JPWO2011132435A1 - 脳機能障害予防・改善用の薬剤及び飲食物 - Google Patents

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Abstract

【課題】脳機能障害の症状を改善する手段の提供。【解決手段】本発明者は、セピアプテリンを末梢から投与した場合に、脳内芳香族モノアミンの活量が増大することを新規に見出した。そこで、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有する脳機能障害の予防用又は改善用の薬剤、及び、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有させた脳機能障害の予防用又は改善用の飲食物を提供する。セピアプテリンは、テトラヒドロビオプテリンなどと異なり、末梢から投与しても、脳内芳香族モノアミン(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の脳神経細胞内レベル低下を抑制し、その活量を増大することができる。従って、脳内芳香族モノアミンの脳神経細胞内レベル低下による脳機能障害、例えば、うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの中枢性精神障害、及び、筋緊張、硬直、振戦などの中枢性運動障害などに有効である可能性がある。

Description

本発明は、セピアプテリンを含有する脳機能障害の予防・改善・治療用の薬剤及び飲食物などに関する。より詳細には、脳内神経伝達物質の関わる疾病、例えば、中枢性精神障害(うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害など)、若しくは中枢性運動障害(筋緊張、硬直、振戦など)などに対する予防・改善・治療用の薬剤及び飲食物などに関連する。
脳は、運動・知覚など神経を介する情報伝達の最上位中枢であり、感情・情緒・理性などヒトの精神活動、運動の随意コントロールなどにおいても重要な役割を果たしている。脳は多数の神経細胞で構成されており、神経細胞間の情報伝達は、脳内の神経伝達物質が行っている。
モノアミン神経伝達物質は、アミノ基を一個含む非アミノ酸神経伝達物質の総称である。その中で、天然のL−アミノ酸のチロシン又はトリプトファンを前駆体として体内で生合成されるモノアミン神経伝達物質を芳香族モノアミンという。代表的な芳香族モノアミンとして、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、アドレナリンなどが挙げられる。芳香族モノアミンは、脳内と末梢の両方に存在するが、脳内に存在する芳香族モノアミンは、脳内の情報伝達において重要な役割を果たしており、また、精神活動・情動、運動の制御などにも深く関与していることが知られている。
セロトニンは、ヒトを含む動植物に一般的に含まれる芳香族モノアミンで、その多くは、小腸の粘膜にあるクロム親和性細胞内、血小板などに存在し、また、一部が中枢神経系にも存在する。セロトニンは、中枢神経系において、神経伝達物質として機能する。セロトニン神経は、延髄の縫線核から、視床下部、大脳基底核、線条体をはじめ、脳・脊髄に向けて広く神経線維を張り巡らしており、人間の情動、疲労、痛み、食欲などの精神活動などに大きく影響を与える。
近年、うつ病、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの脳機能障害とセロトニンとの関係が明らかになってきており、セロトニン系に作用する薬物を用いることによって、これらの症状をある程度改善できるようになった。例えば、SSRI(セロトニン選択的再取り込み阻害薬;Serotonin Selective Reuptake Inhibitor)は、シナプスにおいて放出されたセロトニンの再吸収を阻害することでうつ症状などを改善する薬剤として、実用化されている。但し、SSRIは神経細胞内におけるセロトニンの総量を減少させるため、長期間利用すると却ってうつ症状が増悪する可能性も指摘されている。
ノルアドレナリンは、交感神経末端・中枢神経系などに広く存在する芳香族モノアミンで、アドレナリンの前駆体でもある。末梢では、副腎皮質ホルモン及び神経伝達物質として働く。一方、脳内では、青斑核のノルアドレナリン神経が脳の全域に投射しており、注意・衝動性などに関与すると考えられている。また、ノルアドレナリン系の変化とうつとの関連性が明らかになってきている。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬;Serotonin and Norepinephrine reuptake Inhibitor)は、シナプスにおけるセロトニンとノルアドレナリンの再吸収を阻害することで、神経細胞周囲腔におけるこれらの神経伝達物質の濃度を増加させ、うつ症状を改善する薬剤である。この薬剤は、セロトニンの濃度を高めることによってうつ状態を改善させるのに加え、ノルアドレナリンの再吸収を阻害することによって、興奮神経を刺激し、やる気や気分を向上させる効果を発揮すると考えられている。但し、SNRIも、SSRIと同様、神経細胞内におけるセロトニンの総量を減少させるため、長期間利用すると却ってうつ症状が増悪する可能性も指摘されている。
ドーパミンは、中枢神経系に存在する芳香族モノアミンで、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。脳内では、脳幹腹側被蓋野と黒質のドーパミン神経が、大脳前頭葉、線条体などに投射しており、運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。
パーキンソン病では黒質線条体のドーパミン神経が減少し、筋固縮、振戦、無動などの運動症状が起こる。また、一部の統合失調症や一部のうつ病に、ドーパミンが関係しているという仮説がある。
芳香族モノアミンには、末梢の細胞内に存在するものと中枢神経系の神経細胞内に存在するものとがあるが、脳内芳香族モノアミンは、原則として、血液脳関門を通過せず、それぞれ独立に合成・代謝される。即ち、末梢の細胞内に存在する芳香族モノアミンと中枢神経系の神経細胞内に存在する芳香族モノアミンとの間で、相互に行き来したり、補完したりすることはない。
脳内芳香族モノアミン神経は、細胞内の放出顆粒に蓄えた芳香族モノアミン(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)を放出する。芳香族モノアミンは、放出された後、それぞれの神経細胞によって再取り込みされ、新規に生合成された芳香族モノアミンと混合され、再度放出顆粒に取り込まれる。この機構が循環して繰り返され、また、一部分は、細胞内で、放出顆粒に取り込まれる前に代謝され、不活性な代謝産物が生成される。芳香族モノアミンは血液脳関門の機能により脳へ流入したり、脳から流出したりしないが、その代謝産物は、脳から末梢へ排出される。また、芳香族モノアミン生合成の直接の素材である芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど)は、血液脳関門を通過する。
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、フェニルアラニン水酸化酵素、チロシン水酸化酵素、トリプトファン水酸化酵素、一酸化窒素合成酵素などの補酵素である。フェニルアラニンからチロシンを合成する反応、トリプトファンからセロトニンを合成する反応、チロシンからドーパを合成する反応、アルギニンから一酸化窒素とシトルリンを合成する反応などにおいて、補酵素として酵素反応に必須である。
細胞内テトラヒドロビオプテリン量の欠乏が起こると,これらの酵素は充分な触媒作用を発揮できず、高フェニルアラニン血症や、ドーパミン・ノルアドレナリン・セロトニンなどのモノアミン神経伝達物質の活量低下を引き起こす。
テトラヒドロビオプテリン生成の異常で生じる疾患には、悪性高フェニルアラニン血症、瀬川病(ドーパ反応性ジストニア)などがある。また、うつ病、過食症、パーキンソン病、自閉症、精神分裂病などにおいても、テトラヒドロビオプテリンの代謝異常が原因・増悪因子になっている可能性が示唆されている。
なお、末梢から脳へテトラヒドロビオプテリンを送る場合、その一部はわずかに脳組織に捕捉されるが、芳香族モノアミン神経細胞に到達しない段階で速やかに脳組織の外に排出される。即ち、テトラヒドロビオプテリンは、血液脳関門を通過するのが著しく困難である。
「7,8−ジヒドロ−6−[(S)−2−ヒドロキシ−1−オキソプロピル]−プテリン(慣用名「セピアプテリン(Sepiapterin)」、以下、「セピアプテリン」と記載する。)」は、動物色素などとして、ヒトを含む各種動物に広く存在する内因性化合物であり、日常的な食品にも微量に含まれている。1960年、Nawaは、ショウジョウバエの目の色素の一つとして、セピアプテリンの化学構造を決定した。
ヒト体内におけるセピアプテリンの生物活性は、現在のところ知られていない。セピアプテリンは、ヒト体内では、テトラヒドロ−6−ラクトイル−テトラヒドロプテリン(GTPからテトラヒドロビオプテリンが合成される際の中間産物)の自動酸化により必ず生成されるが、ごく微量であり、血中・尿中ではほとんど検出されない。
セピアプテリンは、動物細胞に容易に取り込まれ、SPR(セピアプテリン還元酵素)及びDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)による2段階の酵素反応により、テトラヒドロビオプテリンへ転換されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
