JPWO2011115173A1 - ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩 - Google Patents

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Abstract

本発明は、良好な光安定性、熱安定性、非吸湿性及び溶解度を有するアレルギー性疾患及び炎症性疾患の予防及び/又は治療剤を提供することを目的とする。次式(2)(式中、lは1又は2の整数を示し、mは1又は2の整数を示し、nは1〜4の整数を示す)で表されるベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩。

Description

本発明は、ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩及びその製造方法、並びに該化合物を含有するアレルギー疾患又は炎症性疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
次式(1):
Figure 2011115173
(式中、lは1又は2の整数を示し、mは1又は2の整数を示し、nは1〜4の整数を示す)
で表されるベンゾチアジン化合物は、抗ヒスタミン作用及び抗ロイコトリエン作用を有し、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー性疾患、喘息、乾癬、リウマチ及び炎症性大腸炎等の炎症性疾患の予防又は治療薬として有用である(特許文献1)。
また、該ベンゾチアジン化合物は、その構造中に塩基性窒素原子を3個有することから、種々の酸付加塩の形態になり、特許文献1にはジマレイン酸塩として単離されている(特許文献1の実施例28)。
一方、医薬品原体は、医薬品製造の容易性に加えて、製造スケール等が変化した場合であっても、常に同程度の収率と純度をもって製造できるという一定の再現性を有することが望まれる。そして、それに加えて、医薬品原体の結晶性、非吸湿性、水溶性、可視光及び紫外線に対する安定性、温度及び湿度に対する分解度の低さなどの様々な条件を満たすことが必要とされる。医薬として活性な化合物がこの様な医薬品原体として適当な物理化学的性質を有さない場合、通常種々の改善検討がなされる。すなわち、結晶化、水溶性、バイオアベイラビリティ、光安定性、保存安定性、非吸湿性等の改善を目的として、化合物の塩、水和物、結晶形の検討がしばしば行われており、化合物は改善された結果、適当な物理化学的性質を有する医薬品原体として医薬品製造に用いられている。
例えば、油状物や不定形の化合物を結晶化することで、取り扱いやすくなるので、品質管理が容易となる一方で、その化合物の溶解度やバイオアベイラビリティに差が出ることが報告されている(非特許文献1参照)。また、化合物の結晶形が安定形であれば、製剤工程において結晶形変化のリスクが少なくなる。また、化合物の結晶化が容易であれば、再結晶による目的化合物の精製収率を向上させることができ、生産過程での品質管理も有利に進めることが可能である(非特許文献2)。化合物の水溶性の改善は経口剤のバイオアベイラビリティを向上させ、注射剤や点眼剤の製造工程を容易にすることができる。化合物の熱及び光安定性の改善は医薬の品質を保証する上で有用であり、化合物の非吸湿性は原体の保管や製剤化工程において有利である。このようなことから、医薬品製造にあたっては最適な物理化学的性質を有する医薬原体を見出すことが非常に重要であり、そのために様々な医薬原体の形態を徹底的に検討することが望まれている。しかしながら、新たに生成した塩、水和物、結晶形がいかなる物理化学的性状を有するかを事前に予測することは困難である。
特許第3588126号公報
Rharmaceutical Research,945,12(7),1995 International Journal of Pharmaceutics,209,105,1994
本発明は、優れた光安定性、熱安定性、非吸湿性及び溶解度を示し、かつ精製効率良く製造することができ、さらにアレルギー性疾患及び炎症性疾患の治療又は予防に効果的な、前記式(1)で表されるベンゾチアジン化合物の新たな形態を提供することを目的とする。
発明を解決するための手段
そこで、本発明者らは、前記ベンゾチアジン化合物の塩について種々検討を行った。ベンゾチアジン化合物(1)については特許文献1にジマレイン酸塩が報告されているが、この塩は化学構造上安定形態であると考えられた。すなわち、該化合物(1)の中で中央に位置するピペラジン骨格に組み込まれた2個の窒素原子の塩基性が最も強いため、同化合物はジマレイン酸塩の形態をとることが最も構造的に安定であり、一般的な製造方法に従って該化合物(1)のマレイン酸塩の製造を試みた場合には、同文献に報告されているように、ジマレイン酸塩が生成すると考えられたからである。
しかしながら、本発明者らは、化合物(1)の塩の形成にあたって通常は行わない、少量のマレイン酸を用いて塩を形成させると、化合物(1)のモノマレイン酸塩が得られ、意外にも当該モノマレイン酸塩が優れた光安定性、熱安定性、非吸湿性及び溶解度を有すること、さらにこのモノマレイン酸塩が化合物(1)の他の塩化合物に比して、非常に良い精製効率で得ることができることを見出した。さらに、本発明者らは、該化合物のモノマレイン酸塩にアレルギー性疾患(特に、アレルギー性結膜炎)の治療又は予防効果があることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次式(2)
Figure 2011115173
(式中、lは1又は2の整数を示し、mは1又は2の整数を示し、nは1〜4の整数を示す)
で表されるベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩を提供するものである。
また、本発明は、上記ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩(2)を有効成分とするアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤を提供するものである。
さらに本発明は、上記ベンゾチアジン化合物(1)と、該ベンゾチアジン化合物(1)に対して1当量以下のマレイン酸を溶媒中で加熱反応させ、加熱後その反応液を−20〜20℃に冷却することを特徴とする該ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩(2)の製造方法を提供するものである。
また本発明は、上記ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩(2)の有効量を投与することを特徴とするアレルギー性疾患の予防及び/又は治療方法を提供するものである。
さらに本発明は、アレルギー性疾患予防及び/又は治療に用いるための上記ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩(2)を提供するものである。
さらは本発明は、アレルギー性疾患予防及び/又は治療剤を製造するための、上記ベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩の使用を提供するものである。
本発明のベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩(2)(以下、単にモノマレイン酸塩(2)ということもある)は、後述する実施例に示す通り、非常に優れた光安定性、熱安定性、非吸湿性及び溶解度を有し、さらに類似化学構造を有する化合物(1)のジマレイン酸塩と比較して、非常に優れた精製効率を有する。該化合物は、そのような物理化学的性質及び製造工程において有意な点を示すにも関わらず、アレルギー性疾患又は炎症性疾患に対して、化合物(1)と同等の治療効果を有しており、人体に対しても刺激性の少ない医薬品原体である。
