JPWO2011024887A1 - 環状ペプチドを含む結合体およびその作製方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、非天然アミノ酸を含む環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体、および当該結合体を作製する方法を提供することである。かかる課題は、環状ペプチド分子内のアミノ酸の側鎖と結合し得る非天然アミノ酸を、環状ペプチドのN末端に付加することにより、容易に環状ペプチドを作製することにより解決される。かかる作製方法により、種々の環状ペプチドを含む結合体を提供可能である。また本発明の一般式1に記載の新規非天然アミノ酸を、環状ペプチドの作製に使用することが可能である。

Description

本発明は、非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体、当該結合体を作製する方法、および、新規非天然アミノ酸に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2010-035541号および特願2008-281348号の優先権を請求する。
タンパク質は種々の生物学的活性を有し、これを利用して多様なタンパク質製剤が開発されている。タンパク質の安定性や受容性を向上させるために、タンパク質の活性部位を包含する比較的短いペプチドや、活性部位に似た三次元構造をとる合成分子などの研究が進められており、その一つとして環状ペプチドが注目されている。
環状ペプチドは、環化によって構造的な拘束性が得られるとともに、多様な生物学的活性を示すため有用であると考えられている。環状ペプチドには、それ自身が抗腫瘍性などの性質を持つものや、標的物質に対して特異的に結合する性質を持つものなどがあり、種々の用途に用いられることが期待される。
環状ペプチドの応用として、腫瘍指向性ペプチドベクターが開示されている(特許文献1)。腫瘍指向性ペプチドベクターは、腫瘍細胞に取り込まれ細胞質に移行可能な環状ペプチドを数種同定したことに基づくものであり、環状ペプチドと、抗腫瘍作用等の薬理作用を有するような物質と結合させて使用することが開示されている。特許文献1に記載の環状ペプチドは、両端にシステインを有するペプチドであり、ジスルフィド結合により環状をなしていると考えられる。
もう一つの応用として、環状ペプチドを免疫グロブリンFc領域に結合させた結合体の利用が開示されている(特許文献2)。特許文献2の結合体は、Fc領域の特定のアミノ酸残基の側鎖を通じて、環状ペプチド等を共有結合させて作製される。環状ペプチドの合成についての具体的な開示はない。
環状ペプチドの合成方法の一つとして、RNA触媒およびin vitro翻訳系(リボソーム系)を応用した、チオエーテル結合を持たせた環状ペプチドの作製および環状ペプチドライブラリの作製が開示されている(非特許文献1)。in vitro翻訳系(リボソーム系)を応用した環状ペプチドの作製は、取り扱いが難しい。また、非特許文献1の環状ペプチドは、ポリペプチド鎖の主鎖骨格中にメチル基が導入されたものであり、生体に対する毒性が心配されるなどの問題がある。
環状ペプチドは限られた構造のものしか知られておらず、多様な環状ペプチドを簡便に利用可能とするための技術が望まれている。
特定の機能を有する環状ペプチドをスクリーニングするため、環状ペプチドを細胞表面に提示するファージが市販されている(Ph.D.TM-C7C Phage Display Peptide Library:New England Biolabs社)。かかる市販品では、2つのシステインを有する7アミノ酸のペプチドがファージに提示されており、システインの側鎖SH基がジスルフィド結合することにより環状ペプチドが形成されている。また非特許文献2には、リンカー化合物により二環性の環状ペプチドを有するファージを作製したことが開示されている。
多様な環状ペプチドを有するファージが簡便に利用可能となれば、環状ペプチドの研究や応用を進めることができると期待される。
特開2005−21021号公報 特表2009−504164号公報
Kawakami, T.; Murakami, H.; Suga, H., Chem Biol 2008, 15, (1), 32-42. Heinis C, Rutherford T, Freund S, Winter G., Nat Chem Biol. 2009 Jul;5(7):502-7.
本発明の課題は、非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体、および当該結合体を作製する方法を提供することである。
本願発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、非天然の側鎖を有する非天然アミノ酸をペプチド内に導入すること(例えば、非天然アミノ酸自体をペプチド内に導入すること、もしくは非天然の構造を有する化合物をペプチドに付加すること)により、非天然アミノ酸の側鎖がペプチド分子内のアミノ酸の側鎖と容易に環状ペプチドを作製し得ることに着目し、非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドを含む結合体を作製し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体。
2.前記機能部がファージであり、環状ペプチドがファージのコートタンパク質に結合してなる、前項1に記載の結合体。
3.非天然アミノ酸の側鎖により形成される環状部分が、以下から選択される構造を有する、前項1または2に記載の結合体:
(A)以下の化学式9にて示される非天然アミノ酸の側鎖と、金属とが配位してなる構造;
(B)以下の一般式8にて示される構造;
(一般式8中、Y1、Y2、Y3は各々独立して、炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。)
4.以下の工程を含む、前項1〜3のいずれか1に記載の結合体を作製する方法:
(1)SH基を有するアミノ酸を含むペプチドがコートタンパク質に結合してなるファージと、以下の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を混合して、0〜8℃、0.5〜16時間反応させる工程;
(一般式10中、R3はハロゲン原子である。)
(一般式11中、X1およびX2は各々独立して、炭素数が1〜5のハロアルキル基、炭素数が2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択され、Y3は炭素数1〜5のアルキレン基からなる群から選択される。)
(2)環状ペプチドを有するファージを分離する工程。
5.以下の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を含む、前項1〜3のいずれか1に記載の結合体を作製するための試薬キット:
(一般式10中、R3はハロゲン原子である。)
(一般式11中、X1およびX2は各々独立して、炭素数が1〜5のハロアルキル基、炭素数が2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択され、Y3は炭素数1〜5のアルキレン基からなる群から選択される。)
6.以下の工程を含む、標的タンパク質に結合し得る環状ペプチドをスクリーニングする方法:
(i)前項1〜3のいずれか1に記載の結合体と、標的タンパク質を接触させる工程:
(ii)標的タンパク質に結合した結合体を選択する工程。
7.前記機能部がFc領域を含むポリペプチドである、前項1に記載の結合体。
8.非天然アミノ酸の側鎖により形成される環状部分が、以下の一般式12に示される構造を有する、前項7に記載の結合体:
(式中、R4は、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−アミド結合−炭素数1〜5のアルキレン基、および炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−エーテル結合−炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。)
9.N末端に非天然アミノ酸を有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、前項7または8に記載の結合体の中間体。
10.N末端に非天然アミノ酸を結合させるために、塩基性アミノ酸をN末端に有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、前項9に記載の中間体の前駆体。
11.以下を含む混合溶液を用いて、前項7または8に記載の結合体を作製する方法:
(a)N末端に非天然アミノ酸を有さない直鎖状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、前記結合体の前駆体、
(b)前駆体分子内のアミノ酸の側鎖と結合可能な官能基を側鎖に有する非天然アミノ酸、
(c)tRNA、
(d)アミノアシルtRNA合成酵素、
(e)ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素。
12. Fc領域を有するポリペプチドである機能部をコードするポリヌクレオチドと、前記直鎖状ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが導入された細胞を培養することにより、前記前駆体が作製される、前項11に記載の作製方法。
13.下記一般式(1)により表される非天然アミノ酸:
(式中Rは、NR1-CO-R2であり、
R1は水素原子、又は炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基から選択され、
R2は炭素数が1〜3のアルキル基、炭素数が1〜3のハロアルキル基、または炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択される。)
14.R1は水素原子であり、R2は炭素数が1もしくは2のハロアルキル基または炭素数が2もしくは3のアルケニル基である、前項13に記載の非天然アミノ酸。
本発明の結合体によれば、種々の構造の環状ペプチドを有する結合体を提供することができ、環状ペプチドの特性を有効に活用することができる。また本発明の方法によれば、結合体を簡便に作製することができ、規模や設備の限られた環境であっても、結合体を作製して利用することが可能である。機能部がファージである結合体によれば、所望の機能を有する環状ペプチドをスクリーニングするシステムを簡便に得ることができ、目的に応じて多様な環状ペプチドを選択することができると考えられる。
また本発明の新規非天然アミノ酸は、システインのSH基と結合し得る官能基を有しており、環状ペプチドの作製に用いることができる。
化学式2の非天然アミノ酸を用いた環状ペプチド作製を示す図である。(実施例1) 化学式3の非天然アミノ酸を用いた環状ペプチド作製を示す図である。(実施例2) 配列番号1〜5(図3a〜eに対応)のペプチドと、化学式2の非天然アミノ酸とを用いて、環状ペプチドを作製した結果を示す図である。(実施例1) 配列番号6のペプチドと、化学式2の非天然アミノ酸とを用いて、環状ペプチドを作製した結果を示す図である。(実施例2) 配列番号2のペプチドに、化学式3の非天然アミノ酸を導入した結果を示す図である。(実施例3) 化学式4の非天然アミノ酸を、Fc領域の結合したペプチドのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例4) 化学式2の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例5) 化学式2の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例5) 化学式2の非天然アミノ酸を、Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例6) 化学式2の非天然アミノ酸を、Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例6) 化学式2の非天然アミノ酸を、Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例6) 化学式2の非天然アミノ酸を、ペプチドN末端に導入した結果を示す図である。(実施例7) 化学式5の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例8) 化学式6の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例9) 化学式5の非天然アミノ酸を、ペプチドのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例10) 化学式2または化学式6の非天然アミノ酸を、ペプチドN末端に導入した結果を示す図である。(実施例11) 化学式2または化学式6の非天然アミノ酸によるペプチドの環化を、iodoacetoamideを用いて確認した結果を示す図である。(実施例11) 化学式4の非天然アミノ酸を、Fc領域の結合したペプチドのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例12) ペプチドN末端に導入可能な3種の非天然アミノ酸の構造式を示す図である。(実施例13) クロロアラニンをペプチドN末端に導入した結果を示す図である。(実施例13) 化学式7の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例14) 化学式7の非天然アミノ酸を、ペプチドのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例15) 化学式9の化合物を、ファージ上のペプチドに導入した結果を示す図である。(実施例17) 化学式9の化合物を導入したファージの大腸菌への感染能を確認した写真である。(実施例17) 化学式19の化合物を合成した結果を示す図である。(実施例18) 化学式19の非天然アミノ酸を、ペプチドのN末端に導入した結果を示す図である。(実施例19)
