JPWO2011074519A1 - 加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物等を提供する。本発明の加齢性記憶障害の治療用及び/又は予防用医薬組成物は、乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする医薬組成物である。

Description

本発明は、加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物、加齢性記憶障害の治療用及び予防用キット、加齢性記憶障害の治療薬及び予防薬のスクリーニング方法等に関する。
加齢性記憶障害(aged-related memory impair; AMI)は、高齢化社会における高齢者の社会参加を妨げる大きな要因になると考えられている。ヒト同様、ショウジョウバエでもみられる加齢性記憶障害の分子メカニズムの解明及びその改善法の開発は、来る少子高齢化社会における高齢者のQuality of Life(QOL)の向上に不可欠である。
近年、ショウジョウバエを用いた加齢性記憶障害の行動遺伝学的解析により、加齢体でのcAMP/プロテインキナーゼA(PKA)活性が加齢性記憶障害を引き起こすこと、及び、PKA活性が低下したDC0/+変異体(DC0はPKA触媒サブユニットPka-C1をコードする遺伝子)において加齢性記憶障害が顕著に抑制されていることが示された(特許文献1参照)。
特開2007-135522号公報
このような状況下において、加齢性記憶障害に対する有効な治療薬及び予防薬の開発が望まれていた。
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物、加齢性記憶障害の治療用及び予防用キット、加齢性記憶障害の治療薬及び予防薬のスクリーニング方法、並びに加齢性記憶障害の治療用及び予防方法等を提供するものである。
(1)乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用医薬組成物。
(2)上記(1)に記載の組成物を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用キット。
(3)加齢性記憶障害を示す動物に候補物質としての乳酸誘導体を投与し、当該動物について学習記憶の行動遺伝学的解析を行い、得られる解析結果を指標として加齢性記憶障害の治療及び/又は予防薬をスクリーニングする方法。
本発明のスクリーニング方法において、加齢性記憶障害を示す動物としては、例えば、サル(マーモセットも含む)、モルモット、ラット、マウス及びショウジョウバエ等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法において、候補物質としての乳酸誘導体には、非ヒト哺乳動物の脳血液関門を透過するものも含まれる。また、当該誘導体の投与の方法としては、例えば、静注投与、腹腔内投与、経口投与及び頭蓋内注入が挙げられる。
(4)乳酸及び/又はその誘導体の有効量を被験者に投与することを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防方法。
本発明の治療及び/又は予防方法において、乳酸及び/又はその誘導体の投与の方法としては、例えば、静注投与、腹腔内投与、経口投与及び頭蓋内注入が挙げられる。
(5)乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用食品。
(6)
乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用飲料。
本発明によれば、加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物、加齢性記憶障害の治療用及び予防用食品又は飲料、加齢性記憶障害の治療用及び予防用キット、加齢性記憶障害の治療薬及び予防薬のスクリーニング方法、並びに加齢性記憶障害の治療用及び予防方法等を提供することができる。
加齢性記憶障害の改善法の開発は、記憶力が低下した高齢者のQOLの向上に不可欠であり、この点で、本発明の医薬組成物は、加齢性記憶障害の治療及び予防に優れた効果を有する点で極めて有用なものである。また、本発明の医薬組成物並びに食品及び飲料は、乳酸等を有効成分とするものであり、入手が容易で低コストであるため、生産性及び実用性等にも優れたものである。