モノマレイン酸塩(2a)の熱分析データ(TG−DTA測定)を示すチャートである。 モノマレイン酸塩(2a)の赤外分光光度計による赤外吸収スペクトル(ATR法)の吸収ピークを示す図である。 モノマレイン酸塩(2a)の粉末X線回折パターンを示す図である。 モノマレイン酸塩(2a)のHPLCチャートを示す図である。 ベンゾチアジン化合物(1a)のジマレイン酸塩のHPLCチャートを示す図である。 モノマレイン酸塩(2a)及びベンゾチアジン化合物(1a)のジマレイン酸塩の抗ヒスタミン作用を示す図である。 モノマレイン酸塩(2a)及びベンゾチアジン化合物(1a)のジマレイン酸塩のアレルギー性結膜炎の治療効果を示す図である。
本発明化合物は、次式(2)で表されるモノマレイン酸塩である。式(2)中のlは1又は2の整数を示すが、1が好ましい。また、mは1又は2の整数を示すが、1が好ましい。またnは1〜4の整数を示すが、2〜4が好ましく、特に3が好ましい。式(2)で表されるモノマレイン酸塩のうち、l=1、m=1、n=3である化合物、すなわち7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)が特に好ましい。
上記モノマレイン酸塩(2)は、例えば、次に説明する反応工程に従い製造することができる。また、下記反応を行う際において、反応部位以外の官能基については必要に応じて予め保護しておき、適当な段階においてこれを脱保護してもよい。保護、脱保護条件としては一般に用いられる方法(例えば、Protective Groups in Organic Synthesis Third Edition,John Wiley & Sons,Inc.,1999 に記載された方法)を参考にして行うことができる。さらに、各工程において、反応は通常行われる方法(例えば、Comprehensive Organic Transformations Second Edition,John Wiley & Sons,Inc;1999に記載された方法)で行えばよく、単離精製は結晶化、再結晶化又はクロマトグラフィー等の通常の方法を適宜選択し、又は組み合わせて行えばよい。
[モノマレイン酸塩(2)の製造]
[反応経路図1]
Figure 2011115173
〔式中、Xはハロゲン原子、スルホニルオキシ基等の脱離基を示し、l、m及びnは前記と同じ。〕
[反応工程1]
反応工程1は、化合物(1)を製造する工程であり、化合物(I)を塩基の存在下又は非存在下、反応促進剤の存在下又は非存在下、1当量あるいは過剰量の化合物(II)と溶媒中で反応させることで化合物(1)を製造することができる。
溶媒としては、特に制限はないが、例えばジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。
塩基としては、特に制限はないが、例えば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基類、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ金属類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類等の無機塩基類が挙げられる。
反応促進剤としては、特に制限はないが、例えば、ヨウ化カリウムが挙げられる。反応条件は、特に制限はないが、例えば、−30〜130℃、好ましくは0〜50℃にて、30分〜3日間、好ましくは1時間〜1日間である。
[反応工程2]
上記反応で得られた化合物(1)を、1当量以下のマレイン酸と溶媒中で加熱反応させ、次いで反応液を冷却することによってモノマレイン酸塩(2)を製造することができる。反応に用いるマレイン酸の量は、前記化合物(1)に対して、1当量未満であることが好ましく、0.95当量以下であることがより好ましく、0.70〜0.95当量であることがさらに好ましい。
溶媒としては、特に制限はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、アセトン、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。中でも、アルコール系溶媒を用いることが好ましく、エタノールを用いることがさらに好ましい。
反応条件は、特に制限はないが、例えば、20〜100℃、好ましくは40〜80℃にて、5分〜5日間、好ましくは30分〜1日間である。反応終了後、得られた反応液を、−20〜40℃、好ましくは−20〜20℃、より好ましくは−10〜10℃で、30分〜3日間、好ましくは1時間〜1日間攪拌又は静置することにより、モノマレイン酸塩(2)を製造することができる。また、本工程において結晶化を促進するために別途用意しておいたモノマレイン酸塩(2)の種結晶を用いることもできる。特に、大量スケールでの合成後、反応液からモノマレイン酸塩(2)を晶析させるために、別途用意しておいたモノマレイン酸塩(2)の種結晶を用いることで、より簡易に効率良くモノマレイン酸塩(2)を結晶化させることができる。結晶化を行う際、重量換算で化合物(1)及びマレイン酸の4〜24倍量の溶媒を用いることが好ましく、4〜10倍量の溶媒を用いることがより好ましい。また、結晶化に用いる溶媒は、エタノールであることが好ましい。本工程におけるモノマレイン酸塩(2)の結晶化の方法は、晶析であってよいが、その他の手段として再結晶を用いてもよい。
[前記中間体(I)の製造]
[反応経路図2]
Figure 2011115173
〔式中、X、Xはハロゲン原子、スルホニルオキシ基等の脱離基又は水酸基を示し、Pは、アミノ基の保護基を示し、m及びnは前記と同じ。〕
[反応工程3]
反応工程3は、化合物(V)を製造する工程であり、化合物(III)を、塩基の存在下又は非存在下、反応促進剤の存在下又は非存在下、1当量以下の化合物(IV)と、溶媒中で反応することにより、化合物(V)を製造することができる。
ここで、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。
塩基としては、特に制限はないが、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ金属類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類等の無機塩基類が挙げられる。
反応促進剤としては、特に制限はないが、例えば、ヨウ化カリウム等が挙げられる。反応条件は、特に制限はないが、例えば、30〜180℃、好ましくは50〜120℃にて30分〜5日間、好ましくは1時間〜1日間である。
また、光延反応(Synthesis,p1−28,1981)として知られている方法に従って、化合物(III)と、当量あるいは過剰量の化合物(IV)とを、ホスフィン試薬とアゾ試薬の存在下、溶媒中で反応することによっても、化合物(V)を製造することができる。
ここで、ホスフィン試薬としては、特に制限はないが、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン類等を使用することができる。