(結合体)
本発明は、非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体に関する。
本発明において、非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドは、非天然アミノ酸がペプチド内に存在し、当該非天然アミノ酸の側鎖がペプチド内の他の側鎖等と結合することにより環状部分を形成するものであればよい。本発明の環状ペプチドにおける非天然アミノ酸は、非天然アミノ酸一分子として存在してペプチドに導入されたものであってもよいし、非天然の構造を有する化合物がペプチドに付加された結果、非天然アミノ酸を生じたものであってもよい。すなわち本発明における環状ペプチドは、非天然アミノ酸と環状部分を含むペプチドであればいかなるものであってもよい。環状ペプチドは、ペプチド全体で環状部分を形成しているものであっても、ペプチドの一部が環状部分を形成しているものであってもよい。また環状ペプチドは、環状部分が単数であっても複数であってもよいが、好ましくは単数である。すなわち本発明における環状ペプチドは単環であることが好ましい。環状部分は、非天然アミノ酸の側鎖と、他の非天然アミノ酸もしくは天然アミノ酸の側鎖が結合することにより形成される。環状ペプチドのアミノ酸残基数は特に制限されないが、2〜100個が好ましく、4〜50個がより好ましく、6〜17個が特に好ましく、6〜16個がさらに好ましい。
本発明の結合体に含まれる環状ペプチドは、非天然アミノ酸の側鎖により形成される結合部分が、以下から選択される構造であることが好ましい。
(A)以下の化学式9にて示される非天然アミノ酸の側鎖と、金属とが配位してなる構造:
(B)以下の一般式8にて示される構造:
(一般式8中、Y1、Y2、Y3は各々独立して、炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。好ましくは、Y1、Y2、Y3は各々独立して、炭素数1〜2のアルキレン基であり、より好ましくはY1およびY2はエチレン基であり、Y3はメチレン基である。)
上記(A)の構造における金属とは、Ca2+、Mg2+、Fe2+、Cu2+等の二価の金属イオンが例示される。
上記(A)の構造では、ペプチド内に化学式9の非天然アミノ酸の側鎖が少なくとも1つ存在すればよく、好ましくは2つ存在する。ペプチド内に化学式9の非天然アミノ酸の側鎖が(i)1つ存在する場合と、(ii)2つ存在する場合の構造式について以下の化学式13と14に例示する。以下の構造式においてMは、金属を表す。
(i)非天然アミノ酸の側鎖が1つ存在する場合には、非天然アミノ酸の側鎖が一方の金属配位子として機能し、もう一方の金属配位子として、例えば天然アミノ酸であるヒスチジンの側鎖が機能することにより、環状をなすことができる。(ii)非天然アミノ酸の側鎖が2つ存在する場合には、2つの非天然アミノ酸の側鎖が金属配位子として機能することにより環状をなすことができると考えられる(Inorg. Chem. 49, 4362-4369 (2010))。
本発明の結合体に含まれる環状ペプチドの別の態様として、非天然アミノ酸の側鎖により形成される結合部分が、以下の一般式12で示される構造であることが好ましい。
(式中、R4は、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−アミド結合(NHCO)−炭素数1〜5のアルキレン基、および炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−エーテル結合(O)−炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。)
好ましくは、R4は以下の化学式15〜18から選択される構造である。
本発明の環状ペプチドにおいて、非天然アミノ酸はNexta法(特開2009-106268号公報参照)により、ペプチドのN末端に付加されてもよい。環状ペプチドにおいて、非天然アミノ酸が付加されるN末端には、ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素(以下、「L/F転移酵素」とも称する)が作用し得るアミノ酸、好ましくは塩基性のアミノ酸(例えばリジンもしくはアルギニン)が存在している必要がある。
また本発明の環状ペプチドにおける非天然アミノ酸は、環状ペプチド分子内の他のアミノ酸の側鎖と結合可能な側鎖を有する非天然アミノ酸である。非天然アミノ酸の側鎖と環状ペプチド分子内の他のアミノ酸の側鎖との結合は、ジスルフィド結合、アミド結合、エステル結合、チオエーテル結合などが例示されるが、チオエーテル結合が好ましい。チオエーテル結合による環状ペプチドでは、非天然アミノ酸が環状ペプチド分子内のシステインのSH基と反応して結合する。かかる非天然アミノ酸としては、下記一般式(1)で示される非天然アミノ酸や、下記化学式3で示される非天然アミノ酸、図1に記載の非天然アミノ酸が例示される。
(一般式(1)中Rは、NR1-CO-R2またはO-R2であり、
R1は水素原子、又は炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基から選択され、
R2は炭素数が1〜3のアルキル基、炭素数が1〜3のハロアルキル基、または炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択される。)
上記非天然アミノ酸は、下記化学式2、一般式20、もしくは化学式6で示される非天然アミノ酸が好ましい。
(式中、R5は、BrまたはIである。)
一般式(1)の非天然アミノ酸の側鎖は、システインのSH基と結合可能なものである。一般式(1)の非天然アミノ酸を用いてNexta法を行った場合、当該非天然アミノ酸がN末端に結合せずに、直鎖状ペプチド内のSH基にのみ結合する反応(副反応)が見られる場合がある。一般式(1)中、RがO-R2であり、R2が1つのハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロアルキル基である非天然アミノ酸(好ましくはR2が1−ブロモエチル基、もしくは1−ヨードエチル基である非天然アミノ酸)を用いた場合は、かかる副反応が見られないため、より有効にペプチドの環化を行うことが可能である。
具体的には環状ペプチドは、配列番号1〜6に記載されるアミノ酸配列のN末端に化学式2で示される非天然アミノ酸が結合したものが例示される。これらのペプチドにおいて、N末端の化学式2で示される非天然アミノ酸のハロアルキル基と、システインのSH基とがS2反応してチオエーテル結合が形成され、環状部分が形成される(図1)。また、具体的な環状ペプチドとして、配列番号1〜6に記載されるアミノ酸配列のN末端に化学式3の非天然アミノ酸が結合したものが例示される。これらのペプチドでは過酸化水素などの存在下で、フェニルセレン(PhSe)部分が脱離して二重結合となり、H2N-CH(=CH2)-COOHが形成され、システインのSH基とマイケル型で付加してチオエーテル結合が形成される(図2)。
本発明の結合体において環状ペプチドとペプチド結合により結合している機能部は、何らかの機能を有するものであればいかなるものであってもよく、例えばタンパク質(ペプチドを含む)、アミド基を含む低分子化合物(フッ素含有非天然アミノ酸を含む)、細胞、細菌、ウイルス(バクテリオファージを含む)等が例示される。
タンパク質はいかなるものであってもよいが、抗体由来のFc領域を含むポリペプチド、蛍光タンパク質(例えばGFP)などが好ましい。機能部がタンパク質である場合は、当該タンパク質のN末端と環状ペプチドのC末端とが、ペプチド結合により結合する。機能部が細胞、細菌、ウイルスなどの場合は、細胞、細菌、ウイルスの内部もしくは膜上に存在するタンパク質と、環状ペプチドとが結合している態様が好ましい。機能部が低分子化合物である場合は、低分子化合物内のアミノ基と、環状ペプチドのC末端のカルボキシル基が結合することが好ましい。
機能部が、抗体のFc領域を含むポリペプチド場合は、Fc領域は、公知のFc領域、今後取得されるFc領域、及びこれらのFc領域のバリアント分子を包含する。Fc領域には、単量体又は多量体形態のものが含まれる。好ましくはFc領域は、ヒト由来のFc領域である。Fc領域は、免疫グロブリンの何れでもあり得るが、例えばIgG1やIgG2、IgG4が例示される。Fc領域のバリアント分子は、Fc領域のアミノ酸配列において、1個以上のアミノ酸残基が置換、欠失、付加、誘導されたものであり、補体との相互作用など、Fc領域の性質のうち、所望のFc領域機能を保持するものであればよい。本発明におけるFc領域を含むポリペプチドの具体例として、GenBank accession# X70421のものが例示される。
機能部がウイルスである場合は、バクテリオファージであることが好ましい。バクテリオファージとしては、ファージディスプレイ法に一般的に用いられる繊維状ファージ(f1、fd、およびM13ファージ)、他のバクテリオファージ(例えば、T7バクテリオファージとラムドイドファージ)などが挙げられる。繊維状ファージにおいては、典型的には、直鎖状ペプチドをコートタンパク質pIIIやpVIIIに融合させることが好ましい。例えば、M13ファージの場合は直鎖状ペプチドをコードする遺伝子を、コートタンパク質をコードする遺伝子に連結する。このファージの遺伝子を大腸菌に感染させて形質転換をし、発現させることによりファージライブラリーを作製する。本発明において機能部がバクテリオファージである場合、本発明の結合体は、大腸菌等の宿主細胞に対して感染能を保持しているものである。
本発明は、N末端に非天然アミノ酸を有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、結合体の中間体にも及ぶ。「N末端に非天然アミノ酸を有する直鎖状ペプチド」とは、Nexta法により非天然アミノ酸が結合された後のペプチドであって、環状部分が形成される前のペプチドを意味する。
(結合体の作製方法)
環状ペプチドが上記(A)および(B)の構造を含む本発明の結合体は、以下の工程を含む作製方法により作製することができる。なお、機能部がファージである結合体を例示して説明する。
(1)SH基を有するアミノ酸(例えばシステイン)を含む直鎖状ペプチドを結合してなるファージと、以下の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を混合して、0〜80℃(好ましくは0〜15℃、より好ましくは4℃)、0.5〜16時間(好ましくは、10〜14時間)反応させる工程。
(式中、R3はハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子である。)
(式中X1およびX2は、炭素数が1〜5のハロアルキル基、炭素数が2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択され、Y3は炭素数1〜5のアルキレン基からなる群から選択される。好ましくはX1およびX2はビニル基(エテニル基)であり、Y3はメチレン基である。)
(2)環状ペプチドを結合してなるファージを分離する工程。
SH基を有するアミノ酸(例えばシステイン(Cys))を含む直鎖状ペプチドを結合してなるファージは、直鎖状ペプチドを有するファージを自体公知の手法により作製してもよいし、直鎖状ペプチドを有するファージを購入、または直鎖状ペプチドをコードするファージミドベクターを購入してもよい。また、市販のジスルフィド結合による環化ペプチドを有するファージを用いて環化ペプチドを還元することにより得てもよい。
