JPWO2011048922A1 - グリコサミノグリカンの検出法及びそのための分子プローブ - Google Patents

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Abstract

従来技術が持つ問題点を解決できる分子プローブとそれを用いたグリコサミノグリカンの検出法を提供する。グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンの検出法。グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカン検出キット。グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニング法及びそのキット、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査法及びそのキット、分子プローブ、並びにペプチドも提供される。

Description

本発明は、グリコサミノグリカンの検出法及びそのための分子プローブに関し、より詳細には、蛍光標識試薬によるグリコサミノグリカンの検出法及びそのための分子プローブに関する。
近年、生体内機能制御因子として注目されているヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカン糖鎖(硫酸化糖鎖)は、構成する酸性糖(ウロン酸)や硫酸基のために、負電荷を有する生体内高分子として知られている。このような生体内負電荷分子は、特異的にこれを認識する一次抗体と標識化二次抗体を用いた一般的な検出法では、標識物質が非特異的に負電荷分子と相互作用してしまうなどするために、信頼性のある検出が困難である。
グリコサミノグリカン糖鎖を特異的に認識するプローブの開発研究に関する学術論文報告も増加している(非特許文献1)。しかし、これらの従来技術ではスクリーニングしたいプローブをひとつひとつ標識しなければならず、また、硫酸化糖鎖に対して影響を及ぼさない標識を使用するという制限が存在した。
また、蛍光標識試薬であるN-(9-acridinyl) maleimide(NAM)をSH化合物の高感度の検出に用いたことが報告されている(非特許文献2〜4)が、NAMを硫酸化糖鎖の検出に利用したという報告はなされていない。
本発明は、従来技術が持つ以下の問題点を解決できる分子プローブとそれを用いたグリコサミノグリカンの検出法を提供することを目的とする。
1.硫酸化糖鎖に非特異的に検出試薬が結合することによる検出誤差を生じる。
2.標的分子とプローブの結合力が微小な場合の複合体の検出が困難である。
3.スクリーニング時にプローブをあらかじめ標識する必要性がある。
4.標識操作によるプローブの失活や標的物質への結合力を阻害するリスクがある。
本発明者は、ヘパリン糖鎖が固着した固相に、分子プローブとして、ヘパリン糖鎖を特異的に認識するペプチド分子(アミノ酸配列:RTRGSTREFRTG)(配列番号3))(HappY: Heparin-associated peptide Y, 2008年8月19日第28回日本糖質学会年会(つくば)口頭発表及び要旨集p.79)に遊離のチオール基を持つシステイン残基を導入したものを添加して、ヘパリン糖鎖と分子プローブの結合反応を行わせた後、蛍光標識試薬であるN-(9-acridinyl) maleimide(NAM)を加えて分子プローブ中の遊離のチオール基と反応させ、蛍光検出器により、365 nmで励起し、435 nmの蛍光を検出することによって、ヘパリン糖鎖を選択的に検出することに成功し、本発明を完成させるに到った。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンの検出法。
(2)固相に固定されているグリコサミノグリカンの存在下で、前記分子プローブと前記試料を接触させる(1)記載の検出法。
(3)前記試料中のグリコサミノグリカンを固相に固定した後、前記分子プローブと接触させる(1)記載の検出法。
(4)グリコサミノグリカンを被験物質と接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニング法。
(5)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと被験者からの試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査法。
(6)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカン検出キット。
(7)さらに、グリコサミノグリカンを含む(6)記載のキット。
(8)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニングキット。
(9)さらに、グリコサミノグリカンを含む(8)記載のキット。
(10)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査キット。
(11)さらに、グリコサミノグリカンを含む(10)記載のキット。
(12)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブであって、(1)記載の検出法、(4)記載のスクリーニング方法又は(5)記載の検査法に使用される前記分子プローブ。
(13)グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質が、以下の(a)又は(b)のペプチドである(12)記載の分子プローブ。
(a)配列番号1のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)からなるペプチド。
(b) 配列番号1のアミノ酸において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有するペプチド。
(14)以下の(a)又は(b)のペプチド。
(a)配列番号1のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)からなるペプチド。