アゾ試薬としては、特に制限はないが、例えば、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、アゾジカルボン酸ジ−tert−ブチル(DBAD)、1,1−(アゾジカルボニル)ピペリジン(ADDP)、1,1’−アゾビス(N,N’−ジイソプロピルホルムアミド)(TIPA)、1,6−ジメチル−1,5,7−ヘキサヒドロ−1,4,6−テトラゾシン−2,5−ジオン(DHAD)等を使用することができる。又、アゾ試薬の代わりに、エチレンジカルボン酸試薬を用いてもよい。エチレンジカルボン酸試薬としては、特に制限はないが、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル等を使用することができる。
溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒等を単独又は組み合わせて使用することができる。
反応条件は、特に制限はないが、例えば、−80〜100℃、好ましくは−30〜60℃にて1分〜5日間、好ましくは15分〜1日間である。
[反応工程4]
上記反応で得られた化合物(V)を、塩基の存在下又は非存在下、反応促進剤の存在下又は非存在下、1当量あるいは過剰量の化合物(VI)と溶媒中で反応させることで化合物(VII)を製造することができる。
ここで、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。
塩基としては、特に制限はないが、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化アルカリ金属類、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素アルカリ金属類、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸アルカリ金属類、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の水酸化アルカリ金属類等の無機塩基類が挙げられる。
反応促進剤としては、特に制限はないが、例えば、ヨウ化カリウム等が挙げられる。反応条件は、特に制限はないが、例えば、30〜180℃、好ましくは50〜120℃にて30分〜5日間、好ましくは3時間〜1日間である。
[反応工程5]
反応工程5は化合物(VII)の脱保護を行い、化合物(I)を製造する工程である。ここではPがtert−ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)である場合の例を以下に示す。なお、その他の保護基の場合においては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis Forth Edition,John Wiley & Sons,Inc等に記載の通常の脱保護方法を利用することができる。
(Pが、tert−ブトキシカルボニル基(Boc)の場合)
上記反応で得られた化合物(VII)を、1当量あるいは過剰量の酸と溶媒の存在下又は非存在下、反応させることで化合物(I)を製造することができる。
この時、溶媒としては、特に制限はないが、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。
酸としては、特に制限はないが、例えば、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。反応条件は、特に制限はないが、例えば、−80〜180℃、好ましくは−30〜100℃にて1分〜3日間、好ましくは30分〜1日間である。
(Pが、ベンジル基(Bn)、ベンジルオキシカルボニル基(Z)の場合)
上記反応で得られた化合物(VII)を、水素源と触媒を用いる接触水素付加反応に付すことにより化合物(I)を製造することができる。
水素源としては、特に制限はないが、例えば、水素、ギ酸、ギ酸アンモニウム、シクロヘキサジエン等を使用することができる。触媒としては、特に制限はないが、例えば、パラジウム、パラジウム黒、パラジウム炭素、白金炭素、白金、酸化白金、亜クロム酸銅、ラネーニッケル等を単独又は組み合わせて使用することができる。
溶媒としては、特に制限はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロパンジオール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒、水等を単独又は組み合わせて使用することができる。
接触水素付加反応における水素圧は、通常、常圧〜50気圧、好ましくは常圧〜10気圧であるが、特に限定されない。反応条件は、特に制限はないが、例えば、−80〜180℃、好ましくは−30〜100℃にて30分〜5日間、好ましくは1時間〜1日間である。
前記の各反応で得られた中間体及び目的物は、有機合成化学で常用されている精製法、例えば、ろ過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して必要に応じて単離、精製することができる。また、中間体においては、特に精製することなく次の反応に供することもできる。
さらに、各種の異性体は異性体間の物理化学的性質の差を利用した常法を適用して単離できる。ラセミ混合物は、例えば酒石酸等の一般的な光学活性酸とのジアステレオマー塩に導き光学分割する方法又は光学活性カラムクロマトグラフィーを用いた方法等の一般的ラセミ分割法により、光学的に純粋な異性体に導くことができる。また、ジアステレオマー混合物は、例えば分別結晶化又は各種クロマトグラフィー等により分割できる。また、光学活性な化合物は適当な光学活性な原料を用いることにより製造することもできる。
上記の如くして得られる本発明のモノマレイン酸塩(2)は、結晶性が良好であり、結晶の状態で安定に保存できる。
また本発明のモノマレイン酸塩(2)のうち、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)が特に好ましい。当該7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)は、以下のような特性を有する。
(1)粉末X線回折パターン(図3参照)
回折角(2θ)16.7付近及び24.7付近にピークを有する。より詳細には、回折角(2θ)16.7付近、20.3付近、23.7付近及び24.7付近にピークを有する。
(2)赤外線スペクトル(図2参照)
1669cm−1付近、1492cm−1付近、868cm−1付近及び754cm−1付近にピークを有する。より詳細には1669cm−1付近、1492cm−1付近、1231cm−1付近、1208cm−1付近、868cm−1付近及び754cm−1付近にピークを有する。
(3)融点
147〜150℃
本発明のモノマレイン酸塩(2)は、後記実施例に示すように、優れた光安定性、熱安定性、非吸湿性及び水溶解性を有し、また化合物(1)のジマレイン酸塩と比較して優れた精製効率を有する。さらに、眼粘膜刺激性が低く、優れた抗アレルギー作用を有する。従って、本発明のモノマレイン酸塩(2)は、アレルギー性疾患予防及び/又は治療剤に代表される動物用又はヒト用の医薬として有用である。
本発明のモノマレイン酸塩(2)を有効成分として含有する医薬としては、この有効成分を単独で用いてよいが、通常は医薬として許容される担体、添加物等を配合して使用されてもよい。医薬組成物の投与形態は、特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、貼付剤等のいずれでもよい。これらの投与形態に適した医薬組成物は、公知の製剤方法により製造できる。また、本発明のモノマレイン酸塩(2)は、他の疾患治療に有効な化合物、例えばアレルギー性疾患の治療に有効な他の化合物と併用することもできる。
経口用固形製剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)に賦形剤、さらに必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。添加剤は、当該分野で一般的に使用されているものでよい。