一般式10もしくは一般式11の化合物は、アミノ酸のSH基に結合することにより、前述の(A)もしくは(B)の構造を形成し、ファージ上の直鎖状ペプチドを環化して環状ペプチドとする。一般式10の化合物2分子を直鎖状ペプチドに結合させる場合には、直鎖状ペプチド内に、SH基を有するアミノ酸が2分子存在している必要がある。また一般式11の化合物により環状ペプチドを作製する場合には、X1およびX2の両方がSH基と結合する必要があるため、直鎖状ペプチド内にSH基を有するアミノ酸が2分子存在している必要がある。SH基を有するアミノ酸2分子間は、隣接していてもよいが、SH基を有するアミノ酸2分子の間に、好ましくは2〜100個、より好ましくは5個〜12個のアミノ酸が存在する。
工程(1)において、ファージと一般式10もしくは11の化合物との反応の溶媒は、pH3〜11(好ましくはpH6〜9)の緩衝液であればよく、例えば、HEPES、リン酸またはPBS、Tris、PIPES等が例示される。
工程(1)において、溶媒中のファージと一般式10もしくは11の化合物は、ファージ1×1011 pfu/50μLに対して、一般式10もしくは11の化合物が1pmol〜1μmol、好ましくは0.1nmol〜50nmol、より好ましくは0.2nmol〜22nmol存在するような割合で混合する。
より具体的には、本発明の結合体を作製するためには、実施例16および17に記載の方法を使用することが可能である。
本発明では、工程(1)にて記載するように、緩やかな条件で一般式10もしくは11の化合物の付加反応を進行させることにより、機能部であるファージが感染能を保持したまま、直鎖状ペプチドを環化させることが可能となり、本発明の結合体の作製が可能である。本発明の方法によると、機能部であるファージにおいて感染能に必須と思われるコートタンパク質の構造に影響を与えることなく、ファージ上に提示されたペプチドを環化可能と考えられる。
また本発明は、(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチド、(b)直鎖状ペプチド分子内のアミノ酸の側鎖と結合可能な官能基を側鎖に有する非天然アミノ酸、(c)tRNA、(d)アミノアシルtRNA合成酵素、(e)ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素を含む混合溶液を用いて、ペプチドを環化する方法にも及ぶ。本発明の方法において上記混合溶液を用いることにより、まずN末端に(b)非天然アミノ酸を有する直鎖状ペプチドが作製される。
本願発明の方法は、(1)(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドを提供する工程、(2)(a)〜(e)を含む前記混合溶液を用いることにより、N末端に非天然アミノ酸が付加された直鎖状ペプチドを作製する工程(Nexta法)、(3)工程(2)により作製された直鎖状ペプチドおいて環状部分を形成する工程を含む。
工程(1)における「(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチド」は、ペプチド単体で存在していてもよいし、本発明の結合体の前駆体内に存在してもよい。本発明の結合体の前駆体とは、N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドが機能部とペプチド結合してなる結合体を意味する。前駆体は、N末端に非天然アミノ酸を含む直鎖状ペプチドを有する中間体の前の段階のものを意味し、中間体とは区別されるものである。(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドが、前記前駆体内に存在する場合は、本発明のペプチドを環化する方法は、本発明の結合体を作製する方法として使用することができる。
(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドは、例えば種々の生物の生体内から単離して得ることができる。また、遺伝子工学的手法や有機合成などの自体公知の手法を用いて、産生することも可能である。
(a)N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドが、前記前駆体内に存在する場合、前駆体は、例えば種々の生物の生体内に発現するものを単離して得ることができる。生物の生体内に発現する前駆体は、遺伝子工学的手法により、前記前駆体をコードする遺伝子を導入させて発現させることにより、得られたものであってもよい。機能部がFc領域を含むポリペプチドやGFP等のタンパク質である場合は、哺乳動物の細胞などに、N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドをコードするオリゴヌクレオチドとFc領域をコードするオリゴヌクレオチドとを融合したものを導入して、培養を行い発現させることにより、前駆体を得ることができる。この際、N末端に非天然アミノ酸を含まない直鎖状ペプチドとFc領域とが結合してなる前駆体を哺乳動物の細胞外に分泌させるために、前駆体をコードするオリゴヌクレオチドにシグナルペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを融合させてもよい。具体的には、実施例に記載の手法を用いればよい。
なお本発明は、N末端に塩基性アミノ酸を有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、前記前駆体にも及ぶ。当該前駆体がN末端に塩基性アミノ酸を有することにより、Nexta法により非天然アミノ酸を塩基性アミノ酸に結合させることが可能となる。また本発明の前駆体は、上記の遺伝子工学的手法により作製されたものである。本発明の前駆体を遺伝子工学的手法により作製する方法は、上述の直鎖状ペプチドとFc領域とが結合してなる前駆体を例示して記載したとおりであるが、前駆体をコードするオリゴヌクレオチドを、前駆体発現用細胞に導入して、培養等を行うことにより、前駆体を作製する。前駆体をコードするオリゴヌクレオチドにはシグナルペプチドをコードするオリゴヌクレオチドを融合させて置くことが好ましい。また前駆体発現細胞としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞等を用いればよい。
(b)非天然アミノ酸は、ペプチド分子内の他のアミノ酸の側鎖と結合しうる側鎖を有するものであり、他のアミノ酸の側鎖と、触媒等を必要とせず、溶媒中で接触等するだけで、または過酸化水素水のような開始剤を存在させるだけで、結合可能であるような側鎖を有するものである。非天然アミノ酸は、例えば一般式(1)または化学式3に記載のものを使用することができ、好ましくは化学式2に記載のものを使用することができる。
(c)tRNAとは、アミノアシルtRNA合成酵素によりアミノアシル化されることが公知であるtRNA、ならびに公知tRNA以外には、本発明にて使用するアミノアシルtRNA合成酵素によるアミノアシル化される機能を有し、かつ本発明にて使用するL/F転移酵素により、当該非天然アミノアシルtRNAに結合しているアミノアシル基がペプチドに転移される機能を有するtRNAを含む。tRNAの例としては、tRNAPheまたはtRNALeuなどの天然tRNAが含まれる。大腸菌由来フェニルアラニルtRNA合成酵素変異体(Ala294→Gly)を用いる場合は、tRNAPheを用いることが好ましい。本発明におけるtRNAは、自体公知の方法により合成して、もしくは市販のものを購入して入手することができる(例えば、天然の大腸菌由来フェニルアラニンtRNA、および、天然の大腸菌由来フェニルアラニンtRNAを含むtRNA粗精製物は、SIGMA社より入手可能)。
アミノアシルtRNA合成酵素(以下、「aaRS」と称することもある)とは、一般的にはリボソームでの遺伝暗号の翻訳における基質となるアミノアシルtRNAの合成を担う酵素である。aaRSはタンパク質を合成するのに使われる20種のアミノ酸に対応した20種類が存在し、例えば、リジン(Lys)に対応するaaRSはリジルtRNA合成酵素と呼ばれる。本発明において用いられるアミノアシルtRNA合成酵素としては、導入する天然アミノ酸もしくは非天然アミノ酸に対して基質特異性を有する野生型のアミノアシルtRNA合成酵素、ならびに、本来のアミノ酸に対する特異性に比べて非天然アミノ酸誘導体等に対して特異性が高められたアミノアシルtRNA合成酵素の変異体を用いることができる。好ましくは、大腸菌由来フェニルアラニルtRNA合成酵素(E. coli PheRS)変異体(例えば、Ala294→Gly変異体、Ala356→Trp変異体、Thr251→Ala変異体、もしくは、Gly318→Trp変異体のいずれか、またはこれらの多重変異体)(Chembiochem, 2002, 02-03, 235-237、Taki, Chembiochem, 2009 , 10, 2460-2464.)あるいは、大腸菌由来ロイシルtRNA合成酵素(E. coli LeuRS)変異体(例えば、Thr247→Val変異体、Thr248→Val変異体、Thr252→Tyr変異体、もしくは、His537→Gly変異体のいずれか、またはこれらの多重変異体)(Tang Y, Wang P, Van Deventer JA, Link AJ, Tirrell DA., Chembiochem. 2009 Sep 4;10(13):2188-90、Yan Ling Joy Pang and Susan A. Martinis, Biochemistry 2009, 48, 8958-8964、Wu N, Deiters A, Cropp TA, King D, Schultz PG., J Am Chem Soc. 2004 Nov 10;126(44):14306-7、Yuxin Zhai and Susan A. Martinis, Biochemistry, 2005, 44, 15437-15443) を用いることができる。
本発明におけるアミノアシルtRNA合成酵素は、自体公知の方法により合成して、もしくは市販のものを購入して入手することができる(例えば、天然のアミノアシルtRNA合成酵素はSIGMA社から入手可能)。
ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素(L/F転移酵素)は大腸菌由来であり、tRNAに結合しているフェニルアラニンや、ロイシン、メチオニンなどの疎水性アミノ酸を、N末端にリジンやアルギニンを有するタンパク質もしくはペプチドに転移させる反応を触媒する酵素である。L/F転移酵素は、自体公知の方法(例えば遺伝子工学的手法)により合成して入手することができる(M. Taki, et al., Chembiochem, 2008, 9, 719-722)。
本発明の方法において用いられる混合溶液中には、反応に好適な緩衝液、塩類などを適宜存在させることができる。緩衝液としては、例えばHepes緩衝液、Tris-塩酸などが挙げられる。具体的には、MgCl2、Spermidine、Hepes緩衝液を含む溶液と、ATPを含む溶液を混合したものを用いることができる。
温度およびpHなどの反応条件は、使用する酵素などに応じて任意の条件を選択できる。反応温度は、好ましくは約0℃〜50℃、さらに好ましくは約4℃〜37℃である。反応pHは、好ましくは約6〜9、さらに好ましくは約7〜8である。反応時間は、好ましくは約10分以上であり、より好ましくは約15分〜300分、最も好ましくは約60分〜180分である。
工程(2)により作製された、N末端に非天然アミノ酸が付加された直鎖状ペプチドにおいて環状部分を形成する工程(3)は、工程(2)と同時に進行する場合と工程(2)と別の工程である場合を含む。例えば工程(2)においてハロアルキル基を持つ非天然アミノ酸を(b)非天然アミノ酸として用いた場合は、当該非天然アミノ酸が導入されると同時に環化反応が進むものと考えられ、工程(2)と工程(3)は区別されず、そのままインキュベーションを行えばよい。工程(2)と工程(3)が区別される場合は、N末端に非天然アミノ酸が付加された直鎖状ペプチドを一旦精製して、もしくは精製せずに、適当な溶媒中や所望の物質を添加してインキュベーションすることにより行ってもよい。例えば、過酸化水素水等の開始剤を、工程(2)の終了後に添加することにより工程(3)を行うことが可能である。
開始剤とは、環化反応を開始させるための物質であって、反応を触媒する機能を有する薬剤とは区別される。開始剤の具体的な例としては、過酸化水素水などが例示される。
(新規非天然アミノ酸)
本発明はさらに、下記一般式(1)により表される新規非天然アミノ酸にも及ぶ。
一般式(1)中Rは、NR1-CO-R2であり、
R1は水素原子、又は炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基から選択され、
R2は炭素数が1〜3のアルキル基、炭素数が1〜3のハロアルキル基、または炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択される。
