JPWO2011049082A6 - インテグリンα8β1特異的モノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を取得する。また、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する効果を有すインテグリンα8β1結合性抗体を取得する。
【解決手段】 種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を取得した。また、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を取得した。
【選択図】図7
【解決手段】 種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を取得した。また、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を取得した。
【選択図】図7
Description
本発明は、インテグリンα8β1結合性抗体またはその生産方法に関する。
インテグリンは細胞膜上に発現する一回膜貫通型のヘテロダイマー接着分子で、18種のα鎖と8種のβ鎖が24種のインテグリンを形成することが知られている。リガンド結合により認識したインテグリンは、細胞内に各種シグナルを伝達し、細胞の形態形成や増殖、炎症時の局所への浸潤等、細胞の様々な生物現象を制御している。
また、インテグリンα8鎖はβ1鎖とヘテロダイマーを形成し、インテグリンα8β1となり、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイシンやオステオポンチン等、RGD配列を有する細胞外マトリックスを認識する。インテグリンα8鎖は腎臓のメサンギウム細胞や血管平滑筋細胞または線維芽細胞等で発現しており、中でも腎臓の形態形成に重要なインテグリンであることが、ノックアウトマウスを用いた実験により報告されている(非特許文献1)。また血管障害後のラット動脈再狭窄部や、肺線維症を発症したマウス肺で高発現している(非特許文献2)等、疾患との関連性が報告がされているが、詳細な生理機能に関してはいまだ未解明な点の多いインテグリンである。
一方、近年、抗体医薬品や抗体診断薬の研究開発が急速に進展しており、インテグリンにおいても、そのモノクローナル抗体がインテグリンの関わる疾患の治療薬や診断薬の用途として研究されている。例えば、インテグリンα4β1に結合し機能を阻害するモノクローナル抗体であるnatalizumabは、多発性硬化症(非特許文献3)を適応として上市されており、vedolizumabは炎症性腸疾患に対する治療効果が報告されている。
抗インテグリンα8β1抗体(以下「インテグリンα8β1結合性抗体」と称することもある)としては、Western blotで検出できる抗体と、フローサイトメトリー解析で検出できる抗体が非特許文献4に記載されている。
特許文献1には、インテグリンαVβ3に結合する抗体のFc変異体が記載されている。また特許文献1の実施形態には、そのFc変異体が結合するインテグリンの候補として、インテグリンα8β1が挙げられている。
特許文献2には、特定のアミノ酸配列を含む抗原結合領域を有する組換えヒト免疫グロブリンが記載されている。また特許文献2の特許請求の範囲には、抗原の候補として、インテグリンα8β1が挙げられている。
Muller et al., Cell. 1997 Mar 7;88(5):603-13.
Levine et al., Am J Pathol. 2000 Jun;156(6):1927-35.
Stuve et al., J Neurol. 2008 Dec;255 Suppl 6:58-65.
Sato et al., J Biol Chem. 2009 May 22;284(21):14524-36. Epub 2009 Apr 2.
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
非特許文献1および2には、インテグリンα8β1の発現が疾患や組織の形態形成に関与していることが記載されているが、それを改善するためのインテグリンα8β1の機能阻害剤や、治療薬、診断薬等に関しては記載されていない。従って、新規の作用機序や効果を持った治療薬や診断薬等を得るためには、インテグリンα8β1の機能を阻害できる物質、またはインテグリンα8β1に作用することによって治療、診断に使用できる物質を明らかにする必要があった。
非特許文献1および2には、インテグリンα8β1の発現が疾患や組織の形態形成に関与していることが記載されているが、それを改善するためのインテグリンα8β1の機能阻害剤や、治療薬、診断薬等に関しては記載されていない。従って、新規の作用機序や効果を持った治療薬や診断薬等を得るためには、インテグリンα8β1の機能を阻害できる物質、またはインテグリンα8β1に作用することによって治療、診断に使用できる物質を明らかにする必要があった。
非特許文献3には、インテグリンに結合し機能を阻害する抗体が、疾患に治療効果を奏することが記載されているが、インテグリンα4β1に関してのみで、インテグリンα8β1に関する記載はない。インテグリンは、α鎖またはβ鎖の種類によって機能が異なることが知られている(Hynes RO., Cell. 2002 Sep 20;110(6):673-87.)。従って、新規の作用機序や効果を持った治療薬や診断薬等を得るためには、インテグリンα8β1に結合し機能を阻害する抗体を明らかにする必要があった。
特許文献1の実施形態には、インテグリンαVβ3に結合する抗体のFc変異体が結合するインテグリンの候補として、インテグリンα8β1が挙げられているが、特許文献1にはそれを実証する実験データは記載されていない。また特許文献1の記載内容を鑑みても、インテグリンα8β1に結合する上記Fc変異体を製造することは困難である。
特許文献2の特許請求の範囲には、特定のアミノ酸配列を含む抗原結合領域を有する組換えヒト免疫グロブリンに対する抗原の候補として、インテグリンα8β1が挙げられているが、特許文献2にはそれを実証する実験データは記載されていない。また特許文献2の記載内容を鑑みても、インテグリンα8β1に結合する上記組換えヒト免疫グロブリンを製造することは困難である。
非特許文献4には、インテグリンα8β1に対する抗体が記載されているが、これらの抗体はいずれもマウス抗体として作製していることから、マウスインテグリンα8β1とは反応しないと想定される。治療薬や診断薬等の開発においては、通常、ヒト、マウス、ラットなど複数種類の生物に対して効果を検証するため、それらに交差反応性を有す抗体が必要である。中でもマウスは遺伝的背景が明らかになっている系統が多く、また世代あたりの時間が短いという特性を持ち、さらにはヒトの疾患と類似の疾患を発症しやすいため重要な生物である。従って、新規の作用機序や効果を持った治療薬や診断薬等を得るためには、複数種類の生物に対して交差反応性を有す抗インテグリンα8β1抗体を明らかにする必要があり、特にマウスに交差反応する抗インテグリンα8β1抗体を明らかにする必要があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する効果を有すインテグリンα8β1結合性抗体を提供することを目的とする。また、本発明の別の目的は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を提供することである。また、本発明の他の目的は、新規の特性を有する抗体の生産方法を提供することである。
本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体が提供される。
このインテグリンα8β1結合性抗体は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されている。そのため、このインテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、治療薬や診断薬等、種々の目的に応じてインテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することができる。
また本発明によれば、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体が提供される。
このインテグリンα8β1結合性抗体は、後述する実施例で、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合することが実証されている。そのため、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に、交差反応性を有すインテグリンα8β1結合性抗体が得られる。
また本発明によれば、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号1のアミノ酸配列、重鎖CDR2が配列番号2のアミノ酸配列、重鎖CDR3が配列番号3のアミノ酸配列を含むインテグリンα8β1結合性抗体が提供される。または、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号4のアミノ酸配列、重鎖CDR2が配列番号5のアミノ酸配列、重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列を含むインテグリンα8β1結合性抗体が提供される。または、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号7のアミノ酸配列、重鎖CDR2が配列番号8のアミノ酸配列、重鎖CDR3が配列番号9のアミノ酸配列を含むインテグリンα8β1結合性抗体が提供される。
これらのインテグリンα8β1結合性抗体は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されている。そのため、これらのインテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、治療薬や診断薬等、種々の目的に応じてインテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することができる。または、これらのインテグリンα8β1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合することが実証されている。そのため、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に、交差反応性を有すインテグリンα8β1結合性抗体が得られる。
なお上記の配列番号1、4、および7それぞれにおいて1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されていたとしても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。また上記の配列番号2、3、5、6、8、および9それぞれにおいて1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されていたとしても、当業者であれば当然同様の作用効果が得られることが容易に想定できる。
また本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが提供される。
このポリヌクレオチドは、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含む。そのため、このポリヌクレオチドに基づいて作製した抗体から、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体が得られる。
また、本発明によれば、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドが提供される。
このポリヌクレオチドは、後述する実施例で、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含む。そのため、このポリヌクレオチドに基づいて作製した抗体から、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体が得られる。
また本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤が提供される。
このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体を含む。そのため、このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を用いれば、治療薬や診断薬等、種々の目的に応じてインテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することができる。
また本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を含む、癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、治療薬が提供される。
この治療薬は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体を含む。インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達機構の下流にある、PI3KまたはFAKはその機能をアンタゴニストで阻害すると、[Yaguchi et al., J Natl Cancer Inst. 2006 Apr 19;98(8):545-56.]において、癌のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。また、[Boehle et al., Langenbecks Arch Surg. 2002 Oct;387(5-6):234-9. Epub 2002 Sep 28.]には非小細胞肺癌の、[Tamura et al., Jpn j Clin Immunol. 2007 30(5) 369-374]には関節炎の、特開2007-63205には神経因性疼痛の、特開2003-104909には緑内障のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。そのため、この治療薬によると、インテグリンα8β1からPI3KまたはFAKへのシグナル伝達を阻害することで、癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛の治療効果が得られる。
また本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を含む、肺線維症、肝線維症、腎不全、および内耳疾患からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、診断薬が提供される。
この診断薬は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体を含む。インテグリンα8β1は[Levine et al., Am J Pathol. 2000 Jun;156(6):1927-35.]に肺線維症または肝線維症で高発現していることが記載されている。また、インテグリンα8鎖のノックアウトマウスは、[Muller et al., Cell. 1997 Mar 7;88(5):603-13.]には腎臓の形態形成不全をひき起こすことが、[Littlewood et al., Nat Genet.