経口用液体製剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
点眼剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、キレート剤等を用いて、常法により製造することができる。
注射剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。
坐剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)で表される化合物に公知の坐剤用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等、さらに必要に応じてツイーン(登録商標)等の界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。
軟膏剤を調製する場合は、モノマレイン酸塩(2)で表される化合物に通常使用される基剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。
モノマレイン酸塩(2)は、上記以外に常法を利用して適宜好ましい製剤とすることができ、常法により吸入剤、点眼剤、点鼻剤とすることもできる。
本発明のモノマレイン酸塩(2)は、経口投与又は非経口投与により投与することが好ましい。本発明の医薬の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状等によって異なるが、通常成人の場合、モノマレイン酸塩(2)として0.01〜1000mgを1日1〜4回に分けて投与することができる。好ましくは0.1〜10mgを1日1〜4回に分けて投与することができ、より好ましくは0.4〜2mgを1日1〜4回に分けて投与することができる。
本発明のモノマレイン酸塩(2)は、後述する実施例等で示されるように、抗ヒスタミン作用を有し、アレルギー性疾患の予防及び/又は治療薬として有用である。ここで、本発明における「アレルギー性疾患」としては、特に制限はないが、例えば、アトピー性皮膚炎、アレルギー性胃腸炎、アレルギー性鼻炎又はアレルギー性眼疾患等を挙げることができる。「アレルギー性眼疾患」としては、特に制限はないが、例えば、アレルギー性結膜炎等を挙げることができる。
「アレルギー性結膜炎」とは、I型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患で、何らかの自他覚症状を伴うものであり、特に制限はないが、例えば、季節性アレルギー性結膜炎、通年性アレルギー性結膜炎、アトピー性角結膜炎、春季カタル、巨大乳頭結膜炎等を挙げることができる。I型アレルギー反応が関与している結膜炎であれば他の様式の炎症反応が混在していてもアレルギー性結膜炎と診断されている。症状としては、掻痒感、眼脂、流涙、充血、異物感、浮腫などがアレルギー性結膜炎の主な症状であるが、角膜や眼球の障害を示すこともある。
以下、実施例、比較例及び試験例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記実施例中で用いられている略号は下記の意味を示す。
s:シングレット(singlet)
d:ダブレット(doublet)
t:トリプレット(triplet)
q:クアルテット(quartet)
m:マルチプレット(multiplet)
br:ブロード(broad)
J:カップリング定数(coupling constant)
Hz:ヘルツ(Hertz)
CDCl:重クロロホルム
H−NMR:プロトン核磁気共鳴
IR:赤外線吸収スペクトル
実施例1−1:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)の製造(フリー体の製造)
Figure 2011115173
a)特開昭60−4176号、特開昭59−70675号に記載の方法によって得られた7−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン65g(359mmol)をアルゴン雰囲気下、テトラヒドロフラン(194mL)に懸濁し、トリフェニルホスフィン104g(397mmol)及び3−クロロプロパノール32mL(379mmol)を加え、0℃に冷却した。次いで、得られた反応液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピルエステル78mL(396mmol)を30℃以下で滴下した後、室温で1時間攪拌した。得られた溶液から溶媒を減圧留去した後、メタノール(390mL)を加えて室温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、7−(3−クロロプロポキシ)−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン59g(収率64%)を青白色結晶として得た。
Figure 2011115173
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:2.12(2H,quint,J=6.2Hz),3.28(2H,s),3.76(2H,t,J=6.2Hz),4.03(2H,t,J=5.8Hz),6.78(1H,dd,J=2.8,8.8Hz),6.88(1H,d,J=8.8Hz),6.90(1H,d,J=2.8Hz),10.38(1H,s)
b)7−(3−クロロプロポキシ)−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン57g(221mmol)をジメチルホルムアミド(172mL)に懸濁し、炭酸カリウム49g(355mmol)、ヨウ化カリウム40g(241mmol)、N−t−ブトキシカルボニルピペラジン43g(231mmol)を加え、100℃に加熱して4時間攪拌した。反応液に水(344mL)を加えた後、0℃に冷却し、さらに同温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、7−〔3−(N−t−ブトキシカルボニルピペラジニル)プロポキシ〕−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン89g(収率99%)を青白色結晶として得た。
Figure 2011115173
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.39(9H,s),1.83(2H,quint,J=6.8Hz),2.31(4H,t,J=4.8Hz),2.39(2H,t,J=7.0Hz),3.30(4H,t,J=4.6Hz),3.41(2H,s),3.95(2H,t,J=6.4Hz),6.78(1H,dd,J=2.8,8.8Hz),6.88(1H,d,J=8.8Hz),6.89(1H,s),10.38(1H,s)
c)7−{3−(N−t−ブトキシカルボニルピペラジニル)プロポキシ}−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン87g(214mmol)をエタノール(174mL)に懸濁し、6N塩酸水溶液(174mL)を50℃で滴下し、同温で1時間攪拌した。反応液にエタノール(522mL)を加えた後、0℃に冷却し、さらに同温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、7−{3−(ピペラジン−1−イル)プロポキシ}−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・2塩酸塩75g(収率92%)を青白色結晶として得た。