(b) 配列番号1のアミノ酸において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有するペプチド。
糖鎖と結合する分子プローブは一般に結合力が弱いうえ、硫酸化糖鎖はその負電荷によってさらに反応性に制限があるため、ヘパラン硫酸のような硫酸化糖鎖の検出は非常に難しい。そこで、遊離のチオール基を導入した分子プローブを用いた本発明の硫酸化糖鎖の検出法は、検出原理が単純であるがゆえに短時間の操作で済み、非常に簡便かつ迅速な方法であり、ゆえに結合力の弱さに由来する反応途中での標的とプローブの剥離を防ぐことができる。また、蛍光標識試薬による蛍光強度の測定は非常に高感度であるばかりでなく定量性にも優れているため、構造特異的な分子プローブの開発により、特定の構造を有する硫酸化糖鎖のみを定量的に測定することができるようになるなど、本発明により波及効果が期待される。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2009‐243995の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
固定化ヘパリン糖鎖のプローブによる検出結果を示す(実施例1)。 L-システインを用いた検量線(10-3000 pmol)を示す(実施例2)。 L-システインを用いた検量線(10-300 pmol)を示す(実施例2)。 プローブの結合量の測定(ヘパリン糖鎖量一定)結果を示す(実施例3)。 ビオチン化ヘパリンの結合量の測定(プローブ量一定)結果を示す(実施例4)。
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンの検出法を提供する。
グリコサミノグリカンは、硫酸基が付加したものを含むアミノ糖とウロン酸またはガラクトースの二糖の繰り返し構造を有する糖鎖であり、線虫以上の高等動物のほぼすべての細胞表面および細胞外マトリクスに遊離状態あるいはタンパク質に結合した状態で存在する。グリコサミノグリカンは、アミノ糖(ガラクトサミン、グルコサミンなど)とウロン酸(グルクロン酸、イズロン酸など)又はガラクトースからなる二糖の繰り返し長鎖構造を持ち、アセチル化や硫酸化されている場合もある。硫酸化部位は構成糖の特定の水酸基(O-硫酸化)またはアミノ基(N-硫酸化)に硫酸基が転移されたものである。
グリコサミノグリカンは、硫酸基やウロン酸のカルボキシル基により負に荷電している。グリコサミノグリカンとしては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、コンドロイチンなどが知られている。
コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリンなどは、プロテオグリカンのコアタンパクに共有結合した形で、細胞表面や細胞外マトリックスに存在する。ヘパリンは、ヘパラン硫酸の一種であり、D-グルクロン酸又はL-イズロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンの二糖単位の繰り返し構造をとり、二糖あたり平均2〜3個の硫酸基を持つ高分子であるが、ヘパラン硫酸より硫酸化の度合いが高い。生体内において、ヘパリンは、抗凝固作用に関与する凝固系のタンパク質と相互作用する。ヘパリンは、抗凝固薬の一つとして利用されており、血栓塞栓症、播種性血管内凝固症候群の治療、人工透析、体外循環での凝固防止などに用いられている。ヘパリンは、アンチトロンビンIIIと結合することによって、アンチトロンビンIIIの抗凝血作用を賦活化し、凝固系を抑制する。アンチトロンビンIIIは、トロンビンと複合体を形成することによって、トロンビンの血液凝固活性を阻害する糖タンパク質である。
ヒアルロン酸は、他のグリコサミノグリカンと異なり、コアタンパクに結合しておらず、また硫酸基も持たない。ヒアルロン酸は、関節、硝子体、皮膚、脳などの生体内の細胞外マトリックスに存在する。
本発明において、検出の対象とするグリコサミノグリカンは、遊離の状態で存在しているものであってもよいし、コアタンパクなどの他の物質と結合している状態のものであってもよい。
本発明の検出方法に用いる分子プローブは、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含むものであればよく、グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質に、必要により、遊離のチオール基を導入したものなどを例示することができる。グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質としては、以下のものを挙げることができる。
・ヘパリンやヘパラン硫酸に特異的に結合するHappY(Heparin-associated peptide Y, 2008年8月19日第28回日本糖質学会年会(つくば)口頭発表及び要旨集p.79)(アミノ酸配列:RTRGSTREFRTG)(配列番号3)
・グリコサミノグリカンを特異的に認識する抗体として,CS-56(抗-コンドロイチン硫酸抗体;Avnur Z. and Geiger, B.,Exp. Cell Res. 158,321-332,1985),MO-224(抗-コンドロイチン硫酸抗体;Yamagata, M. et al.,J. Biol. Chem. 262,4146-4152,1987),HepSS-1(抗-ヘパラン硫酸抗体;Kure, S. and Yoshie, O.,J. Immunol. 137,3900-3908,1986)などがある。
・ヘパリンを特異的に認識するアンチトロンビンIII(Bjork,
I. and Lindahl, U.,Mol. Cell. Biochem. 48,161-182,1982)
グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質は、2008年8月19日第28回日本糖質学会年会(つくば)口頭発表及び要旨集p.79に報告されているファージディスプレイ法、Kuppeveltらの方法(Van Kuppevelt, T. H. et al.,J. Biol. Chem.