ショウジョウバエにおける、乳酸摂取による加齢性記憶障害の改善効果(予防及び治療効果)を示す図である。 ピルビン酸代謝経路を示す図である。PCx及びOAAは、それぞれ、ピルビン酸カルボキシラーゼ及びオキサロ酢酸を示す。また、LDH及びPDHは、それぞれ、Lactatedehydrogenase及びPyruvatedehydrogenaseを示す。 ラットの行動解析に利用する、T-mazeを用いた遅延非見本合わせ課題の該略図である。(a)は、事前に課題のルールを学習させるための非遅延課題の該略図であり、(b)は、ルール学習後に行う記憶課題(遅延課題)の該略図である。 ラットにおける、乳酸摂取による加齢性記憶障害の改善効果(予防及び治療効果)を示す図である。「Young」は3ヶ月齢の若いラット、「Aged」は18ヶ月齢の老齢ラットを示す。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2009-287741号明細書(2009年12月18日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
1.本発明の概要

加齢性記憶障害(aged-related memory impair; AMI)は脳の老化の最も顕著な表現型であり、アルツハイマー病(AD)のような加齢と関連性のある神経疾患を患っていない老人にも生じる障害である。加齢性記憶障害は、高齢化社会における高齢者の社会参加を妨げる大きな要因になると考えられている。
ショウジョウバエと哺乳類とは、学習記憶過程に多くの共通した分子メカニズムを持つことが知られている。ショウジョウバエは、寿命が約1ヶ月と短く、変異体での加齢性記憶障害の解析や、薬物の加齢性記憶障害に対する効果の検討を行う場合には、寿命が年単位である哺乳類モデルより適している。
これまでに、老齢ショウジョウバエによる学習記憶の行動遺伝学的解析(Tamura et al, Neuron, vol. 40, p. 1003-1011, 2003)から、加齢性記憶障害の原因はcAMPにより賦活化されるプロテインキナーゼA(PKA)の活性にあることが見出されている(Yamazaki et al, Nat. Neurosci., vol. 10, p. 478-484, 2007)。すなわち、PKAの触媒サブユニットPka-C1をコードする遺伝子DC0のヘテロ変異体(DC0/+)では、PKA活性が野生型の約50%であると共に、加齢性記憶障害が顕著に抑制された。ショウジョウバエと同様、哺乳動物モデルでも、PKA活性の阻害によるAMIの抑制と、PKA活性の促進によるAMIの亢進が見出されている(Ramos et al, Neuron, vol 40, p835-845, 2003)。一方、DC0遺伝子を過剰発現させた系統では若齢期で既に加齢性記憶障害様の学習記憶障害が現れた。また、DC0の発現量は加齢による増加を示さなかった(Yamazaki et al, Nat. Neurosci., vol. 10, p. 478-484, 2007)。これらの結果から、老齢野生型ではDC0-PKAによる、何らかのタンパク質のリン酸化が加齢により増加し、結果として加齢性記憶障害が起こっていると考えられた。
そこで本発明者は、DC0-PKA依存的に加齢に伴いリン酸化が亢進するタンパク質について、プロテオミクス解析(加齢に伴うリン酸化タンパク質動態の野生型とDC0/+との比較)を行った。その結果、野生型では加齢に伴う加齢性記憶障害の発現と並行してピルビン酸カルボキシラーゼ(PCx)のリン酸化が亢進すること、及び、加齢性記憶障害が抑制されるDC0/+変異体では加齢に伴うPCxのリン酸化亢進が顕著に抑制されることを見出し、PKAの標的分子としてPCxを同定した。さらに、本発明者は、PCxの発現抑制変異体(PCx/+)において、DC0/+と同様、加齢性記憶障害が顕著に抑制されることを明らかにしている。
以上の従来の知見を踏まえ、本発明者は、PCxの基質となるピルビン酸の代謝経路(図2参照)に着目した。PCxは、哺乳類ではグリア細胞に発現が認められ、ピルビン酸からオキサロ酢酸を合成する酵素であるが、ピルビン酸からは、オキサロ酢酸のみならず、Lactatedehydrogenase(LDH)によりlactate(乳酸)が合成され、Pyruvatedehydrogenase(PDH)によりアセチルCoAが合成される。これらのうち、本発明者は、ピルビン酸からの乳酸の合成に特に着目した。乳酸は、グリアから供給され、神経細胞の重要なエネルギー源となることが強く示唆されているが、どのような局面においてグルコースではなく乳酸からのエネルギー産生が神経細胞に必要となるかは、未だ不明である。本発明者は、加齢に伴いPCxの発現及び活性が上昇し、ピルビン酸からのオキサロ酢酸合成が亢進することで低乳酸状態となり、グリアから神経細胞に乳酸が充分供給されなくなることが、加齢性記憶障害の原因ではないかと考えた。そして、この考えを実証するため、乳酸の投与が加齢性記憶障害に与える影響及び効果について、種々の実験及び解析を重ね鋭意検討を行った。その結果、加齢性記憶障害を示す前の若齢期から乳酸を与え続けることにより、老齢期になっても顕著に加齢性記憶障害を抑制することができることを見出した(図1)。さらに、加齢性記憶障害を示すに至った老齢個体に乳酸を与えることによっても、上記記憶障害が顕著に改善されることを見出した(図1)。従って、乳酸等を有効成分とする本発明の医薬組成物は、加齢性記憶障害の治療及び予防に優れた効果を有する点で極めて有用なものであり、また、乳酸は入手が容易で低コストであるため、生産性及び実用性等にも優れたものである。