Figure 2011115173
H−NMR(400MHz,DO)δ:2.13(2H,td,J=5.9,15.6Hz),3.34(2H,s),3.35(2H,t,J=8.0Hz),3.44−3.64(8H,m),4.02(2H,t,J=5.6Hz),6.74(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),6.85(1H,d,J=8.8Hz),6.90(1H,d,J=2.4Hz)
d)Journal of Heterocyclic Chemistry(1987),24(1),31−37に記載の方法によって得られた1−(2−エトキシエチル)−2−クロロメチル−1H−ベンゾイミダゾールをテトラヒドロフラン(293mL)と水(147mL)の混合液に溶解し、実施例1−1の工程c)で製造した7−{3−(N−t−ブトキシカルボニルピペラジニル)プロポキシ}−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン73g(192mmol)を加えた。次いで、ジイソプロピルエチルアミン117mL(673mmol)、ヨウ化カリウム35g(211mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(293mL)及び水(147mL)を加えて抽出し、有機層を20%食塩水(147mL)で洗浄した。有機層を減圧濃縮し、表題化合物(1a)115g(2工程、定量的)を褐色油状物として得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.13(3H,t,J=7.0Hz),1.93(2H,quint,J=6.9Hz),2.40−2.70(8H,m),2.51(2H,t,J=7.2Hz),3.41(2H,s),3.42(2H,q,J=6.8Hz),3.76(2H,t,J=6.0Hz),3.88(2H,s),3.97(2H,t,J=6.2Hz),4.51(2H,t,J=5.8Hz),6.71(1H,dd,J=2.6,8.6Hz),6.77(1H,d,J=8.8Hz),6.85(1H,d,J=2.4Hz),7.24−7.28(2H,m),7.39(1H,ddd,J=1.2,6.0,6.8Hz),7.73(1H,ddd,J=1.2,6.0,6.8Hz),8.35(1H,s)
実施例1−2:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の製造(種結晶の製造)
Figure 2011115173
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)1.0g(1.96mmol)をエタノール(8mL)に溶解し、60℃に加温した。マレイン酸211mg(1.80mmol)を加えて50℃で1時間攪拌した後、室温で16時間攪拌し、さらに0℃で3時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、モノマレイン酸塩(2a)1.02g(収率91%)を青白色結晶(融点:148−151℃)として得た。
実施例1−3:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の製造
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)7.0g(13.7mmol)をエタノール(56mL)に溶解し、60℃に加温した後、マレイン酸1.46g(12.6mmol)を加え、50℃に冷却し、実施例1−2で得られた種結晶0.035g(0.056mmol)を添加した。反応液を50℃で1時間攪拌した後、室温で1時間攪拌し、さらに0℃で3時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、モノマレイン酸塩(2a)7.08g(収率90%)を青白色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.02(3H,t,J=7.2Hz),2.00−2.07(2H,m),2.80−3.61(10H,m),3.39(2H,q,J=6.9Hz),3.42(2H,s),3.71(2H,t,J=5.2Hz),3.93(2H,s),4.01(2H,t,J=6.2Hz),4.50(2H,t,J=5.2Hz),6.03(2H,s),6.78(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),6.88(1H,s),6.91(1H,dd,J=2.4,2.4Hz),7.18(1H,ddd,J=1.2,7.6,7.6Hz),7.24(1H,ddd,J=1.4,7.5,7.5Hz),7.59(2H,d,J=8.4Hz),10.40(1H,s)
実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)の元素分析値:C3139Sとして
理論値:C 59.50%;H 6.28%;N 11.19%
実測値:C 59.33%;H 6.29%;N 11.10%
実施例1−3で得られた7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の熱分析測定を行った。熱分析測定は、サンプル約5mgを熱分析用アルミパンに精密に秤量し,基準物質としてAlを使用して、雰囲気Nガス(150mL/min)存在下、昇温速度10℃/分とし、熱分析装置Thermo Plus 2 システム(リガク社製)を用いて、示差熱分析法(DTA)及び熱質量測定法(TG)により行った。熱分析測定の結果を図1に示す。また、モノマレイン酸塩(2a)の融点は、147−150℃であった(BUCHI社製、B−545)。
実施例1−3で得られた7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の赤外分光光度計による赤外吸収スペクトル(Thermo Nicolet社製、AVATAR370;ATR法)は、図2に記載したパターンを示し、1669cm−1付近、1492cm−1付近、1231cm−1付近、1208cm−1付近、868cm−1付近及び754cm−1付近に特有の吸収ピークを有した。
実施例1−3で得られた7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の粉末X線回折(理学電機工業社製;Miniflex)の測定を行った。粉末X線結晶回折の測定は、サンプルをX線回折用シリコン無反射試料板の試料ホルダー部分に充填し、デスクトップX線回折装置:MiniFlex(リガク)により、回折角2θの走査範囲;3.00°〜40.00°、サンプリング幅;0.02°、スキャン速度;2.00°/分の条件下で行った。得られた回折パターンは図3に示した。該モノマレイン酸塩(2a)は、表1に示す特有の回折角度及び相対強度を有した。
Figure 2011115173
実施例1−4:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノマレイン酸塩(2a)の製造(大スケールでの再現性の検討)