2000 Apr;24(4):424-8.]には内耳有毛細胞の欠損をひき起こすことが記載されている。そのため、この診断薬を用いて、さらに当該技術分野で公知の診断手法を利用すれば、腎臓の形態形成不全に起因する腎不全、内耳有毛細胞に起因する内耳疾患、肺線維症、または肝線維症の診断ができる。
2000 Apr;24(4):424-8.]には内耳有毛細胞の欠損をひき起こすことが記載されている。そのため、この診断薬を用いて、さらに当該技術分野で公知の診断手法を利用すれば、腎臓の形態形成不全に起因する腎不全、内耳有毛細胞に起因する内耳疾患、肺線維症、または肝線維症の診断ができる。
また、本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体を含む、癌、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、診断薬が提供される。
この診断薬は、後述する実施例で、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害を奏することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合することが実証されているインテグリンα8β1結合性抗体を含む。ここで、上述のとおり、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達機構の下流にあるPI3KまたはFAKは、その機能をアンタゴニストで阻害すると、癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが文献に記載されている。そのため、この診断薬を用いて、さらに当該技術分野で公知の診断手法を利用すれば、癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛の診断ができる。
また本発明によれば、抗原蛋白質発現細胞を含む抗原、または抗原蛋白質を備える細胞膜を含む抗原でニワトリを免疫する工程を含む、抗体の生産方法が提供される。
この生産方法は、後述する実施例で、従来の生産方法で得られる抗体とは異なる特性を有する抗体を生産可能であることが実証されている。そのためこの生産方法によれば、従来の生産方法で得られる抗体とは異なる特性を有する抗体を得ることが可能になる。
本発明によれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合するインテグリンα8β1結合性抗体、またはインテグリンα8β1結合性抗体を含むインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤が得られる。または、新規の特性を有する抗体の生産方法が得られる。
<発明の経緯>
本願発明者らは、治療薬、診断薬、または研究試薬(材料)の開発のために、インテグリンα8β1の機能解析や、抗インテグリンα8β1抗体の機能性の向上を目指した研究を行っている。インテグリンα8β1は、腎臓の形態形成に関与していること、肺線維症を発症したマウス肺で高発現していることなど、種々の疾患との関連性が報告されている。しかしながら、詳細な生理機能に関しては未解明な点が多い。
本願発明者らは、治療薬、診断薬、または研究試薬(材料)の開発のために、インテグリンα8β1の機能解析や、抗インテグリンα8β1抗体の機能性の向上を目指した研究を行っている。インテグリンα8β1は、腎臓の形態形成に関与していること、肺線維症を発症したマウス肺で高発現していることなど、種々の疾患との関連性が報告されている。しかしながら、詳細な生理機能に関しては未解明な点が多い。
そのような中、本願発明者らは、抗インテグリンα8β1抗体を探索した。抗体作製においては、免疫動物、パニングセレクションなど、種々の検討を行った。
そして、得られた抗体について交差反応性を調査したところ、驚くべきことに、ヒトとマウス両方のインテグリンα8β1に結合していた。また、さらにインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害活性をも有していた。こうして、従来予測し得なかった効果を発揮する抗体を獲得することに成功し、本発明を完成した。
<用語の説明>
本明細書における、各種用語の意味を以下の通り説明する。
本明細書における、各種用語の意味を以下の通り説明する。
(1)インテグリン(Integrin)
インテグリンは、一般的にα鎖とβ鎖からなるヘテロダイマーとして細胞膜表面に存在する受容体であり、おもに細胞外マトリックスの受容体として機能することが報告されている。リガンド結合により細胞質ドメインにFAK、talinなどの分子が結合し、核にシグナルが伝えられる(図1)。サブユニットには18のα鎖と8つのβ鎖があり、計24種類のインテグリンが存在することが知られている(図2)。それぞれのインテグリンはリガンド選択性をもつが、リガンドはオーバーラップしている(図3)。そして、どのサブユニットを除去しても致死的か表現系に変化が現れたため、すべてが生存あるいは健康の維持に欠くことができないものであるといわれている。また、通常細胞は何らかの細胞外マトリックスと接しており、インテグリンを経由したシグナルは恒常的に入ってきているといわれている。細胞周辺のマトリックスの組成が変われば、インテグリンを通じて細胞は変化を認識する。また、増殖因子のシグナルとクロストークし協調的に働くことが知られている。インテグリンのシグナルは細胞の分化、増殖、細胞死などに働く多くの報告がある。
インテグリンは、一般的にα鎖とβ鎖からなるヘテロダイマーとして細胞膜表面に存在する受容体であり、おもに細胞外マトリックスの受容体として機能することが報告されている。リガンド結合により細胞質ドメインにFAK、talinなどの分子が結合し、核にシグナルが伝えられる(図1)。サブユニットには18のα鎖と8つのβ鎖があり、計24種類のインテグリンが存在することが知られている(図2)。それぞれのインテグリンはリガンド選択性をもつが、リガンドはオーバーラップしている(図3)。そして、どのサブユニットを除去しても致死的か表現系に変化が現れたため、すべてが生存あるいは健康の維持に欠くことができないものであるといわれている。また、通常細胞は何らかの細胞外マトリックスと接しており、インテグリンを経由したシグナルは恒常的に入ってきているといわれている。細胞周辺のマトリックスの組成が変われば、インテグリンを通じて細胞は変化を認識する。また、増殖因子のシグナルとクロストークし協調的に働くことが知られている。インテグリンのシグナルは細胞の分化、増殖、細胞死などに働く多くの報告がある。
(2)インテグリンα8β1
インテグリンα8鎖は、β1鎖とヘテロダイマーを形成するインテグリンで、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイシンやオステオポンチン等、RGD配列を有するリガンドに対する特異性が知られている。インテグリンα8鎖は腎臓のメサンギウム細胞や血管平滑筋細胞または線維芽細胞等で発現しており、中でも腎臓の形態形成に重要なインテグリンであることが、ノックアウトマウスを用いた実験により報告されている(Muller et al., Cell. 1997 Mar 7;88(5):603-13.)。また血管障害後のラット動脈再狭窄部や、肺線維症を発症したマウス肺で高発現している(Levine et al., Levine et al., Am J Pathol.
2000 Jun;156(6):1927-35.)等、疾患との関連を示唆する報告が数例あるものの、詳細な生理機能に関してはいまだ未解明な点の多いインテグリンである。
インテグリンα8鎖は、β1鎖とヘテロダイマーを形成するインテグリンで、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイシンやオステオポンチン等、RGD配列を有するリガンドに対する特異性が知られている。インテグリンα8鎖は腎臓のメサンギウム細胞や血管平滑筋細胞または線維芽細胞等で発現しており、中でも腎臓の形態形成に重要なインテグリンであることが、ノックアウトマウスを用いた実験により報告されている(Muller et al., Cell. 1997 Mar 7;88(5):603-13.)。また血管障害後のラット動脈再狭窄部や、肺線維症を発症したマウス肺で高発現している(Levine et al., Levine et al., Am J Pathol.
2000 Jun;156(6):1927-35.)等、疾患との関連を示唆する報告が数例あるものの、詳細な生理機能に関してはいまだ未解明な点の多いインテグリンである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
(1)インテグリンα8β1結合性抗体
本発明の一実施形態はインテグリンα8β1結合性抗体である。上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体を含む。そのため、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等に起因する種々の機能、例えば、PI3K(Phosphoinositide 3-kinase)の活性化(Hynes RO., Cell. 2002 Sep 20;110(6):673-87.、Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.) や、FAK(focal adhesion kinase)の活性化(Richard et al., Cell, Vol. 110, 673-687, September 20, 2002、Shouchun Liu., Journal of Cell Science 113, 3563-3571 (2000)、Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.) などを阻害することができると考えられる。
本発明の一実施形態はインテグリンα8β1結合性抗体である。上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体を含む。そのため、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等に起因する種々の機能、例えば、PI3K(Phosphoinositide 3-kinase)の活性化(Hynes RO., Cell. 2002 Sep 20;110(6):673-87.、Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.) や、FAK(focal adhesion kinase)の活性化(Richard et al., Cell, Vol. 110, 673-687, September 20, 2002、Shouchun Liu., Journal of Cell Science 113, 3563-3571 (2000)、Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.) などを阻害することができると考えられる。
上記インテグリンα8β1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を検出用のプローブとして使用すれば、哺乳動物の組織や細胞等におけるインテグリンα8β1の局在を調査することが可能になる。また、治療薬のような、複数種類の生物に対して効果を検証することが重要な物の成分として好適に使用できる。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体が結合するインテグリンα8β1は、好ましくは、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、およびチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒト由来のインテグリンα8β1である。なぜならば、ヒトの疾患の治療薬や診断薬の開発を行う際に、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、またはチンパンジーが典型的な疾患モデル動物として使用できる哺乳動物であるためである。また、該哺乳動物は、より好ましくはマウス、ラット、モルモット、サル、およびチンパンジーのいずれか1種以上、およびヒトである。なぜならば、マウス、ラット、モルモット、サル、およびチンパンジーは、世界中で研究用のモデル動物として汎用され多くの特性が明らかになっているためである。その中でも、マウスは遺伝的背景が明らかになっている系統が多く、また世代あたりの時間が短いという特性を持ち、さらにはヒトの疾患と類似の疾患を発症しやすいために好ましい。
本明細書において「結合する」とは、物質間の連結を意味する。連結は共有結合または非共有結合のいずれであってもよく、たとえばイオン結合、水素結合、疎水性相互作用、または親水性相互作用が挙げられる。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードするポリヌクレオチド、上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドを含むベクター、または上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドの一部を含むベクターのいずれかを導入された、ヒトや他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)の細胞から生産した組換え蛋白質であってもよい。哺乳動物細胞としては、例えば、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO細胞)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(CHO(dhfr)細胞)、マウスL細胞,マウスAtT-20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、ヒトHEK293細胞などが挙げられる。または、Escherichia属菌、Bacillus属菌、酵母、または昆虫細胞から生産した組換え蛋白質であってもよい。
また上記のベクターは、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどを用いることができる。
また上記のポリヌクレオチドまたはベクターの細胞への導入と抗体の生産は、当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。抗体の細胞への導入方法として例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、アデノウイルスによる方法、レトロウイルスによる方法、またはマイクロインジェクションなどを使用できる(改訂第4版 新 遺伝子工学ハンドブック, 羊土社(2003):152-179.)。抗体の細胞を用いた生産方法としては、例えば、[タンパク質実験ハンドブック,羊土社(2003):128-142.]、[Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-174.]に記載の方法を使用できる。なお、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を産生する細胞から、当該技術分野において公知の方法を用いて精製することができる。抗体の精製方法は、例えば、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、プロテインA、プロテインG、ゲルろ過クロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーなどを用いて達成され得る(タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):27-52.)。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1の野生型または変異型に結合する抗体を含む。ここで、変異型とは、個体間のDNA配列の差異に起因するものを含む。また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は野生型であることが好ましいが、変異型の場合は野生型に対し、好ましくは80%以上の相同性を有し、より好ましくは90%以上の相同性を有し、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。なぜならば、野生型に対してより相同性の高いアミノ酸配列を含んでいれば、後述する実施例において、インテグリンα8β1結合性抗体によってリガンドとの結合が阻害されることが実証されている、インテグリンα8β1に近い機能が得られるためである。