273,12960-12966,1998)などに報告されているスクリーニング法などにより、探索することができる。
グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質に遊離のチオール基を導入する場合には、グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質の構造特異的な結合力を妨げることがないよう、結合に干渉しない部位(例えば、グリコサミノグリカンを特異的に認識する物質がペプチド又はタンパク質である場合には、ペプチド又はタンパク質のC末端など)に導入するとよい。遊離のチオール基の導入は、例えば、ペプチド合成時のシステイン残基の付加、チオール基導入試薬を用いてアミノ酸側鎖を修飾するなどにより行なうことができる。システイン残基の付加は、9-フルオレニルメトキシ基(Fmoc基)で保護したシステインを用いたペプチド固相合成法により、行なうことができる。
分子プローブが遊離のチオール基を有していれば、蛍光標識試薬のN-(9-アクリジニル)マレイミドとの反応により、蛍光が生じるので、分子プローブと結合したグリコサミノグリカンを検出することができる。また、分子プローブがタンパク質やペプチドであり、すでに遊離のチオール基を含有している場合は、このチオール基を利用して蛍光検出できるため、あらかじめプローブを標識したり、システインを導入する必要がなく、その場合、標識操作に伴う二次的な影響は考慮する必要がない。
分子プローブと接触させる試料としては、血清、血漿、胸水、腹水、尿、関節液、培養液、脳脊髄液,組織のホモジネートなどの種々の生体試料を例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
検出の対象となるグリコサミノグリカンと分子プローブは、1:0.1〜1:100、好ましくは1:1〜1:50、より好ましくは1:5〜1:20の質量比となるように接触させるとよい。
分子プローブと試料を接触させるためには、分子プローブを溶解した溶液を試料に添加するとよく、分子プローブは、溶液100μLに対して、0.01〜100 nmol、好ましくは0.05〜50 nmol、より好ましくは1〜10 nmolの量で溶解して、使用するとよい。試料は、その物性やグリコサミノグリカン含有量・種類などに応じて、必要により、リン酸緩衝生理食塩水などの適当な溶液で適当な濃度に希釈して用いることにより、使用量を適宜調整するとよい。分子プローブを溶解する溶液は、ウシ血清アルブミンを含むとよく、ウシ血清アルブミンの濃度は、2〜10%(重量%)が適当である。ウシ血清アルブミンは一般的にブロッキング剤として使用されており、本発明の検出法でもその役割で使用することができる。すなわち、反応の場となる固相(例えば、プラスチックウェル)には、非特異的に分子プローブが少なからず結合してしまうが、少量の分子プローブを使用したときにはそれが検出量に対して大きな影響を与えてしまうので、ウシ血清アルブミンを相対的に多量に存在させ、固相(例えば、プラスチックウェル)に結合してしまう分子プローブの割合を下げる(原理的にはほとんど結合しない状態である)効果があると考えられる。大前提として検出対象のグリコサミノグリカン(例えば、ヘパリン糖鎖)にはウシ血清アルブミンが結合しないことが条件となるが、すでにそれは確認している。
分子プローブと試料を接触させ、4〜37℃、好ましくは、4〜25℃、より好ましくは、15〜25℃で、0.5〜24時間、好ましくは、0.5〜16時間、より好ましくは、0.5〜3時間、試料中のグリコサミノグリカンと分子プローブとの結合反応を行わせるとよい。
その後、必要により、洗浄を行い、遊離の(グリコサミノグリカンと結合していない)分子プローブ、非特異的にグリコサミノグリカンに結合した分子プローブなどの夾雑物を除去した後、N-(9-アクリジニル)マレイミド(N-(9-acridinyl) maleimide(NAM))を添加する。洗浄は、0.1〜2M程度の塩(例えば、NaCl)溶液で1〜6回、さらに、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液、トリス緩衝液)で1〜5回行なうとよい。
NAMは、以下の構造式で表される化合物である。
NAMは、それ自体無蛍光であるが、SH化合物と反応して、非常に強い蛍光(励起波長:365 nm、蛍光波長:435 nm)を発する(Bunseki Kagaku (Japan Analyst), Vol. 22,
451-452(1973))。NAMは、Agric. Biol. Chem., 42(4), 793-798, 1978に合成法が記載されているが、市販もされおり、入手可能である。