なお、上記記憶障害の解析は、具体的には、中期記憶を指標とした学習記憶テストを各種変異系統の老齢体(羽化後20日)を用いて行い、野生型で見られる記憶障害(加齢性記憶障害)が改善(予防及び治療)されるかどうかを検証することにより行った。
2.加齢性記憶障害の治療用及び予防用の医薬組成物等
本発明の治療用及び予防用医薬組成物は、前述した通り、乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする医薬組成物である。
なお、本発明は、乳酸及び/又はその誘導体を用いること(具体的には、被験者(例えば、加齢性記憶障害を患っている患者又は加齢性記憶障害の恐れがある患者)に乳酸及び/又はその誘導体の有効量を投与すること)を特徴とする加齢性記憶障害の治療方法及び予防方法、加齢性記憶障害の治療用及び予防用の薬剤を製造するための乳酸及び/又はその誘導体の使用、加齢性記憶障害の治療用及び予防用の乳酸及び/又はその誘導体の使用、並びに、加齢性記憶障害の治療用及び予防用の乳酸及び/又はその誘導体をも含むものである。
本発明の医薬組成物の有効成分となる乳酸は、限定はされず、公知の市販のものを使用することができる。なお、本発明においては、乳酸としては、その薬理学的に許容し得る塩も含まれるものとし、具体的には、例えば、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、及びヨウ化水素酸塩など)、無機酸塩(例えば、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、炭酸塩、及び重炭酸塩など)有機カルボン酸塩(例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、及びクエン酸塩など)、有機スルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、及びカンファースルホン酸塩など)、アミノ酸塩(例えば、アスパラギン酸塩、及びグルタミン酸塩など)、四級アミン塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、及びカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩、及びカルシウム塩など)などが好ましく挙げられる。
乳酸及びその塩としては、例えば、生体内で酸化、還元、加水分解、又は抱合などの代謝を受けるものも包含するほか、生体内で酸化、還元、又は加水分解などの代謝を受けて乳酸及びその塩を生成する化合物をも包含する。
乳酸及びその塩は、化合物の構造上生じ得るすべての異性体(例えば、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、回転異性体、立体異性体、及び互変異性体等)及びこれら異性体の2種以上の混合物をも包含し、便宜上の構造式の記載等に限定されるものではない。また、乳酸及びその塩は、S-体、R-体あるいはRS-体のいずれであってもよく、限定はされない。さらに、乳酸及びその塩は、その種類により水和物の形で存在する場合もあり、本発明においては当該水和物も乳酸及びその塩に含むものとする。
本発明の医薬組成物の有効成分となる乳酸誘導体としては、限定はされず、乳酸由来の化学構造を有する等、当業者の技術常識に基づいて乳酸の誘導体と考えられるものが全て含まれる。乳酸誘導体は、動物(哺乳動物)の脳血液関門を透過することができるものが好ましい。乳酸誘導体についても、前記乳酸の場合と同様に、その薬理学的に許容し得る塩も含まれるものとし、当該塩については前記乳酸の塩に関する説明が同様に適用できる。
本発明の医薬組成物において、有効成分としての乳酸及びその誘導体、若しくはその塩、又はそれらの水和物の含有割合は、限定はされず、適宜設定することができるが、例えば、医薬組成物全体に対して、0.01〜99重量%の範囲内とすることができ、また0.01〜95重量%や、0.01〜90重量%や、0.05〜80重量%や、0.1〜70重量%や、0.2〜50重量%や、0.5〜30重量%や、1〜20重量%の範囲内としてもよい。有効成分の含有割合が上記範囲を満たすことにより、本発明の医薬組成物は加齢性記憶障害の治療及び予防効果を十分に発揮することができる。
