JPWO2011033933A1 - 平均自由行程を測定する装置、真空計、および平均自由行程を測定する方法 - Google Patents

平均自由行程を測定する装置、真空計、および平均自由行程を測定する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、荷電粒子の平均自由行程を直接的に測定可能な平均自由行程を測定する装置、真空計、および平均自由行程を測定する方法を提供する。本発明の一実施形態に係る、平均自由行程を測定する装置は、イオンを発生させるイオン源と、イオン源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離L1である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出するコレクタ(24a)と、第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出するコレクタ(24b)とを備えている。上記装置の制御部は、第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する。

Description

本発明は、平均自由行程を測定する装置、真空計、および平均自由行程を測定する方法に関するものである。
DRAM、MRAM等の半導体装置の微細化は益々進んでいる。このような半導体装置の作製において微細加工を進めるには、加工表面あるいは凹部に対して、イオンを垂直に入射させることが非常に重要である。例えば、特許文献1の図5に示されているようにスパッタによる高アスペクト比の孔の埋め込みにおいては、スパッタ粒子を孔底に対して如何に垂直に入射するかが、孔の埋め込み特性に大きな影響を及ぼす。特許文献1の図5に示されているように、孔底に対して垂直にスパッタ粒子を入射させる程、埋め込み特性は改善される。
このような状態を実現する方法として、スパッタ粒子を何らかの方法でイオン化し、基板が載置されている基板ホルダに対して垂直に入射させる方法、いわゆるイオンスパッタ法(特許文献2参照)がある。イオンを基板に垂直に入射させる為には、基板に負のDCバイアス又はRFパワーを基板ホルダに印加して、基板に負電圧を発生させることにより基板ホルダにイオンを引き込む。そうすると、100〜数百Vの電圧が発生すると、スパッタ粒子の熱エネルギーはせいぜい0.1eV程度と考えられるので、ターゲットと基板ホルダとの間でイオンの衝突が無ければ、ほぼ基板に垂直に入射することになる。
しかし、実際はターゲットと基板ホルダとの間で起こる他の粒子との衝突の為にイオンは散乱し、入射角は拡がったものとなってしまう。
従って、基板に垂直にイオンを入射させる為には、加速される領域で他の粒子と衝突させずに基板まで到達させることが肝要である。
ここで、イオンが加速される領域は、陰極の近傍に存在するカソードフォール又はシースと呼ばれている領域である。放電中で生じている電位の変化の多くはこの部分で生じている。この厚さは、放電空間の圧力及び基板ホルダへの印加パワー等に依存するが、典型的には10〜30mm程度である。
従って、このカソードフォール又はシースの領域を衝突せずにイオンを通過させることが出来れば、基板に小さな拡がり角のイオンビームを入射させることが可能となる。
ここで、衝突せずに粒子が運動できる平均的な距離のことを平均自由行程という。
もし、実際のプロセスガス中での平均自由行程が分れば、プロセス条件を調整することにより、カソードフォール又はシース長より平均自由行程を長くすることにより、拡がり角の小さな入射イオンを得ることが出来る。
また、ドライエッチングにおいても、同様のことが当てはまり、高異方性の形状のエッチングを行うためには、拡がり角の小さなイオンをビーム状にエッチング面に入射させる必要がある。この場合においても、実際のエッチングガス中での平均自由行程が分れば、プロセス条件を調整することにより、カソードフォール又はシース長より平均自由行程を長くすることによりエッチング面に拡がり角の小さなイオンビームを入射させることが可能となる。
特開平8−203827号公報 特開2001−35919号公報 特開2001−165907号公報
ジョン F.オハンロン、「真空技術マニュアル」、産業図書株式会社、P7〜10 熊谷 寛夫、他3名、「真空の物理と応用」、裳華房、P43〜49
上述のように、スパッタやドライエッチングを行う際には、より良い処理を行うためには平均自由行程を求めることが有効である。
従来では、所定のガス雰囲気中で、所定のイオンの平均自由行程を求める場合、温度、ならびに所定のガスの粒子径および所定のイオンの径を求め、該値を用いてガス数密度や圧力から変換して平均自由行程を求めている(非特許文献1、2参照)。すなわち、従来では、平均自由行程を直接求めてはおらず、温度やガスの粒子径およびイオン径から間接的に計算により求めている。従って、イオンが移動する系の温度、および該イオンの径、雰囲気ガスの粒子径が分からなければ、平均自由行程を求めることはできなかった。
ここで、「ガス数密度」とは、ガスが分子の場合は単位体積当たりの分子の数、ガスが単原子分子の場合は単位体積当たりの原子数のことである。
また、特にガスやイオンの径を求める場合には、別に用意した質量分析計によって存在する成分を判定し、文献値から径を求める必要があり、平均自由行程を求める計算の前段階においても、非常に手間を要していた。さらに、雰囲気ガスが一種でない混合ガスの場合には、質量分析計によって成分の存在比率(成分比率)を求めて、それぞれの重み付けを行なった計算によって最終的な平均自由行程を求める必要があった。
このように、イオンのイオン径、雰囲気ガスの粒子径や温度が知られていない場合には、平均自由行程を圧力やガス数密度から変換することは困難となり、またこれらが知られても混合ガスの場合には変換計算が煩雑となる。
平均自由行程は、スパッタやドライエッチングに限らず様々な分野で利用できる。
例えば、平均自由行程は、真空度を示すことができる。真空度(真空のレベル)を示す方法は、「ガス数密度」、「圧力」および「平均自由行程」の三つがあり、従来では、ガス数密度、または圧力が用いられている。この三つは雰囲気ガスの分子径や温度をパラメータとして互いに変換することが可能なので原理的には同じ量を示してはいるが、利用する現象としては全く別と言ってよいほど異なっている。
現在、工業的に重要となっているスパッタ、ドライエッチングなどのプロセスでは、この3つのうち平均自由行程が直接関係しており、次にガス数密度が関係している。それは、ガス(中性分子)とイオン、およびガス同士の衝突やガスの流れがこれらのプロセスのキーとなっているからである。従って、平均自由行程を直接正確に、かつ簡便に求めることができれば、より有用な真空度表現をすることができる。
このように様々な分野で威力を発揮する平均自由行程を、煩雑な計算や測定を行うことなく、簡便かつ正確な方法で直接求めることは非常に有用であるが、現在は、平均自由行程を直接求める方法は確立されていない。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、荷電粒子の平均自由行程を正確かつ簡便に測定可能な平均自由行程を測定する装置、真空計、および平均自由行程を測定する方法を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明は、雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する装置であって、前記荷電粒子を発生する発生源と、前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段と、前記第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、真空度を測定する測定する真空計であって、荷電粒子を発生する発生源と、前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段と、前記第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する装置であって、前記荷電粒子を発生する発生源と、前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段と、前記検出された第1および第2の荷電粒子数を記憶する記憶手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する装置であって、前記荷電粒子を発生する発生源と、前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段と、前記検出された第1および第2の荷電粒子数を表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、荷電粒子を発生する発生源と、該発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段とを備える装置を制御する制御装置であって、前記荷電粒子を発生させるように前記発生源を制御して、前記検出手段にて前記第1および第2の荷電粒子数を検出させる手段と、前記第1および第2の荷電粒子数を取得する手段と、前記取得された第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する算出手段とを備えることを特徴とする。
さらに、本発明は、雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する方法であって、前記荷電粒子を発生源から発生させる工程と、前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する工程と、前記第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する工程とを有することを特徴とする。
本発明の基本的な原理を示す図である。 本発明の基本的な原理を示す図である。 本発明の基本的な原理を示す図である。 本発明の基本的な原理を示す図である。 本発明の基本的な構成を示す図である。 本発明の基本的な測定手順を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第3の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第3の実施形態における動作を示す図である。 本発明の第4の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第5の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 本発明の第6の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図11Aに示す装置のフィラメント・グリッドの制御回路を示す図である。 本発明の第7の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図12Aに示す装置のフィラメントの制御回路を示す図である。 本発明の第8の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図13Aに示した装置の各電極の形状を示す図である。 図13BにおけるラインAでの電子ビーム軌道を示す図である。 図13BにおけるラインBでの電子ビーム軌道を示す図である。 本発明の第9の実施形態に係る平行自由行程を測定する装置を示す図である。 図14Aに示す各電極の形状、およびそれらの回路を示す図である。 本発明の第10の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。 図15AのA−A′線断面図である。 本発明に係る、平均自由行程を測定する装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
本発明の一実施形態では、従来に無い新原理を用いて、イオンや電子といった荷電粒子の平均自由行程を直接的に求める。すなわち、上記本発明に特徴的な新原理の基本は、異なる二つの距離(短い方の距離は距離0を含む)を飛行させた荷電粒子(イオンや電子)が雰囲気ガスである中性分子との衝突によって減衰する量を計測し、その比率から荷電粒子の平均自由行程(荷電粒子が衝突なしに進める距離の平均値)を算出するものである。
この減衰は、放射線元素の減衰と同じ指数関数的な現象であって、常にある時間(飛行距離)が進むと存在量が以前のある比率になるものである。習慣的に、放射線元素では存在量が半分になるまでの時間を半減期としているが、平均自由行程では1/e(0.37倍)となる飛行距離を平均自由行程としている。このように指数関数の減衰であるため、二つの異なる飛行距離での減衰量が分かると、数学的に減衰の強さ(すなわち、平均自由行程)を算出することが可能となるのである。
なお、後述する各実施形態では、中性分子中(所定のガス雰囲気中)の荷電粒子(イオンや電子)の平均自由行程を求めている。荷電粒子がイオンの場合、ガス雰囲気(中性分子)中のイオンの平均自由行程は、上記ガス雰囲気(中性分子)中の該イオンに対応する中性分子の平均自由行程と略等しい。従って、所定のガス雰囲気(中性分子)中の所定のイオンの平均自由行程を求めることにより、該所定のガス雰囲気(中性分子)中の該所定のイオンに対応する中性分子の平均自由行程を求めることができる。
なお、「イオンに対応する中性分子」とは、該イオンがイオン化する前の中性分子である。
上記新原理を実現する基本構造としては、荷電粒子を発生させる発生源(例えば、イオン源や電子源等)からの距離(短い方の距離は、発生源からの距離0を含む)が異なる二つのコレクタ(検出器)を荷電粒子の飛行軸上に設置する。このとき、二つのコレクタを同一の荷電粒子の飛行軸上に設置する場合は、近い方のコレクタを、例えばメッシュ状といった入射荷電粒子の一部を補足し、他の一部を透過させる構造として一部の荷電粒子がそこを透過して遠い方のコレクタに到達するようにする。メッシュの透過率や飛行距離はその値が正確に知れれば良いだけで任意の値となる。
また、二つのコレクタを異なる荷電粒子の飛行軸上に設置する場合は、該二つのコレクタにて荷電粒子数を測定する。このとき、発生源をコレクタの数分だけ用意しても良いし、1つの発生源を回転ステージ上に設け、該回転ステージを回転させて該回転ステージ上の発生源からの荷電粒子をそれぞれのコレクタに入力させるようにしても良い。この場合は、後述する「減衰なし較正」を行えばよい。
このように、本発明では、二つのコレクタを同一の荷電粒子の飛行軸上に設けるか否かは問題ではなく、発生源から異なる距離に設けられた、少なくとも二つのコレクタのそれぞれにおいて、荷電粒子数を測定することが重要である。何故ならば、本発明では、発生源での荷電粒子の発生量の変動といった要因を除外するために、荷電粒子数の比率を用いることを本質としており、該比率を求めるために、発生源から異なる距離に設けられた、少なくとも二つのコレクタを設けているのである。
なお、コレクタの数は、二つに限定されず、三つ以上あっても良い(後述の第1〜第9の実施形態を参照)。さらに、荷電粒子の飛行距離を少なくとも2つ計測できる構造であれば、コレクタの数は1つであっても良い(後述の第10の実施形態を参照)。