NAMは十分飽和量を加えるとよく、NAMと分子プローブの比が、1:1〜100:1、好ましくは1:1〜50:1、より好ましくは2:1〜10:1の質量比となるように添加するとよい。
NAMは、硼酸緩衝液などの溶液に溶解して、添加するとよい。NAMは、溶液100μLに対して、0.05〜2 mM、好ましくは0.1〜1 mM、より好ましくは0.2〜0.5 mMの量で溶解して、使用するとよい。硼酸緩衝液の硼酸濃度は、10〜100 mMが適当であり、10〜50 mMが好ましく、20〜50 mMがより好ましい。
NAMと分子プローブとの反応は、遮光した状態で、pH3〜10、好ましくはpH7〜10、より好ましくはpH8〜9の条件で、10〜35℃、好ましくは15〜30℃、より好ましくは20〜25℃で、3〜60分間、好ましくは5〜30分間、より好ましくは5〜10分間、行うとよい。
NAMと分子プローブとの反応後、発生した蛍光を測定する。蛍光の測定は、蛍光検出器により、355-365 nmで励起し、435-460 nmの蛍光を検出するとよい。
本発明の検出法では、分子プローブとして遊離のチオール基を有するものを使用することが特徴であり、これにより、遊離のチオール基と反応すると強い青色蛍光を発するNAMを介して、負電荷分子に影響されることなく、プローブにのみ応じて蛍光を検出することができる。また、プローブ結合後から蛍光検出までの所要時間は、10分程度と迅速なため、非常に弱い結合力の分子同士であっても、効果的に検出できるうえ、たとえ蛍光測定時にプローブと標的分子が解離していても、結合していたプローブ量としての検出が可能であるので、結合量をより厳密に測定できる。
本発明の検出法は、競合法又は非競合法のいずれの方法でも用いることができる。
競合法で用いる場合には、固相に固定されているグリコサミノグリカンの存在下で、分子プローブと試料を接触させた後、NAMを添加し、発生した蛍光を測定するとよい。固相に固定するグリコサミノグリカンは、既知量でなくとも、一定量固定されていれば十分である。競合法の場合、固相に固定されたグリコサミノグリカンと試料中のグリコサミノグリカンとの競合により、分子プローブを奪い合うことになる。試料と分子プローブを固定化グリコサミノグリカンに作用させた後、遊離の分子プローブと、試料中のグリコサミノグリカンと結合した分子プローブを洗浄により除去する。分子プローブで検量線を作成し、競合した分の蛍光の減少量から試料中のグリコサミノグリカン量を求めることができる。本発明の分子プローブのメリットの一つとして、高塩濃度(例えば、1〜2 M)の緩衝液(例えば、高濃度のNaClを含むリン酸緩衝液)でグリコサミノグリカンと結合した分子プローブを解離させ、洗浄することができるので、何度でも固定化したグリコサミノグリカンを使用できる。
非競合法で用いる場合には、試料中のグリコサミノグリカンを固相に固定した後、分子プローブと接触させ、その後、NAMを添加し、発生した蛍光を測定するとよい。この場合、試料中のグリコサミノグリカンを直接検出することができる。すなわち、分子プローブで検量線を作成し、蛍光量から試料中のグリコサミノグリカン量を求めることができる。
試料中のグリコサミノグリカンを固相に固定する際に,プロテオグリカンとして抗体アフィニティーカラムクロマトグラフィーなどを利用して精製したものを用いるか,または,アルカリ性下で水素化ホウ素ナトリウム処理してグリコサミノグリカンを遊離し,陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより精製した後,ビオチン化などの標識化によって固相に固定するとよい。
固相としては、マイクロプレートのウェル、プラスチックチューブ、ビーズなどを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。固相表面をストレプトアビジンでコーティングしておけば、ビオチン標識したグリコサミノグリカンを固定できる。グリコサミノグリカンのビオチン標識化は、市販のビオチン化試薬を用いて行なうことができる。
蛍光標識試薬NAMを利用するグリコサミノグリカン検出法は、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニング、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査などに応用することができる。
従って、本発明は、グリコサミノグリカンを被験物質と接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニング法を提供する。