本発明の治療用及び予防用医薬組成物は、乳酸等以外にも、本発明の効果が著しく損なわれない範囲で、他の構成成分を含んでいてもよく、限定はされない。加齢性記憶障害治療及び予防薬である場合、例えば、後述するような薬剤製造上一般に用いられるもの等を含むことができる。
本発明の治療用及び予防用医薬組成物は、ヒト又は非ヒト動物(特に非ヒト哺乳動物)に対して、種々の投与経路、具体的には、経口、又は非経口(例えば静脈内注射(静注)、頭蓋内注射(脳質注入)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、直腸投与、経皮投与)で投与することができる。従って、本発明に使用する乳酸及びその誘導体等は、単独で用いることも可能であるが、投与経路に応じて慣用される方法により薬学的に許容し得る担体を用いて適当な剤形に製剤化することができる。
剤形としては、経口剤では、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、被覆錠剤、カプセル剤、内用水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、及びトローチ剤等が挙げられ、非経口剤では、例えば、注射剤(点滴剤を含む)、吸入剤、軟膏剤、点鼻剤、及びリポソーム剤等が挙げられる。
これら製剤の製剤化に用い得る担体としては、例えば、通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、及び矯味矯臭剤のほか、必要に応じ、安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、抗酸化剤、増量剤、湿潤化剤、表面活性化剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、及び無痛化剤等が挙げられ、医薬品製剤の原料として用いることができる公知の成分を配合して常法により製剤化することが可能である。
当該成分として使用可能な無毒性のものとしては、例えば、大豆油、牛脂、及び合成グリセライド等の動植物油;流動パラフィン、スクワラン、及び固形パラフィン等の炭化水素;ミリスチン酸オクチルドデシル、及びミリスチン酸イソプロピル等のエステル油;セトステアリルアルコール、及びベヘニルアルコール等の高級アルコール;シリコン樹脂;シリコン油;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー等の界面活性剤;ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びメチルセルロース等の水溶性高分子;エタノール、及びイソプロパノール等の低級アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、及びポリエチレングリコール等の多価アルコール(ポリオール);グルコース、及びショ糖等の糖;無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、及びケイ酸アルミニウム等の無機粉体;塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム等の無機塩;精製水等が挙げられ、いずれもその塩またはその水和物であってもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビット、結晶セルロース、及び二酸化ケイ素等が、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリプロピレングリコール・ポリオキシエチレン・ブロックポリマー、及びメグルミン等が、崩壊剤としては、例えば、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、ペクチン、及びカルボキシメチルセルロース・カルシウム等が、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、及び硬化植物油等が、着色剤としては医薬品に添加することが許可されているものが、矯味矯臭剤としては、例えば、ココア末、ハッカ脳、芳香散、ハッカ油、竜脳、及び桂皮末等が、それぞれ好ましく挙げられ、いずれもその塩又はそれらの水和物であってもよい。