なお、一般式(1)中、好ましくはRはNR1-CO-R2であり、R1は水素原子、又は炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基であり、R2は炭素数が1〜3のアルキル基、炭素数が1〜3のハロアルキル基、炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基である。さらに好ましくは、一般式(1)中RはNR1-CO-R2であり、R1は水素原子であり、R2は炭素数が1もしくは2のハロアルキル基または炭素数が2もしくは3のアルケニル基である。
ここで、脂肪族炭化水素基とは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を包含する。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基などが例示される。ハロアルキル基とは、少なくとも1個のハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)で置換されたアルキル基を意味し、例えば、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、クロロエチル基、ジフルオロエチル基などが例示される。アルケニル基とは、炭素数2以上のアルキル基に1個以上の二重結合などの不飽和基を有するものが挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基などが例示される。
好ましくは、一般式(1)において、R1は水素原子であり、R2が炭素数が1もしくは2のハロアルキル基または炭素数が2もしくは3のアルケニル基である。
より好ましくは、一般式(1)においてR1は水素原子であり、R2はクロロアルキル基、ブロモアルキル基、またはビニル基であり、下記化学式2、一般式20、または化学式6にて示される非天然アミノ酸である。
(式中、R5は、BrまたはIである。)
かかる新規非天然アミノ酸におけるR2にて表される官能基は、天然アミノ酸システインのSH基とS2反応またはマイケル型付加反応により結合することが可能であり、上記環状ペプチドの作製に使用することができる。
上記一般式(1)に記載の化合物は、Longhu Zhou et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 2006, 14, 7862-7874またはShoji Nagaoka et al., Synthetic Communications,35:2529-2534,2005を参考にして作製することができる。一例として化学式2,5,6の製造方法を、下記実施例5,8,9に記載する。
(結合体を作製するための試薬キット)
また、本発明は、上記の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を含む、結合体を作製するための試薬キットにも及ぶ。
さらに、本発明は、上記新規非天然アミノ酸を有するペプチド、ならびに、新規非天然アミノ酸、アミノアシルtRNA合成酵素、およびロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素を含む、環状ペプチドもしくは環状ペプチドを有する結合体を作製するための試薬キットにも及ぶ。
(結合体を用いたスクリーニング方法)
本発明は、以下の工程を含む、標的タンパク質に結合し得る環状ペプチドをスクリーニングする方法にも及ぶ。
(i)本発明の結合体(好ましくは機能部がファージである結合体)と、標的タンパク質を接触させる工程:
(ii)標的タンパク質に結合した結合体を選択する工程。
環状ペプチドが上記(A)の構造を有する場合、環状ペプチド自体が標的タンパク質に指向性を示すだけではなく、配位している金属が標的タンパク質への親和性を有することが予測される。本発明のスクリーニング方法によって選択される結合体が提示する環状ペプチドは、極めて有効に標的タンパク質に結合し得るものと考えられる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)ペプチドN末端への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.025 O.D./μl E.coli tRNAPhe 2μl(0.05 O.D.;77 pmol)、5×aat緩衝液(アミノアシル化緩衝液;50mM MgCl2, 5mM Spermidine, 250mM Hepes buffer(pH7.6), 100mM KCl) 2μl、40mM ATP(Na)-KOH(pH7.0) 0.36μl、350 pmol/μl 下記の各種ペプチド 1μl(0.35nmol)、化学式2にて示される新規非天然アミノ酸 2 nmol、33μM E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)0.75μl(15 pmol)、7.6μM L/F転移酵素(野生型) 2μl(15 pmol)を混合した混合溶液(超純水で全量10μlに調節)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。ZipTipを用いて精製し、TOF-MSにより環状ペプチドが作製されたか否かを測定した。
上記反応に用いたペプチドは以下のとおりである。
・Arg-Val-Cys-Aka (配列番号1)
・Arg-Pro-Cys-Aka (配列番号2)
・Arg-Gly-Cys-Arg-Ala-Phe-Ile (配列番号3)
・Arg-Gly-Asp-Cys-Gly-Gly-Ser-Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys-Bacd(配列番号4)
・Arg-Gly-Asp-Cys-Gly-Gly-Ser-Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(配列番号5)
なお、配列中のAkaは、β-[アクリジン-9(10H)-オン-2-イル]-L-アラニン(β-[acridine-9(10H)-on-2-yl]-L-alanin)であり、Bacdは、β-[ベンゾ[b]アクリジン-12(5H)-オン-2-イル]-L-アラニン(β-[benzo[b]acridin-12(5H)-on-2-yl]-L-alanine)(渡辺化学工業(株)から、Boc保護されたもの、Fmoc保護されたものが市販されている(#M02045、M02046など)(ペプチド固相合成用))である。これらは、蛍光性アミノ酸であり、Akaはブルーレーザーで、Bacdは可視光レーザーで励起可能である。
結果を、図3に示す。図3a〜eはそれぞれ、配列番号1〜5のペプチドを環化した結果を示す。「環化前」は、非天然アミノ酸が導入される前のものであり、「環化後」は非天然アミノ酸が導入された後のものを示す。例えば、図3dの下段では、環化前ペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1957.75に相当するピークがみられ、上段では環化後ペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=2159.83に相当するピークがみられた。また図3eの下段では、環化前ペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1643.65に相当するピークがみられ、上段では環化後ペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1845.72に相当するピークがみられた。なお、図3eにおける1866.7のピークは測定時の内部標準として用いたものである。
上記反応により非天然アミノ酸が導入されたペプチドが作製され、環化ペプチドを作製することができた。なお、非天然アミノ酸が導入されただけで環化されていない分子イオンピークはマススペクトルでは観察されておらず、非天然アミノ酸導入とほぼ同時に素早く環化が進行したものと考えられた。
(実施例2)Urinary Trypsin Inhibitor Fragment(以後「UITF」と称する)ペプチドN末端への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.025 O.D./μl E.coli tRNAPhe 2μl(0.05 O.D.;77 pmol)、5×aat緩衝液(アミノアシル化緩衝液;50mM MgCl2, 5mM Spermidine, 250mM Hepes buffer(pH7.6), 100mM KCl) 2μl、40mM ATP(Na)-KOH(pH7.0) 0.36μl、350 pmol/μl UITFペプチド(Arg-Gly-Pro-Cys-Arg-Ala-Phe-Ile;配列番号6) 1μl(0.35nmol)、化学式2にて示される新規非天然アミノ酸 2 nmol、20μM E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)0.75μl(15 pmol)、7.6μM L/F転移酵素(野生型) 2μl(15 pmol)を混合した混合溶液(超純水で全量10μlに調節)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。ZipTipを用いて精製し、TOF-MSにより環状ペプチドが作製されたか否かを測定した。
結果を、図4に示す。図4上段では、環化したUTIFの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1121.57に値するピーク(Observed Mass[M+H]+=1121.81)が見られた。化学式2の非天然アミノ酸がUTIFのN末端に入ったが環化はしていないペプチド(理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1257.55)について、ピークは見られなかった。なお図4下段では、非天然アミノ酸を導入する前のUTIFの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=919.50に相当するピーク(Observed Mass[M+H]+=919.97)が見られた。Nexta法によってN末端に化学式2の非天然アミノ酸が導入されると、特異的かつ高効率にペプチド分子内のシステインと反応することがわかった。非天然アミノ酸が導入されたペプチドが作製され、環化ペプチドを作製することができた。
(実施例3)ペプチドN末端への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.1 O.D./μl E. coli tRNAPhe 0.5μl(0.05 O.D.;77 pmol)、5×aat緩衝液(アミノアシル化緩衝液;50mM MgCl2, 5mM Spermidine, 250mM Hepes buffer(pH7.6), 100mM KCl) 2μl、 40mM ATP(Na)-KOH(pH7.0) 0.36μl、350 pmol/μl 配列番号2のペプチド 1μl(0.35nmol)、化学式3にて示される非天然アミノ酸 110nmol、33μM E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体) 0.5μl(10 pmol) 7.6μM L/F転移酵素(野生型) 0.5μl(3.8 pmol)を混合した混合溶液(超純水で全量10μlに調節)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後の混合溶液を薄い過酸化水素水中(終濃度100mM)で処理することによって、化学式3のPhSe部分を脱離させて2重結合に変換して反応を進行させ、マススペクトルで同定した。
結果を、図5に示す。理論値は[M+H]+:708.29であり、実測値709.02であった。上記反応により非天然アミノ酸が導入されたペプチドが作製されたことがわかった。
(実施例4)Fc領域と結合したペプチドへの非天然アミノ酸の導入
1.前駆体の発現
プラスミドps521をBruno Robert氏より譲り受け、これを元に前駆体(ペプチド(配列番号7)−Fc領域)をコードするプラスミドを作製した(P. Schneider, Methods in Enzymology, 322, 325-(2000)の図2A)。Fc領域の配列は、GenBank accession# X70421のものを使用した。Fc領域(CH2+CH3領域)のN末端に配列番号7に示すアミノ酸配列(KGLNDIFEAQKIEWHEVDKTHTCPPCP)からなるペプチドを結合させ、さらにそのN末端にHAシグナルペプチドを結合させて、融合タンパク質を作製した。HAシグナルペプチドが切断されることにより、ペプチド−Fc(配列番号7+Fc領域)が細胞外に分泌される。HEK293細胞に、HAシグナルペプチド−ペプチド−Fc領域をコードするプラスミドを導入して培養した。細胞培養液を採取した後、proteinG-agaroseにより精製してペプチド−Fc領域を取得し、N末端の配列がKGLであることをEdman分解によって確認した。この結果、N末端がリジンになっている前駆体(ペプチド−Fc領域)が、細胞外に分泌されていること確認された。
