JPWO2011036939A1 - 溶融ガラス製造装置、溶融ガラス製造方法およびそれらを用いた板ガラスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ガラスの溶解温度の指標には、Tη、すなわち、ガラス粘度ηが102[dPa・S]となる温度が用いられるが、無アルカリガラスはTηが1500〜1760℃であり、通常のソーダライムガラス等のアルカリ含有ガラスに比べてTηが100℃以上高く、均質化が難しい。このため、特許文献1,2に記載のソーダライムガラス等の一般的な大量生産用等のレイアウトの溶融炉では十分均質化することができず、均質性に対する要求が特に厳しいガラス製品(FPD用のガラス基板等)の製造には必ずしも適していなかった。
前記溶解槽の底面近傍に、溶融ガラス流路の幅方向にわたって複数の第1のバブラーおよび複数の第2のバブラーを有し、
前記第1のバブラーは、前記の第2のバブラーよりも溶融ガラス流路の上流側に設けられており、
前記溶解槽は、該溶解槽の上部空間を加熱するためのバーナーを有し、
前記溶解槽の溶融ガラス流路の長さをLFとするとき、前記溶融ガラス流路の上流端から前記第1のバブラーの列までの距離が0.4LF〜0.5LFであり、前記溶融ガラス流路の下流端から前記第2のバブラーの列までの距離が0.45LF〜0.55LFであり、前記第1のバブラーの列と前記第2のバブラー列との距離LPが500〜1000mmであり、
前記溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、前記第1のバブラーの列と該列の上流側に直近のバーナーとの距離LB1が0〜2000mmであり、
前記溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、前記第2のバブラーの列と該列の下流側に直近のバーナーとの距離LB2が800〜2500mmであり、
かつ、LB2>LB1であることを特徴とする溶融ガラス製造装置を提供する。
本発明の板ガラス製造方法は、均質性が高く、透明性が高い板ガラスを製造することができるため、FPD用の基板の製造に好適である。
この点から、本発明の溶融ガラス製造装置、および、溶融ガラス製造方法は、FPD用のガラス基板のような、品質についての要求が厳しいガラス製品を所定量(20〜100トン/日)生産するのに適している。
溶解槽10の上流側の端部にはガラス原料の投入口11が設けられている。投入口11から投入されたガラス原料は、バーナー15による加熱によって溶解して溶融ガラスGとなり、溶解槽10内に保持される。溶解槽10の下流側の端部には、溶融ガラスGを次工程に払出すための払出し口12が設けられている。払出し口12は下流側の導管20と連通している。
複数の第1のバブラー13、および、複数の第2のバブラー14は、溶解槽10の幅方向、より具体的には、溶解槽10の溶融ガラス流路の幅方向、にわたって所定の間隔(ピッチ)を開けて配設されている。
また、第1のバブラー13は、第2のバブラー14よりも溶融ガラス流路の上流側に設けられており、第1のバブラー13の列と第2のバブラー14の列との間には所定の間隔が設けられている。
なお、第1のバブラー13、および、第2のバブラー14の列方向における個々のバブラーのピッチ、ならびに、第1のバブラー13の列と第2のバブラー14の列との距離の好適範囲については後述する。
本発明の溶融ガラス製造装置における溶解槽10は、溶融ガラス流路の底部に溶融ガラスによる侵食が問題となる段差構造が存在しないため、Tηが1500〜1760℃であるガラスの製造に好適である。
したがって、特許文献1,2に記載されているような従来の溶解槽(溶融炉)に比べて、溶解槽10の長さが短く、溶解槽における下流側循環流を形成する部位の長さも短い。
本発明の溶解槽10の溶融ガラス流路の長さLFは、溶融ガラス流路の幅によって異なるが、好ましくは10〜30mであり、より好ましくは10〜25mであり、さらに好ましくは15〜22mである。
一方、溶融ガラス流路の幅は、好ましくは5〜10mであり、より好ましくは5.5〜9mであり、さらに好ましくは6.5〜8mである。
なお、第1のバブラー13および第2のバブラー14から供給するガス16,17には、溶融ガラスG、および、バブラー13,14等の溶解槽10の構成要素に悪影響を及ぼさないものを用いることが好ましい。このようなガスの具体例としては、空気、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴン等が例示される。バブラー13,14の材料として、白金または白金合金が用いられる場合、バブラー13,バブラー14から供給するガス16,17には、窒素、ヘリウム、および、アルゴンといった酸素を含まないガスを用いることが好ましい。これらの中でも窒素が特に好ましい。