本発明の治療用及び予防用医薬組成物の投与量は、一般には、製剤中の有効成分(乳酸等)の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類・進行状況や、投与経路、投与回数(/1日)、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。
本発明の治療用及び予防用医薬組成物を、非経口剤又は経口剤として用いる場合について、以下に具体的に説明する。
非経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されないが、各種注射剤の場合は、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態や、使用時に溶解液に再溶解させる凍結乾燥粉末の状態で提供され得る。当該非経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、各種注射剤の場合は、水、グリセロール、プロピレングリコールや、ポリエチレングリコール等の脂肪族ポリアルコール等が挙げられる。
非経口剤の投与量(1日あたり)は、特に限定はされないが、例えば各種注射剤であれば、一般には、前述した有効成分を、適用対象(患者)の体重1kgあたり、1〜100mg服用できる量とすることができ、あるいは2〜50mg服用できる量や5〜10mg服用できる量とすることもできる。
経口剤として用いる場合、一般にその形態は限定されず、前述した剤形のいずれであってもよいし、使用する際に再溶解させる乾燥生成物にしてもよい。当該経口剤には、前述した有効成分のほかに、各種形態に応じ、公知の各種賦形材や添加剤を上記有効成分の効果が損なわれない範囲で含有することができる。例えば、結合剤(シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカント、ポリビニルピロリドン等)、充填材(乳糖、糖、コーンスターチ、馬鈴薯でんぷん、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ等)、崩壊剤(各種でんぷん等)、および湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウム等)等が挙げられる。
経口剤の投与量(1日あたり)は、一般には、前述した有効成分を、適用対象(被験者;患者)の体重1kgあたり、1〜100mg服用できる量とすることができ、あるいは2〜50mg服用できる量や5〜10mg服用できる量とすることもできる。また、経口剤中の有効成分の配合割合は、限定はされず、1日あたりの投与回数等を考慮して、適宜設定することができる。
また本発明は、上記医薬組成物のほかに、乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする加齢性記憶障害の治療用及び予防用の食品並びに飲料を提供することもできる。
なお、本発明は、加齢性記憶障害の治療用及び予防用の食品並びに飲料を製造するための乳酸及び/又はその誘導体の使用も含むものである。
本発明の食品及び飲料の有効成分並びにその含有割合等については、すべて上記医薬組成物における説明が同様に適用できる。
本発明の食品の種類としては、限定はされないが、例えば、小麦粉利用食品(パン類、菓子類、麺類等)、加工肉食品(ハムおよびウインナー等)、乳製品(チーズ、ヨーグルト等)や、その他、健康食品、ダイエット食品、タブレット、錠剤、餡、プリン、ゼリー、アイスクリーム、シャーベット等が挙げられる。
なお、本発明の食品には、飼料も含まれるものとする。飼料としては、例えば、家畜用の餌、ペットフードおよびその他飼料等が挙げられる。
また、本発明の飲料の種類としては、限定はされないが、例えば、ミネラルウォーター等の水、コーヒー、お茶、清涼飲料、乳飲料、野菜又は果物ジュース、豆乳、滋養強壮ドリンク、スープ等が挙げられる。
本発明の食品及び飲料への、乳酸及び/又はその誘導体の含有方法や手順等は、特に限定はされず、当該食品及び飲料ごとに適した方法により、その製造前及び製造途中に含有させてもよいし、製造後に含有させてもよい。
3.加齢性記憶障害の治療用及び予防用キット
加齢性記憶障害の治療及び予防を行うに当たっては、加齢性記憶障害の治療用及び予防用キットを用いることができ、例えば、構成要素として、前述した本発明の治療用及び予防用医薬組成物(すなわち乳酸及びその誘導体等)を含むキットを挙げることができる。
当該キットにおいて、乳酸及びその誘導体等は、安定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して、溶解した状態で備えられていることが好ましい。
当該キットは、乳酸及びその誘導体等以外にも、他の構成要素を含むことができる。