2.前駆体への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.1 O.D./μl E. coli tRNAPhe 0.63μl(0.063 O.D.;97pmol)、5×aat緩衝液(アミノアシル化緩衝液; 50mM MgCl2, 5mM Spermidine, 250mM Hepes buffer(pH7.6), 100mM KCl) 5.4μl、100mM ATP(Na)-KOH (pH7.0) 0.36μl、350 pmol/μl 精製された前駆体(ペプチド−Fc領域) 20μl(2.1 nmol)、下記化学式4にて示される非天然アミノ酸15nmol、
14μM E. coli PheRS(Ala294→Gly) 0.63μl(8.8 pmol)、7.6μM L/F転移酵素(野生型) 0.63μl(4.8 pmol)を混合した混合溶液(全量27μl)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。
上記反応液に、蛍光物質(DIB-TAMRA;合成法などは、Taki, Chembiochem, 2009 , 10, 2460-2464.の文献内に記載)を添加してインキュベートした。反応後アセトン沈殿にてペプチド−Fc領域を精製し、SDS−PAGE後、蛍光イメージャー用いて蛍光を確認した。
結果を図6に示す。図6上段のCBB染色はタンパク質を染色した結果を示す写真である。下段の蛍光イメージングでは、蛍光物質が導入された場合に染色がみられる。
蛍光イメージングの結果から、前駆体(ペプチド−Fc領域)を含む画分に、蛍光を観察することができ、確かに非天然アミノ酸が導入されたことが確認できた。負対照実験として、酵素、tRNAおよび非天然アミノ酸を除いて同じ実験を行ったところ、前駆体(ペプチド-Fc領域)の蛍光は観察されなかった。
(実施例5)化学式2にて示される非天然アミノ酸の合成
NEXT-A法に応用可能なアミノ酸として、化学式2にて示される非天然アミノ酸(p-(クロロアセチルアミノ)フェニルアラニン:p-(chloroacetylamino)phenylalanine)を新規に合成した。以後p-(クロロアセチルアミノ)フェニルアラニンは「caaPhe」と表記することもある。合成法はLonghu Zhou et al., Bioorganic and Medicinal Chemistry, 2006, 14, 7862-7874を参考に、以下のスキームに従った。
(1)Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの合成
Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの合成に用いた試薬は、Boc-Phe(4-NH2)-OH(1.12g;4.00mmol)、chloroacetyl chloride(2.00mL;25.0mmol)、NaHCO3(1.68g;20.0mmol)、dry THF(40.0mL)である。ナスフラスコにNaHCO3とBoc-Phe(4-NH2)-OHを加えて真空ラインで乾燥した。そこへdry THFを30mL加えて氷上で攪拌した。加えたNaHCO3は白色沈殿としてナスフラスコに残った。また、別のナスフラスコにdry THF 10mLとchloroacetyl chlorideを混合して、十分に冷やした。
氷上でBoc-Phe(4-NH2)-OH混合溶液の入ったナスフラスコ内を窒素置換して、そこへ冷やしたchloroacetyl chloride溶液を15分かけて滴下した。その後、アルミホイルで包んで20時間反応させた。反応の進行は薄層クロマト (TLC) で確認した。Chloroform/ methanol (7:3) で展開し、UV 照射時 (照射波長:254nm) にRf値0.60 (原料)、Rf値0.68 (反応物) の2つのスポットを得た。また、UV照射時 (照射波長: 365nm) にRf値0.85 (反応物)のスポットがあった。ニンヒドリン反応ではRf値0.60 (原料) 付近に濃い黒紫色、Rf値0.68 (反応物) 付近に薄い黄色がでた。
反応終了後に4% NaHCO3水溶液を加えて、分液漏斗に移した。NaHCO3は4% NaHCO3水溶液に溶けきらず、残留した。そこに酢酸エチルを加え、分液漏斗を振り、下層を仮捨てして上層の有機層を回収した。仮捨てした下層に酢酸エチルを加え、同様に洗浄した。この操作を2回繰り返した。その後、回収した有機層にMgSO4を加えて脱水した。これを減圧濾過した後、エバポレーションして白色粉末を得た。続いて、得られた白色粉末を油圧式ポンプで再度減圧乾燥した。得られた白色粉末は1.06gで、収率は74%だった。この白色粉末を展開溶媒Chloroform/ methanol (8:2) でTLC展開した。UV 照射時 (照射波長:254nm) にRf値0.33 (原料)、Rf値0.30 (反応物) の2つのスポットを得た。また、UV 照射時 (照射波長:365nm) にRf値 0.53 (原料)のスポットがあった。ニンヒドリン反応ではRf値0.33 (原料) 付近に濃い紫色、Rf値0.30 (反応物) 付近に薄い黄色がでた。
(2)Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの同定
原料アミノ酸(Boc-Phe(4-NH2)-OH)および合成したBoc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHを1HNMR (測定溶媒:重DMSO)によって同定した。その結果、目的物が合成されていることがわかった。
(3)Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの脱保護
Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの脱保護に、Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OH(200mg;0.56mmol)、4M dioxane hydrochloride(2.5mL;10mmol)、dry ethyl acetate(2.5mL)を用いた。Boc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHの入ったナスフラスコを油圧式ポンプで減圧乾燥後、dryethyl acetateを加え、ナスフラスコを窒素置換した。そこにドラフト内で、氷上において塩酸ジオキサンをゆっくりと滴下、攪拌して氷上で2時間放置した。このとき、ナスフラスコ内の液体は白色不透明だった。
反応終了後、アルカリトラップを敷き、エバポレーションして白色粉末を得た。続いて、油圧式ポンプで減圧乾燥した。得られた白色粉末は143mgだった。収率は87%だった。また、この白色粉末を展開溶媒Chloroform/ methanol (8:2)でTLC展開した。UV 照射時 (照射波長: 254nm) に原料および反応物ともにRf値0.43のスポットを1つずつ得た。
しかし、得られた白色粉末は完全に水に溶解しなかった。そのため、この白色粉末を11.8mg量りとり、超純水 (milliQ)に溶けるだけ溶かした。この溶液から上清だけを注射器で分取して1.5mLチューブに移した。これを凍結乾燥し、4.0mgの白色粉末を得た。収率は34%だった。
(4)caaPheの1H NMRによる同定
脱保護したBoc-Phe(4-NHCOCH2Cl)-OHを1H NMR (測定溶媒:D2O) によって同定したところ、Boc基のピークの消失が確認でき、目的物が合成できたことがわかった(図7)。最終収率は22%だった。
(5)caaPheのMSによる同定
MALDI-TOF-MassによりcaaPheの同定を行った。
まず、caaPhe溶液をMSのプレートにアプライした。続いて、DHBを10mg/mL の濃度になるように10%エタノールに溶かしたマトリクス溶液を作製した。caaPhe溶液をアプライしたMSのプレートと同一の場所に、このマトリクス溶液をアプライし、よく混合した。プレートを十分に乾燥させた後、MALDI-TOF-Mass分析で分子量を測定した。caaPheの理論分子量Calculated Mass[M+H]+は257.07である。caaPheの実測値Observed Mass [M+H]+が257.37のピークとして見られた(図8)。理論値と実測値が近い値であるので、caaPheができたことがわかった。
(実施例6)GFP(緑色蛍光タンパク質)と結合したペプチドへの非天然アミノ酸の導入
1.前駆体の発現
芳坂貴弘氏より譲り受けたプラスミドpGGFPHおよびAlexander Varshavsky氏より譲り受けたプラスミドpH10UEを、これらを元に前駆体(Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFP)をコードするプラスミドを作製した(P. Schneider, Methods in Enzymology, 322, 325-(2000)の図2A)。GFPの配列は、GenBank accession# U62636のものを使用した。GFPに、His6ユビキチンタグと、そのC末端に配列番号8に示すアミノ酸配列(Lys-Asn-Phe-Phe-Trp-Lys-Thr-Phe-Thr-Ser-Cys)とFLAG tagからなるペプチドを付与させた。His6ユビキチンタグをユビキチン切断酵素(Usp2-cc)を用いて切断することにより、「Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFP」を作製できる。大腸菌(BL21(DE3))に、His6ユビキチンタグ−Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPをコードするプラスミドを導入し、IPTG誘導を行って培養した。大腸菌を破砕した後、Ni-NTA-agaroseにより精製してHis6ユビキチンタグ−Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPSomatostatinを取得した。更に、Usp2-ccを作用させて、Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFPを取得した。
2.前駆体への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.1 O.D./μl E. coli tRNAPhe 6μl(0.6 O.D.;0.2 nmol)、10×aat緩衝液A(0.10M MgCl2, 10mM Spermidine, 0.50M Hepes buffer(pH7.6)) 3μl、10×aat溶液B(25mM ATP(Na)-KOH (pH7.0), 0.20M KCl, 20mM DTT) 3μl、380 pmol/μl 精製された前駆体(Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tag−GFP) 3μl(1.14 nmol)、1 mM化学式2にて示される非天然アミノ酸(caaPhe)3μl(3 nmol)、20 μM E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体) 3μl(60 pmol)、29μM L/F転移酵素(野生型) 6μl(0.17nmol)、超純水3μlを混合した混合溶液(全量30μl)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。この時、「精製された前駆体」以外の全ての物質を前もって予め37℃60分インキュベーションしておくことで、アミノアシル化反応およびアミノアシルtRNAのL/F転移酵素への結合反応を促した。
前駆体と、前駆体を非天然アミノ酸とNexta法にて反応させた産物とについて、マススペクトルを測定した(図9)。その結果、ピークがシフトしていることが確認でき、確かに非天然アミノ酸が前駆体に結合して中間体が作製されたことがわかった。また非天然アミノ酸が付加していない前駆体がほとんど残っていないことが確認できた。
さらに前駆体に非天然アミノ酸が結合した中間体について、部分環状ペプチド構造ができているか否かを確認した。まず中間体をエンテロキナーゼにより23℃で48時間処理してFLAG tagとGFPとの間で分解し、非天然アミノ酸(caaPhe)−Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tagを得た。かかる非天然アミノ酸(caaPhe)−Somatostatinペプチド(配列番号8)−FLAG tagについてマススペクトルを測定した(図10)。