被験物質は、いかなる物質であってもよく、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ホルモン、多糖、オリゴ糖、単糖、低分子化合物、核酸(DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、モノヌクレオチド等)、脂質、上記以外の天然化合物、合成化合物、植物抽出物、植物抽出物の分画物、それらの混合物などを挙げることができる。本発明のスクリーニング法により得られる物質は、遊離のチオール基を有するものとなる。
また、本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査法を提供する。
ヒアルロン酸は、肝疾患、慢性関節リウマチ、変形性膝関節症、癌などの疾患の診断マーカーとして、コンドロイチン硫酸は、甲状腺疾患、膠原病、糖尿病、外傷性膝関節症などの疾患の診断マーカーとして、ヘパラン硫酸は、糖尿病性腎症などの疾患の診断マーカーとして、ケラタン硫酸は、外傷性膝関節症などの疾患の診断マーカーとして有効であることが知られているので、本発明により、これらの疾患の検査が可能となる。被験者からの試料(例えば、被験者から採取した血清、血漿、胸水、腹水、尿、関節液など)中のグリコサミノグリカンの量を健常者と比較することにより、罹患の有無を判定することができる。
本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカン検出キットも提供する。
本発明のキットは、さらに、グリコサミノグリカン(標準品)を含んでもよい。その他、固相(マイクロプレート、プラスチックチューブ、ビーズなど)、ストレプトアビジン、ビオチン化試薬、緩衝液、洗浄液、フレーム、シール、取扱い説明書、ブロッキング剤などを含んでもよい。固相には、グリコサミノグリカン(標準品)が固定されていてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、検量線なども記載しておくとよい。
本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニングキットも提供する。
本発明のキットは、さらに、グリコサミノグリカン(標準品)を含んでもよい。その他、固相(マイクロプレート、プラスチックチューブ、ビーズなど)、ストレプトアビジン、ビオチン化試薬、緩衝液、洗浄液、フレーム、シール、取扱い説明書、ブロッキング剤などを含んでもよい。固相には、グリコサミノグリカン(標準品)が固定されていてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、検量線なども記載しておくとよい。
本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査キットも提供する。
本発明のキットは、さらに、グリコサミノグリカン(標準品)を含んでもよい。その他、固相(マイクロプレート、プラスチックチューブ、ビーズなど)、ストレプトアビジン、ビオチン化試薬、緩衝液、洗浄液、フレーム、シール、取扱い説明書、ブロッキング剤などを含んでもよい。固相には、グリコサミノグリカン(標準品)が固定されていてもよい。取扱説明書には、キットの使用方法の他、疾患の評価及び/又は鑑別基準なども記載しておくとよい。
また、本発明は、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブを提供する。本発明の分子プローブは、本発明の検出法、スクリーニング法及び検査法に使用することができる。グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質としては、以下の(a)又は(b)のペプチドを例示することができる。
(a)配列番号1のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)からなるペプチド。
(b) 配列番号1のアミノ酸において1若しくは数個(2、3、4、5、6個程度)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有するペプチド。
本発明者は、N末端から数えて1番目、3番目及び7番目のアルギニン(R)が保存されていれば、ヘパリンと結合できることを確認している。
従って、(b)のペプチドとしては、以下のものを例示することができる。
・配列番号1のアミノ酸配列における1番目から7番目までのアミノ酸からなる連続した配列のC末端にシステインを付加したアミノ酸配列からなるペプチド
・配列番号1のアミノ酸配列における1番目から8番目までのアミノ酸からなる連続した配列のC末端にシステインを付加したアミノ酸配列からなるペプチド
・配列番号1のアミノ酸配列における1番目から9番目までのアミノ酸からなる連続した配列のC末端にシステインを付加したアミノ酸配列からなるペプチド