本明細書において「相同性」とは、2つ、もしくは複数間のアミノ酸配列の同一のアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定したものである。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。また、いかなる保存的置換も同一と考えない。また、最適に整列した状態において、オーバーラップするアミノ酸を含めた全アミノ酸残基に対する、同一のアミノ酸数の割合を意味する。整列のための方法、割合の算定方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られており、一般的な配列分析プログラム(例えば、GENETYX、GeneChip Sequence Analysisなど)を使用して測定することができる。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号1のアミノ酸配列、重鎖CDR2が配列番号2のアミノ酸配列、重鎖CDR3が配列番号3のアミノ酸配列をそれぞれ含むインテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体の抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR1は配列番号10、軽鎖CDR2は配列番号11、軽鎖CDR3は配列番号12のアミノ酸配列をそれぞれ含んでいてもよい。
または、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号4、重鎖CDR2が配列番号5、重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列をそれぞれ含むインテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体の抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR1が配列番号13、軽鎖CDR2が配列番号14、軽鎖CDR3が配列番号15のアミノ酸配列をそれぞれ含んでいてもよい。
または、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、抗体重鎖可変領域の重鎖CDR1が配列番号7、重鎖CDR2が配列番号8、重鎖CDR3が配列番号9のアミノ酸配列をそれぞれ含むインテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体の抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR1が配列番号16、軽鎖CDR2が配列番号17、軽鎖CDR3が配列番号18のアミノ酸配列をそれぞれ含んでいてもよい。以上のように特定のCDRを含むインテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害すること、またはヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合することが、後述する実施例で実証されている。
ここで、上記配列番号1、4、7、11、14、および17のアミノ酸配列は、それぞれのアミノ酸配列の1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。上記インテグリンα8β1結合性抗体に含まれるアミノ酸配列がそのような欠失等を受けている場合でも、欠失等を受けていない場合に対して、類似の効果を有すると考えられる。なお、上記「付加」には挿入の概念を含む。
また、上記の配列番号2、3、5、6、8、および9のアミノ酸配列は、それぞれのアミノ酸配列の1〜3個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。上記インテグリンα8β1結合性抗体に含まれるアミノ酸配列がそのような欠失等を受けている場合でも、欠失等を受けていない場合に対して、類似の効果を有すると考えられる。ここで上記「1〜3個」は好ましくは1〜2個であり、より好ましくは1個である。なぜならば、上記「1〜3個」が少ないほど、アミノ酸配列が欠失等を受けていない場合のインテグリンα8β1結合性抗体に、近い特性を有していることになるからである。
また、上記の配列番号10、12、13、15、16、および18のアミノ酸配列は、それぞれのアミノ酸配列の1〜2個の塩基が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列であっても良い。上記インテグリンα8β1結合性抗体に含まれるアミノ酸配列がそのような欠失等を受けている場合でも、欠失等を受けていない場合に対して、類似の効果を有すると考えられる。ここで、上記「1〜2個」は好ましくは1個である。なぜならば、上記「1〜2個」が少ないほど、アミノ酸配列が欠失等を受けていない場合のインテグリンα8β1結合性抗体に、近い特性を有していることになるからである。また、配列番号15のアミノ酸配列において、Xaaで表記するアミノ酸には、任意のアミノ酸を適用可能である。
なお、後述する実施例で実際に得られたNo.3、No.5、およびNo.26のインテグリンα8β1結合性抗体のCDR配列間で、一致しているアミノ酸配列をアミノ酸の一文字表記(大文字)で表すと、重鎖CDR1:xxDMx、重鎖CDR2:IxxxxSxxxYxxAVKG、重鎖CDR3:xxxxYxxxGxxxxxxxID、軽鎖CDR1:SGxxxSxYG、軽鎖CDR2:xxxxRPS、軽鎖CDR3:Gxxxxxxxxxxxとなる。なお「x」は、No.3のアミノ酸配列を基準としたときに不一致または欠失しているアミノ酸配列を表している。本発明の実施形態に係る上記インテグリンα8β1結合性抗体に欠失等がある場合は、上記「x」で表される領域に相当する位置に欠失等が存在していてもよい。
また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、受託番号NITE BP-824、受託番号NITE BP-825、受託番号NITE BP-826、受託番号NITE BP-827、受託番号NITE BP-828、または受託番号NITE BP-829のプラスミドにコードされる抗体であってもよい。また上記インテグリンα8β1結合性抗体は、上記のプラスミドにコードされる抗体の重鎖、VH、重鎖CDR1〜3、軽鎖、VL、もしくは軽鎖CDR1〜3のアミノ酸配列、またはそれらのアミノ酸配列に対して80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含む抗体であってもよい。なおこのとき上記「80%以上」は好ましくは85%以上の相同性を有し、より好ましくは90%以上の相同性を有し、特に95%以上の相同性を有していることが好ましい。なぜならば、相同性が高いほど、上記のプラスミドにコードされる抗体に近い特性を有していることになるからである。
なお、インテグリンα8β1のDNA配列およびアミノ酸配列は公知である。例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI)のデータベースであるGenBank等で参照できる。
本明細書において抗体は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子を指し、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体を含む。また、抗体は様々な形態で存在することができ、例えば、Fv、Fab、F(ab')2、Fab'、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv、dsFv)、CDRを含むペプチド、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)、マウス−キメラ抗体、ニワトリ−キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体などが挙げられる。また、既存の化学合成医薬品原体または医薬品製剤に結合した低分子抗体、もしくは糖鎖改変抗体の形態であってもよい。なお、抗体は、治療薬として使用する際に免疫原性を低減させるために、ヒト由来のアミノ酸配列の割合が多いことが好ましい。つまり、抗体は、好ましくはヒトとのキメラ抗体であり、より好ましくはヒト化抗体であり、最も好ましくはヒト抗体である。また、抗体は、治療薬として使用する際に免疫原性を低減させるために、または安定性を高めるために、所望の機能を有している限り、より低分子であることが好ましい。
本明細書においてポリクローナル抗体は、例えば、抗原に特異的なポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために、哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)または鳥類(ニワトリ等)に、目的の抗原を含む免疫原を投与することによって抗体を生成することが可能である。免疫原の投与は、1つ以上の免疫剤、および所望の場合にはアジュバントの注入を必要とすることもある。アジュバントは、免疫応答を増加させるために使用されることもあり、フロイントアジュバント(完全または不完全)、ミネラルゲル(水酸化アルミニウム等)、界面活性物質(リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール等)、または潜在的に有用なヒトアジュバント(カルメット−ゲラン桿菌(BCG)またはコリネバクテリウムパルバム)を含む。その他、MPL-TDMアジュバント(モノホスホリルリピドA、合成トレハロースジコリノミコレート)を含む。免疫プロトコルは、当該技術分野で公知であり、選択する動物宿主に伴い、免疫応答を誘発する任意の方法によって実施される場合がある[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):86-91.]。
本明細書においてモノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す。すなわち、集団を構成する個々の抗体が、少量存在しうる自然に生じることが可能な突然変異を除いて、同一であるものを含む。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、一つの抗原部位に対応する。さらに、異なるエピトープ(抗原決定基)に対応する異なる抗体を典型的に含む、通常のポリクローナル抗体とは異なり、各モノクローナル抗体は抗原の単一のエピトープに対応する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンによって汚染されていないハイブリドーマ培養から合成される点で有用である。「モノクローナル」という形容は、実質的に均一な抗体集団から得られたという抗体の特徴を示し、抗体を何か特定の方法で生産しなければならないことを意味するものではない。例えば、本明細書におけるモノクローナル抗体は、[Kohler G, Milstein C., Nature. 1975 Aug 7;256(5517):495-497.]に掲載されているようなハイブリドーマ法と同様の方法によって作ることができる。あるいは、本発明で使用されるモノクローナル抗体は、米国特許第4816567号に記載されているような組換え法と同様の方法によって作ることができる。または、本明細書におけるモノクローナル抗体は、[Clackson et al., Nature. 1991 Aug 15;352(6336):624-628.]または[Marks et al., J Mol Biol. 1991 Dec 5;222(3):581-597.]に記載されているような技術と同様の方法を用いてファージ抗体ライブラリから単離してもよい。または、[タンパク質実験ハンドブック, 羊土社(2003):92-96.]に掲載されている一般的な生産方法によって作ることができる。なお、本明細書におけるモノクローナル抗体は、後述する実施例に記載の方法で作製することが好ましい。
なお、Fvは、完全な抗原認識及び結合部位を含む抗体断片である。この領域は、密接な非共有結合による1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この配置において、各可変ドメインの3つのCDRは相互に作用してVH-VL二量体の表面に抗原結合部位を形成する。そして、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。なお、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のFvをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fvを生産することができる。
また、Fabは、IgGを蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、インテグリンα8β1結合性抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを生産することができる。
また、F(ab')2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
また、Fab'は、F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した、抗原結合活性を有する抗体断片である。F(ab')2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のFab'断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、Fab'を製造することができる。
また、scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカーを用いて連結したポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
また、diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、diabodyを製造することができる。
また、dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させた抗体断片の総称である。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法(Reiter et al., Protein Eng. 1994 May;7(5):697-704.)に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。そして、その生産方法には公知の方法をいずれも採用できるが、例えば、本明細書におけるインテグリンα8β1結合性抗体のVHまたはVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターあるいは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物あるいは真核生物へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBOC法(t-ブチルオキシカルボニル法)などの化学合成法によって製造することもできる。
また、キメラ抗体は、非ヒト種由来の抗体の可変領域を、ヒト抗体の定常領域に連結したもので、遺伝子組換え技術によって容易に構築できる。キメラ抗体を生成する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、マウス-ヒトキメラ抗体は、[Roguska et al., Proc
Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.]に記載の方法で作製できる。標的抗原に対するマウスモノクローナル抗体の、マウス軽鎖V領域およびマウス重鎖V領域をコードするDNA断片をクローニングし、これらのマウスV領域をコードするDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってマウス-ヒトキメラ抗体が得られる。マウス-ヒトキメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結する。あるいは、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、ヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結する。ヒト抗体C領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4、及びL鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。
Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.]に記載の方法で作製できる。標的抗原に対するマウスモノクローナル抗体の、マウス軽鎖V領域およびマウス重鎖V領域をコードするDNA断片をクローニングし、これらのマウスV領域をコードするDNAを、ヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってマウス-ヒトキメラ抗体が得られる。マウス-ヒトキメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞の発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結する。あるいは、クローン化されたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、ヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結する。ヒト抗体C領域の断片は、任意のヒト抗体のH鎖C領域及びヒト抗体のL鎖C領域のものとすることができ、例えばヒトH鎖のものについてはCγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4、及びL鎖のものについてはCλ又はCκを各々挙げることができる。
また、ヒト化抗体は、非ヒト種由来の1つ以上の相補性決定領域(CDR)およびヒト免疫グロブリン由来のフレームワーク(FR)領域、さらにヒト免疫グロブリン由来の定常領域を有し、所望の抗原に結合する。抗原結合を改変する、好ましくは、改善するために、ヒトフレームワーク領域のアミノ酸残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基と置換されることが多い。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法(例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するために、CDRとフレームワーク残基の相互作用のモデリングによって、および特定の位置で異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較)によって実施される(Riechmann et al., Nature. 1988 Mar 24;332(6162):323-327.)。抗体は、当該技術分野で既知の種々の手法を使用してヒト化することが可能である(Almagro et al., FRont Biosci. 2008 Jan 1;13:1619-1633.)。例えば、CDRグラフティング(Ozaki et al., Blood. 1999 Jun 1;93(11):3922-3930.、Re-surfacing (Roguska et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Feb 1;91(3):969-973.)、およびFRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan
22.)などが挙げられる。
22.)などが挙げられる。
また、ヒト抗体は、典型的には、抗体を構成する重鎖の可変領域、重鎖の定常領域、軽鎖の可変領域、および軽鎖の定常領域を含む全ての領域がヒトイムノグロブリンをコードする遺伝子に由来する抗体である。ヒトに投与した際に免疫原性が少なく、ヒトの疾患治療に使用する際に好適に使用できる。主な作成方法としてはヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法、ファージディスプレイ法などがある。ヒト抗体作製用トランスジェニックマウス法は、内因性Igをノックアウトしたマウスに機能的なヒトのIg遺伝子を導入すれば、マウス抗体の代わりに多様な抗原結合能を持つヒト抗体が産生される。さらにこのマウスを免疫すればヒトモノクローナル抗体を従来のハイブリドーマ法で得ることが可能である。例えば、[Lonberg et al., Int Rev Immunol. 1995;13(1):65-93.]に記載の方法で作成できる。ファージディスプレイ法は大腸菌ウイルスの一つであるM13やT7などの繊維状ファージのコート蛋白質(g3pやg10pなど)のN末端側にファージの感染性を失わないよう外来遺伝子を融合蛋白質として発現させるシステムである。例えば、[Vaughan et al., Nat Biotechnol. 1996 Mar;14(3):309-314.]に記載の方法で作成できる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体において1もしくは数個のアミノ酸が別のアミノ酸に置換している場合には、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に置換していることが好ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、および、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。これらの各グループ内のアミノ酸同士の置換は保存的アミノ酸の置換と総称される。あるアミノ酸配列に対する1もしくは数個のアミノ酸残基の欠失、付加、または他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するポリペプチドがその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark et al., Proc
Natl Acad Sci U S A. 1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.)。
Natl Acad Sci U S A. 1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al., Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun 29;224(4656):1431-1433.)。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、既知の選択または突然変異誘発法を使用し、親和成熟させてもよい。好ましい親和成熟抗体は、成熟抗体が出発抗体のものよりも、5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20または30倍の親和性を有する。例えば、抗体ファージライブラリを用いたバイオパニングを使用できる。この方法の典型的な操作は、固定化した標的蛋白質に抗体ファージライブラリを反応させ、結合しなかったファージ抗体を洗浄により除去した後に、結合したファージ抗体を溶出し大腸菌に感染させて増殖させる、という操作を数回行うことで標的蛋白質に特異的なファージ抗体を取得することである(改訂版 抗体実験マニュアル, 羊土社(2008):211-221.)。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体のクラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgE、IgX、IgY、IgW、IgNARを含む。なお、該クラスは、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEであることが好ましい。なぜならば、IgM、IgD、IgG、IgA、IgEはヒト由来の抗体が有するクラスであるため、抗体を治療薬として使用した際に、免疫原性が低減される可能性が高いと考えられるためである。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体の重鎖CDR1、重鎖CDR2、または重鎖CDR3は、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、サル、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスターなど)または鳥類(ニワトリ等)由来の抗体であってもよいが、特にヒトまたはマウスであることが好ましい。なぜならば、ヒトであればヒトに投与した際に免疫原性を低減することができ、マウスであれば抗体作成において最も汎用されているために情報が蓄積されており、抗体の扱いがより容易になるためである。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、上記インテグリンα8β1結合性抗体の重鎖CDR領域をコードするDNAと、公知のヒトまたはヒト以外の生物由来の抗体の、重鎖CDR領域を除く領域をコードするDNAとを、当該技術分野で公知の方法に従って、ベクターに連結後、発現させることによって得ることができる。なお、このとき、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法(例えば、抗体のアミノ酸残基をランダムに変異させ、反応性の高いものをスクリーニングする方法、またはファージディスプレイ法など)を用いて、該抗体の重鎖CDR領域を除く領域を最適化することが好ましい。特に、該抗体の標的抗原への作用効率を上げることができるため、当該分野で公知の方法、例えば、FRシャッフル(Damschroder et al., Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049-3060. Epub 2007 Jan 22.)、またはバーニヤゾーンのアミノ酸残基および/またはパッケージング残基を置換する方法(特開2006-241026、またはFoote et al., J Mol Biol. 1992 Mar 20;224(2):487-499.)を用いて、FR領域を最適化することが好ましい。
本発明の他の実施形態は抗体の生産方法である。上記生産方法は、抗原蛋白質発現細胞を含む抗原、または抗原蛋白質を備える細胞膜を含む抗原でニワトリを免疫する工程を含む、抗体の生産方法を含む。この生産方法によれば、抗原蛋白質の短いペプチド断片等を抗原として用いた場合とは、異なる抗原部位を認識する抗体を生産できる。また、生産された抗原蛋白質に結合する抗体は、抗原蛋白質の関連する種々の疾患の治療薬や診断薬等に使用することが可能である。
上記生産方法は、抗原蛋白質発現細胞、または抗原蛋白質を備える細胞膜に対して、ニワトリ由来の抗体ライブラリをを反応させ、結合した抗体を選抜する工程をさらに含む生産方法であってもよい。この場合、より反応特異性の高い抗体を生産できる。
上記生産方法において、上記抗原蛋白質は膜蛋白質であってもよい。この場合、抗膜蛋白質抗体を生産することができる。また上記生産方法において、上記抗原蛋白質はダイマーを形成する膜蛋白質であってもよい。この場合、ダイマーを形成する膜蛋白質に結合する抗体を生産することができる。ここで、ダイマーはヘテロダイマーまたはホモダイマーを含む。
また上記生産方法において、上記抗原蛋白質はインテグリンα8鎖またはインテグリンα8β1であり、上記抗体はインテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、後述する実施例で実証されているように、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体を生産することができる。または、ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を生産することができる。またこの場合、後述する実施例で実証されているように、組換え可溶性インテグリンα8β1を抗原として用いた場合とは、異なる部分を認識するインテグリンα8β1結合性抗体を生産することが可能になる。なお、組換え可溶性インテグリンとは、例えば、インテグリンα8鎖とインテグリンβ1鎖と抗体のFc領域との組換え融合蛋白質を含む。
なお、従来治療薬等に用いられる抗体の生産方法は、ヒトと分類学上近縁なマウス等に免疫する生産方法が主流となっている。一方で、上記生産方法は、分類学上遠縁なニワトリに免疫する生産方法であり、従来主流となっている生産方法とは異なる特徴を有している。そして、上記生産方法を用いた場合には、マウス等の哺乳類から作製する抗体とは、異なる構造を有する抗体を生産できる。
(2)インテグリンα8β1結合性抗体の作用効果
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤である。インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することは、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等に起因する種々の機能、例えば、PI3Kの活性化(Hynes RO., Cell. 2002 Sep 20;110(6):673-87.、Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.) や、FAKの活性化(Richard et
al., Cell, Vol. 110, 673-687, September 20, 2002、Shouchun Liu., Journal of Cell Science 113, 3563-3571 (2000)、Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.) などを阻害することができると考えられる。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤である。インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することは、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等に起因する種々の機能、例えば、PI3Kの活性化(Hynes RO., Cell. 2002 Sep 20;110(6):673-87.、Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.) や、FAKの活性化(Richard et
al., Cell, Vol. 110, 673-687, September 20, 2002、Shouchun Liu., Journal of Cell Science 113, 3563-3571 (2000)、Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.) などを阻害することができると考えられる。
ここで、PI3Kの機能阻害は、癌のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが[Yaguchi et al., J Natl Cancer Inst. 2006 Apr 19;98(8):545-56.]に記載されている。また、[Boehle et al., Langenbecks Arch Surg. 2002 Oct;387(5-6):234-9. Epub 2002 Sep 28.]には非小細胞肺癌の、[Tamura et al., Jpn j Clin Immunol. 2007 30(5) 369-374]には関節炎の、特開2007-63205には神経因性疼痛の、特開2003-104909には緑内障のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。さらに、FAKの機能阻害は、[Hatakeyama et al., Journal of Clinical Oncology. Vol 24, No 18S (June 20 Supplement), 2006: 13162]にはすい臓癌の、[Liu et al., Mol Cancer Ther. 2007 Apr;6(4):1357-67.]にはグリオーマのモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。
即ち、上記インテグリンα8β1結合性抗体、または上記インテグリンα8β1結合性抗体を含むインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤は、PI3KまたはFAKのようなインテグリンα8β1と連関するシグナル伝達分子の機能阻害を通して、上記疾患(癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛)の治療薬、診断薬として好適に使用できる。
また、本明細書においてインテグリンα8β1のリガンドは、インテグリンα8β1と相互作用する物質であれば限定しないが、フィブロネクチン、ビトロネクチン、テネイシン、またはオステオポンチンが好ましい。これらはインテグリンα8β1への相互作用を奏すことが良く知られており、続くインテグリンα8β1を介した細胞内シグナル伝達機構も比較的解明されているためである。なお、リガンドの中でもオステオポンチンが好ましい。なぜならば、オステオポンチンは多種の生理学的作用に重要な役割を担うため、治療薬等の開発において重要な分子だからである。例えば、細胞接着、細胞遊走、腫瘍形成、免疫応答等の機能に関与しており、in vivoで阻害すると関節炎の治療効果が見られること(特許4064441号公報)などが報告されている。