その結果、未反応のSomasitanin−FLAG tagペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=2403.06に値するピーク(Observed Mass[M+H]+=2402.95)、caaPheが導入された環状ペプチドの理論値(Calculated Mass)[M+H]+=2605.14に値するピーク(Observed Mass[M+H]+=2606.03)、caaPheがN末端以外の箇所に結合した副産物の理論値(Calculated Mass)[M+H]+=2623.15に値するピーク(Observed Mass[M+H]+=2624.59)が見られた。よって、主生成物として環状ペプチドが存在することがわかった。非天然アミノ酸が付加していない前駆体は、ほとんど残っておらず、前駆体のN末端以外の箇所に非天然アミノ酸が結合した副産物が、少量できていることがわかった。また、MS/MS解析にて部分配列解析を行い、本ピークが目的のN末端ペプチドフラグメントであることを確認した(図11)。またエドマン解析によって、N末端に非天然アミノ酸が結合した環状ペプチドを75%の割合で作製することができることがわかった。
次に、上記部分環状構造を持つGFPに対しエンテロキナーゼによる分解反応を行った後、GFPについてもマススペクトルを測定して解析を行ったところ、GFP単独を示すピークのみが得られた。これはcaaPheがGFP内のSH基とは反応せず、Somatostatinペプチドに存在するSH基と特異的に反応したためと考えられた。なお、FLAG tagのアミノ酸配列は、DYKDDDDKであり、SH基を持たない。
(実施例7)His6-FLAGペプチドN末端への非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
ペプチド固相合成によってHis6-FLAGペプチドを作製した。
His6-FLAGペプチドの配列: Lys-His-His-His-His-His-His-Cys-Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(配列番号9)
0.025 O.D./μl E. coli tRNAPhe 1μl (0.05O.D)、10×緩衝液A(100mM MgCl2, 10mM Spermidine, 500mM Hepes buffer(pH7.6))0.5μl、10×溶液B(25mM ATP,200mM KCl,20mM DTT) 0.5μl、0.35mM His6-FLAGペプチド 0.5μl(180pmol)、1 mM非天然アミノ酸(caaPhe)1μl(1nmol)、20 μM E. coli PheRS(Ala294→Gly) 0.25μl(5pmol)、29μM L/F転移酵素(野生型) 0.25μl(7.3pmol)、超純水1μlを混合した混合溶液(全量5μl)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。
ネガティブコントロールとして、上記のアミノ酸の代わりに超純水1μlを加え、同様の操作を行ったサンプルも作製した。それら2つのサンプルのマススペクトルを測定し、比較した。
結果を、図12に示す。ネガティブコントロールのマススペクトル(図12上段)は原料のペプチドのピーク(理論分子量Exact Mass[M+H]+=2065.9)が確認された。Nexta法で非天然アミノ酸を導入したサンプルはピークがシフトし(図12下段)、部分環状ペプチドのピーク(理論分子量Exact Mass[M+H]+=2267.4)が確認された。また非天然アミノ酸が付加していない原料のピーク、付加はしているが環状構造をとっていないペプチドのピークはほとんどみられなかった。
さらにHis6配列を持つ環状ペプチドは、直鎖状のHis6配列を持つペプチドと同様に、Ni-NTA-agaroseゲルに対する結合活性を有することを確認した。
(実施例8)化学式5にて示される非天然アミノ酸の合成
下記の化学式5にて示される非天然アミノ酸(以下、「Phe(4-NHCOC2H4Br)」とも称する)を合成した。
(1)Boc-Phe(4-NHCOC2H4Br)の合成
Boc-Phe(4-NH2)95mg(0.34mmol)をナスフラスコに量り取り、dry THF 2.0mLとNaHCO3 0.14g(1.7mmol)を加えた。そこに、dry THF 100μLと3-bromopropionyl chloride 0.13μL(1.4mmol)との混合溶液を、0℃・N2封入下でゆっくりと滴下した。0℃から室温に戻しながら、4時間攪拌した。1時間後、4時間後にTLCで反応の進行具合を確認し、原料の消失を確認してから反応のワークアップを行った。具体的には、反応混合物に対し5% NaHCO3 aqを3mL加えた。その後、酢酸エチルを用いて抽出操作を3回行った。有機層を乾燥後、ナスフラスコに回収し、ロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させた。質量を量ると、38mg(92μmol)、収率は27%であった。
1H NMR(溶媒:methanol-d4)により目的物を同定した。また、methanol/chloroform(1:9)によるシリカゲルTLC展開を行うと、反応前の出発物質のRf値は0.2、反応生成物のRf値は0.3であった。
(2)Phe(4-NHCOC2H4Br)の合成
38mgのBoc-Phe(4-NHCOC2H4Br)に、氷冷下でトリフルオロ酢酸(TFA)を2mL加え、氷上から室温に戻して30分間攪拌した。30分後、大部分のTFAをN2ガスで乾燥させた後、diethyl etherでエーテル沈殿を行った。この時、やや黄色がかった固体を得た。固体を減圧乾燥させたのち、1H NMR (溶媒:Deuterium Oxide)測定を行い、目的物を同定した(図13)。
(実施例9)化学式6にて示される非天然アミノ酸の合成
下記の化学式6にて示される非天然アミノ酸(以下、「Phe(4-NHCOCH=CH2)」とも称する)を、Shoji Nagaoka et al., Synthetic Communications,35:2529-2534,2005を参考にして合成した。
(1)Phe(4-NH2)の合成
サンプル瓶に原料Boc-Phe(4-NH2)-OHを0.21g(0.74mmol)はかりとり、氷冷下でTFA約3mLを加え、室温で30分間反応させた。TLCで反応の進行具合を確認した。methanol/chloroform(5:5)で展開すると、原料はRf値0.7-0.8、目的物はRf値0.2-0.4および原点吸着であった。窒素ガスを当てて溶媒を乾燥させた後、diethyl etherによるエーテル沈殿を3回行った。その後再びmethanol/chloroform(5:5)でTLC展開を行うと、原料はRf値0.7-0.8、目的物は0.2-0.4であった。また、TOF-Mass、NMR(溶媒:D2O)で同定した。
(2)Phe(4-NHCOCH=CH2)の合成
合成したPhe(4-NH2)245mg(実際には収率100%でも134mgであった。減圧乾燥を行ったが、溶媒が残ってしまったと考えられる)をナスフラスコに回収し、超純水1mLを加え、90℃の温浴につけた。CuCO3/Cu(OH)2 (>basic cupric carbonate) 79mg(0.36mmol; アミノ酸に対して0.55等量)を量りとり、ゆっくりと加えた。このとき、緑色に変化した。90℃の温浴内で10分間攪拌した。パスツールピペットに綿を詰め、濾過した後、少量の超純水でナスフラスコを洗浄し、濾過した。パスツールピペットでは沈殿を完全にはろ過紙切れなかったので、1.5mLチューブに回収し、5min遠心後、上清のみを10mLナスフラスコに回収した。室温で攪拌しながら、acetone0.17mL、2.0M KOH 0.45mLを順に加えた。その後、氷冷下でacetone 1.0mLとacryloyl chloride 80μLの混合溶液をゆっくりと滴下した。この時、濃い緑色に変化した。ここに2.0M KOHを0.30mL加え、pH試験紙で塩基性状態になっていることを確認した。この時、この状態で、4℃で16時間攪拌した。この時、黒色の懸濁液に変化した。懸濁液を1.5mLチューブに分注し、5分間遠心後、上清を除去した。その後、H2O、MeOH、diethyl etherの順に洗浄し、減圧乾燥した。この時、黒色結晶Phe(4-NHCOCH=CH2) copper complexを得た。質量を量ると、89mg(0.17mmol)であった。ここに超純水1.1mLを加え、室温で攪拌した。さらに、chloroform 1.1mL、8-quinolinol 29mg(0.20mmol)の混合溶液を加えると、暗い黄緑色に変化した。室温で19.5時間攪拌した。攪拌後、水層を回収して分液漏斗に回収し、等量のchloroformを用いて抽出操作を3回行った。水層を10mLナスフラスコに回収し、ロータリーエバポレーターで溶媒を乾燥させた。この時、茶色粉末を得た。質量を量ると、33.0mg(0.14mmol)、収率は19%であった。TOF-MassとNMR(溶媒:D2O)により同定した。MALDI-TOF Massの結果、理論値[M+H]+=235.11に対し、実測値[M+H]+=235.59が確認された(図14)。
(実施例10)ペプチドN末端への、化学式5の非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
H-2692ペプチド(RGPCRAFI(配列番号10):分子量919.12、推定値Expected[M+H]+: 919.50)のN末端に化学式5の非天然アミノ酸を導入して、ペプチドが環化するか否かを確認した。
0.025 O.D./μl E. coli tRNAPhe 1μl (0.05O.D)、10×緩衝液A(100mM MgCl2, 10mM Spermidine, 500mM Hepes buffer(pH7.6))0.5μl、10×溶液B(25mM ATP,200mM KCl,20mM DTT) 0.5μl、0.35mM H-2692ペプチド 0.5μl(180pmol)、1 mM非天然アミノ酸(化学式5)1μl(1nmol)、20 μM E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体) 0.25μl(5pmol)、29μM L/F転移酵素(野生型) 0.25μl(7.3pmol)、超純水1μlを混合した混合溶液(全量5μl)を作製した。37℃で60分間インキュベートした。
さらに、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)の代わりに、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Phe248→Ala 二重変異体)、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Gly318→Trp 二重変異体)、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Ala356→Trp 二重変異体)、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala & Gly318→Trp 三重変異体)、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala & Ala356→Trp 三重変異体)を用いて、反応を行った。
ZipTipを用いて精製し、TOF-MSにより環状ペプチドが作製されたか否かを測定した。
結果を図15に示す。図15aはAla294→Gly変異体、図15bはAla294→Gly & Phe248→Ala 二重変異体、図15cはAla294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体、図15dはAla294→Gly & Gly318→Trp 二重変異体、図15eはAla294→Gly & Ala356→Trp 二重変異体、図15fはAla294→Gly & Thr251→Ala & Gly318→Trp 三重変異体、図15gはAla294→Gly & Thr251→Ala & Ala356→Trp 三重変異体を用いた場合の結果を示す。
環化が成功した場合の推定値Expected[M+H]+=1135.59であるが、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Phe248→Ala 二重変異体)を用いた場合以外は、化学式5の非天然アミノ酸により、H-2692ペプチドが環化されることがわかった。
(実施例11)ペプチドN末端への、化学式2または6の非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
(1)実施例10と同様にして、E. coli PheRS(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)を用いて、化学式2または6の非天然アミノ酸を、H-2692ペプチドに導入し、ZipTipを用いて精製し、TOF-MSにより環状ペプチドが作製されたか否かを測定した。