テトラヒドロビオプテリン、その代謝産物、プロドラッグ(セピアプテリン、ジヒドロビオプテリン)などの細胞膜通過特性が、近年、明らかにされつつある。例えば、非特許文献2には、プテリン化合物の細胞膜通過に関する知見が示されている。
なお、テトラヒドロビオプテリンなどを含有する各疾患の治療剤などが種々提案されている。例えば、特許文献1には、プテリン誘導体からなるうつ病・パーキンソン病治療剤が、特許文献2には、注意欠陥多動性障害及び高フェニルアラニン血症の治療のためのテトラヒドロビオプテリンを含む組成物が、特許文献3には、テトラヒドロビオプテリンを有効成分とする脊髄小脳変性症治療剤が、特許文献4には、プテリン誘導体を有効成分とする癌転移抑制剤が、それぞれ記載されている。また、非特許文献3には、ビオプテリン代謝欠損性フェニルケトン尿症患者に対するテトラヒドロビオプテリン又はセピアプテリンによる単独治療が、非特許文献4には、ラット脳におけるビオプテリン生合成が、それぞれ検討されている。非特許文献5では、末梢からテトラヒドロビオプテリンを投与する場合、致死量に近い量を投与しないと脳内芳香族モノアミンの濃度は増大しないことが実証された。その他、非特許文献6は後述するプロドラッグ化に関する文献、非特許文献7は後述するセピアプテリンの合成に関する文献、非特許文献8は後述するFukushima-Nixon法に関する文献、非特許文献9は後述するセロトニン、5−ヒドロキシトリプトファン、5−ヒドロキシインドール酢酸量の測定法に関する文献である。
特開昭59−25323号公報 特表2008−504295号公報 国際公開WO96/03989号公報 特開平6−192100号公報 K. Sawabe, K. Yamamoto, Y. Harada, A. Ohashi, Y. Sugawara, H.Matsuoka, and H. Hasegawa, "Cellular uptake of sepiapterin and push-pullaccumulation of tetrahydrobiopterin." Mol Genet Metab 94 (2008) 410-416. H. Hasegawa, K. Sawabe, N. Nakanishi, and O.K. Wakasugi, "Deliveryof exogenous tetrahydrobiopterin (BH4) to cells of target organs: role ofsalvage pathway and uptake of its precursor in effective elevation of tissueBH4." Mol Genet Metab 86 Suppl 1 (2005) S2-10. A. Niederwieser, H.-Ch. Curtius, M. Wang and D. Leupold,"Atypical phenylketonuria with defective biopterin metabolism. Monotherapywith tetrahydrobiopterin or sepiapterin, screening und study of biosynthesis inman.": Eur J Pediatr (1982) 138: 110-112. G. Kapatos, S. Katoh and S. Kaufman, "Biosynthesis of biopterinby rat brain.": Journal of Neurochem. 39, 1152-1162 (1982). M. P. Brand, K. Hyland, T. Engle, I. Smith and S. J. R. Heales,"Neurochemical effects following peripheral administration oftetrahydropterin derivatives to the hph-1 mouse.": Journal of Neurochem.66, 1150-1156 (1996). K. Beaumont, R. Webster, I. Gardner, K. Dack, "Designof ester prodrugs to enhance oral absorption of poorly permeable compounds:challenges to the discovery scientist.": Current Drug Metabolism (2003), 4(6),461-485 W. Pfleiderer, "Pteridine, LXVIII. Uberfuhrung von Biopterin inSepiapterin und absolute Konfiguration des Sepiapterins (Konfiguration DesSepiapterins).": Chemische Berichte 112 (1979) 2750-2755. T. Fukushima and J.C. Nixon, "Analysis of reduced forms of biopterinin biological tissues and fluids": Analytical Biochemistry 102, 176-188 (1980) F. Inoue, H.Hasegawa, M.Nishimura, M. Yanagisawa and A.Ichiyama, "Distributionof 5-hydroxytryptamine(5HT) in tissue of a mutant mouse deficient in mastcell(W/Wv). Demonstration of the contribution of mast cells to the 5HT contentin various organs": Agents Actions 16, 2950301(1985)
上述の通り、これまで、テトラヒドロビオプテリン生成の異常で生じる疾患などに対し、テトラヒドロビオプテリンを末梢より投与し、それらの疾患の症状を改善する試みが行われてきた。
しかし、テトラヒドロビオプテリンを末梢より投与しても、末梢におけるフェニルアラニン代謝、芳香族モノアミン合成、一酸化窒素合成は促進されるが、脳内モノアミン神経伝達物質の生合成はほとんど促進されない。これは、テトラヒドロビオプテリンが血液脳関門をほとんど通過できないこと、わずかに脳まで到達しても芳香族モノアミン神経細胞の細胞膜を通過しにくいことが原因であると推測する。
従って、テトラヒドロビオプテリンは、末梢におけるフェニルアラニン代謝の促進、芳香族モノアミンの合成促進、一酸化窒素の合成促進などには有効であったが、脳内芳香族モノアミンの合成促進には有効ではなかった。即ち、うつ病、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの脳機能障害においては、テトラヒドロビオプテリンを投与しても、実際にはほとんど症状改善がみられず、実用化もされていない。
そこで、本発明では、中枢性精神障害(うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害など)、中枢性運動障害(筋緊張、硬直、振戦など)などの脳機能障害の症状を改善する新規手段を提供することなどを目的とする。
本発明者は、セピアプテリンを末梢から投与した場合に、セピアプテリンが血液脳関門を通過し、脳内の神経細胞内に取り込まれること、及び、それにより脳内芳香族モノアミンの産生が促進され、その活量が増大することを新規に見出した。
そこで、本発明では、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有する脳機能障害の予防用又は改善用の薬剤、及び、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有させた脳機能障害の予防用又は改善用の飲食物を提供する。
セピアプテリンは、テトラヒドロビオプテリンなどと異なり、末梢から投与しても、脳内芳香族モノアミン(例えば、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンのいずれか又は複数)の脳神経細胞内レベル低下を抑制し、その活量を増大することができる。従って、脳内芳香族モノアミンの脳神経細胞内レベル低下による脳機能障害、例えば、うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害などの中枢性精神障害、筋緊張、硬直、振戦などの中枢性運動障害などに有効である可能性がある。
セピアプテリンが脳内芳香族モノアミンの活量を増大する機序は、次の通りであると推測する。セピアプテリンは、末梢から投与された後、テトラヒドロビオプテリンよりも血液脳関門を通過しやすく、一定量が脳神経細胞に到達する。セピアプテリンは、テトラヒドロビオプテリンと異なり、促進輸送により脳神経細胞の細胞膜を透過し、細胞内に取り込まれる。脳神経細胞内では、細胞内に存在するSPR(セピアプテリン還元酵素)及びDHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)による2段階の酵素反応により、テトラヒドロビオプテリンへ転換される。これにより、脳神経細胞内におけるテトラヒドロビオプテリン量が増加し、脳内芳香族モノアミンの生合成が促進され、脳内芳香族モノアミンの細胞内レベルが上昇し、活量が増大する。