すなわち、本発明では、荷電粒子数の比率を用いて平均自由行程を求めることを本質としており、このために、第1の飛行距離(0以上の距離)だけ飛行した荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、さらに第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離だけ飛行した荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出している。従って、第1および第2の荷電粒子数を計測できれば、コレクタの数や構造はいずれであっても良い。
新原理では減衰量の絶対値は不要であって両者の比率のみが必要なことから、元となる荷電粒子の発生源の荷電粒子量がどんなに変化しても、また電極の汚染や変形による検出側の変動があってもこれらは無関係となる。すなわち、バックグランドや変動・擾乱要素はほぼ完全に排除されることになる。
また荷電粒子の減衰量の比率以外に平均自由行程の算出に必要なのは飛行距離のみであり、これはその絶対値は容易に確定することが出来、しかも汚染や熱によっては変化しない。そのため、簡単かつ高精度に平均自由行程の絶対値を得ることが可能となる。すなわち、本原理は言わば測定原器を内蔵しており、それと比較して絶対値を得るとも言える。
このように、新原理では、発生源からの飛行距離が0m(ただし、距離の単位は任意)以上の第1の飛行距離である荷電粒子を検出し、上記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子を検出するように検出手段を構成する。このような構成として、例えば、第1の飛行距離の荷電粒子を検出する第1のコレクタと、第2の飛行距離の荷電粒子を検出する第2のコレクタとを少なくとも設けている。また、例えば、単一のコレクタにて第1の飛行距離の荷電粒子および第2の飛行距離の荷電粒子を検出するように、上記検出手段を構成しても良い。
そして、第1の飛行距離だけ飛行して検出された荷電粒子数と第2の飛行距離だけ飛行して検出された荷電粒子数との比率、ならびに第1の飛行距離(例えば、発生源から第1のコレクタまでの距離)および第2の飛行距離(例えば、発生源から第2のコレクタまでの距離)によって平均自由行程を直接的に求めている。従って、各種変動成分が平均自由行程を算出するためのパラメータに含まれていないので、正確に平均自由行程を求めることができる。さらに、従来のように、平均自由行程を求めるために別個の測定(質量分析)等が必要無いので、平均自由行程を簡便に求めることができる。なお、本明細書において、「第1のコレクタ」とは、ある2つのコレクタのうち、イオン源といった荷電粒子の発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離の荷電粒子を検出するためのコレクタである。従って、発生源の内部に設けられる内部コレクタも、第1のコレクタに含めることができる。
また、本明細書において、「第2のコレクタ」とは、上記発生源からの飛行距離が第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子を検出するためのコレクタであって、上記発生源からの距離が、第1のコレクタよりも遠いコレクタである。
さらに、本明細書において、「内部コレクタ」とは、イオン源等の荷電粒子の発生源の内部に設けられるコレクタを指す。従って、発生源の外部に設けられるコレクタを「外部コレクタ」とも呼ぶ。
本発明では、コレクタが2つである場合は、発生源側のコレクタ(内部コレクタも含む)が第1のコレクタとなり、もう一方のコレクタが第2のコレクタとなる。一方、コレクタが3つ以上ある場合は、3つ以上のコレクタのうちの1つ(内部コレクタを含む。ただし、発生源から最も遠いコレクタは除く)が第1のコレクタとなり、該第1のコレクタとなるコレクタよりも発生源から遠い距離に位置するコレクタが、第2のコレクタとなる。
本発明によれば、平均自由行程を正確かつ簡便に直接求めることができるので、平均自由行程を利用する様々な分野において、より正確な平均自由行程の値を適用することができる。例えば、スパッタやドライエッチングにおいて、基板やエッチング面に対する、拡がり角の小さなイオンビームの入射に関する調節等を正確かつ簡便に行うことができる。
また、例えば、真空度を測定する分野にも適用することができる。
(真空度測定について)
上述のように、真空度は、「ガス数密度」、「圧力」および「平均自由行程」の3つの量によって示すことができる。従来では、イオンゲージ(電離真空計)等によるガス数密度の計測、または隔膜真空計等による圧力(単位面積の壁を押す力)の計測により真空度を求めている。
イオンゲージは、雰囲気ガスである中性分子に高速の電子を衝突させて外殻電子を弾き飛ばしてイオン化し、そのイオンをコレクタ(検出器)に集めてイオン量を計測する。イオン量は雰囲気ガスのガス数密度に比例するので、電子のエネルギーや量、電極の形状や電位を特定しておき、一度計測されるイオン量とガス数密度との関係(換算値)を得ておくと、実際に計測されたイオン量からガス数密度が算出できる。
ここで、イオン量とガス数密度との換算値のことは、一般には感度と言われる。
一方、隔膜真空計は雰囲気ガスと内部に設けた十分良い真空度の領域との間に存在する隔膜が雰囲気ガスの力(圧力)で変形される量を電気的に(電気容量の大小として)計測する。変形量は雰囲気ガスの圧力に依存するので、同様に一度換算値または換算式を得ておくと変形量から圧力が算出できる。
このように両者は、測定原理が異なるので適用できる真空度の領域が異なるものの、いずれも真空度(ガス数密度/圧力)に依存する量(イオン量/変形量)から換算値または換算式によって真空度を算出している点は同じである。
そのため、比例量の絶対値を正しく計測し、かつ換算値または換算式が変動していないことが精度確保に必須となるが、これらをあらゆる条件下で長期に渡って保証することは不可能と言える。真空中では汚染は本質的に発生しやすい(もともと膜が付きやすいので真空プロセスが有効となっている)こと、および一般の測定では基本となっている標準試料との比較や試料有無の差からのバックグランドや変動・擾乱要素の排除が採用できないことが問題となる。
これに対して、本発明では、少なくとも2つのコレクタにて検出される荷電粒子数の比率、および荷電粒子の飛行距離としての発生源からコレクタまでの距離により平均自由行程を求めているので、バックグランドや変動・擾乱要素をほぼ完全に排除した形で平均自由行程を求めることができる。該平均自由行程は、真空度を示しているので、本発明によれば、バックグランドや変動・擾乱要素を除外して正確に真空度を求めることができる。
また、従来のイオンゲージによる真空度測定においては、空間電荷の影響により1Pa以上で精度が低下しはじめ、10Pa程度が測定限界となっている。一方、隔膜真空計による真空度測定では、隔膜の変形量が微小となることから1Pa以下で精度が低下しはじめ、0.1Pa程度が測定限界となっている。いずれもスパッタ、ドライエッチングで多用される1Pa前後の真空度で精度が悪くなっているので、この領域で精度よく真空度を測定できる真空計が強く望まれている。
これに対して、本発明では、空間電荷にあまり関係なく、さらには隔膜を用いずに真空度としての平均自由行程を直接求めているので、いずれの真空度においても正確に真空度(平均自由行程)を求めることができる。よって、1Pa前後の真空度でも良好に測定することができる。
このように、従来のイオンゲージ、隔膜真空計ともに真空度(密度ガス数密度/圧力)に比例する量(イオン量/変形量)を換算値または換算式によって真空度に変換しており、比例量の絶対値を正しく計測すること、および換算値または換算式が変更していないことの二つが精度確保に必須となっていた。しかしながら、本発明に特徴的な新しい測定原理はこの二つを要求せず、しかも擾乱要素を排除して真空度(平均自由行程)の絶対値を得ることが可能となる。
なお、現在、真空のレベルを示す「真空度」と真空度の一つの表現である「圧力」とを同じ意味で使うことが多いが、本明細書ではこれを厳密に区別して使うことにする。また、圧力が低い(低圧)状態を真空度が高い(高真空)とし、圧力が高い(高圧)状態を真空度が低い(低真空)と表現することが多いが、混乱を避けるため本明細書では、圧力が低い状態を「真空度が良い」とし、圧力が高い状態を「真空度が悪い」と表現する。
以上一般的な説明を行なったが、各項目ごとにより詳しい説明を行なう。
なお、以降説明では、荷電粒子としてイオンを用いる場合について説明するが、荷電粒子は電子であっても良いことは言うまでも無い。
1)計算式
まず、計算を簡単にするため、イオン源で発生するイオン数は真空度によらず一定として考える。
減衰前のイオン数をI、飛行距離:L1の減衰後のイオン数をIL1、飛行距離:L2の減衰後のイオン数をIL2、平均自由行程をλとする。これらが図1Aに模式的に示されている。
図1Aは、真空度に依存しないイオン源の場合の、本発明の平均自由行程を求める原理を説明するための模式図である。図1Aにおいて、イオン源11aから距離L1の位置に第1のコレクタとしてのコレクタ12aが配置されており、イオン源11bから距離L2(L2>L1)の位置に第2のコレクタとしてのコレクタ12bが配置されている。イオン源11a、11bのそれぞれからは、同一のイオン数Iを発生する。
なお、図1Aは、本発明の原理を示す概念図であり、イオン源11aから出力されたイオンが飛行距離L1だけ飛行してコレクタ12aに入力され、コレクタ12aが減衰後のイオン数IL1を検出し、かつイオン源11bから出力されたイオンが飛行距離L2だけ飛行してコレクタ12bに入力され、コレクタ12bが減衰後のイオン数IL2を検出することを示すものである。従って、同一領域内(同一真空度であり、同一温度の領域内)において、コレクタ12aおよび12bを同一のイオンの飛行軸上に配置しても良いし(この場合は、イオン源11aとイオン源11bとは単一のイオン源となる)、図1Aに示すようにコレクタ12aおよび12bを異なるイオンの飛行軸上に配置しても良い。ただし、後者の場合は、後述する「減衰なし較正」を行うことが好ましい。
そうすると、
L1=I・exp(−L1/λ) (1)
L2=I・exp(−L2/λ) (2)
式(1)または式(2)より、
λ=−L1/In(IL1/I) (3)
λ=−L2/In(IL2/I) (4)
が得られる。なお、“In”は自然対数である。式(3)、(4)からは、1つのコレクタにおける減衰後のイオン数から平均自由行程λを求めることができる。
また、式(1)および(2)より、
λ=(L2−L1)/In(IL1/IL2) (5)
が得られる。式(5)からは、2つのコレクタにおける減衰後のイオン数の比較から平均自由行程を求めることができる。なお、式(5)はIと無関係となるので、高精度な測定が期待される。すなわち、式(5)を用いると、イオン源に望ましくない変動(Iが不意に変動しても)があっても、平均自由行程を求めるパラメータに含まれないので、上記変動があっても正確な平均自由行程を求めることができる。
2)減衰曲線
図1Aにおける、飛行によりイオン数が減衰する状況が図1Bのグラフに示されている。横軸は雰囲気の真空度であり、縦軸は飛行後のイオン数を示す。なお、横軸は右に行くほど真空度が悪くなる、つまりガス数密度は大きくなるように示しているが、平均自由行程はガス数密度に反比例するので、横軸は右に行くほど平均自由行程は短くなる(すなわち、平均自由行程の逆数とみなせる)。図1Bにおいて、符号13は、飛行距離が短い場合であるイオン数IL1と真空度(平均自由行程)との関係を示すグラフであり、符号14は、飛行距離が長い場合であるイオン数IL2と真空度(平均自由行程)との関係を示すグラフである。
平均自由行程が飛行距離よりも十分に長い場合(図1Bの左半分)にはイオン数は一定、すなわちガス数密度に依存していないが、平均自由行程が飛行距離よりも短い場合(図1Bの右半分)には飛行後のイオン数が減少(減衰)している。真空度を良い状態から悪い状態へ変化(横軸の左から右に移動)させた場合、減衰が開始する(正確には、減衰が顕著となり始める)真空度は、平均自由行程が飛行距離と同じ程度にまで短くなった時となる。従って、減衰の開始は、飛行距離が長い方が、より長い平均自由行程にて(すなわち、より低いガス数密度=より良い真空度=横軸のより左側にて)始まる。符号13、14から分かるように、減衰の形自体は飛行距離によらず同じである。飛行後のイオン数を示す式(1)、(2)ではL1とλの比率が指数となっていることが、これら減衰状況の理由となっている。
3)真空度依存のある場合
上記式(1)〜(5)は、イオン源にて発生するイオン数は真空度に依存しないものとしていたが、イオンゲージや最も一般的なイオンゲージをベースとしたイオン源では真空度に依存してイオン数が変化する。すなわち、具体的に説明すると、図2Bの左側の部分のように、イオン電流の変化は図1Bの曲線に真空度の比例分が掛け合わされた形となる。図2Aが、イオン電流が真空度に依存するイオン源の場合の、本発明の平均自由行程を求める原理を説明するための模式図であり、図2Bが、図2Aにおける、飛行によりイオン数が減衰する状況を説明するための図である。
図2Aにおいて、真空度依存型のイオン源21aは、グリッド22aおよびフィラメント23aを備えており、イオン源21aから距離L1の位置に第1のコレクタとしてのコレクタ24aが配置されている。イオン源21aから出力されたイオンビーム25はコレクタ24aに入力される。また、真空度依存型のイオン源21bは、グリッド22bおよびフィラメント23bを備えており、イオン源21bから距離L2の位置に第2のコレクタとしてのコレクタ24bが配置されている。イオン源21bから出力されたイオンビーム25はコレクタ24bに入力される。
なお、図2Aは、図1Aと同様に本発明の原理を示す概念図である。従って、同一領域内(同一真空度であり、同一温度の領域内)において、コレクタ24aおよび24bを同一のイオンの飛行軸上に配置しても良いし(この場合は、イオン源21aとイオン源21bとは単一のイオン源となる)、図2Aに示すようにコレクタ24aおよび24bを異なるイオンの飛行軸上に配置しても良い。ただし、後者の場合は、後述する「減衰なし較正」を行うことが好ましい。
また、図2Bにおいて、符号26は、減衰前、すなわち無衝突仮定した場合のイオン源のイオン電流と真空度との関係を示すグラフであり、符号27は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離が短い場合のイオン電流(コレクタ24aにて検出されるイオン電流)と真空度との関係を示すグラフであり、符号28は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離が長い場合のイオン電流(コレクタ24bにて検出されるイオン電流)と真空度との関係を示すグラフである。
このようにイオン源が真空度に依存する場合であっても、式(3)、(4)では自然対数の中の分母がIであるとともに、分子のIL1、IL2はIに比例するので、Iに真空度依存があっても無関係となる。また式(5)ではもともとIが消えている。そのため、真空度依存のあるイオン源を使用する場合であっても、計算式としては式(3)、(4)、(5)をそのまま使用することが出来る。
4)真空度依存のあるイオン源
図2Aに示した、真空度依存のあるイオン源21a、21bが一般的なので、これについて説明する。イオン源21aは円筒型でかつ格子状など電子が透過できる形態のグリッド22aと加熱されて熱電子を放出するフィラメント23aとを備えている。グリッド22aは+100V、フィラメント23aは+30V程度に電圧が印加される。フィラメント23aより放出された電子はグリッド22aに向かって進むがほとんどの電子はグリッド22a内部にまで侵入し、そこで雰囲気ガスと衝突して正電荷のイオンを発生する。イオンはほぼグリッド22aの電位(+100V)で発生するのでアース電位のコレクタ24aに向かって進むことになり、コレクタ24aに流れる電流が発生したイオン数(イオン電流)となる。なお、イオン源21bも同様である。
