims (12)

  1. 下式(1)で表される組成を有する溶融物を得る工程、
    前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
    前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、および
    前記粉砕物を加熱して、下式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程、を含むことを特徴とするケイ酸化合物の製造方法。
    abSiOc1 (1)
    (式中、AはLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子、MはFe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子であり、aは1.1≦a≦2.7、bは0.6≦b≦1.4であり、c1はa、bおよびMの価数N1に依存する数であり、加熱後にcとなる数である。)。
    abSiOc (2)
    (式中、AおよびMは、それぞれ前記と同じ種類の原子であり、aおよびbは、それぞれ前記と同じ数値を示し、cはa、bおよびMの価数Nに依存する数である。)。
  2. Li、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子Aと、Fe、Mn、CoおよびNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の原子Mと、Siおよび酸素とを含む原料調合物を加熱して、溶融物を得る工程、
    前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
    前記固化物を粉砕して粉砕物を得る工程、および
    前記粉砕物を加熱して、下式(2)で表される組成を有するケイ酸化合物を得る工程、を含むことを特徴とするケイ酸化合物の製造方法。
    abSiOc (2)
    (式中、AおよびMは、それぞれ前記と同じ種類の原子であり、aは1.1≦a≦2.7、bは0.6≦b≦1.4であり、cはa、bおよびMの価数Nに依存する数である。)。
  3. 前記原料調合物中に含まれる原子Aが、Aの炭酸塩、Aの炭酸水素塩、Aの水酸化物、Aのケイ酸塩、Aの塩化物、Aの硝酸塩、Aの硫酸塩およびAの有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(ただし、該1種以上の一部または全部は、それぞれ、水和塩を形成していてもよい。)として含まれ、
    原子Mが、Mの酸化物、Mのオキシ水酸化物、Mのケイ酸塩、Mの金属、Mの塩化物、Mの硝酸塩、Mの硫酸塩およびMの有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種として含まれ、
    Siが、酸化ケイ素、ケイ素のアルコキシド、Aのケイ酸塩(ただし、Aは前記と同じ意味である。)およびMのケイ酸塩(ただし、Mは前記と同じ意味である。)からなる群より選ばれる少なくとも1種として含まれる、請求項2に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  4. 前記原子AがLiである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  5. 前記原子MがFeおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  6. 前記固化物を得る工程における、前記溶融物の冷却速度が−103〜−1010℃/秒である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  7. 前記粉砕物を得る工程において、前記固化物に、有機化合物および炭素系導電活物質からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭素源を含ませ、かつ該炭素源の量は、固化物と炭素源中の炭素換算量(質量)との合計質量に対する該炭素換算量(質量)の割合が0.1〜20質量%となる量である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  8. 前記ケイ酸化合物を得る工程において、加熱を500〜1,000℃で行う、請求項1〜7のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  9. 前記ケイ酸化合物が、Li2MSiO4で表される組成を有するオリビン型結晶粒子を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  10. 前記ケイ酸化合物が、Li2FedMn1-dSiO4(dは0≦d≦1である。)で表される組成を有するオリビン型結晶粒子を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のケイ酸化合物の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法によってケイ酸化合物を得て、次に、該ケイ酸化合物を二次電池用正極材料として用いて、二次電池用正極を製造することを特徴とする二次電池用正極の製造方法。
  12. 請求項11に記載の製造方法で二次電池用正極を得て、次に、該二次電池用正極を用いて二次電池を製造することを特徴とする二次電池の製造方法。
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