なお、テトラヒドロビオプテリンの場合、その末梢からの投与によって少量が血液脳関門をかいくぐって脳に到達しても、それが神経細胞には容易に取り込まれないという点で、セピアプテリンの作用機序との間に基本的な差異がある。
本発明により、各種脳機能障害の症状を改善できる可能性がある。
<本発明の作用機序について>
本発明に係るセピアプテリンの脳内における作用機序について、図1を用いて説明する。
図1は脳内の神経細胞における芳香族モノアミン代謝系を示す模式図である。なお、図1では、セロトニンの代謝系を例示しているが、ドーパミン、ドーパミンから生成されるノルアドレナリンなど、他の芳香族モノアミンの代謝系についても、ほぼ同様の機構が存在する。
栄養分・液性調節因子・生理活性物質など、脳内の神経細胞に必要な物質は、血流(図1中、「blood」、以下同じ)から血液脳関門(図1中、「blood brain barrier」、以下同じ)を介して神経細胞(図1では、「monoaminergic neuron」と記載された箇所、以下同じ)へ供給される。
血液脳関門(blood brain barrier)は、主に、(1)脳内の血管壁(図1中、「blood vessel wall」、以下同じ)、及び、(2)神経周囲腔(図1中、「perineural cavity」、血管壁と神経細胞の間の領域、以下同じ)に存在するグリア細胞などで構成される。上述の通り、血流中の物質・薬剤などの脳への移入は血液脳関門により厳しく制限されており、限られた成分のみが脳へ移入される。なお、脳内成分も、血液脳関門により、その流出が厳しく制限されており、原則として、限られた代謝物・代謝産物のみが脳から移出される。
血液脳関門において、脳内の神経細胞への移入が制限される物質は、(1)物理化学的な拡散により神経細胞の近傍まで到達した後、血管壁・グリア細胞などにおける外向方向への能動的な輸送により、(2)若しくは、神経細胞の近傍まで到達した後、神経細胞に取り込まれずに、最終的に脳内血流に戻ることにより、神経細胞の近傍から排除される。
一方、脳内の神経細胞に取り込まれる物質は、まず、神経周囲腔において、(1)グリア細胞などの細胞膜又は細胞間隙での物理化学的な浸透・拡散により、(2)若しくは、グリア細胞に存在する輸送体タンパク質群の協調的な媒介により、神経細胞に到達する。
次に、神経細胞に到達した物質は、(1)神経細胞の細胞膜での物理化学的な浸透・拡散により、(2)若しくは、神経細胞に存在する輸送体タンパク質群の協調的な媒介により、神経細胞に取り込まれる。一般的に、各物質の神経細胞内の濃度は物質ごとに決まっているため、神経細胞内に取り込まれた後速やかに代謝される物質は、その代謝された量だけ、さらに継続的に取り込まれる。
脳内の芳香族モノアミン作動性神経細胞(図1中、「monoaminergic neuron」、以下同じ)では、芳香族モノアミンの代謝が行われる。
例えば、セロトニン(図1中、「Serotonin」、以下同じ)の場合、図1に示す通り、以下の機序で代謝が行われる。まず、L−アミノ酸のトリプトファン(図1中、「Tryptophan」、以下同じ)が血流から血液脳関門を介してモノアミン作動性神経細胞に取り込まれる。このトリプトファンは、トリプトファン水酸化酵素(図1中、「TPH」、以下同じ)及びその補酵素のテトラヒドロビオプテリン(図1中、「BH4」、以下同じ)の働きで、5−ヒドロキシトリプトファン(図1中、「5HTP」、以下同じ)に変換され、さらに芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(図1中、「AADC」、以下同じ)の働きでセロトニンに変換される。セロトニンの生合成を律速するのは、トリプトファン水酸化酵素(TPH)による反応の段階である。
なお、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)は、テトラヒドロビオプテリン欠損患者に対し、脳内セロトニン量を増大させる目的で末梢より投与される際に、今日第一選択肢として用いられている物質であり、5−ヒドロキシトリプトファンを末梢から投与した場合、トリプトファンと同様、血流から血液脳関門を介して芳香族モノアミン作動性神経細胞に取り込まれることが知られている。
生合成されたセロトニンは、芳香族モノアミン作動性神経細胞内で神経伝達物質放出顆粒に取り込まれ、細胞外に放出される。但し、血流へは移出されず、脳内に留まり、(1)セロトニン輸送体(図1中、「SERT」、以下同じ)により芳香族モノアミン作動性神経細胞内の放出顆粒に再度取り込まれたり、(2)モノアミン酸化酵素(図1中、「MAO」、以下同じ)などの働きで5HIAAに代謝的不活性化された後、有機陰イオン輸送体などにより血流へ流出したりする。なお、脳内では、セロトニン代謝(生合成、放出、再取り込み、代謝的不活性化、血流への流出)が循環して繰り返し行われ、その代謝回転は速いことが知られている。
上述の通り、芳香族モノアミンには、末梢の細胞内に存在するものと中枢神経系の神経細胞内に存在するものとがあるが、脳内芳香族モノアミンは、原則として、血液脳関門を通過せず、それぞれ独立に合成・代謝される。
即ち、脳内の芳香族モノアミンは、脳内の神経細胞内で生合成・蓄積され、神経細胞の周囲腔への放出、神経細胞への再取り込み、代謝的不活性化も脳内で行われる。なお、代謝的不活性化は、主にグリア細胞で行われ、一部は神経細胞で行われる。
従って、脳内の活性な芳香族モノアミンが、神経細胞から放出された後にそのまま末梢へ流出することはなく、代謝的不活性化を経てから末梢へ流出すると考えられている。また、末梢の芳香族モノアミンが脳内に移行して脳内の神経細胞又はその周囲腔に到達することもないと考えられている。即ち、例えば、尿中などの末梢におけるセロトニン量が増大したというだけでは、脳内セロトニンが増大したことを示す根拠とはならない。
一般的に、芳香族モノアミンの適切な脳内レベルは、脳内における生合成量、分泌顆粒への蓄積、神経細胞による細胞周囲腔へのシナプス放出、再取り込み、代謝的不活性化などの各要素のバランスで決まると考えられる。
テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、トリプトファン水酸化酵素(TPH)の働きに必須の補酵素である。テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、血液脳関門において、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)とほぼ同程度に血管壁を通過できるが、神経周囲腔に存在するグリア細胞などによる取り込みはそれほど多くない。また、神経細胞内にはテトラヒドロビオプテリン(BH4)がほぼ一定量存在するため、神経細胞近傍におけるテトラヒドロビオプテリン(BH4)の濃度が上昇しても、神経細胞内へ取り込まれる量はそれほど多くはない。従って、大部分のテトラヒドロビオプテリン(BH4)は、図1に示す通り、神経細胞の近傍まで到達した後、グリア細胞及び神経細胞には取り込まれずに、最終的に脳内血流に戻ると考えられる。
セピアプテリン(図1中、「SP」、以下同じ)は、図1に示す通り、末梢から投与され、血流により脳に到達した後、血液脳関門を通過しモノアミン作動性神経細胞に取り込まれる。モノアミン作動性神経細胞内で、セピアプテリンは、ジヒドロビオプテリン(図1中、「BH2」)を経由してテトラヒドロビオプテリン(BH4)に変換され、律速段階であるトリプトファン水酸化酵素(TPH)の補酵素としてセロトニンの生合成とその放出を促進する。
セピアプテリン(SP)は、血液脳関門において、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)とほぼ同程度に血管壁を通過し、かつ神経周囲腔に存在するグリア細胞などでもテトラヒドロビオプテリン(BH4)よりも10倍以上能率よく取り込まれる。従って、セピアプテリン(SP)はテトラヒドロビオプテリン(BH4)よりも神経細胞に到達する量が多いと考えられる。
加えて、セピアプテリン(SP)は、神経細胞に取り込まれた後速やかにビジヒドロオプテリン(BH2)を経由してテトラヒドロビオプテリン(BH4)に変換されるため、神経細胞内におけるセピアプテリン量は比較的低濃度に保たれる。そのため、テトラヒドロビオプテリン(BH4)に変換された量だけ、セピアプテリンがさらに継続的に取り込まれる。従って、神経細胞への取り込み量もテトラヒドロビオプテリン(BH4)よりも多いと考えられる。
以上の知見を総合すると、セピアプテリン(SP)を末梢から供給することにより、テトラヒドロビオプテリン(BH4)を末梢から供給する場合よりも、神経細胞内におけるテトラヒドロビオプテリン(BH4)量を持続的に高くすることができるため、より有効に、トリプトファン水酸化酵素(TPH)を活性化し、セロトニンの生合成とその放出を促進することができる。
なお、SSRI、SNRIなどの薬剤は、セロトニン輸送体(SERT)によるセロトニンの再取り込みを阻害することにより、脳内の神経細胞周囲腔におけるセロトニンレベルを高くする薬剤である。また、モノアミン酸化酵素阻害剤は、モノアミン酸化酵素(MAO)による代謝的な不活性化を抑制することにより、脳内のセロトニンレベルを高くする薬剤である。
<本発明に係る薬剤について>
本発明は、セピアプテリン又はその塩を少なくとも含有する脳機能障害の予防用、改善用、又は治療用の薬剤を広く包含する。