・配列番号1のアミノ酸配列における1番目から10番目までのアミノ酸からなる連続した配列のC末端にシステインを付加したアミノ酸配列からなるペプチド
・配列番号1のアミノ酸配列における1番目から11番目までのアミノ酸からなる連続した配列のC末端にシステインを付加したアミノ酸配列からなるペプチド
(a)及び(b)のペプチドは、公知の化学合成法、遺伝子工学的手法により、製造することができる。
さらに、本発明は、上記の(a)又は(b)のペプチドを提供する。本発明のペプチドは、本発明の検出法、スクリーニング法及び検査法などの分子プローブとして使用することができる。
本発明の利点を以下に列挙する。
1.標的分子を特異的に認識する物質(分子プローブ)に、システイン残基のような遊離のチオール基を導入するだけで蛍光検出プローブとして使用できるようになるため、既知のプローブの構造に影響を与えることなく利用できる。
2.本発明の検出法で使用するNAMによる分子プローブの検出限界は、数pmol程度と非常に感度が高い。
3.プローブ結合から蛍光による検出までの操作手順が少なく、簡便かつ迅速な検出が可能である。このことは、ELISA法やウェスタンブロッティング法のような一般的な免疫生化学的方法では、操作の過程でプローブが標的である硫酸化糖鎖から剥離してしまう可能性を最小限に抑える効果がある。
4.蛍光標識試薬として使用するNAMは、遊離のチオール基を有する対象物質と結合しなければ蛍光を発しないため、測定値を干渉することがない。
5.一般的に,標的物質を可視化する方法としてプローブを使用する場合に、プローブをHRPやビオチン、FITCなどの物質によって標識をして、標的物質と結合した複合体の状態を検出するが、しばしば標識操作により、本来のプローブの標的物質への結合能が失われてしまうことがある。しかし、本発明の検出法では、分子プローブをあらかじめ標識する必要がないため、標識操作によるプローブの失活や、標識によるプローブの標的物質への結合を阻害するなどの現象を防ぐことができ、硫酸化糖鎖に限らず、これまで検出が困難であった生体内負電荷分子に対しても応用が可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実験材料)
ブタ小腸由来ヘパリン糖鎖:ナカライテスク,Acros Organics(アメリカ);アンチトロンビンIII:Hyphen BioMed(フランス);NAM:東京化成工業;マウス脳由来cDNAライブラリー:Spring Bioscience(アメリカ)
(プローブの作製方法)
アンチトロンビンIII(AT-III)アフィニティーカラムを作製した後,ブタ小腸由来ヘパリンを供して,AT-III結合型ヘパリン糖鎖を精製し,得られたヘパリンをビオチン化した後にストレプトアビジンプレートに固定化した。この固定化糖鎖を標的として,マウス脳由来cDNAライブラリーを導入したファージディスプレイ法(2008年8月19日第28回日本糖質学会年会(つくば)要旨集p.79)により,これと相互作用するペプチドをスクリーニングし,得られた分子をプローブとした。得られた分子は、HappY(Heparin-associated
peptide Y)と命名され、そのアミノ酸配列を配列番号3に、それをコードするDNAの塩基配列を配列番号2に示す。
〔実施例1〕固定化ヘパリン糖鎖のプローブによる検出
実験方法
ヘパリン糖鎖の固定化
ブタ小腸由来のヘパリン糖鎖に対してギ酸アンモニウムと水素化シアノホウ素ナトリウムを加え,70℃で2日間の反応を2度繰り返し,糖鎖の還元末端にアミノ基を導入した。反応液は脱塩操作を行った後,糖鎖の還元末端に存在するアミノ基特異的にビオチンを導入した。反応液は脱塩操作を行った後,陰イオン交換カラムクロマトグラフィーにより,目的のビオチン化糖鎖を精製した。この精製糖鎖をストレプトアビジンがコーティングされたプラスチックプレートに供し,4℃で一晩反応させた後,リン酸緩衝生理食塩水を添加して十分に洗浄し,固定化ヘパリン糖鎖とした。
プローブ等の添加
2%ウシ血清アルブミンを含むリン酸緩衝生理食塩水100 μlにプローブを4.23 nmol加えて溶解し,固定化ヘパリン糖鎖に添加した。また,ヘパリンとの結合が既知のアンチトロンビンIII(AT-III)145 pmolを同様に添加した。
蛍光強度の測定
25℃で3.5時間反応させた後,素早く洗浄し(300 mM NaClを1ウェル当たり200μl使用して4回洗浄した後,リン酸緩衝生理食塩水を1ウェル当たり200μl使用して2回洗浄),0.2 mM NAM(N-(9-acridinyl)
maleimide)を含む50 mMホウ酸緩衝液(pH 8.8)100 μlを加えて,遮光した状態で10分間反応させた。蛍光プレートリーダーを用いて,励起波長:355 nm,蛍光波長:460 nmで蛍光強度を測定した。
結果