LPが500mm未満だと、第1のバブラー13の列と、第2のバブラー14の列との距離が近すぎるため、溶解槽10内での溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成を促進する効果に乏しく、かつ、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを所定の関係になるように制御するのが困難である。
LPが1000mm超の場合も、第1のバブラー13の列と、第2のバブラー14の列との距離が広すぎるため、溶解槽10内での溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成を促進する効果に乏しく、かつ、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを所定の関係になるように制御するのが困難である。
溶解槽10において、LPが600〜800mmであることが好ましい。
個々のバブラー間のピッチpが700mm超だと、個々のバブラー間の距離が広すぎるため、溶解槽10内での溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成を促進する効果が不十分となるおそれがあり、特に、溶融ガラス流路の幅方向において、部位によって、溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成の促進に差が生じ、循環流の流速にムラが生じるおそれがあり、溶融ガラスGの均質化という点から好ましくない。また、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを所定の関係になるように制御するのが困難になるおそれがある。
一方、個々のバブラー間のピッチpを400mm未満としても、溶解槽10内での溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成の促進にはもはや寄与せず、むしろ、費用対効果の観点では溶解槽10内に設ける第1,第2のバブラー13,14の数が過剰となり、溶融ガラスの製造コストの増加につながることから好ましくない。
図2に示す溶解槽10において、第1のバブラー13の突出口と第2のバブラー14の突出口とが千鳥状に配置されており、第1のバブラー13の突出口と第2のバブラー14の突出口とが同軸上に存在しない。
このような配置にした場合、第1のバブラー13の突出口のいずれかが機能しなくなった場合であっても、下流側に千鳥状に配置された第2のバブラー14の突出口の存在により、溶解槽10内での溶融ガラスGの循環流(上流側循環流100、下流側循環流101)の形成を促進する効果が損なわれることがなく、かつ、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを所定の関係になるように制御することができる。
詳しくは後述するが、本発明では、第2のバブラー14から供給されるガス17の平均流量V2を第1のバブラー13から供給されるガス16の平均流量V1よりも小さくし(制御1)、かつ、第2のバブラー14の上方の雰囲気温度T2を第1のバブラー13の上方の雰囲気温度T1よりも低くすることにより(制御2)、下流側循環流101の単位時間当たりの流量を下げて、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを所定の関係になるように制御することができる。これにより、Tηが1500〜1760℃の溶融ガラスを製造する際に、溶融ガラスの均質化を促進することができ、均質性の高い高品質な溶融ガラスを得ることができる。
但し、第2のバブラー14の列と該列の下流側に直近のバーナー15とを離しすぎると、第2のバブラー14の上方の雰囲気温度が低くなりすぎて、却って溶融ガラスの均質化が不十分になる等の問題が生じる。また、溶解槽10の下流側の端部に設けられた払出し口12から払出される溶融ガラスGの温度が低くなり、後工程において減圧脱泡を行う場合に脱泡し難くなる等の問題が生じる。このため、LB2=2500mm以下とする必要がある。
したがって、LB2=800〜2500mmである。なお、LB2=1000〜2000mmであることが好ましく、LB2=1000〜1600mmであることがより好ましい。
本発明において、LB2−LB1≧300mmであることが好ましく、LB2−LB1≧500mmであることがより好ましく、LB2−LB1≧800mmであることがさらに好ましい。
したがって、LB1=0〜2000mmである。なお、LB1=500〜1500mmであることが好ましい。