セピアプテリンは、上述の通り、7,8−ジヒドロ−6−[(S)−2−ヒドロキシ−1−オキソプロピル]-プテリンを意味する。セピアプテリンが血液脳関門を通過できるのは、プテリンの6位に配置された置換基の中に存在するオキソ基が重要な役割を果たしている可能性がある。従って、置換基内にオキソ基が保持され、かつ、細胞内でテトラヒドロビオプテリンに変換されうる構造が保持されていれば、その一部の構造が変換されているものについても、本発明に係るセピアプテリンにすべて包含される。
例えば、イソセピアプテリン(7,8−ジヒドロ−6−[(S)−2−オキソ−1−ヒドロキシプロピル]-プテリン)は、オキソ基の位置が異なるが、セピアプテリンと同様に、置換基内にオキソ基を有し、かつ、セピアプテリン還元酵素、アルドース還元酵素、ジヒドロ葉酸還元酵素など、生体内にある酵素の働きによってテトラヒドロビオプテリンに変換されうる構造を保持する。従って、イソセピアプテリンは、本発明において、セピアプテリンと同等の化合物として、本発明に係るセピアプテリンに包含される。
本発明に係る薬剤には、セピアプテリン自体、及び、その同等物質(イソセピアプテリンなど)のほか、医薬上許容されるその塩、溶媒和物なども含まれる。塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩など)、金属塩(アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩など)、無機塩(リン酸塩、硫酸塩、臭化水素塩、アンモニウム塩など)、有機酸塩(メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、乳酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、サリチル酸塩など)、有機アミン塩(メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、エチレンジアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、ジベンジルアミン塩、グルコサミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、テトラメチルアンモニア塩など)、アミノ酸塩(グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、アスパラギン塩など)、その他の有機塩(ピペリジン塩、モルホリン塩、トリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン塩、水酸化コリン塩など)などが適用できる。
また、本発明に係る薬剤には、薬理学的に許容でき、生理学的条件下で解離可能な保護基を少なくとも一つ有する化合物からなるプロドラッグを含む。プロドラッグ化は公知の方法により行うことができる(例えば、非特許文献6参照)。プロドラッグ化の手段として、例えば、遊離型カルボン酸、アルコキシ基(例えば、エトキシ基)、フェンアルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基)、OCH(R)OCOR基(例えば、ピバロイルオキシメチルオキシ基)、OCH(R)OCO基(例えば、[[(1−メチルエトキシ)カルボニル]オキシ]エチルエステル基、プロキセチル基など)OCH(R)OR基、2−アルキル基、2−シクロアルキル基、2−シクロアルキルアルキル基、オキシカルボニル−2−アルキリデン−エトキシ基、5−アルキル[1,3]ジオキシル−2−オン−4イル-メチルオキシ基、ジアルキルアミノ-アルコキシル基、アクリルオキシ基(Rが水素原子、(C−C)アルキル基のいずれかで、Rが水素原子、(C−C)アルキル基、(C−C)アルケニル基、(C−C)アルコキシ−(C−C)アルキル基、(C−C)ハロアルコキシ−(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、(C−C)シクロアルキルメチル基のいずれかのもの)を付加することにより行うことができる。加えて、構造中に遊離型のヒドロキシル基が存在する場合、硫酸塩(OSOH)、リン酸塩(OPO)、オキシメチレンリン酸塩(OCHOPO)、コハク酸エステル(OCOCHCHCOOH)、ジメチルアミノグリシンのエステル、天然アミノ酸、無機塩などの保護基を付加することによってプロドラッグ化できる。
本発明に係る薬剤の剤型は特に限定されない。例えば、固形製剤(錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、徐放剤など)、液状製剤(シロップ剤、注射剤など)などとして用いることができる。
本発明に係る化合物を薬剤に配合する際、薬理学的に許容される担体を用いてもよい。担体として、製剤素材として慣用されている各種有機あるいは無機担体物質を用いることができる。
例えば、固形製剤の場合、本発明に係る薬剤及びその担体に、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを配合する。液状製剤の場合、本発明に係る薬剤及びその担体に、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などを適宜配合する。その他、必要に応じ、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いてもよい。
賦形剤の好適な例として、例えば、乳糖、白糖、D−マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などを用いることができる。
滑沢剤の好適な例として、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどを用いることができる。
結合剤の好適な例として、例えば、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどを用いることができる。
崩壊剤の好適な例として、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウムなどを用いることができる。
溶剤の好適な例として、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油などを用いることができる。
溶解補助剤の好適な例として、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどを用いることができる。
懸濁化剤の好適な例として、例えば、界面活性剤(ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなど)、親水性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)などを用いることができる。
等張化剤の好適な例として、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトールなどを用いることができる。
緩衝剤の好適な例として、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液などを用いることができる。
無痛化剤の好適な例として、例えば、ベンジルアルコールなどを用いることができる。
防腐剤の好適な例として、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などを用いることができる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
その他、この薬剤には、補助成分、例えば、保存・効能の助剤となる光吸収色素(リボフラビン、アデニン、アデノシンなど)、安定化のためのキレート剤・還元剤(ビタミンC、クエン酸など)、脳におけるセピアプテリンの効果を増強するアミノ酸基質(トリプトファンなど)、類似物質(テトラヒドロビオプテリン、ジヒドロビオプテリンなど)を含有させてもよい。
なお、剤型、投与方法、担体などにより異なるが、本発明に係る薬剤は、セピアプテリンを製剤全量に対して通常0.1〜99%(w/w)含有させることにより、常法に従って製造することができる。
<本発明に係る薬剤の適用疾患及び治療方法などについて>
適用疾患については、脳内芳香族モノアミンの細胞内レベルが低下している脳機能障害であればよく、特に限定されない。
そのような疾患として、例えば、うつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害のいずれかの中枢性精神障害、若しくは筋緊張、硬直、振戦のいずれかの中枢性運動障害などが挙げられる。例えば、これらの疾患に対して、セピアプテリンを有効量投与することにより、脳機能障害の予防・改善・治療を行うことができる可能性がある。
本発明に係る薬剤は、哺乳動物(例えば、ヒト、ウマ、ウシ、犬、猫、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、サルなど)に対して適用することができる。
この薬剤は、例えば、錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤などとして経口的に、又は、注射剤、坐剤、ペレットなどとして非経口的に投与できる。非経口投与には、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内、鼻腔内、皮内、点眼、脳内、直腸内、膣内、腹腔内への投与が含まれる。