当該キットは、構成要素として少なくとも前述した乳酸及びその誘導体等を備えているものであればよい。従って、加齢性記憶障害の治療及び予防に必須となる構成要素の全てを、当該乳酸及びその誘導体等と共に備えているものであってもよいし、そうではなく別々に備えているものであってもよく、限定はされない。
4.加齢性記憶障害の治療薬及び予防薬のスクリーニング方法
本発明に係る加齢性記憶障害の治療薬及び/又は予防薬のスクリーニング方法は、前述した通り、(a) 加齢性記憶障害を示す動物に候補物質としての乳酸誘導体を投与し、(b) 当該動物について学習記憶の行動遺伝学的解析を行い、(c) 得られる解析結果を指標として加齢性記憶障害の治療及び/又は予防薬をスクリーニングする、ことを含む方法である。すなわち、当該方法は、乳酸の各種誘導体のうち、加齢性記憶障害に対する治療及び/又は予防効果を示すものを探索する方法ということもできる。
候補物質として使用される乳酸誘導体としては、前述した各種誘導体を用いることができるが、詳しくは、候補物質を投与する加齢性記憶障害を示す動物(特に非ヒト哺乳動物)の脳血液関門を透過することができるものが好ましい。
当該方法において使用される、加齢性記憶障害を示す動物としては、限定はされないが、例えば、各種非ヒト動物、具体的には、サル(マーモセットも含む)、モルモット、ラット及びマウス等の非ヒト哺乳動物や、ショウジョウバエ等が挙げられ、中でもサル及びラットが好ましい。当該動物としては、既に加齢性記憶障害を示していると判断される動物(例えば老齢の動物)を用いてもよいし、現状では加齢性記憶障害を示しているとは判断されないが将来において当該障害を示すようになると判断される動物(例えば若齢の動物)を用いてもよい。前者の動物を用いた場合は、例えば、加齢性記憶障害の治療薬をスクリーニングすることができ、後者の動物を用いた場合は、例えば、加齢性記憶障害の予防薬をスクリーニングすることができる。ただし、動物の種類によっては、加齢性記憶障害を示すまでに長期間要するものもあるため、このような場合は、既に加齢性記憶障害を示していると判断される動物(例えば老齢の動物)を用いて本発明のスクリーニングを行う方が好ましいと考えられる。
また、候補物質の投与方法としては、限定はされないが、例えば、哺乳動物に対しては静注投与、腹腔内投与、経口投与及び頭蓋内注入等が挙げられ、ショウジョウバエ等に対しては飼料に混入して摂取させる方法等が挙げられる。当該投与に際しては、候補物質は、投与経路に応じて慣用される方法により薬学的に許容し得る担体を用いて適当な剤形に製剤化することができる。剤形及び担体等についての具体的な説明は、前記2.項で述べた本発明の医薬組成物における説明が同様に適用できる。
候補物質投与後の動物についての学習記憶の行動遺伝学的解析の方法としては、限定はされないが、例えば、サルでは遅延見本合わせ・非見本合わせ課題による方法等が、マウス、ラット及びモルモットでは遅延見本合わせ・非見本合わせ課題と恐怖条件付けによる方法等が、ショウジョウバエでは匂いと電気ショックを組み合わせたパブロフ型匂い条件付けによる方法等が、好ましく挙げられる。
遅延見本合わせ・非見本合わせ課題では、例えば、報酬を任意の模様のカードの下に置き、被験対象の動物(サル等)にカードの下の報酬を取らせることにより、カードの模様と報酬との関係を学習させる。記憶テストでは先ほどの模様のカードと、異なる模様のカードを呈示してどちらかのカードを選ばせる。見本合わせ課題では報酬の上にあったカードを選ぶことを正解として報酬を与え、非見本合わせ課題では報酬の上に無かったカードを選ぶことを正解として報酬を与える。具体的には、例えば、被験対象の動物が、正解のカードを選べば、ある一定の記憶スコア(Memory index)を与え、不正解のカードを選べば、記憶スコアを与えないという態様で、当該スコアをカウントすることで、加齢性記憶障害の発現及び程度を評価することができる。また、遅延非見本合わせ課題としては、後述する実施例2に記載のT型迷路を用いた方法(例えば、Furukawa et al., Tsukuba Psychological Research, Vol. 12, p.69-73, 1990 参照)も用いることができる。
恐怖条件付けでは実験箱に被験対象の動物(マウス等)を置き、音刺激(85 dB)を与えた後電気ショック(0.75 mA)を与え、箱の環境と電気ショック、音刺激と電気ショックの関係を当該動物に学習させる。記憶テストでは電気ショックを与えたのと同じ実験箱、または音刺激を与えたときに示すフリーズ(無動化)により記憶を評価する。具体的には、例えば、被験対象の動物が、フリーズの状態を示せば、ある一定の記憶スコア(Memory index)を与え、フリーズの状態を示さなければ、記憶スコアを与えないという態様で、当該スコアをカウントすることで、加齢性記憶障害の発現及び程度を評価することができる。