結果を図16に示す。ネガティブコントロールとして非天然アミノ酸が存在しない系を用いて反応を行ったところ(図16c)、H-2692の推定値(Calculated Mass[M+H]+=920.13)にのみピークが存在することを確認した(Observed Mass[M+H]+=919.90)。化学式6の非天然アミノ酸(図16a(Calculated Mass[M+H]+=1135.59、Observed Mass[M+H]+=1136.16))もしくは化学式2の非天然アミノ酸(図16b(Calculated Mass[M+H]+=1122.33、Observed Mass[M+H]+=1122.19))を用いた場合、ピークがシフトしており環化したことが確認できた。
(2)上記(1)と同様にして、化学式2または6の非天然アミノ酸を、H-2692ペプチドに導入した。その後各反応物に、500mM iodoacetoamideを1μL添加して、室温で30分間インキュベートした後、ZipTipを用いて精製し、TOF-MSにより分子量を測定した。iodoacetoamideはSH基と反応して結合する。ペプチドが環化していない場合は、iodoacetoamideが結合するため、ペプチドの分子量が増加すると考えられ、ペプチドが環化している場合は、iodoacetoamideが結合できないため、ペプチドの分子量は変化しないと考えられる。ネガティブコントロールとして、H-2692ペプチドに天然のフェニルアラニンを導入した。
結果を、図17に示す。ネガティブコントロールのマススペクトル(図17c)はiodoacetoamideの結合したペプチドのピーク(理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1123.59)が確認された(Observed Mass[M+H]+=1123.90)。化学式2または6の非天然アミノ酸を導入した場合は(図17a,b)は、iodoacetoamideの結合していないペプチドのピーク(理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1136.35(Observed Mass[M+H]+=1136.10)、および理論値(Calculated Mass)[M+H]+=1122.33(Observed Mass[M+H]+=1122.04))が確認された。
(実施例12)Fc領域と結合したペプチドへの非天然アミノ酸の導入
実施例4と同様にして、以下の2種類の前駆体(ペプチド−Fc領域)を用いて実験を行った。
(A)Fc領域(CH2+CH3領域)のN末端にアミノ酸配列(KNFFWKTFTSCDYKDDDDKKVDKTHTCPPCP:配列番号11)からなるペプチドが結合し、さらにそのN末端にHAシグナルペプチドが結合している、融合タンパク質。
(B)Fc領域(CH2+CH3領域)のN末端側にアミノ酸配列(CDKTHTCPPCP:配列番号12)からなるペプチドが結合し、さらにそのN末端にHAシグナルペプチドが結合している、融合タンパク質。
上記2種の前駆体を実施例4と同様に発現させて、Edman分解によりN末端が各々リジンおよびシステインになっていることを確認した。次に当該前駆体に、Nexta法を用いて、化学式4の非天然アミノ酸を結合させた。蛍光物質(DIB-TAMRA)を用いて、SDS−PAGE後、蛍光イメージャーにより蛍光を確認した。
結果を図18に示す。図6上段のCBB染色はタンパク質を染色した結果を示す写真である。下段の蛍光イメージングでは、蛍光物質が導入された場合に染色がみられる。Mはマーカーを示す。(A)の前駆体では蛍光を観察することができ、確かに非天然アミノ酸が導入されたことが確認できた。負対照実験として(B)の前駆体を用いて同じ実験を行ったところ、蛍光は観察されなかった。
(実施例13)ペプチドN末端への、各種非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
UITFペプチド(実施例2)のN末端に図19に記載の3種の非天然アミノ酸(クロロアラニン、プロパギルグリシン、アジドホモアラニン)を導入した。
(1)本実施例では、以下の6種類のE. coli LeuRSを使用した。
mu1: Thr247→Val & Thr248→Val 二重変異体
mu2: Thr252→Tyr & His537→Gly 二重変異体
mu3: Thr252→Tyr & Thr247→Val & Thr248→Val 三重変異体
mu4: Thr252→Tyr 変異体
mu5: His537→Gly 変異体
wt: 変異なし
(2)0.1 O.D./μl E. coli tRNALeu 1.5μl (0.24 nmol)、10×緩衝液A(100mM MgCl2, 10mM Spermidine, 500mM Hepes buffer(pH7.6))3μl、10×溶液B(25mM ATP,200mM KCl,20mM DTT) 3μl、0.37mM UITFペプチド(CysをCH2CH2Brと予め反応させてチオエーテルとしてある) 3μl(1.1 nmol)、12 μM E. coli LeuRS(上記の6種類のいずれか)(36pmol)、39μM L/F転移酵素(野生型) 1μl(39pmol)、超純水9.5μlを混合した混合溶液(全量24μl)を作製した。かかる混合溶液4μlと、各種非天然アミノ酸1μl(終濃度2mM)とを混合し、37℃で60分間インキュベートした。停止溶液(180μl中、10% TFA 108μl、超純水 54μl、0.37mMの CysをCD2CD2Brと予め反応させてチオエーテルとしてあるUITFペプチド 18μl)を5μl添加して反応を停止させ、ZipTipを用いて精製し、MALDI-TOF-MSにより非天然アミノ酸が導入されたか否かを測定した。各々3回ずつ測定を行った。
非天然アミノ酸がペプチドに導入された割合を、H. A. Ebhardt et al,, Anal. Chem., 2009, 81, 1937-1943を参考にして算出した。
3回測定の結果を表1に示す。
プロパルギルグリシンは、mu1、mu3、mu4によりペプチドに導入することが可能であり、アジドホモアラニンは、mu1、mu2、mu3、mu4によりペプチドに導入することが可能であり、クロロアラニンは、mu1、mu3、mu4によりペプチドに導入することが可能であることがわかった。
(3)クロロアラニンをmu1により、UITFペプチドに導入した場合において、クロロアラニン側鎖とUITFペプチド内のシステイン側鎖との環化が起こっているかの確認を行った。終濃度が、0.1 O.D./μl E. coli tRNALeu 8.0μM、緩衝液A(10mM MgCl2, 1mM Spermidine, 50mM Hepes buffer(pH7.6))、溶液B(2.5mM ATP, 20mM KCl, 2mM DTT)、 UITFペプチド35μM、E. coli LeuRS(mu1)1.2μM、L/F転移酵素(野生型) 1.2μM、クロロアラニン2.0mMとなるように混合溶液(全量5μl)を作製し、37℃で30分間インキュベートした。反応後、TFAを加えて反応を停止させ、ZipTipを用いて精製し、CHCA(マトリックス)を用いて分子量測定した。
結果を図20に示す。図20aは、クロロアラニンを添加せずに反応を行った場合の結果であり、図20bはクロロアラニンを添加して反応を行った場合の結果である。クロロアラニン導入によりペプチドが環化されることがわかった。
(実施例14)化学式7にて示される非天然アミノ酸の合成
下記の化学式7にて示される非天然アミノ酸(O-bromoethyl-L-tyrosine)を合成した。
N-Boc-L-Tyrosine ester 3.5 mmol、dibromoethane 3.5 mmol、sodium methoxide 3.5 mmol、dry acetonitrile 6.0 mLを混合して、refluxにより12時間反応を行った。抽出およびシリカゲルカラムによる精製の後、1H NMRにより、同定を行った。同定の結果、N-Boc-bromoethyl-L-Tyrosine methyl esterができていると判断した。収率は30%だった。続いて、N-Boc-bromoethyl-L-Tyrosine esterのメチル基をLiOHによる脱保護を行った。続いて、TFAによってBoc基の脱保護を行った。その後、エーテル沈殿を行い、1H NMRによって、目的の非天然アミノ酸であるO-bromoethyl-L-tyrosine(化学式7)ができているか確認した。
その結果、目的物が得られたと考えられた(図21)。最終的な収率は1.5%であった。
(実施例15)ペプチドN末端への、化学式7の非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.025 O.D./μl E. coli tRNAPhe 1.0μl 、10×緩衝液A(100mM MgCl2, 10mM Spermidine, 500mM Hepes buffer(pH7.6))0.5μl、10×溶液B(25mM ATP,200mM KCl,20mM DTT) 0.5μl、0.35mM UITFペプチド 0.5μl、20 μM E. coli PheRS(mu3)(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)0.25μl、39μM L/F転移酵素(野生型) 0.25μl、超純水1.0μl、1mM 化学式7の非天然アミノ酸1.0μlとを混合し、37℃で1時間、3時間、5時間インキュベートした。TFAを混合して反応を停止させ、ZipTipを用いて精製し、MALDI-TOF-MSにより環化したか否かを確認した。なお陽性コントロールとして、化学式7の非天然アミノ酸の代わりにcaaPheを、陰性コントロールとして非天然アミノ酸を含まない混合溶液を準備し、37℃で1時間インキュベートした。
結果を、図22に示す。図22aは、陽性コントロールの結果であり、図22bは、陰性コントロールの結果であり、図22cは、化学式7の非天然アミノ酸を添加して1時間インキュベートした結果であり、図22dは、化学式7の非天然アミノ酸を添加して3時間インキュベートした結果であり、図22eは、化学式7の非天然アミノ酸を添加して5時間インキュベートした結果である。
反応時間1時間では、化学式7の非天然アミノ酸はペプチドに導入されるものの環化は50%程度しか進行していなかった。反応時間を3時間、5時間にすると、ほぼ環化反応が進行していた。また、ペプチドのSH基と非天然アミノ酸の側鎖のみが反応し非環状ペプチド(Calculated Mass[M+H]+=1126.59)を生成する副反応は、検出されなかった。
(実施例16)リンカー化合物(化学式21:BVSM)を用いたファージ上ペプチドの環化
pIIIタンパク質上にモデルペプチド(配列番号13:ACHHHHHHCDYKDDDDK)を提示しているファージを用いて、ファージ上での環化を試みた。その後、リジンのN末端側で切断するプロテアーゼ(Lys-N)を用いてファージ上の環化ペプチド(配列番号14:ACHHHHHHCDY)を切断し、His-tag精製を行い、MSを用いて分子量を解析し、環化の確認を行った。
モデルペプチド(配列番号13:ACHHHHHHCDYKDDDDK)(環化していない)を提示しているファージに84μLの20% PEG/2.5M NaClを加え、懸濁した。遠心(4℃、15000rpm、30分間)後、上清を除いた。175μLのPBSを加え、懸濁した後、ファージ 50μL(1 x 1011 pfu)、74mM BVSMを終濃度が1100μM、110μM、11μMとなるように混合した。その後、窒素により脱気したPBSを加えて、全量を2mLとした。静置して4℃、一晩、反応させた。
反応溶液2mLに対し、500μLの20% PEG/2.5M NaClを加え、懸濁し、遠心(4℃、15000rpm、30分間)後、上清を除いた。沈殿を40μLの50mMリン酸バッファー(Na2HPO4, pH8.5)に懸濁後、4μLのLys-N(Metalloendopeptidase)を加えた。37℃、4時間、600rpmで反応させた。反応後、0.8μLの100mM TCEP水溶液を加え、37℃、30分間、600rpmで攪拌し反応させた。Co-NTAゲルを用いてHis-tagアフィニティー精製後、ZipTip処理をし、MS測定を行った。
環化は3種の濃度(終濃度が1100μM、110μM、11μM)のBVSMで実験を行った。陰性コントロールとしてファージなし(Lys-Nのみ)、MockとしてBVSMなしで同様の実験を行った。BVSM 11μMでは、BVSMによって環化されたペプチドのピークのみが確認された。
またBVSM 11μMにより環化反応を行ったファージについて、大腸菌への感染能を確認したところ、感染能が保たれていることがわかった。