本発明の薬剤の投与量は、投与ルート、症状などによって異なるが、患者に静脈投与する場合、例えば、1日当たり0.1〜100mg/kg×体重である。例えば、この量を1日1回または1〜3回に分けて投与する。
なお、この薬剤は、目的・用途・症状などに応じて、単独で用いてもよいし、他の薬剤と併用して用いてもよい。例えば、SSRI、SNRIは、一定の薬効が認められているが、長期投与による芳香族モノアミン量の低下が危惧される。それに対し、これらの薬剤と本発明に係る薬剤とを併用することにより、相乗的な効果が得られる可能性がある。
また、例えば、セピアプテリンの脳内移行を妨げる逆行性の輸送体に対する阻害剤、若しくはセピアプテリンの投与による脳内テトラヒドロビオプテリンの保持時間を短縮する外向性の輸送体に対する阻害剤などを併用することによっても、セピアプテリンによる効果をより高めることができる可能性がある。
その他、腎排出阻害剤のプロベネシドが末梢におけるテトラヒドロビオプテリンの体内保持を長期化できることが知られている。従って、本発明に係る薬剤と腎排出阻害剤とを併用することにより、効果を増強し、又は、長時間持続させることができる可能性がある。
腎排出阻害剤としては、例えば、プロベネシド、免疫調節剤(シクロスポリンA、FK506、チモシンα-1など)、サイトカイン(TNF、TGF−β、インターフェロン(IFN−α、IFN−β、IFN−γなど)、インターロイキン(インターロイキン1、2、3、4、5、6、7、8、10、12、13など)、マクロファージ/顆粒細胞コロニー刺激因子(GM−CSF、G−CSF、M−CSFなど)など)、エリスロポエチン、サイトカイン拮抗剤(レチキュロース、ADA、AMD−3100、抗TNF抗体、抗インターロイキン抗体、可溶性インターロイキンレセプター、プロテインキナーゼCインヒビターなど)、ヌクレオシド輸送阻害剤(ジピリダモール、ペントキシフィリン、N−アセチルシステイン(NAC)、プロシステイン、α−トリコサンチン、ホスホノギ酸、ジラゼプ、ニトロベンジルチオイノシンなど)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTIs;ネビラピン、ロビリド(loviride)、デラビルジン、カラノリドA、DPC−083、エファビレンツ、MKC−442、カプラビリン(capravirine)など)、gp120拮抗剤(PRO−2000、PRO542、FP21399など)、インテグラーゼ阻害剤(T−20、T−1249など)などが挙げられる。
<本発明に係る飲食物について>
本発明は、セピアプテリン又はその塩を有効成分として少なくとも含有させた脳機能障害の予防用・改善用・治療用の飲食物をすべて包含する。
例えば、保健機能食品(特定保健機能食品、栄養機能食品など)、いわゆる健康飲食物、その他の各種飲食物などに含有させたり、各種調味料などに配合したりすることができる。
飲食物の形態などは、特に限定されない。例えば、液体又は半固形、固形の製品、具体的には、クッキー、せんべい、ゼリー、ようかん、ヨーグルト、まんじゅうなどの菓子類、清涼飲料、栄養飲料、スープなどにしてもよいし、そのまま煎じて茶剤としてもよい。また、例えば、これらの飲食物の製造工程において、あるいは最終製品に、上記の薬物を混合又は塗布、噴霧などして添加して、健康飲食物としてもよい。その他、口中に一時的に含むもの、例えば、歯磨剤、染口剤、チューインガム、うがい剤などに含有させてもよい。
<本発明に係る薬剤の製造方法について>
本発明に係るセピアプテリンは、公知の方法により製造でき、その製造方法は特に限定されない。
例えば、テトラヒドロビオプテリンは、有機化学合成で、C6位ジアステレオマー混合物(6R/6S混合物)を合成し、6Rをキラル分離・精製することにより取得することができる。
セピアプテリンの場合も、この合成系を利用し、有機化学合成で、テトラヒドロビオプテリンのC6位ジアステレオマー混合物(6R/6S混合物)を合成した後、これを酸化して粗セピアプテリン標品を生成し、精製することにより取得することができる(セピアプテリンの合成方法の例として、例えば、非特許文献7参照)。なお、テトラヒドロビオプテリンと異なり、セピアプテリンはC6位がアキラルであるため、セピアプテリン製造工程において、キラル分離の工程を省略できる。
実施例1では、芳香族モノアミン合成細胞としてPC12細胞及びRBL2H3細胞を用いて、セピアプテリンを培養液に添加した場合における細胞内の総ビオプテリン量(テトラヒドロビオプテリンとその酸化体であるジヒドロビオプテリン及びビオプテリンとの総量、以下同じ)を検討した。
PC12細胞は、神経細胞の性質を有する培養細胞であり、テトラヒドロビオプテリンを補酵素として、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンを生合成することが知られている。RBL2H3細胞は、肥満細胞の性質を有する培養細胞であり、テトラヒドロビオプテリンを補酵素として,セロトニンを生合成することが知られている。
両細胞は、テトラヒドロビオプテリンの合成能を持ち、かつ一定量のテトラヒドロビオプテリンを細胞内に保持するが、飽和量は保持しない。また、両細胞は、芳香族モノアミンを自ら合成する能力を有さず、細胞外から芳香族モノアミンを取り込み、また、刺激に応じて芳香族モノアミンを分泌する能力を有する細胞(例えば、血小板は、セロトニンを自ら合成する能力を有さないが、細胞外からセロトニンを取り込み、また、刺激に応じてセロトニンを分泌する能力を有する。)とは異なり、自ら芳香族モノアミンを合成する能力を有する。そこで、本実施例では、両細胞が、芳香族モノアミン合成細胞のモデルとして適していると判断し、両細胞を用いた。
PC12細胞及びRBL2H3細胞は、JCRB細胞バンク(独立行政法人医薬基盤研究所、日本)より入手した。
PC12細胞を、7%ウシ胎仔血清と7%ウマ血清を含むDMEM培養液
(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;ダルベッコ培養液、以下同じ)にて継代培養し、実験に際しては、ポリリジンコートを施した96ウエルプレートに2×10/wellずつ播種し、翌日、実験開始の一時間前に血清を含まないDMEM培養液に置き換え、以下の取り込み実験に供した。
RBL2H3細胞を、10%ウシ胎児血清を含むDMEM培養液を用い、コート処理を施さない96ウエルプレートに1×10/wellずつ播種し、同様に、翌日、実験開始の一時間前に血清を含まないDMEM培養液に置き換え、以下の取り込み実験に供した。
PC12細胞又はRBL2H3細胞のそれぞれの培養液中に、セピアプテリン又はテトラヒドロビオプテリンを最終濃度100μMとなるように添加し、その0、30、60、120、180分後に、氷冷した生理食塩水(PBS(+);Ca2+、Mg2+を含むphosphate buffered saline)で培養液を速やかに3回洗浄し、両細胞内における総ビオプテリン量を測定した(各n=6)。
細胞内における総ビオプテリン量の測定は、Fukushima−Nixon法(非特許文献8参照)により、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系(HPLC/FD)で行った。
Fukushima−Nixon法の原理は以下の通りである。テトラヒドロビオプテリンを強酸性又は強アルカリ性条件下でヨードにより酸化すると、酸性条件下では定量的に酸化型ビオプテリンに、アルカリ性条件下では6位側鎖を脱落した酸化型プテリンに酸化される。ジヒドロビオプテリンは、pH条件にかかわらず酸化型ビオプテリンに酸化される。酸化型ビオプテリン及び酸化型プテリンは、強い自然蛍光特性を有する(励起:350nm、蛍光:450nm)。そこで、同一サンプルを二等分し、一方を酸性条件下で、他方をアルカリ性条件下でそれぞれヨードにより酸化し、蛍光検出される酸化型ビオプテリンと酸化型プテリンの量を定量後比較することにより、元のサンプル中のテトラヒドロビオプテリン量、及びジヒドロビオプテリン量をそれぞれ定量できる。
調製したサンプルを高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系に供し、酸化型ビオプテリンと酸化型プテリンを外部標準比較法により定量し、該値に基づき、細胞内のテトラヒドロビオプテリン及び総ビオプテリン量を算出した。高速液体クロマトグラフィーのカラムには、「Fine−SIL−C18−5T(日本分光株式会社製)」を、溶離液には7%メタノール水溶液をそれぞれ用いた。蛍光検出には、日本分光株式会社製のFP系の機種を用いた。
なお、本実施例で用いた各細胞には、本来的に、酸化型ビオプテリン及び酸化型プテリンが極少量しか含有されないため、それらは含有しないものとして実験を行った。
セピアプテリンは、細胞内において、取込みによる外因性か若しくは内在性かにかかわらず、実験を行った時間内にジヒドロビオプテリン以外に代謝されることはない。細胞内のジヒドロビオプテリンは、ジヒドロ葉酸還元酵素によってテトラヒドロビオプテリンへと還元されるが、ジヒドロビオプテリンの一部分は細胞内に残存する。ジヒドロビオプテリンがテトラヒドロビオプテリンに還元される以外の反応、及び、テトラヒドロビオプテリンの分解は、実験を行った時間内ではほとんど起こらないことが分かっている。セピアプテリンは、細胞内から細胞外へ、及び、細胞外から細胞内への移行が可能であり、ジヒドロビオプテリンは、わずかに同様の移行が可能であり、テトラヒドロビオプテリンはほとんど内外移行を認めないことが分かっている(非特許文献1)。以上の知見に基づき、ジヒドロビオプテリンの量とテトラヒドロビオプテリンの量の和を、細胞内における総ビオプテリン量とした。