また、結合阻害効果の測定には、ELISA法、FACS分析、BIACOREを用いた方法など、当該技術分野で公知の方法をいずれも使用できる。インテグリンα8β1とリガンドが共存するときの結合を、上記インテグリンα8β1結合性抗体で競合阻害した結果を測定しても良く、またはインテグリンα8β1に上記インテグリンα8β1結合性抗体が結合する様態を、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害の指標として測定しても良い。なお、結合阻害効果の測定は、後述する実施例に記載の方法で測定することが好ましい。
ここで、FACS分析とは、典型的にはフローセル内を流れる細胞にレーザー光をあて、細胞からの前方散乱光、側方散乱光からパラメータを測定し、細胞の特性を決める解析手法である。一つの細胞に結合する蛍光標識抗体は、その細胞の表面抗原の量と比例することから、蛍光強度と表面抗原の量が比例する。
ここで、インテグリンα8β1に上記インテグリンα8β1結合性抗体が結合する様態は、解離定数(KD)、結合定数(Ka)、結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)で表すことができる。なお、解離定数(KD)、結合定数(Ka)は反応が平衡に達したことを前提とする静的なパラメータであるが、実践においては反応時間が限定されるため、ほとんどの場合反応は平衡に達しない。したがって、実践における抗原抗体反応は動的なパラメータである結合速度定数(ka)、または解離速度定数(kd)によって評価することが好ましい。測定には、ELISA法(Enzyme Linked Immuno-Sorbent Assay)またはBIACOREシステムを使用できる。ELISA法は比較的低コストで導入でき、最も典型的な手法である。ELISA法は、測定したい物質と特異的に反応する抗体もしくは既知量の抗原を固相化したマイクロプレートに、測定したい物質と酵素標識抗原とを同時に加えて反応させ、プレートに結合した酵素標識物の酵素活性を比色法や蛍光法により計測して、特異的相互作用を測定する方法である。抗体の高い結合能と分子認識能を利用するため、HPLC法等と比較して非常に高感度な検出が可能である。
BIACOREシステムは、動的なパラメータを測定できる優れた測定方法で、センサー表面に生体分子を固定化して、相互作用の相手となる分子を添加することでセンサー表面における特異的相互作用をリアルタイムに測定する。分子標識の必要なしに、特異的相互作用について結合反応から平衡状態および解離反応までをリアルタイムに測定することが可能である。測定操作は、リガンドをセンサー表面に固定化した後、マイクロ流路系を介して反応物質を含む試料溶液を添加することにより、センサー表面でおこる特異的相互作用を微細な質量変化として測定する。その測定原理に表面プラズモン共鳴(Surface plasmonresonance、SPR)とよばれる光学現象を採用することで信頼性のある測定が行える。直接得られた反応速度をもとに、結合速度定数(ka)および解離速度定数(kd)を算定でき詳細な解析が可能である[Jonsson et al., Biotechniques. 1991 Nov;11(5):620-7.、Fivash et
al., Curr Opin Biotechnol. 1998 Feb;9(1):97-101.、生命科学のための機器分析実験ハンドブック, 羊土社(2007):243-248.]。
al., Curr Opin Biotechnol. 1998 Feb;9(1):97-101.、生命科学のための機器分析実験ハンドブック, 羊土社(2007):243-248.]。
なお、インテグリンα8β1結合性抗体による、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害強度は、例えば以下の手順で評価できる。まず、インテグリンα8β1結合性抗体とインテグリンα8β1発現細胞を反応させる。次に、反応後のインテグリンα8β1発現細胞とオステオポンチンとを反応させる。最後に、オステオポンチンに結合したインテグリンα8β1発現細胞数を570 nmの吸光度を測定するという手順で評価できる。このとき、ネガティブコントロール実験(例えば、抗体非処理の場合)で得られる吸光度を、結合阻害強度が0%であることを表す基準値とすることができる。また、インテグリンα8β1発現細胞に代えてインテグリンα8β1非発現細胞を用いたときの吸光度を、結合阻害強度が100%であることを表す基準値とすることができる。
このとき、上記インテグリンα8β1結合性抗体の有する結合阻害強度は特に限定されないが、例えば5、25、50、75、95、または100%である。この結合阻害強度は、ここで例示したいずれか1つの値以上、またはいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
上記インテグリンα8β1結合性抗体のインテグリンα8β1への結合活性は、FACS分析によって、被検抗体と反応した細胞数の割合を陽性率として算出することで評価できる。この陽性率は特に限定されないが、例えば5、25、50、75、95、または100%である。この陽性率は、ここで例示したいずれか1つの値以上、またはいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
本明細書において治療とは、被験者の疾患または疾患に伴う1つ以上の症状の、予防または症状改善効果を発揮しうることをいう。
線維症とは、組織が何らかの原因で損傷し、線維化する症状のことである。例えば、肺線維症、肝臓線維症、骨髄線維症、嚢胞性線維症、乳腺線維症などが挙げられ、その他に世界保健機構(World Health Organization)が発表している[ICD10 国際疾病分類第10版]で線維症関連に分類されている疾患を含む。
腎不全とは、腎臓の機能が低下して正常に働くなった症状のことである。一般的に急性腎不全と慢性腎不全に大別される。慢性腎不全は、慢性的に腎機能の障害が進行していく疾患である。慢性糸球体腎炎、糖尿病や、糸球体硬化、間質線維化の進行に起因するものを含む。急性腎不全には腎前性急性腎不全、腎性急性腎不全、腎後性急性腎不全などを含む。また、アレルギー性、毒性のもの、糸球体障害、尿細管間質障害によるものを含む。
内耳疾患は、内耳を構成する器官、組織、神経等の障害を原因とする疾患を含む。例えば、内耳炎、メニエール病、アスピリンなどの薬物によるもの、難聴やストマイ難聴などがあり、その他に[ICD10 国際疾病分類第10版]で内耳疾患関連に分類されている疾患を含む。
関節炎とは、関節の炎症により痛み、腫れ、熱などの諸症状をもつ病気である。例えば、痛風関節炎、リウマチ関節炎、乾癬性関節炎、離断性骨軟骨炎、膝内症、特発性骨壊死症、変形関節炎、化膿性関節炎、結核性関節炎、関節水腫などを含み、その他に [ICD10 国際疾病分類第10版]で関節炎関連に分類されている疾患を含む。
癌とは、正常な細胞が突然変異を起こして増殖を続けることで起こる疾患である。悪性の癌細胞は全身のあらゆる臓器や組織から生じ、癌細胞が増殖すると、癌組織のかたまりとなって周囲の正常な組織に侵入し破壊する。癌は、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿管癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、メラノーマ、または脳腫瘍などを含む。
緑内障とは眼圧上昇によって、視野が欠ける眼病である。例えば、原発緑内障、先天緑内障、続発緑内障などを含み、その他に[ICD10 国際疾病分類第10版]で緑内障関連に分類されている疾患を含む。
神経因性疼痛とは、神経系の一次的な損傷や機能異常が原因となる、またはこれによってもたらされる疼痛である。例えば、帯状疱疹後神経痛、脳梗塞後痛、腰痛、術後慢性疼などを含む。また、痛神経因性疼痛機序、侵害性疼痛機序に基づくものが含まれる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体、または上記インテグリンα8β1結合性抗体を含むインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を、治療薬または予防薬として使用する場合、単独で投与することも可能ではあるが、通常は薬理学的に許容される1つあるいはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られる任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが好ましい。または、上記インテグリンα8β1結合性抗体を直接使用せずに、上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードするポリヌクレオチド、またはベクターを投与することも可能である。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体を生体に投与する際の投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、または口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内、眼内および静脈内などの非経口投与をあげることができ、全身または局部的に投与することができる。投与経路は、好ましくは静脈内投与をあげることができる。上記インテグリンα8β1結合性抗体が、経口投与後に患部で所望の機能を発揮できる場合には、経口投与が好ましい。
その他の投与形態としては、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、テープ剤などがあげられる。経口投与に適当な製剤としては、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などがあげられる。乳剤およびシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造できる。さらに、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、マンニトールなどの賦形剤、デンプン、アルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造できる。
非経口投与に適当な製剤としては、注射剤、座剤、噴霧剤などがあげられる。注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。座剤はカカオ脂、水素化脂肪またはカルボン酸などの担体を用いて調製される。また、噴霧剤はこのインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤、ないしは受容者の口腔および気道粘膜を刺激せず、かつこのインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を微細な粒子として分散させ吸収を容易にさせる担体などを用いて調製される。この担体としては具体的には乳糖、グリセリンなどが例示できる。このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤と、用いる担体の性質により、エアロゾル、ドライパウダーなどの製剤化が可能である。また、これらの非経口剤においても経口剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
また、上記治療薬または予防薬は、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
また、投与方法は被験者の年齢、症状、対象臓器等などにより適宜選択することができる。上記インテグリンα8β1結合性抗体、もしくは上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物の投与量としては、例えば、一回につき体重1kgあたり0.0001mgから1000mgの範囲で選ぶことが可能である。あるいは、例えば、被験者あたり0.001〜100000mg/bodyの範囲で投与量を選ぶことができるが、これらの数値に必ずしも制限されるものではない。体重1kgあたりの投与量は、例えば0.0001、0.01、1、50、100、250、500、または1000mgである。この投与量は、ここで例示したいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与量は目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、体重などにより異なる。投与量、投与方法は、被験者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。また、適切な化学療法薬と併用で投与してもよい。
また、治療対象が脳内にあり、治療薬が血液脳関門(blood-brain barrier:BBB)を通過する必要があるときには、BBBを通過する製剤設計、投与経路、または投与方法を採用することが好ましい。もしくは上記インテグリンα8β1結合性抗体をBBBを通過する形態に改変していても良い。それらの方法は、当該技術分野において公知の方法を用いて可能であり、例えば、BBBの間隙を広げる方法、BBBに発現する膜蛋白質を利用する方法、CED法(Convection-enhanced Delivery)などが挙げられる(Bidros et al., Neurotherapeutics. 2009 Jul;6(3):539-46. Review.)。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体、または上記インテグリンα8β1結合性抗体を含むインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を含有する、癌、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の診断薬、またはインテグリンα8β1に連関する種々の疾患の診断薬である。この診断薬は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含むため、インテグリンα8β1に連関する種々の疾患の診断に好適に使用できる。
ここで、診断薬の使用方法は特に限定しないが、例えば、上記いずれかの疾患における細胞、血液、血清、体液、または病理切片等と、標準的な細胞等において、インテグリンα8β1への抗体の結合の様態を検査、比較することで上記疾患の診断が可能になると考えられる。例えば、疾患がインテグリンα8β1の高発現に起因しているときには、抗体の結合量が増加し、リガンドの高発現に起因しているときには、リガンドと拮抗することで抗体の結合量が減少すると考えられる。そのため、この診断薬によると、上記疾患の診断効果が得られる。
ここで、診断薬として使用する際の検出方法は特に限定されないが、例えば、ラジオイムノアッセイ、エンザイムイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、発光イムノアッセイ、免疫沈降法、免疫比濁法などを挙げることができる。好ましくはエンザイムイムノアッセイであり、特に好ましいものはELISA(sandwich ELISA等)である。ELISAなどの上述した免疫学的方法は当業者に公知の方法により行うことが可能である。また、診断薬にはPET(Positron Emission Tomography)のための試薬、実験に使用する試薬または材料も含む。
上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いた典型的な検出方法としては、例えば、上記インテグリンα8β1結合性抗体を支持体に固定し、ここに被検試料を加え、インキュベートを行い上記インテグリンα8β1結合性抗体と被検試料中のインテグリンα8β1受容体を結合させた後に洗浄して、上記インテグリンα8β1結合性抗体を介して支持体に結合したインテグリンα8β1受容体を検出することにより、被検試料中のインテグリンα8β1受容体の検出を行う方法を挙げることができる。
上記インテグリンα8β1結合性抗体を介して支持体に結合したインテグリンα8β1受容体の検出の好ましい態様として、標識物質で標識された上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いる方法を挙げることができる。例えば、支持体に固定された上記インテグリンα8β1結合性抗体に被検試料を接触させ、洗浄後に、標識物質で標識された上記インテグリンα8β1結合性抗体を接触させ、さらに標識抗体を用いて標識物質を検出し、インテグリンα8β1受容体の指標とする。