パブロフ型匂い条件付けは、恐怖条件付けと類似の課題である。具体的には、被験対象の動物(ショウジョウバエ等)に、2種類の匂い(例えば、3-オクタノールと4-メチルサイクロヘキサノールなど)のうち、いずれかを1分間嗅がせると同時に電気ショック(60V)を与え、続いてもう一方の匂いを1分間、電気ショック無しで嗅がせることで、どちらが危険な匂いかを当該動物に弁別学習させ、その上で、記憶テストではいずれかを選択させる方法である。具体的には、例えば、被験対象の動物が、電気ショックの無い方の匂い(正解の匂い)を選べば、ある一定の記憶スコア(Memory index)を与え、電気ショックのある方の匂い(不正解の匂い)を選べば、記憶スコアを与えないという態様で、当該スコアをカウントすることで、加齢性記憶障害の発現及び程度を評価することができる。
記憶は不安定な短期記憶−中期記憶を経て、安定化された(タンパク合成依存性の)長期記憶や(タンパク合成非依存性の)麻酔耐性記憶へと統合される。加齢性記憶障害においては、中期記憶(例えば、学習後1時間の記憶)が特異的に障害されていると考えられているため(Tamura et al., Neuron, Vol. 40, p.1003-1011, 2003)、本発明のスクリーニング方法における学習記憶の行動遺伝学的解析としては、限定はされないが、例えば、前記学習後1時間の時点で記憶テストを行い加齢性記憶障害の発現を評価することが好ましく挙げられる。
本発明のスクリーニング方法においては、上記行動遺伝学的解析により得られた結果を指標として、加齢性記憶障害の治療薬及び/又は予防薬のスクリーニングを行うが、具体的には、候補物質を投与した動物と、候補物質を投与しなかった動物とにおける解析結果(記憶スコア(Memory index))を比較することにより行うことが好ましい。前者の記憶スコアが後者の記憶スコアより高い場合、使用した候補物質(乳酸誘導体)は、加齢性記憶障害の治療薬及び/又は予防薬として選択することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
乳酸による加齢性記憶障害の改善
<材料・方法>
被験動物として、ショウジョウバエを用いた。ショウジョウバエの寿命は約30日から40日であり、野生型では加齢性記憶障害は羽化後15日では顕在化している。そこで、若齢体として羽化後2〜3日のものを用い、老齢体として羽化後20日程度のものを用いた。
乳酸カルシウムを終濃度50mMとなるように飼料(エサ)に混合した。若齢体に関しては、羽化後3日間乳酸カルシウム入りのエサを与え、3日齢で記憶テストを行った。老齢体に関しては、羽化後20日間乳酸カルシウム入りのエサを与え続けた場合と、羽化後18日から20日の3日間だけ当該エサを与えた場合とについて、20日齢で記憶テストを行った。
学習記憶の行動遺伝学的解析のための記憶テスト(Journal of Comparative Physiology [A] Vol.157, 263-277 (1985))としては、匂いと電気ショックを組み合わせた、パブロフ型匂い条件付けを行った。即ち、トレーニングチャンバーに入れた約100匹のハエに対して、2種類の匂い物質(3-オクタノールと4-メチルシクロヘキサノール)を用い、これらのうち一つを「匂い1」として1分間、電気ショックと共に与えた。次に、前記2種類のうち匂い1とは別の匂い物質を「匂い2」として1分間、電気ショックなしで与えることで、ハエに匂い1が危険な匂いであることを「学習」させた。その後、記憶テストでは、匂い1(不正解)と匂い2(正解)を異なる方向から同時に与えてどちらかを選択させた。
記憶スコア(Memory index)は、下記式により算出した。
全てのハエが匂い2(正解)を選べば(全てのハエが匂い2に向かえば)、記憶スコア(Memory index)は100となるが、匂い1(不正解)と匂い2(正解)とを均等に選べば、記憶スコアは0となる。加齢性記憶障害を示す加齢体(老齢体)では、学習後1時間での記憶テストのスコアが極めて低くなることが既に分かっているため、本実施例においては、学習後1時間での記憶テストを行い加齢性記憶障害の発現を評価した。
<結果>
前記記憶テストの結果を、図1に示した。
乳酸(乳酸カルシウム入りのエサ)を与えない20日齢のハエ(図1中(3))では、3日齢の若いハエ(図1中(1))と比べて、著しい記憶障害がみられた。
乳酸を羽化後20日間摂取したハエ(図1中(4))では、乳酸を与えない20日齢のハエ(図1中(3))と比べて、記憶障害の顕著な改善効果がみられた。また、乳酸を羽化後18日から20日の3日間(記憶テスト前の3日間)与えただけのハエ(図1中(5))でも、記憶障害の顕著な改善効果がみられた。