飛行前のイオン数Iを求めるには、グリッド22a、22b内にコレクタ(内部コレクタ)を挿入してイオン電流を計測する。この構造はB-Aゲージとして良く知られているイオンゲージと同じになる。図3は、減衰前(イオン源)のイオン数I(イオン電流)の測定を説明するための図である。図3に示すように、グリッド22a(22b)内に、内部コレクタ31を挿入し、フィラメント23a(23b)から電子を放出させてイオンを発生させ、該イオンを内部コレクタ31にて測定することにより、イオン数Iを得ることができる。
飛行後のイオン数IL1、IL2を求めるには、グリッド22a、22bから一定距離離れた位置にコレクタ(外部コレクタ)を設置してイオン電流を計測する。このように構成すると、図2Aに示す構成になる。
5)第1の平均自由行程の求め方
真空度依存のあるイオン源を使って平均自由行程を求める方法を示す。ただし、簡単のため以下の3点が満足していることを前提とする。
α:測定に利用するイオン源が同じ真空度の、かつ同じ温度の領域に位置している。
β:測定に利用するイオン源が同じ数のイオンを発生する。
γ:各コレクタ(検出器)のイオンの検出効率は等しい。
図4は図2Bのグラフと同じであるが、具体的な数字が示されている。図4において、横軸は真空度でありPaにて表示されている(約100,000Paが大気圧)。縦軸はイオン電流であるが任意単位としている。
また、図4には、図2Aにおいて、短い飛行距離L1は8mm、長い飛行距離L2は60mmであり、それぞれの飛行によって減衰されたイオン電流が示されている。また、減衰する前のイオン電流は直線で示されている。ガスはNとしている。
すなわち、図4において、符号41は、減衰前、すなわちイオン源の内部コレクタ31にて検出したイオン電流と真空度との関係を示すグラフである。また、符号42は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離L1=8mmである場合のイオン電流(コレクタ24aにて検出されるイオン電流)と真空度との関係を示すグラフである。さらに、符号43は、減衰後のイオン電流であって、飛行距離L2=60mmである場合のイオン電流(コレクタ24bにて検出されるイオン電流)と真空度との関係を示すグラフである。
もし、図4において、真空度がラインA(0.1Pa)であったとする。この真空度でのイオン電流は、図4より内部コレクタ31による減衰前が1.1(任意単位。以下同じ)、コレクタ24bによるイオンの60mm飛行での減衰後は0.4となる。式(4)にこれらを代入すると
λ = −60/ln(0.4/1.1)=60
となり、平均自由行程が60mmであると算出される(この場合は、平均自由行程と飛行距離がちょうど同じなので、イオン電流は1/e:0.37倍に減衰している)。
また、もし、図4において、真空度がラインB(0.2Pa)であったとする。この真空度でのイオン電流は、図4より内部コレクタ31による減衰前が2.4、コレクタ24bによるイオンの60mm飛行での減衰後は0.33となる。式(4)にこれらを代入すると、
λ = −60/ln(0.33/2.4)=30
となり、平均自由行程が30mmであると算出される。
一方、図4において、真空度がラインC(1Pa)では、飛行距離60mmの減衰は大きく計測に誤差が入る恐れがあるので、飛行距離8mmの値を使用する。この真空度でのイオン電流は、図4より内部コレクタ31による減衰前が12、コレクタ24aによるイオンの8mm飛行での減衰後は3.3となる。式(4)にこれらを代入すると、
λ = −8/ln(3.3/12)=6
となり、平均自由行程が6mmであると算出される。
また、もし、図4において、真空度がラインD(2Pa)であったとする。この真空度でのイオン電流は、図4より内部コレクタ31による減衰前が25、コレクタ24aによるイオンの6mm飛行での減衰後は1.8となる。式(4)にこれらを代入すると、
λ =−8/ln(1.8/25)=3
となり、平均自由行程が3mmであると算出される。
6)第2の平均自由行程の求め方
以上の計算はすべて飛行距離ゼロを減衰前の値としたが、コレクタ24aとコレクタ24bとの間での飛行による減衰に注目し、コレクタ24aでの値を減衰前、コレクタ24bの値を減衰後とすることも出来る。この場合にはイオン源からの引出し効率などの影響が入らないのでより高精度となる。これが式(5)に対応する。
もし、図4において、真空度がラインB(0.2Pa)とすると、図4よりイオン電流はコレクタ24aが1.8、コレクタ24bが0.33であるので、式(5)より
λ =(60−8)/ ln(0.33/1.8)=30
となり、平均自由行程が30mmであると算出される。
なお、図4の点線44は飛行距離52mmでの減衰曲線であるが、これと式(3)を使っても同じ値が出る(数学的に等価)。
7)平均自由行程とガス数密度、圧力
真空度を示す平均自由行程、ガス数密度、圧力の3つは以下の式によって変換することが出来る。
ガス数密度:n=K1・1/(d2・λ) (6)
圧力:P=K2・n・T=K3・T/(d2・λ) (7)
ただし、λは平均自由行程(m)、dは主成分の分子直径(m)、Tは温度(絶対温度:K)であり、P(圧力)の単位はPa(1N/m2)である。定数はK1=1/(√2・π)=0.225、K2=1.38×10−23J/K(ボルツマン定数)、K3=K1・K2となる。
つまり、平均自由行程からガス数密度に変換するには分子直径が必要であり、ガスの種類が知られてなければならない。もし混合ガスの場合には、それぞれのガス毎に計算する必要がある。また、圧力に変換するには、さらに温度が必要となる。
なお、分子直径は衝突に関する値(有効直径)とすべきなので、厳密には平均自由行程は中性分子同士とイオン/中性分子間とで異なりイオンの運動エネルギー(速度)によっても変化するが、実用的には同じと考えてよい。ただし、後述の電子では有効直径は大幅に異なるので、電子の平均自由行程は5.6倍となる。
8)複合型のイオン源
飛行距離ゼロのイオンを測定するイオン源(B-Aゲージ)と外部コレクタにて検出させるためのイオンの出力とを、一つのイオン源で兼用することが出来れば、上記前提の「α:測定に利用するイオン源が同じ真空度・温度領域に位置する要件」を確実に満足するだけでなく、「β:測定に利用するイオン源が同じ数のイオンを発生する要件」をほぼ満足する。経済性や操作性・サイズ的なメリットも大きい。
このようなイオン源としては、特許文献3で開示されている複合型のイオン源が適応する。この複合イオン源は通常のB-Aゲージと基本的な構造は同じであり、熱電子を放出させるフィラメント、電子を引き込み内部でイオンを生成させるグリッド、生成されたイオンが流れ込むコレクタを備えている。ただし、通常のB-Aゲージではコレクタの長さはグリッドの長さ(軸方向長さ)にほぼ等しく(4/5以上)なるようにしているが、複合型のイオン源ではコレクタの長さをグリッドの長さよりも短く、好ましくは半分(1/2)としている。通常のB-Aゲージでのこれら(コレクタ長さ)の構造はグリッド内で生成されたイオンを出来るだけ多く収集することを目的としているが、真空計の特性として必ずしも不可欠なものではない。また、コレクタが半分の複合型のイオン源でも、感度(換算値)としては半分程度にはなるものの、真空計として十分な実用性能を確保できている。
一方、イオン源(すなわち、イオンを引出し利用する装置)としても、複合型のイオン源は十分な実用性能を確保している。また、コレクタが全く存在しないイオン源(B-A型イオン源と呼ばれる)は、一般的なものであるが、これに比べて複合型のイオン源は、イオン源としての性能(イオン量など)においても十分イオン源として機能することが確認されている。
これは、フィラメントの長さはグリッドの長さ(軸方向長さ)にほぼ等しいので、グリッド内部には軸方向全体にほぼ均一な量の電子が入射され、イオンも軸方向全体にほぼ均一に生成する。そして、コレクタの長さがグリッドの長さにほぼ等しい場合には、生成したイオンのほぼ全量がコレクタに流れ込む。一方、コレクタの長さがグリッドの半分しかない場合にはおよそ半分のイオンのみがコレクタに収集され、その他のイオンはグリッドの外、軸方向に放出される。
複合型のイオン源の性能は、真空計としては感度(換算値)が従来の半分である以外は従来とほぼ同じ、イオン源としても十分イオン源として機能することが確認されている。
そして、内部コレクタで計測されるイオンとほぼ同量のイオンがビームとして外部に放出されているので、内部コレクタによって減衰前のイオン電流Iが計測できることになる。しかし、厳密には同量ではないので、後述する「減衰なし較正」によってこの差を補正することが望ましい。
なお、第1〜第3の実施形態(図5〜7)では、複合型のイオン源を採用している。
9)第1のコレクタ(コレクタ12a、24a等)の透過化
本測定方法では必ず二つ以上のコレクタ(検出器)が必要となるが、それぞれにイオン源(イオンビーム)を用意するのは実用的ではない。この解決には、一つのイオン源(イオンビーム)に二つのコレクタを直列に設置(同一のイオンの飛行軸上に二つのコレクタを配置)して、イオン源に近い第1のコレクタでは一部のイオンは検出するが、残りのイオンはそのまま透過して、第1のコレクタよりも遠くに位置する第2のコレクタに進むようにすればよい。たとえば第1のコレクタをメッシュ状、スリット状あるいは少なくとも1つの小窓を設けた構造とする。あるいは、第1のコレクタは、導電性の部材を薄膜化したもの(例えば、シリコン薄膜)であっても良い。所定条件においては、導電性薄膜に荷電粒子が入射すると、その一部は該導電性薄膜に捕捉され、他の一部はそのまま透過する。このように、本発明では、透過型の第1のコレクタとしては、入射された荷電粒子の一部を検出し、他の一部を透過させることができる部材であればいずれの部材を用いても良い。そして平均自由行程の算出には第1のコレクタによるイオンの検出率によって本来の電流を較正する。
このようにすれば同じイオンビームを使いながら異なる飛行距離による減衰を知ることが出来るので、経済面やサイズ面だけでなく性能面での大幅な向上が期待できる。すなわち、たとえイオンビームの特性(強度、イオン種など)が変化しても両コレクタに同様に影響するので測定結果には無関係となる。
平均自由行程の計算には二つのコレクタの検出効率が等しいことが必要(前提γ)ではあるが、あらかじめそれぞれの検出効率を求めておいて、計測された値をこれで較正しても構わない。実際には真空度が十分に良い(減衰が無い)場合の両コレクタのイオン電流比率を求めておくと、これらがそれぞれのオリジナルな検出効率となるので、この値で計測値を割ることが有効となる。たとえば、第1のコレクタで40%のイオンが計測され、残りの60%のイオンがそのまま透過して第2のコレクタに到達してそこで計測される構成になっているとする。この構成では減衰(雰囲気ガスとの衝突)が無い場合の第1のコレクタと第2のコレクタのイオン電流比率は、当然ながら4対6となる。この構成で、もし減衰がある場合にイオン電流比率が8対2になったとすると、IL1対IL2は2(=8÷4)対0.33(=2÷6)として計算すればよい。一般に、減衰なしでa対b、減衰ありでd対eの場合、IL1対IL2は(d/a)対(e/b)となる。
これによると、実質的に上記前提の「β:測定に利用するイオン源が同じ数のイオンを発生する要件」「γ:各コレクタのイオンの検出効率は等しいとの要件」をほぼ満足することになる。なお、減衰なしでのイオン電流比率はメッシュの透過率(あるいは小窓の面積比率)など設計的データから見積もることが出来るが、実測によればより正確に確定することが出来る(次項の減衰なし補正)。
第1〜第8の実施形態(図5〜7、9〜11、13〜15)では、透過型の第1のコレクタを採用している。
10)減衰なし較正
より高い精度を実現するには上記項目9)の透過型の第1のコレクタでの物理的なイオン検出の比率だけでなく、電気的な検出比率(二つの計測回路の増幅率の差)を較正する必要がある。さらにI(内部コレクタの値)を使用する場合には内外コレクタの比率較正も必須である。特に、汚れが顕著となる環境では、透過型の第1のコレクタの開口部(例えば、メッシュ)の透過率が変化することも懸念される。
しかし、これらすべての要因を以下の方法で簡単に較正することが出来る。まず、減衰が無視できるような良い真空度の状態でそれぞれのコレクタでのイオン電流を測定し、その値を初期値(減衰なしの値)として設定しておく。そして、実際の測定では、それぞれ実測したイオン電流をこの初期値で割った値に規格化して計算すればよい。上記項目9)と同じく、減衰なしでa対b、減衰ありでd対eの場合、IL1対IL2は(d/a)対(e/b)となる。
初期値を出すためのこのプロセスを「減衰なし較正」と呼ぶことにする。すなわち、減衰なし較正とは、第1の真空度の状態(例えば、真空度の良い状態)での、第1のコレクタおよび第2のコレクタにて検出された荷電粒子数の比率により、第2の真空度の状態(例えば、第1の真空度よりも悪い真空度の状態)での、第1のコレクタおよび第2のコレクタにて検出された荷電粒子数の比率を較正することである。
減衰なし較正のために必要な真空度は概ね減衰が1/10以下となる状態が必要となる。すなわち、飛行距離60mmでは0.005Pa(図4によると、0.005PaではL=60mmの減衰後と0mmの減衰前のグラフ(図4で言えば、符号41)がほぼ一致しており、減衰がほとんど無いことが分かる)以下が必要となるが、スパッタ法で一旦必ず真空度の良い状態としてからガスを導入してプロセスを開始するので減衰なし較正を毎回自動的に行われるようにすることも出来る。
11)真空度範囲
読み取り誤差の観点からは、測定したい真空度範囲において二つの飛行距離でのイオン電流の比が概ね1.2倍以上、100倍以内となること、つまり、二つの飛行距離の差が平均自由行程の0.2倍から4倍程度とすることが望ましい(この0.2倍、4倍程度の値は、ln(IL1/IL2)=(L2−L1)/λより、ln1.2=0.18<0.2、およびln100=4.6>4 から算出される)。例えば、飛行距離が第1、第2のコレクタによる第1の飛行距離8mmと第2の飛行距離60mmとでは二つの飛行距離の差は52mmとなる。そこで、この52mm(飛行距離の差)が平均自由行程の0.2倍から4倍程度とするのが望ましいことから、この52mmの5倍(0.2倍の逆数)から0.25倍(4倍の逆数)までの平均自由行程、すなわち260mmから13mmまでの平均自由行程の真空度が適用できる範囲となる。圧力表示では、これは0.03Paから0.5Paとなる。
もし、内部コレクタ(飛行距離0mm)と第1のコレクタ(飛行距離8mm)を使えば、飛行距離の差は8mmとなるので、上記と同じように、この5倍から0.25倍まで、すなわち40mmから2mmまでの平均自由行程の真空度が適用できる範囲となる。圧力表示では、これは0.15Paから3Paとなる。
12)真空計較正
上記項目11)の真空度範囲で示された範囲は平均自由行程を直接計測する場合であるが、複合型のイオン源でのイオンゲージ機能と併用すれば、さらに真空度の範囲を広くすることが出来る。すなわち、通常のイオンゲージの測定範囲、すなわち1Pa〜10-8Pa程度までの広い範囲において極めて正確な真空度の測定が可能となる。上記項目8)で示したように複合型のイオン源は感度(換算値)が半分であることを除けば従来真空計であるイオンゲージ(B-Aゲージ)と同じ機能・性能を持っている。しかし、もともとイオンゲージ(B-Aゲージ)は数桁以上の広大な範囲に渡ってリニアリティ(線形性)を保有するという優れた性能を持つ一方、感度(換算値)、すなわち信号量の絶対値は変化しやすいという欠点を持つ。図4での「減衰前(イオン源)のイオン電流」を示すグラフ41の右45度のラインがイオンゲージの真空度表示に対応するが、リニアリティ(線形性)が良好とはラインが直線となっていること、感度(換算値)が変化しやすいとはライン全体の上下位置がずれやすいことを意味している(図4は両対数グラフなので上下位置がずれるが、通常グラフにおいてはリニアティが変化するとは、傾きが変化することを言う)。