上記インテグリンα8β1結合性抗体の標識は通常知られている方法により行うことが可能である。標識物質としては、蛍光色素、酵素、補酵素、化学発光物質、放射性物質などの当業者に公知の標識物質を用いることが可能であり、具体的な例としては、ラジオアイソトープ(32P、14C、125I、3H、131Iなど)、フルオレセイン、ローダミン、ダンシルクロリド、ウンベリフェロン、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、ホースラディッシュパーオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ビオチンなどを挙げることができる。標識物質としてビオチンを用いる場合には、ビオチン標識抗体を添加後に、アルカリホスファターゼなどの酵素を結合させたアビジンをさらに添加することが好ましい。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体、または上記インテグリンα8β1結合性抗体を含むインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を含有する試薬である。ここで、試薬には、基礎研究のための材料等を含み、例えばELISA、ウェスタンブロッティング、またはFACS分析等に使用できる。この試薬の使用用途は特に限定しないが、例えば、生体組織中のインテグリンα8βの発現量を計測するために使用できる。また、試薬として用いる際の使用方法もしくは使用例を記載した指示書、その指示書の所在を記載した文面、または種々のバッファーとともに使用しても良い。
本明細書において「交差反応性」とは、ある抗体が、類似構造を有している2種以上の抗原に対して、いずれにも有意な結合親和性を持つ性質を総称する。ここで、類似構造を有する抗原とは、相同性が高い蛋白質を含む。
以下、上記実施形態1および2に係る作用効果についてさらに説明する。
本発明の一実施形態は、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体である。このインテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害できる。また、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。さらに、インテグリンα8β1が関連する疾患の治療薬または診断薬が得られる。
なお、上記リガンドは、オステオポンチン、フィブロネクチン、テネイシン、またはビトロネクチンであってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いて、上記インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害すれば、インテグリンα8β1と、オステオポンチン等の結合が関連するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。また、インテグリンα8β1と、オステオポンチン等の結合が関連する疾患の治療薬または診断薬が得られる。
また、上記リガンドはオステオポンチンであってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いて、上記インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害すれば、治療薬等の開発において特に重要なオステオポンチンと、インテグリンα8β1の結合が関連するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。また、インテグリンα8β1およびオステオポンチンの結合が関連する疾患の治療薬または診断薬が得られる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1にも結合する、インテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、哺乳動物においてインテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。また、インテグリンα8β1が関連する、哺乳動物の疾患の治療薬または診断薬が得られる。また、治療薬のような、複数種類の生物に対して効果を検証することが重要な物の成分として好適に使用できる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む治療薬または診断薬を、ヒトおよびマウスに対して使用できる。また、ヒトヘの応用のための基礎情報を取得するために、モデルマウスを使用できる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8鎖結合性抗体であってもよい。インテグリンのα8鎖はβ1鎖のみとヘテロダイマーを形成するため、上記のようにインテグリンα8鎖結合性抗体であればインテグリンα8β1と結合できる。そして、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害することが可能である。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1を高い特異性で認識するため、効率的にインテグリンα8β1に結合できる。また、効率的にインテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害できる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、ニワトリ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびヒト抗体からなる群から選ばれる1種以上のインテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、ヒト化されているアミノ酸配列を含むため、治療薬として使用した場合においてヒトへの免疫原性を低減させることができる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1の野生型または変異型に結合してもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、野生型とアミノ酸配列の異なるインテグリンα8β1にも結合できる。また、野生型とアミノ酸配列の異なるインテグリンα8β1、およびそのリガンドの結合を阻害できる。
また、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、抗体断片であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、抗体が抗体全長より小さいため生体に投与した場合の免疫原性を低減できる、生体に投与した場合の安定性が上昇する、または抗体の生産効率が上昇する等の効果が得られる。またこの抗体断片は、上記インテグリンα8β1結合性抗体の機能的な部分を含んでいる。例えば、抗体断片は重鎖CDR1〜3または軽鎖CDR1〜3を含んでいてもよい。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチドである。この場合、上記ポリヌクレオチドを用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記インテグリンα8β1結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、上記ポリヌクレオチドまたはその一部を含む、ベクターである。この場合、上記ベクターを用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記インテグリンα8β1結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤である。このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を用いれば、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。また、インテグリンα8β1が関連する疾患の治療薬または診断薬が得られる。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、腫瘍、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、治療薬である。この治療薬を用いれば、上記疾患の治療効果が得られる。
また、この治療薬は哺乳動物の上記疾患の治療薬であってもよい。この場合、上記治療薬を用いれば、哺乳動物において上記疾患の治療効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、肺線維症、肝線維症、腎不全、内耳疾患、腫瘍、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、診断薬である。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、上記疾患の診断効果が得られる。
また、この診断薬は、哺乳動物の上記疾患の診断薬であってもよい。この場合、上記診断薬を用いれば、哺乳動物において上記疾患の診断効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む、試薬である。この場合、上記試薬を用いれば、インテグリンα8β1の関連するELISA等の実験への利用、または哺乳動物の組織や細胞等におけるインテグリンα8β1の局在調査等ができる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体である。このインテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、哺乳動物の組織または細胞等のインテグリンα8β1の局在を調べることが可能となる。また、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む治療薬または診断薬として用いた場合、種が異なる複数種類の哺乳動物に対して使用できる。
また、このインテグリンα8β1結合性抗体は、ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、ヒトおよびマウスの疾患関連組織または細胞等のインテグリンα8β1の局在を調べることが可能となる。また、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む治療薬または診断薬として用いた場合、ヒトおよびマウスに対して使用できる。また、ヒトヘの応用のための基礎情報を取得するために、モデルマウスを使用できる。
また、このインテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8鎖結合性抗体であってもよい。インテグリンのα8鎖はβ1鎖のみとヘテロダイマーを形成するため、上記のようにインテグリンα8鎖結合性抗体であればインテグリンα8β1と結合できる。そのため、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、哺乳動物の組織または細胞等のインテグリンα8鎖およびインテグリンα8β1の局在を調べることが可能となる。また、上記インテグリンα8β1結合性抗体を含む治療薬または診断薬として用いた場合、インテグリンα8β1を標的として使用できる。
また、このインテグリンα8β1結合性抗体は、モノクローナル抗体であってもよい。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体は、インテグリンα8β1を高い特異性で認識するため、効率的にインテグリンα8β1に結合できる。また、このインテグリンα8β1結合性抗体をインテグリンα8β1およびリガンドの結合の結合を阻害するために使用した場合、阻害効率が上昇する。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチドである。この場合、このポリヌクレオチドを用いれば、当該技術分野で公知の方法によって、上記インテグリンα8β1結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、またはその一部を含む、ベクターである。この場合、上記ベクターを用いれば、当該技術分野で公知の方法の方法によって、上記インテグリンα8β1結合性抗体を作製できる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤である。このインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を用いれば、インテグリンα8β1の関与するシグナル伝達等の種々の機能を阻害できる。また、インテグリンα8β1が関連する疾患の治療薬または診断薬が得られる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、腫瘍、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、治療薬である。この治療薬を用いれば、上記疾患の治療効果が得られる。
また、この治療薬は哺乳動物の上記疾患の治療薬であってもよい。この場合、上記治療薬を用いれば、哺乳動物において上記疾患の治療効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、肺線維症、肝線維症、腎不全、内耳疾患、腫瘍、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、診断薬である。この場合、上記インテグリンα8β1結合性抗体を用いれば、上記疾患の診断効果が得られる。
また、この診断薬は、哺乳動物の上記疾患の診断薬であってもよい。この場合、上記診断薬を用いれば、哺乳動物において上記疾患の診断効果が得られる。
本発明の他の実施形態は、種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、試薬である。この場合、上記試薬を用いれば、インテグリンα8β1の関連するELISA等の実験への利用、または哺乳動物の組織や細胞等におけるインテグリンα8β1の局在調査等ができる。
本発明の他の実施形態は、インテグリンα8鎖を含む抗原でニワトリを免疫する工程を含む、インテグリンα8β1結合性抗体の生産方法である。この生産方法を用いれば、インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害するインテグリンα8β1結合性抗体、または種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体が得られる。または、インテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤が得られる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記の組み合わせや、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1:マウス インテグリンα8鎖発現ニワトリ細胞株の作製とニワトリへの免疫>
マウス インテグリンα8鎖のcDNAをほ乳動物発現ベクターにクローニングした。次に、発現ベクターをニワトリリンパ芽球様細胞株にエレクトロポレーション法でトランスフェクトした後、抗生剤を添加して発現細胞の選択をおこなった。得られたマウス インテグリン α8鎖発現細胞株をニワトリに過免疫した。抗体価の測定はフローサイトメトリ(FACS)解析にて実施した。FACS解析に関してはFACSCalibur(BD、USA)の一般的なプロトコルに従った。なお、インテグリンのα8鎖はβ1鎖とヘテロダイマーを形成することが知られており(Luo et al., Annu Rev Immunol. 2007;25:619-47.)、上記インテグリン α8鎖発現細胞株においても、同様にα8鎖とβ1鎖とのヘテロダイマーが形成されていると考えられる。従って、マウス インテグリン α8鎖発現細胞株をニワトリに過免疫して得られる抗体はインテグリンα8β1を認識する抗体であり、抗インテグリンα8β1抗体として使用できる。
マウス インテグリンα8鎖のcDNAをほ乳動物発現ベクターにクローニングした。次に、発現ベクターをニワトリリンパ芽球様細胞株にエレクトロポレーション法でトランスフェクトした後、抗生剤を添加して発現細胞の選択をおこなった。得られたマウス インテグリン α8鎖発現細胞株をニワトリに過免疫した。抗体価の測定はフローサイトメトリ(FACS)解析にて実施した。FACS解析に関してはFACSCalibur(BD、USA)の一般的なプロトコルに従った。なお、インテグリンのα8鎖はβ1鎖とヘテロダイマーを形成することが知られており(Luo et al., Annu Rev Immunol. 2007;25:619-47.)、上記インテグリン α8鎖発現細胞株においても、同様にα8鎖とβ1鎖とのヘテロダイマーが形成されていると考えられる。従って、マウス インテグリン α8鎖発現細胞株をニワトリに過免疫して得られる抗体はインテグリンα8β1を認識する抗体であり、抗インテグリンα8β1抗体として使用できる。
<実施例2:免疫ニワトリ脾臓からのscFv ファージ抗体ライブラリーの作製>
免疫をおこなったニワトリから脾臓を摘出した後、リンパ球を分離した。得られたリンパ球からRNAを抽出してcDNAの合成を行いscFv ファージ抗体ライブラリーを作製した。 ファージ抗体ライブラリーの作製に関しては、[nakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-14]に記載の一般的な手法に従った。