結果を図2A及び図2Bに示す。図2AはPC12細胞の細胞内における総ビオプテリン量の経時的変化を示すグラフ、図2BはRBL2H3細胞の細胞内における総ビオプテリン量の経時的変化を示すグラフである。両グラフ中、縦軸は細胞数1×10個当たりの総ビオプテリン量のモル数(Total BP、単位:nmol/106cells)を、横軸はセピアプテリン又はテトラヒドロビオプテリン添加後の時間(Time、単位:min)を、それぞれ表わす。両グラフ中、黒丸はセピアプテリン(SP)を添加した場合の結果を、白丸はテトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合の結果を、それぞれ表わす。エラーバーは、標準偏差を表す(以下同じ)。エラーバーを付記しなかったものは、シンボルのサイズより小さいものである(以下同じ)。
図2A及び図2Bに示す通り、両細胞において、セピアプテリンを添加することにより、細胞内における総ビオプテリン量が著しく上昇したのに対し、テトラヒドロビオプテリンを添加した場合は、細胞内における総ビオプテリン量がほとんど変化しなかった。この結果は、セピアプテリンを添加することにより、芳香族モノアミン分泌細胞内における総ビオプテリン量が上昇し続けることを示し、また、テトラヒドロビオプテリンを添加しても、芳香族モノアミン分泌細胞内における総ビオプテリン量はほとんど変化しないことを示す。
なお、テトラヒドロビオプテリンを添加した場合、総ビオプテリン量のわずかな上昇が見られるが、これは、実験条件下において培養液中で酸化したテトラヒドロビオプテリンがジヒドロビオプテリンとなって、二次的に取り込まれたものである(非特許文献1参照)。その他、細胞内のビオプテリンは、95%以上がテトラヒドロビオプテリンで残りがジヒドロビオプテリンだった。
以上の結果を総合すると、テトラヒドロビオプテリンを添加した場合、芳香族モノアミン合成細胞へのテトラヒドロビオプテリンの取り込みはほとんど行われなかったため、細胞内における総ビオプテリン量はほとんど変化しなかったのに対し、セピアプテリンを添加した場合、セピアプテリンが芳香族モノアミン合成細胞へ取り込まれ、細胞内でテトラヒドロビオプテリンに変換されるため、細胞内における総ビオプテリン量が上昇したと推測される。
即ち、本実施例の結果は、ヒトを含む動物個体に対しセピアプテリンを末梢から投与した場合、テトラヒドロビオプテリンと異なり、血液脳関門を通過すれば、芳香族モノアミン神経細胞の細胞膜を通過し、細胞内に取り込まれ、そこでテトラヒドロビオプテリンに変換され、芳香族モノアミンの生合成が促進されることを示唆する。
実施例2では、脳毛細血管壁モデル細胞系を用いて、血管壁におけるセピアプテリンとテトラヒドロビオプテリンの通過性を比較した。
脳血管壁モデルとして、「BBB kit、RBT24H(ファーマコセル株式会社、日本製)」を用いた。このキットは、内径3μmの小孔を有する多孔性合成樹脂膜上でラット血管内皮細胞を培養し、緻密な細胞間結合を形成させることで血管壁を形成させたモデル系である。このキットでは、多孔性合成樹脂膜の裏側に周囲細胞(pericyte)を予め培養しておき、さらに膜の下方の受け皿内にアストログリア細胞を同時に培養することにより、血管内皮細胞が緻密な細胞間結合を形成するようにしている。培養面積は、1ウエル当たり0.3cmである。このモデルでは、それぞれ、細胞シートが血管壁、細胞シートの上面が血管内腔(lumen)、細胞シートの下面が脳神経細胞周囲腔(ablumen)に該当する。
付属プロトコルに従い、血管内腔にあたる細胞シートの上面に、それぞれ、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、セピアプテリン(SP)、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)を生理的平衡塩溶液で溶解して100μM添加し、30分後に細胞シートの下側へ移動した量を測定した。
テトラヒドロビオプテリン(BH4)量は、実施例1の方法に準じて算出した。
セピアプテリン(SP)量は、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系にサンプルを供し、外部標準比較法により算出した。高速液体クロマトグラフィーのカラムには、実施例1と同様、「Fine−SIL−C18−5T(日本分光株式会社製)」を、溶離液には14%メタノール水溶液をそれぞれ用いた。蛍光検出には、日本分光株式会社製のFP系の機種を用いて、励起波長412nm、蛍光波長527nmに設定し、測定を行った。
5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)量は、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系にサンプルを供し、N−メチルセロトニンを用いた内部標準比較法により算出した(非特許文献9参照)。高速液体クロマトグラフィーのカラムには、実施例1と同様、「Fine−SIL−C18−5T(日本分光株式会社製)」を、溶離液には40mM酢酸ナトリウム水溶液にギ酸を加えてpH3.5に調整し、その酢酸ナトリウム水溶液と、アセトニトリル、メタノールを体積比100:10:5で混合した溶液をそれぞれ用いた。蛍光検出には、日本分光株式会社製のFP系の機種を用いて、励起波長302nm、蛍光波長350nmに設定し、測定を行った。
なお、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)は、上述の通り、テトラヒドロビオプテリン欠損患者に対し、脳内セロトニン量を増大させる目的で末梢より投与される際に、今日第一選択肢として用いられている物質である。
結果を図3に示す。図3は、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、セピアプテリン(SP)、5-ヒドロキシトリプトファン(5HTP)を脳血管壁モデルの細胞シートの上面に添加した場合における同物質の下側への移動量を表すグラフである。図3中、横軸は、それぞれ、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、セピアプテリン(SP)、5-ヒドロキシトリプトファン(5HTP)を添加した場合の結果を、縦軸は、細胞シートの下面に移動した量(単位:pmol/well/30min)を、それぞれ表す。各値について、スチューデントのt検定(p<0.05)を行った。
図3に示す通り、テトラヒドロビオプテリン(BH4)及びセピアプテリン(SP)の細胞シート下面への移動量は、有意差はあるものの、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)とほぼ同程度であった。即ち、この結果は、テトラヒドロビオプテリン(BH4)及びセピアプテリン(SP)が、脳血液関門を構成する血管壁を、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)とほぼ同程度に通過できることを示唆する。
実施例3では、セピアプテリンとテトラヒドロビオプテリンのアストログリア細胞への取り込みを比較した。
アストログリア細胞は、主要なグリア細胞であり、脳内では血管を緻密に取り巻いて存在し、脳における血管壁を通過した物質を選択的に取り込んで神経細胞に供給する。
そこで、アストログリア細胞由来の培養細胞であるCTX TNA2細胞を用いて、セピアプテリンとテトラヒドロビオプテリンのアストログリア細胞への取り込みを検討した。なお、CTX TNA2細胞は、米ATCC(American Type Culture Collection)より入手し、用いた。
実験前日にCTX TNA2細胞を1×10/well播種した。培養液をHank's-HEPES(pH7.4)に置換してから30分後にセピアプテリンを50μM又はテトラヒドロビオプテリンを100μM添加し、それぞれ、0、5、10、20、40、60分間培養した。各時間培養した後、培養液を除去し、実施例1又は実施例2の方法に準じて、細胞内に蓄積したセピアプテリン(SP)、ジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)を定量した(各n=5)。
結果を図4A及び図4Bに示す。図4Aはセピアプテリン(SP)を添加した場合に細胞内に蓄積したセピアプテリン(SP)、ジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を表すグラフ、図4Bはテトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合に細胞内に蓄積したジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を表すグラフである。両図中、横軸はセピアプテリン又はテトラヒドロビオプテリンを添加後の培養時間を、縦軸は定量したセピアプテリン(SP)、ジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量(単位:pmol/106cells)を、それぞれ表す。