また、隣り合うバーナー15間のピッチは、バーナー15の種類や溶解槽10のレイアウトにもよるが、600〜2600mmが好ましく、800〜2400mmがより好ましい。
溶解槽10底部の耐火レンガの外側には、該耐火レンガを冷却するための空冷または水冷等による冷却手段が設けられていると、耐火レンガの寿命が向上するため、好ましい。
本発明の溶融ガラス製造方法では、上記制御1,2を行いつつ溶融ガラスを製造する。
上記制御1,2を行うことによって、下流側循環流101の単位時間当たりの流量を下げて、上流側循環流100の流速と下流側循環流101の流速とを、後述する所定の関係になるように制御することができる。
また、V1−V2≧0.2リットル/分が好ましく、V1−V2≧0.4リットル/分がより好ましく、V1−V2≧0.6リットル/分がさらに好ましく、V1−V2≧1.0リットル/分が特に好ましい。
また、T1−T2は10〜35℃が好ましく、T1−T2は15〜30℃がより好ましく、19〜26℃がさらに好ましい。
なお、T1およびT2は、以下の方法で測定することができる。
(測定位置)
T1:第1のバブラーの列よりも上流側に直近のバーナーと、該バーナーよりもさらに上流側に位置する直近のバーナーと、の中間位置。
T2:第2のバブラーの列と、該バブラーよりも下流側に直近のバーナーと、の中間位置。
(測定方法)
溶解槽の側面に設けられた観察用窓から、対面側の側面の溶解槽内壁面温度を放射温度計(例えば、CHINO IR−AH3SU(測定波長:0.65μm、ε=1.0))で測定する。
F1=8〜15m/時間、F2=1〜4m/時間となるように制御することがより好ましい。
なお、F1およびF2は、以下の方法で測定することができる。
(測定位置)
F1:溶融ガラス流路の上流端からの距離が0.30LF〜0.34LFで、溶融ガラス流路の幅方向における中央付近。
F2:溶融ガラス流路の下流端からの距離が0.22LF〜0.30LFで、溶融ガラス流路の幅方向における中央付近。
(測定方法)
溶融ガラスの表層における泡の流れをビデオ撮影し、泡の移動距離に対する移動時間を測定して流速とする。この手順を2〜3回繰り返して平均流速を求める。
本発明の板ガラス製造方法では、上記した本発明の溶融ガラス製造方法により得られた溶融ガラスを板ガラスに成形する。溶融ガラスを成形して板ガラスとする手段としては、フロート法、ダウンドロー法等の各種成形方法を用いることができる。Tηが1500〜1760℃のガラスの場合、フロート法が特に好ましい。
本発明の板ガラス製造方法において、上記した本発明の溶融ガラス製造方法により得られた溶融ガラスを板ガラスに成形する前に、該溶融ガラス中の泡を減圧脱泡により脱泡してもよい。
本発明の板ガラス製造方法では、本発明の溶融ガラス製造方法により得られた均質性が高い溶融ガラスを成形して板ガラスとするので、均質性が高く、透明性が高い板ガラスを得ることができる。
本発明の板ガラス製造装置では、様々な用途の板ガラスの製造に適用可能であるが、均質性が高く、透明性が高い板ガラスが得られることから、FPD用のガラス基板のように、均質性についての要求がきわめて厳しい用途の板ガラスの製造に適用することが特に好ましい。
溶融ガラス流路の長さLF:16〜25m
溶融ガラス流路の幅:5.5〜9m
溶融ガラス流路の上流端から第1のバブラー13の列までの距離
:0.43LF〜0.46LF
溶融ガラス流路の下流端から第2のバブラー14の列までの距離
:0.47LF〜0.54LF
第1のバブラー13の列と、第2のバブラー14の列との距離LP:600〜800mmバブラーの列方向における個々のバブラー13,14のピッチp:400〜700mm
溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、第1のバブラー13の列と該列の上流側に直近のバーナー15との距離LB1:500〜1500mm
溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、第2のバブラー14の列と該列の下流側に直近のバーナー15との距離LB2:1000〜2000mm
LB2−LB1≧500mm
溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、個々のバーナー間の距離
:800〜2400mm
第1のバブラー13からの平均流量V1、および、第2のバブラー14からの平均流量V2が下記条件となるように調整する。
V1:1.8〜2.6リットル/分
V2:0.9〜2.0リットル/分
V1−V2≧0.6リットル/分
バーナー15での燃焼により、第1のバブラー13の上方の雰囲気温度T1、および、第2のバブラー14の上方の雰囲気温度T2は下記条件に保持される。なお、T1およびT2は上述した方法で測定する。