しかし、本発明による方法は測定範囲こそ狭いが得られた真空度は非常に正確なので、同時に測定したイオンゲージの値と比較してイオンゲージの正しい感度(換算値)である換算値を明らかにすることが出来る。すなわち、ライン全体の上下位置を正しく設定しなおすことが出来る。他の真空計(ゲージ)の感度(換算値)を較正するこのプロセスを「真空計較正」と呼ぶことにする。
なお、通常の真空度較正は正確にその値が知られた真空度を実現した状態で行なう。例えば、信頼のできる別の手段によって、真空度が正確にα(Pa)となるように設定した上で、較正すべき真空計の信号(イオンゲージではイオン電流)を計測してβ(μA)となったとすると、この真空計の感度(換算値)を「α/β(Pa/μA)」と定める。以後、感度(換算値)が変わらないとの前提で、この真空計でXμAが計測されたらX・α/β(Pa)であるとする。しかし、最初のα(Pa)を保証し得る「信頼のできる別の手段」を用意することは非常に大変であって、この手段自身をさらに別のより信頼できる手段で較正する必要がある。
これに対して、本発明による真空計較正ではその真空度は既知である必要はなく、単に減衰が発生する領域であれば任意の真空度で構わない。ただし、ガスの種類は既知でなければならない。すなわち、上記項目11)の真空度範囲で示した範囲の真空度となっていれば、平均自由行程を正確に算出することが出来るので、その値を較正に使えば良い。例えば、真空度は未知であるがNを導入した結果60mmの平均自由行程になったとすると、その圧力は1Paであることが判定できる。従って、較正すべき他の真空計の表示を、1(Pa)を表示するように調整手段を調整すれば良い。この際には飛行距離の正確度が要求されるが、これは容易に実現することが出来る。これ以後は、通常の較正と同じように行なう。
このように、本発明による較正には特別な装置は不要であって、しかも短時間に行なうことが出来る。そのため、実際の測定中に自動的に真空計較正が行なわれるようにすることも出来る。つまり、スパッタなどほとんどのプロセスでは、決められたガスによって減衰が発生する真空度とするので、その時に較正を行なう。
13)電子の利用
減衰をおこさせる荷電粒子としてはイオンだけでなく電子も利用することが出来る。電子は直径が小さいので平均自由行程はイオンのおよそ5.6倍になるので、同じ飛行距離であればイオンよりも5倍ほど良い真空度の測定に適用できる。電子の発生方法として最も一般的なものは熱フィラメント方式であるが、その他の電子源として傍熱型酸化物やフィールドエミッション型など、電子を発生できる方法であればいずれも使用することが出来る。第6〜第10の実施形態(図11、13〜16)では、電子を利用している。
14)迷イオン、迷電子対策
雰囲気ガス(中性分子)と衝突したイオンや電子は消滅する訳ではなく、単に運動エネルギーを失うだけなので飛行空間に迷イオンや迷電子として残存・浮遊することになる。
そこで、これら迷イオン、迷電子といった迷荷電粒子を速やかに除去しないと、コレクタに到達してしまって荷電粒子量測定の誤差となり得る。この対策の一つは機械的なもので、計測に無関係な荷電粒子を飛行領域に入れないこと、エネルギーを失った荷電粒子をコレクタの前で阻止すること、アース電位(あるいはわずかにマイナス電位)の板を飛行領域近傍に設置して迷荷電粒子を吸収すること、などが行なわれる。機械的方法は、第2、4〜8の実施形態(図5、9、10、11、13)で採用している。
もう一つの対策は電気的なもので、イオン電流(電子電流)の計測を通常の直流(DC)ではなくロックイン(変調同期型)アンプを使用して行う。イオン(電子)の発生に変調(断続)をかけてそれに同期した交流成分のみをロックイン(変調同期型)アンプで検出するので、雰囲気ガスに衝突しなかったイオン(電子)のみを検出することが出来る(詳しくは第3の実施形態で説明する)。ロックイン(変調同期型)アンプ方式は、吸収板を設置できない場合、衝突したイオン(電子)以外でも一定の妨害電流が侵入する場合などに有効である。電気的方法は、第3、9、10の実施形態(図7、8、15、16)で採用している。
15)精度劣化の要因
精度を劣化させる要因は「飛行距離以外の真空度依存性」の存在であるが、その可能性と対策は以下にように考えられている。
[1]イオン引出し効率が変動する場合があり得るが、式(5)を使用することなどが対策となる。
[2]イオン開き角度が変動する場合があり得るが、アパーチャの設置やイオンビームよりも小さいコレクタの使用などによって検出角を制限しておくことが対策となる。これは第2、3、4〜9の実施形態(図6、7、9〜11、13〜15)で採用している。
[3]分子との衝突以外にイオンのクーロン力発散(空間電荷効果)、中性分子の引き込みなどに要因があり得るが、これにはイオン電流を少なくする、イオンのエネルギーを高くする(イオン化が発生しない程度に)ことが対策となる。
16)制御部について
後述する各実施形態にて説明する、平均自由行程を測定する装置1007は、図16に示す制御部1000を内蔵することができる。また、該制御部を、インターフェースを介して接続するようにしても良い。
図16は、本発明の一実施形態に係る制御系の概略構成を示すブロック図である。
図16において、符号1000は装置1007全体を制御する制御手段としての制御部である。この制御部1000は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU1001、およびこのCPU1001によって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROM1002を有する。また、制御部1000は、CPU1001の処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM1003、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリ1004などを有する。
また、この制御部1000には、所定の指令あるいはデータなどを入力するキーボードあるいは各種スイッチなどを含む入力操作部1005、装置1007の入力・設定状態などをはじめとする種々の表示を行う表示部1006(例えば、ディスプレイ)が接続されている。
(第1の実施形態)
図5は本発明の第1の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置1007を示す図であり、複合型のイオン源と透過型のコレクタが使用されている。図5で示されている装置1007全体が測定すべき雰囲気ガスの中に設置されている。ただし、図に示した電流計は模式的であって、実際には雰囲気ガスの外に配置されている。また、図には示されていないが、各電極は真空計としてよく知られている方法によって取付け・固定がなされ、接続された配線が大気側に導通している。たとえば、それぞれの電極は絶縁石(セラミックなど)にネジ止めされ、電気溶接された配線(ニッケル線など)がガラス封止の導入端子を経て大気側の制御装置まで伸びている。
図5において、真空計としての、平均自由行程を測定する装置1007は、複合型のイオン源100、透過型のコレクタ202、およびコレクタ203を備えている。コレクタ202および203は、イオン源100から出力されたイオン110のイオン飛行軸上に配置されている。また、イオン源100のイオン放出面からコレクタ202のイオン検出面までの距離がLaとなるようにコレクタ202は設けられている。従って、コレクタ202は、イオン源100からの飛行距離Laのイオンを検出する。また、イオン源100のイオン放出面からコレクタ203のイオン検出面までの距離がLbとなるようにコレクタ203は設けられている。従って、コレクタ203は、イオン源100からの飛行距離Lbのイオンを検出する。
複合型のイオン源100は、円筒型(φ10mm程度、長さ30mm程度)かつ格子状(グリッド間隔3mm、透過率95%程度)など電子が透過できる形態のグリッド102、φ0.2mm程度のW製ワイヤで1800度以上に加熱されて熱電子を放出するフィラメント101、およびφ0.1mm程度のW製ワイヤの内部コレクタ201を有している。
グリッド102は、+100V、フィラメント101は+30V程度に電圧が印加され、内部コレクタ201はアース電位(接地/グランド電位。具体的には0Vで、真空計全体のベース電位)となっている。フィラメント101より放出された電子はグリッド102に向かって進むがほとんどの電子はグリッド102内部にまで侵入し、そこで雰囲気ガスと衝突して正電荷のイオン110を発生する。イオン110はほぼグリッド102の電位(+100V)で発生するので、一部はアース電位の内部コレクタ201に流れ込む。このようにして、内部コレクタ201は、減衰前のイオン数であるイオン数Iを検出する。しかし、内部コレクタ201の長さはグリッド102の軸方向距離の半分程度となっていること、グリッド102の他端(コレクタ202,203と反対側)は開放されていることから、内部コレクタ201に流れ込まなかった他のイオン110はイオン源100の外に放出されアース電位のコレクタ202に向かって進む。コレクタ202までに飛行する間に雰囲気ガス(中性分子)に衝突したイオン110は運動エネルギーを失いコレクタ202には到達しないが、一部のイオン110は衝突せずにコレクタ202に到達してイオン電流として計測される。すなわち、コレクタ202は、飛行距離L1飛行し減衰したイオン数Iを検出する。
コレクタ202はメッシュ状で形成された透過型となっているので、コレクタ202の位置まで到達したイオン110のさらに一部はそのままコレクタ203に向かって進む。コレクタ202とコレクタ203との間でも雰囲気ガスに衝突したイオン110はコレクタ203には到達しないが、一部のイオン110は衝突せずにコレクタ203に到達してイオン電流として計測される。
すなわち、コレクタ203は、飛行距離L2飛行し減衰したイオン数Iを検出する。
コレクタ202はメッシュ間隔0.3mm、透過率50%程度である。SUS製などのメッシュ状が適当である。コレクタ203はSUS製などの単なる金属の板(プレート)である。
適用真空度に応じて飛行距離を選択することが必要で、本実施形態では1Pa前後の真空度の計測が可能なように、イオン源100とコレクタ202との間の距離Laは8mm、イオン源100とコレクタ203との間の距離Lbは60mmとしている。この距離の誤差はそのまま測定結果の誤差となるので、距離は正確であって長期に渡って変化しないことが肝要である。なお、本実施形態では、距離Laおよび距離Lbの値は、不揮発性メモリ1004に記憶されている。よって、不揮発性メモリ1004には、距離Laが8mmであること、および距離Lbが60mmであることが保持されている。さらに、内部コレクタ201はイオン源100の内部に設けられているので、イオン源100と内部コレクタ201との間の距離Lcは0である。
従って、不揮発性メモリ1004には、距離Lcの値(=0mm)も記憶されている。
イオン電流やイオンビーム径は測定結果に直接関係しないので任意となるが、概ねイオン電流は1μA(10-6A)程度、イオンエネルギー100eV程度、イオンビーム径は数mm程度としている。電流計測は通常の直流(DC)計測であり、0.1秒強の応答速度で1nA(10-9A)〜1μA程度が検出できれば十分である。ただし、内部コレクタ201はB-Aゲージとしてより良い真空度まで測定したいので、応答が遅くても1pA(10-12A)まで測定できるのが望ましい。
高精度な測定が必要な場合は計算に先立って「減衰なし較正」を行なっておく。これは、透過型のコレクタ202でのイオン110の検出比率や二つの計測回路の増幅率、および内部コレクタ201のイオン検出比率を較正するものであり、雰囲気ガスの真空度の減衰が1/10以下となる状態としておくことが必要である。本実施形態では、飛行距離Lbが60mmなので0.005Pa以下が必要となる(縦軸にイオン電流及び横軸に真空度をとった図4によると、0.005PaではL=60mmのイオン減衰後のグラフ43と0mmの減衰前のグラフ41とがほぼ一致しており、0.13Paでの平均自由工程である飛行距離60mmでも減衰がほとんど無いことが分かる)。真空度以外は実際の測定と同じ条件とし、それぞれのコレクタでのイオン電流を減衰なしの初期値として設定する。そして、実測したイオン電流のそれぞれをこの初期値で割った値に規格化して計算に使用する。すなわち、減衰なし較正のための測定では、内部コレクタ201がイオン数I′を検出し、コレクタ202がイオン数I′を検出し、コレクタ203がイオン数I′を検出する。これら検出されたイオン数I′、イオン数I′、イオン数I′はそれぞれ、不揮発性メモリ1004に記憶される。従って、制御部1000は、減衰なし較正を行う場合に、不揮発性メモリ1004に記憶された初期値としてのイオン数I′、イオン数I′、イオン数I′を適宜読み出し、該読み出された初期値によって測定値を割った値に規格化して減衰なし較正を行う。
平均自由行程の測定の基本的な手順は以下のようになる。
まず、フィラメント101を加熱し、グリッドに到達する電子が適当な値となるように設定する(必ずしも、この値を正確に知る必要はなく、厳密に一定な値とする必要もない)。すなわち、制御部1000は、イオン源100からイオン110が発生するように、装置1007を制御する。
つぎに、内部コレクタ201、コレクタ202、コレクタ203に流れ込むそれぞれのイオンの量(イオン数I、イオン数I、イオン数I)を計測する。すなわち、制御部1000は、内部コレクタ201、コレクタ202、およびコレクタ203にてイオンを検出するように装置1007を制御し、検出されたイオン数I、イオン数I、イオン数Iを装置1007から取得し、RAM1003に格納する。
最後に、取得されたイオン数I、イオン数I、イオン数Iを適宜用い、式(3)〜(5)を使って平均自由行程を算出するが、そのうちイオン量の比率が1.2倍から100倍の範囲内であれば確定値とする。すなわち、制御部1000は、平均自由行程の算出に用いる式に応じた情報を読み出して計算を行う。
例えば、式(3)を用いて計算を行う場合は、第1のコレクタが内部コレクタ201となり、第2のコレクタがコレクタ202となる。そして、イオン数Iがイオン数Iとなり、イオン数IL1がイオン数Iとなり、飛行距離L1が距離Laとなる。従って、制御部1000は、不揮発性メモリ1004から距離Laを読み出し、RAM1003からイオン数I、Iを読み出し、該読み出された値から式(3)に従って平均自由行程を算出する。
また、式(4)を用いて計算を行う場合は、第1のコレクタがコレクタ201となり、第2のコレクタがコレクタ203となる。イオン数Iがイオン数Iとなり、イオン数IL2がイオン数Iとなり、飛行距離L2が距離Lbとなる。従って、制御部1000は、不揮発性メモリ1004から距離Lbを読み出し、RAM1003からイオン数I、Iを読み出し、該読み出された値から式(4)に従って平均自由行程を算出する。
さらに、式(5)を用いて計算を行う場合は、第1のコレクタがコレクタ202となり、第2のコレクタがコレクタ203となるパターンAと、第1のコレクタが内部コレクタ201となり、第2のコレクタがコレクタ202となるパターンBとがある。
パターンAの場合:
イオン数IL1がイオン数Iとなり、イオン数IL2がイオン数Iとなり、飛行距離L1が距離Laとなり、飛行距離L2が距離Lbとなる。従って、制御部1000は、不揮発性メモリ1004から距離La、Lbを読み出し、RAM1003からイオン数I、Iを読み出し、該読み出された値から式(5)に従って平均自由行程を算出する。
パターンBの場合:
イオン数IL1がイオン数Iとなり、イオン数IL2がイオン数Iとなり、飛行距離L1が距離Lcとなり、飛行距離L2が距離Laとなる。従って、制御部1000は、不揮発性メモリ1004から距離Lc、Laを読み出し、RAM1003からイオン数I、Iを読み出し、該読み出された値から式(5)に従って平均自由行程を算出する。
このように用いる式に応じて、必要となる計測値が決まっている。よって、制御部1000は、算出に用いる式に応じて(すなわち、算出に用いると設定された式に応じて)、各距離およびイオン数を適宜選択して読み出して計算を行う。なお、用いる式の設定は、ユーザが入力操作部1005を介して行うことができる。
また、制御部1000は、平均自由行程を求める際に、減衰なし較正を行うことができる。
減衰なし較正を行う場合は、制御部1000は、用いる式に応じて、不揮発性メモリ1004から初期値としてのイオン数I′、イオン数I′、イオン数I′を適宜読み出し、該読み出された値を用いて減衰なし較正を行うことができる。例えば、式(5)を用いる場合は、不揮発性メモリ1004からイオン数I′、イオン数I′を読み出し、イオン数I/イオン数I′およびイオン数I/イオン数I′に規格化して減衰なし補正を行う。
なお、制御部1000は、計算により得られた平均自由行程を表示部1006に表示させることができる。このように、表示することで、ユーザは現在の真空度を知ることができる。
また、制御部1000は、上記得られた平均自由行程に基づいて、式(7)から該平均自由行程に対応する圧力を算出しても良い。この場合は、装置1007の測定領域の温度を計測する温度計測手段としての温度計を装置1007に設けて、装置1007の測定系の温度を測定する。ガス成分が既知の場合はその文献値から、既知でない場合は質量分析計によって成分を判定して、その文献値から分子の径を求める。すなわち、制御部1000は、直接求められた平均自由行程を圧力に変換し、該変換された圧力を表示部1006に表示させることができる。なお、ガス成分が既知でなく質量分析計もない場合にはN2の径で計算し、N2換算の圧力値とする(このN2換算の圧力値は、イオンゲージで広く利用されている方法である)。
なお、本実施形態では、平均自由行程の計算を制御部1000で行っているが、制御部1000とは別個の演算装置(例えば、コンピュータ、関数電卓等)で行っても良い。すなわち、本発明では、比率を用いて平均自由行程を求めることが重要であり、そのために、イオン源からの距離が異なる少なくとも2つのコレクタを用い、それらのコレクタで検出されたイオン数を用いて式(3)〜(5)のいずれかにより平均自由行程を求めることを本質としている。従って、平均自由行程を求める演算をどこで行うかは問題ではない。
本実施形態では、イオン源100と各コレクタとの間の距離である距離La、Lb、Lcは既知である。また、各コレクタで検出されたイオン数I、I、Iは、RAM1003といった記憶手段にて保持されている。従って、制御部1000にて平均自由行程を求める場合は、上述のように計算を行えばよい。すなわち、制御部1000は、平均自由行程の算出に必要な距離La、Lb、Lc、およびイオン数I、I、Iを記憶手段から取得し、式(3)〜(5)のいずれかの式の計算を行う。
また、制御部1000とは別個のコンピュータで行う場合において、該コンピュータと制御部1000とがネットワークを介して接続されている場合は、制御部1000は、RAM1003に記憶された、各コレクタで検出されたイオン数I、I、Iを示す情報、および不揮発性メモリ1004に記憶された距離La、Lb、Lcを示す情報を送信すれば良い。上記コンピュータは、ネットワークインターフェース等によって、該情報を取得する。次いで、該コンピュータは、取得した各情報を用いて、制御部1000と同様の計算を行って平均自由行程を求めることができる。
また、上記コンピュータが制御部1000とネットワークを介して接続されていない場合は、制御部1000は、RAM1003に記憶された、各コレクタで検出されたイオン数I、I、I、および不揮発性メモリ1004に記憶された距離La、Lb、Lcをそれぞれ表示部1006に表示すれば良い。このように表示することにより、ユーザは、表示された各情報をキーボードといった入力手段を用いて制御部1000とは別個のコンピュータに入力して、該コンピュータに式(3)〜(5)のいずれかの計算を行わせれば良い。このとき、上記別個のコンピュータは、入力手段によるユーザ入力により、平均自由行程の算出に必要な距離La、Lb、Lc、およびイオン数I、I、Iを取得し、式(3)〜(5)のいずれかの式の計算を行う。
また、このような表示により、ユーザは、表示された情報に基づいて関数電卓によって式(3)〜(5)のいずれかの計算を行うことによって、平均自由行程を求めることができる。この場合関数電卓は、該関数電卓が有するテンキーによるユーザ入力により、平均自由行程の算出に必要な距離La、Lb、Lc、およびイオン数I、I、Iを取得し、式(3)〜(5)のいずれかの式の計算を行う。
このように、本実施形態では、図5に示すような本実施形態に特徴的な装置構成により各コレクタで検出されたイオン数I、I、Iを取得し、これらイオン数を記憶手段に記憶させている。そして、該記憶されたイオン数を適宜読み出して上述のような所定の処理を施すことによって、式(3)〜(5)の計算を行うことができ、正確かつ簡便に平均自由行程を求めることができる。
さらに、本実施形態では、検出されたイオン数(イオン電流)を、図5の各コレクタに接続された電流計に表示するようにしても良い。この場合は、ユーザが、入力操作部1005を介して、電流計に表示された値、および該値に対応するイオンの飛行距離を制御部1000に入力し、さらに平均自由行程の計算の指示を入力する。制御部1000は、これらユーザ入力により、イオンの飛行距離およびイオン数を取得して、上記計算の指示に従って、式(3)〜(5)のいずれかの式により平均自由行程の計算を行う。あるいは、上記電流計に表示された値を、ユーザが関数電卓に入力しても良い。この場合は、該ユーザ入力に従って、関数電卓はイオンの飛行距離および減衰後のイオン数を取得することになり、該関数電卓は、式(3)〜(5)のいずれかを行うことができる。
本実施形態では、複合型のイオン源100を使用しているので、イオンゲージとして広い測定範囲の真空度を測定する機能を持っている。そこで、平均自由行程の計測と同時にイオンゲージ機能による真空度を測定して真空計の感度(換算値)を較正する「真空計較正」を行なえばイオンゲージの測定範囲、すなわち1Pa〜10-8Pa程度までの広い範囲において極めて正確な真空度測定を行なうことも出来る。「真空計較正」では、既知ガス種によって減衰が発生する程度の真空度に維持した上で、上記方法による平均自由行程の測定とイオンゲージ機能による真空度(圧力)の測定を行ない、制御部1000は、式(7)によって両者を比較してイオンゲージ機能の感度(換算値)を較正する。較正を行なう真空度は平均自由行程の測定さえできれば任意(未知)の値で構わない。
以上、本実施形態では、複合型のイオン源と透過型のコレクタの使用によって大幅な簡素化を実現するとともに、「減衰なし較正」「真空計較正」によってより高精度かつより広範囲な測定を可能にしている。
(第2の実施形態)
図6は本発明の第2の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図であり、複合型のイオン源と透過型コレクタとが使用されるとともに、迷イオンに対する対策とイオン開き角度による精度劣化の対策とが行なわれている。イオン源100とコレクタ-202とコレクタ203とは第1の実施形態と全く同じであり測定手順・計算方法・真空度範囲なども同じである。ただし、本実施形態では、機械的な迷イオン対策としてビーム角制限板400、迷イオン阻止板401a、401b(2枚)、迷イオン吸収板402の三種の電極が新たに設置されている。
ビーム角制限板400は中心部に孔(φ2mm程度)があり、イオン源100の近傍(端から2mm程度)に設置されている。迷イオン阻止板401a、401bは中心部にメッシュ(メッシュ間隔1mm、透過率90%程度)付きの孔を有している。迷イオン阻止板401aは、コレクタ202から2mm程度離間して配置されており、孔のφは3mm程度である。一方、迷イオン阻止板401bは、コレクタ203から2mm程度離間して配置されており、孔のφは9mm程度である。迷イオン吸収板402は円筒形(φ10mm程度)でイオン110のビームと同軸で設置されている。ビーム角制限板400と迷イオン吸収板402とはアース電位(0V)、迷イオン阻止板401a、401bの双方はグリッド102の電圧よりも5V低い+95Vの電位となっている。
ビーム角制限板400と迷イオン阻止板401a、401bの三つの孔は、イオン源100からビーム角制限板400を見込む開き角、およびイオン源100から二つの迷イオン阻止板401a、401bの孔を見込む開き角の三つが「同じ開き角」となるようになっている。特に迷イオン阻止板401a、401bの孔の開き角が重要となっており、結果的に二つのコレクタ202、203に到達するイオン110のイオン源100から見込む開き角が同じになっている。このため、ビーム角制限板400で開き角が制限されたイオン110のビームは雰囲気ガスと衝突しない限り、迷イオン阻止板401a、401bの孔を通過してコレクタ202、203に到達する。
しかし、雰囲気ガスと衝突したイオン110の一部は、進行方向が曲げられてビーム角制限板400で制限された開き角をはみ出すので、迷イオン阻止板401a、401bの板状の部分(孔のない部分)に進行が阻止されて吸収される。また、雰囲気ガスと衝突したイオン110の他の一部は、開き角をはみ出ないが運動エネルギーが低くなるので、高い電圧(グリッド102の電圧よりわずかに低い電圧)が印加されている迷イオン阻止板401a、401bのメッシュ部を通過することは出来ず、最終的に迷イオン吸収板402に吸収される。したがって、決められた開き角以上に広がったイオン110、および初期の運動エネルギーを失ったイオン110はカットされ、雰囲気ガスと衝突しないイオン110のみがコレクタに到達する。以上により、本実施形態では、迷イオンに対して機械的な対策が行なわれている。
イオンの開き角度による精度劣化は真空度が変化すると引き出されるイオン110の開き角度が変化してイオン電流値に影響して発生するので、二つのコレクタ202、203が常に(真空度が変わっても)同じイオン束を捉えるようにすればよい。これを実現するため、上記の迷イオン対策と同じく三つの孔(特に、二つの迷イオン阻止板401a、401bの孔)を「同じ開き角」とすることになる。
なお、ビーム角制限板400は必ずしも絶対不可欠ではない。しかしながら、ビーム角制限板400を設けることにより、無駄なイオンをイオンの飛行領域に入れない点で迷イオンの初期的な対策を行なうとともに、イオン引出し角度をより確実に固定する点で精度劣化要因の対策を徹底して行うことができる。また、イオン源100の近くにアース電位の電極が設置されることになるので、イオン源100から安定してイオン110を引き出すこと、すなわち引出し電極としての効果も期待できる。
以上、本実施形態では、迷イオン対策を厳重に行なって、測定精度の大幅な向上を可能にしている。
(第3の実施形態)
図7は本発明の第3の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図であり、複合型のイオン源と透過型コレクタとが使用されるとともに、イオンの開き角度による精度劣化要因の対策、および電気的な迷イオンの対策が行なわれている。イオン源100とコレクタ202とコレクタ203とは第1の実施形態とほぼ同じであり測定手順・計算方法・真空度範囲なども同じであるが、コレクタ202、コレクタ203の大きさ(検出実効面)が特有なものとなっている。さらに、電気的な迷イオン対策としてイオンブランキングが新たに設置され、電流計としてロックイン(変調同期型)アンプが使用されている。
イオンの開き角度による精度劣化に対しては、コレクタ202、コレクタ203の両方の検出実効面を小さくすることにより、これらが常にイオン110のビームの中に入っているとともに、二つの検出実効面が常に同じイオン110の束を計測するようにしている。この対策は、基本的には第2の実施形態での「同じ開き角」と同じである。ただし、第2の実施形態では孔付きの板(迷イオン阻止板401a、401b)によりある開き角以上のイオン110をカットしたのに対して、本実施形態ではコレクタ202、203の大きさ(検出実効面)をある開き角に合致するようにしたため、それ以上の開き角のイオン110は計測せずに通過させるようにしている。なお、コレクタ202、コレクタ203は、細い(φ0.1mm程度)のワイヤ3本で吊るされているので、コレクタ以上の開き角のイオン110の影響は無視できる。
電気的な迷イオン対策では、迷イオンがコレクタ202、203に流れ込んでもそれを検出しないようにしている。まずイオン源100の近傍にイオンブランキング501を設置しイオン110を断続的に放出するようにしている。荷電粒子を周期的に断続させるブランキング方法はいくつも知られているが、本実施形態では最も簡単なメッシュによる阻止電位方式を採用している。しかしながら、本実施形態では、入射された荷電粒子を断続的な周期で出射することができればいずれの手段を用いても良いことは言うまでもない。
本実施形態では、イオンブランキング501のメッシュはメッシュ間隔1mm、透過率90%程度で、該メッシュには、電源504が電気的に接続されており、矩形電圧505が印加される。すなわち、メッシュには電位が0Vと100Vが1MHz(10サイクル/秒)程度で印加されている。メッシュが100Vの時にはイオン110は透過できないので、イオン110が1MHz程度で断続的に放出される。したがって、雰囲気ガスと衝突せずに高速で飛行して1μ秒(10-6秒)以下でコレクタ202、203に到達したイオン電流は同じ周波数の矩形波となる。
しかし、雰囲気ガスと衝突してイオンの飛行領域に残存・浮遊した後、10μ秒(10-5秒)以上経過してコレクタ202、203に到達したイオン電流はほぼ一定となる。つまり迷イオンは一定の電流となり、信号とすべきイオン電流はその上に重畳した矩形波となる。そして、ロックイン(変調同期型)アンプ502には阻止電位を分割した電圧505(同期信号)が入力されているので、その周波数に同期した交流成分の信号強度が計測されることになる。すなわち、交流となっている本来の信号のみが検出され、一定電流となっている迷イオンは検出されない。なお、スイッチ503によりロックインアンプ502の比較対象となるコレクタを選択することができる。
これらの状況は図8にて説明されている。
図8において、符号506は、雰囲気ガスと衝突しなかった時のコレクタにて検出されるイオン電流であり、符号507は、雰囲気ガスと衝突した時のコレクタにて検出されるイオン電流である。また、符号508は、信号となるイオン(無衝突でコレクタに到達したイオン)であり、符号509は、ノイズとなる迷イオンである。
本実施形態では、コレクタ202、コレクタ203の検出実効面積の縮小化により精度劣化要因の対策を行い、またロックイン(変調同期型)アンプ502の使用で迷イオンの対策を行い、これらの相乗効果を得ている。この相乗効果によって、第2の実施形態では必要であったビーム角制限板、迷イオン阻止板、迷イオン吸収板に三つの電極を設けなくても、精度向上および迷イオン対策を行うことができる。しかし、この対策はそれぞれ単独でも有用性を発揮するので、独立して使用することも出来る。