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)115g(226mmol)をエタノール(293mL)に溶解し、活性炭5.5gを加え、室温で1時間攪拌した後、セライトろ過し、エタノール(147mL)で上掛け洗浄した。ろ液にエタノール(147mL)を加え、60℃に加温した後、マレイン酸18.9g(163mmol)を加え、50℃に冷却した。実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)の種結晶0.58g(0.93mmol)を加え、50℃で1時間攪拌した後、室温で15時間攪拌し、さらに0℃で3時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、モノマレイン酸塩(2a)75.2g(収率63%)を白色結晶(融点:147−149℃)として得た。
実施例1−4で得られたモノマレイン酸塩(2a)の元素分析値:C3139Sとして
理論値:C 59.50%;H 6.28%;N 11.19%
実測値:C 59.41%;H 6.29%;N 11.08%
比較例1:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・ジマレイン酸塩の製造
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン15.9g(31.1mmol)をエタノール70mLに溶解し、溶液を60℃に加温した後、マレイン酸8.0g(68.9mmol)を加え、室温で15時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・ジマレイン酸塩を13.3g得た。得られた化合物をメタノール(13mL)に溶解し、60℃に加温した後、THF(52mL)を加え、室温で20時間攪拌した。得られた結晶をろ取した後、50℃で5時間減圧乾燥し、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・ジマレイン酸塩を10.3g(収率45%)を青白色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.01(3H,t,J=7.0Hz),2.00−2.07(2H,m),3.00(4H,m),3.20(2H,m),3.37(2H,q,J=6.9Hz),3.41−3.47(4H,m),3.70(2H,t,J=5.2Hz),3.95(2H,s),3.99(2H,t,J=5.8Hz),4.50(2H,t,J=5.0Hz),6.14(4H,s),6.76(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),6.88(1H,s),6.90(1H,m),7.19−7.27(2H,m),7.60(2H,d,J=7.6Hz),10.40(1H,s)
比較例2:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノフマル酸塩の製造
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン6.81g(13.3mmol)をエタノール(60mL)と(水6mL)の混合溶媒に溶解し、混合液を60℃に加温した。その混合液に、フマル酸1.55g(13.3mmol)を含むエタノール(14mL)と水(1.5mL)の混合液を加え、40℃で30分攪拌した後、さらに室温で20時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、40℃で53.5時間減圧乾燥し、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・モノフマル酸塩6.16g(収率74%)を微黄色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.01(3H,t,J=7.0Hz),1.81(2H,quint,J=6.6Hz),2.40−2.49(8H,m),3.35−3.44(6H,m),3.72(2H,t,J=5.6Hz),3.78(2H,s),3.93(2H,t,J=6.4Hz),4.47(2H,t,J=5.2Hz),6.60(2H,s),6.75(1H,dd,J=3.0,9.0Hz),6.87(1H,d,J=8.8Hz),6.89(1H,s),7.15(1H,t,J=7.6Hz),7.20(1H,t,J=7.4Hz),7.54(2H,t,J=7.6Hz),10.36(1H,s)
比較例3:7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・ジ硫酸塩の製造
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン8.28g(16.2mmol)をエタノール(104mL)と水(11mL)の混合溶媒に溶解し、0℃に冷却した。硫酸3.19g(16.2mmol)を加えた水(11mL)溶液を滴下し、40℃で30分攪拌した後、さらに室温で20時間攪拌した。析出した結晶をろ取した後、40℃で53.5時間減圧乾燥し、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン・ジ硫酸塩9.82g(収率86%)を微黄色結晶として得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:1.02(3H,t,J=6.8Hz),2.03(2H,m),2.65(2H,m),3.00(4H,m),3.26(2H,m),3.37(2H,q,J=6.8Hz),3.41−3.47(4H,m),3.75(2H,t,J=5.0Hz),4.01(2H,t,J=5.8Hz),4.21(2H,brs),4.65(2H,t,J=5.0Hz),6.78(1H,dd,J=2.8,9.2Hz),6.89(1H,d,J=8.8Hz),6.90(1H,d,J=3.2Hz),7.50−7.55(2H,m),7.79(1H,d,J=8.4Hz),7.91(1H,d,J=6.0Hz),10.41(1H,s)
[各生成物の結晶化の有無]
前記実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び前記比較例1〜3で得られた比較化合物(表題化合物(1a)のジマレイン酸塩、モノフマル酸塩、ジ硫酸塩)は、前述したように結晶物として得られた。一方、比較例2と同様の方法により、表題化合物(1a)を用いて塩酸、ホウ酸、リン酸及びクエン酸の塩を比較例として製造し、それぞれの化合物について結晶化を試みた。各生成物の結晶化に際しては、メタノールあるいはエタノールを結晶化溶媒として用いた。その結果を表2に示す。
Figure 2011115173
結晶化検討により、硫酸、塩酸、マレイン酸、フマル酸について結晶性の塩が得られた。一方、表題化合物(1a)のホウ酸塩、リン酸塩及びクエン酸塩は結晶化せず、モノホウ酸塩はオイル状物質であり、モノリン酸塩及びモノクエン酸塩はアモルファスであった。また、表題化合物(1a)のマレイン酸塩、塩酸塩及び硫酸塩については、1倍塩に加えて2倍塩が得られた。表題化合物(1a)の塩酸塩は、一塩酸塩、二塩酸塩共に明らかな潮解性を示した。
[表題化合物(1a)のモノマレイン酸塩及びジマレイン酸塩の精製効率の比較]
表題化合物(1a)のモノマレイン酸塩及びジマレイン酸塩の合成を同じ手段を用いて同じ条件で行い、それぞれ結晶を得た。各生成物の合成手段を以下に示す。
(a)表題化合物(1a)のモノマレイン酸塩の合成
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)8.26g(16.2mmol)をエタノール71.74gに加えて60℃に加温し、マレイン酸1.79g(15.40mmol)を加えた後、50℃に冷却し、種結晶40mg(0.064mmol)を加えた。反応液を50℃で1時間攪拌した後、室温で一晩攪拌した。次いで、反応液を3℃以下で5時間攪拌した。攪拌終了後、析出した結晶をろ取して、表題化合物(1a)のモノマレイン酸塩6.26g(収率62%)を得た。