図4A及び図4Bに示す通り、セピアプテリン(SP)を添加した場合(図4A)とテトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合(図4B)を比較すると、培養細胞内に蓄積したテトラヒドロビオプテリン(BH4)の量は、セピアプテリンを添加した場合の方が、テトラヒドロビオプテリンを添加した場合よりも10倍以上、添加量を同濃度に換算すると20倍以上高かった。
この結果は、セピアプテリンが、テトラヒドロビオプテリンよりも10倍以上グリア細胞に取り込まれやすいこと、及び、グリア細胞内で、同細胞に取り込まれたセピアプテリン(SP)からジヒドロビオプテリン(BH2)を経由してテトラヒドロビオプテリン(BH4)が速やかに合成されることを示唆する。
上述の通り、血液脳関門は、主に血管壁とグリア細胞で形成される。主要なグリア細胞であるアストロサイトは、脳における血管壁を通過した物質を選択的に取り込んで神経細胞に供給する。そのため、血管壁を通過し、アストログリア細胞によって取り込まれた物質が、神経細胞へ到達すると考えられる。
実施例2及び本実施例の結果より、血管壁における通過量はセピアプテリンとテトラヒドロビオプテリンとでほぼ同程度であったが、グリア細胞における取り込み量は、セピアプテリンがテトラヒドロビオプテリンよりも10倍以上高かった。
従って、これらの結果は、セピアプテリンがテトラヒドロビオプテリンよりも10倍以上、血液脳関門を通過しやすいことを示唆する。即ち、実施例1の結果も勘案すると、末梢から投与した場合、セピアプテリンは、テトラヒドロビオプテリンと比較して、血液脳関門を通過しやすく、かつ芳香族モノアミン神経細胞にも取り込まれやすい。
実施例4では、ラットを用いて、セピアプテリンを投与した場合における脳内のテトラヒドロビオプテリン量、セロトニン量、5−ヒドロキシインドール酢酸量を測定した。
ここで、5−ヒドロキシインドール酢酸は、セロトニンの代謝産物であり、主に、グリア細胞又はセロトニン産生細胞内でセロトニンから代謝・変換されるとされている。本実験では、芳香族モノアミン(セロトニン)の脳内における活量を測定する指標として、5−ヒドロキシインドール酢酸の測定も行った。
ラットは、日本エスエルシー株式会社より購入したSDラット(7〜8週齢、オス)を用いた。ラットを、12時間暗−12時間明条件下で飼育し、食餌として飼育用餌(「MM-3」、株式会社船橋農場製)を、飲料水として滅菌水道水を随意に与えた。
セピアプテリン又はテトラヒドロビオプテリンを10mM塩酸に溶解し、ジエチルエーテル麻酔下でラット(n=6)に経口投与し、1、1.5、2、3、4、6、8時間後、ソムノペンチル麻酔下(5分前に腹腔投与、40mg/kg)で、脳を摘出し、その脳を正中線で二分し、左脳及び右脳のサンプルをそれぞれ取得した。なお、セピアプテリン及びテトラヒドロビオプテリンを投与しなかった個体を同様の手順で投与後0時間のサンプルとして用いた。
脳内のテトラヒドロビオプテリン量は、左脳のサンプルに100mM塩酸を5倍量加えて脳組織を破砕し、その破砕液の上清液を用いて、実施例1と同様の方法で測定を行い、算出した。
脳内のセロトニン量及び5−ヒドロキシインドール酢酸量は、N−メチルセロトニンを内部標準として含む1.43%アスコルビン酸含有100mM塩酸3.5倍量を右脳のサンプルに加えて脳組織を破砕し、過塩素酸カリウム(最終濃度5.5%)を加え、氷冷して除タンパクし、この上澄み液を用いて、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系(HPLC/FD)に供し、算出した(非特許文献9参照)。高速液体クロマトグラフィーのカラムには、実施例1などと同様、「Fine−SIL−C18−5T(日本分光株式会社製)」を用いた。溶離液には、実施例2と同様、40mM酢酸ナトリウム水溶液にギ酸を加えてpH3.5に調整し、その酢酸ナトリウム水溶液と、アセトニトリル、メタノールを体積比100:10:5で混合した溶液を用いた。蛍光検出には、実施例1などと同様、日本分光株式会社製のFP系の機種を用いて、励起波長302nm、蛍光波長350nmに設定し、測定を行った。なお、この高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系(HPLC/FD)では、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)、セロトニン、N−メチルセロトニン、トリプトファン、5−ヒドロキシインドール酢酸が、この順で溶出されるため、これらの物質を同時に定量できる。
結果を図5A、図5B、及び、図5Cに示す。
図5Aは、セピアプテリン投与後の脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量の経時的変化を示すグラフである。同グラフ中、縦軸はテトラヒドロビオプテリン量(BH4、単位:nmol/g brain)を、横軸はテトラヒドロビオプテリン又はセピアプテリン投与からの時間(Time、単位:hour)を、それぞれ表わす。同グラフ中、黒丸はセピアプテリン(SP)を添加した場合の結果を、白丸はテトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合の結果を、それぞれ表わす。なお、二次元配置分散分析により、セピアプテリンを投与した場合の値が、テトラヒドロビオプテリンを投与した場合と比較して、投与後1.5〜6時間にわたって統計的に有意に高かった(p<0.0001)。
図5Aに示す通り、テトラヒドロビオプテリン投与群では、脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量が上昇しなかったのに対し、セピアプテリン投与群では、脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量が有意に上昇した。
この結果は、セピアプテリンを投与することにより、末梢からの投与で、脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量が上昇することを示し、また、同量のテトラヒドロビオプテリンを末梢から投与しても脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量が上昇しないことを示す。
脳内の細胞の約90%以上は非神経細胞であり、残りの約10%の神経細胞に占める芳香族モノアミン神経はさらにその一部分である。従って、脳内に上昇したテトラヒドロビオプテリンのすべてが、芳香族モノアミン神経細胞内における上昇分であることを示すものではない。しかし、実施例1に示す通り、セピアプテリンは、芳香族モノアミン合成細胞に容易に移行し、細胞内でテトラヒドロビオプテリンに還元される。また、非特許文献1に示す通り、セピアプテリンは、セピアプテリンの状態で細胞内に入り、速やかにテトラヒドロビオプテリンへと還元され、かつそのテトラヒドロビオプテリンは細胞内で比較的長時間保持されることが分かっている。以上より、図5Aに示す、セピアプテリン投与による持続的なテトラヒドロビオプテリンの上昇のうち、かなりの部分が芳香族モノアミン合成細胞内におけるものである可能性が高いと推測する。また、同量のテトラヒドロビオプテリンを投与した場合に脳内テトラヒドロビオプテリン上昇が認められないことは、実施例1の結果及びその内容から得られた示唆とも合致する。
続いて、図5Bは、セピアプテリン投与後の脳内におけるセロトニン量の経時的変化を示すグラフ、図5Cは同じく脳内における5−ヒドロキシインドール酢酸(5HIAA)量の経時的変化を示すグラフである。両グラフ中、横軸はテトラヒドロビオプテリン又はセピアプテリン投与からの時間(Time、単位:hour)を、縦軸はセロトニン量(5HT、単位:nmol/g brain)又は5−ヒドロキシインドール酢酸量(5HIAA、単位:nmol/g brain)を、それぞれ表わす。両グラフ中、黒丸はセピアプテリン(SP)を添加した場合の結果を、白丸はテトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合の結果を、それぞれ表わす。なお、二次元配置分散分析により、いずれの場合も、セピアプテリン投与群のセロトニン量がテトラヒドロビオプテリン投与群と比較し、有意に高かった(p<0.0001)。
図5B及び図5Cに示す通り、テトラヒドロビオプテリン投与群では、脳内におけるセロトニン量及び5−ヒドロキシインドール酢酸量が長時間にわたって上昇しなかったのに対し、セピアプテリン投与群では、投与後3時間から8時間以降にいたるまで脳内におけるセロトニン量が有意に上昇した。
これらの結果は、セピアプテリンを末梢から投与することにより、その一部が血液脳関門機能を越えて、脳内に到達し、脳内の芳香族モノアミン合成能を有する神経細胞に有効に取り込まれ、テトラヒドロビオプテリンに転換された結果、脳におけるセロトニン量が上昇したことを示唆する。また、同量のテトラヒドロビオプテリンを末梢から投与しても脳内におけるセロトニン量が有意に上昇しないことから、テトラヒドロビオプテリンの末梢からの投与では、何らかの障害により、芳香族モノアミン合成細胞の細胞内にまで実質的に到達しないことを示す。この結果は図5Aの結果によってよく補完されており、また、実施例1の結果と矛盾しない。
以上、実施例1及び本実験例の結果は、セピアプテリンを末梢から投与した場合、一定量のセピアプテリンが、血液脳関門を通過して脳内に到達し、かつ、芳香族モノアミン神経細胞の細胞膜を通過し、脳内の芳香族モノアミン神経細胞内に取り込まれ、そこでテトラヒドロビオプテリンに変換され、このテトラヒドロビオプテリンは有効にセロトニン合成に寄与し、脳内セロトニン量を増大させるという、一連の作用機構を強く示唆する。また、同量のテトラヒドロビオプテリンを末梢から投与しても脳内におけるこの一連の過程が亢進させられないことを示唆する。