以上、本実施形態では、簡単な構造で精度劣化と迷イオンの対策を行なって、測定精度の大幅な向上を可能にしている。
(第4の実施形態)
図9は本発明の第4の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図であり、装置としては測定のためのイオン源は保有せずに、プラズマなど測定すべき雰囲気から飛来するイオンを利用している。各電極に関しては第2の実施形態(図6)とほぼ同じで、装置1007は、迷イオン阻止板401a、401b、迷イオン吸収板402、およびシールドケース603を備えている。
シールドケース603は、ビーム角制限板400と同じ機能を持つとともに電極部全体を囲って迷イオンが廻り込まないようにしている。シールドケース603の電位はアース(0V)である。また、シールドケース603は、SUS製などの金属板(厚さ1mm程度)であり、プラズマ601に面した側面には孔(φ2mm程度)が設けられており、該孔以外は密閉されている構造である。迷イオン阻止板401a、401bの電位は+5Vから+50V程度まで変更が可能となっている。その他の各電極の寸法、材料および電位はすべて第2の実施形態と同じである。以下に説明するイオン源以外の測定手順は第2の実施形態と同じであり、計算方法・真空度範囲などは全く同じである。
本実施形態では、装置1007は、プラズマシールド板602、およびプラズマシールド板602内においてプラズマ601を発生させるための手段(不図示)をさらに備えている。上記プラズマ601は通常用いられる方法で発生させることができる。プラズマ(減圧プラズマ)は当然真空容器内で発生するが、通常真空容器内壁や真空部品の汚染対策として、プラズマシールド板602によって覆われた領域の中で発生させて、真空ポンプや真空計はプラズマシールド板602の外(真空容器内壁との間)に設置している。汚れ対策を十分に行なうためにはプラズマシールド板602の密閉度は高くなければならないが、一方、その場合にはプラズマシールド板602内外で真空度が異なり、肝心なプラズマシールド板602内部の真空度を知ることは出来ないと言う深刻な問題がある。従来の真空計では微小電流の絶対値が必要なため、プラズマ601からのイオンや電子が高濃度に存在しているプラズマシールド板602内部に設置することは到底不可能であった。しかしながら、本実施形態では簡単な構造でこれを実現することが出来る。
本実施形態では装置としてはイオン源を備えていないが、通常プラズマの中心部からは10〜30eV程度の高いエネルギーを持った正イオンが放出されているので、測定にはこのプラズマ601からのイオン120を利用する。本発明の方法では計測するイオンの電流量自体は測定結果には無関係で、第1および第2のコレクタの電流量比率のみが必要となる。したがって、本実施形態では電流量は知り得ず、しかも変動していても問題なく測定を行なうことが出来る。しかし、より大量の低いエネルギーを持ったプラズマからのイオンも存在するので、これと区別するために迷イオン阻止板401a、401bの電位を調整して高いエネルギーを持った正イオンのみを計測する。また、本実施形態でのイオン源は内部コレクタに相当するものがなくIは不明であるので、第1のコレクタとしてのコレクタ202によるIL1、および第2のコレクタとしてのコレクタ203によるIL2から式(5)を使って平均自由行程を算出する。
図9では、シールドケース603内の電極は第2の実施形態(図6)と同じとしているが、シールドケース603内の構成を第3の実施形態(図7)と同じにすることも出来る。すなわち、シールドケース603内にイオンブランキング501とコレクタ202、203を設置する簡単な構造とすることが出来る。ただし、イオンブランキング501でメッシュに印加する低電位(矩形波底辺の電位)は0Vではなく+5Vから+50V程度まで可変(高電位は100V程度のまま)として、低いエネルギーを持ったイオン110を排除する。この他、ロックインアンプ使用によりプラズマ601(およびプラズマ発生装置)からの電気的な影響も排除できるメリットもある。
以上、本実施形態では、プラズマからのイオンを利用することによって、従来不可能であったプラズマ領域の測定を可能にしている。
(第5の実施形態)
図10は本発明の第5の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図であり、本実施形態に係る装置1007は上記各実施形態に比べて真空度の悪い領域に適している。図10において、下側の図は正面図であり、上側の図は上面図である。透過型のコレクタ202は上記各実施形態と同じであるがイオン源100にはシンプルなものが使われ、全体に細長い形状としている。イオン源100は、SUS製などの板状(8mm×2mm程度。電子透過不可)のグリッド102、W製ワイヤ(φ0.2mm、長さ8mm程度)のフィラメント101のみを有している。なお、本実施形態のグリッドは、円筒型で電子を透過させ内部でイオンを生成させる第3の実施形態までのグリッドとは異なり、板状であってグリッド近傍でイオン化させるので電子を透過させる必要はなく、メッシュ//格子状ではなく目の詰った単なる板が使われる。グリッド102は+100V、フィラメント101は+30V程度に電圧が印加され、両者の間隔は1mm程度である。
フィラメント101より放出された電子310はグリッド102に向かって進みグリッド:102の近傍で雰囲気ガスと衝突して正電荷のイオン:110を発生する。イオン110はほぼグリッド102の電位(+100V)で発生するので、電子310のビームと反対の向きになってシールドケース603の方向に進む。シールドケース603の前面(グリッド102、フィラメント101側)にはスリット(8mm×2mm程度)が設けられているので、スリットに達したイオン110はシールドケース603の内部に進む。グリッド102とシールドケース603前面の間隔は3mm程度、シールドケース603前面とコレクタ202との間隔は1mmとしている。コレクタ202(5mm×1.5mm程度)はSUS製などのメッシュ(間隔0.3mm、透過率50%程度)、コレクタ203(5mm×1.5mm程度)はSUS製などの板(プレート)である。コレクタ202とコレクタ203との間は正確に5mmとしている。
シールドケース603はSUS製などの金属板(厚さ1mm程度)であってコレクタ202、203の双方を囲って外側から迷イオンが廻り込まないようにしている(図9のプラズマ用に比べれば密閉度は厳しくない)。シールドケース603の形状はシガレットケースのように細長く(そしてイオン110のビームも細長く)なっている。従って、イオンの飛行領域で発生した迷イオンは遠くに存在するコレクタに到達するよりも、より近くに存在するシールドケース603に吸収されやすい。また、シールドケース603は電流計に接続されており、シールドケース603(主に前面のスリット近傍)に流れ込むイオン電流を計測できるようになっており、図5〜7の内部コレクタ201に対応している。シールドケース603の前面部は、透過化されたコレクタ202と同様に一部のイオンを捕捉して他のイオンを透過させる構造となっているので、減衰なし補正を行なうことによって内部コレクタとしての機能を果たすことが出来る。すなわち、シールドケース603は迷イオンの阻止と吸収、および内部コレクタの機能を持っている。なお、電位的にはコレクタ202,203の双方、シールドケース603ともにアース(0V)である。
フィラメントの両側に板状のグリッドとコレクタとを配置した真空計はシュルツゲージとして知られており、円筒グリッドのイオンゲージと同じ原理ではあるが適用真空度を0.1Pa〜100Pa程度と真空度の悪い方へシフトさせている。すなわち、フィラメントから発生した電子をグリッドで加速して雰囲気ガスと衝突させてイオンを生成し、そのイオンをコレクタで集めてイオン電流を計測する原理は全く同じである。しかし、グリッドを板状としてフィラメントに接近させることによりイオンの生成効率を小さくしてイオンによる空間電荷の効果を低減し、またコレクタも接近させてイオン捕捉を促進することによって、イオンゲージで限界となっている10Paよりも悪い真空度でも動作できるようになっている。本実施形態でのグリッド102、フィラメント101およびシールドケース603前面はこのシュルツゲージとほとんど同じ構造となっているので、0.1Pa〜100Pa程度の範囲の真空度測定を行なうことが出来る。
本実施形態による平均自由行程の測定手順は第1の実施形態と全く同じであり、高精度が必要な場合には「減衰なし較正」を事前に行なうことも同じである。ただし、飛行距離においては、コレクタ202とコレクタ203との間の距離が5mm、内部コレクタとしてのシールドケース603前面とコレクタ202との間の距離は1mmと短くなっている。従って、前者による式(5)にて0.4Pa〜6Pa程度、後者による式(3)にて2Pa〜30Pa程度の測定を行なう。また「真空計較正」も第1の実施形態と同様であるが、シュルツゲージ類似の動作となるので0.1Pa〜100Pa程度の測定を行なうことが出来る。
以上、本実施形態では、非常に簡単な構造で0.1Pa〜100Pa範囲での高精度な測定を可能にしている。
(第6の実施形態)
図11Aは本発明の第6の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。なお、図11Aの上側の図は、本実施形態に係る装置1007の上面図であり、下側の図は、正面図である。図11Bは、図11Aに示す装置1007のフィラメント・グリッドの制御回路を示す図である。本実施形態に係る装置1007は、より広範囲な測定が行なえるように測定に用いる荷電粒子をイオンと電子とで切り替え可能になっている。雰囲気内に設置する部分は印加電圧を除き第5の実施形態と同じであるが、フィラメント・グリッドの制御回路は新たなものとなっている。
まずイオンを利用する場合には第5の実施形態と全く同じように動作させ、必要に応じ「減衰なし較正」「真空計較正」を行なうことも同様である。すなわち、図11Bに示すように、スイッチ1101、1102を切り替えて、フィラメント101に+30Vの電位を印加し、グリッド102に+100Vの電位を印加する。この切り替えにより、イオンが発生する。
つぎに電子を利用する場合にはフィラメント101を−30V程度とするとともに、グリッド102にもフィラメント101と同じ電位を印加する。すなわち、図11Bに示すように、スイッチ1101、1102を切り替えて、フィラメント101およびグリッド102に−30Vの電位を印加する。この切り替えにより、電子の進行方向が逆転し、グリッド102の反対側(図11Aで右側)にある飛行領域に電子が導入される。フィラメント101より放出された電子310はアース電位であるシールドケース603に引き寄せられ、スリットからシールドケース603の内部に進む。電子310は、その後の雰囲気ガスとの衝突やコレクタ202、203への到達・計測などイオンの場合と同じように動作するが、平均自由行程はイオンよりも5倍長いので適用される真空度は5倍程悪くても良い。なお、電子ではイオンよりも低い衝突エネルギーで2次電子放出が発生するが、本実施形態ではコレクタへの衝突エネルギーは30eV程度なので電子電流計測における2次電子放出の影響は少ない。
したがって、電子の場合にはコレクタ202とコレクタ203とよる式(5)にて2Pa〜30Pa程度、内部コレクタとしてのシールドケース603前面とコレクタ202とによる式(3)にて10Pa〜150Pa程度の測定を行なうことが出来る。そこで、イオンによる式(5)の0.4Pa〜6Pa程度と合わせれば、平均自由行程を直接測定できる範囲は0.4Pa〜200Paと広くなる。
以上、本実施形態では、イオン/電子の切り替えによって0.4Pa〜200Paの広範囲での平均自由行程の測定を可能にしている。
(第7の実施形態)
図12Aは本発明の第7の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。なお、図12Aの上側の図は、本実施形態に係る装置1007の上面図であり、下側の図は、正面図である。図12Bは、図12Aに示す装置1007のフィラメントの制御回路を示す図である。本実施形態に係る装置1007は、電子専用として構造をよりシンプルにするとともに同じフィラメント101を使ってピラニゲージの機能を持たせている。雰囲気内に設置する部分はグリッドが存在しないことを除き第6の実施形態と同じであるが、図12Bに示すように、フィラメントの制御回路は新たなものとなっている。電子310による平均自由行程の測定の動作・手順は第6の実施形態と全く同じであり、必要に応じ「減衰なし較正」「真空計較正」を行なうことも同様である。
ピラニゲージは堅牢で汎用性が高く、多くの用途に広く使用されている。加熱されたフィラメントの温度(実際に測定するのは温度依存のある抵抗値)が雰囲気の真空度に依存することを利用しており、フィラメントの加熱と抵抗値の計測が必要である。平均自由行程の測定用のフィラメント加熱を流用することができるので、新たにフィラメントの抵抗値計測が出来れば良い。そこで、本実施形態では、図12Bに示すように、フィラメント101の制御回路に抵抗測定回路1201を組み込んでいる。
ピラニゲージは適用可能な真空度が1Pa〜1000Pa程度と広範囲になっているが、イオンゲージと同じく感度(換算値)である信号量絶対値の変化が激しいのが欠点となっているので「真空計較正」が大変有効となる。「真空計較正」は第1の実施形態と同様で、既知ガス種によって減衰が発生する程度の真空度に維持した上で、平均自由行程の測定値とピラニゲージによる測定値とを比較してピラニゲージの感度(換算値)を較正する。これらにより2Pa〜150Pa程度の平均自由行程の直接測定とともに、1Pa〜1000Pa程度のピラニゲージ測定が行なえる。
以上、本実施形態では、「真空計較正」によって汎用性の高いピラニゲージで高精度な測定を可能にしている。
(第8の実施形態)
図13Aは本発明の第8の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。なお、図13Aの上側の図は、本実施形態に係る装置1007の上面図であり、下側の図は、正面図である。図13Bは、図13Aに示した装置の各電極の形状を示す図であり、図13Cは、図13BにおけるラインAでの電子ビーム軌道を示す図であり、図13Dは、図13BにおけるラインBでの電子ビーム軌道を示す図である。本実施形態に係る装置1007では、幅(面積)が広い電子源の使用および「減衰なし較正」無しに対応できるようにコレクタの形状を工夫している。これはつぎのような要求によるものである。1800℃もの高温になるフィラメント方式では雰囲気ガスと反応してしまうなどの問題があり、より低温にできる傍熱型の酸化物陰極やその他低温の電子源が望まれている。しかしながら、このような電子源は輝度(電子の強度。単位面積、単位角度あたりの電子放出量)が大幅に低くなってしまう。また、用途によっては雰囲気の真空度を十分に良くすることは不可能で「減衰なし較正」を使用できない場合がある。
電子源300は傍熱型の酸化物陰極であり、フィラメントに比べて長さは3倍程度(25mm程度)で幅は広く(3mm程度)となっている。ビーム角制限板400には、図13Bに示されるように、1.5mm×3mm程度の孔(小窓)が4個、等間隔で設けられている。コレクタ202には、図13Bに示されるように、2mm×4mm程度の孔(小窓)が2個、ビーム角制限板400の孔と一部重なるように設けられている。コレクタ203には、図13Bに示されるように、孔(小窓)は無い。