(b)表題化合物(1a)のジマレイン酸塩の合成
7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オン(1a)8.26g(16.2mmol)をエタノール71.74gに加えて60℃に加温し、マレイン酸4.7g(40.48mmol)を加えた。溶液中でマレイン酸が完全に溶解したことを確認後、室温で一晩攪拌した。次いで、反応液を3℃以下で5時間攪拌した。攪拌終了後、析出した結晶をろ取して、表題化合物(1a)のジマレイン酸塩8.04g(収率67%)を得た。
前記(a)及び(b)の手段によって得られたモノマレイン酸塩及びジマレイン酸塩の結晶をそれぞれ少量の溶媒に溶かし込み、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって各物質の純度を測定した。HPLC条件は以下の通りであり、HPLC測定結果を示すチャートを図4及び図5に示した。また、HPLC測定結果をまとめたものを表3に示した。
[高速液体クロマトグラフィー(HPLC)条件]
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:246nm)
カラム:内径4.6mm,長さ5cmのステンレス管に3.5μmの液体クロマトグラフ用フェニルヘキシルシリル化シリカゲルを充てんする。
(XBridgephenyl,4.6mmφ×5cm,3.5μm;ウォーターズ)
カラム温度:40℃付近の一定温度
グラジェント条件(B%)20%→<10分>→60%(10分)→<10分>→85%(10分)
A液:0.01mol/Lりん酸塩緩衝液,pH6.0
B液:メタノール
流量:1.0mL/min
面積測定範囲:40分
注入量:3μL
試料濃度:1mg/mL
[HPLC測定結果のまとめ]
Figure 2011115173
表3から分かるように、得られたモノマレイン酸塩とジマレイン酸塩のHPLC測定結果を比較すると、保持時間(RT)16.6分では、モノマレイン酸塩のピーク含量は約99.4%であり、これはジマレイン酸塩の約97.2%よりも高いことを示している。従って、モノマレイン酸塩では、ジマレイン酸塩よりも効率良く得られていることが分かる。一方、副生成物に関して見てみると、RT19.2−19.6分では、モノマレイン酸塩側に副生成物が約0.4%存在していることが確認されるが、ジマレイン酸塩側ではRT20.6−21.6分及び25.7−25.8分における副生成物のピークが確認され、全体として見ると、モノマレイン酸塩の方が副生成物の割合が低いことが分かる。以上の結果より、モノマレイン酸塩は、ジマレイン酸塩よりも目的化合物の精製効率が高くなることが確認された。
次に、実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び比較例1で得られたジマレイン酸塩を用いて、光安定性、熱安定性、吸湿性及び溶解度に関して比較測定を行った。以下に各測定方法の詳細条件及びその測定結果を示す。
光安定性の測定は、適量のサンプルをガラス容器に薄く広げ、光安定性試験装置(ナガノサイエンス,LT−120A−D)内に設置し、色比較・検査用D65蛍光ランプ(FLR20S・D−EDL−65/MNA)の照度を4000lx設定し、25℃で積算照度120万lx・hになるまで曝光させた後、高速液体クロマトグラフィーにより曝光する前のサンプル量を基準として、曝光後のサンプル量を算出した。
熱安定性の測定は、適量のサンプルを蓋付のガラス容器に入れ、80℃に設定したコンパクト精密恒温器(アサヒ理化製作所,AWC−2型)内に該サンプルを1週間保存した後、熱をかける前のサンプル量を基準として、加熱後のサンプル量を高速液体クロマトグラフィーにより算出した。
吸湿性の測定は、精密に秤量されたガラス製の秤量瓶に適量のサンプルを薄く広げて入れて、そのサンプルの重量を正確に量り、相対湿度75%(塩化ナトリウムの飽和溶液)あるいは相対湿度93%(硝酸カリウム飽和溶液)に調湿されたプラスチック製デシケーター中で、25℃にて1日間保存した後、サンプルの入った2つの秤量瓶をそれぞれ正確に秤量し、下式により、サンプルの吸湿度を算出した。
[吸湿度の計算式]
吸湿度(%)=(W3−W2)/(W2−W1)×100
W1:秤量瓶の重量(g)
W2:試料を入れた秤量瓶の保存前の重量(g)
W3:試料を入れた秤量瓶の保存後の重量(g)
溶解度の測定は、サンプル約100mgを透明ガラス瓶に量り、そのガラス瓶に0.05mol/Lのホウ酸溶液10mLを加えて1時間攪拌後、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を用いてpH5.5に調整し、その後さらにその混合液を1時間攪拌した後、25℃で一晩静置させた。遠心機を用いて静置後の上清を3000回転で10分間遠心分離した後、ろ過フィルター(HLC−DISK 水系&溶媒系:孔径0.45um)によりろ過し、液体クロマトグラフィーを用いて濃度の測定を行った。
[光安定性、熱安定性、吸湿性及び溶解度の測定結果]
光安定性、熱安定性、吸湿性及び溶解度について、実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び比較例1で得られたジマレイン酸塩の測定結果を表4に示す。
Figure 2011115173
表4の結果から分かるように、熱安定性、光安定性、吸湿性、溶解度全ての項目において、モノマレイン酸塩はジマレイン酸塩よりも良好な結果を示した。具体的には、ジマレイン酸塩結晶は熱あるいは光の照射により分解を示したのに対し、モノマレイン酸塩結晶は分解せず、良好な安定性を示した。また、ジマレイン酸塩結晶は、特に相対湿度93%において高い吸湿性を見せたにもかかわらず、モノマレイン酸塩結晶はほぼ水分を吸収することはなかった。モノマレイン酸塩結晶は溶解度に関してもジマレイン酸塩結晶より優れた数値を示し、注射剤や点眼剤等の製造に適していることが示された。
[眼粘膜刺激性の検討]
次に、前記実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)並びに前記比較例1、2及び3で製造した表題化合物(1a)のジマレイン酸塩、フマル酸塩及び硫酸塩について、ウサギ眼粘膜刺激性について検討した。以下に試験方法及び試験結果を示す。
試験方法の詳細は、まず前記各塩化合物について、0.5%の点眼液を作成した後、2日間点眼での角膜、虹彩及び結膜に対する障害、さらに閉眼反応及び瞬目回数を測定した。刺激性の評定はDraze法(J.Pharmacol Exp Ther.1944;82:377)に則り、各個体の角膜、虹彩及び結膜に対する障害スコアであるIIOIの平均値MIOIで示し、0から2.5;刺激性なし、2.5から15;極軽度の刺激性、15から25;軽度の刺激性、25から50;中等度の刺激性、50から80;強度の刺激性、80から110;極度の刺激性と評価した。点眼後の各測定結果を表5に示す。
Figure 2011115173
該ウサギ眼粘膜刺激性試験の結果、化合物(1a)の硫酸塩は軽度の眼粘膜刺激性を有することが確認されたが、化合物(1a)のモノマレイン酸塩、ジマレイン酸塩及びフマル酸塩については、眼粘膜刺激性は確認されなかった。
なお、上記吸湿性試験と同じ方法(相対湿度75%)で化合物(1a)のフマル酸塩の吸湿性についても試験を行ったが、その吸湿性は4.9%であった。従って、化合物(1a)のフマル酸塩は、化合物(1a)のモノマレイン酸塩あるいはジマレイン酸塩よりも吸湿性が強く、医薬原体の保管や製剤化に適していないことが分かった。