乳酸による加齢性記憶障害の改善
<材料・方法>
被験動物として、18ヶ月齢の老齢ラット用いた。また、対照として3ヶ月齢の若いラットを用いた。
乳酸カルシウム水溶液を終濃度200 mMとなるように調合し、12時間の摂水制限を与えた後、老齢ラットに一晩摂取させた。また、対照として3ヶ月齢のラット及び老齢ラットに通常の水を一晩摂取させた。
学習記憶の行動遺伝学的解析のための記憶テストとしては、T型迷路(T-maze)を用いた遅延非見本合わせ課題を行った。2つの進入経路(arm)のどちらかを選択するこの課題では、テスト時に、訓練時に進入したarmとは異なるarmに進入した場合に正解とする(当該異なるarmにのみ、armの先に報酬としての砂糖水200μLを置いておく。)。逆に、テスト時に、訓練時に進入したarmと同じarmに進入した場合は不正解とする(当該同じarmには、上記報酬は無い。)。記憶課題(図3(b)参照)では、訓練時とテスト時との間に遅延期間を設定し、訓練時に入ったarmを被験動物は遅延期間中に記憶していなければならない。被験動物には、予め正答率が80%以上となるまで遅延期間を設定しない非遅延課題で課題のルールを覚えさせた(図3(a)参照)。なお、記憶課題では、5分間の遅延期間を設定して行った。
記憶スコア(Memory index)は、下記式により算出した。
テスト時に、全て正解の場合は、記憶スコアの値は100となるが、正解と不正解とが均等の場合(左右のarmをランダムかつ均等に選んだ場合)は、記憶スコアは0となる。
加齢性記憶障害を示す加齢体(老齢体)では、遅延5分での記憶テストのスコアが極めて低くなることが既に分かっているため、本実施例においては、訓練後5分での記憶テストを行い加齢性記憶障害の発現を評価した。
<結果>
前記記憶テストの結果を、図4に示した。
通常の水を一晩摂取した18ヶ月齢の老齢ラット(-)は、同様に水を一晩摂取した3ヶ月齢の若いラットと比べて、著しい記憶障害がみられた。しかしながら、200mM乳酸カルシウム水溶液を一晩摂取した老齢ラット(+ 200mM Lac)では、水を一晩摂取した老齢ラットに比べて、記憶障害の顕著な改善効果がみられた。
本発明によれば、加齢性記憶障害の治療用及び予防用医薬組成物、加齢性記憶障害の治療用及び予防用キット、加齢性記憶障害の治療薬及び予防薬のスクリーニング方法、並びに加齢性記憶障害の治療用及び予防方法等を提供することができる。
加齢性記憶障害の改善法の開発は、少子高齢化におけるQOLの向上に不可欠であり、この点で、本発明の医薬組成物は、加齢性記憶障害の治療及び予防に優れた効果を有する点で極めて有用なものである。また、本発明の医薬組成物は、乳酸等を有効成分とするものであり、入手が容易で低コストであるため、生産性及び実用性等にも優れたものである。

Claims (11)

  1. 乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用医薬組成物。
  2. 請求項1記載の組成物を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用キット。
  3. 加齢性記憶障害を示す動物に候補物質としての乳酸誘導体を投与し、当該動物について学習記憶の行動遺伝学的解析を行い、得られる解析結果を指標として加齢性記憶障害の治療及び/又は予防薬をスクリーニングする方法。
  4. 加齢性記憶障害を示す動物が非ヒト哺乳動物又はショウジョウバエである、請求項3記載の方法。
  5. 非ヒト哺乳動物がサル、モルモット、ラット又はマウスである、請求項4記載の方法。
  6. 乳酸誘導体が前記動物の脳血液関門を透過するものである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記投与の方法が静注投与、経口投与又は頭蓋内注入である、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 乳酸及び/又はその誘導体の有効量を被験者に投与することを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防方法。
  9. 前記投与の方法が静注投与、腹腔内投与、経口投与又は頭蓋内注入である、請求項8記載の方法。
  10. 乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用食品。
  11. 乳酸及び/又はその誘導体を含むことを特徴とする、加齢性記憶障害の治療及び/又は予防用飲料。
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