T1:1590〜1710℃
T2:1580〜1675℃
T1−T2:10〜35℃
溶解槽10内における上流側循環流100の平均流速F1および下流側循環流101の平均流速F2を上述した方法により測定する。結果は以下の通りである。
F1=8〜15m/時間
F2=1〜4m/時間
上記の条件で実施することにより、Tηが1500〜1760℃で、均質性が高い高品質な無アルカリガラスが製造される。
本出願は、2009年9月24日出願の日本特許出願2009−219347に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
11:投入口
12:払出し口
13:第1のバブラー
14:第2のバブラー
15:バーナー
16:第1のバブラーからのガス
17:第2のバブラーからのガス
20:下流側の導管
100:上流側循環流
101:下流側循環流
Claims (8)
- ガラス粘度ηが102[dPa・S]となる温度Tηが1500〜1760℃の溶融ガラスを製造するための溶融ガラス製造装置であって、該溶融ガラス製造装置はガラス原料を溶解する溶解槽を有し、
前記溶解槽の底面近傍に、溶融ガラス流路の幅方向にわたって複数の第1のバブラーおよび複数の第2のバブラーを有し、
前記第1のバブラーは、前記の第2のバブラーよりも溶融ガラス流路の上流側に設けられており、
前記溶解槽は、該溶解槽の上部空間を加熱するためのバーナーを有し、
前記溶解槽の溶融ガラス流路の長さをLFとするとき、前記溶融ガラス流路の上流端から前記第1のバブラーの列までの距離が0.4LF〜0.5LFであり、前記溶融ガラス流路の下流端から前記第2のバブラーの列までの距離が0.45LF〜0.55LFであり、前記第1のバブラーの列と、前記第2のバブラーの列との距離LPが500〜1000mmであり、
前記溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、前記第1のバブラーの列と該列の上流側に直近のバーナーとの距離LB1が0〜2000mmであり、
前記溶解槽での溶融ガラスの流路方向における、前記第2のバブラーの列と該列の下流側に直近のバーナーとの距離LB2が800〜2500mmであり、
かつ、LB2>LB1であることを特徴とする溶融ガラス製造装置。 - 前記第1のバブラーおよび前記第2のバブラーにおいて、バブラーの列方向における個々のバブラーのピッチpが、400〜700mmである請求項1に記載の溶融ガラス製造装置。
- 前記溶解槽における溶融ガラスの流路方向を軸とするとき、前記第1のバブラーと前記第2のバブラーとが同軸上に存在しないように配置されている請求項1または2に記載の溶融ガラス製造装置。
- 前記溶解槽の構成材料がZrO2含有の耐火レンガであり、溶融ガラス流路をなす前記溶解槽の底面のうち、前記第1のバブラーの列から上流側に0.1LF〜0.3LFの部分に、質量%でZrO2が85%以上97%以下で、残部がSiO2を主体とするガラス質の熱溶融耐火物が用いられた請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融ガラス製造装置。
- 前記第1のバブラーおよび前記第2のバブラーが白金製または白金合金製であり、前記第1のバブラーおよび前記第2のバブラーから供給されるガスが酸素を含まないガスである請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融ガラス製造装置。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶融ガラス製造装置を用いて、前記第1のバブラーから供給されるガスの平均流量をV1[リットル/分]とし、前記第2のバブラーから供給されるガスの平均流量をV2[リットル/分]とし、前記第1のバブラーの上方の雰囲気温度をT1[℃]とし、前記第2のバブラーの上方の雰囲気温度をT2[℃]とするとき、V1>V2、T1>T2となる条件で溶融ガラスを製造する溶融ガラス製造方法。
- 前記第1のバブラーよりも上流側に形成される溶融ガラスの上流側循環流の平均流速をF1[m/時間]とし、前記第2のバブラーよりも下流側に形成される溶融ガラスの下流側循環流の平均流速をF2[m/時間]とするとき、F1=5〜20m/時間、F2=0.5〜7m/時間となる条件で溶融ガラスを製造する請求項6に記載の溶融ガラス製造方法。
- 請求項6または7に記載の溶融ガラス製造方法により得られた溶融ガラスを板ガラスに成形する板ガラス製造方法。
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