NAMは遊離のチオール基(SH基)と反応すると強い青色蛍光を発し,pH 3 - 10の水溶液中で反応が定量的に進行する。固定化ヘパリンに結合した遊離のチオール基をもつプローブは,この実験系において,ヘパリンと結合能がないウシ血清アルブミンを含む溶液のみのコントロールと比較して,有意な差でNAMにより検出することができた(図1)。
〔実施例2〕L-システインを用いた検量線
実験方法
L-システインを1 pmolから10 nmolまで段階的に96穴プレートにそれぞれ分注し, 0.2 mM NAM(N-(9-acridinyl) maleimide)を含む50 mMホウ酸緩衝液(pH 8.8)100 μlを加えて,遮光した状態で10分間反応させた。蛍光プレートリーダーを用いて,励起波長:365 nm,蛍光波長:435 nmで蛍光強度を測定した。それぞれのL-システインの量に対する蛍光強度をプロットし,検量線を作成した。
結果
L-システインを10 pmolから3 nmol含む溶液における蛍光強度のプロットを元に,最小二乗法により算出した近似直線は,寄与率(R2)が0.998となり,濃度依存的な蛍光強度の増加を示した(図2)。この傾向は,10 pmolから300 pmolの場合(図3)と比較してもほぼ同様の結果であったことから,本法によりNAMを用いて遊離のチオール基が検出できる範囲は,10 pmol〜3 nmolである。
〔実施例3〕プローブの結合量の測定(ヘパリン糖鎖量一定)
実験方法
1.ヘパリン糖鎖の固定化
実施例1「固定化ヘパリン糖鎖のプローブによる検出」と同様にヘパリン糖鎖を固定した。
2.プローブ等の添加
2%ウシ血清アルブミンを含む溶液100 μlにプローブを42.3 pmol,126 pmol, 423 pmol,1.26 nmol加えてそれぞれ溶解し,固定化ヘパリン糖鎖に添加した。
3.蛍光強度の測定
25℃で3.5時間反応させた後,素早く洗浄し(300 mM NaClを1ウェル当たり200μl使用して4回洗浄した後,リン酸緩衝生理食塩水を1ウェル当たり200μl使用して2回洗浄),0.2 mM NAM(N-(9-acridinyl) maleimide)を含む50 mMホウ酸緩衝液(pH 8.8)100 μlを加えて,遮光した状態で20分間反応させた。蛍光プレートリーダーを用いて,励起波長:365 nm,蛍光波長:435 nmで蛍光強度を測定した。
結果
ヘパリン糖鎖を一定量固定化したプレートに対して,42.3 pmolから1.26 nmolのプローブを添加した場合において,量依存的かつ直線的な蛍光強度の増加がみられた(図4)。これにより,検出された蛍光強度は,ヘパリン糖鎖に特異的に結合したプローブに由来していることが明らかとなった。
〔実施例4〕ビオチン化ヘパリンの結合量の測定(プローブ量一定)
実験方法
1.ヘパリン糖鎖の固定化
実施例1「固定化ヘパリン糖鎖のプローブによる検出」と同様にビオチン化ヘパリン糖鎖を精製し,水溶液とした。この溶液0.5 μl,1 μl,2.5 μl,5 μlをリン酸緩衝生理食塩水で希釈して,ストレプトアビジンがコーティングされたプラスチックプレートにそれぞれ供し,4℃で一晩反応させた後,リン酸緩衝生理食塩水を添加して十分に洗浄し,固定化ヘパリン糖鎖とした。
2.プローブの添加
2%ウシ血清アルブミンを含む溶液100 μlにプローブを4.23 nmol加えて溶解し,固定化ヘパリン糖鎖に添加した。
3.蛍光強度の測定
25℃で3.5時間反応させた後,素早く洗浄し(300 mM NaClを1ウェル当たり200μl使用して4回洗浄した後,リン酸緩衝生理食塩水を1ウェル当たり200μl使用して2回洗浄),0.2 mM NAM(N-(9-acridinyl)
maleimide)を含む50 mMホウ酸緩衝液(pH 8.8)100 μlを加えて,遮光した状態で10分間反応させた。蛍光プレートリーダーを用いて,励起波長:365 nm,蛍光波長:435 nmで蛍光強度を測定した。
結果
0.5 μlビオチン化ヘパリン水溶液を用いて糖鎖を固定化したものに比べて,1 μlビオチン化ヘパリン水溶液を用いた場合に,蛍光強度の増加がみられた(図5)。このことから,試料中の糖鎖をビオチン化しプレートに固定化することにより,本法での定量が可能であることを示した。また,2.5 μl以上のビオチン化ヘパリン水溶液で飽和していた。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
特定の病気に関係する硫酸化糖鎖の構造を特異的に認識するプローブが本発明に基づいて開発される。さらに、診断マーカーによる病気診断にそのプローブを利用する際に、本発明の検出法により簡便にその硫酸化糖鎖を検出することができるようになる。
<配列番号1>