さらに、BVSM 11μMにより環化反応を行ったファージについて、環化反応後、iodoacetoamideまたはDTTとインキュベートを行ったのち、上記同様に、Lys-Nにより処理をし、MS測定を行った。iodoacetoamideはペプチド内の未反応のSH基と反応して結合するため、ペプチドが環化していない場合は、iodoacetoamideが結合してペプチドの分子量が増加すると考えられる。一方、ペプチドが環化している場合は、iodoacetoamideが結合できないため、ペプチドの分子量は変化しないと考えられる。同様に、DTT はBVSM由来の未反応のビニル基と反応して結合するため、ペプチドが環化していない場合は、DTTが結合して、ペプチドの分子量が増加すると考えられる。一方、ペプチドが環化している場合は、DTTが結合できないため、ペプチドの分子量は変化しないと考えられる。
その結果、BVSMによって環化されたペプチドのピークのみが確認された。
(実施例17)化学式22の化合物(qui-I)のファージ上ペプチドへの付加
pIIIタンパク質上にモデルペプチド(配列番号13:ACHHHHHHCDYKDDDDK)を提示しているファージを用いて、ファージ上のペプチドに化学式9の化合物を付加させた。その後、リジンのN末端側で切断するプロテアーゼ(Lys-N)を用いてファージ上の環化ペプチド(配列番号14:ACHHHHHHCDY)を切断し、His-tag精製を行い、MSを用いて分子量を解析し、qui-I付加について確認を行った。なお、qui-Iは、文献R. J. Radford et al., Inorg. Chem. 49, 4362-4369 (2010)に従って合成および精製を行った。
モデルペプチド(配列番号13:ACHHHHHHCDYKDDDDK)(環化していない)を提示しているファージに84μLの20% PEG/2.5M NaClを加え、懸濁した。遠心(4℃、15000rpm、30分間)後、上清を除いた。175μLのPBSを加え、ファージを懸濁した後、このうちの50μL(1 x 1011 pfu)を、2mM qui-I 1μLと共に混合した。静置して4℃、一晩、反応させた。
反応溶液に12.5μLの20% PEG/2.5M NaClを加え、懸濁し、遠心(4℃、15000rpm、30分間)後、上清を除いた。沈殿を、40μLの50mMリン酸バッファー(Na2HPO4, pH8.5)に懸濁後、4μLのLys-N(Metalloendopeptidase)を加えた。37℃、4時間、600rpmで反応させた。反応後、0.8μLの100mM TCEP水溶液を加え、37℃、30分間、600rpmで攪拌し反応させた。Co-NTAゲルを用いてHis-tagアフィニティー精製後、ZipTip処理をし、MS測定を行った。
MS測定の結果を図23に示す。図23aは、qui-Iを反応させていない負対照実験の結果である。図23bは、qui-Iを反応させた結果である。図23bではqui-I2分子がモデルペプチド内の2つのシステインに各々結合した場合のピーク(Calculated Mass[M+H]+=1796.64)が確認された(Observed Mass[M+H]+=1797.31)。よって、qui-Iがモデルペプチド中の2つのシステインの側鎖に付加したことがわかった。
またqui-I導入を行ったファージについて、大腸菌への感染能を確認した結果を図24に示す。図24aは、qui-Iの代わりに水1μLを加えて同じ操作を行った(mock)ファージの結果であり、図24bはqui-I導入反応後のファージの結果である。qui-Iの導入したファージにおいても、qui-Iを導入していないファージと同程度の感染能が保たれていることがわかった。
(実施例18)化学式19にて示される非天然アミノ酸の合成
下記の化学式19にて示される非天然アミノ酸(O-Iodoethyl-L-tyrosine)を合成した。
N-Boc-bromoetyl-L-Tyrosine methyl ester 0.22 mmol、NaI 0.40 mmol、dry acetone 1.5 mLを混合して、refluxにより反応を行った。抽出およびシリカゲルカラムによる精製の後、1H NMRにより、同定を行った。同定の結果、N-Boc-Iodoethyl-L-Tyrosine methyl esterができていると判断した。収率は10%だった。続いて、N-Boc-Iodoethyl-L-Tyrosine esterのメチル基をLiOHによる脱保護を行った。続いて、TFAによってBoc基の脱保護を行った。その後、エーテル沈殿を行い、1H NMRによって、目的の非天然アミノ酸であるO-Iodoethyl-L-tyrosine(化学式19)ができているかを確認した。
その結果、目的物が得られたと考えられた(図25)。
(実施例19)ペプチドN末端への、化学式19の非天然アミノ酸の導入(Nexta法)
0.025 O.D./μl E. coli tRNAPhe 1.0μl 、10×緩衝液A(100mM MgCl2, 10mM Spermidine, 500mM Hepes buffer(pH7.6))0.5μl、10×溶液B(25mM ATP,200mM KCl,20mM DTT) 0.5μl、0.35mM UITFペプチド 0.5μl、20 μM E. coli PheRS(mu3)(Ala294→Gly & Thr251→Ala 二重変異体)0.25μl、39μM L/F転移酵素(野生型) 0.25μl、超純水1.0μl、1mM 化学式19の非天然アミノ酸1.0μlを混合し、37℃で1時間インキュベートした。TFAを混合して反応を停止させ、ZipTipを用いて精製し、MALDI-TOF-MSにより環化したか否かを確認した。なお陽性コントロールとして、化学式19天然アミノ酸の代わりにcaaPheを、陰性コントロールとして非天然アミノ酸を含まない混合溶液を準備し、37℃で1時間インキュベートした。
結果を、図26に示す。図26aは、陽性コントロールの結果であり、図26bは、陰性コントロールの結果であり、図26cは、化学式19の非天然アミノ酸を添加して1時間インキュベートした結果である。図26cでは、原料ペプチドであるUITFペプチドのピークは無くなっていた。図26cには、2つのピークが存在し、これらは環化ペプチドのピーク(Calculated Mass[M+H]+=1108.57、Observed Mass[M+H]+=1108.64)と、化学式19の非天然アミノ酸がN末端に付加しただけで環化していないペプチドのピーク(Observed Mass[M+H]+=1236.49)と考えられた。よって1時間の反応時間では完全に環化していないことがわかった。化学式7の非天然アミノ酸の場合(実施例15)、インキュベートの時間を3時間、5時間とのばすことにより環化反応が進んだので、化学式19の非天然のアミノ酸の場合でも、インキュベート時間をのばすことにより、同様に環化反応が進むと考えられる。
また、ペプチドのSH基と非天然アミノ酸の側鎖のみが反応し非環状ペプチド(Calculated Mass[M+H]+=1126.59)を生成する副反応は、検出されなかった。
本発明により提供される結合体のうち、例えば機能部がFc領域を有するポリペプチドである結合体は、例えば環状ペプチドを腫瘍指向性のものとすることにより、癌治療用医薬として使用することができる。種々の環状ペプチドを有するバクテリオファージを結合体として作製することにより、ファージディスプレイによるスクリーニングが可能となり、多様な環状ペプチドから所望の特性(例えば腫瘍指向性)を持つ環状ペプチドを選択することができ、有用である。本発明の方法は、これらの結合体を容易に作製して提供することができる。また本発明の方法によれば、設備等が限られた環境でも結合体を利用することを可能とし、環状ペプチドに関する研究を推進させるための有力なツールとなり得る。さらに本発明の新規非天然アミノ酸によれば、チオエーテル結合による環状ペプチドを提供可能であり、多様な構造を持つ環状ペプチドを提供することが可能である。

Claims (14)

  1. 非天然アミノ酸の側鎖により環状部分が形成される環状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる結合体。
  2. 前記機能部がファージであり、環状ペプチドがファージのコートタンパク質に結合してなる、請求項1に記載の結合体。
  3. 非天然アミノ酸の側鎖により形成される環状部分が、以下から選択される構造を有する、請求項1または2に記載の結合体:
    (A)以下の化学式9にて示される非天然アミノ酸の側鎖と、金属とが配位してなる構造;
    (B)以下の一般式8にて示される構造;
    (一般式8中、Y1、Y2、Y3は各々独立して、炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。)
  4. 以下の工程を含む、請求項1〜3のいずれか1に記載の結合体を作製する方法:
    (1)SH基を有するアミノ酸を含むペプチドがコートタンパク質に結合してなるファージと、以下の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を混合して、0〜8℃、0.5〜16時間反応させる工程;
    (一般式10中、R3はハロゲン原子である。)
    (一般式11中、X1およびX2は各々独立して、炭素数が1〜5のハロアルキル基、炭素数が2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択され、Y3は炭素数1〜5のアルキレン基からなる群から選択される。)
    (2)環状ペプチドを有するファージを分離する工程。
  5. 以下の一般式10もしくは一般式11に示される化合物を含む、請求項1〜3のいずれか1に記載の結合体を作製するための試薬キット:
    (一般式10中、R3はハロゲン原子である。)
    (一般式11中、X1およびX2は各々独立して、炭素数が1〜5のハロアルキル基、炭素数が2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択され、Y3は炭素数1〜5のアルキレン基からなる群から選択される。)
  6. 以下の工程を含む、標的タンパク質に結合し得る環状ペプチドをスクリーニングする方法:
    (i)請求項1〜3のいずれか1に記載の結合体と、標的タンパク質を接触させる工程:
    (ii)標的タンパク質に結合した結合体を選択する工程。
  7. 前記機能部がFc領域を含むポリペプチドである、請求項1に記載の結合体。
  8. 非天然アミノ酸の側鎖により形成される環状部分が、以下の一般式12に示される構造を有する、請求項7に記載の結合体:
    (式中、R4は、炭素数1〜5のアルキレン基、炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−アミド結合−炭素数1〜5のアルキレン基、および炭素数1〜5のアルキレン基−フェニレン基−エーテル結合−炭素数1〜5のアルキレン基から選択される。)
  9. N末端に非天然アミノ酸を有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、請求項7または8に記載の結合体の中間体。
  10. N末端に非天然アミノ酸を結合させるために、塩基性アミノ酸をN末端に有する直鎖状ペプチドと、機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、請求項9に記載の中間体の前駆体。
  11. 以下を含む混合溶液を用いて、請求項7または8に記載の結合体を作製する方法:
    (a)N末端に非天然アミノ酸を有さない直鎖状ペプチドと機能部とがペプチド結合を介して結合してなる、前記結合体の前駆体、
    (b)前駆体分子内のアミノ酸の側鎖と結合可能な官能基を側鎖に有する非天然アミノ酸、
    (c)tRNA、
    (d)アミノアシルtRNA合成酵素、
    (e)ロイシル/フェニルアラニルtRNAタンパク質転移酵素。
  12. Fc領域を有するポリペプチドである機能部をコードするポリヌクレオチドと、前記直鎖状ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとが導入された細胞を培養することにより、前記前駆体が作製される、請求項11に記載の作製方法。
  13. 下記一般式(1)により表される非天然アミノ酸:
    (式中Rは、NR1-CO-R2であり、
    R1は水素原子、又は炭素数が1〜6の直鎖状若しくは分岐状の飽和若しくは不飽和脂肪族炭化水素基から選択され、
    R2は炭素数が1〜3のアルキル基、炭素数が1〜3のハロアルキル基、または炭素数が2〜4の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基から選択される。)
  14. R1は水素原子であり、R2は炭素数が1もしくは2のハロアルキル基または炭素数が2もしくは3のアルケニル基である、請求項13に記載の非天然アミノ酸。
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