図13Aにおいて、電子源300の表面、ビーム角制限板400、コレクタ202、コレクタ203のそれぞれの間隔は5mm程度、1mm、5mmであり、これらの外形は大体30mm×8mm程度である。コレクタ202とコレクタ203との間には迷電子吸収板412が設置されている。
ビーム角制限板400、コレクタ202、コレクタ203、迷電子吸収板412はいずれも厚み0.5mm程度のSUS製などの板(プレート)である。電子源300の電位は−30Vであり、迷電子吸収板412は+5Vとしているが、その他はすべてアース電位(0V)となっている。
電子源300から放出された電子310はビーム角制限板400に向かって進み、ビーム角制限板400の4つの孔(小窓)を通過する。ビーム角制限板400の4つの孔を通過した電子310のうち、二つの孔を通過した電子はコレクタ202に検出される。一方、残りの二つの孔を通過した電子はコレクタ202の孔(小窓)も通過してコレクタ203に検出される。この前者の状況が図13Cに、後者の状況が図13Dに示されている。孔(小窓)の大きさを、ビーム角制限板400よりもコレクタ202の方を大きくしているのは、コレクタ203まで飛行する電子310がコレクタ202に検出されないようにするためである。また、コレクタ202の孔(小窓)が2個あって位置が対称的でないのは、電子源300から放出される電子310の量が長手方向で均一でないことの影響を相殺するためである。この結果、コレクタ202とコレクタ203の電子310の検出率はいずれも50%となる。
すなわち、本実施形態では、透過型のコレクタ202に設けられた孔(開口部)の数よりも多い孔(開口部)を有するビーム角制限板400を電子源300とコレクタ202との間に設けている。さらに、ビーム角制限板400に設けられた孔を通過した電子のうち一部(例えば、50%)をコレクタ202にて捕捉し、他の電子(例えば、50%)を通過させるように、ビーム角制限板400に設けられた孔とコレクタ202に設けられた孔とを位置決めする。
電子310による平均自由行程の測定の動作・手順、および真空度範囲は第7の実施形態と同じである。ただし、コレクタ202は今までの実施形態でのメッシュ状とは違って一つの孔(小窓)の面積が大きいので、その透過率を正確に見積れること、汚れなどで透過率が変化することはほとんどないことから、必ずしも減衰なし較正は必要としない。すなわち、コレクタ202の透過化を実現するにはメッシュを利用するのが最も簡単であったが、重要な透過率を確定する点に難があり、それを減衰無し較正でカバーしていた。これに対して、本実施形態では複雑にはなるが、コレクタ202に形成する開口を板の孔開け加工で形成し、かつ一つの開口の面積を大きくして、変形・汚れなどの影響が少なくしかも計算によって透過率が確定できる構造としている。これによって、減衰なし較正をしなくてもある程度の精度で測定を行なえるようにしたのである。
また、幅広い電子源を使用しているためあまり細長い形状とすることは出来ないので、本実施形態では、図11〜12とは違って電位を印加した迷電子吸収板412が必要となっている。すなわち、迷電子にとってコレクタ202やコレクタ203と迷電子吸収板412との距離があまり差がないので、もしこの空間が一定な電位であればかなりの迷電子がコレクタ202、203の双方に流れ込む可能性がある。そこで、迷電子吸収板412には電子を積極的に引き込むようにプラス5Vの電位が印加されている。これにより、迷電子はコレクタ202、203の双方に到達せずに迷電子吸収板412に吸収される。なお、雰囲気ガスと衝突せずにコレクタ203に到達すべき電子は30Vの運動エネルギーを持っているので、迷電子吸収板412には影響されずに、正常にコレクタ203にて正常に計測される。しかし、電子源が幅広いため、第5〜7の実施形態のように内部コレクタに相当する電極を用意することは多少無理あるので、本実施形態では含めていない。
これにより、コレクタ202およびコレクタ203による電子数の検出により、式(5)にて2Pa〜30Pa程度の測定を行なうことが出来る。しかし、内部コレクタに相当する電極はないので、これより悪い真空度での測定は出来ない。
以上、本実施形態では、より低温の傍熱型電子源を使用できるとともに、「減衰なし較正」を行わなくても高精度な測定を行なうことが出来る。
(第9の実施形態)
図14Aは本発明の第9の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図である。なお、図14Aの上側の図は、本実施形態に係る装置1007の上面図であり、下側の図は、正面図である。図14Bは、図14Aに示す各電極の形状、およびそれらの回路を示す図である。本実施形態に係る装置1007では、幅広の電子源と「減衰なし較正」無しの実現とに加え、多くのコレクタを使用することにより適用真空度の範囲を拡大している。基本的な構造・動作は第8の実施形態の図13と同じであるが、コレクタの数が増加するとともにロックイン(変調同期型)アンプ502が使われている。よって、本実施形態では、迷電子吸収板を用いる必要が無い。
電子源300は第8の実施形態の電子源と全く同じである。ビーム角制限板400には1mm×2.5mm程度の孔(小窓)が10個、等間隔で設けられている。コレクタ202には1.5mm×3mm程度の孔(小窓)が8個、ビーム角制限板400の孔と重なるように設けられている。同様に、コレクタ203には、2mm×3.5mm程度の孔(小窓)が6個、コレクタ202の孔と重なるように設けられている。コレクタ204には、2.5mm×4mm程度の孔(小窓)が4個、コレクタ203の孔と重なるように設けられている。コレクタ205には、3mm×4.5mm程度の孔(小窓)が2個、コレクタ204の孔と重なるように設けられている。コレクタ206には孔(小窓)は無い。
電子源300の表面とビーム角制限板400との間隔は5mm程度であり、コレクタ202からコレクタ203、204、205、206までのそれぞれの間隔は0.15mm、0.5mm、1.5mm、5mmとなっている。これらの外形は大体30mm×8mm程度である。ビーム角制限板400、コレクタ202〜206はいずれも厚み0.5mm程度のSUS製などの板(プレート)である。電子源300(電子源300の電位は−30V)を除きすべての電極の電位はアース電位(0V)となっている。
5枚のコレクタ202〜206は、ビーム角制限板400の10個の孔(小窓)を通過した電子310のうち、それぞれ2個の孔(小窓)を通過した電子310のみを検出する。したがって、各コレクタの電子310の検出率は20%となる。なお、コレクタ204〜206にて検出された電子数(荷電粒子数)は、コレクタ202、203と同様に、RAM1003に保存される。
飛行距離が短く迷電子吸収板を設置できないので、本実施形態では、図14Bに示すように、電気的に迷電子を排除するロックイン(変調同期型)アンプ502が使用されている。ロックイン(変調同期型)アンプの構成・動作は第3の実施形態(図7,8)と基本的に同じである。ただし、イオンではなく電子を利用しているが、極性が異なり、非衝突でのコレクタ到達時間が短くなるだけである。ブランキングとして阻止用メッシュではなく、電子源300に±30Vの矩形波電位を印加しているが、ビームは同じようにブランキングされる。当然、コレクタの切り替えは多くなっている。本実施形態では、スイッチ1402、1403にてコレクタの切り替えを行う。すなわち、スイッチ1402は、比較対象のコレクタを選択するスイッチとして機能し、スイッチ1403は、真空度範囲(電子の飛行距離)を選択するスイッチとして機能する。
図14A,14Bに示されるように、コレクタ202からコレクタ206に向かうに従って、電子の飛行距離は長くなっている。また、各コレクタ間の電子の飛行距離もコレクタ202からコレクタ206に向かうに従って長くなっている。よって、どのコレクタを第1のコレクタおよび第2のコレクタに設定するのかに従って、測定できる真空度範囲は異なる。
例えば、それぞれのコレクタによる真空度範囲は、第1のコレクタとしてコレクタ202を用い、第2のコレクタとしてコレクタ203を用いる場合(コレクタ間距離L2−L1=0.15mm)、60Pa〜900Pa程度である。また、第1のコレクタとしてコレクタ202を用い、第2のコレクタとしてコレクタ204を用いる場合(コレクタ間距離L2−L1=0.5mm)、真空度範囲は20Pa〜300Pa程度である。また、第1のコレクタとしてコレクタ202を用い、第2のコレクタとしてコレクタ205を用いる場合(コレクタ間距離L2−L1=1.5mm)、真空度範囲は6Pa〜90Pa程度である。さらに、第1のコレクタとしてコレクタ202を用い、第2のコレクタとしてコレクタ206を用いる場合(コレクタ間距離L2−L1=5mm)、真空度範囲は2Pa〜30Pa程度となる。(いずれも式(5)による計算)そこで、全体として適用可能な真空度範囲は2Pa〜900Paと広くなる。
以上、本実施形態では、コレクタの切り替えによって2Pa〜900Paの広範囲での平均自由行程の測定を可能にしている。
(第10の実施形態)
図15Aは本発明の第10の実施形態に係る平均自由行程を測定する装置を示す図であり、図15Bは、図15AのA−A′線断面図である。本実施形態では、1つのコレクタにてしかも機械的な構造も変えずに、異なる飛行距離の測定が行なえるようにしている。
距離を変更する原理は、進行方向(軸方向)に平行な磁場が存在すると電子はらせん運動を行なうこと、らせん回数は進行方向の速度(運動エネルギー)に依存することに拠っている。利用する荷電粒子はイオンでも可能であるが、強力な磁場が必要でガス種によりらせん運動(径)が変わることなどの問題があるので、本実施形態では電子を使用している。
本実施形態では、2枚の磁石の間に、フィラメント101とそれを囲むフィラメントケース320、および軌道電位調整板703が設置され、これら全体をシールドケース603が囲んでいる。磁石は導電性磁石(アルニコなど)でいずれもφ60mm×5mm程度で、一方の磁石は電子310を追い返すリペラの役目を果たし、他方の磁石はコレクタの役目を果たす。
前者をリペラ兼用磁石701とし、後者をコレクタ兼用磁石702とする。両者の間隔は80mm程度であり、その間の磁場が16ガウスとなるように調整されている。
フィラメント101はφ0.2mm程度のW製ワイヤでヘアピン型(先端が鋭角に曲がっている)としている。フィラメントケース320は厚み0.3mm程度、6mm×3mm×30mm程度の箱であり、上面にφ1mm程度の円孔があり、該円孔の中心にフィラメント101の先端が合致するように位置している。これは細い電子310のビームを形成する方法としてよく知られている。フィラメントケース320の円孔は、リペラ兼用磁石701から軸方向に2mm程度、軸から20mm程度離れて位置しており、円周方向を向いている。軌道電位調整板703は二重の円筒(外筒の内径:φ45mm程度、内筒の外径:φ35mm程度で、φ35mm〜φ45mm間を電子が通過。)であり、この電位を変化させることによって電子310の軸方向の速度が変化し、電子のらせん運動のらせん回数を調整することが出来る。
軌道電位調整板703と磁石702との距離(軸方向)は5mm程度である。フィラメントケース320と軌道電位調整板703は導電性かつ非磁性の必要があるのでSUS製としている。
シールドケース603は厚みが5mm程度の純鉄(あるいは磁性ステンレス)製で、外乱磁場のシールド(遮蔽)だけでなく磁石のヨークの役目を果たす。
まず、各電極の電位をつぎのように設定する。リペラ兼用磁石701の電位を-30Vとし、コレクタ兼用磁石702の電位を0Vとし、フィラメント101の電位を-130Vとし、フィラメントケース320の電位を-30Vとし、軌道電位調整板703の電位を0Vとする。電子310は円周方向に100V(フィラメント101の電位-130Vとフィラメントケース320の電位-30Vとの差)の運動エネルギーで放出されるが、軸方向(図の左右方向)に16ガウスの磁場が印加されているのでローレンツ力にて直径40mm程度の円周運動を行なう。両磁石の間では、径方向(図の上下)の電位は一定で、かつ軸方向の磁場も一定なので、この円周運動はコレクタ兼用磁石702に到達するまで継続される。一方、軸方向の電位はリペラ兼用磁石701およびフィラメントケース320の-30Vからすぐに軌道電位調整板703の0Vに変化し、その後は一定となっているので、電子は軸方向には30eVの運動エネルギーにて等速度運動を行なう。電子は、この径方向の動きと軸方向の動きとの合成により、らせん運動を行なう。
シミュレーションの結果から、以下のことが判明している。軸方向に30eVの運動エネルギーで進む時、電子310はコレクタ兼用磁石702に到達するまでにほぼ1回転のらせん運動を行なう。つぎに、他の条件は同じままで、軌道電位調整板703のみ電位を変更し-29V(すなわち、1eVの運動エネルギー)とすると、5.5回転のらせん運動を行なう。このように、軌道電位調整板703の電位を変えることにより、同じコレクタでも実質的な飛行距離を変化させることが出来る。飛行距離を変えた2条件でコレクタ兼用磁石702に到達した電子310を検出すれば、今までのコレクタが2つ存在する実施形態を同じように平均自由行程を算出することができる。図15Aにおいて、符号310a、310bは、この様子を概略表している。すなわち、軌道電子調整板703に0Vの電位を印加すると、フィラメントケース320から放出された電子は符号310aの軌道を辿り、1回転のらせん運動を行ってコレクタ兼用磁石702にて検出される。また、軌道電子調整板703に-29Vの電位を印加すると、フィラメントケース320から放出された電子は符号310bの軌道を辿り、5.5回転のらせん運動を行ってコレクタ兼用磁石702にて検出される。
雰囲気ガスと衝突して運動エネルギーを失った迷電子はらせん直径が小さく、軌道電位調整板703の内径および外径間を通過しにくくなるので、迷電子の影響は少ない。また、電子310のコレクタへの衝突エネルギーは130eV程度(フィラメント101の電位-130Vとコレクタの702の電位0Vとの差に略相当)なので2次電子の放出率は高いが、運動エネルギーの小さい2次電子はらせん直径が小さいので、散乱することなく電位勾配によってコレクタに戻る。よって、2次電子放出の影響は少ない。なお、磁場強度の変動に対処するため、測定前にコレクタ兼用電極702で受ける電子電流が最大となるようにフィラメント101の電位(電子310の円周方向の運動エネルギー)を調整しておく。これは、最大電流では電子310のらせん直径が軌道電位調整板703の外筒内径と内筒外径の中間となっているはずなので、飛行距離を正しく見積れるからである。
実際の飛行距離は「コレクタ間距離」の平方(2乗)と「らせん直径×らせん回数×π」の平方(2乗)との和の平方根となる。本実施形態ではコレクタ間距離は80mm、らせん直径は40mmなので、飛行距離は、らせん1回転で149mm、5.5回転で820mmとなる。そこで、らせん1回転における飛行距離149mmをL1、電子電流をIL1とし、一方、5.5回転における飛行距離533mmをL2、電子電流をIL2として式(5)から平均自由行程が求められる。適用できる真空度範囲は1&5.5回転で0.02Pa〜0.3Pa程度となる。