実施例5では、マウスを用いて、セピアプテリン投与後の脳内におけるセロトニン(5HT)量を測定した。
マウスは、Dr.K.Hyland(Institute of Metabolic Disease, Baylor University Medical Center,
Dallas, TX 75226, USA)より提供された「hph−1」を用いた。このマウスは、テトラヒドロビオプテリン生合成機能に障害があり、脳内在テトラヒドロビオプテリンレベルが通常マウスの40〜50%であるという特徴を有する。マウスを、12時間暗−12時間明条件下で飼育し、食餌として飼育用餌(「MM-3」、株式会社船橋農場製)を、飲料水として滅菌水道水を随意に与えた。
セピアプテリン又はテトラヒドロビオプテリンを0.01M塩酸に溶解したした後、マウスに20mg/kg経口投与し、その2時間後にまた同量経口投与し、初めの投与から6時間後に脳を摘出し、セロトニン量を測定した(セピアプテリン投与群はn=7、テトラヒドロビオプテリン投与群はn=8)。セロトニン量の測定は、実施例4と同様の方法で、脳サンプルを取得し、破砕・除タンパク後、高速液体クロマトグラフィー/蛍光検出系(HPLC/FD)に供し、励起波長302nm、蛍光波長350nmに設定して、行った。対照群では0.01M塩酸を経口投与して、同様の測定を行った。
結果を図6に示す。図6は、セピアプテリン投与後の脳内におけるセロトニン量を示すグラフである。同グラフ中、縦軸はセロトニン量(5HT、単位:nmol/g brain)を、「v-cont」は対照群の結果を、「BH4」はテトラヒドロビオプテリンを投与した場合の結果を、「SP」はセピアプテリンを投与した場合の結果を、それぞれ表わす。同グラフ中の星印は、t検定で有意に差があったことを表す(p<0.05)。
図6に示す通り、セピアプテリン投与群では、テトラヒドロビオプテリン投与群と比較して、脳内におけるセロトニン量が有意に上昇した。即ち、この結果は、マウスの実験においても、実施例4と同様、セピアプテリンの投与により、脳内芳香族モノアミン(セロトニン)のレベルが有意に上昇したことを示す。
以上の通り、実施例4及び本実施例において、セピアプテリンの末梢からの投与によって、脳内セロトニンが増加したこと、及び、同量のテトラヒドロビオプテリンの末梢からの投与ではこれらが観察されなかったことが示された。
なお、芳香族アミノ酸のチロシンを出発物質とするドーパミンの脳内生合成・放出・再取り込み・代謝も、ドーパミン作動性神経細胞におけるドーパミン合成量を基盤としており、ドーパミン生合成が細胞内テトラヒドロビオプテリン量によって制限されていることが知られている。従って、実施例4及び本実施例の結果は、ドーパミン、及び、ドーパミンから合成されるノルアドレナリン・アドレナリンについても、セピアプテリンの末梢からの投与により、脳内におけるレベルが上昇することを示唆する。即ち、本結果は、セピアプテリンの末梢からの投与が、ドーパミン・ノルアドレナリン・アドレナリンの脳内レベル低下に関連する中枢性精神障害及び中枢性運動障害の改善にも有効な可能性があることを示唆する。
実施例6では、セピアプテリン投与後にマウスの強制水泳テストを行った。
マウスの強制水泳テストは、抗うつ効果を評価するために行うテスト方法で、「無動」時間の長さがうつの指標となる。「無動」時間が短くなるほど、抗うつ効果が高いと評価する。
マウスは、日本エスエルシー株式会社より購入したNZBマウス(7週齢、オス)を用いた。マウスを、実験のための拘束時を除き、12時間暗−12時間明条件下で飼育し、食餌として飼育用餌(「MM-3」、株式会社船橋農場製)を、飲料水として滅菌水道水を随意に与えた。なお、本マウスは、老齢化に伴い自己免疫疾患の発症頻度が高くなる特徴を有するが、本実験においては、実験使用時(7週齢)において、そのような兆候は認められなかった。また、前日に、薬剤などを投与することなく15分間の予備水泳を行ったマウスを実験に供した。
マウスに、テトラヒドロビオプテリン(n=7)又はセピアプテリン(n=5)を、10mg/kgずつ単回、腹腔投与し、40分後に強制水泳テストを行い、「無動」時間を測定した。同テストは、直径15cm、深さ15cm、水温22℃の水槽を用いて、薄明下で行った。「無動」時間の測定は、「無動」時間の5分間積算値を計測することにより行った。対照群(n=5)には生理食塩水を、陽性対照群(n=5)にはデシプラミン40mg/kgをそれぞれ投与し、同様の実験を行った。デシプラミンは三環系抗うつ薬の一種であり、抗うつ効果の陽性対照群として適すると判断して用いた。
結果を図7に示す。図7は、マウスの強制水泳テストにおいて、セピアプテリン投与後の「無動」時間を示すグラフである。同グラフ中、縦軸は「無動」時間(Immobile time(単位:min during 5 min))を、「control」は対照群の結果を、「BH4」はテトラヒドロビオプテリンを投与した場合の結果を、「SP」はセピアプテリンを投与した場合の結果を、「Dsp」は陽性対照群としてデシプラミン(Desipramine)を投与した場合の結果を、それぞれ表わす。また、t検定により、「control」対「SP」がp=0.005、「BH4」対「SP」がp=0.004で、いずれも有意に差があった。「SP」対「Dsp」はp=0.69で、統計的には有意差を有しないと推定された。
図7に示す通り、セピアプテリン投与群では、テトラヒドロビオプテリン投与群、対照群と比較して、「無動」時間が有意に短くなり、抗うつ効果が認められた。また、セピアプテリン投与群は、陽性対照群と同程度に「無動」時間を短縮する効果を有することが示された。
以上、実施例1〜6の結果は、テトラヒドロビオプテリンを末梢から投与した場合、脳内にはほとんど到達せず、神経細胞にも取り込まれないため、脳内芳香族モノアミンのレベル上昇がみられず、脳機能障害の改善もほとんど期待できないのに対し、セピアプテリンを末梢から投与した場合、その一部が脳内に到達し、神経細胞に容易に取り込まれ、脳内芳香族モノアミンのレベルを上昇させ、脳機能障害にも有効であることを示唆する。
従って、これらの結果は、本発明が、中枢性精神障害、例えば、うつ、過食症,自閉症、意識集中障害、認知障害などに対する予防・改善・治療に有効であることを示唆する。また、ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンの生合成がセロトニンと同様に、脳神経細胞内テトラヒドロビオプテリンのレベルに依存することから、これらの結果は、本発明が、筋緊張、硬直、振戦などの中枢性運動障害に対する予防・改善・治療に有効であることを示唆する。
脳内の神経細胞における芳香族モノアミン代謝系を示す模式図。 実施例1において、PC12細胞の細胞内に取り込まれた総ビオプテリン量の経時的変化を示すグラフ。 実施例1において、RBL2H3細胞の細胞内に取り込まれた総ビオプテリン量の経時的変化を示すグラフ。 実施例2において、テトラヒドロビオプテリン(BH4)、セピアプテリン(SP)、5−ヒドロキシトリプトファン(5HTP)を脳血管壁モデル(RBT24H)の細胞シートに添加した場合における同物質の下側への移動量を表すグラフ。 実施例3において、セピアプテリン(SP)を添加した場合にCTX TNA2細胞内に蓄積したセピアプテリン(SP)、ジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を表すグラフ。 実施例3において、テトラヒドロビオプテリン(BH4)を添加した場合にCTX TNA2細胞内に蓄積したジヒドロビオプテリン(BH2)、テトラヒドロビオプテリン(BH4)の量を表すグラフ。 実施例4のラットの実験において、セピアプテリン投与後の脳内におけるテトラヒドロビオプテリン量の経時的変化を示すグラフ。 実施例4のラットの実験において、セピアプテリン投与後の脳内におけるセロトニン量の経時的変化を示すグラフ。 実施例4のラットの実験において、セピアプテリン投与後の脳内における5−ヒドロキシインドール酢酸量の経時的変化を示すグラフ。 実施例5のマウス(hph−1)の実験において、セピアプテリン投与後の脳内におけるセロトニン量を示すグラフ。 実施例6において、マウス(NZB)の強制水泳テストにおいて、セピアプテリン投与後の「無動」時間を示すグラフ。

Claims (8)

  1. セピアプテリンを少なくとも含有する脳機能障害の予防用又は改善用の薬剤。
  2. 脳神経細胞の細胞内におけるテトラヒドロビオプテリンのレベルを向上させる請求項1記載の薬剤。
  3. 脳内芳香族モノアミンの低下を抑制する請求項1記載の薬剤。
  4. 前記脳機能障害が中枢性精神障害又は中枢性運動障害である請求項1記載の薬剤。
  5. 前記脳機能障害がうつ、過食症、自閉症、意識集中障害、認知障害のいずれかの中枢性精神障害、若しくは筋緊張、硬直、振戦のいずれかの中枢性運動障害である請求項1記載の薬剤。
  6. セピアプテリンを有効成分として含有させた脳機能障害の予防用又は改善用の飲食物。
  7. セピアプテリンを有効量投与する脳機能障害の予防又は改善方法。
  8. 脳機能障害の予防用又は改善用の薬剤の製造のためのセピアプテリンの使用。
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