免疫をおこなったニワトリから脾臓を摘出した後、リンパ球を分離した。得られたリンパ球からRNAを抽出してcDNAの合成を行いscFv ファージ抗体ライブラリーを作製した。 ファージ抗体ライブラリーの作製に関しては、[nakamura et al., J Vet Med Sci. 2004 Jul;66(7):807-14]に記載の一般的な手法に従った。
<実施例3:パニング選択>
scFv ファージライブラリーをマウス インテグリンα8鎖非発現細胞株に添加して非特異ファージの吸収操作をおこなった後、マウス インテグリンα8鎖発現細胞株と反応させた。有機溶媒で洗浄後、マウス インテグリンα8鎖発現細胞株に特異的に結合したファージを回収し、大腸菌に感染させた。4回パニングをおこなった後、ライブラリーの反応性をマウス インテグリンα8鎖発現細胞株を用いたFACS解析で確認した。3rd ライブラリーの反応性が高かったため、3rd ライブラリーからファージのクローニングを行い、陽性クローンを選択した後、配列を決定した。cell panningに関しては、[Giordano et al., Nat Med. 2001 Nov;7(11):1249-53.]に記載の方法に従った。
scFv ファージライブラリーをマウス インテグリンα8鎖非発現細胞株に添加して非特異ファージの吸収操作をおこなった後、マウス インテグリンα8鎖発現細胞株と反応させた。有機溶媒で洗浄後、マウス インテグリンα8鎖発現細胞株に特異的に結合したファージを回収し、大腸菌に感染させた。4回パニングをおこなった後、ライブラリーの反応性をマウス インテグリンα8鎖発現細胞株を用いたFACS解析で確認した。3rd ライブラリーの反応性が高かったため、3rd ライブラリーからファージのクローニングを行い、陽性クローンを選択した後、配列を決定した。cell panningに関しては、[Giordano et al., Nat Med. 2001 Nov;7(11):1249-53.]に記載の方法に従った。
<実施例4:ヒトインテグリンα8鎖交差クローンの選択>
ヒトインテグリンα8鎖にも交差反応する抗体を取得するため、ヒト インテグリンα8鎖発現ニワトリリンパ芽球様細胞株を作製した。FACS解析によりヒトインテグリンα8鎖発現細胞株にも交差反応するクローンの選択をおこなった。
ヒトインテグリンα8鎖にも交差反応する抗体を取得するため、ヒト インテグリンα8鎖発現ニワトリリンパ芽球様細胞株を作製した。FACS解析によりヒトインテグリンα8鎖発現細胞株にも交差反応するクローンの選択をおこなった。
<実施例5:組換えIgY(rIgY)抗体への組換えと交差反応性の評価>
(5−1)組換えIgY(rIgY)抗体への組換え
scFv ファージ抗体を鋳型にして、ニワトリ抗体遺伝子VH、VLのPCR増幅をおこなった後、ニワトリ抗体のleader配列、定常領域とoverlap PCRを行いrIgY発現ベクターへクローニングした。作製したH鎖、L鎖のコンストラクトをほ乳類培養細胞にトランスフェクトした後、発現した抗体タンパク質の精製をおこなった。rIgY抗体への組換えに関しては、[Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-74.] に記載の一般的な手法に従った。
(5−1)組換えIgY(rIgY)抗体への組換え
scFv ファージ抗体を鋳型にして、ニワトリ抗体遺伝子VH、VLのPCR増幅をおこなった後、ニワトリ抗体のleader配列、定常領域とoverlap PCRを行いrIgY発現ベクターへクローニングした。作製したH鎖、L鎖のコンストラクトをほ乳類培養細胞にトランスフェクトした後、発現した抗体タンパク質の精製をおこなった。rIgY抗体への組換えに関しては、[Shimamoto et al., Biologicals. 2005 Sep;33(3):169-74.] に記載の一般的な手法に従った。
(5−2)ヒトおよびマウスインテグリンα8β1に対する交差反応性の評価
以上の実験で得られた抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体から3種(No.3、No.5、No.26)を用いて、ヒト インテグリンα8鎖発現細胞株およびマウス インテグリンα8鎖発現細胞株への交差反応性を、FACS解析により調査した。その結果を図4に示す。3種の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体は、いずれにおいても非発現細胞株を使用したときに見られるピークの位置が、発現細胞株では明確に右側にシフトしている。このことから、これらはいずれもヒトおよびマウス両方のインテグリンα8β1に結合できることがわかる。
以上の実験で得られた抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体から3種(No.3、No.5、No.26)を用いて、ヒト インテグリンα8鎖発現細胞株およびマウス インテグリンα8鎖発現細胞株への交差反応性を、FACS解析により調査した。その結果を図4に示す。3種の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体は、いずれにおいても非発現細胞株を使用したときに見られるピークの位置が、発現細胞株では明確に右側にシフトしている。このことから、これらはいずれもヒトおよびマウス両方のインテグリンα8β1に結合できることがわかる。
また、上記No.3、No.5、No.26の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体の重鎖をコードするDNA配列を含むプラスミドを、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に2009年10月16日付でそれぞれ国内寄託した。その後、国内寄託した上記プラスミドについて、2010年10月12日付でそれぞれ受託番号NITE BP-824、受託番号NITE BP-826、受託番号NITE BP-828として、ブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管させた。
また、上記No.3、No.5、No.26の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体の軽鎖をコードするDNA配列を含むプラスミドを、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに2009年10月16日付でそれぞれ国内寄託した。その後、国内寄託した上記プラスミドについて、2010年10月12日付でそれぞれ受託番号NITE BP-825、受託番号NITE BP-827、受託番号NITE BP-829として、ブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管させた。なお、これら寄託したプラスミド6つは、上記(5−1)において発現ベクターを用いて作製したものである。
また、上記No.3、No.5、No.26の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体の重鎖CDRおよび軽鎖CDRのアミノ酸配列を調べた。その結果を表1に示す。表1中、Xはアミノ酸解析において解析不能であったアミノ酸を表す。
(5−3)結果の考察
ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、抗インテグリンα8β1抗体が得られた。この抗体を用いれば、ヒトの正常ならびに疾患関連組織または細胞等のインテグリンα8β1の局在を調べることが可能となる。さらに、本抗体はマウスインテグリンα8β1とも交差反応することから、モデルマウスでのα8β1の局在を調べることが可能となり、ヒトヘの応用のための基礎情報を取得するための材料として好適に使用できる。
ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、抗インテグリンα8β1抗体が得られた。この抗体を用いれば、ヒトの正常ならびに疾患関連組織または細胞等のインテグリンα8β1の局在を調べることが可能となる。さらに、本抗体はマウスインテグリンα8β1とも交差反応することから、モデルマウスでのα8β1の局在を調べることが可能となり、ヒトヘの応用のための基礎情報を取得するための材料として好適に使用できる。
<実施例6:リガンドの結合阻害活性の評価>
(6−1)リガンドの結合阻害活性測定
96-wellプレートにマウスオステオポンチン(2.5 mg/ml)を固相化し、その中に、α8発現K562細胞を1x10E5細胞/wellで加えるとともに、上記No.3、No.5、またはNo.26の抗体を図5に示した濃度で加え、細胞がオステオポンチンに接着するのを抗体がどのように阻害するかを調べた。図5において、A570nmは接着細胞を検出しており、A570nmの値が低いほどa8発現K562細胞とオステオポンチンの結合が少ないことを表している。
(6−1)リガンドの結合阻害活性測定
96-wellプレートにマウスオステオポンチン(2.5 mg/ml)を固相化し、その中に、α8発現K562細胞を1x10E5細胞/wellで加えるとともに、上記No.3、No.5、またはNo.26の抗体を図5に示した濃度で加え、細胞がオステオポンチンに接着するのを抗体がどのように阻害するかを調べた。図5において、A570nmは接着細胞を検出しており、A570nmの値が低いほどa8発現K562細胞とオステオポンチンの結合が少ないことを表している。
その結果、陽性対照(PC)の接着を100とすると、No.3の抗体は0.05 mg/mlで、No.5の抗体とNo.26の抗体は0.1 mg/mlで、それぞれ50%阻害活性が認められた。
(6−2)結果の考察
抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体は、オステオポンチンのインテグリンα8β1への顕著な結合阻害活性を有していた。このことは、オステオポンチンおよびインテグリンα8β1の相互作用が関連する各種疾患の治療薬として、上記抗体が極めて有効な材料となり得ることを示している。なお、上記抗体は、オステオポンチン以外の他のリガンド(フィブロネクチン、テネイシン、またはビトロネクチン等)に対しても同様の作用を有し、インテグリンα8β1への結合を阻害できることは当該技術常識で理解できる。
抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体は、オステオポンチンのインテグリンα8β1への顕著な結合阻害活性を有していた。このことは、オステオポンチンおよびインテグリンα8β1の相互作用が関連する各種疾患の治療薬として、上記抗体が極めて有効な材料となり得ることを示している。なお、上記抗体は、オステオポンチン以外の他のリガンド(フィブロネクチン、テネイシン、またはビトロネクチン等)に対しても同様の作用を有し、インテグリンα8β1への結合を阻害できることは当該技術常識で理解できる。
<実施例7:ニワトリ由来の抗インテグリンα8β1抗体と、マウス由来抗インテグリンα8β1抗体の比較実験>
(7−1)FACS解析
上記No.3の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体(以下「No.3ニワトリIgY」と称することもある)と、その抗体に由来する組換え抗体である抗インテグリンα8β1ニワトリ・マウス/キメラ抗体(以下「No.3ニワトリ・マウスキメラIgG」と称することもある)と、2種の抗インテグリンα8β1マウスモノクローナル抗体(7A5および10A8)に対して、以下の手順でFACS解析を行い、反応性の比較を試みた。なお、7A5および10A8は文献[Sato et al., J Biol Chem. 2009 May 22;284(21):14524-36. Epub 2009 Apr 2.]に記載されている抗体であり、同論文の著者らから提供されたものである。この7A5および10A8は、組換え可溶性インテグリンα8β1を抗原として、マウスを免疫することで作製された抗体である。
(7−1)FACS解析
上記No.3の抗インテグリンα8β1ニワトリモノクローナル抗体(以下「No.3ニワトリIgY」と称することもある)と、その抗体に由来する組換え抗体である抗インテグリンα8β1ニワトリ・マウス/キメラ抗体(以下「No.3ニワトリ・マウスキメラIgG」と称することもある)と、2種の抗インテグリンα8β1マウスモノクローナル抗体(7A5および10A8)に対して、以下の手順でFACS解析を行い、反応性の比較を試みた。なお、7A5および10A8は文献[Sato et al., J Biol Chem. 2009 May 22;284(21):14524-36. Epub 2009 Apr 2.]に記載されている抗体であり、同論文の著者らから提供されたものである。この7A5および10A8は、組換え可溶性インテグリンα8β1を抗原として、マウスを免疫することで作製された抗体である。
上記4種の供試した抗体を一次抗体として、1 μg/mlの濃度でインテグリンα8β1発現SW480細胞に反応させた(4℃、30分)。細胞洗浄後、FITC標識二次抗体を加え4℃、30分反応させた。さらに細胞洗浄後、FACS解析を行った。コントロールには、インテグリンα8β1非発現細胞を用いた。
その結果を図6に示す。No.3ニワトリIgYおよびNo.3ニワトリ・マウスキメラIgGは、いずれも右へのシフトが大きく、インテグリンα8β1に対して強陽性であった(No.3ニワトリIgY:94.71%陽性、No.3ニワトリ・マウス/キメラIgG:98.53%陽性)。一方、2種の抗インテグリンα8β1マウスモノクローナル抗体はいずれも弱陽性であった(7A5:2.59%陽性、10A8:4.45%陽性)。
(7−2)細胞接着アッセイ
上記4種の抗体(No.3ニワトリIgY、No.3ニワトリ・マウスキメラIgG、7A5、10A8)について、インテグリンα8β1とオテオポンチンとの接着阻害活性を、以下の手順で調べた。まず、上記4種の抗体それぞれについて、5 μg/ml濃度でインテグリンα8β1発現SW480細胞と30分間反応させた。反応後の細胞液を、マウスオステオポンチン(50 μg/ml)を固相化したプレートに加え、45分間培養した後、細胞を洗浄・固定・染色した。固定・染色細胞をTriton X-100で可溶化し、570 nmの吸光度を調べた。また同様の手順で、抗体非添加で、且つインテグリンα8β1を発現していないSW480細胞を用いた場合(以下「SW480抗体非添加群」と称することもある)の吸光度を測定した。
上記4種の抗体(No.3ニワトリIgY、No.3ニワトリ・マウスキメラIgG、7A5、10A8)について、インテグリンα8β1とオテオポンチンとの接着阻害活性を、以下の手順で調べた。まず、上記4種の抗体それぞれについて、5 μg/ml濃度でインテグリンα8β1発現SW480細胞と30分間反応させた。反応後の細胞液を、マウスオステオポンチン(50 μg/ml)を固相化したプレートに加え、45分間培養した後、細胞を洗浄・固定・染色した。固定・染色細胞をTriton X-100で可溶化し、570 nmの吸光度を調べた。また同様の手順で、抗体非添加で、且つインテグリンα8β1を発現していないSW480細胞を用いた場合(以下「SW480抗体非添加群」と称することもある)の吸光度を測定した。
その結果を図7に示す。細胞接着阻害活性はNo.3ニワトリIgYに認められたが、7A5および10A8には認められなかった。またNo.3ニワトリIgY添加群の細胞接着度が、SW480抗体非添加群の値よりもが少なかったことから、No.3ニワトリIgYの細胞接着阻害率は100%であると判断できる。一方、7A5添加群および10A8添加群での細胞接着度は、α8β1発現SW480細胞を抗体で処理しなかった群と比較してほとんど差がないことから、7A5および10A8には細胞接着阻害活性がないものと判断できる。
(7−3)結果の考察
以上の比較実験により、本実施例で得られた抗インテグリンα8β1抗体は、従来公知であった抗インテグリンα8β1抗体に比べて、インテグリンα8β1への結合活性、およびインテグリンα8β1とオテオポンチンとの結合阻害活性の両面から、顕著に優れていることが明らかになった。なお本実施例では、ニワトリに免疫したこと、インテグリンα8鎖発現細胞株を抗原として用いたこと、インテグリンα8鎖発現細胞株を用いてcell panningを行ったこと等、特徴的な作製方法を採用している。
以上の比較実験により、本実施例で得られた抗インテグリンα8β1抗体は、従来公知であった抗インテグリンα8β1抗体に比べて、インテグリンα8β1への結合活性、およびインテグリンα8β1とオテオポンチンとの結合阻害活性の両面から、顕著に優れていることが明らかになった。なお本実施例では、ニワトリに免疫したこと、インテグリンα8鎖発現細胞株を抗原として用いたこと、インテグリンα8鎖発現細胞株を用いてcell panningを行ったこと等、特徴的な作製方法を採用している。
<結果の考察>