次に、実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び比較例1で得られたジマレイン酸塩を用いて、抗ヒスタミン作用及びアレルギー性結膜炎の治療効果に関する試験を行った。以下に試験方法及びその結果を示す。
[試験例1:抗ヒスタミン作用の検討]
実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び比較例1で得られたジマレイン酸塩が有する抗ヒスタミン作用を調べるために、ヒスタミン誘発結膜炎モデルを用いて検討を行った。Hartley系雄性モルモットにエバンスブルーを静脈内投与し、直ちに10mg/mLのヒスタミン溶液を10μL点眼して血管透過性亢進を引き起こした。30分後に結膜を摘出し、含まれる色素量を測定した。モノマレイン酸塩(2a)及びジマレイン酸塩はそれぞれヒスタミン点眼1時間前に10μLを点眼した。得られた抗ヒスタミン作用の結果を図6に示す。モノマレイン酸塩(2a)及びジマレイン酸塩共に0.001%の濃度より有意な色素漏出の抑制作用が認められたことから、強力な抗ヒスタミン作用を有することが確認された。
[試験例2:アレルギー性結膜炎の治療効果の検討]
実施例1−3で得られたモノマレイン酸塩(2a)及び比較例1で得られたジマレイン酸塩が有するアレルギー性結膜炎の治療効果について抗原誘発結膜炎モデルを用いて検討を行った。OVA及びAlumで能動感作したHartley系雄性モルモットにエバンスブルーを静脈内投与し、直ちに2.5%のOVA溶液を10μL点眼して血管透過性亢進を引き起こした。30分後に結膜を摘出し、含まれる色素量を測定した。モノマレイン酸塩(2a)及びジマレイン酸塩はそれぞれOVA点眼1時間前に0.1%の濃度を10μL点眼した。得られた抗アレルギー性結膜炎作用を図7に示す。モノマレイン酸塩(2a)及びジマレイン酸塩共に強力な色素漏出の抑制作用が認められた。従って、両化合物共にアレルギー性結膜炎の治療効果を有することが確認された。
本発明のモノマレイン酸塩(2)は、良好な非吸湿性、光安定性、熱安定性及び溶解度を有する結晶であり、アレルギー性眼疾患等のアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤に有用な化合物である。また、本発明のモノマレイン酸塩(2)は、該化合物のジマレイン酸塩に比して精製効率良く製造可能であることから、製薬上極めて有用である。

Claims (25)

  1. 次式(2)
    Figure 2011115173
    (式中、lは1又は2の整数を示し、mは1又は2の整数を示し、nは1〜4の整数を示す)
    で表されるベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩。
  2. 式(2)で表されるベンゾチアジン化合物が、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オンである請求項1記載の塩。
  3. 結晶である、請求項1又は2に記載のモノマレイン酸塩。
  4. 回折角(2θ)16.7付近及び24.7付近にピークを有する粉末X線回折パターンを示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩。
  5. 回折角(2θ)16.7付近、20.3付近、23.7付近及び24.7付近にピークを有する粉末X線回折パターンを示す、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩。
  6. 1669cm−1付近、1492cm−1付近、868cm−1付近及び754cm−1付近にピークを有する赤外吸収スペクトルを示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩。
  7. 1669cm−1付近、1492cm−1付近、1231cm−1付近、1208cm−1付近、868cm−1付近及び754cm−1付近にピークを有する赤外吸収スペクトルを示す、請求項1〜5のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩を有効成分とするアレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤。
  9. 前記アレルギー性疾患が、アレルギー性眼疾患である、請求項8に記載の予防及び/又は治療剤。
  10. 前記アレルギー性眼疾患が、アレルギー性結膜炎である、請求項9に記載の予防及び/又は治療剤。
  11. Figure 2011115173
    (式中、lは1又は2の整数を示し、mは1又は2の整数を示し、nは1〜4の整数を示す。)
    で表されるベンゾチアジン化合物と、該ベンゾチアジン化合物に対して1当量以下のマレイン酸を溶媒中で加熱反応させ、加熱後その反応液を−20〜20℃に冷却することを特徴とする前記式(1)で表されるベンゾチアジン化合物のモノマレイン酸塩の製造方法。
  12. 反応に用いる前記マレイン酸の量が、前記式(1)で表されるベンゾチアジン化合物に対して0.70〜0.95当量である、請求項11に記載のモノマレイン酸塩の製造方法。
  13. 前記溶媒がエタノールである、請求項11又は12に記載のモノマレイン酸塩の製造方法。
  14. 前記溶媒を40〜80℃に加熱して前記加熱反応を行う、請求項11〜13のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩の製造方法。
  15. 前記ベンゾチアジン化合物及びマレイン酸の合計量に対して、重量換算で4〜10倍のエタノールを前記溶媒として用いる、請求項11〜14のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩の製造方法。
  16. 前記ベンゾチアジン化合物が、7−[3−{4−(N−エトキシエチルベンゾイミダゾール−2−イルメチル)−1−ピペラジニル}プロポキシ]−3,4−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾチアジン−3−オンである請求項11〜15のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩の製造方法。
  17. アレルギー性疾患の予防及び/又は治療に用いるための、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩。
  18. 前記アレルギー性疾患が、アレルギー性眼疾患である、請求項17に記載のモノマレイン酸塩。
  19. 前記アレルギー性眼疾患が、アレルギー性結膜炎である、請求項18に記載のモノマレイン酸塩。
  20. アレルギー性疾患の予防及び/又は治療剤製造のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩の使用。
  21. 前記アレルギー性疾患が、アレルギー性眼疾患である、請求項20に記載の使用。
  22. 前記アレルギー性眼疾患が、アレルギー性結膜炎である、請求項21に記載の使用。
  23. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のモノマレイン酸塩の有効量を投与することを特徴とするアレルギー性疾患の予防及び/又は治療方法。
  24. 前記アレルギー性疾患が、アレルギー性眼疾患である、請求項23に記載の方法。
  25. 前記アレルギー性眼疾患が、アレルギー性結膜炎である、請求項24に記載の方法。
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