より、具体的には、軌道電位調整板703への印加電位と該電位に対応する飛行距離とをテーブルにて関連付けて保存しておく。軌道電位調整板703への印加電位によってらせん回数は決まってくるので、制御部1000は、軌道電位調整板703に第1の電位を印加した場合の、コレクタ兼用磁石702にて検出された第1の電子数(電子電流)、および軌道電位調整板703に第2の電位を印加した場合の、コレクタ兼用磁石702にて検出された第2の電子数(電子電流)をそれぞれRAM1003に格納する。次いで、制御部1000は、テーブルを参照して、軌道電位調整板703への第1の電位に対応する第1の飛行距離、および軌道電位調整板703への2の電位に対応する第2の飛行距離(第2の飛行距離>第1の飛行距離;よって、第1の飛行距離がL1となり、第2の飛行距離がL2となる)を取得し、RAM1003から第1の電子数IL1および第2の電子数IL2を取得する。次いで、制御部1000は、第1の実施形態と同様に、式(5)を用いて平均自由行程の計算を行う。
または、コレクタ兼用磁石702に接続された電流計にて検出された電子数を表示するようにしても良い。この場合は、ユーザが、入力操作部1005を介して、電流計に表示された値、および該値に対応する飛行距離を制御部1000に入力し、さらに平均自由行程の計算の指示を入力する。制御部1000は、これらユーザ入力により、飛行距離および電子数を取得して、上記計算の指示に従って、式(3)〜(5)のいずれかの式により平均自由行程の計算を行う。あるいは、上記電流計に表示された値を、ユーザが関数電卓に入力しても良い。この場合は、該ユーザ入力に従って、関数電卓は電子の飛行距離および減衰後の電子数を取得することになり、該関数電卓は、式(3)〜(5)のいずれかを行うことができる。
いずれの場合であっても、平均自由行程を計算するための演算装置(制御部1000、制御部1000とは別個のコンピュータ、関数電卓など)は、装置1007からの送信、あるいはキーボード、タッチパネルといった入力操作部を介したユーザ入力に従って、電子の飛行距離および減衰後の電子数を取得することができる。
以上、本実施形態では、コレクタ一式にて任意の飛行距離による平均自由行程の測定を可能にしている。
(その他の実施形態)
以上各実施形態を説明してきたが、本発明の実施形態はこれらに限定されることはなく、それぞれの実施形態の各要素を組み合わせること、入れ替えることが可能なのは当然である。また、全体の構造、およびそれぞれの電極の形状、寸法、材料、および印加電圧は上記実施形態に限定されることなく任意に選ぶことができる。
全体構造としては、イオン源(電子源)の外部にコレクタを(実質的に)二つ用意していたが、より簡単な構造とするために内部コレクタと外部のコレクタ一つのみを用意し、式(3)を使って測定することも出来る。なお、内部コレクタの飛行距離は0とみなせるので、内部コレクタの電流をIL1、外部のコレクタの電流をIL2として、L1=0、L2:外部のコレクタの飛行距離とすれば、式(5)をそのまま使うこともできる。すなわち、式(5)がこれらすべてに適用できる式となる。
イオン源としては上記実施形態に限定されることなく、mAからnA程度の電流のイオンが放出されるものであれば、放電/プラズマ型、磁場(マグネトロン)型、アルカリ金属型、液体金属型などを任意に選ぶことができる。Li酸化物を含むアルミナシリケードの焼結体を加熱してLiイオンなどを放出させるアルカリ金属型や加熱して液体状としたAuに高電圧を印加してAuイオンなどを放出させる液体金属型は、雰囲気ガスのイオンでないが、LiやAuなど特定のイオンが供給されるので適用可能である。また、負イオンでも構わない。電子源も上述の実施形態と同程度の電流の電子が放出されるものであれば、放電/プラズマ型、フィールドエミッション型、光電子放出型などから任意に選ぶことができる。
検出器としては上記実施形態での板状やメッシュ状のコレクタに限定されることなく、ファラデーカップ状のコレクタ、あるいはマルチチャンネルプレートや電子増倍管でも構わない。また、上記実施形態では一つのイオン源と複数のコレクタとしたが、逆に一つのコレクタと複数のイオン源とすることも出来るし、一つのイオン源と一つのコレクタのセット(従来と同じ構成)を複数用意することも可能である。なお、複数のコレクタを持ついずれの場合、第1の荷電粒子数および第2の荷電粒子数の両方の計測を同時に行なうことも出来るし、短時間のうちに切り替えることにより両者を計測することも出来る。第1の荷電粒子数および第2の荷電粒子数の両方の計測を同時に行なう場合には、それぞれの電流をそれぞれの検出回路で計測するのではなく、最初から電流比率を計測できる検出回路とすることも出来る。
コレクタなどの電極の組立て方法は上記実施形態での従来の真空計(イオンゲージやシュルツゲージ)を類似の機械的方法にて作製される荷電粒子発生構成に限定されることなく、半導体技術から発展した微細加工技術(MEMS)を使用することも出来る。MEMSによると飛行距離を短くすることが容易なので、より悪い真空度での測定に適している。
迷イオン(電子)対策をより厳密に行なうため、迷イオン吸収板をアース電位ではなく迷イオンを積極的に引き寄せる方向の電位を印加することも有効である。また、エネルギーを失ったイオンをコレクタに到達させないために、阻止電場ではなく偏向電場で横方向に曲げることも可能である。さらに、コレクタを最初から偏向方向にずらして設置することも有効となる。
従来型真空計の較正を行なう「真空計較正」は上記実施形態のように本発明の装置に組み込まれたものに限定されることなく、他の独立した真空計とケーブル接続などによる信号のやり取りで行なうことも出来る。すなわち、例えば、装置1007は、算出された平均自由行程の値そのもの、またはその平均自由行程の値から変換して得られた圧力の値を、上記他の独立した真空計に送信することができる。これによると、現有の真空計を使用しながら測定精度を高くすることが出来る。
平均自由行程の算出には上記実施形態での計算式に限定されることなく、この計算式を基本としながら経験的に得られた補正項(実験式)を加えた式を利用することも出来る。
さらには、これらプログラムにおける平均自由行程の計算式は上記の式(3)、式(4)、あるいは式(5)に限られず、これらの式を一部補正した式を用いることが出来る。
項目15)「精度劣化の要因」にて上述したように、理想的な状態からの“ずれ”は必ず発生するものであるが、関連する条件(イオン電流、イオンエネルギー、イオン種など)が同じであれば“ずれ”もほぼ同じであることが多い。そこで、実験的(経験的)にこの“ずれ”を測定し、これを補正するような計算式、すなわち実験式(補正項)を入れた計算式を求めておくことが出来る。この実験式(例えば、乗算に関する実験式F、および加算に関する実験式G)を入れた計算式(例えば、λ=(L2−L1)/In(IL1/IL2)×F+G)によるプログラムを使用することによって、より精度の高い測定を行なうことが出来る。また、さらに、補正項は関連する条件に依存するので、いくつかの条件での実験を行なうことにより、関連する条件を変数とした補正項の関数(例えば、実験式F、G)を求めることが可能となる。これを使用すると、さらに精度のよい測定を行うことができる。
飛行距離を拡大、あるいは変更する方法としては、飛行時間型質量分析計(Time of Flight:TOF)において知られている様々な軌道制御の方法、例えばイオンを往復させるリフレクトロン方式や同一軌道を周回させるマルチターン方式、あるいはらせん軌道を周回させるらせん方式などが利用できる。また、ひとつのコレクタを飛行方向の軸上で移動させる、あるいは複数のコレクタを軸と直角方向に(軸上と軸外に)移動して計測するコレクタを選択する方法も可能性がある。
各成分の真空度測定のために必要となる質量分析計としては四重極型に限らず、イオン源/コレクタ間の距離を任意に設定できる磁場セクター型、飛行時間型、電場/磁場重畳型なども使用することが出来る。また、イオン源/コレクタ間の距離は同じであるが、実質的にイオン源での発生からコレクタでの検出までの時間、すなわち実効的な飛行距離を任意に設定できるイオントラップ型(3次元型および2次元型)やイオンサイクロトロン型も使用することが出来る。
(さらにその他の実施形態)
本発明は、複数の機器(例えばコンピュータ、インターフェース機器、リーダ、プリンタ、装置1007など)から構成されるシステムに適用することも、1つの機器からなる装置に適用することも可能である。
前述した実施形態の制御部1000の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。

Claims (19)

  1. 雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する装置であって、
    前記荷電粒子を発生する発生源と、
    前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する検出手段と、
    前記第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する算出手段と
    を備えることを特徴とする装置。
  2. 前記検出手段は、
    前記第1の荷電粒子数を検出する第1の検出器と、
    前記第1の検出器よりも前記発生源から遠い距離に位置する、前記第2の荷電粒子数を検出する第2の検出器と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記検出手段は、
    前記荷電粒子を検出する検出器と、
    前記発生源から前記検出器までの前記荷電粒子の軌道を調整する調整手段とを有し、
    前記調整手段により前記荷電粒子の飛行距離を変化させることにより、前記検出器は前記第1及び第2の荷電粒子数を検出することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  4. 前記発生源は、
    電子を放出させるフィラメントと、
    前記電子を引き寄せて前面近傍でイオンを生成させるグリッドと、
    前記生成されたイオンを引き出す平板状の引出し電極であって、到達したイオンのうちその一部のイオンをそのまま通過させるように構成された引出し電極と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  5. 前記発生源は、
    電子を放出させる電子源と、
    前記放出された電子を引き出す引出し電極であって、到達した電子のうちその一部の電子をそのまま通過させるように構成された引出し電極と
    を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  6. 前記荷電粒子は、イオンであり、
    前記発生源は、
    熱電子を放出させるフィラメントと、
    前記熱電子を引き込み内部でイオンを生成させる略円筒状のグリッドと、
    前記グリッドの内部に設置されたワイヤ状のコレクタとを有し、
    前記コレクタの長さを前記グリッドの軸方向長さより短くしたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  7. 前記コレクタの長さは、前期グリッドの軸方向長さの半分程度であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
  8. 第1の真空度において検出された第1の荷電粒子数を第1の初期値とし、該第1の真空度において検出された第2の荷電粒子数を第2の初期値とした時、前記算出手段は、前記第1の真空度よりも悪い第2の真空度において検出された第1の荷電粒子数を、該第1の荷電粒子数を前記第1の初期値で割った値に規格化し、かつ前記第2の真空度において検出された第2の荷電粒子数を、該第2の荷電粒子数を前記第2の初期値で割った値に規格化して、前記第1および第2の荷電粒子数の比率を求めることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  9. 前記検出手段は、到達した荷電粒子のうちその一部を検出するとともに、他の一部の荷電粒子をそのまま通過させるように構成された検出器であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  10. 前記構成された検出器は、少なくとも1つの開口部を有し、
    前記少なくとも1つの開口部を有する検出器は、メッシュ状、スリット状、または少なくとも1つの窓を有する検出器であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
  11. 雰囲気ガスと衝突して運動エネルギーを失った荷電粒子を吸収する電極をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  12. 検出器に到達する荷電粒子を断続的とする手段と、
    前記手段と同期したロックイン(変調同期型)アンプとをさらに備え、
    前記ロックインアンプは、前記検出された第1および第2の荷電粒子数からノイズを除去することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  13. 前記荷電粒子を発生する発生源として雰囲気ガス中に存在するプラズマを利用することを特徴とする請求項1に記載の装置。
  14. 前記発生源は、発生される荷電粒子としてイオンと電子を切り替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  15. 前記算出された平均自由行程から該平均自由行程に対応する圧力に変換する手段と、
    前記変換された圧力を表示する手段と
    をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  16. 雰囲気ガス中における荷電粒子の平均自由行程を測定する方法であって、
    前記荷電粒子を発生源から発生させる工程と、
    前記発生源からの飛行距離が0以上の第1の飛行距離である荷電粒子の第1の荷電粒子数を検出し、前記第1の飛行距離よりも長い第2の飛行距離の荷電粒子の第2の荷電粒子数を検出する工程と、
    前記第1および第2の荷電粒子数の比率から前記平均自由行程を算出する工程と
    を有することを特徴とする方法。
  17. 前記荷電粒子はイオンであり、
    前記荷電粒子を発生源から発生させる工程は、
    前記発生源が有するフィラメントに第1の電位を印加し、前記発生源が有するグリッドに前記第1の電位よりも高い第2の電位を印加して、前記フィラメントから放出された電子を前記グリッドに引き寄せて、該グリッド近傍でイオンを生成し、前記発生源が有する平板状の引出し電極であって、到達したイオンのうちその一部のイオンをそのまま通過させるように構成された引出し電極に前記第2の電位よりも低い第3の電位を印加して、前記生成されたイオンを前記引出し電極に引き寄せ、該引き寄せられたイオンの一部を前記引出し電極から透過させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  18. 前記荷電粒子は電子であり、
    前記荷電粒子を発生源から発生させる工程は、
    前記発生源が有するフィラメントに第1の電位を印加して該フィラメントから電子を発生させ、前記発生源が有する平板状の引出し電極であって、到達した電子のうちその一部の電子をそのまま通過させるように構成された引出し電極に前記第1の電位よりも高い第2の電位を印加して、前記生成された電子を前記引出し電極に引き寄せ、該引き寄せられた電子の一部を前記引出し電極から透過させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
  19. 請求項1に記載の装置を備える真空容器であって、
    前記真空容器内にプラズマを生成する手段をさらに備え、
    前記発生源として、前記生成されたプラズマを用いることを特徴とする真空容器。
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