上記の実施例1〜7において、1)ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、2)インテグリンα8β1への高い結合活性を有する、3)オステオポンチンのインテグリンα8β1への結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体が得られた。これらの性質は、得られた抗体が治療薬、診断薬、試薬等、産業上極めて優れた材料になりうることを示している。また、インテグリンα8β1はヒト由来のものに限られずマウス由来のものであってもよいため、モデルマウスを用いた研究やその治療に好適に使用できる。マウスは遺伝的背景が明らかになっている系統が多く、また世代あたりの時間が短いという特性を持ち、さらにはヒトの疾患と類似の疾患を発症しやすいために治療薬、診断薬の開発において特に重要な生物である。
上記の実施例1〜7において、1)ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、2)インテグリンα8β1への高い結合活性を有する、3)オステオポンチンのインテグリンα8β1への結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体が得られた。これらの性質は、得られた抗体が治療薬、診断薬、試薬等、産業上極めて優れた材料になりうることを示している。また、インテグリンα8β1はヒト由来のものに限られずマウス由来のものであってもよいため、モデルマウスを用いた研究やその治療に好適に使用できる。マウスは遺伝的背景が明らかになっている系統が多く、また世代あたりの時間が短いという特性を持ち、さらにはヒトの疾患と類似の疾患を発症しやすいために治療薬、診断薬の開発において特に重要な生物である。
ここで、インテグリンα8β1は、PI3Kを活性化することが[Hynes RO., Cell. 2002 Sep
20;110(6):673-87.]および[Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.]に記載されている。このPI3Kは、膜の構成成分であるイノシトールリン脂質のイノシトール環3位のリン酸化を媒介するキナーゼであり、種々の疾患に関連することが知られている。例えば、PI3Kの機能をアンタゴニストで阻害すると、[Yaguchi et
al., J Natl Cancer Inst. 2006 Apr 19;98(8):545-56.]において、癌のモデル動物にin
vivoで治療効果があったことが記載されている。また、[Boehle et al., Langenbecks Arch Surg. 2002 Oct;387(5-6):234-9. Epub 2002 Sep 28.]には非小細胞肺癌の、[Tamura
et al., Jpn j Clin Immunol. 2007 30(5) 369-374]には関節炎の、特開2007-63205には神経因性疼痛の、特開2003-104909には緑内障のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。
20;110(6):673-87.]および[Farias et al., Biochem Biophys Res Commun. 2005 Apr 1;329(1):305-11.]に記載されている。このPI3Kは、膜の構成成分であるイノシトールリン脂質のイノシトール環3位のリン酸化を媒介するキナーゼであり、種々の疾患に関連することが知られている。例えば、PI3Kの機能をアンタゴニストで阻害すると、[Yaguchi et
al., J Natl Cancer Inst. 2006 Apr 19;98(8):545-56.]において、癌のモデル動物にin
vivoで治療効果があったことが記載されている。また、[Boehle et al., Langenbecks Arch Surg. 2002 Oct;387(5-6):234-9. Epub 2002 Sep 28.]には非小細胞肺癌の、[Tamura
et al., Jpn j Clin Immunol. 2007 30(5) 369-374]には関節炎の、特開2007-63205には神経因性疼痛の、特開2003-104909には緑内障のモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。
また、インテグリンα8β1は、FAKを活性化することが[Richard et al., Cell, Vol. 110, 673-687, September 20, 2002]、[Shouchun Liu., Journal of Cell Science 113, 3563-3571 (2000)]、および [Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.]に記載されている。このFAKは、活性化によりSrcファミリーキナーゼやホスファチジルイノシトール3-キナーゼなど、多くのシグナリング分子と相互作用する細胞内プロテインチロシンキナーゼであり、種々の疾患に関連することが知られている。例えば、FAKの機能をアンタゴニストで阻害すると、[Hatakeyama et al., Journal of Clinical Oncology. Vol 24, No 18S (June 20 Supplement), 2006: 13162]にはすい臓癌の、[Liu et al., Mol Cancer Ther. 2007 Apr;6(4):1357-67.]にはグリオーマのモデル動物にin vivoで治療効果があったことが記載されている。
従って、実施例1〜7で得られた抗体は、オステオポンチンからのインテグリンα8β1を経由した、PI3KとFAKへのシグナル伝達を阻害することで、上記疾患(癌、関節炎、緑内障、または神経因性疼痛)に顕著な治療効果を奏すると考えられる。
また、診断薬として使用する場合は、当該技術分野において公知の方法、例えば、上記いずれかの疾患における細胞、血液、血清、体液、または病理切片等と、標準的な細胞等において、インテグリンα8β1への抗体の結合の様態を検査、比較することで上記疾患の診断が可能になると考えられる。例えば、疾患がPI3KまたはFAKの過剰な活性化に起因しており、その活性化がインテグリンα8β1の高発現に起因しているときには、実施例1〜7で得られたインテグリンα8β1結合性抗体の結合量が増加する。また、PI3KまたはFAKの過剰な活性化が、インテグリンα8β1のオステオポンチンの高発現に起因しているときには、リガンドと拮抗するために上記インテグリンα8β1結合性抗体の結合量が減少すると考えられる。
また、インテグリンα8鎖のノックアウトマウスは、[Muller U, Wang D, Denda S, Meneses JJ, Pedersen RA, Reichardt LF.]には腎臓の形態形成不全ををひき起こすことが、[Littlewood et al., Nat Genet. 2000 Apr;24(4):424-8.]には内耳有毛細胞の欠損をひき起こすことが記載されている。さらに、[Levine et al., Levine et al., Am J Pathol. 2000 Jun;156(6):1927-35.]には肺線維症または肝線維症で高発現していることが記載されている。従って、実施例1〜7で得られた抗体は、細胞や組織等のインテグリンα8鎖の発現量を調査するプローブとして使用することで、腎臓の形態形成不全に起因する腎不全、内耳有毛細胞の欠損に起因する内耳疾患、肺線維症、または肝線維症の診断薬として好適に使用できると考えられる。例えば、疾患がインテグリンα8β1の高発現に起因しているときには、インテグリンα8β1結合性抗体の結合量が増加し、オステオポンチンの高発現に起因しているときには、オステオポンチンと拮抗することでインテグリンα8β1結合性抗体の結合量が減少すると考えられる。または、腎臓の形態形成不全、または内耳有毛細胞の欠損の出生前診断薬として好適に使用できると考えられる。
その他、インテグリンα8β1関連の基礎研究等に使用する試薬や、再生医療等においても、実施例1〜7で得られた抗体が極めて有効な材料になると考えられる。
なお、これまでにもインテグリンα8β1に結合する抗体は存在していたにも関わらず、リガンドとの結合を阻害できる抗体は得られていなかった。このことから、インテグリンα8β1とリガンドの結合に関わる部分が抗体の影響を受けにくい構造を有している可能性や、インテグリンα8β1とリガンドの結合に関わる部分がエピトープになりくい可能性などが考えられ、インテグリンα8β1とリガンドの結合を阻害する抗体を得ることは容易ではないとも考えられた。しかしながら、本実施例で得られた結果はその懸案事項を覆す結果であった。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
Claims (26)
- インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、インテグリンα8β1結合性抗体。
- 前記リガンドがオステオポンチン、フィブロネクチン、テネイシン、およびビトロネクチンからなる群から選ばれる1種以上のリガンドである、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 前記リガンドがオステオポンチンである、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 重鎖CDR3が配列番号3、6、または9のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- モノクローナル抗体である、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- インテグリンα8鎖発現細胞を抗原として得られる、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 抗体断片である、請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 種が異なる複数種類の哺乳動物由来のインテグリンα8β1に結合する、インテグリンα8β1結合性抗体。
- ヒトおよびマウス由来のいずれのインテグリンα8β1にも結合する、請求項10に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 重鎖CDR3が配列番号3、6、または9のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- インテグリンα8β1結合性抗体であって、
a)重鎖CDR1が配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号2のアミノ酸配列、または配列番号2において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号3のアミノ酸配列、または配列番号3において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む、抗体、
b)重鎖CDR1が配列番号4のアミノ酸配列、または配列番号4において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号5のアミノ酸配列、または配列番号5において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む、抗体、
c)重鎖CDR1が配列番号7のアミノ酸配列、または配列番号7において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR2が配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
重鎖CDR3が配列番号9のアミノ酸配列、または配列番号9において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む、抗体、
からなる群から選ばれる1種以上の抗体を含む、インテグリンα8β1結合性抗体。 - 請求項13に記載のインテグリンα8β1結合性抗体において、
前記a)の抗体は、重鎖CDR1が配列番号1のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2が配列番号2のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3が配列番号3のアミノ酸配列を含む抗体であり、
前記b)の抗体は、重鎖CDR1が配列番号4のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2が配列番号5のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3が配列番号6のアミノ酸配列を含む抗体であり、
前記c)の抗体は、重鎖CDR1が配列番号7のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2が配列番号8のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3が配列番号9のアミノ酸配列を含む抗体である、
インテグリンα8β1結合性抗体。 - 請求項13に記載のインテグリンα8β1結合性抗体において、
前記a)の抗体は、軽鎖CDR1が配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号11のアミノ酸配列、または配列番号11において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3が配列番号12のアミノ酸配列、または配列番号12において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む抗体であり、
前記b)の抗体は、軽鎖CDR1が配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号13において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号14のアミノ酸配列、または配列番号14において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3が配列番号15のアミノ酸配列、または配列番号15において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む抗体であり、
前記c)の抗体は、軽鎖CDR1が配列番号16のアミノ酸配列、または配列番号16において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR2が配列番号17のアミノ酸配列、または配列番号17において1個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、
軽鎖CDR3が配列番号18のアミノ酸配列、または配列番号18において1〜2個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含む抗体である、
インテグリンα8β1結合性抗体。 - 請求項15に記載のインテグリンα8β1結合性抗体において、
前記欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が、保存的アミノ酸で置換されたアミノ酸配列である、インテグリンα8β1結合性抗体。 - インテグリンα8β1およびリガンドの結合を阻害する、請求項13に記載のインテグリンα8β1結合性抗体。
- 請求項1に記載の抗体をコードする塩基配列を含む、ポリヌクレオチド。
- 請求項18に記載のポリヌクレオチドまたはその一部を含む、ベクター。
- 請求項1に記載のインテグリンα8β1結合性抗体を含む、インテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤。
- 請求項20に記載のインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を含む、
癌、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、治療薬。 - 請求項20に記載のインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を含む、
肺線維症、肝線維症、腎不全、内耳疾患、癌、関節炎、緑内障、および神経因性疼痛からなる群から選ばれる1種以上の疾患の、診断薬。 - 請求項20に記載のインテグリンα8β1およびリガンドの結合阻害剤を含む、試薬。
- 抗原蛋白質発現細胞を含む抗原、または抗原蛋白質を備える細胞膜を含む抗原で、ニワトリを免疫する工程を含む、抗体の生産方法。
- 抗原蛋白質発現細胞、または抗原蛋白質を備える細胞膜に対して、ニワトリ由来の抗体ライブラリを反応させ、結合した抗体を選抜する工程、
をさらに含む、請求項24に記載の抗体の生産方法。 - 前記抗原蛋白質がインテグリンα8β1であり、前記抗体がインテグリンα8β1結合性抗体である、請求項24に記載の抗体の生産方法。
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