配列番号1は、グリコサミノグリカン(ヘパリン、ヘパラン硫酸)に特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質(ペプチド)のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)を示す。
<配列番号2>
配列番号2は、グリコサミノグリカン(ヘパリン、ヘパラン硫酸)を特異的に認識するペプチド、HappY(Heparin-associated peptide
Y)をコードするDNAの塩基配列(CGGACGCGTGGGTCGACCCGGGAATTCCGGACCGGT)を示す。
<配列番号3>
配列番号3は、グリコサミノグリカン(ヘパリン、ヘパラン硫酸)を特異的に認識するペプチド、HappY(Heparin-associated peptide
Y)のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTG)を示す。
Van Kuppevelt, T. H. et al., J. Biol. Chem. 273, 12960-12966, 1998 Meguro H. and Ohrui H.、 Biosci. Biotech. Biochem. 60、 1919-1924、 1996 Schafer J. et al.、 Anal. Biochem. 209、 53-56、 1993 Fujii S. et al.、 Anal. Sci.20、 209-212、 2004

Claims (14)

  1. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンの検出法。
  2. 固相に固定されているグリコサミノグリカンの存在下で、前記分子プローブを前記試料と接触させる請求項1記載の検出法。
  3. 前記試料中のグリコサミノグリカンを固相に固定した後、前記分子プローブと接触させる請求項1記載の検出法。
  4. グリコサミノグリカンを被験物質と接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニング法。
  5. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブと被験者からの試料を接触させた後、N-(9-アクリジニル)マレイミドを添加し、発生した蛍光を測定することを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査法。
  6. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカン検出キット。
  7. さらに、グリコサミノグリカンを含む請求項6記載のキット。
  8. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンに特異的に結合する物質のスクリーニングキット。
  9. さらに、グリコサミノグリカンを含む請求項8記載のキット。
  10. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブ及びN-(9-アクリジニル)マレイミドを含む、グリコサミノグリカンが診断マーカーとなる疾患の検査キット。
  11. さらに、グリコサミノグリカンを含む請求項10記載のキット。
  12. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質を含む分子プローブであって、請求項1記載の検出法、請求項4記載のスクリーニング方法又は請求項5記載の検査法に使用される前記分子プローブ。
  13. グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有する物質が、以下の(a)又は(b)のペプチドである請求項12記載の分子プローブ。
    (a)配列番号1のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)からなるペプチド。
    (b) 配列番号1のアミノ酸において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有するペプチド。
  14. 以下の(a)又は(b)のペプチド。
    (a)配列番号1のアミノ酸配列(RTRGSTREFRTGC)からなるペプチド。
    (b) 配列番号1のアミノ酸において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸からなり、グリコサミノグリカンに特異的に結合することができ、かつ遊離のチオール基を有するペプチド。
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